JP2022523530A - 化膿性汗腺炎の治療のための抗IL-α抗体 - Google Patents

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Abstract

医薬的に許容される担体と、治療有効量のIL-1αに選択的に結合する剤と、を含む医薬組成物を投与することによって、化膿性汗腺炎を治療することができる。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年2月28日に出願された米国特許仮出願第62/811,696号の優先権を主張するものである。
(連邦政府の後援による研究に関する記述)
該当なし。
(発明の分野)
本発明は、全般的に、医学、皮膚科学、及び免疫学の分野に関する。より具体的には、本発明は、化膿性汗腺炎を治療するための、インターロイキン-1α(IL-1α)に特異的に結合する抗体(Ab)の使用に関する。
化膿性汗腺炎(HS)は、アポクリン腺に富む領域にみられる結節が破裂し、皮膚を通して膿を放出するまで徐々に膨潤する、慢性衰弱性皮膚疾患である。洞管の形成及び瘢痕が結果として生じる。HSは、典型的には抗生物質及び手術で治療されるが、頻繁に再発することにより、患者の生活の質が劇的に損なわれる。
IL-1αを特異的に標的とする剤が、HSの治療に有用であるという知見が、本明細書に開示される。
したがって、ヒト被験体におけるHS症状の重症度を低下させる方法が本明細書に記載される。これらの方法は、医薬的に許容される担体と、炎症性病変(例えば、結節、膿瘍、又は排液性瘻孔)の数及び/又はサイズを低減する、その進行を予防する、病変によって引き起こされる疼痛を軽減する、又は新たな増悪までの時間を延長するのに有効な量のIL-1αに選択的に結合する剤と、を含む医薬組成物を被験体に投与するステップを含み得る。剤は、(例えば、IgG1アイソタイプの)モノクローナル抗体(mAb)などの抗IL-1α抗体(Ab)、MABp1の相補性決定領域(CDR)を含むmAb、又はMABp1であり得る。
本発明の別の態様は、医薬的に許容される担体と、任意の標準的な皮膚科学的試験によって測定したときに被験体における炎症性病変(例えば、結節、膿瘍、又は排液性瘻孔)の数及び/又はサイズを少なくとも約10%(例えば、少なくとも8、9、10、15、17、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100%)低減するのに有効な量の抗IL-1αAb(又はIL-1αに特異的及び/又は選択的に結合する他の剤と、を含む医薬組成物を被験体に投与することによって、ヒト被験体におけるHSの症状を低減する方法を特徴とする。
抗IL-1αAbは、IgG1などのmAbであってよい。抗IL-1αAbは、MABp1と呼ばれるmAb、又はMABp1の1つ以上の(CDR)を含むmAbであってよい。医薬組成物は、注射、注入、皮下、静脈内、筋肉内、又は皮内によって被験体に投与してよい。本明細書に記載の方法では、用量は、少なくとも0.25(例えば、少なくとも0.2、0.5、0.75、1、2、3、4、又は5)mg/kg、好ましくは1~20mg/kg(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20+/-0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9mg/kg)であってよい。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。生物学的用語の一般的に理解される定義は、Rieger et al.,Glossary of Genetics:Classical and Molecular,5th edition,Springer-Verlag:New York,1991;及びLewin,Genes V,Oxford University Press:New York,1994に見出すことができる。医学用語の一般に理解される定義は、Stedman’s Medical Dictionary,27th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins,2000に見出すことができる。
本明細書で使用するとき、「抗体」又は「Ab」は、免疫グロブリン(Ig)、同一若しくは異種のIgの溶液、又はIgの混合物である。「Ab」はまた、Fab、Fab’、及びF(ab’)断片などのIgの断片及び遺伝子操作を受けたバージョン、並びにscFv’、ヘテロ複合体Ab、並びに抗原特異性を付与するためにIg由来CDRを用いる類似の人工分子を指す場合もある。「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、1つのクローンB細胞株又は特定の抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位の1つの種のみを含有するAb分子の集団によって発現されるAbである。「ポリクローナルAb」は、異種Abの混合物である。典型的には、ポリクローナルAbは、特定の抗原に結合する無数の異なるAb分子を含み、当該異なるAbのうちの少なくともいくつかは抗原の異なるエピトープと免疫反応する。本明細書で使用するとき、ポリクローナルAbは、2つ以上のmAの混合物であり得る。
Abの「抗原結合部分」は、AbのFab部分の可変領域内に含まれ、Abに対して抗原特異性を付与するAbの部分(すなわち、典型的には、Abの重鎖及び軽鎖のCDRによって形成される三次元ポケット)である。「Fab部分」又は「Fab領域」は、そのIgの抗原結合部分を含有するパパインで消化されたIgのタンパク質分解断片である。「非Fab部分」は、Fab部分内にはないAbの部分、例えば、「Fc部分」又は「Fc領域」である。Abの「定常領域」は、可変領域の外側のAbの部分である。概して、定常領域内に包含されるのは、免疫応答を促進する他の免疫系成分の結合に関与するAbの部分である、Abの「エフェクター部分」である。したがって、例えば、(その抗原結合部分を介さずに)補体成分又はFc受容体に結合するAb上の部位は、そのAbのエフェクター部分である。
Abなどのタンパク質分子を指す場合、「精製されている」は、このような分子に天然で付随している成分から分離されていることを意味する。典型的には、非Abタンパク質もそれが天然に会合している他の天然に存在する有機分子も、少なくとも約10重量%(例えば、9重量%、10重量%、20重量%、30重量%40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、98重量%、99重量%、99.9重量%、及び100重量%)含まないとき、Ab又はタンパク質は精製されている。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、又はHPLC分析によって測定することができる。化学的に合成されたタンパク質又はそれが天然に存在する細胞型以外の細胞型で生成された他の組換えタンパク質は、「精製されている」。
「結合」、「結合する」、又は「反応する」とは、ある分子がサンプル中の特定の第2の分子は認識し、接着するが、サンプル中の他の分子は実質的に認識も接着もしないことを意味する。概して、別の分子に「特異的に結合する」Abは、他の分子に対して約10、10、10、10、10、1010、1011、又は1012リットル/モルを超えるKを有する。第1の分子に「選択的に結合する」Abは、第1のエピトープにおいて第1の分子に特異的に結合するが、第1のエピトープを有さない他の分子には特異的に結合しない。例えば、IL-1αに選択的に結合するAbは、IL-1α上のエピトープに特異的に結合するが、IL-1β(当該エピトープを有さない)には特異的に結合しない。
「治療的に有効な量」は、治療された動物又はヒトにおいて医学的に望ましい効果(例えば、疾患又は疾患の症状の寛解又は予防)を生み出すことができる量である。
本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料を、本発明を実施又は試験するために使用することが可能であるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。更に、以下に論じる具体的な実施形態は、単なる例示であり、限定することを意図するものではない。
プラセボ群の10%と比べて、MABp1による治療に割り当てられた患者の60%が12週目に陽性HiSCRを達成したこと;及びMABp1下における陽性HiSCRについてのオッズ比(OR)が13.50であったことを示すグラフである(95%信頼区間:1.19~152.51;p=0.035)。 MABp1の臨床的有効性が24週目(すなわち、治療を中止した12週間後)まで維持され、MABp1で治療された10名の患者のうちの4名(40%)と比較して、陽性HiSCRスコアを有していたプラセボで治療された患者はいなかった(0%)ことを示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、全ての患者における総AN(炎症性結節及び膿瘍の合計)カウントの%変化率を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFαに曝露されていない患者における総ANカウントの%変化率を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、以前の抗TNFα治療に失敗した患者における総ANカウントの%変化率を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFαに曝露されていない患者における疾患活動性の%変化率を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、全ての患者における視覚的アナログスケール(VAS)の%変化率を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始後最初の24週間にわたる、以前に抗TNFαに曝露されていない患者における新たな増悪までのメジアン時間を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始から12週間後の、全ての患者における病変深さの変化を示すグラフである。 MABp1又はプラセボによる治療開始から12週間後の、以前の抗TNFα治療に失敗した患者における病変深さの変化を示すグラフである。 MABp1又はプラセボで治療した患者における、病変深さが少なくとも20%減少した患者の数を示すグラフである。 MABp1又はプラセボで治療した患者における、病変深さが少なくとも20%減少した患者の数を示すグラフであり、患者集団は、(i)以前に抗TNFαに曝露されていない患者及び(ii)以前の抗TNFα治療に失敗した患者であった。 以下の実施例1に記載する試験における被験体の前病歴を示すチャートである。 以下の実施例1に記載する試験における被験体のベースライン疾患重症度を示すチャートである。 以下の実施例2に記載する確認試験についてまとめたフローチャートであり、ここでは、12週間にわたって1週間当たり400mgを皮下投与するためにベルメキマブ(MABp1)を製剤化した。 実施例2に記載する試験に参加した試験被験体(抗TNF失敗対抗TNF未治療)のベースラインでの特徴を示すチャートである。 実施例2に記載する試験の結果をまとめたチャートである。 実施例2に記載する試験の試験カレンダーである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 実施例2に記載する試験の様々な結果を示すグラフである。 統計分析を含む、図16のアップデート版である。 A及びBの両群の患者がベースラインに対して達成した、炎症性病変の統計的に有意な平均%変化率を示す図である。群Aはベースラインから平均46%変化(P<0.0001)し、群Bはベースラインから平均60%変化(P=0.004)した。 2、6、及び12週目までにHiSCRを達成した群A(n=24)及び群B(n=18)における被験体の百分率を示す。図に示すエラーバーは、平均±SEMである。HiSCRの達成は、治療開始前のベースラインから総炎症性病変カウントが少なくとも50%減少し、新たな膿瘍も瘻骨形成も存在しないと定義される。 ベルメキマブを投与した被験体についての記述統計を提供する:12週目における変化 患者整理フローチャートを提供する。試験は、2つの群からなっていた。群A(n=24):以前抗TNF療法に失敗したことのある患者において、毎週400mgの用量でベルメキマブを皮下投与した(13回投与)。群B(n=18):抗TNF未治療の患者において、毎週400mgの用量でベルメキマブを皮下投与した(13回投与)。安全性及び予備的有効性の評価を可能にするために、13週間にわたって患者を追跡した。PI、治験責任医師。
本発明は、被験体における皮膚科学的病理の1つ以上の症状を寛解させることを含む、HSにおける皮膚炎症を低減するための組成物及び方法を包含する。以下に記載する好ましい実施形態は、これらの組成物及び方法の適応を示す。それにもかかわらず、これらの実施形態の説明から、以下に提供する説明に基づいて本発明の他の態様を作製及び/又は実施することができる。
全般的な方法論
従来の免疫学的及び分子生物学的技術を含む方法を、本明細書に記載する。免疫学的方法(例えば、抗原-Ab複合体の検出及び局在のアッセイ、免疫沈降、免疫ブロッティングなど)は、当該技術分野において全般的に知られており、Current Protocols in Immunology,Coligan et al.,ed.,John Wiley & Sons,New Yorkなどの方法論に関する論文に記載されている。分子生物学の技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,vol.1-3,Sambrook et al.,ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,ed.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New Yorkなどの論文に詳細に記載されている。Ab法は、Handbook of Therapeutic Abs,Dubel,S.,ed.,Wiley-VCH,2007に記載されている。医学的治療の全般的な方法は、McPhee and Papadakis,Current Medical Diagnosis and Treatment 2010,49th Edition,McGraw-Hill Medical,2010;及びFauci et al.,Harrison’s Principles of Internal Medicine,17th Edition,McGraw-Hill Professional,2008に記載されている。皮膚科学における方法は、James et al.,Andrews’ Diseases of the Skin:Clinical Dermatology-Expert Consult,11th Ed.,Saunders,2011;及びBurns et al.,Rook’s Textbook of Dermatology,8th Ed.,Wiley-Blackwell,2010に記載されている。
治療
本明細書に記載する組成物及び方法は、被験体における病態の少なくとも1つの特徴を改善する(例えば、結節、膿瘍、若しくは排液性瘻孔の数及び/若しくはサイズを低減する、又はこれらの進行を予防する)のに、又は実施例の章で以下に記載するスコアのうちの1つ以上を少なくとも10%(例えば、少なくとも10、20、30、40、50、60、又は70%)若しくは少なくとも1点(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、又は9点)改善するのに有効な量の抗IL-1αAbを含む医薬組成物を被験体に投与することによって、哺乳類被験体におけるHSを治療するのに有用である。哺乳類被験体は、ヒトを含むHSに罹患している任意のものであってよい。ヒト被験体は、男性、女性、成人、小児、高齢者(65歳以上)、及び他の疾患を有するものであってもよい。特に好ましい被験体は、(i)他の抗炎症剤(例えば、TNFα阻害剤)又は抗菌剤で治療した後に疾患が進行したか又は応答しなかったもの;(ii)HSの家族歴を有するもの;(iii)他の抗炎症剤(例えば、TNFα阻害剤)又は抗菌剤が適していないもの;及び(iv)その病変から採取された膿中に100、200、300、400、500、又は1000pg/mLよりも高いIL-1αを有するものである。抗IL-1αAbがMABp1などの真のヒトAb(例えば、ヒト被験体において天然で発現するもの)である場合、治療抗体の先行する投与に起因してヒト抗ヒト抗体応答を発現したことのある被験体が好ましい。
IL-1αを標的とする抗体及び他の剤
IL-1αに特異的に結合し、被験体におけるHSの特徴を低減する任意の好適な種類のAbを使用することができる。例えば、使用される抗IL-1αAbは、mAb、ポリクローナルAb、mAbの混合物、又はscFvなどのAb断片若しくは遺伝子操作を受けたAb様分子であってよい。AbのKaは、好ましくは、少なくとも1×10-1以上である(例えば、9×1010-1、8×1010-1、7×1010-1、6×1010-1、5×1010-1、4×1010-1、3×1010-1、2×1010-1、又は1×1010-1よりも高い)。好ましい実施形態では、本発明は、(i)ヒトIL-1αに対して非常に高い結合親和性(例えば、少なくともナノ又はピコモル)を示す抗原結合可変領域と、(ii)定常領域と、を含む完全ヒトmAbを利用する。ヒトAbは、好ましくはIgG1であるが、異なるアイソタイプのもの、例えばIgM、IgA、若しくはIgE、又はサブクラス、例えばIgG2、IgG3、若しくはIgG4のものであってもよい。特に有用なmAbの一例は、2011年10月11日に発行された米国特許第8,034,337(B2)号に記載のIL-1α特異的IgG1 mAbであるMABp1である。他の有用なmAbは、MABp1の少なくとも1つであるが、好ましくは全てのCDRを含むものである。CDRは、Ofran et al.,J.Immunol.,181:6230,2008;及びAntibody Engineering Volume 2,2d edition,Konterman and Dubel (eds),Springer,2010に記載されているものなどの既知の方法に従って決定することができる。IL-1αに特異的に結合するAb及びその製造方法は、例えば、米国特許第9,545,411号により詳細に記載されている。
上記のIL-1α特異的Abは、本明細書に記載の方法で使用するのに好ましいが、場合によっては、その投与によってHSの特徴が改善する限り、IL-1αを特異的に標的とする他の剤を使用してもよい。これらの他の剤としては、抗IL-1αAbの産生を引き起こすワクチン、IL-1αに結合するタンパク質又はペプチド、及びIL-1αを特異的に標的とする小さな有機分子を挙げることができる。IL-1βに特異的に結合しないものが好ましく、その理由は、このような剤の使用が、HSの症状を悪化させることが報告されており(例えば、Tekin et al.,Indian J Dermatol Venereol Leprol 2017;83:615-7)、その他には、IL-1βが治癒及び修復を促進することが報告されているためである(例えば、Bersudsky et al.,Gut.2014 Apr;63(4):598-609)。
医薬組成物及び方法
抗IL-1αAb組成物(及びIL-1αを特異的に標的とする他の剤)は、投与の機序及び経路、並びに標準的な薬務に基づいて選択される医薬的に許容される担体(例えば、無菌生理食塩水)中で投与されてもよい。医薬的に許容される担体及び医薬製剤のリストは、この分野における標準的なテキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciences及びUSP/NFに見出すことができる。組成物を安定化及び/若しくは保存するために、並びに/又は組成物の被験体への投与を容易にするために、組成物に他の物質を添加し、他のステップを追加してもよい。
例えば、Ab組成物を凍結乾燥してもよい(Draber et al.,J.Immunol.Methods.181:37,1995;及び国際出願第US90/01383号を参照);ナトリウムイオン及びクロリドイオンを含む溶液に溶解させてもよい;アルブミン、グルコース、マルトース、スクロース、ソルビトール、ポリエチレングリコール、及びグリシンなどの1つ以上の安定化剤を含む溶液に溶解させてもよい;(例えば、0.45及び/又は0.2マイクロメートルのフィルタを使用して)濾過してもよい;ベータ-プロピオラクトンと接触させてもよい;並びに/又は殺菌剤(例えば、洗剤、有機溶媒、及び洗剤と有機溶媒との混合物を含む溶液に溶解させてもよい。
Ab組成物は、任意の好適な技術によって動物又はヒトに投与してよい。典型的には、このような投与は、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、又は腹腔内導入)である。組成物はまた、例えば局所塗布によって標的部位(例えば、皮膚)に直接投与してもよい。他の送達方法、例えば、リポソーム送達又は組成物を含浸させたデバイスからの拡散は、当該技術分野において既知である。組成物は、単回ボーラス、複数回の注射、又は連続注入によって(例えば、静脈内に又は腹腔透析によって)投与されてもよい。
治療的に有効な量は、治療された動物又はヒトにおいて医学的に望ましい結果を生み出すことができる量である。抗IL-1αAb組成物の有効量は、皮膚炎症の1つ以上の症状の改善によって測定したときに患者において臨床的有効性を示す量である。医学分野において周知であるように、任意の1体の動物又はヒトに対する投与量は、被験体の大きさ、体表面積、年齢、投与される具体的な組成物、性別、投与の時間及び経路、全身健康状態、並びに同時に投与される他の薬物を含む多くの要因に依存する。好ましい用量は、1~20mg/kg体重(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20+/-0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、又は0.9mg/kg体重)の範囲である。場合によっては、単回投与が、皮膚炎症のエピソードを回復させるのに有効である。他の場合では、繰り返し、例えば、週2回、週1回、2週1回、3週1回、月2回、3週間ごとに1回、月1回、2ケ月1回、又は必要に応じて(病変が再発した場合)、投与してもよい。
併用治療
IL-1αに選択的に結合する剤で治療されたHS患者に、他の剤を投与することもできる。例えば、このような患者を、コルチコステロイド、レチノイド、レゾルシノール、ホルモン、及びアダリムマブ又はインフリキシマブなどの生物製剤で治療することができる。また、抗菌剤を使用してもよい。具体的には、黄色ブドウ球菌(S.aureus)を標的とする抗生物質又は他の剤を、1つ以上のHS病変において黄色ブドウ球菌の定着又は感染を有する又は有すると疑われる患者において使用してよい。黄色ブドウ球菌をオプソニン化する抗体の使用が特に有用であると考えられる。この使用に好ましい抗黄色ブドウ球菌は、黄色ブドウ球菌の抗体中和SpAの発現にもかかわらず黄色ブドウ球菌のオプソニン化を媒介することができるように、黄色ブドウ球菌タンパク質A(SpA)に特異的に結合するFab領域パラトープ及びSpAに結合しないFc領域を有するものである。これらは、米国特許第9,416,172号に記載されている(例えば、その中でPa8-G3と呼ばれる抗体)。
実施例1-HS患者における、インターロイキンα-1を標的とするTrue Human(商標)抗体であるMABp1の安全性及び有効性の二重盲検無作為化プラセボ対照による臨床治験。
その時点で追跡下にある患者から、HS患者をスクリーニングした。組み入れ基準は、以下の通りであった:患者によって書面によるインフォームドコンセントが提供された;18歳以上;HSの診断;ハーリーステージII若しくはIIIの疾患のHS、又はハーリーステージIの急速進行性HS;体内のHSと一致する、3つ以上の炎症結節の存在;以下のうちの少なくとも1つ:a)任意の抗TNFαレジメンによる治療に以前失敗した;b)任意の抗TNFαレジメンによる治療下で以前再発した;又はc)皮下アダリムマブ治療を受けることについて希望しない。
除外基準は、以下の通りであった:全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、又は血清陰性炎症性関節炎の履歴;直近4週間(又は5半減期、いずれか長い方)以内の任意の生物学的製剤又は治験薬による治療;ヒト、ヒト化、キメラ、又はマウスモノクローナル抗体に対する重度のアレルギー又はアナフィラキシー反応の履歴;直近4週間の任意の生(弱毒化)ワクチンの投与;抗カルジオリピン症候群に適合する再発性静脈血栓症又は塞栓症の履歴;その時点での何らかの重篤な細菌感染、すなわち、肺炎、心内膜炎、急性腎盂腎炎、及び腹腔内感染;>2×正常上限のトランスアミナーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、又はビリルビンの任意の値として定義される肝機能不全;血液又は固形腫瘍悪性疾患、動脈高血圧症、肝硬変、HIV感染、及びB型又はC型肝炎ウイルス感染の履歴;脱骨髄性障害に類似するエピソードの履歴又は多発性硬化症の確定診断;1.5mg/dLを超える任意のクレアチニン値;直近3週間の1mg/kgを超えるプレドニゾン又は等価物の1日服用量として定義されるコルチコステロイドの服用;<1000好中球/mm3として定義される好中球;妊娠中又は授乳中;結核の履歴(潜在性又は活動性);0日目の前28日間以内の大手術。
HSの診断は、the 2nd Conference of the HS foundation in San Franciscoによって設定された以下の基準に基づいていた:思春期後の疾患発症;アポクリン腺に富む皮膚の少なくとも2つの領域の併発;及び患部領域からの排膿の有り無しの再発性有痛性おできの履歴。患者が試験に適格であるとみなされたら、以下の手順を実施した:記録履歴及び投薬の徹底的研究;徹底的な理学的検査;皮膚ツベルクリン検査(5mm未満の任意の直径は陰性であるとみなされる);胸部X線ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、及びC型肝炎ウイルス(HCV)についての血清学的検査;血清クレアチニン;並びに肝臓生化学的検査。正常内の患者のみを試験に登録した。患者を、プラセボ又はMABp1(XBiotech USA,Inc.)のいずれかの静脈内投与に無作為に1:1に割り振った。独立した生物統計学者によって無作為化シーケンスを構築した。治験薬又は対応するプラセボを、最大7回注入するために、12週間にわたって14日間(+/-1日)ごとに、すなわち、0週目(ベースライン)、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、及び12週目に1時間注入することにより静脈内投与した。MABp1の用量は、7.5mg/kgであった。
XILONIX(商標)は、安定化等張緩衝液(pH6.4)中50mg/mL MABp1の無菌の注射可能な液体製剤である。各10mLの血清バイアルは、6mLの製剤を収容し、20mmの灰色のブロモブチルストッパ及びフリップオフアルミニウムシールで密封されている。製品を2~8℃で保管し、室温までの逸脱は許容した。薬物製品の正確な組成を以下に示す:
Figure 2022523530000002
プラセボ製品は、MABp1薬物製品を製造するために使用したのと同じ手順及びバッチ記録に従って製造した。プラセボ剤形は、pH6.2~6.5の無菌等張製剤緩衝液である。各10mLのI型硼珪酸ガラス血清バイアルは、6mLの製剤緩衝液を収容し、20mmのDaikyo Flurotecブチルゴムストッパ及びフリップオフアルミニウムシールで密封されている。製品を2~8℃で直立保管し、室温までの逸脱は許容した。プラセボ製品の正確な組成を以下の表に示す:
Figure 2022523530000003
注入前に生理食塩水の100mLのバッグにおいてXILONIX(商標)を希釈した。以下の計算を使用して、各試験被験体ごとに希釈される薬物製品の体積を決定した。
Figure 2022523530000004
好適なシリンジを使用して、被験体の割り振られたバイアルから計算された体積(Vd)を吸引した。計算された薬物と同じ量の生理食塩水を100mLのバッグから取り出した。次いで、計算された体積を、生理食塩水(0.9%NaCl)の100mLのIVバッグに注入し、最終総体積を100mLとした。次いで、バッグを10回穏やかに反転させることによって、薬物製品を混合した。輸液(注入)セットラインをプライミングした後、1時間(60+/-15分)にわたって100mLの希釈された薬物製品を送達するように送達ポンプをプログラムし、輸液反応の兆候について被験体を監視した。患者は、0週目、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目、12週目、16週目、20週目、及び24週目に来院した。来院するたびに、以下の手順を実施した。
Figure 2022523530000005
DQLI:皮膚疾患の生活の質指数
HiSCR:化膿性汗腺炎臨床応答スコア
PGA:医師の全般的評価
VAS:視覚的アナログスケール
視覚的アナログスケール(VAS)(mm)を使用して疾患の重症度の評価を提供するよう患者に依頼した。0が疾患活動性なしを表し、100が患者がそれまでに感じたことのある最悪の疾患活動性を表すことを患者に説明した。疾患についての全体的所見にはあるスコアを、そして、感じる肉体的苦痛には別のスコアを提供するよう患者に依頼した。治験担当医師は、疾患の増悪の頻度及び罹患部位で感じた疼痛を提供するよう患者に依頼した。患者に以下のDLQIスコアを与え、0週目、12週目、及び24週目にのみ記入するよう依頼した。
Figure 2022523530000006
治験担当医師は、各個々の患部領域から以下を数え、その領域の写真を撮影した:瘻孔の数;結節又は膿瘍の数;瘢痕の数;以下の通り0~3でスコア付けされた炎症の程度に関する所見:0、存在しない、1、軽度;2、中等度;3、強度;各病変の2つの最大寸法(mm)。上記に基づいて、各来院時に以下の2つのスコアを評価した:化膿性汗腺炎臨床応答(HiSCR)スコア及び医師の全般的評価(PGA)スコア。HiSCRについては、患者を達成者又は非達成者として特定した。陽性HiSCRスコアを達成する確率は、2回目の来院から開始し、そして、ベースラインと比較して、炎症性病変カウント(膿瘍と炎症性結節との合計)が≧50%減少し、HSにおける膿瘍も排液性瘻孔も増加しないとして定義した。PGAについては、このスコアは、a)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性結節の総数が0であり、非炎症性結節の総数が0であるときは無し(clear);b)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性結節の総数が0であり、非炎症性結節が存在するときはごく軽度(minimal);c)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性結節の総数が1~4であるとき、又は膿瘍若しくは排液性瘻孔が1つ存在し、炎症性結節が全く存在しないときは軽度;d)膿瘍の総数が0であり、排液性瘻孔の総数が0であり、炎症性結節の総数が5以下であるとき、又は1つの膿瘍若しくは排液性瘻孔及び1つ以下の炎症性結節が存在するときは中等度;e)膿瘍又は排液性瘻孔の総数が2~5であり、炎症性結節の総数が5~10であるときは重度;そして、f)5個を超える膿瘍又は排液性瘻孔が存在するときには極めて重度と分類した。
疾患活動性。これは、各患者の全ての患部領域のスコアの合計として定義される。各領域を以下の式によって評価した:(各患部領域における2つの最大直径の乗算(mm))×(各病変の炎症の程度)。
修正縫工筋スコア。これは、以下の通り記録されたデータを使用した患部領域ごとの別々のスコア付けの合計である:a)関与する解剖学的領域あたり3点;b)各瘻孔につき6点、及び各結節又は膿瘍につき1点;c)各患部領域における2つの関連病変間の最長距離が<5cm未満である場合、1点;5~10cmである場合、3点;>10cmである場合、9点;d)病変が隣接する正常な皮膚から明らかに分離されていない場合、9点、及び分離されている場合、0点。
HiSCRスコア付けによる中等度~重度のHSを有する患者におけるMABp1の有効性を、12週目の治療群と比較プラセボ群との間の陽性HiSCRスコアの達成の差によって評価した。陽性HiSCRスコア付けによる中等度~重度のHSを有する患者におけるMABp1の長期有効性を、24週目の治療群と比較プラセボ群との間のHiSCRスコアの達成の差によって評価した。アダリムマブ下で以前失敗した又は再発した患者、及び以前にアダリムマブ治療を受けていない患者に対して、別々に分析を行った。中等度~重度のHSを有する患者におけるMABp1の短期及び長期の有効性を、全ての試験来院における全ての使用したスコア付けシステム(HiSCR、PGA、DLQI、疾患活動性、疾患についてのVAS、疼痛についてのVAS、及び修正縫工筋スコア)の比較によって評価した。また、アダリムマブ下で以前失敗した又は再発した患者、及び以前にアダリムマブ治療を受けていない患者に対して、別々に分析を行った。2つの治療群間で0週目から新たな増悪までの時間を比較することによって、新たな増悪までの時間に対するMAbp1の効果を評価した。アダリムマブ下で以前失敗した又は再発した患者、及び以前にアダリムマブ治療を受けていない患者に対して、別々に分析を行った。フィッシャーの直接検定によって、2つの試験群間のHiSCRの比較を行った。ノンパラメトリック統計によって、試験来院ごとの重症度スコアの比較を行った。ログランク検定によって、2つの群間の新たな増悪までの時間の比較を行った。
結果。図1~12は、試験の結果を示す。MABp1で治療した患者は、比較群よりも有意に高い割合の陽性HiSCRスコアを達成した。MABp1による治療は、有意に:24週目における陽性HiSCRスコア付けの増加;総ANカウントの減少(以前に抗TNFに曝露されていない患者においてより顕著);疾患についてのVASの減少;以前に抗TNFに曝露されていない患者における新たな増悪までの時間の長期化;及び全身病変のUS深さの有意な減少(以前に抗TNFに失敗したことがない患者においてより顕著)に関連していた。
実施例2
化膿性汗腺炎(HS)の治療としてMABp1を評価する医師主導無作為化第2相試験からのトップライン結果は、試験がその主要評価項目を満たしたことを示し、12週間の治療後のHS患者の対照と比較した有意な改善(それぞれ60%対10%の応答率(p=0.035))が実証された。
抗TNFα療法に適格ではないHS患者において、インターロイキン-1α(IL-1α)を標的とするTrue Human(商標)抗体であるMABp1の安全性及び有効性を評価するために、20名の患者の二重盲検プラセボ対照試験を計画した。患者を1:1に無作為化して、12週間にわたって2週間ごとにMABp1又はプラセボを投与した。試験中の患者は、12週目に化膿性汗腺炎臨床応答(HiSCR)スコアを使用した有効性の一次評価を受け、続いて、治療なしで更に12週間後に再発までの時間を評価するための追跡相に入った。有効性の尺度は、HiSCRスコアの評価、HS患者における有効性を評価するための検証された方法、並びに生活の質の評価及び超音波検査による評価を含む。
プラセボ群の10%と比較して、MABp1による治療に割り当てられた患者の60パーセントは、12週目に陽性HiSCRを達成した(図1)。MABp1下での陽性HiSCRのオッズ比(OR)は、13.50であった(95%信頼区間:1.19~152.51;p=0.035)。HiSCRスコアの基本要素である総ANカウントは、治療下の最初の12週間にわたって減少した(図3)。MABp1の臨床的有効性は、24週目まで、すなわち、治療中止の12週間後まで維持された。この時点では、図2に示す通り、MABp1で治療された10名の患者のうちの4名(40%)と比較して、陽性のHiSCRスコアを有するプラセボで治療された患者はいなかった(0%)。また、MABp1による治療は、より良好な患者報告の転帰を伴うものであった。プラセボ及びMABp1に割り当てられたそれぞれ30%(10名中3名)及び70%(10名中7名)で視覚的アナログスケール(VAS)の減少がみられた。サブ解析は、これが、抗TNF未治療患者のうちのそれぞれ40%(5名中2名)及び33.3%(3名中1名)、以前抗TNFによる治療に失敗した患者のうちの20%(5名中1名)及び85.7%(7名中6名)であることを示した。最初のHS増悪までのメジアン時間は、プラセボ群では7週間、MABp1群では11週間であった。この時間は、群間で有意には異なっていなかった(ログランク:1.98、p=0.159)。しかしながら、抗TNF未治療患者の中でサブ解析を行ったとき、新たなHS増悪までのメジアン時間は、プラセボ治療で4週間、MABp1治療で18.5週間であることが見出された(ログランク検定:4.46;p=0.035;図8を参照)。MABp1で治療され、12週目及び24週目に陽性HiSCRを達成した全ての患者において、疾患活動性の低下がみられた。プラセボに割り当てられた患者の40%及びMABp1に割り当てられた患者の80%(80%)で、評価したスコア、すなわち、12週目における医師の全般的評価(PGA)、疾患活動性、修正縫工筋スコア、疼痛についてのVAS、及び皮膚疾患の生活の質指数(DLQI)のうちの少なくとも2つの低下がみられた(OR=14.50;95%信頼区間:0.96~218.99;p=0.054)。サブ解析は、これが、抗TNF未治療患者のうちのそれぞれ60%(5名中3名)及び100%(3名中3名)、以前抗TNFによる治療に失敗した患者のうちの20%(5名中1名)及び71.4%(7名中5名)であることを示した。皮膚超音波検査についての変数の有意な変化には、それぞれ血管分布の等級の合計及び全ての関与する皮膚領域の最大深さの合計である、総病変血管分布及び総病変深さが含まれていた。MABp1で治療した後、両方の変数が減少した(図9~12)。総病変深さの20%を超える減少をカットオフ点として選択し、これは、MABp1で治療された患者の77.8%と比較してプラセボに割り当てられた患者の22.2%においてみられた(OR=12.25;95%信頼区間1.33~113.06;p=0.027)。この効果は、以前抗TNFに失敗したことがある患者で顕著であった(図10)。患部領域の弾性の有意な改善も認められた。
血清IL-1αは、盲検治療の前及び終了時の両方に全ての患者からサンプリングされた血清中において検出下限未満であった。プラセボに割り当てられた6名の患者及びMABp1に割り当てられた7名の患者から治療前に膿をサンプリングした。IL-1αの平均±SE濃度は、それぞれ697.2±440.4pg/mL及び772.0±221.7pg/mLであった(マン・ホイットニーU検定によりp=0.412)。MABp1による治療は、血清IL-8の減少を伴っていた。12週目におけるIL-8の30%を超える減少をカットオフ点として選択した。MABp1によるこのカットオフ点のORは、13.50であった(95%信頼区間:1.19~152.51;p=0.035)。これは、加熱殺菌した黄色ブドウ球菌で刺激した全血から産生されるIL-8のレベルの変化と一致しており、プラセボで治療した患者の中よりもMABp1で治療した患者の中で有意に低かった。IL-1α及びヒトβ-デフェンシン(hBD)-2の両方を産生する全血の能力は、プラセボ処理患者の中で正の関連を示した。同じ患者の中では、hBD-2産生の能力は、超音波検査における病変の皮膚深さの変化と負の相関を示した。これらの相関は、MABp1で治療した患者の中ではみられなくなり、このことから、IL-1αの阻害によって媒介される、HSにおけるMABp1のhBD-2に関連する作用機序が示唆された。
安全性-試験では試験薬に関連する有害事象も重篤な有害事象も生じなかった。
第2相二重盲検試験においてプラセボ又はMABp1療法のいずれかを受けるように無作為化された20名の患者全てについてのiHS4スコアを使用して、データの解析を行った。12週目におけるベースラインからのiHS4スコアの少なくとも30%の減少は、陽性HiSCRスコア(第2相試験で使用した有効性の尺度)についての100%感度に関連していた。この変化は、プラセボ及びMABp1に割り当てられたそれぞれ1名(10%)及び4名(40%)の患者においてみられた(p=0.046)。
元々第2相試験でプラセボに割り当てられていた患者に、いわゆる非盲検長期投与(OLE)試験においてMABp1抗体療法による治療を受けさせた。元々プラセボが投与されていた10名の患者のうちの7名を12週間にわたってMABp1で治療した。OLEで使用した主な評価項目は、12週間の治療の終了時における安全性及びHiSCRスコアを含んでいた。二重盲検試験の終了時には、プラセボが投与された患者は1名しか(10名中1名、すなわち10%)HiSCRを達成しなかった。OLEの間、5名の患者(7名中5名、すなわち71.4%)が、HiSCR応答を達成した(p=0.035)。OLE相の間のわずか1回の増悪と比較して、試験の盲検部分の間には合計24回HSが増悪した。
Giamarellos-Bourboulis博士は、「このデータでみられた全奏効率は、私の意見では、HSの治療において画期的なものです」とコメントし、「これらの結果に大変勇気づけられ、この悲惨な病態の治療法として将来的にMABp1を使用することを非常に楽しみにしています」と述べた。
実施例2-中等度~重度の化膿性汗腺炎患者における皮下投与されたベルメキマブ(MABp1)の第II相非盲検試験。図15に示すように、12週間にわたって1週間当たり400mgを皮下投与するために、ベルメキマブを製剤化した。試験被験体のベースラインの特徴(抗TNF失敗対抗TNF未治療)を図16に示す。結果のまとめを図17に提示しており、図中、群Aは以前に抗TNF治療に失敗した被験体であり、群Bは、抗TNF治療を受けたことのない被験体である。試験カレンダーを図18に示す。試験の詳細な結果を図19~36に示す。
実施例3
この試験の目的は、化膿性汗腺炎(HS)の治療におけるIL-1α阻害剤であるベルメキマブの安全性及び有効性を評価することであった。この試験は、抗TNF療法を受けたことがないか又は以前失敗したことがある中等度~重度のHSを有する患者における、ベルメキマブの2回投与コホートの第II相多施設非盲検試験であった。HSを有する患者(n=42)を、以前抗TNF療法に失敗したことがあるかどうかに基づいて群A及びBに分割した。群A(n=24)では、以前抗TNF療法に失敗したことがある患者において、毎週400mgの用量でベルメキマブを皮下投与し(13回投与);群B(n=18)では、抗TNF未治療の患者において、毎週400mgの用量でベルメキマブを皮下投与した(13回投与)。HSの治療に有効であることが以前に判明しているベルメキマブを、抗TNF療法を受けたことがないか又は失敗したことがある患者において皮下製剤を用いて評価した。注射部位反応を除いて、ベルメキマブに関連する有害事象は存在しなかった。治療歴にもかかわらずベルメキマブは有効であり、抗TNF療法を受けたことがないか又は失敗したことがある患者のそれぞれ61%及び63%が、12週間の治療後にHS臨床応答を達成した。抗TNF未治療及び抗TNF失敗群において、それぞれ60%(P<0.004)及び46%(P<0.001)の膿瘍及び炎症性結節の有意な減少がみられた。疼痛を経験している患者では臨床的及び統計的に有意な減少がみられ、抗TNF未治療及び抗TNF失敗群において視覚的アナログスケール疼痛スコアがそれぞれ64%(P<0.001)及び54%(P<0.001)低下した。IL-1αは、皮膚疾患の重要な臨床標的として頭角を現しつつあり、ベルメキマブは、中等度~重度のHSを治療するための新たな治療選択肢を示し得る。
略語:AE、有害事象;HiSCR、化膿性汗腺炎の臨床応答;HS、化膿性汗腺炎;PGA、医師の全般的評価;SAE、重篤な有害事象;VAS、視覚的アナログスケール
この臨床試験の目的は、抗TNF剤による初期治療に失敗したことがあるか又は抗TNF治療を受けたことがない中等度~重度のHSを有する患者における、ベルメキマブの安全性、忍容性、及び有効性を評価することであった。
結果
参加者の流れ
この試験は、2018年7月~2019年1月に行われた。最後の患者に対する追跡の終了時に治験を終了した。合計で、42名の被験体が試験に登録され、そのうち24名は抗TNF療法を受け応答できなかったことがあり(群A)、18名はそれ以前にいかなる抗TNF療法も受けたこともなかった(群B)。両群は、元々、12週間にわたって200mgのベルメキマブの皮下注射を受けるように計画されていたが、XBiotechのPT044アトピー性皮膚炎試験からの予備安全性データによって、400mgの皮下注射について良好なレベルの安全性及び忍容性が実証された。したがって、12週間にわたって400mgのベルメキマブを皮下注射する、改正された試験計画を実行した。両群における登録患者のベースラインの特徴を図37に提供する。
試験の主要評価項目:安全性及び忍容性
この試験の主要評価項目は、安全性及び忍容性であった。ベルメキマブは、試験全体を通して全ての被験体において忍容性良好であった。13週間の連続週にわたる毎週400mgのベルメキマブの皮下製剤(0週目~12週目;13回投与)を、中等度~重度のHSを有する患者の2つのコホート、抗TNF療法を受けたことがない患者及び以前抗TNF療法に失敗したことがある患者において試験した。
有害事象(AE)、バイタルサイン、理学的検査、及び臨床検査室測定値を監視することによって、安全性を評価した。重篤な有害事象(SAE)による中止は存在しなかった。全体として、58個の非SAEが報告され、そのほとんどはグレードI(59%)及びグレードII(36%)であった。最も一般的なAEは、注射部位反応(2名の被験体における5つのグレードII反応)及び吐気(1名の被験体における6つのグレードII反応)であった。試験では2つのSAEが存在していた、(i)転倒(グレードIIIの重症度;治験薬には関連しない;SAE基準、入院)及び(ii)HS疼痛(グレードIIIの重症度;治験薬には関連しない;SAE基準、入院)。残りのAEは全て、重症度が軽度~中等度であった。
全ての臨床検査室異常は、スクリーニング時に存在しており、研究の過程にわたって進行しなかったか、既知の基礎併存疾患を反映していたか、又は検査過誤の結果であった。同様に、バイタルサイン評価中に同定された異常は全て、既知の併存病理(最も一般的には原発性本態性高血圧)と一致しており、臨床的に有意なものはなかった。心電図所見は臨床的に有意ではなく、ベルメキマブに関連して出現した異常の一貫したパターンはなかった。
試験の副次的評価項目:臨床的有効性
両治療群におけるほぼ全ての疾患重症度の尺度に関して、ベースラインからの統計的に有意な改善がみられた。13週目(又は中止した場合若しくは追跡不能になった場合は被験体の最後の来院)までベルメキマブの臨床的有効性を評価した。
その時点では、群Aの被験体(以前抗TNF剤による治療に失敗したもの)は、ベースラインと比較して、炎症性結節及び膿瘍カウントが平均46%減少し(P<0.0001)、群Bの被験体(抗TNF未治療であったもの)は、ベースラインと比較して、炎症性結節及び膿瘍カウントが平均60%減少した(P=0.004)(図38)。HiSCRを使用して、HS患者における疾患活動性を評価する。HiSCRは、それが満たされているか否かという二者択一である。HiSCRを満たすためには、患者は、ベースラインと比較して、膿瘍カウントが増加せずかつ排液性瘻孔カウントが増加せずに、総膿瘍及び炎症性結節カウントが少なくとも50%減少している必要がある。この試験では、1週目のベースラインに対して12週目にHiSCRを満たしていたかどうかについて患者を評価した。群A及びBにおいて、ベースライン来院時と比較したときにそれぞれ患者の63%及び61%がHiSCRを達成した(図39)。
疾患活動性スコア(Giamarellos-Bourboulis et al.,2008)及び医師の全般的評価(PGA)(Kimball et al.,2012)の両方を使用した被験体の疾患活動性の評価は、ベースライン来院時に対して12週目で有意な改善を示した。群Aの被験体は、12週目に疾患活動性スコアの平均33%の減少を示し(P=0.02)、一方で群Bの被験体は、12週目に平均66%の減少を示した(P=0.001)。群Aにおける12週目の被験体のPGAスコアは、平均23%の減少を示し(P=0.0018)、一方で群Bの被験体は、PGAスコアの平均53%の減少を示した(P<0.0001)。
また、ベルメキマブによる治療は、より良好な患者報告の転帰を伴うものであった。両群において、ベースラインに対して12週目に疼痛及び疾患についての視覚的アナログスケール(VAS)の改善が報告された。群Aは、疼痛及び疾患についてそれぞれ平均41%(P<0.0001)及び54%(P<0.0001)の改善を示し、群Bの被験体は、疼痛及び疾患についてそれぞれ平均50%(P<0.0001)及び64%(P<0.0001)の改善を示した。
両群の被験体は、ベースラインに対して12週目に皮膚疾患の生活の質指数の改善も報告された。群Aの被験体は平均41%の改善(P<0.0001)を達成し、一方で群Bの被験体は平均67%の改善(P<0.0001)を達成した。
群Aの被験体は、病院不安抑うつ尺度(Zigmond and Snaith,1983)に関して12週目にベースラインからの改善も報告された。群Aの被験体は、不安スコアにおける平均41%の改善(P=0.001)、抑うつスコアにおける平均25%の改善(P=0.02)、及びスコア全体における平均34%の改善(P=0.002)を達成した。群Bの被験体は、平均して、病院不安抑うつ尺度の全ての尺度において改善を達成したが、これらの改善はいずれも、統計的に有意であることは見出されなかった。患者評価項目転帰をまとめた記述統計は図40にみられる。
考察
HSは、顕著な疾患負荷を有する衰弱性炎症性皮膚病態である。既存の治療選択肢は、全ての患者にとって有効であるわけではないか、又は一部の患者に対して禁忌である場合がある。したがって、HSを有する患者に対する重大なアンメットニーズが存在する。ベルメキマブは、IL-1αを中和するその機序を通じて、中等度~重度のHSでみられる表現型を引き起こす炎症カスケードに対抗する機能を有する。これは、HSに対して非常に有望であることを示す新規治療薬である。この試験において、本発明者らにより、中等度~重度のHSの治療におけるベルメキマブの安全性、忍容性、及び臨床的有効性を実証する。この試験で評価した両治療群における患者は、ベースラインと比較して12週目にほぼ全ての試験評価項目において統計的に有意な改善を示した。
この試験は、重要なことに、アドリムマブに対して不応性である中等度~重度のHSを有する患者を治療するベルメキマブの潜在能力を実証する。この試験の前に、2つの第III相PIONEER試験により、中等度~重度のHSに対する指定の治療としてアドリムマブを登録することが可能になった。治験担当医師は、主要有効性転帰として12週間後のHiSCRスコアを使用した(Kimball et al.,2016)。アダリムマブによるHiSCRの達成は、PIONEER I試験における患者の41.8%、PIONEER II試験における患者の58.9%で報告され(Kimball et al.,2016)、これによって抗生物質の使用が可能になった。アダリムマブは、HSの治療についての重要な進歩である。しかしながら、12週間のアダリムマブ治療後に一次応答しなかった患者の41~58%、及びアダリムマブによる治療に対して陽性の初期応答を有していたが、12週間の療法後に再発した患者の30~50%を含む、アダリムマブで失敗又は再発した患者のサブセットに対する重要なアンメットニーズが依然として存在する。以前アダリムマブによる治療に失敗した又はアダリムマブによる治療後に再発した患者におけるベルメキマブによる治療は、61%のHiSCR達成につながった。この患者のコホートがこのような有意な疾患の改善を達成するのを可能にするベルメキマブの能力は胸躍るものであり、この衰弱性疾患に絶望を感じている可能性のある多くのHS患者に大きな希望を与える。ベルメキマブはまた、抗TNF療法を受けたことがない患者のコホートによって達成される試験評価項目の有意な改善によって明らかであるように、アダリムマブに対する禁忌を有している可能性のある患者にも希望を与える。
材料及び方法
試験計画
この試験は、抗TNF療法を受けたことがないか又は以前失敗したことがある中等度~重度のHSを有する患者における、ベルメキマブの2回投与コホートの第II相多施設非盲検試験であった。この治験を、clinicaltrials.gov(NCT03512275)に登録した。被験体の参加期間は、3週間のスクリーニング期間及び13週間の治療期間を含む、約16週間であった。この試験は、2つの群:(i)群A(n=24)、以前抗TNF療法に失敗したことのある患者において週1回の皮下注射を介してベルメキマブを投与(13回の投与)、及び(ii)群B(n=18)抗TNFを受けたことがなかった患者において週1回の皮下注射を介してベルメキマブを投与(13回の投与)からなっていた。毎週400mg投与についての先行する臨床データは存在しなかったため、群間の検出力計算は不可能であり、したがって、サンプルサイズは探索的であった。最初に、両群に200mgの用量のベルメキマブを投与したが、XBiotechのPT044アトピー性皮膚炎試験からの予備安全性データによって、400mgのベルメキマブの注射について良好なレベルの安全性及び忍容性が実証された。その後、両群A及びBにおいて用量を400mgまで増加させた。被験体の割り当ての概要は図41にみられる。安全性及び予備的有効性の評価を可能にするために、13週間にわたって患者を追跡した。
試験計画の制約は、サンプルサイズが小さいこと、及び2つの試験群間で被験体の脱退が不均一であることを含む。毎週400mg投与についての先行する臨床データは存在しなかったため、群間の検出力計算は不可能であり、したがって、サンプルサイズは探索的であった。これにより、2つの試験群間でほぼ全ての試験評価項目について統計的に有意な差が観察されたが、これらの結果は、サンプルサイズが限定された状況におけるものであり、集団におけるベルメキマブの有効性を確認するために、将来的により大きなサンプルサイズで追加の試験を行うことを必要とする場合がある。更に、群A(2)よりも群B(7)からより多くの脱退があったことにも言及すべきである。脱退のうち薬物に関連していたのは1例のみであった(注射部位の発赤)が、統計的有意性がみられたにもかかわらず、開始時と比較して試験終了時までに群間の数の差が大きくなったことが、試験評価項目でみられた所見に対して影響を及ぼした場合がある。
試験倫理、組み入れ基準、及び除外基準
書面によるインフォームドコンセント後に患者を登録した。参加している試験施設の施設内治験審査委員会又は倫理委員会によって、プロトコルは承認された。更に、治験は、プロトコル、優良臨床試験基準、及び全ての適用可能な規制要件に従って実施した。
少なくとも2つの別個の解剖学的領域が罹患しており(そのうちの1つはハーリーステージII又はIIIのHSである必要がある)、炎症結節及び膿瘍の全身カウントが3つ以上である、スクリーニングの少なくとも1年前にHSと診断された18歳以上の患者を、この試験に含めた。群Aについては、患者は、以前に少なくとも1回の抗TNF療法を受け、失敗したことがない必要がある。群Bの被験体は、何らかの抗TNF剤によるいかなる先行する治療も受けたことがない必要がある。この試験で200mgの用量のベルメキマブが投与された患者は、患者の治療計画の残りのために、患者の次の予定来院で開始する400mgの用量の投与を開始するのに適格であった。全試験中で有効性の高い避妊の1つの方法を使用する意思がある、妊娠可能な女性患者は含めた。妊娠の可能性がない女性患者は、妊娠が妥当なリスクではなかったことを示す病歴があれば考慮した。
主な除外基準は、肝機能不全、B型及びC型肝炎ウイルス並びにHIVによる慢性感染症、好中球減少症、妊娠又は授乳、スクリーニング前4週間の間での直近のワクチン接種、並びにこの試験の前のバージョンにおいて以前に200mgで治療された患者を除き何らかの理由によるベルメキマブによる治療歴を含んでいた。更に、ヒト、ヒト化、キメラ、又はマウスモノクローナル抗体に対する重度のアレルギー又はアナフィラキシー反応の履歴;スクリーニング前14日間以内のオピオイド鎮痛剤の服用;治験薬開始の0日目の前28日間以内の大手術(全身麻酔又は呼吸補助を必要とする);免疫抑制の既知の又は疑い歴;及びステージCのチャイルド・ピュー肝硬変も除外基準として含まれた。スクリーニング前28日間以内にHSに対する経口抗生物質治療又は全身療法を受けた患者並びにスクリーニングの14日前に局所療法を受けた患者は、試験から除外した。
患者が試験を中止した場合、中止の理由は、原資料及び電子データキャプチャにおいて明確に文書化された。以下の理由のいずれによっても試験療法を直ちに中止した:(i)インフォームドコンセントの撤回;(ii)任意の臨床AE、検査所見の異常、併発疾患、又は参加を継続することが被験体の最善の利益にならないことを示す疾患の臨床的進行;(iii)妊娠;(iv)治験依頼者による試験の終了;及び(v)医学的治療のための拘束又は義務的収容。
スクリーニング及び治療
患者が試験に適格であるとみなされたら、スクリーニング時に以下を検査又は実施した:(i)病歴及び理学的検査;(ii)身長、体重、及びボディマス指数;(iii)バイタルサイン;(iv)血清クレアチニン;並びに肝臓生化学的検査;(v)鑑別を伴う全血球カウント及び血小板;
(vi)血清妊娠検査(vii)インターフェロンγ放出アッセイ、HIV、B型肝炎ウイルス、及びC型肝炎ウイルスの血清学的検査;並びに(viii)炎症マーカーC反応性タンパク質及び赤血球沈降速度。後日来院時に治療を提供した。治験薬は、無作為化シーケンスを構築したXBiotech(Austin,TX)によって提供された。これは、非盲検試験であった。
追跡
薬物投与前0(ベースライン)、2、4、6、8、10、及び12週目に、患者は、皮膚疾患の生活の質指数、病院不安抑うつ尺度、及び理学的検査を完了し、0(重篤な疾患が全くなく、疼痛もない)~10(極めて重度の疾患又は想像し得る最悪の疼痛)の範囲のVASを用いたHS及び疼痛の重症度の所見について自己評価し;個々の病変をカウントし、HiSCR、PGA、及び疾患活動性をスコア付けし、患者のバイタルサインを評価した。次いで、皮下注射を介して適切な量のベルメキマブを患者に注射した。患者を1時間監視した後、注射の1時間後にバイタルサインを再評価した。最後に、任意のAE及びSAEについて患者に尋ねた。0、6、及び12週目に、記載した手順に加えて、検尿及び心電図を実施して、ベルメキマブの安全性を更に評価した。
1、3、5、7、9、及び11週目に、患者のバイタルサインを評価した。次いで、皮下注射を介して適切な量のベルメキマブを患者に注射した。患者を1時間監視した後、注射の1時間後にバイタルサインを再評価した。次いで、任意のAE及びSAEについて患者に尋ねた。
追跡13週目を除いて毎週、尿妊娠試験を女性被験体から回収した。
13週目には以下が含まれていた:(i)患者が、皮膚疾患の生活の質指数、病院不安抑うつ尺度、及び理学的検査を完了し;(ii)患者が、VASを0(存在しない)~10(それまで感じた中で最悪)のVASを用いてHS及び疼痛の重症度について自己評価し;(iii)個々の病変をカウントし、HiSCR、PGA、及び疾患活動性をスコア付けし、(iv)患者のバイタルサインを評価した。次いで、任意のAE及びSAEについて患者に尋ねた。
血清クレアチニン及び肝臓生化学的検査、鑑別を伴う全血球カウント及び血小板、並びに薬物動態/バイオマーカー分析のために、スクリーニング時並びに2、4、8、及び12週目に採血を実施した。ヒト血漿中のベルメキマブレベルを特異的に測定するためのELISAを開発した。各薬物動態回収時点で1本の6mL回収チューブに血液を採取した(試験検査室マニュアルに従って研究施設で投与前にサンプルを回収し、薬物動態分析のために治験依頼者に直ちに輸送した)。
グレードII以上の任意のAEは、事象について知った24時間以内に、電子症例報告フォームに入力する必要があった。任意のグレードIII以上の注射部位反応は、事象について知った24時間以内に治験依頼者に報告する必要があった。全てのSAEを、事象を認めた24時間以内に治験依頼者に報告することとした。これらの即時報告に続いて、詳細な書面による報告が迅速に行われた。完全な満足のいく回復若しくは後遺症を伴う回復のいずれかで、報告されたSAEが安定化するまで、又は被験体が死亡するまで、被験体を追跡した。3回接触を試み失敗し、SAEフォームに記録した後、被験体が追跡不能になったと宣言した。即時報告及び追跡報告では、被験体の氏名、個人識別番号、及び/又は住所ではなく、治験被験体に割り振られた固有のコード番号によって被験体を識別した。治験担当医師は、施設内治験審査委員会又は倫理委員会の指針(ICH-GCP E6)に従って、SAEを施設内治験審査委員会又は倫理委員会に提出する義務があった。薬物関連のSAEは、21 CFR 312.32に従ってXBiotechのMedical Safety OfficerによりFood and Drug Administrationに報告されている。
試験評価項目
試験の主要評価項目は、中等度~重度のHSにおけるベルメキマブの臨床的安全性及び忍容性であった。副次的評価項目は、ベースラインから12週目までの病院不安抑うつ尺度及びHiSCRの変化、薬物動態の評価、患者報告の転帰の変化(疾患についてのVAS、疼痛についてのVAS、及び皮膚疾患の生活の質指数)、PGA及び疾患活動性スコアの評価、並びに炎症性病変(膿瘍及び炎症性モジュール)の変化であった。
統計分析
全ての分析について記述統計を使用してまとめ、治療群ごとに表形式でデータを提示した。両治療群について、ベースラインから12週目までの全ての評価項目についての転帰の変化を、ベースラインからの平均変化の得られる所見(n)、平均、SD、メジアン値、範囲、及び95%信頼区間を使用してまとめた。カウント及び百分率を使用して、各治療群について分類データをまとめた。任意の欠測患者データは、直前値で補完する方法(Last Observation Carried Forward)を使用して補完した。
他の実施形態
本発明はその詳細な説明と関連して記載されてきたが、前述の説明は本発明の範囲を例示したものであって、発明の範囲を限定することを意図したものではなく、発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定義されると理解される。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。
〔実施の態様〕
(1) 化膿性汗腺炎に関連する病変を有するヒト被験体における化膿性汗腺炎を治療する方法であって、医薬的に許容される担体と、前記被験体における化膿性汗腺炎の症状を治療するのに有効な量の抗IL-1α抗体と、を含む医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(2) 前記抗IL-1α抗体が、モノクローナル抗体である、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記モノクローナル抗体が、IgG1である、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記モノクローナル抗体が、MABp1である、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記被験体のHiSCRスコアが、前記医薬組成物の投与後に改善する、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記被験体の化膿性汗腺炎病変のメジアン径が、前記医薬組成物の投与後に減少する、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記被験体の化膿性汗腺炎病変に関連する前記被験体の疼痛が、前記医薬組成物の投与後に減少する、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記被験体の新たな化膿性汗腺炎病変までの時間が、前記医薬組成物の投与後に延長される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記ヒト被験体における前記化膿性汗腺炎が、腫瘍壊死因子α阻害剤による治療後に回復に失敗したことがある、実施態様1に記載の方法。
(10) 医薬的に許容される担体と抗黄色ブドウ球菌抗体とを含む医薬組成物を前記被験体に投与するステップを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(11) 前記抗黄色ブドウ球菌抗体が、黄色ブドウ球菌タンパク質A(SpA)に特異的に結合するFab領域パラトープ及びSpAに特異的に結合しないFc領域を含む、実施態様10に記載の方法。

Claims (11)

  1. 化膿性汗腺炎に関連する病変を有するヒト被験体における化膿性汗腺炎を治療する方法であって、医薬的に許容される担体と、前記被験体における化膿性汗腺炎の症状を治療するのに有効な量の抗IL-1α抗体と、を含む医薬組成物を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
  2. 前記抗IL-1α抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記モノクローナル抗体が、IgG1である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記モノクローナル抗体が、MABp1である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記被験体のHiSCRスコアが、前記医薬組成物の投与後に改善する、請求項1に記載の方法。
  6. 前記被験体の化膿性汗腺炎病変のメジアン径が、前記医薬組成物の投与後に減少する、請求項1に記載の方法。
  7. 前記被験体の化膿性汗腺炎病変に関連する前記被験体の疼痛が、前記医薬組成物の投与後に減少する、請求項1に記載の方法。
  8. 前記被験体の新たな化膿性汗腺炎病変までの時間が、前記医薬組成物の投与後に延長される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記ヒト被験体における前記化膿性汗腺炎が、腫瘍壊死因子α阻害剤による治療後に回復に失敗したことがある、請求項1に記載の方法。
  10. 医薬的に許容される担体と抗黄色ブドウ球菌抗体とを含む医薬組成物を前記被験体に投与するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記抗黄色ブドウ球菌抗体が、黄色ブドウ球菌タンパク質A(SpA)に特異的に結合するFab領域パラトープ及びSpAに特異的に結合しないFc領域を含む、請求項10に記載の方法。
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