JP2022529970A - 抗psma/cd3抗体で腎癌を治療する方法 - Google Patents

抗psma/cd3抗体で腎癌を治療する方法 Download PDF

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Abstract

癌を治療するための二重特異性モノクローナル抗体及び方法が本明細書に記載される。

Description

(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出済みであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている配列表を含む。上記ASCIIコピーは、2020年2月26日に作成され、名称はJBI6081USPSP1_SL.txtであり、サイズは47,009バイトである。
(発明の分野)
本発明は、抗PSMA/CD3抗体の投与により、転移性腎癌を含む、腎癌の治療を提供する方法に関する。
腎癌は、10種類の最も一般的な癌のうちの1つであり、一生のうちに63人に約1人がその影響を受け、大部分は50歳~80歳の成人である。世界的に、北米は腎癌の最高罹患率を有するが、発展途上国において、発生率が過去30年にわたって徐々に増加してきている。転移性腎細胞癌(mRCC)は、新たな標的療法及び免疫療法を含む新規の全身治療選択肢の数が増加しているにもかかわらず、予後不良を示す疾患である。PSMAは、750個のアミノ酸及び3つのタンパク質ドメイン、小さな細胞内ドメイン、単回通過膜貫通ドメイン、並びに大きな細胞外ドメインから構成される膜貫通糖タンパク質である。PSMAは、肺癌、膀胱癌、及び腎癌を含む他の固形腫瘍の新生血管内で発現されることが報告されている(Chang SS,et al.Cancer Res.1999;59(13):3192-3198)。腎細胞癌(RCC)におけるPSMA発現を調査した最近の試験では、内皮PSMAタンパク質が、明細胞腎癌の80%、乳頭癌の14%、及び色素嫌性癌の72%において検出されることが免疫組織化学的検査結果により明らかになった(Spatz S,Tolkach et al.J Urol.2018;199(2):370-377)。同じ試験からの更なる分析は、明細胞腎癌及び乳頭状腎癌の両方において、PSMA発現が、患者における全生存率の低下と有意に関連していることを実証した。別の臨床試験では、68Gaを使用したPSMAベースの放射性トレーサーは、明細胞癌を有する患者に発見された転移性病変においてPSMAを検出することができた(Sawicki LM,et al.Eur J Nucl Med Mol Imaging.2017;44(1):102-107)。
したがって、前立腺癌に加えて、PSMA×CD3アプローチはまた、明細胞腎細胞癌などの組織診を有する患者においても治療ベネフィットを有し得る。
簡単にするために、参照により本明細書に組み込まれる、本明細書に添付の独立及び従属請求項によって、一般的かつ好ましい実施形態がそれぞれ定義される。本発明の様々な態様の他の好ましい実施形態、特性、及び利点は、添付の図面と併せて、以下の発明を実施するための形態から明らかになるであろう。
本発明は、転移性腎細胞癌を有する対象に安全かつ有効な量の抗PSMA×CD3抗体を投与することによって、転移性腎細胞癌(RCC)を含む腎癌を治療する方法を対象とする。
特定の実施形態では、本発明は、腎癌を有する患者において腎癌を治療する方法を提供し、この方法は、抗PSMA×CD3抗体断片を安全量で患者に投与することを含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になり、抗PSMA×CD3抗体は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になり、第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含む。
別の実施形態では、本発明は、腎癌を有する患者において腎癌を治療する方法を提供し、この方法は、抗PSMA×CD3抗体断片を安全量で患者に投与することを含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になり、抗PSMA×CD3抗体は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含み、患者は転移性腎癌を有する。
別の実施形態では、本発明は、腎癌を有する患者において腎癌を治療する方法を提供し、この方法は、抗PSMA×CD3抗体断片を患者に投与することを含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になり、抗PSMA×CD3抗体は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含み、第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含み、患者は転移性腎癌を有し、抗PSMA×CD3抗体は、約0.1μg/kgの用量で患者に静脈内(IV)投与される。
いくつかの実施形態では、本発明は、患者における腎癌の治療に使用するための配列番号7、8、17及び18の抗原結合タンパク質を含む、それからなる、及び/又はそれから本質的になる医薬組成物を提供し、組成物は、約0.1μg/kgの初期用量で患者に投与される。
CD3B146の初代ヒトT細胞への結合性を示す。 CD3B146の初代カニクイザルT細胞への結合性を示す。 CD3B146がin vitroにおいて初代ヒトT細胞を活性化することを示す。ネガティブコントロールを、白色で示し、ポジティブコントロールを、黒色で示す。 毒性試験において使用される緩やかな漸増スキームを示す。 毒性試験において使用される急速な漸増スキームを示す。 用量漸増及び用量拡大計画の図、並びにプライミング用量スケジュールの潜在的な探索を示す(第1部の用量漸増スキーム及び第2部の用量拡大コホート)。 試験デザインの図式的な概要を示す(第1部の用量漸増相)。(CRS=サイトカイン放出症候群、PK/PD=薬物動態/薬力学)
本明細書に引用されている、特許及び特許出願を含む全ての刊行物は、完全に記載されているかのように、参照により本明細書に援用される。
定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないと理解すべきである。特に断らない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書に記載されているものと同様又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験を実施するために使用することができるが、例示となる材料及び方法を本明細書に記載する。本発明を説明及び特許請求する上で以下の用語が使用される。
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」において使用されるとき、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」という言及には、2つ又は3つ以上の細胞の組み合わせ、及びこれに類するものなどが含まれる。
文脈上明白に他の意味に解すべき場合を除き、明細書及び特許請求の範囲を通して、単語「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、排他的又は排外的な意味とは対照的に、包括的な意味で、すなわち、「~を含むがこれらに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
「特異的結合」、「特異的に結合する」、又は「特異的な結合」、又は「結合する」とは、抗体が、抗原又は抗原内のエピトープに、他の抗原に対するよりも高い親和性で結合することを指す。典型的には、抗体は、約5×10-8M以下、例えば約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、又は約1×10-12M以下の平衡解離定数(K)で抗原又は抗原内のエピトープに結合し、非特異性抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に関しては、典型的には、そのKより少なくとも100倍小さいKで結合する。解離定数は、本明細書に記載のプロトコルを使用して測定することができる。しかしながら、抗原又は抗原内のエピトープに結合する抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca fascicularis(カニクイザル、cyno)、又はPan troglodytes(チンパンジー、chimp)などの他の種由来の同じ抗原(ホモログ)に対して交差反応性を有する場合がある。単一特異性抗体は、1つの抗原又は1つのエピトープに結合するが、二重特異性抗体は、2つの異なる抗原又は2つの異なるエピトープに結合する。
「抗体」は、広義の意味を有し、マウス、ヒト、ヒト化、及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗原結合断片、二重特異性、三重特異性、四重特異性などの多重特異性抗体、二量体、四量体、又は多量体抗体、一本鎖抗体、ドメイン抗体、並びに必要とされる特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾された形態を含む免疫グロブリン分子を含む。「完全長抗体」は、ジスルフィド結合により相互接続された、2本の重鎖(heavy chain、HC)及び2本の軽鎖(light chain、LC)、並びにこれらの多量体(例えばIgM)からなる。各重鎖は、重鎖可変領域(heavy chain variable region、VH)、並びに重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2、及びCH3からなる)から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(light chain variable region、VL)及び軽鎖定常領域(constant region、CL)から構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)が散在しており相補性決定領域(CDR)と呼称される超可変領域に更に分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4で配置された、3つのCDR及び4つのFRセグメントで構成される。
「相補性決定領域(CDR)」は、抗原に結合する抗体の領域である。CDRは、Kabat(Wu et al.(1970)J Exp Med132:211-50)(Kabatet al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991)、Chothia (Chothia et al.(1987) J Mol Biol 196:901-17),IMGT (Lefranc et al.(2003) Dev Comp Immunol 27:55-77)、及びAbM (Martin and Thornton (1996) J Bmol Biol 263:800-15)などの、様々な記述を使用して定義することができる。様々な記述と、可変領域の付番との対応が記載されている(例えば、Lefranc et al.(2003) Dev Comp Immunol 27:55-77、Honegger and Pluckthun,(2001) J Mol Biol 309:657-70、International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース,ウェブリソース、http://www_imgt_orgを参照のこと)。UCL Business PLCによるabYsisなどの利用可能なプログラムを使用して、CDRを描写することができる。本明細書で使用する場合、「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」、及び「LCDR3」という用語は、本明細書に別途明示的に記載のない限り、上述したKabat、Chothia、IMGT、又はAbMの方法のいずれかにより定義されるCDRを含む。
免疫グロブリンは、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに割り当てられ得る。IgA及びIgGは、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。どのような脊椎動物種の抗体軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に異なるタイプ、すなわち、カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一方に割り当てることができる。
「抗原結合断片」とは、抗原に結合する免疫グロブリン分子の一部を意味する。抗原結合断片は合成ポリペプチド、酵素により入手可能なポリペプチド、又は遺伝子組換えされたポリペプチドであってよく、VH、VL、VH及びVL、Fab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、1つのVHドメイン又は1つのVLドメインからなるドメイン抗体(dAb)、サメ可変性IgNARドメイン、ラクダ化VHドメイン、FR3-CDR3-FR4部分などの、抗体のCDRを再現したアミノ酸残基からなる最小の認識単位、HCDR1、HCDR2、及び/又はHCDR3、並びにLCDR1、LCDR2、及び/又はLCDR3が挙げられる。VH及びVLドメインは互いに、合成リンカーを介して結合し、様々なタイプの一本鎖抗体設計を形成することができ、VH及びVLドメインが、個別の一本鎖抗体構築物により発現される場合では、VH/VLドメインが分子内、又は分子間で対形成し、一価の抗原結合部位、例えば一本鎖Fv(single chain Fv、scFv)又は二重特異性抗体を形成することができ、これらは、例えば国際公開第1998/44001号、同第1988/01649号、同第1994/13804号、及び同第1992/01047号に記載されている。
「モノクローナル抗体」とは、抗体分子の実質的に均質な母集団(即ち、母集団を含む個別の抗体が、抗体重鎖からC末端リジンを除去する、又は、アミノ酸異性化若しくはアミド分解、メチオニン酸化若しくはアスパラギン若しくはグルタミンアミド分解などの翻訳後修飾といった、可能な周知の変更を除いて同一である)から入手される抗体を意味する。モノクローナル抗体は、典型的には、1つの抗原性エピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの異なる抗原性エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内で不均一なグリコシル化を有し得る。モノクローナル抗体は、単一特異性であってよく、又は、二重特異性などの多重特異性であってよく、一価、二価、又は多価であってよい。
「単離された」とは、組み換え細胞などの分子が産生されるシステムに関係する他の成分から実質的に分離及び/又は精製されている、分子の均質な集団(例えば、合成ポリヌクレオチド又は抗体などのタンパク質)に加えて、少なくとも1つの精製又は単離工程に供されたタンパク質を指す。「単離抗体」とは、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まない抗体を指し、より高い純度、例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度まで単離された抗体を包含する。
「ヒト化抗体」は、少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来し、少なくとも1つのフレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を意味する。ヒト化抗体は、フレームワークに置換を含むことができるため、フレームワークは、発現したヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列の厳密なコピーではない場合がある。
「ヒト抗体」は、患者に投与されるときに、最小の免疫応答を有するように最適化された抗体を意味する。ヒト抗体の可変領域は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体が定常領域又は定常領域の一部を含む場合、当該定常領域もヒト免疫グロブリン配列に由来する。ヒト抗体は、ヒト抗体の可変領域がヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られた場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージにディスプレイされたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリ、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を保有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばマウス又はラットを含む。「ヒト抗体」は、典型的には、ヒト抗体及びヒト免疫グロブリン遺伝子座を得るために使用した系の違い、フレームワーク若しくはCDRへの体細胞変異の導入若しくは置換の意図的な導入、又はこれらの両方により、ヒトで発現した免疫グロブリンと比較したときにアミノ酸の違いを含有する。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン又は再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされているアミノ酸配列に対して、アミノ酸配列が少なくとも約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。場合によっては、「ヒト抗体」は、ヒトフレームワーク配列分析から得られたコンセンサスフレームワーク配列(Knappik et al.,(2000)J Mol Biol 296:57-86)、又はファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリに組み込まれた合成HCDR3(Shi et al.,(2010)J Mol Biol 397:385-96、及び国際公開第2009/085462号)を含有し得る。
少なくとも1つのCDRが非ヒト種に由来する抗体は、「ヒト抗体」の定義には含まれない。
「組換え物」は、異なる供給源由来のセグメントが結合されて組み換えDNA、抗体、又はタンパク質を産生するときに、組み換え手段によって調製、発現、作製、又は単離されるDNA、抗体、及び他のタンパク質を指す。
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原の部分を指す。エピトープは、典型的には、化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性など)部分の表面集団、例えばアミノ酸又は多糖側鎖などの部分の表面集団からなり、特定の三次元構造特性並びに特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、立体配座上の空間単位を形成する連続的な及び/又は不連続なアミノ酸によって構成され得る。不連続なエピトープでは、抗原の直鎖配列の異なる部分にあるアミノ酸が、タンパク質分子の折り畳みにより三次元空間でごく近接するようになる。
「二重特異性」は、2つの異なる抗原、又は同じ抗原中の2つの異なるエピトープと特異的に結合する抗体を指す。二重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト又はサル、例えば、Macaca cynomolgus(カニクイザル、cyno)又はPan troglodytesなどの、他の種(ホモログ)の同じ抗原に対して交差反応性を有し得るか、あるいは2つ以上の異なる抗原間で共有されるエピトープに結合し得る。
「多重特異性」とは、同じ抗原内の2つ以上の異なる抗原、又は2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する抗体を意味する。多重特異性抗体は、他の関連抗原、例えば、ヒト若しくはサル、例えば、Macaca cynomolgus(カニクイザル、cyno)、若しくはPan troglodytesなどの他の種からの、同じ抗原(ホモログ)に対する交差反応性を有し得るか、又は2つ又は3つ以上の異なる抗原間で共有されるエピトープに結合し得る。
「変異体」は、1つ以上の改変、例えば、1つ以上の置換、挿入、又は欠失によって参照ポリペプチド又は参照ポリヌクレオチドとは異なるポリペプチド又はポリヌクレオチドを指す。
「ベクター」は、生物系内で複製可能な、又はそのような系間を移動することができる、ポリヌクレオチドを指す。ベクターポリヌクレオチドは、典型的には、ベクターを複製することができる生物学的要素を利用して生物系(例えば、細胞、ウイルス、動物、植物)及び再構成された生物系におけるこれらポリヌクレオチドの複製又は維持を促進する機能を有する、複製起点、ポリアデニル化シグナル、又は選択マーカーなどの要素を含有する。ベクターポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNA分子、又はこれらのハイブリッドであり得る。
「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を指令するために、生物系又は再構成された生物系において利用できるベクターを指す。
「ポリヌクレオチド」とは、糖-ホスフェート主鎖により共有結合した、又は他の等価な共有化学反応により結合した、ヌクレオチド鎖を含む合成分子を意味する。cDNAは、例示的な合成ポリヌクレオチドである。
「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合によって連結されてポリペプチドを形成する少なくとも2つのアミノ酸残基を含む分子を指す。50個未満のアミノ酸からなる小分子ポリペプチドは、「ペプチド」と称され得る。
「PSMA」は、前立腺特異的膜抗原を指す。完全長ヒトPSMAのアミノ酸配列を配列番号1に示す。細胞外ドメインは、完全長PSMAの残基44~750に及ぶ。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質断片に対する全ての言及は、非ヒト種由来のものであると明示的に指定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質断片のヒトバージョンを指すことを意図する。したがって、「PSMA」は、非ヒト種由来のもの、例えば、「マウスPSMA」又は「サルPSMA」であると指定されない限り、ヒトPSMAを意味する。
配列番号1(完全長ヒトPSMA)
MWNLLHETDSAVATARRPRWLCAGALVLAGGFFLLGFLFGWFIKSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVHNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYSISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLQDFDKSNPIVLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGEVKRQIYVAAFTVQAAAETLSEVA
「CD3」は、多分子T細胞受容体(T cell receptor、TCR)複合体の一部としてT細胞上で発現され、2つ又は4つの受容体鎖:CD3イプシロン、CD3デルタ、CD3ゼータ、及びCD3ガンマの会合から形成されたホモ二量体又はヘテロ二量体からなる抗原を指す。ヒトCD3イプシロンは、配列番号4のアミノ酸配列を含む。細胞外ドメインは、完全長CD3の残基23~126に及ぶ。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質断片に対する全ての言及は、非ヒト種由来のものであると明示的に指定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、又はタンパク質断片のヒトバージョンを指すことを意図する。したがって、「CD3」は、非ヒト種、例えば、「マウスCD3」「サルCD3」などからのものとして指定されない限り、ヒトCD3を意味する。
配列番号4(ヒトCD3イプシロン)
MQSGTHWRVLGLCLLSVGVWGQDGNEEMGGITQTPYKVSISGTTVILTCPQYPGSEILWQHNDKNIGGDEDDKNIGSDEDHLSLKEFSELEQSGYYVCYPRGSKPEDANFYLYLRARVCENCMEMDVMSVATIVIVDICITGGLLLLVYYWSKNRKAKAKPVTRGAGAGGRQRGQNKERPPPVPNPDYEPIRKGQRDLYSGLNQRRI
「二重特異性抗PSMA/抗CD3抗体」、PSMA/CD3抗体、PSMA×CD3抗体などは、PSMA及びCD3に結合する抗体を指す。
「~と組み合わせて」とは、2つ以上の療法薬を、混合物の状態で一緒に、単剤として同時に、又は単剤として任意の順序で逐次に患者に投与することを意味する。
「PSMA陽性癌」は、測定可能なレベルのPSMAタンパク質を示す癌組織又は癌細胞を指す。PSMAタンパク質のレベルは、生細胞又は溶解細胞で、例えばELISA、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、又は放射免疫アッセイを使用する周知のアッセイを使用して、測定することができる。
「サンプル」は、対象から単離された類似の流体、細胞、又は組織に加えて、対象の体内に存在する流体、細胞、又は組織の収集物を指す。代表的なサンプルは、血液、血清及び漿膜液、血漿、リンパ液、尿、唾液、嚢胞液、涙液、糞便、痰、分泌組織及び器官の粘膜分泌物、膣分泌物、腹水、例えば、非固形腫瘍と関連するもの、胸膜、心膜、腹膜、腹部及びその他体腔内の液、気管支洗浄によって回収された液、対象又は生物源と接触した液体、例えば、細胞又は器官馴化培地、洗浄液などを含む細胞及び器官用培地、組織生検、微小針吸引又は外科的に切除された腫瘍組織などの、体液である。
「癌細胞」又は「腫瘍細胞」とは、インビボ、エクスビボ、又は組織培養のいずれかにおいて、自然発生的な又は導入された表現型の変化を有する癌性又は形質転換細胞を指す。これらの変化は、必ずしも新たな遺伝物質の取り込みを伴うものではない。形質転換は、形質転換ウイルスの感染及び新たなゲノム核酸の取り込み、又は外因性の核酸の取り込みにより発生し得るが、自然に又は発癌物質に対する暴露後にも発生して、それによって内因性の遺伝子を変異させ得る。形質転換/癌は、in vitro、in vivo、及びex vivoにおける、形態学的変化、細胞の不死化、異常な増殖制御、病巣の形成、増殖、悪性度、腫瘍特異的マーカーレベルの変化、浸潤性、ヌードマウスなどの適した動物宿主における腫瘍の増殖などによって例示される(Freshney,Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique(3rd ed.1994))。
「約」は、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、即ち測定システムの制限事項にある程度依存する。特定のアッセイ、結果、又は実施形態の文脈において実施例又は明細書のその他の箇所に別途明示的に記載のない限り、「約」は、当該技術分野の実施に従う1つの標準偏差又は5%までの範囲のいずれかのより高い範囲内であることを意味する。
「治療する」又は「治療」は、病態に冒された患者の処置を指し、癌細胞を死滅させることにより病態を緩和する作用ばかりでなく、病態の進行の阻害をもたらす作用も指し、進行の速度の低下、進行の速度の停止、病態の寛解、及び病態の治癒を含む。予防措置としての治療(すなわち、予防法)も含まれる。
「治療有効量」は、必要な用量及び期間で癌を治療するための有効量を指す。治療有効量は、個体の病態、年齢、性別、及び体重などの要因、並びに個体において所望の応答を引き出す1つの治療薬又は治療薬の組み合わせの能力によって様々であってよい。有効な1つの療法薬、又は療法薬の組み合わせの例示的な指標としては、例えば、治療の結果として改善された患者の健康が挙げられる。
本明細書に定義される発明によると、用語「安全量」は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインとを有する抗PSMA×CD3抗原結合断片であって、第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含む、抗PSMA×CD3抗原結合断片を用いる用量又は治療に関するものであるとき、有害バイタルサイン(心拍数、収縮期及び拡張期血圧、体温)、有害標準臨床検査(血液学、臨床化学、尿検査、脂質、凝固)、アレルギー反応/過敏症、有害局所注射部位反応、又は有害EKGを含む有害事象の比較的低い若しくは低減された頻度及び/又は低い若しくは低減された重症度を伴う好ましいリスク:ベネフィットの比を指す。
本明細書で使用するとき、特に断りがない限り、用語「臨床的に証明された」(独立して、又は用語「安全性」及び/又は「有効性」を修飾するために使用される)は、臨床試験によって証明されており、臨床試験が、米国食品医薬品局、EMEA、又は対応する国家規制機関の基準を満たしていることを意味する。例えば、臨床試験は、薬物の効果を臨床的に証明するために使用される、適切なサイズのランダム化二重盲検試験であってもよい。いくつかの実施形態では、「臨床的に証明された」とは、第I相臨床試験のための米国食品医薬品局、EMEA、又は対応する国立規制機関の基準を満たした臨床試験によって証明されていることを示す。
抗PSMA×CD3抗体
本発明は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインとを有するPSMA×CD3抗原結合断片を含む組成物を提供し、第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含む。本発明はまた、腎癌を有するヒト男性に安全量の上記の抗PSMA×CD3抗体を投与することを含む、それからなる、又はそれから本質的になる、腎癌を治療する方法も対象とする。
本明細書全体を通して、抗体定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、別途明示的に記載のない限り、EUインデックスに従う。
従来の1文字及び3文字のアミノ酸コードを、表1に示すとおりに本明細書で使用する。
Figure 2022529970000001
治療適用
本発明はまた、当該技術分野において既知である、又は本明細書に記載されるように、本発明の少なくとも1つの二重インテグリン抗体を使用して、細胞、組織、器官、動物、又は患者における少なくとも1つのPSMA関連疾患を調節又は治療するための方法も提供する。
本発明はまた、進行固形腫瘍、又は転移性腎癌(metastrenal cancer)(mRCC)のうちの少なくとも1つを含むがこれらに限定されない、細胞、組織、器官、動物、又は患者における、少なくとも1つの腎癌関連疾患を調節又は治療するための方法も提供する。
本明細書で使用するとき、用語「癌」は、制御なく増殖する傾向があり、いくつかの場合では浸潤(拡散)する傾向がある、細胞の異常な増殖を指す。
本明細書で使用するとき、用語「RCC」は、転移性腎細胞癌を指す。いくつかの実施形態では、RCCは、骨スキャン及びコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴映像法(MRI)スキャンによって評価される。
本明細書で使用するとき、用語「同時投与」などは、選択された療法薬の患者への投与を包含し、薬剤が同じ若しくは異なる投与経路によって、又は同じ若しくは異なる時間で投与される、治療レジメンを含むことが意図される。
用語「無転移生存」又は「MFS」は、定義された期間又は死亡にかけて、癌が拡散することなく生存している、治験における患者の割合を指す。MFSは、通常、治験における組み入れ、無作為化、又は治療の開始からの時間として報告される。MFSを、個体又は治験母集団について報告する。抗アンドロゲン剤によるCRPCの治療の状況において、無転移生存の増加は、偽薬による治療と比較して、いずれが最初に起きるにせよ浸潤を有する癌又は死亡なしとして観察される時間の延長になる。いくつかの実施形態では、無転移生存の増加は、約1ケ月、約2ケ月、約3ケ月、約4ケ月、約5ケ月、約6ケ月、約7ケ月、約8ケ月、約10ケ月、約11ケ月、約12ケ月、約13ケ月、約14ケ月、約15ケ月、約16ケ月、約17ケ月、約18ケ月、約19ケ月、約20ケ月、又は20ケ月超である。いくつかの実施形態では、安全かつ有効量の抗アンドロゲン剤の投与は、ヒト男性の無転移生存の増加をも提供し、任意に、無転移生存の増加は、非転移性去勢抵抗性前立腺癌を有する、偽薬により治療したヒト男性の母集団の平均生存率に対するものである。いくつかの実施形態では、無転移生存は、いずれが最初に起きるにせよBICRにより確認される骨若しくは軟組織の遠隔転移又は任意の原因による死亡についての最初の証拠に関する時間までの、無作為化からの期間を指す。
用語「転移までの時間」は、X線写真で検出可能な骨又は軟組織の遠隔転移のBICRにより確認された最初の証拠を示すスキャンの時間までの、無作為化からの時間である。いくつかの実施形態では、抗アンドロゲン剤の投与は、転移までの期間(TTM)によって測定される改善された抗腫瘍活性を患者に提供する。
用語「病状進行までの時間」は、以下のいずれかにおける(いずれが先に起きるにせよ)、CRFの文書作成までの、無作為化からの時間として定義される:(1)骨格関連事象(SRE)の発症:病的骨折、脊髄圧迫、又は手術による介入若しくは放射線療法の必要性;(2)新たな全身抗癌療法の開始を必要とする疾患関連症状の疼痛の進行又は悪化;又は(3)手術による介入又は放射線療法を必要とする局所領域的な腫瘍の進行に起因する臨床的に重大な症状の発症。いくつかの実施形態では、患者への抗アンドロゲン剤の投与は、病状進行までの時間によって測定される改善された抗腫瘍活性を提供する。
本明細書で使用するとき、用語「RCC」は、転移性腎細胞癌を指す。いくつかの実施形態では、RCCは、骨スキャン及びコンピュータ断層撮影(CT)又は磁気共鳴映像法(MRI)スキャンによって評価される。
用語「全生存」は、任意の原因による死亡日までの、無作為化からの時間として定義される。解析時に生きている患者についての生存データは、生存が判明している中で最も直近の日付で打ち切ることとした。加えて、ベースライン情報後に生存していない患者について、無作為化の日付でデータを打ち切ることとし、居所が分からず追跡できなくなる患者、又は同意を撤回する患者については、データを、患者の生存が判明している中で最も直近の日付で打ち切ることとした。いくつかの実施形態では、患者への抗アンドロゲン剤の投与は、全生存によって測定される改善された抗腫瘍活性を提供する。
本明細書で使用するとき、用語「疾患増悪に関連する症状の遅延」とは、投与された薬物の治験での無作為化時からの、疼痛、尿路閉塞などの症状の発症のまでの時間の増加、及び生活の質に関する検討時間の増加を意味する。
用語「無作為化」は、臨床治験を指すとき、患者が臨床治験に適格であることが確認され、治療群に割り当てられるときを指す。
用語「キット」及び「製造物品」は、同義語として使用される。
実施例1.材料
PSMA細胞株の生成。完全長のチンパンジーPSMA(配列番号2)又は完全長のカニクイザルPSMA(配列番号3)を提示する発現ベクターをスクリーニングツールとして使用するために作製し、抗PSMAリード抗体を評価した。ベクターを、HEK293F細胞内に一過性にトランスフェクションした。トランスフェクトされた293F懸濁細胞を、血清を含む増殖培地中に播種して、付着細胞とし、安定したプラスミド組み込みのために選択した。単一細胞集団を連続希釈により選択し、PSMA表面受容体の発現を、(PSMAL抗体(中央部)親和性精製ウサギポリクローナル抗体(カタログ#OAAB02483、Aviva Systems Biology)を一次抗体として、R-PE抗ウサギ二次抗体(カタログ#111-116-144、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)及びアイソタイプ対照としてのウサギポリクローナルIgG(カタログ#SC-532、Santa Cruz Biotechnology)と共に)使用して、FACSにより定量した。
配列番号2(完全長チンパンジーPSMA)
MWNLLHETDSAVATARRPRWLCAGALVLAGGFFLLGFLFGWFIKSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVSDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRRGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVHNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYSISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFSERLQDFDKSNPIVLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGEVKRQIYVAAFTVQAAAETLSEVA
配列番号3(完全長カニクイザルPSMA)
MWNLLHETDSAVATARRPRWLCAGALVLAGGFFLLGFLFGWFIKSSNEATNITPKHNMKAFLDELKAENIKKFLYNFTQIPHLAGTEQNFQLAKQIQSQWKEFGLDSVELAHYDVLLSYPNKTHPNYISIINEDGNEIFNTSLFEPPPPGYENVLDIVPPFSAFSPQGMPEGDLVYVNYARTEDFFKLERDMKINCSGKIVIARYGKVFRGNKVKNAQLAGAKGVILYSDPADYFAPGVKSYPDGWNLPGGGVQRGNILNLNGAGDPLTPGYPANEYAYRHGIAEAVGLPSIPVHPIGYYDAQKLLEKMGGSAPPDSSWRGSLKVPYNVGPGFTGNFSTQKVKMHIHSTNEVTRIYNVIGTLRGAVEPDRYVILGGHRDSWVFGGIDPQSGAAVVHEIVRSFGTLKKEGWRPRRTILFASWDAEEFGLLGSTEWAEENSRLLQERGVAYINADSSIEGNYTLRVDCTPLMYSLVYNLTKELKSPDEGFEGKSLYESWTKKSPSPEFSGMPRISKLGSGNDFEVFFQRLGIASGRARYTKNWETNKFSGYPLYHSVYETYELVEKFYDPMFKYHLTVAQVRGGMVFELANSIVLPFDCRDYAVVLRKYADKIYNISMKHPQEMKTYSVSFDSLFSAVKNFTEIASKFTERLQDFDKSNPILLRMMNDQLMFLERAFIDPLGLPDRPFYRHVIYAPSSHNKYAGESFPGIYDALFDIESKVDPSKAWGDVKRQISVAAFTVQAAAETLSEVA
ヒトPSMA発現細胞株を、完全長のヒトPSMA(FOLH1_HUMAN、配列番号1)を含有するレンチウイルス(Genecopoeia、cat #EX-G0050-Lv105-10)、及びPSMA陽性細胞を選択するためにピューロマイシンを使用して生成した。PSMA陰性のHEK293F細胞(ATCC)に、レンチウイルス粒子を形質導入し、ヒトPSMAを過剰発現させた。形質導入後、PSMA及び耐性マーカーを陽性発現する細胞は、様々な濃度のピューロマイシン(Life Technologies)を加えたDMEM+10%HI FBS(Life Technologies)中で増殖させたプールした細胞を処理することによって選択した。
HEK生成細胞株に加えて、いくつかの市販の細胞株をファージパニング、並びに結合アッセイ及び細胞毒性アッセイに使用した。LNCaPクローンFGC細胞(ATCC cat#CRL-1740)は、市販のヒト前立腺癌細胞株である。C4-2B細胞は、元来MD Andersonで開発されたものであり、in vivoで増殖したLNCaP FGCに由来し、骨髄に転移する(Thalmann,et al 1994,Cancer Research 54,2577-81)。
可溶性PSMA ECDタンパク質の生成。パニングするため、及び抗PSMAリード抗体を評価するために、組み換えチンパンジーPSMA細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(ECDのアミノ酸44~750、配列番号2)、組み換えカニクイザルPSMA 細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(配列番号3のアミノ酸44~750)及び組み換えヒトPSMA 細胞外ドメイン(ECD)タンパク質(配列番号1のアミノ酸44~750)を生成した
実施例2.抗chimp及び抗ヒトPSMA抗体の生成
組み換えタンパク質を用いるパニング。4種類のヒトVL生殖系列遺伝子(A27、B3、L6、O12)ライブラリと対を成すVH1-69、3-23及び5-51重鎖ライブラリからなる、de novoヒトFab-pIXライブラリ(Shi,L.,et al J Mol Biol,2010.397(2):p.385-396.国際公開第2009/085462号)の1回目の溶液パニングを、製造元のプロトコルに従ってビオチン化Chimp PSMA ECDでコーティングしたストレプトアビジンビーズ(Invitrogen Cat#112.05D、Lot#62992920)へのファージ捕捉、続いて、製造元のプロトコルに従ってCyno-PSMA-FcでコーティングしたProtGビーズ(Invitrogen、Cat#10003D)へのファージ捕捉、続いて、製造元のプロトコルに従ってビオチン化Chimp PSMA ECDでコーティングしたSera-mag Double Speed磁気ニュートラアビジンビーズ(Thermo、Cat #7815-2104-011150)へのファージ捕捉を1回行う、交互パニング法を用いて実施した。
抗PSMA Fabの全細胞パニング。上記のチンパンジーECDパニング実験、つまり新しいde novoファージライブラリを用いて最初に得られたものを使用して、追加のパニング実験を全細胞に対して行った。簡潔に述べると、ファージをヘルパーファージ感染によって産生し、当該技術分野において既知の標準的なプロトコルに従ってPEG/NaCl沈殿により濃縮した。ファージライブラリを、トランスフェクトされていない親HEK293F細胞において、4℃で一晩、穏やかに揺らしながら予備清浄した。PEG/NaCl沈殿後、予備清浄したライブラリを、chimp PSMA発現HEK293細胞又はLNCAP細胞と、4℃で2時間静かに揺らしながらインキュベートした。結合していないファージの除去とファージ結合細胞の回収は、Ficollによる勾配によって行い、その後、結合ファージを保有する細胞を、1mLのTG-1 E.coli培養液と共に37℃で30分間撹拌せずに培養することによって、数回洗浄工程を行った。得られた混合物をLB-カルベニシリン-1%グルコースプレート上にプレーティングし、37℃で一晩増殖させた。次いで、後続するパニングのためにこのプロセスを繰り返した。
E.coli上清を生成するためのファージFab-pIXからFab-Hisへの変換。得られたファージFab-pIXのヒットを、標準的な手順を用いてFab-Hisに変換した。プラスミドDNAをファージパニングしたE.coliから単離し(Plasmid Plus Maxi Kit、Qiagen cat#12963)、NheI/SpeI制限消化に供した。得られた5400及び100bp断片を0.8%アガロースゲル上で分離し、5400bpの断片をゲル精製した(MinElute PCR精製キット、Qiagen cat#28006)。精製した5400bpのバンドを、T4リガーゼを使用してセルフライゲーションし、得られた生成物(Fab-his融合体をコードしている)を、TG-1 E.coli株に戻し、クローン的に単離した。Fab-His上清を、1mM IPTGによる培養で一晩誘導することによってクローンから生成させた。一晩培養物を遠心分離した後、清澄化した上清を後続のアッセイでの使用のために準備した。異なるFab-his上清の相対発現レベルを決定するために、段階希釈した上清の抗κ(Southern Biotech cat#2061-05)ELISAを実施した。試験した全てのクローンは、同様のFab-his発現を示した(データは示さず)。
E.coliからのFab-His融合体の細胞結合。PSMA発現細胞へのE.coli上清の個々のFab-his融合体の結合能力を評価するために、細胞系結合アッセイを設計した。pIX切断後の全てのパニング実験の3回目に得られたものから、個々のFabクローンを単離した。Fabクローンを、chipm及びcyno PSMA発現HEK細胞、並びにLNCaP細胞上のヒトPSMAへの結合について試験した。簡潔に述べると、PSMA発現細胞を、ウェル当たり200,000個の密度でV底プレート(CoStar 3357)に分注し、氷上で1時間、Fab断片を発現する上清(100μL)と共にインキュベートした。2%FBSを含有するPBSで細胞を2回洗浄し、氷上で1時間、マウス抗ヒトκ-RPE抗体(Life Technologies cat#MH10514)を用いて染色した。2%FBSを含有するPBSで細胞を2回洗浄し、100μLの同じ洗浄バッファ中に再懸濁させた。BD FACS Arrayフローサイトメーターでプレートを読み取った。FACSデータを、前方散乱及び側方散乱を使用して健康な細胞集団をライブゲートし、次いでこのゲート内の細胞を分析してPE染色することによって、FlowJoソフトウェアで分析した。平均蛍光強度(MFI)を計算し、Microsoft Excelにエクスポートした。全ての3種のPSMA(cyno、chimp及びヒト)に対してバックグラウンドの≧3倍の結合を示し、HEK293細胞株に結合しなかったFabクローンを、「予備陽性」とラベルした。Fabの配列を決定し、再スクリーニングのための哺乳類発現ベクターへのクローニングに進めた。真の陽性は、PSMA発現細胞株への哺乳類細胞で発現したFab上清の結合によって選択した。
哺乳類Fabの調製。E.coli Fabを哺乳類で発現したFabに変換するために、製造元のプロトコルに従って、In-Fusion HDクローニング(ClonTech cat#638918)を使用した。簡潔に述べると、一次スクリーニングを通過し、哺乳類Fab形式に移されるクローンのヌクレオチド配列を、huKappa_muIgGSP及びhuG1 Fab発現ベクターにIn-FusionクローニングするためのPCR断片を生成するために使用されるアイソタイプ特異的PCRプライマーのリストを生成する「InFu Primer Finder v1.2.3」プログラム(自社開発したソフトウェア)にロードする。これらのベクターは、pcDNA3.1に基づくCMVプロモータを有する自社製ベクターである。In-fusionプロセスに続いて、E.coliクローンを単離し、配列を検証し、標準的なプロトコルを用いてHEK293細胞にトランスフェクションした。5日後、トランスフェクト液から20mLの上清を採取することにより、PSMA発現細胞株への結合を確認するための哺乳類PSMA Fabを調製した。
哺乳類上清形態での全細胞パニングからの再スクリーニングヒット。全細胞結合アッセイを用いて、哺乳類で発現したFab上清の確認を行った。チンパンジー、カニクイザル及びヒトPSMA(LNCaP細胞)へのFabの結合について検査し、並びに、反対に親HEK細胞株に結合しないことについてもスクリーニングを行った。
哺乳類の発現したFabの用量反応曲線。哺乳類が発現したFabクローンが、未希釈のFab上清の際にPSMA発現細胞株に結合することを確認した後、上清をOctet又はタンパク質ゲルによるタンパク質濃度に対して補正し、用量反応曲線を完成させて、前述のプロトコルを用いてPSMA結合を確認した。
抗PSMA mAbの調製。全ての3つのPSMA発現細胞への結合を示したクローンを、最終的には、制限クローニングによってFc置換のS228P、F234A、及びL235A(PAA)アイソタイプを有するmAb IgG4に変換した。簡潔に述べると、初期スクリーニングを通過したFabクローンに対応する構築物をHindIII及びApaIで消化した。ゲル精製フラグメントを、ヒトIgG4-PAA発現の生成のため、CMVプロモータを有する自社製発現ベクターにライゲーションした。前述の自社製発現ベクターを使用して、各PSMA mabの重鎖及び軽鎖を発現させ、mAbの発現には、両方のベクターを293Expi又はCHO細胞株に一時的に同時導入した。
以下の表2及び表3に記載されるように、配列番号5のVH及び配列番号6のVLを有するVH及びVL領域、並びに、S228P、F234A、及びL235A置換を有するIgG4定常領域を含む単一特異性抗PSMA抗体PSMB127を生成した。
Figure 2022529970000002
Figure 2022529970000003
Figure 2022529970000004
親PSMA mAb PSMB127とヒト、chimp、及びcyno PSMA ECDとの相互作用を、ProteOn XPR36システム(BioRad)を使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した。ヒト、chimp、及びcyno PSMA ECDに対する結合親和性の要約を以下に示す。
Figure 2022529970000005
実施例3.抗CD3抗体の生成及び特性評価
抗CD3抗体の生成市販の抗CD3抗体SP34、マウスIgG1アイソタイプ抗ヒトCD3 IgG1抗体を、ヒトフレームワーク適応法(Human Framework Adaptation method)(Fransson,et al,JMB,2010 398(2):214-31)によってヒト化した。CDR-H3のコンフォメーションを保存するために、VLの位置Val38、Gly48、Gly51及びV59におけるマウス残基並びにVH中の位置48におけるAlaを保持した。これらの「逆突然変異」を、ヒト化計画に加えた。得られた抗CD3変異体をCD3B146と呼んだ。
初代T細胞に対するヒト化抗CD3抗体の内因性細胞結合。初代ヒトT細胞及び初代カニクイザルCD4T細胞上の細胞表面CD3εへの結合について、CD3B146を試験して、交差反応性の保持を評価した。カニクイザルの末梢血から精製されたCD4T細胞(Zen Bio,Triangle Research Park,USA)を使用した。簡潔に、細胞表面CD3εに対する抗CD3抗体の結合性を、陰性選択により精製された初代ヒトTリンパ球(Biological Specialty,Colmar,USA)を使用するフローサイトメトリーにより評価した。発現上清又は精製抗体をそれぞれ培地又はFACS緩衝液(BD BioSciences)中において10μg/mLに正規化した。2×105個の細胞を、96ウェル丸底プレート(CoStar)のウェルに、標識化のためにアリコートした。発現上清中の抗体を細胞に添加し、4℃で45分間インキュベートした。1300rpmで3分間の遠心分離及び上清の除去後、50μLの抗ヒトIgG(H+L)Alexa Fluor 647二次抗体(Life technologies Inc.)を、終濃度10μg/mLで、4℃において、直接光を避けて、細胞と共に30分間インキュベートし、続いて30μLのFACs緩衝液(BD BioSciences)中で洗浄及び再懸濁した。サンプル収集を、ForeCytソフトウェアを使用するIntellicyt HTFCシステムにおいて行った。
治療抗体として、同一のFc領域を有する2つの自社製ファージ由来抗体、すなわち、G11(非cyno交差反応性、アゴニスト抗体を、陽性対照として使用した)、及びCD3B124(非バインダー/非アゴニスト抗体を、非特異的結合を評価するのに使用した)を対照として使用した。市販のSP34抗体を、このアッセイでは比較対象として使用しなかった。SP34抗体は、マウス抗体であり、異なる二次検出試薬の使用は、試験された変異体との直接的な比較を妨げるであろうためである。滴定系列をランしたが、明確にするために、平均蛍光強度値(FIM)を使用して中間濃度を図1に表す。CD3B146は、CD3B146がヒトCD3εとカニクイザルCD3εとの間の種交差反応性を保持したことを示しているヒトT細胞とcyno T細胞の両方に対する強い結合を示す(図1及び図2)。
初代T細胞におけるヒト化抗CD3ヒットの機能性分析。CD3ε架橋を介してヒトT細胞の活性化を誘引するCD3B146変異体の能力を調査するために、初代ヒトT細胞を、ビーズコンジュゲート抗体の存在下において、一晩培養した。翌日、細胞を回収し、抗CD69抗体で標識し、活性化を測定した。ヒト化抗CD3抗体を、プロテインAコート磁気ビーズ(SpheroTech,Lake forest,USA)に結合させた。翌日、2×10個の初代ヒトT細胞を丸底細胞培養プレートに3連で播種し、2×10個のコートビーズを添加した。37℃で一晩培養した後、細胞を収集し、抗CD69 Alexa Fluor(登録商標)488抗体(クローンFN50、Biolegend)で標識して、この活性化マーカーのアップレギュレーションを評価した。サンプルの収集及び分析を、結合性について上記されたように行った。複数の陰性コントロールをランした。同コントロールには、T細胞単独、T細胞と非コートビーズ、及びT細胞とアイソタイプコントロール(CD3B94)コートビーズが挙げられる。比較のために、市販のSP34-2抗体を含む、陽性コントロールをランした(図3)。
FN50抗CD69抗体は、非ヒトタンパク質と交差反応性であると記載されており、カニクイザルCD4+T細胞の活性化を試験するために使用した。CD3B146は、ヒト及びカニクイザルの両方を活性化する能力を示した(図3)。
抗CD3 mAbの調製。CD3B146 IgG1を、Fc置換のS228P、F234A、及びL235A(PAA)、並びにF405L及びR409K置換(EUインデックスによる番号付け)を有するmAb IgG4 PAA GenMab形式(Labrijn et,2013)に変換した。S233P、F234A及びL235AはFcサイレンシング変異であるが、F405L及びR409K変異は、天然のIgG4 F405及びR409残基を含有するPSMA抗体とのヘテロ二量体化を可能にする。簡潔に述べると、CMVプロモータを有する自社製発現ベクターを使用し、標準的な分子生物学的手法を使用して、重鎖(HC)可変領域を、S228P、F234A、L235A、F405L、及びR409K変異を含有するヒトIgG4-PAA Fc上にサブクローニングした。CMVプロモータを含む自社製発現ベクターを使用し、標準的な分子生物学的手法を使用して、軽鎖(LC)可変領域を、ヒトラムダ(λ)定常領域上にサブクローニングした。得られたプラスミドを、Expi293F細胞(Invitrogen)内にトランスフェクションし、mAbを発現させた。標準的な精製方法、つまり、100mM NaAc pH3.5の溶出緩衝液、並びに2M Tris(pH7.5)及び150mM NaClの中和緩衝液を用いるプロテインAカラムを使用して、抗CD3抗体を精製した。mabを、PD10(Sephadex G25M)カラム及びそのプールを用いて脱塩した
生成した単一特異性抗CD3抗体を新たにCD3B219と命名した。これは、配列番号15のVH及び配列番号16のVLを有するVH及びVL領域と、S228P、F234A、L235A、F405L、及びR409K置換を有するIgG4定常領域とを含む。CD3B219は、配列番号17の重鎖及び配列番号18の軽鎖を含む。対照として、二重特異性抗体のCD3又はPSMAアームのいずれかと、無しアームとしてパートナーになる、B21Mに由来する、単特異性抗RSV抗体。CD3B219のVH及びVL配列を、表5に示す。
Figure 2022529970000006
Figure 2022529970000007
実施例4.PSMA×CD3二重特異性抗体の調製
PSMA mAb PSMB127(VH配列番号5、VL配列番号6)を高親和性CD3B219(VH配列番号15、VL配列番号16)のCD3アームと組み合わせることによって、PSMA×CD3二重特異性抗体の形成を行った。標的親(PSMA)は、天然のIgG4アミノ酸F405及びR409を含有し、一方、殺傷親(CD3)は、F405L GenMab変異及びR409K変異を含有する。
100mM NaAc pH3.5の溶出緩衝液、並びに2M Tris(pH7.5)及び150mM NaClの中和緩衝液を用いるプロテインAカラムを使用して、親PSMA及びCD3抗体を精製した。PD10(Sephadex G25M)カラムを用いてmAbを脱塩し、D-PBS、pH7.2緩衝液中で透析した。
精製後、親PSMA抗体を、75mMシステアミン-HCl中の還元条件下で所望の親CD3抗体と混合し、31℃で4時間インキュベートした。組み換え反応はモル比ベースで行われ、一定のPSMA量(例えば、10mg又は~67.8ナノモル)をCD3抗体(例えば、~71.8ナノモル)と組み合わせ、このときCD3抗体はPSMA抗体に対して6%過剰で添加した。PSMA抗体ストックの濃度を0.8~6mg/mLで変化させ、組み換え反応液の量は、各対について変化させた。続いて、組み換え体をPBSに対して透析して還元剤を除去した。過剰なCD3抗体(比)を用いて二重特異性抗体反応を行って、組み換え後に残存する未反応のPSMA親抗体の量を最小化した。親mAbの部分的還元に続いて、PBS中に一晩透析することによって還元剤を除去した。最終PSMA×CD3抗体をPS3B27と命名した
また、選択されたPSMAヒットを非殺傷アーム(無し)とも対にして、試験目的のために陰性対照を作成した。対照二重特異性抗体であるB2M1では、IgG4 PAA形式のRSV抗体を生成し、精製し、CD3アームのCD3B219-F405L、R409Kと組み合わせて、CD3B288(CD3×無し)を生成した、又は、PSMAアームのPSMB162、PSMB126、PSMB130と組み合わせて、それぞれPS3B37、PS3B39及びPS3B40(PSMA×無し)を生成した。
Figure 2022529970000008
Figure 2022529970000009
Figure 2022529970000010
Figure 2022529970000011
Figure 2022529970000012
実施例5.PSMA陽性細胞株に対するPSMAxCD3二重特異性の結合
PSMA陽性細胞株LNCAP、ヒトPSMA-HEK、チンパンジー-PSMA-HEK及びカニクイザルPSMA-HEKへの結合について、PSMA×CD3二重特異性抗体を試験した。結合した抗体を、抗ヒトκ軽鎖PEコンジュゲート検出試薬(Invitrogen)によって検出した。結合した二重特異性抗体の測定値は、平均蛍光強度(MFI)であった。MFIを相対EC50に変換した。EC50は、一般に使用される用量反応曲線であり、最大有効濃度の半分、つまりEC50の点は、曲線の屈曲点として定義される。EC50値は、細胞に結合した二重特異性と既知の濃度を測定することによって決定した。高濃度により、最大標的抗原結合、すなわち完全結合飽和をもたらした。次いで、用量応答曲線をバックグラウンド、すなわち二重特異性結合が見られないところまで希釈した。この曲線の屈曲点はEC50の点を反映する。算出されるEC50は、EC50の点での二重特異性抗体のμg/mL量をとり、二重特異性抗体のMWに基づいてモル値に変換することによって決定される。二重特異性抗体をタンパク質濃度について補正した後、ヒト又はcyno PSMAのいずれかを発現する同じ数の細胞と共にインキュベートした。各濃度のMFIをフローサイトメトリーによって収集し、濃度に対してプロットした。データをlog10によって変換し、次いでプロットした。結合曲線の非線形回帰を行い、EC50値を決定した。LNCaP、cyno及びchimp PSMA発現細胞株を使用した全細胞に対するPS3B127の細胞系結合EC50値及び算出EC50値を表11に示す。
Figure 2022529970000013
実施例6.組み換えPSMAタンパク質に対するPSMA×CD3二重特異性抗体の親和性
抗体を更に評価するために、chimp PSMA ECDの会合及び解離速度を、細胞結合アッセイから進めたヒットについて測定した。PSMA×CD3二重特異性mAbの標的(組み換えChimp、PSMA)との相互作用を、ProteOn XPR36システム(BioRad)を使用する、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。アミンカップリング化学反応についての製造元の使用説明書を使用し、抗ヒトIgG Fc(Jackson ImmunoResearch Laboratory、cat#109-005-098)を、GLCチップ(BioRad、cat#176-5011)の加工アルギン酸ポリマー層にカップリングさせて、バイオセンサ表面を調製した。約4400RU(反応単位)の抗-ヒトIgG Fc抗体を固定化した。動力学実験を、ランニング緩衝液(DPBS+0.03%P20+100μg/mL BSA)中、25℃で実施した。動力学実験を実施するにあたり、3.7nM~300nM(3倍段階希釈)の範囲の濃度の分析種(組み換えChimp PSMA ECD)の注入後100RUの二重特異性抗体を捕捉した。50μL/分で3分間会合段階をモニタリングした後、15分間緩衝液を流した(解離段階)。100μL/分で100mMリン酸(HPO、Sigma、cat#7961)を18秒間ずつ2回流してチップ表面を再生した。
各二重特異性抗体の結果を、k(結合速度(On-rate))、k(解離速度(Off-rate))、及びK(平衡解離定数)の形式で報告した。結果を表12に示す。
Figure 2022529970000014
n=3 2回繰り返した3回の独立した実験。結果を平均±標準偏差として列挙した。
実施例7:毒性試験
IV投与により実施された試験における試験薬の毒物学的評価。
試験薬のIV投与の忍容性を、単回投与/反復投与の非GLP探索毒性試験において評価した。用量は、0.03~3mg/kgの範囲にわたった。)異なる用量レジメンを、SA雄並びにSM雄及び雌に使用した。最も顕著かつ用量制限的な毒性は、サイトカイン放出であったが、これは主に第1の用量の効果であった。血漿サイトカインは、死亡率と直接相関するように見えた。インターフェロン(IFN)-γ、インターロイキン(IL)-2、IL-6、IL-10、及び腫瘍壊死因子(TNF)-αの上昇は、主に≧0.06mg/kg(Q3D又はQ1W)において観察された。許容されていない用量(≧0.1mg/kg)おいて、動物は、主に第1の用量の1日目と2日目との間に、有害効果が原因で、死亡が確認されるか、又は安楽死させられた。全ての早期死亡動物における死亡の原因を組織学的に決定することはできなかったが、重度のサイトカイン放出に起因するものと推定された。0.06(Q3D及びQ1W)及び0.3mg/kg(Q1W)コホート内のサルに対するスケジュールされた剖検日(30日目)での顕微鏡所見には、肝臓、腎臓、及び胆嚢内の単核浸潤、最小~軽度の尿細管変性/再生、最小の多巣性尿細管石灰化、管状発見物又は大血管の周囲の単核間質浸潤、並びに軽度の骨髄細胞過多が含まれた。SM雄(試験薬誘発サイトカイン放出に最も敏感)における最大耐量は、0.06mg/kg(Q3D又はQ1W)であった。2週間を超えて投薬された動物の大半において曝露のロスがあり(明らかにADAに起因する)、結果として、後続の試験の持続時間は2週間に制限された。
SMカニクイザルにおける中枢的GLP試験では、試験薬をIVスローボーラス注射によってQ1W(合計3回の投与)又はQ3D(合計6回の投与)で2週間投与した。雄に投与されたQ3D用量は、0、0.03、又は0.06mg/kgであった。雌は、0、0.06、又は0.2mg/kgを受けた。雄に対するQ1W用量は0.06mg/kgであったが、雌に対しては0.2mg/kgであった。一般的に、0.03mg/kg以上の用量レベルでは、雄サル及び雌サルの両方においてサイトカイン血漿濃度の用量関連増加が観察された。嘔吐(0.06mg/kgのQ3D及び0.2mg/kgのQ3D/Q1W)及び猫背の姿勢(0.03及び0.06mg/kgのQ3D)は、主に第1の用量の投与に関連した。臨床徴候は、サイトカイン放出に関連すると考えられた。5匹の雌(0.2mg/kgのQ1W)のうちの1匹を、臨床状態の悪化に起因して3日目に安楽死させた。悪化の原因は、重度のサイトカイン放出によるものである可能性が高かった。投薬を成功裏に完了した動物では、試験薬関連の巨視的変化は存在しなかったが、顕微鏡所見(16/17日目のスケジュールされた剖検によるもの)を≧0.03mg/kgにおいて観察した。所見は、腎臓(最小~軽度)、肝臓(最小~中等度)、及び胆嚢(軽度)の血管周囲領域で記録されたリンパ球浸潤に限定された。この浸潤は、軽度の血管周囲浸潤を除いて、57日目の回復期終了までに1匹の雌(0.2mg/kg、Q3D)の腎臓において逆行した。中枢的試験における最も高い非重度の毒性用量(HNSTD)は、0.06mg/kg/用量であった。Q3D(雄及び雌)又はQ1W(雄)で投与されたサルの対応する平均Cmaxは、1.85又は1.99μg/mLであり、AUCDay1-4又はAUCDay1-8は、1日目の投与後、それぞれ1.72又は2.37μg day/mLであった。
以前の試験で見られた用量制限的サイトカイン放出が緩和され得るかどうかを判定するために、非GLP調査毒性試験を実施した。低用量(0.01mg/kg)を用いたプライミング後の動物内用量漸増又はトシリズマブ(IL-6受容体アンタゴニスト)を用いた予防治療を含む、2つのアプローチを試験した。低用量プライミング試験相では、試験薬を、緩やかな動物内用量漸増スキーム(0.01→0.02→0.04→0.12→0.6mg/kg)(図4A)又は急速な動物内漸増スキーム(0.01→0.03→0.1→0.4→1.5mg/kg)(図4B)のいずれかとしてIVスローボーラス注射によりQ3Dで投与した。
IV投与により実施された試験にわたる臨床病理学的変化
雄及び雌カニクイザルにおける交差試験分析を実施して、単回投与/反復投与の非GLP探索試験、中枢的GLP毒性試験(T-2015-072)、及び非GLP調査試験における試験薬のIV投与に関連する臨床病理学変化を比較した。
臨床病理学パラメータの変化は、一般的に、3つ全ての試験にわたって類似していた(及び、状態の悪化に起因して早期に安楽死させた動物を含む、個々の動物の臨床徴候の存在又は重症度と相関しなかった。これらの所見は、臨床病理学変化自体が、一般的に、これらの試験の条件下では、試験薬関連の臨床徴候又は全体的な忍容性に関して敏感でも、特異的なバイオマーカーでもなかったことを示唆している。
多くの臨床病理学変化は、第1の用量の後に最も顕著であり、より小さい大きさの変化又は一貫した変化の不在が、後続の用量の後に観察された。変化には、減少した血小板、赤血球塊、網赤血球、リンパ球及び単球(以下に記載の用量漸増後を除く)、好酸球、凝固時間(用量漸増後を除く)、血液尿素窒素(BUN)、クレアチニン、ほとんどの肝酵素、及びビリルビン、並びにリン及び電解質の変化が含まれた。いくつかの臨床病理学変化は、試験薬関連サイトカイン放出及び炎症促進状態に関連している可能性が高いと考えられた。これには、急性期応答(アルブミン及びコレステロールの減少、並びにC反応性タンパク質、トリグリセリド、及びグロブリンの増加に関連する炎症促進状態)、及び、場合によっては、好中球、好酸球、及び好塩基球の変化、凝固時間の延長、ビリルビンの増加、並びにBUN及びクレアチニンの増加が挙げられる。全ての試験におけるリンパ球の減少は、CD3会合に関連した予想される薬理活性の結果である可能性が高いと考えられた。他の臨床病理学変化としては、肝酵素の増加、並びにミネラル及び電解質の減少が挙げられる。
これらの変化のうち、リンパ球及び単球の減少、並びに活性部分トロンボプラスチン時間(APTT)のわずかな延長は、一般的に、同じ用量レベルで反復投与された動物においてよりも用量漸増を受けている動物においてより長く持続した。これらの変化のより長い持続時間は、動物内用量漸増に関連していたが、低プライミング用量の投与には必ずしも関連していなかった。急性期応答、アルカリホスファターゼの増加、いくつかの白血球パラメータ(好酸球、好塩基球、及び大きな非染色細胞)の増加、及びカルシウムの減少を含む、他の変化は、一般的に、ほとんどの試験にわたって投薬相全体にわたって持続した(又は投薬相において後で開始した)。
低用量のプライミング時に記録された用量レベル忍容性の改善にもかかわらず、効果は、選択された臨床病理学パラメータに限定された。低用量プライミングを受けている動物における最も顕著な差は、腎パラメータの変化(BUN、クレアチニン、及びリンの増加)の不在、並びに減少したリンパ球及び単球並びにわずかに延長したAPTTの持続性であった。これらの差は、プライミング関連効果を示唆しているが、忍容性の改善に対する腎パラメータ変化の欠如の寄与は不確定であった。加えて、凝固時間(最も顕著にはAPTT)の延長は、一般的に、低用量プライミングを受けている全ての用量(0.6又は1.5mg/kgまで)における動物において、プライミング不在下での同様の用量における動物よりも小さい大きさであった。
試験薬の皮下投与に対する局所忍容性試験
試験薬のSC(皮下)投与の局所忍容性を、性的に成熟した雄カニクイザルで評価した。動物は、試験薬、0.9%生理食塩水、又は製剤緩衝液(10mMの酢酸ナトリウム、8%のスクロース、0.04%のポリソルベート20、及び0.02mg/mLのEDTA二ナトリウムを含有するpH5.2の水溶液)の週1回の2回の投与を受けた。注射部位を、両方の投与後に、投与後最大96時間にわたって評価し、15日目に動物を剖検した。臨床観察、体重、定性的食物評価、注射部位又は流入領域リンパ節における全体又は顕微鏡所見において試験薬関連の変化は存在しなかった。血漿サイトカイン(MCP-1、IL-10、IL-6、TNF-α、IFN-γ)濃度の薬物関連の増加が観察されたが、同じ用量のIV投与時に観察されたものより著しく低かった。臨床病理学パラメータの試験薬関連の変化には、急性期応答(C反応性タンパク質の増加、及びアルブミンの減少)と共に、リンパ球、単球、好酸球、大きな非染色細胞、網状赤血球、及び血小板の減少が含まれた。これらの変化は、第1の用量後、一過性であった。第2の用量後、臨床病理学変化は、リンパ球のわずかな減少に限定された。1日目及び8日目の平均Cmaxは、それぞれ、0.28及び0.33μg/mLであり、AUCDay0-7又はAUCDay7-14は、それぞれ、1.35及び1.58μg/day/mLであった。
実施例8:進行期固形腫瘍を有する患者における試験薬の第1相、ヒト初回、用量漸増試験
略語
Figure 2022529970000015
Figure 2022529970000016
用語の定義
Figure 2022529970000017
1. プロトコルの要約
1.1. シノプシス
試験薬は、CD3媒介性T細胞リダイレクトのために前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的化することの治療可能性を評価するために開発された二重特異性抗体である。試験薬は、ヒトIgG4抗体である。この二重特異性抗体は、2つの抗体、すなわち、PSMB127及びCD3B219から、制御された断片抗原結合アーム交換によって生成した。PSMB127は、PSMA過剰発現細胞株におけるファージライブラリの全細胞パニングに由来する抗PSMA抗体である。CD3B219は、更にヒト化され、親和性成熟した、パブリックドメイン抗体SP34に由来する抗CD3ε抗体である。
PSMAは、正常な前立腺において発現した膜貫通タンパク質であり、その発現は、悪性形質転換中に増加し、これには、骨転移での発現が含まれる。加えて、PSMAは、他の悪性腫瘍の新生血管において過剰発現する。PSMA及びCD3を同時に標的とする二重特異性抗体である試験薬は、PSMAを過剰発現するこれらの悪性細胞を死滅させるように体の免疫細胞を誘導すると仮定される。試験薬の作用機序は、CD3発現T細胞の補充によってPSMA発現標的細胞に対するT細胞媒介性細胞毒性を可能にする。細胞殺傷のためのこの機序は独特であり、これは、現在の療法に対して耐性を示している疾患を有する患者に治療の機会を提供する。
目的、エンドポイント及び仮説
Figure 2022529970000018
仮説
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。この試験は以下を評価する。
用量漸増(第1部):参加者の33%未満が用量制限的毒性(DLT)を経験するように、試験薬のRP2Dを特定することができる。
用量拡大(第2部):試験薬は安全であり、RP2Dにおいて予備臨床活性を示す。
用量漸増及び用量拡大計画の図、並びにプライミング用量スケジュールの潜在的な探索を5及び6に提供する。
全体的な計画
これは、進行した癌を有する参加者における試験薬単剤療法の安全性、薬物動態、薬力学、及び予備臨床活性を評価するための、FIH、非盲検、多施設、第1相試験である。この試験は、2部構成、すなわち、用量漸増(第1部)及び用量拡大(第2部)で実施する。第1部では、アンドロゲン受容体(AR)標的療法後に再発した疾患を有する転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を有する成人男性を登録する。用量漸増は、過量投与制御を伴う用量漸増(EWOC)原理を用いた、統計モデルのベイズロジスティック回帰モデル(BLRM)に基づく修正された連続再評価法(mCRM)によってサポートする。試験は、加速された滴定で開始され、その後、標準滴定段階が続く。第1部の目標は、試験薬のMTDを決定すること、並びに第2部の用量拡大で使用する用量及びレジメン(すなわち、RP2D)を選択することである。第2部の目標は、安全性、薬物動態、薬力学、及びバイオマーカー(血液及び組織)を更に評価すること、並びにmCRPC及び腎細胞癌(RCC)における試験薬の予備臨床活性を評価することである。
参加者は、安全性モニタリング及び薬物動態評価を容易にするために、最初の2回の試験薬投与(及び、投与される場合は、任意のプライミング用量)後に48時間入院する。特定の安全基準(以前のグレード≧2の神経毒性、プライミングスケジュールのための患者内用量漸増、又は72時間以内にグレード≦1に変じない以前のグレード≧2のCRS)を満たす参加者には、試験薬投与のための後続の入院が必要となる。予想される注入関連反応(IRR)に関連するリスクを最小限に抑えるために、コルチコステロイドの前投薬が、試験薬の第1の用量の前に必要であり、この前投薬は、第1の用量後にグレード≦1のIRR又はCRSのいずれも経験しない参加者の後続の用量で減少又は排除される。
試験中、安全性は、試験評価チーム(SET)によって、特に第1部の各用量漸増工程においてモニタされる。この試験は、週1回投薬スケジュールで開始する。代替スケジュール(例えば、週2回又はプライミングスケジュール)が、SETによって決定される新たなデータに基づいて探索されてもよい。
参加者は、X線撮影の疾患増悪、明らかな臨床的増悪、許容できない毒性、同意の撤回、治験担当者若しくは治験依頼者の決定、又は試験終了まで試験薬を投与され続ける。試験終了(試験完了)は、最後の試験参加者に対する最後の安全性評価として定義される。
参加者数
約70人の参加者をこの試験で治療する。しかしながら、サンプルサイズは、探索されるコホートの数に依存する。
試験薬及び持続時間
Figure 2022529970000019
有効性の評価
臨床活性は、頸部、胸部、腹部、及び骨盤のコントラストのある、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン;磁気共鳴映像法(MRI)(すなわち、CTを用いて適切に撮像されない部位に対して)を用いて評価される。mCRPCを有する参加者の更なる評価としては、血清前立腺特異的抗原(PSA)及び全身骨スキャン(99mTc)が挙げられる。前立腺治療応答の評価は、軟組織病変の増悪(CT又はMRI)を評価するために前立腺癌ワーキンググループ3(PCWG3)基準及び固形癌の効果判定規準(RECIST)バージョン1.1に従って行われる。RCCに対する治療応答の評価は、RECIST v1.1によって行われる。
薬物動態、バイオマーカー、及び免疫原性評価
血液サンプルは、試験薬の血清薬物動態及び抗薬物抗体を特性評価するために採取される。血液サンプルはまた、試験薬治療に対する応答又は耐性を予測する薬力学、安全性、及びバイオマーカーを評価するために採取される。転移性疾患のアクセス可能部位からの必須の新鮮な腫瘍生検は、腫瘍組織内のPSMA発現及び薬物動態マーカーを評価するために、第1部及び第2部の選択されたPK/PDコホート内の参加者から試験前及び試験中に採取される。
安全性の評価
試験薬の安全性は、身体的検査(基本的な神経学的評価を含む)、ECOGパフォーマンスステータス、臨床検査、バイタルサイン、心電図、有害事象モニタリングによって評価される。併用薬の使用が記録される。有害事象の重症度は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(バージョン5.0)を使用して評価される。サイトカイン放出症候群は、特定の関心のある有害事象として特定されており、報告及びデータ収集の強化を必要とする。
統計的方法
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。用量漸増は、EWOC原理を用いる統計モデルBLRMに基づくmCRMによってサポートされる。
1.2. スキーマ
用量漸増及び用量拡大計画の図、並びにプライミング用量スケジュールの潜在的な探索を図5及び図6に提供する。
1.3. 活動のスケジュール
Figure 2022529970000020
Figure 2022529970000021
a.各計画された治験実施施設来院は、スケジュールされた日から±2日であってよい。評価及び手順(試験室検査を含む)は、スケジュールされた試験薬投与前に48時間まで行われてよい。新たなデータに基づいて、患者の安全を保護するために、又は試験薬のPK若しくはPK/PDプロファイルを十分に特性評価するために、計画された評価スケジュールに対する調整が治験依頼者によって行われてもよい。サイトカインプロファイル、PK、又はPD評価のための追加の(すなわち、スケジュールされていない)血液サンプルは、試験薬を用いた治療の最初の4サイクルの間に最大8回採取されてよい。
b.第1の試験関連の活性の前に署名されなければならない。
c.疾患特性としては、腫瘍タイプ及び組織学、診断時間、診断時及びスクリーニング時の腫瘍の病期、利用可能な病理学及び分子データ、以前の抗癌剤療法、並びに最新の疾患増悪の日付が挙げられる。
d.セクション8.2を参照されたい。
e.スクリーニング時に身体的検査を完了する。症状及び疾患を対象とする検査は、全ての試験薬投与の前に行われる。基本的な神経学的検査は、スクリーニング時の身体的検査中に、第1の治療用量、及び任意のプライミング用量の前に、及び病院滞在中の少なくとも12時間ごとに行われる。外来患者としての薬物投与のために、臨床的に示されるように、神経学的検査を行うことができる。
g.検査室評価指示:
- 試験薬の第1の用量の前に、セクション5.1に提示される組み入れ基準が満たされ、かつセクション5.2に提示されるいずれの除外基準も満たされないことが必要である。
- 試験薬投与日に、注入前48時間以内に行われた検査室評価を繰り返す必要はない。
- 臨床的に示されるように、追加のサンプルを採取及び分析してもよい。
- 検査室評価は、現場の検査室で行われる。
- 妊娠検査は、スクリーニング時及び試験薬の第1の用量の前に実施される高感受性血清(βヒト絨毛性性腺刺激ホルモン[βhCG])でなければならない。
h.試験薬の第1の用量に対するバイタルサインは、注入開始の直前に、注入中30分ごとに、IVフラッシュ終了時に、並びにIVフラッシュ終了後1、2、及び3時間に評価される。他の全ての注入:注入開始の直前に、注入中30分ごとに、IVフラッシュ終了時に、及び臨床的に示されるように。酸素飽和度及び体温は、バイタルサインと同じスケジュールでモニタされる。CRS事象後、バイタルサイン及びO2飽和度を正常化されるまでモニタする。
i.試験薬投与前に投与される薬剤に対する指示についてセクション6.5.3を参照されたい。
j.各試験薬投与は、週1回投薬スケジュールで少なくとも5日離れていなければならない。投与の実際の用量(μg)は、試験1日目のベースラインにおける参加者の体重(kg)に基づいて計算される(表24を参照されたい)。
k.有効性評価についてセクション8.1を参照されたい。試験薬の第1の用量前の6週間(42日)以内に行われた場合に許容可能なベースライン評価。
- RECIST v1.1による客観的奏効は、4週間後に行われた確認スキャンを有しなければならない。
- 疾患増悪の発生前に試験薬が中止される場合、疾患評価は、現場の標準治療に従って引き続き行われるべきである(セクション8を参照)。
- 疾患状態を評価するためにベースラインにおいて使用されたのと同じ方法が、試験全体にわたって使用されるべきである。
- 試験治療スケジュールにおいて遅延がある場合、疾患評価は遅延されるべきではない。
l.セクション7.2における中止基準のうちの1つが満たされるまで、試験薬中止後12週ごとに電話連絡を介して情報を取得してよい。
m.治療終了時の来院は、いずれが先に到来するにせよ、試験薬の最後の用量後30(+7)日以内、かつ新しい抗癌剤療法の開始前に完了した(治療終了時の来院の指示についてセクション8を参照)。
Figure 2022529970000022
Figure 2022529970000023
a.あらゆる合理的な努力をして、計画されたサンプリング時間(すなわち、IVフラッシュ終了から計算された時間)の±10%以内にサンプルを採取すべきであり、採取時間を記録しなければならない。
b.サンプルは、治験依頼者が指定した検査室に送られ、分析は、治験依頼者によって実施される。安全上の理由で、又はサンプルに関する技術的問題のために、反復サンプル又はスケジュール外のサンプル(すなわち、薬物動態、薬力学、バイオマーカー)を採取してもよい。
c.第1部及び第2部における選択されたPK/PDコホートに登録された、アクセス可能な病変を有する参加者は、生検採取が安全リスクを呈さない限り、必須の新鮮な腫瘍生検を受けることに同意しなければならない。
- スクリーニング時の新鮮な生検は、試験薬の第1の用量前6週間(42日)以内に、この時間中に活性抗癌剤治療が開始されなれければ、採取されてよい。
- 治療後腫瘍生検サンプル採取時間(すなわち、DLT評価期間完了後、かつ治療開始後4~8週間)は、新たなデータに基づいてSETにより変更されてよい。
- サンプルは、治験依頼者によって指定された中央検査室に送られる(詳細については検査室マニュアルを参照されたい)。
d.サンプルは、2つの異なるチューブに採取される(詳細については検査室マニュアルを参照されたい)。
e.疑わしいグレード≧2のIRR又はグレード≧2のCRS事象が観察又は報告された場合は、以下のスケジュール外のサンプルを採取すべきである。
- 薬物動態/免疫原性サンプル:事象発生から事象時間に可能な限り近く、24時間後、及び72時間後。
- サイトカインサンプル:事象発生後4時間以内。
f.受容体占有率サンプルは、1μg/kg以上の用量で治療された用量漸増コホートに対して採取される。
g.72時間のサンプリング時点が週末に発生する場合、このサンプルは96時間で採取されてよい。
h.後続の全ての用量では、投与前及びEOI直後(±15分)の血液サンプルがPK用に採取される必要がある。
Figure 2022529970000024
Figure 2022529970000025
略語:CRS=サイトカイン放出症候群、CTC=循環腫瘍細胞、ctDNA=循環腫瘍DNA、CyTOF=タイムオブフライトによるサイトメトリー、EOF=IVフラッシュ終了、EOT=治療終了、IRR=注入関連反応、IV=静脈内;seq=配列決定、PK=薬物動態、SET=試験評価チーム、TCR=T細胞受容体、TBNK=T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞。
a.あらゆる合理的な努力をして、計画されたサンプリング時間(すなわち、IVフラッシュ終了から計算された時間)の±10%以内にサンプルを採取すべきであり、採取時間を記録しなければならない。
b.サンプルは、治験依頼者が指定した検査室に送られ、分析は、治験依頼者によって実施される。安全上の理由で、又はサンプルに関する技術的問題のために、反復サンプル又はスケジュール外のサンプル(すなわち、薬物動態、薬力学、バイオマーカー)を採取してもよい。
c.第1部及び第2部における選択されたPK/PDコホートに登録された、アクセス可能な病変を有する参加者は、生検採取が安全リスクを呈さない限り、必須の新鮮な腫瘍生検を受けることに同意しなければならない。
- スクリーニング時の新鮮な生検は、試験薬の第1の用量前6週間(42日)以内に、この時間中に活性抗癌剤治療が開始されなれければ、採取されてよい。
- 治療後腫瘍生検サンプル採取時間(すなわち、DLT評価期間完了後、かつ治療開始後4~8週間)は、新たなデータに基づいてSETにより変更されてよい。
- サンプルは、治験依頼者によって指定された中央検査室に送られる(詳細については検査室マニュアルを参照されたい)。
d.疑わしいグレード≧2のIRR又はグレード≧2のCRS事象が観察又は報告された場合は、以下のスケジュール外のサンプルを採取すべきである。
- 薬物動態/免疫原性サンプル:事象発生から事象時間に可能な限り近く、24時間後、及び72時間後。
- サイトカインサンプル:事象発生後4時間以内。
e.後続の全ての用量では、投与前及びEOI直後(±15分)の血液サンプルがPK用に採取される必要がある。
f.サンプルは、2つの異なるチューブに採取される(詳細については検査室マニュアルを参照されたい)
g.72時間のサンプリング時点が週末に発生する場合、このサンプルは96時間で採取されてよい。
2. 序論
試験薬は、Tリンパ球(T細胞)上のCD3受容体複合体並びに腫瘍細胞及び腫瘍関連新生血管上に発現された前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とするヒト化免疫グロブリンG4プロリン、アラニン、アラニン(IgG4 PAA)二重特異性抗体である。試験薬は、毒性T細胞による後続の腫瘍細胞溶解を伴う、PSMA発現標的細胞と近接したT細胞の活性化を促進するように設計されている(Buhler P,Wolf P,Gierschner D,et al.Cancer Immunol Immunother.
2008;57(1):43-52)。
in vitro及びin vivoの薬理学、安全性の薬理学、並びに毒物学の要約をこのセクション内に提示する。本文書全体を通して用語「試験薬」は、本試験薬を指し、用語「治験依頼者」は、別個の文書として提供される、連絡先情報ページに列挙されたエンティティを指す。
2.1. 試験の理論的根拠
2.1.1. 前立腺特異的膜抗原
PSMAは、750個のアミノ酸及び3つのタンパク質ドメイン、小さな細胞内ドメイン、単回通過膜貫通ドメイン、並びに大きな細胞外ドメインから構成される膜貫通糖タンパク質である。
PSMAは、肺癌、膀胱癌、及び腎癌を含む他の固形腫瘍の新生血管内で発現されることが報告されている。腎細胞癌(RCC)におけるPSMA発現を調査した最近の試験では、内皮PSMAタンパク質が、明細胞腎癌の80%、乳頭癌の14%、及び色素嫌性癌の72%において検出されることが免疫組織化学的検査結果により明らかになった。同じ試験からの更なる分析は、明細胞腎癌及び乳頭状腎癌の両方において、PSMA発現が、患者における全生存率の低下と有意に関連していることを実証した。別の臨床試験では、68Gaを使用したPSMAベースの放射性トレーサーは、明細胞癌を有する患者に発見された転移性病変においてPSMAを検出することができた。したがって、PSMA×CD3アプローチは、明細胞腎細胞癌などの組織診を有する患者において治療ベネフィットを有し得る。
2.1.2. CD3リダイレクトアプローチ
最近、T細胞を腫瘍表面抗原にリダイレクトするために、いくつかのアプローチが開発された。これらには、T細胞チェックポイント遮断((McDermott DF、Atkins MB.Cancer Med.2013;2(5):662-673)、及びCD19(CD3×CD19)を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)、Blincyto(登録商標)(ブリナツモマブ)(Blincyto(登録商標) [米国FDA製品ラベル]。Thousand Oaks,USA:Amgen Inc.、2018年12月)によって腫瘍寛容を破壊する薬物が挙げられる。
mCRPCなどのPSMA陽性腫瘍における腫瘍微小環境は、十分な免疫存在を欠く場合があり、おそらくこれは、前立腺癌におけるチェックポイント阻害剤の単剤療法の有効性の欠如を説明する。T細胞リダイレクトは、そのような腫瘍の免疫原性を強化するための重要なアプローチである。
試験薬に意図されるものと同様の作用機序を有する、PSMAを標的とする2つの他のCD3リダイレクトアプローチが、前立腺癌の治療に関する臨床試験において現在評価されている。第1は、Fcコンピテント二価二重特異性CD3-PSMA分子((Hernandez-Hoyos G,Sewell T,Bader R,et al.Mol Cancer Ther.2016;15(9):2155-2165)である。第2は、非Fc担持CD3-PSMA二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子(Klinger M,Benjamin J,Kischel R,Stienen S,Zugmaier G.Harnessing Immunol Rev.2016;270(1):193-208)である。この第1相試験からの予備臨床データは、最大80μg/日の用量が許容され、CRPC患者におけるX線撮影応答が誘発されたことを示している。三重特異性T細胞活性化コンストラクト(TriTAC)化合物の別の試験もまた、mCRPCにおいて評価中である((Lemon B,Aaron W,Austin R,et al.Cancer Research.2018.Abstract 1773)。
試験薬は、半減期(t1/2)の延長を確実にするために、FcγRsへの結合を有意に低減しているが、FcRnへの結合が中断されていない変異IgG4 Fcを含有する。Fcコンピテント二価二重特異性CD3-PSMA分子及びTriTAC化合物と比較して、試験薬は内因性ヒトIgG抗体により似ており、抗薬物抗体(ADA)の産生の低減、並びに最終的には薬物動態曝露及び有効性プロファイルの改善をもたらし得る。
2.1.3. 開始用量の理論的根拠
ヒト初回のFIH開始用量0.1μg/kgは、推定最小薬理作用量(MABEL)アプローチを使用して選択した。カニクイザルにおけるin vitro細胞毒性実験及び医薬品安全性試験実施基準(GLP)毒性試験の両方による結果は、欧州医薬品庁及びFDA産業界向けガイダンス:S9 Nonclinical Evaluation for Anticancer Pharmaceuticals(FDA米国保健福祉省、産業界向けガイダンス「S9 Nonclinical Evaluation for Anticancer Pharmaceuticals」、2010年3月)に基づく開始用量を決定するための推奨と一致していると考えられた。
in vitro細胞毒性アッセイを実施して、試験薬誘発性T細胞活性化、PSMA+腫瘍細胞殺傷、及びサイトカインの放出を特性評価した。これらのアッセイは、6人の健常ヒトドナー由来の精製されたヒトT細胞、及びC4-2B(PSMAを発現し、T細胞媒介性殺傷に対する感受性を示すヒト前立腺癌細胞株)を用いて実施した。癌患者ではなく、健常ドナー由来の精製されたT細胞を使用して、MABEL開始用量のより控えめな推定値を得た。評価された読み出し情報(T細胞活性化、細胞毒性、及びサイトカイン放出)の中で、T細胞活性化は、最も感受性の高い読み出し情報(20)であることが示された。0.023nM(3.45ng/mL)のMABEL濃度は、6人の正常ドナーからのT細胞活性化の中央値有効濃度(EC)EC20値から決定した。
試験薬のヒト薬物動態は、非比例的なスケーリングを用いてカニクイザル薬物動態データから予測された。0.1μg/kgの臨床開始用量は、上記のように、0.023nMのMABEL濃度をわずかに下回る、第1の用量後の約0.020nMのCmaxをもたらすと予測された。
以下の考察は、開始用量を決定する際にも重要であった。
● PSMA発現標的細胞は、末梢循環中に任意の有意な量で存在することが報告されていないため、精製されたT細胞系(全血の代わり)をエフェクター細胞集団として選択した。
● C4-2B細胞株は、前立腺癌で観察されたものと同様のPSMA標的発現と生理学的に関連する。評価されたいくつかの前立腺癌細胞株(22-RV、C4-2/C4-2B、及びLNCAP/LNCAP-AR)の中で、C4-2Bは、T細胞媒介性標的細胞殺傷に対して最も感受性の高いものである。
● 3:1、5:1、10:1、及び20:1のエフェクター対標的(E:T)比をin vitro細胞毒性アッセイで評価し、3:1のE:T比を選択して、開始用量の控えめな推定値を得た。
● 中枢的GLP毒性試験からの最も高い非重度の毒性用量(HNSTD)0.06mg/kgに基づき、ヒト等価用量のHNSTDは、体表面積換算法を使用して20μg/kgであり、HNSTDベースの最大推奨開始用量は、提案されたMABELベースの開始用量よりも33倍高い、3.3μg/kgである。
● カニクイザルで試験した試験薬の最低用量は、0.01mg/kgであった。この用量レベルでは、最小レベルのサイトカイン放出、並びに最小限の臨床徴候及び症状が観察された。
Figure 2022529970000026
略語:EC20=最大効果の20%をもたらすのに必要な薬物濃度。
in vitro及びin vivoデータの全体的な評価、並びにMABELベースのFIH開始用量選択に基づき、0.1μg/kgの週1回用量の試験薬は、この試験で治療された参加者において最小限の生物活性を有する薬物曝露をもたらすべきである。
試験薬のt1/2は、ヒトにおいて約4.9日であると予測され(非線形クリアランスが飽和している用量において)、これは、週1回の投薬スケジュールで試験を開始する決定をサポートした。週2回の治療の代替的な投薬スケジュールが探索されてもよい。モノクローナル抗体は、標的媒介性ドラッグディスポジションにより、より低い用量でより速いクリアランスを示すことができる。新たな薬物動態、薬力学、及び安全性データに応じて、週1回から週2回のスケジュールに切り替える判断が、試験評価チーム(SET)によって決定される。
2.2. 背景
2.2.1. 非臨床試験の要約
PSMA腫瘍及び正常組織発現プロファイル
患者の前立腺の腺癌腫瘍サンプルにおいて、PSMAタンパク質は、サンプルの大半がPSMAに対して不均一な染色パターンを示している30個の患者サンプルのうちの26個で検出された。ヒト正常組織上のPSMA発現を評価するために、ヒト組織マイクロアレイをPSMAタンパク質に対する免疫組織化学法により染色した。試験した全ての異なる組織のうち、前立腺、脳、腎臓、肝臓、乳腺、小腸、及び唾液腺のみがPSMAに対して陽性であった。全体として、前立腺外の正常組織におけるPSMA発現は、大いに限定され、ほとんど細胞質であり、前立腺腫瘍組織よりもはるかに低いレベルで発現されるように見える。これらの結果は、文献(Kinoshita Y,Kurastukuri K,Landas S,et al.World J Surg.2006;30:628-636;Spatz S,Tolkach Y,Jung K,et al.J Urol.2018;199(2):370-377)に報告されているものと概ね一致する。
前立腺腫瘍細胞株への試験薬の結合
試験薬は、試験した全てのPSMA発現腫瘍細胞株(C4-2B、LNCaPAR、22RV1)に対するフローサイトメトリーによって測定されるとき、濃度依存的な様式で内因性PSMA発現前立腺腫瘍細胞株に特異的に結合する。対照的に、試験薬は、PSMA陰性細胞株のPC-3細胞には結合しなかった。
試験薬媒介性T細胞活性化
試験薬媒介性T細胞活性化を測定するために、PSMA陽性腫瘍細胞株を、試験薬の存在下で、6人の正常ドナーからのドナーT細胞と48時間共培養した。試験薬は、PSMA陽性細胞株(C4-2B)におけるT細胞活性化のマーカーであるCD25発現の用量依存的な増加を引き起こしたが、PSMA陰性細胞(PC-3)では引き起こさなかった。中央値EC(EC20/50/90)値を、3つの別個の実験から全てのドナーにわたって決定し、PSMA陽性細胞株C4-2Bについて報告した(EC20:0.02nM、EC50:0.06nM、EC90:0.40nM)。2つの無し対照抗体は、C4-2B又はPC-3のいずれの細胞株においてもT細胞活性化をもたらさなかった。
in vitroの前立腺腫瘍細胞株の試験薬媒介性T細胞依存細胞毒性
PSMA発現腫瘍細胞の細胞毒性を誘発する試験薬の能力を測定するために、ドナーT細胞を、腫瘍標的細胞と3:1の比で72時間共培養し、CD3又はPSMA断片抗原結合アームのいずれかを欠く試験薬又は無し抗体の増加する量と共にインキュベートした。試験薬は、PSMA陽性C4-2B細胞株においてのみ用量依存的な細胞毒性を引き起こしたが、PSMA陰性PC-3細胞株においては引き起こさなかった。中央値EC値を、3つの別個の実験から6人全てのドナーにわたって決定し、C4-2B細胞株について報告した(EC20:0.04nM、EC50:0.08nM、EC90:0.31nM)。2つの無し対照抗体は、C4-2B又はPC-3のいずれの細胞株においてもT細胞依存細胞毒性をもたらさなかった。
in vivoの前立腺腫瘍異種移植モデルにおける試験薬の効果
LNCaPアンドロゲン受容体(AR)腫瘍(ヒトPSMA陽性前立腺腫瘍異種移植モデル)において試験薬の有効性を評価した。定着腫瘍を、ヒトT細胞を生着させた非肥満糖尿病(NOD)の重症複合型免疫不全症(SCID)γ(NSG)マウスに移植した。試験薬の2.5、5.0、及び10mg/kgの用量レベルにおいて、統計的に有意な抗腫瘍有効性が観察され、ビヒクル治療対照マウス(p<0.0001)と比較して、それぞれ、51、72、及び74%の腫瘍増殖抑制(TGI)を達成した。
CD8+T細胞腫瘍浸潤に対する試験薬のin vivo薬力学効果
試験薬の抗腫瘍活性が腫瘍への免疫細胞浸潤と関連していたかどうかを判定するために、LNCaP AR腫瘍担持マウスにヒトT細胞を注射し、リン酸緩衝生理食塩水対照治療マウスから、又は2.5、5.0、及び10mg/kgの試験薬を用いて治療したマウスから、血清及び腫瘍を採取した。試験薬の全ての用量レベルにおいて、腫瘍CD8+T細胞浸潤の時間依存的な増加が、免疫組織化学染色によって観察された。
結論
in vitro及びin vivoの結果は、試験薬が、PSMA発現腫瘍細胞に特異的に結合し、T細胞活性化を誘発し、T細胞を効果的にリダイレクトして、PSMA発現腫瘍細胞の細胞毒性を誘発することを示す。
2.2.2. 非臨床的な毒性、薬物動態学、及び安全性の薬理学の要約
2.2.2.1. 毒性
試験薬が、(ヒトと比較された)カニクイザルPSMA及びCD3への同様の結合親和性を有し、かつカニクイザル及びヒトPSMA発現細胞に対する同様の機能活性(細胞毒性)を有するため、薬理学的に関連する毒性種としてカニクイザルを選択した。げっ歯類は薬理学的に関連しなかった。
試験薬の潜在的毒性を、本明細書に要約されるように、カニクイザルにおける3つの試験で特性評価した。
非GLP探索毒性試験
非GLP探索試験(n=1~6)では、カニクイザルにおける静脈内(IV)試験薬の忍容性を、標準的な、及び性的に成熟した(SM)雄において、並びにSM雌において、いくつかの用量レジメンを用いて評価した(0.03~3mg/kg)。最も顕著な用量制限的な毒性(DLT)は、サイトカイン放出であったが、これは主に第1の用量の効果であった。血漿サイトカインは、死亡率と直接相関するように見えた。IFN-γ、IL-2、IL-6、IL-10及びTNF-αの上昇が観察された。性的に成熟した雄カニクイザルは、試験薬の効果に最も敏感であると記録され、標準的な雄及び性的に成熟した雌よりも高いサイトカイン放出を有した。サルの大半において10~15日目の後に暴露の有意なロスが観察され(抗薬物抗体[ADA]に起因する)、したがって、後続の試験の持続時間は2週間に制限された。0.06mg/kgの最大耐量(MTD)において、3日ごとに1回(Q3D、合計8回の投与)及び週1回(Q1W、合計4回の投与)の投与頻度の両方は、十分に許容され、サイトカイン放出は、第1の用量においてほとんど観察された(及び最高であった)。
許容されていない用量において、サルは、8日目(第1の用量後)に安楽死させた1匹の雌(0.6mg/kg)を除いて、第1の用量の1日目(≧6時間以)と2日目との間に瀕死状態になったか、又は安楽死させられた。この試験における死亡率は、一般的に、血漿サイトカインレベルと相関した。全ての早期死亡動物における死亡の原因を組織学的に決定することはできなかったが、重度のサイトカイン放出に起因するものと推定された。スケジュールされた剖検日(30日目)での顕微鏡所見には、肝臓、腎臓、胆嚢内の単核浸潤、最小~軽度の管状変性/再生、石灰化(0.06mg/kg、Q3D;8回の投与)、管状発見物又は大血管の周囲の単核間質浸潤、並びに軽度の骨髄細胞過多が含まれた。加えて、最小の多巣性管状石灰化が、0.3mg/kgの用量を受けた単一の雌の腎臓において記録された。死亡率に関連する組織学的相関は、早期死亡動物において識別されなかった。SM雄(最も感受性が高い)におけるMTDは、0.06mg/kg(Q3D又はQ1W)であった。
GLP毒性試験
SMカニクイザルにおける中枢的GLP試験では、試験薬をIVボーラス注射によってQ1W(合計3回の投与)又はQ3D(合計6回の投与)で2週間投与し、その後に6週間の回復期が続いた。雄に投与されたQ3D用量は、0、0.03又は0.06mg/kgであり、雌は、0、0.06、又は0.2mg/kgを受けた。雄に対するQ1W用量は0.06mg/kgであったが、雌に対しては0.2mg/kgであった。臨床徴候(嘔吐、猫背の姿勢)は、主に第1の用量の投与に関連しており、一般的に後半の投薬相(サイトカイン放出と一致する)中には観察されなかった。一般的に、0.03mg/kg以上の用量レベルでは、雄サル及び雌サルの両方においてサイトカイン血漿濃度の用量関連増加が観察された。
5匹の雌(0.2mg/kgのQ1W)のうちの1匹を、臨床状態の悪化に起因して3日目に安楽死させた。このサルの死亡の原因を決定することはできなかったが、重度のサイトカイン放出に起因する可能性が高かった。投薬を成功裏に完了したサルでは、体重、摂食量、身体的検査測定値、及び眼の影響における試験薬関連の変化はなく、心電図(ECG)における異常も、血圧、心拍数、呼吸数、体温、尿検査、全体的な剖検所見、又は絶対的若しくは相対的な器官重量における変化もなかった。0.03mg/kg以上における試験薬関連の顕微鏡所見(16/17日目のスケジュールされた剖検から)は、腎臓(最小~軽度)、肝臓(最小~中等度)、及び胆嚢(軽度)の血管周囲領域において記録されたリンパ球浸潤に限定された。0.2mg/kgを6回で受けた1匹の雌の腎臓に残った軽度の血管周囲浸潤を除き、全ての顕微鏡所見が57日目に6週間の回復期後に解決した。中枢的試験におけるHNSTDは、0.06mg/kg/doseであった。
非GLP調査試験(低用量プライミング又は予防的トシリズマブを使用してサイトカイン放出を管理する効果)
以前の試験で見られた用量制限的サイトカイン放出が緩和され得るかどうかを判定するために、非GLP試験を実施した。プライミング用量後の動物内用量漸増又はトシリズマブを用いた予防治療を含む、2つのアプローチを試験した。
試験相の低用量プライミング部分では、試験薬は、1、4、7、10、及び13日目のIVスローボーラス注射を介して、緩やかな用量漸増(0.01→0.02→0.04→0.12→0.6mg/kg)及び急速な動物内漸増(0.01→0.03→0.1→0.4→1.5mg/kg)として投与した。両方の漸増コホートは、死亡なし及び臨床徴候の顕著な改善ありで投薬を成功裏に完了し、見かけ上の摂食量への試験薬関連の影響も、身体的検査測定値における変化もなかった。臨床徴候の改善(1日目における散発的なわずかから中等度の嘔吐、液状糞便、体温の一過性及び最小の変化)は、0.01mg/kgのプライミング用量における低レベルのサイトカイン放出、及び後続の漸増用量における顕著に減少したサイトカイン放出に関連している可能性が高かった。19日目のスケジュールされた剖検において、複数の器官への混合細胞浸潤、並びに腎臓及び前立腺における細管(最小)及び腺房細胞(最小~軽度)の変性/再生が、それぞれ、両方の用量漸増群で観察された。全身性炎症応答と一致していると考えられる更なる変化には、心臓内の造血凝集体(急速な漸増群において)、及び両方の用量漸増投薬群における大腿脛骨滑膜性関節内のフィブリン蓄積を伴う単核細胞浸潤が含まれた。有害と考えられた所見は存在しなかった。
トシリズマブ予防治療試験相では、前日(試験薬投与の約8~24時間前)に投与された単回用量のトシリズマブに続いて、試験薬を1及び8日目にIVスローボーラス注射により0、0.1、0.3、又は0.9mg/kgで投与した。トシリズマブは、トシリズマブ前処置なしの以前の試験における観察結果と比較して、いくらかの保護効果(0.1mg/kgにおいて)又は死亡率の遅延(0.3mg/kgにおいて)を有するように見えた。トシリズマブは、0.9mg/kgを受けたサルにおける忍容性を改善せず、このサルは、1日目の投与の約7時間後に安楽死させられた。予防的トシリズマブは、試験薬媒介性サイトカイン放出(又は関連臨床徴候)に対する認識可能な効果を有するようには見えず、顕微鏡所見及び臨床病理学所見は、トシリズマブ前処置なしの試験で記録されたものと類似していた。
試験を横断して記録された臨床病理学変化の要約
雄SMサルの交差試験分析を実施して、非GLP探索試験、2週間の中枢的GLP毒性試験、及び非GLP低用量プライミング試験における試験薬の投与に関連する臨床病理学変化を比較した。臨床病理学パラメータの変化は、3つ全ての試験にわたって概ね類似しており、全身性炎症応答を表すものであった。これらの所見は、状態の悪化に起因して早期に安楽死させたサルを含む個々のサルの臨床徴候の存在又は重症度と相関しなかった。臨床病理学変化自体は、一般的に、試験薬関連の臨床徴候又は全体的な忍容性に関して敏感でも、特異的なバイオマーカーでもなかった。観察された変化には、白血球数(好中球、リンパ球、単球及び好酸球数)の減少、いくつかの試験における好中球、好酸球、及び好塩基球数の増加、赤血球塊の減少、血小板数の減少、急性期反応体の増加、アルカリホスファターゼの増加、尿素窒素及びクレアチニンなどの腎パラメータの増加、血清カルシウムの減少、凝固時間の増加、酵素活性の増加、並びにビリルビンの増加が含まれた。上記の所見と共に記録された識別可能な用量依存関係は存在しなかった。
2.2.2.1.1. 組織交差反応性
GLP交差反応性試験を、試験薬及びその抗PSMA親(二価)抗体(陽性対照)を用いて、正常なヒト組織の凍結切片で実施した。試験薬の予期せぬ組織交差反応性は観察されなかった。これらの組織におけるPSMA発現により、試験薬及び抗PSMA親抗体の両方を有する前立腺における上皮細胞の膜染色及び細胞外材料の染色が予想された。T細胞上のCD3εの発現に基づいては、試験薬による単核細胞の染色のみが予想された。
2.2.2.1.2. ヒト血清又は全血におけるアッセイ
試験薬は、ヒト全血中で溶血を引き起こさず、0.010及び10mg/mLのin vitro濃度でヒト血清と適合した。
2.2.2.1.3. サイトカイン放出
in vitroアッセイにおいて、試験薬は、健常ドナーからの全血中に測定された10種のサイトカインのうちの6種(IL-1β、IL-2、IL-8、IL-10、IFN-γ、及びTNF-α)において統計的に有意かつ濃度依存的なサイトカイン放出を誘発した。
2.2.2.2. 安全性の薬理学
体温、血圧、心拍数、呼吸数、又は神経行動臨床観察における試験薬関連の変化はなかった。心リズム又はECG波形形態における試験薬関連の異常は、投与前及び投与後のECGの比較に基づいて、いずれの用量レベルでも見つからなかった。サルにおいて、他のCD3リダイレクター抗体による治療後に、血圧低下及び頻脈が観察されており、おそらくサイトカイン放出に関連するものである。
2.2.2.3. 非臨床的な薬物動態及び免疫原性
試験薬の薬物動態/毒物動態学(PK/TK)は、標準年齢(幼年-2.5~4歳)又はSM雄サルにおける非GLP探索毒性試験の一部として、0.3、0.6、及び3mg/kgの意図された用量でのカニクイザルにおける単回IV投与後に特性評価した。生存しているサルからの限定されたデータに基づいて、試験薬曝露は、試験した用量範囲にわたって用量と共にほぼ用量比例的に増加した。同様のクリアランス(CL)、分布容積(Vss)、及びt1/2が、用量群にわたって推定された。試験薬は、典型的なIgG-ベースの治療用モノクローナル抗体と比較して、比較的高いCL(18.69~26.17mL/day/kg)及びより短いt1/2(2.48~3.12日)を示した。
複数回IV投与後の試験薬のPK/TKは、SMカニクイザルにおけるGLP毒性試験で特性評価した。サルは、2週間にわたってQ3D(6回の用量)又はQ1W(3回の用量)のいずれかで試験薬のIVボーラス注射を受け、その後に6週間の回復期が続いた。忍容性の予想される性別関連差により、雄サルは、それぞれ0.03及び0.06mg/kgでQ3D投与を、並びに0.06mg/kgでQ1W投与を受け、雌サルは、それぞれ0.06及び0.2mg/kgでQ3D投与を、並びに0.2mg/kgでQ1W投与を受けた。平均Cmax及びAUCは、試験した用量範囲にわたってほぼ用量比例的に増加した。Q3D投薬後、平均薬物集積比は、0.03及び0.06mg/kg用量群において1.30~1.57の範囲であったが、0.2mg/kg用量群に対しては0.95であった。Q1W投薬後の試験薬の全身集積は存在しなかった。1日目の第1の用量後のPK/TKと比較して、第5のQ3D用量又は第2のQ1W用量のいずれかの後の薬物曝露の減少が複数のサルにおいて観察されたが、これは、ADAの形成に関連するものであり得る。雄サルと雌サルとの間に明らかなPK/TK差は存在しなかった。
複数回の(すなわち、Q3D又はQ1W)IV投与後の試験薬のPK/TKもまた、カニクイザルにおける非GLP探索毒性試験及び非GLP調査毒性試験の一部として検査し、結果は同様であった。SMカニクイザルにおける非GLP調査毒性試験では、試験薬を、1、4、7、10、及び13日目のIV注射により、それぞれ、緩やかな用量漸増(0.01→0.02→0.04→0.12→0.6mg/kg)及び急速な漸増(0.01→0.03→0.1→0.4→1.5mg/kg)として投与し、試験薬曝露は、用量と共にほぼ用量比例的に増加した。1.5mg/kgの最高用量後の平均Cmax及びAUCは、GLP毒性試験における0.06mg/kgのQ3D IV用量後のものよりも10倍超高かった。
カニクイザルにおける試験薬の免疫原性を、非GLP探索毒性試験及びGLP毒性試験において評価した。試験薬のIV用量を用いて治療された56匹のサルのうちの40匹は、検査でADA陽性であった。他の16匹のサルの中で、13匹は、免疫原性判定のための適切なサンプルを有せず(すなわち、13日目又それ以降にサンプルがない)、したがって、それらのADA状態は評価不能であったが、残りの3匹のサルは、検査でADA陰性であった。全体として、試験薬に対するADAの発生率は高かった。動物における免疫原性は、ヒト免疫原性応答を予測するものとは期待されない。
2.3. ベネフィット/リスク評価
これは、試験薬の第1の臨床試験である。潜在的リスク及び緩和戦略は、非臨床試験から入手可能な安全性データ、既知の作用機序(すなわち、T細胞活性化及び腫瘍細胞溶解)、及び投与経路に基づく。正常組織におけるPSMAの発現は前立腺組織において最も高いが、脳、腎臓、肝臓、乳腺、小腸及び唾液腺でも、比較的低いレベルの膜発現が検出される(セクション2.2.1を参照)。したがって、これらの器官における試験薬誘発毒性の可能性が存在する。安全性モニタリングは、頻繁な検査室評価(血液化学及び血液学)、及び神経学的評価を含む身体的検査を含み、これらの器官における潜在的毒性をモニタする。
潜在的リスクを以下に記載する。免疫学的効果及びPSMA発現パターンに関連する予防策は、セクション6.1.2で考察する。用量調節ガイダンスは、セクション6.6に提供する。
● 免疫学的効果:これらの潜在的な安全リスクを管理する前治療薬剤のためのガイダンスをセクション6.1.2に提供する。
- 注入関連反応(IRR)(セクション6.1.2.1)
- 免疫関連有害事象(セクション6.1.2.2)
- サイトカイン放出症候群(CRS)(セクション6.1.2.3)
● PSMA発現パターンに起因する潜在的毒性:
- 腫瘍溶解症候群-第1の試験薬投与後の有害事象及び化学パラメータのモニタリング
- 腎毒性-有害事象及び化学パラメータのモニタリング
- 肝毒性-有害事象及び化学パラメータのモニタリング
- 神経毒性(セクション6.1.2.4)
- 耳下腺/唾液腺毒性-有害事象のモニタリング
- 胃腸毒性-有害事象のモニタリング
● 臨床検査室異常:CD3会合からの期待される薬理学的機能と一致して、カニクイザルによる毒性試験において観察された検査室パラメータの最も注目すべき変化は、白血球の変化(主に、リンパ球、単球、及び好酸球の減少、続いてこれらの及び他の白血球の増加)、好中球の増加又は減少、血小板の減少、赤血球塊の減少、急性期応答、腎パラメータの増加、凝固時間の延長、並びに肝酵素活性及びビリルビンの増加から構成された。
試験薬治療に関連する臨床的ベネフィットが存在するかどうかは不明である。試験薬は、腫瘍細胞又は腫瘍関連の新生血管細胞など、PSMAを発現する標的細胞の有効な殺傷をもたらす可能性があり、場合によっては、進行した疾患及び限定的な治療選択肢を有する患者の全生存が増加する可能性がある。
3. 目的及びエンドポイント
Figure 2022529970000027
仮説
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。この試験は以下を評価する。
用量漸増(第1部):参加者の33%未満がDLTを経験するように、試験薬のRP2Dを特定することができる。
用量拡大(第2部):試験薬は安全であり、RP2Dにおいて予備臨床活性を示す。
3.1.1. 試験薬
試験薬は、CD3媒介性T細胞リダイレクトのためにPSMAを標的化することの治療可能性を評価するために開発された二重特異性抗体である。試験薬は、遺伝子操作を受けたヒトIgG4抗体である。この二重特異性抗体は、2つの親抗体、すなわち、PSMB127及びCD3B219から、制御された断片抗原結合アーム交換によって生成した。PSMB127は、PSMA過剰発現細胞株におけるファージライブラリの全細胞パニングに由来する抗PSMA抗体である。CD3B219は、更にヒト化され、親和性成熟した、パブリックドメイン抗体SP34に由来する抗CD3ε抗体である。試験薬は、CD3発現T細胞の補充によってPSMA発現細胞に対するT細胞媒介性細胞毒性の強化を誘発すると仮定される。これは、T細胞の活性化をもたらし、細胞毒性T細胞によって媒介される後続のPSMA陽性細胞溶解を誘発する。
4. 試験デザイン
4.1. 全体的な計画
これは、進行した癌を有する参加者における試験薬単剤療法の安全性、薬物動態、薬力学、及び予備臨床活性を評価するための、FIH、非盲検、多施設、第1相試験である。約70人の参加者をこの2部構成の試験で治療する。プライミング用量スケジュールを探索する場合は、追加の参加者が登録されてもよい。参加者が、試験のために適格であると判定され(すなわち、組み入れ/除外基準)、かつ試験参加のためのインフォームドコンセントを提示していると、試験薬は、IV注入として投与される。試験治療の全体的な安全性は、試験全体を通してSETにより継続的に評価される(セクション4.1.4を参照されたい)。予備臨床活性は、セクション8.1に概説される評価に従って評価される。試験薬の薬力学は、治験依頼者によって決定されたように、選択されたコホートにおける治療前及び治療時の生検によって特性評価される(表19を参照)。
第1部(用量漸増)
試験の第1部は、転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を有する参加者における試験薬のMTDを決定し、RP2D及びレジメンを選択するように設計されている。用量漸増は、図5に示すように、MABELベースの開始用量で開始し、進行する。用量漸増は、過量投与制御を伴う用量漸増(EWOC)原理を用いた、統計モデルのベイズロジスティック回帰モデル(BLRM)に基づく修正された連続再評価法(mCRM)によってガイドされる適応設計用量漸増戦略を使用してサポートされる。用量漸増は、加速滴定段階及び標準滴定段階の2段階で実施される。
試験評価チームの決定は、薬物動態、薬力学、安全性、及び有効性を含むがこれらに限定されない全ての利用可能なデータのレビューに基づく。用量漸増は、セクション4.1.1の用量漸増戦略概要に従って進行する。
第1a部では、単一参加者コホートが、SETによって割り当てられた用量において、加速された用量漸増中に登録される。安全性、薬物動態、薬力学、及び予備臨床活性をより良く理解するために、最大12人の追加の参加者が、SETにより安全であると判定された用量において薬物動態/薬力学(PK/PD)コホートで治療されてもよい。グレード≧2の非血液毒性又は貧血症、好中球減少症若しくは血小板減少症のグレード≧3の血液毒性が発生すると、試験は、加速滴定段階から標準滴定段階へと移行し、コホート当たり3~6人の参加者の登録を開始する。標準滴定は、プライミングなし(第1b部)で行われてよく、又は毒性がグレード≧2のCRSである場合、標準滴定は、プライミング用量あり(第1c部)で行われてもよい。標準用量漸増中、追加のデータを得るために、追加の参加者がPK/PDコホートに登録されてもよい。
第2部(用量拡大)
RP2Dが決定すると、RP2Dでの試験薬の安全性、薬物動態、薬力学、及び予備臨床活性を確認するために、mCRPC及びRCCを有する参加者(コホート当たり20人)が治療される。
全体的な治療計画
治療及びプライミング用量スケジュールを以下及び表24に記載する。プライミング用量の開始は、毒性を緩和すると考えられ得る。
治療用量スケジュール:カニクイザルモデルからスケーリングされた飽和用量での4.9日間の予測t1/2に基づいて、週1回治療用量で試験を開始する。開始用量は、IV注入によって週1回投与される0.1μg/kgである。週2回治療用量の代替的なスケジュールが探索されてもよい。週1回治療から週2回治療に切り替える決定は、新たなデータに基づくものであり、SETによる承認後に行われる。安全かつ許容可能なRP2Dを特定するために、用量漸増の判断及び後続の用量レベルが、全ての利用可能な安全性、薬物動態、薬力学、及び臨床活性データを使用して統計モデルに基づいて決定される。試験薬のRP2Dが第1部で決定された後、第2部への登録が開始する。
試験薬の第1の用量の前に、コルチコステロイド前投薬を投与して、IRRに関連するリスクを最小化する(表30を参照)。コルチコステロイド前投薬は、後続の用量に対して低減又は省略されてもよい。グレード2以上のIRRを経験する参加者については、前注入コルチコステロイドが、その参加者に投与される少なくとも1回の後続用量に対して必要とされる。
プライミング用量スケジュール:ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞誘導抗体のために、これらの抗体が第1の用量投与に関連する急性サイトカイン媒介性毒性引き起こす可能性に起因して、プライミング用量戦略が効果的に利用されている。この試験では、プライミング用量スケジュールは、グレード≧2のCRSの初回発生後に開始される。T細胞活性化及びサイトカイン放出に関連し得る急性毒性を緩和するために、1回以上のより低い初期用量が、後続のより高い治療用量の前に投与されてよい。プライミング用量の選択についてはセクション4.1.1を参照されたい。
必要な入院及び退院基準
第1部:参加者は、試験薬の最初の2回の治療用量及び任意の関連するプライミング用量に対するIVフラッシュ後の少なくとも48時間入院させられる。特定の安全基準が満たされなければ、入院は、後続の用量に対して任意である:以前のグレード≧2の神経毒性、プライミングスケジュールのための患者内用量漸増、又は72時間以内にグレード≦1に変じない以前のグレード≧2のCRS。これらの毒性のうちのいずれか1つが、試験薬の投与中に発生する場合、参加者は、CRS又は神経毒性に関連する兆候及び症状をモニタするために、次回の試験薬投与(IVフラッシュ後)の少なくとも48時間入院させられる。
第2部:第1部からの経験に基づいて、入院は必要としなくてもよい。しかしながら、参加者が、72時間以内にグレード≦1に変じない以前のグレード≧2の神経毒性又は以前のグレード≧2のCRSを有する場合、次回の試験薬投与後の少なくとも48時間、入院が必要となる。
退院基準
参加者が病院から退院する前に、以下の基準を満たさなければならない:少なくとも24時間の100.4°F(38℃)以下の体温として定義される、発熱の不在、及び基礎疾患によらない任意の有意なグレード≧2の有害事象の不在を含む、正常範囲内のバイタルサイン及び酸素飽和度。
治療中止/フォローアップ
参加者は、X線撮影の疾患増悪、明らかな臨床的増悪、許容できない毒性、又は任意の他の治療中止基準が満たされるまで試験薬を投与される(セクション7を参照)。しかしながら、疾患増悪の先の治療が考慮されてもよい(セクション8.1.2を参照)。疾患増悪以外(例えば、有害事象)が理由で試験治療を中止する参加者については、疾患増悪又は新たな抗癌剤療法が開始されるまで、現場の標準治療に従って疾患評価が引き続き行われる。治療中止後、参加者は、試験薬の最後の用量後30(+7)日以内の治療終了(EOT)来院を有し、セクション8に概説されるフォローアップのために試験を継続する。
データカットオフ及び試験終了
治験依頼者は、治験総括報告書(CSR)分析報告のための臨床データカットオフ日を設定し、この日は、試験終了前であってもよい。データカットオフは、治験実施施設に伝達される。データカットオフ後、試験薬を引き続き投与される参加者又はフォローアップにある参加者は、試験終了まで表7に従ってモニタされ続ける。これらのデータは、最終CSRにある適切な健康機関に報告される。試験施設からの最終データは、治験実施契約書に明記された時間枠内において、その試験施設での最終参加者来院の完了後に治験依頼者(又は被指名人)に送られる。試験終了(試験完了)は、セクション4.4に定義される。
4.1.1. 用量漸増規則
第1部:用量漸増の判断は、全てのDLTデータ、並びに全ての以前の用量レベルの安全性、薬カ学、薬物動態、及び他のバイオマーカーデータを利用して、mCRMに基づいてSETにより行われる。予備臨床活性もまた、利用可能であれば、各用量漸増工程においてセットによりレビューされる。
第1部では、mCRMは、(1)加速滴定段階及び(2)標準滴定段階(プライミングあり及びなし)の2段階で実施される。用量漸増は、週1回投与される治療用量で開始し、新たなデータに基づいて、週2回の投薬が開始されてもよい。このセクションに後述されるように、プライミングスケジュールが探索されてもよい。mCRMは、以下のように実施される。
第1a部-加速滴定
以下の規則は、mCRMを用いる加速滴定中に適用される。
● 用量漸増は、単一(少なくとも1人の)参加者コホートで開始する。
● ある投与レベルで2人以上の参加者が治療される場合、その所与の用量レベルで治療された第1の参加者は、後続の参加者を治療する前に48時間観察されなければならない。
● 用量が安全であるとSETが判断する前に、かつ次のコホートに登録する前に、DLT評価期間を完了した少なくとも1人の参加者の評価(セクション4.1.3を参照)が必要とされる。
● 用量漸増は、次の用量レベルが前の用量から3.5倍の増分を超えることができないことを除いて、EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされるように進行する(すなわち、最高推奨用量を提供する)。
● DLT評価期間中に以下のうちの1つが発生する場合、試験は、加速滴定から標準滴定に切り替わってよい。
- グレード≧2の非血液毒性、又は貧血症、好中球減少症、若しくは血小板減少症のグレード≧3の血液毒性:第1b部-プライミングなしの標準滴定。
- 1つ以上のグレード≧2のCRS事象:第1c部-プライミングありの標準滴定。
追加的な薬物動態、薬力学、又はバイオマーカーデータを得るために、最大12人の追加の参加者が、SETによって安全であると判定された用量においてPK/PDコホートに登録されてもよい。加速用量滴定を停止するための基準が満たされると、用量漸増は、以下に記載されるように標準滴定に移行する。
第1b部-標準滴定(プライミングなし)
以下の規則は、mCRMを用いる標準滴定中に適用される。
● 次のコホートの用量を決定する前に、DLT評価期間を完了する少なくとも3人の参加者による用量レベルの評価(セクション4.1.1)が必要とされる。
● 所与の用量レベルで治療された第1の参加者は、後続の参加者を治療する前に48時間観察されなければならない。
● DLTにより決定される一次モデル(セクション9.1.1を参照)
● コホート内の参加者のいずれもDLTを経験しない場合、治療用量の用量漸増は、次の用量レベルが前の用量から3.5倍の増分を超えることができないことを除いて、EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされるように進行してよい(すなわち、最高推奨用量を提供する)。
● コホート内の1人の参加者がDLT期間中にDLTを経験した場合、SET(EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされる)は、以下のいずれかを行ってよい。
- 次の用量レベルを決定する前に追加の参加者を登録することに同意する
又は
- 全ての利用可能なデータ及びDLTの最新の確率に基づいてコホートを再評価し、EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされる次の用量コホートを決定する(すなわち、最高推奨用量を提供する)
● 特定の用量コホート内の2人の参加者がDLTを経験した場合、その用量コホートへの更なる登録は停止し、SETは、利用可能な全てのデータ及びDLTの最新の確率に基づいてコホートを再評価する。用量コホートの再評価に基づいて、その用量レベルが依然としてEWOC原理を満たし、かつSETによって同意される場合にのみ、追加の参加者が、現在の又はより低い用量コホートに登録されてもよい。
● 追加的な薬物動態、薬力学、又はバイオマーカーデータを得るために、最大12人の追加の参加者が、SETによって安全であると判定された用量においてPK/PDコホートに登録されてもよい。
● 試験は、グレード≧2のCRS事象が観察された場合、プライミングを開始してもよい(第1c部)。
第1c部-標準滴定(プライミングあり)
1日目にプライミング用量が投与され、続いて8日目に治療用量が投与される。しかしながら、SETによるレビュー後、利用可能なデータのレビューに基づいて、2回以上のプライミング用量が投与されてもよい。
プライミング用量は、以下のように決定される。
● 第1のCRS事象がグレード2又は3である場合、第1の事象が発生した用量レベルは、少なくとも6人の参加者に拡大される。
- 追加のグレード≧2のCRSが観察されない場合、この用量レベルは、プライミング用量と見なされる。
- 追加の参加者がグレード≧2のCRSを有する場合、CRSが観察されなかった以前の用量レベルは、少なくとも6人の参加者に拡張される。
● 6人の参加者のうちの1人以下がグレード2又は3のCRSを経験する場合、この用量レベルは、1日目のプライミング用量と見なされる。
● 第1のCRS事象がグレード≧4のCRSであった場合、CRSが観察されなかった以前の用量レベルは、少なくとも6人の参加者に拡張される。
- 6人の参加者のうちの1人以下が、このより低い用量レベルにおいてグレード2又は3のCRSを経験する場合、この用量レベルは、1日目のプライミング用量と見なされる。
初期プライミングコホート
● 第1のプライミングコホートでは、治療用量は以下のように決定される。
● 第1の治療用量は、mCRMによって決定される。
- 第1のCRS事象がグレード>2である場合、治療用量は、グレード>2のCRSが観察された用量よりも下に低減されてよい。
- 次のコホートの用量を決定する前に、DLT評価期間を完了する少なくとも3人の参加者によるプライミングスケジュールの評価(セクション4.1.3)が必要とされる。
- 所与の用量レベルで治療された第1の参加者は、後続の参加者を治療する前に48時間観察されなければならない。
● DLTによって決定された一次モデル
● コホート内の参加者のいずれもDLTを経験しない場合、用量漸増は、次の用量レベルが前の用量から100%の増分を超えることができないことを除いて、EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされるように進行してよい(すなわち、最高推奨用量を提供する)。
● コホート内の1人の参加者がDLT期間中にDLTを経験した場合、SET(EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされる)は、以下のいずれかを行ってよい。
- 次の用量レベルを決定する前に追加の参加者を登録することに同意する
又は
- 全ての利用可能なデータ及びDLTの最新の確率に基づいてコホートを再評価し、EWOC原理を用いたBLRMによってガイドされる次の用量コホートを決定する(すなわち、最高推奨用量を提供する)
● 特定の用量コホート内の2人の参加者がDLTを経験した場合、その用量コホートへの更なる登録は停止し、SETは、利用可能な全てのデータ及びDLTの最新の確率に基づいてコホートを再評価する。用量コホートの再評価に基づいて、その用量レベルが依然としてEWOC原理を満たし(セクション9.1.1を参照)、かつSETによって同意される場合にのみ、追加の参加者が、現在の又はより低い用量コホートに登録されてもよい。
● 追加的な薬物動態、薬力学、又はバイオマーカーデータを得るために、最大12人の追加の参加者が、SETによって安全であると判定された用量においてPK/PDコホートに登録されてもよい。
● 複数の用量レベル及び用量スケジュールコホートは、上記の全ての基準が満たされ、新しい用量コホート/スケジュールのそれぞれが、SETによって推奨され、かつEWOC原理を用いた統計モデルによってサポートされていれば、並行して登録されてよい。
暫定的な投薬表
暫定的な投薬表の例を22に示す。用量レベルは、SET会議で検討され(セクション4.1.4を参照)、新たなデータに基づいて変化する。試験参加者の安全性を確保するために、中間の用量レベル増分が可能である。実際の上昇する用量レベルは、BLRMに基づいてmCRMによってガイドされる。この試験では、最大用量レベルは特定されていない。
Figure 2022529970000028
4.1.2. RP2Dの決定
RP2Dは、RP2Dで治療された少なくとも6人の参加者及び全てのコホートにわたる薬物動態データを有する少なくとも12人の参加者からの全ての利用可能な薬物動態、薬力学、安全性、及び有効性データのレビュー後に決定され、BLRMによる推奨用量を考慮する。1つ以上のRP2Dが選択されてもよい。
RP2Dが決定すると、RP2Dでの試験薬の安全性、薬物動態、薬力学、及び予備臨床活性を確認するために、mCRPC及びRCCを有する参加者の2つの拡大コホート(コホート当たり約20人)が治療される。
4.1.3. 用量制限的毒性の定義
DLT評価期間は、治療の最初の21日間として定義される。プライミング用量が探索される場合、プライミング期間は、DLT評価期間に含まれる。DLT以外の理由でDLT期間を完了しない参加者を交代させてもよい。参加者が、この期間中に毒性以外の理由(例えば、疾患増悪、不来院、不遵守、参加者離脱)で各割り当て用量の75%未満を受けた場合、参加者は、SETの裁量において新しい参加者と交代してよい。評価不能な参加者からの全ての利用可能な安全性データは、SETによって考慮される。DLTの基準を以下の表に概説する。治療中止につながる用量制限的毒性は、セクション7に記載されている。これらの事象は、National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI CTCAE Version 5.0)に従って評価される。
Figure 2022529970000029
略語:ALP=アルカリホスファターゼ、ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、CRS=サイトカイン放出症候群、DLT=用量制限的毒性、GGT=γ-グルタミルトランスフェラーゼ、IRR=注入関連反応、ULN=基準値上限。
a.毒性が根本的な悪性腫瘍又は外来原因に明白に起因するものではない場合。
b.施設基準による最良の支持療法(臨床的に適用可能な電解質及びホルモン補充を含む)。
c.ALT又はAST値≧3×ULN、総ビリルビン≧2×ULN、及びALP≦2×ULNとして定義されるHyの法則、代替的な病因はない。
d.DLT期間中に発生するグレード≧3の化学異常は、グレード又は解消を確認するために72時間以内に繰り返される必要がある。
4.1.4. 試験評価チーム
参加者の安全性及び試験行為は、治験依頼者によって設立されたSETにより試験全体を通してモニタされる。この委員会は、本試験全体を通して全ての治療下で発現したデータ(例えば、薬物動態、薬力学、安全性)を継続的にモニタして、本試験に登録された参加者の継続的安全性を確保する。累積データは、後期発症毒性についてモニタされる。
SETは、治験依頼者の試験責任医師が議長を務める。メンバーには、主要な治験担当者である、治験依頼者の臨床科学者、安全性担当医師(治験依頼者の安全管理チーム議長)、統計学者、臨床薬理学者が、必要に応じて追加の治験依頼者スタッフと共に、含まれる。チームは、試験行為全体を通して定期的な頻度で会合し、また治験依頼者又は治験担当者のいずれかの要求において、試験中の任意の時点に、新たな安全性シグナルを評価することができる。会議結果の文書は、治験依頼者によって維持される。決定は治験担当者に伝達され、更に、参加者の安全性に影響を及ぼす可能性のある決定(例えば、リスク/ベネフィット評価における好ましくない変化)は、必要に応じて規制当局にも迅速に伝達される。
用量漸増決定、並びに治療及び手順スケジュールの変更は、SETによって行われる。用量漸増会議のスケジュールは、DLTの頻度、及びMTD若しくは最大投与用量(MAD)が決定されるかどうか/いつ決定されるか又はRP2Dがいつ決定されるかに依存する。
SETはまた、治療下で発現した毒性が参加者のリスク/ベネフィットに好ましくない変化をもたらすと判定された場合に、試験行為の修正を決定しても、1つ以上のコホートへの更なる登録を停止してもよい。必要であれば、SETが新たなデータを評価するために、登録は一時的に維持されてもよい。SET憲章は、SETによって行われる決定又は推奨に関する伝達計画を概説する。
4.2. 試験デザインの科学的な理論的根拠
T細胞リダイレクト二重特異性薬のより最近の導入は、特に有望な免疫療法の形態を表す。二重特異性薬は、2つの別個の抗原認識ドメインを介するヘテロ二価結合を使用し、一方のドメインは腫瘍抗原を認識し、他方のドメインは、T細胞上のCD3を標的として腫瘍クリアランスを達成し、多くの抵抗機構を回避する(Ramadoss NS,Schulman AD,Choi SH,et al.J Am Chem Soc.2015;137(16):5288-5291)。
PSMAは、正常な前立腺において発現した膜貫通タンパク質であり、その発現は、悪性形質転換中に増加し、これには、骨転移での発現が含まれる(Chang SS et al,Urology.2001;57(4):801-805)。加えて、PSMAは、他の悪性腫瘍の新生血管において過剰発現する(Baccala A,et al..Urology.2007;70(2):385-390;Chang SS.Rev Urol.2004;6(Suppl 10):S13-S18;Chang SS et al.Cancer Res.1999;59(13):3192-3198。試験薬は、PSMAを過剰発現するこれらの悪性細胞を死滅させるように体の免疫細胞を誘導すると仮定される。試験薬の作用機序は、CD3発現T細胞の補充によってPSMA発現標的細胞に対するT細胞媒介性細胞毒性を可能にする。細胞殺傷のためのこの機序は独特であり、これは、現在の療法に対して耐性を示している疾患を有する患者に治療の機会を提供する。
4.2.1. 試験固有の倫理的なデザイン考慮事項
本試験は、mCRPC又はRCCを有する参加者への反復投与後の試験薬の安全性、薬物動態、薬力学、及び潜在的な臨床的ベネフィットを評価するために実施される。本試験の結果は、化合物の更なる開発のための有用な情報を提供するであろう。主要な倫理的な懸念は、本FIH試験における試験薬の投与に関連するリスク及びベネフィットが未知であることである。ヒトにおける試験薬関連のリスクを評価するために、腫瘍細胞株を用いてin vitro及びin vivo評価を実施した。前臨床毒性及びPK/PD試験をカニクイザルにおいて実施した。その理由は、カニクイザルが、試験薬のPSMAアーム及びCD3アームの両方の結合を実証する唯一の関連する種であったからである。
非臨床試験は、本試験での評価のために提案された用量範囲内での抗腫瘍活性の可能性を示すが、試験薬の治療ベネフィットは、ヒトにおいて決定されてはいない。カニクイザルに実施した試験で試験薬に対して特定された主要な知見は、サイトカイン放出(用量制限的)及び一般化全身性炎症応答に関連するものであった。
参加者の疾患が試験薬に応答しないか、又は参加者が治療量以下の用量を、特に、より低い用量コホートにおいて受ける可能性がある。更に、前臨床試験で観察されなかった毒性が生じる場合がある。前臨床評価に基づいて、前臨床データに基づいた肯定的なリスク-ベネフィットプロファイルにあると考えられる理由がある。この試験で治療された参加者の健康を確実にするために、安全性及び臨床的ベネフィットは、このプロトコル全体を通して議論されるように、密接にモニタされる。
全てのFIH用量設定PK/PD試験と同様に、静脈穿刺及び複数血液サンプル採取に関連するリスクが存在する。更なる不快感及び他の潜在的な毒性効果を引き起こす、複数回の静脈穿刺を回避するために、IV留置カテーテルの使用は、本試験において許可される(更なる詳細については、治験責任医師製品調製指示書[IPPI]を参照)。血液サンプル採取スキームは、試験薬のPK/PDプロファイルを正確かつ完全に表現する最小数の血液サンプルを採取するように設計された。これにより、静脈穿刺の回数、及び試験中に各参加者から採取される血液の総体積が最小化される。ほとんどの血液サンプルは、治療の最初の8週間で採取される。採取される総血液体積は、アメリカ赤十字の標準に基づいて、本試験における集団からこの期間にわたって採取される許容可能な量の血液であると考えられる。
撮像のタイミングは、増悪事象を捕捉し、臨床治験担当者が時宜を得た治療決定を行うことを可能にするように設計されているが、依然として放射線への参加者の過剰曝露を防ぐこととバランスがとられている。有効性評価は、国際的に認められている固形癌の効果判定規準(RECIST)v1.1又はPCWG3基準によって推奨される方法で行われる。
腫瘍生検を有する参加者は、疼痛、出血、及び感染を含む、生検処置に関連する毒性のリスク、並びに現場の標準治療に従って提供される任意の局所麻酔又は全身麻酔のリスクがある場合がある。
潜在的参加者は、試験のリスク及び要件を十分に告知され、試験中、参加者は、参加を継続する決定に影響を及ぼし得る新しい情報があれば与えられる。潜在的参加者は、試験に参加するための同意は随意であり、いつでも、理由を言わずに、罰則、又は本来であれば与えられるであろうベネフィットの損失なしに撤回してよいことが告げられる。試験のリスク、ベネフィット、及び潜在的な有害事象を理解し、自発的に同意を示すことが十分に可能な参加者のみが、登録される。
4.3. 用量が正当である理由
開始用量の理論的根拠についてセクション2.1.3を参照されたい。
4.4. 研究終了の定義
参加者は、死亡しているか、又は試験からの離脱基準を満たしていると、試験を完了したと見なされる(セクション7を参照)。試験終了(試験完了)は、試験内の最後の参加者に対する最後の安全性評価であると考えられる。
5. 試験母集団
適格な参加者のためのスクリーニングは、試験薬の投与前30日以内に実施される。任意のスクリーニング手順の繰り返しが許容される条件については、セクション5.4「スクリーニング失敗」を参照されたい。
本試験に被験者を登録するための組み入れ基準及び除外基準を以下に記述する。これらの基準について疑問がある場合、治験担当者は、適切な治験依頼者担当者に相談し、試験に参加者を登録する前に問題を解決しなければならない。逸脱事例は許可されない。
5.1. 組み入れ基準
各潜在的参加者は、試験に登録されるには、以下の基準の全てを満たす必要がある。
1.≧18歳。
2.修正項1により改変された基準。
2.1 組織学:
第1部:腺癌の組織学的確認を有する転移性CRPC(mCRPC)。小細胞又は神経内分泌機能を有する腺癌は許可される。
mCRPCは、総血清テストステロン≦50ng/dL又は1.7nmol/L及び疾患増悪の証拠として定義され、疾患増悪の証拠は、以下の1つ以上のPCWG3基準として定義される(Scher HI,et al.J Clin Oncol.2016;34(12):1402-1418):少なくとも1週間隔の少なくとも2回の連続する時点で増加している1ng/mL以上のPSAレベル、PCGW3修正を伴うRECIST 1.1によって定義されるような節若しくは内蔵の増悪、及び/又は骨スキャンにおける2つ以上の新しい病変の出現。
第2部:
1. 上に定義したのと同様のmCRPC。
又は
2. WHO 2016分類によって定義されるような病理学的に確認された転移性RCC。
3.修正項1により改変された基準。
3.1 以下のような以前の治療:
第1部及び第2部:mCRPC-mCRPCに対する新規AR標的療法(すなわち、酢酸アビラテロン、アパルタミド、エンザルタミド)の少なくとも1つの以前のライン。前化学療法を受けた患者もまた、新規アンドロゲン受容体(AR)標的療法の少なくとも1つの以前のラインを受けている場合は、適格である。
第2部:RCC-転移性又は局所的に進行した疾患に対する全身治療の少なくとも2つの以前のライン(例えば、抗血管内皮増殖因子[VEGFR]、チェックポイント阻害剤、又は哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)阻害剤)。
4.測定可能又は評価可能な疾患:
第1部:前立腺癌に対して測定可能又は評価可能な疾患。
第2部:CT(又はCTが禁忌である場合、MRI)によってベースラインで正確に評価することができ、RECIST v1.1により反復評価に好適である、少なくとも1つの測定可能な病変。文書化された疾患の増悪、及び測定可能な疾患の唯一の部位が以前に照射されている場合は、放射線療法完了から4週間の休止期間が必要とされる。更に、生検用にベースライン時又は治療時に選択された病変は、疾患評価のための標的病変として選択することができない。
5.新しい治療ラインを必要とする以前の療法時の疾患増悪の証拠。
6.mCRPC:参加者がゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト類似体(GnRH)による治療を受ける場合(すなわち、両側精巣摘出術を受けていない参加者)、この療法は、試験薬の第1の用量の前に開始されていなければならず、試験全体を通して継続しなければならない。
7.第2部における選択されたPK/PDコホートに登録された、アクセス可能な病変を有する参加者は、生検採取が安全リスクを呈さない限り、必須の新鮮な腫瘍生検を受けることに同意しなければならない。
8.0又は1の米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスグレード。
9.試験薬の第1の用量前3週間以内に、輸血又は増殖因子とは無関係に、以下の範囲内にある血液学検査パラメータ。参加者は輸血依存性であってはならない。
a. ヘモグロビン≧9g/dL
b. 絶対好中球数≧1.5×10/L
c. 血小板数≧100×10/L
10.以下の範囲内の化学検査室パラメータ。
a. 血清アルブミン≧3.0g/dL
b. 計算された又は測定されたクレアチニンクリアランス>50mL/min/1.73m
c. 血清総ビリルビン≦1.5×基準値上限(ULN)、ジルベール症候群を有する参加者では、総ビリルビンが≧1.5×ULNである場合、直接及び間接ビリルビンを測定し、直接ビリルビンが正常範囲内にある場合、参加者は適格であり得る。
d. アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦2.5×ULN
11.以下の範囲内の心パラメータ:
a. 施設正常範囲内の左室駆出分画
b. 5分間隔(±3分)で実施された3回の評価の平均に基づいて、補正QT間隔(QTcF又はQTcB)≦480ミリ秒。この基準は、ペースメーカーを有する参加者には適用不可能である。
12.- 妊娠の可能性がある女性は、スクリーニング時及び試験薬の第1の用量の前に陰性の高感受性血清(β-ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン[β-hCG])を有しなければならない。尿妊娠検査は、治療中4週ごとに必要とされる。
女性は、以下の条件を満たさなければならない(避妊ガイダンス及び妊娠情報の収集)。
妊娠の可能性がない
妊娠の可能性がある場合は、
- 効果の高い、好ましくは使用者非依存的な避妊法(一貫して正確に実施された場合の1年当たりの失敗率が1%未満である)を実施し、試験薬を受けている間、及び最後の用量後30日まで、効果の高い方法を維持することに同意する。最後の試験薬投与後30日以内に妊娠検査する(血清又は尿)。
13.使用者非依存的な効果の高い避妊法に加えて、殺精子剤付き又はなしの男性用又は女性用コンドーム、例えば、殺精子発泡剤/ゲル/フィルム/クリーム/座薬付きのコンドームが必要される。男性用コンドーム及び女性用コンドームは、一緒に使用すべきではない(摩擦による破損のリスクがあるため)。
14.男性参加者は、別の人物に射精液を移行する行為を行う際はコンドームを着用しなければならない。男性参加者はまた、コンドームには破損又は漏れが生じることがあるので、女性パートナーが効果の高い避妊法を使用することのベネフィットについて助言されるべきでる。
15.上記のように、男性又は女性の両方に対する避妊(産児制限)の実施は、臨床試験参加者にとって避妊について許容される方法に関する現地条例と合うものでなければならない。典型的な実施失敗率は、一貫してかつ正確に実施された場合とは異なる場合がある。実施は、臨床試験の参加者にとって避妊の実施に関する現地条例と合うものでなければならない。
16.女性は、試験中、及び最後の試験薬投与後少なくとも30日間は、生殖補助の目的で卵(卵子、卵母細胞)を提供しないことに同意しなければならない。
17.男性参加者は、研究中、及び試験薬の最後の用量を受けた後の最小限90日間、生殖の目的で精液を提供しないと同意しなければならない。
18.このプロトコルに指定された禁止事項及び制限事項を守る意思があり、それが可能でなければならない。
19.各自が試験の目的とそれに必要な手順を理解し、試験に参加する意思があることを示す、インフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名しなければならない。
5.2. 除外基準
以下の基準のいずれかを満たす潜在的参加者は、試験の参加から除外される。
1.脳転移の病歴又は既知の脳転移。
2.腺腫、オンコサイトーマ、及び間葉系腎細胞腫瘍。
3.修正項1により改変された基準
3.1-前立腺神経内分泌腫瘍又は小細胞癌腫瘍の一次組織診を有するmCRPC。
-非転移性CRPC。
4.以前の抗癌剤治療(放射線療法を含む)中止と試験薬の第1の用量との間が少なくとも2週間あり、毒性がグレード≦1又はベースラインに戻っている。
5.キメラ抗原T細胞受容体、PSMA T細胞リダイレクト療法、PSMA標的化モノクローナル抗体(抗体薬物複合体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない、PSMA標的化療法による以前の治療。PSMA標的化ワクチンによる以前の治療は許可される。
6.実質器官又は骨髄移植。
7.発作、若しくは発作が起こりやすくなり得る既知の状態、又は浮腫若しくは腫瘤効果を引き起こすシュワン腫及び髄膜腫などの頭蓋内塊。
8.登録前12ヶ月以内における全身治療を必要とする他の活性悪性腫瘍。
9.スクリーニング前6ヶ月以内における以下のいずれか。
a. 心筋梗塞
b. 重度の又は不安定な狭心症
c. 臨床的に有意な心室性不整脈
d. 鬱血性心不全(ニューヨーク心臓協会クラスII~IV)
e. 脳血管発作又は一過性脳虚血発作
f. 任意のグレードの動脈事象
10.試験薬の第1の用量前1ヶ月以内における静脈血栓塞栓事象(すなわち、肺塞栓症)、複雑でない(グレード≦2)の深部静脈血栓症は、除外とは見なされない。
11.制御されていない高血圧症(グレード≧2)、抗高血圧療法を受けている参加者は許可される。
12.試験薬又はその賦形剤に対する既知のアレルギー、過敏症、又は不耐性(治験薬概要書を参照されたい)。
13.進行した疾患の治療のための任意の他の抗癌剤治療又は治験薬の同時使用。
14.試験薬の第1の用量前7日以内における全身性抗生物質による治療を必要とする活性感染又は状態。
15.試験薬の第1の用量前2週間以内に、コルチコステロイド(>10mg/日の用量のプレドニゾン又は同等物)などの全身性薬物の免疫抑制用量を受けた。コルチコステロイドの単回投与は、コントラストを撮像するため(すなわち、コントラストに対するアレルギーを有する参加者のため)の予防法として許可される。
16.全身性免疫抑制薬(すなわち、慢性コルチコステロイド、メトトレキサート、又はタクロリムス)を必要とする過去2年以内の活性自己免疫疾患。
17.大手術(例えば、全身麻酔を必要とする手術)。参加者は、試験薬を開始する前の少なくとも3週間、続発症なしで十分に回復していなければならない。試験薬開始前1週以内における全身麻酔下での中心静脈カテーテルの挿入は許可される。注:局所麻酔下で施行される外科処置が計画されている参加者は、参加可能である。
18.活性又は慢性B型肝炎又はC型肝炎感染症。B型肝炎表面抗原(HBsAg)と、B型肝炎表面抗原又はコア抗原のいずれかに対する1つの抗体(それぞれ、抗HBs及び抗HBc)との両方に対する陽性検査によって定義されるB型肝炎感染症。陽性C型肝炎抗体によって定義されるC型肝炎感染。
抗HBs又は抗HBcの検査で陽性となる参加者は、試験薬投与前に、ポリメラーゼ連鎖反応によるB型肝炎DNAが実施され、陰性であると確認されなければならない。C型肝炎抗体の検査で陽性となる参加者は、以前に治療され、持続的なウイルス学的著効(肝炎に対する治療完了後のC型肝炎に対する陰性のウイルス量として定義される)を達成した場合は適格である。
19.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体陽性の履歴、又はスクリーニング時のHIV検査で陽性。
20.試験薬の第1の用量前28日以内に生ワクチンでワクチン接種した。年間のインフルエンザワクチンなど、不活性化ワクチンを用いたワクチン接種は許可される。
21.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の用量後30日以内に妊娠している、授乳している、又は妊娠を計画している。
22.この試験に登録している間、又は試験薬の最後の用量後90日以内に子供の父親となることを計画している。
23.治験担当者の意見によれば、参加が参加者の最善の利益とならない(例えば、健康を損ねる)か、又はプロトコルに指定された評価を妨げる、制限する、若しくは混乱させる可能性がある何らかの条件。
注:治験担当者は、全ての試験登録(組み入れ/除外)基準がスクリーニング時及び試験薬の第1の用量前に満たされていることを確実にするべきである。スクリーニング後であるが、試験薬の第1の用量が与えられる前に、参加者の臨床状態が変化して(任意の利用可能な検査結果又は追加の医療記録の受領を含む)、その結果、参加者が全ての適格性基準を満たすことができなくなった場合、参加者は試験への参加から除外されるべきである。セクション5.4「スクリーニング失敗」は、再検査のための選択肢を記載する。
5.3. 生活習慣の考慮事項
潜在的参加者は、試験期間中に参加のために適格であるためには、以下の生活習慣の制限事項を積極的に遵守することができなければならない。
1.試験薬の第1の用量前の少なくとも4週間、中止又は代替されなければならない療法としては、発作閾値を低下させることが知られている薬剤、及びPSAレベルを低下させ得る製品が挙げられる。試験中に禁止及び制限される療法についての詳細は、セクション6.5.2を参照されたい。
2.適格性(組み入れ及び除外)基準(例えば、避妊要件)に記載された、試験中に満たされなければならない全ての要件に従うことに同意する。
3.用量漸増の参加者は、第1及び第2の治療用量、並びに投与される場合は任意のプライミング用量後、試験薬注入の終了(IVフラッシュ)から少なくとも48時間、セクション4.1に記載されているように、進んで入院しなければならない。
4.参加者は、セクション6.1.2.4に記載されている期間中に運転すること、及び危険な職業又は活動に従事することを控えることに同意しなければならない。
5.4. スクリーニング失敗
参加者の識別、登録、及びスクリーニングログ
スクリーニング失敗の基準を満たす参加者は、再スクリーニングしてもよい。除外につながる異常スクリーニング値の再検査は、(適格性を再評価するために)スクリーニング段階中に1回のみ許可される。試験薬の第1の用量の前に得られた最後の結果は、適格性を判定するために使用される。試験薬投与の開始前で、試験薬投与の開始に最も近い時間に収集された測定値は、安全性評価及び治療決定のベースライン値として定義される。
スクリーニング後であるが、試験薬の第1の用量が与えられる前に、参加者の臨床状態が変化して(任意の利用可能な検査結果又は追加の医療記録の受領を含む)、その結果、参加者が全ての適格性基準を満たすことができなくなった場合、参加者は試験への参加から除外されるべきである。
治験担当者は、参加者の識別及び登録ログを完了して、試験中及び試験後の各参加者の容易な識別を可能にすることに同意する。この文書は、完璧を期するために、治験依頼者試験施設担当者によってレビューされる。参加者の識別及び登録ログは、機密として処理され、治験担当者によって試験ファイルにファイルされる。参加者の機密性を確保するために、いかなるコピーも作成されない。試験に関連する全ての報告及び伝達は、(現地条例によって許可されるような)初期インフォームドコンセント時の参加者の識別及び年齢によって参加者を特定する。参加者が試験に登録されていない場合には、(現地条例によって許可されるような)初期インフォームドコンセント時の日付及び年齢が使用される。
6. 試験薬
6.1. 試験薬投与
試験薬及び希釈剤の説明
試験薬は、組み換えチャイニーズハムスター卵巣細胞の培養、続いて単離、クロマトグラフィー精製、及び製剤によって生産される、CD3及びPSMA受容体に対して向けられた完全にヒト化されたIgG4ベースの二重特異性抗体である。
試験薬及び希釈剤は、治験依頼者の責任の下で製造及び提供される。試験薬投与は、原文書及び電子症例報告書(eCRF)で捕捉される。レスキュー薬の詳細については、セクション6.5.4を参照されたい。試験薬過剰投与の定義については、セクション8.4を参照されたい。
この試験の目的のために、「試験薬」は、試験薬及びその希釈剤を指す。全ての投薬情報が、eCRFに記録されなければならない。用量漸増の参加者の登録ずらし間隔は、セクション4.1.1に提供されている。注入時間及び推奨は、新たな安全性情報に基づいて、治験担当者との協議の上で治験依頼者によって調整されてもよい。このような変更は、試験ファイル、SET会議議事録、又はIPPI改訂版に文書化される。IVバッグ過剰充填、軽微な機器校正要因、又は人員管理の制御下にない参加者要因が原因で計画された時間長を超える注入持続時間は、プロトコルの逸脱とは見なされない。実際の注入時間は、正確に記録されるべきである。薬物投与に関する詳細を表に示す。
Figure 2022529970000030
6.1.1. 再治療基準
各用量の前に、参加者は、発生している可能性のある毒性について評価される。検査結果及び全身状態がレビューされなければならない。毒性及び併発症は、グレード1又はベースラインに戻っていなければならない(脱毛症は除く)。参加者は、少なくとも72時間にわたって発熱のない状態でなくてはならない。試験薬による治療は、参加者の臨床状態が、25に概説されている全ての再治療基準を満たし、かつセクション7.1に提示される治療中止基準のいずれも満たしていなければ、再開してよい。
Figure 2022529970000031
a. 血液毒性を管理するために、輸血及び増殖因子が使用されてよい。
b. 毒性から十分に回復し、かつ次の試験薬投与前少なくとも5日にわたって輸血又は成長因子が使用されていない状態でなければならない。
臨床的に有意な創傷治癒障害又は切迫した手術又は潜在的な出血性合併症の全ての場合において、用量投与が中断され、適切な臨床検査室データ(例えば、凝固)が慎重にモニタされ、必要であれば、支持療法が投与されることが推奨される。用量投与は、安全であると考えられるとき、治験依頼者と相談して決定される適切な用量で再開されてよい。
6.1.2. 潜在的毒性の管理ガイドライン
最良の支持療法は、適用可能であれば、投与されるべきである。セクション2.3に記載された特定の潜在的毒性の管理は、このセクションで概説する。注入室内又はその近くにおいて、適切な人員及び適切な蘇生用機器が容易に利用可能な状態にあるべきであり、試薬の注入中は、訓練された医師が容易に対応可能な状態であるべきである。蘇生に必要なリソースとしては、エピネフリン及びエアロゾル化気管支拡張薬などの薬剤、酸素、気管切開機器、及び除細動器などの医療機器が挙げられる。バイタルサイン及び検査室パラメータは、毒性が正常化されるまで、定期的な間隔でモニタされなければならない。IRR又はCRS事象が発生した場合には、スケジュール外の薬物動態、免疫原性、サイトカイン、及び薬カ学サンプルが採取される必要がある。
6.1.2.1. 注入関連反応の管理
喘鳴音、潮紅、無酸素血症、発熱、悪寒、硬直、気管支痙攣、頭痛、発疹、掻痒、関節痛、低血圧若しくは高血圧又は他の症状として現れるIRRを経験する参加者は、26に提供される推奨に従って症状を管理されるべきである。
全てのグレード3又は4のIRRは、治験依頼者のメディカルモニタに24時間以内に報告されるべきである。事象が重篤な有害事象の基準を満たす場合は、セクション8.3の重大な有害事象報告基準に従う。最初のIRR事象後、次の試験薬注入の前に、セクション6.5.3に記載されるように予防薬を投与しなければならない。
Figure 2022529970000032
6.1.2.2. 免疫関連有害事象の管理及び予防
試験薬は、特定の免疫関連有害事象(irAE)をもたらし得る。irAEの継続的で慎重なモニタリング及び適時の管理は、より重度の毒性を軽減するのに役立ち得る。特定の潜在的irAEに対する症候性かつ最良の支持療法手段は、臨床的に示されるようにすぐに進行しているべきであり、施設基準に従うべきである。これらの治療は、特定のirAEに必要なコルチコステロイド及び他の免疫抑制剤を含んでもよい。
6.1.2.3. サイトカイン放出症候群の予防及び管理
試験薬の特定の作用様式は、T細胞の結合及び活性化、並びに腫瘍環境におけるサイトカインの放出に基づくので、CRSの有害事象が予想される。T細胞活性化二重特異性抗体による限られた臨床的経験は、CRSが、注入の開始後数分、最大で数時間以内に最も頻繁に発生することを示すように見える(Klinger M,et al.Blood.2012,119(26):6226-6233;Lee DW et al.Blood.2014,124(2):188-195;Zimmerman Z,et al.Int Immunol.2015,27(1):31-37)。
CRSを示す臨床症状としては、サイトカインの放出によって引き起こされる発熱、頻呼吸、頭痛、頻脈、血圧低下、発疹、及び無酸素症が挙げられるが、これらに限定されなくてよい。また、幻覚、混乱、頭痛、発作、連句障害、振戦、又は他の神経学的毒性など、他の器官への影響も考慮する。CRSの潜在的に生命を脅かす合併症としては、心機能不全、成人呼吸促迫症候群、腎不全及び肝不全、並びに播種性血管内(血液)凝固が挙げられてよい。参加者は、CRSを示す早期の徴候及び症状について密接にモニタされるべきであり、試験薬注入は直ちに中断されるべきである。凝固及び炎症マーカーに関する検査室試験は、CRSの兆候として発生することができる、播種性血管内(血液)凝固及び炎症をモニタするために、臨床的に示されるように実施されてよい。サイトカイン放出症候群は、特定の関心のある有害事象として捕捉され(セクション8.3.5を参照)、NCI CTCAEバージョン5.0に従って評価される。
CRSの臨床管理の推奨は、以下の表27に提供され、トシリズマブによる治療を含む。ACTEMRA(登録商標)(トシリズマブ)。処方情報。South San Francisco,CA:Genentech,Inc;2017。トシリズマブの投与は、グレード≧2のCRS(CTCAE v5.0による)に対して検討されるべきであり、更に、トシリズマブは、施設の標準治療ガイドラインに従って投与されてもよい。したがって、試験薬の注入前に施設においてトシリズマブが利用可能であることを確実にする(セクション6.5.4を参照)。CRS事象に対する入院要件についてセクション4.1を参照されたい。
Figure 2022529970000033
出典:Kymriah(商標)(チサゲンレクロイセル)米国添付文書Kymriah(商標)[US FDA Package Insert]に基づいて改変されている。East Hanover,USA.Novartis Pharmaceutical Corporation;May 2018。
CRSを経験する参加者に対する用量調節/中止ガイドラインを表28に提供する。治療後の薬剤は、必要に応じて投与されるべきである。参加者は、セクション4.1に記載されるように入院しなければならない。
Figure 2022529970000034
a.用量減少スケジュールについてセクション6.6.2を参照されたい。
6.1.2.4. 神経学的有害事象
試験薬は、神経毒性を引き起こすかどうかは分かっていない。しかしながら、小脳及び脊髄の神経膠細胞におけるPSMAの発現(細胞質)に起因する潜在的リスクである。加えて、CD19×CD3ブリナツモマブなどのCD3リダイレクト薬で神経学的毒性が観察されている。これらの毒性の病因は明らかではなく、一般に、CD19発現、T細胞リダイレクト又はサイトカイン放出に特異的に関連し得る。ブリナツモマブ(CD19×CD3 BiTE)による臨床試験では、神経学的毒性は、患者の約50%で発生し、これには、脳症、痙攣、言語障害、意識障害、錯乱及び失見当識、並びに協調運動及び平衡障害が含まれた。ほとんどの事象は、ブリナツモマブの中断後に解消したが、一部は治療中止をもたらした。神経学的効果に関連する徴候及び症状のモニタリングは、試験全体にわたって行われる。
試験薬の特定の作用機序に基づいて、重度の又は重篤な神経学的毒性が発生し得る。神経有害事象の早期認識は、管理にとって重要である。参加者は、言語障害、痙攣、及び意識障害、錯乱、失見当識、又は協調運動及び平衡障害を含むが、これらに限定されない、神経学的毒性についてモニタされるべきである。参加者は、運動機能の障害(例えば、虚弱)、感覚の変化(例えば、麻痺)、又は頭痛の新規発症若しくは精神状態の変化など、中枢神経系異常の可能性を示唆する症状に気づいた場合、医療評価を求めるように勧告されるべきである。
参加者はまた、治療後の最初の72時間、運転すること、及び重機械又は潜在的に危険な機械装置を操作することなど、危険な職業又は活動に従事することを控えるように勧告されるべきであり、そのような活動を害するであろうグレード≧2の神経毒性を経験する参加者については最初の4週間の治療に延長されるべきである。参加者の状態が悪化した場合にはいつでも、これらの制限を再設定すべきである。
29に示されるような神経学的状態を評価するために、基本的な神経学的検査が試験施設スタッフによって実施される。これら又は他の神経学的毒性が観察される場合、治験依頼者のメディカルモニタに助言を求めなければならない。神経学的毒性を経験する参加者に対する用量調節/中止ガイドラインを表29に提供する。治療後の薬剤は、必要に応じて投与されるべきである。神経毒性を経験する参加者は、セクション4.1に記載されるように入院しなければならない。
Figure 2022529970000035
a.用量減少スケジュールについてセクション6.6.2を参照されたい。
6.2. 調製/取り扱い/保管/説明責任
保管
試験薬は、制御された温度で保管されなければならない。試験薬の保管条件及び取り扱いに関する詳細な指示には、臨床試験施設への臨床薬物供給が伴う。試験薬のラベルは、適用可能な規制要件を満たす情報を含む
説明責任
治験担当者は、施設において受領した全ての試験薬及び希釈剤が試験全体を通して在庫管理され、その説明責任が果たされることを確実にすることの責任を負う。参加者に投与された試験薬及び希釈剤は、試験薬説明責任フォームに文書化されなければならない。全ての試験薬及び希釈剤は、治験依頼者の指示に従って保管及び廃棄される。試験施設の職員は、試験薬容器の内容物を混ぜ合わせてはならない。
試験薬は、プロトコル及び容器ラベルに従って厳格に取り扱われなければならず、試験施設においてアクセスが制限された領域内又は施錠されたキャビネット内に適切な環境条件下で保管されなければならない。未使用の試験薬は、現場の視察中、治験依頼者の試験施設モニタによる検証に使用可能でなければならない。未使用の試験薬の治験依頼者への返却は、試験薬返却フォームに文書化される。試験施設が認可された破壊ユニットであり、試験薬供給が現場で破壊されるとき、これもまた、試験薬返却フォームに文書化されなければならない。
危険な液体を含む使用済みのアンプル、針、注射器、及びバイアルなどの潜在的に危険な物資は、安全な方法で直ちに廃棄されるべきであり、したがって、試験薬説明責任の目的のために保持することはない。
試験薬は、治験担当者若しくは試験施設職員の有資格者の監督下で、又は病院/診療所の薬剤師によって調合されるべきである。試験薬及び希釈剤は、この試験の参加者にのみ供給される。試験薬又は希釈剤は、他の参加者による使用のために再ラベル付けすることも、再割り当てすることもできない。治験担当者は、治験依頼者と合意した試験施設以外の施設から試験薬を分配することも、そのような施設に試験薬を保存することにも同意しない。
6.3. バイアスを最小化するための手段:無作為化及び盲検化
該当なし。
6.4. 試験薬の服薬遵守
試験薬は、主治験担当者又は必要なフォームに副治験担当者として列記されている有資格の医師による静脈内注入として投与される。各参加者の薬物供給は、試験全体を通して在庫管理され、説明責任が果たされる。試験薬の投与はまた、参加者の原文書にも記録されなければならない。
ウェブ自動応答システムを使用して、試験に登録された参加者ごとに中央供給型の試験治療キットを割り当てる。試験薬は、他のヒト試験、動物調査、又はin vitro検査を含む、このプロトコルに概説されるもの以外の目的で使用されてはならない。
静脈内試験薬は、有資格の試験施設職員の直接的な観察下で、臨床研究センターの制御された環境内で投与される。各投与の詳細は、eCRFに記録される(IV注入の日付、開始時間、及び停止時間、並びに注入された体積を含む)。試験薬の使用に関連する予防策及び禁止併用薬剤は、参加者と共にレビューされる。
試験の終了時、又は治験依頼者若しくはその被指名人の要求において、薬剤師は、全ての薬物供給の説明責任が果たされた後、治験依頼者及び施設の両方の同意に従って試験薬が施設で破壊されない限り、治験依頼者又はその被指名人に試験薬を返却しなければならない。
6.5. 併用療法
スクリーニング中、以前の療法のラインが、eCRFに記録されるべきである。試験全体を通して、治験担当者は、セクション6.5.2に列挙されるもの以外の十分な支持療法を提供するために必要と考えられる任意の併用薬剤又は治療を処方してもよい。試験薬とは異なる全ての薬剤(処方薬及び店頭での製品、並びに血液製剤の輸血を含む)は、ICFの署名で開始して、試験薬の最後の投与後30日まで、又は早期の場合は、後続の抗癌剤治療の開始まで、試験全体を通して記録されなければならない。これには、有害事象又は重篤な有害事象を治療又は支持するために使用される任意の併用療法及び任意の薬剤が含まれる。記録される情報には、薬物のタイプの説明、投薬レジメン、投与経路、治療の持続時間、及びその適応が含まれる。
有効な既存療法の修正は、参加者が試験に入る明示的な目的のために行われるべきではない。精巣摘出術なしのmCRPCを有する参加者は、試験治療全体を通してアンドロゲン除去療法又は治験担当者の選択のGnRH類似体に留まる。全ての薬剤は、eCRFの適切なセクションに文書化されるべきである。
6.5.1. 許可される治療
参加者は、試験中に十分な支持療法を受けることができる。以下は、試験中に使用され得る支持療法の例である。
● 臨床的に示されるように、施設基準に従って、かつ治験担当者が必要と考える、標準的な支持療法(制吐薬、止瀉薬、抗コリン作用薬、鎮痙薬、解熱剤、抗ヒスタミン剤、鎮痛剤、抗生物質、及び他の抗菌剤、ヒスタミン受容体[H2]アンタゴニスト又はプロトンポンプ阻害剤、並びに疾患又は有害事象の症状又は徴候を治療することを意図した他の薬剤)。
● 文書化された感染性合併症は、標準的な施設の慣習に従って、所与の感染状態のための治療を行う治験担当者によって適切であると考えられる、経口若しくはIV抗生物質又は他の抗感染剤で治療されるべきである。
● 成長因子支持、エリスロポエチン刺激剤、並びに赤血球及び血小板などの輸血は、現場の標準治療に従って、好中球減少症、貧血症、又は血小板減少症の症状又は徴候を治療することが許可され、これらの薬剤は、DLT期間中に予防治療として許容されない。
● 試験薬の前治療薬剤として使用されるコルチコステロイドは、表に記載されているように、及び1日1回の用量が10mg未満のプレドニゾン又は同等物である場合には、既存の疾患の治療のために、許可される。コルチコステロイドは、コントラストを撮像するための予防法として使用することができる。
● セクション6.1.2に記載された潜在的毒性を予防又は管理するための最良の支持療法。
● 骨病変に対する対症療法的な放射線療法。
● GnRHアゴニスト及びアンタゴニスト
● PSAレベルを低下させることができる薬剤(例えば、酢酸メゲストロール、エストロゲン、プロゲスチン、5α-還元酵素阻害剤[例えば、フィナステリド、デュタステリド])は、試験薬の第1の用量の前に開始される場合に許可される。
6.5.2. 禁止又は制限される療法
以下の薬剤は、試験中に禁止される。禁止療法が施されるいかなる事例も、治験依頼者に事前に(又はその後できるだけ早く)通知しなければならない。
● 任意の化学療法、抗癌免疫療法(試験薬以外)、実験的療法、又は内臓の病変に対する放射線療法。
● 発作閾値を低下させることが知られている薬剤。
● CYP450基質の血中濃度に影響を与える可能性がある、CYP450酵素活性に対するCRSの潜在的効果を最小限に抑えるために、CYP450基質の併用投与、特に、狭い治療指数を有するもの(例えば、ワルファリン)は、試験薬の第1の用量投与中に48時間にわたって控えるべきである。参加者は、全てのCYP450基質からの潜在的毒性についてモニタされるべきであり、併用薬物の用量は、必要に応じて調節されてもよい。
● 10日間超投与されるプレドニゾン又は同等物の1日1回10mgを超過するコルチコステロイドの慢性用量は、有害事象の管理のため以外では禁止される。
● プロトコルで指定された前治療薬剤として、又は有害事象(例えば、CRS)を治療するために使用される場合を除き、他の免疫抑制剤。
● 日常的な輸血は、試験薬投与日に与えられるべきではない。
● 生薬製品。
6.5.3. 前注入薬
各試験薬注入の前に、この試験における参加者は、以下の表30に記載されているように、前投薬を受けなければならない。急性毒性に起因して試験薬注入が4時間以上にわたって中断された場合には、表30の抗ヒスタミン剤及び解熱剤治療は、再び施されるべきである。
前注入薬は、SETによる決定に応じて、新たな安全性及び他のデータに基づいて変更されてもよい。
Figure 2022529970000036
略語:CRS=サイトカイン放出症候群、IRR=注入関連反応、IV=静脈内。
a.前注入薬は、第1の治療用量及びプライミング用量(投与された場合)までにのみ必要である。
6.5.4. レスキュー薬
CRSの臨床管理の推奨には、トシリズマブによる治療が含まれる。したがって、施設は、試験薬の投与前に施設においてトシリズマブが利用可能であることを確実にしなければならない。試験施設は、現場で調達され、治験依頼者から償還される、トシリズマブレスキュー薬を供給する。レスキュー薬投与の日付及び時間、並びにレスキュー薬の名称及び薬物投与法を記録しなければならない。
6.5.5. 後続の抗癌剤療法
試験薬の最後の用量後に施された後続の抗癌剤療法(開始及び終了日、並びに利用可能であれば、最良の効果を含む)は、eCRFに文書化されるべきである。
6.6. 用量調節
用量/投薬量の調節は、医療資格のある試験施設職員(直近の安全リスクが存在するようには見えない限り、主治験担当者又は副治験担当者)によって監督されるべきである。用量遅延及び用量減少は、毒性を管理するための主要な方法である。プライミング用量スケジュールは、セクション6.6.3に記載される特定の毒性のために実施され得る。毒性がセクション7.1の治療中止のための基準を満たすと、治療は中止される。
6.6.1. 用量遅延
用量が72時間超遅らされる場合、後続の用量は、週1回の用量の間に最小5日の休止期間及び週2回の用量の間に最小3日の休止期間を確保して遅らされるべきである。セクション6.1.2に概説された事象に対しては、治験依頼者と相談して、表31に示される用量漸減スケジュールに従うべきである。
● 治療中にDLT(表)が発生した場合には、臨床的に示されるように、治療を一時的に中止し、支持療法を施さなければならない。治療中の他のグレード3の臨床的に有意な毒性では、臨床的に示されるように、支持療法が施されるべきであり、治療は中止されてもよい。
● 毒性が28日以内にグレード≦1又はベースラインにまで低下すれば、治療は、中止の理由を満たす基準がある場合を除き(セクション7を参照)、治験依頼者と相談して再開することができる。
6.6.2. 用量減少
参加者の最善の利益であると判断される場合、試験薬は、セクション7の試験療法の中止のための基準が満たされていなければ、治験依頼者のメディカルモニタとの相談後、表に示されるように、同じ又はより低い用量で再開されてよい。表に示される、より低い用量レベルは、安全であると宣言された、以前に評価された用量レベルを表す。
Figure 2022529970000037
a 臨床的に適切であると判断された場合、治験依頼者のメディカルモニタと治験担当者との間の討議後に、より低い用量が選択されてもよい。より低い用量レベルは、評価され、安全であると宣言されるレベルである。
6.6.3. プライミング用量中の用量調節
● 毒性がプライミング用量投与中に発生する場合、
● セクション6.1.1の全ての再治療基準は、試験薬の次のプライミング又は治療用量の投与前に満たされなければならない。
● グレード2の毒性が72時間以内にベースライン又はグレード≦1まで低下すれば、参加者は、最後のプライミング用量レベルで試験治療を継続してよい。
● グレード≧3のCRSがプライミング用量中又はその後に発生するが、72時間以内にグレード≦1まで低下する場合、用量は、表に記載されるように低減される。用量再漸増は、治験依頼者との相談後に考慮されてよい。
● グレード4のCRSがプライミング用量中又はその後に発生する場合、試験治療を恒久的に中止する。
● 再治療は、他のグレード≧3の毒性のために、治験依頼者と相談して、許容されてもよい。
6.7. 試験終了後の試験薬
治験依頼者は、試験薬による治療から利益を受け続ける参加者が、CSRのデータカットオフ後に治療を継続することができることを確実にする。参加者はまた、試験薬を完了/中止した後に試験薬を利用可能になることはないこと、及び主治医のもとに戻って標準治療を決定すべきであることを指示される。
7. 試験薬の中止及び参加者の中止/離脱
7.1. 試験薬の中止
参加者は、試験薬を中止しなければならなくても、試験から自動的に離脱することはない。参加者の試験薬は、以下の場合に中止されなければならない。
● 参加者が、同時の(非プロトコルの)抗癌剤治療を受けた。
● 治験依頼者のメディカルモニタから書面による承認を取得した後に試験薬による治療を継続することが、参加者の最善の利益であると治験担当者によって判断されない限り、確認された疾患増悪。
● 試験薬の更なる投与を妨げる併発疾患
● 参加者が、試験薬による更なる治療を拒絶する
● 参加者が妊娠した
● 臨床的ベネフィットの証拠に基づく治験依頼者のメディカルモニタ及び治験担当者による別段の合意がない限り、試験薬の最後の用量の4週間以内に有害事象がグレード≦1に低下せず、その結果、試験薬が28日間を超えて連続的に中断された。
● 臨床的ベネフィットの証拠に基づく治験依頼者のメディカルモニタ及び治験担当者による別段の合意がない限り、2回の用量減少及び最良の支持療法にもかかわらず、グレード3又はグレード4の非血液毒性の再発生。
● 試験薬の2回の連続用量後に再発生するグレード3のIRR
● グレード4のIRR(セクション6.1.2.1)。
● CRS:
○ 7日以内にグレード≦1に改善しないグレード2又は3のCRS
○ 5日以内にグレード≦2に改善しないグレード3のCRS
○ 2つの別個のグレード3のCRS事象(再発性)
○ グレード4のCRS
● 再発性のグレード3又は任意のグレード4の神経毒性(セクション6.1.2.4)
● 臨床的ベネフィットの証拠に基づく治験依頼者のメディカルモニタ及び治験担当者による別段の合意がない限り、2回の用量減少及び最良の支持療法にもかかわらず、グレード4の血液毒性の再発生。
● 治療中止後、参加者は、EOT来院を完了させるべきである。治療中止の主な理由は、eCRFに文書化される。毒性以外の理由で離脱する参加者は、治験依頼者の裁量において交代させられる(セクション4.1.1を参照)。
7.2. 試験からの参加者の中止/離脱
参加者は、以下の理由のいずれかで試験から離脱する。
● フォローアップの喪失
● 同意の撤回
● 治験依頼者が試験を中止する
参加者が試験を完了する前に離脱する場合、離脱の理由はeCRF及び原文書に文書化される必要がある。離脱した参加者に割り当てられた試験薬は、別の参加者に割り当てることはできない。
参加者が試験薬を中止しても、EOT評価及び治療後フォローアップ評価は取得されるべきである。試験からの離脱の理由が同意の撤回である場合、追加の評価は許可されない。
7.2.1. 研究サンプルの使用の撤回
試験から離脱する参加者は、研究サンプルに関する以下の選択肢を有する。
● 採取されたサンプルは、研究サンプルに対する参加者の元のインフォームドコンセントに従って、保持され、使用される。
● 参加者は、研究サンプルに関する同意を撤回してもよく、その場合、サンプルは破棄され、更なる試験は行わない。サンプル破棄プロセスを開始するために、治験担当者は、治験依頼者試験施設担当者に、研究サンプルに関する同意の撤回を通知し、サンプル破棄を要求しなければならない。治験依頼者試験施設担当者は、次に、サンプル破棄を実行するためにバイオマーカー担当者に連絡する。要請があれば、治験担当者は、サンプルが破棄されたことの確認書を治験依頼者から受領する。
主要試験に残ったまま研究サンプルからの撤回
参加者は、試験に残ったまま、研究サンプルについての同意を撤回することができる。かかる場合、研究サンプルが破棄される。サンプル破壊プロセスは、上記のように進む。
将来の研究におけるサンプルの使用の撤回
参加者は、研究のためのサンプルの使用に関する同意を撤回することができる。かかる場合、サンプルは、臨床試験に必要とされなくなった後に破棄される。研究のためのサンプル保持の詳細は、ICFに提示される。
7.3. フォローアップの喪失
参加者のフォローアップが失われた場合、参加者に接触し、中止/離脱の理由を決定するために、試験施設の担当者によってあらゆる合理的な努力が行われなければならない。以下のようにとられた測定値は文書化されなければならない。セクション7.2「試験からの参加者の中止/離脱」を参照されたい。
8. 試験評価及び手順
概論
試験は、スクリーニング段階、治療段階、及び治療後フォローアップ段階の3つの期間に分けられる。活動のスケジュールは、この試験に適用可能な試験手順及び評価の頻度及びタイミングを要約する。
臨床検査を含む全ての計画された評価が完了しなければならず、結果は来院ごとにレビューされなければならない。同じ時点に複数の評価がスケジュールされる場合、手順は、ECG、バイタルサイン、採血の順序で実行されることが推奨される。治療の決定は、施設において実施された安全性評価及び疾患評価に基づく。臨床的に示される場合、より頻繁な試験来院が行われてもよく、臨床評価がより頻繁に繰り返されてもよい。
薬物動態評価及び薬力学評価のための採血は、指定の時間にできるだけ近く保たれる必要がある。必要に応じて、指定の時点よりも先に他の測定を行うことができる。評価の実際の日付及び時間は、原資料及びeCRF又は検査請求フォームに記録される。安全上の理由で、又はサンプルに関する技術的問題のために、反復サンプル又はスケジュール外のサンプル(すなわち、薬物動態、薬力学、バイオマーカー)を採取してもよい。治験担当者によって必要と判断されるか、又は現地規制によって必要とされる場合、追加の血清又は尿妊娠検査が実施されて、参加者の試験への参加中の任意の時点で妊娠がないことを確証することができる。各参加者について、スクリーニング段階中に約23mLの血液が採取される。治療段階中、ほとんどのサンプルは、治療の最初の8週間で採取される。約450mL(週1回スケジュール)~490mL(週2回スケジュール)の血液が、この時間中に採取される。プライミングスケジュールが実施される場合、追加の25mLが必要とされ得る。サンプルは、安全性、薬物動態、及び薬カ学パラメータとなるか、又はそれらの評価となる。
試験薬が末梢に注入される場合、血液サンプルは、試験薬が注入される腕とは反対側の静脈から、又は中心静脈ラインを介して採取されなければならない。試験薬が中心静脈ラインを介して注入される場合、血液サンプルは、いずれかの腕の静脈から採取されなければならない。
スクリーニング段階
全ての参加者は、任意の試験関連手順の実施前にICFに署名しなければならない。スクリーニング段階は、第1のスクリーニング評価が行われるとき、かつ試験薬の第1の用量前30日以内に開始する。スクリーニング中、評価が参加者の日常的な臨床評価の一部として行われ、特にこの試験のためではなかった場合、評価が試験要件を満たし、試験薬の第1の用量前の指定された時間枠内で実施されるならば、署名されたインフォームドコンセントが得られた後に繰り返される必要はない。放射線検査(例えば、MRI及びCTスキャン)などの検査の結果は、試験薬の第1の用量前6週間(42日)以内に実施されたならば、スクリーニング用として許容される。新鮮な腫瘍生検サンプル(転移性疾患のアクセス可能部位から)がスクリーニングにおいて必要とされる。しかしながら、試験薬の第1の用量まで6週間(42日)以内に得られたサンプルは、参加者がこの時間枠の間に活性抗癌剤療法を受けていないことを条件として許容される。これらのサンプルは、治験依頼者によって指定された中央検査室に送られる(詳細については検査室マニュアルを参照されたい)。
治療段階
治療段階は、1日目に試験薬の投与で開始し、EOT来院の完了まで継続する。治療段階中、生検サンプルは、選択されたコホートから採取される。安全性モニタリングを容易にするために、参加者は、セクション4.1に概説されるように入院する。試験薬注入中、バイタルサイン、体温、及び酸素飽和度の測定値が、定期的な間隔でモニタされる。参加者は、施設来院ごとに可能性のある毒性について評価される。参加者は、セクション7に概説される治療中止基準のいずれかが満たされるまで、試験薬を受け続けてよい。疾患増悪に起因して治療を中止する参加者に対しては、治療中止の前に、疾患増悪フォームに記入し、それを治験依頼者のメディカルモニタに送らなければならない。試験薬の中止時に、参加者はEOT来院を完了する。
治療終了
EOT来院は、フォローアップの喪失、死亡、又は試験参加の同意の撤回を除き、何らかの理由で試験薬を中止する者を含む、全ての参加者に必要とされる。EOT来院は、いずれが先に到来するにせよ、試験薬の最後の用量後30(+7)日以内、又は新しい抗癌剤療法の開始前に完了させる。参加者がEOT来院のために施設に戻ることができない場合、又はEOT来院が試験薬の最後の用量後の30日目より前に行われる場合は、参加者に連絡をとって、試験薬の最後の用量後30日まで、又は後続の抗癌剤療法の開始まで、有害事象及び併用薬剤を収集するべきである。
治療後の段階(フォローアップ)
治療後のフォローアップ段階は、EOT来院後に開始し、セクション7.2の試験からの離脱基準のうちの1つが満たされるまで継続する。疾患に特異的な奏効基準によって定義されるように、試験薬が疾患増悪の発生前に中止される場合、現場の標準治療に従って行われた疾患評価の結果は、eCRFに記録されるべきである。疾患増悪が確認されると、その続の疾患評価は不要である。
EOT来院後、参加者が、死亡しても、フォローアップを喪失しても、同意を撤回してもいない限り、生存状態、及び後続の抗癌剤療法が、試験終了まで12週に1回取得される。有害事象は、試験薬の最後の用量後30日まで収集される。治験担当者は、参加者又は指定代理人に再び連絡をとって、インフォームドコンセントフォームに記載されているように、参加者の安全性又は生存状態に関する長期のフォローアップ情報を取得してもよい。生存に関する情報が電話での連絡により得られる場合、原文書でのレビューを行うために通話内容を書き取った記録がなければならない。参加者が死亡した場合、死亡の日付及び原因が収集され、eCRFに文書化される(利用可能である場合)。現地法によって許可される場合、公共記録を使用して、死亡を文書化し、生存状態を取得してもよい。
サンプルの採取及び取り扱い
サンプル採取の正確な日付及び時間は、eCRF又は検査請求フォームに記録されなければならない。サンプルの採取、取り扱い、保管、及び輸送に関する指示は、提供される検査室マニュアル/治験実施施設の治験薬及び手順のマニュアル(SIPPM)に示される。サンプルの採取、取り扱い、保管、及び輸送は、検査室マニュアル/SIPPMに示されるように、指定された、また適用可能な場合には、制御された温度条件下で行われなければならない。全てのサンプル採取のタイミング及び頻度については「活動のスケジュール」を参照されたい。
試験固有の資料
治験担当者には以下の支給品が提供される。
● 試験プロトコル
● 治験薬概要書
● 試験施設SIPPM
● 検査室マニュアル
● IPPI及び補助支給品
● ECGマニュアル
● ECG装置
● ウェブ自動応答システムマニュアル
● 電子データ収集マニュアル
● サンプルICF
8.1. 有効性評価
疾患の評価は、以下に列挙される評価を含む。これらの評価の頻度タイミングは、活動のスケジュールに提供される。
特定及び報告された各病変を特性評価して疾患状態を文書化するために、ベースラインにおいて、及び試験期間全体を通して、同一の方法論(CTスキャン又はMRI又は99mTc骨スキャン)が疾患評価に使用されるべきである。超音波、フッ素18F-フルオロデオキシグルコース陽電子放射断層撮影(PET)、及び単純X線は、疾患応答を評価する許容可能な方法ではない。撮像は、試験薬投与における遅延に起因して遅らされるべきではない。
治療に対する応答は、施設における治験担当者によって評価され、結果は、eCRFに記録される。予定されていない評価は、臨床的に示されている場合に考慮される必要があり、結果はeCRFに収集される。画像は、治験依頼者によって要求された場合、中央判定を容易にするために、試験完了まで保持されるべきである。
有効性評価は、以下を含む。
mCRPCの癌のみ:PSA及び全身骨スキャン(99mTC)
mCRPC及びRCC:
● CTスキャン
● MRI
前立腺癌に対する治療応答の評価は、PCWG3基準に従って行われる(Sawicki LM et al.Eur J Nucl Med Mol Imaging.2017;44(1):102-107)。CT又はMRIによる、ベースライン時に測定可能な疾患を有するRCC参加者に対する治療応答の評価は、RECIST v1.1に従って行われる(Eisenhauer EA,Therasse P,Bogaerts J,et al.New response evaluation criteria in solid tumours:revised RECIST guideline(version 1.1).Eur J Cancer.2009;45(2):228-247)。
RECIST v1.1による客観的奏効を有する参加者は、4週間後に行われた確認スキャンを有しなければならない。参加者が試験薬治療中の任意の時間に部分奏効(PR)又は完全奏効(CR)で評価されても、4週以上後の確認がない場合、参加者の最良の効果は、参加者の次の直近の評価に応じて、安定/進行/評価不能として分類される。試験中、疾患応答は、既知の病変の場所のCT又はMRIスキャンを用いて評価される。
X線撮影の増悪の文書化なしで症候的な悪化が発生した場合、この判定を行うために使用された臨床所見は、eCRFにおいて「臨床疾患増悪」として指定され、原文書に文書化されなければならない。症候的な悪化に対する治療の中止後であっても、X線撮影の確認を介して客観的増悪を文書化するために、あらゆる努力が行われるべきである。臨床活性は、eCRFに治験担当者によって報告される。
疾患増悪が文書化された後、参加者は、EOT来院を有し、試験の治療後のフォローアップ段階に入る(セクション8)。疾患増悪前に試験治療を中止する参加者の場合、施設での標準治療による有効性評価が、EOT来院後、いずれが先に到来するにせよ、疾患増悪が文書化されるか、新しい抗癌剤療法が開始されるか、最大で52週間経過するか、又は試験が終了するまで継続し、結果がCRFに記録されなければならない。
8.1.1. 疾患応答及び疾患増悪の評価
8.1.1.1. 軟組織病変評価(CT又はMRI、身体的検査)
ベースライン疾患負荷は、頸部、胸部、腹部、及び骨盤、並びに必要に応じて他の領域のIVコントラストによるCTスキャンを使用して評価される。IVコントラスト剤に耐性のない参加者は、経口コントラストでCTスキャンが行われてもよく、IVコントラストを使用しない理由は、原文書に文書化される。試験中の後続の有効性評価には、ベースライン時に文書化された全ての疾患部位のX線撮影の撮像が含まれる。
磁気共鳴映像法は、CTを使用して適切に撮像することができない疾患の部位を評価するために使用されてよい(MRIが望ましい場合には、MRIは、ベースライン時及び後続の全ての応答評価時に疾患を評価するために使用される撮像技術でなければならない)。疾患の他の全ての部位について、MRI評価は、CTスキャンが禁忌でない限り、必要とされる頸部、胸部、腹部、及び骨盤のCTスキャンに取って代わるものではない。脳MRIは、臨床的に示される場合にのみ必要とされる。頭部のCTスキャンは、MRIが禁忌である場合に使用することができる。
触知可能/表在性病変を有する参加者について、身体的検査による臨床的疾患評価は、臨床的に示されるように、ベースライン時に及び試験薬治療全体を通して行われるべきである。照射又は切除された病変は、測定不能であると見なされ、疾患増悪についてのみモニタされる。
8.1.1.2. 前立腺癌における骨病変評価
前立腺癌を有する参加者の骨疾患は、以下のようにPCWG3に従って評価される(すなわち、奏効持続期間を評価する)。
● RECIST v1.1で定義されるように、CT又はMRIによって測定された軟組織病変の増悪。
● 骨スキャンによって観察され、PCWG3に基づく、骨病変による増悪。これらの基準下では、骨増悪は、6週以上後の後続のスキャンによって確認されなければならない。8週目のスキャン(最初の治療後スキャン)は、全ての後続のスキャンが増悪を決定するために比較される参照スキャンとして使用されるべきである。骨増悪は、以下のうちの1つとして定義される。
1. ベースラインスキャンと比較して8週目のスキャンが2つ以上の新しい骨病変を有することが観察される参加者は、6週以上後に実行された確認スキャンを有する必要があり、以下の2つのカテゴリのうちの1つに入り得る。
a. 確認スキャン(6週以上後に実行される)が8週目のスキャンと比較して2つ以上の新しい病変(すなわち、ベースラインスキャンと比較して、合計4個以上の新しい病変)を示す参加者は、8週目に骨スキャン増悪を有すると見なされる。
b. 確認スキャンが8週目のスキャンと比較して2つ以上の新しい病変を示さなかった参加者は、その時点において骨スキャン増悪を有するとは見なされない。8週目のスキャンは、後続のスキャンが比較される参照スキャンと見なされる。
2. 8週目のスキャンがベースラインスキャンと比較して2つ以上の新しい骨病変を有しない参加者については、週8回のスキャンと比較して2つ以上の新しい病変を示す第1のスキャン時点は、これらの新しい病変が6週以上後の後続のスキャンによって確認されると、骨スキャン増悪時点と見なされる。
8.1.1.3. 免疫応答評価又は軟組織病変
治療に対する応答は、治験担当者により、免疫RECIST v1.1(iRECIST)に従って評価されてよい(Seymour L.et al.Lancet Oncol.2017;18(3),e143-e152)。
8.1.2. 初期疾患増悪後の治療
RECIST v1.1又はPCWG3前立腺基準によると疾患増悪が存在するが、治療医師は、試験治療の継続が参加者の最善の利益であると強く確信している状況では、治験依頼者のメディカルモニタの書面による承認があれば、参加者は試験薬を継続することを許可されてよい。この状況では、疾患増悪が記録された後、放射線などの局所的な療法が、標準治療に従って行われてよい。
疾患増悪を定義したRECIST v1.1の特定の基準又はPCWG3前立腺基準が満たされたら、臨床的に必要である場合、反復有効性評価を次のプロトコルごとのスケジュールされた評価時点又はそれより早くに(ただし、前の評価から4週以降に)行って疾患増悪を確認すべきである。初期の放射線学的増悪にもかかわらず治療を継続するこの許容は、一部の参加者が免疫療法の開始後最初の数ヶ月において一過性の腫瘍フレアを有し得るが、後続の疾患応答を発生させることができるという観察結果を考慮している(Zimmerman Z,et al.Int Immunol.2015;27(1):31-37)。参加者は、以下の基準によって定義されるように臨床的に安定である場合、疾患増悪の確認を待っている間、治療医師の裁量において試験治療を継続すべきである。
● 疾患増悪を示す臨床徴候及び症状の不在
● 即時の治療的介入を必要としない臨床疾患増悪
● ECOGパフォーマンスステータスの悪化なし
● 緊急性のある代替的な医療的介入を必要とする重要な解剖学的部位における腫瘍増悪(例えば、脊髄圧迫)の不在
評価後、参加者が臨床的に不安定であると判断された場合、その参加者は、疾患増悪の確認のための反復撮像なしで試験治療から外されてもよい。
参加者は、試験治療を継続する前に、書面によるインフォームドコンセント(現地の規制又は要件に従う)を提出することが必要とされる。活動のスケジュールに記載されている全ての手順は、プロトコルごとに継続する。
8.2. 安全性評価
安全性は、SETセットによってモニタされる。試験評価チームに関する詳細は、セクション4.1.4に記載している。安全性は、有害事象、臨床検査結果、ECG、バイタルサイン測定値、身体的検査所見によって測定される(基本的な神経学的検査を含む。安全性モニタリングは、臨床的に示される場合、より頻繁に行われてもよく、有害事象は、治験担当者により、標準的な慣習に従って評価されるべきである。
有害事象
有害事象は、治験担当者によって報告及び追求される。有害事象は、NCI CTCAEバージョン5.0に従ってグレード分類される。試験中に発生するあらゆる臨床上関連する変化は、eCRFの有害事象のセクションに記録されなければならない。試験終了時に持続しているあらゆる臨床的に有意な毒性は、解消まで又は臨床上安定した状態に達するまで、治験担当者によって追跡される。
本試験は、「活動のスケジュール」に示される時点に従って、安全性及び忍容性の以下の評価を含む。
8.2.1. 身体的検査
一般身体的検査
スクリーニングの身体的検査は、少なくとも、参加者の身長、体重、一般的な外観、皮膚、耳、鼻、喉、肺、心臓、腹部、四肢、筋骨格系、リンパ系、及び神経系の検査を含む。その後、症状及び疾患を対象とする身体的検査が、後続の時点において行われる。異常は、eCRFの適切なセクションに記録される。体重も測定される。臨床的に有意なベースライン後の異常は、有害事象として記録されるべきである。
神経学的検査
基本的な神経学的検査が試験施設スタッフによって実施される。評価は、スクリーニング及び治療段階中に身体的検査と共に行われて、中枢神経系関連の毒性について参加者を評価する。ベースラインからの臨床的に有意な変化は、有害事象として記録される。
ECOGパフォーマンスステータス
ECOGパフォーマンスステータスの尺度は、参加者の日常生活活動の変化をグレード分類するために使用される。
8.2.2. バイタルサイン
体温、脈拍/心拍数、呼吸数、血圧、及び酸素飽和度が評価される。血圧及び脈拍/心拍数測定値は、完全に自動化された装置を用いて評価される。自動装置が利用できない場合にのみマニュアル法を用いた。血圧及び脈拍/心拍数測定の前に、気を散らすもの(例えば、テレビ、携帯電話)がない静かな環境で少なくとも5分間安静にする必要がある。
8.2.3. 心電図
自動的に心拍数を計算し、脈拍数、並びにRR、QRS、QT、及びQTc間隔を測定する、治験依頼者によって提供されたECG装置を使用して、3回の12リードECGが、資格のある施設職員によって行われる。3つの個々のECGトレーシングは、可能な限り近くに連続して、約5分間隔(±3分)で取得されるべきである。ECGを収集する間、参加者は、気を散らすもの(例えば、テレビ、携帯電話)がない静かな環境にいるべきである。参加者は、ECG収集前の少なくとも5分間は仰臥位で安静にするべきであり、ECGが行われる前の少なくとも10分間は話すこと又は腕若しくは脚を動かすことを控えるべきである。実際の検査時間は、得られた結果のばらつきを最小限に抑えるために、スクリーニングECG及び試験中ECGの両方の各時点に対して一貫性があるべきであることに留意することが重要である。
参加者の安全性を確保するために臨床的に適切な追加の心血管評価を行うべきである。臨床治験担当者は、即時管理のために、ECG形態を含む結果をレビューする。スクリーニング時に記録された異常は、病歴に含まれるべきである。ECGデータは、中央検査室に提出され、間隔測定値及び全体的な解釈について心臓病専門医によりレビューされる。
8.2.4. 心エコー図又はマルチゲート収集スキャン
心エコー図(ECHO)又はマルチゲート収集(MUGA)スキャン(ECHOが利用できない場合)は、ベースラインの心臓状態を確立するためにスクリーニング時に行われる。更なる評価は、臨床的に示される場合に行われる。
8.2.5. 臨床安全性検査室評価
臨床検査室サンプルが収集される。治験担当者は、検査結果をレビューし、このレビューを文書化し、試験の間に生じたあらゆる臨床的に関連する変化をeCRFの有害事象セクションに記録する。検査報告は、原文書と共に提出しなければならない。施設における検査室施設の検査室証明書又は認定及び正常範囲は、施設における参加者の登録前に治験依頼者に提出されなければならない。参加者が治験施設に関連付けられた検査室施設以外の検査室施設で実施された検査室評価を有する場合、治験担当者は、その施設のための検査室証明書又は認定及び正常範囲も治験依頼者に提出しなければならない。検査報告は、原文書と共に提出しなければならない。
8.3. 有害事象及び重大な有害事象
臨床試験からの安全性情報の適時の、正確な、かつ完全な報告及び分析は、参加者、治験担当者、及び治験依頼者の保護に欠かせないものであり、世界中の規制当局によって命じられている。治験依頼者は、安全性情報の適切な報告を確実にするために世界的な規制要件に準拠して標準業務手順(Standard Operating Procedures)を確立し、治験依頼者又はその関係者によって実施される全ての臨床試験は、これらの手順に従って実施される。
有害事象は、署名され、かつ日付を記入したインフォームドコンセントが取得された時間から、試験薬の最後の用量後30日まで、又は早期の場合は、後続の抗癌剤療法の開始まで、参加者によって(又は、適切な場合には、介護者、代理人、若しくは参加者の法的に許容される代理人によって)報告される(有害事象を報告するための期間についてセクション8.3.1を参照)。予想される事象は、これがFIH試験であるときは記録及び報告されない。この場合、全ての重篤な有害事象が、製品の安全性を理解する上で重要である。
8.3.1. 有害事象及び重大な有害事象情報を収集する期間及び頻度
全ての有害事象
重篤であるか非重篤であるかにかかわらず、全ての有害事象及び特別な報告状況は、署名され、かつ日付を記入したICFが取得された時間から、試験薬の最後の用量後30日まで、又は早期の場合は、後続の抗癌剤療法の開始まで報告され、また安全性のフォローアップのための連絡を含んでもよい。有害事象は、治験担当者によってフォローされ、NCI CTCAEバージョン5.0に従ってグレード分類される。試験薬中止につながるグレード3以上の毒性又は未解決の有害事象を有する参加者は、いずれが先に到来するにせよ、グレード≦1若しくはベースラインまで回復するか、事象が不可逆的であると判断されるか、試験終了になるか、又は最大で6ヶ月になるまで評価され続ける。
試験薬の最後の用量後30日以内に、治験担当者に自発的に報告されたものを含む重篤な有害事象は、重篤な有害事象フォームを使用して報告されなければならない。治験依頼者は、プロトコルに指定された時間枠を越えて治験担当者によって自発的に報告された全ての安全性情報を評価する。
重大な有害事象
試験中に発生する全ての重篤な有害事象は、試験施設職員により、その事象の認識後24時間以内に、適切な治験依頼者連絡担当者に報告されなければならない。重篤な有害事象に関する情報は、「重篤な有害事象フォーム」を使用して治験依頼者に送信され、これは、試験施設の医師によって全て記入及び署名され、24時間以内に治験依頼者に送信されなければならない。重篤な有害事象の初期及びフォローアップ報告は、ファクシミリ(ファックス)によって行われるべきである。
8.3.2. 有害事象及び重大な有害事象のフォローアップ
妊娠を含む有害事象は治験担当者によって追求される。
8.3.3. 重大な有害事象に対する規制報告要件
治験依頼者は、規制当局への有害事象の適切な報告の責任を負う。治験依頼者はまた、全ての予期せぬ重篤な副作用の疑い(SUSAR)を治験担当者(及び、必要な場合は治験施設の施設長)に報告する。治験担当者(又は必要な場合、治験依頼者)は、別途必要とされ、IEC/IRBによって文書化されない限り、プロトコルを承認した適切な独立倫理委員会/施設内審査委員会(IEC/IRB)にSUSARを報告しなければならない。
8.3.4. 妊娠
女性参加者又は男性参加者のパートナーにおける全ての妊娠の初期報告は、適切な妊娠通知フォームを使用して、試験施設職員により、その事象の認識から24時間以内に治験依頼者に報告されなければならない。異常な妊娠結果(例えば、自然流産、胎児死亡、死産、先天異常、子宮外妊娠)は重篤な有害事象と見なされ、重篤な有害事象フォームを使用して報告されなければならない。試験中に妊娠した任意の参加者は、試験薬による治療を中止しなければならない。妊娠の結果及び乳児のあらゆる出生後遺症の結果に関するフォローアップ情報が必要とされる。
8.3.5. 特定の関心のある有害事象
任意のグレードのサイトカイン放出症候群は、治験依頼者による標準的な安全性モニタリング活動の一部としてフォローされる。これらの事象は、事象の認識から24時間以内に重篤度に関係なく報告され(すなわち、重篤な及び非重篤な有害事象が報告され)、データ収集の強化が必要になる。CRS(任意のグレード)の事象は、回復するまで、又は更なる改善がなくなるまでフォローされる。
8.4. 過剰投与の治療
これはヒトにおいて試験薬を用いる初めての経験なので、MTDは不明であり、したがって、過剰投与を定義することはできない。意図される用量の25%超の投薬誤差が発生した場合、治験担当者又は治療医師は、以下を行うべきである。
● 治験依頼者のメディカルモニタに直ちに連絡する。
● 試験薬が全身的に(少なくとも5日間)検出することができなくなるまで、AE/SAE及び検査室異常について参加者を密接にモニタする。
● 薬物動態分析のための血清サンプルを可能な限り早く取得し、試験薬の最後の用量の日付から5連続日にわたって連続的に繰り返す。
● 処方された用量をeCRFに文書化する。
● 投与された実際の用量をeCRFに文書化する。
8.5. 薬物動態及び免疫原性
8.5.1. 評価
静脈血サンプルが、試験薬及び抗試験薬抗体の血清濃度の測定のために採取される。各血清サンプルは、3つのアリコートに分割される(薬物動態、抗試験薬抗体、及びバックアップ用にそれぞれ1つ)。試験薬の血清濃度及び試験薬に対する抗体の分析のために採取されたサンプルを更に用いて、免疫原性の更なる特性評価又は関連バイオマーカー(例えば、可溶性PSMAの存在の可能性)の評価のために、試験期間中又は期間後に生じる懸念に対処する安全性又は有効性の態様を評価することができる。これらの血清サンプルについては遺伝子解析は行われない。参加者の守秘義務は保たれる。生物学的サンプルの採取、取り扱い、及び輸送に関する追加の情報は、検査室マニュアルに見出すことができる。
8.5.2. 分析手順
薬物動態
治験依頼者により、又はその監督下で血清サンプルを分析し、検証されている特異的かつ感受性の高いイムノアッセイ法を用いて試験薬の濃度を決定する。
免疫原性
治験依頼者により、又は治験依頼者の監督下で検証済みのアッセイ法を用いて抗試験薬抗体の検出及び特性決定を行う。抗試験薬抗体を検出するために採取された全てのサンプルを試験薬の血清濃度についても評価することで抗体データの解釈が可能となる。
8.5.3. 薬物動態パラメータ及び評価
表19に概説される時点における試験薬の薬物動態の測定のために、血液サンプルが試験中に採取される。サンプルはまた、試験薬中止後の治療終了時の来院でも採取される。
血液サンプリングの正確な日付及び時間は、採取された全てのサンプルについて検査請求フォームに記録されなければならない。サンプル採取要件について検査室マニュアルを参照されたい。採取されたサンプルは、検査室マニュアルに示された温度の特定の制御された条件下で保管されなければならない。
必要に応じて、採取されたサンプルは、試験期間中若しくは試験期間後に生じる懸念に対処する、又は後に生じ得る薬物特性に関する疑問に対処する安全性又は有効性の態様を評価するために更に使用されてもよい。参加者の守秘義務は保たれる。生物学的サンプルの採取、取り扱い、及び輸送に関する追加の情報は、検査室マニュアルに見出すことができる。
薬物動態パラメータ
薬物動態パラメータが個人に対して推定され、記述統計量が各用量レベルに対して計算される。用量とのCmax及びAUCの相関もまた、探索されてよい。薬物動態パラメータには、Cmax、Tmax、AUC(t1-t2)、AUCtau、Cmin、及び集積比(RA)が含まれてよく、パラメータは、十分なデータが推定に利用可能である場合に計算される。加えて、薬物動態分析のために、探索的母集団薬物動態に基づくアプローチも適用されてよい。
8.5.4. 免疫原性評価(抗試験薬抗体)
抗試験薬抗体は、表19に従って、第1部及び第2部の両方の間に全ての参加者から採取された血清サンプルにおいて評価される。更に、血液サンプルはまた、試験薬を中止するか、又は試験から離脱する参加者から、最終来院時に採取される。
血清サンプルは、抗試験薬抗体の免疫原性を評価するために使用される。免疫原性分析のために採取されたサンプルは、試験期間中又は試験期間後に生じる懸念に対処する安全性又は有効性の態様を評価するために、更に使用されてもよい。
8.6. 薬力学
末梢血からのサイトカイン産生が、試験薬の前、及び治療後に分析される。分析は、免疫細胞の活性化を知らせることができるIL-1β、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10、IFN-γ、及びTNF-αを含み得るがこれらに限定されないサイトカインのレベルをモニタする。
試験薬による治療が、PSMA陽性腫瘍細胞のリダイレクトT細胞媒介性殺傷による抗腫瘍活性の増大、及び細胞毒性T細胞の活性化の増大をもたらすかどうかを判定するために、全血サンプル及び転移組織サンプルを分析して、フローサイトメトリー又はタイムオブフライトによるサイトメトリー(CyTOF)などの方法によって腫瘍及び免疫細胞集団を評価してもよい。転移性疾患のアクセス可能部位からの新鮮な組織腫瘍生検が採取され、腫瘍内のPSMA発現及び薬カ学マーカーについて検査される。
全血サンプルを分析して、フローサイトメトリーを使用して末梢免疫細胞集団を評価してもよい。フローサイトメトリーによるT細胞上のCD3受容体占有率(RO)の探索評価のために、静脈血サンプルが採取される。腫瘍組織サンプルの要件、調製、及び輸送に関する更なる詳細については、検査室マニュアルを参照されたい。
8.7. 遺伝学
薬理ゲノミクス又は薬理遺伝学は、この試験において評価されない。
8.8. バイオマーカー
この試験におけるバイオマーカー評価は、以下の目的に焦点を当てる:1)試験薬の潜在的寄与として、腫瘍及び血液におけるT細胞応答を示す免疫応答を評価する、2)試験薬投与に応答するサイトカイン産生を評価する、及び3)PSMA発現を含む治療に対する応答を予測する他のマーカーを評価する。
PSMAは、正常なヒト前立腺と比較して、特定の腫瘍に高レベルで頻繁に発現される。以前の試験は、mCRPCを有する患者においてPSMA発現の発現のばらつきを示している。更に、前立腺の神経内分泌腫瘍は、PSMA標的療法に対して耐性があることが示された。したがって、PSMA及び神経内分泌マーカーの発現は、IHCにより腫瘍から評価される。腫瘍におけるPSMA及び神経内分泌マーカーの治療前及び治療後の発現を評価して、治療効果を評価してもよい。腫瘍サンプルは、選択されたコホートから採取される。
ベースラインの腫瘍免疫状態は応答を予測するものであり得、したがって、T細胞活性化、枯渇、及びT細胞応答に影響を及ぼす他の免疫細胞は、ベースラインの腫瘍から、及び治療後に評価される。腫瘍及び末梢血における免疫細胞応答は、治療前及び治療後に評価される。T細胞活性化により放出されたサイトカインは、注入前及び注入後に採取された血清サンプルから評価される。更に、PBMCが採取され、保管される。潜在的な将来の用途には、試験薬とは異なる応答を示す免疫表現型サブ集団の同定が含まれてよい。
第2部の間、上記のバイオマーカーに加えて、循環腫瘍DNA及びCTCが採取され、T細胞クローン性の変化を探索し、応答/抵抗を予測するマーカーを同定し、末梢血及び腫瘍内の免疫プロファイルを評価するために使用される。
バイオマーカーは、腫瘍組織サンプル、全血、及び血清中で評価される。バイオマーカーサンプルは、新たな問題に対処するのに役立て、より安全で、より効果的で、かつ最終的に個別化された療法の開発を可能にするために使用されてもよい。これらのサンプルは、現地の規制及び出荷物流に問題のない施設でのみ採取され、分析は、中央検査室で行われる。
試験薬による治療前及び治療後の腫瘍微小環境の変化を理解するために、次世代型のRNA配列決定が、転移性腫瘍に由来したRNAサンプルに対して行われる。遺伝子及び遺伝子群は、治療結果と互いに関係付けられる。
分析の停止
バイオマーカー分析は、適切なバイオマーカーアッセイ及び臨床奏効率の利用能に依存する。バイオマーカー分析は、試験中若しくは試験終了時に、分析がバイオマーカー評価に対して十分な科学的価値を有しないことが明らかになる場合、又は適切なバイオマーカー評価を可能にするための十分なサンプル若しくは応答者が存在しない場合、延期されるか、又は実施されなくてよい。試験が早期に終了されるか、又は不十分な臨床的有効性を示す場合、バイオマーカー評価の完了は、データの正当化及び意図された有用性に基づく。
追加の採取
プロトコルに指定された分析を成功裏に完了するためにホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍サンプルから追加の材料を必要とすることが、試験完了前の任意の時点に決定される場合、治験依頼者は、追加の材料が既存のサンプルから回収されることを要求してよい。また、新たな科学的証拠に基づいて、治験依頼者は、遡及的分析のために試験完了中又は試験完了後に、以前に採取された腫瘍サンプルからの追加の材料を要求してもよい。この場合、そのような分析は、試験薬又は調査されている疾患に関する研究に特有であり得る。
8.9. 医療経済学又は医療リソース利用、及び医療経済学
該当なし。
9. 統計的考慮事項
公式な仮説検定は実施しない。データは、記述統計量を使用して要約される。連続変数は、必要に応じて観測結果数、平均値、標準偏差、変動係数、中央値、及び範囲を使用して要約される。カテゴリ値は、必要に応じて観測結果数及び百分率を使用して要約される。
9.1. 統計的仮説
該当なし。用量漸増は、以下に記載の統計モデルによってガイドされる。
9.1.1. 用量漸増をサポートする統計モデル
EWOC原理を用いた2パラメータBLRMによるDLTの確率は、推定MTD以下である、用量漸増及びRP2Dの推奨を助ける一次ガイドを意図する。
DLTの発生率、例えば、DLT評価期間中にDLTが発生したか、又はしないかは(セクション4.1.3)、用量漸増の一次変数である。DLT評価可能分析セットに関する適格参加者からのこれらの蓄積DLTデータを使用して、試験薬の用量とDLTとの間の関係をモデル化する。2パラメータBLRMは、用量dでのDLTの確率を計算するために使用される。
logit(π(d))=log(α)+βlog(d/d)α>0,β>0
式中、π(d)は、試験薬が用量=dの単一剤として与えられるときのDLTの確率であり、dは、DLT評価期間中の計画された用量であり、logit(π(d))=log[π(d)/{1-π(d)}]であり、dは基準用量である。
BLRMによるDLTの確率
各用量レベルについての真のDLT率の確率は、以下のように要約される。
[0%,20%) 過少投薬区間
[20%,33%) 標的毒性区間
[33%,100%] 過剰毒性区間
DLTの確率は、用量コホートの全ての参加者がDLT評価期間を完了すると、上記のように、BLRMによって計算される。次の用量コホートの最高用量レベルは、試験薬の全ての用量レベルでのDLTの確率を使用して推奨される。最高用量は、EWOC原理を満たす、すなわち、推定DLT率が過剰毒性区間内で25%未満の確率であること、及び推定DLT率が標的毒性区間内で最高確率を有することが必要となる。加えて、次のコホートの用量選択及びMTD又はRP2Dの決定は、セクション4.1.1に記載される規則に従う。
9.2. サンプルサイズの決定
用量漸増の間、1人以上の参加者は、加速滴定段階における用量レベルで登録され、3人以上の参加者は、標準滴定段階における用量レベルで登録され、少なくとも6人の参加者が安全かつ許容可能なRP2Dで登録される。登録された参加者の総数は、DLTの頻度、及びRP2Dがいつ決定されるかに依存する。最大サンプルサイズは、約70人の参加者である。
第2部は、RP2Dにおける試験薬の安全性及び予備臨床活性を評価することを目的とするので、妥当な精度で点推定を提供するために、約20(mCRPC及びRCC)のサンプルサイズが選択される。表は、関心のある事象タイプ(例えば、客観的奏効又は特定の関心のある有害事象)に対する選択された頻度での点推定及びその90%正確信頼区間(両側)を記載する。
Figure 2022529970000038
特に、関心のある事象の真の確率が15%以上である場合、この事象を経験している参加者が1人も観察されない確率は5%未満である。
9.3. 分析の集団
この試験の分析集団は、以下のように定義される。
● 全治療分析セット:このセットは、試験薬の少なくとも1つの用量を受けた参加者からなる。この分析セットは、一次と見なされ、全ての安全性及び有効性の要約に使用される。
● DLT評価可能分析セット:このセットは、「全治療分析」セットのサブセットである。セクション4.1.3に定義されるようにDLT観察期中に試験薬の計画された用量の少なくとも75%を受ける参加者は、この分析に含まれる。
● バイオマーカー分析セット:このセットは、試験薬の少なくとも1つの用量を受け、かつ少なくとも1つの治療前又は治療後のバイオマーカー測定値を有する全ての参加者からなる。
● 薬物動態分析セット:このセットは、試験薬の少なくとも1つの用量を受け、かつ試験薬の少なくとも1つの評価可能な濃度測定値を有する全ての参加者からなる。
9.4. 統計分析:
9.4.1. 有効性分析
エンドポイント定義
全体奏効率(ORR)は、疾患特異的奏効基準に従ってPR以上を有する参加者の割合として定義される。治療に対する応答は、治験担当者によって評価される。
奏効持続期間(DOR)は、疾患特異的奏効基準に定義されるように、奏効(PR以上)の最初の文書化日から、いずれが先に到来するにせよ、疾患増悪の証拠の最初の文書化日、又は任意の原因による死亡日まで計算される。増悪していない疾患と共に治療に対する応答(CR又はPR)を有し、かつ生存している参加者に対しては、データは、任意の後続の抗癌剤療法の開始前の最後の疾患評価で打ち切られる。
奏効までの期間(TTR)は、試験薬の第1の用量の日付から、最初に文書化された奏効の日付までの時間として定義される。
分析方法
全体奏効率を、その両側90%正確信頼区間と一緒に集計する。更に、各応答カテゴリ内の参加者の人数及び割合を集計する。奏効までの期間について、奏効を有する参加者の平均値、中央値、標準偏差、及び範囲を含む記述統計量を使用して結果を要約する。DORについては、記述的要約のためにKaplan-Meier法を使用する。
9.4.2. 安全性分析
全ての安全性分析を、「全治療分析セット」からのデータに対して行う。安全性評価のベースライン値は、第1の試験薬投与の開始に最も近いがそれより前の時間において収集された値として定義される。評価される安全性パラメータは、有害事象の発生率、重症度、及びタイプ、参加者の身体的検査所見における臨床的に有意な変化、バイタルサイン測定値、臨床検査結果並びに他の検査結果(例えばECG)である。試験薬への曝露、及び試験薬の中止の理由を集計する。有害事象を、器官別大分類、基本語、参加者が経験する最悪グレード、及び用量レベルによって要約する。
有害事象
治験責任医師によりeCRFで有害事象を特定するために使用される用語は、医薬規制用語集(MedDRA)を使用して逐語的にコード化される。試験薬により発現する有害事象は、試験薬期中に発生する有害事象であるか、又はベースラインから悪化した既往症の結果である有害事象である。報告された全ての有害事象を分析に含める。各有害事象について、特定の事象の少なくとも1回の発生があった参加者の割合を用量レベル/用量コホートごとに要約する。
有害事象のために死亡した、試験薬を中止した、又は重度若しくは重篤な有害事象を有した参加者の要約、リスト、データセット、又は参加者のナラティブが適宜与えられてもよい。DLTのリストは、DLT評価可能分析セットを使用する。DLTを列挙し、発生率を、プライマリー器官別大分類、基本語、有害事象の最悪グレード及びタイプ、並びに用量レベルによって要約する。
臨床検査
臨床検査の種類ごとに検査データをまとめる。検査データのまとめには、基準範囲を使用する。記述統計量を、ベースラインの各検査検体について、並びにスケジュールされた各時点における観測値及びベースラインからの変化について計算する。治療中の最悪毒性グレードを、NCI CTCAEバージョン5.0に従って提示する。ベースラインから、試験中に参加者が経験した最悪毒性グレードへの変化を、推移表として提供する。基準範囲外の任意の検査結果を有する参加者のリストを提供する。
心電図(Electrocardiogram、ECG)
QTcに対する試験薬の効果を、記述統計量及び頻度の集計によって評価する。薬物動態/薬力学モデルを探索して、曝露-反応関係を理解及び特性評価する。
バイタルサイン
体温、脈拍/心拍数、及び血圧(収縮期及び拡張期)の値並びにベースラインからの変化の記述統計量を、スケジュールされた各時点で要約する。臨床的に重要な限界値を超える値を有する参加者の割合を要約する。
9.4.3. その他の分析
薬物動態の分析
薬物動態分析を、「薬物動態分析セット」からのデータに対して行う。定量可能な最低濃度未満の全ての血清濃度又は消失したデータを、濃度データベース内でそのようにラベル付けする。より低い定量可能な濃度を下回る濃度を、要約統計量においてゼロとして扱う。参加者のデータでパラメータを適切に評価できない場合、その参加者を薬物動態パラメータ分析から除外する。分析から除外した全ての参加者及びサンプルを、CSRに明確に文書化する。
用量レベルごとの利用可能な血清濃度を有する全ての参加者についてデータを列挙する。参加者のデータで薬物動態を正確に評価できない場合(例えば、試験薬の不完全な投与、投薬時間及びサンプリング時間の情報の欠落、薬物動態パラメータの計算に対して不十分な濃度データ)、その参加者を薬物動態分析から除外する。
記述統計を使用して、試験薬の薬物動態パラメータの用量コホートによる各サンプリング時点における試験薬血清濃度を要約する。平均血清濃度時間プロファイルをプロットし、更に、個々の血清濃度時間プロファイルをプロットしてもよい。
適切なデータが利用可能である場合、非線形混合効果モデリングを使用して、試験薬の血清濃度-時間データの母集団薬物動態分析を行ってもよい。詳細を別個の母集団薬物動態分析計画に与え、この母集団薬物動態分析の結果を別個の報告書に提示する。
バイオマーカー分析
バイオマーカー分析は、適切な統計的方法(例えば、エンドポイントに応じて、パラメトリック若しくはノンパラメトリック、一変量若しくは多変量、分散分析、又は生存分析)を使用して、臨床共変量又は分子亜群により層別化する。事象までの時間のエンドポイントに対する応答とのベースラインの発現レベル又は発現レベルの変化の相関は、試験薬による治療後の減弱された遺伝子及び経路に加えて、応答性(又は抵抗性)亜群を同定する。
任意の薬力学測定値を列挙し、集計し、適当な場合は、プロットする。参加者は、コホート、用量スケジュール、又は臨床応答によってグループ化してもよい。これは、対照アームを有しない非盲検試験であるため、統計分析を行って、結果の理解を助ける。
バイオマーカー分析の結果は、別個の報告で提示され得る。計画された分析は、臨床的に有効なアッセイの利用能に基づいており、新たな試験データが有用な科学的情報を提供する可能性を示さなければ、延期してよい。
受容体占有率分析
記述統計量を使用して、試験薬のCD3 RO結果を要約する。試験薬の血清濃度とROとの関係、及びROと下流の薬力学効果との関係を探索する。任意のそのような分析の結果は、別個の報告書に提示してよい。
免疫原性の分析
抗試験薬抗体の発生率を、試験薬の少なくとも1つの用量を受け、かつ試験薬に対する抗体の検出のための適当なサンプルを有する全ての参加者(すなわち、試験薬の第1の用量後に少なくとも1つのサンプルを有する参加者について要約する。試験薬に対する抗体について陽性である参加者のリストを提供する。試験薬に対する抗体の最大力価を、試験薬に対する抗体について陽性である参加者に対して要約する。他の免疫原性分析を行って、生成される免疫応答を更に特性評価してもよい。
薬力学分析
カットオフ日より後に契約供給元又は治験依頼者により受領された薬力学サンプルは分析しないので、薬力学分析から除外する。選択されたマーカーにおけるベースライン値及びベースラインからの変化と、臨床応答と、の間の関連性を探索する。この分析の結果は、別個の報告書に提示する。
薬物動態/薬力学分析
薬物動態/薬力学モデルを探索して、重要な有効性、安全性、及び薬力学/バイオマーカーエンドポイントに対して曝露-反応関係を理解及び特性評価する。詳細を別個の分析計画に提供し、分析の結果は別個の報告書に要約してよい。

Claims (7)

  1. 患者における腎癌を治療する方法であって、前記方法は、安全量の抗PSMA×CD3抗体断片を前記患者に投与することを含み、前記抗PSMA×CD3抗体は、PSMAに特異的に結合する第1の結合ドメインと、CD3に特異的に結合する第2の結合ドメインと、を含み、前記第1の結合ドメインは、配列番号7の重鎖(HC)及び配列番号8の軽鎖(LC)を含み、前記第2の結合ドメインは、配列番号17の重鎖(HC)及び配列番号18の軽鎖(LC)を含む、方法。
  2. 前記患者が転移性腎癌(mRCC)を有する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記抗PSMA×CD3抗体が、1週目に約0.1μg/kgの用量で前記患者に静脈内(IV)投与される、請求項2に記載の方法。
  4. 前記抗PSMA×CD3抗体が、約0.1μg/kgの用量で開始して前記患者に週1回静脈内(IV)投与される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記抗PSMA×CD3抗体が、約0.1μg/kgの用量で開始して前記患者に週2回静脈内(IV)投与される、請求項3に記載の方法。
  6. 患者における腎癌の治療に使用するための配列番号7、8、17及び18の抗原結合タンパク質を含む医薬組成物であって、前記組成物は、1週目に約0.1μg/kgの初期用量で前記患者に投与される、医薬組成物。
  7. 前記患者が転移性腎癌(mRCC)を有する、請求項6に記載の組成物。
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