JP2022552788A - Gabaaレセプターのサブタイプを優先的に増強する組成物およびその使用方法 - Google Patents

Gabaaレセプターのサブタイプを優先的に増強する組成物およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、異なるサブタイプのGABAAレセプターの優先的調節(例えば、α1β2γ2 GABAAレセプターに対するα4β3δ GABAAレセプターの優先的調節)を可能にする神経ステロイドの異性体的に純粋な形態を含む組成物を提供する。本発明はまた、このような組成物を使用して、GABAA障害を処置する方法を提供する。本発明は、式(I)の異性体的に純粋な組成物が、α1β2γ2 GABAAレセプターに対してよりα4β3δ GABAAレセプターに対してかなり活性であるという知見を含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月30日出願の米国仮特許出願第62/907,763号(その内容は参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
発明の分野
本発明は一般に、神経ステロイドを含む組成物、および上記組成物を使用して、被験体においてGABA障害を処置する方法に関する。
背景
世界保健機関(WHO)によれば、神経学的障害は、全世界で最大10億人もの人々に影響を及ぼしている。神経学的障害としては、アルツハイマー病、脳傷害、てんかん、頭痛、感染症、多発性硬化症、およびパーキンソン病、ならびに脳卒中のような広い範囲の状態が挙げられる。多くの神経学的障害は、神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)のレセプターによるシグナル伝達の変化に由来する。GABAレセプターは、19種の異なるサブユニットポリペプチドの種々の組み合わせを含むペンタマー膜貫通型レセプターである。少なくとも15種のGABAレセプターサブタイプが公知であり、特定のサブタイプは、異なる状態と関連する。例えば、αまたはαサブユニットを含むレセプターサブタイプの活性の変化は、不安障害と関連するのに対して、αを含むサブタイプは、記憶および認知において一定の役割を果たしているようである。
GABAレセプターの活性を変化させる神経活性ステロイドは、種々の神経学的障害の薬物候補として調査されてきた。しかし、このような分子の治療上の潜在能力は、大部分は未開発のままである。その不足に関する1つの理由は、ステロイド構造コアから作製され得る複数の化学的バリアントが、現在調査中の化合物が、未だ作製もしくは分析されていない他の分子より優れた薬理学的特性を有するか否かを知るのを困難にするからである。別の課題は、異なるGABAレセプターサブタイプの構造的類似性が、所望のサブタイプ特異性を有する分子を特定することを困難にしているということである。結論として、数百万人もの人々が、我々が現在自由に使える神経活性ステロイドという武器は制限されていることに起因して、神経学的状態に罹患し続けている。
要旨
本発明は、選択された神経ステロイドの異性体的に純粋な形態を含む組成物を提供する。本発明は、神経ステロイドとGABAレセプターとの間の相互作用が、その神経ステロイドの立体化学的構造に非常に敏感であること、およびある特定の神経ステロイドが、異性体夾雑物が実質的にない組成物において提供される場合、強いGABAレセプターサブタイプ特異性を示すことを認める。本発明の組成物は、特定のGABAレセプターサブタイプを選択的に標的化することから、それらは、それほど活性でない異性体が夾雑した生物学的に活性な化合物を含むものを含む以前の組成物を超える大きく改善された薬理学的有効性を有する。
特定の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物:
Figure 2022552788000001
の異性体的に純粋な形態を含む組成物を提供する。
本発明は、式(I)の異性体的に純粋な組成物が、α1β2γ2 GABAレセプターに対してよりα4β3δ GABAレセプターに対してかなり活性であるという知見を含む。本明細書で記載されるように、このような組成物は、α1β2γ2レセプターに対するものの高くても1/5のEC50でα4β3δレセプターの活性を調節する。特定の理論に拘束されることは望まないが、上記分子のキラル中心の全てにおける立体化学的配置および上記分子内の原子結合パターンは、GABAレセプターサブタイプ選択性を付与することにおいて重要であると考えられる。従って、式(I)の化合物を、その異性体(例えば、式(I)の位置異性体または式(I)とは1つのキラル中心においてのみ構造が異なる立体異性体)と一緒に含む混合物は、このような選択性を欠く。式(I)の化合物の異性体的に純粋な形態を含む組成物は、α4β3δ GABAレセプターを優先的に標的化することから、それらは、このレセプターの活性を変化させることが有益である治療適用に有用である。
一局面において、本発明は、式(I)の化合物:
Figure 2022552788000002
の異性体的に純粋な形態を含む薬学的組成物であって、
ここで式(I)の化合物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δGABAレセプターを優先的に増強するのに治療上有効な量で存在する組成物を提供する。
別の局面において、本発明は、式(I)の化合物:
Figure 2022552788000003
の異性体的に純粋な形態を含む薬学的組成物を被験体に提供することによってGABA障害を処置するための方法であって、
ここで式(I)の化合物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δ GABAレセプターを優先的に増強するのに治療上有効な量で存在する方法を提供する。
上記組成物は、化学的に純粋であり得る、すなわち、他の分子または化学種を含んでいない可能性がある。例えば、上記他の分子または化学種は、別個の化学式、構造式、実験式、分子式、または示性式(condensed formula)を有し得る。上記組成物は、規定されたレベルの化学的純度を有し得る。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物および1もしくはこれより多くの別個の分子または化学種を含む混合物の総量のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%において存在し得る。
上記組成物は、全ての異性体に関して異性体的に純粋であり得る。上記組成物は、1またはこれより多くの特定のタイプの異性体に関して異性体的に純粋であり得る。上記組成物は、構造異性体または特定のタイプの構造異性体(例えば、位置異性体)を実質的に含まない可能性がある。上記組成物は、立体異性体または特定のタイプの立体異性体(例えば、エナンチオマーまたはジアステレオマー)を実質的に含まない可能性がある。
上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δ GABAレセプターの優先的調節を達成するために異性体純度の任意のレベルにおいて式(I)の化合物を含み得る。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物およびその異性体を含む異性体分子の総量のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%で存在し得る。
上記組成物は、式(I)の化合物を含みかつ立体異性体を実質的に含まない可能性がある。上記立体異性体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個のキラル中心において式(I)とは異なり得る。上記立体異性体は、ジアステレオマーまたはエナンチオマーであり得る。例えば、上記立体異性体は、式(II)または(III)の化合物:
Figure 2022552788000004
であり得る。
上記組成物は、式(I)の化合物および1またはこれより多くのその立体異性体の総量のうちの5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満において、式(I)の化合物の1またはこれより多くの立体異性体(例えば、式(II)または(III)の化合物)を含み得る。上記組成物は、少なくとも19:1、20:1、25:1、30:1、40:1、50:1、100:1、200:1、500:1、または1000:1の比において、式(I)の化合物および1またはこれより多くのその立体異性体を含み得る。
上記化合物は、任意の機序によって、GABAレセプター、GABAレセプターサブタイプ、またはGABAレセプターサブタイプのサブセットを増強し得る。上記化合物は、アロステリック調節、活性化、または阻害によって、GABAレセプター、サブタイプ、またはサブセットを増強し得る。上記アロステリック調節は、正であっても負であってもよい。
上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、任意の程度までα4β3δ GABAレセプターを優先的に増強し得る。上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、任意の尺度またはパラメーターによってα4β3δ GABAレセプターを優先的に増強し得る。
上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50より低いα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有し得る。α4β3δ GABAレセプターに関するEC50は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50の約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8、約1/10、約1/20、約1/50、約1/100、約1/200、約1/500または約1/1000であり得る。α4β3δ GABAレセプターに関するEC50は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、または約0.1%未満であってもよい。
上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性より低いα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性(これは、例えば、解離定数Kとして表され得る)を有し得る。α4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性の約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8、約1/10、約1/20、約1/50、約1/100、約1/200、約1/500または約1/1000であり得る。α4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、または約0.1%未満であってもよい。
上記組成物は、規定された値を下回るα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有し得る。上記組成物は、約1μM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2.5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、または約0.1nM未満であるα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有し得る。
上記組成物は、規定された値を下回るα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性を有し得る。上記組成物は、約1μM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2.5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、または約0.1nM未満であるα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性を有し得る。
上記組成物は、GABA障害の処置のために有効であり得る。上記GABA障害は、GABAレセプター機能の変化と関連した任意の疾患、障害、もしくは状態であってもよく、任意の障害は、GABAレセプター機能の変化によって改善され得る疾患、障害、もしくは状態であってもよい。上記GABA障害は、急性疼痛、嗜癖障害、アルツハイマー病、アンジェルマン症候群、反社会性パーソナリティ障害、不安障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意障害(attention disorder)、聴覚障害、自閉症、自閉症スペクトラム障害、双極性障害、慢性疼痛、認知障害、強迫障害(compulsive disorder)、痙攣性障害、認知症、うつ病、気分変調、てんかん障害、本態性振戦、てんかん発生、脆弱X症候群、全般性不安障害(GAD)、ハンチントン病、傷害関連疼痛症候群(injury related pain syndrome)、不眠症、虚血、レビー小体型認知症、記憶障害、片頭痛、気分障害、運動障害、神経変性疾患、神経障害性疼痛、強迫性障害(obsessive compulsive disorder)、疼痛、パニック障害、パーキンソン病、パーソナリティ障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、精神病、レット症候群、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害、発作性障害(seizure disorder)、睡眠障害、社会不安障害、てんかん重積状態、ストレス、脳卒中、耳鳴り、外傷性脳傷害(TBI)、血管疾患、血管奇形、血管型認知症運動障害(vascular type dementia movement disorder)、ウイルソン病、または離脱症候群であり得る。
上記組成物は、特定のメカニズムによる投与のために製剤化され得る。上記組成物は、経口投与、静脈内投与、経腸投与、非経口投与、皮膚投与、口内投与、局所投与、鼻投与、または肺投与のために製剤化され得る。上記組成物は、注射によるか、または移植可能な医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)上での投与のために製剤化され得る。
上記組成物は、単一の1日投与量で製剤化され得る。上記組成物は、複数の1日投与量、例えば、2、3、4、5、6またはこれより多くの1日投与量のために製剤化され得る。
上記組成物は、任意の投与スケジュールに従って、上記被験体に提供され得る。上記組成物は、1日に1回提供され得る。上記組成物は、1日に複数回提供され得る。上記組成物は、1日に、2回、3回、4回、5回、6回、またはより多く提供され得る。
詳細な説明
本発明は、神経ステロイドの異性体的に純粋な形態を含む組成物、およびこのような組成物を使用して、神経学的障害および他の障害を処置する方法を提供する。本発明は、異性体的に純粋な神経ステロイドが、γ-アミノ酪酸(GABA)レセプターの特異的サブタイプの調節を可能にするという認識に基づく。上記組成物は、GABAレセプターのサブタイプの選択的調節を可能にすることから、それらは、それらのレセプターサブタイプの変化が治療上の利益を提供する状態を処置するために有用である。
定義
具体的な官能基および化学用語の定義は、以下でより詳細に記載される。化学的要素は、元素周期表(CASバージョン、Handbook of Chemistry and Physics, 第75版、表紙の裏)に従って特定され、具体的な官能基は、本明細書で記載されるように一般的に定義される。さらに、有機化学の一般原理、ならびに具体的な官能部分および反応性は、Thomas Sorrell, Organic Chemistry, University Science Books, Sausalito, 1999; Smith and March, March’ s Advanced Organic Chemistry, 第5版, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001; Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;およびCarruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 第3版, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載される。
本明細書で使用される場合、「純粋な異性体の(pure isomeric)」化合物または「異性体的に純粋な(isomerically pure)」化合物は、その化合物の他の異性体を実質的に含まない。用語「純粋な異性体の」化合物または「異性体的に純粋な」とは、その化合物が、特定された構造を有する化合物の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%を構成することを指す。ある特定の実施形態において、重量は、上記化合物の全ての異性体の総重量に基づく。
本明細書で使用される場合、「純粋な立体異性体の(pure stereoisomeric)」化合物または「立体異性体的に純粋な(stereoisomerically pure)」化合物は、上記化合物の他の立体異性体を実質的に含まない。従って、上記化合物は、任意のキラル中心において異なる異性体を実質的に含まない。上記化合物が複数のキラル中心を有する場合、上記組成物のうちの実質的に大部分は、そのキラル中心の全てにおいて同一な立体化学を有する化合物を含む。用語「純粋な立体異性体の」化合物または「立体異性体的に純粋な」は、その化合物が、特定された立体化学を有する化合物のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%を構成することを指す。ある特定の実施形態において、重量は、上記化合物の全ての立体異性体の総重量に基づく。
本明細書で使用される場合、純粋なエナンチオマー化合物は、上記化合物の他のエナンチオマーまたは立体異性体を実質的に含まない(すなわち、エナンチオマー過剰)。言い換えると、上記化合物の「S」型は、上記化合物の「R」型を実質的に含まず、従って、「R」型のエナンチオマー過剰状態にある。用語「エナンチオマー的に純粋な(enantiomerically pure)」または「純粋なエナンチオマー(pure enantiomer)」とは、上記化合物が、上記エナンチオマーのうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%を構成することを指す。ある特定の実施形態において、重量は、上記化合物の全てのエナンチオマーまたは立体異性体の総重量に基づく。
本明細書で記載される化合物はまた、1またはこれより多くの同位体置換を含み得る。例えば、Hは、H、H(Dまたは重水素)、およびH(Tまたはトリチウム)を含む任意の同位体形態にあり得る;Cは、12C、13C、および14Cを含む任意の同位体形態にあり得る;Nは、14Nおよび15Nを含む任意の同位体形態にあり得る;Oは、16Oおよび18Oを含む任意の同位体形態にあり得る;など。
冠詞「1つの、ある(a)」および「1つの、ある(an)」は、上記冠詞の文法上の対象の1または1より多く(すなわち、少なくとも1)に言及するために本明細書で使用され得る。例示によれば、「1つのアナログ(an analogue)」とは、1つのアナログまたは1より多くのアナログを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「調節(modulation)」および「増強(potentiation)」とは、GABAレセプター機能の阻害または刺激をいう。「調節因子(modulator)」または「増強因子(potentiator)」とは、例えば、上記GABAレセプターのアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、または部分アンタゴニストであり得る。上記「調節因子」または「増強因子」は、GABAレセプター上の活性部位またはアロステリック部位において作用し得る。それは、リガンド結合を促進または阻害し得る。それは、リガンド媒介性の、例えば、GABA媒介性のシグナル伝達を促進または減弱し得る。
「薬学的に受容可能な」とは、連邦政府もしくは州政府の規制当局、または米国以外の国ではその相当する当局によって承認されたまたは承認され得るか、あるいは動物における、およびより詳細にはヒトにおける使用に関して、米国薬局方または他の一般に認識される薬局方に収載されることを意味する。
「薬学的に受容可能な塩」とは、薬学的に受容可能でありかつ親化合物の所望の薬理学的活性を有する、本発明の化合物の塩をいう。特に、このような塩は、非毒性であり、無機性または有機性の酸付加塩および塩基付加塩であり得る。具体的には、このような塩としては、以下が挙げられる:(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などのような無機酸で形成されるか;または酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]-オクタ-2-エン-l-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオオンサン、トリメチル酢酸、三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などのような有機酸で形成される酸付加塩;あるいは(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、またはアンモニウムイオン)によって置き換えられるか;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N メチルグルカミンなどのような有機塩基と配位するかのいずれかである場合に形成される塩。塩はさらに、例示に過ぎないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなど;および上記化合物が塩基性官能基を含む場合には、非毒性の有機酸または無機酸の塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩など)を含む。用語「薬学的に受容可能なカチオン」とは、酸性官能基の受容可能なカチオン性対イオンをいう。このようなカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムカチオンなどによって例示される。例えば、Bergeら, J. Pharm. Sci. (1977) 66(1): 1-79を参照のこと。
「溶媒和物」とは、通常は加溶媒分解反応によって溶媒または水(「水和物(hydrate)」ともいわれる)と会合される化合物の形態をいう。この物理的会合は、水素結合を含む。従来の溶媒としては、水、エタノール、酢酸などが挙げられる。本発明の化合物は、例えば、結晶形態で調製され得、溶媒和され得るかまたは水和され得る。適切な溶媒和物としては、薬学的に受容可能な溶媒和物(例えば、水和物)が挙げられ、化学量論的な溶媒和物および非化学量論的な溶媒和物の両方がさらに挙げられる。ある特定の場合には、上記溶媒和物は、例えば、1またはこれより多くの溶媒分子が結晶固体の結晶格子の中に組み込まれる場合に単離され得る。「溶媒和物」は、液相および単離可能な溶媒和物の両方を含む。代表的な溶媒和物としては、水和物、エタノラートおよびメタノラートが挙げられる。
本明細書で使用される場合、用語「同位体バリアント(isotopic variant)」とは、このような化合物を構成する原子のうちの1個またはこれより多くにおいて同位体の非天然の比率を含む化合物をいう。例えば、化合物の「同位体バリアント」は、1またはこれより多くの非放射性同位体(例えば、重水素(HもしくはD)、炭素-13(13C)、窒素-15 (15N)などのような)を含み得る。このような同位体の置換が行われる化合物において、以下の原子(存在する場合)は、例えば、任意の水素がH/Dであり得るか、任意の炭素が13Cであり得るか、または任意の窒素が15Nであり得るよう変動し得る、ならびにこのような原子の存在または配置が、当該分野の技術範囲内で決定され得ることは、理解される。同様に、本発明は、例えば、その得られる化合物が薬物および/または基質組織分布試験のために使用され得る場合に、放射性同位体を有する同位体バリアントの調製を含み得る。上記放射性同位体であるトリチウム(すなわち、H)および炭素-14(すなわち、14C)は、それらの組み込みの容易さおよび容易な検出手段に照らせば、この目的に特に有用である。さらに、陽電子放射同位体(例えば、11C、18F、15O、および13N)で置換されている、および基質レセプター占有を調べるための陽電子放射断層撮影(PET)試験において有用である化合物が調製され得る。本明細書で提供される化合物の全ての同位体バリアントは、放射性であろうがそうでなかろうが、本発明の範囲内に包含され得ることが意図される。
「立体異性体」: 同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の性質もしくは順序またはそれらの原子の空間における配置が異なる化合物が、「異性体」といわれることも、理解されるべきである。それらの原子の空間における配置が異なる異性体は、「立体異性体」といわれる。互いの鏡像でない立体異性体は、「ジアステレオマー」といわれ、互いの重ね合わせができない鏡像であるものは、「エナンチオマー」といわれる。化合物が、不斉中心を有する場合、例えば、炭素原子のような原子が4個の異なる基に結合される場合、一対のエナンチオマーが考えられる。エナンチオマーは、その不斉中心の絶対配置によって特徴づけられ得、CahnおよびPrelogのR型およびS型の配列規則によって、または分子が偏光の面を回転させ、右旋性または左旋性として(すなわち、それぞれ、(+)または(-)-異性体として)称される様式によって記載される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーとしてまたはこれらの混合物としてのいずれかで存在し得る。等しい割合の上記エナンチオマーを含む混合物は、「ラセミ混合物」といわれる。
「互変異性体」とは、特定の化合物構造の交換可能な形態であり、水素原子および電子の配置において変動する化合物をいう。従って、2つの構造が、n個の電子と1個の原子(通常は、H)の動きを通じて平衡状態にあり得る。例えば、エノールおよびケトンは、これらが酸または塩基のいずれかでの処理によって、急速に相互変換されることから、互変異性体である。互変異性の別の例は、フェニルニトロメタンのaci形態およびnitro形態であり、これらは、酸または塩基の処理によって同様に形成される。互変異性形態は、目的の化合物の最適な化学反応性および生物学的活性の達成に関連し得る。
投与が企図される「被験体」としては、ヒト(すなわち、任意の年齢群の男性または女性、例えば、小児被験体(例えば、幼児、小児、青年)または成人被験体(例えば、若年成人、中年の成人または高齢の成人))ならびに/または非ヒト動物(例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、ネコ、および/またはイヌのような哺乳動物)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、上記被験体はヒトである。ある特定の実施形態において、上記被験体は非ヒト動物である。
疾患、障害、および状態は、本明細書で交換可能に使用される。
本明細書で使用される場合、および別段特定されなければ、用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」とは、被験体が、特定された疾患、障害もしくは状態に罹患している間に行われ、その疾患、障害もしくは状態の重篤度を低減するか、またはその疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるかもしくは遅延させる行為(「治療的処置」)を企図し、被験体が、その特定された疾患、障害もしくは状態に罹患し始める前に行われる行為(「予防的処置」)もまた企図する。
一般に、化合物の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するために、例えば、CNS関連障害を処置するために十分な量をいい、麻酔または鎮静を誘導するために十分である。当業者によって理解されるように、有効量の、本発明の化合物は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置されている疾患、投与様式、ならびに被験体の年齢、体重、健康状態、および状態のような要因に依存して変動し得る。有効量は、治療的および予防的な処置を包含し得る。
本明細書で使用される場合、および別段特定されなければ、化合物の「治療上有効な量」は、疾患、障害もしくは状態の処置において治療上の利益を提供するために、またはその疾患、障害もしくは状態と関連する1もしくはこれより多くの症状を遅らせるもしくは最小にするために十分な量である。化合物の治療上有効な量は、治療剤の、単独または他の治療との組み合わせでの量を意味し、これは、その疾患、障害もしくは状態の処置において治療上の利益を提供する。用語「治療上有効な量」は、治療全体を改善する、疾患もしくは状態の症状もしくは原因を低減もしくは回避する、または別の治療剤の治療上の有効性を増強する量を包含し得る。
本明細書で使用される場合、および別段特定されなければ、化合物の「予防上有効な量」は、疾患、障害もしくは状態を、またはその疾患、障害もしくは状態と関連する1もしくはこれより多くの症状を防止する、あるいはその再発を防止するために十分な量である。化合物の予防上有効な量は、治療剤の、単独または他の薬剤との組み合わせでの量を意味し、これは、その疾患、障害もしくは状態の防止において予防上の利益を提供する。用語「予防上有効な量」は、予防全体を改善する、または別の予防的薬剤の予防上の有効性を増強する量を包含し得る。
組成物
化合物
本発明は、神経ステロイドの異性体的に純粋な形態を有する組成物を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明は、式(I)の化合物:
Figure 2022552788000005
の異性体的に純粋な形態を含む薬学的組成物を提供する。
上記組成物は、化学的に純粋であり得る、すなわち、他の分子もしくは化学種を含まない可能性がある。例えば、上記他の分子または化学種は、別個の化学式、構造式、実験式、分子式、または示性式を有し得る。上記組成物は、規定されたレベルの化学的純度を有し得る。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物および1またはこれより多くの別個の分子または化学種を含む混合物の総量のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%で存在し得る。
上記組成物は、異性体純度の任意のレベルで式(I)の化合物を含み得る。すなわち、上記組成物は、上記化合物の異性体形態に関連するレベルで式(I)の化合物を含み得る。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物およびその異性体を含む異性体分子の総量のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%で存在し得る。
上記組成物は、全ての異性体に関して異性体的に純粋であり得る。上記組成物は、異性体の1またはこれより多くの特定のタイプに関して異性体的に純粋であり得る。上記組成物は、構造異性体を、または構造異性体の特定のタイプ(例えば、位置異性体)を実質的に含まない可能性がある。上記組成物は、立体異性体または立体異性体の特定のタイプ(たとえば、エナンチオマーまたはジアステレオマー)を実質的に含まない可能性がある。
上記組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δ GABAレセプターの優先的調節を達成するために異性体純度の任意のレベルで式(I)の化合物を含み得る。例えば、式(I)の化合物は、式(I)の化合物およびその異性体を含む異性体分子の総量のうちの少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.6重量%、少なくとも99.7重量%、少なくとも99.8重量%、または少なくとも99.9重量%で存在し得る。
上記組成物は、式(I)の化合物を含み得、立体異性体を実質的に含まない可能性がある。上記立体異性体は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、または8個のキラル中心において、式(I)とは異なり得る。上記立体異性体は、ジアステレオマーまたはエナンチオマーであり得る。例えば、上記立体異性体は、式(II)または(III)の化合物:
Figure 2022552788000006
であり得る。
上記組成物は、式(I)の化合物および1またはこれより多くのその立体異性体の合計のうちの5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満で式(I)の化合物の1またはこれより多くの立体異性体(例えば、式(II)または(III)の化合物)を含み得る。上記組成物は、少なくとも19:1、20:1、25:1、30:1、40:1、50:1、100:1、200:1、500:1、または1000:1の比において、式(I)の化合物および1またはこれより多くのその立体異性体を含み得る。
製剤
本発明は、上記の化合物のうちの1またはこれより多くを含む薬学的組成物を提供する。上記化合物を含む薬学的組成物は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、迅速溶解物(fast-melt)、水性もしくは油性の懸濁物、分散性の散剤もしくは粒剤、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセル剤、シロップ剤もしくはエリキシル剤としての経口使用に適した形態にあり得る。経口使用が意図された組成物は、薬学的組成物の製造のために当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、薬学的に洗練されかつ口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤から選択される1またはこれより多くの作用物質を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合した状態で上記化合物を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシア)、ならびに滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)であり得る。上記錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、それらは、胃での崩壊を遅らせ、かつ消化管下部での吸収を遅らせ、それによって、より長期間にわたる持続作用を提供するために、公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル)が使用され得る。それらはまた、制御放出のための治療用浸透圧錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号;同第4,166,452号;および同第4,265,874号(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される技術によってコーティングされ得る。化合物の調製および投与は、米国特許第6,214,841号および米国特許公開第2003/0232877号(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)において考察される。
経口使用のための製剤はまた、上記化合物が不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合される硬質ゼラチンカプセル剤として、または上記化合物が水または油媒体(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合される軟質ゼラチンカプセル剤として提示され得る。
代替の経口製剤は、上記化合物の消化管による加水分解の制御が求められる場合、本発明の化合物が腸溶性コーティングの中に被包される制御放出製剤を使用して達成され得る。
水性懸濁物は、上記化合物を、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合した状態で含み得る。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアカシアガム);分散剤または湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド、例えば、レシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステルとの(例えば、ポリオキシエチレンと脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステルとの)縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)である。上記水性懸濁物はまた、1またはこれより多くの保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピル)、1またはこれより多くの着色剤、1またはこれより多くの矯味矯臭剤、および1またはこれより多くの甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)を含み得る。
油性懸濁物は、上記化合物を、植物性油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油)中に、または鉱油(例えば、流動パラフィン)中に懸濁することによって製剤化され得る。上記油性懸濁物は、増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、上記のもの)および矯味矯臭剤は、口当たりのよい経口調製物を提供するために添加され得る。それらの組成物は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存され得る。
水の添加による水性懸濁物の調製に適した分散性の散剤および粒剤は、上記化合物を、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1もしくはこれより多くの保存剤と混合した状態で提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤が例示され、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤、および着色剤もまた、存在し得る。
本発明の薬学的組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態にあり得る。その油相は、植物性油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)、または鉱油(例えば、流動パラフィンまたはこれらの混合物)であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムまたはトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られるエステルまたは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオエレエート)および上記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロース)とともに製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑薬、保存剤、ならびに矯味矯臭および/または着色用の作用物質を含み得る。上記薬学的組成物は、無菌の注射用水性または油性懸濁物の形態にあり得る。この懸濁物は、上で言及されている適切なそれら分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知技術に従って製剤化され得る。無菌の注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の無菌注射用液剤または懸濁物中に(例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤として)存在し得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来どおり使用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激の不揮発性油が使用され得る。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射剤の調製における使用が見出される。
ある特定の実施形態において、上記製剤は、持続放出製剤ではない。ある特定の実施形態において、上記製剤は、注射剤ではない。ある特定の実施形態において、上記製剤は、10ミクロン未満のD50(容積加重メジアン直径(volume weighted median diameter))を有する粒子を含まない。ある特定の実施形態において、上記製剤は、ポリマー表面安定化剤を含まない。ある特定の実施形態において、上記製剤は、水性懸濁物ではない。
上記組成物は、特定の機序による投与のために製剤化され得る。上記組成物は、経口、静脈内、経腸、非経口、皮膚、口内、局所、鼻、または肺投与のために製剤化され得る。上記組成物は、注射によるか、または移植用医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)上での投与のために製剤化され得る。
上記組成物は、単一の1日投与量として製剤化され得る。上記組成物は、複数の1日投与量(例えば、2、3、4、5、6またはこれより多くの1日投与量)のために製剤化され得る。
上記組成物は、任意の投与スケジュールに従って、被験体に提供され得る。上記組成物は、1日あたり1回提供され得る。上記組成物は、1日あたり複数回提供され得る。上記組成物は、1日あたり2回、3回、4回、5回、6回、またはこれより多く提供され得る。
GABAレセプター障害の処置
本発明の組成物は、GABAレセプターの活性の変化と関連するか、またはその変化によって改善され得る障害を処置するために有用である。GABAレセプターは、GABAの結合の際にClイオンが形質膜を通過することを選択的に可能にするリガンド開口型イオンチャネル(ligand-gated ion channel)である。GABAレセプターは、中枢神経系(CNS)全体を通してニューロンにおいて発現され、CNSにおけるGABAの生理学的活性の大部分を媒介する。ニューロン内に、GABAレセプターのタイプおよび密度は、細胞体と樹状突起との間で変動し得る。GABAレセプターは、他の組織(ライディッヒ細胞、胎盤、免疫細胞、肝臓、骨端軟骨板、および他の内分泌組織が挙げられる)においても発現される。CNSの他に、GABAレセプターは、細胞増殖および免疫応答を調節し得る。
構造的には、GABAレセプターは、5つのポリペプチドサブユニットを含むペンタマーである。上記ポリペプチドサブユニットは、配列類似性に基づいて、以下のとおりにグループ分けされた19の遺伝子によってコードされる:α(1~6)、β(1~3)、γ(1~3)、δ、ε、θ、π、およびρ(1~3)。大部分のサブタイプは、αサブユニットのうちの1つのタイプの2コピー、βサブユニットのうちの1つのタイプの2コピー、およびγ、δ、θ、またはπサブユニットのうちの1タイプの1コピーを含むヘテロペンタマーである;他のサブタイプは、ρサブユニットのホモペンタマーまたはヘテロペンタマーである。GABAレセプターの公知のサブタイプとしては、α1β1γ2、α1β2γ2、α1β3γ2、α2β1γ2、α2β2γ2、α2β3γ2、α3β1γ2、α3β2γ2、α3β3γ2、α4β1γ2、α4β3δ、α4β3γ2、α5β1γ2、α5β2γ2、α5β3γ2、α6β1γ2、α6β2γ2、およびα6β3γ2が挙げられる。GABAレセプターサブタイプは、組織タイプおよびCNSの解剖学的領域の間で変動し、サブタイプは、特異的機能と関連し得る。さらに、GABAレセプターサブタイプは、同じ組織タイプの正常細胞と悪性細胞との間で変動し得る。
GABAレセプターの活性部位は、GABAのおよび薬物(例えば、ムシモール、ガボキサドール(gaboxadol)、およびビククリン)の結合部位である。GABAレセプターはまた、他の薬物(ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン、神経活性ステロイド、バルビツレート、エタノール、吸入麻酔薬、およびピクロトキシンが挙げられる)の標的であるいくつかのアロステリック結合部位を有する。従って、GABAレセプターの活性は、活性部位およびアロステリック結合部位の両方への分子の結合によって制御される。GABAレセプターの構造、機能、および調節は、当該分野で公知であり、例えば、Sigel E., and Steinmann, M.E., Structure, Function, and Modulation of GABA Receptors, J. Biol. Chem. 287:48 pp. 40224-402311 (2012), doi: 10.1074/jbc.R112.386664(これらの内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される。
本発明の異性体的に純粋な組成物は、選択されたGABAレセプターサブタイプの活性を優先的に増強する。本発明の組成物は、1またはこれより多くのGABAレセプターサブタイプに対して、1またはこれより多くのGABAレセプターサブタイプ(例えば、上で記載されるもの)の活性を優先的に増強し得る。ある特定の実施形態において、上記組成物は、α1β2γ2レセプターと比較して、α4β3δレセプターの活性を優先的に増強し得る。
本発明の組成物は、任意の機序によって1またはこれより多くのGABAレセプターを増強し得る。例えば、および限定なしに、化合物の異性体的に純粋な形態は、アロステリック調節、活性化または阻害によって、GABAレセプターを増強し得る。上記アロステリック調節は、正であっても負であってもよい。
1またはこれより多くの他のGABAレセプターと比較した、1またはこれより多くのGABAレセプターに対する組成物の優先的な活性は、任意の適切な手段によって測定され得る。活性は、インビトロアッセイまたはインビボアッセイを使用して測定され得る。例えば、および限定なしに、GABAレセプター活性に対する調節因子の効果を測定する方法としては、抗痙攣アッセイ(anticonvulsant assay)、結合アッセイ、蛍光膜電位アッセイ、免疫応答アッセイ、頭蓋内自己刺激アッセイ、パッチクランプアッセイ、増殖アッセイ、レセプター占有アッセイ、発作誘導アッセイ(例えば、ペンチレンテトラゾール(PTZ)または最大電気ショック(MES)を使用する)、および生存アッセイが挙げられる。このようなアッセイは、当該分野で公知であり、例えば、国際公開番号WO 2016/061527; Ghisdal P.ら, Determining the relative efficacy of positive allosteric modulators of the GABA receptor: design of a screening approach, J Biomol Screen. 2014 Mar;19(3):462-7. doi: 10.1177/1087057113501555, Epub 2013 Aug 29; Tian J.ら, Clinically applicable GABA receptor positive allosteric modulators promote β-cell replication, Sci Rep. 2017 Mar 23;7(1):374. doi: 10.1038/s41598-017-00515-y;およびTian J.ら, A Clinically Applicable Positive Allosteric Modulator of GABA Receptors Promotes Human β-Cell Replication and Survival as well as GABA’s Ability to Inhibit Inflammatory T Cells, J Diabetes Res. 2019 Feb 26;2019:5783545, doi: 10.1155/2019/5783545(これらの各々の内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される。
1またはこれより多くの他のGABAレセプターと比較した、1またはこれより多くのGABAレセプターに対する組成物の優先的活性は、任意の適切な手段によって表現され得る。例えば、および限定なしに、優先的活性は、EC50値または結合親和性値の比較によって示され得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50より低いα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有する。α4β3δ GABAレセプターに関するEC50は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50の約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8、約1/10、約1/20、約1/50、約1/100、約1/200、約1/500または約1/1000であり得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに関するEC50の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、または約0.1%未満であるα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性より低いα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性(これは、例えば、解離定数Kとして表され得る)を有する。α4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性の約1/2、約1/3、約1/4、約1/5、約1/6、約1/7、約1/8、約1/10、約1/20、約1/50、約1/100、約1/200、約1/500または約1/1000であり得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、α1β2γ2 GABAレセプターに対する結合親和性の約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、または約0.1%未満であるα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性を有する。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、規定された値を下回るα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有する。例えば、および限定なしに、上記組成物は、約1μM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2.5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、または約0.1nM未満のα4β3δ GABAレセプターに関するEC50を有し得る。
ある特定の実施形態において、本発明の組成物は、規定された値を下回るα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性を有する。例えば、および限定なしに、上記組成物は、約1μM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約50nM未満、約25nM未満、約10nM未満、約5nM未満、約2.5nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.25nM未満、または約0.1nM未満のα4β3δ GABAレセプターに対する結合親和性を有し得る。
本発明の組成物および方法は、GABA障害の処置に有効であり得る。GABA障害は、GABAレセプター機能の変化と関連する任意の疾患、障害、もしくは状態であり得るか、または任意の障害は、GABAレセプター機能の変化によって改善され得る疾患、障害、もしくは状態であり得る。GABA障害は、急性疼痛、嗜癖障害、アルツハイマー病、アンジェルマン症候群、反社会性パーソナリティ障害、不安障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意障害、聴覚障害、自閉症、自閉症スペクトラム障害、双極性障害、慢性疼痛、認知障害、強迫障害、痙攣性障害、認知症、うつ病、気分変調、てんかん障害、本態性振戦、てんかん発生、脆弱X症候群、全般性不安障害(GAD)、ハンチントン病、傷害関連疼痛症候群、不眠症、虚血、レビー小体型認知症、記憶障害、片頭痛、気分障害、運動障害、神経変性疾患、神経障害性疼痛、強迫性障害、疼痛、パニック障害、パーキンソン病、パーソナリティ障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、精神病、レット症候群、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害、発作性障害、睡眠障害、社会不安障害、てんかん重積状態、ストレス、脳卒中、耳鳴り、外傷性脳傷害(TBI)、血管疾患、血管奇形、血管型認知症運動障害、ウイルソン病、または離脱症候群であり得る。
被験体を処置する方法は、本発明の組成物(上記のとおり)を上記被験体に提供する工程を包含する。提供する工程は、上記組成物を上記被験体に投与する工程を包含し得る。上記組成物は、任意の適切な手段によって(例えば、経口的に、静脈内に、経腸的に、非経口的に、皮膚に、口内に、局所的に(経皮的に、が挙げられる)、注射によって、鼻に、肺に、および移植可能な医療デバイス(例えば、ステントもしくは薬物溶離ステントまたはバルーン等価物)とともにもしくはその医療デバイス上に、投与され得る。好ましくは、上記組成物は、経口的に提供される。
上記組成物は、任意の適切な投与レジメンの下で提供され得る。例えば、上記組成物は、単一の用量としてまたは複数の用量において提供され得る。複数の用量は、間隔を隔てて(例えば、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、2日間、3日間、4日間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間、またはより長い)提供され得る。複数の用量は、一定期間内に提供され得る。例えば、複数の用量は、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、1週間、2週間、3週間、4週間、またはこれより長い期間にわたって提供され得る。上記組成物は、特定の持続期間にわたって反復して提供され得る。例えば、および限定なしに、上記組成物は、1週間、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、12週間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、8ヶ月間、10ヶ月間、12ヶ月間またはより長く提供され得る。
実施例1
CV-10155およびSPNC-019が、異なるGABAのGABAレセプターの活性を調節する能力を分析した。CV-10155およびSPNC-019は、以下の構造:
Figure 2022552788000007
を有する。
示されるGABAレセプターサブタイプを発現する細胞を、種々の濃度のCV-10155またはSPNC-019いずれかの存在下でγ-アミノ酪酸に曝し、カルシウムフラックスを、蛍光イメージングプレートリーダー(FLIPR)を使用して測定し、化合物のEC50値を決定した。結果を表1に提供する。
Figure 2022552788000008
CV-10155は、試験したGABAレセプターサブタイプの全てにおいてある程度のレベルの正のアロステリック調節活性を示した。対照的に、SPNC-019は、試験した18種のGABAレセプターサブタイプのうちの15種において調節活性を有しなかった。CV-10155とSPNC-019との間の唯一の構造上の差異は、ステロイドコアの3位における炭素に結合したヒドロキシル基およびメチル基の立体化学的配置である。従って、結果は、ステロイドベースの化合物の単一のキラル中心の立体化学における変化が、その分子がGABAレセプター活性を調節する能力を劇的に変化させることを示す。結果はさらに、神経ステロイド組成物の異性体純度が、治療剤としてのこのような組成物の有用性に大きく影響することを示す。
実施例2
種々の神経ステロイドが、t-ブチルビシクロホスホロチオネート(TBPS)(GABAレセプターのピクロトキシン結合部位のリガンド)と競合する能力を、国際公開番号WO 2016/061527において分析した(WO 2016/061527、第215~227頁)。ラット脳の皮質から単離した膜におけるGABAレセプターへの結合に関して化合物をアッセイした(WO 2016/061527、第216頁)。
分析した神経ステロイドの中で、化合物10は、以下の構造:
Figure 2022552788000009
を有する。
WO 2016/061527、第106頁。化合物10は、式(II)の構造と同一であり、式(I)の構造の立体異性体である。化合物10/式(II)および式(I)は、5位における炭素原子に結合した水素原子の配置においてのみ異なる立体異性体である:化合物10/式(II)は、5β配置を有するのに対して、式(I)は、5α配置を有する。
WO 2016/061527において分析した別の神経ステロイドは、化合物121であった。これは、以下の構造:
Figure 2022552788000010
を有する。
WO 2016/061527、第150頁。化合物121は、式(I)の構造の位置異性体である。化合物121および式(I)は、ピラゾール環上のシアノ置換基の位置決めにおいてのみ異なる:化合物121は、ピラゾール環の3位において置換されるのに対して、式(I)は、ピラゾール環の4位において置換される。
化合物10および化合物121は、2つの構造上の差異:炭素5における立体化学的配置、およびピラゾール環上でのシアノ置換基の位置を有する異性体である。
上記分析の結果は、WO 2016/061527の表1に提供される。WO 2016/061527、第217~227頁。化合物10は、TBPS置換アッセイ(TBPS displacement assay)において<10nMのIC50を有するのに対して、化合物121は、10~50nMのIC50を有する。WO 2016/061527、第217頁および第221頁。
これらの結果は、神経ステロイドにおけるわずかな構造上の差異が、GABAレセプターへの分子の結合に劇的に影響を及ぼし得ることを示す。
実施例3
α1β2γ2 GABAレセプターおよびα4β3δ GABAレセプターに関する種々の神経ステロイドの薬理学的有効性を、国際公開番号WO 2016/061527において分析した。WO 2016/061527、第227~231頁。化合物を、α1β2γ2 サブユニットで安定してトランスフェクトされたLTK細胞において、およびα4β3δ サブユニットで一過性にトランスフェクトしたCHO細胞において、最大未満の用量のアゴニストで、GABA媒介性電流を調節する能力に関して試験した。WO 2016/061527、第227~228頁。細胞を、2μM(これは、GABAについてのEC20である)のGABA、および0.01μM、0.1μM、1μM、または10μMの神経ステロイドとともにインキュベートした。WO 2016/061527、第227~228頁。
分析の結果を、WO 2016/061527の表2に提供する。WO 2016/061527、第229~231頁。結果を、神経ステロイドの非存在下でのGABA媒介性コンダクタンスと比較して、10μMの神経ステロイドの存在下でのGABA媒介性コンダクタンスの相対的増強として示す。WO 2016/061527、第228頁。10μMの化合物121は、α1β2γ2 GABAレセプターおよびα4β3δ GABAレセプターの両方に関して>500%という有効性を示した。WO 2016/061527、第229頁。
結果は、式(I)の位置異性体が、α1β2γ2 GABAレセプターに対してα4β3δ GABAレセプターの優先的調節を示さないことを示す。特に、ピラゾール環上のシアノ置換基の位置決めによってのみ式(I)とは異なる化合物は、これら2種のGABAレセプターサブタイプに対して匹敵する有効性を有する。従って、データは、式(I)の化合物を含む組成物が、α1β2γ2 GABAレセプターに対してα4β3δ GABAレセプターを優先的に調節し得ることも、このような組成物が、α4β3δ GABAレセプターを調節するが、α1β2γ2 GABAレセプターを調節しない濃度で投与され得ることも示さない。結論として、この結果からは、式(I)の化合物を含む組成物が、α1β2γ2 GABAレセプターの増強ではなくα4β3δ GABAレセプターの増強が有益である状態の処置に有用であることは何ら示唆されない。
対照的に、実施例1に提供されるデータは、式(I)の化合物が、α1β2γ2 GABAレセプターに関してよりもα4β3δ GABAレセプターに対して実質的により活性であることを示す。まとめると、この実施例における結果は、神経ステロイドにおけるわずかな構造上の差異が、その分子が、GABAレセプターの特異的サブタイプを増強する能力に影響を及ぼすことを実証する。従って、神経ステロイド組成物の異性体純度は、レセプターサブタイプ特異性に、従って、治療剤としてのこのような組成物の有用性に影響を及ぼし得るという結果になる。
援用の表示
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、学術雑誌、書籍、論文、ウェブコンテント)への言及および引用は、本開示全体を通じて行われている。全てのこのような文書は、全ての目的のためにそれらの全体において本明細書に参考として援用される。
均等物
本発明の種々の実施形態およびそれらの多くのさらなる実施形態は、本明細書に示されかつ記載されるものに加えて、本明細書で引用される科学文献および特許文献への言及を含め、この文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書における主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施に適合され得る重要な情報、例示、およびガイダンスを含む。

Claims (10)

  1. 式(I):
    Figure 2022552788000011
    の化合物の異性体的に純粋な形態を含む薬学的組成物であって、
    ここで前記式(I)の化合物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δ GABAレセプターを優先的に増強するのに治療上有効な量で存在する、組成物。
  2. 前記式(I)の化合物は、α1β2γ2 GABAレセプターと比較して、α4β3δ GABAレセプターを優先的に正に調節する、請求項1に記載の組成物。
  3. α4β3δ GABAレセプターに関する前記式(I)の化合物のEC50は、α1β2γ2 GABAレセプターに関する前記式(I)の化合物のEC50の50%未満である、請求項2に記載の組成物。
  4. α4β3δ GABAレセプターに関する前記式(I)の化合物のEC50は、α1β2γ2 GABAレセプターに関する前記式(I)の化合物のEC50の20%未満である、請求項3に記載の組成物。
  5. α4β3δ GABAレセプターに関する前記式(I)の化合物のEC50は、500nM未満である、請求項1に記載の組成物。
  6. 前記組成物は、GABA障害の処置に有効である、請求項1に記載の組成物。
  7. 前記GABA障害は、急性疼痛、嗜癖障害、アルツハイマー病、アンジェルマン症候群、反社会性パーソナリティ障害、不安障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、注意障害、聴覚障害、自閉症、自閉症スペクトラム障害、双極性障害、慢性疼痛、認知障害、強迫障害、痙攣性障害、認知症、うつ病、気分変調、てんかん障害、本態性振戦、てんかん発生、脆弱X症候群、全般性不安障害(GAD)、ハンチントン病、傷害関連疼痛症候群、不眠症、虚血、レビー小体型認知症、記憶障害、片頭痛、気分障害、運動障害、神経変性疾患、神経障害性疼痛、強迫性障害、疼痛、パニック障害、パーキンソン病、パーソナリティ障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、精神病、レット症候群、統合失調感情障害、統合失調症、統合失調症スペクトラム障害、発作性障害、睡眠障害、社会不安障害、てんかん重積状態、ストレス、脳卒中、耳鳴り、外傷性脳傷害(TBI)、血管疾患、血管奇形、血管型認知症運動障害、ウイルソン病、および離脱症候群からなる群より選択される、請求項6に記載の組成物。
  8. 前記GABA障害は、てんかん障害、てんかん発生、または発作性障害である、請求項7に記載の組成物。
  9. 前記組成物は、経口投与のために製剤化される、請求項1に記載の組成物。
  10. 前記組成物は、単一の1日投与量として製剤化される、請求項1に記載の組成物。
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