JP2022538829A - 癌治療のためのSIRPγの阻害 - Google Patents

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Abstract

腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法が本明細書において提供される。例示的な実施形態において、この方法は、対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加すること、又は対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加する、若しくはT細胞の抑制活性を低減することを含む。例示的な実施形態において、この方法は、対象において腫瘍又は癌を治療するのに有効な量で、SIRPγバインダー、例えばSIRPγ阻害剤を対象に投与することを含む。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月24日出願の米国仮特許出願第62/865,537号への優先権を主張する。
電子的に提出された材料の参照による組み込み
本明細書において同時に提出され、且つ以下同定されるコンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれる:96,000バイト ASCII(テキスト)ファイル名「A-2396_Seqlisting.txt」;2020年6月9日作成。
免疫チェックポイント阻害療法は、種々の癌に対して耐久性のある免疫応答を誘導することが示されている。しかしながら、抗PD1/PDL1などの免疫療法に対する患者の応答は、ごく低いパーセンテージの患者に限られる。PD1は、T細胞活性化中にアップレギュレートされるT細胞上で発現される多くの共抑制性受容体の1つであり、PD-L1とのその相互作用によって、T細胞活性化が制限される。抗PD-1は阻害経路を十分にブロックし、種々の腫瘍内のT細胞を回復させるが、他の多くの抑制性受容体がT細胞上に発現することが可能である。したがって、T細胞上の新規な抑制性受容体を探求し、さらに同定することによって、免疫療法の標的が広がり、且つ癌を治療する有効性が高度に進歩するだろう。
SIRPγが、ヒトT細胞における潜在的な新規な抑制性受容体であることを実証するデータを初めて本明細書に提供する。これらのデータは意外なことに、T細胞共刺激分子としてSIRPγを提案する先行する研究で示されていた(Piccio et al.,Blood 105(6):2421-2427(2005);Leitner et al.,Immunol Letters128(2):89-97(2010))。SIRPγの発現、調節、及び機能が評価され、SIRPγが、T細胞及び活性化NK細胞上で主に発現し、且つ記憶CD8 T細胞及び消耗T細胞を浸潤する腫瘍において高度に発現されることが実証された。本明細書ではSIRPγの過剰発現がCD8 T細胞エフェクターサイトカイン放出を阻害し、SIRPγのノックアウト発現(CRISPRを介した)が、T細胞増殖及びT細胞仲介サイトカイン産生によって測定されるT細胞のエフェクター状態を高めることも実証された。さらに、ヒトTreg細胞におけるSIRPγの過剰発現は、Treg細胞抑制機能を高める。さらに、CD47とSIRPγの相互作用のブロックが、T細胞増殖及びIFNγ分泌の増強を達成する必要条件ではないこと、SIRPγのT細胞抑制機能は、SIRPγの固有のエピトープによって仲介され得ること、並びにSIRPγのD1及びD2の界面に結合する分子が、T細胞機能の向上に有用であり得ることも、本明細書のデータから裏付けられる。
特定の理論に束縛されるものではないが、これらのデータから、対象における腫瘍又は癌治療のために、対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加するための、又はT細胞の抑制活性を低減するための、SIRPγバインダー、例えばSIRPγ阻害剤の使用が裏付けられる。したがって、一実施形態において、本発明は、対象における腫瘍又は癌を治療する方法であって、SIRPγバインダー、例えばSIRPγ阻害剤を有効量で対象に投与することを含む方法に関する。本開示は、腫瘍若しくは癌を有する対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加し、又はT細胞の抑制活性を低減する方法も提供する。例示的な実施形態において、この方法は、対象においてエフェクター活性を増加し、又は抑制活性を低減するのに有効な量で、SIRPγバインダー、例えばSIRPγ阻害剤を対象に投与することを含む。対象における腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を高める方法はさらに、本明細書に提供される。例示的な実施形態において、その方法は、腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を増加するのに有効な量で、SIRPγバインダー、例えばSIRPγ阻害剤を対象に投与することを含む。種々の態様において、対象は、肝細胞癌(HCC)、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、又は乳癌を有し、任意選択的に、その対象は非小細胞肺癌(NSCLC)を有する。
様々な場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγの免疫グロブリン(Ig)ドメイン1(D1)に結合する。種々の態様において、SIRPγバインダーは、SIRPγのD1及びIgドメイン2(D2)に結合する。例示的な態様において、SIRPγバインダーは、D1及びD2のどちらにも、任意にD1とD2の界面にて結合する。例示的な場合において、SIRPγバインダーはエピトープに結合し、それにSIRPγモノクローナル抗体OX117が結合し、任意に、SIRPγバインダーが、SIRPγへの結合において、SIRPγに結合することが知られている参照抗体(例えば、OX117)と競合する。種々の場合におけるSIRPγバインダーは、OX117と同じ、又はそれ以上の親和性でSIRPγと結合し、任意に、SIRPγバインダーは、OX117、又はその抗原結合性断片である。種々の態様におけるSIRPγバインダーは、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のうちの1つ又は複数と水素結合を形成する。SIRPγバインダーは、一部の態様においてSIRPγに結合すると、SIRPγの高次構造変化を生じさせる。種々の場合において、SIRPγバインダーは同時に2つのSIRPγ分子に結合し、又はSIRPγ二量体化を促進する。任意に、SIRPγバインダーは、CD47結合部位とオーバーラップしないエピトープに結合する。種々の態様において、SIRPγバインダーは、SIRPγに結合する抗原結合性タンパク質である。任意に、抗原結合性タンパク質は、抗体、抗原結合性抗体断片、又は抗体タンパク質産物である。一部の態様において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγのCD47結合部位内のエピトープで結合する。
本発明に開示の方法の種々の場合において、SIRPγバインダーはSIRPγ阻害剤である。一部の態様において、SIRPγ阻害剤は、対象の細胞におけるSIRPγの発現を低減し、任意にSIRPγ阻害剤は、対象のT細胞上のSIRPγの細胞表面発現を低減する。任意に、T細胞は、対象のエフェクターT細胞である。種々の場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγと、SIRPγ結合パートナー、任意に、CD47との結合相互作用を低減する。
腫瘍若しくは癌を有する対象においてT細胞のエフェクター活性を増加し、又は抑制活性を低減する、本発明に開示の方法の例示的な態様において、T細胞は、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する。種々の場合において、T細胞は、腫瘍浸潤T細胞である。一部の態様において、T細胞は、制御性T細胞(Treg)である。例示的な場合において、T細胞は消耗T細胞、任意に、消耗したCD8+ T細胞である。例示的な場合において、T細胞は、記憶細胞、任意に、CD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である。
対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答を高める本発明に開示の方法の例示的な態様において、免疫応答は、T細胞によって媒介される。種々の態様において、T細胞は、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する。種々の場合において、T細胞は腫瘍浸潤T細胞である。一部の態様において、T細胞は制御性T細胞(Treg)である。例示的な場合において、T細胞は消耗T細胞であり、任意に、消耗したCD8+ T細胞である。例示的な場合において、T細胞は、記憶細胞であり、任意にCD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である。
本開示はさらに、腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法を提供する。例示的な実施形態において、その方法は、対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答を高める本発明に開示の方法のいずれか1つに従って、対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答を高めることを含む。例示的な実施形態において、この方法は、腫瘍又は癌を有する対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加する、又はT細胞の抑制活性を低減する本発明に開示の方法のいずれか1つに従って、対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加すること、又はT細胞の抑制活性を低減することを含む。
本発明に開示の医薬組成物及び方法の更なる実施形態及び態様が以下に提供される。
図1A~1Cは、SIRPγがヒトT細胞及びNKT細胞上に発現されることを実証する。図1Aは、293T細胞上に過剰発現された、SIRPγ、特異的に検出されたSIRPγに対する抗体を示す一連のFACSプロットである。図1Bは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からの異なるタイプの細胞上でのSIRPγ発現を示す一連のFACSプロットである。図1Cは、T細胞上のSIRPγ発現レベルがTCR刺激によって変化しないことを示す。 同上。 図2A及び2Bは、SIRPγが記憶T細胞上で高度に発現することを実証する。図2Aは、T細胞の異なるサブセットにおける発現を示す一連のFACSプロットである。CD8+記憶T細胞は、ヒトPBMC試料においてCD8+エフェクターT細胞よりも高度なSIRPγ発現を有する。図2Bは、異なる健康なドナー4名のPBMCからのT細胞の異なるサブセットにおけるSIRPγ発現の平均蛍光強度(MFI)の定量化である。有意性は、対応のあるt検定を用いて、***p≦0.0002、**p≦0.0021、p≦0.0332、及びns p>0.05と示す。エラーバーは±SEMを表す。 図3A~3Cは、SIRPγが、腫瘍浸潤した消耗T細胞上で発現を増加することを実証する。図3Aは、HCC試料からの腫瘍浸潤したT細胞の異なるサブセット上でのSIRPγの発現を比較するグラフである。図3Bは、CRC試料からの腫瘍浸潤したT細胞の異なるサブセット上でのSIRPγの発現を比較するグラフである。図3Cは、肺癌試料からの腫瘍浸潤したT細胞の異なるサブセット上でのSIRPγの発現を比較するグラフである。SIRPγは、腫瘍Treg(CD4-CTLA4)及び消耗CD8 T細胞(CD8-LAYN)の両方において非常に特異的な発現パターンを示し、星印でマークした。 同上。 SIRPγが、反復TCR再刺激から誘導される消耗T細胞上で発現を増加したことを実証する。図4は、異なる3名の健康なドナーからの、生体外で再刺激された消耗T細胞及び従来のT細胞上でのSIRPγの発現を示す一連のFACSプロットである。 T細胞上でのSIRPγ過剰発現がIFNγ分泌を阻害したことを実証する。図5Aは、SIRPγ過剰発現及びT細胞再刺激の実験フローを示す略図である。PanT細胞が、ヒトPBMCから単離され、αCD3/CD28ダイナビーズ(Dynabead)によって3日間活性化された。活性化T細胞をレトロウイルス(RV)に感染させて、T細胞上にSIRPγを過剰発現させ(RV-SIRPγ)、又はコントロールとしてSIRPγコード配列を含まないRVベクターに感染させた(RV-Vec)。遠心感染から5日後に、GFP+ CD4又はCD8 T細胞をFACS選別し、ヒトIL2と共に2日間休止した。次いで、休止T細胞を、プレート結合αCD3及び可溶性CD28抗体で24時間再刺激した。細胞上澄をELISA分析のために回収した。図5Bは、CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の両方でのヒトSIRPγ発現を示す、一連のフローサイトメトリーのプロットである。遠心感染して3日後に、ヒトSIRPγ抗体で細胞を染色した。図5Cは、細胞上澄におけるヒトIFNγのELISAである。有意性が、グラフィックプリズムからの二元配置分散分析(two-way ANOVA)試験を用いて、****p≦0.0001、***p≦0.0002、**p≦0.0021、p≦0.0332、及びns p>0.05と示す。エラーバーは±SEMを表す。データは、少なくとも5つの独立した実験を表す。図5Dは、5つの独立した実験からの細胞上澄におけるヒトIFNγのELISAの対応のあるt検定である。は、対応のあるt検定を用いてp値<0.05を意味する。 同上。 図6A~6Fは、T細胞上のSIRPγノックダウンが、IFNγ分泌を増強したことを実証する。図6Aは、SIRPγノックダウン及びT細胞再刺激の実験フローを示す略図である。PanT細胞が、ヒトPBMCから単離され、αCD3/CD28ダイナビーズによって2日間活性された。SIRPγゲノム領域に標的化するCRISPR gRNA(ガイドRNA)を、活性化T細胞にトランスフェクトしてT細胞上のSIRPγ発現をノックダウンするか(SIRPγ KO)、又はコントロールをトランスフェクトした。トランスフェクトして3日後に、FACS選別前に24時間、T細胞をαCD3/CD28で活性化した。SIRPγ-CD4又はCD8 T細胞をFACS選別し、ヒトIL2と共に2日間休止した。次いで、休止T細胞をプレート結合αCD3及び可溶性CD28抗体で24時間再刺激した。ELISA分析のために、細胞上澄を回収した。図6Bは、標的化ゲノム領域から増幅されたPCR産物のゲル分析である。矢印は、gRNA標的化ゲノム領域上の欠失を示す。図6Cは、ノックアウト後のSIRPγ発現のqPCR分析である。有意性は、グラフィックプリズムからの対応のないt検定用いて、****p≦0.0001、***p≦0.0002、**p≦0.0021、p≦0.0332、及びns p>0.05と示す。エラーバーは±SEMを表す。図6Dは、CRISPRノックダウン後のCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の両方のヒトSIRPγ発現を示す一連のフローサイトメトリーのプロットである。遠心感染から4日後に、ヒトSIRPγ抗体で細胞を染色した。図6Eは、CRISPRノックアウト後の、総CD4又はCD8 T細胞におけるSIRPγ+細胞のパーセンテージの定量化である。図6Fは、2つの独立した実験からの細胞上澄におけるヒトIFNγのELISAである。有意性は、グラフィックプリズムからの二元配置分散分析試験を用いて、****p≦0.0001、***p≦0.0002、**p≦0.0021、p≦0.0332、及びns p>0.05と示す。エラーバーは±SEMを表す。 同上。 図7A~7Fは、Treg細胞上のSIRPγ過剰発現がTregの抑制機能を増強したことを実証する。図7Aは、非小細胞肺癌組織からの腫瘍浸潤リンパ球上でのSIRPγの発現を示す、一連のFACSプロット及びヒストグラムである。図7Bは、SIRPγ過剰発現及びTreg細胞抑制アッセイの実験フローを示す略図である。ヒトPBMCから単離され、且つαCD3/CD28ダイナビーズによって2日間活性化されたpanT細胞から、Treg細胞をFACS選別した。活性化Treg細胞にレトロウイルスをトランスフェクトして、Treg細胞上でSIRPγ(RV-SIRPγ)を過剰発現させるか、又はコントロール(RV-Vec)としてSIRPγコード配列を含まないRVベクターに感染させた。遠心感染から5日後に、抑制アッセイに添加する前に、GFP+ Treg細胞をFACS選別し、ヒトIL2(200U/ml)と共に一晩休止した。抑制アッセイをセットアップした日に、異なる健康なドナーPBMCからレスポンダーCD4 T細胞を単離し、CellTrace Violet(CTV)で標識化した。休止Treg細胞をCTV標識レスポンダーCD4 T細胞と様々な比で混合した。同種DCを添加し、CD4 T細胞増殖をCTV希釈によって測定した。図7Cは、レトロウイルス遠心感染後のTreg細胞上のヒトSIRPγ発現を示す、一連のフローサイトメトリープロットである。遠心感染から5日後に、細胞をヒトSIRPγ抗体で染色した。図7Dは、FACS選別コントロール又はSIRPγ過剰発現Treg細胞上でのヒトFOXP3発現を示す一連のフローサイトメトリープロットである。図7Eは、コントロール及びSIRPγ過剰発現Tregのいずれかと混合されたT細胞でのCTV希釈を示す一連のフローサイトメトリープロットである。図7Fは、Tregとレスポンダー細胞との様々な比での細胞増殖のパーセンテージを示すグラフである。は、スチューデントt検定を用いたp値<0.05を意味する。エラーバーは±SEMを表す。 同上。 図8A~8Fから、SIRPγ抗体が、T細胞増殖に対して非特異的な抑制効果を有することが実証される。図8Aは、SIRPγ(SIRPγ KO)、CD47(CD47 KO)、又はSIRPγとCD47(DKO)の両方をCRISPRノックアウトした後の、ジャーカットT細胞上でのSIRPγ(左のプロット)及びCD47(右のプロット)の発現を示す、一連のFACSプロットである。アイソタイプ一致コントロール抗体(アイソタイプ)又はトランスフェクトされていないコントロール細胞(NTコントロール)を使用したプロットをそれぞれのパネルに示す。図8Bは、ジャーカットT細胞上でのSIRPγ-Fc及びSIRPα-Fcタンパク質の結合分析を示す。すべてのFc融合タンパク質を5μg/mlで添加した。PE結合抗ヒトIgG-Fcを使用して、フローサイトメトリーによって、細胞への融合タンパク質の結合を検出した。図8Cは、ジャーカットT細胞上のSIRPγ-Fc結合に関する抗SIRPγ抗体(LSB2.20及びOX119)のアンタゴニスト活性研究を示す。すべてのIgG-Fcタンパク質を5μg/mlで添加し、すべての抗体を10μg/mlで添加した。IgG抗体(mIgG)をコントロールとして使用した。PE結合抗ヒトIgG-Fcを使用して、フローサイトメトリーによって、細胞への融合タンパク質の結合を検出した。図8Dは、T細胞:DC比10:1にて同種異系樹状細胞(DC)で7日間刺激された健康なドナーからのPBMCから単離されたヒトpanT細胞のカウント/分(CPM)を示すグラフである。培養0日目に10μg/mlで抗体を添加した。T細胞増殖を標準3H-チミジン取り込みアッセイによって測定した。図8Eは、T細胞:DC比10:1にて同種異系樹状細胞(DC)で7日間刺激された、コントロールT細胞、SIRPγノックアウト又はCD47ノックアウトpanT細胞のCPMを示すグラフである。培養0日目に10μg/mlで抗体を添加した。T細胞増殖を標準3H-チミジン取り込みアッセイによって測定した。図8Fは、様々な濃度のプレート結合抗CD3で3日間刺激された、健康なドナーからのPBMCから単離されたヒトpanT細胞又はCD8 T細胞である。SIRPγ又はCD47に対する抗体を、培養0日目に10μg/mlで添加した。T細胞増殖を標準3H-チミジン取り込みアッセイによって測定した。 同上。 同上。 図9A~9Eから、SIRPγの特異的なエピトープに結合するSIRPγ抗体クローンOX117が、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を高めることが実証されている。図9Aは、SIRPγを過剰発現する親ジャーカットT細胞及びジャーカットT細胞上でのSIRPγ抗体の結合を示す一連のFACSプロットである。図9Bは、抗体OX117のみが、ジャーカットT細胞上のSIRPγ-Fcタンパク質の結合を変化させることを示す。ジャーカットT細胞は、10μg/mlにてSIRPγ抗体で予備処理された。SIRPγ-Fcタンパク質を10μg/mlで添加した。PE結合抗ヒトIgG-Fcを用いたフローサイトメトリーによって、細胞への融合タンパク質の結合を検出した。図9C及び9Dは、特異的な抗SIRPγ抗体クローンOX117が、増殖及びサイトカイン産生の促進において、ヒトpanT細胞に対する最も強力なアンタゴニスト活性を有することを示す。SIRPγ抗体で10μg/mlにてプレートをコーティングした。プレート結合SIRPγ抗体と共に、健康なドナーからのPBMCから単離されたヒトpanT細胞をImmunoCult CD3/CD28 T細胞活性化剤で3日間刺激した。図9Cにおいて、T細胞増殖を標準3H-チミジン取り込みアッセイによって測定した。図9Dは、48時間刺激されたヒトpanT細胞からの細胞上澄中のヒトIFNγのCBA分析である。図9Eは、SIRPγとFabOX117との間の、及びSIRPαとCD47複合体との間の結合性エピトープの概要であり、CD47及びFabOX117がSIRPγ上の様々な残基に結合することを示す(Nettleship et al.,BMC Structural Biology 13:13(2013))。 市販のSIRPγ抗体の特性及びT細胞上でのその機能を要約した表を示す。
SIRPγ、SIRPγバインダー、及びSIRPγ阻害剤
CD172g、SIRPB2、SIRP-B2、及びbA77C3.1としても知られる、シグナル調節タンパク質γ(SIRPγ又はSIRPG)は、シグナル調節タンパク質(SIRP)ファミリーのメンバーであり、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーにも属する。SIRPファミリーの他のメンバーと同様に、SIRPγは、3つのI型膜貫通糖タンパク質を有し、それぞれが、細胞外領域、1回膜貫通ドメイン、及び短細胞質ドメインを構成する3つのIg様ドメインを有する。SIRP受容体ファミリーの他のメンバーと異なり、SIRPγは、下流シグナル伝達分子をリクルートして、細胞シグナル伝達を仲介する、細胞質免疫受容体チロシンベースの抑制性モチーフ(ITIM)を欠いている。SIRPγは、受容体型チロシンキナーゼ結合シグナル伝達プロセスの負の調節及び抗原提示細胞へのリンパ球のインテグリン非依存性接着において機能する。SIRPγはヒト血液、胸腺及び脾臓組織において高度に発現する。ヒトPBMC内で、SIRPγは主に、T細胞及び活性化ナチュラルキラー(NK)細胞上で発現する。さらに、腫瘍及び隣接組織のRNAseqプロファイリングでの最近のいくつかの研究から、SIRPγは、種々の腫瘍から単離されたT細胞上で高度に発現することが分かった。SIRPαと同様に、SIRPγはCD47に結合するが、SIRPαよりも親和性が低い(Brooke et al.,J Immunol 173(4):2562-2570(2004))。免疫システムにおけるSIRPγ及びその役割は、van Beek et al.,J Immunol 175(12):7781-7787(2005)に概説されている。SIRPγの結晶構造は、Nettleship et al.,BMC Structural Biology 13:13(2013)に記載されている。
SIRPγ遺伝子は多型遺伝子であり、ヒト染色体20(arm p13)上で見いだされ、8個のエクソンを含む。いくつかのSIRPγバリアントは、ヒトの集団において説明されており、かかるSIRPγバリアントのタンパク質配列は、アクセッション番号NP_001034597.1(アイソフォーム3前駆体;配列番号1)、NP_061026.2(アイソフォーム1前駆体;配列番号3)、及びNP_543006.2(アイソフォーム2前駆体;配列番号5)として、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトにて見つられ得る。SIRPγのメッセンジャーRNA(mRNA)配列は、アクセッション番号NM_001039508.1(転写物バリアント3;配列番号2);アクセッション番号NM_018556.4(転写物バリアント1;配列番号4);及びアクセッション番号NM_080816.2(転写物バリアント2;配列番号6)として見出され得る。バリアントの中でも、SIRPγイントロン内の保護イントロンバリアントrs2281808が、いくつかのゲノムワイド関連研究を通じて、1型糖尿病(T1D)発症のリスクの低減に関連することが確認されている。rs2281808イントロンバリアントの最近の研究から、SNPバリアントによってT細胞上でのSIRPγ発現の低減をもたらすことが示された。しかしながら、SIRPγの生物活性はまだ、大半が未知であり、一部にはマウスにおけるホモログ遺伝子の欠損のためである。
先行する研究によって、抗SIRPγ又は抗CD47抗体が、混合リンパ球反応において同種異系未成熟DCによって誘発されるIFNγのT細胞増殖及びT細胞分泌を阻害し得ることが示された(Piccio et al.,Blood,105:2421-2427,2005)。しかしながら、これらの先行する研究において、抗SIRPγ抗体の結合性エピトープは未知であり、T細胞増殖に対する抗SIRPγ抗体の抑制効果のメカニズムは不明である。かかる研究において、抗体によるCD47及びSIRPγの相互作用のブロックが、T細胞増殖の減少の原因であるか否かは不明であり、CD47とのその相互作用を伴う機能を超えるSIRPγの更なる生物学的機能があるか否かははっきりとしていない。
本発明に開示の方法の例示的な実施形態において、SIRPγバインダーは対象に投与される。本明細書で使用される、「SIRPγバインダー」という用語は、SIRPγに結合して、SIRPγとの結合性相互作用を形成する、いずれかの化合物又は分子を意味する。例示的な態様において、SIRPγバインダーは、小分子量化合物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリマー、炭水化物、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、DNA又はRNAを含む、或いは小分子量化合物、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリマー、炭水化物、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、DNA又はRNAである。任意に、SIRPγバインダーは、例えば、本明細書に記載の抗原結合性タンパク質などのタンパク質である。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、抗体又はその抗原結合性断片である。
種々の場合において、SIRPγとSIRPγバインダーとの間に形成される結合性相互作用は、非共有結合性相互作用である。例えば、SIRPγバインダーは、種々の態様において、SIRPγの1つ若しくは複数のアミノ酸残基と共にイオン結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性結合、及び/又は水素結合を形成し得る。任意に、非共有結合性相互作用は、可逆的、非共有結合性相互作用である。結合性相互作用は、SIRPγとSIRPγバインダーの間のK、平衡解離定数、koff/kon比に関して説明され得る。SIRPγバインダーのK値が低いほど、SIRPγに対するSIRPγバインダーの親和性が高くなる。例示的な態様において、SIRPγに対するSIRPγバインダーのK値は、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェントモルである。例示的な態様において、本明細書に提供される抗原結合性タンパク質のKは、約10-4~10-6M、又は10-7~10-9M、又は10-10~10-12M、又は10-13~10-15Mの範囲内である。例示的な態様において、SIRPγバインダーは、K約0.01nM~約20nM、0.02nM~20nM、0.05nM~20nM、0.05nM~15nM、0.1nM~15nM、0.1nM~10nM、1nM~10nM、又は5nM~10nMでSIRPγに結合する。
種々の場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγのD1に結合し、且つ/又はSIRPγのCD47結合部位に結合する。種々の態様において、SIRPγバインダーは、SIRPγのD1及びIgドメイン2(D2)に結合する。例示的な態様において、SIRPγバインダーはD1とD2の両方に、任意にD1とD2の界面にて結合する。任意に、SIRPγバインダーは、CD47以外のSIRPγ結合パートナーの結合部位に結合する。図9Eは、SIRPγ、そのIgドメイン及びCD47結合部位の説明図を提供する。例示的な場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγモノクローナル抗体OX117がそれに結合する、エピトープに結合する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、SIRPγに結合するためのSIRPγに結合することが既知の参照抗体(例えば、OX117)と競合する。種々の場合におけるSIRPγバインダーは、OX117と同じ又はそれ以上の親和性でSIRPγに結合する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、OX117、又はその抗原結合性断片である。図9Eは、SIRPγと、OX117抗体のfabと、の結合性相互作用の説明図を提供する。種々の態様におけるSIRPγバインダーは、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のうちの1つ又は複数と水素結合を形成する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のそれぞれと水素結合を形成する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、CD47結合部位とオーバーラップしないエピトープに結合する。
例示的な場合において、SIRPγに結合すると、SIRPγバインダーは、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を増強する。一部の場合において、開示の方法は、コントロールに対していずれかの程度又はレベルまで、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を増加する。例えば、一部の態様において、開示の方法によって提供される増加は、コントロールに対して、少なくとも又は約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)である。例示的な実施形態において、開示の方法によって提供される増加は、コントロールに対して100%を超える増加、例えば、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%の増加である。例示的な実施形態において、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌は、コントロールに対して、少なくとも又は約1.5倍、少なくとも又は約2.0倍、少なくとも又は約3.0倍、少なくとも又は約4.0倍、少なくとも又は約5.0倍、少なくとも又は約10.0倍、少なくとも又は約25倍、少なくとも又は約50倍、少なくとも又は約75倍、又は少なくとも又は約100倍以上増加する。種々の態様におけるコントロールは、SIRPγバインダーがSIRPγに結合することのない、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌である。
例示的な場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγに結合すると、SIRPγの高次構造変化を起こす。SIRPγの高次構造変化は、結合パートナーの結合部位のアクセシビリティ(accessibility)を変化させ得る。高次構造変化は、異なる結合パートナーがSIRPγに結合することも可能にし得る。さらに、又はその代わりとして、高次構造変化は、SIRPγ分子の二量体化又は多量体化を起こし得る。例示的な態様において、SIRPγの二量体化又は多量体化は、1つ又は複数の結合パートナーがSIRPγに結合することを防ぐ。例示的な態様において、SIRPγの二量体化又は多量体化は、SIRPγへの1つ又は複数の結合パートナーの結合を増強する。種々の場合において、SIRPγバインダーは同時に、2つのSIRPγ分子に結合するか、又はSIRPγ二量体化を促進する。
一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、SIRPγの機能をブロックし、例えば、SIRPγバインダーはSIRPγ阻害剤である。したがって、本発明に開示の方法の例示的な実施形態において、SIRPγ阻害剤が対象に投与される。本明細書で使用される、「SIRPγ阻害剤」という用語は、SIRPγの機能を低減する、又は阻害する、いずれかの化合物若しくは分子を意味する。例示的な場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγにSIRPγ結合パートナーが結合すると、後に続くシグナル伝達を低減する。種々の場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγと、SIRPγ結合パートナーとの結合性相互作用を低減する。種々の態様において、SIRPγ阻害剤は、対象の細胞におけるSIRPγの発現を低減する。一部の実施形態において、SIRPγ阻害剤はSIRPγに結合する。他の実施形態において、SIRPγ阻害剤はSIRPγ結合パートナーに結合する。
本明細書で使用される、「阻害」及び「低減」という用語、並びにそれに由来する単語は、100%又は完全な阻害又は阻止又は低減を必ずしも意味するものではない。むしろ、当業者が、潜在的な利点又は治療効果を有すると認識される、様々な程度の阻害及び/又は低減がある。この点で、本開示のSIRPγ阻害剤は、SIRPγ機能を任意の量又はレベルに低減又は阻害し得る。例示的な実施形態において、SIRPγ阻害剤によって提供される低減又は阻害は、少なくとも若しくは約10%の低減又は阻害(例えば、少なくとも若しくは約20%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約30%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約40%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約50%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約60%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約70%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約80%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約90%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約95%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約98%の低減又は阻害、少なくとも若しくは約99%の低減又は阻害、或いは約100%の低減又は阻害)である。
例示的な態様において、SIRPγ阻害剤は、対象の細胞におけるSIRPγの発現を低減する。特定の場合において、SIRPγ阻害剤は、T細胞上でのSIRPγの細胞表面発現を低減する。例示的な態様において、T細胞は、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する。種々の場合において、T細胞は、腫瘍浸潤T細胞である。例示的な態様において、T細胞は制御性T細胞(Treg)である。種々の態様において、T細胞は消耗T細胞、任意に、消耗CD8+ T細胞である。任意に、T細胞は記憶細胞である。種々の態様において、記憶細胞はCD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である。例示的な場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγをコードする核酸を標的とする分子である。例示的な場合において、SIRPγ阻害剤は、RNA干渉(RNAi)を仲介するアンチセンス分子である。RNAiは、標的mRNAが配列特異的に分解される、植物及び動物における遺伝子調節のユビキタスなメカニズムである(Sharp,Genes Dev.,15,485-490(2001);Hutvagner et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.,12,225-232(2002);Fire et al.,Nature,391,806-811(1998);Zamore et al.,Cell,101,25-33(2000))。天然RNA分解プロセスは、dsRNA-特異的エンドヌクレアーゼダイサー(Dicer)によって開始され、低分子干渉RNAと呼ばれる、長さ21~25のヌクレオチドの二本鎖断片への長鎖dsRNA前駆体の切断が促進される(siRNA;短鎖干渉RNAとしても知られる)(Zamore,et al.,Cell.101,25-33(2000);Elbashir et al.,Genes Dev.,15,188-200(2001);Hammond et al.,Nature,404,293-296(2000);Bernstein et al.,Nature,409,363-366(2001))。siRNAは、標的mRNAを認識及び切断する大きなタンパク質複合体へと取り込まれる(Nykanen et al.,Cell,107,309-321(2001))。細胞でのsiRNAの成熟におけるダイサーの必要性は、様々な哺乳動物細胞におけるトランスフェクトされた遺伝子及び内因性遺伝子の発現を阻害する、合成21-ヌクレオチドsiRNA二重鎖を導入することによって回避することができる(Elbashir et al.,Nature,411:494-498(2001))。例示的な態様において、SIRPγ阻害剤はRNAiを仲介し、種々の場合に、SIRPγタンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)の発現の阻害に特異的なsiRNA分子である。本明細書で使用される「siRNA」という用語は、RNAiを指示する、又は仲介することができる、約10~約50個のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含むRNA(又はRNA類似体)を意味する。例示的な実施形態において、siRNA分子は、約15~約30個のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)又は約20~約25個のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)、例えば、21~23個のヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含む。siRNAは二本鎖又は一本鎖、好ましくは二本鎖であることができる。
代替の態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγタンパク質をコードする核酸(例えば、mRNA)の発現の阻害に特異的な、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子である。本明細書で使用される「shRNA」という用語は、一本鎖RNAが部分的に回文塩基配列を含有し、そこに二本鎖構造(つまり、ヘアピン構造)を形成する、塩基対約20個以上の分子を意味する。shRNAは、ヘアピン構造へと折り畳まれるsiRNA(又はsiRNA類似体)であり得る。shRNAは通常、およそ21個のヌクレオチドアンチセンス、及びヘアピンのセンス(sense)部分、長さ約2~約6ヌクレオチドの非ループ側の任意のオーバーハング、及び例えば長さ約3~10ヌクレオチドであり得るループ部分を含む、約45~約60個のヌクレオチドを含む。shRNAは化学的に合成することができる。代替方法として、逆方向にDNA配列のセンス鎖及びアンチセンス鎖を連結し、鋳型としてDNAを用いてT7 RNAポリメラーゼで生体外にてRNAを合成することによって、shRNAを産生することができる。いずれかの理論又はメカニズムに束縛されることは望まないが、shRNAが細胞内に導入された後に、shRNAは約20塩基以上の長さに(例えば、典型的には21、22、23塩基)分解され、RNAiを生じ、抑制効果が起こされると考えられる。したがって、shRNAはRNAiを誘発し、したがって、開示の有効な成分として使用することができる。shRNAは好ましくは、3’-突出末端を有し得る。二本鎖部分の長さは特に制限されないが、好ましくは約10個以上のヌクレオチド、より好ましくは約20個以上のヌクレオチドである。ここで、3’-突出末端は、好ましくはDNA、より好ましくは、長さが少なくとも2ヌクレオチドのDNA、さらにより好ましくは長さが2~4ヌクレオチドのDNAであり得る。
例示的な態様において、SIRPγ阻害剤はマイクロRNA(miRNA)である。本明細書において使用される、「マイクロRNA」という用語は、小さな(例えば、15~22ヌクレオチド)、非コーティングRNA分子を意味し、mRNA分子でのその塩基対は翻訳抑制又は標的分解を介して遺伝子発現を抑制する。マイクロRNA及びその治療可能性は当技術分野で記述されている。例えば、Mulligan,MicroRNA:Expression,Detection,and Therapeutic Strategies,Nova Science Publishers,Inc.,Hauppauge,NY,2011;Bader and Lammers,“The Therapeutic Potential of microRNAs”Innovations in Pharmaceutical Technology,pages 52-55(March 2011)を参照されたい。
例示的な場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγ結合パートナーがSIRPγに結合すると後に続くシグナル伝達を低減する。種々の態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγにCD47が結合すると、後に続くシグナル伝達、例えばT細胞経内皮移動を引き起こすCD47-SIRPγ結合性相互作用によって誘導される内皮細胞におけるシグナル伝達を低減する(Stefanidakis et al.,Blood 112:1280-1289(2008))。種々の態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγ免疫グロブリンドメインD1(D1)及び/又は免疫グロブリンドメインD2(D2)にSIRPγ結合パートナーが結合すると、後に続くシグナル伝達を低減する。1つの場合には、SIRPγ阻害剤は、SIRPγ免疫グロブリンドメインD1と免疫グロブリンドメインD2との界面にSIRPγ結合パートナーが結合すると、後に続くシグナル伝達を低減する。種々の態様において、SIRPγ阻害剤は、活性化T細胞によってIFNγの分泌を増強する。
種々の場合において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγと、SIRPγ結合パートナーとの結合性相互作用を低減する。例示的な態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγと、SIRPγ結合パートナーとの結合性相互作用の少なくとも又は約10%を阻害する(例えば、結合性相互作用の少なくとも又は約20%、結合性相互作用の少なくとも又は約30%、結合性相互作用の少なくとも又は約40%、結合性相互作用の少なくとも又は約50%、結合性相互作用の少なくとも又は約60%、結合性相互作用の少なくとも又は約70%、結合性相互作用の少なくとも又は約80%、結合性相互作用の少なくとも又は約90%、結合性相互作用の少なくとも又は約95%、結合性相互作用の少なくとも又は約98%、結合性相互作用の少なくとも又は約99%、或いは結合性相互作用の約100%)。他の場合において、SIRPγ結合パートナーは、SIRPγ免疫グロブリンドメインD1と免疫グロブリンドメインD2の界面に結合する。種々の場合において、SIRPγ結合パートナーはCD47である。種々の態様において、SIRPγ結合パートナーは、D1及び/又はD2に結合する。
例示的な態様において、SIRPγ阻害剤は、CD47又は他のSIRPγ結合パートナーに結合するSIRPγの可溶性部分である。種々の態様において、SIRPγの可溶性部分は、CD47又は他のSIRPγ結合パートナーに結合すると、ヌル応答、例えばSIRPγ-CD47仲介シグナル伝達の欠如を引き起こすデコイである。種々の態様において、SIRPγの可溶性部分は、SIRPγアミノ酸配列の少なくともアミノ酸29~360を含む。例示的な態様において、SIRPγの可溶性部分は、配列番号NP_061026.2、ヒトSIRPγアミノ酸配列の少なくともアミノ酸29~360を含む。
一部の実施形態において、SIRPγ阻害剤は、CD47又は他のSIRPγ結合パートナーに結合するSIRPγ-Fcである。種々の態様において、SIRPγ-Fcは、CD47又は他のSIRPγ結合パートナーに結合すると、ヌル応答、例えばSIRPγ-CD47仲介シグナル伝達の欠如を引き起こすデコイである。種々の態様において、SIRPγ-Fcは、SIRPγアミノ酸配列の少なくともアミノ酸29~360を含む。
一部の実施形態において、SIRPγ阻害剤はCRISPR gRNAである。CRISPRノックアウトシステムは、ガイドRNA(gRNA)及びCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(Casタンパク質)を含有する。本明細書で使用される、「gRNA」という用語は、塩基対約100以上の短鎖RNA分子を意味する。gRNAは、ヌクレオチドスペーサー約20塩基対及びCasタンパク質結合に必要な骨格(scaffold)配列を含有する。gRNAの5’末端に向かって20塩基対を変えることによって、その配列に相補的ないずれかのゲノム領域に向かって、gRNAを標的化することができる。長さ20塩基対のヌクレオチドスペーサーを化学的に合成し、骨格RNAにアニールして、生体外でgRNAを形成することができる。gRNAの完全長は生体外にて化学的に合成することができる。代替方法としては、U6 RNAポリメラーゼIIIプロモーターによってドライブされるウイルスベクターによって、gRNAを産生することができる。目的の20塩基対標的配列がすぐに、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に先行する。gRNAが、相補的塩基対によってCasヌクレアーゼを標的配列にガイドし、Casヌクレアーゼは、PAM配列の数個のヌクレオチド上流の二本鎖切断を仲介する。標的細胞は、非相同末端結合(NHEJ)、又は二本鎖切断を修復する相同組換え修復(HDR)を用いる。多くの場合には、NHEJは、標的化DNA領域において欠失、挿入、又はフレームシフト変異を起こし、標的化遺伝子の機能欠損変異を生じる。
例示的な態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγに結合するCD47の可溶性部分である。種々の態様において、CD47の可溶性部分は、SIRPγに結合すると、ヌル応答、例えばSIRPγ-CD47仲介シグナル伝達の欠如を引き起こすデコイである。種々の態様において、CD47の可溶性部分は、CD47アミノ酸配列の少なくともアミノ酸26~133を含む。例示的な態様において、CD47の可溶性部分は、配列番号NP_001768.1、ヒトCD47アミノ酸配列の少なくともアミノ酸26~133を含む。
抗原結合性タンパク質
例示的な場合において、SIRPγバインダー、例えば、SIRPγ阻害剤は、SIRPγに結合する抗原結合性タンパク質である。例示的な態様において、SIRPγ阻害剤は、SIRPγ又はSIRPγ結合パートナー(例えば、CD47)に結合する抗原結合性タンパク質である。種々の態様における抗原結合性タンパク質は、抗体、抗原結合性抗体断片、又は抗体タンパク質産物である。本明細書において使用される、「抗体」という用語は、重鎖と軽鎖を含み、且つ可変領域と定常領域を含む、既知の免疫グロブリンフォーマットを有するタンパク質を意味する。例えば、抗体は、それぞれの対が、1本の「軽」鎖(通常、分子量約25kDaを有する)と1本の「重」鎖(通常、分子量約50~70kDaを有する)を有する、2つの同一対のポリペプチド鎖の「Y形」構造であるIgGであり得る。抗体は可変領域と定常領域を有する。IgGフォーマットにおいて、可変領域は一般に、約100~110以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、主に抗原認識を担い、異なる抗原に結合する抗体の中でもかなり変化する。定常領域は、抗体が免疫システムの細胞及び分子をリクルートすることを可能にする。可変領域は、各軽鎖及び重鎖のN末端領域で構成され、定常領域は、重鎖及び軽鎖のそれぞれのC末端部分で構成される(Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999))。
抗体のCDRの一般構造及び特性は、当技術分野で記述されている。簡潔には、抗体骨格において、CDRは、それらが抗原結合性及び認識を主に担う領域を構成する、重鎖及び軽鎖可変領域内に埋め込まれる。可変領域は通常、フレームワーク領域内に(Kabat et al..,1991によってフレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3、及びFR4と指定される;Chothia and Lesk,1987も参照のこと)、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖CDRを含む(Kabat et al..,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al..,1989,Nature 342:877-883も参照のこと)。
抗体は、当技術分野で公知のいずれかの定常領域を含み得る。ヒト軽鎖はカッパ及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンとして分類され、抗体のアイソタイプはIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとそれぞれ定義される。IgGは、限定されないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4などのいくつかのサブクラスを有する。IgMは、限定されないが、IgM1及びIgM2などのサブクラスを有する。本開示の実施形態は、抗体のすべてのかかるクラス又はアイソタイプを含む。軽鎖定常領域は、例えば、カッパ-又はラムダ型軽鎖定常領域、例えば、ヒトのカッパ-又はラムダ型軽鎖定常領域であることができる。重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域、例えばヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、又はミュー型重鎖定常領域であることができる。したがって、例示的な実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含む、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG、又はIgMの抗体である。一部の実施形態において、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体である。
抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。一部の実施形態において、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒト等によって産生される天然抗体と実質的に類似の配列を含む。この点から、抗体は、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ヒト抗体等としてみなすことができる。特定の態様において、抗体はヒト抗体である。特定の態様において、抗体は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。「キメラ抗体」という用語は、2種類以上の異なる抗体からのドメインを含有する抗体を意味する。キメラ抗体は、例えば一方の種からの定常ドメインと、第2の種からの可変ドメインを含有し得て、或いはより一般的には、少なくとも2つの種からのアミノ酸配列のストレッチを含有し得る。キメラ抗体は、同一種内の2つ以上の異なる抗体のドメインも含有し得る。抗体に関して使用される場合に「ヒト化」という用語は、起源抗体よりも、真のヒト抗体により類似した構造及び免疫機能を有するように遺伝子操作された、非ヒト由来の少なくともCDR領域を有する抗体を意味する。例えば、ヒト化は、ヒト抗体への、マウス抗体などの非ヒト抗体からのCDRのグラフト化を含み得る。ヒト化は、非ヒト配列をヒト配列により類似させるための、選択アミノ酸置換も含み得る。
抗体は、例えば、パパイン及びペプシンなどの酵素によって断片に切断することができる。パパインは抗体を切断して、2つのFab断片と1つのFc断片が生成される。ペプシンは抗体を切断し、F(ab’)断片及びpFc’断片が生成される。本開示の例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、抗体の抗原結合性断片である。本明細書で使用される、「抗原結合性抗体断片」という用語は、抗体の抗原に結合することができる抗体の部分を意味し、「抗原結合性断片」又は「抗原結合性部分」としても知られる。例示的な場合において、抗原結合性抗体断片は、Fab断片又はF(ab’)断片である。
種々の態様において、抗原結合性タンパク質は抗体タンパク質産物である。本明細書において使用される、「抗体タンパク質産物」という用語は、種々の場合において抗体の構造に基づくが、天然では見られない、いくつかの抗体代替物のいずれか1つを意味する。一部の態様において、抗体タンパク質産物は、少なくとも約12~150kDaの範囲内の分子量を有する。特定の態様において、抗体タンパク質産物は、より大きなオーダーの結合価でない場合には、単量体(n=1)から、二量体(n=2)、三量体(n=3)、四量体(n=4)までの範囲の結合価(n)を有する。一部の態様における抗体タンパク質産物は、完全抗体構造をベースとする産物及び/又は完全抗原結合性能力を維持する抗体断片、例えば、scFv、Fab及びVHH/VH(以下に記述する)を模擬する産物である。
その完全抗原結合部位を維持する最小の抗原結合性抗体断片は、全体的に可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性、可動性アミノ酸ペプチドリンカーが、分子の安定化のためにscFv(単鎖断片可変)断片にV領域を連結するために使用され、或いは、定常(C)ドメインがV領域に付加されて、Fab断片[断片、抗原結合性]が形成される。scFv断片とFab断片のどちらも、宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞において容易に産生することができる。他の抗体タンパク質産物としては、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)、並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なるフォーマットを含む、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)又はミニボディ(minibody)(miniAb)などの二量体及び多量体抗体フォーマットが挙げられる。最小断片は、ラクダ科の重鎖AbのVHH/VH並びに単一ドメインAb(sdAb)である。新規な抗体フォーマットの作成に最も多く使用される構成単位は、単鎖可変(V)-ドメイン抗体断片(scFv)であり、約15個のアミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖及び軽鎖(VH及びVLドメイン)からのVドメインを含む。ぺプチボディ又はペプチド-Fc融合物は、さらに他の抗体タンパク質産物である。ぺプチボディの構造は、Fcドメイン上にグラフト化された生物活性ペプチドからなる。ぺプチボディは当技術分野で十分に記述されている。例えば、Shimamoto et al..,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照のこと。
他の抗体タンパク質産物としては、単鎖抗体(SCA);ダイアボディ;トリアボディ;テトラボディ;二重特異性又は三重特異性抗体等が挙げられる。二重特異性抗体は、主な5つのクラス:BsIgG、付加IgG、BsAb断片、二重特異性融合タンパク質及びBsAbコンジュゲートに分けられ得る。例えば、Spiess et al..,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照のこと。
例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、二重特異性T細胞誘導(BiTE(登録商標))分子である。BiTE(登録商標)分子は、異なる抗体の2つのscFvを含む融合タンパク質である。一方はCD3に結合し、もう一方は標的抗原に結合する。BiTE(登録商標)分子は当技術分野で公知である。例えば、Huehls et al..,Immuno Cell Biol 93(3):290-296(2015);Rossi et al..,MAbs 6(2):381-91(2014);Ross et al..,PLoS One 12(8):e0183390を参照のこと。
種々の態様において、抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)がSIRPγに結合する。一部の態様における抗原結合性タンパク質は、非共有結合的及び可逆的様式でSIRPγに結合する。例示的な実施形態において、抗原結合性タンパク質の結合強度は、その親和性、SIRPγの結合部位とSIRPγ結合パートナーとの相互作用の強度の程度の点から説明され得る。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγに対する高い親和性を有し、したがって、低親和性抗原結合性タンパク質よりも短期間で多くの量のSIRPγを結合させる。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質はSIRPγに対する低親和性を有し、したがって高親和性抗原結合性タンパク質よりも長期間で少ない量のSIRPγを結合させる。例示的な態様において、その抗原結合性タンパク質は、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、少なくとも10-1、又は少なくとも1010-1である平衡会合定数、KAを有する。当業者によって理解されるように、KAは、pH、温度及び緩衝剤組成などの因子によって影響を受け得る。
例示的な実施形態において、SIRPγへの抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の結合強度は、その感度の点から記述され得る。Kは、抗原結合性タンパク質と、SIRPγとの間の平衡解離定数、koff/kon比である。K及びKAは反比例する。K値は、抗原結合性タンパク質の濃度(特定の実験に必要な抗原結合性タンパク質の量)に関係する。K値が低いほど(必要とされる濃度が低いほど)、抗原結合性タンパク質の親和性が高くなる。例示的な態様において、SIRPγへの抗原結合性タンパク質の結合強度は、Kの点から説明され得る。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質のKは、約10-1M、約10-2M、約10-3M、約10-4M、約10-5M、約10-6M、又はそれ以下である。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質のKは、マイクロモル、ナノモル、ピコモル又はフェントモルである。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質のKは、約10-4~10-6M、又は10-7~10-9M、又は10-10~10-12M、又は10-13~10-15Mの範囲内である。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、約0.04nM以上のKでヒトSIRPγに結合する。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、K約0.01nM~約20nM、0.02nM~20nM、0.05nM~20nM、0.05nM~15nM、0.1nM~15nM、0.1nM~10nM、1nM~10nM、又は5nM~10nMでヒトSIRPγに結合する。種々の態様において、そのKDは、SIRPγがCD47に対して有するKDよりも低く、任意に約23μM未満である。
任意に、抗原結合性タンパク質は、完全ヒト抗体又はその抗原結合性断片、ヒト化抗体又はその抗原結合性断片、キメラ抗体又はその抗原結合性断片を含む。抗原結合性タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は単鎖Fvも含み得る。種々の態様において、SIRPγ阻害剤は、抗SIRPγ抗体の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上を含む。
特定の態様において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγ上のエピトープに結合し、任意に、そのエピトープは、SIRPγのCD47結合部位内に、又はCD47結合部位に近い、又はCD47結合部位と異なる部位に位置する。種々の態様において、抗原結合性タンパク質は、SLLPVGPのアミノ酸配列(配列番号21);SIRPγアミノ酸配列のアミノ酸29~35、LTKRNNMDF(配列番号22)、及びKFRKGS(配列番号23)を含むエピトープに結合する。
例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγへの結合に関して、SIRPγに結合することが知られている参照抗体(例えば、OX117)と競合する、完全ヒト抗体又はその抗原結合性断片、ヒト化抗体又はその抗原結合性断片、キメラ抗体又はその抗原結合性断片、又はFab、Fab’、F(ab’)2、又は単鎖Fvを含む。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、参照抗体(例えば、OX117)が結合する、エピトープに結合する。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、参照抗体(例えば、OX117)のKと類似の、又は同じSIRPγに対するKを示す。例示的な態様において、抗原結合性タンパク質は、参照抗体(例えば、OX117)のKよりも低いSIRPγに対するKを示し、したがって、参照抗体と比べてSIRPγに対する高い親和性を示す。抗原結合性タンパク質のリガンド又は標的に対する結合親和性を決定するための適切な技術は当技術分野で公知であり、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく方法、フローサイトメトリー又は蛍光顕微鏡検査法に基づく方法、KinExA(登録商標)法が挙げられる(例えば、国際公開第2019140196号パンフレット、Azimzadeh and Regenmortel,J Mol Recognit 3(3):108-116(1990);Schuck et al.,Curr Protoc Cell Biol Chapter 17:Unit 17.6(2004);Tseng et al.,Electrophoresis 23(6):836-846(2002);Van Regenmortel et al.,Immunol Invest 26(1-2):67-82(1997)参照)。
例示的な場合において、SIRPγへの結合に関して参照抗体(例えば、OX117)と競合する抗原結合性タンパク質は、生体外での競合的結合アッセイにおいてSIRPγに結合される抗SIRPγ抗体(例えば、OX117)の量を低減する。例示的な態様において、本開示の抗原結合性タンパク質の存在下でSIRPγに結合される参照抗体(例えば、OX117)の量は、少なくとも又は約25%、少なくとも又は約30%、少なくとも又は約35%、少なくとも又は約40%、少なくとも又は約45%、少なくとも又は約50%、少なくとも又は約55%、少なくとも又は約60%、少なくとも又は約65%、少なくとも又は約70%、少なくとも又は約75%、少なくとも又は約80%、少なくとも又は約85%、少なくとも又は約90%或いはそれ以上(例えば、少なくとも又は約95%、少なくとも又は約98%)減少する。種々の態様において、本開示の抗原結合性タンパク質は、SIRPγと参照抗体との結合性相互作用を阻害し、その阻害はIC50によって特徴付けられる。種々の態様において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγと参照抗体との結合性相互作用の阻害に関して約250nM未満のIC50を示す。種々の態様において、抗原結合性タンパク質は、IC50約200nM未満、約150nM未満、約100nM未満、約50nm未満、約25nm未満、約10nm未満、約5nM未満、約1nM未満、0.5nM未満又は0.1nM未満を示す。
SIRPγに結合する参照抗体(例えば、OX117)の低減された量の決定に使用することができる適切な競合的結合アッセイは、SIRPγへの結合に関して参照抗体(例えば、OX117)と競合する、本発明に開示の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の存在下にて、SIRPγ又はSIRPγを発現する細胞と共に参照抗体(例えば、OX117)をインキュベートする工程を含む。SIRPγに結合する参照抗体(例えば、OX117)の量は、SIRPγへの結合に関して競合する本開示の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を使用して、及び使用せず測定される。
種々の場合において、本開示の抗原結合性タンパク質は、SIRPγへの結合に関して参照抗体と競合し、それによって、FACSに基づくアッセイによって決定される、参照抗体に結合するSIRPγの量が低減され、そのアッセイでは、参照抗体のFcに結合するフルオロフォア結合型二次抗体の蛍光が、本開示の抗原結合性タンパク質の特定の量の非存在下又は存在下にて測定される。種々の態様において、FACSに基づくアッセイは、参照抗体、フルオロフォア結合型二次抗体、及びSIRPγを発現する細胞を用いて行われる。種々の態様において、細胞を遺伝子操作して、SIRPγを過剰発現させる。一部の態様において、その細胞は、SIRPγを発現するようにウイルスベクターで形質導入されたHEK293T細胞である。代替の態様において、その細胞は内因的にSIRPγを発現する。FACSに基づくアッセイを行う前に、一部の態様では、SIRPγを内因的に発現する細胞が、低SIRPγ発現細胞又は高SIRPγ発現細胞として予め決定される。
他の結合アッセイ、例えば、抗原又はそのエピトープへの結合に関して他の抗原結合性タンパク質と競合する、抗体の能力を試験する競合的結合アッセイ又は競合アッセイは当技術分野で公知である。例えば、適切な受容体-リガンド競合アッセイが、参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第2019140196号パンフレットに記載されている。例えば、Trikha et al.,Int J Cancer 110:326-335(2004);Tam et al.,Circulation 98(11):1085-1091(1998);米国特許出願公開第20140178905号明細書、Chand et al.,Biologicals 46:168-171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89-91(2017);Goolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250-253(2017);Hunter and Cochran,Methods Enzymol 250:21-44(2016);Cox et al.,Immunoassay Methods,Immunoassay Methods.2012 May 1[Updated 2019 Jul 8].In:Sittampalam GS,Grossman A,Brimacombe K,et al.,editors.Assay Guidance Manual[Internet].Bethesda(MD):Eli Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences;2004-:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/から入手可能;Clarke,William,“Immunoassays for Therapeutic Drug Monitoring and Clinical Toxicology”,Handbook of Analytical Separations,Volume 5,pages 95-112(2004)、及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250-253(2017)を参照のこと。例示的な態様において、SIRPγバインダーは、これらの参考文献に記載のアッセイのいずれかによって決定されるように、SIRPγへの結合に関してOX117と競合する。
癌の治療
本開示は、腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法を提供する。例示的な実施形態において、癌を治療する方法は、対象における腫瘍又は癌の治療に有効な量で、SIRPγバインダー(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を対象に投与することを含む。一部の実施形態において、SIRPγバインダーはSIRPγ阻害剤である。一部の実施形態において、癌を治療する方法は、対象における腫瘍又は癌の治療に有効な量で、SIRPγ上のエピトープに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を対象に投与することを含む。
本明細書において考察されるSIRPγ上のエピトープに結合する抗原結合性タンパク質のいずれか(例えば、SIRPγバインダー及びSIRPγ阻害剤)が、かかる方法に使用され得る。特定の態様において、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、SIRPγ上のエピトープに結合する。一部の実施形態において、SIRPγ上のエピトープは、SIRPγのCD47結合部位内に、又はCD47結合部位に近い、又はCD47結合部位と異なる部位に位置する。種々の態様において、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、SLLPVGPのアミノ酸配列(配列番号21);SIRPγアミノ酸配列のアミノ酸29~35、LTKRNNMDF(配列番号22)、及びKFRKGS(配列番号23)を含むエピトープに結合する。
種々の場合において、SIRPγバインダーは、D1に結合し、且つ/又はSIRPγのCD47結合部位に結合する。種々の態様において、SIRPγバインダーは、SIRPγのD1及びIgドメイン2(D2)に結合する。例示的な態様において、SIRPγバインダーは、D1とD2の両方に、任意にD1とD2の界面にて結合する。任意に、SIRPγバインダーは、CD47以外のSIRPγ結合パートナーの結合部位に結合する。図9Eは、SIRPγ、そのIgドメイン及びCD47結合部位の説明図を提供する。例示的な場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγモノクローナル抗体OX117がそれに結合する、エピトープに結合し、任意に、SIRPγバインダーは、SIRPγへの結合に関して、SIRPγに結合することが既知の参照抗体(例えば、OX117)と競合する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、SIRPγへの結合に関して、OX117と競合する。種々の場合におけるSIRPγバインダーは、OX117と同じ又はそれ以上の親和性を有するSIRPγに結合する。一部の実施形態において、SIRPγバインダーは、OX117、又はその抗原結合性断片である。図9Eは、SIRPγと、OX117抗体のfabと、の結合性相互作用の説明図を提供する。種々の態様におけるSIRPγバインダーは、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のうちの1つ又は複数と水素結合を形成する。種々の態様において、SIRPγバインダーは、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のそれぞれと水素結合を形成する。任意に、SIRPγバインダーは、CD47結合部位と重複しないエピトープに結合する。
例示的な場合において、SIRPγに結合すると、SIRPγバインダーは、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を増強する。一部の場合において、開示の方法は、コントロールに対していずれかの程度又はレベルまで、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌を増加する。例えば、一部の態様において、開示の方法によって提供される増加は、コントロールに対して、約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)である。例示的な実施形態において、開示の方法によって提供される増加は、コントロールに対して100%を超える、例えば、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%又は1000%の増加である。例示的な実施形態において、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌は、コントロールに対して、少なくとも又は約1.5倍、少なくとも又は約2.0倍、少なくとも又は約3.0倍、少なくとも又は約4.0倍、少なくとも又は約5.0倍、少なくとも又は約10.0倍、少なくとも又は約25倍、少なくとも又は約50倍、少なくとも又は約75倍、又は少なくとも又は約100倍以上増加する。種々の態様におけるコントロールは、SIRPγへのSIRPγバインダーの結合がない、T細胞活性化、T細胞増殖及びサイトカイン分泌である。
例示的な場合において、SIRPγバインダーは、SIRPγに結合すると、SIRPγの高次構造変化を起こす。種々の場合におけるSIRPγの高次構造変化は、結合パートナーの結合部位のアクセシビリティを変化させ得る。任意に、種々の態様における高次構造変化は、異なる結合パートナーがSIRPγに結合することも可能にする。さらに、又はその代わりとして、高次構造変化は、SIRPγ分子の二量体化又は多量体化を起こし得る。例示的な態様において、SIRPγの二量体化又は多量体化は、1つ又は複数の結合パートナーがSIRPγに結合することを防ぐ。例示的な態様において、SIRPγの二量体化又は多量体化は、SIRPγに結合する1つ又は複数の結合パートナーの結合を増強する。種々の場合において、SIRPγバインダーは同時に、2つのSIRPγ分子に結合するか、又はSIRPγ二量体化を促進する。
本明細書において使用される「治療」という用語並びにそれに関連する言葉は、100%の治療又は完全な治療を必ずしも意味しない。むしろ、潜在的な利点又は治療効果を有することが当業者によって認識される、様々な程度の治療がある。これに関して、本開示の癌を治療する方法は、いずれかの量又はいずれかのレベルの治療を提供することができる。さらに、本開示の方法によって提供される治療は、治療される癌の1つ又は複数の病状又は症状又は兆候の治療を含み得る。また、本開示の方法によって提供される治療は、癌の進行を遅らせることを含み得る。例えば、この方法は、T細胞活性(例えば、T細胞エフェクター活性)の増加又は腫瘍若しくは癌に対する免疫応答の増加、腫瘍若しくは癌増殖又は全身腫瘍組織量の低減、腫瘍細胞の拡散転移の低減、腫瘍若しくは癌細胞の細胞死の増加、又は腫瘍退縮の増加、T細胞抑制活性の低減等によって、癌を治療することができる。上述のことに従って、腫瘍又は癌を有する対象においてT細胞のエフェクター活性を増加する、又は抑制活性を低減する方法が本明細書において提供される。例示的な実施形態において、その方法は、対象においてエフェクター活性を増加する、又は抑制活性を低減するのに有効な量で、対象にSIRPγ阻害剤を投与することを含む。また、上述のことに従って、対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答を高める方法が本明細書において提供される。例示的な実施形態において、その方法は、腫瘍又は癌に対する免疫応答を高めるのに有効な量でSIRPγ阻害剤を対象に投与することを含む。
種々の態様において、その方法は、癌の発症又は再発を少なくとも1日、2日、4日、6日、8日、10日、15日、30日、2ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、6ヵ月、1年、2年、3年、4年、又はそれ以上遅らせる目的で治療する。種々の態様において、その方法は、対象の生存期間を増加する目的で治療する。例示的な態様において、本開示の方法は、拡散転移の出現又は発症を遅らせる目的で治療を提供する。種々の場合において、その方法は、新たな拡散転移の出現又は発症を遅らせる目的で治療を提供する。
SIRPγバインダー医薬組成物、投与の経路及びタイミング
以下の実施形態では、SIRPγに結合する、本発明の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の医薬組成物、その投与の経路及びタイミングが開示される。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)である。
一部の実施形態において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、医薬組成物の一部として対象に投与される。他の実施形態において、医薬組成物は、SIRPγに結合するSIRPγバインダー若しくはSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)又は薬剤として許容されるその塩を含む。種々の態様において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の薬剤として許容される塩は、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を最終的に単離及び精製する間にその場で調製され、或いは適切な酸と遊離塩基官能基を反応させて別々に調製される。薬剤として許容される酸付加塩を形成するために用いることができる酸の例としては、例えば、無機酸、例えば、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸、及び有機酸、例えば、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸が挙げられる。種々の態様における酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウ脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオネート(isothionate))、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩である。
種々の態様において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の薬剤として許容される塩は、塩基付加塩である。塩基付加塩もまた、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を最終的に単離及び精製する間に、或いは薬剤として許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩など適切な塩基と、又はアンモニア若しくは有機第1級、第2級、若しくは第3級アミンと、カルボン酸含有部位との反応によって、その場で製造することもできる。種々の場合において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の薬剤として許容される塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えば、特にリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩等、並びに非毒性第4級アンモニア、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、及びエチルアンモニウムなどのアミンカチオンをベースとするカチオンである。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。さらに、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化、及びヨウ化メチル、エチル、プロピル、及びブチルなどの低級アルキルハロゲン化物;塩化、臭化、及びヨウ化メデシル、ラウリル、ミリスチル、及びステアリルなどの長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジル及びフェネチルなどのアリールアルキルハロゲン化物などとしてのかかるSIRPγ阻害剤で四級化され得る。それによって、水溶性又は油溶性又は分散性生成物が得られる。
種々の態様において、本発明に開示の方法の、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、対象に投与する前に、薬剤として許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と配合される。投与経路及び他の因子に応じて、特定のSIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアロゾル噴射剤、空気置換剤(air displacement agent)、アルカリ化剤、固化防止剤、抗凝固薬、抗菌の保存剤、酸化防止剤、防腐剤、塩基、バインダー、緩衝剤、キレート剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、清浄剤、希釈剤、消毒剤、崩壊剤、分散剤、溶解向上剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、充填剤、皮膜形成剤、香味向上剤、着香剤、流動性向上剤、ゲル化剤、造粒剤、湿潤剤(humectant)、滑沢剤、粘膜付着性、軟膏ベース、軟膏、油性賦形剤、有機塩基、口中錠ベース、顔料、可塑剤、研磨剤(polishing agent)、保存剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶媒、安定剤、坐剤ベース、表面活性剤、界面活性剤、懸濁化剤、甘味剤、治療薬、増粘剤、等張化剤、毒性剤、粘度向上剤、吸水剤、水混和性共溶媒、水軟化剤、又は湿潤剤(wetting agent)などの1種又は複数種の更なる薬剤として許容される成分と混合され得る。
本発明に開示の方法のSIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、いずれかの適切な投与経路を経て、対象に投与することができる。例えば、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、非経口的、経鼻、経口、肺内、局所、経腟、又は経直腸投与を介して対象に投与することができる。投与経路についての以下の考察は、例示的な実施形態を単に説明するために提供され、いずれにしてもその範囲を制限すると解釈すべきではない。
例示的な態様において、本発明に開示の方法の、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、非経口投与用に配合される。「非経口」という用語は、消化管を通してではなく、皮下、筋肉内、髄腔内、又は静脈内などの他の経路によることを意味する。非経口投与に適した配合物としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、意図するレシピエントの血液との等張性を配合物に付与する溶質を含有し得る、水性及び非水性、等張性滅菌注入溶液、並びに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、薬剤として許容される界面活性剤、例えば石鹸若しくは洗浄剤、懸濁化剤、例えばペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロース、又は乳化剤及び他の薬剤補助剤を添加して、或いは添加することなく、水、生理食塩水、水性ブドウ糖及び関連する糖溶液、エタノール若しくはヘキサデシルアルコールなどのアルコール、プロピレングリコール若しくはポリエチレングリコールなどのグリコール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、2,2-ジメチル-l53-ジオキソラン-4-メタノールなどのケタール、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又はアセチル化脂肪酸グリセリドなどの滅菌液体又は液体の混合物など、薬剤担体中の生理学的に許容される希釈剤と共に投与され得る。非経口配合物において使用することができるオイルとしては、石油、動物油、植物油又は合成油が挙げられる。オイルの具体的な例としては、ラッカセイ、ダイズ、ゴマ、綿実、トウモロコシ、オリーブ油、ペトロラタム、及び鉱油が挙げられる。非経口配合物においての使用に適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。例示的な態様において、非経口投与用の配合物としては、石鹸が挙げられる。非経口配合物においての使用に適した石鹸としては、脂肪性アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な界面活性剤としては、(a)例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、及びアルキルピリジニウムハロゲン化物などのカチオン性界面活性剤、(b)例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、及びスルホコハク酸塩などのアニオン性界面活性剤、(c)例えば、脂肪族アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーなどの非イオン性界面活性剤、(d)例えば、アルキル-β-アミノプロピオン酸塩、及び2-アルキル-イミダゾリン第4級アンモニウム塩などの両性界面活性剤、及び(e)その混合物が挙げられる。例示的な場合において、保存剤及び緩衝剤が非経口的配合物中に存在する。注入部位での刺激作用を最小限にする、又は除くために、かかる組成物は、親水親油バランス(HLB)約12~約17を有する、1種又は複数種の非イオン界面活性剤を含有し得る。かかる配合物中の界面活性剤の量は通常、約5~約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤としては、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、及びプロピレングリコールとのプロピレンオキシドの縮合によって形成される、エチレンオキシドと疎水性塩基との高分子量付加物が挙げられる。一部の態様における非経口配合は、アンプル、及びバイアル、シリンジなどの1回量又は複数回量密閉容器内にあり、且つ使用直前に注入するための、滅菌液体賦形剤、例えば水のみ添加する必要があるフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保管することができる。一部の態様における即時調合注入溶液及び懸濁液は、先に記述される種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製される。
例示的な態様において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、注入用に配合される。注射可能の配合物は本開示に従う。注射可能な組成物に有効な薬剤担体の条件は当業者にはよく知られている(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982)、及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986)参照)。
任意に、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、皮下注射によって対象に投与される。
種々の場合において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、対象に経口投与される。経口投与に適した配合物は、(a)液体溶液、例えば、水、生理食塩水若しくはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解された本開示の有効量の類似物;(b)それぞれが固体若しくは顆粒として、所定量の活性成分を含有する、カプセル剤、サッシェ、錠剤、口中錠、及びトローチ剤;(c)粉末;(d)適切な液体中の懸濁液;及び(e)適切なエマルジョンからなり得る。液体配合物は、薬剤として許容される界面活性剤を添加した、又は添加しない、希釈剤、例えば水、及びアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコールを含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、及び不活性充填剤、例えばラクトース、ショ糖、リン酸カルシウム、及びトウモロコシデンプンを含有する、通常のハード若しくはソフトシェルゼラチンタイプであり得る。錠剤の形態は、ラクトース、ショ糖、マンニトール、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、ガーゴム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、着香剤、及び他の薬理学的に適合性の賦形剤のうちの1つ又は複数を含み得る。口中錠の形態は、香味、通常ショ糖及びアカシア又はトラガカントゴムにおいて本開示の類似物を含み得て、且つトローチ(pastille)は、当技術分野で公知の賦形剤の他に含有する、ゼラチン及びグリセリン、又はショ糖及びアカシア、エマルジョン、ゲル等の不活性ベース中に本開示の類似物を含む。
SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、例えば、毎日(1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回、1日6回)、週に3回、週に2回、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週、隔週、3週毎、毎月、又は隔月など、いずれかの投与計画に従って投与され得る。
投与量
以下の実施形態では、SIRPγに結合する本発明の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の投与量を開示する。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)である。
SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、本明細書に記載のように、T細胞のエフェクター活性を増加する、又は抑制活性を低減する、或いは対象において腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を増加する方法に有用であると考えられ、したがって、1つ又は複数の疾患、例えば癌を治療又は予防する方法において有用であると考えられる。投与されるSIRPγに結合するSIRPγバインダー若しくはSIRPγ阻害剤、又は抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の量又は用量は、妥当な時間枠にわたって対象又は動物において、例えば治療的又は予防的応答をもたらすのに十分であるべきである。例えば、SIRPγに結合するSIRPγバインダー若しくはSIRPγ阻害剤、又は抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)(例えば、SIRPγ阻害剤)の用量は、投与した時点から、約1~約4日間又は約1~約4週間以上、例えば、約5~約20週間以上の期間、癌を治療するのに十分であるべきである。特定の実施形態において、その期間はさらに長くなり得る。用量は、特定の作用薬の有効性、及び治療される動物(例えば、ヒト)の状態、並びに治療される動物(例えば、ヒト)の体重によって決定されるだろう。
投与量を決定する多くのアッセイが当技術分野で公知である。本明細書における目的では、SIRPγに結合するSIRPγバインダー若しくはSIRPγ阻害剤、又は抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を所定の用量で、各セットが異なる用量で与えられる、セットの哺乳動物の中の哺乳動物に投与した場合の、活性化T細胞によるIFNγの分泌を比較することを含むアッセイを用いて、臨床試験において哺乳動物に投与される開始用量を決定することができる。活性化T細胞によるIFNγの分泌を測定する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書に記述される。
SIRPγに結合するSIRPγバインダー若しくはSIRPγ阻害剤、又は抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の用量は、特定の作用薬の投与に伴い得る有害な副作用の存在、性質及び程度によって決定される。通常、主治医が、年齢、体重、全身の健康状態、食餌、性別、投与されるべきSIRPγバインダー、SIRPγ阻害剤、又はSIRPγに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)、投与経路、及び治療される症状の重症度など様々な因子を考慮して、個々の患者を、それを用いて治療する、SIRPγバインダー、SIRPγ阻害剤、又はSIRPγに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の投薬量を決定する。一例として、及び本開示に制限することを意図せず、本発明に開示の方法のSIRPγバインダー、SIRPγ阻害剤、又はSIRPγに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の用量は、約0.0001~約1g/kg(治療される対象の体重/日)、約0.0001~約0.001g/kg体重/日、又は約0.01mg~約1g/kg体重/日であり得る。
放出制御配合物
以下の実施形態に、SIRPγに結合する本発明の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の放出制御配合物が開示される。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)である。
一部の実施形態において、本明細書に記載のようにSIRPγに結合する、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、デポー剤形へと修飾することができ、その結果その様式では、それが投与される体内へと、時間及び体内での位置に関してコントロールされて作用薬が放出される(例えば、米国特許第4,450,150号明細書参照)。SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)のデポー剤形は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)と、ポリマーなどの多孔性若しくは非多孔性材料を含む、例えば植込み可能な組成物であり得て、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、材料によって封入される、又は材料全体を通して、及び/若しくは非多孔性材料の分解を通じて拡散される。次いで、デポー剤は、対象の体内の目的位置へ埋め込まれ、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、所定の速度で植込錠から放出される。
種々の態様において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を含む医薬組成物は、生体内(in vivo)の放出プロファイルのいずれかのタイプを有するように修飾され得る。一部の態様において、医薬組成物は、即時放出、放出制御、徐放性(sustained release)、徐放性(extended release)、遅延放出、又は2相性放出配合物である。放出制御用のペプチドを製剤化する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Qian et al.,J Pharm 374:46-52(2009)及び国際特許出願公開第2008/130158号パンフレット、国際特許出願公開第2004/033036号パンフレット;国際特許出願公開第2000/032218号パンフレット;及び国際特許出願公開第1999/040942号パンフレットを参照のこと。
種々の場合において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を含む医薬組成物はさらに、長期間の貯蔵及び/又は送達作用のために、例えば、ミセル若しくはリポソームを、又は他のカプセル化形態を含み得る。
組み合わせ
以下の実施形態では、SIRPγに結合する、本発明の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)の組み合わせが開示される。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)である。
種々の場合において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤は、例えば更なる医薬活性を含まず、対象に単独で投与される。種々の態様において、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、化学療法薬と併せて対象に投与される。本発明に開示の方法での使用に適した化学療法薬は当技術分野で公知であり、限定されないが、米国特許第6,630,124号明細書に記載のように、白金配位化合物、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生物質、有糸分裂阻害アルカロイド及びジフルオロヌクレオシドが挙げられる。
一部の実施形態において、化学療法薬は白金配位化合物である。「白金配位化合物」という用語は、イオン形態で白金を提供する、いずれかの腫瘍細胞増殖阻害化合物を意味する。一部の実施形態において、白金配位化合物は、シス-ジアミンジアクオ白金(II)-イオン;クロロ(ジエチレントリアミン)-白金(II)塩化物;ジクロロ(エチレンジアミン)-白金(II)、ジアミン(1,1-シクロブタンジカルボキシラト)白金(II)(カルボプラチン);スピロプラチン;イプロプラチン;ジアミン(2-エチルマロナト)-白金(II);エチレンジアミンマロナト白金(II);アクア(1,2-ジアミノシクロヘキサン)-スルファト白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)マロナト白金(II);(4-カロキシフタラト(caroxyphthalato))(1,2-ジアミノシクロヘキサン)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)-(イソシトラト)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)シス(ピルバト)白金(II);(1,2-ジアミノシクロヘキサン)オキサラト白金(II);オルマプラチン;又はテトラプラチンである。
一部の実施形態において、シスプラチンは、本発明の組成物及び方法に用いられる白金配位化合物である。シスプラチンは、Bristol Myers-Squibb CorporationからPLATINOL(商標)の名称で市販されており、水、滅菌生理食塩水又は他の適切な賦形剤で構成するための粉末として入手可能である。本発明において使用するのに適した他の白金配位化合物は公知であり、市販されており、且つ/又は既知の技術によって調製することができる。シスプラチン、又はシス-ジクロロジアミン白金IIは、種々のヒト固形悪性腫瘍の治療において化学療法薬として長年にわたり上手く使用されてきた。最近では、他のジアミノ白金錯体も、種々のヒト固形悪性腫瘍の治療において化学療法薬として有効性を示している。かかるジアミノ白金錯体としては、限定されないが、スピロ白金及びカルボ白金が挙げられる。シスプラチン及び他のジアミノ白金錯体は、ヒトにおける化学治療剤として広く使用されてきたが、それらは高投与量レベルで送達されなければならず、このため腎臓障害などの毒性問題を引き起こし得る。
一部の実施形態では、化学療法薬はトポイソメラーゼ阻害剤である。トポイソメラーゼは、真核細胞のDNAトポロジーを変更することができる酵素である。トポイソメラーゼは細胞機能及び細胞増殖に重要である。一般に、真核細胞には2つのクラスのトポイソメラーゼ、I型及びII型がある。トポイソメラーゼIは、分子量がおよそ100,000の単量体酵素である。この酵素はDNAに結合し、一過性の一本鎖切断を生じさせ、二重らせんをほどき(又は二重らせんがほどけるのを可能にし)、続いてDNA鎖から解離する前に、切断を再接合する。種々のトポイソメラーゼ阻害剤が、卵巣癌、乳癌、食道癌又は非小細胞肺癌に罹患しているヒトの治療において臨床的有効性を示している。
一部の態様において、トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプトテシン又はカンプトテシン類似体である。カンプトテシンは、中国原産のCamptotheca accuminataの木、及びインド原産のNothapodytes foetidaの木によって産生される、水不溶性細胞毒性アルカロイドである。カンプトテシンは、多くの腫瘍細胞の増殖を阻害する。カンプトテシン類似体クラスの化合物は一般に、DNAトポイソメラーゼIの特異的な阻害剤である。カンプトテシン類似体クラスの化合物としては、限定されないが、トポテカン、イリノテカン及び9-アミノ-カンプトテシンが挙げられる。
更なる実施形態において、化学療法薬は、1991年4月2日に発行された米国特許第5,004,758号明細書、及び20’公報番号、欧州特許第0321122号明細書として1989年6月21日に公開された欧州特許出願第88311366.4号明細書;1986年8月5日に発行された米国特許第4,604,463号明細書、及び1985年4月17日に公開された欧州特許出願公開第0137145号明細書;1984年9月25日に発行された米国特許第4,473,692号明細書、及び1983年3月16日に公開された欧州特許出願公開第0074256号明細書;1985年10月8日に発行された米国特許第4,545,880号明細書、及び1983年3月16日に公開された欧州特許出願公開第0074256号明細書;1983年9月14日に公開された欧州特許出願公開第0088642号明細書;Wani et al.,J.Med.Chem.,29,2358-2363(1986);Nitta et al.,Proc.14th International Congr.Chemotherapy,Kyoto,1985,Tokyo Press,Anticancer Section 1,p.28-30に請求されている、又は記載されている、腫瘍細胞増殖阻害カンプトテシン類似体であり、特にCPT-11と呼ばれる化合物である。CPT-11は、4-(ピペリジノ)-ピペリジン側鎖が10-ヒドロキシ-7-エチルカンプトテシンのC-10にてカルバメート結合によって連結しているカンプトテシン類似体である。CPT-11は現在、ヒト臨床試験が行われており、イリノテカンとも呼ばれる;Wani et al,J.Med.Chem.,23,554(1980);Wani et.al.,J.Med.Chem.,30,1774(1987);1982年8月3日に発行された米国特許第4,342,776号明細書;1990年9月13日に出願された米国特許出願第581,916号明細書、及び1991年3月20日に公開された欧州特許出願公開第418099号明細書;1985年4月23日に発行された米国特許第4,513,138号明細書、及び1983年3月23日に公開された欧州特許出願公開第0074770号明細書;1983年8月16日に発行された米国特許第4,399,276号明細書、及び1982年7月28日に公開された欧州特許出願公開第0056692号明細書;そのそれぞれの開示内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。上記のカンプトテシン類似体クラスの化合物のすべては、市販されており、且つ/又は上記の参考文献に記載の技術を含む既知の技術によって調製することができる。トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカン、イリノテカン及び9-アミノカンプトテシンからなる群から選択され得る。
カンプトテシン類似体クラスの多くの化合物(その薬剤として許容される塩、含水化合物及び溶媒和化合物を含む)の調製、並びにカンプトテシン類似体クラスのかかる化合物と、不活性な薬剤として許容される担体又は希釈剤とを含む経口及び非経口医薬組成物の調製は、1991年4月2日に発行された米国特許第5,004,758号明細書、及び欧州特許第0321122号明細書として1989年6月21日に公開された欧州特許出願第88311366.4号明細書に広範に記載されており、その教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
さらに他の実施形態において、化学療法薬は抗生作用化合物である。適切な抗生物質としては、限定されないが、ドキソルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン及びストレプトゾシンが挙げられる。
一部の実施形態では、化学治療剤は有糸分裂阻害アルカロイドである。一般に、有糸分裂阻害アルカロイドは、ニチニチソウ(Cantharanthus roseus)から抽出することができ、抗癌化学療法剤として有効であることが分かっている。多くの半合成誘導体が化学的及び薬理学的に研究されている(O.Van Tellingen et al,Anticancer Research,12,1699-1716(1992)を参照)。本発明の有糸分裂阻害アルカロイドとしては、限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、パクリタキセル(PTX;タキソール(Taxol)(登録商標))及びビノレルビンが挙げられる。後者の2つの有糸分裂阻害アルカロイドは、それぞれEli Lilly and Company、及びPierre Fabre Laboratoriesから市販されている(米国特許第5,620,985号明細書参照)。本発明の例示的な態様において、有糸分裂阻害アルカロイドはビノレルビンである。
本開示の他の実施形態において、化学療法薬はジフルオロヌクレオシドである。2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロヌクレオシドは、抗ウイルス活性を有すると当技術分野において公知である。かかる化合物は、米国特許第4,526,988号明細書及び米国特許第4,808614号明細書に開示され、教示されている。欧州特許出願公開第184,365号明細書には、これらの同じジフルオロヌクレオシドが腫瘍崩壊活性を有することが開示されている。特定の態様において、本発明の組成物及び方法で使用される2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロヌクレオシドは、ゲムシタビン塩酸塩としても知られる2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン塩酸塩である。ゲムシタビンは市販されており、又は米国特許第4,526,988号明細書、米国特許第4,808,614号明細書、及び米国特許第5,223,608号明細書に開示され、教示されている多段階プロセスで合成することができ、これらの教示は参照により本明細書に組み込まれる。
例示的な態様において、その化学療法薬はホルモン療法剤である。例示的な場合において、ホルモン療法剤は、例えば、レトロゾール、タモキシフェン、バゼドキシフェン、エキセメスタン、リュープロレリン、ゴセレリン、フルベストラント、アナストロゾール、又はトレミフェンである。例示的な態様において、ホルモン療法剤は、黄体形成ホルモン(LH)遮断薬、例えば、ゴセレリン、又はLH放出ホルモン(RH)アゴニストである。例示的な態様において、ホルモン療法剤は、ER標的化剤(例えば、フルベストラント又はタモキシフェン)、ラパマイシン、ラパマイシン類似体(例えば、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス(ridaforolimus)、ゾタロリムス(zotarolimus)、及び32-デキソ-ラパマイシン)、抗HER2薬(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ラパチニブ、T-DM1、又はネラチニブ)又はPI3K阻害剤(例えば、タセリシブ(taselisib)、アルペリシブ(alpelisib)又はブパリシブ(buparlisib))である。
例示的な態様において、化学療法薬は、パルボシクリブ(palbociclib)、リボシクリブ(ribociclib)、又はアベマシクリブ(abemaciclib)などのCDK4/6阻害剤である(例えば、Knudsen and Witkiewicz,Trends Cancer 3(1):39-55(2017)参照)。
対象
本開示の例示的な実施形態において、対象は、限定されないが、マウス及びハムスターなどのげっ歯目(order Rodentia)の哺乳動物、及びウサギなどの兎形目(order Logomorpha)の哺乳動物、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む食肉目(order Carnivora)の哺乳動物、ウシ科(ウシ)及びイノシシ科(ブタ)を含む偶蹄目(order Artiodactyla)の哺乳動物、又はウマ科(ウマ)を含む奇蹄目(order Perssodactyla)の哺乳動物を含む哺乳動物である。一部の態様において、哺乳動物は、霊長目(order Primates)、セボイド(Ceboid)目若しくはシモイド(Simoid)目(サル)の哺乳動物、又は類人猿科(ヒト及び類人猿)の哺乳動物である。一部の態様において、哺乳動物はヒトである。
例示的な態様において、対象は癌又は腫瘍を有する。一部の態様における癌は、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、胞巣状横紋筋肉腫、骨癌、脳腫瘍、乳癌、肛門、肛門管若しくは肛門直腸の癌、眼球の癌、肝内胆管癌、関節の癌、頚部、胆嚢、若しくは胸膜の癌、鼻、鼻腔、若しくは中耳の癌、口腔癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頚癌、胃腸のカルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、肝癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣の癌、膵臓癌、腹膜、網、及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸の癌、腎臓の癌(例えば、腎細胞癌(RCC))、小腸癌、軟部組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、輸尿管癌、及び泌尿器の膀胱癌からなる群から選択される癌である。特定の態様において、癌は、頭頸部癌、卵巣癌、頚部癌、膀胱癌及び食道癌、膵臓癌、胃腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜癌及び結腸直腸癌、肝細胞癌、膠芽腫、膀胱癌、肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞上皮癌からなる群から選択される。特定の実施形態において、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭頚部癌、腎臓癌、トリプルネガティブ乳癌、又は胃癌である。例示的な態様において、対象は、腫瘍(例えば、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、又はリンパ性悪性疾患)を有し、医薬組成物が、対象における腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。他の例示的な態様において、腫瘍は、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頚部癌、腎臓癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、肝癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌、胃癌、リンパ腫又は白血病であり、医薬組成物が、対象における腫瘍を治療するのに有効な量で対象に投与される。
任意に、対象は、肝細胞癌(HCC)、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、任意に非小細胞肺癌(NSCLC)を有する。
免疫抑制の軽減及び免疫応答の増強
特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載のSIRPγに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、T細胞のエフェクター活性を増加し、又はT細胞の抑制活性を低減するのに有用である。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質はSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤である。また、本明細書に記載のSIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)は、腫瘍又は癌に対する免疫応答を高めるのに有用であると仮定される。したがって、本開示は、腫瘍又は癌を有する対象においてT細胞のエフェクター活性を増加し、又はT細胞の抑制活性を低減する方法を提供する。例示的な実施形態において、その方法は、SIRPγに結合する抗原結合性タンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を、対象においてエフェクター活性を増加し、又は抑制活性を低減するのに有効な量で対象に投与することを含む。一部の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、SIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤である。また、本開示はそれに応じて、対象において腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を高める方法を提供する。例示的な実施形態において、その方法は、SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を、腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を高めるのに有効な量で対象に投与することを含む。
本開示の方法によって提供されるT細胞のエフェクター活性の増加は、コントロールに対して少なくとも又は約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)であり得る。本開示の方法によって提供されるT細胞のエフェクター活性の増加は、コントロールに対して少なくとも又は約10%~約95%を超える増加(例えば、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約98%の増加、少なくとも又は約99%の増加、又は約100%の増加)であり得る。例示的な態様において、コントロールは、SIRPγに結合する本発明に開示のSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)で治療されてない、癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であり、或いはその対象又は対象の集団はプラシーボで処置された。
本開示の方法によって提供される腫瘍又は癌に対する免疫応答の増加は、コントロールに対して、少なくとも又は約1%~約10%の増加(例えば、少なくとも又は約1%の増加、少なくとも又は約2%の増加、少なくとも又は約3%の増加、少なくとも又は約4%の増加、少なくとも又は約5%の増加、少なくとも又は約6%の増加、少なくとも又は約7%の増加、少なくとも又は約8%の増加、少なくとも又は約9%の増加、少なくとも又は約9.5%の増加、少なくとも又は約9.8%の増加、少なくとも又は約10%の増加)であり得る。本開示の方法によって提供される腫瘍又は癌に対する免疫応答の増加は、コントロールに対して、少なくとも又は約10%~約95%を超える増加(例えば、少なくとも又は約10%の増加、少なくとも又は約20%の増加、少なくとも又は約30%の増加、少なくとも又は約40%の増加、少なくとも又は約50%の増加、少なくとも又は約60%の増加、少なくとも又は約70%の増加、少なくとも又は約80%の増加、少なくとも又は約90%の増加、少なくとも又は約95%の増加、少なくとも又は約98%の増加、少なくとも又は約99%の増加、又は約100%の増加)であり得る。例示的な態様において、コントロールは、本発明に開示のSIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)で治療されてない、癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であり、或いはその対象又は対象の集団はプラシーボで処置された。
本開示の方法によって提供されるT細胞の抑制活性の低減は、コントロールに対して、少なくとも又は約1%~約10%の低減(例えば、少なくとも又は約1%の低減、少なくとも又は約2%の低減、少なくとも又は約3%の低減、少なくとも又は約4%の低減、少なくとも又は約5%の低減、少なくとも又は約6%の低減、少なくとも又は約7%の低減、少なくとも又は約8%の低減、少なくとも又は約9%の低減、少なくとも又は約9.5%の低減、少なくとも又は約9.8%の低減、少なくとも又は約10%の低減)であり得る。本開示の方法によって提供されるT細胞の抑制活性の低減は、コントロールに対して、少なくとも又は約10%~95%を超える低減(例えば、少なくとも又は約10%の低減、少なくとも又は約20%の低減、少なくとも又は約30%の低減、少なくとも又は約40%の低減、少なくとも又は約50%の低減、少なくとも又は約60%の低減、少なくとも又は約70%の低減、少なくとも又は約80%の低減、少なくとも又は約90%の低減、少なくとも又は約95%の低減、少なくとも又は約98%の低減、少なくとも又は約99%の低減、又は約100%の低減)であり得る。例示的な態様において、コントロールは、本発明に開示のSIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)で治療されてない、癌若しくは腫瘍又は対象若しくは対象の集団であり、或いはその対象又は対象の集団はプラシーボで処置された。
T細胞のエフェクター活性を増加する、又は抑制活性を低減する方法に関して、種々の態様におけるT細胞は、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置し、任意に、T細胞は腫瘍浸潤T細胞である。一部の態様において、T細胞は制御性T細胞(Treg)である。種々の態様において、T細胞は消耗T細胞、任意に、消耗CD8+ T細胞である。特定の場合において、T細胞は記憶細胞であり、任意に、記憶細胞はCD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である。
腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を増加する方法に関して、免疫応答は、種々の態様においてT細胞によって仲介される。任意に、T細胞は、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する。種々の場合において、T細胞は腫瘍浸潤T細胞である。一部の態様において、T細胞は制御性T細胞(Treg)である。種々の態様において、T細胞は消耗T細胞、任意に、消耗CD8+ T細胞である。特定の場合において、T細胞は記憶細胞であり、任意に、記憶細胞はCD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である。
例示的な態様において、T細胞のエフェクター活性を増加する、又は抑制活性を低減する本発明に開示の方法、或いは腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を増加する本発明に開示の方法の対象は、本明細書に記載の対象である。種々の態様において、対象は腫瘍若しくは癌を有する。任意に、対象は、肝細胞癌(HCC)、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、任意に、非小細胞肺癌(NSCLC)、又は乳癌を有する。
特定の理論に束縛されるものではないが、対象におけるT細胞のエフェクター活性の増加又は抑制活性の低減、及び/又は腫瘍若しくは癌に対する免疫応答の増加によって、対象において腫瘍若しくは癌の治療が導かれる。したがって、本開示はさらに、腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法を提供する。例示的な実施形態において、その方法は、対象におけるT細胞のエフェクター活性の増加又は抑制活性の低減、及び/又は対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答の増加を含む。SIRPγに結合するSIRPγバインダー又はSIRPγ阻害剤(例えば、抗体又はその抗原結合性断片)を対象に投与することを含む、上述の治療方法の考察及び詳細は、本明細書に記述される治療方法(対象におけるT細胞のエフェクター活性の増加又は抑制活性の低減、及び/又は対象における腫瘍又は癌に対する免疫応答の増加を含む)に該当する。
以下の実施例は本発明を単に例証するために示され、その範囲を決して制限するものではない。
以下に記載の研究では、ヒトにおけるSIRPγのT細胞特異的な発現パターンが確認される。T細胞の大部分がSIRPγを高度に発現するが、興味深いことに、記憶CD8 T細胞及び腫瘍浸潤CD8消耗細胞は、他のT細胞と比較して、SIRPγの高い発現を示した。乳房腫瘍及び黒色腫腫瘍組織からのCD8 TILのキャラクタリゼーションについての以前の研究から、腫瘍CD8 TILは主にエフェクター記憶細胞であることが示唆されている。記憶T細胞と消耗T細胞の両方でのSIRPγ発現パターンが高いことから、SIRPγは、腫瘍環境内でT細胞エフェクター機能にネガティブに影響し得ることが示唆される。興味深いことに、本明細書における生体外機能データは、この仮説と一致し、SIRPγがT細胞エフェクター機能の負の制御因子であることが確認される。さらに、SIRPγはTreg抑制機能を高めた。これらのデータから、T細胞及びTregの両方でSIRPγを標的化して腫瘍に対する免疫応答を向上させることによる、潜在的な治療的介入への洞察が得られる。
実施例1
以下の実施例に、実施例で使用される材料及び方法が記載される。
細胞の調製及びMACSビーズ選別:Ficoll Hypaque(GE Healthcare Biosciences,Pittsburg,PA)密度勾配を用いて、健康なドナーからの血液試料から、PBMCを単離した。Miltenyi microbead negative selection kits(#130-096-535及び130-096-495、Miltenyi)を使用して、製造元説明書に従ってPanT細胞及びCD8 T細胞をPBMCから単離した。ヒト調節性T細胞を単離するために、ヒトCD4+ T細胞単離キット(Isolation kit)(130-096-533、Miltenyi)を使用して、PBMCからCD4+ T細胞を単離し、続いて製造元のプロトコルに従ってCD25マイクロビーズ(130-092-983,Miltenyi)でCD25+ T細胞をMACSマイクロビーズした。最後に、CD4+CD25+CD127-ヒト調節性T細胞をFACS選別した。選別されたpanT、CD8及びTreg細胞を、ダウンストリーム機能アッセイにかけた。
CD8消耗の生体外での誘導:精製ヒトCD8 T細胞を1~2×10細胞/mlでシーディングし、抗CD3(UCHT1、0.2μg/ml、BD Biosciences)及び抗CD28(CD28.2、2μg/ml、BD Biosciences)刺激に3~4日間かけた。抗CD3(UCHT1、1μg/ml、BD Biosciences)及び抗CD28(CD28.2、2μg/ml、BD Biosciences)で、CD8 T細胞を3~4日ごとに再刺激した。上述のように、細胞を少なくとも2ラウンド、再刺激にかけた。
フローサイトメトリー抗体染色:多色フローサイトメトリー分析に使用される抗ヒト抗体は:CD3(Biolegend、344804)、CD4(Biolegend、300520)、CD8(Biolegend、301040)、SIRPγ(Biolegend、336606)、マウスIgG1 Kアイソタイプコントロール(Biolegend、400112)、CD14(BD Biosciences、558121)、CD56(Biolegend、318321)、CD45RA(Biolegend、304112)、CCR7(Biolegend、353232)、CD127(Biolegend、351318)、Foxp3(Biolegend、320214)を含んだ。PBMC試料をMACS緩衝液で洗浄し、蛍光標識された抗ヒト抗体で染色した。Foxp3細胞内染色については、細胞を細胞内固定化及び透過処理用バッファーセット(eBioscience、00-5523-00)で固定化し、Foxp3抗体で染色した。FACSDivaソフトウェア(Becton Dickinson)を使用して、LSRIIでフローサイトメトリーデータを取得した。Flow Jo(TreeStar,Ashland,OR)を使用して、データを分析した。
SIRPγ過剰発現、T細胞再刺激及びサイトカインの検出:ヒトT細胞においてヒトSIRPγを過剰発現させるために、ヒトSIRPγをMSCV-IRES-EGFPレトロウイルスベクターにクローニングした。T細胞を感染させる前に、pAmphoパッケージングシステム(Clontech、#631530)を使用して、レトロウイルスを産生した。T細胞感染のために、Miltenyiから市販のヒトPanT細胞単離キットを使用して、ヒトPBMCからpanT細胞を単離し、比1:1にてダイナビーズヒトT-活性化剤CD3/CD28(ThermoFisher Scientific、#11131D)で72時間活性化した。72時間後に、ダイナビーズを除去し、2000rpmにて32℃で1時間、活性化T細胞をレトロウイルスに遠心感染させた。
レトロウイルス遠心感染後5日目に、GFP+ヒトSIRPγ過剰発現T細胞をFACS選別し、ヒトIL2で2日間休止した。等しい数のコントロール又はヒトSIRPγ過剰発現CD8又はCD4 T細胞を96丸底ウェルにシーディングし、プレート結合抗CD3(0.5μg/ml)及び抗CD28(1μg/ml)(eBioscience 16-0037-85及び16-0289-85)で再刺激した。再刺激して24時間後に、細胞上澄を回収し、ヒトIFNγをELISA(eBioscience、88-7316-88)によって測定した。
ナイーブT細胞におけるCRISPRノックアウト:ナイーブT細胞におけるCRISPRノックアウトのために、等モル濃度のAlt-R crRNA及びAlt-R tracrRNA(IDT)オリゴを混合することによって、crRNA-tracrRNA二重鎖を作製した。PCRサーマルサイクラーにおいて95℃で5分間加熱することによって、混合オリゴをアニーリングし、混合物を室温にゆっくりと冷却した。3つのcrRNA-tracrRNA二重鎖(それぞれ150pmolに等しい3μl、合計9μl)及びTrueCut Cas9タンパク質v2 6μl(180pmolに等しい)(カタログ番号A36499;Thermo Fisher Scientific、5μg/ml)を、上下にピペット操作することによって穏やかに混合し、室温にて10~20分間インキュベートした。96ウェルプレート1ウェルに当たり完全T細胞培地200μlを予熱した。1~200万個のT細胞を一次細胞nucleofection溶液20μl(P2一次細胞4D-Nucleofector X kit S[32RCT、V4XP-2032;Lonza])に再懸濁した。T細胞を混合し、丸底96ウェルプレートにおいて室温にて、15μl RNPと共に2分間インキュベートした。細胞/RNP混合物をNucleofectionキュベットストリップ(4D-Nucleofector X kit S;Lonza)に移した。4D nucleofectorを使用して、細胞を電気穿孔した。ヒトナイーブT細胞集団のパルスはEH100である。nucleofection後に、予め温められたT細胞培地を使用して、96ウェルプレートにトランスフェクト細胞を移動した。休止ヒトT細胞を1×10/ウェルにて200μl完全T細胞培地中で3~5日間培養した(IL2及びIL7と共に)。電気穿孔後5日目に、FACSによってノックダウンを確認した。以下のcrRNAターゲティング配列が研究に使用された:SIRPγ-crRNA1:5’-GGGACCCGTCCTGTGGTTCAG-3’(配列番号7)、SIRPγ-crRNA2:5’-AAAAGGGAGCCCTGAGAACG-3’(配列番号8)、SIRPγ-crRNA3:5’-GTATGTGCCGACATCTGCTG-3’(配列番号9)、CD47-crRNA1:5’-TACGTAAAGTGGAAATTTAA-3’(配列番号10)、CD47-crRNA2:5’-TTTGCACTACTAAAGTCAGT-3’(配列番号11)、CD47-crRNA3:5’-TCCATATTAGTAACAAAGCA-3’(配列番号12)、PD1-crRNA1:5’-GCAGTTGTGTGACACGGAAG-3’(配列番号13)、PD1-crRNA2:5’-GGGCCCTGACCACGCTCATG-3’(配列番号14)、PD1-crRNA3:5’-GATCTGCGCCTTGGGGGCCA-3’(配列番号15)。
活性化T細胞及びジャーカットT細胞におけるCRISPRノックアウト:ダイナビーズヒトT-活性化剤CD3/CD28(ThermoFisher Scientific、#11131D)で比1:1にて、ヒトpanT細胞を48時間活性化した。48時間後、ダイナビーズを除去し、100,000~200,000活性化T細胞を一次細胞nucleofection溶液20μl(P2一次細胞4D-Nucleofector X kit S[32RCT、V4XP-2032;Lonza])に再懸濁し、RNP複合体と混合した。細胞/RNP混合物をNucleofectionキュベットストリップ(4D-Nucleofector X kit S;Lonza)に移した。4D nucleofectorを使用して、細胞を電気穿孔した。ヒト活性化T細胞集団のパルスはCM138である。nucleofection後に、予め温めたT細胞培地を使用して、96ウェルプレートにトランスフェクト細胞を移動した。ヒトT細胞を1×10/ウェルにて200μl完全T細胞培地中で培養した(IL2と共に)。電気穿孔後2日目に、FACSによってノックダウンをチェックした。
ジャーカットT細胞ノックアウトのために、200,000個のジャーカットT細胞を一次細胞nucleofection溶液20μl(P4一次細胞4D-Nucleofector X kit S[32RCT、V4XP-4032;Lonza])に再懸濁し、RNP複合体と混合した。細胞/RNP混合物をNucleofectionキュベットストリップ(4D-Nucleofector X kit S;Lonza)に移した。CM138プログラムと共に4D nucleofectorを使用して、細胞を電気穿孔した。電気穿孔後3日目に、細胞表面のタンパク質発現に基づいて、ノックアウトT細胞をFACS選別し、今後の実験のためにさらに拡大した。
ノックアウトT細胞の再刺激:CRISPRノックアウト後3日目に、T細胞を再刺激し、CRISPRノックアウト後4日目にSIRPγ-CD4又はCD8 T細胞をFACS選別した。選別されたSIRPγノックアウトT細胞をヒトIL2で2日間休止した。等しい数のコントロール又はヒトSIRPγノックアウトCD8又はCD4 T細胞を、96丸底ウェルにシーディングし、プレート結合抗CD3(0.5μg/ml)及び抗CD28(1μg/ml)で再刺激した。再刺激して24時間後に、細胞上澄を回収し、ヒトIFNγをELISAによって測定した。
リアルタイムPCR:qRT-PCRのために、製造元の説明書に従ってRNeasy Mini kit(Qiagen)を使用して、CRISPR/Cas9送達して9日後に、選別及び再刺激されたコントロール又はSIRPγ-T細胞から、全RNAを単離した。SuperScript IV First-Strand Synthesis System(#18091050、Invitrogen)を使用してこれらのRNAから、cDNAを逆転写し、TaqMan遺伝子発現アッセイキット/プローブセット(Thermo Scientific)を使用して、QuantStudio3(Applied Biosystems)でqRT-PCRを行った。この研究で使用されたプライマーは以下の通りであった:GAPDH:Hs03929097_g1、SIRPγF:5’-AGGTGAGGAGGAGCTACAGA-3’(配列番号16)、SIRPγR:5’-GGTCCAACTCCTCTGAACCA-3’(配列番号17)、SIRPγプローブ:5’-CCCTGCTTCCCGTGGGACCCG-3’(配列番号18)。試料間のSIRPγ発現をGAPDHに正規化した。
標的領域のPCR増幅及び解析:製造元の説明書に従って、Qiagen DNeasy Blood & Tixxue kit(Qiagen)を使用し、CRISPR/Cas9送達して9日後に、選別及び再刺激されたコントロール又はSIRPγ-T細胞から、ゲノムDNAを単離した。SIRPγ標的部位を含有するゲノム領域が、以下のプライマー:SIRPγF:5’-CCAGATTGGGAAGGACAAGAGCTGT-3’(配列番号19)、SIRPγR:5’-GGCATGTTGTGAGGGTTAAATGAGA-3’(配列番号20)を使用してPCR増幅された。Qiagen Gel Extraction kitを使用して、2%(wt/vol)アガロースゲル含有SYBR Safe(Life Technologies)上でPCR産物をゲル電気泳動によって分析し、又は精製し、サンガー(sanger)シーケンシングにかけた。
Treg細胞でのSIRPγ発現及びTreg抑制アッセイ:ヒト制御性T細胞においてヒトSIRPγを過剰発現させるために、FACS選別されたCD4+CD25+CD127-Treg細胞を、200U/mlヒトIL2(202-IL-010/CF、R&D)の存在下にて比1:1でダイナビーズヒトT-活性化剤CD3/CD28(ThermoFisher Scientific、#11131D)で48時間活性化した。48時間後に、ダイナビーズを除去し、2000rpmにて32℃で1時間、活性化T細胞をレトロウイルスに遠心感染させた。レトロウイルス遠心感染後5日目に、GFP+ヒトSIRPγ過剰発現Treg細胞をFACS選別し、抑制アッセイをセットアップする前に一晩、ヒトIL2で休止した。
抑制アッセイをセットアップする前に、ナイーブCD4 T細胞単離キット(130-094-131、Miltenyi)を使用して、異なる健康なドナーPBMCから、レスポンダーCD4 T細胞を単離し、cell trace violet proliferation kit(C34557、Thermo Fisher)によって、単離されたCD4 T細胞を標識した。休止Treg細胞をCTV標識レスポンダーCD4 T細胞と異なる比で混合した。同種DCを反応に添加し、CD4 T細胞増殖をCTV希釈によって測定した。
混合リンパ球反応及びT細胞増殖アッセイ:CRISPRノックダウン後6日目に、T細胞を混合リンパ球反応(MLR)又はTCR刺激増殖にかけた。10,000同種異系DC(刺激因子)と共に、健康なドナー(レスポンダー)からの100,000panT細胞をインキュベートすることによって、MLRが実施された。7日目に標準3Hチミジン取り込みアッセイによって、T細胞増殖を測定した。
TCR刺激のために、単離T細胞又はCRISPRノックアウトT細胞を、mAb抗CD3(OKT3、eBioscience)の段階稀釈でプレコート96ウェル丸底プレート上にプレーティングした。抗CD47 mAb(B6H12)、抗SIRPγ(LSB2.20)、又はコントロールマウスIgGをT細胞培養液に指定のように添加した。72時間後に、T細胞増殖を標準3H-チミジン取り込みアッセイによって測定した。
SIRP-IgG融合タンパク質:SIRPγ及びSIRPαの細胞外ドメインをPCRによって増幅し、ヒトIgG融合タンパク質のFc部分をコードするDNA断片とインフレームであるpTT5.2-CMVベクターにクローン化した。SIRPγ及びSIRPαキメラcDNAを293細胞において一過的に発現させ、分泌SIRP-IgG融合タンパク質を、タンパク質A上の培養上澄から精製した。
結合アッセイ:SIRPγ及びCD47に対する抗体の非存在下にて、SIRPγ及びSIRPα-IgG FCタンパク質(5μg/mL)を種々の細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をFACS染色緩衝剤で2回洗浄し、抗IgG-FC(PE)抗体(1:50)で4℃にて15分間染色した。2回の洗浄後に、細胞への融合タンパク質の結合が、PE結合型抗ヒトIgG-Fc(#409304、Biolegend)を用いたフローサイトメトリーによって検出され、続いてFACS分析が行われた。
生体外での抗体干渉(interfering)アッセイ:SIRPγ抗体(10μg/mL)をジャーカット細胞と共に室温にて30分間インキュベートした。細胞をFACS染色緩衝剤で洗浄し、SIRPγ-Fc融合タンパク質(10μg/mL)と共に4℃で30分間インキュベートした。次いで、細胞をFACS染色緩衝剤で2回洗浄し、抗IgG-Fc(PE)抗体(#409304、Biolegend、1:50)で4℃にて15分間染色した。2回の洗浄後、細胞への融合タンパク質の結合は、フローサイトメトリーによって検出され、FACS分析が行われた。
抗体架橋及びT細胞増殖アッセイ:96ウェルプレートが、4℃にて10μg/mL SIRPγ抗体(50μl/ウェル)で一晩コーティングされた。次の日、健康なドナーからのpanT細胞をウェルにおいてプレーティングし、T細胞をImmunoCult(商標)ヒトCD3/CD28 T細胞活性化剤(#10971、Stemcell Technologies)で刺激した。3日目に標準3Hチミジン取り込みアッセイによって、T細胞増殖を測定した。細胞培養上澄を回収し、Cytometric Bead Array(CBA)(#558269、BD Biosciences)分析にかけた。
統計的解析:統計的有意性は、グラフィックプリズムを用いてt検定を実施することによって決定した。有意性は、***p≦0.0002、**p≦0.0021、p≦0.0332、及びns p>0.05として示す。
実施例2
この実施例から、SIRPγがT細胞上で高度に発現されることが実証されている。
T細胞におけるSIRPγの機能の研究のために、SIRPγの発現プロファイルを免疫細胞集団において最初に調べた。SIRPγ抗体の特異性は、293T細胞の細胞表面の過剰発現SIRPγタンパク質の特異的な認識によって確認された(図1A)。ヒトPBMC細胞上のSIRPγの細胞表面染色から、SIRPγが主に、CD4及びCD8 T細胞上で発現するが、CD14単球上では発現しないことが分かった(図1B)。SIRPγは、休止段階にてヒトCD4及びCD8 T細胞の両方での高レベルの発現を示した。ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、細胞表面上のポジティブなSIRPγ発現も示した。このデータは、以前の研究(Piccio et al.,Blood,105:2421-2427(2005))と一致し、SIRPγの発現がT細胞特異的であることが示される。
以前の研究(Piccio et al.,Blood,105:2421-2427(2005))から、抗SIRPγ抗体によるSIRPγ受容体ライゲーションは、T細胞増殖の共刺激因子として機能することが判明しており、SIRPγとT細胞受容体(TCR)との潜在的な相互作用が示唆される。SIRPγ発現がTCRシグナル伝達によって調節されるかを試験するために、T細胞を抗CD3及び抗CD28抗体で刺激し、刺激T細胞によってSIRPγの発現レベルを調べた。SIRPγは、T細胞上での高い発現レベルを維持し、その発現レベルは、TCR刺激の間、変化しなかった(図1C)。
実施例3
この実施例から、SIRPγが、記憶T細胞及び腫瘍浸潤消耗T細胞上で高い発現を有することが実証される。
記憶及びエフェクターT細胞のサブセットにおけるSIRPγの発現プロファイルをさらに理解するために、複数の健康なドナーPBMCからのT細胞を、抗体を用いて染色した。ナイーブT細胞、中枢記憶、エフェクター記憶及びエフェクターT細胞が、CD45RA及びCCR7染色によって同定された。CD8+記憶T細胞によって、エフェクターT細胞及びナイーブT細胞と比較して、SIRPγの有意に高い発現が実証された(図2A及び2B)。CD4 T細胞集団内で、中枢記憶CD4 T細胞は、エフェクターT細胞よりもSIRPγの高い発現を実証した(図2A及び2B)。これらのデータによって、SIRPγが、免疫制御中にT細胞の記憶機能に寄与し得ることが示唆される。
興味深いことに、腫瘍浸潤T細胞の単細胞RNAシーケンシングのプロファイリングから、SIRPγは、消耗CD8 T細胞、並びにHCC、CRC及び肺癌などの異なるタイプのヒト癌から単離された腫瘍Tregにおいて高度に発現することが分かった(図3A~3C)。腫瘍におけるSIRPγと腫瘍浸潤消耗CD8 T細胞との関連は以前に報告されていないため、生体外で誘導された消耗CD8 T細胞上のその発現及び調節がさらに特徴付けられた。SIRPγタンパク質発現は、低用量のαCD3 TCR活性化、T細胞消耗を模倣する条件で、生体外にて繰り返し刺激されたCD8 T細胞上で増加した(図4)。消耗T細胞におけるSIRPγの高い発現パターンは、エフェクターサイトカイン産生の減少、並びにTim3及びPD1などの他のT細胞消耗マーカーの発現の増加と相関し、腫瘍微小環境内でT細胞消耗のマーカーとしてSIRPγが役割を果たし得ることが示唆される。
実施例4
この実施例から、SIRPγが、T細胞エフェクターサイトカイン放出を阻害することが実証される。
T細胞におけるSIRPγの機能を研究するために、T細胞におけるSIRPγのレトロウイルス仲介過剰発現が、腫瘍浸潤CD8 T細胞上のSIRPγの高発現を模倣するために行われた。CD8 T細胞上のSIRPγ発現の増加が、レトロウイルスの感染後3日目に確認された(図5B)。興味深いことに、SIRPγ過剰発現CD8 T細胞は、コントロールのウイルス感染細胞による発現よりも有意に低いIFNγを産生し(図5C~5D)、CD8 T細胞におけるSIRPγの阻害的役割が裏付けられる。
SIRPγがT細胞エフェクター機能の負の制御因子であるか否かをさらに評価するために、CRISPRを使用して、ヒトT細胞上のSIRPγのレベルをノックダウンした。SIRPγのCRISPRノックダウンの成功は、ゲノム、mRNA、及びタンパク質レベルで評価された。SIRPγガイドRNA(gRNA)のCRISPR送達によって、標的SIRPγゲノムコード領域の欠失、SIRPγ mRNA発現、及びT細胞表面上でのSIRPγタンパク質発現の有意な低減が引き起こされた(図6B~6E)。注目すべきことには、TCRシグナルで生体外にて刺激した場合に、SIRPγ発現の低減は、CD8 T細胞においてIFNγの分泌を有意に増強し(図6F)、SIRPγが、T細胞の負の制御因子として機能することが示される。本明細書に記載のように、T細胞共刺激分子としてのSIRPγを示唆する以前の研究(Piccio et al.,Blood 105(6):2421-2427(2005);Leitner et al.,Immunol Letters 128(2):89-97(2010))を想定すると、これらの結果は意外であった。
実施例5
この実施例から、SIRPγは調節性T細胞抑制機能を高め、且つSIRPγに対するモノクローナル抗体は、T細胞増殖に対して抑制効果を有することが実証される。
腫瘍浸潤性T細胞での以前のRNAシーケンシングプロファイリングからも、SIRPγが、HCC、CRC及び肺癌内のTregにおいてアップレギュレートされることが示唆される(図3A~3C)。乳癌におけるSIRPγ発現の増加はさらに、実証されている(Ascension:GSE89225データセット;Pitas et al.Immunity.2016 Nov 15;45(5):1122-1134)。非Tregにおける発現と比較して、腫瘍浸潤TregにおけるSIRPγの高い発現が、NSCLC腫瘍試料において確認された(図7A)。レトロウイルスの形質導入によるヒトTreg細胞におけるSIRPγの過剰発現は、Treg上でのFOXP3発現レベルを変化させなかった(図7C~7D)。しかしながら、SIRPγは、生体外抑制アッセイにおけるT細胞増殖でのTreg抑制活性を高めた(図7E~7F)。これらのデータから、腫瘍環境内のTregにおけるSIRPγの高発現は、エフェクターT細胞機能の抑制の一因となることが示唆される。これらのデータから、SIRPγの阻害によって、腫瘍環境内のT細胞増殖のレベルの増加が引き起こされ得ることも示唆される。
以前の研究(Piccio et al.,Blood,105:2421-2427(2005))から、CD47はSIRPγのリガンドであることが示された。Piccioらは、抗SIRPγ mAb及び抗CD47 mAbが、T細胞増殖及びSIRPγ共刺激T細胞増殖のライゲーションを阻害し、その結果、T細胞機能の正の制御因子としてSIRPγが裏付けられることも示した。しかしながら、SIRPγ過剰発現及びSIRPγノックアウトシステムを使用することによって、本明細書に記載の研究によって、SIRPγはT細胞機能の負の制御因子であることが示唆される。以前の結果と本明細書に記載の結果との矛盾をさらに調べるために、生体外でのT細胞増殖中のSIRPγに対するmAbの機能が試験された。SIRPγとCD47との相互作用をブロックすることができる機能性ブロッキングmAbをスクリーニングするために、ジャーカットT細胞におけるSIRPγとCD47が、CRISPRによって枯渇された(図8A)。CD47ノックアウト細胞系を使用することによって、CD47依存的様式でT細胞表面にSIRPγが結合することが確認された(図8B)。さらに、ジャーカットT細胞上でのSIRPγ-CD47の相互作用を機能的にブロックする、mAbクローンLSB2.20及びOX119が、生体外結合アッセイによって同定された(図8C)。
混合リンパ球反応(MLR)中、一部の抗SIRPγ mAbがT細胞増殖を阻害した(図8D)。さらに、抗SIRPγ抗体での治療によって、TCRリガンドの段階稀釈の存在下にてT細胞の活性化が阻害された(8E)。興味深いことに、上記のCRISPR仲介方法によってSIRPG遺伝子をノックダウンした場合に、抑制効果がまだ確認されたことから、抗SIRPγ抗体の抑制効果は、SIRPγの存在に依存しなかった(図8F)。これらの特定の抗体の活性は、オフターゲット効果が原因であり得る、又はCD47と相互作用するSIRPγ上の残基が、その活性を仲介するために他のタンパク質との相互作用に必要とされるという可能性がある。
実施例6
この実施例から、SIRPγの特定のエピトープに結合する抗SIRPγモノクローナル抗体は、T細胞増殖及び機能を高め得ることが実証される。
T細胞機能に対するSIRPγの抑制効果を探求するために、市販のSIRPγ抗体のパネルをSIRPγに結合し、CD47-SIRPγ相互作用の遮断薬として働く、その能力についてスクリーニングした。T細胞を抗SIRPγモノクローナル抗体クローンLSB2.20、クローンOX117、クローンOX119、LS-C484765、クローン4F8C10(MAB21425)で、又はポリクローナル抗SIRPγ抗体(AF4486)で処理し、図9Aに示すようにT細胞への抗体の結合をFACSによってアッセイし、いくつかの抗SIRPγ抗体は、ジャーカット細胞上で内因的に発現された、又は外因的に過剰発現されたSIRPγに結合することができた(図9A)。
T細胞上のSIRPγとその結合パートナーとの結合相互作用を変化させる抗SIRPγ抗体の能力が、生体外抗体ブロッキングアッセイを実施することによって評価された。このアッセイにおいて、場合により、CD47又はT細胞によって発現された他の未同定の受容体など、SIRPγ結合パターンとのその相互作用によって、SIRPγ-FcはT細胞に結合する。この時点で、CD47は、SIRPγに対する既知の唯一の高親和性受容体である(図8C)。しかしながら、SIRPγ抗体の非存在下にて、SIRPγはT細胞上でも発現するため、T細胞表面上でCD47及び/又は他の推定の結合パートナーと潜在的にシス型で相互作用し得る。結果として、これらの潜在的なシス型相互作用は、このアッセイにおいてT細胞上のその結合パートナーとSIRPγ-Fcの結合を阻害し得る。しかしながら、抗SIRPγ抗体のプレインキュベーションが、細胞表面上での相互作用、SIRPγとその結合パターンのシス型相互作用を妨害する場合には、細胞表面上でこれらの結合パターンが放出され、続いてこのアッセイにおいてSIRPγ-Fcタンパク質と相互作用し得る。T細胞へのSIRPγ-Fcの結合が、種々の抗SIRPγ抗体の存在下にて測定され、抗SIRPγ抗体の非存在下での結合と比較された。図9Bに示すように、抗SIRPγ抗体クローンLSB2.20又はクローンOX119で予め処理された細胞は、SIRPγ-Fcの増強された結合を持たず、これらの抗体は、SIRPγとCD47との相互作用をブロックすることが以前に示されていたが、これらの抗体クローンとのSIRPγ-CD47相互作用の破壊によって、SIRPγ-Fc融合タンパク質との更なる相互作用のための、より多くのCD47又は他の結合パートナーは放出されないことが示唆される。これらのデータから、これらの抗体の親和性が、T細胞表面上の間でのシス型相互作用を放出するには十分に強くない、又はCD47及びSIRPγが細胞表面上にてシス型で相互作用しないことが示唆された。さらに、これらの抗体はまた、SIRPγと他の推定結合パートナーとの潜在的な相互作用をブロックしない。興味深いことに、クローンLSB2.20及びOX119と異なり、クローンOX117治療から、SIRPγ-Fc融合タンパク質の増強した結合が示された。OX119は、CD47とのエピトープ相互作用と異なるSIRPγ上のエピトープに結合することが知られており(図9E)、これらの結果から、OX117は、ジャーカット細胞表面上でSIRPγと、他の推定結合性タンパク質との相互作用をブロックすることができ得ると示唆される。クローンOX117での治療後、ジャーカット細胞は、SIRPγ-Fc融合タンパク質によるその結合のための推定結合パートナーを放出した(図9B)。
エフェクト抗SIRPγ抗体はT細胞増殖を有し、IFNγ分泌も試験された。このアッセイにおいて、T細胞を抗SIRPγモノクローナル抗体クローンLSB2.20、クローンOX117、クローンOX119、LS-C484765、クローン4F8C10(MAB21425)、ポリクローナル抗SIRPγ抗体(AF4486)、3つの非特異的IgGコントロールのうちの1つで、又は抗体コントロールなしで処理した。T細胞増殖及びIFNγ産生のレベルを測定した(図9C及び9D)。興味深いことに、SIRPγ抗体クローンOX117でのT細胞の処理から、生体外でのT細胞増殖及びIFNγ分泌の統計学的に有意な、且つ最も高いレベルが実証された(図9C~9D)。OX117で処理されたT細胞によって分泌されるIFNγのレベルは、LSB2.20で処理された細胞によって分泌されるIFNγのレベルの2倍であり、OX119処理細胞によって分泌されるIFNγのレベルの6倍を超えた。報告によれば、抗SIRPγモノクローナル抗体クローンOX117のfab断片が、その領域がD1と異なる(CD47と相互作用する)、SIRPγの第1及び第2免疫グロブリンドメイン(D1及びD2)の界面にてSIRPγに結合する(Nettleship et al.,BMC Struct Biol 13:13(2013))。さらに、OX117が結合するエピトープはSIRPγモノクローナル抗体クローンOX119及びLSB2.20が結合するエピトープと異なる。このことから、OX117で確認されたT細胞増殖及びIFNγ分泌は、SIRPγへのCD47結合の直接的なブロッキングによって生じない可能性があることが示唆される。
市販の抗SIRPγ抗体のパネルで実施した上記のアッセイからの結果の概要を図10に提供する。まとめると、これらのデータは、特にCD47とのその相互作用を介した、SIRPγの特異的な共刺激機能を裏付けない。代わりに、本発明者らは、T細胞増殖、活性化及びサイトカイン産生におけるSIRPγの新規な抑制機能を同定した。特定の抗体は、SIRPγのこの抑制機能を妨げ、T細胞活性を増強し、それは、CD47とSIRPγとの相互作用のブロッキングを通じて達成され得る。これらのデータから、SIRPγのT細胞抑制機能が、SIRPγの固有のエピトープによって仲介され得ること、及び限定されないが、OX117によって達成されるのと同様に、SIRPγのD1及びD2の界面に結合する分子が、T細胞機能の増強に有用であり得ることも示唆される。
実施例7
この実施例によって、SIRPγ阻害剤が対象における腫瘍若しくは癌に対する免疫応答を増加することが実証される。
T細胞は、腫瘍特異的な抗原を認識した場合に癌細胞を殺すことができる。T細胞特異的な死滅作用を増幅するために、T細胞を遺伝子操作して、腫瘍抗原特異的T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)を発現させ、それによって、癌細胞が死滅する。SIRPγのCRISPRノックアウトは、抗原特異的なTCR-T又はCAR-T細胞上で行われる。腫瘍特異的な抗原を発現するヒト癌細胞を、コントロール又はSIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞と共に共培養して、抗腫瘍免疫応答が測定される。SIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞の死滅活性は、生存癌細胞の定量化によって測定される。分泌IFNγは、標準ELISAアッセイで検出される。SIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞は、IFNγ分泌の増加及び癌細胞死滅の増強を示す。腫瘍特異的な抗原としては、限定されないが、NY-ESO-1及びMART1/Melan-Aが挙げられる。
実施例8
この実施例から、SIRPγ阻害剤が、対象における腫瘍サイズの減少及び/又は腫瘍成長の低減を導くことが実証される。
SIRPγはマウス細胞上で発現されない。腫瘍成長に対するSIRPγの効果を試験するマウス腫瘍モデルを確立するために、NOD scid γ(NSG)免疫不全マウスに、特異的な腫瘍抗原を発現する、ヒト癌細胞又は細かく刻まれた患者由来腫瘍を移植する。コントロール又はSIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞を生体外で遺伝子操作し、拡大する。腫瘍が一定のサイズに達した後(例えば、体積50~120mm)、コントロール又はSIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞をNSGマウス内に養子移入し、腫瘍サイズを測定する。腫瘍特異的な抗原としては、限定されないが、NY-ESO-1及びMART1/Melan-Aが挙げられる。SIRPγノックアウト抗原特異的なT細胞の移入を有するマウスは、腫瘍サイズ及び腫瘍成長の低減を示す。
生体内腫瘍モデルを確立して、腫瘍免疫応答に対するSIRPγ阻害剤の効果を試験するために、ヒト多能性幹細胞(HPSC)移植によって、ヒト化NSG(HuNSG)マウスを作製する。ヒトCD34+HPSC移植から12週後に、ヒト癌細胞をマウスに注入して、腫瘍を発生させる。代替方法としては、患者由来の異種移植片(PDX)腫瘍モデルについては、細かく刻んだ患者由来の腫瘍をHuNSGマウスに皮下注入する。腫瘍が一定のサイズ(例えば、体積50~120mm)に達したら、処置が開始される。SIRPγ阻害剤をHuNSGマウスに静脈内注入し、腫瘍サイズ及び腫瘍体積を測定する。SIRPγ阻害剤治療を受けたマウスは、腫瘍サイズ及び腫瘍成長の低減を示す。
本明細書に出版物、特許出願、及び特許などのすべての参考文献は、それぞれの参考文献があたかも、個々に及び具体的に参照により本明細書に組み込まれることが示されているかのごとく、且つ本明細書においてその全体が記載されているかのごとく同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
開示内容を説明する文脈(特に、以下の特許請求の範囲の文脈)における「1つ(a)」及び「1つ(an)」及び「その(the)」という用語の使用及び同様な指示は、本明細書において別段の指定がない限り、又は文脈とはっきりと矛盾していない限り、単数と複数のどちらも含むと解釈される。「含む」、「有する」、「包含する」、及び「含有する」という用語は、別段の指定がない限り、制約のない用語として解釈される(つまり、「~を含むが、限定されない」を意味する)。
本明細書における範囲の記載は、本明細書において別段の指定がない限り、範囲内にあるそれぞれ別々の値及びそれぞれの終点を個々に言及する速記法としての役割を果たすことが単に意図され、本明細書においてあたかも個々に記載されるように、それぞれ別々の値及び終点が本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載のすべての方法が、本明細書において別段の指定がない限り、又は文脈とはっきりと矛盾しない限り、適切な順序で行うことができる。いずれかの、及びすべての実施例、又は本明細書に示される例示的な文言(例えば、「~など」)の使用は、単に開示内容をより良く説明することを意図するものであり、別段の主張がない限り、開示の範囲に制限を課さない。開示内容の実施に必須であるとして請求項に記載されていない要素を示すと、本明細書における文言は解釈すべきではない。
本開示の好ましい実施形態は、本明細書に記載され、開示内容を実施するために本発明者らに既知の最良の形態を含む。これらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の明細書を読めば、当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、かかる変形形態を適宜、当業者らが用いることを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載される以外の別の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示は、該当する法律によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載の主題のすべての修正形態及び均等物を包含する。さらに、その可能性のあるすべての変形形態における上述の要素のいずれかの組み合わせは、本明細書に別段の指定がない限り、或いは文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
本開示の好ましい実施形態は、本明細書に記載され、開示内容を実施するために本発明者らに既知の最良の形態を含む。これらの好ましい実施形態の変形形態は、前述の明細書を読めば、当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、かかる変形形態を適宜、当業者らが用いることを期待し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載される以外の別の方法で実施されることを意図する。したがって、本開示は、該当する法律によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載の主題のすべての修正形態及び均等物を包含する。さらに、その可能性のあるすべての変形形態における上述の要素のいずれかの組み合わせは、本明細書に別段の指定がない限り、或いは文脈と明らかに矛盾しない限り、本開示によって包含される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、前記腫瘍又は癌を前記対象において治療するのに有効な量で、SIRPγバインダーを前記対象に投与することを含む、方法。
(項目2)
腫瘍又は癌を有する対象においてT細胞のエフェクター活性を増加する、又はT細胞の抑制活性を低減する方法であって、前記対象において前記エフェクター活性を増加する、又は前記抑制活性を低減するのに有効な量で、前記対象にSIRPγバインダーを投与することを含む、方法。
(項目3)
対象において腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加する方法であって、腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加するのに有効な量で、SIRPγバインダーを前記対象に投与することを含む、方法。
(項目4)
前記免疫応答が、T細胞によって仲介される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記T細胞が、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する、項目2から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記T細胞が腫瘍浸潤性T細胞である、項目2から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記T細胞が制御性T細胞(Treg)である、項目2から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記T細胞が、消耗T細胞、任意選択的に、消耗CD8+ T細胞である、項目2から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記T細胞が記憶細胞である、項目2から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記記憶細胞が、CD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記SIRPγバインダーがSIRPγ阻害剤である、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記SIRPγ阻害剤が、前記対象の細胞においてSIRPγの発現を低減し、任意選択的に、前記SIRPγ阻害剤が、前記対象のT細胞上でのSIRPγの細胞表面発現を低減する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記T細胞が、前記対象のエフェクターT細胞である、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記SIRPγ阻害剤が、SIRPγと、SIRPγ結合パートナーとの結合性相互作用を低減する、項目11から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記SIRPγ結合パートナーがCD47である、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγの免疫グロブリン(Ig)ドメイン1(D1)に結合する、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγのD1及びIgドメイン2(D2)に結合する、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記SIRPγバインダーが、D1とD2の両方に、任意選択的にD1とD2の界面にて結合する、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγモノクローナル抗体OX117が結合するエピトープに結合する、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγへの結合に関してOX117と競合する、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記SIRPγバインダーが、OX117と同じ、又はそれ以上の親和性でSIRPγに結合する、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記SIRPγバインダーがOX117又はその抗原結合性断片である、項目1から21のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のうちの1つ又は複数と水素結合を形成する、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記SIRPγバインダーが、SIRPγに結合すると、SIRPγの高次構造変化を生じる、項目1から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記SIRPγバインダーが同時に、2つのSIRPγ分子に結合し、又はSIRPγ二量体化を促進する、項目1から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記SIRPγバインダーが、前記CD47結合部位とオーバーラップしないエピトープに結合する、項目1から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記SIRPγバインダーが抗原結合性タンパク質である、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗原結合性タンパク質が、抗体、抗原結合性抗体断片、又は抗体タンパク質産物である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗原結合性タンパク質が、SIRPγの前記CD47結合部位内でエピトープに結合する、項目27又は28に記載の方法。
(項目30)
前記対象が、肝細胞癌(HCC)、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、任意選択的に、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、項目1から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、項目1から30のいずれか一項に従って、前記対象における前記腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加することを含む、方法。
(項目32)
腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、項目1から31のいずれか一項に従って、前記対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加する、又はT細胞の抑制活性を低減することを含む、方法。

Claims (32)

  1. 腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、前記腫瘍又は癌を前記対象において治療するのに有効な量で、SIRPγバインダーを前記対象に投与することを含む、方法。
  2. 腫瘍又は癌を有する対象においてT細胞のエフェクター活性を増加する、又はT細胞の抑制活性を低減する方法であって、前記対象において前記エフェクター活性を増加する、又は前記抑制活性を低減するのに有効な量で、前記対象にSIRPγバインダーを投与することを含む、方法。
  3. 対象において腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加する方法であって、腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加するのに有効な量で、SIRPγバインダーを前記対象に投与することを含む、方法。
  4. 前記免疫応答が、T細胞によって仲介される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記T細胞が、腫瘍又は腫瘍微小環境内に位置する、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記T細胞が腫瘍浸潤性T細胞である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記T細胞が制御性T細胞(Treg)である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記T細胞が、消耗T細胞、任意選択的に、消耗CD8+ T細胞である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記T細胞が記憶細胞である、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記記憶細胞が、CD8+記憶細胞又はCD4+中枢記憶細胞である、請求項9に記載の方法。
  11. 前記SIRPγバインダーがSIRPγ阻害剤である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記SIRPγ阻害剤が、前記対象の細胞においてSIRPγの発現を低減し、任意選択的に、前記SIRPγ阻害剤が、前記対象のT細胞上でのSIRPγの細胞表面発現を低減する、請求項11に記載の方法。
  13. 前記T細胞が、前記対象のエフェクターT細胞である、請求項12に記載の方法。
  14. 前記SIRPγ阻害剤が、SIRPγと、SIRPγ結合パートナーとの結合性相互作用を低減する、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記SIRPγ結合パートナーがCD47である、請求項14に記載の方法。
  16. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγの免疫グロブリン(Ig)ドメイン1(D1)に結合する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγのD1及びIgドメイン2(D2)に結合する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記SIRPγバインダーが、D1とD2の両方に、任意選択的にD1とD2の界面にて結合する、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγモノクローナル抗体OX117が結合するエピトープに結合する、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγへの結合に関してOX117と競合する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記SIRPγバインダーが、OX117と同じ、又はそれ以上の親和性でSIRPγに結合する、請求項20に記載の方法。
  22. 前記SIRPγバインダーがOX117又はその抗原結合性断片である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
  23. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγのアミノ酸残基Q8、E10、G109、K11、L12、及びD149のうちの1つ又は複数と水素結合を形成する、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 前記SIRPγバインダーが、SIRPγに結合すると、SIRPγの高次構造変化を生じる、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 前記SIRPγバインダーが同時に、2つのSIRPγ分子に結合し、又はSIRPγ二量体化を促進する、請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記SIRPγバインダーが、前記CD47結合部位とオーバーラップしないエピトープに結合する、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記SIRPγバインダーが抗原結合性タンパク質である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記抗原結合性タンパク質が、抗体、抗原結合性抗体断片、又は抗体タンパク質産物である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記抗原結合性タンパク質が、SIRPγの前記CD47結合部位内でエピトープに結合する、請求項27又は28に記載の方法。
  30. 前記対象が、肝細胞癌(HCC)、結腸直腸癌(CRC)、肺癌、任意選択的に、非小細胞肺癌(NSCLC)を有する、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
  31. 腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、請求項1から30のいずれか一項に従って、前記対象における前記腫瘍又は癌に対する免疫応答を増加することを含む、方法。
  32. 腫瘍又は癌を有する対象を治療する方法であって、請求項1から31のいずれか一項に従って、前記対象におけるT細胞のエフェクター活性を増加する、又はT細胞の抑制活性を低減することを含む、方法。
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