JP2022506137A - Bcl-2阻害薬の新規な塩、関連する結晶形、その調製方法及びそれを含有する医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

硫酸水素塩である、化合物Aの新規塩、及び粉末X線回折図によって特徴づけられる、関連する結晶形、それを調製する方法ならびにそれを含む医薬組成物。TIFF2022506137000012.tif62161

Description

本発明は、5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミド(本明細書において「化合物A」と称する)の新規な塩、又はその多形体若しくは溶媒和物、その調製方法並びにその医薬組成物に関する。本発明は特に、化合物Aの硫酸水素塩(本明細書において「化合物A、HSO」と称する)、及びその結晶形Iに関する。本発明はさらに、前記結晶形を調製する方法及び前記結晶形を含む医薬組成物を開示する。また本発明は、がん、免疫系の疾患及び自己免疫疾患の処置のための、そのような組成物の使用に関する。最後に、化合物A、HSOの無水結晶形を開示する。
化合物Aの化学構造は:
Figure 2022506137000002

である。
その調製、がんの治療のためのBcl-2阻害薬としてのその使用及びその医薬製剤は、国際公開公報第2015/011400号(実施例386)に記載されており、その内容は参照により組み込まれる。塩酸塩の形での化合物A(「化合物A.HCl」)の調製は、この文書で具体的に開示されている。それは凍結乾燥物として得られる。
化合物Aは非常に有望な薬物であるが、製剤化することが難しい化合物である。特に、水にわずかにしか溶けない(遊離塩基で0.01mg/mL未満)。化学物質は、そのいずれかの塩形態又は結晶形にあると、異なる物理的特性を示す可能性があるため、該薬物分子のこの多形は、貯蔵寿命、溶解性、製剤特性、加工特性、及び薬物の作用に影響を及ぼし得る。さらに、異なる多形体は、体内において異なる取り込み速度を有し、所望するよりも低い又は高い生物学的活性につながる可能性がある。極端な場合には、望ましくない多形体が毒性を示す可能性さえある。したがって、多形を理解し制御することは、より活性で、より安定で、又はより安価に製造し得る新薬を市場に投入する上で決定的な利点をもたらす。しかし、多形が徹底的な研究の対象となっているにもかかわらず、この現象を理解し且つ制御することは、実質的な科学上の課題となる。所与の分子が、1つ又はいくつかの結晶形で結晶化するかどうかを予測し、そのような結晶化につながる条件を見つけることは困難である。
工業的な観点からは、高い純度を有し、特に、高い再現性のある形態で、溶解性、濾過性、乾燥性、製剤の容易さ及び安定性の価値の高い特徴(これは、温度、光、湿度又は酸素濃度についての特別な要求なしにその長期の保存を可能にする)を有する化合物の合成を可能にすることが必須である。
本発明はまた、医薬組成物の調製(特に濾過)及び保存の工業的制約に適合する非常に優れた安定性を有する、明確に定義され、完全に再現可能な結晶形(I型)の化合物A、HSOを得るための方法を記載する。
化合物A、HSOの結晶形Iの粉末X線回折パターン(XPRD)を示す。 化合物A、硫酸水素塩の無水結晶形の粉末X線回折パターン(XPRD)を示す。 化合物A、塩酸塩の結晶形Iの粉末X線回折パターン(XPRD)を示す。 化合物A、硫酸水素塩の結晶形IのDSC及びTGAプロファイルを示す。 化合物A、塩酸塩の結晶型IのDSC及びTGAプロファイルを示す。 化合物A、HSOの結晶型Iの固体C13NMRスペクトルを示す。
発明の詳細な説明
本明細書で使用するとき、用語「含む」は「含有する」を意味し、何らかの追加成分の存在を排除することを意図しない(ただし、例えば成分の合計が合わせて100%になる場合など、文脈がそうでないことを示唆する場合を除く)。
用語「アルコール」は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノールなどのC-Cアルコールを意味する。
「がん」は、一群の細胞が、制御されない増殖を示す、疾患の一分類を意味する。がんの種類には、血液がん(リンパ腫及び白血病)及びがん腫、肉腫、又は芽細胞腫を含む固形がんが含まれる。「がん」は、膀胱、脳、乳房及び子宮がん、慢性リンパ性白血病、大腸がん、食道及び肝臓がん、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性ヘモパシー(malignant haemopathies)(例えば骨髄異形成症候群)、骨髄腫、(例えば多発性骨髄腫)、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、及び小細胞肺がんを含む。
「遊離分子」及び「遊離塩基」は、本明細書では互換的に使用され、塩の形態でない場合の化合物Aを指す。
本発明の実施態様
以下に説明するのは、本発明のいくつかの実施態様である。
E1. 5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)。
E2. E1記載の5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の結晶形Iであって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
5.55;6.62及び7.39
を示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
E3. E1記載の、5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の結晶形Iであって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
5.55;5.62;6.62;7.39;10.17;11.49;11.83;16.01;16.54;17.04;18.98;19.18;21.90;22.28;24.89
のうち少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個、又は全てを示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
E4. 以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
5.55;5.62;6.62;7.39;10.17;11.49;11.83;16.01;16.54;17.04;18.98;19.18;21.90;22.28;24.89
を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、E3記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E5. X’Celerator検出器を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD回折計を用いて測定され、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図:
Figure 2022506137000003

を有することを特徴とする、E4記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E6. 以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):
173.31 ppm, 155.32 ppm, 140.46 ppm, 139.19 ppm, 137.42 ppm, 134.68 ppm, 131.65 ppm, 131.14 ppm, 129.37 ppm, 126.32 ppm, 118.77 ppm, 117.36 ppm, 116.54 ppm, 113.61 ppm, 112.69 ppm, 110.74 ppm, 102.33 ppm, 101.45 ppm, 63.06 ppm, 57.19 ppm, 54.87 ppm, 52.06 ppm, 44.71 ppm, 43.94 ppm, 34.42 ppm, 32.89 ppm, 31.28 ppm, 30.66 ppm, 14.40 ppm, 13.34 ppm, 12.49 ppm and 10.50 ppm.
を有する、固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、E1~E5のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E7. 1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせた、E1記載の化合物Aの硫酸水素塩を、有効成分として含む医薬組成物。
E8. 1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせた、E2~E6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを、有効成分として含む医薬組成物。
E9. がん、自己免疫疾患及び免疫系の疾患の処置において使用するための、E7又はE8記載の医薬組成物。
E10. がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん及び子宮がん、慢性リンパ性白血病、大腸がん、食道及び肝臓のがん、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性ヘモパシー(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫、(例えば多発性骨髄腫)、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、及び小細胞肺がんから選択される、E9記載の医薬組成物。
E11. 医薬として使用するための、E1記載の化合物Aの硫酸水素塩。
E12. がん、自己免疫疾及び免疫系の疾患の処置において使用するための、E1記載の化合物Aの硫酸水素塩。
E13. がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん及び子宮がん、慢性リンパ性白血病、大腸がん、食道及び肝臓のがん、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性ヘモパシー(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫、(例えば多発性骨髄腫)、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、及び小細胞肺がんから選択される、E12記載の化合物Aの硫酸水素塩。
E14. 医薬として使用するための、E2~E6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E15. がん、自己免疫疾患及び免疫系の疾患の処置において使用するための、E2~E6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E16. がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん及び子宮がん、慢性リンパ性白血病、大腸がん、食道及び肝臓のがん、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性ヘモパシー(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫、(例えば多発性骨髄腫)、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、及び小細胞肺がんから選択される、E15記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
E17. 化合物Aの硫酸水素塩を、極性媒体中で結晶化させる、E2~E6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
E18. 前記極性媒体が、水及びアルコールから選択される1つ以上の溶媒で構成されている、E17記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
E19. 前記アルコールがエタノールである、E18記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
E20. 前記極性媒体がエタノール/水混合物である、E18記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
E21. E17~E20のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法であって、該方法において、該結晶化が、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iをごく少量使用して、シーディングされる方法。
E22. E1記載の5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の無水結晶形であって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
5.19;5.64;6.74;7.14;8.04;8.33;9.17;9.40;10.68;11.03;11.35;12.18;12.59;13.64;14.78;15.09
のうち少なくとも4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15個、又は全てを示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
E23. X’Celerator検出器を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD回折計を用いて測定され、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図:
Figure 2022506137000004

を有することを特徴とする、E22記載の無水結晶形。
化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを得ることは、安定性の良い特徴を有するという利点を有する。より特別には、スクリーニングに使用した溶媒と温度の範囲では、1つの結晶形しか観察されず、これは、試験された条件においては、硫酸水素塩の多形性が限られていることを示している。さらに、それによって得られた化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iは、十分に安定であり、温度、光、湿度又は酸素濃度の特定の条件なしに、長期間保存することができる。
以下の本明細書の実施例は、本発明を説明するが、いかなる様式でもそれを限定するものではない。
実施例1:化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを得る方法
化合物A 25g(遊離塩基)を、周囲温度でエタノール 239.5gに入れた。次に、混合物を65℃で加熱した。次に、硫酸の水溶液(HSO4.27g+水 59.87g)を徐々に加えた。混合物を1時間撹拌した後、10℃に冷却した。結晶化が完了したとき、懸濁液を濾過し、10℃のエタノール/水混合液で洗浄し、濾過し、減圧下で乾燥した。乾燥後、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを、収率約70%及び純度99.8%超で得た。固体は粉末X線(X-ray powder)によって、実施例3に記載されているように特徴付けられた。
本発明に係る結晶化方法において、化合物A(遊離塩基)は、使用され得る任意の方法によって得られる。
実施例2:化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを得る方法(シーディング)
化合物A 25g(遊離塩基)を、周囲温度でエタノール 239.5gに入れた。次に、混合物を65℃で加熱した。次に、硫酸の水溶液(HSO4.27g+水 59.87g)を徐々に加えた。混合物を30分間撹拌した。次に、混合物をわずかに冷却した後、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I(出発物質の2重量%)を用いてシーディングした。混合物を30分間撹拌した後、10℃に冷却した。結晶化が完了したとき、懸濁液を濾過し、10℃のエタノール/水混合液で洗浄し、濾過し、減圧下で乾燥した。乾燥後、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを、収率約70%及び純度99.8%超で得た。固体は粉末X線によって、実施例3に記載されているように特徴付けられた。
本発明に係る結晶化方法において、化合物A(遊離塩基)は、使用され得る任意の方法によって得られる。
実施例3:化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I(粉末X線回折図)
データの記録は、X’Celerator検出器を備えたPANalytical X'Pert Pro MPD回折計を使用して、以下の条件下で、透過モードにて行った。
- 電圧45kV、電流40mA、
- マウント:θ/θ方式、
- アノード:銅、
- Kα-1の波長:1.54060Å、
- Kα-2の波長:1.54443Å、
- Kα-2/Kα-1の比:0.5、
- 測定モード:3°~55°(ブラッグ角2θ)を0.017°刻みで連続測定、
- 1ステップあたりの測定時間:35.5301秒。
実施例1又は2の方法に従って得られた化合物Aの硫酸水素塩の形Iの粉末X線回折図は、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)によって表されている。有意な線を、以下の表に列挙する(collated)。
Figure 2022506137000005
実施例4:安定性試験
すべての保存条件及び保存期間について、保存後のHPLC分析のために、化合物Aの塩の結晶形 20mgを、30mLのバイアルに入れた。
原薬(drug substance)の含有量をLCで測定した(%m/m)。
Figure 2022506137000006
粉末の外観(白色)及び化学的安定性は、25℃/60%相対湿度、30℃/65%相対湿度、40℃/75%相対湿度で3ヵ月超、及び50℃/75%相対湿度で6週間の、試験したすべての条件下で変化しないままであった。
さらに、X線回折の結果は、Tでの分析後、及び25℃/90%相対湿度で蓋なしガラス瓶中にて6週間保存後に、結晶形が変化しないことを示す。
結論として、原薬は試験期間中、物理的且つ化学的に安定であるとみなすことが出来る。
実施例5:化合物Aの硫酸水素塩の無水結晶形を得る方法(シーディング)
化合物A 5.83Kg(遊離塩基)を、周囲温度でエタノール 55.85Kgに入れた。次に、混合物を65℃で加熱した。次に、硫酸の水溶液(HSO1Kg+水 13.96Kg)を徐々に加えた。混合物を30分間撹拌した。次に、混合物をわずかに冷却した後、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I(出発物質の2重量%)を用いてシーディングした。混合物を30分間撹拌した後、10℃に冷却した。結晶化が完了したとき、懸濁液を濾過し、10℃のエタノール/水混合液で洗浄し、濾過し、減圧下で乾燥した。次に、乾燥した生成物を不活性雰囲気(窒素)下で保存した。化合物Aの硫酸水素塩の無水結晶形を、収率約78±5%、純度99.9%超及び含水率約0.43%で得た。固体は粉末X線によって、実施例6に記載されているように特徴付けられた。
本発明に係る結晶化方法において、化合物A(遊離塩基)は、使用され得る任意の方法によって得られる。
実施例6:化合物Aの硫酸水素塩の無水結晶形(粉末X線回折図)
データの記録は、以下の条件で行った。
分析する試料約30~50mgを、試料ホルダーディスクに固定された2枚のポリマーフィルム(Kapton(R))の間に配置する。試験サンプルのX線回折パターンを、40kV及び30mAにて、CuKα放射線(=1.5418Å)を用いて透過モードで動作するX線回折計を使用して、15分間で、3° 2θから少なくとも40° 2θまで、0.01~0.02° 2θの範囲のステップ幅で記録する。これらの設定は、使用する回折計によって異なり得る。
実施例5の方法に従って得られた、化合物Aの硫酸水素塩の無水形の粉末X線回折図は、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)(図2)によって表されている。有意な線を、以下の表に列挙する。
Figure 2022506137000007
実施例7:化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを得る方法(シーディング、キログラム単位のバッチサイズ)
化合物A 5.83Kg(遊離塩基)を、周囲温度でエタノール 55.85Kgに入れた。次に、混合物を65℃で加熱した。次に、硫酸の水溶液(HSO1Kg+水 13.96Kg)を徐々に加えた。混合物を30分間撹拌した。次に、混合物をわずかに冷却した後、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I(出発物質の2重量%)を用いてシーディングした。混合物を30分間撹拌した後、10℃に冷却した。結晶化が完了したとき、懸濁液を濾過し、10℃のエタノール/水混合液で洗浄し、濾過し、減圧下で乾燥した。その後、生成物を40℃、相対湿度(RH)50%の雰囲気下で再び水和した。得られた生成物を不活性雰囲気(窒素)下で保存した。化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを、収率約78±5%、純度99.9%超及び含水率約6.5±1%で得た。固体は粉末X線によって、実施例3に記載したように特徴付けられた。
本発明に係る結晶化方法において、化合物A(遊離塩基)は、使用され得る任意の方法によって得られる。
実施例8:化合物Aの塩酸塩の結晶形Iを得る方法及びそれを特徴づける粉末X線回折図
化合物Aの非晶質塩酸塩(国際公開公報第2015/011400号の実施例386) 1510mgを、エタノール 15mL中で48h時間スラリー化することにより、その結晶性エタノール溶媒和物に変換した。残留固体を濾過し、エタノール 1mLで2回洗浄し、次に水 10mL中に5分間懸濁した。困難な濾過の後、残留固体を30℃/10mbarで一晩乾燥させ、X線回折(3~30° 2θ/10分)により分析した。
HCl塩の調製方式は、最初に、エタノール溶媒和物をもたらし、それが水中の再懸濁の後に、HOで置換され、水和形を与えるという事実によって複雑になっている。得られた水和HCl塩は、濾過するのが非常に困難な微細な針状物を形成した。
前述の方法に従って得た化合物Aの塩酸塩の形Iの粉末X線回折図は、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び相対強度(%で表される)(図3)によって表されている。有意な線を、以下の表に列挙する。
Figure 2022506137000008
実施例9:化合物Aの塩酸塩及び硫酸水素塩の結晶形IのDSC及びTGAプロファイル
SO
硫酸水素塩 形Iのサンプル(約4mg)の示差走査熱量測定(DSC)プロファイルを、TA Instruments Q1000(又はQ2000)示差走査熱量計にて、正の窒素気流下(under a positive flow of nitrogen)、ピンホールを穿孔したアルミニウムパン中、10℃/分で、0℃~250℃の間記録した(図4)。
硫酸水素塩 形Iのサンプル(約10mg)の熱重量分析(TGA)プロファイルを、TA Instruments Q5000 熱重量分析装置にて、正の窒素気流下、アルミニウムのオープンパン中、10℃/分で、25℃~250℃の間記録した(図4)。
塩酸塩
塩酸塩 形Iのサンプル(約4mg)のDSCプロファイルを、TA Instruments Q1000(又はQ2000)示差走査熱量計にて、正の窒素気流下、ピンホールを穿孔したアルミニウムパン中、10℃/分で、0℃~250℃の間記録した(図5)。
塩酸塩 形Iのサンプル(約6mg)のTGAプロファイルを、TA Instruments Q5000 熱重量分析装置にて、正の窒素気流下、アルミニウムのオープンパン中、10℃/分で、25℃~250℃の間記録した(図5)。
SO塩のDSCプロファイルは、HCl塩のそれに比べて複雑ではない。HSO塩のTGAプロファイルでは、25~100℃の間に水の損失が見られる。224℃に向かうDSCプロファイル中に、融解/分解の吸熱が見られる。HCl塩の融解温度及びエンタルピーは、HSO塩のそれよりも低い。これは、HSO塩に比べてHCl塩の方が低い脱水後の結晶化度を有することを示唆し得る。
実施例10:化合物A、HSOの結晶形I、(固体NMRスペクトル)
化合物A、HSOの結晶形Iは、固体核磁気共鳴スペクトルによっても特徴づけられた(図6)。化合物A、HSOの固体13C NMRスペクトルを、4mmのCP/MAS SB VTNタイプのプローブを備えたBruker SB Avance III HD 500分光計を用いて、周囲温度で、以下の条件下で記録した。
- 周波数:125.76MHz、
- スペクトル幅:37kHz、
- マジック角の回転速度:10kHz、
- パルスプログラム:SPINAL64デカップリングを伴う交差分極、
- リサイクル遅延10秒、
- データ取り込み時間(Acquisition time):46m秒、
- 接触時間:4m秒、
- スキャン回数:4096。
フーリエ変換の前に、5Hzの線幅広幅化(line-broadening)を適用した。
得られたスペクトルは、アダマンタンのサンプルを基準にして参照した(アダマンタンの高周波数ピークを38.5ppmに設定した)。
化合物A、HSOの結晶形Iは、化学シフトが以下の表に与えられる(ppm±0.2ppmで表される)、一連のピークの存在によって定義することができる:
Figure 2022506137000009

Claims (19)

  1. 5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)。
  2. 請求項1記載の5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の結晶形Iであって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
    5.55;6.62及び7.39
    を示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
  3. 請求項1記載の5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の結晶形Iであって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
    5.55;5.62;6.62;7.39;10.17;11.49;11.83;16.01;16.54;17.04;18.98;19.18;21.90;22.28;24.89
    のうち少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14個、又は全てを示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
  4. 以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
    5.55;5.62;6.62;7.39;10.17;11.49;11.83;16.01;16.54;17.04;18.98;19.18;21.90;22.28;24.89
    を有する粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項3記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
  5. X’Celerator検出器を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD回折計を用いて測定され、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図:
    Figure 2022506137000010

    を有することを特徴とする、請求項4記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
  6. 以下のピーク(ppm±0.2ppmで表される):
    173.31 ppm, 155.32 ppm, 140.46 ppm, 139.19 ppm, 137.42 ppm, 134.68 ppm, 131.65 ppm, 131.14 ppm, 129.37 ppm, 126.32 ppm, 118.77 ppm, 117.36 ppm, 116.54 ppm, 113.61 ppm, 112.69 ppm, 110.74 ppm, 102.33 ppm, 101.45 ppm, 63.06 ppm, 57.19 ppm, 54.87 ppm, 52.06 ppm, 44.71 ppm, 43.94 ppm, 34.42 ppm, 32.89 ppm, 31.28 ppm, 30.66 ppm, 14.40 ppm, 13.34 ppm, 12.49 ppm and 10.50 ppm
    を有する固体13C CP/MAS NMRスペクトルを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
  7. 1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせた、請求項1記載の化合物Aの硫酸水素塩を、有効成分として含む医薬組成物。
  8. 1つ以上の薬学的に許容され得る賦形剤と組み合わせた、請求項2~6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを、有効成分として含む医薬組成物。
  9. がん、自己免疫疾患及び免疫系の疾患の処置において使用するための、請求項7又は8記載の医薬組成物。
  10. がんが、膀胱がん、脳がん、乳がん及び子宮がん、慢性リンパ性白血病、大腸がん、食道及び肝臓のがん、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性ヘモパシー(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫、(例えば多発性骨髄腫)、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、膵臓がん、及び小細胞肺がんから選択される、請求項9記載の医薬組成物。
  11. 医薬として使用するための、請求項1記載の化合物Aの硫酸水素塩。
  12. 医薬として使用するための、請求項2~6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形I。
  13. 化合物Aの硫酸水素塩を、極性媒体中で結晶化させる、請求項2~6のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
  14. 前記極性媒体が、水及びアルコールから選択される1つ以上の溶媒で構成されている、請求項13記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
  15. 前記アルコールがエタノールである、請求項14記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
  16. 前記極性媒体がエタノール/水混合液である、請求項14記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法。
  17. 請求項13~16のいずれか1項記載の化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iを調製する方法であって、該方法において、該結晶化が、化合物Aの硫酸水素塩の結晶形Iをごく少量使用して、シーディングされる方法。
  18. 請求項1記載の5-(5-クロロ-2-{[(3S)-3-(モルホリン-4-イルメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル]カルボニル}フェニル)-N-(5-シアノ-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-イル)-N-(4-ヒドロキシフェニル)-1,2-ジメチル-1H-ピロール-3-カルボキサミドの硫酸水素塩(化合物A、HSO)の無水結晶形であって、以下の回折線(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される):
    5.19;5.64;6.74;7.14;8.04;8.33;9.17;9.40;10.68;11.03;11.35;12.18;12.59;13.64;14.78;15.09
    のうち少なくとも4、5、6、7、8、9,10、11、12、13、14、15個、又は全てを示す粉末X線回折図を有する、結晶形。
  19. X’Celerator検出器を備えたPANalytical X’Pert Pro MPD回折計を用いて測定され、線の位置(ブラッグ角2θ(度、±0.2°)で表される)及び面間距離d(Åで表される)によって表される、以下の粉末X線回折図:
    Figure 2022506137000011

    を有することを特徴とする、請求項18記載の化合物Aの硫酸水素塩の無水結晶形。
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