JP2022516053A - 哺乳動物細胞培養物によって生産されるニューブラスチン抗体 - Google Patents

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Abstract

本開示は、培養においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変された、それを発現する哺乳動物細胞培養、およびニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変された、それを発現する哺乳動物細胞培養によって作製されるニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片に関する。

Description

本出願は、2013年1月10日に出願された米国仮出願第61/751,067号の利益を主張する2014年1月10日に出願されたPCT/US14/11130号の米国特許法第371条に基づく国内段階出願である2015年7月9日に出願された米国出願第14/760,182号の継続である2016年10月12日に出願された米国出願第15/291,257号の一部継続である2018年12月21日に出願された米国出願第16/230,216号の優先権を主張し、これらの開示は全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は、硫酸デキストランまたは硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む細胞培養培地、および使用の方法に関する。本発明はさらに、大規模細胞培養において目的のタンパク質を生産する方法、すなわち哺乳動物細胞においてニューブラスチン(neublastin)抗体を生産する方法、および哺乳動物細胞培養において生産されるニューブラスチン抗体に関する。
過去数十年にわたって、多くの研究が組換えタンパク質、例えばモノクローナル抗体の生産に焦点を当てており、その取組みは多様な視点を採用している。文献における多くの取組みは血清または加水分解物を含有する培地を利用しているが、合成培地もまた、問題となる複合構成成分のロット間のばらつきを排除するために開発された[Luo and Chen, Biotechnol. Bioeng. 97(6):1654-165.9 (2007)]。細胞培養に対する理解の向上は、増殖、生存率、力価等を損なうことのない合成培地への転換を可能にした。今日までに、7.5~10g/Lと高い力価を有する最適化された化学的に定義された方法が報告されている[Huang et al., Biotechnology Progress 26(5):1400-1410 (2010)、Ma et al., Biotechnol. Prog. 25(5):1353-1363 (2009)、Yu et al.; Biotechnol. Bioeng. 108(5):1078-1088 (2011)]。全般に、高力価の化学的に定義された方法は11~18日の培養時間を伴う流加法である。方法の強化は、比較的高い生存率を維持すると同時に産物品質を損なうことなく達成されている。
堅牢かつ大規模に実現可能な生産方法の達成には、高い産物品質を維持すると同時に産物力価を高めること以上のことが含まれる。この方法は、予測されるように、供給戦略が複数の規模にわたって変化する必要がないような主要炭水化物源も必要とする。多くの方法がグルコースを主要炭水化物として使用し、乳酸およびアンモニウムを主要副産物として有する場合、これらの3種の決定的な化学物質の時間経過もまた一定の比率で変化すべきである。
Maおよび共同研究者らによって実施された近年のメタボローム研究[Ma et al., Biotechnol. Prog. 25(5):1353-1363 (2009)]は、クエン酸の早期分泌とその後のクエン酸消費とをもたらすTCA回路における遮断を示唆した。Maによって使用された方法はまた、生存率が方法のさらなる延長を可能にした場合は、その後、高LPRをもたらした可能性がある。ピルビン酸(0.02M)の供給は、ハイブリドーマ細胞の連続培養において抗体生産を43%増加させることを示した[Omasa et al., Bioproc. Biosys. Engin. 33(1):117-125 (2010)]。同じ培養系におけるクエン酸(0.05Mおよび0.01M)の供給は、抗体生産のわずか約5~10%の増加をもたらした。Baiは近年、高濃度の化学的に定義された鉄と高濃度のクエン酸との組合せを補充した化学的に定義されたCHO細胞培養において増加した抗体生産を報告した[Bai et al., Biotechnol. Prog. 27(1):209-219 (2011)]。しかしながら、クエン酸補充のみでは安定な細胞増殖を全く支持することができなかった。
ロット間の代謝変動性を排除する組換えタンパク質生産方法をさらに改善する必要性が当技術分野に存在する。組換えタンパク質生産細胞培養において偶然生じる代謝変動性を防止または抑制する組成物および方法が本明細書において提供される。
本発明は、培地に十分な量の硫酸デキストランを含む供給材料を補充することを含む、培地において細胞を培養する方法に関する。本発明はまた、硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む供給材料を含む培地を含むか、または培地に硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む供給材料を補充する、培地において細胞を培養する方法に関する。
一実施形態では、培地および/または供給材料は、培地における硫酸デキストラン濃度を約0.1g/L~約5g/Lの間増加させるのに十分な量の硫酸デキストランを含む。別の実施形態では、培地および/または供給材料は、培地におけるクエン酸鉄濃度を約lmMおよび約50mM上昇させるのに十分な量のクエン酸鉄を含む。
本発明はまた、硫酸デキストランまたは硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む細胞培養培地に関する。
本発明はさらに、目的のポリペプチドを発現することができる細胞および硫酸デキストランまたは硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む培地を含む細胞培養組成物を提供する。
本発明はさらに、本明細書に開示される方法によって生産される馴化細胞培養培地に関する。一実施形態では、馴化培地は、本明細書に開示される方法によって生産される目的のポリペプチドを含む。具体的な実施形態では、本発明の馴化培地は抗体を含む。別の具体的な実施形態では、本発明の馴化培地は、形質転換増殖因子(TGF)ベータスーパーファミリーシグナル伝達分子を含む。さらに別の具体的な実施形態では、本発明の馴化培地は血液凝固因子を含む。
さらに別の態様では、本開示は、細胞培養培地においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変されている哺乳動物細胞株を含む細胞培養を提供する。ある特定の実施形態では、哺乳動物細胞株はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。一部の実施形態では、ニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片は、配列番号2もしくはその一部分、および/または配列番号4もしくはその一部分を含む。特定の実施形態では、細胞は、無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地において増殖するように適合されている。
一部の実施形態では、哺乳動物細胞培養は灌流培養であるかまたは流加培養である。ある特定の実施形態では、細胞培養培地は無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地である。
さらに別の態様では、本開示は、哺乳動物細胞培養において生産されるニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片であって、培養が、哺乳動物細胞培養においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変された、それを発現する哺乳動物細胞を含む、ニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を提供する。一部の実施形態では、哺乳動物細胞株はCHO細胞株である。一部の実施形態では、ニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片は、配列番号2もしくはその一部分、および/または配列番号4もしくはその一部分を含む。特定の実施形態では、細胞は、無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地において増殖するように適合されている。一部の実施形態では、ニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片は、哺乳動物細胞培養から単離されている。
別の態様では、本開示は、哺乳動物細胞培養においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変されている哺乳動物細胞を含む哺乳動物細胞培養から単離されているニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を含む医薬製剤を提供する。一部の実施形態では、哺乳動物細胞培養はCHO細胞培養である。特定の実施形態では、ニューブラスチン抗体ポリペプチドは、配列番号2もしくはその一部分、および/または配列番号4もしくはその一部分を含む。
本開示の前述のおよび他の目的、その様々な特色、ならびに本開示自体は、添付の図面と併せて解釈される場合、以下の説明からより完全に理解されるだろう。
図1A~1Bは、クエン酸鉄および硫酸デキストランの添加が乳酸レベルを維持し、アンモニウム産生を減少させた後のクエン酸(A)およびアンモニウム産生(B)のグラフ図である。
図2A~2Bは、硫酸デキストランのシェーカーフラスコへの添加後のVC/ML(A)および生存率(B)のグラフ図である。
図3A~3Bは、硫酸デキストランのバイオリアクター接種材料系列培養への添加後の培養のVCD(A)および生存率のグラフ図である。
図4A~4Bは、硫酸デキストランを使用した、接種された生産バイオリアクターにおける細胞培養の生存細胞密度(A)および生存率(B)のグラフ図である。
図5Aは、シグナルペプチドを含むニューブラスチン抗体の重鎖のアミノ酸配列の概略図である。
図5Bは、ニューブラスチン抗体の重鎖のアミノ酸配列の概略図である。
図5Cは、シグナルペプチドを含むニューブラスチン抗体の軽鎖のアミノ酸配列の概略図である。
図5Dは、ニューブラスチン抗体の軽鎖のアミノ酸配列の概略図である。
図6は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラムにおけるニューブラスチン抗体の代表溶出プロファイルの図である。
図7は、図6に示されたSECカラムからのピーク物質のポリアクリルアミドゲルの図である。
図8Aは、「MDSRLNLVFL」(配列番号1の残基1~10)から始まる、シグナルペプチドを含むニューブラスチン重鎖の概略図(配列番号5)である。
図8Bは、ニューブラスチン重鎖の縮重逆翻訳の概略図(配列番号6)である。
図8Cは、最も可能性の高いコドンを示す、「EVKVVESGGG」(配列番号2の残基1~10)から始まる、シグナルペプチドを含まないニューブラスチン重鎖の逆翻訳の概略図(配列番号7)である。
図8Dは、ニューブラスチン重鎖の縮重逆翻訳の概略図(配列番号8)である。
図8Eは、「MKSQTQVFVF」(配列番号3の残基1~10)から始まる、シグナルペプチドを含むニューブラスチン軽鎖の逆翻訳の概略図(配列番号9)である。
図8Fは、ニューブラスチン軽鎖の縮重逆翻訳の概略図(配列番号10)である。
図8Gは、最も可能性の高いコドンを示す、「SIVMTQTPKF」(配列番号4の残基1~10)から始まるニューブラスチン軽鎖の逆翻訳の概略図(配列番号11)である。
図8Hは、ニューブラスチン軽鎖の縮重逆翻訳の概略図(配列番号12)である。
本明細書において言及される全ての文書、論文、刊行物、特許、および特許出願は、個々の各刊行物または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別的に指示される場合と同じ程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において群または用語に関して与えられる最初の定義は、別段の指示がない限り、本明細書全体にわたってその群もしくは用語に個別的に適用されるか、または別の群の一部として適用される。
I.定義
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子であって、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介して標的または抗原、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または前述のものの組合せ等を認識し、それに特異的に結合する、免疫グロブリン分子を意味する。本明細書において使用する場合、この用語は、所望の生物活性を呈する限り、完全ポリクローナル抗体、完全モノクローナル抗体、抗体断片[例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片]、一本鎖Fv(scFv)突然変異体、多重特異性抗体、例えば少なくとも2つの完全抗体から生成される二重特異性抗体、一価または単一特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、ならびに抗原認識部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、5つの主要なクラスの免疫グロブリン、すなわち、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューとそれぞれ称される重鎖定常ドメインの同一性に基づくIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のいずれであってもよい。
本明細書において使用する場合、「抗体断片」という用語は、完全抗体の一部分を指し、完全抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、直鎖状抗体、一本鎖抗体、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
「基礎培地製剤」または「基礎培地」という用語は、本明細書において使用する場合、補充によっても、またはある特定の構成成分の選択的除去によっても改変されていない、細胞を培養するために使用される任意の細胞培養培地を指す。
「回分培養」という用語は、本明細書において使用する場合、培地(以下の「培地」の定義を参照のこと)ならびに細胞それ自体を含む、細胞を培養することにおいて最終的に使用されることになる全ての構成成分が培養するプロセスの開始時に提供されている、細胞を培養する方法を指す。回分培養は典型的にはある時点において停止され、培地における細胞および/または構成成分は採取され、適宜精製される。
「バイオリアクター」という用語は、本明細書において使用する場合、哺乳動物細胞培養の増殖のために使用される任意の容器を指す。バイオリアクターは、哺乳動物細胞の培養に有用である限り、いかなるサイズであってもよい。典型的には、バイオリアクターは少なくとも1リットル(titer)であり得、10、50、100、250、500、1000、2000、2,500、3000、5000、8000、10,000、12,000、15,000、20,000、もしくは30,000リットル以上、またはそれらの間の任意の容量であってもよい。例えば、バイオリアクターは、10~5,000リットル、10~10,000リットル、10~15,000リットル、10~20,000リットル、10~30,000リットル、50~5,000リットル、50~10,000リットル、50~15,000リットル、50~20,000リットル、50~30,000リットル、1,000~5,000リットル、または1,000~3,000リットルであり得る。pHおよび温度を含むがこれらに限定されないバイオリアクターの内部状態は典型的には、培養期間の間、制御されている。バイオリアクターは、ガラス、プラスチック、または金属を含む、本発明の培養条件下で培地に懸濁されている哺乳動物細胞培養を保持するのに好適ないかなる材料から構成されていてもよい。「生産バイオリアクター」という用語は、本明細書において使用する場合、目的のポリペプチドまたはタンパク質の生産において使用される最終のバイオリアクターを指す。大規模細胞培養生産バイオリアクターの容量は典型的には、少なくとも500リットルであり、1000、2000、2500、5000、8000、10,000、12,0000、もしくは15,000リットル以上、またはそれらの間の任意の容量であってもよい。例えば、大規模細胞培養リアクターは、約500リットル~約20,000リットル、約500リットル~約10,000リットル、約500リットル~約5,000リットル、約1,000リットル~約30,000リットル、約2,000リットル~約30,000リットル、約3,000リットル~約30,000リットル、約5,000リットル~約30,000リットル、もしくは約10,000リットル~約30,000リットルの間であり得るか、または大規模細胞培養リアクターは、少なくとも約500リットル、少なくとも約1,000リットル、少なくとも約2,000リットル、少なくとも約3,000リットル、少なくとも約5,000リットル、少なくとも約10,000リットル、少なくとも約15,000リットル、もしくは少なくとも約20,000リットルであり得る。当業者であれば、本発明を認識しており、本発明を実施することにおける使用に好適なバイオリアクターを選択することができるだろう。
「細胞密度」という用語は、本明細書において使用する場合、所与の容量の培地に存在する細胞の数を指す。
「培養」、「細胞培養」、および「真核細胞培養」という用語は、本明細書において使用する場合、真核細胞集団の生存および/または増殖に好適な条件下で培地(以下の「培地」の定義を参照のこと)に懸濁されている真核細胞集団を指す。当業者には明確であるように、これらの用語は、本明細書において使用する場合、哺乳動物細胞集団と集団が懸濁されている培地とを含む組合せを指すことができる。
「流加培養」という用語は、本明細書において使用する場合、追加の構成成分が培養プロセスの開始後のある時点において培養に提供される、細胞を培養する方法を指す。流加培養は基礎培地を使用して始めることができる。追加の構成成分が培養プロセスの開始後のある時点において培養に提供される際に用いられる培養培地は、供給培地である。提供される構成成分は典型的には、培養するプロセスの間に枯渇した、細胞のための栄養補助物質を含む。一実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、硫酸デキストランまたは硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む。別の実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、硫酸デキストランまたは硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物からなる。流加培養は典型的にはある時点において停止され、培地における細胞および/または構成成分は採取され、適宜精製される。
細胞培養の「増殖期」とは、全体として細胞が急速に分裂している指数関数的な細胞増殖の期間(対数期)を指す。この期の間、細胞はある期間、通例1~4日の間、細胞増殖が最大化されるような条件下で培養される。宿主細胞の増殖周期の決定は、過度の実験を行わずに、想定される宿主細胞に関して決定することができる。「時間期間、細胞増殖が最大化されるような条件下で」等は、ある細胞株に関して細胞増殖および分裂に最適であると決定される培養条件を指す。増殖期の間、細胞は、細胞株に関して最適な増殖が達成されるように、全体として約25℃~40℃、湿潤、制御雰囲気中にて、必要な添加剤を含有する栄養培地において培養される。細胞は約1~4日の間、通例2~3日の間の期間、増殖期に維持される。細胞の増殖期の長さは、過度の実験を行わずに決定することができる。例えば、増殖期の長さは、培養が増殖条件下に維持された場合に特定の細胞が最大可能生存細胞密度の約20%~80%の範囲内の生存細胞密度まで複製することを可能にするのに十分な時間期間である。
細胞培養の「生産期」とは、細胞増殖が定常に到達している時間期間を指す。生産期の間、対数関数的な細胞増殖は終了しており、タンパク質生産が主要となる。この時間期間の間、培地は全体として、継続したタンパク質生産を支持するため、および所望の糖タンパク質生産を達成するために補充される。
「発現」または「発現する」という用語は本明細書では、宿主細胞内で生じている転写および翻訳を指すために使用される。宿主細胞における産物遺伝子の発現のレベルは、細胞に存在する対応するmRNAの量または細胞によって産生される産物遺伝子によってコードされるタンパク質の量のいずれかに基づいて決定することができる。例えば、産物遺伝子から転写されたmRNAは望ましくはノーザンハイブリダイゼーションによって定量される。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, pp. 7.3-7.57 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。産物遺伝子によってコードされるタンパク質は、タンパク質の生物活性をアッセイすること、またはそのような活性に依存しないアッセイ、例えばタンパク質と反応することができる抗体を使用するウェスタンブロッティングもしくは放射免疫アッセイを用いることのいずれかによって定量することができる。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, pp. 18.1-18.88 (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
「ハイブリドーマ」という用語は、本明細書において使用する場合、免疫学的供給源に由来する不死化細胞と抗体産生細胞との融合によって生成された細胞を指す。結果として得られるハイブリドーマは抗体を産生する不死化細胞である。ハイブリドーマを生成するために使用される個々の細胞は、ラット、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびヒトを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物源由来であり得る。この用語はまた、ヒト細胞とマウス骨髄腫細胞株との間の融合の産物であるヘテロハイブリッド骨髄腫融合体の後代がその後形質細胞と融合する場合に結果として得られるトリオーマ細胞株も包含する。さらに、この用語には、例えばクアドローマ等の抗体を産生する任意の不死化ハイブリッド細胞株を含むことが意図される[例えばMilstein et al., Nature, 537:3053 (1983)を参照のこと。
「培地」、「細胞培養培地」、「培養培地」、および「増殖培地」という用語は、本明細書において使用する場合、増殖する真核細胞に栄養を与える栄養素を含有する溶液を指す。典型的には、これらの溶液は、最低限の増殖および/または生存のために細胞によって必要とされる、必須および非必須アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、ならびに微量元素を提供する。溶液はまた、ホルモンおよび増殖因子を含む、最低限の速度を超えて増殖および/または生存を増強する構成成分を含有することもできる。溶液は細胞生存および繁殖に最適なpHおよび塩濃度に製剤化される。培地はまた、未知の組成のタンパク質も加水分解物も構成成分も含有しない無血清培地である「限定培地」または「合成培地」であり得る。限定培地は動物由来構成成分を含まず、全ての構成成分は既知の化学構造を有する。当業者は、限定培地が組換えポリペプチドまたはタンパク質、例えば、これらに限定されないが、ホルモン、サイトカイン、インターロイキン、および他のシグナル伝達分子を含むことができることを理解する。
「灌流培養」という用語は、本明細書において使用する場合、追加の構成成分が培養プロセスの開始後の培養に連続的または半連続的に提供される、細胞を培養する方法を指す。提供される構成成分は典型的には、培養するプロセスの間に枯渇した、細胞のための栄養補助物質を含む。培地における細胞および/または構成成分の一部分は典型的には連続的または半連続的に採取され、適宜精製される。
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書において使用する場合、ペプチド結合を介して一緒に連結したアミノ酸の一連の鎖を指す。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者であれば、この用語は長鎖に限定されず、ペプチド結合を介して一緒に連結した2つのアミノ酸を含む最短の鎖を指してもよいことを理解するだろう。単一のポリペプチドが別々の機能単位であり、別々の機能単位を形成するために他のポリペプチドとの永続的な物理的会合を必要とする場合、本明細書において使用される「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は交換可能に使用される。別々の機能的単位が互いと物理的に会合する2つ以上のポリペプチドによって構成される場合、本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、物理的に結合して別々の単位として一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。
「組換え発現ポリペプチド」および「組換えポリペプチド」とは、本明細書において使用する場合、そのポリペプチドを発現するように遺伝子操作された宿主細胞から発現するポリペプチドを指す。組換え発現ポリペプチドは、哺乳動物宿主細胞において通常発現するポリペプチドと同一であっても類似していてもよい。組換え発現ポリペプチドはまた、宿主細胞に対して外来、すなわち哺乳動物宿主細胞において通常発現するペプチドと異種であってもよい。あるいは、組換え発現ポリペプチドは、ポリペプチドの部分が哺乳動物宿主細胞において通常発現するポリペプチドと同一または類似しているアミノ酸配列を含有するが、他の部分は宿主細胞に対して外来であるという点でキメラであってもよい。本明細書において使用する場合、「組換え発現ポリペプチド」および「組換えポリペプチド」という用語はまた、ハイブリドーマによって産生される抗体も包含する。
「播種」という用語は、本明細書において使用する場合、細胞培養をバイオリアクターまたは別の容器に提供するプロセスを指す。一実施形態では、細胞はそれまでに別のバイオリアクターまたは容器において増幅されている。別の実施形態では、細胞は凍結されており、バイオリアクターまたは容器に提供する直前に解凍される。この用語は単一細胞を含む任意の数の細胞を指す。
「力価」という用語は、本明細書において使用する場合、所与の量の培地容量で割った、細胞培養によって生産された組換え発現ポリペプチドまたはタンパク質の総量を指す。力価は典型的には、培地1ミリリットル当たりのミリグラム単位のポリペプチドもしくはタンパク質、または培地1リットル当たりのグラム単位のポリペプチドもしくはタンパク質において表される。
本開示および特許請求の範囲において使用する場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上別段の指示が明確にない限り、複数形を含む。
実施形態が「含む(comprising)」という言葉を用いて本明細書に記載される場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」という言葉によって記載される、その他の点では類似の実施形態もまた提供されることが理解される。
II.細胞培養培地およびそれを使用する方法
本発明は、細胞培養培地およびその使用の方法に関する。本発明の培地は、乳酸産生への代謝転換と関連するロット間の代謝変動性を抑制する。本発明の培地は回分培養、流加培養、または灌流培養において使用することができる。一実施形態では、本発明の培地は基礎培地である。別の実施形態では、本発明の培地は供給培地である。
一実施形態では、本発明の培地は硫酸デキストランを含む。培地は、培養における硫酸デキストラン濃度を約0.01g/L~約5g/Lの間増加させるのに十分な量の硫酸デキストランを含むことができる。一実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、培養における硫酸デキストラン濃度を約0.01g/L~約5g/L、約0.01g/L~約4g/L、約0.01g/L~約3g/L、約0.01g/L~約2g/L、約0.01g/L~約1g/L、約0.01g/L~約0.5g/L、約0.01g/L~約0.25g/L、約0.05g/L~約5g/L、約0.05g/L~約4g/L、約0.05g/L~約3g/L、約0.05g/L~約2g/L、約0.05g/L~約1g/L、約0.05g/L~約0.5g/L、約0.05g/L~約0.25g/L、約0.1g/L~約5g/L、約0.1g/L~約4g/L、約0.1g/L~約3g/L、約0.1g/L~約2g/L、約0.1g/L~約1g/L、約0.1g/L~約0.5g/L、約0.1g/L~約0.25g/L、約0.2g/L~約5g/L、約0.2g/L~約4g/L、約0.2g/L~約3g/L、約0.2g/L~約2g/L、約0.2g/L~約1g/L、約0.2g/L~約0.5g/L、約0.2g/L~約0.25g/L、約0.25g/L~約5g/L、約0.25g/L~約4g/L、約0.25g/L~約3g/L、約0.25g/L~約2g/L、約0.25g/L~約1g/L、または約0.25g/L~約0.5g/Lの間増加させるのに十分な量の硫酸デキストランを含む。別の実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、培養における硫酸デキストラン濃度を約0.01g/L、約0.02g/L、約0.03g/L、約0.04g/L、約0.05g/L、約0.06g/L、約0.07g/L、約0.08g/L、約0.09g/L、約0.1g/L、約0.15g/L、約0.2g/L、約0.25g/L、約0.5g/L、約0.6g/L、約0.7g/L、約0.8g/L、約0.9g/L、約1g/L、約1.5g/L、約2g/L、約2.5g/L、約3g/L、約3.5g/L、約4g/L、約4.5g/L、または約5g/L増加させるのに十分な量の硫酸デキストランを含む。当業者は、供給培地によって細胞培養に補充された硫酸デキストランの絶対量が培養に添加された供給培地の容量および供給培地の硫酸デキストラン濃度から算出することができることを容易に理解する。
一実施形態では、本発明の培地は硫酸デキストランとクエン酸鉄との混合物を含む。培地は、培養におけるクエン酸鉄濃度を約1mM~約50mMの間増加させるのに十分な量のクエン酸鉄を含むことができる。一実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、培養におけるクエン酸鉄濃度を約1mM~約50mM、約1mM~約40mM、約1mM~約35mM、約1mM~約30mM、約1mM~約25mM、約1mM~約20mM、約1mM~約15mM、約1mM~約14mM、約1mM~約13mM、約1mM~約12mM、約1mM~約11mM、約1mM~約10mM、約2mM~約50mM、約3mM~約50mM、約4mM~約50mM、約5mM~約50mM、約10mM~約50mM、約15mM~約50mM、約20mM~約50mM、または約30mM~約50mMの間増加させるのに十分な量のクエン酸鉄を含む。別の実施形態では、本明細書に記載される供給培地は、培養におけるクエン酸鉄濃度を約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、約10mM、約11mM、約12mM、約13mM、約14mM、約15mM、約16mM、約17mM、約18mM、約19mM、約20mM、約21mM、約22mM、約23mM、約24mM、約25mM、約30mM、約35mM、約40、約45mM、または約50mM増加させるのに十分な量のクエン酸鉄を含む。当業者は、供給培地によって細胞培養に補充されたクエン酸鉄の絶対量が培養に添加された供給培地の容量および供給培地のクエン酸鉄濃度から算出することができることを容易に理解する。
一実施形態では、本明細書に記載される培地は無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地である。具体的な実施形態では、本明細書に記載される培地は合成培地である。
本発明はさらに、本明細書に記載される培地および細胞を含む細胞培養組成物を提供する。
一実施形態では、本発明の細胞培養組成物は回分培養、流加培養、または灌流培養であり得る。具体的な実施形態では、本発明の細胞培養組成物は流加培養である。
一実施形態では、本明細書に記載される細胞培養組成物は、哺乳動物細胞、例えば、これらに限定されないが、CHO細胞、HEK細胞、NSO細胞、PER.C6細胞、293細胞、HeLa細胞、およびMDCK細胞を含む。具体的な実施形態では、本明細書に記載される細胞培養組成物はCHO細胞を含む。別の具体的な実施形態では、本明細書に記載される細胞培養組成物はHEK細胞を含む。別の具体的な実施形態では、本明細書に記載される細胞培養組成物はハイブリドーマ細胞を含む。
本明細書に記載される細胞培養組成物は、無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地において増殖するように適合されている細胞を含むことができる。あるいは、細胞培養組成物は、培養における寿命を向上させるように遺伝子改変されている細胞を含むことができる。一実施形態では、細胞は、抗アポトーシス遺伝子を発現するように改変されている。具体的な実施形態では、細胞は、bcl-xL抗アポトーシス遺伝子を発現するように改変されている。本発明に従って使用することができる追加の抗アポトーシス遺伝子としては、これらに限定されないが、E1B-9K、Aven、Mc1が挙げられる。
本開示はまた、別の実施形態では、ニューブラスチン抗体またはその断片を産生するように適合されている哺乳動物細胞を含む細胞培養組成物を提供する。CHO細胞および網膜由来細胞を含むがこれらに限定されるこの目的に有用な細胞、ならびに哺乳動物細胞において作製されるニューブラスチン抗体またはその断片もまた提供される。
本発明は、細胞を本明細書に開示される培地と接触させることを含む、細胞を培養する方法を提供する。
細胞培養は回分培養、流加培養、または灌流培養において培養することができる。一実施形態では、本発明の方法の細胞培養は回分培養である。別の実施形態では、本発明の方法の細胞培養は流加培養である。さらなる実施形態では、本発明の方法の細胞培養は灌流培養である。
一実施形態では、本発明の方法の細胞培養は無血清培養である。別の実施形態では、本発明の方法の細胞培養は合成培養である。さらなる実施形態では、本発明の方法の細胞培養は無動物タンパク質培養である。
一実施形態では、細胞培養は、培養の増殖期の間に本明細書に記載される培地と接触する。別の実施形態では、細胞培養は、培養の生産期の間に本明細書に記載される培地と接触する。
一実施形態では、本発明の細胞培養は、培養の生産期の間に本明細書に記載される供給培地と接触する。一実施形態では、培養には、供給培地が第2の時間期間の間に約1~約25回補充される。別の実施形態では、培養には、供給培地が第1の時間期間の間に約1~約20回、約1~約15回、または約1~約10回補充される。さらなる実施形態では、培養には、供給培地が少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも1回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも20回、少なくとも25回補充される。具体的な実施形態では、培養は流加培養である。別の具体的な実施形態では、培養は灌流培養である。
本発明の培養は、一定の間隔において本明細書に記載される供給培地と接触することができる。一実施形態では、一定の間隔とは1日に約1回、2日ごとに約1回、3日ごとに約1回、4日ごとに約1回、または5日ごとに約1回である。具体的な実施形態では、培養は流加培養(fed hatch culture)である。別の具体的な実施形態では、培養は灌流培養である。
本発明の培養は、培養の代謝状況に基づいて必要な場合に本明細書に記載される供給培地と接触することができる。一実施形態では、流加培養の代謝マーカーは、培養に本明細書に記載される供給培地を補充する前に測定される。一実施形態では、代謝マーカーは、乳酸濃度、アンモニウム濃度、アラニン濃度、グルタミン濃度、グルタミン酸濃度、細胞特異的乳酸産生速度対細胞特異的グルコース取込み速度比(LPR/GUR比)、およびKhodarnine123特異的細胞蛍光からなる群から選択される。一実施形態では、0.1超のLPR/GUR値は、培養に本明細書に記載される供給培地を補充する必要性を示す。さらなる具体的な実施形態では、3g/L超の乳酸濃度は、培養に本明細書に記載される供給培地を補充する必要性を示す。別の実施形態では、本発明の培養には、培養のLPR/GUR値が0.1超である場合、または培養の乳酸濃度が3g/L超である場合に、本明細書に記載される供給培地が補充される。具体的な実施形態では、培養は流加培養である。別の具体的な実施形態では、培養は灌流培養である。
一実施形態では、本明細書に記載される培地は、流加細胞培養のための供給培地である。当業者は、流加細胞培養が供給培地と2回以上接触することができることを理解する。一実施形態では、流加細胞培養は本明細書に記載される培地と1回のみ接触する。別の実施形態では、流加細胞培養は本明細書に記載される培地と2回以上、例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、または少なくとも10回接触する。
本発明においては、細胞培養に添加される供給培地の総容量は、最小量に最適に保たれるべきである。例えば、細胞培養に添加される供給培地の総容量は、供給培地を添加する前の細胞培養の容量の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%であり得る。
細胞培養は、実施者の必要性および細胞それ自体の要件に応じて、本明細書に記載される培地と接触する前に特定の細胞密度を達成するように増殖することができる。一実施形態では、細胞培養は、最大生存細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセントの生存細胞密度において本明細書に記載される培地と接触する。具体的な実施形態では、培地は供給培地である。
細胞培養は、本明細書に記載される培地と接触する前に定義された時間期間増殖させることができる。一実施形態では、細胞培養は、細胞培養の0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日目に本明細書に記載される培地と接触する。別の実施形態では、細胞培養は、細胞培養の1、2、3、4、5、6、7、または8週目に本明細書に記載される培地と接触する。具体的な実施形態では、培地は供給培地である。
細胞培養は、生産期において定義された時間期間培養することができる。一実施形態では、細胞培養は、生産期の0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30日目に本明細書に記載される供給培地と接触する。
本発明の培養は、約1日~約30日間の間生産期に維持することができる。一実施形態では、培養は、約1日~約30日間の間、約1日~約25日間の間、約1日~約20日間の間、約1日~約15日、約1日~約14日、約1日~約13日、約1日~約12日、約1日~約11日、約1日~約10日、約1日~約9日、約1日~約8日、約1日~約7日、約1日~約6日、約1日~約5日、約1日~約4日、約1日~約3日、約2日~約25日、約3日~約25日、約4日~約25日、約5日~約25日、約6日~約25日、約7日~約25日、約8日~約25日、約9日~約25日、約10日~約25日、約15日~約25日、約20日~約25日、約2日~約30日、約3日~約30日、約4日~約30日、約5日~約30日、約6日~約30日、約7日~約30日、約8日~約30日、約9日~約30日、約10日~約30日、約15日~約30日、約20日~約30日、または約25日~約30日間の間生産期に維持される。別の実施形態では、培養は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約11日、少なくとも約12日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、少なくとも約25日、または少なくとも約30日間生産期に維持される。さらなる実施形態では、培養は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約15日、約20日、約25日、または約30日間生産期に維持される。
本発明はさらに、細胞培養における代謝不均衡を防止または軽減する方法を提供する。代謝不均衡は、細胞培養における代謝産物のレベルを測定することによってモニタリングすることができる。例えば、代謝不均衡は、細胞培養における乳酸産生、アンモニウム産生、細胞特異的乳酸産生速度(LPR)の細胞特異的グルコース取込み速度(GUR)に対する比、アラニン消費、またはグルタミン消費をモニタリングすることによって検出することができる。一実施形態では、代謝不均衡は、増加した乳酸産生、増加したアンモニウム産生、または細胞特異的乳酸産生速度対細胞特異的グルコース取込み速度比(「LPR/GUR比」)の増加によって示される。別の実施形態では、代謝不均衡は、アラニン消費の増加またはグルタミン消費の増加によって示される。
一実施形態では、本発明の細胞を培養する方法は、指数増殖期の間のミトコンドリア機能不全または代謝不均衡を防止または軽減する。別の実施形態では、本発明の細胞を培養する方法は、細胞が指数増殖期を経た後のミトコンドリア機能不全または代謝不均衡を防止または軽減する。さらなる実施形態では、本発明の細胞を培養する方法は、生産期の間のミトコンドリア機能不全または代謝不均衡を防止または軽減する。
本発明はまた、細胞培養を本明細書に記載される培地と接触させることを含む、細胞培養による乳酸産生を減少させる方法を提供する。一実施形態では、本明細書に記載される培養培地に維持される細胞の乳酸産生は、硫酸デキストランまたはクエン酸鉄を実質的に含まない培養培地に維持される細胞の乳酸産生よりも約5%~約90%の間、約S%~約80%の間、約5%~約70%の間、約5%~約50%の間、約5%~約40%の間、約5%~約30%の間、約5%~約20%の間、約10%~約90%の間、約20%~約90%の間、約30%~約90%の間、もしくは約50%~約90%の間、または少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、もしくは少なくとも約90%、または約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、もしくは約90%低い。一実施形態では、本明細書に記載される細胞培養は、約0.1g/L~約6g/Lの間、約0.1g/L~約5g/Lの間、約0.1g/L~約4g/Lの間、または約0.1g/L~約3g/Lの間の乳酸を含む。別の実施形態では、本明細書に記載される細胞培養は、約6g/l、約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、または約1g/L未満の乳酸を含む。
本発明はまた、細胞培養を本明細書に記載される培地と接触させることを含む、細胞培養によるアンモニウム産生を減少させる方法を提供する。一実施形態では、本明細書に記載される培養培地に維持される細胞のアンモニウム産生は、硫酸デキストランまたはクエン酸鉄を実質的に含まない培養培地に維持される細胞のアンモニウム産生よりも約5%~約90%の間、約5%~約80%の間、約5%~約70%の間、約5%~約50%の間、約5%~約40%の間、約5%~約30%の間、約5%~約20%の間、約10%~約90%の間、約20%~約90%の間、約30%~約90%の間、もしくは約50%~約90%の間、または少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、もしくは少なくとも約90%、または約5%、約10%、約20%、約30%、約50%、もしくは約90%低い。一実施形態では、本明細書に記載される細胞培養は、約0.1mM~約20mM、約0.1mM~約15mM、約0.1mM~約14mM、約0.1mM~約13mM、約0.1mM~約12mM、約0.1mM~約11mM、約0.1mM~約10mM、約0.1mM~約9mM、約0.1mM~約8mM、約0.1mM~約7mM、約0.1mM~約6mM、約0.1mM~約5mM、約0.1mM~約4mM、約0.1mM~約3mM、約0.1mM~約2mM、約0.1mM~約1mM、約0.5mM~約20mM、約0.5mM~約15mM、約0.5mM~約14mM、約0.5mM~約13mM、約0.5mM~約12mM、約0.5mM~約11mM、約0.5mM~約10mM、約0.5mM~約9mM、約0.5mM~約8mM、約0.5mM~約7mM、約0.5mM~約6mM、約0.5mM~約5mM、約0.5mM~約4mM、約0.5mM~約3mM、約0.5mM~約2mM、約0.5mM~約1mM、約1mM~約20mM、約1mM~約15mM、約1mM~約14mM、約1mM~約13mM、約1mM~約12mM、約1mM~約11mM、約1mM~約10mM、約1mM~約9mM、約1mM~約8mM、約1mM~約7mM、約1mM~約6mM、約1mM~約5mM、約1mM~約4mM、約1mM~約3mM、または約1mM~約2mMの間のアンモニウムを含む。別の実施形態では、本明細書に記載される細胞培養は、約20mM、約19mM、約18mM、約17mM、約16mM、約15mM、約14mM、約13mM、約12mM、約11mM、約10mM、約9mM、約8mM、約7mM、約6mM、約5mM、約4mM、約3mM、約2mM、約1mM、または約0.5mM未満のアンモニウムを含む。
本発明はさらに、本明細書に記載される培地を含む培養において目的のタンパク質またはポリペプチドを産生することができる細胞を培養すること、およびタンパク質またはポリペプチドを培養から単離することを含む、目的のタンパク質またはポリペプチドを生産する方法を提供する。一実施形態では、目的のタンパク質またはポリペプチドは組換えタンパク質またはポリペプチドである。一実施形態では、目的のタンパク質またはポリペプチドは、酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、または結合剤である。具体的な実施形態では、タンパク質は、ニューブラスチン抗体であり得るがこれに限定されない抗体、例えばモノクローナル抗体である。
本発明の一実施形態では、本明細書に記載される培地を含む細胞培養は、外来性硫酸デキストランを含まない細胞培養よりも長く生産期に維持することができる。当業者は、延長された生産期が細胞培養によって生産されるポリペプチドの総量の増加をもたらすことができることを容易に理解する。一実施形態では、本発明の目的のポリペプチドを生産する方法は、外来性硫酸デキストランを含む培養においてポリペプチドを産生することができる細胞を維持することを含まない方法によって生産される量よりも多いポリペプチドを生産する。一実施形態では、本発明の方法は、約5%~約500%、約5%~約250%、約5%~約100%、約5%~約80%、約5%~約50%、約5%~約30%、約10%~約500%、約20%~約500%、約30%~約500%、約50%~約500%、または約100%~約500%の間だけ多いタンパク質またはポリペプチドを生産する。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%多いタンパク質またはポリペプチドを生産する。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍多いタンパク質またはポリペプチドを生産する。具体的な実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは抗体である。
一実施形態では、本発明の目的のポリペプチドを生産する方法は、硫酸デキストランを含む培養において細胞を維持することを含まない方法によって生じる力価よりも高いポリペプチドの力価を細胞培養において生じる。一実施形態では、本発明の方法は、約5%~約500%、約5%~約250%、約5%~約100%、約5%~約80%、約5%~約50%、約5%~約30%、約10%~約500%、約20%~約500%、約30%~約500%、約50%~約500%、または約100%~約500%の間だけ高い力価を生じる。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約90%、または少なくとも約100%高い力価を生じる。別の実施形態では、本発明の方法は、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、または10倍高い力価を生じる。具体的な実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは抗体である。
具体的な実施形態では、本発明の目的のポリペプチドを生産する方法は、少なくとも約2g/リットル、少なくとも約2.5g/リットル、少なくとも約3g/リットル、少なくとも約3.5g/リットル、少なくとも約4g/リットル、少なくとも約4.5g/リットル、少なくとも約5g/リットル、少なくとも約6g/リットル、少なくとも約7g/リットル、少なくとも約3g/リットル、少なくとも約9g/リットル、または少なくとも約10g/リットルの最大タンパク質またはポリペプチド力価を生じる。別の実施形態では、本発明の方法は、約1g/リットル~約10g/リットル、約1.5g/リットル~約10g/リットル、約2g/リットル~約10g/リットル、約2.5g/リットル~約10g/リットル、約3g/リットル~約10g/リットル、約4g/リットル~約10g/リットル、約5g/リットル~約10g/リットル、約1g/リットル~約5g/リットル、約1g/リットル~約4.5g/リットル、または約1g/リットル~約4g/リットルの間の最大タンパク質またはポリペプチド力価を生じる。具体的な実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは抗体である。別の実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは血液凝固因子である。
本発明はさらに、本明細書に記載される方法によって作製される馴化細胞培養培地を提供する。
一実施形態では、本発明の馴化細胞培養培地は、組換えタンパク質またはポリペプチドを含む。具体的な実施形態では、本発明の馴化細胞培養培地は、少なくとも約2g/リットル、少なくとも約2.5g/リットル、少なくとも約3g/リットル、少なくとも約3.5g/リットル、少なくとも約4g/リットル、少なくとも約4.5g/リットル、少なくとも約5g/リットル、少なくとも約6g/リットル、少なくとも約7g/リットル、少なくとも約8g/リットル、少なくとも約9g/リットル、もしくは少なくとも約10g/リットルの力価、または約1g/リットル~約10g/リットル、約1.5g/リットル~約10g/リットル、約2g/リットル~約10g/リットル、約2.5g/リットル~約10g/リットル、約3g/リットル~約10g/リットル、約4g/リットル~約10g/リットル、約5g/リットル~約10g/リットル、約1g/リットル~約5g/リットル、約1g/リットル~約4.5g/リットル、もしくは約1g/リットル~約4g/リットルの間の力価(liter)の組換えタンパク質またはポリペプチドを含む。別の実施形態では、本発明の馴化細胞培養培地は、本明細書に記載される培地の使用を伴わずに取得される力価よりも高い力価の組換えタンパク質またはポリペプチドを含む。具体的な実施形態では、タンパク質またはポリペプチドは抗体である。
ポリペプチド
宿主細胞において発現可能ないかなるポリペプチドも本発明に従って生産することができる。ポリペプチドは、宿主細胞に内在性の遺伝子、または遺伝子操作を介して宿主細胞に導入されている遺伝子から発現することができる。ポリペプチドは、天然において存在するポリペプチドであってもよく、あるいは人の手によって操作または選択された配列を有してもよい。操作されたポリペプチドは、天然において個々に存在する他のポリペプチドセグメントから組み立てることも、天然に存在しない1つまたは複数のセグメントを含むこともできる。
望ましくは本発明に従って発現することができるポリペプチドは、多くの場合、目的の生物活性または化学活性に基づいて選択することができる、例えば、本発明は、任意の薬学的または商業的に関連する酵素、受容体、抗体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤等を発現させるために用いることができる。
特に有用なポリペプチドは、高度に負に帯電しているポリペプチドである。高度に負に帯電しているポリペプチドの例としては、これらに限定されないが、ニューブラスチンおよび第VIII因子が挙げられる。
抗体
医薬品または他の商業的薬剤として現在使用中であるかまたは検討中である多くの数の抗体を考慮すると、本発明に従った抗体の生産は特に興味深い。抗体は、特定の抗原と特異的に結合する能力を有するタンパク質である。宿主細胞において発現することができるいかなる抗体も本発明に従って使用することができる。一実施形態では、発現する抗体はモノクローナル抗体である。
特定の抗体は、例えば、示されたアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を調製して発現させることによって、またはヒト生殖細胞系列遺伝子を突然変異させて、示されたアミノ酸配列をコードする遺伝子を得ることによって作製することができる。さらに、これらの抗体は、例えば以下の方法のうちの1つまたは複数を使用して生産することができる。
数多くの方法が抗体、特にヒト抗体を取得するために利用可能である。1つの例示的な方法としては、タンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることが挙げられる。ファージディスプレイは、例えば、米国特許第5,223,409号、Smith (1985) Science 228:1315-1317、WO92/18619号、WO91/17271号、WO92/20791号、およびWO90/02809号に記載されている。Fab’のファージディスプレイは、例えば、米国特許第5,658,727号、同第5,667,988号、および同第5,885,793号に記載されている。
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、他の方法が抗体を取得するために使用され得る。例えば、タンパク質またはそのペプチドは、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、またはラットにおいて抗原として使用することができる。
一実施形態では、非ヒト動物はヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも部分を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損しているマウス系統を、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を生産および選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Green et al. (1994) Nature Genetics 7:13-21、米国第2003-0070185号、WO96/34096号、およびWO96/33735号を参照のこと。
別の実施形態では、モノクローナル抗体は非ヒト動物から取得され、次いで改変、例えばヒト化または脱免疫化される。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体を調製するために使用することができる例示的なCDR移植法を記載している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体の全てまたは一部のCDRは、非ヒト抗体の少なくとも一部分と置換することができる。一実施形態では、抗原に結合する有用なヒト化抗体となるためにCDRの結合または結合決定基に必要とされる場合にのみ、そのようなCDRを置換することが必要となる。
ヒト化抗体は、抗原結合に直接的には関わらないFv可変領域の配列をヒトFv可変領域由来の相当する配列と置換することによって生成してもよい。ヒト化抗体を生成するための一般的な方法は、Morrison, S.L. (1985) Science 229:1202-1207、Oi et al. (1986) BioTechniques 4:214、ならびに米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,859,205号、および米国特許第6,407,213号によって提供されている。それらの方法には、少なくとも1つの重鎖または軽鎖由来の免疫グロブリンFv可変領域の全てまたは部分をコードする核酸配列を単離すること、処理すること、および発現することが含まれる。そのような核酸の供給源は当業者に周知であり、例えば、上に記載した所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ、生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子、または合成コンストラクトから取得することができる。ヒト化抗体をコードする組換えDNAは、次いで適切な発現ベクターにクローニングすることができる。一実施形態では、発現ベクターは、グルタミン合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。[例えばPorter et al., Biotechnol Prog 26(5):1446-54 (2010)を参照のこと。
抗体はヒトFc領域、例えば野生型Fc領域または1つもしくは複数の変更を含むFc領域を含むことができる。一実施形態では、定常領域は、抗体の特性を改変するために(例えば、Fc受容体結合、抗体グリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つまたは複数を増加または減少させるために)変更、例えば突然変異させる。例えば、ヒトIgG定常領域は1つまたは複数の残基、例えば残基234および237のうちの1つまたは複数において突然変異させることができる。抗体は重鎖のCH2領域において、エフェクター機能、例えばFc受容体結合および補体活性化を低下または変更する突然変異を有し得る。例えば、抗体は突然変異、例えば米国特許第5,624,821号および同第5,648,260号に記載されている突然変異を有し得る。抗体はまた、免疫グロブリンの2つの重鎖の間のジスルフィド結合を安定化する突然変異、例えば当技術分野に開示されているIgG14のヒンジ領域における突然変異を有し得る[例えばAngal et. al, (1993) Mol. Immunol. 30:105-08]。例えば米国第2005-0037000号も参照のこと。
他の実施形態では、抗体は変更されたグリコシル化パターン(すなわち本来または天然のグリコシル化パターンから変更された)を有するように改変することができる。この文脈で使用する場合、「変更された」とは、1つもしくは複数の炭水化物部分が欠失したこと、および/または1つもしくは複数のグリコシル化部位が本来の抗体に付加されたことを意味する。グリコシル化部位の本開示の抗体への付加は、アミノ酸配列を変更してグリコシル化部位コンセンサス配列を含有させることによって遂行することができ、そのような技法は当技術分野において周知である。抗体の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、配糖体と抗体のアミノ酸残基との化学的または酵素的カップリングによるものである。これらの方法は、例えばWO87/05330号およびAplin and Wriston (1981) CRC Crit, Rev. Biochem. 22:259-306に記載されている。抗体に存在する任意の炭水化物部分の除去は、当技術分野に記載されているように化学的にまたは酵素的に遂行することができる[Hakimuddin et al, (1987) Arch. Biochem. Biophys. 259:52、Edge et al. (1981) Anal. Biochem. 118:131、およびThotakura et al. (1987) Meth. Enzymol, 138:350]。サルベージ受容体結合エピトープを提供することによってインビボ(in vivo)での半減期を向上させる改変に関しては、例えば米国特許第5,869,046号を参照のこと。
抗体は全長抗体の形態であっても、抗体の断片、例えば、Fab、F(ab’)2、Fd、dAb、およびscFv断片の形態であってもよい。追加の形態としては、単一可変ドメイン、例えばラクダまたはラクダ化ドメインを含むタンパク質が挙げられる。例えば米国第2005-0079574号およびDavies et al, (1996) Protein Eng. 9(6):531-7を参照のこと。
一実施形態では、抗体は全長抗体の抗原結合断片、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、または一本鎖Fv断片である。典型的には、抗体は全長抗体である。抗体はモノクローナル抗体であっても単一特異性抗体であってもよい。
別の実施形態では、抗体は、ヒト、ヒト化、CDR移植、キメラ、突然変異、親和性成熟、脱免疫化、合成、または他の方法におけるインビトロ(in vitro)生成抗体、およびそれらの組合せであり得る。
抗体の重鎖および軽鎖は実質的に全長であってもよい。タンパク質は、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖と、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な軽鎖とを含むことができる)か、または抗原結合断片[例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、もしくは一本鎖Fv断片]を含むことができる。さらに他の実施形態では、抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG13、IgG4、IgM、IgGA1、IgA2、IgD、およびIgEから選択される、詳細には、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4、より詳細には、IgG1(例えばIgG1)から選択される重鎖定常領域を有する。典型的には、重鎖定常領域はヒト重鎖定常領域であるかまたはヒト定常領域の改変形態である。別の実施形態では、抗体は、例えばカッパまたはラムダ、特にカッパ(例えばヒトカッパ)から選択される軽鎖定常領域を有する。
受容体
医薬品および/または商業的薬剤として効果的であることが示されている別の種類のポリペプチドとしては、受容体が挙げられる。受容体は典型的には、細胞外シグナル伝達リガンドを認識することによって機能する膜貫通型糖タンパク質である。受容体は典型的には、リガンド認識ドメインに加えてプロテインキナーゼドメインを有し、プロテインキナーゼドメインは、リガンドと結合した場合に標的細胞内分子をリン酸化することによってシグナル伝達経路を開始し、細胞内の発生変化または代謝変化をもたらす。一実施形態では、目的の受容体は、膜貫通および/または細胞内ドメインを除去するように改変されており、膜貫通および/または細胞内ドメインの代わりにIgドメインが付着されていてもよい。一実施形態では、本発明に従って生産される受容体は受容体型チロシンキナーゼ(RTK)である。RTKファミリーには、多様な機能および数多くの細胞型に非常に重要な受容体が含まれる[例えばYarden and Ullrich, Ann. Rev. Biochem. 57:433-478, 1988、Ullrich and Schlessinger (1990) Cell 61:243,254を参照のこと]。RTKの非限定的な例としては、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体ファミリーのメンバー、表皮増殖因子受容体(EGF)ファミリーのメンバー、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、免疫グロブリンおよびEGF相同ドメイン含有チロシンキナーゼ-1(TIE-1:tyrosine kinase with immunoglobulin and EGF homology domain)およびTIE-2受容体[参照によって本明細書に組み込まれるSato et al., Nature 376(6535):70-74 (1995)]、ならびにc-Met受容体が挙げられ、これらのうちの一部は血管新生を直接的または間接的に促進することが示唆されている(Mustonen and Alitalo, J. Cell Biol. 129:895-898, 1995)。RTKの他の非限定的な例としては、胎児肝臓キナーゼ1(FLK-1)[キナーゼ挿入ドメイン含有受容体(KDR)(Terman et al., Oncogene 6:1677-83, 1991)または血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR-2)と称される場合もある]、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR-1)と称される場合もあるfins様チロシンキナーゼ-1(Flt-1)(DeVries et al, Science 255:989-991, 1992、Shibuya et al., Oncogene 5:519-524, 1990)、ニューロピリン-1、エンドグリン、エンドシアリン、およびAxlが挙げられる。当業者であれば、本発明に従って発現させることができる他の受容体を認識しているだろう。
増殖因子および他のシグナル伝達分子
医薬品および/または商業的薬剤として効果的であることが示されている別の種類のポリペプチドとしては、増殖因子および他のシグナル伝達分子が挙げられる。増殖因子は典型的には、細胞によって分泌される糖タンパク質であり、他の細胞の受容体に結合してそれを活性化させ、受容体細胞の代謝変化または発生変化を開始する。
哺乳動物増殖因子および他のシグナル伝達分子の非限定的な例としては、サイトカイン;表皮増殖因子(EGF);血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えばaFGFおよびbFGF;形質転換増殖因子(TGF)、例えば、TGF-アルファ、およびTGF-ベータ1、TGF-ベータ2、TGF-ベータ3、TGF-ベータ4、またはTGF-ベータ5を含むTGF-ベータ;インスリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD-3、CD-4、CD-8、およびCD-19;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、-ベータ、および-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、およびG-CSF;インターロイキン(TL)、例えばIL-1~IL-10;腫瘍壊死因子(TNF)アルファおよびベータ;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;抗凝固因子、例えばプロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えばウロキナーゼまたはヒト尿または組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン、造血増殖因子;エンケファリナーゼ;RANTES[活性化時に調節されており、通常ではT細胞により発現および分泌される(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted)];ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、もしくは-6(NT-3、NT-4、NT-5、もしくはNT-6)、または神経成長因子、例えばNGF-ベータが挙げられる。当業者であれば、本発明に従って発現させることができる他の増殖因子またはシグナル伝達分子を認識しているだろう。
凝固因子
一部の実施形態では、目的のタンパク質は凝固因子を含む。「凝固因子」とは、本明細書において使用する場合、止血障害を有する対象における出血エピソードを予防するかまたはその持続時間を減少させる任意の分子またはその類似体を意味する。例えば、本発明に関する凝固因子は、全長凝固因子、成熟凝固因子、またはキメラ凝固因子であり得る。換言すると、凝固因子とは、凝固活性を有する任意の分子を意味する。凝固活性とは、本明細書において使用する場合、フィブリン血栓の形成を結果的に生じる、および/または出血もしくは出血エピソードの重症度、持続時間、もしくは頻度を低減させる生化学的反応のカスケードに関与する能力を意味する。凝固因子の例は米国特許第7,404,956号に見出すことができる。
一実施形態では、凝固因子は、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、第XIII因子、またはフォン・ヴィレブランド因子である。凝固因子は、外因性経路に関与する因子であってもよい。凝固因子は、内因性経路に関与する因子であってもよい。あるいは、凝固因子は、外因性経路と内因性経路の両方に関与する因子であってもよい。
一実施形態では、凝固因子は、非ヒト凝固因子、または例えば、非ヒト霊長類、ブタ、もしくは任意の哺乳動物に由来する非ヒト凝固因子であってもよい。凝固因子はキメラ凝固因子であってもよく、例えば、凝固因子はヒト凝固因子の一部分とブタ凝固因子の一部分、または第1の非ヒト凝固因子の一部分と第2の非ヒト凝固因子の一部分とを含んでもよい。
別の実施形態では、凝固因子は活性化凝固因子であってもよい。あるいは、凝固因子は凝固因子の不活性形態、例えば酵素前駆体であってもよい。不活性凝固因子は、免疫グロブリン定常領域の少なくともの一部分と連結した後に活性化を受けてもよい。不活性凝固因子は対象への投与後に活性化してもよい。あるいは、不活性凝固因子は投与前に活性化してもよい。
ある特定の実施形態では、凝固因子は第VIII因子タンパク質である。「第VIII因子タンパク質」または「FVIIIタンパク質」とは、本明細書において使用する場合、別段の指定がない限り、凝固における通常の役割において機能的な第VIII因子タンパク質を意味する。したがって、FVIIIという用語には、機能的である変異タンパク質が含まれる。一実施形態では、FVIIIタンパク質はヒト、ブタ、イヌ、ラット、または海洋性(marine)FVIIIタンパク質である。機能的FVIIIタンパク質は融合タンパク質、例えば、これらに限定されないが、完全にもしくは部分的にBドメインが欠失したFVIII、免疫グロブリン定常領域の少なくともの一部分、例えばFcドメイン、またはその両方を含む融合タンパク質であってもよい。無数の機能的FVIII変異体が構築されており、本明細書に記載される組換えFVIIIタンパク質として使用することができる。いずれもそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれるPCT公開第WO2011/069164A2号、同第WO2012/006623A2号、同第WO2012/006635A2号、または同第WO2012/006633A2号を参照のこと。
非常に多くの機能的FVIII変異体が公知である。加えて、FVIIIにおける数百の非機能的突然変異が血友病患者において同定されている。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるCutler et al., Hum. Mutat. 19:274-8 (2002)を参照のこと。加えて、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIとの比較は、機能に必要とされる可能性が高い保存されている残基を同定した。例えば、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれるCameron et al., Thromb. Haernost. 79:317-22 (1998)および米国第6,251,632号を参照のこと。
ある特定の態様では、本発明の組換えFVIIIタンパク質はキメラである。「キメラタンパク質」または「キメラポリペプチド」とは、本明細書において使用する場合、異なる供給源由来のアミノ酸の少なくとも2つの区間を内部に含むタンパク質またはポリペプチド、例えば異種部分を含むFVIIIタンパク質を意味する。一実施形態では、異種部分は半減期延長部分であり得る。異種部分の例としては、これらに限定されないが、免疫グロブリン定常領域またはその断片、例えばFc領域もしくはFeRn結合パートナー、VWF分子またはその断片、アルブミン、アルブミン結合ポリペプチド、Fc、PHS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのC末端ペプチド(CTP)のβサブユニット、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合低分子、あるいはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、キメラタンパク質はFVIII単量体二量体ハイブリッドである。
本発明に有用な長期作用型または長期持続型FIXポリペプチドは、FIXポリペプチドとFcRn結合パートナーとを含むキメラポリペプチドである。本発明のFIXポリペプチドは、別段の指定がない限り、凝固における通常の役割において機能的な第IX因子ポリペプチドを含む。したがって、FIXポリペプチドには、機能的である変異ポリペプチド、およびそのような機能的変異ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。一実施形態では、FIXポリペプチドはヒト、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウスFIXポリペプチドである。FIXの全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、多くの機能的変異体、例えば、断片、突然変異体、および改変型と同様に公知である。FIXポリペプチドとしては、全長FIX、N末端にMetを有しない全長FIX、シグナル配列を有しない全長FIX、成熟FIX[シグナル配列およびプロペプチドを有しない]、ならびにN末端に追加のMetを有する成熟FIXが挙げられる。FIXは組換え手段によって作製することができる(「組換え第IX因子」または「rFIX」)、すなわち、FIXは天然に存在せず、血漿にも由来しない。
凝固因子としては、FIXタンパク質またはその任意の変異体、類似体、もしくは機能的断片を挙げることもできる。非常に多くの機能的FIX変異体が公知である。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO02/040544A3号は、4ページ9~30行目および15ページ6~31行目にヘパリンによる阻害に対する向上した耐性を呈する突然変異体を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO03/020764A2号は、表2および3(14~24ページ)、ならびに12ページ1~27行目に低減したT細胞免疫原性を有するFIX突然変異体を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO2007/149406A2号は、4ページ1行目~19ページ11行目に向上したタンパク質安定性、向上したインビボおよびインビトロでの半減期、ならびにプロテアーゼに対する向上した耐性を呈する機能的突然変異FIX分子を開示している。WO2007/149406A2号はまた、19ページ12行目~20ページ9行目にキメラおよび他の変異FIX分子を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO08/118507A2号は、5ページ14行目~6ページ5行目に向上した凝固活性を呈するFIX突然変異体を開示している。国際公開第WO09/051717A2号は、9ページ11行目~20ページ2行目に向上した半減期および/または回収率をもたらす増加した数のN結合型および/またはO結合型グリコシル化部位を有するFIX突然変異体を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO09/137254A2号はまた、2ページの段落[006]~5ページの段落[011]および16ページの段落[044]~24ページの段落[057]に増加した数のグリコシル化部位を有する第IX因子突然変異体を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO09/130198A2号は、4ページ26行目~12ページ6行目に向上した半減期をもたらす増加した数のグリコシル化部位を有する機能的突然変異FIX分子を開示している。その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO09/140015A2号は、11ページの段落[0043]~13ページの段落[0053]にポリマー(例えばPEG)コンジュゲーションのために使用され得る増加した数のCys残基を有する機能的FIX突然変異体を開示している。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624号として公開された国際出願第PCT/US2011/043569号に記載されているFIXポリペプチドもまた、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
加えて、FIXにおける数百の非機能的突然変異が血友病患者において同定されており、その多くは、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第WO09/137254A2号の11~14ページの表1に開示されている。そのような非機能的突然変異は、本発明には含まれないが、突然変異が機能的FIXポリペプチドをもたらす可能性が多かれ少なかれ存在するという追加の手引きを提供する。
一部の実施形態では、本発明のキメラタンパク質はFIX単量体二量体ハイブリッドである。単量体-二量体ハイブリッドは2本のポリペプチド鎖を含むことができ、一方の鎖はFIXポリペプチドと第1のFc領域とを含み、別の鎖は第2のFc領域を含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。ある特定の態様では、FIX単量体二量体ハイブリッドは、2本のポリペプチド鎖から本質的になるかまたはそれらからなり、第1の鎖はFIXポリペプチドから本質的になるかまたはそれからなり、第2の鎖は第2のFc領域から本質的になるかまたはそれからなる。
一部の実施形態では、凝固因子は第VII因子またはその変異体の成熟形態である。第VII因子(F-VII、F7;第7因子、凝固第VII因子、血清第VII因子、血清プロトロンビン転化促進因子、SPCA、プロコンバーチン、およびエプタコグアルファとも称される)は、凝固カスケードの一部であるセリンプロテアーゼである。FVIIには、Glaドメイン、2つのEGFドメイン(EGF-1およびEGF-2)、ならびに、例えばキモトリプシンを含む等、セリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーの全てのメンバー間において高度に保存されているセリンプロテアーゼドメイン(またはペプチダーゼS1ドメイン)が含まれる。FVIIは一本鎖酵素前駆体、活性化した酵素前駆体様二本鎖ポリペプチド、および完全に活性化した二本鎖形態として生じる。
例示的なFVII変異体としては、向上した特異的活性、例えば酵素活性(KcatまたはKm)を向上させることによってFVIIの活性を向上させる突然変異を有するFVII変異体が挙げられる。そのような変異体は当技術分野に記載されており、例えば、Persson et al., 2001, PNAS 98: 13583、Petrovan and Ruf, 2001. J. Biol, Chem. 276:6616、Persson et al,. 2001 J. Biol. Chem. 276:29195、Soejima et al,. 2001, J. Biol. Chem. 276: 17229、Soejima et al., 2002, J. Biol. Chem. 247:49027に記載されているような分子の突然変異型が例えば挙げられる。
一実施形態では、FV1Iの変異型は突然変異を含む。例示的な突然変異としては、V158D-E296V-M298Qが挙げられる。別の実施形態では、-FVIIの変異型としては、FVII成熟配列由来のアミノ酸608~619(LQQSRKVGDSPN、170ループに対応)の、トリプシンの170ループ由来のアミノ酸EASYPGKとの置換体が挙げられる。FIXの高特異的活性変異体もまた当技術分野において公知である。例えば、Simioni et al., 2009 N.E. J. Med. 361:1671)はR338L突然変異を記載している。Chang et al. (1988 JBC 273:12089)およびPierri et al,. (20.09 Human Gene Therapy 20:479)はR338A突然変異を記載している。他の突然変異は当技術分野において公知であり、例えば、Zogg and Brandstetter. 2009 Structure 17:1669、Sichler et al., 2003, J. Biol. Chem. 278:4121、およびSturzebecher et al., 1997. FEBS Lett 412:295に記載されている突然変異が挙げられる。これらの参考文献の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
酵素前駆体様形態からの立体構造変化時に生じる完全な活性化は、補因子としての組織因子との結合時に生じる。また、組織因子の非存在下で立体構造変化をもたらす突然変異も導入することができる。したがって、FVIIaへの言及には、その両方の二本鎖形態、すなわち、酵素前駆体様形態(例えば活性化可能なFVII)と完全に活性化した二本鎖形態とが含まれる。
本発明に有用な凝固因子の例を開示する様々な特許または出願は参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、凝固因子(FVII、FIX、およびFVIII)を含む様々な単量体二量体ハイブリッドコンストラクトは、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国第7,404,945号、米国第7,348,004号、米国第7,862,820号、米国第8,329,182号、および米国第7,820,162号に開示されている。FVIIIキメラタンパク質の例は、その全体が参照によって組み込まれる米国出願第61/734,954号または同第61/670,553号にさらに開示されている。FVIIキメラタンパク質の例は米国出願第61/657,688号に開示されている。
Gタンパク質共役型受容体
医薬品および/または商業的薬剤として効果的であることが示されている別の種類のポリペプチドとしては、増殖因子および他のシグナル伝達分子が挙げられる。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)とは、7つの膜貫通ドメインを有するタンパク質である。リガンドとGPCRとの結合時、シグナルが細胞内に形質導入されて、細胞の生物学的または生理学的特性の変化をもたらす。
GPCRは、Gタンパク質ならびにエフェクター(Gタンパク質によってモジュレートされる細胞内酵素およびチャネル)と共に、細胞内セカンドメッセンジャーの状態を細胞外入力と結び付けるモジュラーシグナル伝達系の構成成分である。これらの遺伝子および遺伝子産物は疾患の潜在的な原因物質である。
GPCRタンパク質スーパーファミリーは現在、オルソログ、すなわち異なる種由来の同じ受容体と対照的な、250を超える種類のパラログ、すなわち遺伝子重複(または他のプロセス)によって生成された変異体を表す受容体を含有する。スーパーファミリーは5つのファミリー、すなわち、ロドプシンおよびベータ2-アドレナリン作動性受容体によって代表され、現在200を超える固有のメンバーによって表される受容体であるファミリーI;近年特徴付けられた副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチン受容体ファミリーであるファミリーII;哺乳動物における代謝型グルタミン酸受容体ファミリーであるファミリーIII;キイロタマホコリカビ(D.discoideum)の走化性および発生において重要なcANIP受容体ファミリーであるファミリーIV;ならびにSTE2等の真菌交配フェロモン受容体であるファミリーVに分類することができる。
ウイルス
加えて、本発明はまた、ウイルス学の分野の当業者に公知の方法に従って細胞培養を使用するウイルスの生産のための方法を提供する。本発明に従って生産されるウイルスは、培養される細胞型に感染することが公知なウイルスの範囲から選択することができる。例えば、哺乳動物細胞培養を利用する場合、ウイルスは、オルソミクソウイルス、パラミクソウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、コロナウイルス、およびアデノウイルスの属から選択することができる。使用されるウイルスは、野生型ウイルス、弱毒化ウイルス、再集合ウイルス、または組換えウイルスであり得る。加えて、細胞にウイルスを感染させるために使用される実際のビリオンに代わって、感染性核酸クローンがウイルス学の分野の当業者に公知の感染性クローントランスフェクション法に従って利用され得る。一実施形態では、生産されるウイルスはインフルエンザウイルスである。
細胞
細胞培養が容易な任意の真核細胞または細胞型が本発明に従って利用され得る。例えば、植物細胞、酵母細胞、動物細胞、昆虫細胞、トリ細胞または哺乳動物細胞が本発明に従って利用され得る。一実施形態では、真核細胞は組換えタンパク質を発現することができるかまたは組換えもしくは再集合ウイルスを産生することができる。
本発明に従って使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例としては、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/1、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞[PER,C6(CruCell、Leiden、The Netherlands)];SV40によって形質転換したサル腎CVI株(COS-7、ATCC CRL1651);ヒト胎児腎株[293細胞または浮遊培養における増殖のためにサブクローニングした293細胞、Graham et al., J. Gen. Virol., 36:59 (1977)];ベビーハムスター腎細胞(BHK、ATCC CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞±DHFR[CHO、Urlaub and Chasin, Proc., Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980)];マウスセルトリ細胞[TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980)];サル腎細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL5 1);TRI細胞[Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68 (1982)];MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝癌株(Hep G2)が挙げられる。一実施形態では、本発明は、CHO細胞株の培養およびCHO細胞株由来のポリペプチドの発現において使用される。具体的な実施形態では、CHO細胞株はDG44 CHO細胞株である。具体的な実施形態では、CHO細胞株はグルタミン合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。さらなる具体的な実施形態では、CHO細胞株は外来性グルタミン合成酵素遺伝子を発現する。[例えばPorter et al, Biotechnol. Prog. 26(5):1446-54 (2010)を参照のこと]。さらに他の実施形態では、CHO細胞株はニューブラスチン抗体またはその断片をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。
加えて、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する多くの市販されているおよび市販されていないハイブリドーマ細胞株が本発明に従って利用され得る。当業者であれば、ハイブリドーマ細胞株が種々の栄養要件を有し得ること、ならびに/または最適な増殖およびポリペプチドもしくはタンパク質発現のために種々の培養条件を必要とし得ることを理解し、必要に応じて条件を修正することができるだろう。
本発明の真核細胞は、高レベルのタンパク質もしくはポリペプチドを産生するように、または大量のウイルスを産生するように選択または操作することができる。多くの場合、細胞は、例えば、目的のタンパク質もしくはポリペプチドをコードする遺伝子の導入、および/または目的のポリペプチドをコードする遺伝子(内在性であれ導入されたものであれ)の発現を調節する制御エレメントの導入によって、高レベルのタンパク質を産生するように遺伝子操作される。
真核細胞はまた、培養において延長された時間期間生存するように選択または操作することができる(eau)。例えば、細胞は、延長された生存を細胞に付与する1つまたは複数のポリペプチドを発現させるように遺伝子操作することができる。一実施形態では、真核細胞は、Bcl-2ポリペプチドまたはその変異体をコードする導入遺伝子を含む。例えば米国第7,785,880号を参照のこと。具体的な実施形態では、細胞はbol-xLポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例えばChiang GG, Sisk WP. 2005. Biotechnol. Bioeng. 91(7):779-792を参照のこと。
真核細胞はまた、翻訳後修飾経路を改変するように選択または操作することができる。一実施形態では、細胞は、タンパク質グリコシル化経路を改変するように選択または操作される。具体的な実施形態では、細胞は、非グリコシル化タンパク質、例えば非グリコシル化組換え抗体を発現させるように選択または操作される。別の具体的な実施形態では、細胞は、非フコシル化タンパク質、例えば非フコシル化組換え抗体を発現させるように選択または操作される。
真核細胞はまた、無血清培地において培養することを可能にするように選択または操作することができる。
培地
本発明の細胞培養は、培養される特定の細胞に好適な任意の培地において調製される。一部の実施形態では、培地は、例えば、無機塩、炭水化物(例えば糖、例えば、グルコース、ガラクトース、マルトース、またはフルクトース)、アミノ酸、ビタミン[例えば、ビタミンB群(例えばB12)、ビタミンA、ビタミンE、リボフラビン、チアミン、およびビオチン];脂肪酸および脂質(例えばコレステロールおよびステロイド)、タンパク質およびペプチド(例えば、アルブミン、トランスフェリン、フィブロネクチン、およびフェツイン)、血清(例えば、アルブミン、増殖因子、および増殖阻害薬を含む組成物、例えば、ウシ胎児血清、新生仔ウシ血清、およびウマ血清)、微量元素(例えば、亜鉛、銅、セレン、およびトリカルボン酸中間体)、加水分解物(植物または動物源に由来する加水分解タンパク質)、ならびにそれらの組合せを含有する。市販の培地、例えばHam’s F10(Sigma)、最小必須培地[(MEM)、Sigma]、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地[(DMEM)、Sigma]は例示的な栄養溶液である。加えて、これらの全ての開示が参照によって本明細書に組み込まれる、Ham and Wallace, (1979) Meth. Enzymol. 58:44、Barnes and Sato, (1980) Anal. Biochem. 102:255、米国特許第4,767,704号、同第4,657,866号、同第4,927,762号、同第5,122,469号、または同第4,560,655号、国際公開第WO90/03430号、および同第WO87/00195号に記載されている培地のいずれも培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれにも、ホルモンおよび/または他の増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、もしくは表皮増殖因子)、塩(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシン)、微量元素(通例マイクロモル範囲の最終濃度において存在する無機化合物として定義される)、脂質(例えばリノール酸または他の脂肪酸)およびその好適な担体、ならびにグルコースまたは相当するエネルギー源を必要に応じて補充することができる。一部の実施形態では、栄養培地は、無血清培地、無タンパク質培地、または合成培地である。任意の他の必要な補助物質もまた、当業者に公知であり得る適切な濃度において含まれ得る。
一実施形態では、哺乳動物宿主細胞はCHO細胞であり、好適な培地は、修正濃度の一部の構成成分、例えば、アミノ酸、塩、糖、およびビタミンを含有し、グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジン;組換えヒトインスリン、加水分解ペプトン、例えばPrimatone HSもしくはPrimatone RL(Sheffield、England)、または均等物;細胞保護剤、例えばPluronic F68またはその均等物のpluronicポリオール;ゲンタマイシン;ならびに微量元素を含有してもよい、基礎培地構成成分、例えばDMEM/HAM F-12に基づく製剤(DMEMおよびHAM F12培地の組成に関しては、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas, Sixth Edition, 1988, pages 346-349における培養培地製剤を参照のこと)を含有する。
本発明は、本明細書に記載される他の培養工程に従って使用される場合に、増加した乳酸およびアンモニウム産生を引き起こし得る培養における代謝不均衡を最小化するか、防止するか、または逆転する多様な培地製剤を提供する。
代謝均衡、細胞増殖および/もしくは生存率、またはポリペプチドもしくはタンパク質の発現に対して有益な効果を有することが示されている本発明の培地製剤は、硫酸デキストランを含む。当業者であれば、本発明の培地製剤が限定培地と非限定培地の両方を包含することを理解するだろう。
細胞培養プロセス
タンパク質またはポリペプチドの生産のための哺乳動物細胞を回分培養および流加培養によって調製する様々な方法は当技術分野において周知である。発現を達成するのに十分な核酸(典型的には、目的のポリペプチドまたはタンパク質をコードする遺伝子と、任意の作動可能に連結した遺伝子制御エレメントとを含有するベクター)は、多くの周知の技法によって宿主細胞株に導入することができる。典型的には、細胞は、どの宿主細胞が実際にベクターを取り込み、目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現するかを決定するためにスクリーニングされる。哺乳動物細胞によって発現された目的の特定のポリペプチドまたはタンパク質を検出する伝統的な方法としては、これらに限定されないが、免疫組織化学、免疫沈降、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、SDS-PAGE、ウェスタンブロット、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技法、生物活性アッセイ、およびアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。当業者であれば、発現したポリペプチドまたはタンパク質を検出するための他の適切な技法を認識しているだろう。複数の宿主細胞が目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する場合、列挙した技法の一部または全てが、どの細胞が最も高いレベルのポリペプチドまたはタンパク質を発現するかを決定するために使用され得る。
目的のポリペプチドまたはタンパク質を発現する細胞が同定されたら、細胞は培養において、当業者に周知の多様な方法のいずれかによって増幅される。目的のポリペプチドを発現する細胞は典型的には、細胞の生存、増殖、および生存率に資する温度および培地において増殖させることによって増幅される。初期培養容量はいかなるサイズであってもよいが、多くの場合、目的のポリペプチドまたはタンパク質の最終生産において使用される生産バイオリアクターの培養容量よりも小さく、細胞はしばしば、生産バイオリアクターに播種する前に漸増容量のバイオリアクターにおいて数回継代される。細胞培養は、培地の酸素化および栄養素の細胞への分散を向上させるために攪拌または振盪することができる。代替的にまたは付加的に、当技術分野において周知の特別な気体注入デバイスが、培養の酸素化を向上および制御するために使用され得る。本発明においては、当業者であれば、pH、温度、酸素化等を含むがこれらに限定されないバイオリアクターのある特定の内部状態を制御または調節することが有益であり得ることを理解するだろう。
本発明の方法に有用な細胞密度は当業者によって選択することができる。本発明においては、細胞密度は1培養容量当たり1個の細胞と低くてもよい。本発明の一部の実施形態では、出発細胞密度は、1mL当たり約2×10個の生存細胞~1mL当たり約2×10、2×10、2×10、2×10、5×10、または10×10個の生存細胞、およびそれ以上の範囲であり得る。
本発明においては、細胞培養サイズは、ポリペプチドの生産に適切ないかなる容量であってもよい。一実施形態では、細胞培養の容量は少なくとも500リットルである。他の実施形態では、容量または生産細胞培養は、10、50、100、250、1000、2000、2500、5000、8000、10,000、もしくは12,000リットル以上、またはそれらの間の任意の容量である。例えば、細胞培養は、10~5,000リットル、10~10,000リットル、10~15,000リットル、50~5,000リットル、50~10,000リットル、または50~15,000リットル、100~5,000リットル、100~10,000リットル、100~15,000リットル、500~5,000リットル、500~10,000リットル、500~15,000リットル、1,000~5,000リットル、1,000~10,000リットル、または1,000~15,000リットルであり得る。あるいは、細胞培養は、約500リットル~約30,000リットル、約500リットル~約20,000リットル、約500リットル~約10,000リットル、約500リットル~約5,000リットル、約1,000リットル~約30,000リットル、約2,000リットル~約30,000リットル、約3,000リットル~約30,000リットル、約5,000リットル~約30,000リットル、もしくは約10,000リットル~約30,000リットルの間であり得るか、または細胞培養は、少なくとも約500リットル、少なくとも約1,000リットル、少なくとも約2,000リットル、少なくとも約3,000リットル、少なくとも約5,000リットル、少なくとも約10,000リットル、少なくとも約15,000リットル、もしくは少なくとも約20,000リットルであり得る。
当業者であれば、本発明を実施することにおける使用に好適な培養サイズを認識しており、選択することができるだろう。培養のための生産バイオリアクターは、生産されるポリペプチドまたはタンパク質の発現も安定性も妨げない、細胞増殖および生存率に資する任意の材料から構築することができる。
細胞培養の温度は、主に細胞培養が生存したままとなる温度の範囲に基づいて選択することができる。例えば、最初の増殖期の間、CHO細胞は37℃において良好に増殖する。全般に、大半の哺乳動物細胞は約25℃~42℃の範囲内において良好に増殖する。
本発明の一実施形態では、最初の増殖期の温度は、単一かつ一定の温度に維持される。別の実施形態では、最初の増殖期の温度は、ある範囲内の温度に維持される。例えば、温度は、最初の増殖期の間、一様に上昇または低下させることができる。あるいは、温度は、最初の増殖期の間、何度も別々の量上昇または低下させることができる。当業者であれば、単一の温度が使用されるべきかまたは複数の温度が使用されるべきか、および温度が一様に調整されるべきかまたは別々の量によって調整されるべきかを決定することができるだろう。
細胞は、最初の増殖期の間、実施者の必要性および細胞それ自体の要件に応じてより多いまたはより少ない量の時間増殖することができる。一実施形態では、細胞は、干渉されずに増殖させる場合に最終的に到達し得る最大生存細胞密度の所与の百分率である生存細胞密度を達成するのに十分な時間期間増殖する。例えば、細胞は、最大生存細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセントの所望の生存細胞密度を達成するのに十分な時間期間増殖することができる。
別の実施形態では、細胞は、定義された時間期間増殖させる。例えば、細胞培養の出発濃度、細胞が増殖する温度、および細胞の内的増加率に応じて、細胞は0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間以上増殖することができる。場合によっては、細胞は1か月以上増殖させることができる。一実施形態では、増殖期は、約1日~約20日、約1日~約15日、約1日~約14日、約1日~約13日、約1日~約12日、約1日~約11日、約1日~約10日、約1日~約9日、約1日~約8日、約1日~約7日、約1日~約6日、約1日~約5日、約1日~約4日、約1日~約3日、約2日(clay)~約15日、約3日~約15日、約4日~約15日、約5日~約15日、約6日~約15日、約7日~約15日、約8日~約15日、約9日~約15日、約10日~約15日、約2日~約20日、約3日~約20日、約4日~約20日、約5日~約20日、約6日~約20日、約7日~約20日、約8日~約20日、約9日~約20日、約10日~約20日、または約10日~約20日の間である。別の実施形態では、増殖期は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約11日、少なくとも約12日、少なくとも約15日、または少なくとも約20日である。さらなる実施形態では、増殖期は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約15日、または約20日である。
細胞は、シードバイオリアクターにおける最初の増殖期温度での増殖が十分であり、接種時の生産バイオリアクターにおける生存細胞密度がすでに最大生存細胞密度の所望の百分率である場合、生産バイオリアクターにおいて0日間増殖し得る。本発明の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質生産要件および細胞それ自体の必要性に応じて最初の増殖期の持続時間を選択することができるだろう。
細胞培養は、酸素化および栄養素の細胞への分散を向上させるために、最初の培養期の間攪拌または振盪することができる。本発明においては、当業者であれば、pH、温度、酸素化等を含むがこれらに限定されない最初の増殖期の間のバイオリアクターのある特定の内部状態を制御または調節することが有益であり得ることを理解するだろう。例えば、pHは適切な量の酸または塩基を供給することによって制御することができ、酸素化は当技術分野において周知の気体注入デバイスを用いて制御することができる。
一実施形態では、最初の増殖期の終了時に、少なくとも1つの培養条件が転換されて、2組目の培養条件が適用される。培養条件の転換は、細胞培養の温度、pH、重量モル浸透圧濃度、または化学誘導剤レベルの変化によって遂行することができる。一実施形態では、培養条件は培養の温度を転換することによって転換される。
培養の温度を転換する場合、温度転換は比較的漸進的であってもよい。例えば、温度変化を完了させるのに数時間または数日かけてもよい。あるいは、温度転換は比較的急激であってもよい。例えば、温度変化は数時間未満で完了させてもよい。ポリペプチドまたはタンパク質の商業的な大規模生産において標準的であるような適切な生産および制御機器を考慮すると、温度変化は1時間未満以内に完了させることさえできる。
その後の増殖期における細胞培養の温度は、主に細胞培養が生存したままとなり、商業的に妥当なレベルの組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する温度の範囲に基づいて選択することができる。全般に、大半の哺乳動物細胞は、約25℃~42℃の範囲内において生存したままとなり、商業的に妥当なレベルの組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する。一実施形態では、哺乳動物細胞は、約25℃~35℃の範囲内において生存したままとなり、商業的に妥当なレベルの組換えポリペプチドまたはタンパク質を発現する。当業者は、細胞の必要性および実施者の生産要件に応じて、細胞を増殖させるのに適切な1つまたは複数の温度を選択することができる。
本発明においては、細胞培養の条件が上で議論されたように転換されたら、細胞培養はその後の生産期の間、細胞培養の生存および生存率に資する、商業的に妥当なレベルの所望のポリペプチドまたはタンパク質の発現に適切な2組目の培養条件下に維持される。
上で議論されたように、培養は、温度、pH、重量モル浸透圧濃度、および酪酸ナトリウムレベルを含むがこれらに限定されないいくつかの培養条件のうちの1つまたは複数を転換することによって転換することができる。一実施形態では、培養の温度が転換される。この実施形態では、その後の生産期の間、培養は、最初の増殖期の温度または温度範囲よりも低い温度または温度範囲に維持される。例えば、その後の生産期の間、CHO細胞は25℃~35℃の範囲内において組換えポリペプチドおよびタンパク質を良好に発現する。
本発明においては、細胞は、所望の細胞密度または生産力価に到達するまでその後の生産期に維持することができる。一実施形態では、細胞は、組換えポリペプチドまたはタンパク質に対する力価が最大に到達するまでその後の生産期に維持される。他の実施形態では、培養は、実施者の生産要件または細胞それ自体の必要性に応じてこの時点の前に採取することができる。例えば、細胞は、最大生存細胞密度の1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または99パーセントの生存細胞密度を達成するのに十分な時間期間維持することができる。場合によっては、生存細胞密度を最大に到達させ、次いで生存細胞密度をあるレベルまで低下させた後に培養を採取することが望ましい。極端な例では、生存細胞密度を0に接近または到達させた後に培養を採取することが望ましい場合がある。
本発明の別の実施形態では、細胞は、その後の生産期の間、定義された時間期間増殖させる。例えば、その後の増殖期の開始時の細胞培養の濃度、細胞が増殖する温度、および細胞の内的増加率に応じて、細胞は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日以上増殖することができる。場合によっては、細胞は1か月以上増殖させることができる。本発明の実施者は、ポリペプチドまたはタンパク質生産要件および細胞それ自体の必要性に応じてその後の生産期の持続時間を選択することができるだろう。
ある特定の場合では、増殖期および/またはその後の生産期の間の細胞培養に、細胞によって枯渇または代謝された栄養素または他の培地構成成分を補充することが有益または必要であり得る。例えば、細胞培養に、枯渇したことが観察された栄養素または他の培地構成成分を補充することは好都合であり得る。代替的にまたは付加的に、その後の生産期の前の細胞培養に補充することは有益または必要であり得る。非限定的な例として、細胞培養に、ホルモンおよび/もしくは他の増殖因子、特定のイオン(例えば、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド、微量元素(通例非常に低い最終濃度において存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、またはグルコースもしくは他のエネルギー源を補充することは有益または必要であり得る。
アミノ酸を含むこれらの補助構成成分は、全てを一度に細胞培養に添加しても、一連の添加において細胞培養に提供してもよい。本発明の一実施形態では、補助構成成分は比例量において複数回細胞培養に提供される。別の実施形態では、ある特定の補助構成成分のみを最初に提供し、後の時点において残りの構成成分を提供することが望ましい場合がある。本発明のさらに別の実施形態では、細胞培養にはこれらの補助構成成分が継続的に供給される。
本発明においては、細胞培養に添加される総容量は、最小量に最適に保たれるべきである。例えば、細胞培養に添加される補助構成成分を含有する培地または溶液の総容量は、補助構成成分を提供する前の細胞培養の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、または50%の容量であり得る。
細胞培養は、酸素化および栄養素の細胞への分散を向上させるために、その後の生産期の間攪拌または振盪することができる。本発明においては、当業者であれば、pH、温度、酸素化等を含むがこれらに限定されないその後の増殖期の間のバイオリアクターのある特定の内部状態を制御または調節することが有益であり得ることを理解するだろう。例えば、pHは適切な量の酸または塩基を供給することによって制御することができ、酸素化は当技術分野において周知の気体注入デバイスを用いて制御することができる。
本発明のある特定の実施形態では、実施者は、細胞培養を増殖させる特定の状態を定期的にモニタリングすることが有益または必要であり得ることを見出すことができる。細胞培養状態をモニタリングすることは、実施者が、細胞培養が最適以下のレベルの組換えポリペプチドもしくはタンパク質を生産しているか否か、または培養が最適以下の生産期に移ろうとしているか否かを決定することを可能にする。
ある特定の細胞培養状態をモニタリングするために、培養の少ないアリコートを分析のために取り出すことが必要であり得る。当業者であれば、そのような取出しが細胞培養に汚染を潜在的に導入するおそれがあることを理解し、そのような汚染のリスクを最小限にするように適切に注意するだろう。
非限定的な例として、温度、pH、細胞密度、細胞生存率、統合生存細胞密度、乳酸レベル、アンモニウムレベル、容積モル浸透圧濃度、または発現したポリペプチドもしくはタンパク質の力価をモニタリングすることが有益または必要であり得る。当業者がこれらの状態を測定することを可能にし得る数多くの技法が当技術分野において周知である。例えば、細胞密度は、血球計数器、コールターカウンター、または細胞密度検査(CEDEX)を使用して測定することができる。生存細胞密度は、トリパンブルーを用いて培養試料を染色することによって決定することができる。死細胞のみがトリパンブルーを取り込むため、生存細胞密度は、細胞の総数を計数し、色素を取り込む細胞の数を細胞の総数で割り、逆数を得ることによって決定することができる。HPLCは、乳酸、アンモニウム、または発現したポリペプチドもしくはタンパク質のレベルを決定するために使用することができる。あるいは、発現したポリペプチドまたはタンパク質のレベルは、標準的な分子生物学技法、例えば、SDS-PAGEゲルのクーマシー染色、ウェスタンブロッティング、ブラッドフォードアッセイ、ローリーアッセイ、ビウレットアッセイ、およびUV吸光度によって決定することができる。リン酸化およびグリコシル化を含む、発現したポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾をモニタリングすることもまた有益または必要であり得る。
実施者はまた、例えば、細胞培養におけるグルコース、乳酸、アンモニウム、およびアミノ酸濃度をモニタリングすることによって、ならびに細胞培養の酸素産生または二酸化炭素産生をモニタリングすることによっても細胞培養の代謝状況をモニタリングすることができる。例えば、細胞培養状態は、NOVA Bioprofile100または400(NOVA Biomedical、WA)を使用することによって分析することができる。加えて、実施者は、ミトコンドリアの活性をモニタリングすることによって細胞培養の代謝状態をモニタリングすることができる。実施形態では、ミトコンドリア活性は、ローダミン123を使用してミトコンドリア膜電位をモニタリングすることによってモニタリングすることができる。Johnson et al., 1980. P.N.A.S. 77(2):990-994。
発現したポリペプチドの単離
全般に、本発明に従って発現したタンパク質またはポリペプチドを単離および/または精製することは典型的には望ましいと考えられる。一実施形態では、発現したポリペプチドまたはタンパク質は培地に分泌され、したがって細胞および他の固体は、精製プロセスの第1の工程として、例えば遠心分離または濾過によって除去することができる。
あるいは、発現したポリペプチドは宿主細胞の表面に結合している場合がある。この実施形態では、培地が除去され、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞は、精製プロセスの第1の工程として溶解される。哺乳動物宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破砕および高pH条件への曝露を含む当業者に周知の多くの手段によって達成することができる。
ポリペプチドは、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、サイズ排除、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、もしくは溶解度差(differential solubility)、エタノール沈殿を含むがこれらに限定されない標準的な方法、またはタンパク質の精製のために利用可能な任意の他の技法によって単離および精製することができる[例えば、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる、Scopes, (eds.), Protein Expression: A Practical Approach. Oxford Univ. Press, 1999、およびDeutscher, M, P., Simon, M.I., Abelson, J. N. (eds.). Guide to Protein Purification: Meth. Enzymol. 182), Academic Press, 1997を参照のこと。特に免疫アフィニティークロマトグラフィーの場合、タンパク質は、そのタンパク質に対して産生され、固定担体に固定された抗体を含むアフィニティーカラムに結合させることによって単離することができる。あるいは、アフィニティータグ、例えばインフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼは、標準的な組換え技法によってタンパク質に付着して、適切なアフィニティーカラムを通過することによる容易な精製を可能にすることができる。プロテアーゼ阻害薬、例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチン、またはアプロチニンは、精製プロセスの間のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減または排除するために任意のまたは全ての段階において添加することができる。プロテアーゼ阻害薬は、発現したポリペプチドまたはタンパク質を単離および精製するために細胞が溶解されなければならない場合に特に所望される。当業者であれば、正確な精製技法が精製されるポリペプチドまたはタンパク質の特徴、ポリペプチドまたはタンパク質が発現する細胞の特徴、および細胞が増殖した培地の組成に応じて変動し得ることを理解するだろう。
医薬組成物
治療目的のポリペプチド、例えば抗体もしくはその断片、またはウイルスは、例えば障害または疾患を処置または予防するために、対象への投与のための医薬組成物として製剤化することができる。
典型的には、医薬組成物は薬学的に許容される担体を含む。本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤等が含まれる。組成物としては、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を挙げることができる[例えばBerge, S. M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと]。一実施形態では、医薬組成物は本明細書に記載される方法に従って生産されるウイルスを含む免疫原性組成物である。
医薬製剤は十分に確立した技術であり、例えば、Gennaro (ed.), Remington. The Science and Practice of Pharmacy, 20th ed., Lippincott, Williams & Wilkins (2000) (ISBN: 0683306472)、Ansel et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, 7th Ed., Lippincott Williams & Wilkins Publishers (1999) (ISBN: 0683305727)、およびKibbe (ed,), Handbook of Pharmaceutical. Excipients American Pharmaceutical Association, 3rd Ed. (2000) (ISBN: 091733096X)にさらに記載されている。
医薬組成物は多様な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体、および固体剤形、例えば、液体液剤(例えば注射用および注入用液剤)、分散体または懸濁剤、錠剤、丸剤、散剤、リポソーム、ならびに坐剤が含まれる。形態は、所期の投与方法および治療用途に依存し得る。典型的には、本明細書に記載される薬剤のための組成物は注射用または注入用液剤の形態である。
一実施形態では、抗体は賦形剤物質、例えば、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸二水素ナトリウム、および安定剤と共に製剤化される。抗体は、例えば好適な濃度の緩衝溶液において提供することができ、2~8℃において保管することができる。
そのような組成物は、非経口方法(例えば、静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)によって投与することができる。「非経口投与」および「非経口投与する」という語句は、本明細書において使用する場合、通例は注射による、経腸および局所投与以外の投与方法を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内注射および注入を含む。
組成物は、液剤、マイクロエマルション、分散体、リポソーム、または高濃度での安定な保管に好適な他の秩序構造として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要とされる量の本明細書に記載される薬剤を上に列挙した成分のうちの1つまたはそれらの組合せを含有する適切な溶媒に組み込み、必要とされる場合、それに続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。全体として、分散体は、本明細書に記載される薬剤を基本的な分散媒と上に列挙した成分からの必要とされる他の成分とを含有する滅菌媒体に組み込むことによって調製される。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉末の場合、調製の方法は、本明細書に記載される薬剤と、以前に滅菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分との粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥である。液剤の適した流動性は、例えば、レシチン等のコーティング剤の使用、分散体の場合に必要とされる粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の長期にわたる吸収は、組成物に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって実現することができる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、化合物を急速な放出から保護することができる担体、例えば埋込剤およびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む放出制御型製剤と共に調製することができる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用され得る。そのような製剤の調製のための多くの方法は特許査定されているかまたは全体として公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York (1978)を参照のこと。
前述の記載は代表的なものに過ぎないと理解されるべきであり、限定することを意図していない。本発明およびさらなる追加の出願を実装するための代替的な方法および材料は、当業者には明らかであると考えられ、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
本発明の実施は、別段の指示がない限り、当技術分野の技術の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を用いることができる。そのような技法は文献において完全に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., Sambrook et al., ed., Cold Spring Harbor Laboratory. Press (1989)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., ed., Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1992)、DNA Cloning, D. N. Glover Volumes I and II (1985)、Oligonucleotide Synthesis, M. J. Gait ed., (1984)、Mullisら、米国特許第4,683,195号、Nucleic Acid Hybridization, B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1984)、Transcription and Translation:B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1984)、Culture Of Animal Cells, R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., (1987)、Immobilized Cells And Enzymes, IRL Press, (1986)、B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984)、論文Methods In Enzymology, Academic Press, Inc., N.Y,、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory (1987)、Methods In Enzymology, Vols. 154 and 155 (Wu et al. eds.)、Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology, Mayer and Walker, eds., Academic Press, London (1987)、Handbook Of Experimental Immunology Volumes-I-IV, D. M, Weir and C. C, Blackwell, eds., (1986)、Manipulating the Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1986)、およびAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)を参照のこと。
抗体操作の一般原則は、Antibody Engineering, 2nd edition, C.A.K. Borrebaeck, Ed., Oxford Univ. Press (1995)に記載されている。タンパク質操作の一般原則は、Protein Engineering, A Practical Approach, Rickwood, D., et al., Eds., IRL Press at Oxford Univ, Press, Oxford, Eng. (1995)に記載されている。抗体および抗体-ハプテン結合の一般原則は、Nisonoff, A., Molecular Immunology, 2nd ed., Sinauer Associates, Sunderland, MA (1984)、およびSteward, M,W., Antibodies, Their Structure and Function, Chapman and Hall, New York, NY (1984)に記載されている。加えて、当技術分野において公知であり、具体的に記載されていない免疫学における標準的な方法は全体として、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York、Stites et al., (eds), Basic and Clinical-Immunology (8th ed.), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、およびMishell and Shiigi (eds), Selected Methods in Cellular Immunology, W.H. Freeman and Co., New York (1980)に示されている。
免疫学の一般原則を記載している標準的な参考文献としては、Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, New York、Klein, J., Immunology: The Science of Self-Nonself Discrimination, John Wiley & Sons, New York (1982)、Kennett, R., et al., eds., Monoclonal Antibodies, Hybridoma: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, New York (1980)、Campbell, A., "Monoclonal Antibody Technology" in Burden, R., et al., eds., Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 13, Elsevier Amsterdam (1984)、Kuby Immunology 4th ed, Ed. Richard A. Goldsby, Thomas J..Kindt and Barbara A. Osborne, H. Freemand & Co, (2000)、Roitt, I., Brostoff, J. and Male D., Immunology 6th ed, London: Mosby (2001)、Abbas A. Abul, A. and Lichtman, A., Cellular and Molecular Immunology Ed. 5, Elsevier Health Sciences Division (2005)、Kontermann and Dubel, Antibody Engineering, Springer Verlan (2001)、Sambrook and Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Mammal, Cold Spring Harbor Press (2001)、Lewin, Genes VIII, Prentice Hall (2003)、Harlow and Lane, Antibodies; A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (1988)、Dieffenbach and Dveksler, PCR Primer Cold Spring Harbor Press (2003)が挙げられる。
上に引用した全ての参考文献および本明細書に引用した全ての参考文献はそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
次に、本開示を例証する具体的な実施例を参照する。実施例は例示的な実施形態を例証するために提供されており、それによって本開示の範囲の限定が意図されてはいないことが理解されるべきである。
実施例1
硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の添加は乳酸レベルを維持しアンモニウム産生を減少させる
材料および方法
細胞株:この研究において使用した細胞株はニューブラスチンポリペプチドを産生した。細胞株は、無血清培地において増殖するように適合されているDG44を使用して構築した(Prentice, 2007)。
培養培地:この実験のために使用した基礎培地および供給培地はどちらも、Huang, 2010およびKshirsagar, 2012に以前に記載された、独自の研究室内培地である。どちらの培地も合成培地である。簡潔に述べると、基礎培地CM3を全ての維持段階のために使用した。追加のクエン酸鉄および硫酸デキストランを含む、CM3V2と呼ばれる改変型のCNDを生産段階のために使用した。この培地は、哺乳動物細胞の堅牢な培養のために必要なグルコース、アミノ酸、ビタミン、無機質、および微量元素を含有する。供給培地は、増殖および生産性を最大化するために最適化された栄養含量を含む、より濃縮した型の基礎培地である。乳酸は供給培地には存在しない。また、クエン酸は供給培地にキレート剤として含まれるが2.4InMクエン酸において供給培地に存在する。基礎培地と供給培地の両方はクエン酸鉄を含んだ。硫酸デキストランは供給培地に0~10g/L硫酸デキストランにおいて含まれた。
細胞培養方法;細胞を以前の報告と同様に解凍および維持した[Kshirsagar, et al. 2012 Biotechnol Bioeng、Huang, et al., Biotechnol. Prog 26(5):1400-1410 (2010)]。解凍および移行(passing)のための基礎培地は以前の報告におけるものと同じであった(Kshirsagar/Huang)。簡潔に述べると、細胞を、1Lの作業容量を含む3L振盪フラスコ(Corning Life Sciences、Corning、NY)において解凍および維持し、2日ごとに継代した。維持培養のためにインキュベーターを36℃、5%COに設定した。
バイオリアクター培養条件:流加培養を、2~2.5Lの間の初期作業容量を含む、Finesse TruBio DV制御プログラム(Finesse Solutions、San Jose、CA)を使用するSLガラスApplikon容器において実施した。バイオリアクターに細胞4×105個/mlの一定の播種密度において播種した。濃縮した供給培地を3、5日目に送達し、毎日採取を完遂した。温度を36℃に維持し、pHを1M炭酸ナトリウムまたは二酸化炭素のいずれかの添加によって7.1+/-0.2に制御した。溶存酸素を、ドリル穴空気注入装置を使用する空気および酸素注入によって30%に維持した。攪拌を培養全体にわたって200~400RPMの間に維持して総気体流を限定する一方で、オーバーレイを0.005~0.04vvmの間に維持した。
オフライン分析:試料を大半の日において得て、多様な機器を用いて分析した。細胞密度および生存率を、Cedex(Roche Innovatis AG、Germany)を使用するトリパンブルー排除の標準的な技法を使用して測定した。グルコース、乳酸、アンモニウム、カリウム、およびナトリウムデータを、NOVA Bioprofile100または400(NOVA Biomedical、WA)を使用して収集した。
細胞培養における乳酸およびアンモニウムレベルに対する硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の効果を検討するために、0.25g/L硫酸デキストランおよび2.3mMクエン酸鉄を生産培地に0日目に添加した。場合によっては、追加の硫酸デキストランを提供しない。場合によっては、追加の硫酸デキストランを、供給を介して添加する。
CM3基礎培地を使用する902では、乳酸レベルは0日目に約0.5g/Lから始まり、3日目に約2~2.5g/Lにおいてピークに達し、次いで10日目~14日目に約0.5g/Lまで急速に減少した(図1A)。次いで乳酸レベルは再びわずかに増加し、15日目~17日目の間、約0.5~1/Lに留まった。硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の存在下においてCM3v2基礎培地を使用した場合、902培地における乳酸レベルは、3日目~9日目の間、約2~2.5g/Lに良好に維持され、次いで最終的に17日目に約1g/Lまで減少した(図1A)。同様に、CM3基礎培地を使用したN65培養における乳酸レベルは5日目に約2.5g/Lにおいてピークに達し、次いで14日目に約1gEまで急速に減少した。しかしながら、硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の存在は、N65培地における乳酸レベルを5日目~17日目の間、約2.5~3g/Lにほとんど持続し、7日目~16日目に非常にわずかな減少を伴うのみであった(図1A)。
細胞培養におけるアンモニウムレベル(leveEq)は、硫酸デキストランまたはクエン酸鉄を含むかまたは含まない培地において0日目に約0.5miviから始まった(図1B)。CM3基礎培地を使用する902では、アンモニウムレベルは9日目に約3mMまでわずかに増加し、次いで13日目に約8mMまで劇的に上昇し、17日目に約9mMに到達した。硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の存在下では、902培地におけるアンモニウム産生は0日目~17日目に有意に低減し、9日目~14日目に約1g/L~約3g/Lの間のアンモニウム産生であった(図1B)。0/13基礎培地を使用するN65では、アンモニウムレベルは14日目に0.5mMからほぼ4mMまで増加し、次いで17日目に約2mMまでわずかに減少した。硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の存在下では、N65培地におけるアンモニウム産生は0日目~17日目に2niM以下に良好に維持された(図1B)。
したがって、硫酸デキストランおよびクエン酸鉄の添加は細胞培養における乳酸レベルを維持しアンモニウム産生を減少させることができる。
実施例2
硫酸デキストランの添加は振盪フラスコ維持培養の生存率を安定化させる
振盪フラスコ維持培養の生存率に対する硫酸デキストランの効果を検討するために、0.1g/L硫酸デキストランを、硫酸デキストランを欠く市販の培地、およびFIEK293培養のために最適化された再平衡型のCM3であるCM3 HEKv1に添加した。0.1g/L硫酸デキストランを含む培地における生存細胞密度は、硫酸デキストランを含まない培地における生存細胞密度に匹敵したが(図2A)、硫酸デキストランの存在は生存細胞の百分率を大きく増加させた(図2B)。硫酸デキストランを含まない維持培養における細胞生存率は、0日目~32日目まで頻発する突然の減少を経て約80%~約95%の間で劇的に変動したが、0.1g/L硫酸デキストランの存在は全ての時間点において95%超の細胞生存の百分率を効果的に維持した(図2B)。したがって、硫酸デキストランの添加は振盪フラスコ維持培養の生存率を安定化させることができる。
細胞株:この研究において使用した細胞株は第VIII因子ポリペプチドを産生した。細胞株は、無血清培地において増殖するように適合されているHEK293を使用して構築した。
培養培地:この実験のために使用した基礎培地および供給培地はどちらも、再平衡アミノ酸および塩濃度を有する、CM3.1-.ILK.ylと命名された、Huang(2010)およびKshirsagar(2012)に以前に記載された独自の研究室内培地の改変型である。どちらの培地も合成培地である。簡潔に述べると、基礎培地CM3 I-IEKvIを、別段の指摘がない限り、全ての維持段階のために使用した。硫酸デキストランを補充した改変型のCM3 HEKv1を維持培養と生産培養の両方において直接比較(direct compulsion)のために使用した。この培地は、哺乳動物細胞の堅牢な培養のために必要なグルコース、アミノ酸、ビタミン、無機質、および微量元素を含有する。供給培地は、増殖および生産性を最大化するために最適化された栄養含量を含む、より濃縮した型の基礎培地である。乳酸は供給培地には存在しない。硫酸デキストランは供給培地には含まれなかった。
細胞培養方法:細胞を以前の報告と同様に解凍および維持した[Kshirsagar, et al, 2012 Biotechnol Bioeng、Huang, et al, Biotechnology. Progress 26(5):1400-1410 (2010)]。解凍および移行のための基礎培地であるCM3 HEKv1は、再平衡アミノ酸および塩濃度を有する、以前の報告において使用された改変型であった(Kshirsagar/Huang)。簡潔に述べると、細胞を、0.2Lの作業容量を含む1L振盪フラスコ(Corning Life Sciences、Coming、NY)において解凍および維持し、2~3日ごとに継代した。維持培養のためにインキュベーターを37℃、10%COにて制御した。
オフライン分析:試料を大半の日において得て、多様な機器を用いて分析した。細胞密度および生存率を、Cedex(Roche Imiovatis AG、Germany)を使用するトリパンブルー排除の標準的な技法を使用して測定した。グルコース、乳酸、アンモニウム、カリウム、およびナトリウムデータを、NOVA Bioprofile100または400(NOVA Biomedical、WA)を使用して収集した。
実施例3
硫酸デキストランの添加はバイオリアクター接種材料系列培養の生存率を安定化させる
バイオリアクター接種材料系列培養の生存率に対する硫酸デキストランの効果を検討するために、0.1g/L硫酸デキストランをCM3 HEKv1に0日目に添加した。硫酸デキストランの存在は、生存細胞密度に影響を及ぼさなかったが(図3A)、バイオリアクター接種材料系列培養における生存細胞の百分率を効果的に維持した(図3B)。硫酸デキストランを含まない接種材料系列培養における細胞生存率は0日目の約85%から7日目に60%未満まで低減し、7日目以降は約60%~約75%の間であったが、0.1g/L硫酸デキストランの添加は細胞生存の百分率を全ての時間点において約95%に効果的に維持した3B)。したがって、硫酸デキストランの添加はバイオリアクター接種材料系列培養の生存率を安定化させることができる。
バイオリアクター培養条件:流加培養を、2~2.5Lの間の初期作業容量を含む、Finesse TruBio DV制御プログラム(Finesse Solutions、San Jose、CA)を使用する5LガラスApplikon容器において実施した(performed M)。バイオリアクターに細胞4×10個/mlの一定の播種密度において播種した。温度を37℃に維持し、pHを1M炭酸ナトリウムまたは二酸化炭素のいずれかの添加によって7.0.11-0.3に制御した。溶存酸素を、ドリル穴空気注入装置を使用する空気および酸素注入によって50%に維持した。攪拌を培養全体にわたって125RPMに維持して総気体流を限定する一方で、オーバーレイを0.005~0.04vvmの間に維持した。
実施例4
硫酸デキストラン含有接種材料は生産バイオリアクターにおける早期培養生存率を安定化させるのに十分であった
接種材料培養に含有された硫酸デキストランの量が生産バイオリアクターにおける細胞生存率を安定化させることができたか否かをさらに検討するために、バイオリアクター培養に0.1g/L硫酸デキストランを含有する接種材料培養を0日目に接種し、追加の硫酸デキストランはその後の供給培地に添加しなかった。生産バイオリアクター培養における硫酸デキストランの存在は、生存細胞密度と細胞生存率の両方を2日間以上安定化させることができた(図4A~4B)。硫酸デキストランを含有しないバイオリアクター培養では、生存細胞密度と細胞生存率の両方は12日目以降急激に減少したが、硫酸デキストランの存在はこの減少を14日目まで延期した(図4B)。加えて、硫酸デキストランの存在はまた、細胞生存率を、無硫酸デキストラン培養における生存率が80%~約90%の間で変動した0日目~6日目に95%超の細胞生存率を大いに維持した(図4B)。したがって、硫酸デキストラン含有接種材料を使用する生産培養の接種は早期培養生存率を安定化させるのに十分である。
バイオリアクター培養条件:流加培養を、2~2.5Lの間の初期作業容量を含む、Finesse TruBio DV制御プログラム(Finesse Solutions、San Jose、CA)を使用する5LガラスApplikon容器において実施した。バイオリアクターに細胞5×10個/mlの一定の播種密度において播種した。濃縮した供給培地を3日目に送達し、毎日採取を完遂した。温度を35.5℃に維持し、pHを1M炭酸ナトリウムまたは二酸化炭素のいずれかの添加によって7.2+1-0.1に制御した。溶存酸素を、ドリル穴空気注入装置を使用する空気および酸素注入によって30%に維持した。攪拌を培養全体にわたって200~400RPMの間に維持して総気体流を限定する一方で、オーバーレイを0.005~0.04vvmの間に維持した。
オフライン分析:試料を大半の日において得て、多様な機器を用いて分析した。細胞密度および生存率を、Cedex(Roche Innovatis AG、Germany)を使用するトリパンブルー排除の標準的な技法を使用して測定した。グルコース、乳酸、アンモニウム、カリウム、およびナトリウムデータを、NOVA Bioprofile100または400(NOVA Biomedical、WA)を使用して収集した。
実施例5
CHO細胞培養におけるニューブラスチン抗体の生産
マウスIgG1抗ニューブラスチンモノクローナル抗体の重および軽鎖をコードするDNA(図8)を、サイトメガロウイルス(CMV)中間体初期プロモーターを含有する真核発現ベクタープラスミドbXLTBR.9(pGV90)にクローニングした。クローニングに続いて、P3B3含有プラスミドのジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)欠損DG44iチャイニーズハムスター卵巣(CHO)宿主細胞[細胞株参照番号:13805-32(Thermo Fisher、Waltham、MA)[Urlaub and Chasin (1980) P.N.A.S 77:4216-4221]への、FuGene6トランスフェクション試薬(Roche Applied Sciences、Indianapolis IN)を使用するトランスフェクションを行った。
抗ニューブラスチン mAb産生クローナル細胞株(EAG2659/2660クローン8 DG44i)を、抗ヒトIgG1モノクローナル抗体を使用するフロー補助細胞選別(FACS)による、トランスフェクトされた細胞の高特異的生産性に関する反復スクリーニングによって同定した[Brezinsky et al., (2003)。
この細胞株を、40μg/ml G418(ゲンタマイシン、Thermo Fisher)を含有するネオマイシン選択培地またはCHO細胞培養に好適な増殖培地において増殖させた(例えば、36.5℃、5%COのシェーカーフラスコにおいて。細胞密度が細胞3×10および4×10個/mlに到達した時、細胞を生産容器に移し、細胞2×10個/mlを播種し、36.5℃、50%雰囲気の溶存酸素において、pHを7.4に設定して増殖させた(gown)。3日目に、細胞2×10個/mlの密度であり、容器に5%出発培養容量を供給した。5日目に、細胞4×10~5×10個/mlの密度であり、温度を28℃に低減した。生存細胞密度が約88%まで低減した時(18日目)、細胞を遠心分離によって採取した。馴化培地を1000g超にて20分間遠心分離し、次いで0.2μmフィルターを介して濾過して、細胞を除去し清澄化した。次いで、清澄化した培地をPrescale接線流6ft 30kmol.wt.カットオフカートリッジ(Millipore、Burington、MA)において約6倍に濃縮した。濃縮上清は-80℃において1年超保管することができる。
濃縮した細胞上清を3M NaCl/1.5Mグリシン、pH8.9[一本鎖DNA(SS)結合緩衝液、Thermo Fisher Scientific]と合わせ、組換えプロテインAセファロース(recProA Seph)4FFカラム(G.E.Lifesciences、Chicago、IL)に充填した。カラムを、5カラム容量(CV)の3M NaCl/25mM NaPO、pH8.6に対して約7CVのSS結合緩衝液を用いて洗浄した。次いで、タンパク質を、約3.5CVの2mm NaPO/100mM NaCl、pH2.8を用いてカラムから溶出した。次いで、プールした溶出液を20CVのPBS(20mM NaPO/50mM NaCl、pH7.1)に、各回最低8時間かけて4回透析した。透析後、物質を0.2μm滅菌濾過し、Superdex200(GE Healthcare Life Sciences、Chicago、IL)(1cm×20cm)におけるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分析した。図6は、抗体(P3B3)が158kのピークとして溶出したことを示す。ピーク物質を4%~20%SDS-PAGE(図7)において泳動し、内毒素に関して試験した。抗体の重(配列番号2)および軽(配列番号4)鎖のアミノ酸配列を図5B~5Dに示す。
均等物
本発明は、本発明の個々の態様の単一の例証として意図されている記載された具体的な実施形態による範囲に限定されるべきではなく、機能的に均等であるいかなる組成物または方法も本発明の範囲内にある。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な変更形態が、前述の記載および添付の図面から当業者には明らかとなるだろう。そのような変更形態は添付の特許請求の範囲の範囲内にあると意図される。

Claims (17)

  1. 細胞培養培地においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変された、それを発現する哺乳動物細胞株を含む細胞培養。
  2. ニューブラスチン抗体ポリペプチドが配列番号2またはその断片を含む、請求項1に記載の細胞培養。
  3. ニューブラスチン抗体ポリペプチドが配列番号4またはその断片を含む、請求項1に記載の細胞培養。
  4. ニューブラスチン抗体ポリペプチドが配列番号4またはその断片を含む、請求項3に記載の細胞培養。
  5. 哺乳動物細胞株がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である、請求項1に記載の細胞培養。
  6. 細胞が、無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地において増殖するように適合されている、請求項1に記載の哺乳動物細胞培養。
  7. 哺乳動物細胞がニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片をコードするポリヌクレオチドを用いて遺伝子改変されている、請求項1に記載の細胞培養。
  8. 灌流培養であるかまたは流加培養である、請求項1に記載の哺乳動物細胞培養。
  9. 培地が無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地である、請求項1に記載の哺乳動物細胞培養。
  10. 大規模哺乳動物細胞培養において生産されるニューブラスチン抗体ポリペプチドであって、培養が、哺乳動物細胞培養においてニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するように遺伝子改変された、それを発現する哺乳動物細胞を含む、ニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  11. 配列番号2を含む重鎖ポリペプチドまたはその断片を含む、請求項10に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  12. 配列番号4を含む軽鎖ポリペプチドまたはその断片を含む、請求項10に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  13. 配列番号4を含む軽鎖ポリペプチドまたはその断片を含む、請求項12に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  14. 哺乳動物細胞培養がニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片を発現するCHO細胞を含む、請求項10に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  15. 細胞が、無血清培地、無動物タンパク質培地、または合成培地において増殖するように適合されている、請求項10に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチド。
  16. 哺乳動物細胞培養から単離されている、請求項10に記載のニューブラスチン抗体ポリペプチドまたはその断片。
  17. 請求項16に記載のニューブラスチン抗体を薬学的に許容される担体に含む医薬製剤。
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