JP2022535242A - 細胞の集団に対するウイルス送達の方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、細胞のウイルストランスフェクションの方法を提供する。TIFF2022535242000039.tif171157

Description

関連出願
本出願は、米国特許法(35 U.S.C.)第119条(e)の下で、2019年5月31日に出願された米国特許仮出願第62/855,241号に対する優先権の恩典を主張し、その各々の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は、哺乳動物細胞中への剤(例えば、ウイルス)の送達およびそのウイルスの作製に関する。
発明の背景
ウイルスは、有効な遺伝子送達ビヒクルとして広く用いられている。形質導入とは、外来DNAがウイルスまたはウイルスベクターによって細胞中に導入されるプロセスである。形質導入は、外来遺伝子を宿主細胞、例えば、哺乳動物のゲノム中に安定に導入するために、分子生物学者によって用いられる一般的なツールである。形質導入のための条件の最適化は、多様な研究適用および臨床適用のために非常に重要である。トランスフェクトするのが難しい細胞に対して、レンチウイルス形質導入は、良好な発現レベルを達成するための高い効率の解決策をもたらす。効率、時間、生産コスト、および細胞生存率は、当分野において課題のままである。
本発明は、細胞中にウイルスなどの複合体カーゴを送達する問題に対して解決策を提供する。ウイルスは、タンパク質コート中の核酸分子から典型的になる、感染性物質である。ウイルスは、生細胞から離れては成長するかまたは繁殖することができない、細菌より小さい微生物であり、すなわち、ウイルスは、宿主の生細胞内でのみ増倍することができる。
本発明は、細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達する方法を特徴とし、方法は、細胞の集団を提供する段階、および、細胞の集団を、ウイルスと2%よりも高い濃度のアルコールとを含むある体積の等張水溶液と接触させる段階を含む。細胞の集団該体積の水溶液と接触させる段階は、スプレーを形成するように水溶液をガスで噴射することによって行われる。スプレーは、150μm超または150μmの直径を含む液滴(または液滴の集合)を含む。例えば、スプレーは、177μm~590μmの範囲の直径を含む液滴(または液滴の集合)を含む。
送達される例示的なウイルスには、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)が含まれる。好ましい態様において、ウイルスはレンチウイルスである。
細胞の集団は、哺乳動物細胞、例えば、ヒト免疫細胞を含む。細胞の集団は、接着細胞または浮遊細胞を含んでもよい。いくつかの例において、細胞の集団は、Tリンパ球またはナチュラルキラー(NK)細胞などの非接着細胞を含む。細胞の集団は、初代細胞または細胞株を含んでもよい。例えば、集団は、HEK293細胞、HEK293T細胞、Lenti-x 293T細胞、またはHEK293F細胞を含む。方法は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%である、細胞の形質導入効率を生じる。
水溶液は、エタノールなどのアルコールを含む。例えば、水溶液は、2%よりも多いエタノール、10%よりも多いエタノールを含み、例えば、水溶液は、20~30%のエタノールを含む。例示的な溶液は、5~30%のエタノール濃度を含む。
水溶液は、以下の構成要素のうちの1つまたは複数をさらに含む:75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)。例えば、溶液は、スクロース32.5 mM、KCl 106 mM、Hepes 5 mM、およびエタノール12% v/vを含む。
送達されるカーゴ、例えば、ウイルスを含有するスプレー溶液を受け取るために、細胞の集団は、基質上の非接着細胞の層、例えば、単層として存在してもよい。層は、コンフルエントであってもよく、または非コンフルエントであってもよい。例示的な細胞の層、例えば、単層は、メンブレンフィルター上に存在する。
本発明は、細胞中にウイルスおよび組成物を送達する問題に対して解決策を提供する。したがって、細胞(例えば、浮遊細胞または接着細胞)の形質膜を横切ってウイルスを送達する方法は、細胞の集団を提供する段階、および、細胞の集団をある体積の等張水溶液と接触させる段階であって、該水溶液がウイルスを含む、段階を含む。
細胞にウイルスを送達するための水溶液は、塩、例えば、12.5~500 mMの塩化カリウム(KCl)を含む。例えば、溶液は、ヒトT細胞などの哺乳動物細胞の細胞質に対して等張である。そのような例示的な等張送達溶液は、106 mMのKClを含有する。
前記方法は、任意のウイルスを、接着または非接着の哺乳動物細胞に送達するために用いられ、本発明の前のそうすることに関連する困難のため、カーゴを非接着細胞に送達するのに特に有用である。いくつかの例において、非接着細胞は、末梢血単核細胞を含み、例えば、非接着細胞は、T細胞(Tリンパ球)、例えば、活性化されたかまたは活性化されていない(ナイーブとしても知られる)T細胞などの免疫細胞を含む。T細胞などの免疫細胞は、任意で、CD3、CD28、またはそれらの組み合わせのリガンドで活性化される。例えば、リガンドは、CD3またはCD28またはその両方に結合する、抗体または抗体断片である。
前記方法は、送達溶液中のウイルスを、単層、例えば、支持体または基質上に物理的に位置する細胞のシートを含む、非接着細胞の集団に送達することを含む。例えば、細胞は層を形成し、これを、水性送達溶液のスプレーと接触させる。例えば、単層(または層)を、水性送達溶液のスプレーと接触させる。方法は、ウイルス(化合物または組成物)を、細胞の細胞質中に送達し、細胞の集団は、手順後に高いパーセントの生存率を維持する。方法はまた、ウイルス(化合物または組成物)をスプレーの形態で送達し、該スプレーは少量である。少量のスプレーは、細胞の形質膜でウイルスを濃縮する。
ある特定の態様において、非接着/浮遊細胞の単層は、メンブレンフィルター上に存在する。いくつかの例において、細胞単層を送達溶液のスプレーと接触させた後に、メンブレンフィルターを動かし、例えば、撹拌するかまたは振動させる。メンブレンフィルターは、細胞に送達溶液をスプレーする前、その最中、および/またはその後に、振動させるかまたは撹拌してもよい。
送達溶液は、等張水溶液を含み、該水溶液は、ペイロードと、2パーセント(v/v)よりも高い濃度のアルコールとを含む。アルコールは、エタノールを含むことができる。水溶液は、10%よりも多いエタノールを含むことができる。水溶液は、20~30%のエタノールを含むことができる。水溶液は、27%のエタノールを含むことができる。水溶液は、12.5~500 mMのKClを含むことができる。水溶液は、106 mMのKClを含むことができる。態様において、水溶液は、27%のエタノールを含む。他の例において、水溶液は、12%のエタノールを含む。例において、水溶液は、32.5 mM、塩化カリウム(KCl)106 mM、Hepes 5 mM、エタノール(EtOH)12% v/v、および注射用の水(WFI)を含む。
例において、「S緩衝液」は、4℃で5分間の、低張生理的緩衝液(78 mMスクロース、30 mM KCl、30 mM酢酸カリウム、12 mM HEPES)を含む(Medepalli K. et al., Nanotechnology 2013; 24(20);その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの例において、酢酸カリウムは、S緩衝液において酢酸アンモニウムで置き換えられる。S緩衝液は、さらに、国際出願WO 2016/065341、例えば、段落[0228]~[0229]に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
非接着細胞は、末梢血単核細胞を含むことができる。非接着細胞は、免疫細胞を含むことができる。非接着細胞は、Tリンパ球を含むことができる。非接着細胞の集団は、単層を含むことができる。
別の局面において、組成物は、等張水溶液を含み、該水溶液は、カーゴ化合物または組成物を哺乳動物細胞に送達する使用のために、10~500 mMの濃度のKClと、5パーセント(v/v)よりも高い濃度のエタノールとを含む。KCl濃度は、106 mMであることができ、当該アルコール濃度は、27%であることができる。態様において、水溶液は、Flexi(例えば、小規模)のために27%のエタノールを含む。態様において、水溶液は、大規模システムにおいて12%のエタノールを含む。
局面において、非接着細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達するための方法が本明細書において提供され、方法が、非接着細胞の集団を提供する段階;および細胞の集団をある体積の等張水溶液と接触させる段階であって、該水溶液がウイルスを含む、段階を含む。態様において、ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む。
態様において、細胞の集団は、接着細胞または浮遊細胞を含む。例えば、細胞の集団は、HEK293細胞、HEK293T細胞、Lenti-x 293T細胞、またはHEK293F細胞を含む。
また、非接着細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達するための方法が本明細書において提供され、方法は、非接着細胞の集団を提供する段階;および細胞の集団をある体積の等張水溶液と接触させる段階であって、該水溶液が、ウイルスと、2パーセント(v/v)よりも高い濃度のアルコールとを含む、段階を含む。態様において、ウイルスは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む。
態様において、細胞の集団は、接着細胞または浮遊細胞、例えば、HEK293細胞、HEK293T細胞、Lenti-x 293T細胞、またはHEK293F細胞を含む。
態様において、トランスフェクション(または形質導入)効率は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%(またはより高い%)である。
態様において、アルコールはエタノールを含む。他の態様において、水溶液は、10%よりも多いエタノールを含む。態様において、水溶液は、20~30%のエタノールを含む。態様において、水溶液は、27%のエタノールを含む。態様において、水溶液は、例えば、より大きい規模のシステムにおいて、12%のエタノールを含む。
態様において、細胞の集団は、非接着細胞の単層を含む。例において、単層を、前記水溶液のスプレーと接触させる。単層は、さらに、メンブレンフィルター上に存在してもよい。
「含む(including)」、「含有する」、または「特徴とする」と同義である「含む(comprising)」という移行用語は、包括的または開放型であり、追加の、列挙されていない要素または方法工程を排除しない。対照的に、「からなる」という移行句は、請求項において指定されていないいかなる要素、工程、または成分も排除する。「から本質的になる」という移行句は、請求項の範囲を、特許請求の範囲に記載される発明の指定された材料または工程「および基本のかつ新規の特徴に物質的に影響を及ぼさないもの」に限定する。
本発明の他の特徴および利点は、その好ましい態様の以下の説明から、および特許請求の範囲から明らかであろう。別段の定義がない限り、本明細書において用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価の方法および材料を、本発明の実施または試験において用いることができるが、適している方法および材料を、下記で説明する。本明細書において引用されるすべての公開された外来の特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるアクセッション番号によって示されるGenBankおよびNCBIの登録物は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるすべての他の公開された参照文献、文書、原稿、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。矛盾する場合には、本明細書が、定義を含めて支配することになる。加えて、材料、方法、および実施例は、例証となるだけであり、限定するようには意図されない。
ウイルス作製プロトコールの概要を示す模式図である。矢印によって表されるように、本明細書に記載される方法は、プロトコールのプラスミドトランスフェクション工程中に組み入れられる。 その全体が参照により本明細書に組み入れられるBiophys J. 2016 Mar 8; 110(5): 1028-1032由来の、ウイルス侵入経路を示す画像である。 レンチウイルス(LV)-GFPの送達の前後の、T細胞の生存率を示す棒グラフである。 感染の96時間後までの累積増大倍率を示す棒グラフである。 LV-GFP送達後3日目および4日目の、T細胞におけるGFP発現を示す棒グラフである。 図6A~6Dは、室温で1時間後(図6A)、2時間後(図6B)、3時間後(図6C)、および4時間後(図6D)の、LV-eGFP(高感度GFP)と共に製剤化された送達溶液の代表的な4倍の画像を図示する。 図7Aおよび7Bは、3日目のPBMC開始T細胞の、CD3(図7A)およびCD3+CD25(図7B)の発現のヒストグラムプロファイルを図示する。 システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞回収率を示す棒グラフである(n=3の技術的反復実験)。 図9Aおよび9Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の3日後までの、生存率(図9A)および累積増大倍率(図9B)を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図10Aおよび10Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の3日後までの、GFP発現(図10A)および中央蛍光強度(図10B)を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図11A~11Bは、3日目のPBMC開始T細胞の、CD3(図11A)およびCD3+CD25(図11B)の発現のヒストグラムプロファイルの画像である。 本明細書に記載されるシステムを伴うSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞回収率を示す棒グラフである(n=3の技術的反復実験)。 図13Aおよび13Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、生存率(図13A)および累積増大倍率(図13B)を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図14Aおよび14Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、%(図14A)および中央蛍光強度(図14B)におけるGFP発現を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図15Aおよび15Bは、3日目のPBMC開始T細胞の、CD3(図15A)およびCD3+CD25(図15B)の発現のヒストグラムプロファイルを示す画像である。 システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞回収率を示す棒グラフである(n=6)。 図17Aおよび17Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の3日後までの、生存率を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。ウイルス送達法(図17A)およびLVのMOI(図17B)による生存率に対する影響を示す。二元配置分散分析(two-way ANOVA)を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図18Aおよび18Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、累積増大倍率を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。ウイルス送達法(A)およびLVのMOI(B)による増大に対する影響を示す。二元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図19A~19Bは、感染の4日後までの、%における(図19A)および中央蛍光強度における(図19B)GFP発現に対するウイルス送達法の影響を示す線グラフである。感染の4日後までの%GFP発現(図19C)およびGFP MFI(図19D)に対する送達されたMOIの影響を示す。試験された各MOI条件についてN=3の技術的反復実験。二元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図20Aおよび20Bは、3日目のPBMC開始T細胞の、CD3(図20A)およびCD3+CD25(図20B)の発現のヒストグラムプロファイルの画像である。 システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞回収率を示す棒グラフである(n=6)。 図22Aおよび22Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、生存率を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。ウイルス送達法(図22A)およびLVのMOI(図22B)による生存率に対する影響を示す。二元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図23Aおよび23Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、累積増大倍率を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。ウイルス送達法(図23A)およびLVのMOI(図23B)による増大に対する影響を示す。二元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図24A~24Dは、感染の4日後までの、%における(図24A)および中央蛍光強度における(図24B)GFP発現に対するウイルス送達法の影響を示す線グラフである。感染の4日後までの%GFP発現(図24C)およびGFP MFI(図24D)に対する送達されたMOIの影響を示す。試験された各MOI条件についてN=3の技術的反復実験。二元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 3日目のPBMC開始T細胞の、CD3およびCD25の発現を示す棒グラフである(n=4)。 システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞回収率を示す棒グラフである(n=18)。 図27A~27Cは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、生存率を示す線グラフである(n=18)。ウイルス送達法(図27A)、LVのMOI(図27B)による生存率に対する影響、およびラン1/2とラン3/4との間に起こった変化(図27C)を示す。三元配置分散分析(three-way ANOVA)を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図28A~28Cは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、累積増大倍率を示す線グラフである(n=18)。ウイルス送達法(図28A)、LVのMOI(図28B)による増大に対する影響、およびラン1/2とラン3/4との間に起こった変化(図28C)を示す。三元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図29A~29Fは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、GFP発現(図29A、図29C、図29E)および中央蛍光強度(図29B、図29D、図29F)を示す線グラフである(n=3の技術的反復実験)。ウイルス送達法(図29A、図29B)、LVのMOI(図29C、図29D)によるGFP発現およびMFIに対する影響、ならびにラン1/2とラン3/4との間に起こった変化(図29E、図29F)を示す。三元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図30A~30Fは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までのラン1(図30A)、ラン2(図30B)、ラン3(図30C)、およびラン4(図30D)についての増大倍率を示す棒グラフである(n=3の技術的反復実験)。ラン3(図30E)およびラン4(図30F)について、LVのMOIによる増大に対する影響を示す。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 図31Aおよび31Bは、SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、増大倍率を示す棒グラフである(n=18)。ウイルス送達法による(図31A)およびLVのMOIによる(図31B)増大に対する影響を示す。対応のある両側t検定を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、増大倍率を示す棒グラフである(条件当たりn=6)。一元配置分散分析(one-way ANOVA)を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入によるウイルス送達の4日後までの、生存率を示す棒グラフである(条件当たりn=6)。一元配置分散分析を用いて計算された統計解析(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001)。 PBMCの単離中のFalconチューブの画像である。 システムチャンバーの組立てを示す画像である。 スタンドにおいて組み立てられたシステムベースの画像である。 ドレインディスクの湿潤を示す画像である。 フィルターメンブレンの悪いレイアウトおよび良いレイアウトの例を示す画像である。 流体工学を伴うElveflowモジュールおよびリザーバホルダーを図示する画像である。 SOLUPORE(商標)法のためのコントローラーユニットを示す画像である。 システムチャンバー中の較正カップを示す画像である。 シャワーヘッドを通して気流を確立するための手動圧力調節器を示す画像である。 コントロールユニットからサンプルラインへの接続を示す画像である。 チャンバー内の表面のリンスおよびクリーニングを容易にするためのチャンバーの回転を示す画像である。 システムチャンバー構成要素の概観の画像である。 システムリッド構成要素の概観の画像である。 組み立てられたシステムを示す画像である。 eGFPを有するLV発現プラスミドのマップの画像である。 実験1についての、2アルブミン当たりのWPREに基づく細胞当たりのGFPの推定コピー数(GFP%)を示す棒グラフである。 実験2についての、2アルブミン当たりのWPREに基づく細胞当たりのGFPの推定コピー数(GFP%)を示す棒グラフである。 液滴サイズ分布(x軸)対頻度(y軸)を図示するグラフである。 様々な液体の温度(x軸)と動的粘度(y軸)を示すグラフである。グラフは、その全体が参照により本明細書に組み入れられるEngineering ToolBoox (2008); Dynamic Viscosity of Common Liquidsから複写。
詳細な説明
ウイルスは、有効な遺伝子送達ビヒクルとして広く用いられている。形質導入とは、外来DNAがウイルスまたはウイルスベクターによって細胞中に導入されるプロセスである。形質導入は、外来遺伝子を宿主細胞、例えば、哺乳動物のゲノム中に安定に導入するために、分子生物学者によって用いられる一般的なツールである。形質導入のための条件の最適化は、多様な研究適用および臨床適用のために非常に重要である。トランスフェクトするのが難しい細胞に対して、レンチウイルス形質導入は、良好な発現レベルを達成するための高い効率の解決策をもたらす。効率、時間、生産コスト、および細胞生存率は、当分野において課題のままである。
SOLUPORE(商標)プロセスを用いた細胞の集団に対するウイルス送達
SOLUPORE(商標)プロセスにより、インビトロおよびエクスビボでの、接着細胞および浮遊細胞に対する広範囲のカーゴの送達が可能になる。現在まで、これらのカーゴは、核酸およびタンパク質などの分子ならびにQdotなどの粒子からなっている。本明細書におけるデータにより、SOLUPORE(商標)プロセスを、ウイルス(例えば、レンチウイルス)などの非細菌微生物を、標準的な対照形質導入よりも高い効率でT細胞に送達するために使用できることが示される。
ベクターとしてのウイルス
ウイルスは、天然でヒト細胞に感染することができるため、細胞に対する核酸の送達のためのベクターとして用いられる。ウイルスは、侵入の前に、宿主細胞に付着しなければならない。ウイルスキャプシドまたはウイルスエンベロープ上の特定のタンパク質が、標的細胞の細胞膜上の特定の受容体タンパク質に結合する時に、付着が達成される。ウイルスのタイプに応じて、細胞中への侵入は、異なる様式で起こり得る。ウイルスエンベロープを有するウイルスは、膜融合によって細胞に侵入することができ、そこでは、細胞膜に穴が開き、フォールディングしていないウイルスエンベロープとさらに接続するようにされる。ウイルスエンベロープを有さないウイルスは、エンドサイトーシスによって侵入することができる(図2)。バクテリオファージなどの他のウイルスは、細胞表面に付着し、ウイルスゲノムのみが、宿主細胞中に注入される。
免疫細胞操作
異なるタイプのウイルスは、臨床適用のためエクスビボで細胞に形質導入するのに用いられる場合、考慮される必要がある異なる特徴を有する。主な特徴は、以下である:免疫原性;標的細胞型;ペイロード能力;分裂細胞に対して非分裂細胞に形質導入できること;安定なゲノム組込みに対する一過性(表5)。
遺伝子送達適用に用いられるウイルスの概要
Figure 2022535242000002
その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Pharmaceutics 2020, 12, 183
CAR-T細胞およびCAR-NK細胞の生成のためのキメラ抗原受容体(CAR)構築物の送達などの、免疫細胞療法の適用のためには、ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスが典型的に用いられ、これは、それらが免疫細胞に形質導入することができるため、かつゲノム中への安定な組込みを結果としてもたらすためである。例えば、最初の2つの承認されたCAR-T細胞製品であるKymriahおよびYescartaは、それぞれ、レンチウイルスベクターおよびガンマレトロウイルスベクターを用いて操作された(Poorebrahim M et al.CritRev Clin Lab Sci. 2019 Sep;56(6):393-419)。大部分のウイルスベクターと同様に、これらのベクターは、ウイルスの複製を無能にし、かつ細胞ターゲティング効率を改善するように改変された。
遺伝子編集などの他の免疫細胞操作の適用のためには、AAVベクターが広く用いられている。野生型AAVは、19番染色体中に安定に組み込まれ得るが、AAVベースの遺伝子治療ベクターは、組込みを阻止し、その代わりに宿主細胞の核においてエピソームコンカテマーを形成するように改変されている。非分裂細胞において、これらのコンカテマーは、宿主細胞の生涯にわたって無傷のままである。分裂細胞においては、エピソームDNAは宿主細胞DNAと共に複製されないため、AAV DNAは、細胞分裂を通して失われる。そのため、AAVベクターは、多くの場合、遺伝子編集のためのCRISPR/Cas9システムまたはドナー鋳型DNAなどの編集システムを送達するために用いられる。これらの場合に、遺伝子編集は永久であるが、遺伝子編集ツールは、そのツールが長期の期間にわたって細胞に存在する場合に起こり得る非特異的なオフターゲット遺伝子編集を限定するために、一過性のみに発現させることが望ましい可能性がある。
レンチウイルス
ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスは、ウイルスにコードされる逆転写酵素と呼ばれる酵素により形質導入細胞においてDNAに変換されるRNAゲノムを含有する、レトロウイルスのサブタイプである。レトロウイルスについては、細胞中への侵入の後に、アンコーティングのプロセスが続き、それによって、いくつかのウイルスタンパク質がウイルスコアから解離する。ウイルスRNAは、二本鎖DNAに逆転写される。次いで、ウイルスタンパク質は、プロウイルスDNAと複合体形成して、核移行および宿主ゲノム中への組込みをもたらす。組込みのプロセスは、インテグラーゼなどの非常に重要なウイルスタンパク質、および内在性の宿主細胞転写因子によって補助される。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に由来するレンチウイルスベクターは、哺乳動物細胞中への遺伝子送達のための主なツールになってきており、複製欠損組換えレンチウイルスは、研究適用および臨床適用において広く用いられている。改変されたレンチウイルスは、依然として細胞に感染することができるが、新たなウイルス粒子を産生するための本質的な遺伝子がもはや存在しない。レンチウイルスベクターは、以下のいくつかの理由で、魅力的な遺伝子送達ビヒクルとみなされている:宿主ゲノム中への安定なベクター組込みを介して、長期の遺伝子発現をもたらす;分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができる;遺伝子治療および細胞療法のために重要な標的細胞型を含む、広範囲の細胞に感染することができる;ベクター形質導入後に免疫原性ウイルスタンパク質を欠如している;イントロン含有配列などの複雑な遺伝子エレメントを送達することができる;ベクターの操作および作製のための比較的容易なシステムである。レンチウイルスベクターは、ガンマレトロウイルスベクターよりも安全な組込み部位プロファイルを有し、CAR T細胞療法の臨床試験において一般的に用いられている(McGarrity G.J. et al. J. Gene Med. 2013;15:78-82)。第三世代のレンチウイルスベクターは、鍵となる安全性特性を組み込み、安全性をさらに増強している(Kim V.N. et al. J. Virol. 1998;72:811-816およびDull T. et al. J. Virol. 1998;72:8463-8471)。
レトロウイルスで形質導入可能である細胞型の範囲は、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(VSV-G)を有するシュードタイピングレトロウイルスによって広げられている。VSV-Gは、遍在性の膜成分であるホスファチジルセリンに結合し、これによって、VSV-Gシュードタイプ化ウイルスが、ずっとより広い範囲の細胞に付着して、形質導入することが可能になる。現在、大部分のレンチウイルスベクターは、ニューロン、リンパ球、およびマクロファージを含む多くの細胞型中への堅牢な形質導入を可能にするように、VSV-Gでシュードタイプ化されている。
静止状態の細胞
健常ドナーまたは患者のいずれかからの単離後に、細胞を、活性化し、続いて、その大多数が水疱性口内炎ウイルス(VSV)の糖タンパク質Gでシュードタイプ化されているレンチウイルスベクター(LV)によって形質導入する。次いで、改変されたリンパ球を増大させ、機能的インビトロアッセイにおいて用いるか、またはインビボ適用に用いる。LVによるB細胞の安定なかつ効率的な形質導入は、達成するのが非常に困難である。静止状態のB細胞は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の発現の欠如のために、従来のVSV Gシュードタイプ化LV(VSV-LV)による形質導入に制限されており、形質導入の前に活性化されなければならない。初代ヒトBリンパ球の効率的な活性化および培養は、注意深く力価測定された、サイトカインと組み合わされた活性化刺激、およびそれに続くフィーダー細胞との共培養を含むため、複雑である。最適な活性化および培養の条件下でさえも、VSV-LVでの形質導入効率は、悪名高い程度に低い。すべてのこれらの難題の組み合わせが、操作されたB細胞を含む臨床試験の数がT細胞と比較してずっとより少ないことの説明として働き得る。
比較すると、レンチウイルス形質導入によるTリンパ球操作は、達成するのがより容易である。依然として、細胞は、B細胞と同様に、再びLDLR発現の欠如により、さもなければ形質導入を受けやすくないため、従来のVSV-LVでの形質導入の前に活性化されなければならない(X Geng, et al. Gene Therapy v.21, pages444-449(2014))。主としてCAR T細胞療法の最高の成功のために、T細胞の単離、活性化、レンチウイルス形質導入、および増大用のプロトコールは、近年大幅に改善されている。現在の最先端のT細胞活性化は、IL-7およびIL-15などのサイトカインと組み合わされた、CD3特異的抗体およびCD28特異的抗体を介したTCR活性化経路の刺激に依拠する。
従来のLVでの形質導入の前にリンパ球を活性化する必要性は、不利点を有する。これは、手順全体の複雑性に、製造プロセスの継続期間およびコストの増加を追加する。加えて、長期のエクスビボ培養と組み合わされた、活性化のために印加される刺激は、細胞を変化させる可能性が高く、これは、最終生成物の品質に対して負の影響を与え得る。結果として、ナイーブな細胞は、より高い消耗の程度、より低い増殖能力、より短いインビボ持続、およびより低い機能性を示す、それほど優先的ではない表現型へと分化し得る。これは、治療的成功のために非常に重要な意味を有し得る。例として、セントラルメモリー(CD45RO+ /CD45RA+ /CD62L+)または幹細胞メモリー(CD45RO+ /CD45RA/CD62L+)の表現型は、インビボでのT細胞の持続および機能に有益であることが示されている。この点において、CAR T細胞セントラルメモリー表現型と正の臨床応答との正の相関が、いくつかの臨床研究において観察されており、結果的に、精製されたセントラルメモリーCAR T細胞の注入が、現在考えられている。同様に、セントラルメモリー表現型は、機能的に優れたTCR改変T細胞をもたらす。したがって、遺伝子改変中のリンパ球の最小の操作は、有意な臨床的妥当性がある。
スピノキュレーション
遠心分離接種、すなわちスピノキュレーションは、ウイルス感染を増強するためにウイルス学研究において広く用いられている。手順は、ウイルスと標的細胞との混合物を、高速で長期間にわたって、例えば、800×gで30分間、32℃で遠心分離することを含む。方法は、細胞膜でウイルスを濃縮することによって形質導入率を増強すると考えられた。しかし、スピノキュレーションは、恐らく遠心分離ストレスに対する細胞応答に起因する、動的なアクチンおよびコフィリンの活性を誘発することが示されている(Jia Guo, et a. J. Virology Oct. 2011, p. 9824-9833)。このアクチン活性はまた、ウイルスの結合および侵入を増強し得る細胞膜受容体の上方制御ももたらす。スピン媒介性の増強は、単純にウイルス濃縮効果によって説明することはできず、むしろ、受容体動員、ウイルス侵入、および侵入後プロセスを促進するスピン誘導性の細胞骨格動態とカップリングしていることが示唆されている。したがって、スピノキュレーションは、未知の様式または望ましくない様式で、標的細胞の生物学に影響を及ぼす可能性がある。
ウイルスベクターの限界
ウイルスは上記のように細胞の遺伝子操作に有用であるが、その効用には限界がある。
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の高コストの製造プロセスは、手が出ないほどに高価である。ウイルスのコストのために、形質導入は、CAR T細胞製造における主なコストドライバーである。レンチウイルス粒子のT細胞に対する物理的近さなど、いくつかのバイオプロセシングパラメータが、形質導入効率において潜在的に役割を果たすとして特定されている。この近さは、懸濁液中の細胞およびウイルス粒子の数;均一性を助長するための撹拌の期間;および形質導入容器における表面対体積の比を通して操作することができる。しかし、形質導入の決定的なプロセスパラメータの特定および最適化については、限定された研究が行われている。SOLUPORE(商標)プロセス中に、少量の送達溶液を、露出された標的細胞上に直接適用する。このように、カーゴを、穏やかな様式で細胞と直接接触させる。このようにウイルスを細胞に送達することは、細胞膜での物質の濃縮をもたらす。このプロセスは、細胞膜に対するウイルス付着を増強し、かつ細胞中への侵入の速度を増強して、プロセスをより効率的にする。ひいては、小用量のウイルスが用いられ、コストが低下する。
SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞膜でウイルスを濃縮する穏やかな方法であるため、細胞構造に影響を及ぼし得るスピノキュレーションなどの既存の濃縮法に対して有意な利点を有する。さらに、SOLUPORE(商標)プロセスは、スピノキュレーションとは異なり、細胞療法製造プロセスと適合性があるように設計される。
細胞膜でのウイルスの濃縮はまた、活性化されていないT細胞などのある特定の細胞型について低レベルのウイルス受容体の発現を補い、したがって、これらの細胞において形質導入効率を増強する。
活性化されていないT細胞およびB細胞のレンチウイルスベクター形質導入の効率は、典型的に非常に低い。これらの効率を改善することが非常に望ましく、SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞の生存率および機能の保存と適合性がある条件と連関して高効率の割合で、この問題に解決策を提供する。
ウイルスは、核酸を送達することだけが可能であり、これは、それらが送達できるカーゴのタイプが制限されていることを意味する。ウイルスが、他のタイプのカーゴと同時送達され得るのであれば、これは、次世代の細胞療法製品についての操作におけるウイルスの効用を増強することができる。しかし、現在、ウイルスを他のタイプのカーゴと同時送達することが実証されているいかなる方法もない。再び、本明細書に記載されるSOLUPORE(商標)プロセスは、数多くの異なるカーゴタイプの効率的な送達を逐次的にまたは同時に可能にすることによって、この問題に解決策を提供する。以下の材料および方法を用いて、本明細書に記載される日付を生成した。
LV-GFPベクター
本明細書において用いられるLV-GFPベクターは、多種多様の細胞型を標的とすることが公知である、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)エンベロープタンパク質を保有する。
送達溶液中のLV-GFPの安定性
送達溶液中のLV-GFPの安定性を、顕微鏡下で沈殿を評価することによって、1時間にわたって評価した。
LV-GFP送達
初代ヒトPBMCを解凍し、MiltenyiのCD3抗体およびCD28抗体で3日間活性化した。活性化培養の3日後に、細胞は、LV-GFP(MOI=2.5)を伴うSOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入を受けた。GFP発現をフローサイトメトリーによって評価する前に、細胞を72時間回復させた。
送達溶液中のLV-GFPの安定性
本発明の前には、SOLUPORE(商標)プロセス送達は、以前にウイルス調製物と組み合わされたことがなかったため、溶解性の問題があるかどうかは知られていなかった。
安定性解析中に溶液を顕微鏡下で見た時には、いかなる凝集も沈殿も観察されなかった。さらに、ある特定の他のカーゴは、送達溶液と組み合わされた時に低レベルの凝集を示し、スプレー中にSolupore(登録商標)噴霧器を遮断させた。ウイルスを含有する送達溶液をSolupore(登録商標)噴霧器中にロードしてスプレーした場合には、研究の経過にわたっていずれの時点でも遮断は起きず、いかなる凝集も沈殿も起こらなかったことをさらに示した。
LV-GFP送達後の細胞生存率、増大、およびGFP発現
LV-GFPを、SOLUPORE(商標)プロセスによってT細胞培養物に送達し、LV形質導入の標準的な静置法と比較した。
細胞の生存率を、ウイルスの送達の前後の様々な時点で測定した。すべての時点で、solupore処理された(soluporated)細胞の生存率は、対照形質導入細胞の生存率に匹敵していた(図3)。
T細胞の累積増大倍率を、ウイルスの送達の96時間後まで測定した。solupore処理された細胞の増大は、対照形質導入細胞の増大に匹敵していた(図4)。
GFPの発現を、送達後3日目および4日目に測定した。GFP発現効率は、対照形質導入細胞と比較してsolupore処理されたT細胞において、より高かった(図5)。3日目に、効率は、それぞれ、solupore処理された細胞および対照形質導入細胞について、39.73±2.83%、比較元となる25.2±1.48%であった。4日目に、効率は、それぞれ、solupore処理された細胞および対照形質導入細胞について、40.27±2.67%、比較元となる26.83±1.38%であった。
細胞の集団に対するウイルスの効率的なウイルス送達
本明細書におけるデータにより、SOLUPORE(商標)プロセスのプロセスは、活性化されたT細胞に対するウイルスの送達と適合性があることが実証された。SOLUPORE(商標)プロセスの送達溶液と混合した時に、いかなる沈殿または凝集も観察されなかった。ウイルス溶液をスプレーすることが可能であり、標的細胞の形質導入に成功した。solupore処理されたT細胞の生存率および増大速度は、影響を受けなかった。
GFP発現は、対照形質導入細胞と比較してsolupore処理されたT細胞において、より高く、これは、SOLUPORE(商標)プロセスが、T細胞のウイルス形質導入を増強することを示した。
総合するとこれらの知見により、SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞に対するウイルスの送達に適しており、標準的な方法よりも優れていることが実証される。
SOLUPORE(商標)プロセスは、ウイルスの送達に適しているため、ウイルス形質導入を含む細胞療法製造プロセスにおいてsolupore処理を用いることが可能である。ウイルスのコストのために、形質導入は、CAR T細胞製造における主なコストドライバーである。SOLUPORE(商標)プロセスは、ウイルス形質導入を増強するため、より少ないウイルスを用いて同様のレベルの形質導入効率を達成し、したがってコストを低下させることが、今や可能である。
様々なカーゴを、SOLUPORE(商標)プロセスによって同時に送達することができる。SOLUPORE(商標)プロセスがウイルス送達と適合性があるという本明細書における実証は、SOLUPORE(商標)プロセスを、ウイルスを他のカーゴと同時送達するために使用できることを意味する。これらの他のカーゴは、他のウイルスであることができ、またはタンパク質、核酸、小分子、もしくはそれらの複合体であることができる。カーゴを同時送達できることは、さもなければ異なるプロセス工程で起こるであろう操作工程を組み合わせて、単一のプロセス工程にできることを意味する。このプロセスは、コスト、時間、および労力を含む製造プロセスについて大きな有益性を有する。加えて、より少ないプロセス工程は、より少ない取り扱いおよび汚染のリスク、ならびにプロセスの単純化を意味する。あるいは、ウイルスは、他のカーゴの前または後に、順番に送達される。
SOLUPORE(商標)プロセスは、活性化されていないT細胞に対するカーゴの送達を可能にする。レンチウイルスベクターは、活性化されていないT細胞においては非常に低い形質導入効率を有する。したがって、SOLUPORE(商標)プロセスは、活性化されていないT細胞におけるレンチウイルスの形質導入効率を増加させる。
SOLUPORE(商標)プロセスデバイスのコアの特徴は、培地の交換を容易にできることである。細胞を含有する溶液をデバイス中に移すと、液体が排出されて、異なる液体で置き換えられ得る。このように、液体を取り扱う工程が可能である。そのような液体を取り扱う工程は、例えば、洗浄工程を含むことができる。ウイルス形質導入および他の細胞製造プロセスでは、洗浄工程が多くの場合に必要とされる。Solupore(登録商標)デバイスは、そのような工程の製造プロセス中への組込みを可能にする。
Solupore(登録商標)技術はまた、スケーラブルでもあり、これは、この方法を用いたウイルス形質導入を、初期および前臨床の研究のためには小規模で、ならびにプロセス開発および臨床適用のためにはより大きな規模で実施できることを意味する。
方法の利点および驚くべき結果
ウイルスは他のカーゴと比較していかに異なるか
ウイルスは微生物であり、例えば、生物の生細胞の内部でのみ複製する超顕微鏡的な感染性物質である。ウイルスは、動物および植物から、細菌および古細菌を含む微生物まで、すべてのタイプの生き物に感染し得る。ウイルスは、タンパク質で構成されたキャプシドと呼ばれる保護コートによって囲まれた、DNAまたはRNAのいずれかの遺伝物質のコアで構成されている。時には、キャプシドは、エンベロープと呼ばれる追加の先のとがった(spikey)コートによって囲まれている。ウイルスは、宿主細胞上にラッチして、その内部に入ることができる。
以前には、Solupore(商標)で用いられるカーゴは、単一クラスの分子(タンパク質もしくは核酸など)、または分子の混合物、または分子の複合体(Cas9リボ核タンパク質(RNP)など)のいずれかであった。ウイルスは、構造および機能の点で、より複雑な剤である。構造に関して、遺伝物質は、タンパク質キャプシド内に含有されており、そのためカプセル化されている、一本鎖RNAである。レンチウイルスビリオンは、2%の核酸、60%のタンパク質、および35%の脂質、および3%の炭水化物を含有する。ウイルスが細胞への感染に成功するためには、構造が無傷のままでなければならないことが予想される。機能に関しては、ひとたび細胞の内部に入ると、ウイルスは、導入遺伝子を発現するために、その遺伝物質を放出できるままでなければならないことが予想される。ウイルス導入遺伝子をその後発現させるためには、宿主細胞が生存可能かつ機能的のままでなければならないこともまた予想される。
サイズの点では、レンチウイルスは、直径が80~100 nmの範囲である。対照的に、典型的なRNPの構成要素に関して、SpCas9タンパク質は、正味の正の表面電荷を有する約7.5 nmの流体力学的直径(160 kDa)であり、sgRNAは、5.5 nmの流体力学的直径(約31 kDa)であり、負に荷電している(Bioconjug Chem. 2017 April 19; 28(4): 880-884)。したがって、RNPは、レンチウイルスウイロイドよりも有意に小さい。
Solupore(商標)プロセスを用いたウイルス形質導入の驚くべき結果および予想外の利点
Solupore(商標)プロセスは、比較的単純なカーゴ分子(微生物などの複雑なカーゴではない)を哺乳動物細胞中に送達するために用いられてきた。プロセスは多数の工程を含み、本発明より前には、これらの工程の1つ、いくつか、および/またはすべてが、上記で概説されたような成功したウイルス感染と適合性があるかどうかは知られていなかった。
1. カーゴと送達溶液とを混合する
本明細書に記載されるウイルス調製物が、送達溶液と適合性があるかどうかは知られていなかった。時折、他のカーゴが凝集し、したがってプロセスを妨げることが観察されている。そのような凝集は、カーゴの機能性の喪失およびSolupore(商標)流体経路の遮断などのいくつかの問題を引き起こす。時には、この凝集の程度が実質的であり、そのため直ちに明らかになり、実験が中断される。しかし、時々、凝集は、Solupore(商標)実験中には検出不可能であり、標的細胞におけるカーゴ活性について試験するために解析アッセイが実施される時に特定されるだけである。その後のトラブルシューティングは、実験の完了を干渉するのには十分ではなかったが、結果を変更した可能性が高い、流体経路の部分的な遮断の検出をもたらした。
本研究について、送達溶液の適合性試験を実施し、驚くべきことに、顕微鏡下でいかなる凝集も見られなかった。加えて、デバイスのいかなる遮断も観察されなかった。加えて、成功した結果、すなわちGFP導入遺伝子の発現が達成された。これらの知見により、ウイルス調製物は送達溶液と適合性があったことが示される。ウイルス物質の複雑さを考えると、これは驚くべきことであった。さらに、流体経路の観察可能な遮断がないことは、チューブ内でまたは溶液がシステムを通して移入されていた間に、いかなる凝集も起こらなかったことを示す。再び、ウイルス物質の複雑さおよびサイズを考えると、これは驚くべきことであった。
2. ある特定のサイズおよび速度の液滴を形成する
本明細書に記載されるウイルス調製物が、エアロゾル化プロセスと適合性があるかどうかは知られていなかった。プロセス中に、以前にはウイルスと共に用いられたことがない特注の噴霧器を用いて、送達溶液を液滴に分ける。しかし、本明細書に記載される結果は、ウイルス調製物が適合性であったことを示す。
3. それらの液滴に特定の距離を移動させる
次いで、これらの液滴(例えば、特注の噴霧器を用いて液滴に分けられている送達溶液)を、75 mmの距離にわたって標的細胞に向かって進める。移行中に、典型的なエアロゾル化プロセスと同様に、液滴は、蒸発および凝縮に供されるであろう。この研究の前は、これが、ウイルスの(1)活性のままである、(2)細胞に侵入する、および(3)導入遺伝子を発現し続ける能力に悪影響を及ぼすかどうかは知られていなかった。結果は、ウイルス調製物が、プロセスの3つの工程すべてと適合性があったことを示す。
4. 液滴を標的細胞に着地させる
液滴は、およそ17gの力で標的細胞に着地し、これがウイルス粒子の完全性および機能性の保持と適合性があるかどうかは知られていなかった。結果は、ウイルス調製物がこのプロセスと適合性があったことを示した。
5. 細胞を適用された溶液とインキュベートする
送達溶液を、細胞上に適用すると、細胞と30秒間インキュベートする。50~100マイクロリットルが2827.43 mm2へと、非常に小さい体積のみが比較的大きい面積に適用されるため、蒸発および乾燥があることが予想され、これが、ウイルスの細胞に感染する能力に悪影響を及ぼすかどうかは知られていなかった。結果は、ウイルス調製物がこのプロセスと適合性があったことを示す。
6. 第2の溶液を適用する
インキュベーション工程の後、第2の溶液を細胞上に適用する。これが、ウイルスの細胞に感染する能力に悪影響を及ぼすかどうかは知られていなかった。細胞外ウイルスの希釈を結果としてもたらし得るか、またはいくつかの他の様式でウイルスに悪影響を及ぼし得る。結果は、ウイルス調製物がこのプロセスと適合性があったことを示す。
7. 細胞をSOLUPORE(商標)プロセスチャンバーから取り出す
細胞をチャンバーから取り出して培養に置くためには、チャンバーを数回洗い流し、細胞懸濁液を撹拌することが必要である。これが、何らかの様式で、例えば、ウイルス導入遺伝子の発現に成功できないように細胞に損傷を与えることによって、ウイルス感染プロセスを干渉する可能性が高いかどうかは知られていなかった。結果は、ウイルス調製物がこのプロセスと適合性があったことを示す。
8. 細胞を数日間培養する
ウイルス感染中に、ウイルス由来の細胞質核酸は、宿主の細胞内特異的センサーによって認識される。この認識システムの効力は、先天的宿主防御を誘発するために重大であり、これは次いで、ウイルスに対するより特異的な適応免疫応答を刺激する(Lee, H., Chathuranga, K. & Lee, J. Intracellular sensing of viral genomes and viral evasion. Exp Mol Med 51, 1-13 (2019))。この研究の前は、上記のSolupore(商標)プロセスが細胞に、ウイルスの存在に対して通常よりも感受性であるようにさせる何らかの様式で影響を及ぼすかどうかは知られていなかった。これが起こった場合には、細胞の生存率が損なわれ得る、および感染後4日間の培養期間中に細胞が生存しない可能性があった。あるいは、細胞は生存するが、導入遺伝子を発現することができないようにその健康が損なわれる可能性があった。驚くべきことに、ウイルスがその中に送達された細胞は、およそ90%の生存率を経験した。
ウイルス感染プロセスおよび液滴の特性
トランスフェクションチャンバー内でのレンチウイルスの噴霧化は、SOLUPORE(商標)プロセスとは別個のプロセスである。本明細書に記載されるように、細胞の集団に送達されるカーゴは、生物学的に活性を有し、かつ生存可能であるウイルス(例えば、レンチウイルス)である。
レンチウイルスの典型的な力価は、ミリリットル当たり106~107の形質導入単位(TU/ml)の範囲であり、これらの濃度でのレンチウイルスの粘稠度は、水/エタノール混合物に比べて高度に、動的に粘性である。例証のために、(表1)室温での水の動的粘度は1 mPa sに近く、エタノールの動的粘度は0.1 mPa sに近く、オリーブ油の動的粘度は60 0.1 mPa sに近く、ヒマシ油の動的粘度は600 0.1 mPa sに近い。レンチウイルスの動的粘度は、Tran, Reginald, PhD Thesis, Georgia Tech (2016)によって6913 mPasと報告されており、ヒマシ油よりも1ログ粘性であるのに近い。滅菌ろ過された1%ウシ血清アルブミン(BSA)は、ウイルス粒子が注射装置に「固着する」ことをもたらし得る分子相互作用を減少させることが、何人かによって見出されている(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Jasnow A. et al. Methods Mol Biol. "Construction of Cell -Type Specific Promoter Lentiviruses for Optically Guiding Electrophysiological Recordings and for Targeted Gene Delivery" 2009; 515: 199-213)。
動的粘度は、噴霧化における重要な因子である。広い範囲の液体粘度、ガス供給圧力、およびガス対液体質量比(GLR)にわたる、SOLUPORE(商標)プロセスにおいて用いられるような、内部混合二流体噴霧器における噴霧化についての実験研究が、行われている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Li, Z. et al. "Effect of liquid viscosity on atomization in an internal-mixing twin-fluid atomizer" Fuel vol. 103; Jan 2013 pages 486-494を参照されたい。すべての試験条件の中で、最も細かいスプレーは、150 mmの軸方向距離で得られた。しかし、粘度が120 mPa sに増加すると、液滴サイズの分布は、著しく変化した。より高い粘度の液滴は、より大きい液滴を生じた(例えば、SOLUPORE(商標)処理された、測定された液滴サイズ分布によって生じた、現在の液滴よりも1~2ログ大きい、図51)。より大きい液滴は、液滴集団(分布)の大きい割合に相当し、スプレー軸に沿った液滴速度の減衰は、より大きな粘度でより強かった。
一般的な液体の動的粘度を示す表を、以下に示す(かつ図52にグラフを提供する)。
温度300 Kでのいくつかの一般的な液体の絶対粘度または動的粘度を、以下に示す。
Figure 2022535242000003
SOLUPORE(商標)プロセス内でのレンチウイルスの噴霧化は、より大きい、よりゆっくりと移動する液滴を生じ、下の細胞の層の経験は、以前に記載されたSOLUPORE(商標)プロセスとは異なると結論付けることができる。結果的に、この噴霧化プロセスは、驚くべきかつ予想外の観察である、30%に近いトランスフェクションレベルを結果としてもたらした。
ウイルス感染プロセス
水の動的粘度は、1 mPa s(ミリパスカル秒)に近い。エタノール/水混合物の動的粘度もまた、1 mPa sに近い。5~30%のエタノール濃度を含むことができる水溶液の動的粘度。水溶液は、75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)のうちの1つまたは複数を含むことができ、粘度は2 mPa sの領域である。
力価107~108 TU/mLのレンチウイルスの動的粘度は、6913 mPa sに近い。流体の粘度が増加するにつれて、与えられたスプレー圧力、例えば1.7バールで、スプレーされた時に、より大きい液滴を形成する傾向がある。より小さい液滴からなるスプレーは、より大きい液滴からなるスプレーよりもずっと大きい、体積当たりの表面積を有する。さらに、液滴は、水よりも低い表面張力を有し、したがって、液滴はさらに大きくなる。次に、細胞は、まったく異なるプロセスを経験する。それ自体で、より細かいスプレーは、それらの標的表面の上により良好に広がることができる。この効果は、10 mPa sよりも下の粘度を有する流体については比較的小さいが、より高い動的粘度ではより顕著になる。水または水/エタノール混合物よりも高い動的粘度を有する流体は、任意の与えられた流速および圧力に対して、より高い平均液滴サイズを有することになる。流体の機械的特性の間の関係は、以下の一般的に受け入れられている式によって計算することができる。
Figure 2022535242000004
式中、
Df=当該流体についての修正された液滴サイズ、
Dw=水についての計算された液滴サイズ、
Vf=流体の粘度(mPa sにおける粘度;水=1.0 mPA s、レンチウイルスは6913 mPa s)。
方程式[1]から、水/エタノール混合物と同じ圧力および流動条件下でスプレーされたレンチウイルスの液滴(例えば、ウイルスと、5~30%のエタノール濃度と、75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)のうちの1つまたは複数とを含む、ある体積の水溶液を含む液滴)は、水/エタノール液滴よりも5.9倍大きいのに近い液滴サイズを有すると計算することができる。国際出願WO 2016/065341(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、直径が30μm~100μmおよび50μm~80μmのサイズ範囲の液滴が記載された。概して、本明細書に記載される方法において、スプレーされる水溶液がウイルス(例えば、レンチウイルス)を含む場合には、液滴サイズ範囲は、直径が約150μm~600μm、または直径が約177μm~590μmである。他の例において、液滴の直径サイズは、200μm~600μm、または約300μm~600μm、または約400μm~600μm、または約500μm~600μmである。他の例において、本明細書における本発明の液滴サイズは、600μmよりも大きく、例えば、直径が約600μm~1000μm、または約600μm~900μm、または約600μm~800μm、または直径が約600μm~700μmであり得る。いくつかの例において、液滴サイズは、最大で1000μm、例えば、150μm~1000μmの直径を特徴とし得る。
これらの液滴は、「作製されたコロイド液滴の一部は、所与の細胞内送達適用には大きすぎ得る。作製されたコロイド液滴の一部が大きすぎるため、適切なサイズのコロイド液滴の作製にもかかわらず、細胞死が起こる可能性がある。」、WO 2016/065341において予想されているかまたは記載されているものよりもずっと大きい。WO 2016/065341の段落[0172]を参照されたい。したがって、細胞(例えば、ウイルスを含む水溶液と接触した細胞)が、WO 2016/065341に記載されているSOLUPRE(商標)プロセスと比較して、そのような異なるプロセスに耐容性を示したこと、および細胞がレンチウイルスに感染し、生存可能であったことは、予想外かつ驚くべきことであった。
液滴サイズの特性
本明細書に記載される本発明のより大きい直径の液滴は、より大きい体積および重量を有し、よりゆっくりと移動し、かつより大きい力で細胞層に衝撃を与える。例えば、直径が5.9倍に増加すると、液滴の体積は206.8倍近くに増加する。したがって、このシステムの流体力学は、WO 2016/065341を参照して説明されているものとは別個であり、新たなウイルス感染プロセスを構成する。
細胞に対するカーゴの送達
分子を細胞中にトランスフェクトすることの難しさは、何十年もの間、研究および治療、例えば、細胞療法、遺伝子治療、遺伝子改変を悩ませてきた。本発明は、ウイルスなどの複雑なカーゴ実体についてのそのような問題に対して解決策を提供する。概して、細胞の形質膜を横切ってペイロードを送達するための方法は、細胞の集団を提供する段階、および細胞の集団をある体積の水溶液と接触させる段階であって、該水溶液が、該ペイロードと、2パーセントよりも高い濃度のアルコールとを含み、該体積が、(i)細胞の集団の露出された表面積;または(ii)細胞の集団中の細胞数、の関数であり、かつ、細胞の集団を該体積の水溶液と接触させる段階が、スプレーを形成するように水溶液をガスで噴射することによって行われる、段階を含む。
ある特定のタイプの細胞にトランスフェクトすることが難しい理由は、非接着細胞に、細胞外マトリックスに対する細胞の接着を担う分子である細胞表面のヘパラン硫酸プロテオグリカンが欠如していることである可能性がある。エレクトロポレーションおよび/またはヌクレオフェクションなどのトランスフェクション法は、細胞の生存率、処理後に増殖を再開する細胞の能力、および細胞の機能、例えば、リンパ球の免疫活性を損なうという欠点を有する。本明細書に記載されるトランスフェクション/形質導入の組成物および方法は、そのような欠点を有さず、したがって、哺乳動物細胞、例えば、トランスフェクトすることが難しい非接着/浮遊細胞中にカーゴ分子を導入する以前の方法を上回る有意な利点を有することを特徴とする。
本発明は、化合物または化合物の混合物(組成物)が、細胞を、ウイルスと、細胞膜を可逆的に透過するかまたは溶解する作用物質とを含有する溶液と接触させることによって、真核細胞の細胞質中に送達されるという驚くべき発見に基づく。好ましくは、溶液は、スプレー、例えば、水性粒子の形態で細胞に送達される(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるPCT/US2015/057247およびPCT/IB2016/001895を参照されたい)。例えば、細胞は、スプレーでコーティングされるが、送達化合物を含有する溶液に浸されず、または沈められない。真核細胞の膜を透過するかまたは溶解する例示的な作用物質には、アルコールおよび界面活性剤、それぞれ、例えばエタノールおよびTriton X-100が含まれる。他の例示的な界面活性剤、例えば、表面活性剤には、ポリソルベート20(例えば、Tween 20)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS)、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびオクチルグルコシドが含まれる。
コーティングされる細胞の集団のコーティングを達成するための条件の例には、微粒子スプレーの送達が含まれ、例えば、条件は、ボーラス体積の溶液を、細胞の実質的な集団がその体積の流体によって浸されるかまたは沈められるように、細胞の上に滴下するかまたはピペッティングすることを除外する。したがって、ミストまたはスプレーは、細胞体積に対して、ある比率の流体の体積を含む。あるいは、条件は、露出された細胞面積に対して、例えば、組織培養容器、例えば組織培養プレートのウェル、例えば、マイクロタイター組織培養プレートの底などの実質的に平らな表面上、またはフィルターメンブレン上、例えば、フィルタープレート上に、コンフルエントな層または実質的にコンフルエントな層として細胞が存在する時に露出される細胞膜の面積に対して、ある比率のミストまたはスプレーの体積を含み、細胞は培地の除去によって露出されている。
本発明の特許請求の範囲に記載されている方法の利点
本明細書に記載される方法は、周知の技法および適用を上回る多数の利点を提供する。例示的な利点には、以下が含まれる:
1)同じ数の細胞をより少ないウイルスでトランスフェクトできること(あるいは、細胞の集団を感染させるために必要とされるウイルスの量を低減させる)、
2)同じ量のウイルスを用いてより多くの細胞をトランスフェクトできること(あるいは、現在のプロトコールにおいて用いられる同じ量のウイルスを用いて、トランスフェクトされる細胞の数を増加させる)、
3)ウイルスの取り込みの増加、
4)細胞生存率の増加、
5)トランスフェクション効率の増加、および
6)生産効率(単一の工程または領域において複数の工程を行えること)。
「カーゴ」または「ペイロード」は、水溶液を介して細胞形質膜を横切って、細胞の内部中に送達される化合物、または組成物を説明するために用いられる用語である。
ある局面において、細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達することは、細胞の集団を提供する段階、および細胞の集団をある体積の水溶液と接触させる段階を含む。水溶液は、ウイルスと、2パーセントよりも高い濃度のアルコール含量とを含む。水溶液の体積は、細胞の集団の露出された表面積の関数である可能性があるか、または細胞の集団中の細胞数の関数である可能性がある。
別の局面において、細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達するための組成物は、ウイルス、2パーセントよりも高い(例えば、5パーセントよりも高い)濃度のアルコール、46 mMよりも多い塩、121 mM未満の糖、および19 mM未満の緩衝剤を含む水溶液を含む。例えば、アルコール、例えばエタノールの濃度は、50%を超えない。
別の局面において、細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達するための組成物は、ウイルス、46 mMよりも多い塩、121 mM未満の糖、および19 mM未満の緩衝剤を含む水溶液を含む。例えば、水溶液は、アルコールを含まない。
以下の特性のうちの1つまたは複数が、任意の実行可能な組み合わせに含まれ得る。細胞に送達される溶液の体積は、複数の単位、例えば、スプレー、例えば、水性粒子上の複数の液滴である。体積は、個々の細胞に対して、またはコンフルエントもしくは実質的にコンフルエント(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%のコンフルエント、例えば、85%、90%、95%、97%、98%、100%)の細胞集団の露出された表面積に対して記載される。例えば、体積は、細胞当たり6.0×10-7マイクロリットル~細胞当たり7.4×10-4マイクロリットルであることができる。体積は、細胞当たり4.9×10-6マイクロリットル~細胞当たり2.2×10-3マイクロリットルである。体積は、細胞当たり9.3×10-6マイクロリットル~細胞当たり2.8×10-5マイクロリットルであることができる。体積は、細胞当たり約1.9×10-5マイクロリットルであることができ、約とは、10パーセント以内である。体積は、細胞当たり6.0×10-7マイクロリットル~細胞当たり2.2×10-3マイクロリットルである。体積は、露出された表面積の平方マイクロメートル当たり2.6×10-9マイクロリットル~露出された表面積の平方マイクロメートル当たり1.1×10-6マイクロリットルであることができる。体積は、露出された表面積の平方マイクロメートル当たり5.3×10-8マイクロリットル~露出された表面積の平方マイクロメートル当たり1.6×10-7マイクロリットルであることができる。体積は、露出された表面積の平方マイクロメートル当たり約1.1×10-7マイクロリットルであることができる。約とは、10パーセント以内であることができる。
細胞のコンフルエンシーとは、表面上で互いに接触している細胞を指す。例えば、これは、推定された(または計数された)パーセンテージとして表現することができ、例えば、10%のコンフルエンシーは、例えば組織培養容器の、表面の10%が、細胞で覆われていることを意味し、100%は、完全に覆われていることを意味する。例えば、接着細胞は、組織培養ウェル、プレート、またはフラスコの表面上で二次元的に増殖する。非接着細胞は、スピンダウンするか、真空もしくは細胞集団の上部からの組織培養培地吸引によって引き落とすか、または、フィルター設定での容器の底からの吸引もしくは真空除去によって取り出すことができる。
細胞の集団を前記体積の水溶液と接触させる段階は、スプレーを形成するように水溶液をガスで噴射することによって実行することができる。ガスは、窒素、周囲空気、または不活性ガスを含むことができる。スプレーは、直径が150μmよりも大きいサイズの範囲にわたる、別個の単位の体積を含むことができる。
20μlの水溶液の総体積を、スプレーで、約1.9 cm2の細胞に占有された面積、例えば、24ウェル培養プレートの1ウェルに送達することができる。10μlの水溶液の総体積は、約0.95 cm2の細胞に占有された面積、例えば、48ウェル培養プレートの1ウェルに送達される。スプレーは、任意で、噴霧器から放出されるスプレーによって覆われる面積の直径に適した任意のサイズである、より大きい面積、例えば、ペトリ皿のサイズまたはさらにより大きい面積に送達される。
典型的には、水溶液は、細胞膜を横切って、細胞中に送達されるべきウイルスを含み、第2の体積は、ペイロードを含有しない緩衝液または培養培地である。あるいは、第2の体積(緩衝液または培地)もまた、ウイルスを含有することができる。いくつかの例において、第2の体積は、異なるタイプのカーゴ、例えば、核酸、タンパク質、または化学化合物(すなわち、非ウイルスカーゴ)を含有する。あるいは、第1の溶液が、非ウイルスカーゴを含有し、第2の溶液が、ウイルスカーゴを含有する。ウイルスカーゴおよび非ウイルスカーゴは、上記のように逐次的にまたは同時に、すなわち同じ送達溶液において送達されてもよい。いくつかの態様において、水溶液は、ペイロードおよびアルコールを含み、第2の体積は、アルコールを含有しない(かつ任意で、ペイロードを含有しない)。細胞の集団を、第2の体積の緩衝液または培養培地を添加して、細胞の該集団を沈めるかまたは懸濁する前に、0.1~10分間、該水溶液と接触させることができる。緩衝液または培養培地は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)であることができる。細胞の集団を、第2の体積の緩衝液または培養培地を添加して、細胞の集団を沈めるかまたは懸濁する前に、2秒~5分間、水溶液と接触させることができる。細胞の集団を、例えばウイルスを含まない第2の体積の緩衝液または培養培地を添加して、細胞の集団を沈めるかまたは懸濁する前に、30秒~2分間、例えばウイルスを含有する水溶液と接触させることができる。細胞の集団を、第2の体積の緩衝液または培養培地を添加して、細胞の集団を沈めるかまたは懸濁する前に、約1~2分間、スプレーと接触させることができる。細胞のスプレーと緩衝液または培養培地の添加との間の時間の最中に、細胞は、スプレー体積からの水分の層によって水分補給されたままになる。
水溶液は、2~30%、2~40%、または2~50%のエタノール濃度を含むことができる。水溶液は、75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~500 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)のうちの1つまたは複数を含むことができる。例えば、送達溶液は、106 mMのKClおよび27%のエタノールを含有する。態様において、水溶液は、Flexi(例えば、小規模)のために27%のエタノールを含む。態様において、水溶液は、大規模システムにおいて12%のエタノールを含む。
細胞の集団は、接着細胞または非接着細胞を含むことができる。接着細胞は、初代間葉系幹細胞、線維芽細胞、単球、マクロファージ、肺細胞、神経細胞、線維芽細胞、ヒト臍帯静脈(HUVEC)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびヒト胚性腎臓(HEK)細胞、または細胞株などの不死化細胞のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましい態様において、細胞の集団は、非接着細胞を含み、例えば、集団中の非接着細胞の%は、少なくとも50%、60%、75%、80%、90%、95%、98%、99%、または100%の非接着細胞である。非接着細胞は、初代細胞および不死化細胞(例えば、細胞株の細胞)である。例示的な非接着細胞/浮遊細胞には、初代造血幹細胞(HSC)、T細胞(例えば、CD3+細胞、CD4+細胞、CD8+細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、ヒト臍帯血CD34+細胞、B細胞、樹状細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、またはJurkat T細胞株などの細胞株が含まれる。他の例において、NK92およびKHYG1を含むNK細胞株が用いられる。
非接着細胞の集団は、実質的にコンフルエント、例えば、75パーセントよりも高いコンフルエントであることができる。細胞のコンフルエンシーとは、表面上で互いに接触している細胞を指す。例えば、これは、推定された(または計数された)パーセンテージとして表現することができ、例えば、10%のコンフルエンシーは、例えば組織培養容器の、表面の10%が、細胞で覆われていることを意味し、100%は、完全に覆われていることを意味する。例えば、接着細胞は、組織培養ウェル、プレート、またはフラスコの表面上で二次元的に増殖する。非接着細胞は、スピンダウンするか、真空もしくは細胞集団の上部からの組織培養培地吸引によって引き落とすか、または、容器の底からの吸引もしくは真空除去によって取り出すことができる。追加の取り出し法は、重力、または磁気ビーズと磁石の使用を含んでもよい。細胞の集団は、細胞の単層を形成することができる。
アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、およびベンジルアルコールから選択することができる。塩は、NaCl、KCl、Na2HPO4、KH2PO4、およびC2H3O2NHから選択することができる。好ましい態様において、塩は、KClである。糖は、スクロースを含むことができる。緩衝剤は、4-2-(ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含むことができる。
本対象は、形質膜を横切ってウイルスを送達するための方法に関する。本対象は、細胞内送達の分野において効用を見出し、例えば、細胞、組織、または臓器などの標的部位に対する分子生物学的および薬理学的な治療剤の送達において適用性を有する。本対象の方法は、分子を水性組成物に導入して、マトリックスを形成すること;マトリックスを噴霧してスプレーにすること;およびマトリックスを形質膜と接触させることを含む。
本対象は、形質膜を横切るウイルスの送達における使用のための組成物に関する。本対象は、細胞内送達の分野において効用を見出し、例えば、細胞、組織、または臓器などの標的部位に対する分子生物学的および薬理学的な治療剤の送達において適用性を有する。本対象の組成物は、アルコール;塩;糖;および/または緩衝剤を含む。
本明細書に記載される例となる方法は、アルコールを含む水溶液を含む。「アルコール」という用語は、少なくとも1つの炭素原子に付加されたヒドロキシル(-OH)官能基を含む多原子有機化合物を意味する。アルコールは、一価アルコールであってもよく、少なくとも1つの炭素原子を含んでもよく、例えばメタノールである。アルコールは、少なくとも2つの炭素原子を含んでもよい(例えば、エタノール)。他の局面において、アルコールは、少なくとも3つの炭素を含む(例えば、イソプロピルアルコール)。アルコールは、少なくとも4つの炭素原子を含んでもよく(例えば、ブタノール)、または少なくとも7つの炭素原子を含んでもよい(例えば、ベンジルアルコール)。例となるペイロードは、50%(v/v)以下のアルコールを含んでもよく、より好ましくは、ペイロードは、2~45%(v/v)のアルコール、5~40%のアルコール、および10~40%のアルコールを含む。水溶液は、20~30%(v/v)のアルコールを含んでもよい。
本対象のいくつかの局面において、ウイルスは、等張液中または緩衝液中に存在する。
いくつかの例において、「S緩衝液」は、4℃で5分間の、低張生理的緩衝液(78 mMスクロース、30 mM KCl、30 mM酢酸カリウム、12 mM HEPES)を含む(Medepalli K. et al., Nanotechnology 2013; 24(20);その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの例において、酢酸カリウムは、S緩衝液において酢酸アンモニウムで置き換えられる。S緩衝液は、さらに、国際出願WO 2016/065341、例えば、段落[0228]~[0229]に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
本対象によると、水溶液は、少なくとも1つの塩を含んでもよい。塩は、NaCl、KCl、Na2HPO4、C2H3O2NH4、およびKH2PO4から選択され得る。例えば、KCl濃度は、2 mM~500 mMの範囲である。いくつかの好ましい態様において、濃度は、100 mMよりも高く、例えば、106 mMである。
例において、水溶液は、32.5 mM、塩化カリウム(KCl)106 mM、Hepes 5 mM、エタノール(EtOH)12% v/v、および注射用の水(WFI)を含む。
本対象の例となる方法によると、水溶液は、糖(例えば、スクロース、または二糖)を含んでもよい。例となる方法によると、ペイロードは、121 mM未満の糖、6~91 mM、または26~39 mMの糖を含む。またさらに、(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、32 mMの糖(例えば、スクロース)を含む。任意で、糖は、スクロースであり、ペイロードは、6.4、12.8、19.2、25.6、32、64、76.8、または89.6 mMのスクロースを含む。
本対象の例となる方法によると、(例えば、ウイルスを含む)水溶液ペイロードは、緩衝剤(例えば、弱酸または弱塩基)を含んでもよい。緩衝剤は、双性イオンを含んでもよい。例となる方法によると、緩衝剤は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸である。(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、19 mM未満の緩衝剤(例えば、1~15 mM、または4~6 mM、または5 mMの緩衝剤)を含んでもよい。例となる方法によると、緩衝剤は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸であり、ペイロードは、1、2、3、4、5、10、12、14 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む。さらに好ましくは、(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、5 mMの4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を含む。
本対象の例となる方法によると、(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、酢酸アンモニウムを含む。(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、46 mM未満の酢酸アンモニウム(例えば、2~35 mM、10~15 mM、または12 mMの酢酸アンモニウム)を含んでもよい。(例えば、ウイルスを含む)水溶液は、2.4、4.8、7.2、9.6、12、24、28.8、または33.6 mMの酢酸アンモニウムを含んでもよい。
水溶液をガスで噴射することによって果たされる水溶液の体積は、圧縮空気(例えば、周囲空気)を含んでもよく、他の実施は、不活性ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、およびアルゴンを含んでもよい。
本対象のある特定の局面において、細胞の集団は、接着細胞(例えば、肺、腎臓、免疫細胞、例えばマクロファージ)または非接着細胞(例えば、浮遊細胞)を含んでもよい。
本対象のある特定の局面において、細胞の集団は、実質的にコンフルエントであってもよく、実質的に75パーセントよりも高いコンフルエントを含んでもよい。好ましい実施において、細胞の集団は、単一の単層を形成し得る。
局面において、細胞の集団を前記体積の水溶液と接触させる段階は、スプレーを形成するように水溶液をガスで噴射することによって行われ得る。ある特定の態様において、細胞の集団を、第2の体積の緩衝液または培養培地を添加して、細胞の該集団を沈めるかまたは懸濁する前に、0.01~10分間(例えば、0.1、10分間)、該水溶液と接触させる。
様々な態様において、細胞の集団は、初代細胞または不死化細胞のうちの少なくとも1つを含む。例えば、細胞の集団は、間葉系幹細胞、肺細胞、神経細胞、線維芽細胞、ヒト臍帯静脈(HUVEC)細胞、およびヒト胚性腎臓(HEK)細胞、初代のまたは不死化された造血幹細胞(HSC)、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、サイトカイン誘導性キラー(CIK)細胞、ヒト臍帯血CD34 +細胞、B細胞を含んでもよい。T細胞の非限定的な例には、CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞が含まれ得る。いくつかの局面において、CD3+ T細胞のCD8+亜集団が用いられる。 CD8 +T細胞は、抗CD8ビーズを用いたポジティブ単離によってまたは抗CD4ビーズを用いたネガティブ選択によって、PBMC集団から精製され得る。いくつかの局面において、初代NK細胞は、PBMC、臍帯由来NK、iPSC由来NKから単離され、GFP mRNAは、プラットフォーム送達技術によって送達され得る。追加の局面において、NK細胞株、例えば、NK92が、用いられてもよい。
細胞型には、その治療効力を増強するために以前に改変された細胞、例えば、T細胞、NK細胞、およびMSCも含まれる。例えば:キメラ抗原受容体を発現するT細胞またはNK細胞(それぞれCAR T細胞、CAR NK細胞);エンドソーム;形質導入されている細胞、およびそれら、例えばMSCに由来するエンドソーム;改変T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞;それらの先天的特性を補完する治療用タンパク質を過剰発現するようにウイルス性または非ウイルス性に改変されているMSC(例えば、レンチウイルスベクターを用いたEpoまたはAAV-6を用いたBMP-2の送達)(Park et al, Methods, 2015 Aug;84-16.において概説);それぞれ効力の増強およびターゲティングの外部からの制御のために、非ペプチド性薬物または磁性ナノ粒子でプライミングされているMSC(Park et al., 2015);酵素的修飾(例えば、フコシルトランスフェラーゼ)、化学的コンジュゲーション(例えば、N-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)化学を用いることによるMSC上のSLeXの修飾)、または非共有結合性相互作用(例えば、抗体のその後のコンジュゲーションのための疎水性アンカーとして作用するパルミチン化(palmitated)タンパク質での細胞表面の操作)を用いた、治療部位へのそれらのホーミングを強化するようにターゲティング部分で機能化されているMSC(Park et al., 2015)。例えば、キメラ抗原受容体を発現するように改変されているT細胞、例えば、初代T細胞またはT細胞株(CAR T細胞)は、CARをコードする遺伝子を編集し、それによって、改変T細胞におけるCARの発現を低減させるかまたは停止させる目的で、遺伝子編集タンパク質およびまたはCARコード配列に特異的なガイド核酸を含有する複合体で、本発明に従ってさらに処理されてもよい。他の例において、本明細書における方法およびシステムは、CAR-T細胞の活性を増強するための改変細胞における様々な遺伝子の編集、例えば、CAR-T細胞が免疫系チェックポイント遮断を回避することを可能にするためのPD-1の編集に用いられる。他の例において、本明細書における方法およびシステムは、単一の工程で細胞型の混合物を操作するために用いられる。例えば、異なるT細胞集団の混合物、または異なる改変T細胞の混合物、またはT細胞とNK細胞との混合物が用いられる。
本発明の局面は、細胞および組織に対する遺伝子編集化合物および複合体の発現ウイルス送達、例えば、初代ヒトT細胞、造血幹細胞(HSC)、および間葉系間質細胞(MSC)におけるゲノム編集のためのCas-gRNAリボ核タンパク質の送達に関する。いくつかの例において、そのようなタンパク質をコードするmRNAが、細胞に送達される。
いくつかの態様において、遺伝子編集組成物は、遺伝子編集タンパク質を含み、遺伝子編集タンパク質は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Casタンパク質、Creリコンビナーゼ、Hinリコンビナーゼ、またはFlpリコンビナーゼである。追加の態様において、遺伝子編集タンパク質は、ホーミングエンドヌクレアーゼとTALENのモジュラーDNA結合ドメインとを組み合わせる融合タンパク質(megaTAL)であってもよい。例えば、megaTALは、タンパク質として送達されてもよく、または代替的に、megaTALタンパク質をコードするmRNAが細胞に送達される。
CRISPR-Casシステムの様々な局面が、当技術分野において公知である。このシステムの非限定的な局面は、例えば、2015年5月5日に発行された米国特許第9,023,649号;2015年7月7日に発行された米国特許第9,074,199号;2014年4月15日に発行された米国特許第8,697,359号;2015年1月13日に発行された米国特許第8,932,814号;2015年8月27日に公開されたPCT国際特許出願公開番号WO 2015/071474;Cho et al., (2013) Nature Biotechnology Vol 31 No 3 pp 230-232(補足情報を含む);およびJinek et al., (2012) Science Vol 337 No 6096 pp 816-821に記載されており、その各々の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
Casタンパク質の非限定的な例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、またはそれらの相同体、またはそれらの改変バージョンが含まれる。これらの酵素は、公知であり;例えば、S.ピオゲネス(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2で、NCBIデータベースにおいてアクセッション番号Q99ZW2.1で見出され得る。UniProtデータベースのアクセッション番号A0A0G4DEU5およびCDJ55032は、Cas9タンパク質アミノ酸配列の別の例を提供する。別の非限定的な例は、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)Cas9タンパク質であり、そのアミノ酸配列は、UniProtデータベースにおいてアクセッション番号Q03JI6.1で見出され得る。いくつかの態様において、Cas9などの修飾されていないCRISPR酵素は、DNA切断活性を有する。ある特定の態様において、CRISPR酵素は、Cas9であり、S.ピオゲネスまたはS.ニューモニエ(S. pneumoniae)由来のCas9であってもよい。様々な態様において、CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補鎖内などの標的配列の場所での、一方または両方の鎖の切断を方向付ける。いくつかの態様において、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500塩基対、またはそれよりも多い塩基対内の、一方または両方の鎖を方向付ける。いくつかの態様において、ベクターは、変異したCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に対して変異しているCRISPR酵素をコードする。例えば、S.ピオゲネス由来のCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換は、Cas9を、両方の鎖を切断するヌクレアーゼから(一本鎖を切断する)ニッカーゼに変換する。Cas9をニッカーゼにさせる変異の他の例には、非限定的に、H840A、N854A、およびN863Aが含まれる。本発明の局面において、ニッカーゼは、相同組換えを介したゲノム編集に用いられ得る。
ある特定の態様において、Cas9ニッカーゼは、ガイド配列、例えば、DNA標的のセンス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれ標的とする2つのガイド配列と組み合わせて用いられ得る。この組み合わせにより、両方の鎖に切れ目を入れて、NHEJを誘導するために用いることが可能になる。
さらなる例として、すべてのDNA切断活性を実質的に欠く変異したCas9を作製するために、Cas9の2つまたはそれ以上の触媒ドメイン(RuvC I、RuvC II、およびRuvC III)を変異させてもよい。すべてのDNA切断活性を実質的に欠くCas9酵素を作製するために、D10A変異を、H840A、N854A、またはN863A変異のうちの1つまたは複数と組み合わせてもよい。ある特定の態様において、変異した酵素のDNA切断活性が、その非変異型に対して約25%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%未満、またはそれよりも低い場合に、CRISPR酵素は、すべてのDNA切断活性を実質的に欠くと考えられる。他の変異が有用である可能性があり;Cas9または他のCRISPR酵素がS.ピオゲネス以外の種由来である場合、同様の効果を達成するように、対応するアミノ酸において変異が行われてもよい。
ある特定の態様において、送達されるタンパク質(Casタンパク質またはそのバリアントなど)は、細胞内局在化シグナルを含んでもよい。例えば、RNP内のCasタンパク質は、細胞内局在化シグナルを含んでもよい。文脈に応じて、例えば、Cas9と核局在化シグナルとを含む融合タンパク質は、核局在化シグナルを含むことを明記することなく、本明細書において「Cas9」と呼ばれてもよい。いくつかの態様において、ペイロード(RNPなど)は、局在化シグナルを含む融合タンパク質を含む。例えば、融合タンパク質は、核局在化シグナル、核小体局在化シグナル、またはミトコンドリアターゲティングシグナルを含有してもよい。そのようなシグナルは、当技術分野において公知であり、非限定的な例は、Kalderon et al., (1984) Cell 39 (3 Pt 2): 499-509;Makkerh et al., (1996) Curr Biol. 6 (8): 1025-7;Dingwall et al., (1991) Trends in Biochemical Sciences 16 (12): 478-81;Scott et al., (2011) BMC Bioinformatics 12:317 (7 pages);Omura T (1998) J Biochem. 123(6): 1010-6;Rapaport D (2003) EMBO Rep. 4(10):948-52;およびBrocard & Hartig (2006) Biochimica et Biophysica Acta (BBA) -Molecular Cell Research 1763(12): 1565-1573に記載されており、その各々の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。様々な態様において、Casタンパク質は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれよりも多い核局在化シグナルなどの、1つよりも多い局在化シグナルを含んでもよい。いくつかの態様において、局在化シグナルは、Casタンパク質のN末端に存在し、他の態様において、局在化シグナルは、Casタンパク質のC末端に存在する。
いくつかの態様において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定の細胞における発現のためにコドン最適化されている。真核細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長類を含むがそれらに限定されない、哺乳動物などの特定の生物のものであってもよく、またはそれに由来してもよい。概して、コドン最適化とは、ネイティブ配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個、もしくはそれ以上、または約1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個、もしくはそれ以上よりも多いコドン)を、ネイティブのアミノ酸配列を維持しながら、その宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたは最も頻繁に用いられるコドンで置き換えることによって、関心対象の宿主細胞における発現の増強のために核酸配列を改変するプロセスを指す。様々な種が、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して、特定のバイアスを示す。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の違い)は、多くの場合、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関し、これは次に、とりわけ、翻訳されるコドンの特性および特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられる。細胞において選択されるtRNAの優勢は、概して、ペプチド合成において最も頻繁に用いられるコドンの反映である。
したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために調整することができる。コドン使用頻度の表は、例えば、「コドン使用頻度データベース」で容易に入手可能であり、これらの表は、多数の様式で適合させることができる。Nakamura, Y., et al. "Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases: status for the year 2000" Nucl. Acids Res. 28:292 (2000)を参照されたい。特定の宿主細胞における発現のために特定の配列をコドン最適化するためのコンピュータアルゴリズムもまた、利用可能であり、例えば、Gene Forge(Aptagen; Jacobus、Pa.)もまた利用可能である。いくつかの態様において、CRISPR酵素をコードする配列中の1つまたは複数のコドン(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50個、もしくはそれ以上、またはすべてのコドン)は、特定のアミノ酸について最も頻繁に用いられるコドンに対応する。
概して、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、かつ標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を方向付けるのに十分な、標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する、任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの態様において、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、適しているアラインメントアルゴリズムを用いて最適に整列させた場合、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上であるか、または約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはそれ以上よりも大きい。いくつかの態様において、相補性の程度は、100%である。最適なアラインメントは、配列を整列させるための任意の適しているアルゴリズムの使用で決定されてもよく、その非限定的な例には、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler Transformに基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies)、ELAND(Illumina, San Diego, Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)が含まれる。いくつかの態様において、ガイド配列は、長さが約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75ヌクレオチド、もしくはそれ以上、または、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75ヌクレオチド、もしくはそれ以上よりも多いヌクレオチドである。ある特定の態様において、ガイド配列は、長さが約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12ヌクレオチド未満、またはそれよりも少ないヌクレオチドである。標的配列に対するCRISPR複合体の配列特異的結合を方向付けるガイド配列の能力は、任意の適しているアッセイによって評価されてもよい。例えば、試験されるガイド配列を含む、CRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの構成要素は、例えば、CRISPR配列の構成要素をコードするベクターのトランスフェクション、およびそれに続く、本明細書に記載されるようなSurveyorアッセイなどによる、標的配列内の優先的切断の評価によって、対応する標的配列を有する宿主細胞に提供されてもよい。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、試験されるガイド配列および試験ガイド配列とは異なる対照ガイド配列を含むCRISPR複合体の構成要素を提供すること、ならびに、試験ガイド配列反応と対照ガイド配列反応との間で、標的配列での結合または切断率を比較することによって、試験管において評価されてもよい。
広範囲の細胞型においてゲノム操作を容易にするCRISPR-Cas技術は、急速に進化している。リボ核タンパク質(RNP)の形態でのCas9-gRNA編集ツールの送達は、Cas9およびgRNAをコードするプラスミドの送達と比較していくつかの有益性を生じることが、最近示されている。有益性には、より速くかつより効率的な編集、より少ないオフターゲット効果、およびより少ない毒性が含まれる。RNPは、リポフェクションおよびエレクトロポレーションによって送達されてきたが、特にある特定の臨床的に関連する細胞型について、これらの送達法に残る限界には、毒性および低効率が含まれる。したがって、生物学的に関連するペイロード、例えばRNPを、形質膜を横切って、細胞中に送達するための送達アプローチを提供する必要がある。「カーゴ」または「ペイロード」は、水溶液を介して細胞形質膜を横切って、細胞の内部中に送達される微生物、例えば、ウイルスなどの非細菌微生物、化合物、または組成物を説明するために用いられる用語である。
本対象は、細胞に対する広い範囲のペイロードの低い毒性での送達を容易にする送達技術に関する。ゲノム編集は、本対象のいくつかの局面を用いて細胞にRNPを送達することによって達成され得る。レベルは、その後、Cas9がもはや検出できなくなるまで下がる。送達技術自体は、Jurkat T細胞および初代T細胞の生存率または機能性に有害な影響を及ぼさない。本対象は、最小限の毒性で、臨床的に関連する細胞型におけるCas9 RNPを介した遺伝子編集を可能にする。
Casおよび/またはgRNAなどのCRISPR/Cas構成要素の一過性かつ直接の送達は、発現ベクター媒介性送達と比較して利点を有する。例えば、ある量のCas、gRNA、またはRNPを、発現ベクターの使用と比較して、より正確なタイミングで、かつ限られた時間にわたって添加することができる。ベクターから発現される構成要素は、様々な量でかつ様々な時間にわたって産生される可能性があり、オフターゲット編集を伴わずに一貫した遺伝子編集を達成することが困難になる。追加的に、CasおよびgRNA(RNP)の事前に形成された複合体は、発現ベクターで送達することができない。
1つの局面において、本対象は、固体支持体(例えば、ストリップ、ポリマー、ビーズ、またはナノ粒子)に付着した細胞を説明する。支持体または足場は、多孔性または非多孔性の固体支持体であってもよい。周知の支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、ならびに磁鉄鉱を含む。担体の性質は、本対象の目的で、ある程度まで可溶性または不溶性のいずれかであることができる。支持体材料は、事実上任意の可能な構造的形状を有し得る。したがって、支持体形状は、ビーズにおけるように球形、または試験管の内面もしくはロッドの外面におけるように円柱形であってもよい。あるいは、表面は、シートまたはテストストリップなどのように平らであってもよい。好ましい支持体は、ポリスチレンビーズを含む。
他の局面において、固体支持体は、細胞が化学的に結合するか、固定化されるか、分散されるか、または会合するポリマーを含む。ポリマー支持体は、ポリマーのネットワークであってもよく、(例えば、懸濁重合によって)ビーズ形態で調製されてもよい。そのような足場上の細胞に、足場の細胞質に所望の化合物を送達するために、本発明によるペイロードを含有する水溶液をスプレーすることができる。例示的な足場には、ステントおよび他の移植可能な医療用デバイスまたは構造物が含まれる。
以下の実施例は、本発明のある特定の具体的な態様を例証し、本発明の範囲を限定することは意味しない。
本明細書における態様は、以下の実施例および詳細なプロトコールによってさらに例証される。しかし、実施例は、単に態様を例証するように意図され、本明細書における範囲を限定すると解釈されるべきではない。本出願を通して引用されるすべての参考文献ならびに公開された特許および特許出願の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
実施例1:ペイロードとしてのウイルスの送達
非細菌微生物、例えばウイルスを、真核細胞に送達した。いくつかの例において、市販のウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、またはレトロウイルスを使用する。例えば、レンチウイルスは、GFPなどのモデル(試験)カーゴをコードする核酸を含有する。(GFPをコードする)ウイルスを、本明細書における方法およびシステム、本明細書に記載されるシステムを用いて送達する。
0.1、1、10、および100の感染多重度(MOI)(あるいは、感染において細胞当たりに添加されるビリオン(ウイルス粒子)の数)を行った。細胞の数に対する本明細書における方法およびシステムの体積を、評価した。
ある範囲のMOIを試験し、約1μL~約1000 mLの範囲の体積を試験した。
追加的に、1×105~1×107細胞の細胞数の範囲から培地の除去を可能にするように、様々なメンブレンホルダーサイズを試験した。細胞を、形質導入後に培養すると、細胞療法に必要とされる容量、例えば最大で109細胞まで増殖する。
例えば、スピノキュレーションを用いて形質導入された、GFPをコードする市販のレンチウイルスベクターを、対照として用いた。対照は、浮遊細胞に対するレンチウイルスベクターのスピノキュレーション用の標準的なプロトコールに従って用いる。実施例においては、市販のスピノキュレーション法を、浮遊細胞(Jurkat T細胞、PBMC、PBL、B細胞など)の形質導入に用いた。
浮遊細胞の形質導入および評価/解析
浮遊細胞の通常の形質導入のために、ウイルスを、対照として培養フラスコおよびバッグ中の活性化されたT細胞に添加した。ウイルスの導入後に細胞を培養し、ウイルスを洗浄する。数日後に、細胞を収集し、フローサイトメーターで生存率および%形質導入(GFPをコードするウイルス)を評価する。
形質導入効率の寿命を、14日にわたってモニターした。
ベクターコピー数(VCN)を評価して、低コピー/細胞数、例えば、0.5~1コピー/細胞を決定した。例示的な放出基準は、(Levine 2006について0.5~5)を含む。VCNは、定量PCRを用いて確立する。
表現型の変化を、フローサイトメトリーによって評価した。例えば、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーの維持を含む変化を評価した。
T細胞および他の細胞型に対する形質導入を行う
複数の活性化状態にあるT細胞に対するウイルス送達もまた評価した。例えば、活性化されたT細胞に形質導入することは、珍しくない。COG(売上原価)を低減させることになる、ナイーブT細胞を用いることができるかどうかを判定するために、研究を実施した。活性化の必要はなく、したがって、本明細書に記載される方法の利点には、処理時間の低減が含まれる。他の例において、以前に改変されたT細胞、例えば、CAR-T細胞または遺伝子編集されたT細胞に対する送達もまた評価する。
形質導入
追加的に、ウイルスの標準的な形質導入を行った。例えば、HEK293接着細胞を用いた。この方法により、フィルターを通して培地を除去する必要性が取り除かれる。例えば、細胞を6ウェルプレートに播種することができ、培地を手動で除去して細胞を露出させ、次いで、細胞をプレート上で直接透過処理する。追加的に、システムをウイルス封じ込め実験室中に入れることおよびすべての機器の隔離に関する問題のいくつかが、排除される。
AAV、レトロウイルスなどもまた、そのような方法を用いて形質導入される。レンチウイルスは、最も単純なエクスビボ形質導入法であるために有利であり、AAVは、商業的な局面に用いられる一般的なウイルスである。
実施例2:スプレーを介したウイルスの送達
ウイルスは、SOLUPORE(商標)装置を介して送達することができる。例えば、様々なメンブレン、デバイスサイズなどを含む記載される操作の反復を含む、小さな、中間の、または大きなシステム。
本方法においては、培地を、細胞の単層を形成する細胞から一時的に除去して、液滴化されたウイルスが指定されたインキュベーションにわたって細胞と密接に接触することを可能にし、その後、培地を細胞に戻して、細胞を下流の適用のために培養する。
本明細書における方法およびシステムは、培地がそれを通して細胞から一時的に除去される(遠心分離、重力流、または真空によって)フィルターメンブレン(ドレインディスクを伴うかまたは伴わない)を含んでもよい。単層形成の後に、様々なカーゴを、緩衝液中でエアロゾル化し、制御された様式(体積、高さなど、可変)で液滴を細胞上に適用する。様々なカーゴには、細胞に対する遺伝子移入または細胞における遺伝物質の編集を可能にする、mRNA、DNA、CRISPR RNP、およびウイルス粒子(レンチウイルス、レトロウイルス、AAVなど)が含まれる。
いくつかの実施において、プロセスは、T細胞、NK細胞などを含む。
いくつかの実施において、細胞を、SMAネブライザー、Conikalネブライザーなどを用いて扱う。
システムは、T細胞に形質導入するために用いられる。追加的に、システムは、カーゴおよびウイルスを同時にまたは連続的に編集する送達に用いられる。このシステムはまた、RNA、DNA、およびsiRNAを用いたT細胞操作にも用いられる。このシステムは、さらに、遺伝子をノックインまたはノックアウトするために用いられ、これは、ウイルスを用いた遺伝子情報の導入とは分離してまたは並行して、行うことができる。このシステムは、多数の細胞編集プラットフォームである、CRISPR/Cas9、Cas12、MegaTAL、TALEN、ZFNなどを用いて細胞を編集するために用いられ、これらのすべては、単独で、ウイルスと並行して、または逐次的に送達することができる。
いくつかの実施において、細胞を、複数のネブライザーによって一度にまたは順番に扱う。他の反復においては、1つのネブライザーが隔離されて用いられる。ウイルス粒子をエアロゾル化するためにネブライザーを用いることは、細胞とウイルスとの間の接触を改善し、形質導入を改善する。ウイルスは、液滴化されて、細胞が位置するメンブレンの表面上に着地する。液滴化されたウイルスは、ずっとより少ない体積が細胞に投与されることを可能にする。短いインキュベーションの後に、培地を交換する。この培地もまた、低用量のウイルスを含有する可能性がある。
複数の細胞型を試験する。追加的に、例えば、形質導入を増強するためのポリブレンまたはPGE2を含む、様々な培地および添加物、例えばサイトカインを添加する。他の市販のフィブロネクチンペプチド(Retronectin)またはLentiboostもまた、ウイルスと細胞との間の相互作用を増強するために添加し、様々な反復において添加する。
スプレーの速度/持続時間/圧力もまた評価する。様々な方法(例えば、ボトムアップ/ピペット)による細胞の回収を試験する。
遺伝子操作用のカーゴは、多様な緩衝液に懸濁されてもよいが、このいずれも、本特許の範囲を限定せず、本特許は、何のカーゴが何の細胞型に送達され得るかの多くのバリエーションを含有する。
さらに、T細胞の形質導入は、非常に変動性であることができ、この制御された送達の方法で、ウイルス形質導入をより一貫性がある、したがってより有利であるようにすることができる。
実施例3:遺伝子治療ウイルスベクター
以下の表は、真核細胞の遺伝子治療において用いられるウイルスの様々なタイプの間の主な違いを示す。
遺伝子治療ウイルスベクターを生成するために用いられる一般的なウイルスの概要
Figure 2022535242000005
ウイルスベクターの使用における接着細胞および浮遊細胞の概要
Figure 2022535242000006
レトロウイルスは、多くの不利点を有し、したがって、AAVおよびレンチウイルスが、より広く用いられている。
実施例4:SOLUPORE(商標)プロセスを用いた細胞の集団に対するウイルス送達
SOLUPORE(商標)プロセスにより、インビトロおよびエクスビボでの、接着細胞および浮遊細胞に対する広範囲のカーゴの送達が可能になる。現在まで、これらのカーゴは、核酸およびタンパク質などの分子ならびにQdotなどの粒子からなっている。本明細書におけるデータにより、SOLUPORE(商標)プロセスを、ウイルス(例えば、レンチウイルス)などの非細菌微生物を、標準的な対照形質導入よりも高い効率でT細胞に送達するために使用できることが示される。
ベクターとしてのウイルス
ウイルスは、天然でヒト細胞に感染することができるため、細胞に対する核酸の送達のためのベクターとして用いられる。ウイルスは、侵入の前に、宿主細胞に付着しなければならない。ウイルスキャプシドまたはウイルスエンベロープ上の特定のタンパク質が、標的細胞の細胞膜上の特定の受容体タンパク質に結合する時に、付着が達成される。ウイルスのタイプに応じて、細胞中への侵入は、異なる様式で起こり得る。ウイルスエンベロープを有するウイルスは、膜融合によって細胞に侵入することができ、そこでは、細胞膜に穴が開き、フォールディングしていないウイルスエンベロープとさらに接続するようにされる。ウイルスエンベロープを有さないウイルスは、エンドサイトーシスによって侵入することができる(図2)。バクテリオファージなどの他のウイルスは、細胞表面に付着し、ウイルスゲノムのみが、宿主細胞中に注入される。
免疫細胞操作
異なるタイプのウイルスは、臨床適用のためエクスビボで細胞に形質導入するのに用いられる場合、考慮される必要がある異なる特徴を有する。主な特徴は、以下である:免疫原性;標的細胞型;ペイロード能力;分裂細胞に対して非分裂細胞に形質導入できること;安定なゲノム組込みに対する一過性(表5)。
遺伝子送達適用に用いられるウイルスの概要
Figure 2022535242000007
その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Pharmaceutics 2020, 12, 183
CAR-T細胞およびCAR-NK細胞の生成のためのキメラ抗原受容体(CAR)構築物の送達などの、免疫細胞療法の適用のためには、ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスが典型的に用いられ、これは、それらが免疫細胞に形質導入することができるため、かつゲノム中への安定な組込みを結果としてもたらすためである。例えば、最初の2つの承認されたCAR-T細胞製品であるKymriahおよびYescartaは、それぞれ、レンチウイルスベクターおよびガンマレトロウイルスベクターを用いて操作された(Poorebrahim M et al.CritRev Clin Lab Sci. 2019 Sep;56(6):393-419)。大部分のウイルスベクターと同様に、これらのベクターは、ウイルスの複製を無能にし、かつ細胞ターゲティング効率を改善するように改変された。
遺伝子編集などの他の免疫細胞操作の適用のためには、AAVベクターが広く用いられている。野生型AAVは、19番染色体中に安定に組み込まれ得るが、AAVベースの遺伝子治療ベクターは、組込みを阻止し、その代わりに宿主細胞の核においてエピソームコンカテマーを形成するように改変されている。非分裂細胞において、これらのコンカテマーは、宿主細胞の生涯にわたって無傷のままである。分裂細胞においては、エピソームDNAは宿主細胞DNAと共に複製されないため、AAV DNAは、細胞分裂を通して失われる。そのため、AAVベクターは、多くの場合、遺伝子編集のためのCRISPR/Cas9システムまたはドナー鋳型DNAなどの編集システムを送達するために用いられる。これらの場合に、遺伝子編集は永久であるが、遺伝子編集ツールは、そのツールが長期の期間にわたって細胞に存在する場合に起こり得る非特異的なオフターゲット遺伝子編集を限定するために、一過性のみに発現させることが望ましい可能性がある。
レンチウイルス
ガンマレトロウイルスおよびレンチウイルスは、ウイルスにコードされる逆転写酵素と呼ばれる酵素により形質導入細胞においてDNAに変換されるRNAゲノムを含有する、レトロウイルスのサブタイプである。レトロウイルスについては、細胞中への侵入の後に、アンコーティングのプロセスが続き、それによって、いくつかのウイルスタンパク質がウイルスコアから解離する。ウイルスRNAは、二本鎖DNAに逆転写される。次いで、ウイルスタンパク質は、プロウイルスDNAと複合体形成して、核移行および宿主ゲノム中への組込みをもたらす。組込みのプロセスは、インテグラーゼなどの非常に重要なウイルスタンパク質、および内在性の宿主細胞転写因子によって補助される。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に由来するレンチウイルスベクターは、哺乳動物細胞中への遺伝子送達のための主なツールになってきており、複製欠損組換えレンチウイルスは、研究適用および臨床適用において広く用いられている。改変されたレンチウイルスは、依然として細胞に感染することができるが、新たなウイルス粒子を産生するための本質的な遺伝子がもはや存在しない。レンチウイルスベクターは、以下のいくつかの理由で、魅力的な遺伝子送達ビヒクルとみなされている:宿主ゲノム中への安定なベクター組込みを介して、長期の遺伝子発現をもたらす;分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができる;遺伝子治療および細胞療法のための重要な標的細胞型を含む、広範囲の細胞に感染することができる;ベクター形質導入後に免疫原性ウイルスタンパク質を欠如している;イントロン含有配列などの複雑な遺伝子エレメントを送達することができる;ベクターの操作および作製のための比較的容易なシステムである。レンチウイルスベクターは、ガンマレトロウイルスベクターよりも安全な組込み部位プロファイルを有し、CAR T細胞療法の臨床試験において一般的に用いられている(McGarrity G.J. et al. J. Gene Med. 2013;15:78-82)。第三世代のレンチウイルスベクターは、鍵となる安全性特性を組み込み、安全性をさらに増強している(Kim V.N. et al. J. Virol. 1998;72:811-816およびDull T. et al. J. Virol. 1998;72:8463-8471)。
レトロウイルスで形質導入可能である細胞型の範囲は、水疱性口内炎ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(VSV-G)を有するシュードタイピングレトロウイルスによって広げられている。VSV-Gは、遍在性の膜成分であるホスファチジルセリンに結合し、これによって、VSV-Gシュードタイプ化ウイルスが、ずっとより広い範囲の細胞に付着して、形質導入することが可能になる。現在、大部分のレンチウイルスベクターは、ニューロン、リンパ球、およびマクロファージを含む多くの細胞型中への堅牢な形質導入を可能にするように、VSV-Gでシュードタイプ化されている。
静止状態の細胞
健常ドナーまたは患者のいずれかからの単離後に、細胞を、活性化し、続いて、その大多数が水疱性口内炎ウイルス(VSV)の糖タンパク質Gでシュードタイプ化されているレンチウイルスベクター(LV)によって形質導入する。次いで、改変されたリンパ球を増大させ、機能的インビトロアッセイにおいて用いるか、またはインビボ適用に用いる。LVによるB細胞の安定なかつ効率的な形質導入は、達成するのが非常に困難である。静止状態のB細胞は、低密度リポタンパク質受容体(LDLR)の発現の欠如のために、従来のVSV Gシュードタイプ化LV(VSV-LV)による形質導入に制限されており、形質導入の前に活性化されなければならない。初代ヒトBリンパ球の効率的な活性化および培養は、注意深く力価測定された、サイトカインと組み合わされた活性化刺激、およびそれに続くフィーダー細胞との共培養を含むため、複雑である。最適な活性化および培養の条件下でさえも、VSV-LVでの形質導入効率は、悪名高い程度に低い。すべてのこれらの難題の組み合わせが、操作されたB細胞を含む臨床試験の数がT細胞と比較してずっとより少ないことの説明として働き得る。
比較すると、レンチウイルス形質導入によるTリンパ球操作は、達成するのがより容易である。依然として、細胞は、B細胞と同様に、再びLDLR発現の欠如により、さもなければ形質導入を受けやすくないため、従来のVSV-LVでの形質導入の前に活性化されなければならない(X Geng, et al. Gene Therapy v.21, pages444-449(2014))。主としてCAR T細胞療法の最高の成功のために、T細胞の単離、活性化、レンチウイルス形質導入、および増大用のプロトコールは、近年大幅に改善されている。現在の最先端のT細胞活性化は、IL-7およびIL-15などのサイトカインと組み合わされた、CD3特異的抗体およびCD28特異的抗体を介したTCR活性化経路の刺激に依拠する。
従来のLVでの形質導入の前にリンパ球を活性化する必要性は、不利点を有する。これは、手順全体の複雑性に、製造プロセスの継続期間およびコストの増加を追加する。加えて、長期のエクスビボ培養と組み合わされた、活性化のために印加される刺激は、細胞を変化させる可能性が高く、これは、最終生成物の品質に対して負の影響を与え得る。結果として、ナイーブな細胞は、より高い消耗の程度、より低い増殖能力、より短いインビボ持続、およびより低い機能性を示す、それほど優先的ではない表現型へと分化し得る。これは、治療的成功のために非常に重要な意味を有し得る。例として、セントラルメモリー(CD45RO+ /CD45RA+ /CD62L+)または幹細胞メモリー(CD45RO+ /CD45RA/CD62L+)の表現型は、インビボでのT細胞の持続および機能に有益であることが示されている。この点において、CAR T細胞セントラルメモリー表現型と正の臨床応答との正の相関が、いくつかの臨床研究において観察されており、結果的に、精製されたセントラルメモリーCAR T細胞の注入が、現在考えられている。同様に、セントラルメモリー表現型は、機能的に優れたTCR改変T細胞をもたらす。したがって、遺伝子改変中のリンパ球の最小の操作は、有意な臨床的妥当性がある。
スピノキュレーション
遠心分離接種、すなわちスピノキュレーションは、ウイルス感染を増強するためにウイルス学研究において広く用いられている。手順は、ウイルスと標的細胞との混合物を、高速で長期間にわたって、例えば、800×gで30分間、32℃で遠心分離することを含む。方法は、細胞膜でウイルスを濃縮することによって形質導入率を増強すると考えられた。しかし、スピノキュレーションは、恐らく遠心分離ストレスに対する細胞応答に起因する、動的なアクチンおよびコフィリンの活性を誘発することが示されている(Jia Guo, et a. J. Virology Oct. 2011, p. 9824-9833)。このアクチン活性はまた、ウイルスの結合および侵入を増強し得る細胞膜受容体の上方制御ももたらす。スピン媒介性の増強は、単純にウイルス濃縮効果によって説明することはできず、むしろ、受容体動員、ウイルス侵入、および侵入後プロセスを促進するスピン誘導性の細胞骨格動態とカップリングしていることが示唆されている。したがって、スピノキュレーションは、未知の様式または望ましくない様式で、標的細胞の生物学に影響を及ぼす可能性がある。
ウイルスベクターの限界
ウイルスは上記のように細胞の遺伝子操作に有用であるが、その効用には限界がある。
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法の高コストの製造プロセスは、手が出ないほどに高価である。ウイルスのコストのために、形質導入は、CAR T細胞製造における主なコストドライバーである。レンチウイルス粒子のT細胞に対する物理的近さなど、いくつかのバイオプロセシングパラメータが、形質導入効率において潜在的に役割を果たすとして特定されている。この近さは、懸濁液中の細胞およびウイルス粒子の数;均一性を助長するための撹拌の期間;および形質導入容器における表面対体積の比を通して操作することができる。しかし、形質導入の決定的なプロセスパラメータの特定および最適化については、限定された研究が行われている。SOLUPORE(商標)プロセス中に、少量の送達溶液を、露出された標的細胞上に直接適用する。このように、カーゴを、穏やかな様式で細胞と直接接触させる。このようにウイルスを細胞に送達することは、細胞膜での物質の濃縮をもたらす。このプロセスは、細胞膜に対するウイルス付着を増強し、かつ細胞中への侵入の速度を増強して、プロセスをより効率的にする。ひいては、小用量のウイルスが用いられ、コストが低下する。
SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞膜でウイルスを濃縮する穏やかな方法であるため、細胞構造に影響を及ぼし得るスピノキュレーションなどの既存の濃縮法に対して有意な利点を有する。さらに、SOLUPORE(商標)プロセスは、スピノキュレーションとは異なり、細胞療法製造プロセスと適合性があるように設計される。
細胞膜でのウイルスの濃縮はまた、活性化されていないT細胞などのある特定の細胞型について低レベルのウイルス受容体の発現を補い、したがって、これらの細胞において形質導入効率を増強する。
活性化されていないT細胞およびB細胞のレンチウイルスベクター形質導入の効率は、典型的に非常に低い。これらの効率を改善することが非常に望ましく、SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞の生存率および機能の保存と適合性がある条件と連関して高効率の割合で、この問題に解決策を提供する。
ウイルスは、核酸を送達することだけが可能であり、これは、それらが送達できるカーゴのタイプが制限されていることを意味する。ウイルスが、他のタイプのカーゴと同時送達され得るのであれば、これは、次世代の細胞療法製品についての操作におけるウイルスの効用を増強することができる。しかし、現在、ウイルスを他のタイプのカーゴと同時送達することが実証されているいかなる方法もない。再び、本明細書に記載されるSOLUPORE(商標)プロセスは、数多くの異なるカーゴタイプの効率的な送達を逐次的にまたは同時に可能にすることによって、この問題に解決策を提供する。以下の材料および方法を用いて、本明細書に記載される日付を生成した。
LV-GFPベクター
本明細書において用いられるLV-GFPベクターは、多種多様の細胞型を標的とすることが公知である、水疱性口内炎ウイルス-G(VSV-G)エンベロープタンパク質を保有する。
送達溶液中のLV-GFPの安定性
送達溶液中のLV-GFPの安定性を、顕微鏡下で沈殿を評価することによって、1時間にわたって評価した。
LV-GFP送達
初代ヒトPBMCを解凍し、MiltenyiのCD3抗体およびCD28抗体で3日間活性化した。活性化培養の3日後に、細胞は、LV-GFP(MOI=2.5)を伴うSOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入を受けた。GFP発現をフローサイトメトリーによって評価する前に、細胞を72時間回復させた。
送達溶液中のLV-GFPの安定性
本発明の前には、SOLUPORE(商標)プロセス送達は、以前にウイルス調製物と組み合わされたことがなかったため、溶解性の問題があるかどうかは知られていなかった。
安定性解析中に溶液を顕微鏡下で見た時には、いかなる凝集も沈殿も観察されなかった。さらに、ある特定の他のカーゴは、送達溶液と組み合わされた時に低レベルの凝集を示し、スプレー中にSolupore(登録商標)噴霧器を遮断させた。ウイルスを含有する送達溶液をSolupore(登録商標)噴霧器中にロードしてスプレーした場合には、研究の経過にわたっていずれの時点でも遮断は起きず、いかなる凝集も沈殿も起こらなかったことをさらに示した。
LV-GFP送達後の細胞生存率、増大、およびGFP発現
LV-GFPを、SOLUPORE(商標)プロセスによってT細胞培養物に送達し、LV形質導入の標準的な静置法と比較した。
細胞の生存率を、ウイルスの送達の前後の様々な時点で測定した。すべての時点で、solupore処理された細胞の生存率は、対照形質導入細胞の生存率に匹敵していた(図3)。
T細胞の累積増大倍率を、ウイルスの送達の96時間後まで測定した。solupore処理された細胞の増大は、対照形質導入細胞の増大に匹敵していた(図4)。
GFPの発現を、送達後3日目および4日目に測定した。GFP発現効率は、対照形質導入細胞と比較してsolupore処理されたT細胞において、より高かった(図5)。3日目に、効率は、それぞれ、solupore処理された細胞および対照形質導入細胞について、39.73±2.83%、比較元となる25.2±1.48%であった。4日目に、効率は、それぞれ、solupore処理された細胞および対照形質導入細胞について、40.27±2.67%、比較元となる26.83±1.38%であった。
細胞の集団に対するウイルスの効率的なウイルス送達
本明細書におけるデータにより、SOLUPORE(商標)プロセスのプロセスは、活性化されたT細胞に対するウイルスの送達と適合性があることが実証された。SOLUPORE(商標)プロセスの送達溶液と混合した時に、いかなる沈殿または凝集も観察されなかった。ウイルス溶液をスプレーすることが可能であり、標的細胞の形質導入に成功した。solupore処理されたT細胞の生存率および増大速度は、影響を受けなかった。
GFP発現は、対照形質導入細胞と比較してsolupore処理されたT細胞において、より高く、これは、SOLUPORE(商標)プロセスが、T細胞のウイルス形質導入を増強することを示した。
総合するとこれらの知見により、SOLUPORE(商標)プロセスは、細胞に対するウイルスの送達に適しており、標準的な方法よりも優れていることが実証される。
SOLUPORE(商標)プロセスは、ウイルスの送達に適しているため、ウイルス形質導入を含む細胞療法製造プロセスにおいてsolupore処理を用いることが可能である。ウイルスのコストのために、形質導入は、CAR T細胞製造における主なコストドライバーである。SOLUPORE(商標)プロセスは、ウイルス形質導入を増強するため、より少ないウイルスを用いて同様のレベルの形質導入効率を達成し、したがってコストを低下させることが、今や可能である。
様々なカーゴを、SOLUPORE(商標)プロセスによって同時に送達することができる。SOLUPORE(商標)プロセスがウイルス送達と適合性があるという本明細書における実証は、SOLUPORE(商標)プロセスを、ウイルスを他のカーゴと同時送達するために使用できることを意味する。これらの他のカーゴは、他のウイルスであることができ、またはタンパク質、核酸、小分子、もしくはそれらの複合体であることができる。カーゴを同時送達できることは、さもなければ異なるプロセス工程で起こるであろう操作工程を組み合わせて、単一のプロセス工程にできることを意味する。このプロセスは、コスト、時間、および労力を含む製造プロセスについて大きな有益性を有する。加えて、より少ないプロセス工程は、より少ない取り扱いおよび汚染のリスク、ならびにプロセスの単純化を意味する。あるいは、ウイルスは、他のカーゴの前または後に、順番に送達される。
SOLUPORE(商標)プロセスは、活性化されていないT細胞に対するカーゴの送達を可能にする。レンチウイルスベクターは、活性化されていないT細胞においては非常に低い形質導入効率を有する。したがって、SOLUPORE(商標)プロセスは、活性化されていないT細胞においてレンチウイルスの形質導入効率を増加させる。
SOLUPORE(商標)プロセスデバイスのコアの特徴は、培地の交換を容易にできることである。細胞を含有する溶液をデバイス中に移すと、液体が排出されて、異なる液体で置き換えられ得る。このように、液体を取り扱う工程が可能である。そのような液体を取り扱う工程は、例えば、洗浄工程を含むことができる。ウイルス形質導入および他の細胞製造プロセスでは、洗浄工程が多くの場合に必要とされる。Solupore(登録商標)デバイスは、そのような工程の製造プロセス中への組込みを可能にする。
Solupore(登録商標)技術はまた、スケーラブルでもあり、これは、この方法を用いたウイルス形質導入を、初期および前臨床の研究のためには小規模で、ならびにプロセス開発および臨床適用のためにはより大きな規模で実施できることを意味する。
実施例5:SOLUPORE(商標)によるT細胞に対するレンチウイルスベクター(LV)の送達 - Solupore(商標)を用いたプロセス
静置形質導入対照と比較した、SOLUPORE(商標)プロセスによるLV送達についてのデータセットを生成した。
細胞療法および遺伝子治療のためのウイルス送達技術を開発した。プラットフォームは、機能的に閉じたデバイスを用いたペイロード送達のための可逆的な細胞透過処理に依拠する。このアプローチを用いて、有効な核酸および遺伝子編集が、細胞生存率、増殖、遺伝子発現、または表現型に対して最小限の影響を伴って、治療に関連する細胞型において実証された。ウイルスベクターを標的細胞に送達するための効用もまた、実証された。データは、T細胞に対するSOLUPORE(商標)プロセスによるレンチウイルスベクター送達を説明する。
PBMC単離
新鮮な白血球アフェレーシスパック(ドナーID:RG1083)の半分を、StemCell Technologiesから入手した。PBMCを、(実施例5で提供される)「PBMC由来T細胞の単離、開始、および細胞培養」に記載されるように、単離し、凍結保存した。末梢血単核細胞(PBMC)細胞バンクを生成するために、細胞を計数し、Nucleocounter NC-200によって生存率を評価した。61.5×106個の生細胞/mLを、1 mLアリコートにおいて、VIA Freezeを用いた-100℃まで-1℃/分の制御速度で凍結した。合計で43バイアルをバンクにして、すべての凍結バイアルを、永久的な保存のためにVIA Freezeから液体N2タンクに移した。3つのランダムなバイアルを解凍し、解凍時の細胞生存率および細胞回復を評価することによって、PBMCバンクの適格性確認を行った。解凍手順は、(提供される)「PBMC由来T細胞の単離、開始、および細胞培養」に記載されるように実施した。各バイアルについて、1×106細胞/mLの生細胞密度の4×106細胞をまた、6ウェルプレートに播種し、CD3抗体およびCD28抗体を用いて活性化した。(実施例7で提供される)「細胞解凍、培養、および実験的使用のための細胞の調製」に記載されるように、活性化の3日後に、細胞を収集し、CD3およびCD25の発現を評価した。
PBMCの解凍および開始
(実施例5で提供される)「PBMC由来T細胞の単離、開始、および細胞培養」に記載されるプロトコールを用いて、完全培地を調製し、凍結保存されたPBMCを解凍して3日間活性化した。倒立顕微鏡を用い、代表的な10倍の画像を撮って、細胞の集塊および全体的な形態を捕捉した。活性化後のCD3およびCD25の発現がSOLUPORE(商標)プロセスのための放出基準を満たすかどうかを判定するために、実施例8に概説されるように、活性化されたPBMC開始T細胞を収集し、フロー取得および解析のためにCD3コンジュゲート抗体およびCD25コンジュゲート抗体で染色した。細胞が実験的使用のために放出される前に、CD3およびCD25の発現は、>90%であることが検証された。
レンチウイルス(LV-eGFP;「高感度GFP」)
50μLアリコートで供給されるLV-eGFPの3つのロットを、Tailored Genesから入手し、-80℃で保管した。LVバッチを、K562細胞について力価測定して適合させた。
送達溶液製剤におけるLVの安定性を調査するために、ペイロードとしてLV-eGFPを有する75μLの送達溶液を、96ウェルプレートにおいて調製した。可能性のある沈殿を評価するために、4倍、10倍、および20倍の画像を、倒立顕微鏡を用いて1時間毎に4時間撮った。送達溶液は、スクロース32.5 mM、KCl 106 mM、Hepes 5 mM、EtOH 12% v/v、および注射用の水を含む。
必要とされる数のアリコートを、氷上で解凍し、短時間遠心分離して、バイアルの側面上に散った液体を集めた。LV-eGFPアリコートを、使用前にプールして、実験に十分な体積があることを確実にした。ペイロード送達溶液を0で調製したら、静置形質導入を行うまで、残りのLV-eGFPをRTで保った。
すべての実験ランにおいて用いられた3つのLV-eGFPロットの仕様
Figure 2022535242000008
PBMC開始T細胞の調製
(実施例7で提供される)「細胞解凍、培養、および細胞の調製」に概説されるように、必要とされる数のPBMC開始T細胞を、遠心分離によってペレット化し、基本培地(サプリメントを含有するCTS OpTmizer T Cell Expansion SFM)に再懸濁して、各実験について列記される所望の細胞密度を生じた。希釈後細胞計数を行って、細胞懸濁液の30 mLアリコートを、50 mL Falconチューブにおいて調製し、使用するまで37℃のインキュベーターに保った。SOLUPORE(商標)プロセスの直前に、各試料を、秤量し、細胞数および生存率の両方について評価して、細胞が所望の細胞密度のままであることを確実にした。次いで、(本明細書に記載される)「PBMC開始T細胞培養物のSOLUPORE(商標)プロセス」において説明されるように、SOLUPORE(商標)プロセスのための準備で、各試料を50 mLシリンジに移した。
静置形質導入
各々の感染多重度(MOI)条件について、必要とされる数のT細胞を、完全培地で希釈して所望の体積を生じ、希釈後細胞計数を行って、細胞密度を確認した。次いで、調製された細胞懸濁液を、Nunc(商標)EasYFlasks(商標)TC処理T25フラスコ中にアリコートに分け、MOI条件当たり、3つの技術的反復実験および1つの無処理対照とした。細胞を、静置形質導入を行うまで、37℃、5% CO2インキュベーターに保った。
各実験において試験された静置形質導入パラメータ
Figure 2022535242000009
LVの任意の潜在的な分解を経時的に捕捉するために、SOLUPORE(商標)プロセスの完了と並行して、LVを各静置形質転換試料に添加した。ウイルス添加の直後に、フラスコを、37℃、5% CO2インキュベーターに戻した。
各ランについて、完全培地を、ウイルス送達の1日後に二倍にした。ラン1/2についてはより大きな体積を与え、試料をT75フラスコに移して、平らに置いて培養した。ラン3/4については、3 mLの完全培地を各T25フラスコに添加した。ラン1について、最終解析をSOLUPORE(商標)プロセスの3日後に行った。ラン2以降については、時点解析を行った後に、感染の3日後の培養物を0.5×106細胞/mLのVCDになるように希釈して、翌日のさらなる解析を可能にした。希釈後細胞計数を行って、SOLUPORE(商標)プロセスの4日後まで累積増大倍率を追跡した。すべての回復後およびSOLUPORE(商標)プロセス後の時点解析を完了した。
Solupore(商標)システムを用いた組立て、較正、およびSOLUPORE(商標)プロセス
(本明細書に記載される)「PBMC開始T細胞培養物のSOLUPORE(商標)プロセス」の後に、滅菌された構成要素を、バイオセーフティキャビネット(BSC)において無菌的に組み立てた。デバイスが適正にシールされ、圧力プロファイルが保存されることを確実にするように、圧力リーク試験を完了した。較正および停止溶液を、(実施例6で記載される)「PBMC開始T細胞培養物のSOLUPORE(商標)プロセス」に従って調製し、使用するまで氷上に置いた。
2.5のMOIを達成するペイロード体積の増加のために、ラン1/2において75~80μLを送達するように、システムを較正した。LV-eGFPペイロード溶液は、較正溶液よりも高い粘度を有したため、かなりの量のペイロード送達溶液が、両方のラン後に残っていた。所望の量のLVを送達するために、システムをその後、95~100μLを送達して不十分なスプレー体積を調整するように較正した。
各実験においてSOLUPORE(商標)プロセスについて試験されたパラメータ
すべての実験において試験されたSOLUPORE(商標)プロセスパラメータ
Figure 2022535242000010
1×109 TU/mLのウイルス力価を仮定して、各スプレーに必要とされるLV-eGFPペイロードの体積(μL)を、すべての実験について以下のように計算した。
Figure 2022535242000011
総送達体積に基づいて、LV-eGFPペイロードの最終濃度(%)を、
Figure 2022535242000012
によって決定した。各実験に必要とされる送達溶液の総体積は、以下の計算:
Figure 2022535242000013
を用いて導き出した。
すべての実験について、送達溶液は、以下に列記される各構成要素の最終濃度に基づいて製剤化した。
シリンジおよびElveflowリザーバのためのペイロードおよび送達溶液の組成。WFI(注射用の水)の%を、LV-eGFP組成物の増加を反映させるように調整した。
Figure 2022535242000014
すべてのSOLUPORE(商標)プロセスについて、細胞をロードし、solupore処理し、20 mLの完全培地において収集した。試料間のクリーニングおよびプライミングは、(本明細書に記載される)「PBMC開始T細胞培養物のSOLUPORE(商標)プロセス」において説明されるように行った。回復後およびSOLUPORE(商標)プロセス後の時点解析を完了した。
いくつかの例において、「S緩衝液」は、4℃で5分間の、低張生理的緩衝液(78 mMスクロース、30 mM KCl、30 mM酢酸カリウム、12 mM HEPES)を含む(Medepalli K. et al., Nanotechnology 2013; 24(20);その全体が参照により本明細書に組み入れられる)。いくつかの例において、酢酸カリウムは、S緩衝液において酢酸アンモニウムで置き換えられる。S緩衝液は、さらに、国際出願WO 2016/065341、例えば、段落[0228]~[0229]に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
各実験について完了されたSOLUPORE(商標)プロセス後および形質導入後の解析。◆は、試験された時点解析を表す。
Figure 2022535242000015
すべてのSOLUPORE(商標)プロセス後の時点について、下流の解析のために集める前に、試料を秤量し、計数し、Nucleocounter NC-200によって生存率を評価した。
各ランについて、完全培地を、ウイルス送達の1日後に二倍にした。ラン1/2についてはより大きな体積を与え、試料をT75フラスコに移して、平らに置いて培養し、他方、ラン3/4については、3 mLの完全培地を、各T25フラスコに単純に添加した。ラン1について、最終解析を、SOLUPORE(商標)プロセスの3日後に行った。ラン2以降については、時点解析を行った後に、SOLUPORE(商標)プロセスの3日後の培養物を5×105細胞/mLのVCDになるように希釈して、翌日のさらなる解析を可能にした。希釈後細胞計数を行って、SOLUPORE(商標)プロセスの4日後まで累積増大倍率を追跡した。すべての回復後およびSOLUPORE(商標)プロセス後の時点解析を、上に列記されるように完了した。
Solupore(商標)システムの汚染除去
ペイロード溶液を、Elveflowバルブから除去して、処分前に適正に除去した。次いで、噴霧器を、1 mLのPREempt RTUで2回、1 mLのWFIで2回、および1 mLの70% IPA(イソプロパノール)で2回パージすることによってリンスした。最後に、1 mLの各試薬を用いて、再び同じ順番で噴霧器をパージした。システムを分解して、PREempt RTUをスプレーした。20 Lの水道水中1% v/vのCitranoxを調製し、記載されるように、システム構成要素を浸して、DI(脱イオン)H2Oでリンスした。次いで、BSCに戻して置く前に、各構成要素に70% IPAをスプレーし、エアガンを用いて乾燥させた。ガスケットおよびOリングを、オートクレーブ可能なバッグに入れ、堅実なサイクルでオートクレーブ処理した。すべてのオートクレーブ不可能な構成要素が滅菌されることを確実にするために、BSC中の紫外線を活性化した。エチレンオキシド(EtO)滅菌工程は省略した。
試料の調製ならびに7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)生死判別染色および%GFPデータの取得
各時点について、各試料由来の200μLの細胞を、96ウェルV底ポリプロピレンプレートに集めた。次いで、細胞を、300×gで7分間の遠心分離によってペレット化し、マルチチャネルピペットを用いて上清を除去した。遠心分離中に、FACS溶液中の7-AAD生死判別色素のマスターミックス(試料当たり200μL FACS溶液中、5μLの7-AAD)を、15 mL Falconチューブにおいて調製した。各試料を、200μLの染色溶液に再懸濁して、光から保護しながらRTで5分間インキュベートした。7-AAD生死判別染色およびGFP発現を、取得およびゲーティング戦略に従って、CytoFlexを用いて取得し、FlowJoを用いて定量化した。
ドロップレットデジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR):試料収集、DNA抽出、およびPCR試料調製
各時点解析のために、各試料由来の200μLの細胞を、96ウェルV底ポリスチレンプレートに集めた。次いで、細胞を、300×gで7分間の遠心分離によってペレット化し、マルチチャネルピペットを用いて上清を除去した。遠心分離中に、1×溶解緩衝液を以下のように調製した。
1×インハウス細胞溶解緩衝液の調製
Figure 2022535242000016
50μLの1×溶解緩衝液を、各試料に添加した。すべての反応物を、室温(RT)で20分間インキュベートした後、標準的な96ウェルPCRプレートに(気泡を避けるために)穏やかに移した。反応プレートを、透明なプラスチックフィルムを用いてシールした後、サーモサイクラーを用いて56℃で15分間、95℃で10分間インキュベートし、4℃に冷却した。次いで、すべての実験から追加の試料が集められるまで、試料を-20℃で保管した。
PCR用の試料を調製するために、すべてのDNA鋳型を、標準的な96ウェルプレートにおいて、希釈剤としてPCRグレードのDNA分解酵素/RNA分解酵素フリーの水を用いて20倍希釈した。1×ddPCRスーパーマスターミックスを、各試薬/反応に以下の組成物を用いて、15 mL Falconチューブにおいて調製した。
1×ddPCRスーパーマスターミックスの調製。各試薬の体積は、試料の総数に従ってスケールアップした。10%の体積偶発性(ピペッティングエラー用)および2つの余分の反応もまた、NTC対照として含めた。
Figure 2022535242000017
18μLのマスターミックスを、4μLの20倍希釈されたDNAに加えて、96ウェルBio-Rad ddPCRプレートの各反応ウェルに添加した。NTC対照については、4μLのPCRグレードのDNA分解酵素/RNA分解酵素フリーの水を添加した。貫通可能なホイルヒートシールを、調製されたプレートの上部に直接置き、プレートシーラーを用いてプレートをシールした。次いで、反応物をボルテックスし、短時間スピンダウンして、散った液体を底に集めた後、自動液滴生成器(Bio-Rad AutoDG)に移した。液滴が生成されたら、貫通可能なホイルヒートシールを用いてプレートを再びシールし、Bio-Rad C1000サーモサイクラーに移して、以下のサイクルを用いてPCRを開始した:95℃で10分間(ランプ2℃/秒)、[94℃で30秒間(ランプ2℃/秒)、60℃で1分間(ランプ2℃/秒)]×39、98℃で10分間、最後に4℃で保持。PCRサイクルが完了したら、反応物をBio-Rad QX200ドロップレットプレートリーダーに移して、Alb/WPRE(ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)の比によってVCNを定量化した。x方向およびy方向の両方において正の集団と負の集団との間の明確な分離を生じるように、解析ソフトウェアQuantaSoftを用いて、閾値ラインの位置を決定した。ポアソン分布に基づいて、AlbおよびWPREの両方の濃度(コピー数/μL)を取得し、%GFPを、以下の方程式:
Figure 2022535242000018
を適用することによって導き出した。
ソフトウェア/統計解析
Figure 2022535242000019
LVの安定性
4倍、10倍、20倍の倍率を用いた定性解析に基づくと、製剤化後4時間まで、送達溶液にいかなる沈殿の証拠もなかった。
LV送達ラン1
フロー解析によって測定された、活性化されたPBMC由来T細胞のCD3およびCD25の発現は、それぞれ92.3%および91.3%であった。
SOLUPORE(商標)プロセス後に、3回の反復実験について、SOLUPORE(商標)プロセスからの平均総回収率は63%±12%であり、生存可能回収率は60%±13%であった(図8)。
両方のウイルス送達法について、細胞数および生存率を、感染の直後、ならびに感染後1日目および3日目に評価した。図9Aに示されるように、ウイルス送達の1日後のsolupore処理された細胞の生存率は、静置形質導入された細胞よりも有意に低かった(p<0.05)(それぞれ、98.5%および93.8%)。それにもかかわらず、solupore処理された細胞および静置形質導入された細胞の生存率は、感染の3日後に匹敵していた(両方の送達法について99.3%)。
SOLUPORE(商標)プロセス後にシステムから収集された細胞は、3日後に4.9の累積増大倍率を有していた。これは、9.5の累積増大倍率を有していた静置形質導入された細胞よりも有意に低かった(p<0.01)(図9B)。図30Aに見られるように、増大倍率の有意な差が、1日目に観察された。
ウイルス送達効率を評価するために、GFP発現および中央蛍光強度を、フローサイトメトリーによって定量化した。3日後の%GFP発現は、solupore処理されたT細胞について18.1%であり、静置形質導入されたT細胞については16.8%であった(図10A)。solupore処理されたT細胞は、ウイルス送達の1日後まで、有意により高い%GFP発現を有していた(p<0.01)。
発現したGFPのMFIは、ウイルス送達の直後に、solupore処理されたT細胞について有意により高かった(p<0.01)(図10B)。しかし、これは経時的に減少し、培養の3日後に、solupore処理されたT細胞は、静置形質導入されたT細胞よりも有意に低いMFIを示した(p<0.001)。
LV送達ラン2
システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセスおよび静置形質導入の両方によるウイルス送達の第2のランを、第1のランと同様に行った。PBMCからの活性化の3日後に、送達前の細胞集団は、96.7% CD3+および99.5% CD3+CD25+であった(図11Aおよび11B)。
SOLUPORE(商標)プロセスによるウイルス送達後に、3回の技術的反復実験について、平均総細胞回収率は67%±6%であり、生存可能回収率は65%±6%であった(図12)。
示されるように、感染の4日後の解析をこのランについて行い、より早期の時点で観察されるGFP発現を検証した。細胞生存率は、感染の1日後に両方のウイルス送達法について90%よりも高かった(図13A)が、solupore処理された細胞の生存率は、静置形質導入された細胞よりも有意に低かった(p<0.01)(それぞれ、92.0%および98.6%)。後の時点において、solupore処理された細胞は回復し、2つの送達法の間で生存率のいかなる有意な差も観察されなかった。
SOLUPORE(商標)プロセス後にシステムから収集された細胞は、4日後に7.7の累積増大倍率を有していた。これは、12.5の累積増大倍率を有していた静置形質導入された細胞よりも有意に低かった(p<0.01)(図13B)。加えて、各々の送達後時点での増大倍率は、静置形質導入された細胞と比較した場合に、solupore処理された細胞において有意により低かった(p<0.01)(図30B)。
図14Aに示されるように、感染の3日後にフローサイトメトリーによって定量化された%GFP発現は、solupore処理されたT細胞について15.2%、静置形質導入されたT細胞について19.1%であった。さらに1日後に、%GFP発現は、静置形質導入された細胞については維持されていた(19.4%)が、solupore処理された細胞におけるGFP発現は有意に減少し、11.5%になった(p<0.05)。solupore処理されたT細胞は、ウイルス送達の1日後まで、有意により高い%GFP発現を有していた(p<0.01)。
発現したGFPのMFIは、ウイルス送達の直後に、solupore処理されたT細胞について有意により高かった(p<0.01)(図14B)。しかし、solupore処理されたT細胞におけるMFIは、経時的に減少した。培養の3および4日後に、静置形質導入由来のT細胞は、有意により高いMFIを有していた(p<0.001)。
LV送達ラン3
PBMCからの活性化の3日後に、送達前の細胞集団は、90.6% CD3+および94.2% CD3+CD25+であった(図15Aおよび15B)。
SOLUPORE(商標)プロセスの直後に、平均総回収率は62%±9%であり、生存可能回収率は58%±8%であった(図16)。ロードされた細胞の数の差にもかかわらず、回収率にいかなる有意な差もなかった(p>0.05;対応のある両側t検定)。
図17Aに示されるように、1日後のsolupore処理された細胞の生存率は、静置形質導入によるウイルス送達を受けた細胞の生存率よりも有意に低かった(p<0.01)(それぞれ、90.7%および99.5%)。後の時点において、solupore処理された細胞の生存率は、99%よりも高くに回復し、4日目に、静置形質導入された細胞の生存率よりも有意に高かった(p<0.05)(それぞれ、98.7%および97.9%)。これらの知見は、用いたMOIとは無関係であり、それは生存率に対していかなる影響も有さないようであった(図17B)。
SOLUPORE(商標)プロセス後にシステムから収集された細胞は、4日後に、13.2の累積増大倍率を有していた静置形質導入由来の細胞よりも有意に低い(p<0.05)、9.6の累積増大倍率を有していた(図13A)。ウイルス送達の方法にかかわらず、より低い2.5のMOIで形質導入された細胞は、4日間にわたって有意により良好な増大を有していた(p<0.05)(図13B)。
感染後の各時点で、代表的な試料を採取して、両方の送達法におけるウイルス送達の効率を評価した。フローサイトメトリーによって定量化されたように、3日後の%GFPは、solupore処理されたT細胞について26.2%、静置形質導入されたT細胞について25.8%であった(図19A)。さらに1日後に、%GFPは、SOLUPORE(商標)プロセスおよび静置形質導入の両方について減少し(p<0.01)、それぞれ、22.8%および22.9%になった。solupore処理されたT細胞は、ウイルス送達の1日後まで、有意により高い%GFP発現を有していた(p<0.01)。LV送達法にかかわらず、2.5または5のMOIの間で%GFPにいかなる統計学的な差もなかった(図19C)。
発現したGFPの中央蛍光強度(MFI)は、ウイルス送達の直後に、solupore処理されたT細胞について有意により高かった(p<0.001)(図19A~19Dおよび図10B)。しかし、solupore処理されたT細胞のMFIは、経時的に減少し、培養の3および4日後に、静置形質導入由来のT細胞は、有意により高いMFIを有していた(p<0.001)。LV送達法にかかわらず、2.5または5の感染多重度(MOI)の間でGFP MFIにいかなる統計学的な差もなかった(図19D)。
LV送達ラン4
システムを伴うSOLUPORE(商標)プロセスおよび静置形質導入の両方によるウイルス送達の第4のランを、第3のランと同様に実施した。PBMCからの活性化の3日後に、送達前の細胞集団は、90.8% CD3+および95.1% CD3+CD25+であった(図20Aおよび20B)。
SOLUPORE(商標)プロセスによるウイルス送達後に、6回の反復実験について、平均総細胞回収率は63%±10%であり、生存可能回収率は59%±10%であった(図21)。ロードされた細胞の数の差にもかかわらず、回収率にいかなる有意な差もなかった(p>0.05;対応のある両側t検定)。
すべての感染後の時点における静置形質導入された細胞の生存率は、98%よりも高かった。比較すると、感染後1日目に、solupore処理された細胞の生存率は、静置形質導入された細胞よりも有意に低かった(p<0.001)(それぞれ、89.6%および99%、図22A)。後の時点において、solupore処理された細胞の生存率は、99%よりも高くに回復し、4日目に、静置形質導入された細胞の生存率よりも有意に高かった(p<0.05)(それぞれ、99.7%および99.0%)。ウイルス送達の方法にかかわらず、より低い2.5のMOIで形質導入された細胞は、感染の1日後に有意により良好な生存率を有していた(p<0.05)(図22B)。後の時点において、両方のMOIの細胞の生存率は、匹敵する値を有しており(>98%)、より高い5のMOIは、より低い2.5のMOIと比較して、4日目に有意により高い(p<0.05)生存率を有していた(それぞれ、99.6%および99.1%)。
SOLUPORE(商標)プロセス後にシステムから収集された細胞は、4日後に、22.5の累積増大倍率を有していた静置形質導入由来の細胞よりも有意に低い(p<0.001)、9.0の累積増大倍率を有していた(図23A)。ウイルス送達の方法にかかわらず、2.5または5のMOIの間で増大にいかなる統計学的な差もなかった(図23B)。
送達の3日後に、%でのGFPの発現は、solupore処理されたT細胞において(34.3%)、静置形質導入された細胞(25.4%)よりも有意に高かった(p<0.01)(図24A)。さらに1日後に、GFP発現は、SOLUPORE(商標)プロセスおよび静置形質導入の両方について、それぞれ、36.1%および26.7%で維持されていた。図24Cに示されるように、ウイルス送達の方法およびMOI条件は、%GFP発現に対していかなる有意な影響も有さなかった。
発現したGFPの中央蛍光強度(MFI)は、ウイルス送達の直後に、solupore処理されたT細胞について有意により高かった(p<0.001)(図24B)。しかし、solupore処理されたT細胞のMFIは、経時的に減少し、培養の3日後に、MFIは、静置形質導入されたT細胞よりも有意に低かった(p<0.001)。同様に、用いたウイルス送達の方法およびMOIにかかわらず、GFP MFIにいかなる統計学的な差もなかった(図24D)。
T細胞の純度および活性化
実験的使用のための放出基準を満たすように、PBMC開始T細胞は、CD3およびCD3/CD25の両方について90%よりも高い発現を有することが必要とされた。すべてのランにおいて、細胞は、93.1%±4% CD3+および95.0%±3% CD3+CD25+の平均でQCに合格し、SOLUPORE(商標)プロセスのために放出された(図25)。
回収後の解析
施設に対するシステムの技術移転中に、SOLUPORE(商標)プロセスランの成功を定義するために、50%±10%以上の総細胞回収率および30%±10%以上の生細胞回収率の最小閾値を用いた。累積的に、総細胞回収率は63%±9%であり、生細胞回収率は60%±9%であった(n=18スプレー、図26)。24×106細胞および12×106細胞の異なる細胞ロードを、第3のランおよび第4のランについて試験したが、2つの細胞ロード条件の間で回収パーセンテージにいかなる有意な差もなかった(p>0.05;対応のある両側t検定)。
ウイルス送達後の生存率
SOLUPORE(商標)プロセスの成功のための追加の基準は、SOLUPORE(商標)プロセスの1日後の70%±10%以上の生存率であった。SOLUPORE(商標)プロセスの1日後の4ランすべての平均生存率は、90.0%±5.3%であった(n=18スプレー)。しかし、これは、静置形質導入されたT細胞の1日目の生存率(99.0%、図27A)よりも低かった(p<0.001)。感染の1日後に認められたより低い生存率は、SOLUPORE(商標)プロセスの直後、例えば、回復期間に典型的に見られる生存率の低下のためである可能性がある(88.3%;n=18スプレー)。この観察にもかかわらず、静置形質導入された細胞と比較した場合、3日目の生存率にいかなる有意な差もなかった(両方のウイルス送達法について>98%)。これにより、solupore処理されたT細胞が、経時的に回復できることが実証される。さらに、SOLUPORE(商標)プロセスの4日後に、solupore処理された細胞は、静置形質導入された細胞(98.4%)と比較して有意により高い(p<0.01)細胞生存率(99.2%)を示していた。
ウイルス送達のために用いられた方法とは無関係に、2.5のより低いMOIは、5のMOIと比較した場合、感染の1日後に有意により高い(p<0.01)生存率を結果としてもたらした(それぞれ、96.0%および91.7%、図27B)。これは、SOLUPORE(商標)プロセスを受けた細胞において観察され、静置形質導入については観察されない(図33)。較正および感染後の培養条件に対して行われた変更にかかわらず、ラン1/2とラン3/4との間で生存率にいかなる統計学的な差もなかった(図27C)。
ウイルス送達後の増大速度論
SOLUPORE(商標)プロセスまたは静置形質導入のいずれかによるウイルス送達後に、感染の4日後まで細胞計数を行って、T細胞増殖に対するウイルス送達の影響を評価した。4日後に、16.8の平均増大倍率が、静置形質導入されたT細胞において観察された。これは、9.0の増大倍率を経験したsolupore処理されたT細胞よりも有意に高かった(p<0.001)(図28A)。4ランすべてにおいて観察された累積増大倍率の違いは、主にSOLUPORE(商標)プロセス後の細胞によって必要される回復期間のためであり、これは、累積増大倍率の乗法的性質により、後日さらに複雑になる。毎日の増大倍率を、図31Aおよび31Bに示す。
加えて、送達の1日後に、2.5のより低いMOIを受け取ったT細胞は、送達法にかかわらず、5のMOIを受け取ったものよりも高い(p<0.001)増大を有していた(図28B)。しかし、この違いは、送達の3または4日後には観察されなかった。再び、これは、主にsolupore処理された細胞において観察されたが、静置形質導入された細胞においては観察されず(図32)、SOLUPORE(商標)プロセス(回復期間)後に観察された、より低い生存率に同様に関連する可能性がある。
図28Cに示されるように、ラン3および4は、送達の1日後(p<0.001)および3日後(p<0.01)に、ラン1および2と比較して有意により高い増大を有していた。しかし、この効果は、送達の4日後には観察されなかった。増大速度論において観察された違いは、ラン3および4において細胞培養技法に対して行われた変更、具体的には体積対表面積の比のためである可能性がある。ラン3および4における体積対表面の比の低減が、恐らく、細胞培養を通して妥当な酸素拡散を可能にし、それによって、細胞増殖を助長した。この低減した体積対表面積の比は、ラン3および4においてSOLUPORE(商標)プロセスの直後から始まる培養の全期間にわたって達成された。ラン1および2について、体積対表面積の比は、直立のT25フラスコから平らに置いたT75フラスコに培養物を移した時、SOLUPORE(商標)プロセスの1日後に低減した。4日目のデータにより、これらの変化は、T細胞増大に対して持続性の長期効果を有さない可能性があることが示唆される。
フローサイトメトリーによるGFP発現
すべてのランにおいて、SOLUPORE(商標)プロセス直後のGFP発現は、静置形質導入されたT細胞におけるよりも有意に高かった(p<0.001)(それぞれ、44.7%および1.1%、図29A)。この有意な差はまた、送達の1日後にも観察された(p<0.001)。この研究に用いられたLV-eGFPのパッケージが粗ウイルス調製物であったことを考慮して、初期の時点でのGFP発現のこの差は、細胞が、SOLUPORE(商標)プロセス中に細胞膜の可逆的透過性からタンパク質カーゴとしてGFPを受け取った可能性が高いのに対して、静置形質導入された細胞はこの手順に供されなかったという事実によって説明することができる。データが示唆するように(図29A)、タンパク質カーゴは、一過性にのみ存在し、細胞が増大するにつれて希釈されるため、この差は経時的に減少する。タンパク質カーゴ送達の可能性に対処するために、SOLUPORE(商標)プロセスの4日後に追加の時点を、ラン2以降について導入して、3日の時点で観察された%GFPが、SOLUPORE(商標)プロセス中の残留GFPタンパク質の取り込みとは対照的に、LV送達の成功の正確な描写であったかどうかを評価した。ラン2、3、および4においては、SOLUPORE(商標)プロセスの3および4日後の平均GFP%は、25.7%および25.9%であって2つの時点の間に差はなかった(p>0.05;対応のある両側t検定)ことから、これは、SOLUPORE(商標)プロセスの3日後に集められた結果が、LV送達効率の正確な評価であることを示唆する。
ウイルス送達法とは無関係に、MOIに基づくGFP%またはMFIにおけるいかなる有意な差も、観察されなかった(図29Cおよび図29D)。これは、生成された歴史的データにおいて観察されたものに沿っており、2.5のMOIを用いる提案をさらに検証する。
概要
‐18試料にわたるSOLUPORE(商標)プロセス後の生細胞回収率および総細胞回収率は、それぞれ、60%および63%であった。
‐SOLUPORE(商標)プロセスの24時間後の生存率は、90%であった(n=18試料)。
‐システムは、18回のSOLUPORE(商標)プロセス実験にわたって25.7%の平均GFP発現で、LV-eGFPをT細胞に送達することができる。
適切なペイロード溶液の体積を分配するように較正を変更すること、および細胞培養パラメータ(すなわち、体積対表面積の比)を最適化することにより、GFP発現は有意に改善された。
実施例6:PBMC由来T細胞の単離、開始、および細胞培養
PBMC由来T細胞の単離、開始、および細胞培養
本明細書における方法は、PBMC由来のT細胞の単離、開始、および細胞培養を説明する。以下に概説される例示的な方法は、PBMCから開始されるT細胞をカバーし、これらの細胞の単離、培養、および開始を含む。
関連する頭字語:
AB血清: AおよびBの血液型抗原に対する抗体を欠如している、AB型ドナー由来のヒト血清
APC: アロフィコシアニン
BSC: 生物学的安全キャビネット
DMSO: ジメチルスルホキシド
DPBS: ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水
IL-2: インターロイキン2はT細胞の増殖および生存に必要とされるサイトカインである
IU: 国際単位
FBS-HI: ウシ胎児血清-加熱不活性化
mRNA: メッセンジャーRNA
PBMC: 末梢血単核細胞
RT: 室温
TCGM: T細胞増殖培地
7-AAD: 7-アミノアクチノマイシンD
材料
Figure 2022535242000020
機器
Figure 2022535242000021
手順
PBMC単離
希釈緩衝液の調製:
Figure 2022535242000022
CTS T細胞培養培地(TCGM)の調製
Figure 2022535242000023
*0日目にIL-2を添加する。IL-2を添加したら1週間以内に使用し、開始の日に常に新しく作製する。
1. CTSの瓶の開封時に、忘れずに直ちにCTSサプリメントを添加する。
2. 血清または等価物を添加し、50 mlシリンジおよび0.2μmフィルターを用いて、または0.2μm SteriCupを用いてろ過する。
3. ろ過したら、L-グルタミンおよびIL-2を添加する。
4. 1週間以内に培地を使用する。
PBMCの単離
1. 滅菌Duranにおいて1%の加熱不活性化FBSを含有するDPBS(希釈緩衝液と呼ばれる)で血液を希釈する。
1.1. バフィーコートを1:1の比(血液:希釈緩衝液)で希釈する。
1.2. Leukopakの内容物を1:2の比(血液:希釈緩衝液)で希釈する。
2. 10 mlのLymphoprep溶液を50 ml Falconに添加する(Falconの数は、希釈された血液合計のmlを40で割った数である)。
3. 50 mlチューブを25 ml stripetteに対して垂直に保持することによって、希釈された血液を、準備されたLymphoprep上に注意深く重層化する。
4. 6に設定された加速度およびブレーキオフ(0-最小の減速度に設定)で、400 gで22分間遠心分離する。図34を参照されたい。
5. 滅菌パスツールピペットを用いて上部(血清)層を取り除き、チューブに3 mlの血清層を残して捨てる。
6. PBMC層(血清の下かつLymphoprepの上部にある白い曇った層)を注意深くきれいなチューブに移す。赤血球ペレットを全く取らないことを確実にする。
7. バフィーコート層にDPBS+1% HI-FBSを50 mlまで補充し、混合して、ブレーキオンにして450×gで7分間遠心分離する(加速度9、減速度9 - プロトコールの残りについてはこの設定にする)。
8. PBMCペレットを乱さないように注意して、上清を注ぎ出す。ペレットを少量(<1 mlまたは残った液体の量)に再懸濁する。ボルテックスする。
9. PBMCにDPBS+1% HI-FBSを50 mlまで補充し、混合して、450 gで7分間遠心分離する8.9.。
10. 注ぎ出すことによって、上清を捨てる。ペレットを、30 mlのDPBS+1%HI-FBSに再懸濁する。これが、単離されたPBMCである。
11. 細胞を計数する:eppendorfにおいて、50μlの細胞懸濁液を950μlのDPBS +1% HI-FBSに添加して、1:20希釈液を作る。Via1カセットを用いて、希釈された細胞懸濁液を取り、Nucleocounterに加える。細胞希釈液をプログラムに加えることを確実にして、「Cell Count and Viability」プログラム下で細胞を計数する。WI-6 NC-3000 NucleoCounter Operation & Maintenanceを参照されたい。
12. PBMCは、以下の「凍結」セクションにおける凍結工程に従うことによって、この時点で凍結保存することができる。PBMCは、ml当たり5000万細胞で凍結されるべきである。
PBMCの凍結
1. PBMCを凍結保存するために、細胞懸濁液を400 gで5分間遠心分離し、上清を除去する。
2. 90% HI-FBS+10%ジメチルスルホキシド(DMSO)として凍結培地を調製し、氷上で保管する。5000万細胞毎に1 mlの凍結培地を作製する。
3. Mr. Frostyまたはコントロールレートフリーザーを用いて、細胞を凍結することができる。
Mr. Frosty
1. Mr. Frostyは、凍結プロセスが可能な限り迅速であるように、室温のイソプロパノールを容器のマークまで補充するべきである(毎月再充填)。
2. cryovialは、事前に標識付けし、BSCにおいて事前に開けておくべきである。
3. 25 ml stripetteを用いて、凍結培地を細胞ペレットにゆっくりと滴下し始め、同時に必ず旋回させる。
4. 同じ25 ml stripetteを用いて、細胞および凍結培地溶液の多くを取り、準備されたcryovialに1 mlを素早く加える。
5. チューブに素早くキャップをして、Mr. Frosty容器にそれらを加え、次いで、Mr. Frostyを-80℃のフリーザーに移動させる。
6. 細胞は、翌日ドライアイス上のみで、液体窒素に移すべきである。
コントロールレートフリーザー
1. 単離の1~2日前に、加圧液体窒素タンクが充填されていることを確実にし、使用前に液体窒素レベルを確認する。
2. cryovialが用いられる場合は、事前に標識付けし、BSCにおいて事前に開けておくべきである。
3. 細胞懸濁液を遠心分離する。
4. 低圧液体窒素供給タンクが付属したWI-10コントロールレートフリーザーに従って、コントロールレートフリーザーの「T細胞」設定を動かす。
5. 25 ml stripetteを用いて、旋回させながら、凍結培地を細胞ペレットにゆっくりと滴下する。
6. 同じ25 ml stripetteを用いて、細胞および凍結培地溶液の多くを取り、1 mlをバイアル中に素早く加える。
7. まだBSC中のうちに、チューブに素早くキャップをする。
8. 4℃の温度に到達した時に、コントロールレートフリーザーに試料を加える。
9. フリーザーがそのランを完了した直後(すなわち、-180℃に到達した時)に、細胞を、液体窒素に移すべきである。
T細胞の開始
0日目 - 解凍
このプロトコールは、単一ドナーの使用のための手順に従い、異なるドナーを混合するべきではない。
1. 培地を調製し、37℃に温める。
2. 液体窒素から、必要とされる数のPBMCバイアルを取り出す。
2.1. PBMCの増殖におけるドナー間の変動性のために、PBMCの増大の程度の違いにより、3日目に必要なT細胞の数よりも多いPBMCを開始することが必要であり得る。
3. BSCにおいて、10 mlの予め温めた培地を含む1本の50 mlチューブを準備する(解凍する細胞のバイアル毎に10 ml)。
4. PBMCバイアルを、氷の小片が残るまで時々穏やかに旋回させながら、37℃のウォーターバスにおいて解凍する(一度に2つ以下のバイアルを解凍する)。
5. バイアルをBSCに戻し、1 mlの温めた培地をゆっくりとバイアルに加え、混合するために1回上下にピペッティングする。
6. バイアルの内容物を、適切に標識付けされた50 ml falconの予め温めた培地にゆっくりと移す。
7. バイアルを培地でリンスし、これを50 mlチューブに移す。
8. T細胞増殖培地(TCGM)で体積を50 mlにする。
9. 300×gで7分間、RTで遠心分離する。
10. BSCにおいて、上清を吸引して廃棄する。
11. 10 mlのTCGMに再懸濁する。
12. Nucleocounterを用いて、細胞を計数する。
12.1. 細胞を計数するために、細胞懸濁液のアリコート(50μl)を取り、Eppendorfにおいて450μlの培地で希釈して、500μlの最終体積にする。
12.2. Via-1カセットおよびNucleocounterを用いて、細胞を計数する - ソフトウェア上での希釈を含む(すなわち、試料ボックスに「50」と入力し、希釈ボックスに「450」と入力する - Nucleocounterが希釈係数を計算する)。
12.3. ソフトウェア上のゲートを視覚的に検査し、必要な場合には、細胞の本体を含むように変更して、細胞の生存率および濃度を記録する。
13. 1×10 6 /mlになるように、TCGMで細胞の体積を増やす。
14. 100万細胞当たり0.5μlの、CD3抗体およびCD28抗体の両方を添加する。
15. 開始のために、適切に標識付けされたフラスコ中に細胞を播種する。
15.1. 最大で30 ml/T25。
15.2. 最大で80 ml/T75。
16. フラスコを、5% CO2緩衝のウォータージャケット付きインキュベーターにおいて37℃で、横にして(水平に)置く。
17. 細胞は、約72/96時間、触らずにしておくべきである(木曜日の使用のためには月曜日に播種し、または月曜日/火曜日の使用のためには金曜日に播種する)。
18. 細胞は、フラスコにおいて3日後に「薄片状に」または「雪のように」見えるようになり、その時良好に開始している。
実施例7:PBMC開始T細胞培養物のSolupore(商標)システム
PBMC開始T細胞のSOLUPORE(商標)プロセスは、機能的に閉じた器械において行われる。
関連する頭字語
BSC: バイオセーフティキャビネット
d: 直径
EtOH: エタノール
GFP: 緑色蛍光タンパク質
PBS: リン酸緩衝生理食塩水
Pen/Strep: ペニシリン・ストレプトマイシン
PETE: ポリエステル・トラックエッチング
PC: ポリカーボネート
PS: ポリスルホン
SS: ステンレス鋼
Al: アルミニウム
WFI: 注射用の水
mRNA: メッセンジャーリボ核酸
材料および機器
システム機器
Figure 2022535242000024
システム構成要素
Figure 2022535242000025
システム消耗品
Figure 2022535242000026
システム消耗品
Figure 2022535242000027
溶液の調製
すべての溶液の調製は、BSCにおいて実施されなければならない。
1. 停止溶液:標識付けされた50 mL falconチューブにおいて25 mLのPBSと25 mLのWFIとを混合することによって50 mLの停止溶液を調製し、必要とされるまで氷上に置く。1か月よりも長く開封されているPBSは使用しない。開封した日付をラン記録に記録する。
2. 細胞培養培地:試料の総数および再懸濁体積に基づいて、必要とされる培地を計算する。完全細胞培養培地(+0.5% Pen/Strep)を調製するか、または以前に調製された培地のアリコート(120 mLアリコート)を入手する。室温で保つ。
3. 較正溶液:「較正」と標識付けされた50 mL Falconチューブに、(表5)に詳述される、最初にWFI、次いでEtOH(最終12%)、および最後にS緩衝液(20×で調製)の順序の体積を加えることによって、最小10 mL体積の噴霧器の較正用のペイロードフリーの送達溶液を調製する。注意:S緩衝液およびEtOH溶液は一緒に加えないこと。これは、S緩衝液中の賦形剤の沈殿を結果としてもたらすためである。WFIを最初に加えることを確実にする。
3.1. Elveflowリザーバ:BSCにおいて、1 mLの「較正」溶液を、標識付けされた1.5 mLの滅菌Eppendorfチューブに移す。SOLUPORE(商標)プロセス用の試料数(スプレーの数)がわかっている場合は、4のSOLUPORE(商標)プロセスの溶液調製に進む。SOLUPORE(商標)プロセス用の試料数(スプレーの数)がわかっていない場合は、5の組立ておよび較正に進み、試料数がわかったら、SOLUPORE(商標)プロセスの溶液を調製する。
噴霧器の較正用のペイロードフリーの送達溶液
Figure 2022535242000028
4. SOLUPORE(商標)プロセスの溶液:10回のスプレーについて与えられる例である、表6における計算を用いて、50μLのスプレー体積での2.4×107個のT細胞のSOLUPORE(商標)プロセスに必要とされる送達溶液の体積を計算する。
SOLUPORE(商標)プロセスに必要とされる送達溶液の総体積の計算
Figure 2022535242000029
*噴霧器の送達体積を変化させると、プライミング体積およびデッドボリュームが変更される可能性があり、それに応じて上記の計算が修正されることに注意されたい。
**過剰体積は、較正中に許容される10%の過剰に相当する。
4.1. 表7を参照して、実験用スプレーの必要とされる数のために、ペイロード溶液および送達溶液の構成要素の必要とされる体積を計算し、ラン記録に記録する。0.1μg/mLおよび0.4μg/mLのGFP濃度での10回のスプレーについて与えられる例である。
4.2. BSC内で、「SOLUPORE(商標)プロセス」と標識付けされた1.5 ml Eppendorfチューブに送達溶液の構成要素を加え、必要とされるまで氷上で保管する。注意:S緩衝液およびEtOH溶液は一緒に加えないこと。これは、S緩衝液中の賦形剤の沈殿を結果としてもたらすためである。WFIを最初に加えることを確実にする。この段階ではペイロード(GFP mRNA)を加えない。
シリンジおよびElveflowリザーバのためのペイロードおよび送達溶液の組成
Figure 2022535242000030
5. システムの組立て、噴霧器の較正、およびフィルターメンブレンのプライミング
5.1. 提供されるチェックリストを用いて、システムユニットを組み立てるために、構成要素および消耗品を含有するすべての必要なバッグを、EtOキャビネットからBSC中に移す(図35および図36)。
5.2. 提供されるチェックリストを用いて、1回の実験ランに必要とされる消耗品および実験器具を、無菌的にBSC中に移す。
5.3. 滅菌された構成要素を開梱し、バッグを処分する。
5.4. リッドを組み立てるために(図36):
5.4.1. Xリングを置いて、噴霧器をシールする(a)。
5.4.2. エアラインが装備された噴霧器を挿入する(b)。
5.4.3. キャップを加えて、噴霧器を所定の位置に固定する(c)。
5.4.4. 提供されるアレンキーを用いて、噴霧器のキャップのねじを締める
(d)。
5.4.5. (e)に示されるように、Clippard弁を含有するブラケットを取り付ける。
5.4.6. ねじで留めることによってブラケットを固定させる(f)。
5.4.7. リザーバホルダーおよびElve flowモジュールを取り付ける(g)。
5.4.8. シリコンチューブをリザーバニードルに接続する(h)。ユニットコントロール上で設定を選択してパージ(Purge)を押すと、clippard弁が開き、次いで、シリコンチューブのセグメントをClippard弁中に挿入する。
5.4.9. シリコンチューブのもう一方の端を、噴霧器サンプルチャネル中のニードルに接続する。clippard弁の下のシリコンチューブがまっすぐであることを確実にする。そうでない場合は、パージを押してclippard弁を開き、まっすぐにする。
5.4.10. 図で示されるようにClippard弁ワイヤーを接続する(j)。
5.4.11. 噴霧器のエアラインを電磁弁に接続する。
5.4.12. ベントチューブおよびフィルターを接続する(k)。
8.5.5. 図36におけるように、システムベース(図35)を傾斜スタンド上に置く。
5.6. 提供される3つの1/4-28ルアーロックをドレインポート、ブリードポート、および細胞入口/出口ポートにねじ込む。
5.7. ルアーロックをそれぞれのチューブに接続し、すべてのクランプが閉じていることを確実にする。
5.8. 0.2μmのフィルターをブリードポートチューブの端に接続し、廃棄バッグをドレインポートチューブに接続する。
5.9. oリング1(より厚いoリング)を、ドレイン領域の周りの溝中に挿入する(図35および36)。
5.10. メンブレンホルダーをベース上に置く(図35~37)。
5.11. ガスケット1をメンブレンホルダー上に置く(図35~38)。
5.12. SOLUPORE(商標)プロセスのフィルタープライミングのために組み立てる場合は、ドレインディスクを加え(図35~39)、較正またはSOLUPORE(商標)プロセス溶液のロードのための組立てに進み、ドレインディスクおよびフィルターメンブレンの代わりに青いフィルターデバイダーを加える(図35~39)。5.15に進む。
5.13. 1 mlの1×PBSをピペッティングすることによって、ディスクを湿らせる。ドレインポートが開いていることを確実にする。図37に示されるように、ドレインディスクの縁を穏やかに押し下げてドレインディスクの均一な湿潤を容易にし、ディスクを回転させて液体を分散させる。ガスケット1によって区切られた領域内のドレインディスクには触れない。
5.14. PETEフィルターメンブレンをドレインディスクの上に置く。
5.15. 較正のみを準備する場合は、ガスケット2をフィルターメンブレン(図35~40)または青いフィルターデバイダーの上に置く。SOLUPORE(商標)プロセスについての注意:ガスケット2を置く時には、フィルターにしわが寄るのを避けるように気をつける。フィルターにしわが見られる場合は(図38)、それを処分して、新しいフィルターで再開する。SOLUPORE(商標)プロセスについての注意:サンプルランの間のフィルターメンブレンの配置を助けるために、空のシリンジをドレインチューブに接続することができる。このシリンジを用いて穏やかに真空を引き、ガスケット2を上部に置く前に平らなフィルターメンブレンを維持する手助けをする。
5.16. oリング2を挿入する(図35~41)。
5.17. PSまたはSSマスクを置く(図35~42)。
5.18. oリング3を挿入する(図35~42)。
5.19. ドレインチューブ上のクランプを開く。
5.20. クランプせずに、ユニットの上にリッドを置く。
5.21. 較正については5.22に進み、SOLUPORE(商標)プロセスのフィルタープライミングについては8.7に移る。
較正
5.22. 較正溶液で噴霧器をプライミングする。
5.23. 反時計回りにElveflowユニットのベースのねじをゆるめ(図39)、1.5 mL Eppendorfチューブ(保管中にニードルを保護するため)を取り出す。「較正」チューブをベース中に置き、Elveflowユニットを戻してねじで留める。
5.24. コントローラー(図40)上で、「空気(Air)」を選択して圧力を1730 mbarに設定し、次いで「サンプル(Sample)」を選択して圧力を50 mbarに設定する。
5.25. リッドを取り外し、70% IPAで洗浄された較正カップを噴霧器の下に置く。
5.26. スプレーが噴霧器の先端に現れるまで、「スプレー(Spray)」ボタンを作動させる(通常2~3回)。
5.27. 「サンプル」圧力を100 mbarに設定するか、または先行日の実験ラン由来の較正された設定で開始する。
5.28. 「スプレー」ボタンを2回作動させ、目視検査によってスプレーが発生したことを確認し、廃棄容器を取り出す。
5.29. 噴霧器を較正するために:
5.30. はさみを用いて、70% IPAで洗浄された較正カップの上部の縁を切る。
5.31. 化学天秤上でカップの風袋をはかる。
5.32. 図41に示されるように、カップをMID 1Tチャンバーに置く。
5.33. ユニットの上にリッドを置き、同時に均一な圧力で、2つの反対側のクランプを閉じる。
5.34. ベントポート上のクランプが開いていることを確認する。
5.35. ドレインチューブ、細胞入口/出口チューブ、およびブリードポートチューブ上のクランプを閉じる。
5.36. 噴霧器の較正:
5.36.1. 空気圧力が1730 mbarに設定されていることを確認する。
5.36.2. サンプル圧力を、ラン記録上の最後の較正値記録に設定する。
5.36.3. 手動圧力調節器を用いて、必要とされる圧力、例えば90 mbarに、シャワーヘッドを通る気流を設定する(図42)。
5.36.4. シャワーヘッドへの気流ライン上のクランプを開く。
5.36.5. 「スプレー」ボタンを作動させる。
5.36.6. シャワーヘッドへの気流ライン上のクランプを閉じる。
5.36.7. 直ちにリッドのクランプを外し、較正カップを取り出して、リッドをユニットの上に戻す。
5.36.8. 直ちに較正収集カップを秤量する。
5.36.9. 重量をラン記録に記録する。
5.36.10. カップに70% IPAをたっぷりとスプレーし、拭いて乾かす。
5.36.11. 重量が55 mg*(55μL)よりも上の場合は、サンプル圧力を10 mbar低下させる。廃棄カップに1回スプレーを分注し、スプレーおよび測定を繰り返す。
5.36.12. 重量が50 mg(50μL)よりも下の場合は、液圧を10 mbar上げる。廃棄カップに1回スプレーを分注し、スプレーおよび測定を繰り返す。
5.36.13. *仮定:送達溶液の密度は約1 g/ml。
5.37. 3回の連続した50~55 mgの測定値が得られるまで、較正測定を繰り返す。較正溶液が枯渇せず、サンプルラインの全長が常に液体で満たされていることを確実にする。
5.38. 最適な圧力および較正重量をラン記録に記録する。
5.39. 較正が完了したら、廃棄カップを噴霧器の下に置く。システム設定を選択し、圧力設定を500 mbarに上げ、パージ、サンプルを選択して押し、較正溶液を噴霧器から追い出す。パージをさらに1回繰り返し、廃棄カップを処分する。
SOLUPORE(商標)プロセス
6. ペイロード溶液「SOLUPORE(商標)プロセス溶液」のロード
6.1. サンプルラインをコントロールユニットラインから切り離す。図43。
6.2. 必要とされる体積のGFPをSOLUPORE(商標)プロセス溶液中にロードする。
6.3. 反時計回りにElveflowユニットのベースのねじを緩め(図39)、1.5 mL Eppendorfチューブを取り出す(較正)。「SOLUPORE(商標)プロセス」チューブをベース中に置き、Elveflowユニットを戻してねじで留める。
6.4. サンプルラインをコントロールユニットラインに再接続する。
6.5. コントローラー(図40)上で、「空気」を選択し、圧力が1730 mbarに設定されていることを確実にし、次いで「サンプル」を選択して、圧力を50 mbarに設定する。
6.6. リッドを取り外し、70% IPAで洗浄された較正カップを噴霧器の下の青いフィルターメンブレンデバイダーの上部に置く。
6.7. スプレーが噴霧器の先端に現れるまで、「スプレー」ボタンを作動させる(通常2~3回)。
6.8. サンプル圧力を較正値に設定し、「スプレー」ボタンを1回作動させる。目視検査によってスプレーが発生したことを確認する。
6.9. 青いディスクデバイダーを取り出して、5.13~5.20に記載されるようにフィルタードレインディスクおよびフィルターメンブレンを組み立て、SOLUPORE(商標)プロセスのフィルタープライミングについての7に進む。
7. SOLUPORE(商標)プロセスのフィルタープライミング
7.1. リッドをユニットの上に置き、反対側のクランプを一緒にロックしてシステムチャンバーをシールする。
7.2. 以下を有することを確実にする。
4×60 mlシリンジ
4×シリンジキャップ
1×150 ml滅菌バッグ
1×ルアースパイクインターコネクタ
1×0.2μmフィルター、フィルターメンブレンのプライミングに移る前のブリードポートチューブ上
7.3. 60 mLシリンジを取り、「プライム」と標識付けし、プランジャーを取り外し、シリンジキャップを挿入して、シリンジに60 mLの1×PBSを充填する。プランジャーを挿入し、キャップを取り外して、シリンジを細胞入口ポートに接続する。
7.4. ベントチューブおよびドレインチューブ上のクランプが閉じていることを確実にする。
7.5. 細胞入口チューブ上のクランプを開き、60 mLのPBSをチャンバー中にロードする。
7.6. 気流チューブ上のピンチクランプを開く。
7.7. ドレインポートクランプを開き、PBSの約50%である約30 mLを排水させる。
7.8. 気流チューブのピンチクランプを閉じ、直ちにベントチューブ上のクランプを開く。
7.9. 重力排水が起こることを検証する。重力排水が妨げられている場合は、工程8.7.3から繰り返す。
7.10. 無菌試験のために、必要とされる場合には1 mLのプライミング溶液を室温で取っておく。
8. 細胞のロード
8.1. ラン記録上に記録する。
細胞試料を細胞培養によってアリコートに分けた時間
試料の体積
細胞濃度、例えば、24×106細胞/30 mL
細胞をチャンバーにロードする時間
8.2. 基本培地において提供される細胞懸濁液が、必要とされる細胞濃度であることを確実にする。
8.3. 4 mLに設定された5 mLピペットを用いて均一に混合し、10回上下にピペッティングすることによって任意の細胞塊を穏やかに破壊する。
8.4. 200μLピペットを用いて、2×200μLの細胞懸濁液を取り、計数およびフローサイトメトリー解析のために、「BS(SOLUPORE(商標)プロセス前)+試料番号」と標識付けされた1.5 mL Eppendorfチューブ中に各アリコートを移す。すべての試料について繰り返す。
8.5. フローサイトメトリーは、すべての試料を氷中の1.5 mLチューブに置き、SOLUPORE(商標)プロセス実験の最後に解析を行う。
8.6. WI-06に従って計数する。簡単に述べると、
P200ピペットを用いて5回ピペッティングすることによって、試料を穏やかに混合する。試料を泡立たせない。
NC3000/NC200上でVia 1カセットを用いて計数する(WI-06に従う)。
計数の時間をラン記録に記録する。SOLUPORE(商標)プロセスの前後のすべての試料を計数するために、同じnucleocounterを用いることを確実にする。
8.7. 初めて使用する前に停止溶液の温度読み取り値を取得し、ラン記録に記録する。
8.8. プライミングに用いられたシリンジを切り離し、再びキャップをする。次のランのために取っておく。
8.9. 滅菌の60 mLシリンジを取り、プランジャーを取り外し、シリンジをキャップに接続して、細胞懸濁液をシリンジ中に穏やかに注ぐ。
8.10. プランジャーを挿入して、シリンジを逆さまにし、キャップを取り外して、穏やかに空気を追い出す。
8.11. シリンジを細胞入口/出口チューブに接続する。
8.12. ドレインチューブ上のクランプが閉じていることを確実にする。
8.13. 細胞入口/出口チューブ上のクランプを開き、プランジャーを穏やかに押して、細胞懸濁液をチャンバー中にロードする。入口チューブを充填するようにシリンジプランジャーを下げたままにし、充填されたら、シリンジを180°回転させ、残りの細胞懸濁液を加える。細胞がロードされたら、シリンジを取り外し、空気が充填されたシリンジからの空気で入口ラインをパージして、ライン中の任意の残っている液体をチャンバー中に押す。チャンバーを穏やかに左に傾けることによって、気泡の導入を避ける。
8.14. 細胞入口/出口チューブ上のクランプを閉じ、シリンジを処分する。
8.15. 5 mLの停止溶液を含む標識付けされたシリンジ、および20 mLの細胞培養培地を含む別の標識付けされたシリンジを準備し、シリンジにキャップをして取っておく。
8.16. ドレインクランプを開き、タイマーを開始してろ過時間を測定する。
8.17. フィルターが目で乾いているように見え、チューブを通って流れる液体
がもうない時に、ろ過は完了したとみなされる。
8.18. ろ過の時間をラン記録に記録する。
8.19. 液体がもうドレインチューブを通って流れなくなったら、ブリードポートクランプを開き、ブリードポートチューブをユニットベースの上の直立位置に保持して、ドレインチューブを通って流れる残りの液体を観察する。すべての液体がドレインチューブから除去されることを確実にする。
8.20. ドレインライン上、廃棄バッグ上、およびブリードポートチューブ上のすべてのクランプを閉じる。
8.21. 廃棄バッグを切り離し、取っておく。回収溶液である細胞培養培地を含むシリンジを接続する。
8.22. 停止溶液を含むシリンジを、入口チューブに接続する。
8.23. シャワーヘッドを通る気流をオンにし(例えば、90 mabrに設定)、気流ライン上のクランプを開き、直ちに「スプレー」ボタンを作動させて、30秒のタイマーを開始する。
8.24. 気流ライン上のクランプを閉じる。
8.25. 30秒のインキュベーション後に、入口ライン上のクランプを開き、停止溶液を加え、さらに30秒間インキュベートする。
8.26. ドレインクランプを開き、20 mLの培地をチャンバー中に急速に流し込む。
8.27. チャンバーを傾けて、チャンバーの内外をシリンジまで14回、細胞懸濁液を穏やかに吸引する。プランジャーを上下に穏やかに引いて、シリンジの内外に溶液をゆっくりと吸引することによって、気泡の形成を避ける。フィルター全体が回収溶液によって洗い流されることを確実にする。
8.28. チャンバーを傾けてニュートラル位置に戻す。
8.29. 細胞懸濁液をシリンジ中にゆっくりと吸引しながら、チャンバーを最大角度までゆっくりと傾けることによって、細胞懸濁液を収集する。マスク上に気泡が観察された場合は、ニュートラル位置に戻し、再びチャンバーを傾けて気泡をシリンジ中に吸引する。
8.30. 入口ランプを閉じて、シリンジを切り離す。
8.31. 細胞懸濁液をT-25フラスコ中に移す。
8.32. シリンジを入口ポートに再び接続して、任意の残留細胞懸濁液を吸引し、T-25フラスコ中に移す。
9. 回収後の解析
9.1. 200μLピペットを用いて、2×200μLの細胞懸濁液を取り、計数およびフローサイトメトリー解析のために、「AS(SOLUPORE(商標)プロセス後)+試料番号」と標識付けされた1.5 mL Eppendorfチューブに各アリコートを移して、室温で取っておく。
9.2. Solupore処理された細胞懸濁液を含有する細胞培養ディッシュを秤量し、重量/体積をラン記録に記録する。
9.3. 細胞培養ディッシュが標識付けされていることを確実にする:試料名;記録された体積;オペレーター名;日付。
9.4. 細胞培養ディッシュを、37±2℃、5% CO2、95%相対湿度のインキュベーターに直立位置で置く。
9.5. 計数用に取っておいた「Sol後(Post-Sol)」試料を計数し、WI-06に従って計数して、計数の時間をラン記録に記録する。「Sol前(Pre-Sol)」および「Sol後」の試料を計数するために、同じnucleocounterを用いることを確実にする。
10. 試料間のクリーニング
10.1. 実験の反復の間に廃棄バッグを処分する。
10.2. リッドのクランプを外して取り外し、ろ過ユニットを分解して、ドレインディスクおよびフィルターメンブレンを取り出し、処分する。
10.3. フィルターを挿入せずに、再び器械を組み立てる。
10.4. チャンバーリッドをクランプで留める。
10.5. ドレインポートクランプおよびブリードポートクランプが閉じていることを確実にする。
10.6. 滅菌の標識付けされたシリンジに60 mLのWFIを充填し、入口チューブに接続して、チャンバー中に水をロードする。
10.7. 器械を両端で保持し、すべての表面のリンスを促進するようにチャンバーを回転させる(図44)。ユニットを最大度まで傾けて、マスクおよびリッド壁が洗浄されることを確実にする。
10.8. ドレインチューブに接続されたシリンジで吸引して、液体を除去する。
10.9. 60 mLの1×PBSを用いて、10.6~10.8を繰り返す。
10.10. チャンバーは今や、新しい試料のために新しいドレインディスクおよびフィルターメンブレンと共に再び組み立てる準備ができている。
11. 新しいドレインディスクおよびフィルターメンブレンでのユニットの組立ての後、すべての他の試料について項5.13から繰り返す。
12. 試験された試料名および条件をラン記録に記録する。
13. 実験が完了したら、クリーニングシステムに移る。
14. すべての必要とされるNC3000/NC200ファイルをエクスポートし、解析のために適切な実験フォルダー中に保存する。
15. 細胞を、24時間培養に置き、以下について解析する。
回収された細胞数(NC3000/NC200)
細胞生存率(NC3000/NC200)
トランスフェクション効率(%GFP - フローサイトメトリー)
実施例8:細胞解凍培養および細胞の調製
本明細書に記載される方法は、細胞培養培地の調製、細胞ストックの解凍、細胞の培養、および実験的使用のための細胞の調製用の標準的なプロトコールを提供する。方法は、細胞培養培地の調製および液体窒素保存中の細胞ストックを解凍するための手順、ならびに実験的使用のための調製における細胞の培養をカバーする。
関連する頭字語
DMSO - ジメチルスルホキシド
FBS-HI - ウシ胎児血清-加熱不活性化
SDS - 安全データシート
PBS - リン酸緩衝生理食塩水
SFM: 無血清培地
P/S: ペニシリン・ストレプトマイシン
TC: 組織培養
BSC: バイオセーフティキャビネット
材料
Figure 2022535242000031
機器
Figure 2022535242000032
手順
1. CD3+ T細胞培養培地の調製
Figure 2022535242000033
1. CD3+T細胞用の完全培地を調製するために、CTS OptimizerサプリメントのフルボトルをCTS Optimizer培地のフルボトルに添加し、各々についてのロット番号を細胞培養テンプレートに記録する。
2. 上記の表におけるように、必要とされる体積のL-グルタミンを添加する。
3. 0.1% IL-2(200 U/ml)の添加前に、真空ろ過システム(以下Stericupイメージ)を用いて培地をろ過滅菌する。
4. P/Sは、トランスフェクション後の培地については任意であり、使用者が指定する。
5. ろ過システムを用いるためには、BSCに入れる前に、真空装置(vacuum)およびstericupに70%エタノールをスプレーする。真空ポンプは2つの出口を有しており、チューブが出口で空気に接続されていることを確実にする。
6. 真空装置を電源にプラグ接続し、BSCにおいて電源がオンであることを確実にする。
7. stericupを滅菌包装から取り出し、真空ポンプのノズルをstericupに取り付ける。
8. 透明な蓋をstericupから取り外し、事前に調製された培地をstericupの上部に添加し、蓋をstericupに戻す。
9. ポンプの前面にあるスイッチを用いることによって、真空装置をオンにする。
10. 培地は次いでフィルターを通り抜けることになり、それがstericupを通過したら、ポンプをオフにして、ノズルをstericupから取り外す。
11. ねじる動作によりstericupの上部を取り外し、ろ過滅菌された培地を含有するstericupの下部の上に滅菌の蓋(青色)をねじる。完全に閉じるとカチッという音がする。
12. 培地の大量バッチ調製のためには、必要な場合に、培地を50/120 ml falconでアリコートに分ける前に、明確に標識付けされたstericupにおいて4℃で培地を保管する。培地は、4℃で7日よりも長くは保管できないことに注意する。
13. T細胞の培養のために0.1% IL-2(200 U/ml)を添加する。
14. IL-2を調製するためには、50μgの組換えヒトIL-2の凍結乾燥バイアル1つに2 mlの滅菌水を加え、混合し、500μlのアリコートに分割する。-20℃で保管する。
15. 解凍する間または使用前に、すべてのサイトカインおよび抗生物質(トランスフェクション後は任意)を氷上で保つ。
16. 使用後は、試薬を保管場所、例えば、-20℃または4℃に戻す。
17. 培地は、使用前に少なくとも15分間、37℃に設定されたウォーターバスを用いて温める。
18. ウォーターバスの温度を細胞培養テンプレートに記録する。
PBMC開始CD3+ T細胞培養培地の調製
Figure 2022535242000034
1. PBMC開始CD3+ T細胞用のTCGM完全培地を調製するために、CTS OptimizerサプリメントのフルボトルをCTS Optimizer培地のフルボトルに添加し、各々についてのロット番号を細胞培養テンプレートに記録する。
2. 上記の表におけるように、必要とされる体積のヒトAb血清およびPhysiologix血清を添加する。
3. 上記の表における8.3.のように、必要とされる体積のL-グルタミンを添加する。
4. 上記の表におけるように、必要とされる体積のHEPES緩衝液を添加する。
5. P/SおよびIL-2の添加前に、真空ろ過システムを用いて培地をろ過滅菌する。
6. ろ過システムを用いるためには、BSCに入れる前に、ろ過システムおよびstericupに70%エタノールをスプレーする。真空ポンプは2つの出口を有しており、チューブが出口で空気に接続されていることを確実にする。
7. ろ過システムを電源にプラグ接続し、BSCにおいて電源がオンであることを確実にする。
8. stericupを滅菌包装から取り出し、ろ過システムのノズルをstericupに取り付ける。
9. 透明な蓋をstericupから取り外し、事前に調製された培地をstericupの上部に添加し、蓋をstericupに戻す。
10. ろ過システムの前面にあるスイッチを用いることによって、ろ過システムをオンにする。
11. 培地は次いでフィルターを通り抜けることになり、それがstericupを通過したら、真空装置をオフにして、ノズルをstericupから取り外す。
12. ねじる動作によりstericupの上部を取り外し、ろ過滅菌された培地を含有するstericupの下部の上に滅菌の蓋(青色)をねじる。完全に閉じるとカチッという音がする。
13. 培地の大量バッチ調製のためには、必要な場合に、50/120 ml falconでアリコートに分けて調製する前に、ならびにP/SおよびIL-2の添加前に、明確に標識付けされたstericupにおいて4℃で培地を保管する。培地は、4℃で7日よりも長くは保管できないことに注意する。
14. T細胞の培養のためにIL-2(200 U/ml)を添加する。IL-2を調製するためには、50μgの組換えヒトIL-2の凍結乾燥バイアル1つに2 mlの滅菌水を加え、混合し、500μlのアリコートに分割する。-20℃で保管する。
15. 任意でトランスフェクション後に、P/S(10,000 U/ml)(50 mlの培地当たり250μl)を添加する。
16. 使用前に、培地を少なくとも15分間、37℃に設定されたウォーターバスを用いて温める。
細胞の解凍および活性化
1. CD3+ T細胞培地または完全TCGM培地を調製し、37℃に温める。
2. サプリメントのみを含有するCTS(商標) OpTmizer(商標) T Cell Expansion SFM(これが基本培地である)を調製し、37℃に温める。
3. ウォーターバスの温度を細胞培養テンプレートに記録する。
4. BSCにおいて、10 mlの予め温めた培地を含む1本の50 mlチューブを準備する(解凍する細胞のバイアル毎に10 ml)。
5. 液体窒素/-150℃フリーザーから、必要とされるバイアル/バッグを取り出す。(液体窒素または-150℃フリーザーを扱う間は、適切なPPEをすべて着用しなければならないことに注意する。)
5.1. PBMCの増殖におけるドナー間の変動性のために、PBMCの増大の程度の違いにより、3日目に必要なT細胞の数よりも多いPBMCを開始することが必要であり得る。この数は、新しいドナーを解凍する最初の数回、評価するべきである。
5.2. 活性化後のCD3+T細胞の喪失があるために、要求される細胞の数の少なくとも二倍を解凍して活性化することが必要である。
Figure 2022535242000035
6. 細胞バイアルを、氷の小片が残るまで時々穏やかに旋回させながら、37℃のウォーターバスにおいて解凍する(一度に2つ以下のバイアルを解凍する)。汚染のリスクであるため、バイアルの縁がウォーターバス由来の水に接触しないことを確実にする。
7. 「氷の小石」が見える時に、BSCに移動させ、バイアルに70% EtOHをスプレーして拭き取り、P1000ピペットを用いてcryovialに1 mlの温めた培地を、またはルアーロックシリンジを用いてcryobagに3 mlを加えることによって、培養培地において細胞を急速に希釈する。
8. バイアル/バッグの内容物を、falcon中の事前に調製された培地に加える。注意:DMSOは細胞に対して毒性であるため、解凍した細胞を、いずれかの長期の期間にわたって凍結混合物中に置くべきではない。
9. すべての細胞が回収されることを確実にするように、バイアルを別の1 mlの培地でリンスし、細胞を含有する同じfalconに移す。
10. falconを300×8.10.gで7分間、RTで遠心分離する。
11. 細胞ペレットを確認し、ペレットを乱さずに上清を除去して、廃棄ビーカーに捨てる。これは、注ぐことまたはストリップもしくはパスツールピペットを用いて除去することによって、行うことができる。
12. ペレットを培養培地に再懸濁して、1×10 6 /mlよりも大きい細胞密度にする(通常、CD3+ T細胞バイアルについては10 ml、PBMCバイアルについては20 ml、バッグについては30 ml)。
13. Via-1カセットを用いて、細胞を計数する。(WI-6 NC-3000 NucleoCounter Operation & Maintenanceまたは以下の概要を参照されたい。)
13.1. 細胞を計数するために、50μlの細胞懸濁液を取り、Eppendorfにおいて150μlの培地で希釈して、200μlの最終体積にする。
13.2. Via-1カセットおよびNucleocounterを用いて、細胞を計数する - ソフトウェア上での希釈を含む(すなわち、試料ボックスに「50」、希釈ボックスに「150」と入力する - Nucleocounterが希釈係数を計算する)。
13.3. ソフトウェア上のゲートを視覚的に検査し、必要な場合には、細胞の本体を含むように変更して、細胞の生存率および濃度(細胞/ml)およびサイズを、細胞培養テンプレートに記録する。
14. 総細胞数を計算し、すべての計算および細胞数を細胞培養テンプレートに記録する。
15. 細胞を、適切に標識付けされた細胞培養フラスコまたはバッグに、1×10 6 /mlの密度で播種する。
Figure 2022535242000036
16. CD3+ T細胞については、TCフラスコをインキュベーターにおいて直立させて置く。
16.1. CD3+ T細胞については、活性化工程に移る前に少なくとも4時間、解凍プロセス後に37℃インキュベーターにおいて細胞を休ませる。
16.2. CD3+ T細胞を活性化するためには、2:1の比のCTS Grade Dynabeads:細胞を添加する(100万細胞当たり5μl)。
16.2.1. 例えば、100×106細胞について、500μlのCTS Dynabeadsを細胞に加え、フラスコを穏やかに旋回させて、DynabeadsがTCフラスコ中の全細胞集団の間に均等に分布することを確実にする。
16.3. 細胞が実験的使用に必要とされるまで、細胞をインキュベーターに戻して、直立させて置く。
16.4. 別段の明記がない限り、活性化の19時間後に実験的使用のために細胞を調製する。
17. PBMCを、解凍直後に、可溶性のCD3 pure機能グレード、ヒト(クローン:OKT3)およびCD28 pure機能グレード、ヒト(クローン:15E8)抗体で活性化する。
18. CD3抗体およびCD28抗体が4℃のままであることを確実にし、活性化の時まで氷上で保管する。
19. CD3抗体およびCD28抗体が、最初に開封された時から1ヶ月以内の日付であり、色で標識付けされ、かつ使用者のイニシャルを含有することを確実にする。開封時に、日付および使用者のイニシャルをバイアルに書かなければならない。すべての使用者は、CD3抗体およびCD28抗体の自分自身のセットを有していなければならない。使用者の間での共有は許可されない。
20. CD3およびCD28のロット番号および有効期限日を細胞培養テンプレートに記録する。
20.1. 1×のPBMC活性化のためには、100万細胞当たり各々0.5μlのCD3抗体およびCD28抗体を添加する。
20.1.1. 例えば、100×10 6 PBMCの1×の活性化のためには、50μlのCD3抗体および50μlのCD28抗体をfalconの細胞に加え、50 mlチューブを穏やかに反転させて、抗体が全細胞集団の間に均等に分布することを確実にする。
20.2. 2×のPBMC活性化のためには、100万細胞当たり各々1μlのCD3抗体およびCD28抗体を添加する。
20.3. 開始のために、細胞を、適切に標識付けされたT75フラスコ中に播種する。
20.4. フラスコを、インキュベーターに横にして(水平に)穏やかに置く。
20.5. 細胞は、約72~96時間、乱さないようにしておくべきである。
20.6. 細胞は、開始の72時間後に「薄片状に」または「雪のように」見えるようになる。
20.7. PBMCの健常な塊の出現について、常に顕微鏡下で細胞を調べる。
実験的使用のためのCD3+ T細胞の調製
1. 活性化の19時間後に、CD3+ T細胞を含有するフラスコをインキュベーターからBSCに取り出す。
2. 細胞-Dynabead懸濁液をstripetteで穏やかに撹拌し、50 ml falconチューブに移す。
3. フラスコを5 mlの培地で洗浄し、同じfalconチューブに移す。
4. falconチューブをよくボルテックスし、50 ml磁石に置く。
5. 2分待つ。
6. 25 ml stripetteを用いて、falconの端に触らずに、5 mlのマークまで注意深くピペットを下げて、培地のほとんどを集める。この培地は、ビーズ除去された(de-beaded)細胞を含有しており、新しい標識付けされたsterilinにこれを集める。
7. ビーズを乱すことを避けるように、およそ5 mlの培地を、falconの底に残す。
8. falconチューブを磁石から取り外し、さらに5 mlの培地を加えて再び混合する。
8.9.
9. 50 ml磁石におけるfalconチューブのインキュベーションおよび培地の収集を繰り返す(工程5~9)。
10. 2回目に50 ml falconを磁石から取り外す。
11. P1000ピペットを使用し、falconチューブの底に残っている培地を用いてdynabeadsを集める。
12. ビーズを含有するこの培地を1.5 ml Eppendorf中に入れ、Eppendorf(小)磁石に2分間置く。
13. 培地を取り出し、ピペットでsterilinに移す。
14. 1 mlの培地をEppendorfに加え、混合して洗浄する。Eppendorf磁石に加え、上清をsterilinに取り出す。
15. ビーズを含有するEppendorfを捨てる。
16. 細胞を含有するsterilinを、300×gで7分間遠心分離する。
17. 予想される細胞数/mlが、50×106細胞よりも少ない場合は、細胞を10 mlの新鮮な培地に再懸濁する。再懸濁する時は、常にP1000を最初に用いて、細胞ペレットを破壊する。
18. 予想される細胞数/8.18. mlが、100×106細胞よりも多い場合は、細胞を20 mlの新鮮な培地に再懸濁する。
19. eppendorfにおいて、50μlの細胞懸濁液を150μlの培地に添加することによって細胞の希釈液を調製し、これを、Via-1カセットを用いて計数する。精度を上げるために、すべての計数を二つ組で行うべきである。
20. ビーズ除去(de-bead)後の細胞数/ml、細胞生存率、および細胞サイズを、細胞培養テンプレートに記録する。
21. 実験に必要とされる細胞懸濁液の総細胞数/mlおよび体積を計算する。
21.1. 例えば、細胞計数時に、20 mlにおいて4×106細胞/mlであり、総細胞数は80×106である。10 mlのアリコート中の20×106での2パラメータが望ましい。
21.2. 必要である/有している=20×106/4×106=5×2.5パラメータ=12.5 mlの細胞懸濁液から12.5 mlのCTS OpTmizer培地+サプリメント。これは、マスターミックスであり、常に条件の0.5を余分に構成する。例えば、2パラメータがある場合は、常に2.5倍を構成し、したがって、20 mlを必要とする場合は25 mlの最終体積である。これにより、ピペッティングエラーが許容される。
22. 細胞懸濁液(P5000を用いて添加される)およびCTS OpTmizer培地+サプリメントを含有する細胞マスターミックスを、120 ml falconまたは500 ml falcon(所望の体積に依存する)のいずれかにおいて調製し、反転によって穏やかに混合し、精度のためにP5000またはP10000ピペットを用いて、白色キャップ30 mlチューブに10 mlの細胞懸濁液をアリコートに分ける。3チューブ毎にアリコートに分けた後、マスターミックスを閉じて数回反転させ、均質な細胞懸濁液が維持されることを確実にする。
23. 30 mlの白色キャップsterlinに、実験番号、ドナー番号、細胞数、および試料を調製した人のイニシャルが明確に標識付けされていることを確実にする。
24. 無処理の細胞試料については、細胞が、CTS OpTmizer培地+サプリメントではなく、CD3+ T細胞完全培地を含有するT25 TCフラスコにおいて調製されることを確実にする。UT細胞は、0.5×106/ml、すなわち20 ml中10×106細胞での実験播種後1日目に良好な生存率を確実にするように、指数関数的に成長している。
実験的使用のためのPBMC開始CD3+ T細胞の調製
1. 開始の72時間(3日)後に、PBMC開始CD3+ T細胞のT75フラスコをインキュベーターからBSCに取り出す。集塊について視覚的に観察し、これが、妥当に開始している細胞の徴候である。
2. 細胞懸濁液を、50 ml遠心分離用falconに移す。
3. 細胞を含有する50 ml falconを、300×gで7分間遠心分離する。
4. 最初に細胞ペレットを破壊するようにP1000を用いて、細胞を20~50 mlの新鮮な予め温めた培地に再懸濁する。50×106個未満の細胞が予想される場合は20 mlを、100×106個を上回る場合は50 mlを用いる。
5. eppendorfにおいて、50μlの細胞懸濁液を150μlの培地に添加することによって細胞の希釈液を調製し、細胞を、Via-1カセットを用いて計数する(WI-6 NC-3000 NucleoCounter Operation & Maintenanceを参照する)。
6. PBMCが活性化され、開始していることを確実にするために、細胞を、フローサイトメトリー解析用にCD3(T細胞純度)抗体およびCD25(T細胞活性化)抗体で染色する。この染色をフローサイトメーターで完全に解析する前には、細胞を実験的使用のために放出することができない。
6.1. CD3およびCD25の発現について染色するために、1×106細胞に必要とされる細胞懸濁液の体積を計算する。
6.2. 1×106細胞を与える細胞の体積を取り出し、1.5 ml eppendorfに移して、300×gで5分間遠心分離する。
6.3. 遠心分離後に、細胞上清を除去し、細胞ペレットを100μlのFACs緩衝液に再懸濁する。
6.4. フローサイトメトリー解析用の蛍光補正設定を最適化するために、CD25抗体およびCD3抗体についての染色時に、補正ビーズを用いる。
6.4.1. 以下のようにCD25抗体およびCD3抗体の両方について補正ビーズを調製する。
6.4.1.1. 2本の1.5 ml eppendorfチューブにCD25 compおよびCD3 compと標識付けする。
6.1.1.2. ボルテックスすることによって補正ビーズを混合する。1滴の補正ビーズを各チューブに加え、次いで、0.5μlのCD25抗体またはCD3抗体を適切なチューブに加える。
6.5. 補正ビーズを調製したら、5μlのCD25抗体およびCD3抗体の両方を、1×106細胞を含有するeppendorfに加える。
6.6. 細胞を抗体と、4度で10分間インキュベートする。
6.7. 10分後に、1 mlのFACs緩衝液を加えることによって細胞を洗浄し、300×gで5分間遠心分離する。
6.8. 遠心分離後に、細胞上清を捨て、細胞ペレットを100μlのFACs緩衝液に再懸濁する。
6.9. フローサイトメトリーを用いて、ビーズ試料および細胞試料の両方について10,000イベントを取得することにより、CD25およびCD3の発現を解析する。
6.9.1. 細胞試料の前に補正ビーズ試料を取得する。
7. 細胞試料が、フローサイトメーターでのCD25+染色およびCD3+染色の両方について>90%をもたらす場合には、細胞を実験的使用のために放出する。
8. 細胞試料が、フローサイトメーターでのCD25+染色およびCD3+染色の両方で<90%をもたらす場合には、最終使用者に通知し、別段の指示がない限り、細胞を実験的使用のために放出しない。
9. 放出について確認されたら、nucleocounter計数に基づいて、実験に必要とされる細胞懸濁液の総細胞数/mlおよび体積を計算する。精度を上げるために、すべての計数を二つ組で行うべきである。(これらの計算は、フローインキュベーション中に行うべきであるが、細胞が実験的放出のためのQCに合格するまで、細胞を調製しない)。
9.1. 例えば、細胞計数時に、20 mlにおいて4×106細胞/mlであり、総細胞数は80×106である。10 mlのアリコート中の20×106での2パラメータが望ましい。
9.2. 必要である/有している=20×106/4×106=5×2.5パラメータ=12.5 mlの細胞懸濁液から12.5 mlのCTS OpTmizer培地+サプリメント。これは、マスターミックスであり、常に条件の0.5を余分に構成する。例えば、2パラメータがある場合は、常に2.5倍を構成し、したがって、20 mlを必要とする場合は25 mlの最終体積である。これにより、ピペッティングエラーが許容される。
10. 細胞懸濁液(P5000を用いて添加される)およびCTS OpTmizer培地+サプリメントを含有する細胞マスターミックスを、120 ml falconまたは500 ml falcon(所望の体積に依存する)のいずれかにおいて調製し、反転によって穏やかに混合し、精度のためにP5000またはP10000ピペットを用いて、白色キャップ30 mlチューブに10 mlの細胞懸濁液をアリコートに分ける。3チューブ毎にアリコートに分けた後、マスターミックスを閉じて数回反転させ、均質な細胞懸濁液が維持されることを確実にする。
11. 30 mlの白色キャップsterlinに、実験番号、ドナー番号、細胞数、および試料を調製した人のイニシャルが明確に標識付けされていることを確実にする。
12. 無処理の細胞試料については、細胞が、CTS OpTmizer培地+サプリメントではなく、TCGM完全培地を含有するT25 TCフラスコにおいて調製されることを確実にする。UT細胞は、0.5×106/ml、すなわち20 ml中10×106細胞での実験播種後1日目に良好な生存率を確実にするように、指数関数的に成長している。
実施例9:LV-eGFP(高感度GFP)ベクター
eGFPを有するLV発現プラスミドベクターのマップを、本明細書において図48に提供する。
実施例10:ウイルス感染後のGFPの組込み
ddPCRを用いて、細胞当たりのGFPの組み込まれたコピーの数を調べた。
感染の3日後および4日後に、200 uLの細胞を、96ウェルV底プレートに集めた。遠心分離および上清の除去の後に、細胞を、50 uLの1×インハウス細胞溶解緩衝液で20分間、RTで溶解し、その後、PCRプレートに移した。細胞を、サーモサイクラーにおいて56Cで15分間および10分間インキュベートした。次いで、溶解物を水で20倍に希釈し、GFP%を決定するようにAlb/WPREプライマーで行った。
実験1についての、2アルブミン当たりのWPREに基づく細胞当たりのGFPの推定コピー数(GFP%)(図49および図50を参照されたい)。
結果は、静置形質導入と比較してSOLUPORE(商標)プロセスを用いて、GFP組込みの有意な増加が達成されたことを示す(3日目および4日目の両方)(図49および図50を参照されたい)。
実施例11:ウイルス感染プロセスおよび液滴の特性
トランスフェクションチャンバー内でのレンチウイルスの噴霧化は、SOLUPORE(商標)プロセスとは別個のプロセスである。本明細書に記載されるように、細胞の集団に送達されるカーゴは、生物学的に活性を有し、かつ生存可能であるウイルス(例えば、レンチウイルス)である。
レンチウイルスの典型的な力価は、ミリリットル当たり106~107の形質導入単位(TU/ml)の範囲であり、これらの濃度でのレンチウイルスの粘稠度は、水/エタノール混合物に比べて高度に、動的に粘性である。例証のために、(表1)室温での水の動的粘度は1 mPa sに近く、エタノールの動的粘度は0.1 mPa sに近く、オリーブ油の動的粘度は60 0.1 mPa sに近く、ヒマシ油の動的粘度は600 0.1 mPa sに近い。レンチウイルスの動的粘度は、Tran, Reginald, PhD Thesis, Georgia Tech (2016)によって6913 mPasと報告されており、ヒマシ油よりも1ログ粘性であるのに近い。滅菌ろ過された1%ウシ血清アルブミン(BSA)は、ウイルス粒子が注射装置に「固着する」ことをもたらし得る分子相互作用を減少させることが、何人かによって見出されている(その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Jasnow A. et al. Methods Mol Biol. "Construction of Cell-Type Specific Promoter Lentiviruses for Optically Guiding Electrophysiological Recordings and for Targeted Gene Delivery" 2009; 515: 199-213)。
動的粘度は、噴霧化における重要な因子である。広い範囲の液体粘度、ガス供給圧力、およびガス対液体質量比(GLR)にわたる、SOLUPORE(商標)プロセスにおいて用いられるような、内部混合二流体噴霧器における噴霧化についての実験研究が、行われている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Li, Z. et al. "Effect of liquid viscosity on atomization in an internal-mixing twin-fluid atomizer" Fuel vol. 103; Jan 2013 pages 486-494を参照されたい。すべての試験条件の中で、最も細かいスプレーは、150 mmの軸方向距離で得られた。しかし、粘度が120 mPa sに増加すると、液滴サイズの分布は、著しく変化した。より高い粘度の液滴は、より大きい液滴を生じた(例えば、SOLUPORE(商標)処理された、測定された液滴サイズ分布によって生じた、現在の液滴よりも1~2ログ大きい、図51)。より大きい液滴は、液滴集団(分布)の大きい割合に相当し、スプレー軸に沿った液滴速度の減衰は、より大きな粘度でより強かった。
一般的な液体の動的粘度を示す表を、以下に示す(かつ図52にグラフを提供する)。
温度300 Kでのいくつかの一般的な液体の絶対粘度または動的粘度を以下に示す。
Figure 2022535242000037
SOLUPORE(商標)プロセス内でのレンチウイルスの噴霧化は、より大きい、よりゆっくりと移動する液滴を生じ、下の細胞の層の経験は、以前に記載されたSOLUPORE(商標)プロセスとは異なると結論付けることができる。結果的に、この噴霧化プロセスは、驚くべきかつ予想外の観察である、30%に近いトランスフェクションレベルを結果としてもたらした。
ウイルス感染プロセス
水の動的粘度は、1 mPa s(ミリパスカル秒)に近い。エタノール/水混合物の動的粘度もまた、1 mPa sに近い。5~30%のエタノール濃度を含むことができる水溶液の動的粘度。水溶液は、75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)のうちの1つまたは複数を含むことができ、粘度は2 mPa sの領域である。
力価107~108 TU/mLのレンチウイルスの動的粘度は、6913 mPa sに近い。流体の粘度が増加するにつれて、与えられたスプレー圧力、例えば1.7バールで、スプレーされた時に、より大きい液滴を形成する傾向がある。より小さい液滴からなるスプレーは、より大きい液滴から構成されるスプレーよりもずっと大きい、体積当たりの表面積を有する。さらに、液滴は、水よりも低い表面張力を有し、したがって、液滴はさらに大きくなる。次に、細胞は、まったく異なるプロセスを経験する。それ自体で、より細かいスプレーは、それらの標的表面の上により良好に広がることができる。この効果は、10 mPa sよりも下の粘度を有する流体については比較的小さいが、より高い動的粘度ではより顕著になる。水または水/エタノール混合物よりも高い動的粘度を有する流体は、任意の与えられた流速および圧力に対して、より高い平均液滴サイズを有することになる。流体の機械的特性の間の関係は、以下の一般的に受け入れられている式によって計算することができる。
Figure 2022535242000038
式中、
Df=当該流体についての修正された液滴サイズ、
Dw=水についての計算された液滴サイズ、
Vf=流体の粘度(mPa sにおける粘度;水=1.0 mPA s、レンチウイルスは6913 mPa s)。
方程式[1]から、水/エタノール混合物と同じ圧力および流動条件下でスプレーされたレンチウイルスの液滴(例えば、ウイルスと、5~30%のエタノール濃度と、75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)のうちの1つまたは複数とを含む、ある体積の水溶液を含む液滴)は、水/エタノール液滴よりも5.9倍大きいのに近い液滴サイズを有すると計算することができる。国際出願WO 2016/065341(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、直径が30μm~100μmおよび50μm~80μmのサイズ範囲の液滴が記載された。概して、本明細書に記載される方法において、スプレーされる水溶液がウイルス(例えば、レンチウイルス)を含む場合には、液滴サイズ範囲は、直径が約150μm~600μm、または直径が約177μm~590μmである。他の例において、液滴の直径サイズは、200μm~600μm、または約300μm~600μm、または約400μm~600μm、または約500μm~600μmである。他の例において、本明細書における本発明の液滴サイズは、600μmよりも大きく、例えば、直径が約600μm~1000μm、または約600μm~900μm、または約600μm~800μm、または直径が約600μm~700μmであり得る。いくつかの例において、液滴サイズは、最大で1000μm、例えば、150μm~1000μmの直径を特徴とし得る。
これらの液滴は、「作製されたコロイド液滴の一部は、所与の細胞内送達適用には大きすぎ得る。作製されたコロイド液滴の一部が大きすぎるため、適切なサイズのコロイド液滴の作製にもかかわらず、細胞死が起こる可能性がある。」、WO 2016/065341において予想されているかまたは記載されているものよりもずっと大きい。WO 2016/065341の段落[0172]を参照されたい。したがって、細胞(例えば、ウイルスを含む水溶液と接触した細胞)が、WO 2016/065341に記載されているSOLUPRE(商標)プロセスと比較して、そのような異なるプロセスに耐容性を示したこと、および細胞がレンチウイルスに感染し、生存可能であったことは、予想外かつ驚くべきことであった。
液滴サイズの特性
本明細書に記載される本発明のより大きい直径の液滴は、より大きい体積および重量を有し、よりゆっくりと移動し、かつより大きい力で細胞層に衝撃を与える。例えば、直径が5.9倍に増加すると、液滴の体積は206.8倍近くに増加する。したがって、このシステムの流体力学は、WO 2016/065341を参照して説明されているものとは別個であり、新たなウイルス感染プロセスを構成する。
他の態様
本発明が、その詳細な説明と併せて記載されてきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される、本発明の範囲を例証する、かつ限定しないように意図される。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲内である。
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者が利用可能である知識を確立する。本明細書において引用されるすべての米国特許および公開されたかまたは公開されていない米国特許出願は、参照により組み入れられる。本明細書において引用されるすべての公開された外国の特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書において引用されるすべての他の公開された参考文献、文書、原稿、および科学文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
本発明が、特に、その好ましい態様に関して示され、説明されてきたが、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細において様々な変更がその中でなされてもよいことが、当業者により理解される。

Claims (20)

  1. 以下の段階を含む、細胞の形質膜を横切ってウイルスを送達する方法:
    細胞の集団を提供する段階、および
    細胞の該集団をある体積の等張水溶液と接触させる段階であって、該溶液が、該ウイルスと、2%よりも高い濃度のアルコールとを含み、細胞の該集団を該体積の水溶液と接触させる段階が、スプレーを形成するように該水溶液をガスで噴射することによって行われ、該スプレーが、150μm超または150μmの直径を含む液滴を含む、該段階。
  2. 前記スプレーが、177μm~590μmの範囲の直径を含む液滴を含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記ウイルスが、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、または単純ヘルペスウイルス(HSV)を含む、請求項1記載の方法。
  4. 前記ウイルスがレンチウイルスである、請求項1記載の方法。
  5. 細胞の前記集団が哺乳動物細胞を含む、請求項1記載の方法。
  6. 細胞の前記集団が接着細胞または浮遊細胞を含む、請求項1記載の方法。
  7. 細胞の前記集団が非接着細胞を含む、請求項6記載の方法。
  8. 前記非接着細胞がTリンパ球を含む、請求項7記載の方法。
  9. 形質導入効率が、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%である、請求項3記載の方法。
  10. 細胞の前記集団が、HEK293細胞、HEK293T細胞、Lenti-x 293T細胞、またはHEK293F細胞を含む、請求項6記載の方法。
  11. 細胞の前記集団がナチュラルキラー細胞を含む、請求項1記載の方法。
  12. 前記アルコールがエタノールを含む、請求項1記載の方法。
  13. 前記水溶液が、2%よりも多いエタノールを含む、請求項1記載の方法。
  14. 前記水溶液が、10%よりも多いエタノールを含む、請求項1記載の方法。
  15. 前記水溶液が、20~30%のエタノールを含む、請求項1記載の方法。
  16. 前記水溶液が、5~30%のエタノール濃度を含む、請求項1記載の方法。
  17. 前記水溶液が、以下の構成要素のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項1記載の方法:75~98%のH2O、2~45%のエタノール、6~91 mMのスクロース、2~35 mMのKCl、2~35 mMの酢酸アンモニウム、および1~14 mMの(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)(HEPES)。
  18. 前記水溶液が、スクロース32.5 mM、KCl 106 mM、Hepes 5 mM、およびエタノール12% v/vを含む、請求項1記載の方法。
  19. 細胞の前記集団が、基質上の非接着細胞の層を含む、請求項1記載の方法。
  20. 前記層がメンブレンフィルター上に存在する、請求項1記載の方法。
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