JP2022529132A - サリプロ粒子の製造 - Google Patents

サリプロ粒子の製造 Download PDF

Info

Publication number
JP2022529132A
JP2022529132A JP2021559753A JP2021559753A JP2022529132A JP 2022529132 A JP2022529132 A JP 2022529132A JP 2021559753 A JP2021559753 A JP 2021559753A JP 2021559753 A JP2021559753 A JP 2021559753A JP 2022529132 A JP2022529132 A JP 2022529132A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
saposin
protein
particles
hydrophobic
support
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021559753A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2020212423A5 (ja
Inventor
レーヴィング,ロビン
フラウエンフェルト,イェンス
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Salipro Biotech AB
Original Assignee
Salipro Biotech AB
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Salipro Biotech AB filed Critical Salipro Biotech AB
Publication of JP2022529132A publication Critical patent/JP2022529132A/ja
Publication of JPWO2020212423A5 publication Critical patent/JPWO2020212423A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • A61K9/1275Lipoproteins; Chylomicrons; Artificial HDL, LDL, VLDL, protein-free species thereof; Precursors thereof
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K47/00Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
    • A61K47/06Organic compounds, e.g. natural or synthetic hydrocarbons, polyolefins, mineral oil, petrolatum or ozokerite
    • A61K47/24Organic compounds, e.g. natural or synthetic hydrocarbons, polyolefins, mineral oil, petrolatum or ozokerite containing atoms other than carbon, hydrogen, oxygen, halogen, nitrogen or sulfur, e.g. cyclomethicone or phospholipids
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K47/00Medicinal preparations characterised by the non-active ingredients used, e.g. carriers or inert additives; Targeting or modifying agents chemically bound to the active ingredient
    • A61K47/30Macromolecular organic or inorganic compounds, e.g. inorganic polyphosphates
    • A61K47/42Proteins; Polypeptides; Degradation products thereof; Derivatives thereof, e.g. albumin, gelatin or zein
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K9/00Medicinal preparations characterised by special physical form
    • A61K9/10Dispersions; Emulsions
    • A61K9/127Liposomes
    • A61K9/1274Non-vesicle bilayer structures, e.g. liquid crystals, tubules, cubic phases, cochleates; Sponge phases

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Dispersion Chemistry (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Oil, Petroleum & Natural Gas (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Cosmetics (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)

Abstract

本発明は、サポシン様タンパク質と、脂質と、任意に疎水性作用物質とを含むサポシンリポタンパク質粒子を調製するための方法であって、前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記サポシン様タンパク質または前記疎水性作用物質が支持体に選択的に結合される、方法に関する。本発明の方法は、a.)疎水性作用物質および脂質を提供する工程と、b.1)/b.2)前記疎水性作用物質または前記サポシン様タンパク質を、2つの分子のいずれかを支持体に選択的に結合することができる支持体と接触させる工程と、c.1)/c.2)前記支持体上の前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合した粒子成分を前記サポシン様タンパク質または前記疎水性作用物質のいずれかである残りの粒子成分と接触させる工程と、d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と、を含む。

Description

本発明は、サポシン様タンパク質と、脂質と、任意に疎水性作用物質とを含む、サポシンリポタンパク質粒子を調製するための方法に関する。
膜はすべての生細胞を取り囲み、多くのウイルス(例えば、HIV)のエンベロープを形成する。生細胞では、細胞膜は、細胞の内容物を保存するための半透性バリアとして機能する。膜の構成成分、特に受容体および輸送体などの膜タンパク質は、細胞がその環境とどのように相互作用するかも決定し、制御する。シグナル伝達、分子の輸送、エネルギー代謝、細胞間接触の形成および細胞恒常性などの生物学的過程を含む後者の機能は、極めて重要であり、膜タンパク質に依存する。膜タンパク質は、全ORFの約30%によってコードされ(Wallinおよびvon Heijne,Protein Science 1998 Apr;7(4):1029-38)、したがって細胞のタンパク質の約4分の1を占める。ウイルスエンベロープの膜タンパク質は、宿主の細胞膜などの環境との相互作用を媒介するのにも役立ち、ウイルスのキャプシドおよびウイルスのゲノムが宿主細胞に侵入し、感染することを可能にする。
膜タンパク質は、上述の極めて重要な機能のために、ライフサイエンスにおける研究、特に創薬にとって非常に興味深い。実際、薬物の過半数、すなわち60%超が膜タンパク質を標的とする(Overington et al.,Nature Reviews Drug Discovery 5,993-996(2006年12月)。研究目的および臨床薬物開発のためには、したがって、膜タンパク質だけでなく他の疎水性作用物質(例えば、疎水性薬物)も、疎水性作用物質または技術の機能を損なうことなく最先端の技術プラットフォームに供することができることが重要である。ほとんどの膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質は、適切に機能するために疎水性環境(理想的には、それらの天然の膜環境を模倣する構造中に埋め込まれること)を必要とするので、これはパラドックスを提起する。しかしながら、最先端技術のプラットフォームにおいてしばしば行われるほとんどの生化学的アッセイは、これらのアッセイおよびプラットフォームが適切に機能するために必要とする水性系に基づく。したがって、本発明の目的は、同時に疎水性作用物質の天然の膜および脂質環境を保存または模倣しながら、疎水性作用物質を水性系に可溶性にするために、疎水性作用物質を調合するための改善されたより効率的な方法を提供することである。
これは、その最先端の設定において、適切に機能するために水性系への溶解性も通常必要とするハイスループットスクリーニング(HTS)において膜タンパク質またはその他の疎水性作用物質を使用することも可能にするであろう。分子生物学、コンピューティング、ロボット工学および検出器技術の進歩により、HTSは薬学、バイオテクノロジーおよび生命科学研究の「中核技術」になるまでに進歩を遂げた。生化学的試験の迅速かつ並行した実施を通じて、HTSは、特定の生体分子経路を調節する薬物、抗体、分子相互作用およびタンパク質の迅速な同定を可能にした。得られた結果は、さらなる薬物設計のための、また生体系における特定の生化学的過程の役割を理解するための出発点および重要な手がかりを提供する。
HTSの規模を小さくしたいという要望は、微少流体技術の進歩と相まって、小規模な設定でより迅速かつより低コストで分析を実行できる生化学的ラボオンチップアプローチの継続的な開発に結び付いた。このようなHTSまたはラボオンチップ用途において膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質も日常的に使用することができれば、大きな進歩がもたらされるであろう。このために、チップなどの表面上に試験作用物質を固定化することがしばしば必要とされる。したがって、本発明のさらなる目的は、同時に疎水性作用物質の天然の膜および脂質環境を保存または模倣しながら、特に疎水性作用物質を水性試験系と適合性にすることによって、支持体上に疎水性作用物質を固定する改善されたより効率的な方法を提供することである。
生化学的相互作用および反応(例えば、その対応する受容体へのリガンドの結合、その対応する抗原との抗体の相互作用または酵素による基質の代謝回転)を測定するための多くの最先端の仕組みは、固体支持体の表面に付着されたバイオセンサおよび分析物に依存している。周知の光学バイオセンサシステムは、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づいている。膜タンパク質は、様々な環境刺激を検出する上で中心的な役割を果たすので、バイオセンサシステムにおける表面に付着された分析物としての用途に関して、膜タンパク質を魅力的なものとする。しかしながら、これらのバイオセンサシステムも、ほとんどが水性環境に基づいているので、膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質を容易に使用することはできない。したがって、本発明のさらなる目的は、同時に疎水性作用物質の天然の膜および脂質環境を保存または模倣しながら、特に疎水性作用物質を水性試験系と適合性にすることによって、支持体上に疎水性作用物質を固定する改善されたより効率的な方法を提供することである。
要約すると、上記で概説したように、膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質の疎水的な性質は、水溶液中で通常行われる生化学的用途および研究にとって不都合である。ヒト血液を含むほとんどの生物学的系が親水性の水性環境を呈するので、膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質の疎水的な性質は、治療薬または診断薬としてのそれらの潜在的な投与にとっても不都合である。したがって、疎水性作用物質(膜タンパク質または疎水性化合物など)は、(i)膜タンパク質およびその他の疎水性作用物質をそれらの機能を損なうことなくアッセイおよび試験目的のために水溶液中で可溶性にすること、ならびに(ii)同じくそれらの所望のおよび/または天然の機能を損なうことなく、治療薬および診断薬としてこのような疎水性作用物質を投与することという、生命科学研究および製薬産業にとって2つの大きな課題をもたらす。
第2の課題、すなわち治療薬または診断薬としての疎水性作用物質(例えば、疎水性化合物および/またはタンパク質)の投与および送達は、主にそれらの限られた水溶性によって引き起こされる。薬物の場合、これによって、薬物は凝集しやすくなり、高い毒性、望ましくない免疫応答を引き起こし得るおよび/または薬物を不活性にし得る局所的に高度に濃縮された薬物粒子をもたらす(Allen and Cullis,SCIENCE,303(5665):1818-1822,MAR 19,2004)。
本発明の目的は、HTS、ラボオンチップおよびバイオセンサ用途などの最先端の生化学的アッセイ技術において、膜タンパク質または疎水性薬物などの疎水性作用物質をより容易に使用可能にすることの他、治療または診断用途においてこのような疎水性作用物質を投与するためのより優れた製造および調合方法を提供することでもある。この目的を達成するために、同時に疎水性作用物質の天然の膜および脂質環境を保存または模倣しながら、疎水性作用物質を可溶性粒子中に組み込む効率的で、コストおよび資源を節約する方法が非常に望ましい。
膜タンパク質は、タンパク質の周りにミセルを形成する界面活性剤中で最も頻繁に精製される。しかしながら、界面活性剤は、タンパク質の構造および活性に有害であることが非常に多い。さらに、界面活性剤は、下流の分析方法を妨害し得る。したがって、疎水性作用物質を可溶化する際に高濃度の界面活性剤の使用を回避することが当技術分野の目的である。不溶性の疎水性作用物質を水溶液中に可溶性にするという課題に対処する従来技術の方法は、とりわけナノディスク系を含む(Bayburt et al.,Archives of biochemistry and biophysics,450.2(2006):215-222およびDenisov et al.,Journal of the American Chemical Society,126.11(2004):3477-3487)。
欧州特許第1596828号明細書は、脂質二重層を二重ベルト状にしっかりと取り囲むアポリポタンパク質を含む円板形状の生物活性作用物質送達粒子を記載している。前記粒子の内部は、脂質二重層の疎水性領域によって形成される。これは、水性内部を含有する閉じた球状の二重層殻であるリポソームとは対照的である。欧州特許第1596828号明細書に記載されている円板形状の生物活性作用物質送達粒子は、約10nmのストークス直径を有し、アムホテリシンBまたはカンプトテシンなどの疎水性医薬品のための送達ビヒクルとしての使用が提案されている。
欧州特許第1345959号明細書は、約10nmの直径および約5.5nmの高さを有する同様のタイプのナノスケール粒子を記載している。粒子は円板形状であり、(i)人工の膜足場タンパク質、(ii)リン脂質二重層および(iii)少なくとも1つの疎水性または部分的に疎水性の膜タンパク質から構成される。
しかしながら、例えば、粒子の集合中に界面活性剤の除去が必要であるという点で、このナノディスク技術にはいくつかの欠点が存在する。さらに、アポリポタンパク質由来MSPの密な二重ベルト状適合によって与えられるサイズ均一性は、固定された最小粒径および従来技術の方法で得られる最大直径に関する制約を犠牲にするようである。
最近、脂質結合タンパク質の保存されたサポシン様タンパク質(SAPLIP)ファミリーを含む新規なナノ粒子技術が開発された(国際公開第2014/095576号パンフレット、国際公開第2015/036549号パンフレットおよび国際公開第2018/033647号パンフレット)。
SAPLIPファミリーは、4つのサポシン構築メンバーを基礎とする。これらは、脂質と結合および/または相互作用し、スフィンゴ脂質異化におけるいくつかのリソソーム酵素の必須補因子として機能する小さな(約80アミノ酸)タンパク質であるサポシンA~Dである(Bruhn,Biochem J.(2005)389,249-257およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。)。サポシンは、負に帯電した脂質および低pHを好むと記載されており、酸性pHで著しく増加した活性を示し、4.75のリソソーム内pHに至適pHを有する。サポシンA、B、CおよびDは、単一の大きな前駆体タンパク質であるプロサポシンからタンパク質分解的に加水分解される。サポシンA、B、CおよびDの完全なアミノ酸配列、ならびにプロサポシンのゲノム構成およびcDNA配列が報告されている(O’Brien et al.,(1988)Science 241,1098-1101;Furst et al.,(1992)Biochim Biophys Acta 1126:1-16)。
サポシンCは、酸性環境においてリン脂質含有小胞の膜融合を誘導することができ(Archives of Biochemistry and Biophysics 2003 Jul 1;415(1):43-53)、これは他のサポシンによっては示されない特徴である。Qi et al.,(2009)Clin Cancer Res 15(18):5840-5851は、水性の内部を含有し、約190nmの平均直径を有し、インビボで腫瘍標的化活性を示すサポシンC結合ジオレオイルホスファチジルセリンナノベシクル(SapC-DOPS)について報告している。SapC-DOPSでは、サポシンCまたはそれに由来するペプチドは、これが付着しているリポソームのホーミングペプチドとして作用する。次いで、サポシンCはリポソームを癌細胞に標的化し、細胞膜の外葉上にホスファチジルセリンを露出させる。著者らは、リソソーム酵素の細胞外漏出によって引き起こされる癌細胞周囲の独特の酸性微小環境が腫瘍組織をサポシンCの最適な標的にすると考えている。Qiらによれば、SapC-DOPSリポソームは、溶媒溶解された精製リン脂質をN(g)下で乾燥させ、精製されたサポシンCを含有する酸性緩衝液(pH5)中に乾燥リン脂質を分散させ、混合物を生理学的水溶液中に50倍希釈し、その後の超音波処理によってナノベシクルの集合を促進することによって調製される。
Popovic et al.,PNAS,Vol.109,No.8(2012)2908-2912は、サポシンA界面活性剤ディスクの構造について報告している。サポシンAは、可溶性および脂質/界面活性剤結合状態で存在する。脂質が存在しない場合、サポシンAは、閉じたモノマーのアポ立体構造をとる。対照的に、Popovicらによって報告されたサポシンA界面活性剤ディスク構造は、高度に秩序化された二重層様疎水性コア中に組織化された40個の内部結合界面活性剤分子を封入する開放立体構造で、サポシンAの2本の鎖を曝露する。
サポシンA界面活性剤ディスクの結晶化に加えて、Popovicらは、複数の工程を必要とする方法によるpH4.75での可溶性脂質-サポシンA複合体の調製も記載している。最初に、クロロホルムに溶解した精製脂質をN(g)下で乾燥させ、乾燥脂質をボルテックス混合によって酸性緩衝液(50mM酢酸ナトリウムpH4.8、150mM NaCl)に分散させ、懸濁液を10サイクルの凍結および融解に供し、ボルテックスミキサーで5分間混和し、混合物を200nmフィルターに通して押し出すことによって、大きな単層リポソーム小胞の均一な画分が調製される。このようにして調製された大きな単層人工リポソーム小胞を精製されたサポシンAと酸性緩衝液中で混合すると、可溶性脂質-サポシンA粒子が得られた。粒子は、3.2nmの平均流体力学(ストークス)半径の周りに狭いサイズ分布を示し、サポシンA鎖あたり約5:1の脂質分子を含有していた。粒子の正確なサイズは、脂質対タンパク質のモル比およびリポソームの組成によって穏やかに影響を受けるに過ぎなかった。著者らは、アニオン性リン脂質、コレステロールまたはスフィンゴ糖脂質がリポソーム混合物中に存在するかどうかにかかわらず、類似する3.2nmの粒子を観察した。すべての場合において、3.2nmのストークス半径のサイズ範囲内に単一のピークが観察され、種の分布が比較的狭いことを示している。したがって、この刊行物の技術は、4.75のpH値、粒子の上述のサイズに限定され、面倒な上流リポソーム調製工程を含む。
国際公開第2014/095576号パンフレットは、界面活性剤で可溶化され精製された脂質を使用して、精製され、界面活性剤で可溶化された疎水性カーゴ分子または精製され、界面活性剤で可溶化された膜タンパク質をサポシンリポタンパク質粒子中に組み込むことが可能であることを初めて示した。国際公開第2014/095576号パンフレットに記載されている方法は、液体環境中のサポシン様タンパク質を、可溶化された脂質および精製され、界面活性剤で可溶化された疎水性カーゴ分子または精製され、界面活性剤で可溶化された膜タンパク質の形態の疎水性作用物質と接触させることによって、サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にする。個々の成分はすべて遊離および可溶性形態で存在し、サポシンリポタンパク質粒子へのそれらの自己集合は、液体環境中にあるすべての関与する粒子成分の自由でランダムな運動に基づく。
国際公開第2015/036549号パンフレットは、国際公開第2014/095576号パンフレットに記載されている方法を、明確な精製されたHIV-1ウイルス様粒子(VLP)由来の可溶化された抗原分子(ウイルス膜タンパク質について示されている)の組み込みに拡張した。国際公開第2015/036549号パンフレットの実施例によれば、事前に精製されたVLPを溶解し、HIV-1膜スパイクタンパク質を界面活性剤で可溶化し、次いで、遊離のスパイクタンパク質を液体環境で遊離のサポシンAタンパク質と接触させる。このようにして、サポシン様タンパク質は、抗原分子がその中で集合するような環境を模倣する脂質を与える。ここでも、個々の成分はすべて遊離および可溶性形態で存在し、サポシンリポタンパク質粒子へのそれらの自己集合は、液体環境中にあるすべての関与する粒子成分の自由でランダムな運動に基づく。
国際公開第2018/033647号パンフレットは、細胞または細胞小器官の膜からサポシンリポタンパク質粒子のライブラリーを調製するための方法を記載する。可溶化され、精製された脂質およびタンパク質成分を使用しなければならない代わりに、国際公開第2018/033647号パンフレットは、サポシンリポタンパク質粒子を組み立てるための出発材料として未精製の細胞または細胞小器官膜を直接使用することを可能にする。このようにして、異なる膜脂質および/または膜タンパク質組成を有するサポシンリポタンパク質粒子の異種混合物を含むライブラリーが得られる。したがって、国際公開第2018/033647号パンフレットの方法によって得られたサポシンリポタンパク質粒子ライブラリーは、ライブラリーがそれから生成された実際の膜のマイクロドメインおよび成分のスナップショットを提示する。国際公開第2018/033647号パンフレットの方法は、液体環境中でサポシン様タンパク質と接触する未精製膜または未精製膜小胞を提供することによって、サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にする。ここでも、集合過程の間、個々の成分はすべて遊離(すなわち、支持体に結合していない)形態で存在し、サポシンリポタンパク質粒子へのそれらの自己集合は、液体環境中にあるすべての関与する粒子成分の自由でランダムな運動に基づく。
国際公開第2014/095576号パンフレット、国際公開第2015/036549号パンフレットおよび国際公開第2018/033647号パンフレットは、以前のナノディスク技術を超える多くの利点を有する、サポシンタンパク質に由来する新しいクラスのナノ粒子を提供することによって有意な改善を提示するが、サポシンリポタンパク質粒子を調製するための過程のさらなる改善がなお必要とされる。
サポシンリポタンパク質粒子を商業用途で使用するためには、製造コストを抑えて大量に提供する必要がある。したがって、効率、コストおよび資源の使用の観点から、サポシンリポタンパク質粒子を組み立てるための改善された方法が必要とされている。
薬学および生命科学研究における上記で説明した技術プラットフォームの重要性の高まりに照らせば、可溶性ナノ粒子中に組み込まれた疎水性作用物質がこれらのプラットフォームにおいて使用可能であることが重要である。しかしながら、これには、バイオセンサ用途の場合のように、ナノ粒子を支持体に固定化することがしばしば必要である。
サポシンリポタンパク質粒子を調製するための先行技術の方法は、ナノ粒子の効率的でコストおよび資源を節約する生産のためにさらに最適化することができる。特に、従来技術の方法は、粒子集合の間、液体環境中での出発材料の無制限の移動性を必要とし、これを前提とする。さらに、先行技術は、別の粒子集合反応で使用するために余剰粒子成分をリサイクルする容易な可能性を提供していない。
本発明の目的は、これらの欠点の1つまたはそれより多くに対処することである。
本発明の根底に存在する課題は、最も一般的には、サポシンリポタンパク質粒子を生成するための改善された、コストおよび資源を節約する方法の提供に見られる。
この課題は、請求項1に記載の方法によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されており、本明細書の以下で記載されている。
本発明は、サポシンリポタンパク質粒子を生成するための方法であって、前記生成されたサポシンリポタンパク質粒子は、
-サポシン様タンパク質と、
-脂質と、
-任意に、前記脂質とは異なる疎水性作用物質と、
を含み、
(I)前記方法は、以下の工程:
a)前記脂質および任意に前記疎水性作用物質を提供する工程と;
b.1)液体環境において前記サポシン様タンパク質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記サポシン様タンパク質を接触させる工程と;
c.1)前記支持体上での前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記支持体に結合したサポシン様タンパク質を前記脂質および任意に前記疎水性作用物質と接触させる工程と;
d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
を含み、または
(II)あるいは、前記方法は、以下の工程:
a)前記疎水性作用物質と前記脂質を提供する工程と;
b.2)前記疎水性作用物質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記疎水性作用物質を接触させる工程と;
c.2)前記支持体上の前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記支持体に結合した疎水性作用物質を前記サポシン様タンパク質と接触させる工程と;
d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
を含む、方法を提供する。
本発明による方法では、疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質のいずれかが支持体に選択的に結合され、支持体に結合された疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質をサポシンリポタンパク質粒子の残りの成分と接触させることによって、この支持体に結合された状態で粒子集合が起こり、これにより、支持体上でのサポシンリポタンパク質粒子の自己集合が可能になる。これは、個々の成分がすべて遊離(すなわち、支持体に結合していない)形態で存在し、サポシンリポタンパク質粒子へのそれらの自己集合が、液体環境中にあるすべての関与する粒子成分の自由でランダムな運動に基づく、集合過程に依存する従来技術の方法とは異なる。
本発明による方法は、サポシン様タンパク質または疎水性作用物質が支持体に選択的に結合されており、支持体に結合されたサポシンリポタンパク質粒子を直接生成する、または後の集合した粒子を溶出することができるという利点を有する。これは、形成されたサリプロ粒子の量を、予め結合された粒子成分の量、すなわち、結合されたサポシン様タンパク質または結合された疎水性作用物質のいずれかの量に制限する。その結果、未結合のままの任意の材料をリサイクルすることができる。リサイクルは、それぞれ、工程b.2)およびb.1)において支持体に結合されていないサポシン様タンパク質または疎水性作用物質に関するものであり得る。しかしながら、リサイクルは、工程c1)/c.2)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために支持体に結合された材料と接触されたが、粒子中に組み込まれなかった余剰粒子成分にも関係し得る。「未使用」成分のこのようなリサイクルは、コストおよび資源を節約する粒子集合を可能にする。
サポシンリポタンパク質粒子を支持体上で直接集合させることは、いずれにせよ、支持体に結合した状態で粒子を使用する必要がある場合に特に有利である。これは、バイオセンサ用途などの多くのチップベースの分析用途、特に表面プラズモン共鳴などの光学バイオセンサ用途に当てはまる。これらについては、以下でより詳細に説明する。従来、遊離のサポシンリポタンパク質粒子は、まず、先行技術の方法によって、調製されなければならず、次いで、遊離のサポシンリポタンパク質粒子を支持体上に固定化するために第2のカップリング工程を必要とした。本発明の方法では、支持体上で実際の粒子集合を実施することが可能であり、追加のコストおよび方法工程を節約する。
1つの粒子成分、すなわちサポシン様タンパク質または疎水性作用物質が支持体に結合している場合にもサリプロ粒子を集合させることができたことは驚くべきことであった。粒子成分の1つが支持体に結合すると、溶液中の他の粒子成分と接触する自由度が制限され、粒子成分との空間的相互作用の自由度も制限される。その結果、最終的には得られた粒子の全体的な収率にも影響を及ぼす、効率に関する粒子集合の障害が予想された。
サポシンリポタンパク質粒子の集合は、サポシンタンパク質の構造および(例えば、遊離脂質のランダムな動きから高度に秩序化されたナノ膜二重層構造への)脂質構成の著しい再編成を伴うと仮定しなければならないことに留意しなければならない。脂質を含まない閉じた形態から脂質が結合した開いた状態に切り替わるときに、サポシンタンパク質は立体構造の変化を経る可能性が高い。粒子の自己集合は、サポシン様タンパク質が、粒子中に組み込まれる脂質および疎水性作用物質を捕捉し、包含する工程を含むと考えられる。この自己集合が溶液中で起こることは公知であったが、主粒子成分(すなわち、サポシンタンパク質または疎水性作用物質)の1つが固体支持体上に固定化されているときに自己集合が同等に良好かつ迅速に機能することを観察することは全く予想外であった。
長期にわたって均一な品質および組成を維持する、支持体に結合したサリプロ粒子を製造する容易で、迅速かつ効率的な方法を提供する、本発明による方法を用いて、高品質の、支持体に結合したサリプロ粒子を取得できることを発見することは予想外であった。本発明は、原理的には、サリプロ粒子の集合およびカップリングを結び付けることによって支持体に結合したサリプロ粒子を取得するためのより効率的で「直接的な」方法を提供する。このようにして、疎水性作用物質は、1つの連続的な方法において、その天然の膜環境を模倣する安定な粒子中に可溶化することができ、同時に、ラボオンチップなどの用途またはSPRなどのバイオセンサ用途において直接使用するために支持体上に固定化することができる。
本発明の方法によって得られるサポシンリポタンパク質粒子は、直接、支持体に結合した形態であるだけで、原理的には、先行技術から公知のものと同じである。サポシンリポタンパク質粒子は、本明細書では「サリプロ粒子」とも呼ばれる。サポシンリポタンパク質粒子は、サポシン様タンパク質、疎水性作用物質および脂質を含むナノ粒子である。これらの構成成分およびその有利な実施形態は、以下でさらに定義される。サポシン様タンパク質は、脂質相互作用タンパク質の周知の保存されたSAPLIPファミリーに属する、またはその誘導体もしくは切断型である。
本発明者らの実際の実験は、サリプロ粒子のサイズが、組み込まれた疎水性作用物質および脂質の性質に合わせて、例えば、組み込まれた膜タンパク質のサイズに合わせて自己調整することを明らかにした。サリプロ粒子のサイズは、驚くほど柔軟である。また、本発明による方法において、サリプロ粒子は、組み込まれた疎水性作用物質の性質に合わせてそのサイズを調整することが観察された。これは、他の非サポシン由来の従来技術の粒子のサイズ制限よりも有利である。この柔軟性は、(多量体)膜タンパク質などの非常に大きな疎水性作用物質の組み込みも可能にする。これらのために、特に、本発明の方法は、疎水性作用物質がその天然環境中で、例えば、膜タンパク質と会合し、タンパク質の構造および/または機能を維持するために潜在的に必要とされる膜脂質またはその他の細胞構成成分中で再構成され得るという利点を有する。
驚くべきことに、サリプロ粒子は、ある程度の熱安定性を示し、支持体に結合されたときに、凍結乾燥および再水和にも適しているようであり、大きな品質劣化は観察できない。これにより、本発明の方法によって得られるサリプロ粒子は、可搬性および貯蔵安定性が問題となる用途に使用することが可能になる。本発明の方法を用いると、指定された仕様に従って予め作られ、保管され、その後最終利用者に出荷され得る、支持体に結合したサリプロ粒子を得ることが可能である。より長期間にわたる用途、例えば、同じチップを複数回再利用するラボオンチップ実験において、支持体に結合したサリプロ粒子を使用することも可能である。
本発明の方法を用いて得られた、支持体に結合したサリプロ粒子は、生理的pHにおいて様々な脂質、膜タンパク質および疎水性化合物を組み込むことができ、水性環境において可溶性であるが、支持体に結合されており、安定であるナノスケール複合体を生じることが証明された。これまでに試験された疎水性作用物質、特に多くの複合膜タンパク質について、支持体に結合したサリプロ粒子中への組み込みは、疎水性作用物質の生物学的機能に悪影響を及ぼさなかった。反対に、これらの多くでは、サリプロ粒子中への組み込みは、疎水性作用物質の天然の膜環境を効率的に模倣し、したがって、それらの生物学的機能にプラスの効果を有する。
本発明は、その生物学的機能の障害または喪失を伴わずに支持体上に直接固定化することが不可能である疎水性作用物質を、本発明の方法(I)に従って調製されたサリプロ粒子中に組み込むことによって間接的に固定化することができる、すなわち、サリプロ粒子は、疎水性作用物質を介してではなく、サポシン様タンパク質中の結合部分を介して支持体に結合しているという利点も提供する。これにより、疎水性作用物質は、なお支持体に効果的に結合されながら、非修飾の状態を保ち、および/または支持体と直接接触していない状態を保つことが可能になる。
上述のように、任意に支持体から溶出することもできる支持体に結合したサリプロ粒子の提供は、ラボオンチップまたはバイオセンサ(例えば、SPR)用途などのチップベースの用途において非常に有用なツールである。
疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質を支持体に選択的に結合させ、それらをそれぞれの他の必須粒子成分と接触させることによって、本発明の方法は、サリプロ粒子を集合させるための頑強な技術を提供するようであり、このサリプロ粒子は、広いpH範囲にわたって、特に生理的pHにおいて水溶液中で安定であり、Popovicらの先行技術の教示に従って合成的に調製されたリポソームから得られる3.2nmのサポシンA由来リポタンパク質粒子よりも大きな粒子を可能にする。
序論に記載されているように、治療法の開発における膜タンパク質の重要性のため、無細胞媒体中、好ましくは界面活性剤を含まない環境中で膜タンパク質を調べるための革新的な方法の発見が必要である。
本発明の方法によって得ることができるサリプロ粒子は、この要件を満たす。このサリプロ粒子は、一旦得られると、無細胞媒体および界面活性剤を含まない環境で安定であり、後にその上で使用され得る支持体に直接結合される。
本発明の特定の有利な実施形態において、サポシンリポタンパク質粒子中に組み込まれるべき疎水性作用物質および脂質は、サポシンリポタンパク質粒子中に組み込まれるべき疎水性作用物質および脂質を含む生体膜の形態で提供される。特に、ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の膜は、疎水性作用物質および脂質の供給源材料として本発明の方法において直接使用することができる。生体膜は、細胞、ウイルスまたは細胞小器官の形態で提供することができ、これらのすべは無処理であり得、両親媒性作用物質で処理することができ、または溶解することができる。両親媒性作用物質は、界面活性剤、両親媒性ペプチド、両親媒性ポリマー、その他の両親媒性化合物およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。本発明に従って使用することができる両親媒性ポリマーの例は、マレイン酸コポリマー、特にスチレン-マレイン酸コポリマー(SMA)またはジイソブチレン-マレイン酸コポリマー(DIBMA)である。両親媒性ペプチドおよび両親媒性ポリマーは、特殊な界面活性剤と見なすことができる。適切なSMAは、例えば、Postis,Vincent,et al.’’The use of SMALPs as a novel membrane protein scaffold for structure study by negative stain electron microscopy.’’ Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes 1848.2(2015):496-501に記載されている。DIBMAは、例えばanatraceからBMA101として市販されている。好ましくは、両親媒性作用物質は、本明細書で定義されるような界面活性剤である。好ましくは、細胞は真核細胞、特に非ヒト動物またはヒト細胞である。驚くべきことに、本発明に至る研究は、生体膜の精製が不要であることを示している。むしろ、本発明の方法を使用する場合、サポシンリポタンパク質粒子は、無処理の、両親媒性作用物質で処理された、または溶解された細胞、ウイルスまたは細胞小器官から直接調製することができる。
本発明の方法において出発材料として生体膜を使用することによって、疎水性作用物質は、その天然の膜環境と共にサリプロ粒子中に組み込むことができる。国際公開第2018/033647号パンフレットの方法と比較して、本発明の方法代替(II)は、関心対象の疎水性作用物質を含むサリプロ粒子のみが調製され、関心対象の疎水性作用物質を含む粒子をそこから再び単離する必要がある膜プロテオーム/リピドーム全体を表すサリプロ粒子の完全なライブラリーは調製されないという利点を有する。さらに、本発明の方法は、直接的で、単純化された連続的な「一工程方法」で支持体に結合した粒子を得ることができるという、国際公開第2018/033647号パンフレットを上回る利点を有しており、これは費用効果が高く、特に支持体に結合した形態でサリプロ粒子を使用するべき場合に望ましい。
本発明の方法代替(I)において生体膜を出発材料として使用することによって、異なる膜脂質および膜タンパク質組成を有するサポシンリポタンパク質粒子の異種混合物を含むサリプロ粒子のライブラリーを得ることができる。国際公開第2018/033647号パンフレットの方法と比較して、本発明の方法の本実施形態は、支持体に結合した粒子を連続的な「一工程方法」で得ることができるという利点を有しており、これは費用効果が高く、特に支持体に結合した形態でサリプロ粒子のライブラリーを使用するべき場合に望ましい。
本発明の方法によって得ることができるサリプロ粒子またはサリプロ粒子のライブラリーは、医学での使用、診断方法での使用、美容処置、またはワクチン接種製剤としての使用のためのものであり得る。さらに、本発明の方法によって得ることができる粒子は、診断、薬物開発、薬物スクリーニング、創薬、抗体開発、治療用生物製剤の開発、膜もしくは膜タンパク質精製、膜タンパク質発現、膜および/もしくは膜タンパク質の研究、膜および/もしくは膜タンパク質の単離、同定および/もしくは研究、またはリピドームもしくは膜プロテオームデータベースの作成のためのツールとして使用することができる。
本発明は、サポシンリポタンパク質粒子を生成するための方法であって、前記サポシンリポタンパク質粒子は、
-サポシン様タンパク質と、
-脂質と、
-任意に、前記脂質とは異なる疎水性作用物質と、
を含み、
(I)前記方法は、以下の工程:
a)前記脂質および任意に前記疎水性作用物質を提供する工程と;
b.1)液体環境において前記サポシン様タンパク質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記サポシン様タンパク質を接触させる工程と;
c.1)前記支持体上での前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記支持体に結合したサポシン様タンパク質を前記脂質および任意に前記疎水性作用物質と接触させる工程と;
d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
を含み、または
(II)あるいは、前記方法は、以下の工程:
a)前記疎水性作用物質と前記脂質を提供する工程と;
b.2)前記疎水性作用物質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記疎水性作用物質を接触させる工程と;
c.2)前記支持体上の前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記支持体に結合した疎水性作用物質を前記サポシン様タンパク質と接触させる工程と;
d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
を含む、方法を提供する。
本発明による方法は、特に、支持体に結合したサリプロ粒子の提供を可能にし、各サリプロ粒子は、サポシン様タンパク質と、脂質と、疎水性作用物質とを含む。脂質および疎水性作用物質の複合セットが、例えば、生体膜の形態で工程a)において提供される場合、サリプロ粒子のライブラリーが、本発明の方法代替(I)において生成される。このライブラリーは、サポシン様タンパク質と、疎水性作用物質(例えば、膜タンパク質)と、脂質とを含むサリプロ粒子を含むが、脂質とサポシン様タンパク質のみから構成されるサリプロ粒子も含み得る。
サポシンリポタンパク質粒子は、本明細書では「サリプロ粒子」とも呼ばれる。サポシンリポタンパク質粒子は、必須構成成分としてサポシン様タンパク質および脂質を含む。通常、サリプロ粒子は、1種類のサポシン様タンパク質を含む。典型的には、また好ましい実施形態によれば、本発明に従って調製されたサポシンリポタンパク質粒子は、サポシン様タンパク質と、脂質と、疎水性作用物質とを含む。
本発明のサリプロ粒子は、互いに同じであり得るまたは異なり得る複数の疎水性作用物質も含み得る。サリプロ粒子中の同じ疎水性作用物質の多量体の例は、多量体膜タンパク質または複数の疎水性化合物である。サリプロ粒子中の異なる疎水性作用物質の例は、膜タンパク質と疎水性化合物とを含むサリプロ粒子である。
本発明のサリプロ粒子は、互いに同じであり得るまたは異なり得る複数の脂質を含む。
本発明の方法において使用されるサポシン様タンパク質は、サポシン様タンパク質(SAPLIP)またはその誘導体もしくは切断型である。「サポシン様タンパク質」(SAPLIP)という用語は当技術分野で認知されており、脂質相互作用タンパク質の保存されたサポシン様タンパク質(SAPLIP)ファミリーのすべてのメンバーを含む。略語「SAPLIP」は、用語「サポシン様タンパク質」と同義的に使用される。SAPLIPファミリーは、高度に保存された分子内ジスルフィド結合によって安定化される保存されたアルファらせん三次元構造であるサポシンフォールドを特徴とする(Munford et al.(1995),Journal of Lipid Research,vol.36,no.8,1653-1663およびBruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257)。本発明によるサポシン様タンパク質(SAPLIP)ファミリーのメンバーの例は、Munford et al.(1995),Journal of Lipid Research,vol.36,no.8,1653-1663およびBruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257に記載されており、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
リガンドを含まない(すなわち、界面活性剤を含まない/脂質を含まない)「閉じた」状態では、SAPLIPは、モノマーのコンパクトな4ヘリックスバンドル型構造であるサポシンフォールドをとる。このフォールドは、ヒトサポシンA(Protein Data Bank(PDB)IDコード:2DOB,Ahn et al.(2006)Protein Sci.15:1849-1857)の閉じたアポ形態の構造、またはサポシンC(PDB IDコード:1M12;de Alba et al.(2003),Biochemistry 42,14729-14740)、NK-リシン(PDB IDコード:1NKL;Liepinsh et al.(1997),Nat.Struct.Biol.4,793-795)、アメーバポアA(PDB IDコード:1OF9)およびグラニュリシン(PDB IDコード:1L9L;Anderson et al.(2003)J.Mol.Biol.325,355-365)の構造によって例示され、これらはすべてほぼ同一であり、容易に重ね合わせることができる。
SAPLIPは、脂質または界面活性剤分子などのリガンドに結合すると立体構造の変化を起こす。リガンドに結合した「開いた」立体構造では、SAPLIPは、結合した脂質と接触する露出した疎水性表面を有するV字形またはブーメラン形状の立体構造をとる。開いた立体構造は、先行技術のサポシンA界面活性剤円板状構造(PDB IDコード:4DDJ;Popovic et al.,PNAS,Vol.109,No.8(2012)2908-2912)およびSDS界面活性剤ミセルに結合したサポシンCの構造(PDB IDコード:1SN6;Hawkins et al.(2005)J.Mol.Biol.346:1381-1392)によって例示される。
サリプロ粒子では、サポシン様タンパク質は、好ましくは両親媒性であり、その構造の一方の部分は多かれ少なかれ親水性であり、水性溶媒に面しており、他方の部分は多かれ少なかれ疎水性であり、脂質を含む粒子の疎水性中心に面している。サポシン様タンパク質は、好ましくは、ヘリックスの一方の面に主により疎水性の残基(A、C、F、G、I、L、M、V、WまたはYなど)を有し、ヘリックスの他方の面により極性のまたは電荷を有する残基(D、E、N、Q、S、T、H、KまたはRなど)を有する両親媒性?-ヘリックスを特徴とする。
本明細書で使用されるアミノ酸残基の略語は以下の通りである:A、Ala、アラニン;V、Val、バリン;L、Leu、ロイシン;I、lie、イソロイシン;P、Pro、プロリン;F、Phe、フェニルアラニン;W、Trp、トリプトファン;M、Met、メチオニン;G、Gly、グリシン;S、Ser、セリン;T、Thr、トレオニン;C、Cys、システイン;Y、Tyr、チロシン;N、Asn、アスパラギン;Q、Gln、グルタミン;D、Asp、アスパラギン酸;E、Glu、グルタミン酸;K、Lys、リジン;R、Arg、アルギニン;およびH、His、ヒスチジン。
先行技術のアポリポタンパク質由来ナノディスクとは対照的に、本発明のサポシン様タンパク質は、二重ベルト状の様式で脂質を包囲するのではなく、むしろ、サリプロ粒子は、所与のサリプロ粒子内の個々のサポシン様タンパク質間での直接的なタンパク質-タンパク質接触が実質的にない配向で配置された2またはそれより多くのほぼV字形状またはブーメラン形状のサポシン様タンパク質によって取り囲まれた、脂質を含むコアによって一体化されている。この理論に拘束されることを望まないが、サリプロ粒子中のサポシン様タンパク質と脂質のこの配置は、嵩高い疎水性作用物質または増加する量の脂質が本発明の方法において粒子中に組み込まれる場合に観察されるサイズの柔軟性を付与すると考えられる。
脂質と相互作用する能力ならびに上述の両親媒性の性質および三次元構造はSAPLIP間で高度に保存されているが、これらはアミノ酸配列レベルでは高度に多様であり、配列同一性は、相同性を規定するための25~30%の同一性という通常の閾値ゾーンを下回る(添付の図13Aおよび図13Bに再現されている、Bruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257の図4Aおよび図4B中の配列比較を参照)。
リポタンパク質サリプロ粒子において、サポシン様タンパク質は、主に構造タンパク質として働き、リポタンパク質サリプロ粒子の構造、例えば円板状構造のための足場を与える。この理由により、構造的特徴、特にSAPLIPに特徴的なサポシンフォールドは、単なる配列決定因子と比較して、本発明のサポシン様タンパク質を規定するためにより重要である。
本発明によるSAPLIPの例は、サポシンA、B、CまたはD(例えば、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)[配列番号1~4を参照]、エクウス・カバルス(Equus caballus)、ボス・タウルス(Bos taurus)、ムス・ムスキュルス(Mus musculus)、オリクトラガス・クニキュラス(Oryctolagus cuniculus)、ラッタス・ノルベジカス(Rattus norvegicus)またはゼノパス・ラエビス(Xenopus laevis)由来);サーファクタントタンパク質B(例えば、ホモ・サピエンス、カニス・ファミリアリス(Canis familiaris)、ムス・ムスキュルス、オリクトラガス・クニキュラス、オビス・アリエス(Ovis aries)またはラッタス・ノルベジカス由来);グラニュリシン(例えば、ホモ・サピエンス由来;配列番号5を参照);NK-リシン(例えば、スース・スクロファ(Sus scrofa)由来;配列番号6を参照);NK-リシンオルソログ(例えば、エクウス・カバルスまたはボス・タウルス由来);アメーバポア(例えば、エントアメーバ・ヒストリチカ(Entamoeba histolytica));アメーバポアオルソログ(例えば、エントアメーバ・ディスパー(Entamoeba dispar)またはエントアメーバ・インバデンス(Entamoeba invadens由来);アメーバポア様タンパク質(例えば、ファスキオラ・ヘパティカ(Fasciola hepatica)由来);ネグレリアポア(例えば、ネグレリア・フォーレリ(Naegleria fowleri)由来);クロルノリン(例えば、クロノルキス・シネンシス(Clonorchis sinensis)由来);プロサポシン(例えば、ホモ・サピエンス、エクウス・カバルス、ボス・タウルス、ムス・ムスキュルス、オリクトラガス・クニキュラス、ラッタス・ノルベジカスまたはゼノパス・ラエビス由来)およびMSAP(例えば、ホモ・サピエンス由来)である。
本発明に従って使用される特定のSAPLIPの配列は、添付の図13Aおよび図13Bに再現されたBruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257の図4Aおよび図4Bに示されており、その配列は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。本発明に従って使用される特定のSAPLIPの配列は、以下の配列表に示されている。
Figure 2022529132000002
Figure 2022529132000003
Figure 2022529132000004
本発明に従って使用されるSAPLIPは、マルチドメインタンパク質の一部としてサポシンフォールドを含むポリペプチドでもあり得る。これは、例えば、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ホモ・サピエンス、カエノラブディティス・エレガンス、シオナ・インテスティナリス(Ciona intestinalis)、アノフェレス属(Anopheles)、ドロソフィラ(Drosophila)、ムス・ムスキュルスまたはラッタス・ノルベジカス由来);GDSL(Gly-Asp-Ser-Leu)リパーゼ、例えば、アシルオキシヒドロラーゼ(ホモ・サピエンスまたはラッタス・ノルベジカス由来);コーチン(Coutin)(ディクチオステリウム・ディスコイデウム(Dictyostelium discoideum)由来);J3-クリスタリン(トリペダリア・シストフォラ(Tripedalia cystophora)由来)および植物アスパラギン酸プロテアーゼ(緑色植物亜界(Viridiplantae)由来)の場合である。本発明に従って使用されるさらなるSAPLIPは、バクテリオシンAS-48であり得る。バクテリオシンAS-48は抗菌活性を示し、脂質を結合することもでき、残りのSAPLIPファミリーメンバーと同じフォールドを有するが、ジスルフィド架橋を欠く。
以下では、本発明は、サポシン様タンパク質として、サポシンAまたはその誘導体もしくは切断型についてより詳細に記載され、サポシンAまたはその誘導体もしくは切断型は好ましい実施形態であるが、本発明はこれによって限定されるものではない。むしろ、本発明は、本発明のサポシン様タンパク質として、サポシン様タンパク質(SAPLIP)のファミリー全体に明確に及ぶ。SAPLIP間での高度な構造的および機能的保存のために、サポシン様タンパク質としてサポシンAを用いるある特定の実施形態の特徴および利点は、他のSAPLIPまたはその誘導体もしくは切断型をサポシン様タンパク質として使用する他の実施形態にも当てはまることが示された。
好ましい実施形態によれば、SAPLIPは、サポシンA、サポシンB、サポシンCまたはサポシンDである。一実施形態において、SAPLIPは、サポシンA、サポシンBまたはサポシンDである。サポシンA、サポシンB、サポシンCまたはサポシンDは、好ましくは、ホモ・サピエンス、エクウス・カバルス、ボス・タウルス、ムス・ムスキュルス、オリクトラガス・クニキュラス、ラッタス・ノルベジカスまたはゼノパス・ラエビス由来のサポシンA、サポシンB、サポシンCまたはサポシンDである。一実施形態において、SAPLIPはヒト起源(すなわち、ホモ・サピエンスSAPLIP)である。
好ましい実施形態において、SAPLIPは、サポシンA、好ましくはホモ・サピエンス、エクウス・カバルス、ボス・タウルス、ムス・ムスキュルス、オリクトラガス・クニキュラス、ラッタス・ノルベジカスまたはゼノパス・ラエビス由来のサポシンA、特に好ましいヒトサポシンAであり、そのアミノ酸配列は配列番号1として与えられる。LDAO-界面活性剤複合体としてのサポシンAの発現、精製および結晶化は、例えば、PNAS,vol.109,No.8(2012)2908-2912(Popovic et al.)に記載されている。
一実施形態によれば、サポシン様タンパク質は、SAPLIPの完全長配列を含む。別の実施形態において、サポシン様タンパク質は、SAPLIPの誘導体、特に、それぞれのSAPLIPの完全長配列に対して少なくとも20、25、30、40、50または60%、好ましくは少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドである。特に、サポシン様タンパク質は、少なくとも80%、85%、90%または95%のSAPLIPの完全長配列と同一性を有する配列を含むことができる。
SAPLIPの誘導体または切断型は、特許請求の範囲および本明細書中でさらに詳細に特定されている本発明の方法においてサリプロ粒子に自己集合することができる限り、本発明の方法において使用することができる。これは、過度の負担なしに、本明細書に記載されている実施例に従って当業者によって容易に試験することができる。
一実施形態において、サポシン様タンパク質は、請求項1に記載の方法においてサポシンリポタンパク質粒子を形成することができる、サポシンA、サポシンB、サポシンC、サポシンDまたはこれらの誘導体もしくは切断型である。
本明細書で使用される「配列同一性」という用語は、Henikoff S.and Henikoff JG.,P.N.A.S.USA 1992,89:10915-10919に記載されているBlosum62マトリックスなどのスコアリングマトリックスを使用して、配列の最適なアラインメントによって計算することができるタンパク質間の同一性の程度を指す。Blosum62類似性行列ならびにNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(J.Mol.Biol.1970,48:443-453)を使用する2つの配列の同一性パーセントおよび最適アライメントの計算は、プログラムの初期設定パラメータを使用してGenetics Computer Group(GCG、Madison、WI、USA)のGAPプログラムを使用して実行することができる。アミノ酸アラインメントの比較として、プログラムの初期設定を使用して、EMBLオンラインツール「EMBOSS Stretcher」(http://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_stretcher/)が使用される。
別の実施形態において、SAPLIPの誘導体は、それぞれのSAPLIPのアミノ酸配列中に1つまたはそれより多くのアミノ酸の欠失、付加、挿入および/または置換を有する配列を含むポリペプチドである。例えば、SAPLIP誘導体は、1~40個、好ましくは1~30個、特に1~20個または1~15個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されている特定のSAPLIPの配列を含むポリペプチドであり得る。
本明細書で使用される「欠失」という用語は、それぞれの出発配列から1、2、3、4、5またはそれより多くのアミノ酸残基を除去することを指す。
本明細書で使用される「挿入」または「付加」という用語は、それぞれの出発配列への1、2、3、4、5またはそれより多くのアミノ酸残基の挿入または付加を指す。
本明細書で使用される「置換」という用語は、ある特定の位置に位置するアミノ酸残基を異なる残基と交換することを指す。
好ましい実施形態において、SAPLIPの誘導体または切断型は、
i.配列番号1、2、3、4、5または6の完全長配列に対して少なくとも20%の配列同一性を有するタンパク質;特に、配列番号1、2、3、4、5または6の完全長配列に対して少なくとも20%の配列同一性を有するタンパク質、前記タンパク質は、請求項1に記載の方法において使用される場合に、脂質と共にリポタンパク質粒子へと自己集合することができる;ならびに
ii.1~40個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されている、配列番号1、2、3、4、5または6の配列を含むタンパク質;
から選択される。
本明細書に記載の配列同一性、例えば、サポシン様タンパク質の誘導体が配列番号1、2、3、4、5または6の完全長配列に対して少なくとも20%の配列同一性を有する実施形態は、請求項1に記載の方法において使用される場合、前記タンパク質が両親媒性であり、少なくとも1つのアルファヘリックスを形成し、脂質と共にリポタンパク質粒子へと自己集合することができるという特徴と組み合わせることができる。
さらなる実施形態によれば、サポシン様タンパク質は、配列番号1の1つまたはそれより多くの断片を含むサポシンAの誘導体である。好ましい断片は、サポシンAのヘリックスa1、a2、a3およびa4に対応し、ここで、ヘリックスa1は、以下のアミノ酸の連続ストレッチ:「SLPCDICKDVVTAAGDMLK」によって形成され;ヘリックスa2は、以下のアミノ酸の連続ストレッチ:「ATEEEILVYLEKTCDWL」によって形成され;ヘリックスa3は、以下のアミノ酸の連続ストレッチ:「PNMSASCKEIVDSYLPVILDIIKGEMS」によって形成され;ヘリックスa4は、以下のアミノ酸の連続ストレッチ:「PGEVCSAL」によって形成される。特定の実施形態によれば、サポシンAの誘導体は、サポシンAのヘリックスa1、a2、a3、a4およびそれらの組み合わせから選択される配列を含むポリペプチドであり、特に、ポリペプチドは、サポシンAのヘリックスa1、a2およびa3の配列を含む。サポシンAの断片、例えば、サポシンAのヘリックスa1、a2、a3、a4は、アミノ酸配列中に1つまたはそれより多くのアミノ酸の欠失、付加、挿入および/または置換を有し得る。
別の実施形態によれば、サポシン様タンパク質は、前の段落中でサポシンAに関して定義された断片の1つまたはそれより多くを含むサポシン様タンパク質の誘導体であり、断片は、それぞれのサポシン様タンパク質の対応する配列によって置き換えられる。
一実施形態によれば、SAPLIPの誘導体または切断型が本発明によるサポシン様タンパク質として使用される場合、前記誘導体または切断型は両親媒性であり、少なくとも1つのアルファヘリックスを形成するべきである。これに加えてまたはこれに代えて、前記誘導体または切断型は、本発明による方法において使用される場合、脂質と共にリポタンパク質粒子へと自己集合することが可能であるべきである。本明細書で使用される場合、「両親媒性」という用語は、親水性領域と疎水性領域の両方を有するポリペプチドまたは分子を指す。
好ましくは、SAPLIPの誘導体が使用される場合、SAPLIP構築メンバーのサポシンA中の6個のシステインに対応する6個のシステイン残基のうちの少なくとも3個、4個、5個または全部が存在すべきである。これに関して、Bruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257の図4Aおよび図4Bの配列比較におけるシステインの位置を参照されたい。Bruhnらの図4Aおよび図4Bの配列および配列アラインメントは、添付の図13Aおよび図13Bに再現されており、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
本発明によるSAPLIPは、ペプチド結合が代謝分解に対してより耐性のある構造によって置き換えられている、1つまたはそれより多くの非天然アミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣構造も含み得る。
本発明の方法の工程a)
本発明の方法の工程a)では、サリプロ粒子に組み込まれるべき脂質および任意に疎水性作用物質が提供される。重要なことに、さらなる脂質および/または疎水性作用物質も、本方法の他の工程において提供され得る。
「a」および「the」は、本明細書では一般に「少なくとも1つ」または「少なくとも1つの種類」の意味で使用される。例えば、少なくとも1つの疎水性作用物質が本発明のサリプロ粒子中に含まれ、それに対応して工程a)において提供される。
疎水性作用物質および/または脂質は、他の成分を含む組成物中に提供され得る。好ましくは、疎水性作用物質および/または脂質は、液体組成物中に提供される。一実施形態において、液体組成物は有機溶媒を含む。別の実施形態において、液体組成物は水性組成物である。別の実施形態において、液体組成物は、界面活性剤を含む水性組成物である。さらなる実施形態において、液体組成物は、疎水性作用物質および/または脂質が水相中に分散されている分散液である。
疎水性作用物質と脂質は、一緒にまたは別個の形態で提供され得る。疎水性作用物質と脂質が一緒に提供される場合、それらは生体膜または生体膜に由来する組成物の形態で提供され得る。例えば、脂質および任意に疎水性作用物質は、細胞膜、エンドソーム、エキソソーム、ウイルス様粒子またはリポソームの形態で提供することができる。異なる脂質および/または異なる疎水性作用物質が提供される場合、これらも同様に、一緒にまたは別個の形態で提供され得る。生体膜は、本発明の方法で使用される場合、無処理の、両親媒性作用物質で処理された、または溶解された細胞、ウイルスまたは細胞小器官の形態で提供されることができる。
疎水性作用物質は、粒子中にそれ以外に含まれる脂質とは異なる。これは、疎水性作用物質自体が脂質または修飾された脂質である場合には、粒子中に含まれる脂質の過半数(すなわち、粒子中に存在する脂質の総量に基づいて50mol%超)が疎水性作用物質を形成する脂質とは異なるべきであることを意味する。一実施形態において、疎水性作用物質は脂質ではなく、別の実施形態において、疎水性作用物質は脂質でもなく、界面活性剤でもない。
本明細書で使用される「疎水性作用物質」は、実質的に疎水性である任意の分子を意味する。「疎水性」は、専門用語であり、水と不混和性である、または水に対する親和性/水での溶解性の強い欠如を有する特性を指す。疎水性作用物質は、疎水性有機化合物および/または疎水性生体分子であり得る。疎水性作用物質は、治療的または生物学的に活性な疎水性作用物質、またはサリプロ粒子の円板形状を単に安定化する疎水性作用物質であり得る。疎水性作用物質は、水に完全に浸透しないもしくは水に可溶性のままでない、ならびに/または水相に存在する場合に凝集しおよび/もしくは疎水性環境中に分配される傾向がある作用物質、すなわち化合物および/または生体分子である。サリプロ粒子中に含まれることにより、疎水性作用物質は粒子の疎水性内部に効果的に可溶化される。それにより、疎水性作用物質は、例えば触媒活性またはリガンド結合などのその天然の機能性を維持することができる。
サリプロ粒子中に含まれる疎水性作用物質は、一般に、脂質二重層の疎水性部分と会合しまたはその中に一体化することができる少なくとも1つの疎水性(例えば、親油性)領域を含む。したがって、疎水性作用物質は、脂質二重層の疎水性部分と会合しまたはその中に一体化することができる疎水性(例えば、親油性)部分、モジュールまたは化合物が別の分子に結合されているキメラ分子でもあり得る。例えば、脂質または脂肪酸が結合された化合物、特に脂質または脂肪酸が結合された薬物を、本発明にしたがって疎水性作用物質として使用することができる。これらの場合、化合物または薬物自体は、必ずしも疎水性である必要はない。いくつかの実施形態において、疎水性作用物質の少なくとも一部は、粒子の内部の脂質分子の疎水性部分(例えば、脂肪酸アシル鎖)の間に挿入されるか、またはその中に貫入する。
一実施形態において、疎水性有機化合物および/または疎水性生体分子は、例えば、生物学的に活性な作用物質、薬物、薬物の活性成分、化粧品の活性成分、植物保護製品の活性成分、食事および/もしくは栄養補助食品、診断プローブ、造影剤、ラベルならびに/またはインジケータであり得る。
サリプロ粒子中に含まれ、それを必要とする患者に投与され得る疎水性薬物は、水性環境において低い溶解度を有する任意の薬物であり得る。水性環境における低い溶解度は、ある特定の条件下、例えば、ある特定のpHもしくは温度範囲で、または疎水性作用物質の濃度がある特定の閾値を超える場合にのみ明らかであり得る。
例えば、サリプロ粒子中に含まれ、それを必要とする患者に投与され得る薬物は、とりわけ、癌、炎症性または感染性症状、心血管疾患、神経障害およびリウマチの処置のためのものである。疎水性作用物質は、抗酸化剤、ビタミン、抗増殖作用物質、ホルモン、ステロイドまたは酵素であり得る。疎水性作用物質は、除草剤または殺真菌剤化合物であり得る。
サリプロ粒子中に組み込むことができる疎水性薬物のいくつかの具体例には、クルクミン、スルホンアミド、例えば、スルホンアミド、スルファメトキサゾールおよびスルファセタミド;トリメトプリム、特にスルファメトキサゾールとの併用;キノリン、例えば、ノルフロキサシンおよびシプロフロキサシン;ペニシリン、例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、アンピシリン、アモキシシリンおよびピペラシリン、セファロスポリン、例えば、セファロスポリンC、セファロチン、セフォキシチンおよびセフタジジム、他のベータラクタム抗生物質、例えば、イミペネムおよびアズトレオナムを含むベータラクタム化合物;ベータラクタマーゼ阻害剤、例えば、クラブラン酸;アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネオマイシン、カナマイシンおよびネチルマイシン;テトラサイクリン、例えば、クロルテトラサイクリンおよびドキシサイクリン;クロラムフェニコール;マクロライド、例えば、エリスロマイシン;または、その他の抗生物質、例えば、抗菌用の、いくつかの事例では抗真菌感染症用のクリンダマイシン、ポリミキシンおよびバシトラシン;ポリエン抗生物質、例えば、アンホテリシンB、ニスタチンおよびハマイシン;フルシトシン;イミダゾールまたはトリアゾール、例えば、ケトコナゾール、ミコナゾール、イトラコナゾールおよびフルコナゾール;アスペルギルス症、カンジダ症、ヒストプラズマ症などの抗真菌性疾患用のグリセオフルビン;抗ウイルス性疾患用のジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファ-2aまたはインターフェロンアルファ-2b)およびリバビリン;アスピリン、フェニルブタゾン、フェナセチン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、スリンダク、ピロキシカム、ジクロフェナク;関節炎などの炎症性疾患用の金およびステロイド系抗炎症剤;ACE阻害剤、例えば、カプトプリル、エナラプリルおよびリシノプリル;有機ニトラート、例えば、亜硝酸アミル、ニトログリセリンおよび二硝酸イソソルビド;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ジルチアゼム、ニフェジピンおよびベラパミル;ベータアドレナリン拮抗薬、例えば、心血管疾患用のプロプラノロール;利尿薬、例えば、チアジド;例えば、ベンゾチアジアジンまたはループ利尿薬、例えば、フロセミド;交感神経遮断薬、例えば、メチルドパ、クロニジン、グナベンズ、グアネチジンおよびレセルピン;血管拡張剤、例えば、ヒドララジンおよびミノキシジル;カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ベラパミル;ACE阻害剤、例えば、高血圧症の処置用のカプトプリル;心不整脈の処置用のキニジン、プロカインアミド、リドカイン、エンカイニド、プロプラノロール、エスモロール、ブレチリウムおよびジルチアゼム;低リポタンパク血症の処置用のロボスタチン、リピトール、クロフィブラート、コレストリアミン、プロブコールおよびニコチン酸;アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびイダンビシン;共有結合DNA結合化合物、共有結合DNA結合化合物、ならびに白金化合物、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン;葉酸拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよびトリメトレキサート;代謝拮抗剤およびピリミジン拮抗薬、例えば、フルオロウラシル、5-フルオロウラシルおよびフルオロデオキシウリジン;代謝拮抗剤ならびにプリン拮抗薬、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンおよびチオグアニン;代謝拮抗剤ならびに糖修飾類似体、例えば、シタラビンおよびフルダラビン;代謝拮抗剤およびリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えば、ヒドロキシ尿素;共有結合DNA結合化合物ならびにナイトロジェンマスタード化合物、例えば、シクロホスファミドおよびイホスファミド;共有結合DNA結合化合物およびアルカンスルホナート、例えば、ブスルファン;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン;共有結合DNA結合化合物およびメチル化剤、例えば、プロカルバジン;共有結合DNA結合化合物およびアジリジン、例えば、マイトマイシン;非共有結合DNA結合化合物;非共有結合DNA結合化合物、例えば、ミトキサントロンおよびブレオマイシン;クロマチン機能の阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エトポシド、テニポシド、カンプトテシンおよびトポテカン;クロマチン機能の阻害剤ならびに微小管阻害剤、例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンジシンおよびパクリタキセル、タキソテールまたは他のタキサンを含むビンカアルカロイド;内分泌機能に影響を与える化合物、例えば、プレドニゾン、プレドニゾロン、タモキシフェン、リュープロリド、エチニルエストラジオール、ハーセプチンなどの抗体;遺伝子、例えば、p-53遺伝子、p16遺伝子、MIT遺伝子およびE-カドヘリン遺伝子;サイトカイン、例えば、インターフェロン、特にIL-I、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8およびIL-12、腫瘍壊死因子、例えば、腫瘍壊死因子-アルファおよび腫瘍壊死因子-ベータ、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ1、インターフェロン-ベータ2およびインターフェロン-ガンマ;癌の処置用のオールトランスレチノイン酸または別のレチノイド;免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、免疫グロブリン、スルファサジン(sulfasazine)、メトキサレン、タリドイミド(thalidoimide);糖尿病用のインスリンおよびグルカゴン;骨粗鬆症、高カルシウム血症およびパジェット病の処置用のカルシトニンおよびアレンドロン酸ナトリウム;モルヒネおよび関連するオピオイド;メペリジンまたは同類物;メタドンまたは同類物;オピオイド拮抗薬、例えば、ナロルフィン;中枢活性鎮咳薬、例えば、デクストロメトロファン;疼痛管理用のテトラヒドロカンナビノールまたはマリノール、リドカインおよびブピビカイン(bupivicaine);クロルプロマジン、プロクロルペラジン;カンナビノイド、例えば、テトラヒドロカンナビノール、ブチロフェノン、例えば、ドロペリドール;ベンズアミド、例えば、悪心および嘔吐の処置用のメトクロプラミド;抗凝固薬、抗血栓薬または抗血小板薬としてのヘパリン、クマリン、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);炎症性腸疾患の処置用のヘパリン、スルファサラジン、ニコチンおよびステロイドおよび腫瘍壊死因子-α;喫煙中毒の処置用のニコチン;ホルモン療法用の成長ホルモン、黄体ホルモン(luetinizing hormone)、コルチコトロピンおよびソマトトロピン;ならびに一般的なアナフィラキシー用のアドレナリンが含まれる。
当業者は、本明細書および国際公開第2014/095576号パンフレットの実施例、例えば実施例9に記載されている方法および実施例によって、ある特定の化合物がサリプロ粒子中によく組み込まれるかどうかを実験的に容易に決定することができる。分光法によって検出できない化合物については、当業者は、ある特定の化合物がサリプロ粒子中によく組み込まれるかどうかを決定するために、例えば、LC-MSまたは薄層クロマトグラフィーに依存することができる。
サリプロ粒子中に疎水性作用物質を含める利点は、疎水性作用物質が粒子の安定な構造中に効果的に可溶化され、それによって、例えば体液および組織の大部分に存在する水性環境において疎水性作用物質のための貯蔵および/または送達ビヒクルとして機能することができることである。界面活性剤または有機溶媒を介した古典的な可溶化手段と比較して、サリプロ粒子は、疎水性作用物質は粒子の疎水性の内側に効果的に可溶化されているのに、外側からは親水性であるという利点をもたらし、これにより、疎水性作用物質は、例えば触媒活性またはリガンド結合などのその天然の機能性を維持することができる。さらに、ほとんどの界面活性剤および有機溶媒とは対照的に、サリプロ粒子は生体適合性であるようである。
疎水性有機化合物に加えて、リポタンパク質サリプロ粒子は、疎水性生体分子、例えば疎水性部分を含むタンパク質を安定に組み込むことができることも証明されている。好ましい実施形態によれば、疎水性作用物質は、疎水性タンパク質、特に膜タンパク質である。膜タンパク質は、内在性膜貫通タンパク質、内在性単地性膜タンパク質、表在性膜タンパク質、脂質に結合した状態の両指向性タンパク質、脂質アンカー型タンパク質ならびに融合した疎水性および/または膜貫通ドメインを有するキメラタンパク質から選択することができる。本明細書で使用される「膜タンパク質」という用語は、サポシン様タンパク質を包含しない。
内在性膜タンパク質は、脂質二重層に恒常的に結合され、通常、膜から取り外すために界面活性剤または無極性溶媒を必要とする膜タンパク質である。膜貫通タンパク質は、少なくとも1回膜を貫通する内在性膜タンパク質である。サリプロ粒子中に組み込まれ得る膜貫通タンパク質の例は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、輸送体、例えば、単輸送体、共輸送体もしくは逆輸送体、チャネル、例えば、イオンチャネルまたは酵素である。
内在性単地性膜タンパク質は、片側からのみ膜に恒常的に付着し、膜を貫通しない。このクラスには、アルファヘリックスの膜貫通アンカーを介して膜に繋留される膜タンパク質が含まれる。例としては、シトクロムP450オキシダーゼおよびグリコホリンAが挙げられる。
表在性膜タンパク質は、脂質二重層またはその中に組み込まれた内在性膜タンパク質と一時的または間接的に会合するに過ぎない。表在性膜タンパク質は、通常、上昇したpHまたは高い塩濃度を有する極性試薬での処理後に膜から解離する。表在性膜タンパク質の例としては、ホスホリパーゼA2またはC、リポキシゲナーゼおよびシトクロムcが挙げられる。
脂質アンカー型タンパク質は、脂質付加された、特にプレニル化されたまたはGPIアンカーが付加されたアミノ酸残基を介して脂質二重層に結合する。例としては、細菌のリポタンパク質、Gタンパク質およびある特定のキナーゼが挙げられる。
両指向性タンパク質は、脂質を含まない水溶性状態および脂質結合状態という少なくとも2つの立体構造状態で存在するタンパク質である。脂質と会合すると、両指向性タンパク質は立体構造の変化を受け、可逆的または不可逆的に膜に結合できるようになる。両指向性タンパク質の例は、膜孔形成毒素および抗菌ペプチドである。
本発明の方法において使用するための疎水性作用物質は、様々な手段によって得ることができる。本発明の方法において使用するための疎水性作用物質は、合成または天然起源のものであり得る。本発明の方法において使用するための疎水性作用物質は、工程a)において、精製された形態で、または未だ未精製の形態で、例えば未精製の膜または未精製の反応混合物の形態で提供され得る。これは、疎水性作用物質に対する付随的精製工程として工程b.2)を使用することができる、本発明の方法の代替(II)が使用される場合に特に当てはまる。これは、例えば、工程b.2)とc.2)の間に洗浄工程を実施することによって達成することができる。ここで使用される洗浄工程は、疎水性作用物質が工程a)において提供され、および/または工程b.2)において支持体と接触された未結合組成物の一部の除去に限定することができる。
疎水性作用物質が疎水性生体分子である場合、疎水性作用物質は天然源からの精製によって得ることができる。精製戦略は当業者に公知であり、当業者は、達成されるべき精製目標に応じて適切な精製方法を選択することができる。疎水性生体分子の性質は精製方法を決定し、精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーもしくはイオン交換クロマトグラフィーにおけるような電荷もしくは疎水性に基づく分離、および/またはアフィニティークロマトグラフィーを含み得る。
本明細書で使用される「精製された」という用語は、当技術分野で認知されており、特定の純度を表すものではない。「精製された」とは、生物学的分子が精製方法に供されたことを意味する。任意の量の望ましくない分子の除去は、精製と見なされる。
サポシン様タンパク質および少なくとも1つの疎水性作用物質の次に、本発明の方法において得られるサリプロ粒子は、第3の必須構成成分として脂質も含む。サリプロ粒子中に組み込まれるべき脂質の少なくとも一部は、本発明の方法の工程a)において提供される。
本明細書で使用される「脂質」という用語は、当技術分野で認知されており、生物学的起源の天然物質または合成脂質を指し、これらの脂質は、有機溶媒中に可溶性もしくは部分的に可溶性であり、または水相中に存在する場合に疎水性環境中に分配される。本明細書で使用される「脂質」という用語は、本発明の方法によって得られるサポシンリポタンパク質粒子中の単一の種類の脂質分子を意味しない。
サリプロ粒子は、典型的には、脂質の混合物を含む。一実施形態において、サリプロ粒子の脂質は、その脂質がそこから得られる古細菌、ウイルス、原核生物、真核細胞または真核細胞の細胞小器官膜に天然に存在する混合物である。例えば、脂質は、脳脂質、心臓抽出物由来の脂質、肝臓抽出物由来の脂質、酵母抽出物由来の脂質または大腸菌抽出物由来の脂質であり得る。別の実施形態において、脂質は合成起源のものであり得る。さらなる実施形態において、脂質は半合成起源のものであり得る、すなわち、合成脂質と天然脂質の混合物が使用されること、および/または例えば、蛍光標識された脂質もしくは頭部が修飾された脂質、例えばグリコシル化された脂質、官能化された脂質、pH感受性脂質もしくは接着性脂質を得るために、天然脂質が化学的に修飾されていることを意味する。一実施形態において、サリプロ粒子は、少なくとも3、5、10または20個の異なる脂質を含む。
好ましい実施形態において、脂質は両親媒性脂質を含む、または両親媒性脂質からなる。これらは、リン脂質、糖脂質、ステロールおよびこれらの混合物からなる群から選択され得る。
リン脂質は、水に溶解する極性部分(リン酸「頭部」)と、水に溶解しない疎水性の非極性部分(「脂質尾部」)とを有する。これらの部分はグリセロール部分によって連結されている。水中では、リン脂質は、頭部が水に面し、尾部が水から離れているクラスタを構築することができる。リン脂質および糖脂質中の脂肪鎖は、通常、偶数の炭素原子、典型的には16~20個の炭素原子を含有する。炭素数16および18の脂肪酸が最も一般的である。脂肪酸は、飽和または不飽和であり得る。二重結合の配置は、典型的には、いわゆるシス配置である。シスおよびトランス異性は、Cahn-Ingold-Prelog(CIP;Cahn,R.S.&Ingold,C.K.;Prelog,V.,’’Specification of Molecular Chirality’’.Angewandte Chemie International Edition,5(4),p.385-415,1966)に従って、分子内の官能基の相対的配向において生じる立体異性を表すために有機化学において使用される用語である。細胞膜中に存在する典型的な脂肪酸は、Alberts et al.,’’The Cell’’,4th edition,Macmillian Magazines Ltd,2002 on pages 61 and 62にも記載されている。膜脂質のさらなる例は、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、例えばPOPC(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルセリン、例えばPOPS(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)ホスファチジルイノシトールおよびスフィンゴミエリンである。
糖脂質は、グリコシド結合によって炭水化物が結合された脂質である。炭水化物は、典型的には、真核細胞膜の外面に見られる。炭水化物は、リン脂質二重層から細胞外の水性環境中へと伸長する。糖脂質の例は、グリセロ糖脂質、ガラクトリピド、スルホリピド、スフィンゴ糖脂質、グルコセレブロシド、スルファチド、ガングリオシド、グロボシド、リンスフィンゴ糖脂質およびグリコホスファチジルイノシトールである。
ステロールはステロイドのサブグループである。膜の一部としてのステロールは、典型的には、植物、動物および真菌などの真核生物の膜に存在する。ステロールの例は、コレステロール、カンプエステロール、シトステロール、スチグマステロールおよびエルゴステロールである。
好ましい実施形態によれば、脂質は、脂質二重層を形成する脂質および/または生体適合性脂質である。本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、生きた組織において毒性、傷害性、または免疫学的応答をもたらさないことによって生物学的に適合性であることを意味する。本明細書で使用される場合、「二重層形成脂質」は、疎水性の内部と親水性の外部とを有する脂質二重層を形成することができる脂質を指す。SAPLIPまたはその誘導体もしくは切断型と会合して粒子構造へと集合することができる任意の二重層形成脂質が、本発明に従って使用され得る。二重層形成脂質には、リン脂質、スフィンゴ脂質、糖脂質、アルキルリン脂質、エーテル脂質およびプラスマローゲンが含まれるが、これらに限定されない。1種類の二重層形成脂質または2もしくはそれより多くの種類の混合物を使用し得る。
脂質は、二重層形成脂質ではない脂質も含み得る。このような脂質には、コレステロール、カルジオリピン、ホスファチジルエタノールアミン(この脂質は、特定の状況下で二重層を形成し得る)、オキシステロール、植物ステロール、エルゴステロール、シトステロール、カチオン性脂質、セレブロシド、スフィンゴシン、セラミド、ジアシルグリセロール、モノアシルグリセロール、トリアシルグリセロール、ガングリオシド、エーテル脂質、アルキルリン脂質、プラスマローゲン、プロスタグランジンおよびリゾリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。
脂質は、上に列挙した脂質の混合物であり得るが、これに限定されない。典型的には、本発明の方法において使用される脂質は、少なくともリン脂質、糖脂質、コレステロールおよびこれらの混合物を含む。好ましい実施形態によれば、脂質は、特に真核細胞または原核細胞中に存在する膜の任意の1つの中に典型的に存在するような真核生物脂質および/または原核生物脂質である。好ましい脂質は、例えば、リン脂質、スフィンゴ糖脂質、ステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン(PS)、2-オレオイル-1-パルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、2-オレオイル-1-パルミトイル(pamlitoyl)-sn-グリセロ-3-グリセロール(POPG)、2-オレオイル-1-パルミトイル(pamlitoyl)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、ジアシルグリセロール、コレステロール、スフィンゴミエリン、ガラクトシルセラミド、ガングリオシド、ホスファチジルイノシトールおよびスルホガラクトセラミドまたはこれらの組み合わせである。
別の実施形態において、脂質はリン脂質を含む。適切なリン脂質の例としては、DMPC、DMPG、POPC、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、カルジオリピン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、卵黄ホスファチジルコリン(卵PC)、大豆ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカチオン性リン脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法において使用される脂質は、典型的には、細胞または細胞小器官の膜に存在するような脂質の異種混合物である。しかし、標的化部分または生物活性部分などの1つまたはそれより多くの結合した官能性部分を含む修飾された脂質であり得る合成または非定型脂質をさらに含むことも可能である。
本発明の方法において使用される脂質は、天然に存在する脂質、合成脂質、修飾された脂質、脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、ステロール脂質およびプレノール脂質もしくはこれらの組み合わせを含む、またはこれらからなることもできる。
さらなる実施形態において、疎水性作用物質、脂質および/またはサポシン様タンパク質の1つまたはそれより多くは、界面活性剤で可溶化された状態にある。一実施形態において、疎水性作用物質は、界面活性剤で可溶化された状態にある。別の実施形態において、疎水性作用物質および脂質は、界面活性剤で可溶化された状態にある。界面活性剤で可溶化された状態とは、界面活性剤が各構成成分を水溶液に可溶性にすること、および/または保つことを意味する。
本明細書で使用される「界面活性剤」という用語は、当技術分野で認知されており、本明細書で使用される「脂質」の定義に含まれない。多くの界面活性剤は、脂質と比較して同様に両親媒性の一般構造、すなわち極性親水性の頭部および非極性疎水性の尾部を有するが、界面活性剤は、モノマーの形状、溶液中で形成される凝集体の種類、および凝集のために必要とされる濃度範囲において脂質とは異なる。脂質の構造は、一般に、実質的に円筒であり、疎水性の尾部が占める体積は、極性の頭部が占める体積と同様である。界面活性剤モノマーは、一般に、より円錐形であり、疎水性の尾部が占める体積は、極性の頭部が占める体積より小さい。界面活性剤は、脂質の非存在下において、二重層構造を形成せずに水溶性である球形または楕円形のミセルに凝集する傾向がある(Anatraceのハンドブック「Detergents and their uses in membrane protein science」、www.anatrace.comを参照されたい。)。
使用され得る界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性イオン性およびこれらの混合物であり得る。
典型的なアニオン性界面活性剤はアルキルベンゼンスルホナートである。これらのアニオンのアルキルベンゼン部分は親油性であり、スルホナートは親水性である。アニオン性界面活性剤は、例えば、分岐アルキル基または直鎖アルキル基を含むことができる。適切なアニオン性界面活性剤の例は、胆汁酸、例えばデオキシコール酸(DOC)、アルキルベンゼンスルホナート、例えば分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびこれらの混合物である。
カチオン性界面活性剤は、疎水性成分を有するアニオン性界面活性剤と同様であるが、アニオン性スルホナート基の代わりに、カチオン性界面活性剤は極性の末端として第四級アンモニウムを有する。アンモニウム中心は正に帯電している。
非イオン性界面活性剤は、その非荷電親水性頭部を特徴とする。典型的な非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンまたはグリコシドに基づく。前者の一般的な例としては、Tween、Triton、Brijシリーズなどが挙げられる。これらの物質は、エトキシラートまたはPEGylateおよびそれらの代謝産物ノニルフェノールとしても知られている。グリコシドは、その非荷電親水性頭部として糖を有する。例としては、オクチルチオグルコシドおよびマルトシドが挙げられる。グリコシド頭部は、サポニンなどの高分子量のものでもあり得る。サポニンは、トリテルペンまたはステロイドアグリコンに結合された糖部分からなる。サポニン分子の非糖部分に応じて、サポニンは、トリテルペングリコシド、ステロイドグリコシドおよびステロイドアルカロイドグリコシドに分けることができる。HEGAおよびMEGAシリーズ界面活性剤は、頭部として糖アルコールを有する。本発明による方法において使用することができる適切な非イオン性界面活性剤の例は、サポニン、例えば、エスシン、バコパシド、バコシド、チャコニン、チャランチン、ジギトニン、グリチルリチン、ジンセノサイド、ホロスリン、プロトジオシンおよびソラニンならびにこれらの混合物である。グリコール-ジオスゲニンなどのサポニンと構造的に類似する合成界面活性剤も、本発明による方法における使用に適している。本発明による方法において使用することができる適切な非イオン性界面活性剤のさらなる例は、アルキルグリコシド、例えば短鎖、中鎖または長鎖アルキルマルトシド、例えばn-ドデシル-β-マルトシド(DDM)、デカノイル-N-ヒドロキシエチルグルカミド(HEGA)、n-デカノイル-N-メチル-D-グルカミド(MEGA)、およびこれらの混合物である。
本発明による特に好ましい界面活性剤は、サポニン、特にジギトニンのクラスから選択される。ジギトニンを用いた実際の実験は、ジギトニンが界面活性剤として使用される場合、界面活性剤の非存在または他の種類の界面活性剤の使用と比較して、本発明の方法がサリプロ粒子の製造に関してより効率的であることを示した。
両性イオン性界面活性剤は、等しい数の反対の帯電した化学基の存在から生じる正味のゼロ電荷を有する、すなわち、合計で負電荷と正電荷の数が等しく、全体の電荷は正味ゼロである。例としては、Fos-コリン、CHAPS/CHAPSO、ラウリル-ジメチルアミン-オキシド(LDAO)およびこれらの混合物が挙げられる。
本発明の一実施形態において、界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホナートまたは胆汁酸、カチオン性界面活性剤および非イオン性または両性イオン性界面活性剤、例えばラウリル-ジメチルアミンオキシド(LDAO)、Fos-コリン、CHAPS/CHAPSO、サポニン、例えばジギトニンおよび構造的に関連する合成界面活性剤、例えばグリコール-ジオスゲニン、アルキルグリコシド、例えば短鎖、中鎖または長鎖アルキルマルトシド、特にn-ドデシルβ-D-マルトシド、グルコシド、マルトース-ネオペンチルグリコール(MNG)両親媒性物質、両親媒性ポリマー(アンフィポール)、スチレンマレイン酸コポリマー(SMA)、フェノールおよびアルデヒドのヒドロキシアルキル化生成物を基礎とする大環状分子または環状オリゴマー(カリックスアレーン)ならびにこれらの混合物からなる群から選択され得る。
本発明の方法において使用される疎水性作用物質が界面活性剤で可溶化された状態である場合、界面活性剤は短鎖から中鎖の疎水性尾部を有する界面活性剤であると有利である。これは、膜タンパク質が疎水性作用物質として組み込まれる場合に特に当てはまる。本明細書で使用される「短鎖疎水性尾部」は、例えばn-ノニル-β-マルトシド(NM)におけるような、C2~C9を意味し、本明細書で使用される「中鎖疎水性尾部」は、例えばn-デシル-β-マルトシド(DM)またはn-ドデシル-β-マルトシド(DDM)におけるような、C10~C15を意味する。一実施形態において、界面活性剤は、その疎水性尾部に2~12個の炭素原子、好ましくは2~10個、最も好ましくは2~9個の炭素原子をその疎水性尾部に有する。
実際の実験は、サポシン様タンパク質が、一般的には、精製、貯蔵または取り扱い中に界面活性剤またはその他の溶媒を必要としないことを示した。しかしながら、任意に、サポシン様タンパク質も界面活性剤で可溶化された状態であってもよい。
疎水性作用物質が、界面活性剤で可溶化された状態の疎水性生体分子の形態である場合、疎水性作用物質は、さらに、脂質、特に輪状脂質との複合体を形成し得る。本明細書で「シェル脂質」または「境界脂質」とも呼ばれる輪状脂質は、膜からの精製中に疎水性生体分子の表面に優先的に結合または付着する脂質の選択された群を表す。輪状脂質は、強い脂質-タンパク質結合相互作用の存在のために高度に固定化された脂質の層または輪またはシェルを構成する。
一実施形態において、疎水性作用物質、脂質および/またはサポシン様タンパク質を可溶化するために使用される界面活性剤は、本発明の方法において形成されたサリプロ粒子中に実質的な量で持ち越されない。特に、本発明による方法によって得ることができる粒子中の界面活性剤の量は、低~検出不能であり得る。一実施形態において、得られたサリプロ粒子は、実質的な量の界面活性剤、特に、粒子の重量に基づいて、0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満、特に好ましくは0.001重量%未満の界面活性剤を含まない。粒子中に存在する界面活性剤(または他の構成成分)の量は、例えば、質量分析によって決定することができる。
別の実施形態において、疎水性作用物質および脂質は、サポシンリポタンパク質粒子中に組み込まれるべき疎水性作用物質および脂質を含む生体膜の形態で、工程a)において提供される。生体膜は、ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の膜、すなわちウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の細胞または細胞小器官に由来する膜であり得る。生体膜は、無処理の、両親媒性作用物質で処理された、または溶解された細胞、ウイルスまたは細胞小器官の形態で、本発明の方法において使用することができる。特に、生体膜は、界面活性剤と接触された細胞、ウイルスまたは細胞小器官の形態で提供することができる。膜は、サポシンリポタンパク質粒子中に天然に組み込まれるべき疎水性作用物質および脂質を含むことができる。しかしながら、膜は、その膜中に疎水性作用物質および/または脂質を発現するまたは含むように操作されたウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の細胞または細胞小器官に由来することもできる。例えば、疎水性作用物質が疎水性タンパク質である場合、膜は、導入遺伝子として前記疎水性タンパク質を発現する細胞から得ることができる。疎水性タンパク質は、特に、遺伝子改変された(例えば、タグ付けされた)形態で発現され得る。疎水性作用物質が疎水性薬物である場合、膜は、疎水性薬物に曝露された細胞に由来し得る。薬物が十分に親油性である場合、これは、膜中への薬物の組み込みをもたらし、これは、膜画分を抽出し、薬物の存在について試験することによって容易に試験することができる。
本発明の方法において使用することができる膜は、好ましくは、ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の細胞または細胞小器官の膜から選択される。「膜」という用語は、脂質の層を含む任意の膜を指す。好ましくは、膜は脂質二重層である。「膜」という用語は、本明細書では「細胞膜」および/または「細胞小器官膜」に対して互換的に使用されることがある。
膜が細胞の形態で提供される場合、これらは原核細胞、真核細胞および古細菌細胞から選択することができる。好ましくは、細胞は真核細胞、特に非ヒト動物またはヒト細胞である。前記細胞は、細胞培養から得ることができるが、組織試料、生検試料およびその他の生物学的材料などの天然源からも得ることができる。
「細胞膜」という用語は、細胞の内部を外部環境から隔てる生体膜を指す。膜脂質および膜タンパク質などの細胞膜に含まれる複雑な構造および複数の構成成分は、Alberts et al.,’’The Cell’’,4th edition,Macmillian Magazines Ltd,2002,583~614頁およびCampbell et al.,’’Biologie’’,6th edition,Spektrum Verlag,2003,163~177頁にも詳細に記載されている。
一実施形態において、本発明の方法によって得られたサリプロ粒子は、サポシン様タンパク質と、ウイルス、細胞または細胞小器官の膜から得られた膜の構成成分とから本質的になる。
疎水性作用物質および脂質は、サポシンリポタンパク質粒子中に組み込まれるべき疎水性作用物質および脂質を含む未精製膜の形態で、工程a)において提供され得る。本明細書で使用される「未精製膜」とは、もはや完全に無処理ではないが、特に膜脂質および膜タンパク質に関して、本質的に天然の膜組成をなお含む膜を指す。未精製膜は、それぞれが古細菌細胞、原核細胞または真核細胞に由来する未精製細胞膜、未精製細胞小器官膜またはその一部であり得る。未精製膜は、エンベロープウイルス由来の未精製ウイルスエンベロープ膜でもあり得る。例えば、(古細菌、真核生物または原核生物起源の)細胞または細胞小器官の細胞破壊または溶解後に得られる未精製膜画分は、「未精製の細胞または細胞小器官膜」である。ウイルスエンベロープの破壊後には、未精製ウイルス膜画分を得ることができる。「未精製のウイルス、細胞または細胞小器官膜」は、ウイルスエンベロープ、細胞および細胞小器官中に存在する天然膜成分を必ず含む。特に、「未精製のウイルス、細胞または細胞小器官膜」は、膜脂質および膜タンパク質の両方を含む。細胞の破壊または溶解は、機械的手段によってのみならず、細胞を両親媒性作用物質、特に界面活性剤と接触させることによっても起こり得る。
未精製細胞膜、未精製細胞小器官膜または未精製ウイルス膜は、もはや完全に無処理の細胞膜、細胞小器官膜またはウイルスエンベロープではない。それらは、2つの所与の膜破裂部位間での疎水性相互作用のために、自発的に未精製膜小胞を形成する。
疎水性作用物質および脂質は、無処理の、両親媒性作用物質で処理された、または溶解された細胞、ウイルスまたは細胞小器官中に依然として含まれる膜の形態で、工程a)において提供され得る。したがって、細胞、ウイルスまたは細胞小器官は、工程a)において直接使用することができる。それらは、無処理であり得、両親媒性作用物質で前処理され得、または溶解され得る。特に、疎水性作用物質および脂質は、両親媒性作用物質、特に界面活性剤と接触された細胞、ウイルスまたは細胞小器官の形態で、工程a)において提供することができる。
本発明の方法で使用するのに特に適した膜は、任意の天然の細胞、ウイルスまたは細胞小器官から、これらを両親媒性作用物質、特に界面活性剤で単に処理することによって直接得ることができる。好ましくは、両親媒性作用物質と接触された細胞は、真核細胞、特に非ヒト動物またはヒト細胞である。両親媒性作用物質で処理された真核細胞は、例えば、新生物細胞または癌/腫瘍細胞であり得る。本発明の方法において両親媒性作用物質と接触された細胞は、例えば組織または固形腫瘍として組織化することもできる。
両親媒性作用物質による細胞、ウイルスまたは細胞小器官の処理は、典型的には液体環境で行われる。両親媒性作用物質による処理は、特に両親媒性作用物質が界面活性剤である場合、細胞、ウイルスまたは細胞小器官の膜構造がより流動性になり、ほぐれる効果があるようである。この科学理論に束縛されることを望まないが、両親媒性作用物質、特に界面活性剤は、おそらくは開いた立体構造を誘導することによってサポシンタンパク質を活性化するようにも思われる。好ましい実施形態において、両親媒性作用物質による処理の他に、細胞、ウイルスまたは細胞小器官のさらなる処理は行われない、特に、化学的および/または機械的処理などによる細胞、ウイルスまたは細胞小器官の破壊を達成するためのさらなる処理は行われない。細胞、ウイルスまたは細胞小器官の破壊を達成するための適切な化学的および/または機械的処理は、当業者に公知である。
好ましい実施形態において、液体環境での界面活性剤による処理は、細胞、ウイルスまたは細胞小器官を、界面活性剤のCMCの0.01~200万倍の濃度、好ましくは界面活性剤のCMCの0.1~2万倍の濃度、最も好ましくは界面活性剤のCMCの1~2000倍の濃度の界面活性剤と接触させることを含む。多くの実施形態において、液体環境中の界面活性剤濃度が界面活性剤のCMCを上回る場合に、最良の結果が達成される。おそらく界面活性剤が実際に膜を可溶化することなくサポシンを活性化することによって、CMCを下回る界面活性剤濃度も、既にプラスの効果を有するようである。臨界ミセル濃度(CMC)は、ミセルが形成され、系に添加されたすべての追加の界面活性剤分子がミセル中に組み込まれる界面活性剤の濃度として定義される。典型的には、細胞、ウイルスまたは細胞小器官は、特に両親媒性(amphilic)作用物質が界面活性剤である場合に、0.5分~180分間、好ましくは30分~90分間、両親媒性作用物質と共にインキュベートされる。さらに、界面活性剤とのインキュベーションは、典型的には1~37℃の温度、好ましくは2~6℃の温度で行われる。
本発明の方法の工程b.1)/b.2)
本発明の方法の工程b.1)/b.2)では、サポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)のいずれかを、疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質を選択的に結合することができる支持体と接触させる。本発明の方法の工程b.2)では、疎水性作用物質を、疎水性作用物質を支持体に選択的に結合することができる支持体と接触させる。あるいは、本発明の方法の工程b.1)では、サポシン様タンパク質を、サポシン様タンパク質に選択的に結合することができる支持体と接触させる。
工程b.2)における疎水性作用物質または工程b.1におけるサポシン様タンパク質は、好ましくは、液体環境において支持体と接触させる、すなわち接触した状態にする。好ましくは、液体環境は水性液体環境である。ある特定の実施形態において、水性液体環境は、2.0~10.0、5.0~10.0または5.0~8.5、特に6.0~8.0、最も好ましくは7.0~8.0のpHの緩衝溶液である。
本明細書で使用される「支持体」という用語は、関心対象の標的分子を選択的に結合することができる任意の支持体材料を指す。本発明の方法(代替I)の工程b.1)で使用される支持体の場合、標的分子は、サポシン様タンパク質である。本発明の方法(代替II)の工程b.2)で使用される支持体の場合、標的分子は、疎水性作用物質である。標的分子を結合する支持体中の分子構造は、本明細書では「捕捉部分」と呼ばれる。支持体によって結合される標的分子中の分子構造は、本明細書では「結合部分」と呼ばれる。したがって、支持体は、関心対象の標的分子、すなわちサポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)中に存在する対応する結合部分を結合する捕捉部分を含む、または含むように官能化されている。
本明細書で使用される支持体は、特に、このような捕捉部分を含む「担体」、「担体材料」または「固定相」であり得る。好ましい実施形態において、支持体は固体支持体である。
支持体は、平面、曲面、よじれた面、ねじれた面、および/または角のある面を有するビーズ、ベッド、膜または固体支持体の形態であり得る。
一実施形態において、支持体はビーズの形態である。特に良好な結果は、従来技術においてクロマトグラフィー支持体として、例えばバイオアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用されるビーズによって達成される。これらのビーズは、最も一般的には、架橋することができる、アガロース、セルロース、リグノセルロースおよびデキストランなどの多糖類、またはポリエチレンオキシドなどの他のポリマーで作られた材料に基づく。本発明の方法において使用するために、ビーズ材料は、関心対象の標的分子、すなわちサポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)中に存在する対応する結合部分に結合する捕捉部分を含む、または含むように官能化されている。親和性ビーズなどの本発明の方法において使用されるビーズは、1~900μmまたは10~500μmの範囲の平均直径を有することができる。一実施形態において、直径は、500μm未満、250μm未満、または100μm未満である。好ましくは、本発明の方法において使用されるビーズは、接近可能な細孔構造を有する。支持体はまた、固体の水和に起因してゲルを形成し得る。これらの多孔質材料またはゲルは、材料の体積当たりに利用可能な結合部位の量が多いため好ましい。多数の結合部位は、より大きな結合、反応性および/または分離能力を提供する。別の実施形態において、ビーズは磁性であり、支持体の他の表面への簡便な結合を可能にする。磁気ビーズは、通常、標準的な親和性ビーズよりも小さい。したがって、本発明によるビーズは、600nm~10μm、400nm~7μmまたは200nm~5μmの範囲の平均直径を有することもできる。別の実施形態において、磁気ビーズの直径は、7μm未満、4μm未満、または1μm未満である。
一実施形態において、支持体はベッドの形態である。ベッドは、ビーズまたは繊維によって形成することができる。しかしながら、ベッドは、ベッドが細孔が横切る単一の材料片を含むような連続構造であってもよい。連続ベッドの例は、共有結合で架橋されたビーズまたは繊維である。ベッドは、タンパク質および脂質クロマトグラフィーの分野の当業者に周知のクロマトグラフィーベッドであり得る。ベッドは、架橋することができる、アガロース、セルロース、リグノセルロースおよびデキストランなどの多糖類、またはポリエチレンオキシドなどの他のポリマーで作られた材料に基づくことができる。本発明の方法において使用するために、ベッド材料は、関心対象の標的分子、すなわちサポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)中に存在する対応する結合部分に結合する捕捉部分を含む、または含むように官能化されている。
一実施形態において、支持体は膜の形態である。膜は、脂質および/または膜タンパク質などの典型的な生体膜成分からならない非生体膜である。好ましくは、タンパク質および脂質膜クロマトグラフィーの分野の当業者に周知のクロマトグラフィー膜が使用される。膜は、架橋することができる、アガロース、セルロース、リグノセルロースおよびデキストランなどの多糖類、またはポリエチレンオキシドなどの他のポリマーで作られた材料に基づくことができる。本発明の方法において使用するために、膜は、関心対象の標的分子、すなわちサポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)中に存在する対応する結合部分に結合する捕捉部分を含む、または含むように官能化されている。
一実施形態において、支持体は、平面を有する固体支持体である。本明細書で使用される「平面」は、表面が巨視的に実質的に平面であるという意味で「実質的に平面」を意味する。これは、微細構造が非平面構造を含むことができ、また、マクロ構造が完全には平面ではない領域を含むことができることを意味する。一実施形態において、屈曲または傾斜した構造も、それらが広い表面積を有する場合、本発明の意味で実質的に平面であると考えられる。「平面を有する固体支持体」という用語は、チップまたは表面平面などの固体の実質的に平面の支持体を上述のビーズの実施形態と区別する役割を果たす。本明細書で使用される「固体」という用語は、ゲルを含むことを意味しない。一実施形態において、固体は、実質的に剛性であり、柔軟性がないことを意味する。別の実施形態において、平面を有する固体支持体は、非多孔質表面を含む。
本発明の方法で使用することができる平面を有する固体支持体の例は、チップまたはバイオセンサ表面である。一実施形態において、固体支持体の平面は金属製である。特に、金属は、金、銀、銅、アルミニウムおよびこれらの混合物からなる群から選択することができる。別の実施形態において、表面は、ガラスおよび/または合成樹脂、すなわちポリマー材料で作られる。本発明の方法において使用するために、固体支持体の平面は、関心対象の標的分子、すなわちサポシン様タンパク質(工程b.1)または疎水性作用物質(工程b.2)中に存在する対応する結合部分に結合する捕捉部分を含む、または含むように官能化されている。一実施形態において、平面を有する固体支持体の寸法は、1~50mm、特に5~25mmの範囲である。
支持体は、標的分子中の結合部分を介して関心対象の標的分子を選択的に結合することを可能にする捕捉部分を含む。本発明の方法(代替I)の工程b.1)で使用される支持体の場合、標的分子は、サポシン様タンパク質である。本発明の方法(代替II)の工程b.2)で使用される支持体の場合、標的分子は、疎水性作用物質である。
「捕捉部分」または「結合部分」という用語は、本明細書では「少なくとも1つの捕捉部分」および「少なくとも1つの結合部分」の意味で使用される。本発明の方法で使用される支持体は、典型的には、同一であり得るまたは異なり得る複数の標的部分を含む。典型的には、支持体は、同じ種類の複数の捕捉部分を含む。標的分子は、1つまたはそれより多くの結合部分を含むことができる。例えば、結合が親和性相互作用に基づく場合、標的分子は、親和性タグの1つまたは複数のコピーを含み得る。結合が疎水性相互作用に基づく場合、標的分子は、1つまたはそれより多くの疎水性結合部位などを含み得る。
標的分子は、支持体の捕捉部分によって選択的に結合される結合部分を含む。「結合部分」という用語は、支持体の対応する捕捉部分への選択的結合を可能にする、標的分子中の任意の分子構造、すなわち本発明の方法による疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質を指す。標的分子の結合部分および支持体の捕捉部分は、相補的な相互作用対を形成する。「捕捉部分」および「結合部分」という用語は、本明細書では「認識部分」と総称される。
したがって、本発明の方法の代替(I)において、支持体は捕捉部分を含み、サポシン様タンパク質は結合部分を含み、捕捉部分はサポシン様タンパク質中の結合部分を選択的に結合することができる。本発明の方法の代替(II)において、支持体は捕捉部分を含み、疎水性作用物質は結合部分を含み、捕捉部分は疎水性作用物質中の結合部分を選択的に結合することができる。支持体への結合に関して、「疎水性作用物質」および「サポシン様タンパク質」は、本明細書では「標的分子」と総称される。
本明細書で使用される「結合する」という用語は、標的分子を支持体上に「固定化する(immobilize)」、「捕捉する」、「固定する(fix)」、「結合する」または「保持する」ことを意味し得る。「選択的に」という用語は、支持体が標的分子、すなわち疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質を優先的に、主におよび/またはほぼ排他的に結合することを示す。選択的結合は、静電相互作用、疎水性相互作用、親和性結合および/または支持体の捕捉部分と標的分子の結合部分の間での共有結合形成によって達成することができる。通常、結合は可逆的である。しかしながら、一実施形態において、支持体への結合は実質的に不可逆的である。別の実施形態において、支持体への結合は、共有結合による。
一般的な注記として、本明細書において、適切な捕捉部分/結合部分の対に言及されているときは常に、逆の対も記載されているものとする。換言すれば、多くの場合、支持体上の捕捉部分および標的分子中の結合部分は、交換可能に使用することができる。
結合は、結合部分と捕捉部分とを接続するリンカーまたはスペーサーを含むことができる。リンカーもしくはスペーサーは、結合部分と捕捉部分の両方と反応するもしくは両方に結合する少なくとも二官能性の分子であり得る、またはリンカーもしくはスペーサーは、結合部分もしくは捕捉部分中に含まれ得る。
支持体の捕捉部分は、以下でさらに詳細に説明される様々な様式によって、標的分子の選択的結合を可能にすることができる。例えば:(i)標的分子の結合部分を化学結合によって支持体の捕捉部分に化学的に結合させることによって標的分子を捕捉すること、(ii)支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のもしくは操作された結合部分との間の親和性に基づく相互作用を介して標的分子を捕捉すること、(iii)標的分子中の結合部分によって選択的に結合される架橋剤(例えば、ペプチドエピトープ、基質類似体またはリガンド)に結合するように支持体中の捕捉部分を操作することによる標的分子の間接的な結合、(iv)支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のもしくは操作された結合部分との間の疎水性相互作用を介して標的分子を捕捉すること、および/または(v)支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のもしくは操作された結合部分との間の電荷に基づく相互作用を介して標的分子を捕捉すること。
一実施形態において、工程b.1)/b.2)における標的分子の支持体への選択的結合は、標的分子の結合部分を化学結合によって支持体の捕捉部分に化学的に結合することによって達成される。これは、チオール基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルデヒド基またはカルボキシル基などの標的分子中の官能基を利用することによって達成することができる。標的分子のこのような結合部分と反応するための支持体の適切な捕捉部分は、当業者に公知である。当業者は、達成されるべき結合の種類に応じて適切な捕捉部分/結合部分の対を選択することができる。標的分子中のチオール基は、例えば、支持体上の捕捉部分として使用されるマレイミド、ジスルフィドまたはヨードアセトアミドと反応させることができ、またはその逆も可能である。標的分子中の第一級アミンは、例えば、支持体上の捕捉部分として使用されるスクシンイミドエステル(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド、スルホスクシンイミドまたはその他のスクシンイミジルエステル)、イミドエステルまたはイソチオシアナート(フェニルイソチオシアナートなど)と反応させることができ、またはその逆も可能である。標的分子のカルボキシ基は、例えば、支持体上の捕捉部分として使用されるカルボジイミド(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなど)と反応させることができ、またはその逆も可能である。
選択される化学に応じて、化学結合の形成を介した支持体への標的分子の結合は、実質的に不可逆的であり得、これは、形成されたサリプロ粒子の支持体への特に緊密な結合を必要とする特定の用途に有益であり得る。他方、親和性に基づく認識部分、疎水性相互作用または静電相互作用による捕捉は、通常可逆的であり、工程d)における容易な溶出ならびに支持体の再生および再使用の可能性という利点を有する。
別の実施形態において、工程b.1)/b.2)における標的分子の支持体への選択的結合は、支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のまたは操作された結合部分との間の親和性に基づく相互作用によって達成される。このようにして、天然のまたは操作された結合部分を有する標的分子は、親和性に基づく相互作用を用いて支持体の捕捉部分によって選択的に結合される。
天然の捕捉部分/結合部分の親和性に基づく対の例は、標的分子中の特定の糖部分に結合するレクチン(例えば、標的分子がグリコシル化された膜タンパク質である場合)、または標的分子の天然のエピトープを認識する抗体である(またはその逆)。グリコシル化、硫酸化、パルミトイル化、ミリストイル化、ユビキチン化またはSUMO化などの翻訳後修飾も、本発明による結合部分として役立ち得る。捕捉部分と結合部分との間の様々な他の天然の親和性に基づく相互作用は、当業者に公知である。
本発明の方法において有用である操作された親和性に基づく捕捉部分/結合部分対の特定の重要な例は、親和性タグの周知の領域に由来する。したがって、一実施形態において、捕捉部分または結合部分は親和性タグであり、対応する他方の認識部分は親和性タグに対して高い親和性を有する部分である。例えば、疎水性作用物質-抗体融合物と共に(この場合、抗体のFc部分が標的分子中の結合部分である)、プロテインA-セファロース樹脂を支持体として使用することができる(この場合、プロテインAが支持体上の親和性タグである)。疎水性作用物質-抗体複合体が使用される場合、抗体は上記のようにリンカーとして作用する。好ましくは、標的分子中の結合部分は親和性タグである。例えば、Hisタグが付加された標的分子と共に(この場合、Hisタグが親和性タグであり、標的分子中の結合部分である)、Ni2+-NTA樹脂を支持体として使用することができる(この場合、Ni2+-NTAが捕捉部分である)。
親和性タグは、例えば、標準的なクローニングまたは遺伝子工学によって容易に導入され、周知の、多くの場合市販されている捕捉部分含有支持体に結合するという利点を有する。工程b.1)において使用されるサポシン様タンパク質または工程b.2)において使用される疎水性作用物質(疎水性作用物質が疎水性タンパク質である場合)は、親和性タグを付加された形態であり得る。これは、ペプチドまたはポリペプチドの形態の親和性タグをクローニングまたは遺伝子工学によって標的分子中に導入することによって容易に得ることができる。したがって、この実施形態において、疎水性作用物質(疎水性作用物質が疎水性タンパク質である場合)および/またはサポシン様タンパク質は、それぞれ、工程b.2)および工程b.1)において、親和性タグが付加された融合タンパク質として使用される。「融合タンパク質」という用語は、当技術分野で認知されており、組換えDNA技術によって別のペプチドまたはポリペプチドに融合されたタンパク質を指す。「融合タンパク質」という用語は、本明細書では「キメラタンパク質」と互換的に使用されることがある。
親和性タグと対応する捕捉部分との間の相互作用は、元々、タンパク質の精製および固定化を補助するために開発された。タンパク質標的分子は、公知の捕捉部分に結合する親和性タグとして知られる特定のペプチド配列によって遺伝子レベルで修飾され得る。本明細書で使用される親和性タグは、一般に、a)小分子に結合するペプチド配列;b)小分子に結合するタンパク質;c)抗体に結合するペプチドまたはタンパク質という3つのカテゴリーに分類される。親和性タグは、適切な結合パートナーを有する小分子化合物(例えば、リガンド)でもあり得る。親和性タグは、本発明の方法で使用される標的分子に共有結合され得る。例えば、ニトリロ三酢酸は、Ni2+と錯体(Ni2+-NTA)を形成した場合、ヒスチジンタグとして知られ、標的分子中の結合部分として使用可能な親和性タグを規定するヒスチジンの連なりで修飾されたタンパク質を結合する一般的な捕捉部分である。
「親和性タグ」には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられる。親和性タグは、標的の生物学的または化学的分子に容易に付着させることができる任意の生物学的または化学的材料である。親和性タグは、任意の適切な方法によって標的の生物学的または化学的分子に付着させ得る。例えば、いくつかの実施形態において、親和性タグは、遺伝的方法を使用して標的分子に付着させ得る。例えば、親和性タグをコードする核酸配列は、親和性タグが生物学的分子と共に発現されることを可能にする核酸内の任意の場所、例えば、内部の、隣のまたは近くの場所に配置され得る。他の実施形態において、親和性タグは、標的の生物学的または化学的分子が生成された(例えば、発現されたまたは合成された)後にも、標的の生物学的または化学的分子に付着され得る。一例として、標的のストレプトアビジンへの結合を促進するために、ビオチンなどの親和性タグが、例えば共有結合によって、標的タンパク質またはペプチドに化学的に結合され得る。
親和性タグとしては、例えば、ヒスチジンタグ、GST(グルタチオン/GST結合における)、ストレプトアビジン(ビオチン/ストレプトアビジン結合における)またはマルトース(MBP、すなわちマルトース結合タンパク質に結合する)などの金属結合タグが挙げられる。他の親和性タグとしては、Myc/Max対におけるMycもしくはMax、またはポリヒスチジンなどのポリアミノ酸が挙げられる。本明細書の様々な場所において、結合相互作用に関連して、特異的な親和性タグが記載されている。通常、その公知の生物学的または化学的結合パートナーである、親和性タグが相互作用する(例えば、選択的に結合する)支持体中の分子構造は、本明細書で使用される「捕捉部分」である。
本発明の方法の工程b.1)/b.2)に有用な親和性タグまたは抗原(結合部分として使用される)/捕捉部分の対は、例えば、ポリヒスチジン/NTA/Ni2+、グルタチオンSトランスフェラーゼ/グルタチオン、マルトース結合タンパク質/マルトース、ストレプトアビジン/ビオチン、ビオチン/ストレプトアビジン、抗原(または抗原の断片)/抗体(または抗体の断片)などである。
本発明の方法の工程b.1)/b.2)に有用なさらなる親和性タグまたは抗原(結合部分として使用される)/捕捉部分の対は、例えば、抗体/ペプチド相互作用、抗体/抗原相互作用、抗体の断片/抗原相互作用、核酸/核酸相互作用、タンパク質/核酸相互作用、ペプチド/ペプチド相互作用、タンパク質/タンパク質相互作用、小分子/タンパク質相互作用、グルタチオン/GST相互作用、マルトース/マルトース結合タンパク質相互作用、炭水化物/タンパク質相互作用、炭水化物誘導体タンパク質相互作用、ペプチドタグ/金属イオン-金属キレート相互作用、ペプチド/NTA-Ni相互作用、エピトープタグ(例えば、V5タグ、Mycタグ、FLAGタグまたはHAタグ)/抗体相互作用、プロテインA/抗体相互作用、プロテインG/抗体相互作用、プロテインL/抗体相互作用、蛍光タンパク質(例えば、GFP)/抗体相互作用Fc受容体/抗体相互作用、ビオチン/アビジン相互作用、ビオチン/ストレプトアビジン相互作用、ジンクフィンガー/核酸相互作用、小分子/ペプチド相互作用、小分子/標的相互作用および金属イオン/キレート剤/ポリアミノ酸相互作用である。
上記の親和性タグのいずれもが、本発明の方法の工程b.1)/b.2)において支持体に選択的に結合される疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質上に存在することができる。逆もまた同様であり得る、すなわち、親和性タグは、支持体および標的分子上のそれぞれの捕捉部分または任意に中間リンカー上に存在することができる。上記の親和性に基づく相互作用対のいずれも、本発明の方法に適用することができる。
別の実施形態において、標的分子の親和性タグは蛍光タグである。このような蛍光タグは、本発明の方法におけるサリプロ粒子の生成中に特定の疎水性作用物質または特定の種類(種)のサリプロ粒子を検出および追跡するのに有用である。GFPおよびその変異形は、一般的に使用される蛍光タグの例である。
本発明者の研究は、本発明の方法において、未精製膜中に存在する特異的にタグ付加された膜タンパク質を疎水性作用物質として使用することも可能であることを明らかにした。これは、未精製膜が由来する基礎となる細胞またはウイルス中の関心対象の膜タンパク質にタグを付加することによって可能である。次いで、タグを付加された疎水性タンパク質を含む未精製膜は、疎水性タンパク質および脂質を提供するために、本発明の方法の工程a)において使用することができる。タグ付加は、例えば、遺伝子操作によって、またはタグを付加された導入遺伝子を有するベクターを、未精製膜小胞が得られるウイルス、細胞または細胞小器官中に挿入することによって、遺伝子レベルで優先的に行われる。
別の実施形態において、工程b.1)/b.2)における標的分子の支持体への選択的結合は、標的分子の結合部分を介した支持体の捕捉部分への標的分子の間接的結合によって達成される。標的分子のこの間接的結合は、標的分子中の結合部分によって選択的に結合される架橋剤(例えば、ペプチドエピトープ、基質類似体またはリガンド)に結合するように支持体の捕捉部分を操作することによって達成することができる。このように、サポシン様タンパク質または疎水性作用物質を支持体に選択的に結合するために、捕捉された架橋剤間の二次的相互作用を使用することができる。架橋剤の例は、酵素の補因子、基質類似体もしくは阻害剤、リガンドまたはペプチドエピトープである。これらの架橋剤は支持体の捕捉部分に結合することができ、そこで標的分子を選択的に結合することができる。例えば、酵素の補因子、基質類似体または阻害剤を架橋剤として使用する場合、それぞれの酵素が標的分子であり、酵素中のそれぞれの結合ポケットが結合部分を構成する。
さらなる実施形態において、工程b.1)/b.2)における標的分子の支持体への選択的結合は、支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のもしくは操作された結合部分との間の疎水性相互作用を介して標的分子を捕捉することによって、および/または支持体の捕捉部分と標的分子中の天然のもしくは操作された結合部分との間の電荷に基づく相互作用を介して標的分子を捕捉することによって達成される。このような相互作用を媒介するのに適した捕捉部分は、当業者に公知である。標的分子を支持体に選択的に結合させるために疎水性相互作用が使用される場合には、支持体は、例えば、捕捉部分として、芳香族基、C~C24アルキル、C~C24アルケニルまたはC~C24脂肪酸などの疎水性基を含む。標的分子を支持体に選択的に結合させるために静電的相互作用が使用される場合には、支持体上の捕捉部分として、適切なアニオン交換部分およびカチオン交換部分を使用することができる。特に、市販のアニオンまたはカチオン交換樹脂を支持体として使用することができる。アニオン交換体中で一般的に使用される官能基としては、例えば、第四級アンモニウム、ジエチルアミノプロピルまたはジエチルアミノエチルが挙げられる。カチオン交換体中で一般的に使用される官能基としては、例えば、スルホン酸、メチルスルホナートまたはカルボキシメチルが挙げられる。
本発明の方法の工程c.1)/c.2)
本発明の方法の工程c.1)/c.2)において、サポシンリポタンパク質粒子の自己集合は、支持体に結合した標的分子(疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質)を、サポシンリポタンパク質粒子の残りの構成成分と接触させることによって起こる。
本発明の方法の代替(I)の場合には、工程c.1)は、サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合したサポシン様タンパク質を疎水性作用物質と接触させることを必要とする。この理論に拘束されることを望まないが、隣接する捕捉されたサポシン様タンパク質が、個々のサリプロ粒子の形成に寄与する可能性が高い。また、支持体は、隣接する捕捉されたサポシン様タンパク質の相互作用が促進されるように、非常に動的で密な3D構造の形態で存在することができる。好ましい実施形態では、サポシンリポタンパク質粒子への自己集合をさらに補助するために、工程c.1)の前、最中または後に追加のサポシン様タンパク質が添加される。
本発明の方法の代替(II)の場合には、工程c.2)は、サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合した疎水性作用物質をサポシン様タンパク質と接触させることを必要とする。
好ましくは、工程c.1)および/またはc.2)における粒子の自己集合は、2.0~10.0、特に6.0~10.0、好ましくは6.0~9.0、特に好ましくは7.0~9.0、最も好ましくは7.0~8.0のpHで行われる。好ましくは、工程c.1)/c.2)における接触は、液体環境で行われる。好ましくは、液体環境は水性液体環境である。ある特定の実施形態において、水性液体環境は、2.0~10.0、5.0~10.0または5.0~8.5、特に6.0~8.0、最も好ましくは7.0~8.0のpHの緩衝溶液である。
工程c.1)/c.2)において支持体に結合した粒子成分を接触させた後に未結合のまま残存する任意の材料は、液体環境からリサイクルし、保存し、別の利用のために再使用することができる。
脂質および疎水性作用物質と共に単にインキュベートされることによって、サポシン様タンパク質が疎水性作用物質をサリプロ粒子へと自己集合させることができることは、サポシン様タンパク質の顕著で驚くべき特性である。本発明の基礎となる研究により、驚くべきことに、この自己集合は、一次構成成分の1つ、すなわち、サポシン様タンパク質(方法代替I)または疎水性作用物質自体(方法代替II)のいずれかが支持体に結合され、固定化されると、極めて効率的に機能することさえ明らかになった。次いで、自己集合は、支持体と残りの構成成分を含有する液体環境との間の界面において、より困難な条件下で起こる。
本発明者らの研究は、本発明の方法によって得られた粒子が、液体環境中のすべての関与する粒子成分の自由でランダムな運動に基づいて純粋に液体環境中で形成された先行技術のサリプロ粒子のような円板形状であることを示した。好ましい実施形態において、集合したサリプロ粒子は円板形状である。別の好ましい実施形態において、サリプロ粒子は、水性または親水性コアを含まない。さらに別の実施形態において、サリプロ粒子は円板形状であり、水性または親水性コアを含まない。
好ましい実施形態において、サリプロ粒子は、一般に、円板形状であると考えられる。特に、サリプロ粒子は、2nm~500nm、特に2nm~200nmまたは3nm~150nm、好ましくは3nm~100nmの範囲のストークス半径(流体力学的半径)RSを有することができる。ストークス半径を決定する方法は、当業者に公知である。これは、好ましくは、既知のストークス半径の標準と比較して、粒子を支持体から溶出し、粒子を分析用ゲル濾過(サイズ排除クロマトグラフィー)に供することによって行われる。特に、粒子は、例えばSuperdex 200 HR10 30ゲル濾過カラムでのゲル濾過工程に供され、室温において、pH7.5および0.5ml/分で適切な緩衝液によって溶出され得る。タンパク質について、吸光度を280nmでモニターする。カラムは、例えば、サイログロブリン669kDa(RS=8.5nm)、フェリチン440kDa(RS=6.1nm)カタラーゼ232kDa(RS=4.6nm)、乳酸デヒドロゲナーゼ140kDa(RS=4.1nm)、ウシ血清アルブミン66kDa(RS=3.55nm)およびウマ心臓シトクロムc 12.4kDa(RS=1.8nm)などの既知のストークス半径のタンパク質標準の混合物を使用して較正される。標準タンパク質は、関心対象の粒子のRs値を上回るおよび下回るRs値にまたがるべきである。検量線は、標準タンパク質の溶出位置をRsに対してプロットすることによって作成される。これは一般に概ね線形のプロットを与えるが、そうでなければ、点の間に線を引き、この標準曲線上のその溶出位置から関心対象のタンパク質のRsを読み取ることで十分である。
いくつかの実施形態において、例えば、膜タンパク質などの嵩高い疎水性作用物質またはより多量の脂質が粒子中に存在する場合、ストークス半径は3.2nmより大きく、特に少なくとも3.5nm、少なくとも5.0nmまたは少なくとも10.0nmである。
サリプロ粒子は、支持体に結合した状態または「遊離」状態で、透過型電子顕微鏡によっても検査され得る。粒子が十分に大きければ、粒子は、ネガティブ染色電子顕微鏡および単一粒子分析によって分析することができる。
構造分析は、多くの場合、サリプロ粒子では、膜脂質が粒子の内部において別個のサイズの円板状二重層様構造へと集合することを示した。サポシン様タンパク質構成成分は、一般に、円板状二重層の境界を画し、粒子に構造および安定性を付与する。ほとんどの実施形態において、粒子の内部は疎水性領域(例えば、脂質脂肪族アシル鎖から構成される)を含む。リポソームとは対照的に、サリプロ粒子は、通常、親水性コアまたは水性コアを含まない。粒子は、好ましくは円板形状であり、円板の周縁の二重層の疎水性表面と会合する2またはそれより多くのサポシン様タンパク質によって与えられる両親媒性?-ヘリックスによって外接された平坦な円板状のほぼ円形の脂質二重層を有する。
いくつかの実施形態において、サリプロ粒子中に組み込まれる疎水性作用物質のサイズに応じて、(空の)サリプロ粒子の主な円板形状は、四角形、三角形または円柱によって近似することができる。例えば、円柱によって近似されるサリプロ粒子は、少なくとも1.0:1.1、特に1.0:1.5、1.0:2.0、1.0:4.00、1.0:8.00または1.0:9.00の最大高さ対最大直径(長軸長さ)の比を有することができる。円板状粒子の最大高さは、一般に、溶出された遊離粒子の透過型電子顕微鏡法によって、または粒子が十分に大きければ、ネガティブ染色電子顕微鏡法および単一粒子分析によって決定されるように、少なくとも3.5nm、特に少なくとも5nmである。好ましくは、サリプロ粒子は、頂部、底部および周方向側面を有し、頂部および底部表面の最大直径(長軸長さ)は、周方向側面の高さよりも大きい。サリプロ粒子のいくつかの実施形態において、サポシン様タンパク質は、粒子の周方向側面を取り囲むように少なくとも部分的に位置する。
いくつかの実施形態において、透過型電子顕微鏡によって、または粒子が十分に大きければ、ネガティブ染色電子顕微鏡および単一粒子分析によって決定される、円板形状のサリプロ粒子の平均最大直径(長軸長さ)は、2nm~200nm、特に3nm~150nm、好ましくは3nm~100nmである。別の実施形態において、円板形状粒子の平均最大直径(長軸長さ)は、3nm~80nm、特に3nm~60nmである。実際の実験は、3nm~20nmの平均最大直径(長軸長さ)を有する粒子が本発明の方法で特に容易に得られることを示している。
別の実施形態において、粒子は、例えばHiLoad Superdex(商標)200 16/60 GLカラム上での溶出された遊離粒子のゲル濾過溶出プロファイルによって評価されるように、円板構造の実質的に単分散の集団によって定義される。
一般に、サリプロ粒子中のサポシン様タンパク質と脂質二重層間の主な相互作用は、サポシン様タンパク質分子の両親媒性αヘリックスの疎水性面上の残基と、生物活性作用物質送達粒子の周縁における二重層の縁部の脂質、例えばリン脂質脂肪酸アシル鎖の疎水性表面との間での疎水性相互作用によるものである。サポシン様タンパク質の両親媒性αヘリックスは、粒子の周縁における脂質二重層の疎水性表面と接触する疎水性表面と、粒子が水性媒体中に懸濁されたときに粒子の外側に面して水性環境と接触する親水性表面との両方を含む。
別の実施形態において、サポシンリポタンパク質粒子は水溶液中で安定であり、長期貯蔵のために凍結乾燥されて、その後水溶液中で再構成され得る。本明細書で使用される「安定性」または「安定な」は、粒子の調製、輸送および貯蔵中の粒子断片化が低~検出不能なレベル、凝集または品質劣化が低~検出不能なレベルであることを意味する。
好ましい実施形態において、本発明の方法による粒子および粒子のライブラリーは、2.0~10.0、特に6.0~10.0、好ましくは6.0~9.0、特に好ましくは7.0~9.0、最も好ましくは7.0~8.0のpHで水溶液中において安定である。別の実施形態において、本発明の方法によるライブラリーおよび粒子は、例えば、目視検査(透明で沈殿物を含まない溶液)または分析用ゲル濾過(50%未満、特に1~40%の粒子の断片化)によって決定される場合、-210℃~80℃、特に-210℃~40℃、-210℃~30℃または-210℃~4℃の温度で少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも7日間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間または少なくとも12ヶ月間、水溶液中において安定である。実際の実験は、例えば、目視検査(透明で沈殿物を含まない溶液)または分析用ゲル濾過(50%未満、特に1~40%の粒子の断片化)によって決定された場合に、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも7日間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間または少なくとも3ヶ月間、5.0~8.0のpHの水溶液中、4℃~40℃の温度においても、サリプロ粒子が安定であることを示した。サリプロ粒子は、例えば、目視検査(透明で沈殿物を含まない溶液)または分析用ゲル濾過(50%未満、特に1~40%の粒子の断片化)によって決定された場合に、5.0~8.0のpHおよび40℃~75℃の温度の水溶液中で少なくとも10分間安定であることも証明された。いくつかの実施形態において、粒子は、長期貯蔵のために凍結乾燥された後、水溶液中で再構成され得る。いくつかの実施形態において、サリプロ粒子は、例えば、pH7.5の適切な緩衝液中での再構成後(50%未満、特に40%未満、または1~40%の粒子の断片化)の分析用ゲル濾過によって決定された場合に、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも7日間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも6ヶ月間または少なくとも12ヶ月間、-210℃~80℃、特に-210℃~40℃、-210℃~30℃または-210℃~4℃において、凍結乾燥された形態で安定である。本明細書で使用される「断片化」は、ゲル濾過溶出プロファイルにおいて、サリプロ粒子に対応するピークのサイズ(すなわち、ピーク高さ)が、新たに調製されたサリプロ粒子のピークサイズと比較して、遊離非脂質結合SAPLIPおよび/または遊離脂質および/または凝集体のピークサイズを代償にして減少したことを意味する。したがって、例えば、40%の断片化は、ピークサイズ(すなわち、ゲル濾過溶出プロファイルにおけるピークの高さ)が貯蔵前のピークサイズ(100%)と比較して40%減少したことを意味する。
実際の実験は、サリプロ粒子が、界面活性剤を実質的に含まない水溶液中でも特に安定であることを示した。好ましくは、水溶液は、使用される界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)より低い界面活性剤濃度を含む。CMCは、その濃度を上回るとミセルが形成され、系に添加されたすべての追加の界面活性剤分子がミセル中に組み込まれる界面活性剤の濃度として定義される。
サリプロ粒子中に組み込まれるべき脂質の少なくとも一部は、本発明の方法の工程a)において提供される。方法の任意のさらなる段階、特に、本発明の方法の1つまたは複数の工程b.1)/b.2)および/またはc.1)/c.2)間に、さらなる脂質を提供することができる。一実施形態において、脂質は、古細菌、原核生物、真核生物またはウイルスの脂質およびこれらの混合物からなる群から選択される。
本発明の方法の代替(I)に特異的な実施形態では、工程c.1)において、支持体に結合したサポシン様タンパク質を、工程a)において提供された古細菌、原核生物、真核生物またはウイルスの膜と接触させる。膜は、疎水性作用物質と、サリプロ粒子中に組み込まれるべき脂質の少なくとも一部とを含む。これにより、異なる膜脂質および任意に膜タンパク質組成を有するサポシンリポタンパク質粒子の異種混合物を含むサリプロ粒子のライブラリーの形成が可能になる。
支持体に結合したサポシン様タンパク質は、それが接触している膜成分を区別しないようである。したがって、本発明の方法の工程c.1)において、支持体に結合したサポシン様タンパク質を、複雑な生体膜と接触させれば、これにより、複雑さを反映し、使用される生体膜の膜脂質およびタンパク質組成のスナップショットを提示する、サリプロ粒子の支持体に結合されたライブラリーが得られる。このようにして生体膜のリピドーム/プロテオームの支持体に結合されたライブラリーを調製することは、元の膜構造の別個の単位がサリプロ粒子中で保存されるように見受けられるという利点を有する。このような支持体に結合したライブラリーは、ハイスループットスクリーニングおよびバイオセンサ用途などの特殊用途に有利である。
本発明による「ライブラリー」という用語は、一組(複雑な複数)の異なるサリプロ粒子を意味する。特に、相違は、粒子のサイズおよび組成、特にその中に含まれる膜構成成分、すなわち膜脂質、および任意に膜タンパク質の組成に存在し得る。典型的には、ライブラリーは、「脂質のみの粒子」と異なる種類の膜タンパク質を含有するサリプロ粒子との混合物である。これは、本明細書で使用される「異なる膜脂質および任意に膜タンパク質組成」という用語によって表される。ライブラリー中の粒子は、異なる膜脂質の含有量および組成においても異なり得る。好ましくは、ライブラリー中のいくつかの粒子は、それらが膜タンパク質を含有するか否か、およびそれらがいずれの膜タンパク質を含有するかという事実において異なる。
工程c.1)において、支持体に結合したサポシン様タンパク質を、工程a)において提供された古細菌、原核生物、真核生物またはウイルスの膜と接触させることによって、異なる膜脂質および任意に膜タンパク質組成を有するサポシン様粒子のライブラリーが得られる。
本発明の方法によって得ることができるサリプロ粒子のライブラリーは、膜タンパク質を欠く、すなわち、サポシン様タンパク質および未精製膜由来の膜脂質のみから本質的に構成されるサリプロ粒子(「空の」サリプロ粒子)を含むことができる。しかしながら、ライブラリーは、1つまたはそれより多くの膜タンパク質を含むサリプロ粒子(「充填された」サリプロ粒子)も含む。
真核生物は、その細胞が核を含有し、膜によって囲まれたさらなる細胞小器官を任意に含有してもよい任意の細胞または生物である。一実施形態において、本発明による方法で使用される膜は、真核生物由来の膜、例えば細胞膜および/または細胞小器官に由来する膜である。細胞小器官の例は、ゴルジ装置、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、小胞体、葉緑体、核などである。
真核生物の例は、植物、動物ならびに酵母およびカビなどの真菌である。本発明による方法で使用することができる好ましい真核細胞は、哺乳動物細胞、特に動物およびヒト細胞、昆虫細胞、鳥類細胞、酵母細胞などの真菌細胞、植物細胞ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。哺乳動物細胞という用語は、特に、培養培地中に保たれる動物細胞およびヒト細胞も含む。
原核生物は、核を欠く単細胞生物である。原核細胞は、真核細胞よりも単純で小さく、膜小器官を欠いている。原核生物の例は細菌である。例示的な細菌門は、アシドバクテリウム門(acidobacteria)、アクチノバクテリウム門(actinobacteria)、アクイフェクス門(aquificae)、アルマティモナス門(armationadetes)、バクテロイデス門(bacteroidetes)、カルディセリカ門(caldiserica)、クラミジア門(chlamydiae)、クロロビウム門(chlorobi)、クロロフレクサス門(chroflexi)、クリシオゲネス門(chrysiogenetes)、シアノバクテリア門(cyanobacteria)、デフェリバクター門(deferribacteres)、デイノコッカス-サーマス門(deinococcus-thermus)、ディクチオグロムス門(dictyoglomi)、エルシミクロビウム門(elusimicrobia)、フィブロバクター門(fibrobacteres)、ファーミキューテス門(firmicutes)、フソバクテリウム門(fusobacteria)、ジェマティモナス門(gemmatimonadetes)、レンティスファエラ門(lentisphaerae)、ニトロスピラ属(nitrospira)、プランクトバクテリア門(planctobacteria)、プロテオバクテリア門(proteobacteria)、スピロヘータ目(spirochaetae)、シネルギステス門(synergistetes)、テネリクテス門(tenericutes)、サーモデスルフォバクテリア門(thermodesulfobacteria)、テルモトガ門(thermotogae)およびウェルコミクロビウム門(verrucomicrobia)である。本発明による方法で使用することができる好ましい原核細胞は、細菌、特に病原性細菌、およびその混合物である。
古細菌は、原核生物および真核生物とは遠縁関係であるに過ぎない。詳細な概要は、例えば、De Rosa et al.,’’Structure,Biosynthesis,and Physicochemical Properties of Archaebacterial Lipids’’,MICROBIOLOGICAL REVIEWS,p.70-80 Vol.50,No.1,1986またはAlbers et al.,’’The archaeal cell envelope’’,Nature Reviews Microbiology,9,p.414-426,2011に記載されている。De Rosaらは、古細菌の膜が原核生物および真核生物の膜とは大きく異なる分子を含むことを報告している。原核生物および真核生物は、主としてグリセロール-エステル脂質を含む膜を含むのに対して、古細菌は、グリセロール-エーテル脂質を含む膜を含む。エーテル結合は、エステル結合よりも化学的に耐性が高い。この安定性は、古細菌が極端な温度および極めて酸性またはアルカリ性の環境で生き残るのに役立つ可能性がある。原核生物および真核生物はエーテル脂質を含み得るが、古細菌とは対照的に、これらの脂質は膜のごくわずかな成分であるか、または膜の成分ではない。
さらに、古細菌の脂質はイソプレノイド側鎖を基礎とする。イソプレノイド側鎖は、任意に複数の側枝を有し得る20、25または最大40個の炭素原子を含む長鎖である。イソプレノイド側鎖は、シクロプロパンまたはシクロヘキサン環も含み得る。これは、上記の他の生物の膜に見られる脂肪酸とは対照的である。イソプレノイドは多くの生物の生化学において重要な役割を果たすが、古細菌のみがイソプレノイドを使用してリン脂質を作製する。一部の古細菌では、脂質二重層は単層で置き換えられ得る。
古細菌の例は、メタン生成古細菌、好塩細菌および好熱好酸性古細菌である。本発明による方法で使用することができる好ましい古細菌は、好極限性古細菌および異なる好極限性古細菌の混合物である。
ウイルスの構造およびウイルスの膜の成分は、該当する場合、真核生物、原核生物および古細菌の膜とは異なる。これは、例えば、Lorizate et al.,’’Comparative lipidomics analysis of HIV-1 particles and their producer cell membrane in different cell lines’’,Cellular Microbiology,15(2),p.292-304,2013およびBrugger et al.,’’The HIV lipidome:A raft with an unusual composition’’,PNAS,vol.103,No.8,p.2641-2646,2006にさらに詳しく報告されている。
Lorizateらは、様々な研究が、HIV-1膜が産生細胞の細胞膜とは異なることを示したことを報告しており、既存のサブドメインからのウイルス出芽または特殊な出芽膜のウイルス媒介性誘導を示唆している。2つの異なる細胞株から精製された細胞膜およびHIV-1の脂質分析は、調査された細胞型とは無関係に、宿主細胞の細胞膜と比較して著しく異なるウイルス膜の脂質組成を明らかにした。ウイルス粒子は、産生細胞の宿主細胞細胞膜と比較すると、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、ヘキソシルセラミドおよび飽和ホスファチジルコリン種が著しく濃縮されていた。ウイルス粒子は、不飽和ホスファチジルコリン種、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルイノシトールの低下したレベルを示した。プラスマローゲン-ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールについて、HIV-1およびドナー細胞膜の脂質組成に細胞型特異的な差異が観察され、プラスマローゲン-ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールはMT-4細胞に由来するHIV-1においてのみ強度に濃縮されていた。MT-4細胞由来のHIV-1は、ジヒドロスフィンゴミエリンも含んでいた。まとめると、Lorizateらによって報告されたこれらのデータは、HIV-1がその形態形成のために特定の脂質環境を選択し、その宿主の細胞膜と同一でないまたは類似していないことを裏付けている。通常、本発明の方法によって得られる粒子およびライブラリーは、ウイルスタンパク質および/またはウイルス膜を含有しない。
エンベロープウイルスには、オルソミクソウイルス、フラビウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。エンベロープウイルスの例は、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、インフルエンザウイルスD、バトケンウイルス、ブルボンウイルス、ドーリウイルス、C型肝炎ウイルス、デングウイルス、日本脳炎ウイルス、エンテベコウモリウイルス、黄熱病ウイルス、ジカウイルス、HTLV1およびHIVである。
本発明の方法の工程d)
本発明の方法の工程d)において、支持体に結合したサリプロ粒子を支持体から溶出させることができる。特定の用途(例えば、バイオセンサまたはラボオンチップ)では、支持体に結合したサリプロ粒子が関心対象の生成物であるので、この工程は任意に行われる。したがって、これらの事例では、支持体から粒子を溶出する必要はない。
化学結合(i)の形成を介した疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質の支持体への共有結合は、多くの場合、実質的に不可逆的である。溶出のために、化学結合は、例えば、逆結合反応または異なる開裂反応を行うことによって溶解されなければならない。例えば、切断可能な結合を有するリンカーを使用することができる。これは、例えば、プロテアーゼ(例えば、TEVプロテアーゼ)とのインキュベーションによる溶出を可能にするプロテアーゼ切断部位を含むリンカーであり得る。対照的に、親和性相互作用(ii)、架橋剤を介した間接的な相互作用(iii)、疎水性相互作用(iv)または静電相互作用(v)を介したサリプロ粒子の結合は、通常可逆的であり、粒子の比較的容易な溶出、ならびにしばしば支持体の再生およびその再使用を可能にする。
支持体からの集合したサリプロ粒子の溶出は、支持体と標的分子との間、特に上記の捕捉部分と結合部分との間の相互作用の種類に依存する様々な技術によって達成することができる。適切な溶出方法は当業者に公知である。当業者は、それによって標的分子が支持体に選択的に結合される相互作用の種類に応じて、適切な溶出戦略を選択することができる。
本明細書で使用される「溶出」という用語は、支持体に結合したサリプロ粒子の除去または置換を指す。
例えば、その構成成分の1つと支持体との間の親和性相互作用(ii)によって結合されたサリプロ粒子は、親和性相互作用を破壊および/または置換する特定の分子を液体環境に提供することによって溶出される。例えば、標的分子がHisタグでタグ付けされ、支持体がNi2+-NTA捕捉部分を有する場合、溶出は、支持体に結合したサリプロ粒子をイミダゾールと接触させることによって行われる。同様に、標的分子がGSTタグでタグ付けされ、支持体が捕捉部分としてグルタチオンを含む場合、溶出は、支持体に結合したサリプロ粒子をグルタチオンと接触させることによって行うことができる。標的分子と支持体との間の間接的な相互作用(iii)を媒介する架橋剤によって結合されているサリプロ粒子の溶出は、架橋剤もしくはリンカーを切断することによって、または架橋剤と捕捉および/もしくは結合部分との間の相互作用を破壊することによって行うことができる。捕捉部分と結合部分との間の受容体/リガンド様相互作用の場合には、標的分子上の糖部分に結合している支持体に付着されたレクチンの場合、糖などの競合的結合物質を使用することによって溶出を行うことができる。疎水性相互作用(iv)によって支持体に結合されたサリプロ粒子の溶出は、溶媒和、したがって結合した材料の溶出を促進するために、液体環境中の塩濃度を低下させることによって達成することができる。サリプロ粒子が静電相互作用(v)によって支持体に結合されている場合、溶出は、支持体に結合したサリプロ粒子を取り囲む液体環境中のpHまたは塩濃度を変化させることによって行うことができる。
特定の実施形態によれば、上述の工程、特に工程a)、b.1)/b.2)、c.1)/c.2)およびd)は、1℃~85℃、特に1℃~40℃、特に好ましくは1℃~30℃の温度で行われる。1℃~25℃、特に1℃~20℃、最も特に3℃~15℃の温度が、ほとんどの用途に十分である。しかしながら、本明細書中で教示される方法によって、当業者は、使用される膜、化合物、脂質およびタンパク質の温度安定性に関して最適なインキュベーション温度を決定することができる。
本明細書で使用される「本質的に」という用語は、本発明の方法において使用される微量のさらなる構成成分、例えば、疎水性作用物質および/もしくは脂質の提供に使用される未精製膜のさらなる構成成分、または界面活性剤などの本方法で使用される作用物質もサリプロ粒子中に存在し得ることを意味する。しかしながら、サリプロ粒子が、少なくとも1つのサポシン様タンパク質および細胞または細胞小器官の膜から得られる膜の構成成分から本質的になるということは、さらなる脂質および/またはタンパク質が添加されていないことを特に意味するものとする。
本発明の方法に従って得ることができるサリプロ粒子またはサリプロ粒子のライブラリーは、医学において、特に疾患の予防、治療もしくは重症度の軽減において使用するために、または診断方法、美容処置において使用するために、またはワクチン接種製剤として使用するために使用することができる。
例えば、サリプロ粒子は、1つまたはそれより多くの膜タンパク質および/または脂質を必要とする個体に1つまたはそれより多くの膜タンパク質および/または脂質を送達するための薬学的組成物中に含めることができ、該組成物は上記のサリプロ粒子を含む。
サリプロ粒子に加えて、薬学的組成物は、任意に、(さらなる)薬学的に許容され得るビヒクル、担体または補助剤を含むことができる。
サリプロ粒子が薬学的組成物中で使用される場合、粒子および薬学的組成物の個々の成分は、薬学的に許容され得るべきである。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合った成分、化合物または作用物質を指す。
サリプロ粒子を含有する薬学的組成物は、処置されている疾患または症状の重症度に応じて、ヒトおよび他の動物に経口、直腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏または滴剤によるなど)、頬側、エアロゾル、経口または鼻腔スプレーなどとして投与することができる。特に、薬学的組成物は、経腸、非経口および/または局所投与用に製剤化することができる。薬学的組成物は、カプセル、注入もしくは注射、ブラシで磨くことが可能な(brushable)もしくは飲用可能な組成物として、またはエアロゾルとして投与することができる。サリプロ粒子が分散体としてまたは溶液中に固体形態で存在する薬学的組成物も本明細書に記載されている。
サリプロ粒子は、診断および/または化粧品用途にも有用である。例えば、例えば上記のような検出可能な抗原またはタグを含むサリプロ粒子は、診断用作用物質として使用され、診断目的に適用され得る。後者の場合、溶出工程d)が省略される場合、本発明によって得ることができる支持体に結合した形態のサリプロ粒子を使用することも非常に有用であり得る。本発明による診断用および生命科学研究ツールの例には、タグが付加された組み込まれた膜タンパク質、タグが付加されたサポシン様タンパク質、タグが付加された脂質、組み込まれたフルオロフォアまたは造影剤(例えば、磁気共鳴画像法用)を有する粒子が含まれる。タグは、例えば、蛍光タグであり得る。
別の態様において、サリプロ粒子は、ワクチン接種製剤として、その担体として、または薬物送達ビヒクルとして有用である。ワクチン接種において特に効力があり得る多くの病原性抗原は、患者内の真核生物もしくは原核生物の病原体または疾患細胞(例えば、癌細胞)の表面上に露出されており、および/または外側細胞膜中に含まれる。これらの抗原は、例えば、病原性脂質、その他の疎水性生体分子または膜タンパク質に由来し得る。サリプロ粒子では、次いで、ワクチン接種製剤中の抗原提示送達ビヒクルとして使用することができる粒子中にこのような抗原を効果的に組み込むことができる。同じように、サリプロ粒子は、好適な宿主動物において、好ましくは、例えばウサギ、ヤギ、ラマ、マウスおよび霊長類などの哺乳動物において脂質または膜タンパク質に対する抗体を生成するための抗原提示送達ビヒクルとしての役割を果たすのにも有用である。
薬物開発、薬物スクリーニングおよび創薬のためのツールとしてのサリプロ粒子の使用も本明細書に記載されている。
例えば、細胞表面受容体またはイオンチャネルなどの特定の膜タンパク質薬物標的をサリプロ粒子に組み込み、それによってその天然状態で可溶化させ得る次いで、このような粒子は、その天然の脂質二重層環境における薬物標的膜タンパク質の活性を研究するためのアッセイにおいて利用することができ、または新しい薬物を同定するための薬物スクリーニングにおいて使用することができる。本発明の方法によれば、サリプロ粒子は、1つの粒子成分で支持体に選択的に結合されながら、集合させられる。このようにして得られた支持体に結合したサリプロ粒子は、ラボオンチップの他、表面プラズモン共鳴(SPR)、グレーティング結合干渉法(GCI)またはその他のバイオセンサ用途などのチップベースの用途において直接使用することができる。
無標識光学SPRバイオセンサは、分子相互作用の結合親和性および速度論を測定するためのゴールドスタンダードである。GE HealthcareのBiacore T100、Bio-RadのProteOn XPR36、ForteBioのOctet RED384およびWasatch MicrofluidicsのIBIS MX96という主に4つのSPRバイオセンサプラットフォームが存在する。
SPRバイオセンサの代わりに、分子相互作用を特徴付けるために、および/または相互作用する分子の速度論的速度、親和定数および濃度を決定するために、GCIに基づく導波路干渉計を使用することができる。
SPRおよびGCIベースの光学測定は、相互作用する分子の複雑な形成による質量の変化に起因するセンサ表面付近のエバネッセント場内の屈折率変化を検出するが、他のバイオセンサシステムは異なる検出戦略を適用する。熱量測定バイオセンサは、反応によって吸収または放出された熱を記録する。電位差測定バイオセンサは、電位をもたらす電荷の分布を検出する。あるいは、電流測定バイオセンサは、酸化還元反応において生成される電子の動きを表し得る。さらに、バイオセンサは、反応の経過中の光出力または反応物と生成物間の吸光度の差も検出することができる(光学バイオセンサ)。さらに、圧電バイオセンサは、バイオセンサ表面に結合した反応物または生成物の質量に起因する効果を利用する(圧電バイオセンサ)。これらのバイオセンサ用途はすべて、研究対象の分子の1つを支持体に結合させることから利益を得るという共通点を有する。本発明の方法は、関心対象の疎水性作用物質を支持体に結合したサリプロ粒子中に直接組み込むための容易で直接的な「一工程」プロセスを提供する。これは、追加の結合工程の必要性をなくし、したがって、プロセス効率およびコストの点で有利である。
本発明の方法は、膜タンパク質精製、膜タンパク質発現のための、膜および/または膜タンパク質研究、特にリピドミクスおよびプロテオミクスのための、好ましくは膜および/もしくは膜タンパク質の単離、同定および/もしくは研究またはリピドームもしくはプロテオームライブラリーもしくはデータベースの作成のためのツールとしても使用することができる。
サリプロ粒子は、一般に、元来は不溶性の膜タンパク質および膜ドメインまたは構成成分をそれらの天然の膜二重層微小環境において水溶液に可溶性にするために有用である。本発明の方法を用いて得られたサリプロ粒子は、膜タンパク質研究における多種多様な新しい用途において使用することができる。例えば、サリプロ粒子は、核磁気共鳴(NMR)、X線結晶構造解析、電子顕微鏡(EM)、質量分析、等温滴定熱量測定(ITC)、示差光散乱、X線小角散乱(SAXS)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)、生化学的アッセイ、ハイスループットスクリーニング(HTS)などの方法によって、サリプロ粒子中に組み込まれた膜タンパク質を研究することを可能にする。
本発明の方法のある特定の実施形態によって得られる粒子のライブラリーは、システム生物学、特にリピドミクスおよび膜プロテオミクスの分野における研究に特に有用である。本発明のライブラリーは、ウイルス、細胞または細胞小器官のリピドームおよび/またはプロテオームを捕捉し、可溶化するのに適し得る。リピドミクスおよびプロテオミクスにおける典型的な分析技術は、質量分析(MS)、核磁気共鳴(NMR)分光法、蛍光分光法、および計算方法などの技術である。これらの方法または技術をサリプロ粒子に適用することにより、例えば、癌、自己免疫疾患、肥満、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、高血圧症および糖尿病などの多くの代謝性疾患における天然脂質および膜タンパク質の役割のさらなる解明が可能になる。ライブラリーが支持体に結合した状態にある場合、特に、実質的に平面を有する固体支持体に結合している場合、サリプロ粒子の空間的二次元分離および固定化が達成され、これは、そのような複雑な混合物の分析に役立つ。
標的細胞または細胞小器官の膜中に存在する膜タンパク質または脂質などの新しい分子薬物標的を同定するために、疾患標的であり得る特定の細胞または細胞小器官から得られたサリプロ粒子ライブラリー全体を薬物スクリーニング目的に使用することができる。
以下、本発明の特定の実施形態を図示する図面を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明は、特許請求の範囲において定義され、本明細書に一般的に記載されている通りである。本発明は、以下の図において例示目的で示されている実施形態に限定されるべきではない。
図1は、従来技術のリポタンパク質粒子を図示する。図1は、脂質(3)とアポリポタンパク質足場タンパク質(11)とを含む先行技術(上述の欧州特許第1596828号明細書)のアポリポタンパク質A-1含有ナノディスク粒子(10)の形状および分子構成の模式図である。
図2a~図2cは、特定の実施形態によって得られたサリプロ粒子の側面(左)および上面(右)からの模式図である。図2a、図2bおよび図2cには、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、膜タンパク質(4a)/オリゴマー膜タンパク質(4b)と、任意に疎水性化合物(4c)とを含むサリプロ粒子が示されており、膜タンパク質(4a、4b)は結合部分(5)を含む。
図3a~図3cは、特定の実施形態によって得られたサリプロ粒子の側面(左)および上面(右)からの模式図である。図3a、図3bおよび図3cには、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、任意に膜タンパク質(4a)/オリゴマー膜タンパク質(4b)とを含むサリプロ粒子が示されており、サポシン様タンパク質(2)は結合部分(5)を含む。
図4a~図4bは、特定の実施形態によって得られたサリプロ粒子の側面(左)および上面(右)からの模式図である。図4aおよび図4bには、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、疎水性化合物(4c)と、任意に膜タンパク質(4a)とを含むサリプロ粒子が示されており、疎水性化合物(4c)は結合部分(5)を含む。
図5a~図5bは、特定の実施形態によって得られたサリプロ粒子の側面(左)および上面(右)からの模式図である。図5aおよび図5bには、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、疎水性化合物(4c)と、任意に膜タンパク質(4a)とを含むサリプロ粒子が示されており、サポシン様タンパク質(2)は結合部分(5)を含む。
図6a~図6fは、特定の実施形態のための疎水性作用物質を提供するための態様の模式図である。図6aおよび図6dには、脂質(3)と任意に膜タンパク質(4a,4b)とを含む未精製膜小胞(7、7’)が図示されており、図6aでは、膜タンパク質(4a)は結合部分(5)を含む。図6bおよび図6eには、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した膜タンパク質(4a)が図示されており、図6bでは、膜タンパク質(4a)は結合部分(5)を含む。図6cおよび図6fでは、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した疎水性化合物(4c)が図示されており、図6cでは、疎水性化合物(4c)は結合部分(5)を含む。
図7a~図7bは、特定の実施形態のためのサポシン様タンパク質を提供するための様式の模式図である。図7aおよび図7bには、サポシン様タンパク質(2)が図示されており、図7aでは、サポシン様タンパク質(2)は結合部分(5)を含む。
図8a~図8dは、それぞれ、工程b.2)およびb.1)における支持体に結合された疎水性作用物質またはサポシン様タンパク質の特定の実施形態の模式図である図8aには、その結合部分(5)を介して支持体(12)の捕捉部分(13)に結合されているサポシン様タンパク質(2)が図示されている。図8bには、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した疎水性化合物(4c)が図示されており、疎水性化合物(4c)は、その結合部分(5)を介して支持体(12)の捕捉部分(13)に結合されている。図8cには、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した膜タンパク質(4a)が示されており、膜タンパク質(4a)は、その結合部分(5)を介して支持体(12)の捕捉部分(13)に結合されている。図8dには、脂質(3)と膜タンパク質(4a,4b)とを含む未精製膜小胞(7)が示されており、未精製膜小胞(7)は膜タンパク質(4a)中の結合部分(5)を介して支持体(12)の捕捉部分(13)に結合している。
図9a~図9cは、疎水性作用物質を工程b.2)において支持体に結合し、工程c.2)においてサポシン様タンパク質と接触させる特定の実施形態の工程b.2)およびc.2)の模式図である。図9aでは、工程c.2)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した、支持体(12)に結合した膜タンパク質(4a)をサポシン様タンパク質(2)と接触させる(図2aを比較)。図9bでは、工程c.2)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した、支持体(12)に結合した疎水性化合物(4c)をサポシン様タンパク質(2)と接触させる(図4aを比較)。図9cでは、工程c.2)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、脂質(3)および膜タンパク質(4a、4b)を含む、支持体(12)に結合した未精製膜小胞(7)をサポシン様タンパク質(2)と接触させる(図2aを比較)。
図10a~図10dは、サポシン様タンパク質を工程b.1)において支持体に結合し、工程c.1)において疎水性作用物質と接触させる特定の実施形態の工程b.1)およびc.1)の模式図である。図10aでは、工程c.1)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合した(12)サポシン様タンパク質(2)を、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した膜タンパク質(4a)と接触させる(図3bを比較)。図10bでは、工程c.1)においてサリプロ粒子の自己集合および粒子のライブラリーの形成を可能にするために、支持体に結合した(12)サポシン様タンパク質(2)を、脂質(3)および膜タンパク質(4a,4b)を含む未精製膜小胞(7、7’)と接触させる(図3a、図3b、図3cを比較)。図10cでは、工程c.1)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合した(12)サポシン様タンパク質(2)を、脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した、疎水性化合物(4c)と接触させる(図5aを比較)。図10dでは、工程c.1)においてサリプロ粒子の自己集合を可能にするために、支持体に結合した(12)サポシン様タンパク質(2)を、いずれも脂質(3)および界面活性剤分子(6)と会合した、疎水性化合物(4c)および膜タンパク質(4a)と接触させる(図5bを比較)。
図11は、実験1cの結果を示す。図11は、タグが付加されたSLC輸送体(膜タンパク質)を親和性支持体に結合し、支持体に結合したSLC輸送体を異なる濃度のサポシンAと接触させたときのサリプロ粒子集合体のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
図12a~図12bは、実験1dの結果を示す。図12aは、実験1cの試料5から得られたサリプロ粒子のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。サイズ排除クロマトグラフィーの間に得られた画分をSDS-PAGEによって分析したところ、画分13、14および15が集合したサリプロ粒子を主に含有することが示された。図12bは、図12aに示されている画分14のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
図13は、実験3cの結果を示す。図13は、サポシンAを親和性支持体に結合し、支持体に結合したサポシンAを追加の、タグが付加されていないサポシンA、脳脂質、および任意に細菌のイオンチャネル膜タンパク質T2の形態の疎水性作用物質と接触させたときのサリプロ粒子集合体のサイズ排除クロマトグラフィー分析を示す。
図14a~図14bは、Bruhn(2005),Biochem J 389(15):249-257の図4Aおよび図4Bを再現している。配列は、上記の表1に示されるように、配列番号7~46として提供される。
図1は、脂質(3)および脂質結合ポリペプチド(11)としてのアポリポタンパク質A-1を含むナノディスク粒子(10)を含有する先行技術のアポリポタンパク質A-1(上述の欧州特許第1596828号明細書参照)を図示する。先行技術のアポリポタンパク質由来ナノディスクとは対照的に、本発明の脂質結合ポリペプチド、すなわち、サポシン用タンパク質は、二重ベルト状の様式で脂質を包囲するのではなく(図2、3および4参照)、むしろ、本発明の粒子は、本発明の方法によって得られた所与のサリプロ粒子内の個々のサポシン様タンパク質間での直接的なタンパク質-タンパク質接触が実質的に存在しないヘッドトゥーテール配向で配置された2またはそれより多くのほぼV字形状またはブーメラン形状の脂質結合ポリペプチドによって取り囲まれた、膜脂質を含むコアによって一体化されている(図2、3および4参照)。
図2a~図2cは、特定の実施形態に従って得られたサリプロ粒子の模式図である。図2a、図2bおよび図2cの粒子は、サポシン様タンパク質(2)と、複数の異なる脂質(3)と、膜タンパク質(4a)/オリゴマー膜タンパク質(4b)と、任意に疎水性化合物(4c)とを含む。図2a~図2cにおける膜タンパク質(4a,4b)は、結合部分を含む。膜タンパク質中の結合部分は、天然のまたは操作された結合部分であり得る。膜タンパク質の結合部分は、膜タンパク質のアミノ酸配列のN末端、C末端または膜タンパク質のアミノ酸配列内に存在することができる。膜タンパク質が操作された結合部分を含有する場合、操作された結合部分は、タンパク質合成中または合成後に膜タンパク質に付着させることができる。図示されていない別の実施形態では、膜タンパク質(4a,4b)は、同一のまたは異なる種類の複数の結合部分を有することができる。図2a~図2cに図示されているサリプロ粒子の脂質(3)は互いに異なり、サリプロ粒子の脂質組成が均一または均質ではないことを意味する。工程a)における膜タンパク質(4a,4b)がどのように提供されるかに応じて、脂質の組成は変化する。図示されていないさらなる実施形態では、サリプロ粒子は、典型的にはウイルス、古細菌、真核生物および/または原核生物の膜中に存在するさらなる成分も含み得る。脂質(3)および膜タンパク質(4a,4b)は、同じウイルス、古細菌、真核生物もしくは原核生物の膜供給源にまたは異なる供給源に由来し得る。
図2a~図2cの粒子は原寸に比例して描かれていない。粒子中に組み込まれる膜タンパク質(4a,4b)のサイズに応じて、粒子は、他の粒子と比較してサイズが実質的に異なり得る。本発明の方法によって得られるサリプロ粒子のサイズは、柔軟である。例えば、オリゴマー膜タンパク質を内部に抱く図2bの粒子は、モノマー膜タンパク質を含有する図2aの粒子と比較してより大きく、より多くのサポシンサブユニット(2)を含有する。サリプロ粒子のサイズに応じて、粒子は、粒子あたり2つまたはそれより多くの、ヘッドトゥーテール様式で配置されているサポシン様分子を含む。図2aおよび図2cに図示されている粒子は2つのサポシン様分子を含むのに対して、図2bに図示されている粒子は3つのサポシン様分子を含む。
図2a、図2bおよび図2cは、サポシン様タンパク質(2)と、ウイルス、古細菌、真核生物および/または原核生物の膜源からの脂質(3)と、膜タンパク質(4a,4b)と、任意に疎水性化合物とを含むサリプロ粒子を、側面図および上面図として簡略化された形態で図示する。膜タンパク質(4a)は、モノマー形態の内在性膜貫通タンパク質であり得る。しかしながら、膜タンパク質は、図2bに図示されているようなオリゴマー形態の内在性膜貫通タンパク質、または表在性膜タンパク質、脂質結合状態の両指向性タンパク質、脂質アンカー型タンパク質、または融合した疎水性および/もしくは膜貫通ドメインを有するキメラタンパク質でもあり得、これらはすべてモノマー状態またはオリゴマー状態であり得る。
図2cに図示されている粒子は、天然または合成起源の疎水性化合物(4c)をさらに含むという点で、2aおよび2bとは異なる。1つのサリプロ粒子内の疎水性化合物の数は変化し得る。疎水性化合物は、脂質(3)および/または任意の種類の膜タンパク質と緊密な相互作用を形成することができる。膜タンパク質は、例えば、図2cに図示されるようなモノマー膜貫通タンパク質(4a)であり得る。
図3a~図3cは、特定の実施形態に従って得られたサリプロ粒子を、同じく簡略化された模式的形態(側面図左および上面図右)で、原寸に比例せずに図示する。図3a、図3bおよび図3cに図示された粒子は、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、任意にモノマーまたはオリゴマー形態の膜貫通タンパク質(4a,4b)を含み、サポシン様タンパク質(2)は結合部分(5)を有する。図示されていない別の実施形態では、サポシン様タンパク質(2)は、同一のまたは異なる種類の複数の結合部分を有することができる。図2の粒子について記載されているように、図3に図示される粒子は、粒子を形成するために単純に2つより多くのサポシン様タンパク質(2)を組み込むことによって任意の種類の疎水性タンパク質を組み込むために、それらの脂質(3)組成およびそれらのサイズに関して変化し得る。
図4aおよび図4bは、本発明のある特定の実施形態のサリプロ粒子の側面(左)および上面(右)からの原寸どおりでない模式図を示す。図4aおよび図4bに図示される粒子は、サポシン様タンパク質(2)と、脂質(3)と、疎水性化合物(4c)と、任意に膜タンパク質(4a)とを含む。疎水性化合物は、天然起源または操作された起源であり得る結合部分を現す。天然の結合部分は疎水性化合物(4c)の内部部分を形成することができるが、操作された結合部分は、通常、疎水性化合物の合成後にまたは天然疎水性化合物の精製後に適切な末端反応基に付着される。図示されていないさらなる実施形態では、サリプロ粒子は、同一の天然のまたは操作された結合部分を有する異なる種類の疎水性化合物を含み得る。図4aおよび図4bの粒子は、粒子中に組み込まれる脂質(3)、疎水性化合物(4c)、膜タンパク質(4a)およびサポシン様タンパク質(2)の数および種類が異なり得る。
図5aおよび図5bは、同じく原寸どおりでない模式的な形態(側面図左および上面図右)で、特定の実施形態のサリプロ粒子を示す。図5aおよび図5bに図示されている粒子は、疎水性化合物(4c)ではなくサポシン様タンパク質(2)が結合部分を有するという点で、図4aおよび図4bに図示される粒子とは異なる。示されていない、図5aおよび図5bに図示された粒子の異なる組成に関しては、図4aおよび図4bについて説明したのと同じ考慮事項が当てはまる。
図6a~図6fは、本発明の方法の工程a)において、疎水性生体分子(すなわち、例えば、モノマー形態(4a)またはオリゴマー形態(4b)の膜貫通タンパク質)または疎水性化合物の形態の疎水性作用物質を提供する特定の実施形態を示す。図6aでは、膜タンパク質(4a,4b)は、未精製膜小胞(7、7’)として提供されている。膜小胞(7、7’)は、ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物起源のものであり得る。膜小胞(7,7’)は複数の脂質(3)を含み、小胞(7)の場合には、この図では2つの膜タンパク質(4a,4b)のみによって単純化された形態で例示されている複数の膜タンパク質を含み、膜タンパク質(4a)は結合部分(5)を有する。小胞(7’)は、「空の」脂質のみの粒子である。小胞(7、7’)として例示される未精製膜小胞は、例えば、古細菌、原核生物または真核生物起源の細胞または細胞小器官を溶解することによって直接得ることができる。未精製膜小胞は、ウイルスエンベロープを破裂させることによっても得ることができる。(7)および(7’)などの小胞は、通常、溶解または膜破裂時に自然に形成される。未精製膜小胞は、界面活性剤分子(ここでは図示せず)を含むことができ、または界面活性剤分子と会合することができる。図6bには、結合部分(5)を有する膜タンパク質(4a)が図示されており、これは天然の膜または未精製膜小胞内には存在しないが、人工的な界面活性剤で可溶化された状態にある(図6bに図示されている、脂質(3)および界面活性剤分子(6)との膜タンパク質(4a)の会合を参照)。図6cには、界面活性剤で可溶化された状態の、結合部分(5)を有する疎水性化合物が図示されており、疎水性化合物が、脂質(3)および界面活性剤分子(6)を含有するミセル内に埋め込まれていることを意味する。任意に、図6bに図示される膜タンパク質(4a)または図6cに図示される疎水性化合物は、界面活性剤分子のみによって可溶化されてもよい。図6d~図6fに図示される疎水性作用物質を送達するための様式は、膜貫通タンパク質(4a,4b)または疎水性化合物(4c)として例示される疎水性生体分子が結合部分を含まないという点で、図6a~図6cとは異なる。
図7aおよび7bは、本発明の方法においてサポシン様タンパク質を提供するための特定の実施形態を図示する。図7aは、サポシン様タンパク質が天然のまたは操作された起源の結合部分を有するという点で、図7bとは異なる。天然の結合部分は、サポシン様タンパク質の天然アミノ酸配列の一部を形成するが、操作された起源の結合部分は、サポシン様タンパク質の合成中または合成後に付着することができる。操作された結合部分は、本発明の方法においては捕捉部分であるそれらの対応する結合パートナーに高い親和性で結合するように最適化される。さらなる実施形態においては、サポシン様タンパク質は、界面活性剤分子(ここでは図示されていない)と会合することができる。
図8a~図8dは、支持体に結合したサポシン様タンパク質(図8a)および疎水性作用物質(図8b~図8d)の原寸どおりではない図を示す。サポシン様タンパク質(図8a参照)または疎水性作用物質(図8b~図8d参照)中の結合部分の、支持体(12)の捕捉部分(13)への選択的結合は、支持体上の単一の捕捉部分について例示されている。実際には、支持体は、通常、同一のまたは異なる種類の複数の捕捉部分を備えている。結合部分/捕捉部分認識対の相互作用は、化学結合形成、親和性に基づく相互作用(架橋剤による媒介を含む)、疎水性相互作用および/または静電相互作用に基づくことができる。支持体に結合したサポシン様タンパク質(2)は、界面活性剤で可溶化された状態であり得る(ここでは図示せず)。また、未精製膜小胞(7)は、界面活性剤分子(ここでは図示せず)を含むことができ、または界面活性剤分子と会合することができる。図8dの膜タンパク質(4a,4b)は、未精製膜小胞(7)の形態でそれらの天然の脂質環境中に埋め込まれているが、疎水性化合物(4c)および膜タンパク質(4a)は、人工の界面活性剤で可溶化された状態にあり、それによって前記疎水性作用物質の周りのミセルは、脂質および界面活性剤によって形成され得る。さらなる実施形態において、サポシン様タンパク質(2)および/または疎水性作用物質を可溶化するために使用される界面活性剤は、同一のまたは異なる化学的性質のものであり得る。
図9a~図9cは、方法工程b.2)およびc.2)の特定の実施形態を簡略化された模式的形態で示す。界面活性剤で可溶化された膜タンパク質(4a)(図9a)、界面活性剤で可溶化された疎水性化合物(4c)(図9b)および未精製膜小胞(7)中に埋め込まれた膜タンパク質(4c)(図9c)の形態の、支持体に結合した疎水性作用物質を、工程c.2)において、任意に界面活性剤で可溶化された状態であってもよいサポシン様タンパク質(2)と接触させる。通常、粒子の自己集合は、支持体に結合した疎水性作用物質をサポシン様タンパク質(2)と接触させると直接支持体上で起こる。任意に、ウイルス、古細菌、真核生物および/または原核生物起源の追加の可溶化された脂質を粒子集合反応に添加してもよいが、これは図9a~図9cには図示されていない。図9aの可溶化された膜タンパク質(4a)および可溶化された疎水性化合物(4c)は、工程b.2)において支持体に選択的に結合するために精製された形態で提供される。図9aおよび図9bの集合した粒子は、可溶化された膜タンパク質(4a)または疎水性化合物(4c)と会合した脂質(3)から実質的に構成される。任意に、追加の脂質を支持体の液体環境に添加してもよい。図9cでは、未精製膜小胞(7)が支持体(12)に結合されている。図9cに図示されるように、その結合部分(5)によって支持体(12)の捕捉部分(13)に結合された膜タンパク質(4a)のみが、サポシン様タンパク質(2)と接触した際に固体支持体に結合したままであり、支持体上でのサリプロ粒子の自己集合を可能にする。当初、工程b.2)において支持体に結合した未精製膜小胞の一部を形成し、未精製膜小胞(7)中の多量体膜タンパク質(4b)として例示されている、支持体の捕捉部分に対する相補的結合部分を提示しない他の膜タンパク質は、支持体に結合したサリプロ粒子中に組み込まれない。したがって、図9cに図示される実施形態は、工程b.2)における支持体に結合した複数の未精製膜小胞からの、単一種類の膜タンパク質(4c)を含むサリプロ粒子の製造を可能にする。組み立てられた粒子は、界面活性剤を実質的に含まない。図9a~図9cの支持体に結合した粒子を溶出することができる。溶出戦略は、支持体(12)の捕捉部分(13)と疎水性作用物質中の結合部分(5)の間の相互作用の種類に依存する。
図10a~図10dは、方法工程b.1)およびc.1)の特定の実施形態を簡略化された模式的形態で示す。支持体に結合したサポシン様タンパク質を、界面活性剤で可溶化された膜タンパク質(モノマーの膜貫通タンパク質(4a)として例示されている、図10a参照)、未精製膜小胞(小胞(7、7’)として例示されている、図10b参照)、界面活性剤で可溶化された疎水性化合物(4c)(図10c参照)、またはその両方、すなわち界面活性剤で可溶化された疎水性化合物(4c)および膜タンパク質(4a)(図10d参照)と接触させて、工程c.1)において、支持体上でのそれぞれのサリプロ粒子の自己集合を可能にする。隣接する捕捉されたサポシン様タンパク質または追加的に添加された遊離のサポシン様タンパク質は、個々のサリプロ粒子(図示せず)を形成するのに寄与する。サポシンリポタンパク質粒子(図示せず)の自己集合を可能にするために、例えば、工程c.1)の間または後に、追加のサポシン様タンパク質が添加される。図10aの集合した粒子は、可溶化された膜タンパク質(4a)と会合した脂質(3)から実質的に構成される。可溶化されたタンパク質は、通常、タンパク質精製方法によって得られ、これらの状況下では、界面活性剤分子と脂質(3)を含むミセル中に埋め込まれていることが多い。可溶化された膜タンパク質と会合した脂質は、多くの場合、膜タンパク質(4a)がそこから精製された膜の「シェル脂質」である。膜タンパク質は、その「天然の」膜から精製され得るが、そうでなければならないというわけではない。例えば、真核生物の膜タンパク質は、その後、膜タンパク質がそこから精製される細菌またはウイルスなどの原核生物細胞において導入遺伝子から過剰発現され得る。したがって、界面活性剤で可溶化された真核生物の膜タンパク質と会合したままの脂質(3)は、この精製されたタンパク質の「天然の」脂質環境の一部を形成しないことがあり得る。シェル脂質は、膜タンパク質(4a)の疎水性表面にしっかりと密着する。任意に過ぎないが、サリプロ粒子中に組み込むために、さらなる脂質を液体環境に添加してもよい。
工程c.1)において、未精製膜小胞(図10bでは小胞(7、7’)として例示されている。)を、支持体に結合したサポシン様タンパク質と接触させることにより(図10b参照)、サリプロ粒子の支持体に結合したライブラリーの生成が可能になる、すなわち、支持体に結合したサリプロ粒子は、それらのサイズ、ならびにサポシン様タンパク質(2)、脂質(3)および/または膜タンパク質(4a,4b)を含む組成が異なる。疎水性作用物質を一切含まない「空の」粒子さえも作製することができる。ライブラリーの粒子では、それぞれの膜タンパク質(4a,4b)は、それが得られた膜環境中に埋め込まれている、すなわち、膜タンパク質はその「天然の」脂質環境中に埋め込まれたままである。したがって、集合したサリプロ粒子中の膜タンパク質(4a,4b)と会合した脂質(3)は、好ましくは、未精製膜小胞(7)中に存在する膜タンパク質の天然の脂質環境から持ち越される。ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の膜は、供給源の膜としての役割を果たすことができる。図10cの集合した粒子は、粒子あたり3つの疎水性化合物を含む。もちろん、単一粒子中に組み込まれる疎水性化合物の数は、工程c.1)の自己集合反応において使用される脂質に対する疎水性化合物のモル比を調整することによって調整することができる。図10cの疎水性化合物は、可溶化された状態で自己集合反応に添加される。疎水性化合物の可溶化は、通常、疎水性膜タンパク質の可溶化と同様に、界面活性剤分子によって達成される。図10cに図示されるように、脂質は、疎水性化合物の可溶化された状態の一部を形成することができる。任意に、追加の脂質を添加することができる。図11dに図示されているように、可溶化された疎水性化合物(4c)および膜タンパク質(4a)の形態の疎水性作用物質を、工程c.1)において一緒に適用することができる。膜タンパク質に対する可溶化された疎水性化合物の任意の所望の分子比を選択することができ、得られる粒子の組成に影響を及ぼす。図10a~図10dに図示される集合した粒子は、通常、界面活性剤を実質的に含まない。図10a~図10dの支持体に結合した粒子は、溶出することができる。溶出戦略は、捕捉部分(13)/結合部分(5)対の間の相互作用の種類に依存する。
以下の実施例は、特定の実施形態および図面を参照しながら具体的に、本発明をより詳細にさらに説明する役割を果たすが、特定の実施形態および図面は本開示を限定することを意図するものではない。
I.略号
以下の略号を使用する。
Figure 2022529132000005
Figure 2022529132000006
II.サポシンAの精製
以下の実験で用いた精製サポシンAは、以下のように調製した。pNIC-Bsa4プラスミド中にヒトサポシンAのコード領域(配列番号1)が挿入され、大腸菌Rosetta gami-2(DE3)(Novagen)株中に形質転換され、発現されたベクターを用いて、サポシンAタンパク質の発現を行った。テトラサイクリン、クロラムフェニコールおよびカナマイシンを補充したTB培地中にて37℃で細胞を増殖させ、0.7mM IPTGで誘導した。誘導の3時間後、12.000×gで15分間の遠心分離によって細胞を収集した。上清を廃棄し、溶解緩衝液LB1(20mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、20mMイミダゾール)を用いて細胞ペレットを再懸濁し、超音波処理によって破壊した。可溶化液を26.000×gで30分間の遠心分離に供し、上清を10分間85℃に加熱した後、26.000×gで30分間追加の遠心分離工程に供した。分取IMAC精製は、Ni Sepharose(商標)6 Fast Flow mediumを用いた60分間のエンドオーバーエンド回転による上清のバッチ吸着によって行った。サポシンAのIMAC樹脂への結合後、クロマトグラフィー媒体を10mmの(内径)オープン重力流動カラム中に充填し、15ベッド体積の溶解緩衝液LB1で洗浄することによって未結合のタンパク質を除去した。15ベッド体積の洗浄緩衝液(20mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、40mMイミダゾール)で樹脂を洗浄した。5ベッド体積の溶出緩衝液EB1(20mM HEPES pH7.5、150mM NaCl、400mMイミダゾール)の添加によってサポシンAを溶出した。組換えTEVプロテアーゼを補充したゲル濾過緩衝液GF pH7.5(20mM HEPES pH7.5、150mM NaCl)に対して溶出液を一晩透析した。2mlのIMAC樹脂に溶出液を通すことによって、切断不可能なHisタグを含有するTEVプロテアーゼを溶出液から除去した。遠心フィルターユニットを使用して、切断された標的タンパク質を5mlの体積に濃縮し、AKTAexplorer(商標)10クロマトグラフィーシステムを使用して、HiLoad Superdex(商標)200 16/60 GLカラムに搭載した(いずれもGE Healthcare)。ピーク画分をプールし、1.2mg/mlタンパク質に濃縮した。タンパク質試料を液体窒素中で急速凍結し、-80℃で保存した。
III.支持体上でのサリプロ粒子の生成
実施例1:
本実施例では、大型膜貫通輸送体(SLC)が、本発明による方法の代替(II)において疎水性作用物質として使用される。脂質および疎水性作用物質は、SLCを過剰発現するHEK293F細胞から得られた未精製膜画分の形態で提供される。SLC輸送体は、結合部分としてStrep II-タグを含む。抗Strep-II親和性精製ビーズを本発明による支持体として使用した。抗Strep-II親和性精製ビーズは、SLC輸送体タンパク質中に含まれるStrep II結合部分を結合することができる抗Strep-II捕捉部分を含む。支持体に結合したSLC輸送体を含有する可溶化された膜にサポシンAを添加すると、SLC輸送体タンパク質中に含まれるStrep-IIタグを介して依然として支持体に付着されたSLC輸送体含有サポシン脂質粒子の形成が可能になった。したがって、サポシン脂質粒子の集合は、完全に支持体上で起こり、細胞膜に由来し、支持体に結合したSLC輸送体タンパク質と依然として複合体を形成している内因性脂質を伴って起こった。
1.a.膜タンパク質の過剰発現
N末端Strep-タグII、続いてdaGFPおよびPreScissionプロテアーゼ切断部位をコードする発現ベクター中に、ヒトSLC輸送体のコード配列を導入した。形質移入の前に、4mMのL-グルタミン(Sigma)および5μg ml-1のフェノールレッド(Sigma-Aldrich)を補充したExcell293培地(Sigma)中で、2.5×10細胞ml-1の密度まで、HEK293F細胞(ATCC細胞株、マイコプラズマ試験陰性)を増殖させた。ポリエチレンイミン(PEI)(Polysciences)を使用して、2.5×10細胞ml-1の密度で、Freestyle293培地(Invitrogen)中において発現ベクターで細胞を一過性に形質移入し、形質移入の6時間後に等しい体積のExcell293で希釈し、培養物の希釈の12時間後に2.2mMバルプロ酸(Sigma)で処理した。次いで、形質移入された細胞は、融合タンパク質Strep II-daGFP-SLCを過剰発現した。形質移入の約48時間後にすべての細胞を収集した。
1.b.未精製細胞膜の調製
本質的に上記a.に記載されているように、融合タンパク質Strep II-daGFP-SLCの大規模発現を5lの培養物中で行った。1mM L-Asp、1mM EDTA、1mM PMSF、1mM TCEPおよび哺乳動物プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)の1:200(v/v)希釈物を補充した50mM HEPES/Tris塩基、pH7.4、50mM NaClを含有する溶解緩衝液(LB2)中に細胞を収集し、およそ103,000kPaで3回の実行によって細胞ホモジナイザー(EmulsiFlex-C5、Avestin)中で破壊した。得られたホモジネートを遠心分離(4,500 gで0.5時間)によって清澄化し、超遠心分離(186,000gで1.5時間)によって未精製膜を回収した。LB2緩衝液で膜を1回洗浄し、最後に50mM HEPES/Tris塩基、pH7.4、200mM NaCl、1mM L-Asp、1mM EDTA、1mM TCEP、および10%グリセロールを含有する緩衝液中においてダウンサーでホモジナイズし、液体N中で急速凍結し、0.5g膜ml-1で-80℃で保存した。
1.c.親和性支持体への結合および溶出
以下の緩衝液を使用した:
-可溶化緩衝液(SB):50mM HEPES pH 7.5、2% DDM、0.4% CHS、200mM NaCl、1mM L-Asp、1mM EDTA、1mM TCEPおよび5%グリセロール。
-作業用緩衝液(WB):50mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、1mM L-Asp、1mM TCEPおよび5%グリセロール。
-溶出緩衝液EB2:2.5mMデスチオビオチン(dBiotin)を補充したWB。
-HNG緩衝液:50mM HEPES pH 7.5、200mM NaClおよび5%グリセロール。
過剰発現したSLC輸送体を含有する800μlの未精製膜(0.5g膜ml-1)を4.2mlのSBで可溶化し、回転ホイールを使用して4℃で90分間インキュベートした。30000gで30分間の遠心分離によって膜残屑を除去し、続いて900μlの平衡化された抗Strep-II親和性精製ビーズ(StrepTactin Sepharose beads、GEヘルスケア)を添加し、WBを使用して総体積を5mlに補正した。次いで、試料を4℃で1時間インキュベートして、Strep-IIタグが付加されたSLC輸送体を親和性ビーズに結合させた。次いで、試料を5つの別々のカラムに分割し、重力フロースルーによって非結合材料を除去することを可能にした。親和性ビーズは、この段階では洗浄せず、天然の細胞膜脂質、界面活性剤ミセルおよびWB成分を部分的に含有する環境(ビーズの「デッドボリューム」)中に親和性結合されたSCL輸送体を含有した。
異なる量(0~4ml)の3.6mg/mlサポシンを対応するカラムに添加した。次いで、混合物を5つの新しいチューブに移し、以下のようにWBを使用して総試料体積を5mlに補正した:
-試料1:0mlのサポシンA+4mlのWB
-試料2:0.5mlのサポシンA+3.5mlのWB
-試料3:1mlのサポシンA+3mlのWB
-試料4:2mlのサポシンA+2mlのWB
-試料5:4mlのサポシンA
次いで、回転ホイールを用いて試料1~5を4℃で1時間インキュベートした後、カラムに戻した。重力フロースルーを使用してカラムから非結合材料を除去した後、WBで6CV洗浄し、4mlの溶出緩衝液EB2による溶出工程を行った。SEC緩衝液として界面活性剤を含まないWB中で実行するSuperose 6増加、5/150 GLカラムを用いたSEC(280nmでのタンパク質検出)を使用して、50μlの各溶出試料を分析した。
結果を図11に図示する。結果は、脂質と複合体を形成している膜タンパク質が親和性支持体に結合していても、サポシンリポタンパク質粒子を得ることができることを実証している。サポシンAの量が増加すると(3.6mg/mlの濃度の0.5mL、1mL、2mLおよび4mLのサポシンA)、サリプロ粒子の形成も増加する。これらの条件下での陰性対照として、サポシンAを液体環境から除外すると、サリプロ粒子を得ることができなかった(図11、試料1)。
図11に図示される結果は、界面活性剤を含まない緩衝液で溶出する前に、支持体に結合したサリプロ粒子がカラムの徹底的な洗浄工程中に安定であることも補強する。
1.d.得られたサリプロ粒子の分析
親和性ビーズを4mlのSapAと共にインキュベートした後に得られた溶出液を(前節c、試料5を参照)、100kDaの分子サイズカットオフを有するAmicon Ultra-2遠心フィルターを用いて濃縮した。1mM L-Aspを補充した、界面活性剤を含まないHNG緩衝液中でSuperose 6増加5/150 GLカラムを使用するSECによって、40μlの濃縮された試料をさらに分析した。
SDS-PAGEによるSEC画分の分析は、主に画分13、14および15が、SLC輸送体およびサポシンを含有する精製されたサリプロ粒子を含有することを示す(図12a)。
再構成されたサリプロ粒子の均一性をさらに検証するために、1mM L-Aspを補充した、界面活性剤を含まないHNG緩衝液中でSuperose 6増加5/150 GLカラムを使用するSECによって、画分14からの20μlをさらに分析した。対応するSECプロファイル(図12b)は、親和性ビーズ上で再構成されたときのサリプロ粒子の安定性および均一性をさらに実証している。
本実施例に提示されたデータは、粒子成分の1つを親和性支持体に結合している間に、疎水性作用物質をサポシン粒子中に再構成することが可能であることを明確に実証している。データは、未精製膜を本発明の方法において使用できることも示す。
IV.全細胞からのサリプロ粒子の生成
実施例2:
本実施例では、膜タンパク質が、本発明による方法の代替(II)において疎水性作用物質として使用される。脂質および疎水性作用物質は、膜タンパク質を過剰発現する無処理の細胞、すなわちヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞の形態で提供される。前記HEK細胞は、機械的細胞溶解工程を行わずに界面活性剤と接触させるのみである。真核生物の膜タンパク質は、結合部分としてFLAGタグを含む。抗FLAG親和性精製ビーズを本発明による支持体として使用する。抗FLAG親和性精製ビーズは、真核生物膜タンパク質に含まれるFLAG結合部分に結合することができる抗FLAG捕捉部分を含有する。界面活性剤処理された膜中に含まれる、支持体に結合した真核生物膜タンパク質にサポシンAを添加することにより、真核生物膜タンパク質を含有するサポシン脂質粒子の形成が可能になる。したがって、本実施例では、サポシン脂質粒子の集合は、完全に支持体上で起こり、関心対象の含められるべき真核生物膜タンパク質を発現する界面活性剤処理された全細胞の形態で提供される内因性脂質を伴って起こる。
2.a.膜タンパク質の過剰発現
N末端FLAGタグをコードする発現ベクター中に、真核生物膜タンパク質のコード配列を導入する。形質移入の前に、293Freestyle培養培地中でHEK293F細胞を増殖させ、製造業者(ThermoFisher)によって提供されたプロトコルを使用してPEI-Max試薬を使用して形質移入する。次いで、形質移入された細胞は膜タンパク質を過剰発現する。すべての細胞を形質移入の約48時間後に収集する。
2.b.可溶化された膜の調製
FLAGタグが付加された真核生物膜タンパク質を過剰発現する細胞を細胞ペレットに回収する。次いで、2倍の最終濃度で25倍タンパク質阻害剤カクテルをさらに含むHNG緩衝液IIに細胞ペレットを溶解する。続いて、1%GDN(w/v)の最終濃度になるように、水中10%GDN(w/v)を含む溶液を再懸濁した細胞に添加する。次いで、低温キャビネット内の回転ホイール上で、試料を5分間インキュベートする。その後、試料を4℃で5000gで5分間遠心分離する。界面活性剤処理された膜を含む可溶化された材料を含む上清を回収し、低温キャビネット内の回転ホイール上でさらに50分間インキュベートする。このインキュベーション工程の後、上清を30000gおよび4℃で30分間遠心分離して膜残屑を除去し、次いで、親和性支持体への結合のために次の工程2.cで使用する。
2.c.親和性支持体への結合および溶出
以下の緩衝液が使用される。
-HNG緩衝液II:50mM HEPES pH7.5、200mM NaClおよび10%グリセロール
-EB3:50mM HEPES pH7.5、200mM NaCl、10%グリセロール、250μg/mL FLAG-ペプチド
100μlの平衡化されたM2抗FLAG親和性精製ビーズ(SigmaAldrich)を各カラムに搭載することによって、重力フロースルーによって非結合材料を除去することを可能にする4つのカラムを調製する。その後、工程2.bで得られた500μlの可溶化された膜を各カラムに添加する。次いで、FLAGタグが付加された真核生物膜タンパク質の親和性ビーズへの効率的な結合を可能にするために、フロースルーをカラムに再度3回通す。FLAGタグが付加された真核生物膜タンパク質が搭載された親和性ビーズは、この段階では洗浄されず、天然の細胞膜脂質および界面活性剤ミセルおよびHNG緩衝液II成分を部分的に含有する環境(ビーズの「デッドボリューム」)において、親和性結合された真核生物膜タンパク質を含有する。
異なる量(0~6ml)の1mg/mlサポシンAを対応するカラムに添加する。
-試料1:1mlのHNG緩衝液II
-試料2:1mlのサポシンA
-試料3:3mlのサポシンA
-試料4:6mlのサポシンA
次いで、混合物を4つの新しい管に移し、回転ホイールを使用して4℃で25分間インキュベートした後、カラムに戻す。重力フロースルーを使用してカラムから非結合材料を除去した後、HNG緩衝液IIで10CV洗浄し、500μlの溶出緩衝液EB3による溶出工程を行う。
2.d.サリプロ粒子の分析
異なる量のSapA(前節2.c、試料1~4参照)と共に親和性ビーズをインキュベートした後に得られた溶出液を、Amicon Ultra-2遠心分離フィルター(10kDaのNMWL)を用いて13000gおよび4℃で濃縮する。形成されたサリプロ粒子を検出するために、界面活性剤を含まないHNG緩衝液II中のSuperose 6増加5/150GLカラムを用いるSECによって、濃縮された試料をさらに分析する。
上記の実験ワークフローを用いると、機械的細胞溶解に供されておらず、関心対象の真核生物膜タンパク質が親和性支持体に結合している間に、出発材料として無処理の細胞からサポシンリポタンパク質粒子を得ることができると予想される。これらの条件下での陰性対照として、サポシンAを液体環境から除外すると、サリプロ粒子を得ることができないはずである。
V.支持体上でのサリプロ粒子の生成
実施例3:
本実施例では、サリプロ粒子の再構成を本発明の方法の代替(I)に従って実施した、すなわち、サポシンを親和性支持体上に固定化した。この目的のために、サポシンをビオチン化し、アビジン親和性ビーズマトリックスに結合させた。支持体に結合したサポシンを、さらなるタグが付加されていないサポシン、脂質および任意に疎水性作用物質と接触させることにより、本発明によるサリプロ粒子の形成が可能になった。したがって、サポシン脂質粒子の集合が支持体上で起こった。
3.a.ビオチン化サポシンAの調製
製造者のプロトコルに従ってEZ-Link(登録商標)NHS-ビオチン試薬(Thermo Fisher、参照番号21343)を使用してサポシンAをビオチン化した。次いで、Quant*Tag Biotin Kit(Vector laboratory、BDK-2000)を用いて、サポシンA当たりのビオチン数の定量を行ったところ、サポシンA分子当たり1.1個のビオチンが存在することが示された。
3.b.親和性支持体への結合および溶出
モノマーアビジンマトリックス(Thermo Fisher 20228)を調製し、製造業者のプロトコルに従って洗浄した。ビオチン化サポシンAを、調製したアビジン親和性マトリックスに結合させた。各試料について、カラム(BioRad、Polyprep Chromatographyカラム、製品番号7311550)中に含まれるマトリックス上にビオチン化サポシンAを3回通過させることによって、100μlのビオチン化サポシンA(1.2mg/ml)を、25μlのアビジン親和性マトリックスに結合させた。次いで、非結合サポシンAの除去を確実にするために、親和性マトリックスをHNG緩衝液IIで広範に洗浄した。
サポシンAを搭載したアビジン親和性マトリックスを用いて、2つの異なる粒子集合条件を評価した。試料1では、脳脂質およびタグが付加されていないサポシンAを、予め固定化されたサポシンAを有する親和性樹脂に添加した。試料2では、脳脂質、膜タンパク質(細菌のイオンチャネル膜タンパク質T2)およびタグが付加されていないサポシンAを、予め固定化されたサポシンAを有する親和性樹脂に添加した。
脳脂質溶液は、5mg/ml脳脂質(Sigma-Aldrich)を0、5% DDM中に溶解し、37℃で5分間プレインキュベートすることによって調製した。
細菌のイオンチャネル膜タンパク質T2は、F Guettou et al.,Nature structural&Molecular Biology,21;728-731、2014に以前記載されたように精製した。
試料1~2の粒子集合条件は以下の通りであった。
-試料1:予め固定化されたサポシンAを有する親和性樹脂に16μlの脳脂質溶液を添加し、室温で5分間インキュベートした後、100μlのタグが付加されていないサポシンA(1.2mg/ml)を添加した。
-試料2:16μlの脳脂質溶液を8μlのT2(10mg/ml)と混合し、37℃で5分間インキュベートした後、予め固定化されたサポシンAを有する親和性樹脂に混合物を添加した。次いで、試料を室温で5分間インキュベートした後、100μlのタグが付加されていないサポシンA(1.2mg/ml)を添加した。
次いで回転ホイール上にて室温で25分間、2つの試料を同時にインキュベートした。その後、以下の緩衝液を使用して試料カラムを処理した:
-HNG緩衝液II:50mM HEPES pH7.5、150mM NaClおよび10%グリセロール
-EB4:2mMビオチンを補充したHNG緩衝液(Thermo Fisher 29129)
界面活性剤を含まないHNG緩衝液IIで親和性ビーズを広範に洗浄し(10CVを使用して3回)、溶出緩衝液EB4を使用して、固定化された試料を溶出した。
3.c.得られたサリプロ粒子の分析
HNG緩衝液II中で実行するSuperdex(商標)200 5/150 GL分析用ゲル濾過カラムを使用して、溶出試料を分析用SECに供した。
結果を図13に示す。試料1および2について、溶出プロファイル中サリプロ粒子が検出された(図13の試料1については6.4分におけるSECピークおよび試料2については4.5分におけるSECピークを参照)。したがって、固定化されたサポシンAは、親和性支持体上でサリプロ粒子集合が起こることを可能にした。
総合すると、本実施例に提示されたデータは、粒子成分の1つが親和性支持体に結合している間に、異なる出発材料を使用してサリプロ粒子を再構成することが可能であることを明確に実証している。

Claims (14)

  1. サポシンリポタンパク質粒子を生成するための方法であって、前記生成されたサポシンリポタンパク質粒子は、
    -サポシン様タンパク質と、
    -脂質と、
    -任意に、前記脂質とは異なる疎水性作用物質と、
    を含み、
    (I)前記方法は、以下の工程:
    a)前記脂質および任意に前記疎水性作用物質を提供する工程と;
    b.1)液体環境において前記サポシン様タンパク質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記サポシン様タンパク質を接触させる工程と;
    c.1)前記支持体上での前記サポシンリポタンパク質粒子の自己集合を可能にするために、前記支持体に結合したサポシン様タンパク質を前記脂質および任意に前記疎水性作用物質と接触させる工程と;
    d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
    を含み、または
    (II)あるいは、前記方法は、以下の工程:
    a)前記疎水性作用物質と前記脂質を提供する工程と;
    b.2)前記疎水性作用物質を支持体に選択的に結合することができる支持体と前記疎水性作用物質を接触させる工程と;
    c.2)前記支持体上の前記サポシンリポタンパク質粒子の前記自己集合を可能にするために、前記支持体に結合した疎水性作用物質を前記サポシン様タンパク質と接触させる工程と;
    d)前記支持体に結合したサポシンリポタンパク質粒子を任意に溶出する工程と;
    を含む、方法。
  2. 前記支持体が捕捉部分を含み、前記サポシン様タンパク質が結合部分を含み、前記捕捉部分が前記サポシン様タンパク質中の前記結合部分を選択的に結合することができる、請求項1の選択肢(I)に記載の方法。
  3. 前記支持体が捕捉部分を含み、前記疎水性作用物質が結合部分を含み、前記捕捉部分が前記疎水性作用物質中の前記結合部分を選択的に結合することができる、請求項1の選択肢(II)に記載の方法。
  4. 前記支持体が、
    i.ビーズ、
    ii.ベッドと、
    iii.膜、および/または
    iv.固体支持体、特に平面を有する固体支持体の形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記脂質が、ウイルス、古細菌、真核生物および原核生物の脂質、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 工程a)において、前記疎水性作用物質および前記脂質が、前記サポシンリポタンパク質粒子中に組み込まれるべき前記疎水性作用物質および前記脂質を含むウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の膜の形態で提供される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 工程c.1)において、サポシン様粒子のライブラリーの形成を可能にするために、前記支持体に結合したサポシン様タンパク質が、工程a)において提供された前記ウイルス、古細菌、真核生物または原核生物の膜と接触され、前記ライブラリーは、異なる膜脂質および任意に膜タンパク質組成を有するサポシンリポタンパク質粒子の異種混合物を含む、請求項1の選択肢(I)に関する限度での請求項6に記載の方法。
  8. 前記サポシン様タンパク質が、請求項1に記載の方法においてサポシンリポタンパク質粒子を形成することができる、サポシンA、サポシンB、サポシンC、サポシンDまたはこれらの誘導体もしくは切断型である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記誘導体または切断型が、
    i.配列番号1、2、3、4、5または6の完全長配列に対して少なくとも20%の配列同一性を有するタンパク質;特に、前記タンパク質は両親媒性であり、少なくとも1つのアルファヘリックスを形成し、請求項1に記載の方法で使用される場合に、脂質と一緒にリポタンパク質粒子へと自己集合することができる;ならびに
    ii.1~40個のアミノ酸が欠失、付加、挿入および/または置換されている、配列番号1、2、3、4、5または6の配列を含むタンパク質;
    から選択される、請求項8に記載の方法。
  10. 前記疎水性作用物質が、疎水性有機化合物および疎水性生体分子からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記疎水性有機化合物および/または前記疎水性生体分子が、生物学的に活性な作用物質、薬物、薬物の活性成分、化粧品の活性成分、植物保護製品の活性成分、食事および/または栄養補助食品、診断プローブ、造影剤、ラベルならびにインジケータからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記疎水性生体分子が、疎水性部分を含むタンパク質、特に、膜タンパク質、内在性膜貫通タンパク質、内在性モノトピック膜タンパク質、表在性膜タンパク質、脂質に結合した状態の両指向性タンパク質、脂質アンカー型タンパク質ならびに融合した疎水性および/または膜貫通ドメインを有するキメラタンパク質からなる群から選択されるタンパク質である、請求項10または11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記疎水性作用物質、前記脂質および/または前記サポシン様タンパク質が界面活性剤で可溶化された状態にあり、任意に、前記界面活性剤は、アルキルベンゼンスルホナートまたは胆汁酸、カチオン性界面活性剤および非イオン性または両性イオン性界面活性剤、例えばラウリル-ジメチルアミンオキシド(LDAO)、Fos-コリン、CHAPS/CHAPSO、サポニン、例えばジギトニン、および構造的に関連する合成界面活性剤、例えばグリコール-ジオスゲニン、アルキルグリコシド、例えば短鎖、中鎖または長鎖アルキルマルトシド、特にn-ドデシルβ-D-マルトシド、グルコシド、マルトース-ネオペンチルグリコール(MNG)両親媒性物質、両親媒性ポリマー(アンフィポール)、スチレンマレイン酸コポリマー(SMA)、フェノールおよびアルデヒドのヒドロキシアルキル化生成物を基礎とする大環状分子または環状オリゴマー(カリックスアレーン)ならびにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. i.工程c.2)および/またはc.1)で得られた前記粒子が円板形状であり、特に、工程c.2)および/またはc.1)で得られた前記粒子が円板形状であり、親水性または水性コアを含まない;
    ii.工程c.2)および/または工程c.1)の前記粒子が、2nm~200nm、特に3nm~150、好ましくは3nm~100nmの平均最大直径を有する;
    iii.工程c.2)および/または工程c.1)における前記粒子の前記自己集合が、2.0~10.0、特に6.0~10.0、好ましくは6.0~9.0、特に好ましくは7.0~9.0、最も好ましくは7.0~8.0のpHで行われる、
    請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
JP2021559753A 2019-04-15 2020-04-15 サリプロ粒子の製造 Pending JP2022529132A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
EP19169321.7A EP3725304A1 (en) 2019-04-15 2019-04-15 Production of salipro particles
EP19169321.7 2019-04-15
PCT/EP2020/060594 WO2020212423A1 (en) 2019-04-15 2020-04-15 Production of salipro particles

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2022529132A true JP2022529132A (ja) 2022-06-17
JPWO2020212423A5 JPWO2020212423A5 (ja) 2023-04-20

Family

ID=66182458

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021559753A Pending JP2022529132A (ja) 2019-04-15 2020-04-15 サリプロ粒子の製造

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20220192982A1 (ja)
EP (2) EP3725304A1 (ja)
JP (1) JP2022529132A (ja)
KR (1) KR20210151938A (ja)
CN (1) CN113873999B (ja)
AU (1) AU2020257991A1 (ja)
CA (1) CA3136842A1 (ja)
SG (1) SG11202111111UA (ja)
WO (1) WO2020212423A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023001912A1 (en) 2021-07-22 2023-01-26 Salipro Biotech AB Methods for structure determination and drug design using salipro particles
EP4123307A1 (en) 2021-07-22 2023-01-25 Salipro Biotech AB Methods for structure determination and drug design using salipro particles
CN114700186B (zh) * 2022-03-17 2023-04-18 中国科学院海洋研究所 一种刺参体液样品外泌体分离的方法

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7592008B2 (en) * 2000-11-20 2009-09-22 The Board Of Trustees Of The University Of Illinois, A Body Corporate And Politic Of The State Of Illinois Membrane scaffold proteins
JP4303468B2 (ja) 2000-11-20 2009-07-29 ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシテイ オブ イリノイ 膜スカホールドタンパク質
US7824709B2 (en) 2003-02-14 2010-11-02 Children's Hospital And Research Center At Oakland Lipophilic drug delivery vehicle and methods of use thereof
EP2745834B1 (en) * 2012-12-18 2016-09-28 Jens Frauenfeld Salipro particles
US10159729B2 (en) 2013-09-13 2018-12-25 Sallpro Biotech AB Antigen and method for production thereof
WO2016029308A1 (en) * 2014-08-25 2016-03-03 The Governors Of The University Of Alberta Functionalized beta-sheet peptide stabilized membrane proteins, constructs comprising same, and methods of forming and using same
EP3284460A1 (en) 2016-08-19 2018-02-21 Salipro Biotech AG Saposin lipoprotein particles and libraries from crude membranes

Also Published As

Publication number Publication date
SG11202111111UA (en) 2021-11-29
CN113873999B (zh) 2023-12-22
EP3725304A1 (en) 2020-10-21
US20220192982A1 (en) 2022-06-23
WO2020212423A1 (en) 2020-10-22
AU2020257991A1 (en) 2021-11-04
KR20210151938A (ko) 2021-12-14
EP3955895C0 (en) 2024-04-03
CA3136842A1 (en) 2020-10-22
CN113873999A (zh) 2021-12-31
EP3955895B1 (en) 2024-04-03
EP3955895A1 (en) 2022-02-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7460700B2 (ja) 未精製膜からのサポシンリポタンパク質粒子およびライブラリー
JP2022529132A (ja) サリプロ粒子の製造
JP6293779B2 (ja) Salipro粒子
Zhang et al. Quantification of lipid corona formation on colloidal nanoparticles from lipid vesicles
JP2007525490A (ja) 膜骨格タンパク質
JP4692983B2 (ja) リポソーム封入物質がエンドソームから脱出可能なリポソーム
Lukáč et al. Preparation of metallochelating microbubbles and study on their site-specific interaction with rGFP-HisTag as a model protein
JP5669081B2 (ja) 生体分子固定化担体および生体分子担体固定化方法
US20220270707A1 (en) Saposin lipoprotein particles and libraries from crude membranes
Golbek et al. Lysozyme Interaction with Phospholipid Nanodroplets Probed by Sum Frequency Scattering Vibrational Spectroscopy
EP4123307A1 (en) Methods for structure determination and drug design using salipro particles
Bam et al. Synthesis and Evaluation of Clinically Translatable Targeted Microbubbles Using a Microfluidic Device for In Vivo Ultrasound Molecular Imaging
WO2023001912A1 (en) Methods for structure determination and drug design using salipro particles
Florou THE ROLE OF MEMBRANE DOMAINS IN PROTEIN INTERACTIONS AND HUMAN DISEASES
Su et al. Twin Strep-Tag Modified CPT1A Mitochondrial Membrane Chromatography in Screening Lipid Metabolism Regulators
Lang Exosomes as Potential Transport Vehicles of Tetrahydrobiopterin, 6-Pyrovyoltetrahydrobiopterin-Synthase and Tripeptidyl-Peptidase I

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230412

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230412

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20240319

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20240319

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20240605