JP2022507228A - 歯科インプラント、歯科用構成要素、歯科用インプラントシステム、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法、保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素、及び保護層の使用 - Google Patents

歯科インプラント、歯科用構成要素、歯科用インプラントシステム、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法、保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素、及び保護層の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、顎骨の穴に挿入され、インプラントされるときに骨組織に少なくとも部分的に位置するように構成される歯科インプラントを提供し、歯科インプラントは、冠状インプラント領域を含み、冠状インプラント領域の表面は、60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層によって少なくとも部分的に覆われ、0.1μm~1.0μmの範囲の平均算術平均高さSaを有する。歯科用構成要素(好ましくは、歯科アバットメント)であって、構成要素の表面は、60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層によって少なくとも部分的に覆われ、0.05μm~0.5μmの範囲の平均算術平均高さSaを有する、歯科用構成要素、ならびに、歯科インプラント及び構成要素を含むインプラントシステムが提供される。インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法であって、本方法は、a)構成要素の表面に溶液を塗布することであって、溶液は25℃でpH6.8以下である、塗布することと、b)ステップa)で塗布された溶液を乾燥させ、歯科用構成要素の表面に保護層を形成することとを含む。最後に、本発明の一部は、上記のようにして得られる保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素、ならびに、保管のための係る層の使用である。【選択図】図3

Description

本発明は、歯科インプラント、歯科用構成要素、歯科用インプラントシステム、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素、及び保護層の使用に関する。
何十年もの間、歯科インプラントは、欠損歯または喪失歯を交換するためにうまく使用されてきた。インプラント歯科治療における最も重要な課題の1つは、軟組織付着表面の特性を改質し、細菌付着及びバイオフィルム形成を最小化し、良好な口腔衛生の維持を可能にすると同時に、最適な軟組織付着を促進することである。さらに、別の主要目的は、骨組織と接触する歯科インプラントの表面を特注で設計することである。ここでの目的は、歯科インプラントの可能な限り最良のオッセオインテグレーションを可能にすることである。これは、インプラントが長年にわたって機能し、インプラント後の合併症を抑制するためのまさに基礎となる。全ての医学的要求及び生物学的要求に加えて、審美性の役割も果たす。ここでの目的は、天然歯に可能な限り近い外観を達成し、歯科インプラント構造のいずれかの部分が見えないようにすることである。
上記のニーズに少なくとも部分的に対処するために、固定具、スペーサ、及び補綴構成要素の様々なインプラント構造及び設計が長年にわたって提示されてきた。さらに、様々な物質及び組成物は、基材上のコーティングとして使用するために、例えば、インプラント表面を形成するために提案されてきた。しかしながら、本出願の背景技術を読んだ後に認識されるように、人体は、かなり高度で複雑な環境であり、説明されている問題を克服するためにインプラント構造を設計する方法は、自明に考案できるタスクにはならない。
骨のオッセオインテグレーションに使用され、優れた結果が示されている歯科インプラントを治療する1つの方法として、TiUnite(登録商標)表面が挙げられる。当該表面は、一般的に、50nm~5ミクロンの範囲の細孔サイズを有する均一に分布した細孔構造を含む酸化チタン層を有し、リンが酸化チタン内に埋め込まれている。表面粗さSaは約1.2ミクロンである。TiUnite(登録商標)の表面は、Jan Hall及びJukka Lausmaa「Properties of a new porous oxide surface on titanium implants」,Applied Osseointegration Research,vol.1,pp.5-8,2000に、詳細に説明されている。
高度な歯科インプラント表面設計はWO2016/096734A1に説明されている。当該文献では、歯科インプラント(好ましくは、スクリュー状の歯科インプラント)は、歯科インプラントの個々の部分のそれぞれが接触する原位置の環境に応じて、基本的に歯科インプラントの縦軸に沿って変化する表面設計を示す。したがって、歯科インプラントは、当該文献では、洗浄が容易であり良好な軟組織の接続を促進する歯科インプラントの冠状端に比較的平滑な表面を有する。歯科インプラントの根尖端に向かって、表面粗さ及び多孔性が増加及び最大化し、顎骨組織の最適な内方成長及びオッセオインテグレーションのための表面を提供する。本発明及び本開示の一部は、当該歯科インプラント設計を修正し、さらに改善することを目的としている。
インプラントに関して生じる課題に加えて、上記の目的以前の課題がある。係る課題の1つは、(歯科用)インプラント及びアバットメントの設計特性を保存可能期間にわたって標準化及び制御することである。ほとんどの市販のインプラントは無菌パッケージで保管されており、製造後5年の有効期限がある。
保管中に、炭化水素等の大気分子がインプラントに堆積する可能性があり、汚染を生じさせる。チタンへの炭化水素の沈着の増加は、表面エネルギーの減少(親水性)と、タンパク質及び骨形成細胞の付着力の減少と相関があることが示されている。
表面に臨界量の炭化水素が存在する場合、新たに加工されたチタン表面と比較した場合、インプラントのオッセオインテグレーション及び骨とチタンとの統合の生体力学的強度の減少が報告される。医療用インプラントの生物学的性能の保管時間中の係る潜在的影響を防止するために、長期間にわたる保管時間後に元の状態の表面をもたらす可溶性保護層を使用する湿潤保管または乾式保管等の表面状態を維持するためのパッケージング戦略が開発されている。
インプラントをウェットパッケージに保管すると、時間が経過するにつれて、(酸化、ナノ構造の形成等により)インプラントの表面特性の変化が起きる。さらに、ナノ構造は温度及び圧力のような他の環境パラメータの影響を受け、そのパラメータは、インプラントの保管期間の全体にわたって常に制御できるとは限りない。
これらの理由のために、乾式保管は湿式保管よりも好まれる。戦略は、制御された保護環境(すなわち、不活性ガス)にサンプルを保管することであり得る。困難であるのは、パッケージが保管期間の全体にわたってガスが不透過性のままであることを保証することであり、臨床医の現場において、パッケージが損なわれていないことを示すための簡単な制御を実施できないことである。
最後のアプローチは、インプラントに保護層を適用することによって、乾燥状態で表面を保護することである。保護層は、一般的に、浸漬乾燥プロセスによって適用される。保護層は、空気中に存在する汚染物質が表面に到達することを防止する。唾液または血液等の体液と接触すると、保護層が溶解し、化学物質及び表面エネルギーが保存された状態の元の表面が理想的に暴露する。
Rupp他により、J Biomed Mater Res A.(2006年2月;76(2):323-34)に公開されている、微細構造チタンインプラント表面の化学修飾による表面自由エネルギー及び親水性の向上に関する研究が説明されている。この論文では、塩化ナトリウム溶液中でのインプラントの湿式保管について説明されている。
この発見を利用するアプローチは、WO2007/118734A1に説明されている。この場合、乾燥塩層は、乾式保管中にインプラント表面を保護する物的障壁を形成し、塩はインプラントされるときにインプラント表面に付いている。このため、塩は体液に溶けやすいものに限定されている。WO2007/118734A1の全ての例では、0.15MのNaCl水溶液が使用されている。
様々な濃度の様々な食塩水から形成された塩層の保護効果に関する研究は、Luers他による「Current Directions in Biomedical Engineering 2016」;2(1):557~560の論文に説明されている。試験された溶液には、リン酸ナトリウムだけ、リン酸カリウムだけ、リン酸マグネシウムだけ、または塩化ナトリウム及び塩化カリウムと、リン酸ナトリウム及びリン酸カリウムとの混合溶液を含む溶液を含む。溶液の1つには、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムも含まれる。
この研究では、チタンインプラント上の様々な濃度の係る溶液から形成された塩層が、インプラントの動的接触角に及ぼす影響が調べられている。最悪の結果は、136.8mMのNaCl、2.7mMのKCl、1.5mMのKHPO、及び8.1mMのNaHPOを含む溶液、合計濃度96mMのリン酸ナトリウムだけを含む溶液、合計濃度9.6mMのリン酸カリウムだけを含む溶液、及び濃度100mMのリン酸アンモニウムだけを含む溶液について取得されたものである。他の全ての溶液/濃度は、それらに対する保管後の接触角の変化が示されていなかったため、同様に良好であった。1価のアルカリ金属カチオンを含んだこの研究で試験された全ての溶液のpHは7.3以上であったが、溶液を含むアルカリ土類金属の2価カチオン(MgまたはCa)のpHは各々、6.7、6.3、3.5、及び2.7であると報告されている。pH6.3及びpH6.7の溶液は、動的接触角によって表されるように表面エネルギーの減少をもたらすと報告されており、したがって、完全な程度まで所望の保護を提供しない。各々、pH2.7及び3.5の溶液は、2価のMgカチオンだけを含む。Mg塩及びCa塩(アルカリ土類金属塩)は、概して、1価種の対応する塩(アルカリ金属塩)と比較して溶解性が低く、したがって、溶解するのがより困難であり得る。また、Mg塩だけを含む溶液が10mMの低濃度での表面の塩層の配分が不十分になることがもたらされたことと、高濃度ではシロップ状の残留物が表面に残ったままであることとが報告されている。この文献では、さらに、塩層ごとに表面外観が異なったことと、全ての場合に均質なフィルムを取得できなかったこととが報告されている。これらの問題は、特に、リン酸ナトリウム溶液に関して直面した。
著者らは、pH7.6のリン酸カリウム緩衝液がチタンインプラント表面を保存するための最適なシステムを提供することを結論付けている。この理由としては、pH7.6のリン酸カリウム緩衝液が塩層表面の親水性及び光学的外観の維持に関して最良の結果を提供するためである。
塩層表面の親水性及び光学的外観の維持のために最適化された塩層の場合に発生し得る生物学的統合への起こり得る悪影響について懸念がある。特に、係る層がインプラント表面により多く残り得、それによって、オッセオインテグレーションを妨害する可能性があるという懸念がある。また、多くの場合、インプラントの支持構造表面は特定の構造及び表面組成を有するように適応しており、これらの特性は、塩層がインプラント表面に完全にまたは部分的に残っている場合、その生物学的機能を発揮することが不可能であり得る。
したがって、インプラント上の保護層の残りの構成要素による治癒プロセスを損なうリスクを最小化することに関して、水、体液、唾液等の液体と接触したときに塩層を迅速及び完全に除去できれば好ましい。歯科インプラントの元の支持構造表面を迅速に暴露することが可能である塩層も必要である。歯科インプラントの支持構造表面は、塩層が溶解した後、高い表面エネルギー(親水性)を有する必要がある。
解決すべき課題
本発明は、優れた組織統合特性、軟組織シール形成を示し、同時に、特に、有害なバイオフィルム形成から生じるインプラント後の合併症のリスクを減らす、顎骨の穴に挿入されるように構成される歯科インプラントを提供しようとする。本発明は、さらに、インプラントの一部(特に、組織に隣接し、頬腔環境に露出され、有害なバイオフィルム形成を起こしやすい部分)のより容易な及びより良好な洗浄を容易にし、それによって、歯科予防、口腔衛生、及び歯肉の健康を改善する、歯科インプラントを提供することをしようとする。本発明のさらなる目的は、従来のインプラントと比較して、原位置の外観及び審美性が改善された歯科インプラントを提供することである。
本発明は、さらに、歯科インプラント以外の歯科用構成要素、好ましくは、軟組織の付着をサポート及び改善、細菌の蓄積を最小化することができ、従来の構成要素及びアバットメントと比較して、より良好な原位置の外観及び審美性をもたらすことができる歯科用アバットメントを提供する。
さらに、本発明は、本発明の歯科インプラント及び本発明の構成要素(好ましくは、歯科アバットメント)を組み合わせることによって、全体的に優れた特性を達成する革新的なインプラントシステムを利用可能にする。
本発明のさらに別の態様は、インプラントまたはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法を提供し、それにより、乾式保管中のその構成要素の生理化学的表面特性の変化が防止され、使用時に、保護層を容易及び完全に除去し、元の状態の、新たに製造したインプラントまたはインプラント可能な構成要素の特性と同じ特性を基本的に有する表面を暴露する。本発明のさらに関連する目的は、元の状態の、機能的に製造されたままの表面を基本的に維持する保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素を提供することである。インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の乾式保管のために保護層を使用することは、本発明の最後の関連する態様である。
本発明のさらなる目的は、例えば空気からの疎水性物質の取り込みによって生じるような汚染及び/または親水性の喪失からインプラント可能な構成要素及び/またはインプラントの構成要素の表面を保護するための手段を提供することであり、当該手段は、保護を提供するために容易に利用でき、それによって、保護されたインプラントを容易に取り扱い及び保管でき、当該手段を容易及び完全に取り外すことができ、それによって、インプラントの支持構造表面を暴露し、治癒プロセスへの干渉リスクを最小化する。
上記の問題は、下記に概説され、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明によって解決され、目的が達成される。
本発明のさらなる利点及び目的は、以下の詳細な説明からより明らかになる。
発明の詳細な説明
以下の説明で使用される用語は、本発明を限定することを意図するものではない。
当技術分野で使用されている方法または標準化されている方法に加えて、下記に説明するパラメータ及び特性を決定するための全ての方法を使用し得る。相違または非互換性が生じる場合、本開示を優先する。
水接触角は、DIN55660-2に従って決定できる。接触角は、表面の濡れ性を定量化し、その自由表面エネルギー及び親水性を表す。用語「接触角」は、表面の水の接触角を指す。測定は、0.3μlの液滴サイズを使用して、例えば、デバイスEasyDROP DSA20E(Kruss GmbH)を使用する液滴法に従って実行される。接触角は、表面に設置された液滴の輪郭に弓形関数を適合することによって計算できる。用語「親水性」は、30°以下の接触角を指し得る。
本発明では、全てのパラメータ及び製品特性は、特に明記しない限り、または特定の標準プロトコルまたは試験プロトコルによって規定されない限り、標準条件下(25℃、101kPa)で測定されたものに関連する。
用語「約(about)」は、該当する量または値は、概して、表示値の±5%の範囲内の指定された特定値またはそれに近いいくつかの他の値であることを意味する。したがって、例えば、表現「約100」は、100±5の範囲を意味する。下記に与えられる全ての値は、文脈が異なる意味を提供しない限り、または別段の指示がない限り、単語「約(about)」によって修正されたものと見なされる。
用語「及び/または」示された要素の全てまたは1つだけの一方が存在することを意味する。例えば、「a及び/またはb」は、「aだけ」、もしくは「bだけ」、または「a及びbを一緒に」を意味する。「aだけ」の場合、この用語は、bが存在しない可能性(すなわち、「aだけで、bではない」)も含む。
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」は、非排他的であり、無制限であることを意図する。したがって、特定の構成要素を含む組成物または物品は、記載されたもの以外の他の構成要素を含み得る。しかしながら、この用語は、また、より限定的な意味(「から成る(consisting of)」及び「本質的に、~から成る(consisting essentially of)」)を含み、各々、「から構成される(made of)」及び「本質的に、~から構成される(made essentially of)」と同義として使用される。
範囲が「xからyまで」または同義的表現「x~y」として表されるときは常に、範囲の終点(すなわち、値x及び値y)を含む。したがって、範囲は、表現「x以上であるがy以下である」と同義である。
本明細書に開示される様々な実施形態は、明らかに互換性がない場合を除いて、いずれかの方法で組み合わせることができる。また、いずれかの所与の範囲は、その範囲内の値にあるいずれかの値を含み、その値を開示すると見なされる。
歯科インプラント
本発明及び本開示に従った歯科インプラントは、顎骨の穴に挿入され、インプラントされるときに骨組織に少なくとも部分的に位置するように構成され、冠状インプラント領域を含み、冠状インプラントの表面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層によって覆われ、0.1μm~1.0μmの範囲の算術平均高さSaを有する。
表現「歯科インプラント」は、人間または動物の歯科で使用されるように構成される実体として広く解釈される。さらに、本発明に従った歯科インプラントは、顎骨に形成された穴に設置及び/または固定される追加のインプラント構成物質の土台を提供するために、その穴の内側に少なくとも部分的に設置されるように構成される。非排他的及び非限定的な例として、本発明の歯科インプラントはねじ式の人工歯根であり得、これは、ねじ式に、すなわち、ねじを介して顎骨と係合でき、口腔から歯肉を通ってさらに軟骨組織及び硬骨組織の中に延在し、「歯科用スクリュー」と呼ばれ得る。理解しやすくするために及び純粋に例証目的のために、以下の説明は、歯科インプラントの非限定的な例として「歯科用スクリュー」に言及し得る。例えば、非ねじ式のインプラントは、本発明の範囲内に含まれる。また、本発明の範囲内に、いくつかの個々の物理的実体から及びそれらによって組み立てられる複部構成の歯科インプラントが含まれる。
表現「冠状」、同様に、本開示に見られる他の全ての同様の用語、例えば、「根尖」は、それらの用語に含まれる歯科に関連する一般的な意味に従って解釈されたい。したがって、冠状インプラント領域は、通常、インプラント部位における歯の歯冠領域が位置する場所に隣接する原位置に(in-situ)位置し、根尖インプラント領域は、顎骨に向かう方向に冠状領域から離間されて、インプラント部位における歯の根元領域が通常位置する場所に位置する。さらに、そのように説明された冠状インプラント領域及び根尖インプラント領域は、下記でさらに記述されるインプラント表面特性の進化に関して、各々、「開始点」及び「終了点」を示すものと解釈されたい。より具体的には、歯科インプラントの根尖端または頂点及び歯科インプラントの冠状端は点である。
歯科インプラントは、歯科インプラントに関連付けられる基材(例えば、インプラントの基材/バルク材またはインプラントコーティング)と、最も広義の意味で、口腔環境との間の移行界面を基本的に形成する表面を有する。口腔環境は、歯肉軟組織または様々な種類の骨組織のような特定の組織を含み得るが、特定の種類に限定されない。界面は、また、インプラントと頬腔との間にあり得、すなわち、基本的に、インプラントと頬腔内で接触するいずれかの考えられる生理学的物質(例えば、唾液)との間の界面になるようなものであり得る。当該接触する環境は、インプラントの領域/部分(冠状部、根尖部、中間/移行部)及びインプラント方法(例えば、埋入、フラッシュ、または突出)によって決まる。用語「インプラント/構成要素/アバットメントの表面」または「領域X/Y/Zの表面」は、好ましくは、上記に説明したような口腔環境に対してインプラントを相対的に規定する外面及び最外面を指す。それと対照的に、歯科インプラントまたは構成要素/アバットメントの内面、例えば、内側に対面する開口部/空洞/孔は、通常、口腔環境に露出されない。しかしながら、いくつかのシナリオでは、また、これらの内面は、特に、口腔環境へのいずれかの露出が意図的であるまたは意図的ではないと考えられ、したがって、そのケースを除外しないで考慮する場合、本発明の特徴から利益がもたらされ得る。言い換えれば、本明細書に説明される有益な表面特性は、また、歯科インプラント、または後述する、構成要素/歯科アバットメントの内面に適用でき、本発明の一部である。
本発明及び本開示に従って、歯科インプラントは、歯科インプラントの最上部に位置する冠状インプラント領域を有する。本発明の技術分野では、当該冠状インプラント領域は、多くの場合、「カラー領域」とも呼ばれ、これは等価語と見なされ得る。冠状インプラント領域の表面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に酸化物層によって覆われる。これは、冠状インプラント領域の表面の1つだけの固有領域または複数の表面領域の一方が、その領域上に形成された酸化物層を有すること、またはさらに、冠状インプラント領域全体が当該酸化物層で完全に覆われることのようなオプションを含む。後者は、後で概説するように、機能上の理由から好ましくあり得る。酸化物層の全体的性質は特に限定されない。用語「酸化物層」は、少なくとも1つの酸化物、すなわち、酸素及び少なくとも1つの他の元素の化合物を主に含む、それらから構成される、または完全にそれらから成る層として理解されたい。本発明に関して、金属酸化物(Me-O)、特に、酸化チタン、特に、TiOは、酸化物層に好ましい化合物である。例えば、インプラント表面の相転移または表面反応によって、表面のインプラント材料の交換によって形成された酸化物層が考えられる。係る層の種類は、通常、インプラント表面への追加材料の適用は必要なく、代わりに、本質的に、既知の手順のいずれかによって交換/変換されるインプラント基材自体から生じる。しかしながら、例えば、酸化物層を形成するための電解プロセスの場合、電解質からの元素が酸化物層に取り込まれ得ることが考えられる。係る元素は、例えば、リン酸塩及び/またはリンを含み得る。他の考えられる種類の酸化物層は、コーティングプロセスを介してインプラント表面に適用される層を含み、このプロセスでは、従来、追加材料は、ほとんど不変/固有のインプラント表面または単にインプラント基材に適用される。
上記の酸化物層は、60nm~170nmの範囲の厚さを有する。酸化物層の厚さは、下記にさらに詳述する歯科インプラントの軸方向断面の画像で測定できる。さらに、冠状インプラント領域の表面は、0.1μm~1.0μmの範囲の算術平均高さSaを有する。パラメータSaは当業者によく知られており、表面の面積粗さを特徴付ける標準パラメータである。したがって、Saに使用される同義的表現は「表面粗さ」であり、本発明でも使用できる。パラメータSaは、下記にさらに詳述するように、白色光干渉法の測定値から決定できる。好ましくは、上記のSaは平均面積粗さであり、Saは、冠状インプラント領域または関連するいずれかのインプラント領域の様々な位置で測定され、次に、全ての測定から計算された数学的平均であったことを意味する。さらに、ここで説明される表面粗さSaは、好ましくは、表面に形成された酸化物層を含む冠状インプラント領域の表面を表すことに留意されたい。言い換えれば、歯科インプラントの基材の表面に酸化物層が形成されることにより、表面の全体的な表面粗さSaが決定される。測定された表面粗さは、例えば、機械加工によって作成された歯科インプラントの基材の表面の表面粗さと、歯科インプラント上の酸化物層の表面の表面粗さとの重ね合わせとして見なされ得る。原型/固有のインプラントの基材の表面は、バルクインプラント自体を製造する方法とその表面仕上げとによって主に決定される固有の粗さを有する。歯科インプラント表面に形成された酸化物層または歯科インプラント表面を形成している酸化物層は、また、固有の粗さも有する。その結果、全体的な表面粗さは、マイクロスケールの振幅、機械加工されたままの/仕上げられたインプラント表面の低周波粗さ(low frequency roughness)、及びナノスケールの振幅、インプラント上に形成された表面層の高周波粗さの重ね合わせである。特に、冠状インプラント領域において、機械加工されたままの表面構造の表面がさらに存在し/検出可能であり、さらに、酸化物層によって「装飾」される。対照的に、特に、かなり厚い酸化物層が存在し得る根尖インプラント領域では、母材の機械加工されたままの表面構造が酸化物層によって完全に埋められ/覆われ、表面特性を有意に決定しない。スパーク陽極酸化を使用して表面を生成する場合、形成された酸化物層は通常5μmを超える厚さを有し、したがって、機械加工されたままの表面構造の粗さを覆い隠す。
歯科インプラント(好ましくは、歯科用スクリュー)の冠状領域またはカラー領域における酸化物層の厚さ(60nm~170nm)及び表面粗さSa(0.1μm~1.0μm)の組み合わせは、以下の有利な生物学的効果及び臨床効果をもたらす。一方、特定の酸化物層の厚さは、人間の目で見るとき、黄色またはピンク色の冠状インプラント領域の干渉色が生じる。当該着色は、歯科インプラントがインプラントされたときに軟組織を通る灰色のシャインスルー効果を最小化するのに有益である。改善された軟組織の外観は、酸化物層の厚さを意図的に調整することによって、従来技術で遭遇した従来のメタリックグレーから黄色またはピンクに色を変化させることによって達成できる。したがって、本発明は、いったんインプラントされると歯科インプラントの美容的外観を改善する固有色を冠状インプラント領域に与えるために、先行技術で潜在的に見られる広範囲の酸化物層の厚さから、狭い範囲の厚さが意図的に選択された、選択発明と見なされ得る。さらに、酸化物層の存在、特に、酸化チタン層の場合、冠状インプラント領域は、良好な生体適合性を示し、ヒト歯肉線維芽細胞の付着、増殖、及び細胞外マトリックス分泌を刺激する。さらに、酸化物層の存在は、抗菌性の表面特性を与え得る。特定の最小の表面粗さから中程度の表面粗さは、機械加工されたままの状態のより平滑な表面と比較して、インプラント周囲の辺縁骨欠損を減らすことができる。同時に、粗さが高すぎないように選んでいるため、インプラントのメンテナンスを容易にし、特に、洗浄性を向上させる。表面のバイオフィルムまたは歯石の形成は、粗い表面の場合よりも低く、機械的手段(ブラッシング等)によるバイオフィルムまたは歯石の除去が著しく容易になる。さらに、かなり平滑な表面と比較して、選ばれた表面粗さは、また、組織の付着及び統合の良好な固定点を提供する。第一に、利用可能な安定した実質的な酸化物層があることを保証するため、特定の酸化膜の厚さはこれらの効果をサポートする。
好ましくは、冠状領域の表面は平滑であり、それは、特に、機械加工プロセスからの旋削線の配置を含む、機械加工されたままの微細構造を示し、その表面は、基本的に非多孔性及び/またはナノ構造である。「平滑な」特性は、主に、冠状インプラント領域の表面を説明する定性的方法である。定量的方法は、上記に説明した表面粗さSaを定義することである。ここでの「非多孔性」は、冠状領域の表面において、大きい密度または多くの数の開放細孔が示さないことを意味し、開放細孔は、表面と交差してその上に小さな穴を作成する。ここで、「細孔」は、表面の穴として定義され、表面内で、表面の直径が、表面に垂直な深さよりもかなり小さい特性を意味する。したがって、表面は、強力な骨組織接続を目的とするインプラント表面領域と明確に区別可能であり、ひいては、下記で説明するような高多孔質形態を有する。ここでの「機械加工されたままの微細構造」は、冠状インプラント領域の表面が、機械加工または歯科インプラントのバルクから生じる多い数のまたは少ない数の規則的「パターン」を示すことを意味する。好ましくは、当該機械加工構造は維持され、さらに表面で検出可能であり、表面/重合酸化物層によって完全に隠されないまたは埋められない。ここでの「ナノ構造」は、酸化物層が、直径100nm未満のくぼみ等(例えば、ゴルフボール状の表面のくぼみ)のナノサイズ構造を示すことを意味する。したがって、冠状インプラント領域の表面モルホロジーは、機械加工されたままの表面モルホロジー及び酸化物層の表面モルホロジーの両方によって決定される。係る機械加工されたままの表面の一例は、酸化物層によって覆われるが埋められていない微細な旋削線の規則的パターンをさらに示している旋削面である。旋削線のパターンは、「配向された」線の粗さをもたらし、線の粗さは、旋削線に沿って小さくなるが、旋削線に対して垂直になり、旋削線及びトラフが交互になるため、線の粗さが大きくなることを意味する。言い換えれば、冠状インプラント領域の表面は、配向された(線)の粗さを有する。冠状インプラント領域の表面の上述の好ましい特性は、さらに、上記の有利な効果を向上させる。言い換えれば、冠状インプラント領域の表面は、任意選択的に、好ましくは旋削線パターンの形式で機械加工によって形成された微細構造と、さらに、機械加工されたままの表面に形成された酸化物層から生じるナノ構造との両方を有する。当該ナノ構造は、ナノスケールのギザギザ、くぼみ、球形の特性、及びナノスケールの丘陵状構造によって特徴付けられる。当該ナノ構造は、機械加工されたままの表面を有益に「粗く」し、そうでなければ、かなり平滑にし(過度に平滑にし)、それによって、その所望の機能を与え、特に、良好な組織の統合をもたらす。当該ナノ構造は、通常、深さよりも大きな直径を有することによって、細孔に関して区別される。
冠状領域の表面は、さらに、0.2μmから、好ましくは0.3μmから、さらに好ましくは0.4μmから、0.4μmまで、好ましくは0.6μmまで、好ましくは0.8μmまでの範囲の算術平均高さSaを有し得、酸化物層は、さらに、80nmから、130nmまで、好ましくは150nmまで、さらに好ましくは160nmまでの範囲の平均厚さを有し得る。これらの値は、好ましい表面粗さの範囲及び好ましい酸化物層の厚さの範囲であり、その下限及び上限は自由に相互に組み合わせ可能であり、それらの間の全ての値は本発明及び本開示の一部である。また、上限だけ及び下限だけの組み合わせは、本発明及び本開示の一部である。酸化物層の厚さを調整することによって、冠状インプラント領域の色及び/またはナノ構造ならびに上記の生物学的特性を柔軟に微調整することが可能であり、それにより、それらをさらに向上させ、または患者の特定の症状またはグループの個々のニーズに適応させることが可能である。
冠状領域は、人間の目で見るとき及び/または分光計で分析するとき、黄色またはピンク色を示すことが好ましい。本発明及び本開示の一部は、色のスペクトルにおいて黄色とピンクとの中間の全ての色である。上記に説明したように、着色は、好ましくは干渉色から生じ、軟組織による灰色のシャインスルー効果を減らし及び最小化し、したがって、歯科インプラント及び歯科修復技術の美容的外観及び美的外観を改善する。本発明及び本開示では、着色は、好ましくは陽極酸化によって達成され、したがって、各々の方法は、「黄色の陽極酸化」または「ピンクの陽極酸化」等と呼ばれ得る。上記に示したように、任意選択的に、酸化物層ひいては着色は、また、下記に説明する歯科インプラントまたは構成要素の内面にも提供できる。これは、当該内面を有する内腔に挿入されたときに、スクリュー等のより良好な固定に寄与し得る。
好ましくは、本発明及び本開示に従った歯科インプラントは、さらに、移行インプラント領域と、根尖インプラント領域と、冠状インプラント領域から根尖インプラント領域まで延在する縦軸とを含み、歯科インプラントの冠状端を起点として縦軸に沿った歯科インプラントの根尖までの一連の領域は、冠状インプラント領域-移行インプラント領域-根尖インプラント領域の順に並んでおり、以下の少なくとも1つが当該領域の表面特性に関して適用される。
‐根尖インプラント領域の平均の算術平均高さSa>移行インプラント領域のSa>冠状インプラント領域のSa、
‐根尖インプラント領域の平均展開界面面積比Sdr>移行インプラント領域のSdr>冠状インプラント領域のSdr、
‐根尖インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚みdOX>移行インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚みdOX>冠状インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚みdOX
‐根尖インプラント領域の酸化物層の平均リン含有量C>移行インプラント領域の酸化物層の平均リン含有量C>冠状インプラント領域の酸化物層の平均リン含有量C
原則として、これまでに説明した冠状インプラント領域は、歯科インプラントの自由に設計された他の領域のいずれかと組み合わせることができる。しかしながら、歯科インプラントに全体的に優れた特性を提供するために、有利な特性がある冠状インプラント領域と、領域自体が有利な特性を示す特別に設計された他のインプラント領域と組み合わせることが好ましい。要するに、これは、生体適合性及び耐久性に関して、全体的に優れたインプラント性能を達成するために必要な多くの設計要求に応える歯科インプラントをもたらす。したがって、移行インプラント領域が冠状インプラント領域と根尖インプラント領域との間に存在することと、当該追加の2つの固有領域が目的に応じて設計された固有表面を有することとが好ましい。好ましいインプラント構造は上記に記述されている。上記の説明から、3つの異なる領域のそれぞれの表面特性が異なることを意味していることが分かり得る。特に、冠状インプラント領域から、中間特性値を有する移行インプラント領域を含む根尖インプラント領域まで、生理化学的表面特性の明確な進化がある。したがって、生理化学的表面特性S、Sdr、dOx及びCは、冠状インプラント領域でそれらの最小値/大きさを有し、そして根尖インプラント領域でそれらの最大の大きさを有することが好ましい。展開表面積比または展開界面面積比と呼ばれるパラメータ「Sdr」は、表面特性評価のための標準パラメータであり、当業者によく知られている。これは、例えば、光学3Dプロフィロメータを使用して白色光干渉法によって決定できる。
さらに、インプラントの異なる領域が異なるように設計された表面を有する歯科インプラント構造に関して、WO2016/096734A1(その内容が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。特に、移行領域及び根尖領域の構造ならびにそれらの領域の表面粗さ及び細孔サイズに関する全ての教示がその特許文献に組み込まれている。本発明及び本開示の一部は、上記のWO2016/096734A1に説明されている移行領域及び根尖領域のいずれかの構造の変形と組み合わせられた、上述の着色された冠状インプラント領域を有する歯科インプラントである。その場合、当該文献の「移行領域」は、本発明の「移行インプラント領域」と同等であり、「根尖領域」は、「根尖インプラント領域」と同等である。
上記の構成の有益性及び利点に関して、例えば、Sdrの冠状インプラント領域から根尖インプラント領域及び頂点までの増加は、インプラントプラットフォームから頂点まで減少する骨密度プロファイルに反するように設計されている。これにより、頂点に向かう摩擦が増加し、適切なインプラントの保持が可能になる。増加する表面粗さSa及び多孔性または細孔サイズの利点に関して、上記のWO2016/096734を参照されたい。そこに記載されている利点は、本発明で等しく適用及び展開される。
上記に紹介した「縦軸」は、歯科用スクリューまたはピン状の実質的に円筒形のインプラントの場合、中心対称軸(例えば、歯科インプラントの主軸(長軸)に沿って延在する歯科用スクリューの軸中心線)であり、縦軸に沿って、冠状領域及び根尖領域が位置している。歯科インプラントがその幅(直径)よりも明らかに大きいその長さに対応するアスペクト比を有すると仮定すると、縦軸が長軸になる。
上記のリン含有量Cは酸化物層に関連があり、すなわち、リン含有量Cは酸化物層の特性であり、その表面上で及びその表面から測定される。リンは、酸化物層が生成されるプロセスから生じ得る。これが陽極酸化によって行われる場合、使用される電解質に見られるリンが酸化物層に取り込まれる。特に、リン含有量及び表面化学は、X線光電子分光法(XPS)または当業者に既知の他のいずれかの適切な方法を使用して決定できる。好ましくはリン酸塩の形態で表面酸化物層にリンを有することで、骨芽細胞の付着及び分化を向上させ、骨癒合を改善する可能性が高くなる。リンはオッセオインテグレーションを促進させる。骨アパタイトの構成物質でもあるリンの存在は、特に、根尖インプラント領域に存在するとき、歯科インプラントの骨組織の統合をさらに促進すると考えられる。したがって、そこに最も高いリン含有量を有することが特に好ましい。
表面特性(特に、根尖インプラント領域、移行インプラント領域、及び冠状インプラント領域の生理化学的表面特性)は、歯科インプラントの縦軸に沿って、異なる領域間で、段階的に、もしくは連続的に/平滑に、好ましくは勾配的に、またはそれらの組み合わせで変化し得る。上記では、歯科インプラントに沿った表面特性の進化を実現できる方法のいくつかの構造オプションが記載されている。一方、表面特性の一部または全ては、歯科インプラントの縦軸に沿って増加的に変化するか、または縦軸に沿って数マイクロメートル以内で急激に変化する。表面特性のそれぞれは、縦軸に沿って独自の変動プロファイルを有し得る。特に、無相関の表面特性は、互いに独立して変わり得、かなり異なる変動プロファイルを示し得る。インプラントの実行中により正確な設置が必要になる、インプラント表面特性に空間的に不連続のステップの変化が発生しないため、連続的な、平滑な、または勾配の変化があると、歯科インプラントの使用中の順応性が高まる。さらに、骨萎縮のような生体内変化の結果は、急激に大きく変化するインプラントと比較して、表面特性の連続的変化によってより良好に穏やかになる。しかしながら、段階的変化はインプラントシナリオの制御において有利になり得、鋭い組織界面が存在し、ひいては、表面特性の鋭い移行が望まれる。
好ましくは、根尖インプラント領域、移行インプラント領域、及び/または冠状インプラント領域において、酸化物層は、さらに、カルシウム、マグネシウム、及び/またはフッ化物を含む。当該要素が骨アパタイトの構成物質でもあることを考えると、その存在は、さらに、特に、根尖インプラント領域に存在する場合、歯科インプラントの骨組織の統合を促進すると考えられる。イオン注入またはドーピングによる酸化物層への元素の取り込みは、金属表面の生物学的性能を改善できる。したがって、本発明及び本開示の一部は、通常、酸化物層の一部ではない元素及び/または物質を酸化物層内に取り込むことによる酸化物層の改質及び官能化である。したがって、酸化物層は、イオン注入、イオン交換、ドープ、コーティング、及び/または官能化されたものであり得る。
任意選択的に、根尖インプラント領域及び移行インプラント領域の表面は微小孔表面であり、ならびに/または骨成長開始物質及び骨成長刺激物質のうちの少なくとも1つを含む。当該物質は、好ましくは、スーパーファミリーTGF-ベータのものである。これにより、骨細胞の増殖及び成長を促進することによって、骨組織の統合を意図的及び積極的に改善できる。
歯科インプラントの特定の好ましい実施形態では、根尖インプラント領域の表面は、以下の少なくとも1つ、好ましくは以下の全てを示す。
‐平均Sa:1.50μm±0.4μm、
‐平均Sdr:187%±50%、
‐平均孔径:1.5μm±0.5μm、
‐平均酸化物層の厚さdOX:9000nm±3000nm、及び
‐平均リン含有量C:4%から、好ましくは6%から、10%まで、好ましくは12%までの範囲内にある、及び/または移行インプラント領域の表面は、以下の少なくとも1つ、好ましくは、以下の全てを示す。
‐平均Sa:0.8μm±0.5μm、好ましくは0.8μm±0.3μm、
‐平均Sdr:148%±40%、
‐平均細孔径:1.0μm±0.5μm
‐平均酸化物層の厚さdOX:7000nm±3000nm、及び
‐平均リン含有量C:3%から、好ましくは5%から、9%まで、好ましくは11%までの範囲内にある、及び/または冠状インプラント領域の表面は、以下の少なくとも1つ、好ましくは、以下の全てを示す。
‐平均Sa:0.5μm±0.3μm、
‐平均Sdr:16.6%±15%、
‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
‐平均酸化物層の厚さdOX:120.0nm±40nm、及び
‐平均リン含有量C:2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内にある。
上記の「±」(+/-)の値及びこの説明の下記に使用される値は、生理化学的表面パラメータが変わり得ることが考えられる範囲を示し、測定値の許容誤差ではないことを意味する。そのように作成された範囲及びその境界値は、本発明及び本開示の他の範囲の境界値と組み合わせ可能であることを意味する。また、全ての中間値を含むことを意味する。
好ましくは、根尖インプラント領域、移行インプラント領域、及び冠状インプラント領域の表面特性は、少なくとも部分的に得られ、好ましくは、陽極酸化処理を行うことによって得られ、好ましくは、当該領域の表面は、酸化物層を含む陽極酸化表面である。本方法は、高耐久性の表面酸化物層を生成及び設計する際に高度の順応性をもたらすことが知られている。代替として、サンドブラスティングまたは酸エッチングを使用して、本発明の酸化物層を生成できる。
移行インプラント領域及び/または根尖インプラント領域の表面は得られ、好ましくは、スパーク陽極酸化処理によって得られる。このプロセスは陽極酸化の変形であり、高電圧を使用してスパークを生成する。そのように処理された表面は比較的粗く、多くの開放細孔を示し、高い開放気孔率があり、クレーター/火山状の構造を有する。スパーク陽極酸化を使用することは、インプラント表面を粗くし構造化する方法である。これはオッセオインテグレーションに有益であり、骨組織が成長して付着するための表面の特性を提供し、したがって、インプラントを骨に保持する。
歯科インプラントの基材は、好ましくはチタンまたはチタン合金を含み、任意選択的に、根尖インプラント領域及び移行インプラント領域の表面の酸化物層は、好ましくは70~100%の範囲で、アナターゼ相の結晶酸化チタンを含み、残りはルチル酸化チタン及び/またはアモルファス酸化チタンを含むことがさらに好ましい。チタン材料を歯科インプラント基材として使用することは、チタン及びチタン合金は、広く研究され、高い生体適合性と適切な機械的特性が証明されたよく知られた生体材料であるという点で有益である。好ましいアナターゼ分率は、歯科インプラントの良好な生体適合性に寄与し、特に、根尖インプラント領域において顕著な骨組織の統合を促進する。
任意選択的に、移行インプラント領域及び根尖インプラント領域とは対照的に、冠状インプラント領域の表面の及び表面の酸化物層は、主に、アモルファス酸化チタンを含む、または完全にアモルファス酸化チタンから成る。さらに好ましくは、冠状インプラント領域の酸化物層、さらに冠状領域の表面は、実質的に非晶質及び/またはアナターゼフリーである。実質的に非晶質及び/またはアナターゼフリーであることは、X線回折、例えば、斜入射X線回折によって、結晶相及び/またはアナターゼについて統計的に有意な信号が検出されないことを意味する。
本発明の好ましい実施形態に従った歯科インプラントでは、冠状インプラント領域は、歯科インプラントの冠状端から縦軸に沿って最大2mm±0.5mmまで歯科インプラントの根尖端に向かって延在し、移行インプラント領域は、さらに縦軸に沿って2mm±0.5mmから最大4mm±0.5mmまで歯科インプラントの根尖端に向かって延在し、根尖インプラント領域は、4mm±0.5mmから歯科インプラントの根尖端に至るまで延在する。前述の説明は、基本的に、歯科インプラントに沿った、特に上記に定義したその長さまたは縦軸に沿った異なるインプラント領域の空間的広がりの定義である。結果として、冠状インプラント領域は、歯科インプラントの冠状端から始まる約2mmの長さを有し得る。移行領域は、また、約2mmの長さを有し得、歯科インプラントの冠状端から2mm離れた位置を起点として、根尖インプラント領域に隣接するその冠状端から約4mm離れた位置で終わる。根尖インプラント領域は、移行領域に続いて、歯科インプラントの冠状端から約4mm離れた位置を起点として、歯科インプラントの根尖端/頂点に至るまで延在し、その根尖端/頂点を含む。代替として、冠状インプラント領域は、歯科インプラントの冠状端から縦軸に沿って歯科インプラントの根尖端に向かって測定された、0.5mから、好ましくは1.0mmから、より好ましくは1.5mmから、2.5mmまで、好ましくは4.0mmまで、より好ましくは6.0mmまでの長さを有する。本実施形態から確認できるように、冠状インプラント領域は、約2mmの長さに限定されないが、より長い端であり得、したがって、歯科インプラントの冠状端から縦軸に沿って、歯科インプラントの根尖端/頂点に向かってさらに延在する。これらのオプションは、インプラントシナリオの詳細及び患者のニーズに関して歯科インプラント表面を設計する際に大きな順応性をもたらす。例えば、長い歯科インプラントの場合、冠状インプラント領域がより長いことも好ましくあり得る。同じことが、原位置の条件及び生体内の条件が黄色のより大きな領域/より長い領域、及び/または洗浄能力の増加を必要とする場合に当てはまり得る。
構成要素
本発明及び本開示のさらなる態様は、歯科用構成要素または歯科構成要素(好ましくは、歯科アバットメント)であり、構成要素の表面は、60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層によって少なくとも部分的に、好ましくは完全に覆われ、0.05μm~0.5μmの範囲の平均算術平均高さSaを有する。
ここで使用される一般名称「構成要素」は、前述の歯科インプラント以外の歯科用部品及び歯科用デバイスを含むことを意味する。したがって、好ましくは、歯科インプラント及び構成要素は異なる実体である。したがって、好ましい実施形態では、構成要素は歯科構成要素であり、さらにより好ましくは、歯科アバットメントまたは歯科インプラントアバットメントである。従来の歯科では、「アバットメント」は、歯科インプラントと歯科修復物との間の接続を仲介するために使用される別個の実体であると解釈される。従来理解されている係る部分は、本発明及び本開示に含まれる。したがって、構成要素は、当業者によって一般的に理解されるような歯科アバットメントであり得る。
上記から、構成要素の表面は、上記に説明した歯科インプラントの冠状インプラント領域の表面とかなり類似し、Saの範囲は若干狭く、より低い値に変わることが理解できる。それにもかかわらず、冠状インプラント領域に関する上記に与えられた全ての説明及び定義は、構成要素に準用する。したがって、本明細書を簡潔にするために、説明及び定義はここで明示的に繰り返されないが、各々、適用される。これは、オプションの歯科インプラント機能で各々の対応するものが見つけられる下記に説明する全てのオプションの構成要素機能にも明示的に適用される。逆もまた同様に、オプションの構成要素機能について与えられる説明は、上記に概説した各々の歯科インプラント機能に適用され得る。冠状インプラント領域の表面と構成要素(アバットメント)の表面との間の意図される類似性は、冠状インプラント領域について上記に説明した全ての好ましい機能及びオプションの機能(例えば、Ca、Mg、Fの含有量;非晶質、アナターゼフリー等)は、ここで上記の機能が明示的に繰り返されない場合でさえ、アバットメントの表面にも適用できる。
上記の構成要素及びその表面設計は、軟組織の付着をサポートし、細菌の蓄積を最小化し、軟組織を通る灰色のシャインスルー効果も最小化するという点で有利である。特定の表面粗さSaはプラーク形成を制限し、安定した軟組織シールに有利に働く。酸化物層の存在は、上皮細胞の付着をサポートする。
好ましくは、構成要素の表面は、陽極酸化処理を行うことによって少なくとも部分的に取得され、好ましくは、構成要素の表面は、酸化物層を含む陽極酸化表面である。再び、冠状インプラント領域の各々の特性について提供された説明を参照して、ここで適用される。特に、本発明の実施形態であるチタンまたはチタン合金であるアバットメント基材の場合、陽極酸化は、チタン表面に抗菌特性を与え得、したがって、細菌の蓄積を減らす。さらに、本発明の一実施形態に従った酸化ナノ構造のチタン表面は、機械加工されたままの表面と比較して、ヒト歯肉線維芽細胞の付着、増殖、及び細胞外マトリックス分泌を促進する。アバットメント表面は、酸エッチング及び/またはサンドブラストによっても取得され得、これらは両方とも本発明に含まれる。好ましくは、構成要素の表面の酸化物層は、実質的に非晶質及び/またはアナターゼを含まない。実質的に非晶質及び/またはアナターゼを含まないことは、X線回折、例えば、斜入射X線回折によって、結晶相及び/またはアナターゼについて統計的に有意な信号が検出されないことを意味する。
さらなる実施形態では、構成要素の表面は平滑で、ナノ構造であり、基本的に非多孔性であり、及び/または、特に、機械加工プロセスからの旋削線の配置を含む、機械加工されたままの構造を示す。それにより、同じ有利な表面構造、効果は、歯科インプラント、特に、その冠状インプラント領域について上記に記述及び説明したように取得される。
好ましくは、アバットメントの表面は、人間の目で見るとき及び/または分光計で分析するとき、黄色またはピンク色を示す。上記の色は、構成要素の表面の酸化物層によって生じる干渉色でもある。酸化物層の厚さを変えることによって色を調整でき、したがって、軟組織を通る灰色のシャインスルー効果を最小化し、原位置の外観を改善する。本発明及び本開示では、着色は、好ましくは陽極酸化によって達成され、したがって、各々の方法は、「黄色の陽極酸化」または「ピンクの陽極酸化」等と呼ばれ得る。上記に示したように、任意選択的に、酸化物層ひいては着色は、また、下記に説明する歯科インプラントまたは構成要素の内面にも提供できる。これは、当該内面を有する内腔に挿入されたときに、スクリュー等のより良好な固定に寄与し得る。
任意選択的に、構成要素の表面は、0.08μmから、好ましくは0.13μmから、0.3μmまでの範囲の平均算術平均高さSaを有し、さらに任意選択的に、酸化物層は、80nmから、130nmまで、好ましくは150nmまで、さらに好ましくは160nmまでの範囲の平均厚さを有する。上記のより狭い範囲は、上記で概説したように、同様に設計された冠状インプラント領域に関して、有益な効果をさらに向上させる。好ましい数値は相互に組み合わせることができ、考えられる全ての組み合わせは、本発明及び本開示に含まれる。
特に好ましい実施形態では、構成要素の表面は、以下の少なくとも1つ、好ましくは以下の全てを示す。
‐平均Sa:0.2μm±0.1μm、
‐平均Sdr:5.0%±5%、
‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
‐平均酸化物層の厚さdOX:120nm±40nm、及び
‐平均リン含有量C:2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内にある。
上記の「±」(+/-)の値及びこの説明の下記に使用される値は、生理化学的表面パラメータが変わり得ることが考えられる範囲を示し、測定値の許容誤差ではないことを意味する。そのように作成された範囲及びその境界値は、本発明及び本開示の他の範囲の境界値と組み合わせ可能であることを意味する。また、全ての中間値を含むことを意味する。
前述したように、構成要素の基材またはバルク材は、歯科インプラントの冠状領域について説明したのと同じ理由及び有益性のために、チタンまたはチタン合金を含み、好ましくはチタンまたはチタン合金から成る。まず、上記の理由として、チタンベースの材料がよく知られており、広く使用されている生体材料であるためである。係る材料を使用することは、陽極酸化/陽極酸化処理が使用されるときに特に有益であり、構成要素の表面に高度に官能化された有用な酸化チタン層をもたらす。
インプラントシステム
本発明及び本開示のさらに別の態様は、上記に定義及び記述した歯科インプラントと、上記に定義及び記述した構成要素とを含む、またはそれらから成る、インプラントシステムである。革新的なインプラントシステムは、生物学的及び臨床的ニーズと、それらに続いて生じる設計へのインプットとに基づいて、設計された表面に対して設計されたものである。歯科インプラント及び構成要素は、互いに接続可能であるように構成される。特に、構成要素が歯科アバットメントである場合、当業者は、歯科インプラント及び歯科アバットメントが、相互に組み合わせ可能及び接続可能であるように互いに設計されていることを理解する。次に、上記の2つの部分は互いに補完し、アセンブリを形成する。多くの場合、歯科インプラントは、歯科アバットメントの雄型形状が挿入可能な雌型形状(孔、くぼみ等)を有する。逆の形状またはスクリューもしくは接着剤の接続等も可能であり、これらの接続は、本発明及び本開示に含まれる。したがって、上記のシステムは、別個の構成要素ごとに上記に概説した全ての有益性及び利点を1つのアセンブリに組み合わせ、それによって、全体的に優れた特性がある新規のインプラントシステムを取得する。特別に設計された表面を有する歯科インプラント及び構成要素は、細胞付着及び細胞増殖について試験されたものであり、最適化された設計に播種されたときの正常な細胞付着及び細胞増殖が確認されたものである。
また、本発明及び本開示の一部はパーツキットであり、これは、例えば、無菌のポーチまたはバッグですぐに使用できるように、歯科インプラント及び構成要素を自由に提供することを意味する。当該キットは、3つの構成要素のパーツキットを形成するように、下記でさらに説明される歯科修復パーツによって補足され得る。
冠状インプラント領域及び構成要素の表面モルホロジー及び/または個々の表面特性(すなわち、物理化学的特性)の大きさは互いに類似していることが好ましい。言い換えれば、本発明及び本開示の一部はアセンブリまたはパーツキットであり、歯科インプラント及び構成要素(好ましくは、歯科アバットメント)は、それらの表面特性に関して互いに一致する。「一致する」とは、好ましくは、冠状インプラント領域の表面が、他の領域、移行インプラント領域、または根尖インプラント領域のいずれか1つの表面よりも、構成要素の表面により類似していることを意味する。構成要素表面と冠状インプラント領域との間の表面の質感、化学組成、酸化物層の厚さ、及びナノ構造の類似点/類似性により、構成要素/アバットメントから歯科インプラントへのスムーズな軟組織の移行が可能になる。
別の言い方をすれば、好ましくは、冠状インプラント領域の個々の表面特性の大きさまたは値と構成要素の個々の表面特性の大きさまたは値の差は、根尖インプラント領域または移行インプラント領域の個々の表面特性の大きさまたは値と冠状インプラント領域の個々の表面特性の大きさまたは値の差よりも小さい。
例えば、歯科インプラントを使用するとき、歯科インプラントの表面では、冠状インプラント領域は、以下の少なくとも1つ、好ましくは以下の全てを示す。
‐平均Sa:0.5μm±0.3μm、
‐平均Sdr:16.6%±15%、
‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
‐平均酸化物層の厚さdOX:120.0nm±40nm、及び
‐平均リン含有量C:好ましくは、2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内にあり、次に、構成要素(歯科インプラント)はリンと組み合わされ、構成要素の表面は、以下の少なくとも1つ、好ましくは以下の全てを示す。
‐平均Sa:0.2μm±0.1μm、
‐平均Sdr:5.0%±5%、
‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
‐平均酸化物層の厚さdOX:120nm±40nm、及び
‐平均リン含有量C:2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内にある。
繰り返しになるが、上記の「±」(+/-)の値及びこの説明の下記に使用される値は、生理化学的表面パラメータが変わり得ることが考えられる範囲を示し、測定値の許容誤差ではないことを意味する。そのように作成された範囲及びその境界値は、本発明及び本開示の他の範囲の境界値と組み合わせ可能であることを意味する。また、全ての中間値を含むことを意味する。
インプラントシステムの好ましいオプションの1つは、歯科インプラントが技術的に純粋なチタンから作られることと、構成要素(アバットメント)がチタン合金から作られることとの組み合わせである。
好ましい実施形態では、インプラントシステムはさらに歯科修復要素を含み、インプラント、構成要素、及び歯科修復要素を組み合わせてそれらを接続し、アセンブリを形成する。任意選択的に、上記の3つの構成要素は、歯科用構成要素パーツキットを形成する。歯科修復要素はクラウン等であり得る。したがって、本発明及び本開示は、特に、設計及び適合された歯科インプラント及び構成要素の表面から生じる優れた特性がある歯科インプラント学の技術によって歯を交換するための完全なシステムを含む。
上記に説明した歯科インプラント(特に、移行インプラント領域及び根尖インプラント領域の表面)を生成する可能な方法に関して、公開文献WO00/72777A1及びWO01/76653A1におけるインプラントの表面を改質する方法を参照している。それらの文献を使用して、特に、歯科インプラントまたは構成要素がチタンまたはチタン合金を含む、またはそれから成る実施形態に関して、本発明に従った歯科インプラントを生成できる。好ましくは、したがって、表面は陽極酸化及びスパーク陽極酸化によって生成され、それにより、機械加工されたままのインプラントの表面が、その上に酸化物層を有するものに形質転換される。スパーク陽極酸化(すなわち、高電圧による陽極酸化)は、根尖インプラント領域に望まれるような多くのクレート状の特性がある粗い表面を生成する。陽極酸化/陽極酸化処理に使用可能な電解質は、HSO及びHPOで、加熱酸または塩浴で希釈される。特に、歯科インプラントの冠状領域の表面及び構成要素の表面を生成するための陽極酸化/陽極酸化処理の一般的な電圧は、30V~100V、好ましくは55V~80Vの範囲である。一般的な陽極酸化持続期間/時間は、20秒~90秒、好ましくは30秒~70秒の範囲である。特に、根尖インプラント領域の表面を生成するために使用されるスパーク陽極酸化は、240V~300Vの範囲の電圧で実行される。
下記に提示される図面は、例示的な、非限定的な概略図に過ぎない。
本発明及び本開示による、いくつかの歯科インプラント構造を示す。 本発明及び本開示による、いくつかの歯科アバットメントの形態の構成要素構造を示す。 本システムの各部分の表面特性及び形態を示す顕微鏡画像と一緒に、本発明及び本開示に従った歯科インプラント及び歯科アバットメントから成るインプラントシステムを示す。 図4は、本発明による、保護層の使用に関連するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面特性及び機能の図を示す。本明細書では、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、インプラントによって表される。 図4aは、保護層がインプラント表面に形成された状態を左側に示す。水及び炭化水素等の大気分子は、保護層が物的障壁を提供するため、表面に到達できない。 図4aの中央には、体液と接触すると、保護層がどのように急速に溶解または崩壊するかが示される。空気から吸着されたいずれかの分子は、保護層が溶解または崩壊する間に運び去られる。 図4aの右側には、保護層が溶解または崩壊して、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素と周囲組織との相互作用を可能にした後のインプラントの状態が示される。この例示的な実施形態では、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、チタン等の表面にヒドロキシル基(OH)を有する材料から作られ、これは、高親水性表面(例えば、0~30°の範囲の水滴接触角)を示すことに留意されたい。 一定期間後の保護層(PL)がある場合とない場合のインプラント表面の周囲の大気から吸着された炭化水素から生じる炭素の含有量を示す。 接触角が46.3°(左、PLなし)及び0°(右、PLあり)のインプラントの接触角測定を示す。 PLによって保護されていなかったチタン表面のヒドロキシル基の密度(左)と、PLによって保護されていたチタン表面のヒドロキシル基の密度とを示す。 本発明の保護層が設けられたインプラント(PLあり)または本発明の保護層が設けられなかったインプラント(PLなし)の1、3、及び7日後の代謝活性を示す。 本発明の保護層が設けられたインプラント(PLあり)または本発明の保護層が設けられなかったインプラント(PLなし)の1、3、及び7日後の代謝活性を示す。
下記に詳述する実施例は非限定的であることを意味する。本発明及び上記の開示は、本発明を実施する好ましい方法だけを説明する下記の実施例の詳細に限定されない。
図1は、本発明及び本開示による、歯科インプラントのいくつかの異なる設計を示す。確認できるように、歯科インプラントは、顎骨に挿入するためのスクリュー状のものまたは骨スクリューであり得る。様々な異なるねじ山設計が考えられ、例えば、歯科インプラントの根尖端から冠状端まで延在するねじ山タイプのものである。また、ねじ山タイプは縦軸に沿って変わり得、異なるインプラント領域に異なるねじ山を提供できる。例えば、根尖領域のねじ山は冠状領域のねじ山と異なり、それによって、歯科インプラントが交差する異なる組織における異なる保持の必要性に適応する。ねじ山以外の保持手段、例えば、縦軸に垂直な隆起を有する規則的な隆起構造も可能である。また、歯科インプラントの異なる領域の長さ及び縦方向の範囲は異なり得る。図1では、冠状領域の長さは、歯科インプラントの冠状端から測定されたインプラントの全長の約1/7~1/8である。図1は、より明るい色によって、冠状インプラント領域またはカラーインプラント領域が歯科インプラントの他の部分と明らかに異なる外観になることを示し、これは、表面のデザインが異なるためである。色を見ると、冠状インプラント領域は金色(すなわち、メタリックイエローカラー)を示す一方、ピンクも考えられる。しかしながら、インプラントの他の部分はマットグレーになる。本発明の例では、冠状領域への移行は、人間の目で見えるスケールで実質的に急になる。例示的な図1bは、図1a及び図1cの歯科インプラントにも適用される参照符号を含む。図1bでは、歯科インプラントの縦軸Lであり、縦軸Lは、歯科インプラントの縦方向の空間的に伸びる延長線であることが示される。歯科インプラントの上端は冠状端1によって形成される。歯科インプラントの頂点または下端は根尖端5によって形成される。3つの異なる領域:冠状インプラント領域2、移行インプラント領域3、及び根尖インプラント領域4は、状況に応じて適切に示されるが、図1bに示される範囲に限定されない。
図2は、ここで歯科インプラントと一緒に使用するアバットメントの形態で、構成要素の2つの設計オプションを示す。歯科インプラントの下端では、適切な歯科インプラントとの組み合わせ及び接続のために提供された形状を確認できる。色を見ると、アバットメントの光沢がある場所または光沢がない場所の個々の部分に応じて、アバットメントは金色またはメタリックイエローカラーになる。
図3は、本発明に従ったインプラントシステムを示し、スクリュータイプの各々の歯科インプラントが、歯科アバットメントの形態で各々の構成要素と組み合わされる。部品b、c、e、f、h、l、k、及びlは、様々な倍率での走査型電子顕微鏡画像を示す。根尖インプラント領域または頂点インプラント領域は、表面の開放細孔が最大で数マイクロメートルまでの開口サイズに到達する顕著なクレート/火山構造を示す。表面は不規則であり、ランダムに分布した多くの表面構造を含む。隣接する移行インプラント領域は、同様のクレート/火山状の形態及び不規則な形態を示す。しかしながら、表面の特性及び細孔は小さくなっている。冠状インプラント領域で大きな変化が発生し、多孔質で不規則な表面がなくなり、代わりに、旋削プロセスから生じる規則的な線または溝のパターンが確認できる。上記の線及び溝は、配向された線の粗さを表面に与える。より高倍率で、微細なナノ構造の表面が発見される。ここで、基本的に、酸化物層によって旋削線構造が「装飾」され、酸化物層は旋削線構造を覆っている。最後に、歯科アバットメントに注目すると、示される実施形態では、歯科アバットメントの表面モルホロジーが冠状インプラント領域の表面モルホロジーとかなり類似し、酸化物層が重ね合わされた旋削線/溝の配列が示されることを確認できる。図の部品d、g、j、及びmは、白色光干渉法によって取得された表面形状の3D再構成を示し、上記の観察結果が確認される。
図3に示される例に関して、以下で詳述され得る。新規のアバットメント表面は、旋削と、それに続く軽度な陽極酸化処理とによって生成されたものである。結果として生じる表面は非多孔性で平滑で、平均表面粗さSaは0.13±0.02μmであり、展開表面積比Sdrは3.39%であり(図3のb及びdを参照)、69±48nmのサイズの規則的に分布したナノ構造を示し、153±5nmの酸化物層の厚さを有する(図3のcを参照)。酸化物層の厚さに関して、アバットメントに黄色(干渉色として知られている)が与えられ、干渉色は、薄い粘膜の場合に灰色のシャインスルー効果を減らすのに有益であることが示されている。作成されたナノ構造により、そして、未修飾チタンと比較して酸化物層の厚さが約20倍増加することにより、作成された表面は、上皮細胞及び線維芽細胞の付着に好都合であるはずである。さらに、平滑な表面はプラークの保持を制御し、機械的洗浄を容易にすることが期待される。歯科インプラントのカラー領域または冠状領域(冠状端から0~2mmの領域)は最小粗さを有し、Saは0.51±0.03μmであり、Sdrは16.6%である。図3のb及びdに見えるように、その粗さは、機械パラメータの調節によって取得され、その調節によって、旋削線の寸法及び間隔が画定された状態で、バリのない表面をもたらす。さらに、冠状インプラント領域は、サイズが43±21nmであり酸化物層の厚さが142±17nmであるアバットメントのようなナノ構造と同様の特性がある(図3のfを参照)。Saが0.5~1.0μmの最小の粗い表面は、より平滑な表面と比較して、わずかに少ない骨量減少を示す。したがって、本明細書で作成されたインプラントカラー/冠状インプラント領域の表面粗さは、オッセオインテグレーションの必要性とメンテナンス及び洗浄の必要性とのバランスをとるために妥当なレベルにする必要がある。さらに、アバットメント表面と冠状インプラント領域との表面テクスチャ、化学組成、酸化物層の厚さ、及びナノ構造の類似点により、前述のように、アバットメントからインプラントへのスムーズな軟組織の移行が可能になる。インプラントの本体は、スパーク陽極酸化によって徐々に粗くなる。表面の標準的な火山状の突出部の密度及びサイズを変えることによって、粗さは、移行インプラントゾーン(すなわち、歯科インプラントの冠状端から2~4mm)のSa(0.92±0.16μm)から、頂点領域/根尖インプラント領域(4mm‐頂点)のSa(1.49±0.19μm)に増加し、生体内で最良の骨反応を引き起こすことが知られている粗さにより近づく。また、移行インプラント領域から根尖インプラント領域への粗さが増加すると、各々、148%及び187%のSdr値に反映されるように、表面積も増加する。全体として、冠状端から根尖端へのSdrの増加は、インプラントプラットフォーム/冠状端から頂点及び根尖端まで減少する骨密度とは逆になるように設計されている。これにより、頂点に向かう摩擦が増加し、適切なインプラントの保持が可能になる。移行インプラント領域及び/または根尖インプラント領域の表面を粗くするために使用される絶縁破壊電圧を超える大電流は、2桁分大きい酸化物層の形成をもたらし、各々、移行インプラント領域及び根尖インプラント領域で7.2±0.3μm及び9.9±1.3μmに到達する。これらの酸化物層はアナターゼリッチであり、高い表面エネルギー及び多くの遊離ヒドロキシル基を含む。サンドブラスト及び酸エッチングが施された市販のインプラントと比較して、陽極酸化された表面は最も多いヒドロキシル基を示す。高度にヒドロキシル化されたチタン表面は、おそらくECM分子の好ましい吸着によって、生体内のオッセオインテグレーション及び骨形成を促進し、骨芽細胞の石灰化及び分化を向上させる。アナターゼリッチの陽極酸化されたインプラント領域は、オッセオインテグレーションに最適化された特性があり、様々な症状の治療予測可能性が高くなり、10年以上機能した後の他の表面改質よりも故障率が低くなることをもたらす。成長中に、電解質からの酸素及びリンが酸化物層に取り込まれる。アバットメント表面は平均3.49±0.36%のリンを示す一方、冠状インプラント領域の表面は4.00±0.13%であり、移行インプラント領域は7.20±0.59%であり、根尖インプラント領域は8.16±0.31%であることを示す。下記の表では、上記のインプラントシステムの様々な構成要素及び領域の生理化学的表面特性がまとめられている。
Figure 2022507228000002
以下では、上記の生理化学的特性を決定するために使用される測定方法を説明する。本方法は、また、この説明に言及される全てのパラメータを決定するために一般に適用可能な関連する測定方法の例を提供する。
酸化物層の厚さdOX
当該厚さは、歯科インプラントまたは構成要素の断面で測定される。そのために、歯科インプラントまたは構成要素をアクリル樹脂にコールドマウントし、研がれ及び研磨して、その中心線またはその縦軸(下記で定義れる)に沿った断面を達成できる。歯科インプラントまたは構成要素の側面は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって撮像でき、当該SEM画像の様々な位置における酸化物層の厚さをソフトウェアの支援により測定する。これは、当業者によく知られている手順である。ここで行われた測定に関して、Zeiss Leo 1530走査型電子顕微鏡、二次電子検出器、及び様々な倍率での5kV加速電圧を使用したものである。細孔径及びナノ構造は、各々、1k及び10kの倍率でImageJソフトウェア及びSEM画像を使用して決定されたものである。条件ごとに6枚の画像を使用した。好ましくは、酸化物層の上記の厚さは平均厚さであり、この厚さは、冠状インプラント領域または関連するいずれかのインプラント領域の様々な位置で測定され、次に、全ての測定から計算された数学的平均であることを意味する。
粗さパラメータSa及びSdr
白色光干渉法を使用して測定されたものである。インプラント表面の画像スタックは、50倍の対物レンズを使用して、光学3Dプロフィロメータ、gbs、smart WLI extended(Gesellschaft fur Bild und Signalverarbeitung mbH、イルメナウ、ドイツ)によって獲得された。その後、取得されたデータは、表面粗さを決定するためにMountainsMap(登録商標)ソフトウェアで処理されたものである。パラメータSa及びSdrは、3次多項式除去フォーム(polynomial 3 removal form)及び50μmカットオフのガウシアンフィルタ(FALG、ISO16610-61)を適用した後に決定されたものである。測定面積は、全ての測定で350×220μmであった。4つの構成要素及び4つの歯科インプラントが測定され、歯科インプラントは、図3に示される各領域(すなわち、冠状領域、移行領域、及び根尖領域)に関して、9つのエリアごとに測定されたものである。アバットメントは9つのエリアのそれぞれで測定されたものである。
リン含有量C及び表面化学
表面の元素組成を決定するために、X線光電子分光法(XPS)測定が以下の手順で行われた。10mLの超純水(タイプ1、18.2MΩ.cmの抵抗率)で、サンプルを120秒間で2回リンスした。次に、サンプルを窒素ガス流で乾燥させ、XPSサンプルホルダに取り付けた。洗浄したインプラントを実験室の雰囲気に最小時間だけ露出するように注意が払われた。XPS測定は、単色AlKαX線(1486.6eV)を使用して、Kratos Axis Ultra分光計によって行われた。Kratos Axis Ultra DLD XPS機器(S/N:C332549/01)の結合エネルギー校正は、BS ISO15472(2010年)に従って、2018年7月18日に実行された。サンプルごとに、約2mm×約1mmのエリアから調査スペクトルを獲得して(通過エネルギー=160eV)、調査スペクトルから、表面の元素組成を決定した。電荷補償は、磁気的に集束した電子ビームを大量の電流として使用して達成される。分析に使用される標準的な光電子の取り出し角は90°で、5~8nmの範囲のサンプリング深度が生じる。
細孔径及びナノ構造サイズ
各々の表面のSEM画像に基づいて決定した。従来の画像ソフトウェアを使用して、細孔サイズ及びナノ構造サイズを測定した。
保護層を形成するための方法、使用、及び保護層を有するインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素
本発明の複数の発明者は、驚いたことに、下記に説明するような比較的低いpHの溶液から形成された保護層を提供することによって、例えば、保管中に汚染からインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面を保護できることを見出した。係る保護層は、従来技術で形成された層と比較して、より迅速及びより完全に除去でき、及び/または生物学的統合に好ましいインプラント可能な構成要素もしくはインプラントの構成要素の表面状態を提供または維持できる。
一態様では、本発明は、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法に関し、本方法は、
a)構成要素の表面に溶液を塗布するステップであって、溶液は25℃でpH6.8以下である、塗布することと、
b)ステップa)で塗布された溶液を乾燥させ、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成することと、を含む。
本明細書では、本発明の全体を通して、用語「溶液」は、20℃及び1気圧で液体状態にある組成物を意味する。
一実施形態では、溶液は、溶媒和(溶解)状態の無機カチオン及び無機アニオンを含む。本発明では、用語「無機カチオン」及び「無機アニオン」は、各々、一緒に塩を形成する元素または元素群の荷電種を意味する。無機カチオンの例は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びその他の金属のカチオンである。しかしながら、この用語は、また、アンモニウムと、ホウ素、ヒ素、テルリウム等のカチオンとを含む。言い換えると、「無機カチオン」は、炭素を含まない正電荷種を含むものとして説明できる。
用語「無機アニオン」は、炭素原子を含まない任意の負電荷種を含む。一実施形態では、用語「無機アニオン」は、ハロゲン(特に、F、Cl、Br、I)のアニオン、硝酸塩または亜硝酸塩等の窒素原子及び酸素原子を含むアニオン、硫酸塩または亜硝酸塩等の窒素原子及び酸素原子を含むアニオン、ならびにリン酸塩、ピロリン酸塩、または亜リン酸塩等のリン原子及び酸素原子を含むアニオンを含む。ちなみに、本発明では、水解離により形成されるイオン(すなわち、H/H及びOH)は、各々、用語「無機カチオン」及び「無機アニオン」に含まれない。
用語「1価」、「2価」及び「3価」は、カチオンまたはアニオンの電荷を意味する。1価カチオンの例はNaまたはK及びアンモニウム等のアルカリ金属のものであり、1価アニオンの例はCl及びHPO を含む。2価カチオンの例は、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類金属のものを含み、2価アニオンの例は、例えば、SO 2-及びHPO 2-を含む。3価アニオンの例は、例えば、PO 3-を含む。
溶液は水溶液であり得る。本明細書では、用語「水性」は、溶液が水の全組成物の50重量%以上、例えば70重量%以上または80重量%以上、例えば90重量%以上を含むことを意味する。水に加えて任意選択的に存在し得る他の共溶媒は、水混和性溶媒、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、またはアセトン等のアルコール及びケトンを含む。これらの共溶媒は、一般的に、組成物の総重量の50重量%未満、例えば、30重量%以下または20重量%以下の量で存在する。
また、溶液は非水溶液であり得る。これは、水を含み得ない溶液、または全組成物の50重量%未満の量で水を含む溶液を意味する。この場合、溶媒は、水混和性溶媒、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、またはアセトン等のアルコール及びケトンから成る群から選択され得る。これらは、単独で、または組み合わせて使用できる。溶媒の選択は、主に、取り扱いの容易性及び保護層の成分を溶解する能力によって決定されるが、可燃性または毒性等の他の要因によっても影響を受け得る。
一実施形態では、共溶媒は存在せず、水が唯一の溶媒である。本実施形態の好ましい態様では、溶液は、溶媒和されたカチオン及びアニオンを形成するために溶解状態にある水及び無機塩から成る。本明細書では、塩は、例えば、アルカリ金属の塩、好ましくは、ナトリウムの1価カチオンを含むのが好ましい。一実施形態では、溶液中のカチオンは、ナトリウム及びマグネシウムから選択され、他のカチオンは、溶液中の全てのカチオンに存在しない、または溶液中の全てのカチオンの10モル%以下(例えば、5モル%以下)の量に存在する。ちなみに、本発明の全体を通して、水の解離(すなわち、H/H及びOH)によって形成されるイオンは、それらの濃度によってpHが決定されるため、溶液中のカチオン及びアニオンの相対量及び総量の計算では無視されている。言い換えると、本発明では、アニオン及びカチオンの濃度及び量は、溶液のpHとは無関係に表され、H/H及びOHは、無機カチオン及び有機カチオン及び無機アニオン及び有機アニオンの絶対量及び相対量の計算では無視されている。
一実施形態では、溶液は、有機物成分及び添加剤を含み得るか、または有機物成分及び添加剤を含み得ない。これらは、一実施形態では、糖、ポリビニルピロリドン等の水溶性ポリマー(例えば、数平均分子量が15,000以下または10,000以下)、コラーゲン、抗酸化剤または防汚剤(BHT等)、薬学的活性成分(ビタミン等)、抗菌剤または殺菌剤、抗生物質から成る群から選択され得る。
この溶液は、有機塩を含み得るか、または有機塩を含み得ない。用語「有機塩」は、水に溶解及び解離するとカチオン及びアニオンを形成する材料を意味し、カチオンまたはアニオンのいずれかは、炭素を含む有機化合物である。係る有機塩の例は、酢酸ナトリウム、アセチルアセトナ―トナトリウム、ギ酸ナトリウム等と、塩化ピリジニウム、塩化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩等とを含む。
一実施形態では、有機物成分及び添加剤の量は、組成物の総重量の10重量%以下、例えば5重量%以下、例えば2重量%以下である。一実施形態では、係る有機物成分及び添加剤は存在しない。
一実施形態では、水溶液は有機塩を含まず、また他の有機化合物または添加剤も含まない。本実施形態の好ましい態様では、塩は、ナトリウム塩及びマグネシウム塩だけによって形成され、より好ましくは、リン酸ナトリウム及びリン酸マグネシウム、リン酸水素、リン酸二水素、及び塩化物から形成される。
一実施形態では、溶液は、H及びH以外の1価の無機カチオンと、1価、2価、または3価の無機アニオンとを含む。本実施形態の一態様では、1価の無機カチオンは、Na、K、及びNH 、好ましくはNa及びK、より好ましくはNaから成る群から選択される。本明細書では、1価の無機カチオンの量は、全無機カチオンの50モル%以上が1価の無機カチオンから選択され、好ましくは全無機カチオンの60モル%以上、例えば65モル%以上または70モル%以上が選択されるのが好ましい。
したがって、一実施形態では、1価の無機カチオンの量は、全無機カチオンの50モル%以上、好ましくは60モル%以上、例えば65モル%以上または70モル%以上であり、次に、1価の無機カチオンは、Na及びKから成る群から選択される。一実施形態では、1価の無機カチオンはNaであり、Naは、全無機カチオンの50モル%以上、好ましくは60モル%以上、例えば65モル%以上または70モル%以上の量で存在する。
一実施形態では、Naが存在し、Kが存在せず、残りの無機カチオンは、2価の無機カチオン、より好ましくはMg2+及びCa2+、さらにより好ましくはMg2+から成る群から選択されるのが好ましい。好ましい態様では、無機カチオンはNa及びMg2+だけによって形成され、すなわち、溶液は、Na及びMg2+以外のいずれかのカチオンを含まない。本明細書では、Naの量は、好ましくは全無機カチオンの50モル%以上、好ましくは60モル%以上、例えば65モル%以上または70モル%以上である。
溶液中の無機アニオンは特に限定されず、体液中で容易に溶解するカチオンと塩を形成する限り、いずれかのアニオンが存在し得る。一般的ガイドラインとして、20℃で50g/l以上の量、例えば100g/l以上の量、150g/l以上の量、さらには200g/l以上の量が水に溶解する塩は、本発明の溶液中で使用でき、高溶解性塩が好ましい。したがって、アニオン及びカチオンの組み合わせは、低溶解性の塩が形成されないように選ぶ必要があり、これにより、特に、Mg2+及びCa2+等の2価カチオンが存在する場合、炭酸塩及び炭酸水素塩を避ける必要がある。この理由として、一般的に、20℃で約0.1g/lの溶解度を有する難溶性の炭酸塩だけの沈殿の形成をもたらすためである。したがって、一実施形態では、アニオンは、硝酸塩(NO )、硫酸塩(SO 2-)、ハロゲン、特に、塩化物(Cl)、リン酸塩(PO 3-)、リン酸水素(HPO 2-)、及びリン酸二水素(HPO )から成る群から選択された。
一実施形態では、溶液は、いずれかの他の塩を含まないが、ナトリウム及びマグネシウムの塩化物、リン酸塩、リン酸水素、及びリン酸二水素から選択された塩を含む。
一実施形態では、溶液はナトリウムカチオンを含み、ナトリウムカチオンは、溶液中の全てのアルカリカチオン及びアルカリ土類金属カチオンの合計の30~100モル%(例えば、50~99モル%)を形成し、溶液は、リン酸塩アニオン、リン酸水素アニオン、及び/またはリン酸二水素アニオンを含み、リン酸塩アニオン、リン酸水素アニオン、及び/またはリン酸二水素アニオンは、全無機アニオンの合計の30モル%以上、例えば50モル%以上を形成する。本明細書では、アルカリ金属カチオンは、水素を除く周期表の1族の金属(すなわち、Li、Na、K、Rb、Cs、及びFr)の全てのカチオンを含み、アルカリ土類金属カチオンは、周期表の2族(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、及びRa)の全てのカチオンを含む。
一実施形態では、溶液はマグネシウムイオンを含み、好ましくは、マグネシウムイオンは、溶液中の全てのアルカリカチオン及びアルカリ土類金属カチオンの合計の0.1~50モル%を形成する。次に、残りはナトリウムカチオン及びカリウムカチオンによって形成され得、好ましくは、残りはナトリウムカチオンによって形成される。
一実施形態では、溶液はカルシウムイオンを含まず、好ましくはアンモニウムイオンも含まない。
驚いたことに、溶液のpHは保護層の特性に大きな影響を及ぼし、pH6.8以下(25℃)の溶液から形成されている保護層は除去性の点で優れており、保護層の溶解後に、高親水性の表面(高い表面エネルギーを有する表面)を提供する。保護層の溶解後、高親水性の純粋なインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の表面を提供できるため、これらの効果の両方が、インプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の組み込みを容易にすると考えられている。例えば、インプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素が金属または金属合金、特に、チタンまたはチタン合金から作られるとき、保護層の溶解後のインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の表面は、高密度のヒドロキシル基を示し得、周囲組織との統合を容易にすると考えられている。
効果はまだ完全には理解されておらず、理論に縛られることを望まないが、表面電荷(例えば、チタンまたはチタン合金のインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の表面電荷)は、浸される溶液のpHに強く依存すると考えられている。低pHでは、インプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の表面(例えば、金属または金属合金から作られたものの表面、または酸化チタン等の金属酸化物から作られたものの表面)は正電荷を帯びていると考えられ、表面電荷は、pHが増加するにつれて、溶液中で徐々に減少する。これは、等電点(すなわち、表面の正電荷と負電荷とのバランスがとれているpH)によって表される。チタン、チタン合金、及び酸化チタンから作られた材料に関して、等電点は、概して、pH4.0~6.8の間に含まれる。
表面が負電荷を帯びている場合、溶液中のカチオンは表面と強く相互作用し、洗い流されにくくなる。逆に、正電荷は、カチオンが表面に引き付けられにくいため、カチオンの除去を容易にし得る。
pH6.8以下の保護層溶液を使用することによって、カチオンと表面との相互作用が弱くなり、これは、水でリンスしたときの、または体液に接触したときのカチオンのより容易な除去を説明し得る。したがって、好ましくは、溶液のpHは、また、保護層が形成される表面の等電点よりも低い。
さらに、6.8以下の低いpHは、保護層の生成中及び/または保護層を有するインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の保管中に、大気からの二酸化炭素及び場合によって他の種の取り込みを防止し得るまたは減らし得ると想定され得る。二酸化炭素が吸着すると、溶液中で炭酸イオン及び炭酸水素イオンを形成し、これにより、特に、アルカリ土類金属カチオンとの組み合わせで、溶解度が比較的低い塩が形成される。また、炭酸塩は親水性の低い材料であり、したがって、保護層表面への有機汚染物質の吸着を容易にし得る。本発明の保護層を形成するための溶液により炭酸塩の形成が減るまたは防止されるため、溶解度が低い炭酸塩がないまたはその炭酸塩の量の減少により、保護層がより急速に溶解し得、有機物質による汚染が防止され得る、または減り得る。したがって、これは、25℃における溶液のpHが、6.8以下、例えば、6.5以下、6.0以下、5.5以下、または5.0以下であることの別の理由である。
したがって、一実施形態では、25℃における溶液のpHは、インプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の表面の等電点よりも低く、使用される金属または合金によって、6.8以下、例えば6.5以下、6.0以下、5.5以下、または5.0以下であり得る。
また、強酸性溶液は本発明の問題を解決するが、患者の体内での溶解時に有害な生物学的効果をもたらす可能性があり得る。したがって、溶液のpHは、好ましくは0.0以上、0.5以上、または1.0以上、例えば、1.5以上または2.0以上である。したがって、pHは、例えば、2.8~3.4、3.6~4.9、または3.5~5.5の範囲であり得る。
さらに、その低いpHにより、保護層は、保管中に、例えばチタンから作られたインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面の利用可能な官能基(例えば、OH基)の量を維持する。これは、保護層が炭素析出を減らし、保護層がない場合の保管と比較して、乾式保管中、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面の遊離/未結合ヒドロキシル基の親水性及び/または密度を維持するように構成されることを意味する。
したがって、本発明の保護層は、インプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素の乾式保管を可能にする。本発明は、また、保管中に汚染からインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素を保護するために、本明細書に説明されるような溶液を乾燥させることによって得られる保護層の使用を包含し、好ましくは、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、保管中に乾燥状態にある。
溶液の塩濃度は特に限定されないが、保護層の所望の厚さを取得するために当業者が調整できる。一実施形態では、溶液は、1~200mM、2~50mM、または5~20mM、例えば7~10mMの無機塩の総濃度を有し、その値は、上記に説明したような無機カチオン及び無機アニオンによって形成された全ての塩の合計として表される。
塩濃度は、2、4、5、7、10、20、40、または50mM以上のような高い値であり得るが、180、150、または125mM以下のような低い値であり得る。これらの範囲内で、インプラントを湿らせたまたは浸した後に乾燥させることによって、十分に厚い塩層を形成できる。
上記に説明した溶液から形成された保護層は、保管中に汚染からインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素を保護する。これは、保護層がない場合のインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素と比較して、汚染物質の量が減ることを意味する。
保護層は、また、保管中にインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の親水性を維持する。したがって、保護層を除去/溶解した後に、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の高親水性表面を維持し、再び暴露できる。これを達成するには、溶液を塗布する前に表面を親水性にする必要がある(すなわち、自由表面エネルギーの増加が必要である)こと、または、溶液を塗布すると同時に親水性の状態にする必要があること、のいずれかが要求される。したがって、一実施形態では、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、ステップa)における溶液の塗布前と、25℃の水で2分間インプラントまたは構成要素をリンスし、その後乾燥させることによって評価される保護層の除去後との両方の場合において、0~30°の水接触角を示す。
その結果として、本発明の保護層を形成するための方法の一実施形態では、本方法は、さらに、ステップa)における溶液の塗布前にまたは塗布と同時に、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の自由表面エネルギーを増加させるためのステップを含む。これは、HF、HCl、HSO、またはそれらの混合物等の無機酸による酸エッチング、UV照射、過酸化物による酸化、プラズマ処理等の当業者に既知の多くの方法によって達成できる。また、EP0388576に説明されている方法を使用し得る。
上記に説明したような溶液から形成された保護層は、インプラントされるときに容易に除去できる。これは、すすぎ試験で保護層の元素の除去を試験することによって評価できる。一実施形態では、(例えば、インプラントまたは構成要素をゆっくり流れる水の流れを受けるように置くことによって)インプラントまたは構成要素を25℃の水で2分間リンスした後、保護層の30原子%以下、例えば20原子%以下、好ましくは10原子%以下が表面に残る。これは、XPSまたはオージェ等のいずれかの適切な表面解析法によって評価できる。
ステップa)で溶液を塗布した後、ステップb)で乾燥させる。インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素をコーティングし、噴霧し、または溶液に浸漬/浸す等のいずれかの適切な技法によって、塗布を行うことができる。
以下のプロセスパラメータは、以下のことに従い得る。
塗布中のプロセスパラメータ:
〇 温度:概して、0~100°C、好ましくは、20~90°C
〇 圧力:通常、大気圧。
〇 時間:完全に濡れることを保証するのに十分である時間は、例えば、5秒以上であるが、一般的に、5分以下である。
乾燥中のプロセスパラメータ:
〇 温度:乾燥を可能にするのに十分である温度は、好ましくは30~95°C、より好ましくは50~90°Cである。
〇 時間:乾燥状態を達成するのに十分である時間は、好ましくは15~120分、より好ましくは30~100分である。
〇 圧力:大気圧(1atm以下)、例えば、50~770mmHg。
概して、インプラント表面を完全に覆われ得ない高多孔質層の形成を回避するために、適度な温度でより長期間及び比較的高圧下で乾燥することが好ましくあり得る。
インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、特に限定されないが、好ましくは、金属、金属合金、プラスチック材料、及びセラミック材料から作られたインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素である。好ましくは、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、金属または金属合金から作られ、チタン及びチタン合金が特に好ましい。
インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、また、その形態及び形状に関して限定されず、いずれかのインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、本発明の方法及び使用の対象になり得る。これは、例えば、股関節インプラント、膝インプラント、腕または脚の一部の交換品として設計されたインプラント、ならびにアバットメント、クラウン、ブリッジ等の歯科インプラント及び歯科インプラントの構成要素を含む。インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、好ましくは、歯科インプラント可能な構成要素またはインプラント用構成要素、より好ましくは、歯科インプラントまたは歯科インプラントアバットメントである。一実施形態では、インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素は、本開示にも開示されるインプラント、インプラントシステム、または構成要素であり得る。
本発明は、保護層を形成するための方法と、上記に説明したような保管中にインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素を保護するための層の使用とを含むだけでなく、溶液自体が当技術分野への発明の貢献であることも考えられる。したがって、本方法及び使用に関して上記に説明されている溶液は、本発明の特許請求可能な態様であると見なされ、これは、本方法及び使用について上記に説明されている溶液の全ての実施形態及び好ましい態様を含む。
保護層の厚さは特に制限されず、所望の保護を得るには薄い厚さで十分であり得る。厚さは、溶液中の保護層成分の濃度及び溶液の塗布量によって決まる。厚さは、0.1~20μm、例えば、0.2~5μmまたは0.3~3.1μmであり得る。
本発明は、また、上記に説明したような保護層を有するインプラントの構成要素またはインプラント可能な構成要素を含むパッケージを含む。パッケージは、空気、窒素、または他の不活性ガスから選択される大気中の保護層を有する乾式インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素で満たされ得る。インプラントは保護層によって保護されるため、空気を使用し得、パッケージは気密である必要はない。任意選択的に、例えばエチレンオキシドガスによる滅菌を利用し得、これは、エチレンオキシドガスがパッケージに浸透するため、パッケージングの前に、またはさらにパッケージングを行った後に実施できる。
実施例1-塩組成の効果
塩組成物の効果は、溶媒として水だけを含む水溶液を以下の組成物で調合することによって評価された。
溶液1
38.5mM NaHPO+7.15mM NaHPO+2.5mM MgCl
溶液2
38.5mM KHPO+7.15mM KHPO+2.5mM MgCl
各々、チタンインプラントを溶液1または溶液2で湿らせ、乾燥させ、インプラント上に塩層を取得した。
塩層が簡単な洗浄プロセスによって除去され得るかどうかを評価するために、各インプラントを10mlの水で3回リンスした。その後、残りの塩層の元素をオージェ分光法によって評価した。溶液1から取得された塩層に関して、元素の15%がインプラントの表面に残っている一方、溶液2から取得された塩層に関して、元素の26%が表面に残っていることが見られた。これは、ナトリウムベースの溶液がカリウムベースの溶液よりも容易に除去できることを示す。
実施例2-pH及び表面エネルギーの影響
pHの影響を評価するために、実施例1は、同じ塩濃度であるが、各々、pH7.1またはpH4.0の溶液1の2つの改質によって行われた。再び、10mlの水で3回リンスした後、pH7.1の溶液から取得された塩層は、表面に15原子%の残留元素をもたらした一方、pH4.0の溶液に関して、元素の3原子%のみが表面に付いていた。
これは、溶液のpHを酸性値に調整することで、より容易及び完全に除去できる層の取得を可能にすることを示す。
さらなる試験では、インプラント基材の表面エネルギーが塩層の除去性に影響を及ぼすかどうかを評価した。溶液1を用いて2つの試験を行った。1つは、高い表面エネルギー(水接触角=0°)を有するインプラントであり、もう1つは、低い表面エネルギー(水接触角=47°)を有するインプラントである。インプラントを10mlの水で3回リンスした後、表面積の大きいインプラントに関して、塩層の元素の15原子%が表面に残っていた一方、表面エネルギーが低いインプラントに関して、元素の2原子%だけが表面に残っていた。これは、インプラントの支持構造表面の低い表面エネルギーによって除去が容易になることを示す。
実施例3-汚染に対する保護効果
大気中の元素分子の吸着から表面を保護する際の保護層の効果を試験するために、保護層がある場合または保護層がない場合の環境チャンバー(25°C、湿度50%に設定)に保管されたアバットメント表面の炭素含有量を測定した。
アバットメント表面を15分間UVオゾン処理し、該当する場合、上記の溶液1から形成された保護層を塗布して乾燥させ、結果として得られるアバットメントを窒素で満たしたグローブボックスの保護環境で扱われた(これらのサンプルは時間0と呼ばれる)。保護層があるサンプルまたは保護層がないサンプルは、2分、1時間、または3日間の期間にわたって、空気に露出された。最初にUV洗浄されていない他のサンプルは、最終時点(t inf.)として使用された。各時点で、サンプルを超純水でリンスし、窒素流でブロー乾燥させた。表面の炭素含有量は、XPSまたはオージェ分光法によって原子百分率として決定される(図4bも参照されたい)。
保管中、炭化水素及び他の大気中の元素が表面に堆積する。炭素の蓄積は、UVオゾンで洗浄したアバットメントの7.2at%の炭素含有量を評価することによって確認された。大気条件に露出されるとき、炭素含有量は、2分後に13.4at%、1時間後に14.3at%、72時間後に20.4at%に急速に増加する。興味深いことに、アバットメントが溶液1から取得された保護塩層の特性に対して影響を及ぼすとき、炭素含有量は一貫して低く、72時間後に12.4at%に到達した。UV洗浄を行わず、標準パッケージに保管したアバットメントの炭素含有量(最終時点Infのもの)は、また、塩層のないアバットメントと比較して、塩層を利用したとき大幅に低くなった(各々、14.6at%対34.9at%)。図4bも参照されたい。
炭素含有量に加えて、表面を構成する他の元素の比率は、デバイスを洗い流した後、有意に差がなかったが、保護層の完全な溶解を示す。このデータは、層が実際に完全に溶解し、リンス後の低炭素レベルによって示されるように、元の状態の表面を暴露していたことを示唆する。
さらに、親水性と相関する表面エネルギーは、大気汚染物質が表面に堆積するにつれて減少することが知られている。保管されたサンプルの親水性の評価は、保護塩層なしで保管されたサンプル(接触角:46.3±5.6°)と比較して、0°の接触角で示されるように高い表面エネルギー及びヒドロキシル基の維持を確認し、本発明の溶液から取得された保護層とともに、保管されたサンプルのより低い炭素含有量及びより高い表面エネルギーを確認した(図4cも参照されたい)。
最後に、アバットメントに播種されたケラチノサイトでも、インプラントに播種されたMSCでも、保護層に反応する細胞増殖の違いは観察されず(各々、図4e及び図4fを参照されたい)、保護層の細胞親和性が確認された。

Claims (44)

  1. 顎骨の穴に挿入され、インプラントされるときに骨組織に少なくとも部分的に配置されるように構成される歯科インプラントであって、
    前記歯科インプラントは、冠状インプラント領域を含み、前記冠状インプラント領域の表面は、
    60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層で少なくとも部分的に覆われ、
    0.1μm~1.0μmの範囲の平均算術平均高さSaを有する、
    歯科インプラント。
  2. 前記冠状領域の前記表面は、平滑で、基本的に非多孔性で、ナノ構造であり、及び/または機械加工されたままの構造を示し、特に、前記機械加工プロセスからの旋削線の配置を含む、請求項1に記載の歯科インプラント。
  3. 前記冠状領域の前記表面は、0.2μmから、好ましくは0.4μmから、0.6μmまで、好ましくは0.8μmまでの範囲の平均算術平均高さSaを有し、任意選択的に、
    前記酸化物層は、80nmから、130nmまで、好ましくは160nmまでの範囲の平均厚さを有する、請求項1~2のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  4. 前記冠状領域は、人間の目で見るとき、黄色またはピンク色を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  5. 前記歯科インプラントは、
    移行インプラント領域と、
    根尖インプラント領域と、
    前記冠状インプラント領域から前記根尖インプラント領域まで延在する縦軸とをさらに含み、
    前記歯科インプラントの冠状端を起点して前記縦軸に沿った前記歯科インプラントの根尖までの一連の領域は、冠状インプラント領域-移行インプラント領域-根尖インプラント領域の順番に並んでおり、
    前記領域の表面特性に関して、
    ‐前記根尖インプラント領域の平均算術平均高さSa>前記移行インプラント領域のS>前記冠状インプラント領域のSa、
    ‐前記根尖インプラント領域の平均展開界面面積比Sdr>前記移行インプラント領域のSdr>前記冠状インプラント領域のSdr、
    ‐前記根尖インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚さdOX>前記移行インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚さdOX>前記冠状インプラント領域のインプラント表面の酸化物層の平均厚さdOX、及び
    ‐前記根尖インプラント領域の前記酸化物層の平均リン含有量C>前記移行インプラント領域の前記酸化物層の平均リン含有量C>前記冠状インプラント領域の前記酸化物層の平均リン含有量C
    の少なくとも1つが当てはまる、請求項1~4のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  6. 前記根尖インプラント領域、前記移行インプラント領域、及び前記冠状インプラント領域の前記表面特性は、前記歯科インプラントの前記縦軸に沿った異なる領域間で、段階的または連続的に、好ましくは勾配的に、またはそれらの組み合わせで変化する、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  7. ‐前記根尖インプラント領域、前記移行インプラント領域、及び/または前記冠状インプラント領域では、前記酸化物層は、さらに、カルシウム、マグネシウム、及び/もしくはフッ化物を含み、ならびに/または
    ‐前記根尖インプラント領域及び前記移行インプラント領域の前記表面は微小孔表面であり、ならびに/または骨成長開始物質及び骨成長刺激物質の少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  8. 前記根尖インプラント領域の前記表面は、
    ‐平均Sa:1.50μm±0.4μm、
    ‐平均Sdr:187%±50%、
    ‐平均孔径:1.5μm±0.5μm、
    ‐平均酸化物層の厚さdOX:9000nm±3000nm,及び
    ‐平均リン含有量C:4%から、好ましくは6%から、10%まで、好ましくは12%までの範囲内、
    の少なくとも1つ、好ましくは全てを示し、
    ならびに/または、
    前記移行インプラント領域の前記表面は、
    ‐平均Sa:0.8μm±0.5μm、
    ‐平均Sdr:148%±40%、
    ‐平均孔径:1.0μm±0.5μm、
    ‐平均酸化物層の厚さdOX:7000nm±3000nm、及び
    ‐平均リン含有量C:3%から、好ましくは5%から、9%まで、好ましくは11%までの範囲内、
    の少なくとも1つ、好ましくは全てを示し、
    ならびに/または、
    前記冠状インプラント領域の前記表面は、
    ‐平均Sa:0.5μm±0.3μm、
    ‐平均Sdr:16.6%±15%、
    ‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
    ‐平均酸化物層の厚さdOX:120nm±40nm、及び
    ‐平均リン含有量C:2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内、
    の少なくとも1つ、好ましくは全てを示す、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  9. 前記根尖インプラント領域、前記移行インプラント領域、及び前記冠状インプラント領域の前記表面特性は、陽極酸化処理を行うことによって、少なくとも部分的に得られ、好ましくは、
    前記根尖インプラント領域、前記移行インプラント領域、及び前記冠状インプラント領域の前記表面は、前記酸化物層を含む陽極酸化表面である、請求項1~8のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  10. 前記移行インプラント領域及び/または前記根尖インプラント領域の前記表面は、スパーク陽極酸化処理を行うことによって得られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  11. 前記歯科インプラントの基材は、チタンまたはチタン合金を含み、好ましくはチタンまたはチタン合金から成り、任意選択的に、
    前記根尖インプラント領域及び前記移行インプラント領域の前記表面の前記酸化物層は、好ましくは70~100%の範囲で、アナターゼ相の結晶酸化チタンを含み、残りはルチル酸化チタン及び/またはアモルファス酸化チタンを含み、任意選択的に、
    前記冠状インプラント領域の前記表面の前記酸化物層は、主にアモルファス酸化チタンを含むか、またはアモルファス酸化チタンから成り、好ましくは、前記酸化物層は、実質的に非晶質及び/またはアナターゼフリーである、請求項1~10のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  12. a)前記冠状インプラント領域は、前記歯科インプラントの前記冠状端から、前記縦軸に沿って最大2mm±0.5mmまで前記歯科インプラントの根尖端に向かって延在し、
    前記移行インプラント領域は、さらに前記縦軸に沿って前記歯科インプラントの前記根尖端に向かって前記2mm±0.5mmから最大4mm±0.5mmまで延在し、
    前記根尖インプラント領域は、前記4mm±0.5mmから前記歯科インプラントの前記根尖端に至るまで延在し、
    または、
    b)前記冠状インプラント領域は、前記歯科インプラントの前記冠状端から前記縦軸に沿って前記歯科インプラントの前記根尖端に向かって測定して、0.5mから、好ましくは1.0mmから、より好ましくは1.5mmから、2.5mmまで、好ましくは4.0mmまで、より好ましくは6.0mmまでの長さを有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の歯科インプラント。
  13. 歯科用構成要素、好ましくは歯科アバットメントであって、
    前記構成要素の表面は、
    60nm~170nmの範囲の平均厚さを有する酸化物層によって少なくとも部分的に覆われ、
    0.05μm~0.5μmの範囲の平均算術平均高さSaを有する、
    構成要素。
  14. 前記構成要素の前記表面は、陽極酸化処理を行うことによって少なくとも部分的に得られ、好ましくは、
    前記構成要素の前記表面は、前記酸化物層を含む陽極酸化表面である、請求項13に記載の構成要素。
  15. 前記構成要素の前記表面は、平滑で、ナノ構造で、基本的に非多孔性であり、及び/または機械加工されたままの構造を示し、特に、前記機械加工プロセスからの旋削線の配置を含む、請求項13及び14のいずれか1項に記載の構成要素。
  16. 前記アバットメントの表面は、人間の目で見るとき、黄色またはピンク色を示す、請求項13~15のいずれか1項に記載の構成要素。
  17. 前記構成要素の前記表面は、0.08μmから、好ましくは0.13μmから、0.3μmまでの範囲の平均算術平均高さSaを有し、任意選択的に、
    前記酸化物層は、80nmから、130nmまで、好ましくは160nmまでの範囲の平均厚さを有する、請求項13~16のいずれか1項に記載の構成要素。
  18. 前記構成要素の前記表面は、
    ‐平均Sa:0.2μm±0.1μm、
    ‐平均Sdr:5.0%±5%、
    ‐平均ナノ構造サイズ:80nm±50nm、
    ‐平均酸化物層の厚さdOX:120nm±40nm、及び
    ‐平均リン含有量C:2%から、好ましくは3%から、5%まで、好ましくは6%までの範囲内、
    の少なくとも1つ、好ましくは全てを示し、
    Saは前記構成要素の前記表面の前記算術平均高さであり、Sdrは前記構成要素の前記表面の展開界面面積比であり、dOXは前記構成要素表面の前記酸化物層の前記厚さであり、Cは前記酸化物層のリン含有量である、請求項13~17のいずれか1項に記載の構成要素。
  19. 前記構成要素の基材は、チタンまたはチタン合金を含み、好ましくはチタンまたはチタン合金から成る、請求項13~18のいずれか1項に記載の構成要素。
  20. 歯科用インプラントシステムであって、
    請求項1~12のいずれか1項に記載の歯科インプラントと、
    請求項13~19のいずれか1項に記載の構成要素と、
    を含み、
    前記歯科インプラント及び前記構成要素は、互いに接続可能であるように構成される、歯科用インプラントシステム。
  21. 前記冠状インプラント領域及び前記構成要素の表面モルホロジー及び/または個々の表面特性の大きさは、互いに類似する、請求項20に記載のインプラントシステム。
  22. 前記冠状インプラント領域の個々の表面特性の前記大きさと前記構成要素の個々の表面特性の前記大きさの差は、前記根尖インプラント領域または前記移行インプラント領域の個々の表面特性の前記大きさと前記冠状インプラント領域の個々の表面特性の大きさの差よりも小さい、請求項20及び21のいずれか1項に記載のインプラントシステム。
  23. 前記インプラントシステムは、歯科修復要素をさらに含み、
    前記インプラント、前記構成要素、及び前記歯科修復要素を組み合わせて接続し、アセンブリを形成するか、または歯科用パーツキットを形成する、請求項20~22のいずれか1項に記載のインプラントシステム。
  24. インプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素の表面に保護層を形成するための方法であって、
    a)前記構成要素の前記表面に溶液を塗布すること、ただし前記溶液は25℃でpH6.8以下である、及び
    b)ステップa)で前記塗布された前記溶液を乾燥させ、歯科用の前記構成要素の前記表面に前記保護層を形成すること、
    を含む、方法。
  25. 前記溶液は、H及びH以外の1価の無機カチオン、及び1価、2価、または3価の無機アニオンを含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記1価の無機カチオンは、Na、K、及びNH から成る群から選択され、
    任意選択的に、前記1価、2価、または3価の無機アニオンが、NO 、SO 2-、Cl、PO 3-、HPO 2-、及びHPO から成る群から選択される、請求項25に記載の方法。
  27. 前記溶液は、Mg2+及びCa2+、好ましくはMg2+から選択された無機2価カチオンを含む、請求項24または25に記載の方法。
  28. 前記溶液の25℃における前記pHは、前記保護層が形成される前記表面の等電点よりも低く、及び/または
    前記溶液の前記pHは、6.5以下、6.0以下、5.5以下または5.0以下、しかし、0.0以上、0.5以上、または1.0以上、例えば1.5以上、または2.0以上、例えば2.8から3.4まで、3.6から4.9まで、または3.5から~5.5までである、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 前記溶液はナトリウムカチオンを含み、前記ナトリウムカチオンは、前記溶液中の全てのアルカリカチオン及びアルカリ土類金属カチオンの合計の30から100モル%、例えば50~99モル%を形成し、
    前記溶液は、リン酸アニオン、リン酸水素アニオン及び/またはリン酸二水素アニオンを含み、前記リン酸アニオン、前記リン酸水素アニオン、及び/または前記リン酸二水素アニオンは、全無機アニオンの合計の30モル%以上、例えば50モル%以上を形成する、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記溶液はマグネシウムイオンを含み、
    好ましくは、前記マグネシウムイオンは、前記溶液中の全てのアルカリカチオン及びアルカリ土類金属カチオンの合計の0.1~50モル%を形成する。請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記溶液は、カルシウムイオンを含まず、かつ好ましくは、アンモニウムイオンを含まない、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記溶液は、1~200mM、2~50mM、または5~20mMの無機塩の総濃度を有する、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記保護層は、保管中に汚染から前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素を保護する、請求項24~32のいずれか1項に記載の方法。
  34. 前記保護層は、保管中に前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素の親水性を維持し、前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、ステップa)における前記溶液の前記塗布前と、25°Cの水で2分間前記構成要素をリンスし、続いて、前記溶液を乾燥させた後との両方の場合において、0~30°の水接触角を示す、請求項24~33のいずれか1項に記載の方法。
  35. ステップa)における前記溶液の前記塗布前にまたは前記塗布と同時に、前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素の自由表面エネルギーを増加させるためのステップをさらに含む、請求項24~34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 前記保護層は、保管中、前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素の前記表面の利用可能な官能基の量を維持する、請求項24~35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記保護層は、炭素析出を減らし、前記保護層がない場合の保管と比較して、乾式保管中、前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素の前記表面の遊離/未結合ヒドロキシル基の親水性及び/または密度を維持するように構成される、請求項24~36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、歯科インプラントまたはアバットメント等の歯科用構成要素、好ましくは歯科インプラントである、請求項24~37のいずれか1項に記載の方法。
  39. 前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、請求項1~12のいずれか1項に記載のインプラント、または請求項13~19のいずれか1項に記載の構成要素、または請求項20~23のいずれか1項に記載のインプラントシステムである、請求項38に記載の方法。
  40. 前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、金属または金属合金、好ましくはチタンまたはチタン合金から作られる、請求項24~39のいずれか1項に記載の方法。
  41. 請求項24~40のいずれか1項に記載の方法によって得られる保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素。
  42. 25℃の水で2分間前記インプラントまたは前記構成要素をリンスした後、30原子%以下、例えば20原子%以下、好ましくは10原子%未満の前記保護層が前記表面に残っている、請求項41に記載の保護層を有するインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素。
  43. 保管中に汚染からインプラント可能な構成要素またはインプラントの構成要素を保護するための、請求項24~32のいずれか1項に定義した前記溶液を乾燥させることによって得られる保護層の使用であって、
    好ましくは、前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、保管中に乾燥状態にある、使用。
  44. 前記インプラント可能な構成要素または前記インプラントの構成要素は、請求項1~12のいずれか1項に記載のインプラント、または請求項13~19のいずれか1項に記載の構成要素、または請求項20~23のいずれか1項に記載のインプラントシステムである、請求項42に記載の使用。
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