JP2022550312A - Fxrアゴニストの使用を含む処置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の処置のためのFXRアゴニストを提供する。

Description

本発明は、ミトコンドリア機能不全と関連する(例えば、ミトコンドリア機能不全が主な機序である)状態又は疾患を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を投与することを含む方法に関する。さらに、本発明は、そのような疾患又は障害を処置するか又は予防するためのファルネソイドX受容体アゴニスト(FXRアゴニスト、例えばトロピフェクサー)の使用を対象とする。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、欧米諸国においては慢性肝疾患の最多の原因である。NAFLDのより深刻な形態である非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、ここ数十年にわたり有病率が増加している世界的な問題である。ミトコンドリアの酸化的機能不全は、NASHの発症及び進行の中心的役割を果たす。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)で始まるNAFLの非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)への進行は、肝内炎症を伴う。この過程は、異形症、結晶封入、及びミトコンドリアDNAの変異量の増加を伴う。
より一般的には、ミトコンドリアの健康を最適化することは、あらゆる疾患の処置に有利である。ミトコンドリアの原発性機能不全により、進行性の筋肉及び神経の変性が引き起こされる。肝ミトコンドリアを含むミトコンドリアの全身性損失により、2型糖尿病へと進行する高脂血症、高血圧、及びインスリン抵抗性が引き起こされ得る。ミトコンドリア機能不全と関連する疾患若しくは状態、又はミトコンドリア性疾患は、軽度から重度までの一群の代謝異常であり、一部は致命的であり得る。
ミトコンドリア肝障害として、ミトコンドリア欠損が肝障害の主な原因である原発性障害と、非ミトコンドリアタンパク質に影響を及ぼす遺伝的欠損又はミトコンドリアへの後天的(外因性)損傷のいずれかによりミトコンドリアへの続発性傷害が引き起こされる、続発性障害とが挙げられる(Sokol RJ,Treem WR.Mitochondria and childhood liver diseases.J Pediatr GastroenterolNutr 1999;28:4-16)。ミトコンドリア肝障害における急性肝不全及び進行性肝疾患の処置として、内科的治療(例えば、ビタミン、補助因子、呼吸基質、又は抗酸化化合物)、及び肝移植が挙げられる。
しかしながら、ミトコンドリア性疾患の処置に使用される内科的治療は、有効であることが証明されていない。
FXRアゴニストであるトロピフェクサー(Tully et al,J Med Chem 2017;60:9960-9973を参照されたい)は、線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎の患者で現在試験されている(NCT02855164試験を参照されたい)。この化合物は、国際公開第2012/087519号パンフレット(実施例1、第125頁の表の化合物1-IB)で初めて開示されており、名称LJN452で既知であるか、又はその国際的非専売名であるトロピフェクサーで既知である。
ミトコンドリア機能不全が主な機序である状態又は疾患の処置オプションは、現在は限定されており、ミトコンドリア機能不全及び毒性と関連するこれらの状態の処置のための予防的アプローチ及び治療的アプローチが求められている。そのため、代謝要求の増加に反応してミトコンドリアの機能を刺激し、且つ1種又は複数種の組織においてミトコンドリアの枯渇を引き起こす薬剤又は状態に反応してミトコンドリア複製を誘発する処置が必要とされている。
本発明は、FXRアゴニスト(例えばトロピフェクサー)によるFXR活性化によりミトコンドリア機能不全が回復し得るという発見に部分的に関する。本発明はまた、FXRアゴニストが肝ミトコンドリア機能不全を回復させ得るという発見にも部分的に関する。
従って、本発明は、ミトコンドリア機能不全と関連する状態(例えばミトコンドリア性疾患)を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を投与することを含む方法を対象とする。そのような状態は、例えば、ファルネソイドX受容体(FXR)により媒介される状態であり得る。さらに、本発明は、そのような疾患又は障害の処置又は予防のためのファルネソイドX受容体アゴニスト(FXRアゴニスト、例えばトロピフェクサー)の使用を対象とする。
本発明はまた、ミトコンドリア機能不全と関連する状態(特に、肝疾患又は腸疾患)を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を投与することを含み、前記対象へのこのFXRアゴニストの投与によりミトコンドリア機能不全が回復し、例えば、肝細胞でのミトコンドリア機能不全が回復する、方法にも関する。
本発明は、ミトコンドリア機能不全と関連する状態(特に、肝疾患又は腸疾患)を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、トロピフェクサーとしても既知である、遊離形態の式
Figure 2022550312000001

のFXRアゴニスト(即ち、2-[(1R,3r,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸))、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのアミノ酸抱合体の治療的有効量を投与することを含み、前記対象へのこのFXRアゴニストの投与により肝ミトコンドリア機能不全が回復する、方法に関する。
本発明は、ミトコンドリア機能不全と関連する状態(例えば、肝損傷、腎臓虚血再灌流(kidney ischemia reperfusion)(I/R)損傷)を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、トロピフェクサーとしても既知である、遊離形態の式
Figure 2022550312000002

のFXRアゴニスト(即ち、2-[(1R,3r,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸))、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのアミノ酸抱合体の治療的有効量を投与することを含み、任意選択的に、前記対象へのFXRアゴニストの投与を夕刻に行なう、方法に関する。
本発明は、さらに、ミトコンドリア肝障害を処置するか、予防するか、又は寛解させる方法であって、必要な対象に、遊離形態の式
Figure 2022550312000003

のFXRアゴニスト(即ち、2-[(1R,3r,5S)-3-({5-シクロプロピル-3-[2-(トリフルオロメトキシ)フェニル]-1,2-オキサゾール-4-イル}メトキシ)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-8-イル]-4-フルオロ-1,3-ベンゾチアゾール-6-カルボン酸))、又はその薬学的に許容可能な塩、又はそのアミノ酸抱合体の治療的有効量を投与することを含み、任意選択的に、FXRアゴニストを夕刻に前記対象に投与する、方法に関する。
別の態様では、本発明は、投与が朝又は夕刻に行われる、少なくとも1つのFXRアゴニスト、例えばトロピフェクサーなど、を含有する新しい治療レジメンを提供する。本発明による少なくとも1つのFXRアゴニストの投与が夕刻に行われる、治療レジメンは、従来の治療レジメンを使用しているときに認められるそう痒及び/又は脂質異常(例えばLDLコレステロール上昇)などの副作用発生を低く抑えながら、高い治療有効性の利益をもたらす。これらの治療レジメンは、対象に対して好都合な1日1回投与をさらにもたらし、従って患者コンプライアンスを支援する。
本発明の更なる特徴及び利点は、本発明の下記の詳細な説明から明らかになるだろう。
図1は、トロピフェクサーが酸化ストレスを減少させ且つ抗酸化防御力を回復させることを示す。 図2は、トロピフェクサー処置により健康的なミトコンドリア機能が促進されることを示す。 図3は、NASHマウスにおけるトロピフェクサーによるミトコンドリア機能の回復の証拠(トロピフェクサーは切断型カスパーゼ3レベルを低下させ、抗アポトーシス遺伝子の発現はトロピフェクサー処置群で増加する)を示す。 図4は、トロピフェクサーによるFXRアゴニズムが、ミトコンドリアタンパク質の発現を増加させ、呼吸鎖機能、TCAサイクル、及びATP産生を改善することにより、NASHマウスにおける肝ミトコンドリア機能不全を消失させることを示す。 (上記の通り。)
必要な対象にFXRアゴニスト(例えばトロピフェクサー)を投与することによりミトコンドリア機能不全を回復させ得ることを発見している。FXRアゴニストは肝ミトコンドリア機能不全を回復させ得ることも発見している。従って、本発明に係るFXRアゴニストを、ミトコンドリア機能不全が主要な機序である状態を処置するか又は予防するのに使用し得る。
「ミトコンドリア機能不全」という用語は、様々な生理的条件下でのミトコンドリア含有量、ミトコンドリア活性、及び/又は準最大のADP刺激酸化的リン酸化のいずれかの変化を説明するために頻繁に用いられている。より一般的には、ミトコンドリアの健康を最適化することは、あらゆる疾患の処置に有利である。肝ミトコンドリアを含むミトコンドリアの全身性損失により、2型糖尿病へと進行する高脂血症、高血圧、及びインスリン抵抗性が引き起こされ得る。肝ミトコンドリアは、フルクトース取り込みにより損傷を受ける。フルクトース、尿酸、及び肝ミトコンドリアに有害な他の薬剤は、細胞内脂質(特に、脂肪肝症候群の一因となるトリグリセリド)の蓄積を引き起こし、全身性脂質異常症の一因となるトリグリセリドの合成及び輸送の増加を引き起こし、最終的には肥満及びインスリン抵抗性を引き起こす可能性がある。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)で始まるNAFLの非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)への進行は、肝内炎症を伴う。この過程は、異形症、結晶封入、及びミトコンドリアDNAの変異量の増加を伴う。
虚血及び虚血/再灌流傷害は、ミトコンドリアの機能及び数の減少を伴い、アポトーシス細胞死、壊死、並びに心筋梗塞及び脳卒中等の虚血状態での臓器機能低下が引き起こされる。そのような状態の診断及び処置での相当な進歩にもかかわらず、この状態の処置のための予防的アプローチ及び治療的アプローチが依然として必要とされている。急性腎傷害(AKI)は、大きな心臓手術を受けている患者、腎毒性薬物を投与されている患者、及び出血、脱水、又は敗血症性ショックを経験している患者でよく見られる合併症である。炎症及び酸化ストレスは両方とも、腎臓虚血再灌流(I/R)傷害中での組織破壊に重要である。
ミトコンドリア肝障害は、Sokol RJ,Treem WR.Mitochondria and childhood liver diseases.J Pediatr GastroenterolNutr 1999;28:4-16で開示されているように複数の疾患を指し、下記が挙げられる:(i)ミトコンドリア欠損が肝障害の主な原因である原発性ミトコンドリア肝障害、及び(ii)非ミトコンドリアタンパク質に影響を及ぼす遺伝的欠損又はミトコンドリアへの後天的(外因性)損傷のいずれかによりミトコンドリアへの続発性傷害が引き起こされる、続発性ミトコンドリア肝障害。
原発性ミトコンドリア肝障害として下記が挙げられるが、これらに限定されない。
a)電子伝達(呼吸鎖)欠損:新生児肝不全(複合体I欠乏症、複合体IV欠乏症(SCO1変異)、複合体III欠乏症(BCS1L変異)、多重複合体欠乏症)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(DGUOK変異、MPV17変異、及びPOLG変異)、遅発性肝不全(Alpers-Huttenlocher症候群(POLG変異))、Pearson marrow-pancreas症候群(ミトコンドリアDNA欠損)、ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(TP変異)、肝障害を伴う慢性下痢(絨毛萎縮)(複合体III欠乏症)、Navajo神経肝症(ミトコンドリアDNA枯渇;MPV17変異)、電子伝達フラビンタンパク質(ETF)及びETF-デヒドロゲナーゼ欠乏症;
b)脂肪酸の酸化及び輸送欠損:長鎖ヒドロキシアシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ欠乏症、妊娠の急性脂肪肝(長鎖ヒドロキシアシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ酵素変異)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI及びII欠乏症、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ欠乏症、脂肪酸輸送欠損;
c)ミトコンドリア翻訳プロセスの障害;
d)尿素サイクル酵素欠乏症;
e)ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠乏症(ミトコンドリア性)。
続発性ミトコンドリア肝障害として、ライ症候群、ウィルソン病、バルプロ酸肝毒性、及びヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の効果が挙げられるが、これらに限定されない。
ミトコンドリア機能不全は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の発症に関与しており、且つNAFLDから非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)への進行の一因となっている。状態の発病過程での基本となる細胞内小器官(例えばミトコンドリア)を標的として、ミトコンドリアの機能及びエネルギー供給と、脂質代謝の制御因子との両方に作用し得る新規の治療的適応(例えば、本明細書で開示されているFXRアゴニスト)は、ミトコンドリア機能不全が主要な機序である疾患又は状態の有効な処置を提供するだろう。
様々な(列挙される)本発明の実施形態が本明細書中に記載される。本開示のさらなる実施形態を提供するために、各実施形態で特定される特性が他の特定される特性と組み合わせられ得ることが認められる。
実施形態(a)
1a:ミトコンドリア機能不全と関連する状態の処置又は予防での使用のためのFXRアゴニストであって、このFXRアゴニストを、治療的有効用量で必要な対象に投与する、FXRアゴニスト。
2a.ミトコンドリア機能不全と関連する状態の処置又は予防での使用のためのFXRアゴニストであって、この状態は、ファルネソイドX受容体(FXR)により媒介され、FXRアゴニストを、治療的有効用量で必要な対象に投与する、FXRアゴニスト。
3a.状態は、ミトコンドリア性疾患であり、例えば、神経変性疾患;循環器疾患;糖尿病及びメタボリックシンドローム;自己免疫疾患;神経行動学的疾患及び精神疾患;胃腸障害;疲労性疾病(fatiguing illness);筋骨格系疾患;がん;慢性感染症;並びに腎臓の損傷及び疾患からなる群から選択される任意の状態であり、任意選択的に、状態は、急性腎損傷、高脂血症、高血圧、インスリン耐性、及び2型糖尿病からなる群から選択される任意の状態である、実施形態1a又は2aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
4a.ミトコンドリア肝障害の処置又は予防での使用のためのFXRアゴニストであって、このFXRアゴニストを、治療的有効用量で投与する、FXRアゴニスト。
5a.ミトコンドリア肝障害は、原発性ミトコンドリア肝障害である、実施形態4aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
6a.原発性ミトコンドリア肝障害は、
a)電子伝達(呼吸鎖)欠損:新生児肝不全(複合体I欠乏症、複合体IV欠乏症(SCO1変異)、複合体III欠乏症(BCS1L変異)、多重複合体欠乏症)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群(DGUOK変異、MPV17変異、及びPOLG変異)、遅発性肝不全(Alpers-Huttenlocher症候群(POLG変異))、Pearson marrow-pancreas症候群(ミトコンドリアDNA欠損)、ミトコンドリア神経性胃腸管系脳筋症(TP変異)、肝障害を伴う慢性下痢(絨毛萎縮)(複合体III欠乏症)、Navajo神経肝症(ミトコンドリアDNA枯渇;MPV17変異)、電子伝達フラビンタンパク質(ETF)及びETF-デヒドロゲナーゼ欠乏症;
b)脂肪酸の酸化及び輸送欠損:長鎖ヒドロキシアシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ欠乏症、妊娠の急性脂肪肝(長鎖ヒドロキシアシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ酵素変異)、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI及びII欠乏症、カルニチン-アシルカルニチントランスロカーゼ欠乏症、脂肪酸輸送欠損;
c)ミトコンドリア翻訳プロセスの障害;
d)尿素サイクル酵素欠乏症;
e)ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠乏症(ミトコンドリア性)
からなる群から選択される、実施形態5aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
7a.ミトコンドリア肝障害は、続発性トコンドリア肝障害である、実施形態4aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
8a.続発性ミトコンドリア肝障害は、ライ症候群、ウィルソン病、バルプロ酸肝毒性、及びヌクレオシド逆転写酵素阻害剤の効果からなる群から選択される、実施形態7aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
9a.FXRアゴニストを、治療的有効用量で1日1回前記対象に投与し、FXRアゴニストを夕刻に投与する、実施形態1a~8aのいずれか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
10a.FXRアゴニストは、トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー(nidufexor)、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266、及びMET409から選択される、実施形態1a~9aのいずれか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
11a.FXRアゴニストは、トロピフェクサーである、実施形態1a~10aのいずれか1つに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
12a.トロピフェクサーを、治療的有効用量で1日1回前記対象に投与する、実施形態11aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
13a.トロピフェクサーを、約30μg~約250μg(例えば約60μg~約200μg、例えば約90μg~約140μg)の用量で1日1回前記対象に投与する、実施形態11aに記載の使用のためのFXRアゴニスト。
14a.ミトコンドリア機能不全と関連する状態(例えばミトコンドリア性疾患)の処置又は予防での使用のための例えば遊離形態のトロピフェクサー、又はその塩、又はそのアミノ酸抱合体であって、トロピフェクサーを、治療的有効用量で1日1回、必要な対象に投与する、トロピフェクサー。
15a.ミトコンドリア機能不全と関連する状態(例えばミトコンドリア性疾患)の処置又は予防での使用のための例えば遊離形態のトロピフェクサー、又はその塩、又はそのアミノ酸抱合体であって、トロピフェクサーを、約30μg~約250μg(例えば約60μg~約200μg、例えば約90μg~約140μg)の用量で1日1回、必要な対象に投与する、トロピフェクサー。
実施形態(b):
1b.必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の処置の方法であって、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む方法。
2b.必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の予防の方法であって、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む方法。
3b.必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患の処置又は予防の方法であって、この状態又は疾患は、ファルネソイドX受容体(FXR)により媒介され、この方法は、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む、方法。
4b.FXRアゴニストが、トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266及びMET409から選択される、実施形態1b及び2bの何れか1つに記載の方法。
5b.FXRアゴニストがオベチコール酸である、実施形態4bに記載の方法。
6b.オベチコール酸が、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg又は約50mgの1日用量で投与される、実施形態5bに記載の方法。
7b.FXRアゴニストがトロピフェクサーである、実施形態7bに記載の方法。
8b.トロピフェクサーが、約90μg~約250μg、例えば約140μg~約200μgの1日用量で投与される、実施形態6bに記載の方法。
実施形態(c):
1c.必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患の処置又は予防での使用のための、FXRアゴニスト又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物であって、少なくとも1種のFXRアゴニストの治療的有効量を含み、この医薬組成物を1日1回投与する、医薬組成物。
2c.実施形態1a~15aのいずれか1つに記載の使用のためのFXRアゴニストと、少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物。
実施形態(d):
1d.ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の処置のための医薬品の製造のための、実施形態1a~15aのいずれか1つで定義されているFXRアゴニスト又はその薬学的に許容可能な塩の使用。
2d.ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の処置又は予防のための医薬品の製造におけるトロピフェクサーの使用であって、トロピフェクサーを、約90μg~約250μg、約140μg~約200μgの1日用量で1日1回投与し、トロピフェクサーを夕刻に投与する、使用。
実施形態(e):
1e.ファルネソイドX受容体(FXR)により媒介される状態(特に、肝疾患又は腸疾患)の処置のための医薬品の製造のための、実施形態1a~15aのいずれか1つに記載のFXRアゴニスト又はその薬学的に許容可能な塩と、少なくとも1種の薬学的に許容可能な添加剤とを含む医薬組成物の使用。
ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患(例えばミトコンドリア性疾患)の処置又は予防のための、上記で列挙された実施形態の内のいずれか1つに記載のFXRアゴニスト、方法、医薬組成物、又は使用。
上記で列挙された実施形態の内のいずれか1つに記載のFXRアゴニスト、方法、医薬組成物、又は使用であって、ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患は、神経変性疾患;循環器疾患;糖尿病及びメタボリックシンドローム;自己免疫疾患;神経行動学的疾患及び精神疾患;胃腸障害;疲労性疾病;筋骨格系疾患;がん;慢性感染症;並びに腎臓の損傷及び疾患から選択される、FXRアゴニスト、方法、医薬組成物、又は使用。
トロピフェクサーを、約30μg~約250μg(例えば約60μg~約200μg)の用量(例えば1日用量)で投与する。
オベチコール酸を、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、又は約50mgの1日用量で投与する。
ある特定の実施形態では、本明細書で開示されているのは、ミトコンドリア毒性を示す化合物の投与の有害作用を処置するか又は予防する方法であって、必要な対象への、本明細書で開示されている化合物の治療的有効量の投与を含む方法。この有害作用は、異常なミトコンドリア呼吸、異常な酸素消費、異常な細胞外酸性化速度、異常なミトコンドリア数、異常な乳酸塩蓄積、及び異常なATPレベルからなる群から選択される。
また別の態様では、薬学的な単位剤形組成物は、1日1回の経口投与に適切な約90μg、約140μg、約150μg、約160μg、約170μg、約180μg、約190μg、約200μg、約210μg、約220μg、約230μg、約240μg又は約250μgのトロピフェクサーを含む。このような単位剤形組成物は、液体、錠剤、カプセルから選択される形態であり得る。
定義
この明細書を解釈する目的のために、次の定義が適用され、適切な場合は常に、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆も成り立つ。
本明細書中で使用される場合、数値xに関する「約」という用語は、文脈から別段示されない限り、+/-10%を意味する。
本明細書中で使用される場合、「FXRアゴニスト」は、胆汁酸受容体(BAR)又はNR1H4(核内受容体サブファミリー1、グループH、メンバー4)受容体と呼ばれ得るファルネソイドX受容体(FXR)に結合し、それを活性化可能なあらゆる薬剤を指す。FXRアゴニストは、FXRのアゴニスト又は部分的アゴニストとして作用し得る。この薬剤は、例えば低分子、抗体又はタンパク質、好ましくは低分子であり得る。FXRアゴニストの活性は、いくつかの異なる方法により、例えばPellicciari,et al.Journal of Medicinal Chemistry,2002 vol.15,No.45:3569-72に記載のように蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)無細胞アッセイを使用してインビトロアッセイで測定され得る。
FXRアゴニストは、本明細書中で使用される場合、例えば国際公開第2016/096116号パンフレット、国際公開第2016/127924号パンフレット、国際公開第2017/218337号パンフレット、国際公開第2018/024224号パンフレット、国際公開2018/075207号パンフレット、国際公開第2018/133730号パンフレット、国際公開第2018/190643号パンフレット、国際公開第2018/214959号パンフレット、国際公開第2016/096115号パンフレット、国際公開第2017/118294号パンフレット、国際公開第2017/218397号パンフレット、国際公開第2018/059314号パンフレット、国際公開第2018/085148号パンフレット、国際公開第2019/007418号パンフレット、中国特許第109053751号明細書、中国特許第104513213号明細書、国際公開第2017/128896号パンフレット、国際公開第2017/189652号パンフレット、国際公開第2017/189663号パンフレット、国際公開第2017/189651号パンフレット、国際公開第2017/201150号パンフレット、国際公開第2017/201152号パンフレット、国際公開第2017/201155号パンフレット、国際公開第2018/067704号パンフレット、国際公開第2018/081285号パンフレット、国際公開第2018/039384号パンフレット、国際公開第2015/138986号パンフレット、国際公開第2017/078928号パンフレット、国際公開第2016/081918号パンフレット、国際公開第2016/103037号パンフレット、国際公開第2017/143134号パンフレットで開示される化合物を指す。
FXRアゴニストは、好ましくはトロピフェクサー、ニズフェクサー、オベチコール酸(6α-エチル-ケノデオキシコール酸)、シロフェクソール(GS-9674、Px-102)、
Figure 2022550312000004

から選択される。
本明細書中で使用される場合、「塩」という用語は、本発明の化合物の酸付加又は塩基付加塩を指す。「塩」は、特に「薬学的に許容可能な塩」を含み、両者は本明細書中で交換可能に使用され得る。
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容可能な」という用語は、有効成分の生物学的活性の有効性を実質的に妨害しない無毒性物質を意味する。
本明細書中で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、インビボで本発明の化合物に変換される化合物を指す。プロドラッグは活性又は不活性である。これは、対象へのプロドラッグ投与後、加水分解、代謝など、インビボでの生理学的作用を通じて、本発明の化合物になるように化学的に修飾されている。プロドラッグの作製及び使用に関与する適合性及び技術は当業者にとって周知である。適切なプロドラッグは薬学的に許容可能なエステル誘導体であることが多い。
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、関心のある状態(即ち疾患又は障害)に罹患している、処置から利益を得る、哺乳類生物、好ましくはヒト、例えば患者、を指す。
本明細書中で使用される場合、対象は、このような対象が生物学的に、医学的に又はクオリティーオブライフにおいてこのような処置から利益を得る場合、処置「を必要とする」。
本明細書中で使用される場合、任意の疾患又は障害を「処置する」、「処置すること」、又は「の処置」という用語は、一実施形態では、この疾患又は障害を寛解させること(即ち、この疾患、又はその臨床症状若しくは病理学的特徴の内の少なくとも1つの発症を遅延させること、停止させること、又は減少させること)を指す。別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、疾患の少なくとも1種の物理的パラメータ又は病理学的特徴(例えば、対象により認識され得ないもの)を緩和するか又は寛解させることを指す。さらに別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、物理的に(例えば、少なくとも1種の認識可能な若しくは認識不能な症状の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は両方のいずれかで、疾患又は障害を調節することを指す。さらに別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、疾患若しくは障害、又はこれらの関連する少なくとも1種の症状若しくは病理学的特徴の発症又は発生又は進行を予防するか又は遅延させることを指す。さらに別の実施形態では、「処置する」、「処置すること」、又は「処置」は、より進行した段階若しくはより深刻な状態(例えば肝硬変)への疾患の進行を予防するか若しくは遅延させることを指すか、又は肝移植の必要性を予防するか若しくは遅延させることを指す。
本明細書中で使用される場合、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)という用語は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFL)、非硬変性NASH、及び肝硬変を伴うNASHを指し得る。
本明細書中で使用される場合、疾患又は障害と関連する「予防する」、「予防すること」、又は「予防」という用語は、状態(例えば、特定の疾患若しくは障害又はこれらの臨床症状)を発症するリスクがある対象の予防的処置であって、この対象がこの状態を発症する確率を低下させる、予防的処置を指す。
本明細書中で使用される場合、「治療的有効量」という用語は、規定された効果を達成するために十分である化合物の量を指す。従って本明細書中の上で定義されるような肝疾患又は障害の処置又は予防のために使用される治療的有効量は、このような疾患又は障害の処置又は予防に十分な量である。
「治療レジメン」は、疾病の処置のパターン、例えば疾患又は障害の処置中に使用される投与のパターンを意味する。
本明細書中で使用される場合、「肝疾患又は障害」という用語は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、薬物誘発性胆管損傷、胆石、肝硬変、アルコール誘発性肝硬変、嚢胞性線維症関連肝疾患(CFLD)、胆管閉塞、胆石症及び肝線維症のうち1つ、複数又は全てを包含する。
本明細書中で使用される場合、NAFLDという用語は、疾患:脂肪肝、NASH、線維症及び肝硬変の様々なステージを包含し得る。
本明細書中で使用される場合、NASHという用語は、脂肪肝、肝細胞風船様腫大及び小葉の炎症を包含し得る。
本明細書中で使用される場合、「ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患」(例えばミトコンドリア性疾患)という用語は、ミトコンドリアの不全に起因しており且つミトコンドリア性疾患診断基準に従って診断されている状態又は疾患である。
本明細書中で使用される場合、「ミトコンドリア肝障害」という用語は、例えばSokol RJ,Treem WR.Mitochondria and childhood liver diseases.J Pediatr GastroenterolNutr 1999;28:4-16で開示されているような複数種の疾患を包含する。
本明細書中で定義される場合、「組み合わせ」は、1つの単位剤形(例えばカプセル、錠剤又はサシェ)中での固定された組み合わせ、自由な(即ち非固定の)組み合わせ又は組み合わせ投与のための部品キットの何れかを指し、FXRアゴニスト、例えばトロピフェクサーなど、及び1つ以上のさらなる治療剤が、同時に又はある時間間隔内に個別に独立して投与され得、特にこれらの時間間隔は、その組み合わせパートナーが、協調的な、例えば相乗的な効果を示すことを可能にする。
「医薬の組み合わせ」という用語は、本明細書中で使用される場合、複数の有効成分の組み合わせ(例えば混合)の結果生じる医薬組成物を意味し、有効成分の固定された組み合わせ及び自由な組み合わせの両方を含む。
本明細書中で使用される場合、「qd」という用語は、1日1回投与を意味する。
「用量」という用語は、1回に投与される薬物の指定量を指す。本明細書中で使用される場合、用量は、治療効果を誘発する薬物の量である。用量は、例えば製品パッケージ上又は製品情報リーフレット中で公表され得る。例えば、トロピフェクサーについて「用量」という用語は、トロピフェクサーと関連して使用される場合、遊離形態のトロピフェクサーの量である。トロピフェクサーは、塩又はアミノ酸抱合体の形態で存在し得るので、従って個々の塩形成物(例えば個々の酸)又はアミノ酸の量が添加されなければならない。
投与方式
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように処方され得る(例えば経口組成物は一般に不活性希釈剤又は食用担体を含む)。投与経路の他の非限定例としては、非経口(例えば静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与が挙げられる。意図する各経路と適合する医薬組成物は当技術分野で周知である。
投与のタイミング
本明細書において上で列挙される実施形態で定義されるとおりの本発明のFXRアゴニストは、朝又は夕刻に投与され得る。
一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は一般に、6pm頃~12pm頃、例えば8pm頃~11pm頃、好ましくは9pm前後の何れかの時間での投与として定義される。夕刻の投与は、夕食前、夕食と一緒又は夕食後であり得る。一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時間の少し前又は就寝時の投与を指す。
一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時間の少し前での投与を指す。一実施形態では、「夕刻の投与」という用語は、就寝時の投与を指す。本明細書中で別段指定されない限り、「就寝時間」という用語は、24時間中の主要睡眠時間帯にわたり人間が就寝する時間の通常の意味を有する。就寝時間の少し前の投与とは、本明細書中で定義されるとおりのFXRアゴニストが人間の通常の休息又は睡眠(一般的には4~10時間)時間帯の前の約1~2時間以内に投与されることを意味する。
疾患
電子伝達鎖の効率損失及び高エネルギー分子(例えばアデノシン5’-三リン酸(ATP))の合成の減少を特徴とするミトコンドリア機能不全は、下記の特徴である:加齢、並びに慢性疾患、例えば、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、及びフリートライヒ運動失調症;循環器疾患、例えば、粥状性動脈硬化症、並びに他の心臓及び血管の状態;糖尿病及びメタボリックシンドローム;自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、及び1型糖尿病;神経行動学的疾患及び精神疾患、例えば、自閉症スペクトラム症、統合失調症、並びに双極性障害及び気分障害;胃腸障害;疲労性疾病、例えば、慢性疲労症候群及び湾岸戦争病;筋骨格系疾患、例えば線維筋痛症及び骨格筋肥大/萎縮;がん;慢性感染症(Nicolson,Integr.Med.13:35-43(2014);Sorrentino et al.,Annual Review of Pharmacology and Toxicology 2018,58:1,353-389)。
一実施形態では、ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患又は障害は、胃腸の疾患又は障害であり、例えば、特発性炎症性腸疾患(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎)である。
別の実施形態では、ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患又は障害は、肝臓の疾患若しくは障害(例えば本明細書で定義されいてるもの)、又は腎線維症である。酸化ストレスは、ミトコンドリアを損傷し、その後に腎損傷を誘発することにより、腎線維症の病因で重要な役割を果たす(Qin et al.,Chin.Med.J.2018;131(22):2769-2772)。
さらに別の実施形態では、ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患又は障害は、腎疾患(例えば、急性及び慢性の腎臓損傷等の腎臓損傷);並びに糖尿病性腎疾患である(Tang et al.,J Am Soc Nephrol.2016,27:1869-1872;Galvan et al.,Kidney Int.2017,92(5):1051-1057;Forbes,Nature Reviews Nephrology 14,291-312(2018))。
さらに別の実施形態では、ミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患又は障害は、ミトコンドリア肝障害であり、例えば、原発性ミトコンドリア肝障害又は続発性ミトコンドリア肝障害である。
対象
本発明によれば、本発明のFXRアゴニストを投与される対象は、(例えば、本明細書において上記で定義されているような)ミトコンドリア機能不全が主要な機序である状態に罹患し得るか、又はこの状態のリスクがあり得る。
投与レジメン
使用される化合物に依存して、標的とされる疾患又は障害及びこのような疾患又は障害のステージ、投与レジメン、即ち本医薬の組み合わせの各構成成分の、投与される用量及び/又は頻度は変動し得る。投与頻度は、特に、処置レジメンの相に依存するだろう。
本発明によれば、トロピフェクサー(本明細書において上記で定義されている)を、約30μg~約250μgの用量で投与し、例えば約60μg~約200μg、例えば約90μg~約140μgの用量で投与する。そのような用量は、経口投与用であり得る。好ましくは、トロピフェクサー(本明細書において上記で定義されている)を、約90μg又は約140μgの用量で投与する。
オベチコール酸を、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、又は約50mgの1日用量で投与する。
いくつかの実施形態では、本明細書で定義されているオベチコール酸を、約25mgの1日用量で投与する。
実施例1:トロピフェクサー(TXR)によるFXR活性化によって、食餌性マウスNASHモデルにおいて肝ミトコンドリア機能が回復する
この研究は、ミトコンドリア機能不全のNASH進行への寄与を明らかにし、且つ齧歯類におけるNASHでの酸化ストレスに対するトロピフェクサーにより媒介される保護の根底にある分子機序を調べることを目的とする。
方法:NASHを誘発するために、C57BL/6Jマウスに、20週間にわたり、(フルクトース-スクロース溶液の自由な摂取と組み合わせて、脂肪、炭水化物、コレステロールが高い)飼料を与え、続いて最後の12週間にわたりトロピフェクサー処置を施した。分子分析、構造分析、及び機能分析を適用して、NASHモデルにおける酸化ストレス及びミトコンドリア機能を評価した。
ヒト疾患と同様に、NASHマウスにおける脂肪肝から繊維症を伴うNASHへの移行は、構造的変化及び機能的変化を特徴とするミトコンドリア機能不全と関連している。肝ミトコンドリア機能の低下は、トリカルボン酸(TCA)サイクル及び電子伝達鎖(ETC)の活性の低下、並びにATP産生の減少により、HF/NASHマウスで明らかになる。これは、酸化的損傷、及び抗酸化酵素の枯渇を伴う。本明細書で示されるように、トロピフェクサーは、NASHマウスにおいて肝ミトコンドリア機能を回復させた。このことは、抗酸化防御の増加及び酸化ストレスの減少と関連する酸化バランスの回復を伴うミトコンドリア機能の顕著な増加により明らかとなった。
トロピフェクサーは、食餌性HF/NASHモデルにおいて、酸化ストレスを減少させ、且つ抗酸化防御を回復させる
NASHの病態生理及び進行は、複数の要因の影響を受けており、中でも酸化的ミトコンドリア機能不全は、脂肪肝からNASHへの移行の中心的な特徴である。HF/NASHモデルにおける肝酸化ストレス及びミトコンドリア機能の長期評価により、ミトコンドリアの構造変化及び機能変化が明らかになった。HF/NASH肝臓における、クエン酸シンターゼ(CS)活性により評価したトリカルボン酸(TCA)サイクルの減少、電子伝達鎖(ETC)の複合体I活性の低下、及びATP産生の減少により、ミトコンドリア機能の進行性低下が明らかになった。このことは、HF/NASH肝臓における、脂質過酸化の細胞毒性産物であるマロンジアルデヒド(MDA)のレベルの上昇、並びに抗酸化物質の活性、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、及びスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の枯渇により示される酸化的損傷を伴った。興味深いことに、ミトコンドリア適応を示すCS及びGPxの活性並びにATP合成の一時的な増加を比較的早い時点(8週目及び12週目のHF/NASH)で観察し、NASHのより進行した段階(16週目及び20週目のHF/NASH)では消失していた。HF/NASH肝臓でのTEMにより、HF/NASH飼料を給餌したマウスでの肝ミトコンドリアのサイズの顕著な減少が明らかになった。ミトコンドリアのサイズの度数分布は、20週目のHF/NASHにおいて、小さいミトコンドリア(<0.5μm2)の有意に高い出現率、及びより大きいミトコンドリア(>0.5μm2)の頻度の減少を示した。
ミトコンドリア機能障害は、ミトコンドリア機能に関与する主要なプロセスの進行性調節解除を示すトランスクリプトームワイドRNAプロファイリングによりさらに裏付けられた。結論として、これらのデータから、ヒトNASHと同様に、本発明者らの実験モデルにおける線維症を伴うNASHへの進行は、酸化的ミトコンドリア機能不全と関連することが明らかになる。
トロピフェクサーは、脂質過酸化の産物であるMDA及び4-HNEの減少、並びに酸化的DNA損傷の天然の代用物であるミトコンドリアDNA(mtDNA)の回復により示されるように、HF/NASH肝臓での酸化的ストレスのレベルを顕著に低下させた。さらに、全身性酸化ストレスの十分に確立されているマーカーであるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の血清レベルは、HF/NASHマウスでは上昇し、トロピフェクサー処置により低下した。次に、活性酸素種の解毒に関与する3種の主要な捕捉酵素であるカタラーゼ、SOD、及びGPxの活性を、トロピフェクサー処置HF/NASHマウスで評価した。血清及び肝臓中のGPx活性は、0.9mg/kgのトロピフェクサーにより回復した。肝臓SOD活性は、0.3mg/kgのTXRにより完全に回復し、0.9mg/kgにてNDマウスで観測したレベルよりも上昇した。
トランスクリプトーム解析により、TXR処置HF/NASHマウスにおける酸化ストレス及びミトコンドリア機能不全に関与する経路の制御を確認した。具体的には、トロピフェクサーは、GPx及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)スーパーファミリに属し且つグルタチオン依存性解毒に関与する抗酸化遺伝子発現を誘発した。トロピフェクサーは、調べた遺伝子の発現をNDレベルまで回復させたか(Gpx3、Gpx8)、又はNDレベルを超えて発現を顕著に増加させた(Gpx2、Gstファミリ)。興味深いことに、シグマクラスGSTに属するプロスタグランジン-Dシンターゼ(Pdgs)は、HF/NASH肝臓においてTXRにより最も上昇する遺伝子の内の1つであった。まとめると、これらのデータから、グルタチオン依存性解毒経路の転写活性の制御へのトロピフェクサーの網羅的な効果が強調される。酸化ストレスは、細胞死経路に対する肝細胞の感受性を制御し得る。肝臓でのアポトーシスは、20週間にわたりHF/NASH飼料を給餌したマウスでは増加し、切断型カスパーゼ3染色レベル及びホスホ-p38タンパク質レベルの低下により測定したように、トロピフェクサーは用量依存的に細胞死を抑えた。さらに、TXR処置群では、プロアポトーシス経路のHF/NASHにより誘発される発現が減少したが、抗アポトーシス遺伝子の発現が増加した(ヒートマップ-RNAseq)。
トロピフェクサーは、HF/NASHモデルにおけるミトコンドリア機能を回復させる
次に、本発明者らは、トロピフェクサーにより媒介される酸化ストレスの減少及び抗酸化防御の回復が、HF/NASH肝臓における肝ミトコンドリア機能の改善につながるかどうかを評価した。トロピフェクサーは、クエン酸シンターゼ(CS)活性を用量依存的に回復させた(図1)。さらに、FXR処置は、HF/NASH肝臓において、複合体I及び複合体IIの活性を回復させ、並びにATP合成を改善することにより、酸化的リン酸化機能不全に対抗した。ミトコンドリア呼吸鎖機能の障害と一致して、HF/NASH肝臓では、酸化的リン酸化(OXPHOS)鎖を構成する5種全ての複合体のタンパク質レベルが有意に低下した(図1)。トロピフェクサーは、HF/NASH肝臓における5種全ての呼吸鎖タンパク質の含有量を増加させ、0.1mg/kgにて既に完全な回復を観察した。HF/NASHマウスでのトロピフェクサー処置により、PGC-1α、Nrf1、又はTfam等のミトコンドリア生合成に関与する遺伝子の発現は変化せず、そのため、ミトコンドリア生合成の制御でのFXRの役割は排除された。まとめると、このデータから、呼吸鎖機能、TCAサイクルの誘発、及びATP産生の改善により、TXRがNASHマウスでの肝ミトコンドリア機能不全を回復させるという強い証拠が得られる。
FXR処置により、マウスにおける健康的なミトコンドリア機能が促進される
トロピフェクサーにより媒介されるNASH肝臓でのミトコンドリア機能の回復は、改善されたNASHの間接的な結果であり得るか、又は正常な飼料を給餌したマウスにより観察されるレベルを超えるTCA、ETC、及びATPの合成の刺激により示唆されるような直接的な効果であり得る。
トロピフェクサーがミトコンドリア機能を直接制御することを確認するために、通常の飼料を給餌した野生型マウスを、4週間にわたり0.9mg/kgのトロピフェクサーで処置した(図2)。トロピフェクサー処置により、肝臓及び回腸において強固なFXR標的遺伝子の誘導(SHP、BSEP、FGF15)又は抑制(CYP8B1)が得られ、且つ血清FGF15レベルが上昇した(図2)。
トロピフェクサーは、呼吸鎖複合体I及びII並びにクエン酸シンターゼの活性の増加により実証されるように、野生型肝臓でのミトコンドリア機能を有意に改善した(図2)。さらに、ATP含有量は、トロピフェクサー処置後に顕著に増加した(図2)。OXPHOSタンパク質解析から、トロピフェクサー処置野生型肝臓において有意に増加した複合体V(ATPシンターゼ)を除いて、ミトコンドリア呼吸鎖単位の含有量に有意な変化は明らかにならなかった(図2)。GPx活性は変化しなかったが、カタラーゼ活性は、トロピフェクサー処置野生型肝臓において有意に増加し(図2)、生理的条件下ではカタラーゼ依存性反応がROS除去プロセス37を駆動させるという報告と一致する。GPx及びGST発現の解析から、肝転写レベルは、野生型コントロールと比較して、トロピフェクサーではX及びX倍増加することが明らかになった。さらに、酸化還元経路データのRNA Seqデータから、トロピフェクサーがマウスにおける健康的なミトコンドリア機能を促進することの証拠が得られる。
この研究は、NASH用のフェーズIIb開発中の強力な且つ選択的なFXRアゴニストであるトロピフェクサーが、NASHの食餌誘発マウスモデルにおける肝ミトコンドリア機能を制御するという最初の証拠を提供する。本明細書で示されるように、トロピフェクサーは、NASHでのミトコンドリア機能不全の設定において、酸化ストレスに対抗し且つ抗酸化防御を回復させることにより、肝ミトコンドリア機能不全を修復する。
実施例2:治療12週間後の線維化NASH患者での、肝臓脂肪及び血清アラニンアミノトランスフェラーゼの低下におけるトロピフェクサーの役割(FLIGHT-FXRパートC中間結果)
NASH患者における試験CLJN452A2202のパートA及びBは、12週間にわたり1日10~90μgの範囲の用量のトロピフェクサーを調べた。トロピフェクサーは、標的会合(FGF19)及び生物学的活性(GGT)に対する明らかな用量反応性を示した。プラセボと比較して、全てのトロピフェクサー用量(10、30、60及び90μg)にわたってALT及び肝臓脂肪画分が減少した。この試験から、トロピフェクサーが一般に、安全性シグナルなく1日最大90μgまで十分に忍容性であることが示された。最初の2パート(A及びB、試験CLJN452A2202)からの結果は、バイオマーカーに基づくトロピフェクサー60及び90μgの抗炎症及び抗脂肪肝(anti-steatotic)の有効性及び第12週での好ましい安全性を示した。
FLIGHT-FXR(NCT02855164)は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者における、トロピフェクサー(LJN452)のいくつかの用量の安全性、忍容性及び有効性を評価するための、第2相ランダム化二重盲検、プラセボ対照3-パート、適応的デザイン試験である。
方法:パートCにおいて、生検により証明されたNASH及び線維症ステージ2~3を有する患者において48週間にわたりバイオマーカー及び組織学に対するトロピフェクサーのより高用量の効果を評価する。全てにおいて、1日1回プラセボ(N=51)、トロピフェクサー140μg(N=50)又はトロピフェクサー200μg(N=51)を投与するために152名の患者(64%女性)をランダム化した。第12週で評価される予め指定されたエンドポイントには、総括的安全性及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、肝臓脂肪画分(HFF)、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)及び体重の変化が含まれた。
結果:予め指定されたエンドポイントは、200μgの用量のトロピフェクサーについて合致した。有効性の結果を表2で与える。
Figure 2022550312000005
プラセボ、トロピフェクサー140μg及びトロピフェクサー200μg群においてそれぞれ患者の20%、32%及び64%で、≧30%の相対的HFF低下(欠損値に対するインピュテーションなし)が達成された。重篤有害事象の頻度は低く、全ての群にわたって同等であった。そう痒がある患者の中で、両トロピフェクサー群で>60%及びプラセボ群で全員が、重症度が軽度(グレード1)の事象を経験した。そう痒による処置中断率は低かった(トロピフェクサー140μg:n=1[2%];トロピフェクサー200μg:n=3[6%];プラセボ:0%)。低密度リポタンパク質-コレステロール(LDL-C)の用量関連上昇が見られた。処置中断又は用量減少につながった脂質変化はなかった。
パートCのこの予め指定された中間分析において、より高い用量のトロピフェクサーによって、処置12週間後、良好な安全性及び忍容性で、ALT、HFF、GGT及び体重のロバストで用量依存的な低下が起こった。他のFXRアゴニストと同様に、これらのより高い用量には、軽度そう痒及びLDL-Cの僅かな用量関連上昇が付随した。
実施例3:必要な対象におけるミトコンドリア性疾患を処置するためのFXRアゴニストの安全性及び有効性を評価するための研究
ミトコンドリア性疾患(例えばミトコンドリア肝障害)が疑われるか又は確認されている対象を登録する。処置前に、対象は、スクリーニング診察を受ける。適格である場合には、各参加者は、1日目の研究診察に戻り、被験薬(例えば、本明細書で説明されているFXRアゴニスト)の投与を介する。
主要な評価項目は、例えば、International Paediatric Mitochondrial Disease Score(IPMDS)又は他の認められているミトコンドリア性疾患スコア指標による、患者の臨床転帰の機能評価である。補助的な評価項目には、生化学的パラメータ及び放射線学的パラメータの測定が含まれた。さらに、対象の認容性及び生活の質を決定する。
本明細書中に記載の実施例及び実施形態が単なる例示目的であり、それに照らした様々な修飾又は変化が当業者に対して示され、これらは本願及び添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれるものとすることが理解される。本明細書中で引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、全ての目的に対して参照により本明細書によって組み込まれる。

Claims (9)

  1. 必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患、例えばミトコンドリア性疾患の処置の方法であって、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む方法。
  2. 必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患、例えばミトコンドリア性疾患の予防の方法であって、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む方法。
  3. 必要な対象におけるミトコンドリア機能不全と関連する状態又は疾患の処置又は予防の方法であって、前記状態又は疾患は、ファルネソイドX受容体(FXR)により媒介され、前記方法は、前記対象に、FXRアゴニストの治療的有効量を1日1回投与することを含む、方法。
  4. 前記FXRアゴニストは、トロピフェクサー、オベチコール酸、ニズフェクサー、シロフェクソール、TERN-101、EDP-305、PXL007、AGN242266、及びMET409から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記FXRアゴニストは、オベチコール酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. オベチコール酸を、約5mg、約10mg、約15mg、約20mg、約25mg、約30mg、約40mg、又は約50mgの1日用量で投与する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記FXRアゴニストは、トロピフェクサーである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  8. トロピフェクサーを、約30μg~約250μgの1日用量で投与し、例えば、約60μg~約200μgの1日用量で投与する、請求項7に記載の方法。
  9. 前記FXRアゴニストを、夕刻に投与する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
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