JP2022533545A - Asx特異的タンパク質リガーゼおよびその使用 - Google Patents

Asx特異的タンパク質リガーゼおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、酵素技術の技術分野にあり、具体的にはAsx特異的リガーゼおよびシクラーゼ活性を有する酵素、ならびにこれらをコードする核酸、ならびに前記酵素を製造する方法に関する。Asx特異的リガーゼおよびシクラーゼを有する酵素は、スミレ科(Violaceae)の植物から単離される。これらの酵素の方法および使用がさらに包含される。

Description

本発明は、酵素技術の技術分野にあり、具体的にはAsx特異的リガーゼおよびシクラーゼ活性を有する酵素、ならびにこれらをコードする核酸、ならびに前記酵素を製造する方法に関する。これらの酵素の方法および使用がさらに包含される。
ペプチドおよびタンパク質のヘッドトゥーテールの大環状化は、構造を制約し、タンパク質分解に対する代謝安定性を増強するための戦略として使用されてきた。加えて、制約された大環状コンフォメーションはまた、薬理活性および経口バイオアベイラビリティーを改善し得る。ほとんどのペプチドおよびタンパク質は直鎖として生成されるものの、6~78残基の範囲の環状ペプチドが、多様な生物において天然に存在する。これらの環状ペプチドは通常、熱変性およびタンパク質分解に対する高い耐性を表し、サイトカイン、ヒスタチン、ユビキチンC末端ヒドロラーゼ、コノトキシンおよびブラジキニングラフトシクロチドの環化における近年の成功によって実証されるように、タンパク質工学における新たな傾向に刺激を与えている。さらに、バリノマイシン、グラミシジンSおよびシクロスポリンを含む環状ペプチドは、治療薬として使用されている。
現在まで、ペプチドの環化には化学的方法が典型的に使用されている。1つの可能な戦略は、ネイティブ・ケミカル・ライゲーションである。この方法は、N末端システインおよびC末端チオエステルを必要とし、この要件によって非システイン含有ペプチドへの適用が制限される。さらに、化学的方法は、特に大型ペプチドおよびタンパク質のために常に実行可能であるわけではない。
天然シクラーゼを利用する酵素的方法が理想的であろうが、現在、ごく少数のシクラーゼしか知られておらず、これらは様々な理由のために十分には活用されていない。
シクロチド産生植物クリトリア・テルナテア(Clitoria ternatea)由来の新規なシクラーゼ、ブテラーゼ-1の近年の発見は、特有のタイプのアスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)がシクロチドの直鎖前駆体を環化するプロセシング酵素であることを証明した(非特許文献1)。AEP(またはレグマイン)は、クランCDのサブファミリーC13に属するシステインプロテアーゼ(EC3.4.22.34)である。ヒドロラーゼであるAEPと比較して、ブテラーゼ-1は、AEPの酵素方向性を逆転させ、アミノリシスを強力に促進してペプチド結合形成を触媒する。バイオアッセイは、ブテラーゼ-1がシクラーゼであるだけでなく、現在までの報告最高触媒効率1,340,000M-1-1で、Asn/AspとProを除く任意のアミノ酸との間でペプチド結合を形成することによって生体分子をライゲーションすることができる効率的なペプチドリガーゼでもあることを示す。ブテラーゼ-1は、タンパク質およびペプチドのライゲーション、修飾、環化、タグ付けおよび生細胞標識のための多用途のタンパク質工学ツールであり、特許文献1に、その使用を含めて詳細に記載されている。このようなブテラーゼ-1様ペプチドリガーゼは、ペプチドアスパラギニルリガーゼ(PAL)と称され、結合特異的および部位特異的タンパク質修飾ならびに抗体-薬物複合体などのバイオ医薬品の正確なバイオマニュファクチャリングのための有用な生化学的および生物工学的ツールである。
AEPおよびPALは、一般的に約10kDaのプロドメインと、5つのα-ヘリックスによって囲まれた6つのβ-ストランドによって形成される活性のある約32kDaコアドメインと、6つの密接に結合したヘリックスによって形成される15kDaのC末端キャップドメインとからなるプロ酵素として発現される。AEPとPALの両方が、自己分解成熟のための酸性pHでの固有のプロテアーゼ活性を表す。これらの生合成プロセシングは類似であり、リソソームおよび分解液胞などの酸性細胞内区画中での自己分解活性化を伴う。インビトロでは、活性化が通常、pH4~5で実施される。酸性活性化後の主な構造変化は、C末端キャップドメインの切断および解離であり、これにより、コアドメインの触媒部位が露出する。キャップドメインとコアドメインの再ライゲーションが、両ドメインが切断後にインタクトなままであり、近接している場合に、中性付近のpHで報告されている。
植物AEPは、液胞の酸性環境中で誘因されるそのタンパク質分解活性を介して、タンパク質分解、成熟、プログラム細胞死および宿主防御において重要な役割を果たす。ブテラーゼ2、OaAEP2およびHaAEP1(ヒマワリである、ヘリアンサス・アンヌス(Helianthus annuus))などのAEPは、中性pHでさえ優勢にプロテアーゼ活性を表示し、比較的低レベルのリガーゼ活性を有する。一定のAEPは、中性付近のpH(6~7.5)でAEP認識シグナルを保有するペプチド基質からのライゲーション生成物と加水分解生成物の両方を触媒する。ごくまれに、AEPは、環状置換を媒介することによって、例えばコンカナバリンAの成熟において、ペプチド結合の破壊と形成の両方を含むペプチドスプライシングを媒介する。これらの「二機能性」または「優勢」AEPと対照的に、PAL、例えばブテラーゼ1およびOaAEP1bは、中性付近のpHで任意の加水分解性生成物を本質的に欠くライゲーション生成物の形成を触媒し、これらのライゲーション活性は、穏やかな酸性条件(pH6未満)下でさえ圧倒的である。
現在、ごく一握りのこのようなPALが同定されている。これらには、プロトタイプPALブテラーゼ-1、そのうえその後の発見であるブテラーゼ-1様酵素、それぞれ他のシクロチド産生植物オルデンランディア・アフィニス(Oldenlandia affinis)およびヒバンサス・エンネアスペルムス(Hybanthus enneaspermus)から同定されたOaAEP1b(非特許文献2)およびHeAEP3(非特許文献3)が含まれる。
現在まで、AEPとPALを区別する分子機構は知られていない。プロ酵素と活性形態の両方を含む、いくつかの植物AEP結晶構造の公開にもかかわらず、プロテアーゼまたはリガーゼとしてのそれらの性質を支える構造決定因子はまだ未解明である。両極端の酵素は、r.m.s.dが1Å未満で同じ構造を有する(例えば、OaAEP1bおよびHaAEP1)。
国際公開第2015/163818号
グエン・ジーケーティーら(Nguyen GKT,et al.)(2014)Nat Chem Biol 10(9):732-738) ハリス・ケーエスら(Harris KS,et al.)(2015)Nat Commun 6(1):10199 ジャクソン・エムエーら(Jackson MA,et al.)(2018)Nat Commun 9(1):241123
リガーゼ/シクラーゼ活性は大いに望ましく、ペプチドライゲーションおよび環化のための分子ツールとして確実に使用することができる新規なリガーゼ/シクラーゼが当技術分野で必要とされているから、PALおよびAEPの酵素方向性を制御する決定因子を同定することは、具体的なニーズにこれらの酵素を計画的に適合させる機会を提供するので、役立つであろう。
本発明の発明者らは、AEPおよびPALの酵素活性が、触媒中心付近の重要な位置の微妙な差異によって制御されることを見出した。これらの位置での変更は、水分子(加水分解をもたらす)および入ってくる求核剤(ライゲーションをもたらす)のS-アセチル酵素中間体へのアクセスを制御する。2種のシクロチド産生植物ノジスミレ(Viola yedoensis)(変種フィリピカ(var.phillipica))およびヴィオラ・カナデンシス(Viola canadensis)由来の一連の推定上のAEPおよびPALを試験することによって、ならびにリガーゼ触媒活性を担う分子機構を調査するために組換え酵素を使用することによって、2つの推定上のリガーゼ活性決定因子(LAD)を同定することができ、構造比較、MDシミュレーションおよび部位特異的変異誘発によって検証することができた。これらの結果は、AEPのPALへの変換を可能にする分子機構を説明し、新たなリガーゼの発見および操作のための有用なツールを提供する。これらの試験の過程で、効率的な組換え発現を可能にし、高い環化活性を示すさらなる有用なPALが同定された。
よって、第1の態様では、本発明は、タンパク質リガーゼ活性、好ましくはシクラーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列;または
(iv)(i)~(iii)のいずれか1つの断片
を含むか、またはからなる、単離ポリペプチドに関する。
配列番号1からなるポリペプチドは、本明細書で「VyPAL2」または「VyPAL2活性形態/ドメイン」とも呼ばれる。
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を含有するベクター、特にコピーベクターまたは発現ベクターに関する。
さらなる態様では、本発明はまた、本明細書で企図される核酸または本明細書で企図されるベクターを含有する宿主細胞、好ましくは非ヒト宿主細胞に向けられる。宿主細胞は、Sf9(ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda))細胞などの昆虫細胞であり得る。
本発明のなおさらなる態様は、本明細書で企図される宿主細胞を培養する工程と;培養培地または宿主細胞からポリペプチドを単離する工程とを備える、本明細書に記載されるポリペプチドを製造する方法である。
なおさらなる態様では、本発明は、タンパク質ライゲーションのための、特に1つまたは複数のペプチドを環化するための本明細書に記載されるポリペプチドの使用に関する。
なお別の態様では、本発明は、ペプチドを環化する方法であって、ペプチドを、前記ペプチドの環化を可能にする条件下で、本発明の使用に関連して上に記載されるポリペプチドと共にインキュベーションする工程を備える、方法に関する。
なおさらなる態様では、本発明は、少なくとも2つのペプチドをライゲーションする方法であって、ペプチドを、前記ペプチドのライゲーションを可能にする条件下で、本発明の使用に関連して上に記載されるポリペプチドと共にインキュベーションする工程を備える、方法に関する。
別の態様では、本発明は、本発明の単離ポリペプチドが固定化される固体支持体材料、ならびにその使用およびこのような基質を使用する方法に関する。
別の態様では、本発明はまた、本明細書に記載されるタンパク質リガーゼおよび/またはシクラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を含む、植物などのトランスジェニック生物を包含する。ポリペプチドは、好ましくは前記生物中に天然に存在しない。したがって、本発明はまた、本発明による異種ポリペプチドを発現する、植物などのトランスジェニック生物を特徴とする。
なお別の態様では、本発明はまた、アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドのタンパク質リガーゼ活性を増加させる方法であって、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基をAまたはGのいずれかの残基で置換する工程を備える方法を包含する。これらの実施形態では、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基が、126/127位の配列がGAまたはAPまたはAA、好ましくはGAまたはAPのいずれかとなるように選択され得る。配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸がGである場合、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸がPではないことが好ましい。
なおさらなる態様では、本発明はまた、タンパク質リガーゼ活性を有するポリペプチドを生成する方法であって、
(i)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドを提供する工程と;
(ii)1つまたは複数のアミノ酸置換をアスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドに導入する工程であって、前記置換は、配列番号1の126/127位に対応する位置のアミノ酸配列がGA、AAまたはAP、好ましくはGAまたはAPのいずれかとなるように、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基をAまたはG残基で置換すること、および任意選択で配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基をPまたはAのいずれかの残基で置換することを含む、工程と
を備える、方法に向けられる。
組換えVyPAL1~3およびVyAEP1の酵素活性を示す図。(A)GN14-SL(配列番号59)のリガーゼ媒介環化の反応スキーム。(B)異なる反応pH値下でのVyPAL2媒介環化の分析HPLCおよびMALDI-TOF質量分析データ。:ラセミ化合成GN14-SL。MALDI-TOF MSが、直鎖種よりも環状cGN14に対する感受性が高かったことに留意されたい。(C)RP-HPLCを使用して分析した各酵素の生成物比および反応収率の定量的要約。各反応について、精製活性酵素:GN14-SL=1:500のモル比を混合し、37℃で10分間反応させた。平均収率およびエラーバーを、3連で実施した実験から計算した。 (A)配列番号48および59~77に記載のVyおよびCtシクロチドに由来する変性天然認識モチーフを保有する基質に対するVyPAL2の基質特異性を示す図。(B)P1’位に20の異なるアミノ酸を有する基質(X=20AA;配列番号78)に対するVyPAL2の基質特異性を示す図。(C)P2’位に20の異なるアミノ酸を有する基質(配列番号79)に対するVyPAL2の基質特異性を示す図。全ての反応は、活性VyPAL基質=1:500のモル比で、pH6.5、37℃で10分間実施した。収率は、RP-HPLCを使用して定量的に分析した。 VyPAL2およびブテラーゼ1の酵素速度論を示す図。ペプチド基質:GISTKSIPPISYRNSLAN(配列番号60)を使用したHPLCに基づく速度論試験。ある量の50nM精製活性VyPAL2(または植物から抽出したブテラーゼ1(15))を各反応に使用した。各時点の環化生成物の量を、分析RP-HPLCを使用して決定した。3回の反復実験の平均初期速度(V)をミカエリス・メンテン曲線プロットに使用した。 VyPAL3のS1’ポケットにおけるレトロエンジニアリング実験を描く図。全ての反応をpH範囲4.5~8.0で実施した。加水分解生成物GN14(配列番号48)のMSピークに破線で印をつける。(A)VyPAL3野生型によって触媒された反応のMS分析。(B)VyPAL3-Y175Gによって触媒された反応のMSスペクトル。(C)VyPAL3およびVyPAL3-Y175Gによって触媒された反応のHPLCプロファイル。(D)VyPAL3-Y175GについてのRP-HPLCを使用して分析した生成物比および反応収率の定量的要約。 VcAEPおよびVcAEP-Y168A変異体(LAD2)の活性を示す図。(A)VcAEP野生型によって触媒された反応のMS分析およびHPLCに基づく定量的要約。(B)LAD2領域を標的化するVcAEP-Y168A変異体によって触媒された反応のMS分析およびHPLCに基づく定量的要約。全ての反応を4.5~8.0の範囲のpH値で実施した。加水分解生成物GN14、環化生成物cGN14およびcGN14のナトリウムイオン付加物のMSピークに破線で印をつける。VcAEP-Y168A変異体についてのリガーゼ活性の劇的な改善がはっきりと見える。 PALのリガーゼ活性決定因子(LAD)および提案される触媒機構を示す図。(A)この研究で試験したPALおよびAEPの配列アラインメント。触媒三残基Asn-His-Cysは黒色で陰影をつけている。S1ポケットに属する残基は青色で陰影をつけている。提案されるLAD残基は赤色で囲っている。LAD1およびLAD2の残基を示す。LAD1付近の保存されたジスルフィド結合は橙色で強調する。ポリProループ(PPL)は緑色ボックス中にあり、MLAループは紫色ボックス中にある。二次構造の命名法は、VyPAL2(この研究)の結晶構造に従って変更をして、トラビら(トラビ・エムら(Trabi M,et al.)(2004)J Nat Prod67(5):806-810)から適合させた。活性にとって重大な残基およびモチーフを、配列アラインメントに使用されるのと同じ色コードで標識する。点線の下の残基はオキシアニオンホールに対応し、点線より上の残基は提案される活性決定因子に対応する。(B)VyPAL2によるライゲーションおよび加水分解について提案されるスキームならびにLAD1およびLAD2の役割。この機構の第1の工程は、加水分解およびライゲーションについて同一であり、S-アセチル酵素中間体の形成につながり、速度制限工程である。その主な決定因子はLAD1である。LAD2は、ペプチド(ライゲーション)または水分子(加水分解)による求核攻撃のいずれかを好む活性の性質を制御する。全てのアラインメントされたポリペプチドの完全配列は配列番号5~14、18および80~87に記載のものである(VyPAL1=配列番号5;VyPAL2=配列番号6;VyPAL3=配列番号7;VyPAL4=配列番号8;VyPAL5=配列番号9;VyAEP1=配列番号10;VyAEP2=配列番号11;VyAEP3=配列番号12;VyAEP4=配列番号13;VcAEP=配列番号14;ブテラーゼ-1=配列番号88;ブテラーゼ2=配列番号80;OaAEP1b=配列番号81;OaAEP2=配列番号82;HeAEP3=配列番号83;PxAEP3b=配列番号84;CeAEP=配列番号85;HaAEP1=配列番号86;AtLEGγ=配列番号87)。 非共有結合親和性結合または共有結合付着による、PAL、ブテラーゼ-1およびVyPAL2の固定化を示す図。(A)ConA-PAL 1およびConA-Vy2 2を与えるグリコシル化PALとコンカナバリンA(ConA)アガロースビーズとの親和性結合。(B)NA-Bu1(b) 3およびNA-Vy2(b) 4を与えるビオチン化PALとNeutrAvidinアガロースビーズとの親和性結合。スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート(NHS-LC-ビオチン)をPALのアミノ基にカップリングすることによって、ビオチン化PALを調製した。(C)アガロース-Bu1 5およびアガロース-Vy2 6を与えるPALとアガロースビーズ上の活性NHS-エステルの共有結合付着。酵素とアガロースビーズとの間の距離は、スペーサー部分およびプレカップリング親和性結合リガンドのサイズによって計算される。 固定化PALビーズによるペプチド大環状化を示す図。各反応について、タンパク質負荷に基づいて計算した1μMの固定化PALを0.2mM KN14-GL(配列番号51)と混合した。反応を、穏やかに揺動しながら、pH6.5、室温で5分間実施した。生成物をスピンカラムから溶出し、MALDI-TOF MSで分析した。KN14-GL 7(計算質量1659.4Da、実測質量1660.0Da)。cKN14 8(計算質量1471.3Da、実測質量1471.9Da)。 その可溶性形態の標準活性曲線と比較することによる、固定化ブテラーゼ-1およびVyPAL2の効率の決定を示す図。使用した遊離酵素濃度は1~8nMの範囲とした。反応速度(V)は、生成物cKN14の量(1秒当たり)によって計算した。規定反応緩衝液は、1mM DTTおよび0.1M NaClを含有する、20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を指す。ConA反応緩衝液は、追加の5mM CaClおよび5mM MgClを含む反応緩衝液を指す。 固定化PALの動作安定性を示す図。(A)100回の反復反応における、5種の固定化PAL 1、3~6によるKN14-GLのcKN14への環化のRP-HPLC監視。各実験について、0.1mM KN14-GL(配列番号51)を含有する100μLの反応混合物(pH6.5)を与えた。使用するビーズの量を各タイプの有効濃度に従って調整して、有効な酵素:基質のモル比=1:350~1:600を与えた。反応を室温で3~5分間行った。(B)固定化PAL 1、3~6の動作安定性の要約。 4℃で1日間、29日間および64日間貯蔵した後の5種の固定化PAL 1、3~6、ブテラーゼ-1およびVyPAL2の安定性を示す図。 穏やかに振盪しながら、pH6.5、室温で10分間のNA-Bu1(b) 3によるペプチドおよびタンパク質の大環状化を示す図。(A)MALDI-TOF MSによって決定された95%の粗収率()の環状SFTI(D/N) 13を与える、NA-Bu1(b) 3による、SFTI(D/N)-HV(配列番号54) 12(0.1mM、計算質量1767.9Da、実測質量1767.9Da)のSFTI(D/N) 13(計算質量1513.8Da、実測質量1513.3Da)への環化。(B)UHPLCによって決定された収率83%の環状AS-48 15(計算質量7145.1Da、実測質量7148.1Da)を与える、NA-Bu1(b) 3による、折り畳まれた直鎖バクテリオシン前駆体AS-48K 14(50μM、計算質量7783.5Da、実測質量7779.1Da)の環化。 40分で85%シクロダイマー(cyclodimer)c17(計算質量1404.8Da、実測質量1405.9Da)および8%シクロトリマー(cyclotrimer)c18(計算質量2107.2Da、実測質量2109.3Da)を与える、NA-Bu1(b) 3による、ペプチドRV7 16(配列番号55;0.2mM、計算質量956.5Da、実測質量957.7Da)のシクロオリゴマー化(cyclooligomerization)を示す図。 NA-Vy2(b) 4による連続フローペプチドおよびタンパク質ライゲーションを示す図。(A)ライゲーション生成物Ac-RYANGLAK(FAM)RG 21(計算質量1506.0Da、実測質量1507.0Da;配列番号58)をもたらす、NA-Vy2(b) 4による、1:10モル比のAcRYANGI 19(計算質量735.4Da、実測質量734.3Da;配列番号56)およびGLAK(FAM)RG 20(計算質量958.7Da、実測質量959.6Da;配列番号57)のライゲーション。(B)蛍光タンパク質DARPin9_26-NGLAK(FAM)RG 23(計算質量20728Da、実測質量20703Da)を与える、1:5モル比の組換えタンパク質DARPin9_26-NGL 22(計算質量19968Da、実測質量19950Da;配列番号49)のGLAK(FAM)RG 20(配列番号57)によるC末端蛍光標識。反応生成物を陽イオン線形モードでMALDI-TOF MSによって分析し、粗収率をピーク面積によって計算した。
本発明は、ノジスミレ(Viola yedoensis)およびヴィオラ・カナデンシス(Viola canadensis)から単離されたペプチドリガーゼ/シクラーゼ活性を有する新規な酵素の本発明者らの同定に基づく。具体的には、本発明者らは、既知の酵素ブテラーゼ-1(国際公開第2015/163818号)などのリガーゼ活性能力を有する酵素との相同性を使用して、スミレ科(Violaceae)の植物由来の新規なリガーゼを同定した。これらの酵素は、その特異的トランスペプチダーゼ活性を強調するとともにAEPと区別するために、ペプチドアスパラギンリガーゼ(PAL)と命名された。対応する組換え酵素の精製および試験によって、VyPAL2のみが4.5~8.0の範囲のpH値という広範囲でリガーゼ活性を有し、ブテラーゼ1よりもわずか3.5倍低い効率である最大触媒速度をpH6.5~7.0で有し、酸性pH(4.5)でのみ最小ヒドロラーゼ活性を表し、このことにより、この酵素が生物工学適用にとって価値ある組換えPALであることが分かった。VyPAL1は、優れたリガーゼであるにもかかわらず、酸性pHでいくらかの加水分解による乱雑な活性を示した。VyPAL3は、低pHで支配的な加水分解活性と共に全体的に低い触媒効率を特徴とした。その上、VyAEP1タンパク質は、配列相同性に基づいてプロテアーゼであると予測されるが、実際、低pHでプロテアーゼであることが分かった(図1)。これらの酵素間の活性の差異についての分子基礎を明らかにするために、VyPAL2の結晶構造を得て、鋳型として使用してVyPALタンパク質アイソフォームの構造をモデル化した。これらの比較は、AEPとPALとの間の微妙であるが、重大な変動を示す、S1活性部位ポケットを囲む2つの領域:S2およびS1’ポケットを指し示した。
S2ポケットに位置するOaAEP1bの1つの残基は、酵素効率の制御において重要な役割を果たすことが分かったので、「ゲートキーパー(gate-keeper)」であると以前報告された(ヤンら(Yang,et al.)(2017)JACS.Doi:10.1021/jacs.6b12637)。本発明者らは、この残基が通例、グリシンであるが、PALでは疎水性残基または嵩高い残基、例えばブテラーゼ-1ではバリンおよびOaAEP1bではシステインであるようであることを見出した。しかしながら、唯一の基準として「ゲートキーパー」残基の性質を使用することは、VyPAL1~3アイソフォームで観察される活性の範囲を説明するのに不十分である:極めて効率的なPALであるVyPAL2および極めて不十分な酵素であるVyPAL3が共に、類似のゲートキーパー残基、例えばそれぞれIおよびVを有する(図6A)。さらに、ゲートキーパー残基としてValを有するVcAEP(ブテラーゼ1など)はプロテアーゼである(図5A)。本発明者らは、リガーゼ活性決定因子(LAD)として作用するVyPAL1~3の2つの領域:(i)VyPAL2の残基W243、I244(ゲートキーパー)およびT245を含むS2ポケット(LAD1)、ならびに(ii)残基A174およびP175を含むS2’ポケットにおける配列変動を同定した(図6)。VyPAL1およびVyPAL2のLAD2領域は同一であるが、それらのゲートキーパー領域(LAD1)は2つの変動を持つ(図6):T245A置換は、残基245の側鎖が基質結合領域の反対に配向しているので、わずかな効果しか有さないと仮定された。そのため、VyPAL1とVyPAL2との間で観察される活性の差異は、酵素を加水分解にとって「より漏出性」にし、より低いpHでヒドロラーゼに向かうVyPAL1のわずかなシフトを説明する他のW243L置換によるものであると結論付けられた。
VyPAL1およびVyPAL2リガーゼと比較して、VyPAL3は、LAD1とLAD2の両方において変動を有する。しかしながら、LAD1での保存的置換:Ileゲートキーパー残基の代わりのV245およびThr(VyPAL2)の代わりのV246は、観察された活性の劇的な変化を説明する見込みはない(図1C)。むしろ、LAD2における活性部位の反対側で、VyPAL1およびVyPAL2に存在するAPジペプチドがより嵩高いYAジペプチドによって置き換えられている。この位置の嵩高いTyr残基がペプチジル求核剤のアシル酵素中間体へのアクセスを妨害し得るので、この変動が、VyPAL1およびVyPAL2と比較してVyPAL3で観察される低いリガーゼ活性を担うことが分かった。これを確認して、本発明者らは、LAD2リガーゼの第1の位置にGly(またはAla)などのより小さい疎水性側鎖を挿入することによって、対応するVyPAL3単一Y175G変異体で見られるように、効率を有意に増加させることができることを見出した(図4)。重要なことに、本発明者らは、等価な変異をヴィオラ・カナデンシス(Viola canadensis)由来のVcAEPに導入することによって、リガーゼ活性の制御へのLAD2領域の関与を確認することができた(図5Aと図5Bを比較)。VcAEPのこの位置でYによって占められる体積は、脱離基の解離の加速および入ってくるペプチドの結合の減速などの有害な効果を引き起こす可能性があり、これらは触媒水分子を移動させるのに必須の工程であり、よって、加水分解よりもライゲーションを好む。これは、早すぎるチオエステル加水分解を防ぐことによって環化を好む以前提案されたプライム側での相互作用の重要性と一致する。他方、Tyr175の側鎖は、推定上の触媒水分子を乱さない。この水分子は、VyPal3のGly174、すなわち、AtLEG-ガンマおよび他のレグマインの場合に観察される触媒His-の直後において厳密に保存された残基、の直ぐ上におそらく位置する(ツァウナーら(Zauner,et al.)(2018)J.Biol.Chem.Doi:10.1074/jbc.M117.817031)。
本発明者らは、AEPおよびPALの機構を2つの工程:(i)おそらく速度制限工程であるアシル-酵素チオエステル中間体形成、および(ii)アシル-酵素中間体上の水分子(加水分解)または求核ペプチド(ライゲーション)による求核攻撃に分解することができることを見出した。OaAEP1bで実施されたゲートキーパー変異誘発についての既知の情報(ヤン(Yang)、上記)と合わせて、実施例に記載の得られる結果は、この中心位置のVal/Ile/Cys/Alaなどの疎水性残基がライゲーションを好み、Glyの存在がタンパク質分解を好むことを示す(図1および図6)。S2ポケットのLAD1は、おそらく基質でいくらかの特異的コンフォメーションひずみを誘導することによって、基質位置決めに影響を及ぼし、酵素活性に対する影響を与え得る。ゲートキーパーでの変化は、主に基質結合および位置決めに影響を及ぼすので、中間体形成、よって、全体的な反応速度に直接的影響を与えるであろう。逆に、LAD2の変化は、求核剤の性質およびアクセス性に影響を及ぼし、結果として、触媒される全体的な反応の性質に決定的となるであろう。
LAD2は、VyPALおよびVcAEPによって触媒される活性の性質にとっての重大な決定因子であることが分かった:VyPAL3のYAジペプチドおよびVcAEPのYPの第1の位置のTyrなどの活性部位のこの側の嵩高い残基は、切断されたペプチド基の離脱を促進し、よって、これが触媒水の動員をもたらし、アシル-酵素チオエステルを求核水分子に対して露出する。この機構は、S1’およびS2’ポケットに残っている切断されたペプチド基が求核水分子を移動させ、よって、加水分解よりもライゲーションを好むことを示した以前の研究と一致している。その上、入ってくる求核ペプチドが結合する方向に配向している嵩高い残基が、アセチル-酵素中間体へのアクセスを妨害し、よって、ライゲーションの速度を厳しく減少させる。逆に、LAD2中のGA/AA/APなどの小さい疎水性ジペプチドは、別のペプチドが求核剤として作用するまで、離脱基を保持し(チオエステル結合へのアクセスを遮断する)、リガーゼ活性につながる。しかしながら、AEPを操作するためのVyPAL2の両部位の変異が、プロテアーゼ、例えばOaAEP2またはブテラーゼ2への効率的で劇的な変換をもたらさないことも分かり、LAD1およびLAD2以外の、タンパク質分解のための他の決定因子の存在を示唆した(データは示さない)。1つの魅力的な可能性は、LAD1(ゲートキーパー)、LAD2(この研究)およびMLA内の残基が協同してプロテアーゼ活性対リガーゼ活性を決定するというものである。この点について、切断型MLAを所有するVcAEP(図6)は主にプロテアーゼ活性を表す(図5)ので、切断型MLA単独の存在(チェンら(Chen et al.)(1998)FEBS Lett 441(3):361-5)が、リガーゼ活性を必ずしも暗示しないことが分かった。
要約すると、本発明者らは、アスパラギニルエンドペプチダーゼおよびリガーゼ活性を支配する分子決定因子が、S1ポケットの側方の基質結合溝、特にそれぞれS2およびS1’ポケットを中心にしたLAD1およびLAD2のアミノ酸組成に主として見出されることを発見した。構造分析と変異誘発試験を組み合わせて、効率的なペプチドアスパラギニルリガーゼのために、LAD1の第1の位置が、好ましくはW/Yなどの、嵩高い芳香族であり、第2の位置が、V/I/C/Aなどの疎水性であるがGではないことが明らかにされた。LAD2については、GA/AA/APジペプチドが好まれることが分かった。Yなどの嵩高い残基は、基質の結合親和性に影響を及ぼし、水分子のアクセス性を制御することによって、およびN/D残基後の切断されたペプチドテールの解離速度を増加させることによって、アシル-酵素中間体を不安定化する可能性があるので、LAD2の第1の位置で不利である。そのため、リガーゼ活性にとっていつも十分な条件であるとは限らないが、このジペプチドの第1の位置にGまたはAなどの小さい残基が必要である。この条件が満たされる限り、天然AEPは、LAD1(ゲートキーパー)またはより離れた領域、例えばMLAなどの他の位置での変異または変化を通してPALになるよう修正可能である。
上記知見に基づいて、本発明は、第1の態様で、単離形態のペプチドアスパラギニルリガーゼ(PAL)活性を有するポリペプチドを網羅し、より具体的には、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むか、から本質的になるか、またはからなる単離ポリペプチドに向けられる。配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、本明細書で、「VyPAL2」または「VyPAL2活性形態/ドメイン」とも呼ばれる。本明細書で使用される「単離された」は、天然に生じ得るか、または会合し得る他の細胞成分から少なくとも部分的に分離されている形態のポリペプチドに関する。ポリペプチドは、組換えポリペプチド、すなわち、前記ポリペプチドを天然には生成しない遺伝子操作された生物で生成されたポリペプチドであり得る。天然ポリペプチドと組換えポリペプチドの両方が、N結合グリコシル化によって翻訳後修飾される。
本発明によるポリペプチドは、タンパク質ライゲーション活性を示す、すなわち、2つのアミノ酸残基の間でペプチド結合を形成することができ、これらの2つのアミノ酸残基は同じまたは異なるペプチドまたはタンパク質上に、好ましくは前記ライゲーション活性が前記ペプチドまたはタンパク質を環化するように同じペプチドまたはタンパク質上に位置する。したがって、種々の実施形態では、本発明のポリペプチドがシクラーゼ活性を有する。種々の実施形態では、このタンパク質ライゲーションまたはシクラーゼ活性がエンドペプチダーゼ活性を含む、すなわち、ポリペプチドが、既存のペプチド結合の切断後に2つのアミノ酸残基の間でペプチド結合を形成する。これは、環化が所与のペプチドの末端間で起こる必要はなく、内部アミノ酸残基間で起こることもでき、環化に使用されるアミノ酸に対してC末端またはN末端のアミノ酸が切断されることを意味する。好ましい実施形態では、N末端を内部アミノ酸にライゲーションし、残っているC末端アミノ酸を切断することによって、ポリペプチドが環化ペプチドを形成する。
本明細書に開示されるポリペプチドは、ライゲーションが起こるアミノ酸C末端、すなわち、ライゲーションされるペプチドのC末端がアスパラギン(AsnもしくはN)またはアスパラギン酸(AspもしくはD)のいずれか、好ましくはアスパラギンであるという点で「Asx特異的」である。
本明細書で使用される「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって接続されたアミノ酸から作られるポリマーに関する。本明細書で定義されるポリペプチドは、50個以上のアミノ酸、好ましくは100個以上のアミノ酸を含むことができる。本明細書で使用される「ペプチド」は、ペプチド結合によって接続されたアミノ酸から作られるポリマーに関する。本明細書で定義されるペプチドは、2個以上のアミノ酸、好ましくは5個以上のアミノ酸、より好ましくは10個以上のアミノ酸、例えば10~50個のアミノ酸を含むことができる。
種々の実施形態では、ポリペプチドが、その全長にわたって配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.25%または99.5%同一または相同であるアミノ酸配列を含むか、またはからなる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドが、その全長にわたって配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するか、またはその全長にわたって配列番号1に記載のアミノ酸配列と、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列を有する。
種々の実施形態では、ポリペプチドが、成熟酵素の前駆体であり得る。このような実施形態では、ポリペプチドが、配列番号2または配列番号3に記載のアミノ酸配列を含み得るか、またはからなり得る。配列番号2または配列番号3に記載のアミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、99.25%または99.5%同一または相同であるアミノ酸配列を有するポリペプチドも包含される。
核酸配列またはアミノ酸配列の同一性は、一般的に、配列比較によって決定される。この配列比較は、既存の分野で確立され、通例使用されるBLASTアルゴリズム(例えば、アルトシュルら(Altschul et al.)(1990)「基本的なローカルアラインメント検索ツール(Basic local alignment search tool)」、J.Mol.Biol.215:403-410およびアルトシュルら(Altschul et al.)(1997):「ギャップ付きBLASTおよびPSI-BLAST:新世代のタンパク質データベース検索プログラム(Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs)」;Nucleic Acids Res.、25、3389-3402頁参照)に基づき、原則として、核酸配列およびアミノ酸配列のそれぞれにおいて、類似の連続するヌクレオチドまたはアミノ酸を相互に関連付けることによって行われる。関連のある位置の表の関連付けは「アラインメント」と呼ばれる。配列比較(アラインメント)、特に複数の配列比較は、通例、当業者に入手可能であり、知られているコンピュータプログラムを使用して調製される。
この種の比較はまた、比較されている配列の互いに対する類似性に関する陳述を可能にする。これは通常、同一性%、すなわち、アラインメント中の同じ位置または互いに対応する位置で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の割合として示される。アミノ酸配列の文脈における、より広義に解釈される「相同性」という用語はまた、保存されたアミノ酸交換、すなわち、類似の化学活性を有するアミノ酸(これらは通常、タンパク質内で類似の化学活性を実施するので)の考慮を組み込む。そのため、比較される配列の類似性はまた、「相同性%」または「類似性%」として示すこともできる。同一性および/または相同性を示すことは、ポリペプチドもしくは遺伝子全体にわたって、または個々の領域にわたってのみ遭遇することができる。そのため、種々の核酸配列またはアミノ酸配列の相同領域および同一領域は、配列における一致として定義される。このような領域はしばしば、同一の機能を示す。これらは小さくてよく、ごく少数のヌクレオチドまたはアミノ酸を包含することができる。この種の小さい領域はしばしば、タンパク質の全体的な活性に必須の機能を実施する。そのため、個々の領域、および任意選択で小さい領域に対する配列一致のみを指すことが有用となり得る。しかしながら、特に示さない限り、本明細書において同一性および相同性を示すことは、それぞれ示される核酸配列またはアミノ酸配列の完全長を指す。
種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、配列番号1の19位に対応する位置にアミノ酸残基N;および/または配列番号1の124位に対応する位置にアミノ酸残基H;および/または配列番号1の166位に対応する位置にアミノ酸残基Cを含む。種々の実施形態では、少なくとも配列番号1の124位に対応する位置のアミノ酸残基H;および/または配列番号1の166位に対応する位置のアミノ酸残基Cによって形成される触媒二残基(catalytic dyad)が、好ましくは配列番号1の19位に対応する位置のアミノ酸残基Nと組み合わせて存在し、よって、完全な触媒三残基を形成する。これらのアミノ酸残基が、ポリペプチドの触媒活性(リガーゼ/シクラーゼ/エンドペプチダーゼ活性)に必要であることが分かった。よって、好ましい実施形態では、ポリペプチドが、所与のまたは対応する位置に、上に示される残基のうちの少なくとも2つ、より好ましくは3つ全てを含む。
全てのアミノ酸残基は、一般に、本明細書において、その1文字表記、およびいくつかの例では、その3文字表記への言及によって呼ばれる。この命名法は当業者に周知であり、本明細書においては、当分野で理解されているものとして使用される。
種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、126位に対応する位置にアミノ酸残基Aを含む。種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、配列番号1の127位に対応する位置にアミノ酸残基AまたはP、好ましくはPを含む。あるいは、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基がGであり得る。これらの実施形態では、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基が好ましくはAである。これらのモチーフAP、AAおよびGAはまた、リガーゼ活性の決定的な決定因子であり、これらの位置の他のアミノ酸のこれらのモチーフへの変異は、その優勢な酵素活性が切り替えられるという点でエンドペプチダーゼ酵素をリガーゼ酵素に変換し得るので、本明細書において、リガーゼ活性決定因子2(LAD2)とも呼ばれる。種々の実施形態では、配列番号1の126位および127位に対応する位置のモチーフがGPではなく、AP、AAまたはGAのいずれかである。
種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、配列番号1の195位に対応する位置にアミノ酸残基WまたはY、配列番号1の196位に対応する位置にアミノ酸残基IまたはV、および配列番号1の197位に対応する位置にアミノ酸残基T、AまたはVを含む。このモチーフW-I/V-T/A/Vもまた、本明細書においてリガーゼ活性決定因子1(LAD1)とも呼ばれ、リガーゼ活性の決定的な決定因子であることが分かった。配列番号1の196位に対応する既知のゲートキーパー位置に加えて、195位および197位、特に195位もリガーゼ/エンドペプチダーゼ活性の決定に関連していることが分かった。また、これらの位置の他のアミノ酸のこれらのモチーフへの変異は、その優勢な酵素活性が切り替えられるか、または混合リガーゼ/エンドペプチダーゼのリガーゼ活性を増加させるという点でエンドペプチダーゼ酵素をリガーゼ酵素に変換し得る。
種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、配列番号1の21位に対応する位置にアミノ酸残基R、配列番号1の22位に対応する位置にアミノ酸残基H、配列番号1の123位に対応する位置にアミノ酸残基D、配列番号1の164位に対応する位置にアミノ酸残基E、配列番号1の194位に対応する位置にアミノ酸残基S、および配列番号1の215位に対応する位置にアミノ酸残基Dを含む。これらのアミノ酸残基は、本明細書において、「S1ポケット」とも呼ばれる。
種々の実施形態では、本明細書に記載されるポリペプチドが、配列番号1の199位および212位に対応する位置にアミノ酸残基Cを含む。これらの2つの残基は、典型的には成熟ポリペプチドのジスルフィド架橋を形成する。
種々の実施形態では、本発明のポリペプチドが、ポリProループ(PPL)などのさらなるいくぶん不変の配列要素を含み得る。前記ループは、コンセンサス配列P/A-G/T/S-X-X-P/E-G/D/P-V/F/A/P-P-L/P/A/E-Eを有し、少なくとも2つ、および最大5つのプロリン残基を含む。示される位置の2つ、3つ、4つまたは4つのプロリン残基が典型的である。PPLは、配列番号1の200~208位を占める。
本発明のポリペプチドに存在し得る別のモチーフは、配列番号1の残基244~249にわたるいわゆるMLAモチーフである。これは、配列KKIAYAまたはNKIAYA(配列番号15および16)を有し得る。
種々の実施形態では、本発明のポリペプチドが、上記のLAD1およびLAD2モチーフを含む。さらなる実施形態では、これらが、上に定義されるS1ポケット、SS架橋、PPLおよびMLAモチーフのうちの1つ、2つ、3つまたは4つ全てを加えて含む。
種々の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドが、pH5.0以下、好ましくは4.5以下での酸処理によって活性化され得る。これは、C末端キャップ配列または活性化ドメインを含むポリペプチドにも当てはまる。このようなC末端ドメインは、例えば、配列番号3に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドに存在する。そこで使用される具体的な配列(配列番号17)は、VyPAL1(配列番号5)のキャップ配列に由来している。
本発明の単離ポリペプチドは、好ましくは酵素活性、特にタンパク質リガーゼ活性、好ましくはシクラーゼ活性を有する。種々の実施形態では、これが、これらのペプチドが所与のペプチドを60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上の効率でライゲーションすることができることを意味する。効率は、前記ペプチド/ポリペプチドの総量に対する環化された所与のペプチド/ポリペプチドの量(%)として決定される。
本発明のポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素のタンパク質リガーゼ活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%を有することが好ましい。
種々の実施形態では、本発明の単離ポリペプチドが、好ましくはpH5.5以上で、所与のポリペプチドを60%以上、好ましくは80%以上の効率で環化することができる。環化活性は、pH値6.0、6.5、7.0、7.5またはそれ以上で決定することもできる。pH5未満などの低いpH条件では、多くのリガーゼが一定程度のエンドペプチダーゼ活性を示し得るので、これは妥当である。
種々の実施形態では、本発明のポリペプチドが、所与のペプチドを20%以下、好ましくは5%以下の効率で加水分解する。この効率は、前記ペプチド/ポリペプチドの総量に対して加水分解された所与のペプチド/ポリペプチドの量(%)として決定される。また、pHが活性に影響し得るので、加水分解活性は、好ましくはpH5.5以上、例えばpH値6.0、6.5、7.0、7.5またはそれ以上で決定される。
上記改変に加えて、本明細書に記載される実施形態によるポリペプチドは、アミノ酸改変、特にアミノ酸置換、挿入または欠失を含むことができる。このようなポリペプチドは、例えば、標的化遺伝子改変(genetic modification)によって、すなわち、変異誘発法を通してさらに開発され、具体的な目的のためにまたは特別な特性に関して(例えば、その触媒活性、安定性等に関して)最適化される。このような追加改変を本発明のポリペプチドに導入する場合、これらは、好ましくは上に詳述される配列モチーフ、すなわち触媒残基、LAD1およびLAD2モチーフに影響を及ぼすこともなく、これを変更することもなく、これを逆転させることもない。これは、これらの残基/モチーフの上に定義される特徴が、上に定義されるものを超えてこれらの追加の変異によって変化しないことを意味する。加えて、S1ポケット、SS架橋、PPLおよびMLAモチーフのうちの1つ、2つ、3つまたは4つ全てが追加の改変、すなわち上に詳述されるものを超える改変なしに保持されることがさらに好ましくなり得る。加えて、本明細書で企図される核酸を、組換え配合物に導入し、それによって、これらを使用して完全に新規なタンパク質リガーゼ、シクラーゼまたは他のポリペプチドを生み出すことができる。
種々の実施形態では、リガーゼ/シクラーゼ活性を有するポリペプチドが、翻訳後修飾され得る、例えばグリコシル化され得る。このような修飾は、組換え手段によって、すなわち、生成時に宿主細胞で直接行われ得るか、または例えばインビトロにおいてポリペプチドの合成後に化学的もしくは酵素的に達成され得る。
例えば、既知のPALブテラーゼ-1(配列番号18)は、嵩高い異種グリカンによりN94およびN286でグリコシル化され、これにより約6kDaの追加の質量の増加が得られる。組換えVyPAL2(配列番号1~3)は、小さいグリカンにより、配列番号2のナンバリングを使用してN102、N145およびN237位でグリコシル化され、これにより約3kDaの追加の増加質量が得られる。よって、本発明のポリペプチドは、嵩高い異種グリカンにより、例えば配列番号18のN94位およびN286位に対応する位置で、または小さいグリカンにより、配列番号2のN102位、N145位およびN237位に対応する位置でグリコシル化され得る。
記載される改変の目的は、例えば、基質特異性を変更するため、および/または触媒活性を改善するために、置換、挿入または欠失などの標的化変異を既知の分子に導入することであり得る。この目的のために、特に、分子の表面電荷および/または等電点、ならびにそれによって、基質とのその相互作用を修飾することができる。あるいはまたは加えて、ポリペプチドの安定性を、1つまたは複数の対応する変異、およびそれによって改善されるその触媒性能を通して増強することができる。個々の変異、例えば個々の置換の有利な特性は互いを補うことができる。
種々の実施形態では、ポリペプチドが、単一または複数の保存的アミノ酸置換によって、初期分子として上に記載されるポリペプチドから得ることができることを特徴とし得る。「保存的アミノ酸置換」という用語は、あるアミノ酸残基と別のアミノ酸残基の交換(置換)であって、このような交換が交換されたアミノ酸の位置での極性の変化にも電荷の変化にもつながらないもの、例えば、非極性アミノ酸残基と別の非極性アミノ酸残基の交換を意味する。本発明の文脈における保存的アミノ酸置換は、例えば、G=A=S、I=V=L=M、D=E、N=Q、K=R、Y=F、S=T、G=A=I=V=L=M=Y=F=W=P=S=Tを包含する。
あるいはまたは加えて、ポリペプチドは、断片化によって、または欠失、挿入もしくは置換変異誘発によって、初期分子として本明細書で企図されるポリペプチドから得ることができることを特徴とし得、少なくとも150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260または265個の連続的に接続されたアミノ酸の長さにわたって配列番号1~14に記載の初期分子と一致するアミノ酸配列を包含する。このような実施形態では、初期分子に含有されるアミノ酸N19、H124およびC166、ならびに上に定義されるLAD1、LAD2、ならびに任意選択でS1ポケット、PPL、MLAモチーフおよびジスルフィド架橋のうちのいずれか1つまたは複数も依然として存在することが好ましい。
よって、種々の実施形態では、本発明はまた、本明細書に記載されるポリペプチドの断片であって、酵素活性を保持する断片に関する。これらが、初期分子の、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドのタンパク質リガーゼおよび/またはシクラーゼ活性の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも90%を有することが好ましい。これらの断片は、好ましくは少なくとも150アミノ酸長、より好ましくは少なくとも200または250である。これらの断片が、初期分子に含有される配列番号1の19位、124位および166位に対応する位置のアミノ酸N、HおよびC、ならびに上に定義されるLAD1、LAD2、ならびに任意選択でS1ポケット、PPL、MLAモチーフおよびジスルフィド架橋のうちのいずれか1つまたは複数も含むことがさらに好ましい。そのため、好ましい断片は、配列番号1に記載のアミノ酸配列のアミノ酸19~197、より好ましくは19~212、最も好ましくは19~249を含む。
本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸分子、ならびにこのような核酸を含有するベクター、特にコピーベクターまたは発現ベクターも本発明の一部を形成する。
これらはDNA分子またはRNA分子であり得る。これらは、個々の鎖として、前記個々の鎖に相補的な個々の鎖として、または二本鎖として存在することができる。DNA分子では特に、3つの可能なリーディングフレーム全ての両相補鎖の配列が各場合で考慮されるべきである。異なるコドン、すなわち塩基トリプレットが、同じアミノ酸をコードすることができ、結果として特定のアミノ酸配列が複数の異なる核酸によってコードされ得るという事実も考慮されるべきである。遺伝暗号のこの縮重の結果として、上記ポリペプチドの1つをコードすることができる全ての核酸配列が本発明のこの主題に含まれる。遺伝暗号の縮重にもかかわらず、定義されるアミノ酸は個々のコドンに関連付けられるはずなので、当業者であれば、これらの核酸配列を疑いの余地なく決定することができる。そのため、当業者であれば、アミノ酸配列から進んで、そのアミノ酸配列をコードする核酸を容易に確かめることができる。加えて、本発明による核酸の文脈では、1つまたは複数のコドンが同義のコドンによって置き換えられ得る。この態様は、特に、本明細書で企図される酵素の異種発現を指す。例えば、全ての生物、例えば生成株の宿主細胞が、特異的コドン使用頻度を所有する。「コドン使用頻度」は、それぞれの生物による遺伝暗号のアミノ酸への翻訳として理解される。核酸上に位置するコドンが、生物において、比較的少数の負荷tRNA分子に直面している場合、タンパク質生合成におけるボトルネックが生じ得る。また、これは同じアミノ酸をコードし、あるコドンが同じアミノ酸をコードする同義のコドンよりもあまり効率的でなく生物で翻訳されるという結果になる。同義のコドンのためのより多数のtRNA分子の存在のために、後者が生物でより効率的に翻訳され得る。
分子生物学またはタンパク質化学の標準的な方法と組み合わせた、例えば、化学合成またはポリメラーゼ連鎖反応などの今日一般的に知られている方法を通して、当業者は、既知のDNA配列および/またはアミノ酸配列に基づいて、遺伝子を完成させるまでずっと対応する核酸を製造する能力を有する。このような方法は、例えば、サムブルック・ジェイ(Sambrook,J.)、フリッチュ・イーエフ(Fritsch,E.F.)およびマニアティス・ティー(Maniatis,T)2001、Molecular cloning:a laboratory manual、第3版、コールドスプリングラボラトリープレス(Cold Spring Laboratory Press)から知られている。
「ベクター」は、本明細書の目的のために、特徴付ける核酸領域として本明細書で企図される核酸を含有する、核酸で構成される要素として理解される。ベクターは、前記核酸が、複数の世代または細胞分裂にわたって、種または細胞株において安定な遺伝要素として確立されることを可能にする。特に、細菌で使用される場合、ベクターは特別なプラスミド、すなわち、環状遺伝要素である。本明細書の文脈では、本明細書で企図される核酸がベクターにクローニングされる。例えば、その起源が細菌プラスミド、ウイルスもしくはバクテリオファージであるもの、または広く異なる誘導物の要素を有する主に合成のベクターもしくはプラスミドがベクターの中に含まれる。各場合で存在するさらなる遺伝要素を使用すると、ベクターは、複数の世代にわたって、関連している宿主細胞において自身を安定な単位として確立することができる。これらは、別個の単位として染色体外に存在することができるか、またはそれぞれ染色体の染色体DNAに組み込むことができる。
発現ベクターは、発現ベクターを含有する宿主細胞、好んで微生物、特に好ましくは細菌中で複製し、その中で、含有される核酸を発現することができる核酸配列を包含する。よって、種々の実施形態では、本明細書に記載されるベクターはまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現を制御する調節エレメントを含有する。発現は、特に、転写を調節するプロモーターによって影響される。発現は、原則として、発現される核酸の前に元々位置する天然プロモーターによって起こり得るが、発現ベクターに備え付けられた宿主細胞プロモーターによっても、または別の生物もしくは別の宿主細胞の修飾された、もしくは完全に異なるプロモーターによっても起こり得る。本ケースでは、本明細書で企図される核酸を発現するための少なくとも1つのプロモーターが、その発現のために利用可能になり、使用される。発現ベクターはさらに、例えば培養条件の変化を通して、またはそれらを含有する宿主細胞が特定の細胞密度に達した場合に、または特定の物質、特に遺伝子発現の活性化因子の添加によって調節され得る。このような物質の一例は、ガラクトース誘導体、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)であり、これは細菌ラクトースオペロン(lacオペロン)の活性化因子として使用される。発現ベクターと対照的に、含有される核酸はクローニングベクターでは発現されない。
さらなる態様では、本発明はまた、本明細書で企図される核酸または本明細書で企図されるベクターを含有する宿主細胞、好ましくは非ヒト宿主細胞に向けられる。本明細書で企図される核酸または前記核酸を含有するベクターは、好ましくは微生物に形質転換され、次いで、これが実施形態による宿主細胞となる。細胞を形質転換する方法は、既存の分野で確立されており、当業者に十分に知られている。原則として、全ての細胞、すなわち原核細胞または真核細胞が宿主細胞として適している。遺伝子的に有利な様式で、例えば形質転換に関して、核酸またはベクターおよびその安定な確立を使用して操作することができる宿主細胞、例えば単細胞真菌または細菌が好ましい。加えて、好ましい宿主細胞は、微生物学的および生物工学的条件で容易に操作されることで顕著である。これは、例えば、容易な培養能、高い増殖率、発酵培地の点から低い要求、ならびに外来タンパク質についての優れた生成および分泌速度を指す。ポリペプチドはさらに、その製造後に、それらを生成する細胞によって、例えば糖分子の付加、ホルミル化、アミノ化等によって修飾することができる。この種の翻訳後修飾は、ポリペプチドに機能的に影響し得る。
さらなる実施形態は、その活性が、例えばベクター上で利用可能にされる遺伝子調節エレメントであるが、宿主細胞中に先天的に存在してもよい遺伝子調節エレメントに基づいて調節され得る宿主細胞によって表される。これらは、例えば、活性化因子として働く化学化合物の制御された添加によって、培養条件の修飾によって、または特定の細胞密度に到達させた場合に、発現へと刺激され得る。これにより、本明細書で企図されるタンパク質の経済的生成が可能になる。このような化合物の一例は、前に記載されるIPTGである。
好ましい宿主細胞は、大腸菌(E.coli)細胞などの、原核細胞または細菌細胞である。細菌は、短い世代時間および培養条件の点から少ない要求で顕著である。結果として、それぞれの経済的培養方法である製造方法を確立することができる。加えて、当業者であれば、発酵技術における細菌の文脈での豊富な経験を有する。栄養源、生成物発酵速度、時間要求等などの個々のケースで実験的に確かめられる多種多様な理由のために、グラム陰性菌またはグラム陽性菌が、具体的な生成例に適し得る。種々の実施形態では、宿主細胞が大腸菌(E.coli)細胞であり得る。
本明細書で企図される宿主細胞は、培養条件の要求の点で改変することができるか、または他のもしくは追加の選択マーカーを含むことができるか、または他のもしくは追加のタンパク質を発現することもできる。これらは、特に、複数のタンパク質または酵素を遺伝子導入で発現する宿主細胞であることができる。
しかしながら、宿主細胞はまた、細胞核を所有することを特徴とする真核細胞であることもできる。そのため、さらなる実施形態は、細胞核を所有することを特徴とする宿主細胞によって表される。原核細胞と対照的に、真核細胞は、形成されるタンパク質を翻訳後修飾することができる。その例は、放線菌類(Actinomycetes)などの真菌、またはサッカロミセス属(Saccharomyces)もしくはクリベロミセス属(Kluyveromyces)などの酵母、またはSf9細胞などの昆虫細胞である。これは、例えば、タンパク質が、その合成に関連して、このような系によって可能になる特定の修飾を経験することを意図している場合に、特に有利となり得る。特にタンパク質合成と合わせて真核生物系が行う修飾の中には、例えば、膜アンカーまたはオリゴ糖などの低分子量化合物の結合がある。よって、種々の実施形態では、宿主細胞が、昆虫細胞、例えばSf9細胞などの真核細胞である。
本明細書で企図される宿主細胞は、通常の方法で、例えば不連続系または連続系で培養および発酵される。前者のケースでは、適切な栄養培地に宿主細胞が接種され、生成物が実験的に確かめられる一定期間後に収穫される。連続発酵は、比較的長期間にわたって、細胞が部分的に死に絶えるが、部分的に更新もされ、形成されたタンパク質を同時に培地から除去することができるフロー平衡の達成で顕著である。
本明細書で企図される宿主細胞は、好ましくは本明細書に記載されるポリペプチドを製造するために使用される。
そのため、本発明のさらなる態様は、本明細書で企図される宿主細胞を培養する工程と;培養培地または宿主細胞からポリペプチドを単離する工程とを備える、本明細書に記載されるポリペプチドを製造する方法である。培養条件および培地は、当技術分野で知られている一般知識および技術に頼ることによって、使用される宿主生物に基づいて、当業者によって選択され得る。
なおさらなる態様では、本発明は、タンパク質ライゲーションのための、特に1つまたは複数のペプチドを環化するための上記ポリペプチドの使用に関する。
本明細書に記載される酵素の使用は、ペプチド基質に言及することによって以下に記載されるが、これらを対応するポリペプチドまたはタンパク質にも同様に使用することができることが理解される。よって、本発明はまた、ポリペプチドまたはタンパク質が基質として使用される実施形態を網羅する。これらのポリペプチドまたはタンパク質は、ペプチド基質の文脈で以下に記載される構造モチーフを含むことができる。機能性を保持するヒトペプチドホルモンの断片などのペプチド断片、または例えばチオデプシペプチドを含む(骨格)修飾ペプチドなどのペプチド誘導体が利用される実施形態も包含される。したがって、本発明はまた、本明細書に開示されるペプチド基質の断片および誘導体を網羅する。
種々の実施形態では、ライゲーションまたは環化されるペプチドが、リガーゼ/シクラーゼによって認識、結合およびライゲーションされる認識配列およびライゲーション配列を含有する限り、典型的には少なくとも10アミノ酸長の任意のペプチドであることができる。ライゲーションまたは環化されるペプチドのこのアミノ酸配列は、アミノ酸残基NまたはD、好ましくはNを含み得る。種々の実施形態では、環化またはライゲーションされるペプチドが、アミノ酸配列(X)N/D(X)(Xは任意のアミノ酸であり、oは1以上、好ましくは2以上の整数であり、pは1以上、好ましくは2以上の整数である)を含む。好ましい実施形態では、(X)がX(X)、H(X)またはHV(X)(XはPを除く任意のアミノ酸、好ましくはH、GまたはSであり、Xは、好ましくはL、I、V、F、C、W、YおよびMから選択される、疎水性または芳香族アミノ酸であり、rは0または1以上の整数である)である。種々の実施形態では、ペプチドがアミノ酸配列(X)NHまたは(X)NHVまたは(X)NGLまたは(X)NSLを含む。ライゲーション/環化中にNに対してC末端の全てのアミノ酸が切断されるので、前記アミノ酸配列は、好ましくはライゲーションまたは環化されるペプチドのC末端またはC末端付近に位置する。したがって、全ての上記実施形態では、pまたはrが、好ましくは最大20、好ましくは最大5の整数である。pが2であり、(X)が好ましくは上に定義されるX(X)であり、rが任意選択で0である実施形態が特に好ましい。
代替実施形態では、ライゲーションまたは環化されるペプチドが、アミノ酸配列(X)/D(式中、Xは任意のアミノ酸であり、oは少なくとも2の整数であり、C末端カルボキシ基(NまたはD残基の)は式-C(O)-N(R’)の基(R’は例えばアルキルなどの任意の残基である)によって置き換えられている)を含み得る。このような実施形態では、NまたはD残基の末端-C(O)OH基、好ましくはDの場合はアルファ-カルボキシ基が、基-C(O)-N(R’)を形成するように修飾される。これらのC末端アミド化DまたはN残基は、本明細書において、それぞれDおよびNによって示される。本明細書に開示される酵素は、アミド基を切断し、前記NまたはD残基を目的の別のペプチドのN末端またはNもしくはD残基を含む同じペプチドのN末端にライゲーションすることができる。
ライゲーションされるペプチドのN末端部分は、好ましくはアミノ酸配列X(X)(式中、Xは任意のアミノ酸であり得;XはProを除く任意のアミノ酸であり得;Xは任意のアミノ酸であり得るが、好ましくはVal、IleもしくはLeuなどの疎水性アミノ酸、またはCysであり;qは0または1以上の整数である)を含む。X位は、以下の順序で好ましい:G=H>M=W=F=R=A=I=K=L=N=S=Q=C>T=V=Y>D=E。「=」はそれぞれのアミノ酸が同様に好ましいことを示し、「>」はこの記号の後に列挙されるアミノ酸よりもこの記号の前に列挙されるアミノ酸が好ましいことを示す。X位は、以下の順序で好ましい:L>V>I>C>T>W>A=F>Y>M>Q>S。X位であまり好ましくないのはP、D、E、G、K、R、NおよびHである。X位で特に好ましいのはGおよびHであり、X位で特に好ましいのはL、V、IおよびCであり、例えばジペプチド配列GL、GV、GI、GC、HL、HV、HIおよびHCである。
よって、好ましい実施形態では、ライゲーションまたは環化されるペプチドが、N末端からC末端の方向で、アミノ酸配列X(X)(X)N/D(X)(式中、X、X、X、o、pおよびqは上に定義される通りであり、oは好ましくは少なくとも7である)を含む。種々の実施形態では、(1)qが0であり、oが少なくとも7の整数であり;および/または(2)XがGまたはHであり;および/または(3)XがL、V、IまたはCであり;および/または(4)pが少なくとも2であるが、22以下、好ましくは2~7であり、より好ましくはH(X)またはHV(X)、最も好ましくはHXまたはHVである。種々の実施形態では、(1)qが0であり、oが少なくとも7の整数であり;(2)XがGまたはHであり;(3)XがL、V、IまたはCであり;(4)pが少なくとも2であるが、22以下、好ましくは2~7であり、より好ましくは(X)がX(X)、H(X)またはHV(X)、最も好ましくはHXまたはHVまたはXLまたはGLまたはXSまたはLSである。
種々の実施形態では、環化されるペプチドが、環状システインノットポリペプチド、特にシクロチドの直鎖前駆体形態である。シクロチドは、並外れて安定な植物タンパク質のトポロジー的に特有のファミリーである。これらは、6個の保存されたシステイン残基と会合したシステインノットモチーフによって加えて拘束されるヘッドトゥーテールの環化ペプチド骨格に配置された約30個のアミノ酸を含む。システインノットは、2つのジスルフィド結合およびそれらの接続する骨格セグメントから構築され、第3のジスルフィド結合によってつながれた構造中の内部環を形成して、連動および筋交い構造を形成する。このシステインノットコアモチーフに重ね合わされるのが、十分に定義されているβシートおよび短い表面露出ループを表す一連のターンである。
シクロチドは、その骨格ループ内で多様なペプチド配列を表し、広範囲の生物活性を有する。よって、これらは、製薬用途にとって大いに興味深いものである。これらが由来しているいくつかの植物は伝統医学で使用されており、プロトタイプシクロチドカラタB1(kB1)を含有する、アフリカで出産を促進するために使用されている植物オルデンランディア・アフィニス(Oldenlandia affinis)由来の茶であるカラタ-カラタ(kalata-kalata)を含む。その並外れた安定性は、これらがペプチドに基づく薬物設計用途で潜在的な鋳型として魅力的であることを意味する。特に、生理活性ペプチド配列をシクロチドフレームワークにグラフトすることによって、ペプチドに基づく治療薬を安定化するための新たなアプローチの見込みが提供され、それによって、薬物としてのペプチドの使用に対する主な制限の1つが克服される。
よって、種々の実施形態では、環化されるペプチドが、10以上のアミノ酸長、好ましくは最大50アミノ酸長、いくつかの実施形態では、約25~35アミノ酸長である。環化されるペプチドは、配列番号20に記載のオルデンランディア・アフィニス(Oldenlandia affinis)由来のシクロチドカラタB1の前駆体のアミノ酸を含み得るか、またはからなり得る。
種々の実施形態では、環化されるペプチドが、アミノ酸配列(X)C(X)C(X)C(X)C(X)C(X)C(X)NHV(X)(式中、各nは1~6から独立して選択される整数であり、Xは任意のアミノ酸であり得る)を含むか、またはからなる。このようなペプチドは、上記の6個のシステイン残基間でシステイン結合を形成する環状システインノットポリペプチドの前駆体であり、C末端HV(X)配列を切断し、(次いで、C末端)N残基をN末端残基にライゲーションすることによって、本明細書に記載される酵素によって環化され得る。
種々の実施形態では、環化されるペプチドが、米国特許出願公開第2012/0244575号明細書に開示される直鎖前駆体を含み得る。この文献は、この目的のために、全体を本願明細書に援用する。
種々の追加の実施形態では、環化されるペプチドが、それだけに限らないが、バクテリオシンAS-48(配列番号19)などのバクテリオシン、コノトキシン、タナチン(昆虫抗菌ペプチド)およびヒスタチン(ヒト唾液抗菌ペプチド)などの、ペプチド毒素および抗菌ペプチドの直鎖前駆体を含む。環化され得る他のペプチドは、それだけに限らないが、ニューロメジン、サリューシンアルファ、アペリンおよびガラニンを含む環状ヒトまたは動物ペプチドホルモンの前駆体である。例示的なペプチドは、配列番号21~31に記載のアミノ酸配列のうちのいずれか1つを含むか、またはからなる。
本明細書に開示される酵素および方法を使用してライゲーションまたは環化することができるさらなるペプチドは、限定されないが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、アドレノメデュリン、インターメジン、プロアドレノメデュリン、アドロピン、アゲレニン、AGRP、アラリン、インスリン様成長因子-結合タンパク質5、アミリン、アミロイドb-タンパク質、両親媒性ペプチド抗生物質、LAH4、アンジオテンシンI、アンジオテンシンII、A型(心房性)ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、アパミン、アペリン、ビバリルジン、ボンベシン、リシル-ブラジキニン、B型(脳性)ナトリウム利尿ペプチド、C-ペプチド(インスリン前駆体)、カルシトニン、コカインおよびアンフェタミン調節転写産物(CART)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、コレシストキニン(CCK)-33、サイトカイン誘導好中球走化性因子-1/増殖関連癌遺伝子(CINC)、コリベリン、コルチコトロピン放出因子(CRF)、コルチスタチン、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、デコルシン、ヒト好中球ペプチド-1(HNP-1)、HNP-2、HNP-3、HNP-4、ヒトデフェンシンHD5、HD6、ヒトベータデフェンシン-1(hbd1)、hbd2、hbd3、hbd4、デルタ睡眠誘発ペプチド(DSIP)、ダームシジン(Dermcidin)-1L、ダイノルフィンA、エラフィン、エンドキニンC、エンドキニンD、b-リポトロピン、g-エンドルフィン、エンドセリン-1、エンドセリン-2、エンドセリン-3、ビッグエンドセリン-1、ビッグエンドセリン-2、ビッグエンドセリン-3、エンフビルチド(Enfuviritide)、エキセンジン-4、MBP、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、GluフィブリノペプチドB、ガラニン、ガラニン様ペプチド、ビッグガストリン(ヒト)、胃抑制ポリペプチド(GIP)、ガストリン放出ペプチド、グレリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GLP-2、成長ホルモン放出因子(GRF、GHRF)、グアニリン、ウログアニリン、ウログアニリン異性体A、ウログアニリン異性体B、ヘプシジン、肝臓発現抗菌ペプチド(LEAP-2)、ヒューマニン、連結ペプチド(rJP)、キスペプチン-10、キスペプチン-54、リラグルチド、LL-37(ヒトカテリシジン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、マガイニン1、マストパラン、アルファ-接合因子、肥満細胞脱顆粒(MCD)ペプチド、メラニン凝集ホルモン(MCH)、アルファ-メラニン細胞刺激ホルモン(アルファ-MSH)、ミッドカイン、モチリン、神経内分泌調節ペプチド1(NERP1)、NERP2、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ニューロメジンB、ニューロメジンC、ニューロメジンS、ニューロメジンU8、ニューロスタチン-13、神経ペプチドB-29、神経ペプチドS(NPS)、神経ペプチドW-30、神経ペプチドY(NPY)、ニューロテンシン、ノシセプチン、ノシスタチン、オベスタチン、オレキシン-A、オステオカルシン、オキシトシン、カテスタチン、クロモグラニンA、副甲状腺ホルモン(PTH)、ペプチドYY、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド38(PACAP-38)、血小板因子-4、プレクタシン、プレイオトロフィン(Pleiotrophin)、プロラクチン放出ペプチド、ピログルタミン化RFアミドペプチド(QRFP)、RFアミド関連ペプチド-1、セクレチン、血清胸腺因子(FTS)、ナトリウムカリウムATPアーゼ阻害剤-1(SPAI-1)、ソマトスタチン、ソマトスタチン-28、ストレススコピン(Stresscopin)、ウロコルチン、サブスタンスP、エキスタチン、エンテロトキシンSTp、ガンギシトキシン-1E(Guangxitoxin-1E)、ウロテンシンII、血管作用性小腸ペプチド(VIP)およびバソプレシン、ならびにこれらの断片および誘導体を含む。上記ペプチドは、ヒト、またはラット、マウス、ブタなどの動物起源のものであり得る。これらのうちの全てが当業者に周知であり、そのアミノ酸配列は容易に入手可能である。
種々の他の実施形態では、50アミノ酸長超のポリペプチドまたはタンパク質が、環化基質として使用される。このような反応では、ポリペプチド/タンパク質が、そのC末端をそのN末端にライゲーションすることによって環化され得る。
種々の実施形態では、2つ以上のペプチドが本発明の酵素によってライゲーションされる。これは、2つ以上のペプチドからなる大環状分子の形成を含み得、好ましくは大環状ダイマーである。ライゲーションされるペプチドは、これらのうちの少なくとも1つがリガーゼ/シクラーゼによって認識、結合およびライゲーションされる認識配列およびライゲーション配列を含有する限り、任意のペプチドであることができる。適切なペプチドは、環化戦略に関連して上に記載されている。同じペプチドを、同じであっても異なっていてもよい別のペプチドへのライゲーションに使用することもできる。ライゲーションされるペプチドの1つは、例えば酵素活性または別の生物学的機能を有するポリペプチドであり得る。ライゲーションされるペプチドはまた、マーカーペプチド、または蛍光マーカーもしくはビオチンなどの検出可能なマーカーを含むペプチドを含み得る。このような実施形態によると、生理活性を有するポリペプチドを検出可能なマーカーに融合することができる。種々の実施形態では、ライゲーションされるペプチドの少なくとも1つが、25アミノ酸以上、好ましくは50アミノ酸以上の長さを有する(よって、本発明の意味では、「ポリペプチド」であり得る)。
ライゲーションされるペプチドは、配列番号32~42に記載のアミノ酸配列のいずれかを含むことができるか、またはからなることができる。ライゲーションされて(大環状)ダイマーを形成する好ましいペプチドは、配列番号32~36のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。(1つのC末端ペプチドと)ライゲーションされて直鎖融合ペプチドを形成する好ましいN末端ペプチドは、配列番号22、25および32のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。(1つのN末端ペプチドと)ライゲーションされて直鎖融合ペプチドを形成する好ましいC末端ペプチドは、配列番号23、24および26のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を有するペプチドを含む。
ライゲーションまたは環化されるペプチドはまた、Asx含有タグがライゲーションまたは融合される目的のペプチドにC末端融合している融合ペプチドまたはポリペプチドであることができる。Asx含有タグは、好ましくは種々の実施形態を含む、上に定義されるアミノ酸配列N/D(X)を有する。あるいは、アミド化NまたはD(上に定義されるNまたはD)が、ライゲーションまたは融合されるペプチドまたはポリペプチドのC末端に融合され得る。この融合ペプチドまたはポリペプチドがライゲーションされる他のペプチドは上に定義される通りであり得る。あるいは、融合ペプチドまたはポリペプチドは、そのC末端とN末端との間で結合を形成することによって環化され得る。一実施形態では、融合ペプチドまたはポリペプチドが、アミノ酸配列NHV(配列番号43)のC末端タグに融合した緑色蛍光タンパク質(GFP)であり得、ライゲーションされたペプチドが、アミノ酸配列GIGK(ビオチン化)R(配列番号44)のビオチン化ペプチドであり得る。一般的に、シグナル化部分もしくは検出可能な部分を持つペプチドなどのペプチドにライゲーションされ得るか、または本明細書に記載される方法および使用を使用して環化され得るポリペプチドおよびタンパク質は、限定されないが、抗体、抗体断片、抗体様分子、抗体模倣物、ペプチドアプタマー、ホルモン、種々の治療用タンパク質などを含む。
種々の実施形態では、リガーゼ活性が、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)などのフルオレセイン、または7-アミノ-4-メチルクマリンなどのクマリンを含む蛍光基などの検出可能な部分を持つペプチドを、上記のものなどのポリペプチドまたはタンパク質に融合させるために使用される。種々の実施形態では、タンパク質が、例えば配列番号45に記載のアミノ酸配列を有する、ヒト抗ABL scFvなどの抗体断片、またはdarpin(設計されたアンキリンリピートタンパク質)、例えば配列番号46に記載のアミノ酸配列を有する、ヒトERKに特異的なdarpinなどの抗体模倣物であることができる。
フルオレセインもしくはその誘導体などの検出可能なマーカー、および/または元素I-125もしくはI-131で容易に放射標識され得るペプチドの使用、これにより、PETまたはSPECT、引き続いて臓器選択または生検での蛍光検出を使用して、インビボで腫瘍の単一試薬イメージングを使用することが可能になる。
なお別の態様では、本発明は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、前記ペプチドの環化を可能にする条件下で、本発明の使用に関連して上に記載されるリガーゼ/シクラーゼ活性を有するポリペプチドとインキュベーションする工程を備える、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を環化する方法に関する。
なおさらなる態様では、本発明は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を、前記ペプチドのライゲーションを可能にする条件下で、本発明の使用に関連して上に記載されるポリペプチドとインキュベーションする工程を備える、少なくとも2つのペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をライゲーションする方法に関する。
種々の実施形態では、これらの方法により環化またはライゲーションされるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が、上記使用により環化またはライゲーションされるペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質と同様に定義される。
本明細書に記載される方法および使用では、酵素および基質が、モル比1:100以上、好ましくは1:400以上、より好ましくは少なくとも1:1000で使用され得る。
反応は、典型的には最適な酵素活性を可能にする温度、通常は周囲(20℃)~40℃の間の温度で、適切な緩衝系中で行われる。
固体支持体上への酵素の固定化は、同じバッチの酵素を反復して使用することによって酵素消費を低下させるという第一目標があり、長い歴史を有する。加えて、固相固定化の部位分離が、凝集を減少させ、生体触媒の安定性および活性の増加につながり、酵素による生成物の汚染を回避することによって精製を単純化する。結果として、食品業界の固定化ラクターゼおよびバイオディーゼル生成の固定化リパーゼなどの固定化生体触媒が、工業的使用のために10億規模の市場まで開発されてきた。化学触媒を使用する従来の工業プロセスと比較して、固定化酵素は経済的に魅力的であり、環境に優しい。
いずれかの担体への付着、または非共有結合的物理的捕捉、および自己架橋を含む3つの主流固定化技術がある。生体分子に基づく基質のための露出した基質結合表面を有するPALなどの生体触媒については、共有結合法および親和性結合法のいずれかによる親水性多孔質樹脂への付着に基づく戦略が、水性条件でのその性能を促進するために直接的で、簡便で実行可能である。
こうして固定化されたペプチドリガーゼは、大環状化および部位特異的ライゲーション反応の媒介において安定であり、再使用可能であり、大いに効率的である。
本発明者らは、天然ブテラーゼ-1を固定化する異なる方法を比較し、アスパラギニルリガーゼVyPAL2を組換え的に発現させた。驚くべきことに、PALの固定化が、中性pH付近で極めて遅い速度ではあるが凝集および低活性形態への自己分解を含む可溶性酵素の限界を克服することが分かった。固体支持体上への固定化の主な利点は、部位分離および偽希釈(pseudo-dilution)を提供して、トランス自己分解を防ぎ、安定性を増強する。本発明者らは、固定化リガーゼのこれらの主な利点:低下しない酵素活性で再利用可能な100回超の実行、安定性の増強および長期貯蔵寿命、ならびにより単純な下流精製プロセスを確認した。より重要なことに、固定化酵素の部位分離が、ワンポット条件下または連続フロー反応器中で、高い酵素濃度の使用を可能にして、ライゲーション反応を加速し、分単位で、環化、シクロオリゴマー化およびライゲーション反応などを完了させることが分かった。これらの利点は、リガーゼの量の減少、工業規模のためのスケールアップ使用およびナノデバイスへの適合において幸先の良いものである。
したがって、本発明の一態様では、上記方法および使用において、リガーゼ/シクラーゼ活性を有するポリペプチドが、適切な支持体材料上に固定化され得る。適切な支持体材料は、クロマトグラフィーカラムなどで使用される種々の樹脂およびポリマーを含む。支持体は、ビーズの形態を有し得るか、またはマイクロタイタープレートなどのより大きな構造の表面であり得る。固定化は、基質との極めて容易で単純な接触、ならびに合成後の酵素と基質の容易な分離を可能にする。酵素機能を有するポリペプチドが固体カラム材料上に固定化される場合、ライゲーション/環化が連続プロセスであり得る、および/または基質/生成物溶液がカラムを循環させられ得る。
したがって、本発明はまた、一態様では、その上に固定化された本発明による単離ポリペプチドを含む固体支持体材料を網羅する。固体支持体材料は、上記のものなどの、ポリマー樹脂、好ましくは微粒子形態のポリマー樹脂を含み得る。単離ポリペプチドは、共有結合または非共有結合相互作用によって、固体支持体材料上に固定化され得る。固体支持体は、例えば、アガロースビーズであり得る。
例示的な実施形態では、リガーゼ/シクラーゼ活性を有するポリペプチドがグリコシル化され、カナバリア・エンシフォルミス(Canavalia ensiformis)(タチナタマメ)から単離されるレクチン(炭水化物結合タンパク質)であるコンカナバリンA(ConA)によって固定化され得る。これは、糖タンパク質および糖脂質を含む、α-D-マンノースおよびα-D-グルコース含有生体分子に特異的に結合する。前記ConAタンパク質は、糖タンパク質および糖脂質を固定化するために親和性カラム上に固定化された形態で使用される。したがって、種々の実施形態では、リガーゼ/シクラーゼ活性を有する単離ポリペプチドが、グリコシル化され、固体支持体材料表面にカップリングされた炭水化物結合部分、好ましくはコンカナバリンAに非共有結合的に結合される。本発明のグリコシル化ポリペプチドの実施形態は上に記載されている。
上記の固体支持体材料は、少なくとも1つの基質ペプチドのオンカラム環化および/またはライゲーションに、あるいは少なくとも1つの基質を含む溶液を、少なくとも1つの基質ペプチドの環化および/またはライゲーションを可能にする条件下で、上記の固体支持体材料と接触させる工程を備える、少なくとも1つの基質ペプチドを環化またはライゲーションする方法に使用することができる。基質ペプチドは上記のものであり、上記ポリペプチド基質も含む。
種々の実施形態では、リガーゼまたはシクラーゼ活性を有するポリペプチドがグリコシル化され、固定化が、固体支持体に共有結合的に連結された炭水化物結合部分、好ましくはコンカナバリンA部分またはそのバリアントとの相互作用によって促進される。このような実施形態では、本発明のポリペプチドがブテラーゼ-1(配列番号18(活性断片)または配列番号88(完全長配列)のアミノ酸配列を含む)であり得、固体支持体がアガロースビーズであり得る。
種々の他の実施形態では、リガーゼまたはシクラーゼ活性を有するポリペプチドがビオチン化され、固定化が、固体支持体に共有結合的に連結されたビオチン結合部分、好ましくはストレプトアビジン、アビジンもしくはニュートラアビジンまたはこれらのバリアントとの相互作用によって促進される。ポリペプチドのビオチンによる機能化は、スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエートなどのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いたビオチンエステルによる機能化などの当技術分野で知られている方法を使用して達成され得る。このような実施形態では、ポリペプチドが、配列番号1もしくは2のアミノ酸配列を有するVyPAL2または本明細書に定義されるこれらのバリアントであり得る。固体支持体はアガロースビーズであり得、ビオチン結合部分はニュートラアビジン(脱グリコシル化アビジン)などのアビジンバリアントであり得る。
種々の他の実施形態では、リガーゼまたはシクラーゼ活性を有するポリペプチドが、ポリペプチド中の、例えばリジン側鎖からの遊離アミノ基と固体支持体の表面上のN-ヒドロキシスクシンイミド官能基との反応によって、固体支持体上に固定化される。固体支持体はアガロースビーズであり得、ポリペプチドは、配列番号1もしくは2のアミノ酸配列を有するVyPAL2または本明細書に定義されるこれらのバリアントであり得る。
種々のさらなる態様では、本発明はまた、アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドのタンパク質リガーゼ活性を増加させる方法であって、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基を小さい疎水性残基またはG残基のいずれか、好ましくはAまたはG残基で置換する工程を備える方法を特徴とする。種々の実施形態では、特に配列番号1の126位に対応する位置がGである場合、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基がAである。種々の実施形態では、配列番号1の126位に対応する位置がAである場合、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基がPである。種々の実施形態では、配列番号1の126位および127位に対応する位置のモチーフが、GPではなく、AP、AAまたはGAのいずれかである。配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸が、モチーフAP、AAまたはGAが得られるようなものではない場合、これを置換してもよい。上記のように、LAD2モチーフ内の前記位置が、酵素方向性の決定的な決定因子であり、GAおよびGPが一般的に優勢にまたは排他的にリガーゼ機能性を有する酵素をもたらすことが分かった。
種々の実施形態では、前記方法がまた、タンパク質リガーゼ活性を有するポリペプチドを生成する方法であって、
(i)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドを提供する工程と;
(ii)1つまたは複数のアミノ酸置換を、アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドに導入する工程であって、前記置換は、配列番号1の126/127位に対応する位置のアミノ酸配列がGA、AAまたはAP、好ましくはGAまたはAPのいずれかとなるように、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基をAまたはG残基で置換すること、および任意選択で配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基をPまたはAのいずれかの残基で置換することを含む、工程と
を備える、方法であり得る。
また、このような方法では、特に配列番号1の126位に対応する位置がGである場合、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基がAであるか、または配列番号1の126位に対応する位置がAである場合、配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基がPであり、配列番号1の126位および127位に対応する位置のモチーフがGPではなく、好ましくはAP、AAまたはGAのいずれかである。配列番号1の127位置に対応する位置のアミノ酸が、モチーフAP、AAまたはGAが得られるようなものではない場合、本方法が、工程(ii)で前記位置を置換することを含んでもよい。
そのリガーゼ/シクラーゼ活性を増加させるために前記方法に供されるポリペプチドは、アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)であり得、種々の実施形態では、その全長にわたって配列番号10~14(VyAEP1~4;VcAEP)のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列相同性または配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得るか、またはからなり得る。種々の実施形態では、変異されるポリペプチドが、配列番号1の126位および127位に対応する位置が配列モチーフGAもAPも有さないように、GでもAでもない配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基を有する。しかしながら、これがモチーフGPを有してもよく、その場合、これを記載される方法で、GA、AAまたはAPによって置換することができる。
本発明はまた、本明細書に記載されるタンパク質リガーゼおよび/またはシクラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸分子を含む植物などのトランスジェニック生物を包含する。ポリペプチドは、好ましくは前記宿主生物にも宿主植物にも天然に存在しない。したがって、本発明はまた、本発明による異種ポリペプチドを発現する、ヒトを除く、トランスジェニック生物/植物を特徴とする。
種々の実施形態では、このようなトランスジェニック生物/植物が、1つもしくは複数の環化されるペプチドまたは1つもしくは複数のライゲーションされるペプチドをコードする少なくとも1つの核酸分子をさらに含み得る。これらは、本発明の使用および方法に関連して上に定義されるペプチドであり得る。一実施形態では、環化されるペプチドが、環状システインノットポリペプチド、例えば上に定義されるものなどの直鎖前駆体である。環化されるペプチドまたはポリペプチドのこれらの前駆体は、前記生物/植物に天然に存在し得るが、好ましくは人工的に導入される、すなわち、これらをコードする核酸が異種である。
そのため、このようなトランスジェニック生物/植物は、酵素およびその基質の同時発現により、目的の環化ペプチドを直接生成し得る。
ポリペプチドおよび核酸に関して本明細書に開示される全ての実施形態が、本明細書に記載される使用および方法に同様に適用可能であり、逆もまた同様である。
本発明は、以下の非限定的な実施例および添付の特許請求の範囲によってさらに例示される。
材料および方法
RNA抽出およびVyトランスクリプトームの構築およびAEPアナログの検索
9月初旬に収穫した新鮮なノジスミレ(Viola yedoensis)を、Trizol法によるRNA抽出に供し、RNA試料をIllumina Hiseqシーケンシング(Beijing Genetic Instituteによって提供されるサービス)に供した。配列データベースは、アクセッション番号PRJNA494974でNCBI SRAデータベースに保存(deposit)されている。Trinityを使用したアセンブリー後、86674個のUnigeneを与える、14.69GB塩基を含有するデータが生成された。blastpサーバーを使用した相同性検索のためのブテラーゼ1プロ酵素アミノ酸配列、開始コドンおよび終止コドンを含有する6つの完全配列、完全機能的コアドメインおよびN-またはC末端欠損配列を有する3つの部分配列、および不完全コアドメインを有する2つの切断配列を含む、1e-103未満のE値を有する11個のAEP様mRNA配列を同定した。BioEditでClustalWを使用して配列アラインメントを実施した。ブテラーゼ1プロ酵素配列を使用した検索により、60%超の配列同一性および90%超の配列包括度で500を超えるヒットが得られた。
細菌におけるVyAEP/PALおよびVcAEPのクローニング、組換え発現および精製
予測されたシグナルペプチドを含まないVyAEP1(Vy=ノジスミレ(Viola yedoensis))、VyPAL1~3およびVcAEP(Vc=ヴィオラ・カナデンシス(Viola Canadensis))cDNA配列を合成し、N末端His6タグとインフレームでNdeI/XhoI制限酵素を用いてpET28a(+)(GenScript、北京、中国)にクローニングした(ヘームーら(Hemu et al.)(2019)PNAS、2019年6月11日、第116巻、第24号、11737-11746)。Q5変異誘発キット(NEB)を使用して、点突然変異を構築した。プラスミドを、DsbCを構成的に発現するとともにErv1p発現プラスミドpMJS9でプレ形質転換されたSHuffle T7大腸菌(E.coli)に形質転換した。OD600=0.4の形質転換細胞の新鮮な培養物を0.1%アラビノースで1時間処理して、Erv1pの生成を誘導し、引き続いて16℃で18~24時間の0.1mM IPTG処理をして、標的タンパク質の発現を誘導した。1L体積の誘導細胞培養物からの細菌細胞を、6000gで15分間の遠心分離によって収穫した。10mL体積の溶解緩衝液(50mM Na HEPES、0.1M NaCl、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノール、0.1%TritonX-100 pH7.5)を添加していずれも1gの細胞ペレットを再懸濁した。氷上で20分間、5秒/5秒パルスで50%振幅での超音波処理によって細胞溶解を行った。可溶性タンパク質を含有する清澄化細胞溶解物を、冷結合緩衝液(50mM Na HEPES、0.1M NaCl、1mM EDTA、5mM β-ME、pH7.5)で前平衡化した1mL COmpleteニッケルビーズ(Roche)を含有するセルフパックカラムに充填した。20mLの洗浄緩衝液(50mM HEPES、50mMイミダゾール、0.1M NaCl、1mM EDTA、5mM β-ME、pH7.5)で洗浄した後、His6-タンパク質を、4×2mLの溶出緩衝液(50mM HEPES、500mMイミダゾール、0,1M NaCl、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノール、pH7.5)で溶出した。溶出タンパク質の10倍希釈物を、イオン交換(IEX)緩衝液A(20mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.5、1mM EDTA、5mMメルカプト-エタノール)で平衡化したGE HiTrap Q 5mLカラム(GE life sciences)に充填した。タンパク質を、IEX緩衝液B(20mMリン酸ナトリウム緩衝液中1M NaCl、pH7.5、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノール)の勾配で溶出した。次いで、標的タンパク質を含有する画分を4回濃縮した後、20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.55、0.1M NaCl、5%グリセロール、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノール中で平衡化したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラム(S75 16/60)に注入した。次いで、タンパク質を約1mg/mL(20μMに相当する)に濃縮し、20%スクロースおよび0.1%Tween-20を添加した後、4℃または-80℃で貯蔵した。
昆虫細胞におけるVyAEP/PALのクローニング、組換え発現および精製
cDNAを、N末端His6-TEVタグとインフレームにpFB-Sec-NH(Amp)ドナーベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)DH10Bacコンピテント細胞(Invitrogen)に形質転換した(シュレスタ・ベットら(Shrestha Bet al.)(2008)Methods in Molecular Biology(Clifton、N.J.)、269-289頁)。X-gal青/白選択(37℃、48時間)後の白色コロニーを、M13/FBAC2プライマーミックスを使用したコロニーPCRおよび配列決定のために選抜した。QIAprepキット(Qiagen)の再懸濁、溶解および中和緩衝液を使用したバクミド生成、引き続いてイソプロパノール沈殿のために陽性コロニーを増幅させた。抽出したバクミドを、cellfectinおよびグレース昆虫培地(Gibco、Thermo Fisher Scientific)を使用して、ウイルスパッケージング用のSf9(ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda))昆虫細胞にトランスフェクトした。72時間後、P0ウイルスを含有する上清を感染のために収穫した。3ラウンドのウイルスの感染および増幅後、2.5×10細胞/mLの濃度の1LのSF9昆虫細胞を、25mLのP3ウイルスで感染させ、27℃、120rpmで72時間培養した。分泌タンパク質を含有する培地を、4000gで20分間の遠心分離によって回収した。次いで、上清のpHを7.5に設定した後、GE excel親和性精製カラム(GE life sciences)に注入した。結合後、緩衝液A(20mM Na HEPES pH7.5、150mM NaClおよび5mM β-メルカプト-エタノール)を使用してビーズを洗浄した。500mMイミダゾールを補充した緩衝液Aを用いて標的タンパク質の溶出を達成し、タンパク質を含有する画分を10回希釈し、上記のIEXおよびSEC精製に供した。
酸誘導自己活性化
0.5間隔の4~7の範囲のpH緩衝液、50mMクエン酸ナトリウム緩衝液または50mMリン酸ナトリウム緩衝液(1mM EDTAおよび5mM β-メルカプト-エタノールを含む)、4種の温度(4℃、16℃、25℃および37℃)、時間(15分間~16時間)で、いくつかの界面活性剤添加剤(Tween-20、TritonX-100、N-ラウロイルサルコシンおよびBrij35、0.05mM~1mMの濃度)を使用した様々な条件下で活性化を実施した。活性化試料を、SDS-PAGEと活性試験(50nMプロ酵素に相当する量の活性化酵素溶液、20μM GN14-SL、20mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5、1mM DTT、1mM EDTAを37℃で5分間インキュベーションし、引き続いてMALDI-TOF質量分析により生成物形成)の両方で分析した。これにより、最適活性化条件が、pH4.5(50mMクエン酸ナトリウム緩衝液、1mM DTT、1mM EDTA、0.1M NaCl)、4℃で12~16時間、0.5mM N-ラウロイルサルコシンを用いた酸性化であることを決定することが可能であった。その後、活性酵素を、SEC緩衝液(20mMクエン酸ナトリウム緩衝液、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノール、5%グリセロール、0.1M NaCl)中pH4.0で前平衡化されたサイズ排除クロマトグラフィーカラム(S100 16/60)で精製した。標的タンパク質を含有する画分を溶出後にpH5.0~6.5に中和し、さらに使用するまで、20%スクロースを添加した後、4℃または-80℃で貯蔵した。
自己活性化部位の決定
活性化酵素をSDS-PAGEに供し、活性タンパク質を含有するゲルバンド(33~35kDa周りに移動)をゲル内消化のために薄切片に切断した。ジスルフィド結合の還元およびアルキル化を、pH8.6の1Mトリス-HClを含有する緩衝液中5mM DTTおよび10mMブロモエチルアミンを添加することによって、55℃で30分間加熱することによってワンポットで実施した。トリプシン消化を、pH7.8、37℃で一晩、10μg/mLの量のトリプシン(Pierce、MSグレード、Thermo Scientific)で実施し、これにより主にArg、LysおよびCys-エチレンアミンの後のペプチド結合切断が得られた。消化されたペプチドを、50%アセトニトリル(0.1%ギ酸)でゲル片から抽出し、溶媒をSpeedvacによって除去した。消化されたペプチドを1%ギ酸に再溶解し、前に記載されるように(ヘームー・エックスら(Hemu X,et al.)(2018)Methods Mol Biol.2018;1719:379-393;セラ・エーら(Serra A,et al.)(2016)Sci Rep 6(1):23005)、Orbitrap Elite質量分析計(Thermo Scientific Inc.、ブレーメン、ドイツ)と連結したDionex UltiMate 3000 UHPLCシステム(Thermo Scientific Inc.、ブレーメン、ドイツ)でのLC-MS/MS配列決定に供した。高エネルギー衝突解離(HCD)を使用してペプチドを断片化した。トリプシン消化から得られたスペクトルを、10ppm MSおよび0.05Da MS/MS許容誤差を適用したPEAKS studio(バージョン7.5、Bioinformatics Solutions、ワーテルロー、カナダ)を使用して分析した。ペプチドスペクトルの品質を手動で評価した。
種々のpH値での酵素活性の特性評価
280nm吸光度(NanoDrop(商標)2000 Spectrophotometer、Thermo Fisher Scientific)によって決定されるタンパク質濃度を有する精製された活性酵素を使用して酵素活性を調べた。4.5~8.0の範囲のpH値を有する反応緩衝液(20mMクエン酸ナトリウム緩衝液または20mMリン酸ナトリウム緩衝液、1mM EDTA、5mM β-メルカプト-エタノールを含む)中に40nM活性酵素、20μM基質GN14-SLを含有する反応混合物を37℃で10分間インキュベーションし、10倍体積の0.2%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加してpHを2未満の値に減少させることによって反応をクエンチした。MALDI-TOF質量分析を使用して反応結果を予備的にチェックし、C4分析カラム(Aries widepore 150×4.6mm、Phenomenex)でのRP-HPLCによって反応生成物を定量化した。ピーク面積をLCソリューションポストラン分析ソフトウェア(Shimadzu)で得た。
基質特異性および酵素速度論
ペプチドライブラリー1は、そのX(n)(n=0~4残基)がスミレ科(Violaceae)およびマメ科(Fabaceae)種由来の天然シクロチド前駆体に由来する、合成ペプチドGN14-X(n)およびGD14-X(n)(GN14=配列番号48)を含有する。ペプチドライブラリー2は20個の合成ペプチドGN12-XL(GN12=GLYRRGRLYRRN;配列番号47)を含有し、ペプチドライブラリー3は20個の合成ペプチドGN12-GX(Xは20個の天然アミノ酸のそれぞれ)を含有する。VyPAL2媒介環化反応を、pH6.5、37℃で10分間、一定のモル比の活性酵素:基質(1:500)を用いて実施し、反応を0.2%TFAでクエンチした。各基質を3連で試験し、RP-HPLCを使用して定量的に分析した。
速度論試験のために、環化反応を、pH6.5、37℃で、一定濃度の活性酵素(10nM)および種々の濃度(2~20μM)の基質GN14-SLAN(配列番号48+SLAN)を用いて行った。環化生成物cGN14の収率を20秒毎の間隔でRP-HPLCによって定量化し、各酵素の速度論パラメータ(kcatおよびK)を分析するために、初期速度V(μM/秒)を基質濃度[S](μM)に対してプロットして、ミカエル-メンテン曲線を得た(GraphPad Prism)。
VyPAL2の結晶化、データ収集および構造決定
濃度10mg/mlのVyPAL2を結晶化についてスクリーニングした。X線結晶構造解析に適した結晶は、20%PEG3350および0.2Mギ酸マグネシウム二水和物中で3~7日後に現れた。次いで、結晶をcryo-loopにマウントし、液体窒素中で急速凍結した。回折データを、Australian SynchrotronにおいてMX2 Beamlineで、173℃(100K)で収集した。XDSソフトウェア(カブシュ・ダブリュー(Kabsch W)(2010)Xds.Acta Crystallogr Sect D Biol Crystallogr 66(2):125-132)を使用してデータ処理を実施した。データ収集統計を以下の表S1に示す。OaAEP-C247A(PDBアクセスコード:5H0I(ヤン・アールら(Yang R,et al.)(2017)J Am Chem Soc 139(15):5351-5358)モノマー構造を検索プローブとして使用して、分子置換法によって構造を解明した。プログラムMolrep(CCP4スイートのプログラムから)を使用して、非対称単位の2つの独立した分子を含有する明確なソリューションを得た。Buster/TNT(GlobaPhasing Ltd)を使用して精密化を実施し、Coot program for molecular graphics(CCP4)を使用してモデルの手動補正を実施した。PyMol(Schrodinger)を使用して構造分析および図の作成を実現した。精密化統計を表S1に提示する。
Figure 2022533545000002
分子動力学(MD)シミュレーション
VyPAL2に結合したモデル化ペプチド基質の平衡化位置を得るために、参考文献(シェクター・アイ(Schechter I)、バーガー・エイ(Berger A)(1967)Biochem Biophys Res Commun 27(2):157-162)からモデル化された初期VyPAL2-ペプチド複合体を、NAMD2.12を使用した全原子、溶媒明示分子動力学シミュレーションに供した(フィリップス・ジェイシーら(Phillips JC,et al.)(2005)J Comput Chem 26(16):1781-1802)。VyPAL2の環化アスパラギン酸を通常のアスパラギン酸で置き換えた。複合体を水ボックス(water box)でシミュレーションし、溶質とボックス境界との間の最小距離は3軸全てに沿って10Åとした。溶媒和系の電荷を対イオンで中和し、溶媒のイオン強度を、VMDを使用して150mM NaClに設定した(ハンフリー・ダブリュー(Humphrey W)、ダールケ・エイ(Dalke A)、シュルテン・ケイ(Schulten K)(1996)J Mol Graph 14(1):33-8、27-8)。完全溶媒和系を10000工程にわたってコンジュゲート-勾配最小化に供し、その後、5psの工程で37℃(310K)に加熱した。系を、合計20nsの間、タンパク質リガーゼの骨格原子、ならびに制約されたペプチドのN343のCα原子を用いて、U(x)=k(x-xref(式中、kは4184kg・m・秒-2mol-1-2(1kcal mol-1-2)であり、xrefは初期原子座標である)の形態の調和ポテンシャルを使用してシミュレーションした。このような制約によって、VyPAL2の側鎖およびペプチド基質の残りが自由に移動することが可能になる。タンパク質についてはCHARMM36力場を仮定し(ベスト・アールビーら(Best RB,et al.)(2012)J Chem Theory Comput 8(9):3257-3273)、水分子についてはTIP3Pモデルを仮定して、NPTアンサンブル下で全てのシミュレーションを実施した。
酵素、ビーズおよび基質
ブテラーゼ-1を、地元のハーブ園で栽培されたクリトリア・テルナテア(Clitoria ternatea)の植物材料から抽出した。以前のプロトコル(グエンら(Nguyen et al.)、Nat Protoc 2016、11(10)、1977-1988)に記載される数ラウンドのHPLC(Shimadzu)でのサイズ排除および陰イオン交換クロマトグラフィー後、精製されたブテラーゼ-1を得て、20mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、5mM β-メルカプトエタノール(β-ME)および20%スクロースを含有するpH6.0緩衝液中、4℃または-80℃で貯蔵した(store)。前に記載されるように(ヘームーら(Hemu et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2019、116(24)、11737-11746)、N末端GP64シグナルペプチドによって支配される分泌経路を介して、Sf9昆虫細胞中でBac-to-Bac(登録商標)バキュロウイルス系(Thermo Fisher Scientific)を使用して組換えVyPAL2を発現させた。発現したプレ酵素を、HisTrap Excelカラム(GE Healthcare)でのニッケル親和性結合、HiTrap Qカラム(GE Healthcare)でのイオン交換クロマトグラフィー、およびNGC-FPLC System(Bio-Rad)を使用したHiLoad Superdex 75カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。酸誘導自己活性化を、1mMジチオトレイトール(DTT)および0.5mM N-ラウロイルサルコシンの存在下、pH4.5、4℃で一晩実施した。分子量約35kDaの活性化酵素を、pH4.0クエン酸緩衝液を用いてサイズ排除クロマトグラフィーによって再度精製した。精製した活性酵素を、20mMリン酸ナトリウム、0.1M NaCl、5mM β-MEおよび20%スクロースを含有するpH6.5緩衝液中、4℃または-80℃で貯蔵した。
全てのビーズは商業的供給源からのものである。Pierce(商標)NHS-活性化アガロースビーズ(Thermo Fisher Scientific)は、1~20mgタンパク質/mLのタンパク質負荷を有する。Pierce(商標)NeutrAvidin(商標)アガロースビーズ(Thermo Fisher Scientific)は、8mg超のビオチン化タンパク質/mLのタンパク質負荷を有する。コンカナバリンA(ConA)アガロースビーズ(G-Biosciences)は、15~30mgのConA/mLのタンパク質負荷を有する。
KN14-GL、GN14-HV、GN14-GL、GN14-SLAN、STFI(D/N)-HV、RV7およびGLAK(FAM)RG(FAM、フルオレセインアミダイト)を含む、活性アッセイで使用される全てのペプチド基質は、前に記載されるプロトコル(ヘームー・エックス(Hemu,X.);チャン・エックス(Zhang,X.);タム・ジェイピー(Tam,J.P.)、Org.Lett.2019)を使用して、Liberty-1マイクロ波合成装置(CEM)でFmoc化学によって合成した。タンパク質基質AS-48K(配列番号19)も化学的に合成した。精製したAS-48Kを8M尿素に溶解し、透析による再折り畳みを受けさせた(ヘームーら(Hemu et al.)J.Am.Chem.Soc.Comm.2016、138(22)、6968-71)。タンパク質基質DARPin9_26-NGLを、N末端His6-TEV-GLGSG配列およびC末端GSGSNGLテール(配列番号49)とpET28a(+)ベクターにクローニングした。組換え発現を、16℃で0.1mM IPTGによる24時間の誘導後、Shuffle(登録商標)T7大腸菌(E.coli)(New England Biolabs)で行った。可溶性タンパク質を細胞溶解物から抽出し、NGC-FPLC System(Bio-Rad)を使用して、HisTrap HP 5mLカラム(GE Life Sciences)でのNi-NTA親和性クロマトグラフィーおよびHiTrap Q 5mLカラム(GE Life Sciences)でのイオン交換クロマトグラフィーによって精製した。
PALの熱安定性
1μgの酵素を、8×SYPRO橙色蛍光色素(Thermo Fisher Scientific)と混合し、96ウェルプレート中で5~8の範囲のpHの一連の緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、0.1M NaCl、5mM β-ME)を用いて最終体積25μLに希釈した。pH緩衝液。ThermoFluor Assayを、温度を25℃から85℃まで増加させて、リアルタイムPCR検出システム(Bio-Rad)で行った。RFU/℃の変化を温度に対してプロットすることによって、融解温度を計算した。
可溶性PALおよび固定化PALによって媒介される反応
そのConA-反応緩衝液が追加の5mM CaClおよび5mM MgClを含有するConA-Bu1を除いて、リン酸反応緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.5、0.1M NaCl、1mM DTT)を使用して、可溶性PALまたは固定化PALによる全ての反応を行った。反応pHを6.5で維持して、酵素活性を最大化した。使用前に還元試薬DTTを新たに添加した。反応を、加熱することなく室温で実施して、還元酵素の分解を防いだ。反応混合物を、MALDI-TOF質量分析または逆相(RP)HPLCによって分析した。
NHS活性化アガロースビーズ上への固定化
酵素溶液を、冷PBS(pH7.4)を用いて10μMの濃度に調製し、NHS活性化アガロース乾燥樹脂(75mgは1mL溶液を要する)に添加し、調製物を4℃で3時間ゆっくり振盪した。次いで、混合物を冷スピンカラムに充填し、フロースルーを回収した。ビーズを、ビーズ体積の2倍の洗浄緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、1mM DTT、5%グリセロール、pH6.0または6.5)で洗浄し、結合および洗浄後にフロースルーを回収した。穏やかに振盪しながら、4℃で1時間、ビーズをクエンチ緩衝液(1Mトリス-HCl、pH7.4)に浸漬することによって、過剰なNHS基をブロッキングした。ビーズを反応緩衝液で再度洗浄し、引き続いて20%エタノールを含むビーズ体積の2倍の反応緩衝液を添加し、スラリーを4℃で維持した。
ビオチン化およびNeutrAvidinアガロースビーズ上への固定化
酵素溶液を5mM β-MEを含有する冷PBS(pH7.4)を用いて10μMの濃度に調製し、DMF(ストック濃度10mM)に溶解した20倍モル当量のEzlink(登録商標)NHS-LC-ビオチン(スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート、スペーサー長約2.2nm、Thermo Fisher Scientific)と混合した。ビオチン化を4℃で一晩行った。Vivaspin 10kDa MWCO遠心分離濃縮器(Sartorius、ドイツ)を使用してPBS(pH7.4)との緩衝液交換によって、過剰なNHS-LC-ビオチンを除去した。緩衝液交換後、ビオチン化酵素の活性を未処理酵素と比較したところ活性喪失を示さなかった。NAアガロースビーズをpH6.5反応緩衝液で平衡化した。0.2mLの平衡化ビーズと1mLのビオチン化酵素(5μM)の混合物を、4℃で3時間穏やかに振盪することによって調製し、引き続いて冷スピンカラムに充填し、フロースルーを回収した。ビーズをビーズ体積の20倍の反応緩衝液で洗浄し、5mM β-MEおよび20%エタノールを含むビーズ体積の2倍の反応緩衝液の存在下、4℃でスラリーとして維持した。
コンカナバリンAアガロースビーズ上への固定化
ConAビーズを、ビーズ体積の10倍の冷平衡化緩衝液(1M NaCl、5mM MgCl、5mM CaCl、pH7.2、Mgイオンをここで使用してMnイオンを置換した)で平衡化した(ヤング・エヌエム(Young,N.M.)、FEBS Lett 1983、161、247-250)。酵素溶液を、ConA反応緩衝液を用いて5μMの濃度に調製した。1ミリリットルの酵素溶液を、4℃で3時間ゆっくり振盪しながら、1mLの平衡化ConAビーズと混合した。混合物を冷スピンカラムに充填し、フロースルーを回収した。ビーズを、ビーズ体積の20倍のConA反応緩衝液で洗浄し、20%エタノールを含むビーズ体積の2倍のConA反応緩衝液中、4℃でスラリーとして維持した。エタノールを用いてまたは用いないで貯蔵した固定化酵素の活性は有意な差異を示さなかった。
固定化収率の決定
280nmでのUV吸光度を測定することによって、Nanodrop 2000分光高度計(Thermo Fisher Scientific)を使用して、結合および洗浄後のフロースルー中の未結合タンパク質の濃度を決定した。洗浄後のフロースルーのために、遠心濾過器(Vivaspin 10kDa MWCO、Sartorius)を使用した濃縮工程を実施して、280nmで0.008の感度閾値を有する分光計によって読み取り可能なタンパク質濃度をもたらした。
固定化PALの活性の決定
遊離ブテラーゼ-1(配列番号18)およびVyPAL2(配列番号2)を、1~8μMの範囲のストック濃度で調製した。各反応で、1μLの酵素ストックを、最終酵素濃度が10~80nMの範囲になるように、100μLの0.2mM KN14-GLに添加した。室温で5分間のインキュベーション後、0.5%TFAを添加してpHを2に下げることによって反応をクエンチし、全ての反応溶液を分析RP-HPLC(Aries-C18、150×4.6mm、3u、Shimadzu)に注入した。cKN14の量を、HPLCプロファイルにおける220nmでのピーク面積によって計算した。次いで、初期反応速度Vを、cKN14濃度/秒の増加によって計算した。酵素濃度に対する反応速度の標準曲線を各PALについてプロットし、これは試験した系における遊離酵素の代謝回転速度を反映する。計算の容易さのために、酵素濃度および対応する反応速度の単位を、遊離酵素のストック濃度に基づいて、それぞれ(μM)および(μM/秒)として変換した。同じ実験設定で、1mL系において、10μLのビーズを使用して、固定化PALの活性を調べた。1mLの反応溶液のうちの100μLを、生成物定量化のためにRP-HPLCに注入した。各固定化PALの反応速度も(μM/秒)に変換し、標準曲線と比較して、実際の有効濃度を計算した。可溶性PALの速度に対する固定化PALの速度によって活性比を計算した。
アクセッションコード。ブテラーゼ1のヌクレオチド配列は、アクセッション番号KF918345でGenBankデータベースに保存されている。
実施例1:スミレ科(Violaceae)トランスクリプトームにおけるAEPのマイニングおよび「ゲートキーパー」残基を使用した初期分類
スミレ科(Violaceae)は主なシクロチド産生植物科の1つであり、それらのゲノム中のPALの存在を示唆する。PALを同定する希望を抱いて、この科の2種の植物、ノジスミレ(Viola yedoensis)(Vy)またはヴィオラ・カナデンシス(Viola canadensis)(Vc)でのデータマイニングを実施した。
ノジスミレ(V.yedoensis)のトランスクリプトームを得るために、全RNAを新鮮な果実から抽出し、配列決定し、引き続いてデータベース(NCBI SRAアクセッション番号PRJNA494974)をアセンブリーした。ブテラーゼ1およびOaAEP1bの前駆体配列を使用して、AEPと相同な配列を検索した。6種の完全配列、インタクトなコアドメインを含有する3種の部分配列および捨てられた不完全コアドメインを有する2種の切断配列を含む合計11種のAEP前駆体がノジスミレ(V.yedoensis)から見出された。Vcのトランスクリプトームは1KPデータベースで容易に入手可能であり、ブテラーゼ1配列を使用したBLASTpによって、VcAEPと命名されたAEPホモログ(NJLF-2006002)が得られた。9種のVy配列およびVcAEPをクラスター化するために、ゲートキーパー残基の性質を基準として使用することを選択した:OaAEP1b(PDBアクセスコード:5H0I)の活性部位付近のCys残基(Cys-247)のより大きなアミノ酸(Thr、Met、Val、Leu、Ile)への変異によってライゲーション触媒効率が減少するが、Alaなどのより小さい残基への変異によって、100倍超改善されたライゲーション効率が得られることが以前観察された(ヤン・アールら(Yang R,et al.)(2017)J Am Chem Soc 139(15):5351-5358)。さらに、この「ゲートキーパー」残基のGlyへの変異によって、増加した量の加水分解生成物が得られ、S2基質結合ポケットに位置する、この部位が、酵素機能の調節において重要な役割を果たすことを示唆している。NCBIデータバンクで相同体について検索するためにブテラーゼ1アミノ酸配列を使用すると、90%の配列包括度で、60%を超える配列同一性を有する500超のヒットを与えた。その中でも、プロテアーゼと「二重機能性」リガーゼの両方を含む、95%超の配列が、ゲートキーパー部位にGlyを保有し、PALが植物AEPでまれであるという事実と一致していた。
この基準を使用して、4種のノジスミレ(V.yedoensis)配列を、ゲートキーパーとしてのGlyの存在により推定上のVyAEPとして分類し、VyAEP1~4(配列番号10~13)と指定した。他の5種の指定されたVyPAL1~5(配列番号5~9)ならびにV.カナデンシス(V.Canadensis)由来のVcAEP(配列番号14)を、ゲートキーパー残基としてVal(例えばブテラーゼ1)またはIleを含有するので、推定上のVyPALとして分類した。
実施例2:活性組換えVyAEPおよびVyPALの生成
配列同一性に基づいて、これらの推定上のAEPおよびPALを、4つのグループに分割することができた:VyAEP1および2(98.9%)、VyAEP3および4(96.2%)、VyPAL1、2、4および5(99%超)、ならびにVyPAL3。VyPAL3のみが、他の推定上のVyPALと70%未満のコア配列同一性を有するが、VcAEPと94%同一である。VyAEP1、VyPAL1~3およびVcAEPをさらなる試験のために発現させた。組換え発現を、細菌細胞系と昆虫細胞系の両方を使用して実施し、完全アミノ酸配列をコードする遺伝子を、親和性精製のために単一ペプチドをHisタグによって置換して、発現ベクターにクローニングした。金属親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィー(方法参照)後、細菌細胞系および昆虫細胞系は、それぞれ約0.5mg/mLおよび10~20mg/mLの推定上のプロ酵素をもたらした。
精製後、プロ酵素を、0.5mM N-ラウロイルサルコシン、5mM β-メルカプトエタノールおよび1mM EDTAの存在下、4℃、pH4.5で12~16時間の活性化に供した。このような穏やかであるが、長期の処理はキャップドメインの切断および分解を可能にし、キャップドメインの再ライゲーションを防ぐ。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、活性化酵素をさらに精製した。精製した活性VyPAL2の自己活性化部位をトリプシン消化活性化形態のLC-MS/MSシーケンシングによって決定した。コアドメインの両端のAsn/Asp切断部位は、N末端プロドメイン領域でN43/N46/D48であり、リンカー領域でD320/N333であることが分かった。これにより、複数の部位でのタンパク質プロセシングを通した抑制性キャップドメインの完全な除去および活性形態を含有する混合物の生成が確認された。
実施例3:VyAEP1およびVyPAL1~3のリガーゼ活性対プロテアーゼ活性
VyAEP/PALの活性を決定するために、1733DaのMWを有する「GN14-SL」と呼ばれるモデルペプチド基質GISTKSIPPISYRNSL(配列番号59)を調製した。GN14-SLは、Vyシクロチドの前駆体に由来するC末端のトリペプチド認識モチーフ「NSL」およびSFTI-1のアナログを含有する(図1A)。一定の酵素:基質モル比(1:500)を全てのライゲーション反応で使用し、これらの反応を、4.5~8.0(0.5間隔)の範囲のpH値で、37℃で10分間実施した。MALDI-TOF質量分析を使用して、GN14-SLの環化を監視した。RP-HPLCを使用して、環状生成物cGN14(MW:1515Da)および直鎖生成物GN14(MW:1533Da)の収率を定量化した(図1B)。
試験した4種のPAL酵素の中で、VyPAL2が最良のリガーゼ活性を示したが、pH5.5~8.0でいずれの加水分解生成物も生成しなかった。6.5の最適pHで、80%を超える環化収率が観察された(図1C)。VyPAL1もpH6~8で純粋な環化をもたらし、7.0の最適pHで、約80%の環化収率が得られる。VyPAL3は、pH4.5~5.5で支配的な加水分解活性を表示し、pH6.0~7.0で支配的なリガーゼ活性を表示した。10分でわずか20%の基質しか最適pH7.0で環化生成物に変換されなかったので、その触媒効率は、3種の推定上のVyPALの中で最低であった。期待されるように、推定上のプロテアーゼVyAEP1は、試験した4.5~8のpH範囲で加水分解活性を表示したが、6.5~8の中性付近および塩基性pHでは、環化が目立つようになった。4種の酵素全てが、5.0未満のpHでは様々な程度(2~40%、図1C)のプロテアーゼ活性を表示し、酸誘導自己活性化に必要とされる固有のタンパク質分解活性を反映している。
次に、ペプチドライブラリーの3つのセット(図2)を使用して、VyPAL2の基質特異性を試験した。効率的な環化は、C末端認識シグナルとして最低限3個の残基Asn-P1’-P2’(シェクター(Schechter)およびバーガー(Berger)命名法(49)を使用)を要した。P1’では、小さいアミノ酸、特にGlyおよびSerが好まれるが、Proは好まれない。P2’位は、Leu/Ile/Pheなどの疎水性または芳香族残基の存在を好む。VyPAL2の触媒効率を、基質GN14-SLAN
Figure 2022533545000003
を使用して調べたところ、pH6.5、37℃で実施した場合、274,325M-1-1(274,325M-1-1)が得られ、これはブテラーゼ1(971,936M-1-1)より3.5倍低かった(図3)。
実施例4:VyPAL2の結晶構造
ここで同定されたPALとAEPとの間の性質および効率における差異を担う分子機構を理解するために、2.4Åでの解像度でのVyPAL2プロ酵素の結晶構造を得た。予想通り、構造は、N末端の活性ドメイン(残基51~320)およびC末端のキャップドメイン(残基344~483)でのプロレグマイン折り畳みを表す。これらの2つのドメインはフレキシブルリンカー(残基321~343)によって接続されている。非対称単位がVyPAL2の2つのモノマーを含有し、ホモダイマーを形成する。溶液中では、ゲル濾過結果から推測されるように、VyPALのこのオリゴマー形態が高いタンパク質濃度(5mg/mL超)でのみ存在する。タンパク質を昆虫細胞で発現させたので、タンパク質の表面上のいくつかのアスパラギン残基は、Asn102、Asn145およびAsn237上でそれぞれ1~3個のN結合糖(1個のN-アセチルグルコサミン(GlcNac)、2個のGlcNacまたは2個のGlcNacおよび1個のフコース)でグリコシル化される。C13サブファミリーのメンバーは、保存されたα-β-αサンドイッチ構造および十分に定義されたオキシアニオンホールに位置するHis172-Cys214触媒二残基を有する。ペプチド結合切断はCysチオールによって触媒され、これがNからSへのアシルの移動を媒介してAsn-(S)-Cysチオエステル中間体を与える。Hisのイミダゾール環は一般的な塩基として作用して、触媒Cysからプロトンを受容する。
構造はOaAEP1b(PDBコード:5H0I)、AtLEGγ(5NIJ、5OBT)、HaAEP1(6AZT)、またはブテラーゼ1(6DHI)などの他のPALおよびAEPと類似であり、原子配置の平均二乗偏差(r.m.s.d.)が1.0Åである。さらに、活性ドメインのみを比較すると、r.m.s.d.値が平均0.7Åの近くに戻り、コアドメイン構造が強力に保存されていることを示す。これはさらに、酵素特異性が、S-アシル中間体の安定性および触媒水分子のアクセス性に影響する基質結合ポケットの微妙な変動によることを示す。本プロ酵素形態では、ヘリックスα6(キャップドメインの第1のヘリックス)が、リンカーペプチドと約90°の角度を作る。リンカー領域とα6ヘリックスとの間の接合点では、Gln343がオキシアニオンホール(またはS1ポケット)の内側に固定される。HaAEP1およびAtLEGγの活性形態の最近の構造では、結合した基質または阻害剤が、リンカー領域と比較して約2.5Åの距離だけシフトしており、チオエステル結合を介して触媒システインに共有結合的に連結している。
実施例5:エネルギー最小化を使用した基質-酵素相互作用のモデル化
HaAEP1(PDBアクセスコード:5OBT)とAtLEGγ(6AZT)の両方のリガンド結合活性形態の構造は、タンパク質の活性化およびキャップ放出後にごく小さいコンフォメーション変化が生じることを示した。そのため、VyPAL2の本結晶構造を使用したVyPAL2リガーゼの活性形態をモデル化し、電子密度においてはっきりと見える残基Gly52~Asn326を含めた。これはまた、LC-MSを使用して決定されたVyPAL2活性形態の境界、すなわちN43/N46/D46およびD320/N333と一致する。VyPAL2の活性形態に結合したペプチド基質の初期モデルを得るために、AtLEGγと配列NH-LKVIH-NSL-COOH(配列番号50)を有するペプチド阻害剤(ツァウナーら(Zauner et al.)(2018)J Biol Chem 293(23):8934-8946)との間の複合体の構造を使用した。このペプチドのN末端配列は元のリンカーの配列に対応し、C末端ジペプチドは図2に提示される基質特異性試験に基づく。次いで、活性タンパク質のCα原子のみを制約して、得られたペプチドとの複合体のエネルギー最小化を実施した。P1 Asn残基のアルファ-炭素原子を、AtLEGγで見られる位置に固定し、アンカーとして使用してS1ポケット中に基質を維持した。20ns間の系のMD平衡化で、基質のN末端部分「LKVIHN」(配列番号50の一部)が、VyPAL2由来のI244と基質との間の反発によりシフトした。結果として、基質P3位のIleのアルファ-炭素原子が3Åだけ移動する。他方、C末端「SL」ジペプチドはより伸長し、ペプチドの基質結合ポケットへのより優れた適合につながる。モデル化基質についてのこのより安定なエネルギー的に好ましい位置を使用して、プロテアーゼ活性とリガーゼ活性の両方のための認識モチーフを定義するS1’およびS2’ポケットをマッピングした。モデル基質との界面を分析することによって、S4-S2’ポケットを裏打ちしている、VyPAL2の活性形態の残基を定義した。S4の組成はAtLEGγについての前の研究と一致し、カスパーゼ-1のc341ループに相当するジスルフィドクランプポリProループ(PPL)とMLA領域(カスパーゼ-1のc381ループに相当する)の両方からの残基を伴っていた。S1ポケットの反対側では、S1’ポケットがH172、G173およびA174のアミド基によって形成され、ペプチドのP1’およびP2’残基の骨格原子を収容する。S2’ポケットは、Y185、ならびにG179およびM180の骨格原子によって裏打ちされ、P2’位の疎水性残基の結合を好む。MDシミュレーションは、ペプチドの疎水性Leu側鎖とY185のフェノール環との間の相互作用が好まれることを示し、これは特異性試験で観察されたP2’のIle/Val/Pheについての選好と一致している(図2C)。
実施例6:S2およびS1’ポケットにおけるリガーゼ活性決定因子の同定
VyPAL1~3は、PALとして分類および確認されているが、環化/加水分解比と触媒効率の両方の点から種々のレベルのリガーゼ活性を表示した。よって、VyPAL2の実験結晶構造を鋳型として使用して、VyPAL1およびVyPAL3の構造をモデル化した。これらの3つのタンパク質の間の配列同一性を考えると、得られたモデルは正確である可能性が高い。VyPAL1~3構造上の多型残基のマッピングは、S2およびS1’ポケットに位置する基質相互作用表面の変動を示す。1つの変動はS2の第1の残基にある:VyPAL2とVyPAL3の両方に存在する芳香族の嵩高いTrpの代わりにVyPAL1に存在するLeu243。同じ領域において、VyPAL2の244位はIleまたはValのいずれかであり、局所的疎水性にわずかな変動を導入する。最後に、245位の残基の側鎖は、S1ポケットと反対の方向を向いており(VyPAL1~3の骨格原子は完全に重複している)、この残基が触媒作用にわずかな影響しか与えないことを示唆している。しかしながら、S1ポケットの反対側では、より劇的な差異がS’1およびS’2の近くで観察される:VyPAL1とVyPAL2の両方におけるAla174-Pro175が、VyPAL3ではTyr175-Ala176によって置き換えられている。
実施例7:VyPAL3およびVcAEPのリガーゼ活性の選択的改善
これらの構造的知見を実験的に検証するために、VyPAL3を最初に標的化した:S1’領域の「YA」ジペプチドを、ブテラーゼ1配列で見られるように「GA」に変異させた。期待されるように、このY175G点突然変異は、野生型VyPAL3と比較すると、より低いpH(4.5~6)で観察されるライゲーション活性の強力で選択的な増加をもたらした(図4)。加えて、触媒効率も有意に改善され、最大環化収率が20%から80%まで増加した(図4Cと図1Cを比較)。
リガーゼ活性の決定におけるS1’領域の重大な役割についての仮説をさらに検証するために、優勢にプロテアーゼ活性を有し、事実上リガーゼ活性が存在しないVcAEPを標的化した(図5A)。S1’領域における変異Y168P169→A168P169(VyPAL3におけるY175A176に相当する)を導入した。Y168A変異は、GN14-SLDI基質に対する酵素活性のタイプと触媒効率の両方に影響を及ぼした(図5B)。野生型VcAEPとの反応を、酵素とGN14-SLDIのモル比1:200を使用して、5時間実施した。対照的に、VcAEP-Y168Aについては、比は1:2000とし、反応を37℃で2分のインキュベーション後にクエンチした。中性pH付近で、VcAEP-Y168Aは、60%を超える基質をその環状形態に変換することができ、形成された加水分解生成物は5%未満であった(図5B)。
実施例8:活性ブテラーゼ-1およびVyPAL2の調製
植物から単離された天然活性化ブテラーゼ-1(グエンら(Nguyen et al.)Nat.Chem.Biol.2014、10(9)、732-738)および活性化されるために酸誘導工程を要する昆虫細胞で発現されるVyPAL2酵素原(ヘームーら(Hemu et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2019、116(24)、11737-11746)の2つの異なる供給源のPALを使用した。この試験で使用したブテラーゼ-1は、クリトリア・テルナテア(Clitoria ternaea)の新鮮な植物組織から抽出し、前に記載されるように(グエンら(Nguyen et al.)Nat Protoc 2016、11(10)、1077-1988)、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを介して精製した。組換えVyPAL2を、昆虫細胞を使用した分泌経路(ヘームーら(Hemu et al.)、上記)で、バキュロウイルス発現系(シュレスタら(Shrestha et al.)In Genomics Protocols、スターキー・エム(Starkey,M.);エラスワラプ・アール(Elaswarapu,R.)編 ヒューマナプレス(Humana Press):Totowa、NJ、2008;269-289頁)によってプロ酵素形態で発現させた。VyPAL2の活性化形態を、pH4.5での酸誘導自己活性化によって得て、pH4のクエン酸ナトリウム緩衝液を使用してサイズ排除クロマトグラフィーによって精製した。ブテラーゼ-1と発現されたVyPAL2酵素原の両方がグリコシル化され、それらのグリコシル化形態は、SDS-PAGEにおいて、計算されたタンパク質重量よりも大きな太いバンドとして現れる(データは示さない)。
実施例9:活性PALの非共有結合的固定化
ブテラーゼ-1は、以前の試験に基づいて嵩高い異種グリカンによりN94およびN286でグリコシル化され、約6kDaの追加の質量の増加をもたらす。組換えVyPAL2は、小さいグリカンによりN102、N145およびN237でグリコシル化され、これにより、約3kDaの追加の質量増加がもたらされる(データは示さない)。よって、レクチンビーズは明らかな第1選択であり、親和性付着を介してこれらの2つのグリコシル化PALを固定化するための最も直接的な方法であった。ConAは、最も通例かつ広く使用される植物レクチンの1つである(サレームディン(Saleemuddin)&フセイン(Fusain) Enzyme Microb.Technol.1991、13(4)、290-295;リュディガー(Rudiger)&ガビウス(Gabius) Glycoconjugate) J.2001、18、589-613)。ConA付着は可逆的であり、マンノシルおよびグルコシル単糖を含有する溶出緩衝液を使用した糖酵素の回収を可能にする(デュラニー(Dulaney) Mol.Cell.Biochem.1978、21(1)、43-63)(図1A)。不溶性支持体については、大いに多孔質で、親水性で、安定で、化学修飾および物理修飾に対して不活性であり、その比較的大きな孔径が4000kDa未満の化合物の自由な拡散を可能にするので、6%架橋アガロースビーズを使用した(ズッカら(Zucca et al.)Molecules 2016、21(11))。
1mgの新たに調製したリガーゼとpH6.5 ConA反応緩衝液で前平衡化した1mLのビーズを混合することによって、糖酵素とConAビーズの親和性結合を実施し、4℃で3時間穏やかに振盪した。1mg/mL(約27μmのリガーゼに相当する)の低い酵素負荷および穏やかな振盪によって、溶質の拡散を促進することができた。結合後、ビーズをConA反応緩衝液で洗浄した。ConA-ビーズ上に固定化されたブテラーゼ-1は、酵素の61%が溶液中に残っていたので、39%収率でConA-Bu1 1を与えた。対照的に、ConA結合VyPAL2は、数ラウンドの洗浄直後に、ビーズから解離した。結果として、ConA-Vy2 2をその後の全ての実験で除外した。
ブテラーゼ-1およびVyPAL2に対するConAの親和性の観察される差異は、それらのグリコシル化形態に起因し得る。植物由来ブテラーゼ-1は、高い親和性でConAに結合する複雑な高マンノースN-グリカンを含有する(ウィルソン(Wilson) Curr.Opin.Struct.Biol.2002、12(4)、569-577;シュトラッサー(Strasser) Front Plant Sci 2014、5、363)。対照的に、昆虫細胞によって発現されるVyPAL2は、低い親和性でConAに結合する単純なN-グリカンを含有する(シー(Shi)&ジャーヴィス(Jarvis)、Curr Drug Targets.2007、8(10)、1116-1125)。VyPAL2の結晶構造において、確認されたグリカンは、三糖よりも大きくない。加えて、ConA固定化PALは、ConAに結合し、固定化PALと交換し得る可溶性糖または糖タンパク質のいずれかを含有する反応を触媒するのに適していない。
比較のために、ビオチンとアビジンとの間の並外れた高い結合を活用することによって、第2の非共有結合的固定化を実験的に試験した。アビジン-ビオチン結合は、10-15Mの範囲の解離定数を有し、実際には不可逆と考えられる。非特異的レクチン結合を排除するために、グリコシル化アビジンとしてアミン連結ビオチンの強力な親和性結合を保持する、アビジンの脱グリコシル化形態、NeutrAvidin(NA)を使用した(図7B)。この方法は、ビオチンによるPALの第一級アミンの一部の修飾を要した。活性ブテラーゼ-1とVyPAL2の両方の配列が複数のLys残基を含有し、これらは触媒部位の近くにも基質結合表面の近くにも位置しない。よって、Lys-NHを伴うPALの固定化は、PALの触媒部位を妨げないと予想された。
リジン側鎖をビオチン化するために、スクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート(NHS-LC-ビオチン)を、活性ブテラーゼ-1およびVyPAL2のビオチン化に使用した。N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS-エステル)のリガーゼ上の第一級アミンへのカップリング反応を、一般的に7.2~9.0の範囲のpHの塩基性条件で実施する。活性PALは、これらが植物で生成されたものであるか、昆虫細胞で発現されたものであるかにかかわらず、塩基性条件であまり熱的に安定でないので、本発明者らはpH7.4、4℃でビオチン化を実施して、リガーゼの分解を最小化した。ビオチン化酵素が活性喪失を示さないことが実験的に確認された。ビオチン化ブテラーゼ-1、Bu1(b)、およびビオチン化VyPAL2、Vy2(b)とNAビーズの親和性結合を、pH6.5、4℃で3時間実施した。固定化後、ビーズを冷pH6.5反応緩衝液で洗浄した。この方法は49%および45%の固定化収率をもたらし、それぞれNA-Bu1(b) 3およびNA-Vy2(b) 4を与えた。
実施例10:直接カップリングによる活性PALの共有結合的固定化
共有結合アプローチは、不可逆的な安定な固定化を与える。本発明者らは、PALのN末端またはLys側鎖上の第一級アミンをNHSエステルにカップリングすることによる十分に確立された共有結合的固定化法を選択した(図7C;アンダーソンら(Anderson et al.)J Am Chem Soc 1964、86(9)、1839-1842;クアトレカサス(Cuatrecasas)&パリーク(Parikh) Biochemistry 1972、11(12)、2291-2299)。前に記載されるNHS-LC-ビオチンによるリガーゼのビオチン化と同様に、NHS活性化アガロースビーズ上への直接固定化をpH7.4、4℃で一晩実施して、アガロース-Bu1 5およびアガロース-Vy2 6を得た。次いで、ビーズを冷pH6.5反応緩衝液で洗浄した。結果は、この方法が、活性ブテラーゼ-1およびVyPAL2をそれぞれ83%および81%の収率で直接固定化することを示した。
実施例11:固定化PALの活性
固定化PALによって触媒される初期反応速度をその可溶性対応物によって触媒される速度と比較することによって、固定化PALの活性を決定した。C末端PAL認識シグナルトリペプチドNGLを有する天然システインリッチペプチドブレオゲン(bleogen)pB144に由来する配列である、モデルペプチド基質KN14-GL(KLGTSPGRLRYAGN-GL;配列番号51)7を大環状化して、末端と末端をつないだ環状生成物cKN14 8を得ることによって、遊離ブテラーゼ-1またはVyPAL2のリガーゼ活性を測定した(図8)。本発明者らは、基質濃度0.2mMがブテラーゼ-1およびVyPAL2の既知のミカエリス定数Kよりもはるかに高いので、この濃度を使用して反応速度を最大化した。5分後に反応をクエンチし、各反応で生成されたcKN14の量をRP-HPLCによって測定した。遊離酵素の濃度に対する反応速度の標準曲線をプロットして、代謝回転速度を計算した(図9)。固定化PALの測定された反応速度を標準曲線に内挿することによって、固定化PALの有効濃度を決定した。
表2は、ConA-Bu1 1ならびにNA連結ビオチン化酵素NA-Bu1(b) 3およびNA-Vy2(b) 4の非共有結合付着が、それぞれその可溶性酵素の50%および20~30%の活性を保持したことを示す結果を要約する。アガロース-Bu1 5およびアガロース-Vy2 6の共有結合付着は、その可溶性酵素の約5%の活性を保持した。アガロース-Bu1およびアガロース-Vy2においてのみ約1nmであると計算されたテトラノイック(tetranoic)スペーサーを介したアガロースビーズへの直接付着は多分短すぎる(図7)。対照的に、ConA-Bu1は8nmより長いスペーサーを有し(ConAテトラマー+グリカン)(ベッカーら(Becker et al.)J Bio Chem 1975、250(4)、1513-1524)、NeutrAvidin固定化NA連結ビオチン化酵素はおよそ8nm長のスペーサーを有する(NeutrAvidinテトラマー+NHS-LC-ビオチン)(リブナーら(Livnah et al.)Proc Natl Acad Sci U S A 1993、90、5076-5080)。固定化PALの活性と、酵素と固体支持体との間の距離との間の相関は、より短いスペーサーが酵素の可動性および基質のアクセス性を減少させ得ることを示唆した。直接付着法を介した固定化酵素の活性を改善するためには、より長いスペーサーを活用する必要がある。
Figure 2022533545000004
実施例12:固定化PALは高い動作安定性および長期貯蔵安定性を表す
PALの固相固定化は、自己凝集および自己タンパク質分解を最小化し、今度は安定性を増強するであろう。動作安定性および再使用可能性を示すために、各固定化PALを100回再使用し、直鎖ペプチドKN14-GL 7の環化におけるそれらの有効性を分析した。各実行で、同じバッチの固定化PALアガロースビーズを使用し、C18逆相HPLCを使用して反応混合物を分析した(図10A)。図10Bは5種の固定化PALの生成物分析を要約しており、これらのうちの全てが、100回実行後に90%超の触媒活性が保持されることを示した。
4℃で貯蔵した固定化PALの長期貯蔵寿命を示すために、MALDI-TOF質量分析によって、ペプチド基質GN14-HV(配列番号52;GISTKSIPPISYRN-HV、9)またはGN14-SLAN(配列番号53;GISTKSIPPISYRN-SLAN、10)を環化してcGN14 11をもたらすことにおいて、リガーゼ活性を2ヶ月の期間にわたって毎週監視した。図11は、固定化PALが、長期貯蔵においてそれらの可溶性対応物よりも安定であることを示す。5種全ての固定化PALが、9週間後に90%超の活性を保持した。対照的に、ブテラーゼ-1またはVyPAL2は、同じ貯蔵条件下で2ヶ月の貯蔵後に約30%の活性を喪失した。
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)またはβ-メルカプトエタノール(β-ME)などの還元剤の添加が、活性PALの触媒Cysを還元形態に維持するのに重大であることが分かった。非還元緩衝液中で貯蔵した可溶性PALと固定化PALの両方が、触媒システイニルスルフヒドリルの酸化により、2週間で活性を喪失した。いったんスルフヒドリルが酸化されて不活性化につながると、必ずしもそうではないが、時々、1種または複数の還元試薬を含有する緩衝液による処理後に、リガーゼ活性を回復することができる。固定化ブテラーゼ-1が固定化VyPAL2よりもわずかに安定であることも観察され、植物由来PALが、タンパク質分解からの分子安定性を増強するより高レベルのグリコシル化から利益を得ることができることを示唆している。
実施例13:ライゲーション反応のための固定化PALの適用
固定化PALの再使用可能性は、それらの可溶性対応物よりもはるかに高い酵素濃度を使用して、触媒ライゲーション反応を加速させることを可能にする。以下の5つの例で、NeutrAvidin固定化NA-Bu1(b) 3およびNA-Vy2(b) 4を使用して、環化およびライゲーションに関する固定化PALのこの利点、ならびに連続フロー系におけるそれらの使用を披露した。
第1の例は、P2位に立体障害Proを含有するSFTI基質の環化反応であり、これは同じP2位を占めるあまり障害性でないアミノ酸を含む基質よりも遅いライゲーション反応を引き起こす。図12Aは、14残基ジスルフィド含有ペプチドSFTIアナログ、GRCTKSIPPICFPN-HV 12(配列番号54)のブテラーゼ-1媒介環化が、30分後に50%完了して、環状SFTI 13をもたらすことを示す。対照的に、NeutrAvidin固定化ブテラーゼ-1 NA-Bu1(b) 3の有効濃度を5倍増加させると、環化ライゲーションを加速し、10分以内に完了した。
第2の例では、可溶性ブテラーゼ1およびNeutrAvidin固定化ブテラーゼ1を、70残基タンパク質、環状バクテリオシンAS-48の環化について比較した。この環状バクテリオシンは、広いスペクトルの微生物を殺傷する能力のために大いに人気がある、乳酸菌によって生成される食品保存剤である。AS-48は、2番目に大きな既知の天然のヘッドトゥーテールの大環状である。遊離ブテラーゼ-1を使用して、ブテラーゼ-1認識のためのN末端ジペプチドおよびC末端ヘキサペプチド配列を含有する折り畳まれたAS-48K 14(配列番号19)を環化した。37℃で酵素:基質比1:100を使用すると、反応が1時間で完了したが、NA-Bu1(b)の有効濃度を遊離ブテラーゼ-1の5倍増加させると、環化の完了を加速して10分にし、環状AS-48 15の単離収率が83%となった(図12B)。
第3の例は、ペプチドのPAL媒介シクロオリゴマー化であった。この反応は、オリゴマー化と、新生オリゴマーのヘッドトゥーテールの環化の両方を伴う。このアプローチを使用して、単純なペプチジルモノマーを構築ブロックとして使用した生理活性シクロオリゴマーペプチドの形成を実証した。酵素:基質比1:100でNeutrAvidin固定化ブテラーゼNA-Bu1(b)を使用したRV7(RLYRNHV、16;配列番号55)のシクロオリゴマー化は40分以内に完了して、RLYRNの83%のシクロダイマーc17および8%のシクロトリマーc18をもたらした(図13)。対照的に、可溶性形態の有効濃度が固定化形態より5倍低い、酵素:基質比1:500でブテラーゼ-1を使用した反応は、4時間後に完了しなかった(データは示さない)。
最後の2つの例では、PAL媒介分子内ライゲーションを連続フロー系で使用した。高い有効濃度の利点を有する環化反応とは異なり、分子内ライゲーションは、高濃度の基質と酵素の両方を要し、よって、固定化PALを高濃度で再使用して、この制限を克服することができる。NA-Vy2(b) 4ビーズを含むセルフパックカラム(内径4mm)を使用して、0.05~0.5mL/分の異なる流量下、合成蛍光ペプチドGLAK(FAM)RG 20(100μM;配列番号57)を用いてAc-RYANGI 19(10μM;配列番号56)のペプチドライゲーションを実施した(図14A)。0.05mL/分の流量で、本発明者らは、ライゲーション反応が完了してAc-RYANGLAK(FAM)RG 21(配列番号58)をもたらすことを観察した。最後に、本発明者らは、NA-Vy2(b)のこの充填床カラムを使用して、GLAK(FAM)RG 20で193残基組換えタンパク質、抗Her2 DARPin9_26-NGL22(配列番号49)を標識した。1μM DARPin9_26-NGLおよび5μM GLAK(FAM)RGを含有する反応は、20μL/分の流量で78%収率のDARPin9_26-NGLAK(FAM)RG 23を与えた(図14B)。未反応ペプチドは、透析または分子量カットオフ3kDa超の遠心濾過器によってライゲーション生成物から容易に除去した。

Claims (35)

  1. タンパク質リガーゼ活性、好ましくはシクラーゼ活性を有する単離ポリペプチドであって、
    (v)配列番号1(VyPAL2)に記載のアミノ酸配列;
    (vi)配列番号1に記載の前記アミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
    (vii)配列番号1に記載の前記アミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列;または
    (viii)(i)~(iii)のいずれか1つの断片
    を含むか、またはからなる、単離ポリペプチド。
  2. (i)配列番号2(VyPAL2+N末端+Cap残部)または配列番号3(VyPAL2プロ酵素)に記載のアミノ酸配列;
    (ii)配列番号2または3に記載の前記アミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列;
    (iii)配列番号2または3に記載の前記アミノ酸配列と、その全長にわたって少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の配列相同性を有するアミノ酸配列;または
    (iv)(i)~(iii)のいずれか1つの断片
    を含むか、またはからなる、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
  3. (i)配列番号1の19位に対応する位置にアミノ酸残基N;および/または
    (ii)配列番号1の124位に対応する位置にアミノ酸残基H;および/または
    (iii)配列番号1の166位に対応する位置にアミノ酸残基C
    を含む、請求項1または2に記載の単離ポリペプチド。
  4. (i)配列番号1の126位に対応する位置にアミノ酸残基A、および任意選択で、配列番号1の127位に対応する位置にアミノ酸残基AまたはP、好ましくはP(LAD2);および/または
    (ii)配列番号1の126位に対応する位置にアミノ酸残基Gおよび配列番号1の127位に対応する位置にアミノ酸A(LAD2);
    (iii)配列番号1の195位に対応する位置にアミノ酸残基WまたはY、配列番号1の196位に対応する位置にアミノ酸残基IまたはV、および配列番号1の197位に対応する位置にアミノ酸残基T、AまたはV(LAD1);
    (iv)配列番号1の21位に対応する位置にアミノ酸残基R、配列番号1の22位に対応する位置にアミノ酸残基H、配列番号1の123位に対応する位置にアミノ酸残基D、配列番号1の164位に対応する位置にアミノ酸残基E、配列番号1の194位に対応する位置にアミノ酸残基S、配列番号1の215位に対応する位置にアミノ酸残基D(S1ポケット);および/または
    (v)配列番号1の199位および212位に対応する位置にアミノ酸残基C(ジスルフィド架橋)
    を含む、請求項1または2に記載の単離ポリペプチド。
  5. pH5.0以下、好ましくは4.0以下での酸処理によって活性化され得る、請求項1~4のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
  6. (i)好ましくはpH5.5以上で、60%以上、好ましくは80%以上の効率で所与のペプチドを環化することができる;および/または
    (ii)好ましくはpH5.5以上で、20%以下、好ましくは5%以下の効率で所与のペプチドを加水分解することができる、請求項1~5のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
  7. グリコシル化されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリペプチド。
  8. 請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
  9. ベクターに含まれる、請求項8に記載の核酸分子。
  10. 前記ベクターが、前記核酸分子の発現を制御するための調節エレメントをさらに含む、請求項9に記載の核酸分子。
  11. 好ましくは昆虫細胞、より好ましくはSf9細胞である、請求項8~10のいずれか1項に記載の核酸分子を含む宿主細胞。
  12. 請求項1~6のいずれか1項に記載のポリペプチドを生成する方法であって、請求項11に記載の宿主細胞を、前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で培養する工程と、前記ポリペプチドを前記宿主細胞または培養培地から単離する工程とを備える、方法。
  13. 少なくとも2つのペプチドをライゲーションするか、またはペプチドを環化するための、リガーゼまたはシクラーゼ活性を有するポリペプチドの使用であって、前記シクラーゼ活性を有するポリペプチドが、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリペプチドである、使用。
  14. 前記環化されるペプチドまたは前記ライゲーションされるペプチドの少なくとも1つが、
    (i)好ましくはC末端のアミノ酸配列(X)N/D(X)(式中、Xは任意のアミノ酸であり、oおよびpは互いに独立に、少なくとも2の整数である)、好ましくはアミノ酸配列(X)NX(X)(式中、XはPを除く任意のアミノ酸、好ましくはH、GまたはSであり、Xは、好ましくはL、I、V、F、C、W、YおよびMから選択される、疎水性または芳香族アミノ酸であり、rは0または1以上の整数である);または
    (ii)C末端アミノ酸配列(X)/D(式中、Xは任意のアミノ酸であり、oは少なくとも2の整数であり、C末端N/D残基は、C末端カルボキシ基、好ましくはDの場合はα-カルボキシ基が、式-C(O)-N(R’)(R’は任意の残基である)のアミド基によって置き換えられているという点で、アミド化されている)
    を含む、請求項13に記載の使用。
  15. 前記環化されるペプチドまたは前記ライゲーションされるペプチドの少なくとも1つが、N末端アミノ酸配列X(X)(式中、Xは任意のアミノ酸であり得;XはPを除く任意のアミノ酸であり得;Xは任意のアミノ酸であり得るが、好ましくは疎水性アミノ酸、より好ましくはV、IまたはLであり;qは0または1以上の整数である)を含む、請求項13または14に記載の使用。
  16. 前記環化されるペプチドが、環状システインノットポリペプチド、環状ペプチド毒素、環状抗菌ペプチド、環状ヒスタチン、またはヒトもしくは動物環状ペプチドホルモンの直鎖前駆体形態である、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
  17. (i)前記環化されるペプチドが10アミノ酸長以上であるか;または
    (ii)前記ライゲーションされるペプチドの少なくとも1つが25アミノ酸長以上、好ましくは50アミノ酸長以上である、請求項13~16のいずれか1項に記載の使用。
  18. 前記環化されるペプチドが、
    (i)配列番号19および21~42のいずれか1つに記載のアミノ酸配列;または
    (ii)アミノ酸配列(X)C(X)C(X)C(X)C(X)C(X)C(X)NHV(X)(式中、各nは1~6から独立して選択される整数であり、Xは任意のアミノ酸であり得る)
    を含むか、またはからなる、請求項13~17のいずれか1項に記載の使用。
  19. 前記ライゲーションされるペプチドの少なくとも1つが、検出可能なマーカー、好ましくは蛍光マーカーまたはビオチンを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の使用。
  20. ペプチドを環化する方法であって、ペプチドを、前記ペプチドの環化を可能にする条件下で、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリペプチドとインキュベーションする工程を備える、方法。
  21. 少なくとも2つのペプチドをライゲーションする方法であって、少なくとも2つのペプチドを、前記ペプチドのライゲーションを可能にする条件下で、請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリペプチドとインキュベーションする工程を備える、方法。
  22. 前記環化されるペプチドまたは少なくとも1つのライゲーションされるペプチドが、
    (i)好ましくはC末端のアミノ酸配列(X)N/D(X)(式中、Xは任意のアミノ酸であり、oおよびpは互いに独立に、少なくとも2の整数である)、好ましくはアミノ酸配列(X)NX(X)(式中、XはPを除く任意のアミノ酸、好ましくはH、GまたはSであり、Xは、好ましくはL、I、V、F、C、W、YおよびMから選択される、疎水性または芳香族アミノ酸であり、rは0または1以上の整数である);または
    (ii)C末端アミノ酸配列(X)/D(式中、Xは任意のアミノ酸であり、oは少なくとも2の整数であり、C末端N/D残基は、C末端カルボキシ基、好ましくはDの場合はα-カルボキシ基が、式-C(O)-N(R’)(R’は任意の残基である)のアミド基によって置き換えられているという点で、アミド化されている)
    を含む、請求項20または21に記載の方法。
  23. 前記環化されるペプチドまたは前記少なくとも1つのライゲーションされるペプチドが、アミノ酸配列N/D(X)、好ましくはアミノ酸配列(X)NX(X)(式中、XはPを除く任意のアミノ酸、好ましくはH、GまたはSであり、Xは、好ましくはL、I、V、F、C、W、YおよびMから選択される、疎水性または芳香族アミノ酸であり、rは0または1以上の整数である)とN末端融合した目的のペプチドの融合ペプチドである、請求項22に記載の方法。
  24. 前記環化されるペプチドまたは少なくとも1つのライゲーションされるペプチドが、N末端アミノ酸配列X(X)(式中、Xは任意のアミノ酸であり得;XはPを除く任意のアミノ酸であり得;Xは任意のアミノ酸であり得るが、好ましくは疎水性アミノ酸、より好ましくはV、IまたはLであり;qは0または1以上の整数である)を含む、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
  25. リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドが固体支持体上に固定化される、請求項13~19のいずれか1項に記載の使用または請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
  26. 前記固定化が、前記固体支持体への非共有結合または共有結合による、請求項25に記載の使用または方法。
  27. (i)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドがグリコシル化され、前記固定化が、前記固体支持体に共有結合的に連結された、炭水化物結合部分、好ましくはコンカナバリンA部分またはそのバリアントとの相互作用によって促進されるか;
    (ii)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドがビオチン化され、前記固定化が、前記固体支持体に共有結合的に連結された、ビオチン結合部分、好ましくはストレプトアビジン、アビジンもしくはニュートラアビジンまたはそのバリアントとの相互作用によって促進されるか;または
    (iii)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、前記固体支持体の表面上のN-ヒドロキシスクシンイミド官能基との反応によって前記固体支持体上に固定化される、請求項26に記載の使用または方法。
  28. 固体支持体材料であって、前記固体支持体材料上に固定化された請求項1~6のいずれか1項に記載の単離ポリペプチドを含む固体支持体材料。
  29. ポリマー樹脂、好ましくは微粒子形態のポリマー樹脂、例えばアガロースを含む、請求項28に記載の固体支持体材料。
  30. 前記単離ポリペプチドが、共有結合または非共有結合相互作用によって固体支持体材料上に固定化される、請求項28または29に記載の固体支持体材料。
  31. クロマトグラフィーカラム用の微粒子樹脂材料である、請求項28~30のいずれか1項に記載の固体支持体材料。
  32. (i)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドがグリコシル化され、前記固定化が、前記固体支持体に共有結合的に連結された、炭水化物結合部分、好ましくはコンカナバリンA部分またはそのバリアントとの相互作用によって促進されるか;
    (ii)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドがビオチン化され、前記固定化が、前記固体支持体に共有結合的に連結された、ビオチン結合部分、好ましくはストレプトアビジン、アビジンもしくはニュートラアビジンまたはそのバリアントとの相互作用によって促進されるか;または
    (iii)リガーゼまたはシクラーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、前記固体支持体の表面上のN-ヒドロキシスクシンイミド官能基との反応によって前記固体支持体上に固定化される、請求項28~31のいずれか1項に記載の固体支持体材料。
  33. アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドのタンパク質リガーゼ活性を増加させる方法であって、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基を小さい疎水性残基またはG残基のいずれか、好ましくはAまたはG残基で置換する工程を備える、方法。
  34. タンパク質リガーゼ活性を有するポリペプチドを生成する方法であって、
    (iii)アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドを提供する工程と;
    (iv)1つまたは複数のアミノ酸置換を前記アスパラギニルエンドペプチダーゼ(AEP)活性を有するポリペプチドに導入する工程であって、前記置換は、配列番号1の126/127位に対応する位置のアミノ酸配列がGA、AAまたはAP、好ましくはGAまたはAPのいずれかとなるように、配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基をAまたはGのいずれかの残基で置換すること、および任意選択で配列番号1の127位に対応する位置のアミノ酸残基をPまたはAのいずれかの残基で置換することを含む、工程と
    を備える、方法。
  35. 前記アスパラギニルエンドペプチダーゼ活性を有するポリペプチドが、
    (i)その全長にわたって配列番号10~14(VyAEP1~4;VcAEP)のいずれか1つに記載のアミノ酸配列と、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも90%の配列相同性または配列同一性を有するアミノ酸配列;および/または
    (ii)GでもAでもない配列番号1の126位に対応する位置のアミノ酸残基
    を含む、請求項33または34に記載の方法。
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