JP2022526485A - スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法 - Google Patents

スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、
(1)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.025~0.035の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口遅延治療のための使用のための組成物を得ること、又は
(2)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.005~0.015の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口急速治療のための使用のための組成物を得ること、
を含む、スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法を提供する。本発明は、また、前記方法により得ることができる組成物を提供する。

Description

本発明は、古細菌型脂質を含む組成物の製造及び古細菌型脂質を含む組成物に関する。
リポソームは、水性空間を囲む球状の脂質二重層ベジクル(脂質エステル)である。それらは、薬物、ワクチン、遺伝子、タンパク質、小分子、抗生物質、及び栄養物質の投与のための重要なキャリアである。リポソームは、リン脂質(主にフォスファチジルコリン)及びコレステロールから構成されるが、フォスファチジルエタノールアミン等の他の脂質を含む場合もある。リポソームは種々多くの方法(例えば、van Hoogevest, Eur. J. Pharm. Sci. 108 (2017), 1-12; Szoka et al., Ann. Rev. Biophys. Bioeng. 9 (1980), 467-508にレビューされている)によって製造され、例えば、リン脂質を水性媒体中に分散することによって製造され、この際には例えば機械的処理(例えば、ホモジェナイザーによるもの、好ましくは高圧ホモジェナイゼーション)又は超音波処理を用いる。リポソームは、直径が0.02~10μmの間で変動する。リポソームのサイズ及び組成は、リポソームの特性に大きく影響する。
アーキアソーム(archaeosome)(つまり、部分的に又は完全に古細菌型脂質で構成された液体ベジクル)は、古細菌から単離された膜脂質に由来する特別なクラスのリポソームを表す。アーキアソームは、脂質エーテル、つまりジエーテル構造(アーキオール(archaeols))又はテトラエーテル構造(カルドアーキオール(caldarchaeols))から構成される(例えば、Kaur et al., Drug delivery 23 (2016), 2497; Patel et al., Critical Reviews in Biotechnology 19 (1999), 317; Fig.4)。ジエーテル構造は、sn-2、3位に2つのフィタニル鎖(20~40炭素長)を有するグリセロール部分から構成される。テトラエーテル構造は、2つのグリセロール残基にアンチパラレルに(カルドアーキオール)又はパラレルに(イソカルドアーキオール)連結された2つのジフィタニル鎖を有する。さらに、1つ又はいくつか(several)のシクロペンタン環が存在していてもよい。一般に、アーキアソームは、その特性に大きく影響する広範な不均一(heterogenous)脂質構造から構成される。組成(アーキオール対カルドアーキオールの量)に応じて、脂質層は一重層若しくは二重層又はそれらの混合体である。溶媒抽出によって得られる古細菌の全脂質は、細胞乾燥重量の約5%を占める。いくつかの研究に示されるように、古細菌型脂質の種類及び構造はそれが抽出された生物及びそれぞれの生活環境(例えば温度)並びに増殖フェーズに応じて変わる(Jensen et al., Life 5 (2015), 1539)。例えば、M. jannaschiiのための増殖温度を50℃から65℃に上昇させると、アーキオール、カルドアーキオール、及び大環状アーキオールの%コア脂質分布が60%、21%、及び19%からそれぞれ15%、42%、及び43%へと変化した(Sprott et al., J. Bact. 173 (1991), 3907)。古細菌スルフォロブスについても、膜流動性は、増殖温度が高くなるのに応じて増加するカルドアーキオール脂質のフィタニル鎖内のシクロペンタン環の数により制御されると推測される(Jensen et al., 2015)。
US5,098,588Aは、金属表面用の新たなクラスの潤滑剤としての古細菌型脂質の使用を開示している。この文献には、古細菌の培養プロセスは開示されておらず、また、種々の古細菌型脂質の具体的な定量的量が提供された組成物についても記載されていない。WO2007/112567A1は、古細菌型コア脂質の少なくとも1つの遊離ヒドロキシル基に共有結合により連結した少なくとも1つの炭水化物基又はアニオン性基を含む極性合成脂質を開示しており、ここではカルドアーキオールの供給源としてThermoplasmaが用いられている。この文献においては、Thermoplasmaから得られたこれらの脂質を使用することは、スルフォロブスに見られるカルドアーキオールとノニトール-カルドアーキオールとの混合物を避ける上で、供給源としてスルフォロブスを用いる場合と比べて特に好ましいと開示されている。DE10 2012 216 378A1は、標的に結合可能なリガンド(捕捉分子)をその上に共有結合的に固定可能なテトラエーテル脂質層を含む固定化マトリックス、並びに、チップベースの分析方法用の、前記マトリックスを含むバイオセンサーチップを記載している。
現在、アーキアソームは熱、pH、胆汁塩、リパーゼ、及び酸化に対して高度に安定であることが証明されており、このことが従来のリポソームよりもアーキアソームをより魅力的なものとするため、アーキアソームはよりいっそうの関心を受けている。いくつかのインビトロ研究では、アーキアソームは、種々の疾患と戦う非常に大きな有望性を有する、種々の積み荷(cargo)のための汎用的なナノキャリアシステムとして使用可能であることが示されている。しかし、アーキアソームは以下の制限事項のために、アーキアソームの応用におけるブレイクスルーは未だ見られていない。
1)アーキアソームは複雑な環境(複雑な培地及び制御されない振とうフラスコ培養)において産生され、したがって非常に不均一であること、
2)アーキアソームは、規制ガイドライン(Quality by Design)と矛盾することに、定義された条件下で製造することができないこと、
3)古細菌の脂質組成を制御できないこと、
4)アーキアソームは、安価に(cost-efficiently)大量に製造することができないこと。
このため、本発明の一つの目的は、古細菌用の制御された培養条件下のプロセスパラメータにより、アーキアソームの不均一性を減少し、テーラーメイド古細菌型脂質の製造を可能とすることである。より具体的には、本発明の目的は、多種のシクロペンタン環脂質を含みながらも、同時に、フォスファチジルアーキオールも含むアーキアソーム組成物を提供することである。特定の送達ルート及び/又は投与(例えば経口遅延送達及び/又は経口急速送達)に適した古細菌型脂質の組成物を提供することはさらなる目的である。(例えば、関心のある薬物を安定に包み込み、胃通過又は皮膚通過又は粘膜通過を可能にする能力として定義される)アーキアソームの適切な安定性及び/又は(例えば、カルドアーキオール及びアーキオールの間の比率として定義される)十分な機能性を有する古細菌型リポソーム組成物を提供することはさらなる目的である。本発明の他の目的は、古細菌由来のリポソーム中のカルドアーキオール:アーキオールの比率の(生理的限界範囲内での)可調節性を維持しつつ、カルドアーキオール種のフィタニル鎖中の環の数が可能な最大数である脂質混合物を調製することである。
したがって、本発明は、バイオ医薬産業用のベジクルとして不均一性が減少したテーラーメイドのアーキアソームを製造する、ある特定の、より均一な脂質組成のための規定された培地及び制御されたプロセス条件におけるスルフォロブスの培養方法を提供する。
より具体的には、本発明は、
(1)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.025~0.035の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口遅延治療のための使用のための組成物を得ること、又は
(2)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.005~0.015の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口急速治療のための使用のための組成物を得ること、
を含む、スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法を提供する。
増殖温度に応じた脂質パターンの組成を示す。 増殖速度に応じた脂質パターンの組成を示す。 プロセスモードに応じた脂質パターンの組成を示す。 スルフォロブス アシドカルダリウスの主要な脂質の構造を示す。 増殖温度がシクロペンタン環の数に及ぼす影響を示す。 68℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 75℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 82℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 0.010h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 0.020h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 0.034h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 フェドバッチモードで増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。 連続モードで増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
アーキアソームは、先行技術においてアーキアソームを将来の医薬のための有望な候補とする有利な性質を有している。しかし、今まで、アーキアソームを実用的に適切な候補とすることに対する主要な障害は、主に、製造プロセスの制御性の欠如及びその脂質エーテル組成物に関する高い変動性であった。本発明は、今や、そのような工業的アプローチを可能とし、アーキアソームを、ヒト患者に送達されることが意図される薬物の積み荷のための現実的な候補とする。
ヒトでの治療用途の場合、製剤は最低1~2年の保存期間を有することが一般的に求められる。このことは、保存の間の物理的安定性(凝集、積み荷の喪失)及び化学的安定性(酸化、加水分解)を意味する。近年、薬物/ワクチン送達におけるリポソームの使用は経口送達システムまで拡大されてきている。従来のリポソームは、胃腸(GI)管の厳しい環境(胃におけるpH1という低いpH、及びリパーゼ及び胆汁塩による攻撃)におけるその安定性が乏しいために、この目的に用いることができない。従来のリポソームと比べてのアーキアソームの主たる利点はその高い安定性である。異なる安定性観点がこれまでに試験され、リポソームと比してのアーキアソームの利点が示されている。
●保存安定性:アーキアソームは飽和したフィタニル鎖を含んでおり、そのため空気により酸化されない。結果として、アーキアソームは何らの変化なしに、室温においてクロロホルム/メタノール中で何年も保存することができる。
●熱安定性:従来のリポソームと比べたときの例えばSulfolobus acidocaldariusから作製されたアーキアソームの熱安定性は、35℃~40℃で透過性となりその積み荷を失う従来のリポソームとは異なり、アーキアソームはそれよりもずっと高い温度でも漏出性とはならなかったということを示した。熱適応性反応として配置(deposit)される古細菌型脂質中の環状構造は密な膜充填及び減少した膜流動性をもたらす。この高い熱安定性は、脂質ベジクルのインビボ適用に極めて重要な要件であるオートクレーブ処理による滅菌を可能にする。対照的に、従来のリポソームを熱滅菌すると凝集、加水分解、漏出を生じ、そのために滅菌リポソームの作製は厄介な試みとなる。
●pH安定性:インビトロのアッセイは、アーキアソームが酸性pHにおいて従来のリポソームよりも安定であることを明らかにした:pH3.0での21日間の保存の後、リポソームはその積み荷の最大60%を失ったが、アーキアソームは30%を失ったに過ぎなかった。
●リパーゼに対する安定性:胃腸管内のリパーゼはリポソームの重度の加水分解を引き起こし、その結果、カプセルに格納された積み荷の急速な放出が起こる。先の研究では、従来のリポソームがホスホリパーゼA2に4時間曝されたときに従来のリポソームは積み荷の最大100%を失ったことが示されたが、アーキアソームが失ったのは20%未満であった。
●胆汁塩の存在下での安定性:アーキアソームは模擬的なヒト胆汁中での37℃90分間のインキュベーション中にその積み荷の全てを保持することが示された。この時間は、胃内における脂質ベジクルの平均滞留時間よりも長い。
●リパーゼ及び胆汁塩の複合効果に対する安定性:胃腸管内で、脂質ベジクルはリパーゼと胆汁塩の両方に遭遇し、これらは脂質ベジクルの安定性に影響を与える。従来のリポソームは模擬的なヒト胆汁中の膵臓リパーゼの存在下でインキュベートされた場合、30分後において既にその積み荷の100%を失うが、リパーゼ及び胆汁塩はアーキアソームに対しては相乗効果を示さない。
まとめると、アーキアソームはその安定性に関して現在用いられているリポソームを凌駕する能力を既に有している(経時的により安定で、熱、pH、リパーゼ、胆汁酸に対してより抵抗性であり、オートクレーブ可能である)。本発明によれば、アーキアソームを介して薬物を特異的送達するための好適で再現性のある組成物を可能にするため、信頼性のある方法が提供される。ゆえに、本発明は、十分な質及び十分な量のアーキアソームを製造することを可能にする。
アーキアソームは種々の積み荷の送達のための非常に有用なキャリアであると認識されてきた。現在のところ最も有望な薬物キャリアへの応用は、治療用タンパク質又はペプチド(インスリン等)の経口送達のためのマイクロカプセルとしてのアーキアソームの使用である。また、貪食細胞におけるアーキアソームの取り込みは従来のリポソームよりも50倍超大きいため、アーキアソームはワクチンにおける高度に興味深いアジュバントとしてもこれまで考えられている。マウスにおける研究では、アーキアソームに閉じ込められた数種類の試験抗原を全身投与すると、強力だが毒性でもあるフロイントのアジュバントを用いて得られる液性免疫応答に匹敵する液性免疫応答を与えたことが示されている。これまでに行われた全てのインビトロ及びインビボ研究は、アーキアソームが安全であり、それと分かる毒性を惹起しないことを示している。一般に、医療用途における脂質キャリアの要件は:
●安全性、安定性、バイオアベイラビリティ、費用効率
●人体に対する毒性学的影響が無いこと
●非病的な炎症反応の誘導
●先天性免疫系と獲得免疫系との間のクロストークの促進
●液性抗体反応の強化及びT細胞媒介性応答の誘導
アーキアソームはこれらの要件の全てを満たし、そのため、がんワクチン、シャーガス病に対する免疫アジュバント、新規な遺伝子送達システム、タンパク質及びペプチドの経口送達用キャリア、新規の抗原送達システム等のための薬物送達システムとして成功裏に試験されてきた。
アーキアソームの医療関連の広範な潜在用途がインビトロ及び動物モデルにおいて示されてきた。しかし、脂質組成物の不十分な均一性のために、臨床的応用はまだ実現されていない。
アーキアソームは種々の古細菌種から成功裏に調製されてきた。通常は、クロロホルム/メタノール/水を用いた有機溶媒抽出により凍結バイオマスから全古細菌型脂質が抽出される。それから、アセトンを用いた沈殿により、極性脂質と中性脂質とが分離される。得られた液体抽出物は種々の脂質クラスの複合混合物としてアーキアソームの調製に直接用いられてもよく、クロマトグラフィーでさらに精製されて特定のクラスの純粋な極性脂質を単離してもよい。これらの特別な、天然の古細菌型脂質から出発して、アーキアソームの調合物を作製し、(機械的分散法、脂質水和法、膜エクストルージョン(membrane extrusion)、超音波処理等の)従来のリポソームの作製用に開発された利用可能な方法を用いて親水性化合物又は疎水性化合物をカプセル化する又は随伴させる(associate)ことが可能である。古細菌から脂質を調製する方法又は古細菌を培養する方法は、例えば、US2017/0152533A1、US6,316,260B1、EP1999137B1、EP0883624B1、EP2109459B1、Siliakus et al. (Extremophiles 21 (2017), 651-670)、Jain et al. (Frontiers in Microbiol. 5 (2014), article 641)に開示されている。
古細菌はこれらの特別な脂質の有用な供給源として知られてはいるものの、その目的では未だ広くは用いられてはいない。これは、現在のところ、リポソームの組成を制御することができず、組成は非常に不均一であるためである。ほとんどの古細菌は制御されない条件で振とうフラスコ内の複合培地上で培養され、脂質クラスの組成、脂質コア構造及び枝分かれの点でのバッチ間変動につながっている。さらに、リポドームの組成及び性質はこれまで制御可能なものではなかった。しかし、この点は、減少した不均一性及び医薬用途で要求される特定の性質を有する再現可能な高品質アーキアソーム形成のためには必須である。S. islandicus及びS. tokodaiiの脂質組成は、プロセスが異なると一定ではなかったことが観察されており、このことは特に温度が変更された場合又はサンプルを異なる増殖フェーズで採取したときに見られた(Jensen et al., Life 5 (2015), 1539)。本発明は、バイオリアクターの制御された環境において規定された培地で古細菌を培養することにより、重要なプロセスパラメータ(例えば、温度、増殖速度等)を変化させることで、よく規定されたアーキアソームの調製を妨げる古細菌の脂質エーテルの質(不均一性及び組成)の効率的な制御を提供する。
アーキアソームはリポソームと同様のタスク(患者への薬物の投与)に用いることができるが、リポソームよりもずっと良好な性質を示す(経時的により安定で、熱、pH、胆汁酸により抵抗性であり、オートクレーブ可能である)。アーキアソームは十分な質及び十分な量で生産することができるため、従来のリポソームへの実行可能な代替物として期待されている。
世界的なリポソーム薬物送達市場は2017年で24億米ドルの価値と評価されており、2018年~2025年の毎年の成長率10.1%で成長して2025年末までには52億米ドルに到達すると予測されている。
リポソーム調合物の臨床的使用についての最近のレビューは、世界中での全体で15の承認された臨床製品をリストしており、抗がん薬、抗真菌(anti-fungal)薬、ワクチン、抗炎症薬、及び治療遺伝子の領域をカバーしている。
医薬的活性成分のキャリアとしてのアーキアソームの使用のためには、所望の作用部位および薬理動態に応じて異なる放出キネティックスを保証しなければならない。この放出キネティックスは、本質的には、アーキアソームの安定性により影響されうる。
安定性のためには、脂質の基本的な種類に加えて、特に、短鎖脂質と長鎖脂質の比が重要である;また、鎖の可動性を制限することでより密な充填、及び膜透過性の減少を生じる環構造が脂質鎖中に存在するかどうかも重要である。アーキオール(Arc、フィタニル鎖中に総炭素原子数40)及びカルドアーキオール(Cal、フィタニル鎖中に総炭素原子数80)の組み合わせは、ここで、適切な手段を表す。どちらの物質もSulfolobus acidocaldarius及びその他の古細菌種の天然の膜構成成分である。末端グリセロール残基に種々の改変(改変なし、フォスファチジルイノシトール(PI)、ジヘキソース(2Hex)、及びそれらの組み合わせ;Cal、PI-Cal、2Hex-Cal、PI-Cal-2Hex)を有するカルドアーキオールバリアントが存在する。さらに、フィタニル鎖中の環数が異なるCalバリアントが存在する(S. acidocaldariusの場合、好ましくは4つ、5つ又は6つの環)。アーキオールは主にPI-Arcとして存在する。
多くの理由により、2Hex-CalとPI-Arcとの混合物が、本発明に係るアーキアソーム(特に経口用途用のアーキアソーム)の調製のために特に興味深い組み合わせである。
●環の数が異なるカルドアーキオール(複数)を用いることができる。
●短鎖脂質と長鎖脂質との混合物は、形成されるアーキアソームの安定性への影響を保証する。
●どちらの脂質も標的化薬物送達における使用のためのリンカーによる効率的な修飾(例えば、抗体フラグメント、アプタマー等の連結(attachment))のための官能基を十分な数、頭部基(head groups)に有している。
●頭部基が構造及び化学的性質において異なるため、この改変は、2つの脂質クラスのうちの一方に対して選択的に行うことができる。
本発明により実験的に示されるように、温度及び増殖速度というプロセスパラメータを介してCalのArcに対する比に影響を与えることが可能である(至適増殖温度及び最高増殖速度においてCal:Arc比が最大であり、その逆も言える)。しかし、環の数が相対的に多いものの割合(6つの環対5つ又は4つの環)は驚くべきことに温度のみに依存し、増殖速度とは相関しない。温度が環数に与える影響はSulfolobus spp.において観察された。しかし、増殖速度が及ぼす影響についての文献は知られていない。
基本的に、可能な最大環数が可能な最低膜透過率及びそれによる胃耐性のために必要であり、本発明が示したところでは、これは可能な最高温度での培養を必要とする。これに伴って、Cal:Arc比を確立するために適した手段である温度は失われてしまうが、この比は本発明によれば増殖速度により制御できる。腸での薬物放出のためには、アーキアソームは安定すぎるものであってはならず、なぜならそうでなければ薬物は送達できないからである。このため、本発明に係るアーキアソーム調合物の放出キネティックスの可改変性が維持され、本発明により提供されるテーラー化脂質混合物からのアーキアソームを基に製造された医薬は、例えば経口投与後に腸内で様々な作用持続時間(duration of action)を有する。
本発明は、本発明の過程で得られた少なくとも2つの顕著な結果に基づくものである。第1に、本発明は、古細菌型脂質の再現可能かつ定義された組成を可能にする制御された製造方法を提供する。第2に、本発明に係る(特定の異なる培養条件による)古細菌型脂質の制御された製造方法を適用し、使用するこの知識により、異なる培養条件を適用することにより2つの特定の種類の古細菌組成物を再現性をもってスケールアップしたフォーマットでも提供することができ、ここで前記2つの特定の種類の古細菌組成物は特に(a)経口遅延治療に(つまり、遅延効果を示す医薬組成物に)、又は(b)経口急速治療に(つまり、経口送達されたときに患者に対して即時放出を示す医薬組成物に)使用可能である。
バイオリアクター培養法は、ここ最近、新たな分析ツール、コンピュータ指令プロセスモニタリング、及びソフトウエアにガイドされるプロセス制御と共に開発され、微生物の培養における全く異なるレベルのブレイクスルー技術を達成した。これは、30℃又は37℃あるいは室温といった通常の培養温度を大きく超える培養温度を例えば必要とする古細菌等の、複雑な培養条件を必要とする微生物のための培養技術に特に影響を及ぼした。10年あるいは15年前には利用可能ではなかった現代のプロセスパラメータ観察方法は、本発明に係る方法を、本発明に係る古細菌細胞培養物の培養のための制御可能で再現可能な製造方法のための(特に、増殖速度の効果的な制御のための)必要な基礎とすることを可能とする。
例えば、Patel et al. (1999、上掲)は、表1において、代表的な古細菌における主要なコア脂質の相対的存在量(%で表記)を報告している。その当時に適切な分析ツールが無かったため、コア脂質のみが半定量的に、つまり相対量として、分析された。低い増殖温度(70℃;至適増殖温度が75℃以上であるのと比較される)を別として、脂質は後期指数増殖期から得た。これはなぜなら、その時代には、より特定の増殖期が単に制御できず、培養の間に大きく変わってしまうためであった(Sprott et al., Can. J. Microbiol. 43 (1997), 467-476)。現在利用可能な新たな培養方法を導入するまでは、比増殖速度等の培養パラメータを制御するように古細菌細胞培養物を取り扱い可能なものではなかった。したがって、前記先行技術は、異なるプロセスパラメータ及び/又は異なる培養条件により、異なる-ただし常に及び再現可能に定義された-質的及び量的な脂質体組成で再現可能に提供される古細菌型脂質組成物を提供することすらできなかった。これは、本発明により提供される古細菌細胞培養物に由来する古細菌脂質について初めて、特にスルフォロブス細胞培養物について初めてなされた。
本発明によれば、(生理的限界内での)Cal:Arc比の調節可能性を維持しつつ、カルドアーキオール種のフィタニル鎖内における環数が可能な最大数である脂質混合物を提供することが可能である。2Hex-Cal及びPI-Arcは、その特定の化学的適性のために、本発明によれば特に好ましい標的種である。それゆえ、本発明によれば、上昇した増殖温度による多い環数、また同時に増殖速度によるCal:Arc比の調整、を有するアーキアソームを含む組成物を提供することができる。調節されたプロセス条件により、高い胃液耐性、及び種々の医薬的活性成分についてテーラーメイドの放出キネティクスを有するアーキアソームを製造するために、直接又は最小限の精製努力で用いることができる脂質抽出物を得ることを本発明は可能にする。
本発明により、スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む2種類の特定組成物が提供され、そのうちの一つは経口遅延治療への使用に特に適しており、もう一方は経口急速治療のために特に適している。本発明によれば用語「経口遅延治療」及び「経口急速治療」はその通常の意味で用いられる。「遅延」(あるいは「経時放出」(time-release)、「持続放出」(sustained release)、「長期放出」(extended release))経口治療は、送達からある程度の時間の後でも、例えば(経口)送達の12時間後でも、連続的な放出を可能とする「遅延効果」を示す経口治療であり、「急速」(あるいは「即時放出」(immediate release))経口治療は、投与後すぐに放出され、送達後すぐに、例えば経口投与から3時間以内に、最大の放出を有する(Pschyrembel, “retard effect”: protracted release of an active substance due to galenic formulation; Andrade, J. Clin. Psychiatry 76 (2015), e995-e999; Perrie et al. "Controlling drug delivery" in Pharmaceutics: drug Delivery and Targeting" (2012), Pharmaceutical Press)。
持続放出効果を有する経口アーキアソームの製造のために製造される脂質は、経口投与のニーズに特に適性を有し、それゆえ、高い胃液耐性を示す。この耐性は、多数のシクロペンタン環が存在することにより保護される。本発明によれば、このことが高いプロセス温度を適用することにより、特に75~85℃の範囲のプロセス温度を適用することにより達成できることが見出された。持続放出に必要な遅延効果のためには、より長い期間にわたる活性物質の徐放が必要とされ、このことは、それゆえ、時間的な安定性を必要とする。本発明によれば、これは、より不安定化しにくいPI-Arcの存在により達成できる。この特定の脂質組成物を得るために、高い増殖速度、つまり、好ましくは1時間あたり0.025~0.035、特には1時間あたり0.027~0.033の増殖速度が、特定の脂質組成物を得るためには必要であるという教示を、本発明は提供する。本発明の好ましい実施形態では、本方法は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7、特に1:5.5~1:6.5である、経口遅延治療のための使用のための組成物を提供する。
急速治療のための経口アーキアソームの製造のために製造される脂質は、一方では、経口投与の必要に特に適していてもおり、したがって、高い胃液耐性を示す。この耐性は、遅延の場合と同様に、多数のシクロペンタン環の存在により保護される。本発明によれば、これは高いプロセス温度を適用することにより、特に75~85℃の範囲のプロセス温度を適用することにより達成できることが見出された。他方では、急速治療のための組成物は、腸内の薬物の急速放出を必要とする。したがって、前記組成物のより低い安定性も必要である。本発明によれば、このことは、より不安定化しやすいPI-Arcの存在により達成することができる。この特定の脂質組成を得るために、低い増殖速度、つまり、好ましくは1時間あたり0.005~0.015、特に1時間あたり0.007~0.013の増殖速度が、特定の脂質組成物を得るためには必要であるという教示を、本発明は提供する。本発明の好ましい実施形態では、本方法は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:2~1:4、特に1:2.5~1:3.5である、経口急速治療のための使用のための組成物を提供する。
本方法によって得ることができるこれらの組成物により、テイラーメイドのアーキアソームを提供することができ、ここで、送達対象の薬物を投与のために、好ましくはこの薬物の有効量を必要とするヒト患者への経口投与のために、前記アーキアソームに包み込むことができる。
スルフォロブス細胞培養物を培養することは、当業者には十分に利用可能なものであり、原理的には、長年にわたり確立された技術である(Brock et al., Arch. Mikrobiol. 84 (1972), 54-68ほど早期から)。好ましいスルフォロブス株はスルフォロブス アシドカルダリウス細胞である;この株は、本技術分野における確立された株の1つである。用いられるこのスルフォロブス生物のための保管場所は、例えば、German strain collection for microorganisms (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen, DSMZ)のカタログ番号DSM 639であってもよい。供給の代替的な源は、例えば、American Type Culture Collection (ATCC)のcatalogue number ATCC 33909である。他の古細菌も、例えばDMSZ又はATCCで入手可能である。
規定の培養条件でスルフォロブス細胞培養物を培養した後に、スルフォロブス細胞脂質を抽出する。これは、当業界で開示されているやり方で行うことができる。好ましくは、前記細胞を培養後に破砕(homogenise)するが、これは好ましくはホモジェナイゼーション、特に高圧ホモジェナイゼーション、又は超音波処理により行い、そうして、水性培養物から脂質が抽出可能になる。本発明に係る脂質を精製するための一つの好ましい方法は、超臨界流体抽出、特に超臨界COによる抽出である(例えば、Hanif et al., Int. J. Mol. Sci. 13 (2012), 3022-3037を参照)。
抽出の前に、破砕された(homogenised)細胞をバッファー、例えば、スルフォロブス細胞脂質の抽出に適したものとして当業界で知られまた記載されたバッファーと混合することが好ましく、例えば酢酸アンモニウムバッファーと混合することが好ましく、特に、100~200mMの酢酸アンモニウムを含む酢酸アンモニウムバッファーと混合することが好ましい。
本発明の好ましい実施形態によると、古細菌型脂質は、細胞及び/又は破砕された(homogenised)細胞を含む水相を有機相に抽出すること、好ましくはクロロホルム/メタノール有機相に抽出すること、及び前記有機相を前記水相から相分離することによって得られる。前記有機相は、その際に、所望の「テイラーメイド」比で脂質群を含む。それから、前記有機相を蒸発させることにより、好ましくは前記有機相を乾燥状態に蒸発することにより、古細菌型脂質を得ることができる。
好ましくは、得られた古細菌型脂質は医薬的に活性な薬物と組み合わせられ、また好ましくは医薬的に許容可能なキャリアと組み合わせられ、古細菌型脂質及び前記医薬的に活性な薬物を含む組成物を得る。これは、古細菌型脂質を含む精製組成物(アーキアソーム)が提供されてから行うことが好ましい;しかし、前記薬物及び/又はさらなる成分を、精製のプロセスで既に添加してしまい、それ/それらを前記脂質と共に共精製することも可能である。
本方法の別の好ましい実施形態によれば、古細菌型脂質は超臨界流体抽出、好ましくは超臨界COによる抽出により得られる。
別の態様によれば、本発明は、本発明に係る方法により得ることができる古細菌型脂質を含む組成物にも関する。これらの「テイラーメイド」アーキアソーム組成物は新規であり、患者に送達されるべき薬物をパッケージングするのに、特にヒトにおける治療的又は予防的使用のために適していることが既知である薬物を送達するのに高い有用性を有する。
本発明は、2種類の特別設計された組成物も提供し、そのうちの一つは経口遅延使用のためのものであり、もう一つは経口積極(active)使用のためのものである。したがって、本発明に係る好ましい組成物は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7であるか(遅延経口使用)、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:2~1:4である(急速経口使用)。この特定の2Hex-Cal/PI-Arc比で定義されるこれらの組成物はどちらも胃液に対する高い耐性を有し、この耐性により、これら組成物は経口投与後に胃を効率的に通過することが可能である。遅延経口組成物はさらに、不安定化しにくいPI-Arcを含み、したがって、腸において遅延放出特性を有し、これにより時宜にかなった遅延放出が可能となる。急速経口組成物は腸においてより安定性が低く、それゆえ、パッケージングされた薬物はリポソームから即時放出されることができ、このことは薬物の腸による取り込みのための急速送達を可能にする。予想外にも、1時間あたり0.020の増殖速度でスルフォロブス細胞培養物の培養を行うと、遅延/急速組成物のために定義された特定の2Hex-Cal/PI-Arc比を有する遅延組成物も即時放出組成物も得られなかった。
このことは、脂質組成物について得られたデータ、例えば表1について得られたデータが増殖条件を制御すること無しに得られたPatel et al. (1999, 上掲)を考慮すると、よりいっそう予想外である(例えば、Sprott et al., 1997、上掲を参照)。
本発明に係る組成物は、リポソームによるパッケージングに適した任意の薬物をパッケージングするのに適している。したがって、本発明に係る組成物は、さらに薬物を含むのに特に適合しており、該薬物は好ましくはヒトでの医薬使用のための薬物であり、特に、製品を医薬品として上市するための欧州連合又は米国で発せられた承認の対象である薬物である。しかし、アーキアソーム調製物中に組み合わせられる薬物については物理化学的限界が実質的に何ら存在しないので、任意の薬物を本発明に係る脂質組成物中にパッケージすることができる。したがって、薬物が国又は地域の製造販売承認(marketing authorization)の対象であるからという理由であれ、薬物がその他の理由でヒトに投与されるからという理由であれ、薬物を、ヒト(又は動物)での使用に特定化された本発明に係る脂質組成物中に含ませることは好ましい。
本発明に係る好ましい組成物は、5%w/w以上、好ましくは10%w/w以上のPI-Arc、及び50%w/w以上の2Hex-Cal(%w/wは、全脂質に対する%w/w)を含む。
より一般的な態様によると、本発明は、古細菌培養物から古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法を提供し、該方法は、制御された条件で古細菌細胞培養物を増殖させること、及び古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して、古細菌型脂質を含む組成物を得ることを含む。本発明は、古細菌型脂質の再現可能で定義された組成物を可能とする制御された製造方法を提供する。好ましくは、制御された条件は、pH、増殖速度、温度、及びプロセスモードから選択される。本発明に係る方法は、原理的には、全ての古細菌細胞に適用可能である。したがって、本発明に係る古細菌細胞培養物は、S. acidocaldarius、M. hungatei、M. voltae、M. concilii、M. smithii、M. espanolae、T. acidophilum、M. mazei、M. espanole、T. acidophilum、H. salinarum、M. smithii、M. stadtmanae、H. halobium、H. morrhuae、M. jannaschii、S. islandicus、S. solfataricus、S. shibatae、S. tokodaii、S. Metallicus、M. sedula、H. hispanica、及び H.volcaniiの培養物であり、好ましくは、S. acidocaldariusの培養物である。
古細菌培養物を増殖させるための好ましい温度は、本発明に係る教示を用いて最適化することができ、好ましくは55~90℃の温度の範囲であり、好ましくは70~85℃の範囲、特には75~85℃の範囲である。
本発明の特に好ましい実施形態は、1時間あたり0.025~0.035、特には1時間あたり0.027~0.033の増殖速度、又は1時間あたり0.005~0.015の増殖速度、特には1時間あたり0.007~0.013の増殖速度で古細菌培養物を増殖させることを含む。
本発明の特に好ましい実施形態は、2~4のpH、好ましくは2.5~3.5のpHで古細菌培養物を増殖させることを含む。
本発明は、連続モードで古細菌培養物を増殖させることにより、及びバッチモード、特にフェドバッチモードで古細菌培養物を増殖させることにより適用することができる。
本発明に係る方法は、好ましくは、二相抽出、有機抽出、特にソックスレー、高圧若しくは高温抽出、イオン性液体抽出、又は超臨界流体抽出により古細菌型脂質を抽出することを含む。
好ましい実施形態によれば、本方法は、水、ヘキサン、クロロホルム、アセトン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、CO、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる溶媒により古細菌型脂質を抽出することを含む。本発明は、以下の実施例及び図面によりさらに例示されるが、ただしそれらに限定されるものではない。
図1は、増殖温度に応じた脂質パターンの組成を示す。
図2は、増殖速度に応じた脂質パターンの組成を示す。
図3は、プロセスモードに応じた脂質パターンの組成を示す。
図4は、スルフォロブス アシドカルダリウスの主要な脂質の構造を示す。
図5は、増殖温度がシクロペンタン環の数に及ぼす影響を示す。
図6は、68℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図7は、75℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図8は、82℃で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図9は、0.010h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図10は、0.020h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図11は、0.034h-1の増殖速度で増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図12は、フェドバッチモードで増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
図13は、連続モードで増殖させたバイオマスサンプルのスペクトルデータを示す。
1.テイラーメイド古細菌型脂質の産生
本発明は、上流プロセスにおけるプロセスパラメータを変動させることにより定義され調整可能な組成を有するスルフォロブス アシドカルダリウスにおける独特の脂質パターンの製造のための技術を記載する。
本実施例は、上流プロセスの間における重要なプロセスパラメータ、例えば温度、増殖速度、プロセスモード、を変動させることにより、生物スルフォロブス アシドカルダリウスが異なる脂質パターン(別個の脂質フラクション同士の比率)を産み出したことを示す。したがって、結果として異なる脂質組成物を下流プロセシングの後に収穫することができる。脂質パターンは広範な数の重要プロセスパラメータ(温度、増殖速度、プロセスモード、圧力、浸透圧、培地組成、溶存酸素含有量等)により影響を受け得るため、パターンの非常に特異的な調整が可能である。
以下の段落では、(A)温度、(B)増殖速度、及び(C)プロセスモードが脂質フラクションの比率に与える影響のショーケースを記載する。ユーザー/顧客による脂質ミックスの用途に応じて、必要なプロセスパラメータを注意深く選択することで所望の脂質パターンを調整することができる。
培養物は、制御されたバイオリアクター環境内において限定培地上で増殖させた。
1.1 温度の影響
温度は、それぞれの温度について3世代時間の期間68/75/82℃に設定し、その後にバイオマスサンプルを取得した。5つの主要な脂質フラクションの相対的な存在量をMALD-MS(陽イオンモード;Naの添加無し)により決定した。結果は図1及び図5~8に示す。
1.2 増殖速度の影響
増殖速度は、それぞれの増殖速度について3世代時間の期間0.010/0.020/0.034h-1に設定し、その後にバイオマスサンプルを取得した。5つの主要な脂質フラクションの相対的な存在量をMALD-MS(陽イオンモード;Naの添加無し)により決定した。結果は図2、9、10及び11に示す。
1.3 プロセスモードの影響
培養は、それぞれのプロセスモードについて3世代時間の期間、異なるプロセスモード(フェドバッチモード及び連続モード)で行い、その後にバイオマスサンプルを取得した。5つの主要な脂質フラクションの相対的な存在量をMALD-MS(陽イオンモード;Naの添加無し)により決定した。結果は図3、12、及び13に示す。
2. 材料及び方法
2.1 上流:スルフォロブス アシドカルダリウス DSM639のバイオリアクターでの培養
テーラーメイド古細菌型脂質を産生するために、S. acidocaldariusを連続プロセスモードで培養し、3世代時間以上にわたり一定のプロセス条件を確保した。連続フェーズの前に、バッチ及びフェドバッチフェーズをバイオマスの増量のために行った。以下の段落中の量(volumes)は例示的なものであって、必要に応じてスケールアップ又はスケールダウンすることができる。
スルフォロブス アシドカルダリウス DSM639のプレカルチャーを75℃及び100rpmの回転式オイルバス中の100mL振とうフラスコ内で、Quehenberger et al.による限定培地(Journal of Biotechnology (2019) Submission JBIOTEC-D-18-01483; 「VD培地」; 以下の表を参照)中で100時間増殖させた。
Figure 2022526485000001
プレカルチャーをQuehenberger et al. (2019)による限定培地を含む培養容器に無菌的に(aseptically)移し、バッチフェーズのための総開始体積を1.5Lとした。バッチフェーズは75℃で、COシグナルの減少が観察されるまで行い、その後に75℃でフェドバッチフェーズ(10g/Lのグルタミン酸ナトリウム及び3g/LのD-グルコースを含む培地、指数関数的フィード、μ = 0.03 h-1)を総体積が2.5Lとなるまで行った。前記フェドバッチフェーズの後に所望の増殖温度及び増殖速度における連続培養を行った。この生物が連続フェーズの間に特定の増殖条件に適応するために十分な時間を確保するため、バイオマスを3世代時間以上後に収穫した。
指数フェーズのためのフィードの初期流量(F)の計算は、炭素源の質量バランスに基づくものである。
式1: 一般的質量バランス
Figure 2022526485000002

Figure 2022526485000003

化合物iの濃度[g/L]
リアクターの容積[L]
ri 成分iの反応速度[g/L/h]
式2: フェドバッチのための簡略化した質量バランス
簡略化後は
Figure 2022526485000004

Figure 2022526485000005

化合物iの濃度[g/L]
リアクターの容積[L]
ri 成分iの反応速度[g/L/h]
式3: フェドバッチフェーズの間の初期フィード速度(ブロスの密度は1kg/Lと仮定)
右辺(定項(constant terms))を0と設定して、以下のように書き直す。
Figure 2022526485000006

フェドバッチの初期フィード速度[g/h]
μ 比増殖速度[h-1
初期バイオマス濃度[g/L]
リアクターの開始体積[L]
フィードの基質濃度[g/L]
X/S バイオマス収率[g/g]
初期フィード速度(F、式3)の計算のため、xをOD600測定及びOD600から乾燥細胞重量への変換についての較正曲線により決定した。Sを、グルタミン酸ナトリウムとD-グルコースの濃度の合計として計算し、実験的に決定されたバイオマス収率0.33を想定した。それから、フェドバッチフェーズの間、式4に従ってFを指数関数的に増加させた。
式4:フェドバッチフェーズの間のフィード速度の計算
Figure 2022526485000007
フィードは、フィード容器の重量により制御し、フィードポンプの狂い(deviation)を補償するためにPIDコントローラーを用いた。
連続フェーズの間、希釈率(D)の値は所望の増殖速度と同じに設定し(D=μ)、これにより希釈率は添加された酸ストリーム及びフィードの合計として計算した。既知の作動容積(working volume)(V)を用いて、フィード速度(Fconti)をFconti=D×Vで計算した(ブロスの密度は1kg/Lと仮定した)。
溶存酸素レベルをオンラインでモニターし、0.25~0.5vvm(ガス体積/培養体積/分)の加圧空気によるエアレーションにより15%超に維持した。必要に応じて(if necessary)、空気を純粋酸素で置換した。pHをオンラインでモニターし、HSO(9.6%v/v)の添加により3.0±0.1に維持した。フィードフォワード制御された指数関数的フィード戦略に従って、フィード培地を蠕動ポンプモジュールで供給した。混合を300~500rpmで行った。オフガス中のCO含有量をモニターした。
2.2 下流:細胞収穫、バイオマス破砕(homogenisation)、及び脂質抽出
14,000g15分の遠心分離により細胞を収穫した。上清を捨てた後、さらなる処理のために細胞ペレットを-20℃で保存した。1サンプルあたり100mL培養ブロスからの細胞ペレット(収穫時の乾燥細胞重量を表1に示す)を解凍し、10mLの氷冷酢酸アンモニウムバッファー(155mM)中に再懸濁した。氷/水浴されているガラスビーカー内で、超音波処理(パルス間に30秒の休息を挟みながら1分を6回)により懸濁液を破砕(homogenise)した。破砕(homogenisation)の後に、OD600が1.5になるように氷冷酢酸アンモニウムバッファー(155mM)でサンプルを希釈した。氷冷の2:1CHCl/メタノール混合物3.3部を希釈された破砕物(homogenate)1部に加え、得られた混合物を1,400rpm、4℃で30分ボルテックスした。このサンプルを相分離のために遠心分離した(2分、1,000g、4℃)。有機相をガラスバイアルに回収し、サンプルを室温でNを用いて乾燥するまで蒸発させた。この脂質をさらなる分析のために-20℃で保存した。
2.3 分析:MALDI質量分析による脂質フラクションの同定
乾燥された脂質フラクションを、1:3CHCl/メタノール混合物中に再構成した。これらのフラクションを、すぐに、MALDIマトリックスとしての2-4-,6-トリヒドロキシアセトフェノン(THAP)を用いたMALDIサンプル調製に用いた(ナトリウム付加物イオンの促進のための塩化ナトリウムの添加無し又は有りで、おおよそ15mgTHAP/mL)。最後に、384-ウェルプレートステンレス鋼MALDIターゲット上に付与(deposition)するためマトリックス及び分析物溶液を1:1で混合した。使用した質量分析機は、高エネルギーCID実験用の接地された(grounded)ガスコリジョンセルを装着した島津MALDI7090 TOF/RTOFタンデム飛行時間質量分析計であった(ELAB=20keV、コリジョンガス:ヘリウム)。タンデム質量分析実験の前に、サンプルを、陽イオン及び陰イオン反射TOF-MSで測定した。m/z3600までの質量較正を可能とする島津から供給されている市販のペプチド混合物を用いて質量較正を行った。陽イオンモードでは、塩ドープに依存して、主に、被分析分子の[M+Na]及び[M+2Na-H]付加物イオンが検出された。ほとんどの脂質はホスホイノシトール頭部基(head group)を含んでいた。全ての被分析物が、高エネルギーCID TOF/RTOF-MSにより特性決定された。対照的に、陰イオンモードでは、ホスホイノシトール含有脂質だけを検出した(中性脂質は検出しなかった)が、これは[M-H]イオンも高エネルギーCID TOF/RTOF-MSにより特性決定されたからである。現在に至るまで、全ての帯電脂質被分析物がホスホイノシトール極性頭部基(head group)を含んでいる。この混合物中にさらに存在し得るより割合が低い(minor)脂質は、HPTLC分析及びマイクロ調製抽出の後に、MALDI分析により分析できる。
したがって、本発明は以下の好ましい実施形態を提供する。
1. 古細菌細胞培養物を制御された条件で増殖させること、及び古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して古細菌型脂質を含む組成物を得ること、を含む、古細菌細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法。
2. 前記制御された条件が、pH、増殖速度、温度、及びプロセスモードから選択される、実施形態1に記載の方法。
3. 前記古細菌細胞培養物が、S. acidocaldarius、M. hungatei、M. voltae、M. concilii、M. smithii、M. espanolae、T. acidophilum、M. mazei、M. espanole、T. acidophilum、H. salinarum、M. smithii、M. stadtmanae、H. halobium、H. morrhuae、M. jannaschii、S. islandicus、S. solfataricus、S. shibatae、S. tokodaii、S. Metallicus、M. sedula、H. hispanica、及び H.volcaniiの培養物である、実施形態1又は2に記載の方法。
4. 55℃~90℃、好ましくは70℃~85℃、特には75℃~85℃の温度で前記古細菌培養物を増殖させることを含む、実施形態1~3のうちいずれか1つに記載の方法。
5. 1時間あたり0.025~0.035、特には1時間あたり0.027~0.033の増殖速度、又は1時間あたり0.005~0.015、特には1時間あたり0.007~0.013の増殖速度で前記古細菌培養物を増殖させることを含む、実施形態1~4のうちいずれか1つに記載の方法。
6. 2~4のpH、好ましくは2.5~3.5のpHで前記古細菌培養物を増殖させることを含む、実施形態1~5のうちいずれか1つに記載の方法。
7. 連続モードで前記古細菌培養物を増殖させることを含む、実施形態1~6のうちいずれか1つに記載の方法。
8. バッチモード、特にフェドバッチモードで古細菌培養物を増殖させることを含む、実施形態1~6のうちいずれか1つに記載の方法。
9. 前記古細菌型脂質が、細胞及び/又は破砕された(homogenised)細胞を含む水相を有機相に抽出すること、好ましくはクロロホルム/メタノール有機相に抽出すること、及び前記有機相を前記水相から相分離することによって得られる、実施形態1~8のうちいずれか1つに記載の方法。
10. 前記細胞を培養後に破砕(homogenise)する、好ましくはホモジェナイゼーション、特に高圧ホモジェナイゼーション、又は超音波処理により破砕する、実施形態1~9のうちいずれか1つに記載の方法。
11. (1)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.025~0.035の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口遅延治療のための使用のための組成物を得ること、又は
(2)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.005~0.015の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口急速治療のための使用のための組成物を得ること、
を含む、スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法。
12. 前記スルフォロブス細胞培養物が、スルフォロブス アシドカルダリウス細胞の培養物である、実施例1~11のうちいずれか1つに記載の方法。
13. 経口遅延治療に使用するための前記組成物は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7、特に1:5.5~1:6.5である、実施形態1~12のうちいずれか1つに記載の方法。
14. 経口急速治療に使用するための前記組成物は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:2~1:4、特に1:2.5~1:3.5である、実施形態1~12のうちいずれか1つに記載の方法。
15. 前記細胞を培養後に破砕(homogenise)する、好ましくはホモジェナイゼーション、特に高圧ホモジェナイゼーション、又は超音波処理により破砕する、実施形態1~14のうちいずれか1つに記載の方法。
16. 破砕された(homogenised)細胞をバッファーと、好ましくは酢酸アンモニウムバッファーと、特には、100~200mMの酢酸アンモニウムを含む酢酸アンモニウムバッファーと混合する、実施形態15に記載の方法。
17. 前記古細菌型脂質が、細胞及び/又は破砕された(homogenised)細胞を含む水相を有機相に抽出すること、好ましくはクロロホルム/メタノール有機相に抽出すること、及び前記有機相を前記水相から相分離することによって得られる、実施形態1~16のうちいずれか1つに記載の方法。
18. 前記有機相を蒸発させることにより、好ましくは前記有機相を乾燥状態に蒸発することにより、前記古細菌型脂質を得る、実施形態17に記載の方法。
19. 得られた前記古細菌型脂質は医薬的に活性な薬物と組み合わせられ、また好ましくは医薬的に許容可能なキャリアと組み合わせられ、古細菌型脂質及び前記医薬的に活性な薬物を含む組成物を得る、実施形態1~18のうちいずれか1つに記載の方法。
20. 前記古細菌型脂質を超臨界流体抽出、特に超臨界COによる抽出、により得る、実施形態1~19のうちいずれか1つに記載の方法。
21. 実施形態1~20のうちいずれか1つに記載の方法により得ることができる、古細菌型脂質を含む組成物。
22. ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7又は1:2~1:4である、古細菌型脂質を含む組成物、好ましくは実施形態21に記載の組成物。
23. 薬物、好ましくはヒトでの医薬使用のための薬物、特には、製品を医薬品として上市するための欧州連合又は米国で発せられた承認の対象である薬物をさらに含む、実施形態21又は22に記載の組成物。
24. アーキアソームが5%w/w以上、好ましくは10%w/w以上のPI-Arc、及び50%w/w以上の2Hex-Calを含む、実施形態21~23のうちいずれか1つに記載の組成物(%w/wは、全脂質に対する%w/w)。
25. アーキアソームが、患者に投与すべき薬物として、抗原、経口薬、ワクチン、抗酸化剤、ウイルス様粒子、核酸、特にDNA、RNA、pDNA、抗生物質、ポリペプチド、又はタンパク質を含む、実施形態21~24のうちいずれか1つに記載の組成物。
26. アーキアソームが、経口、経粘膜、又は経皮での投与のためのものである、実施形態21~25のうちいずれか1つに記載の組成物。
27. 製品を医薬品として上市するための欧州連合又は米国で発せられた承認の対象であるリポソーム組成物において、リポソームを実施形態1~20のうちいずれか1つに記載の方法により提供されるアーキアソームに置き換えた、実施形態21~26のうちいずれか1つに記載の組成物。

Claims (24)

  1. (1)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.025~0.035の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口遅延治療のための使用のための組成物を得ること、又は
    (2)スルフォロブス細胞培養物を75℃~85℃の温度及び1時間当たり0.005~0.015の増殖速度で増殖させ、古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して経口急速治療のための使用のための組成物を得ること、
    を含む、スルフォロブス細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法。
  2. 前記スルフォロブス細胞培養物が、スルフォロブス アシドカルダリウス細胞の培養物である、請求項1に記載の方法。
  3. 経口遅延治療に使用するための前記組成物は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7、特に1:5.5~1:6.5である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  4. 急速遅延治療に使用するための前記組成物は、ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:2~1:4、特に1:2.5~1:3.5である、請求項1又は請求項2に記載の方法。
  5. 前記細胞を培養後に破砕(homogenise)する、好ましくはホモジェナイゼーション、特に高圧ホモジェナイゼーション、又は超音波処理により破砕する、請求項1~4のうちいずれか一項に記載の方法。
  6. 破砕された(homogenised)前記細胞をバッファーと、好ましくは酢酸アンモニウムバッファーと、特には、100~200mMの酢酸アンモニウムを含む酢酸アンモニウムバッファーと混合する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記古細菌型脂質が、細胞及び/又は破砕された(homogenised)細胞を含む水相を有機相に抽出すること、好ましくはクロロホルム/メタノール有機相に抽出すること、及び前記有機相を前記水相から相分離することによって得られる、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記有機相を蒸発させることにより、好ましくは前記有機相を乾燥状態に蒸発することにより、前記古細菌型脂質を得る、請求項7に記載の方法。
  9. 得られた前記古細菌型脂質は医薬的に活性な薬物と組み合わせられ、また好ましくは医薬的に許容可能なキャリアと組み合わせられて、古細菌型脂質及び前記医薬的に活性な薬物を含む組成物を得る、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記古細菌型脂質を超臨界流体抽出、好ましくは超臨界COによる抽出、により得る、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の方法。
  11. 請求項1~10のうちいずれか一項に記載の方法により得ることができる、古細菌型脂質を含む組成物。
  12. ジヘキソース-カルドアーキオール(2Hex-Cal)のフォスファチジルイノシトール-アーキオール(PI-Arc)に対する比が1:5~1:7又は1:2~1:4である、古細菌型脂質を含む組成物、好ましくは請求項11に記載の組成物。
  13. 薬物、好ましくはヒトでの医薬使用のための薬物、特には、製品を医薬品として上市するための欧州連合又は米国で発せられた承認の対象である薬物をさらに含む、請求項11又は請求項12に記載の組成物。
  14. アーキアソームが5%w/w以上、好ましくは10%w/w以上のPI-Arc、及び50%w/w以上の2Hex-Calを含む、請求項11~13のうちいずれか一項に記載の組成物(%w/wは、全脂質に対する%w/w)。
  15. 古細菌細胞培養物を制御された条件で増殖させること、及び古細菌培養物から古細菌型脂質を抽出して古細菌型脂質を含む組成物を得ること、を含む、古細菌細胞培養物からの古細菌型脂質を含む組成物を製造する方法。
  16. 前記制御された条件が、pH、増殖速度、温度、及びプロセスモードから選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記古細菌細胞培養物が、S. acidocaldarius、M. hungatei、M. voltae、M. concilii、M. smithii、M. espanolae、T. acidophilum、M. mazei、M. espanole、T. acidophilum、H. salinarum、M. smithii、M. stadtmanae、H. halobium、H. morrhuae、M. jannaschii、S. islandicus、S. solfataricus、S. shibatae、S. tokodaii、S. Metallicus、M. sedula、H. hispanica、及び H.volcaniiの培養物である、請求項15又は請求項16に記載の方法。
  18. 55℃~90℃、好ましくは70℃~85℃、特には75℃~85℃の温度で前記古細菌培養物を増殖させることを含む、請求項15~17のうちいずれか一項に記載の方法。
  19. 1時間あたり0.025~0.035、特には1時間あたり0.027~0.033の増殖速度、又は1時間あたり0.005~0.015、特には1時間あたり0.007~0.013の増殖速度で前記古細菌培養物を増殖させることを含む、請求項15~18のうちいずれか一項に記載の方法。
  20. 2~4のpH、好ましくは2.5~3.5のpHで前記古細菌培養物を増殖させることを含む、請求項15~19のうちいずれか一項に記載の方法。
  21. 連続モードで前記古細菌培養物を増殖させることを含む、請求項15~20のうちいずれか一項に記載の方法。
  22. バッチモード、特にフェドバッチモードで古細菌培養物を増殖させることを含む、請求項15~21のうちいずれか一項に記載の方法。
  23. 二相抽出、有機抽出、特にソックスレー、高圧若しくは高温抽出、イオン性液体抽出、又は超臨界流体抽出により古細菌型脂質を抽出することを含む、請求項15~22のうちいずれか一項に記載の方法。
  24. 水、ヘキサン、クロロホルム、アセトン、ジエチルエーテル、メタノール、エタノール、酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、CO、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる溶媒により古細菌型脂質を抽出することを含む、請求項15~23のうちいずれか一項に記載の方法。
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