JP2022502008A - ドリマニルアセテート化合物を生成する方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、インビトロまたはインビボで実施されるそれぞれのドリマニルアルコール源のアセチル化による、アセチルトランスフェラーゼ触媒を用いたドリマニルアセテート化合物の新規な生成方法を提供する。本発明はまた、異なる微生物および植物源からの対応するアセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の同定に関する。本発明はまた、前記新たに同定された酵素に由来する酵素変異体の提供に関する。本発明の更なる態様は、そのような酵素および変異体、組換えベクター、ならびにそのようなアセチルトランスフェラーゼおよび変異体の産生に適し、かつドリマニルアセテート化合物の新規な生成方法を実施するのに適した組換え宿主細胞の対応するコーディング配列の提供に関する。本発明の別の態様は、本発明に従って得られるそのようなドリマニルアセテートの、匂い物質、フレーバーもしくはフレグランスまたは昆虫/害虫防除成分の製造のための中間体としての使用に関する。

Description

本発明は、インビトロまたはインビボで実施されるそれぞれのドリマニルアルコール源のアセチル化による、アセチルトランスフェラーゼ触媒を用いたドリマニルアセテート化合物の新規な生成方法を提供する。本発明はまた、異なる微生物および植物源からの対応するアセチルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の同定に関する。本発明はまた、前記新たに同定された酵素に由来する酵素変異体の提供に関する。本発明の更なる態様は、そのような酵素および変異体、組換えベクター、ならびにそのようなアセチルトランスフェラーゼおよび変異体の産生に適し、かつドリマニルアセテート化合物の新規な生成方法を実施するのに適した組換え宿主細胞の対応するコーディング配列の提供に関する。本発明の別の態様は、本発明に従って得られるそのようなドリマニルアセテートの、匂い物質、フレーバーもしくはフレグランスまたは昆虫/害虫防除成分の製造のための中間体としての使用に関する。
背景技術
テルペン類は、ほとんどの生物(微生物、動物、植物)に見出される。これらの化合物は、イソプレン単位と呼ばれる5つの炭素単位で構成されており、それらの構造中に存在するイソプレン単位の数によって分類され、当該単位は環状構造要素を含む場合がある。したがって、モノテルペン類、セスキテルペン類およびジテルペン類は、それぞれ10個、15個および20個の炭素原子を含むテルペン類である。例えば、セスキテルペン類は、植物界に広く見出される。セスキテルペン分子の多くは、それらがフレーバーおよびフレグランス特性ならびに化粧品、薬用、抗菌効果を有することで知られている。数多くのセスキテルペン炭化水素およびセスキテルペノイド類が同定されている。化学合成アプローチが開発されてきたが、それでも複雑であり、必ずしも費用対効果が高いとは限らない。
テルペン類の生合成による産生には、テルペンシンターゼと呼ばれる酵素が関与している。植物界には数多くのセスキテルペンシンターゼが存在し、すべて同じ基質(ファルネシル二リン酸、FPP)を使用するが、生成物プロファイルが異なる。セスキテルペンシンターゼをコードする遺伝子およびcDNAがクローニングされ、対応する組換え酵素の特性が明らかにされている。
セスキテルペン類の主な供給源、例えば、ドリマニルアルコール類、特にアルビカノールまたはドリメノールのようなドリマン構造を有する化合物の多くは、セスキテルペンを天然に含有する植物または微生物である。しかしながら、これらの天然源中のセスキテルペン類の含有量は低い場合がある。たとえ入手可能であったとしても、そのようなドリマニルアルコール類は、主にそれらが周囲温度で固体であるという事実に照らして、それらの更なる処理中に取り扱うことが困難である。取り扱いが容易な誘導体を提供することは、改善されたアプローチであり、ドリマニルアルコール類の更なる処理を簡素化するであろう。
Akita, H. et alは、Tetrahedron: Asymmetry 11 (2000). 1375-1388に、リパーゼ触媒を用いた(+)アルビカニルアセテートの不斉合成を記載している。この先行技術のアプローチは、エナンチオマー的に純粋なアルビカニルアセテートを得るために、少なくとも8つの化学合成ステップと、リパーゼによって触媒される2つの逐次反応とを必要とする。さらに、アセチル化反応はジイソプロピルエーテルおよびイソプロペニルアセテートの存在下に33℃で行われており、生合成経路に必要とされる生理学的条件とは相容れない条件であった。そのうえ、生理学的条件下では、我々の知る限りでは、リパーゼは必要とされるエステル交換反応を触媒することができない。リパーゼによるエステル形成は可能であるが、この活性は、存在する水の含有量に強く依存する。したがって、本発明のインビボ設定などの水性環境では、リパーゼはアセチル化よりもエステル結合の加水分解を触媒する(Jaeger K. et al; FEMS Microbiology Reviews, 1994, 15:1 pp29−63)。
ドリマニルアセテート化合物を生成する新規な方法、特に、例えば、糖基質の代謝によってドリマニルアルコール前駆体を提供する宿主細胞ベースのプロセスのように、水性環境でのドリマニルアセテートの完全な生化学合成に実施され得る方法を提供する必要性が依然として残っている。
概要
上記の課題は、アセチルトランスフェラーゼ活性を示し、かつアルビカノールまたはドリメノールのようなそれぞれのドリマンアルコール前駆体から、アセチル化を介してアセチル基供与体としてアセチル−CoAを使用して、アルビカニルアセテートまたはドリメノールアセテートのようなドリマニルアセテートを産生する、新しいクラスの酵素を提供することによって解決され得る。物理化学的特性のために、特にそれらは周囲温度で液体であることから、ドリマニルアルコール類のアセチル化誘導体は、より適切な材料として役立ち得る。
(+)−アルビカノール、(−)−ドリメノールおよびビシクロファルネソールの構造、ならびに図1のcのドリマン構造よりも特異的なドリマン部分の構造を示す。 非環状セスキテルペン前駆体FPPおよびアルビカノールを介したアルビカニルアセテートの細胞生物学的産生を説明する反応スキームを示す。 より一般的な「ドリマン構造」であって、C=C−二重結合の潜在的な位置を表示したものを示す。 (A/B)アセチルトランスフェラーゼCrDAT(A)またはアセチルトランスフェラーゼFgaAT(B)のいずれかとアルビカノールシンターゼXP_007369631.1を共発現する改変されたS. cerevisiae株YST069を用いて産生されたアルビカニルアセテートのGC−FID分析を示し、(A)からのアセチルトランスフェラーゼCrDATによって産生されたアルビカニルアセテートのMSスペクトルを(C)に示し、このMSスペクトルは、アルビカノニルアセテート標準物質からのMSスペクトルと同一であることを示す。 (例2に記載したように)アルビカノールに対して活性であることが見出された9つのアセチルトランスフェラーゼ(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6およびCfACT1−8)によって産生されたアルビカニルアセテートの相対量を示す。 (例2に記載したように)アルビカノールに対しても活性であることが見出された9つのアセチルトランスフェラーゼ(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6およびCfACT1−8)によって産生されたドリメニルアセテートの相対量を示す。 CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8、ERR364415−1_contig_8546およびDfATC13の各アセチルトランスフェラーゼを発現するS. cerevisiae細胞によって産生されたアルビカニルアセテートの相対量を示す。 CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8、XP_001258079.1、ERR364415−1_contig_8546およびDfATC13の各アセチルトランスフェラーゼを発現するS. cerevisiae細胞によって産生されたドリメニルアセテートの相対量を示す。 図7のAは、アセチルトランスフェラーゼCrDATによって産生されたドリメニルアセテートのMSスペクトルを示し、図7のBは、このMSスペクトルがドリメニルアセテート標準物質からのMSスペクトルと同一であることを示す。 図8のAは、アセチルトランスフェラーゼCrDATによって産生されたビシクロファルネシルアセテートのMSスペクトルを示し、図8のBは、このMSスペクトルがビシクロファルネシルアセテート標準物質からのMSスペクトルと同一であることを示す。 CrDAT、FgaAT、TcTAT、CrMAT、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8、BAU61551.1、PsSalAT、XP_001217250.1、ERR364415−1_contig_8546、PYI04555.1およびDfACT13の各アセチルトランスフェラーゼを発現するS. cerevisiae細胞によって産生されたビシクロファルネシルアセテートの相対量を示す。
使用した略語
bp 塩基対
kb キロベース
CoA コエンザイムA
DNA デオキシリボ核酸
cDNA 相補的DNA
DTT ジチオスレイトール
FPP ファルネシル二リン酸
GC ガスクロマトグラフ
MS 質量分析計/質量分析
MVA メバロン酸
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
RNA リボ核酸
mRNA メッセンジャーリボ核酸
miRNA マイクロRNA
siRNA 低分子干渉RNA
rRNA リボソームRNA
tRNA 転写RNA
定義
別段の記載がない限り、以下の技術用語の定義が適用されるものとする:
本発明の目的のための「アセチルトランスフェラーゼ」または「アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド」または「アセチル基を移動させることができるポリペプチド」は、より一般的にはアシルトランスフェラーゼEC2.3.1のクラスの酵素を指し、特にアセチル−CoA:アルコールO−アセチルトランスフェラーゼEC2.3.1.84を指す。それは、アセチル基供与体としてアセチル−CoAを用いて、アルビカノール、ドリメノールおよびビシクロファルネソールから選択される少なくとも1種のドリマニルアルコールをアセチル化する能力を示す。ドリマニルアセテートは、その立体異性体のいずれかの形態で、またはその混合物として生成され得る。アルビカニルアセテート、ドリメニルアセテートまたはビシクロファルネシルアセテートは、対応するアルコール前駆体が単一のアセチル基受容体として存在する場合には、唯一の生成物であり得、または2種以上のドリメニルアルコール類の混合物が提供され、アセチルトランスフェラーゼが基質特異的でない場合には、2種以上のドリメニルアセテートの混合物の一部であり得る。選択性が増加した場合、アセチルトランスフェラーゼは、優勢に単一のドリマニルアセテートを形成し得る。本明細書に記載されるようなアセチルトランスフェラーゼは、基質としての異なるドリマニルアルコール類に対して同一または異なる優先性または特異性を示し得る。例えば、第1のタイプのアセチルトランスフェラーゼが優勢にアルビカノールをアセチル化し得、第2のタイプのアセチルトランスフェラーゼが優勢にドリメノールをアセチル化し得、第3のタイプのアセチルトランスフェラーゼが優勢にビシクロファルネソールをアセチル化し得る。そのような場合、そのようなドリマニルアルコール類の混合物が基質として使用される場合には、それぞれの主生成物として、アルビカノールアセテート、ドリメノールアセテートまたはビシクロファルネシルアセテートが形成されるであろう。基質特異性の場合、アセチルトランスフェラーゼは、たとえそのようなドリマニルアルコール類の混合物が基質として使用される場合であっても、単一のドリマニルアセテートを選択的に形成し得る。特にアセチル化は、ドリマニルアルコール基質のそれぞれの立体化学的配置を保持した状態で実施される。
「アセチル基供与体」とは、酵素的にアセチル基を供与体から官能性ヒドロキシル基を有する分子のような受容体分子に移動させるための供給源として作用する化学的実体または分子を指し、この化学的実体または分子はまた、前記アセチル基と反応して対応する酢酸エステルを形成し得る。特定のアセチル基供与体は、アセチル−コエンザイムA(アセチル−CoA)である。
「ドリマンセスキテルペン」または「ドリマン」という用語は、図1aに描写されているようなドリマン様炭素骨格構造を有する環状テルペン、またはより具体的には図1cのより一般的な構造に関し、ここで、任意に存在するC=C二重結合の潜在的な位置は点線で示されている。
「ドリマニルアルコール」という用語は、「ドリマンセスキテルペン」または「ドリマン」のヒドロキシル化誘導体に関する。その例としては、任意の立体異性体の形態のアルビカノール、ドリメノールおよびビシクロファルネソールが挙げられる。
「ドリマニルアセテート」という用語は、そのようなドリマニルアルコールのアセチルエステル誘導体、例えばアルビカニルアセテート、ドリメニルアセテート、およびビシクロファルネシルアセテートに関する。
本出願の目的のための「アルビカノール」とは、特に(+)−アルビカノール(CAS:54632−04−1)に関する。
本出願の目的のための「ドリメノール」とは、特に(−)−ドリメノール(CAS:468−68−8)に関する。
本出願の目的のための「ビシクロファルネソール」とは、特に(+)−ビシクロファルネソールまたは[(4aS,8aS)−2,5,5,8a−テトラメチル−3,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロ−1−ナフタレニル]メタノール(IUPAC名)に関する。
「ファルネシル二リン酸」とは、(2E,6E)−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエン−1−ピロリン酸(FPP)を指す。
本出願の目的のための「Ambrox」とは、IUPAC名:(−)−(3aR,5aS,9aS,9bR)−3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン(CAS:6790−58−5)に関する。
「テルペンシンターゼ」または「セスキテルペンシンターゼ」または「ドリマンセスキテルペンシンターゼ」は、本明細書において互換的に使用される。
「二官能性テルペンシンターゼ」または「二官能性テルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド」という用語は、2018年5月31日に出願された国際出願PCT/EP2018/064344号明細書にさらに定義されているポリペプチドに関する。
「アルビカニル二リン酸シンターゼ」または「アルビカニル二リン酸シンターゼ活性を有するポリペプチド」または「アルビカニル二リン酸シンターゼタンパク質」または「アルビカニル二リン酸を産生する能力を有する」という用語は、アルビカニル二リン酸の合成を、その立体異性体またはそれらの混合物のいずれかの形態で、非環状テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)から出発して触媒することができるポリペプチドに関する。アルビカニル二リン酸は、唯一の生成物であってもよいし、セスキテルペン類の混合物の一部であってもよい。前記混合物は、アルビカニル一リン酸および/またはアルビカノールを含んでいてもよい。そのようなポリペプチドは、例えば、2018年5月29日に出願された国際出願PCT/CN2018/088902に記載されている。
「アルビカニル二リン酸シンターゼ活性」は、国際出願PCT/CN2018/088902号明細書に記載されているように、「標準的な条件」の下で決定される。
「アルビカノールシンターゼ」または「アルビカノールシンターゼ活性を有するポリペプチド」または「アルビカノールシンターゼタンパク質」という用語は、アルビカノールの合成を、その立体異性体またはそれらの混合物のいずれかの形態で、非環状テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)から出発して触媒することができるポリペプチドに関する。アルビカノールは、唯一の生成物であってもよいし、2種以上のセスキテルペン類の混合物の一部であってもよい。
「ドリメノールシンターゼ」または「ドリメノールシンターゼ活性を有するポリペプチド」または「ドリメノールシンターゼタンパク質」という用語は、ドリメノールの合成を、その立体異性体またはそれらの混合物のいずれかの形態で、非環状テルペンピロリン酸、特にファルネシル二リン酸(FPP)から出発して触媒することができるポリペプチドに関する。ドリメノールは、唯一の生成物であってもよいし、2種以上のセスキテルペン類の混合物の一部であってもよい。
「アルビカノールシンターゼ活性」およびドリメノールシンターゼ活性は、例えば、国際出願PCT/EP2018/0643444号明細書、国際公開第2015/169871号または国際公開第2015/176959号に記載されているように決定される。
本発明で使用される「ホスファターゼ」酵素は、水の消費下でオルトリン酸エステルをそれぞれのアルコールとオルトリン酸とに変換する能力を有する。ここで包含されるのは、酸性ホスファターゼ(酸性反応が最適なEC3.1.3.2)およびアルカリ性ホスファターゼ(アルカリ性反応が最適なEC3.1.3.1)である。
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」または「活性」という用語は、本明細書に記載されるようなテルペンシンターゼの能力であって、a)アルビカニル二リン酸および/またはアルビカノール、以下:アルビカニル二リン酸、および/またはアルビカニル一リン酸および/またはアルビカノールおよび/または1種以上の他のテルペン類、特にアルビカニル二リン酸を含む化合物の混合物の形成を触媒すること、またはb)ドリマニルアルコールもしくは2種以上のドリマニルアルコールと任意に1種以上の他のテルペン類との混合物の形成を触媒することを指す。
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」または「活性」という用語は、本明細書に記載されるようなアセチルトランスフェラーゼの能力であって、ドリマニルアセテートまたは2種以上のドリマニルアセテートと任意に1種以上の他のアセチル化化合物との混合物の形成を触媒することを指す。
「テルペン類の混合物」または「セスキテルペン類の混合物」という用語は、アルビカノール、ドリメノールおよびビシクロファルネソールのうちの少なくとも1種を含み、かつ1種以上の追加のテルペン類および/または1種以上の追加のセスキテルペン類を含んでいてもよいテルペン類またはセスキテルペン類の混合物を指す。
「イソプレノイド経路」または「HMG−CoAレダクターゼ経路」としても知られている「メバロン酸経路」は、真核生物、古細菌、および一部の細菌に存在する必須の代謝経路である。メバロン酸経路はアセチル−CoAから始まり、イソペンテニルピロリン酸(IPP)およびジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)と呼ばれる2つの5炭素ビルディングブロックを産生する。鍵となる酵素は、アセトアセチル−CoAチオラーゼ、HMG−CoAシンターゼ、HMG−CoAレダクターゼ、メバロン酸キナーゼ、ホスホメバロン酸キナーゼ、メバロン酸二リン酸デカルボキシラーゼ、およびイソペンテニル二リン酸イソメラーゼである。メバロン酸経路を酵素活性と組み合わせて、特にFPPシンターゼのような、テルペン前駆体GPP、FPPまたはGGPPを産生することにより、テルペン類の組換え細胞産生が可能になる。
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」または「形質転換細胞」という用語は、少なくとも1つの核酸分子、例えば、所望のタンパク質または核酸配列をコードする組換え遺伝子を含むように改変された細胞(または生物)を指し、この組換え遺伝子は、転写時に、本明細書に記載されるような生体触媒法または他の組換え法を実施するために必要とされる本発明の少なくとも1種の機能的ポリペプチドを産出する。特に、そのような宿主細胞または形質転換細胞は、対応するドリマニルアルコールから少なくとも1種のドリマニルアセテートを調製するのに有用なアセチルトランスフェラーゼを提供する。それらはまた、アルビカニル二リン酸および/またはアルビカニル一リン酸および/またはアルビカノール、またはアルビカニル二リン酸および/またはアルビカニル一リン酸および/またはアルビカノールを含有するテルペン類の対応する混合物を産生するのに有用なアルビカニル二リン酸シンターゼタンパク質のような他の酵素を提供し得る。それらはまた、少なくとも1種のドリマニルアルコールを調製するのに有用なテルペンシンターゼを提供し得る。宿主細胞は、特に細菌細胞、真菌細胞、または植物細胞もしくは植物である。宿主細胞は、宿主細胞の核ゲノムまたはオルガネラゲノムに組み込まれた組換え遺伝子を含んでいてもよい。あるいは、宿主は、組換え遺伝子を染色体外に含んでいてもよい。
「生物」という用語は、非ヒト多細胞もしくは単細胞生物、例えば植物、または微生物を指す。特に微生物は、細菌、酵母、藻類、または真菌類である。
「植物」という用語は、植物原形質体、植物組織、再生植物、もしくは植物の一部を生じさせる植物細胞組織培養物を含む植物細胞、または根、茎、葉、花、花粉、卵巣、胚、果実などの植物器官を含めるために互換的に使用される。本明細書の一実施形態の方法を実行するために、任意の植物を使用することができる。
特定の生物または細胞は、それがFPPを天然に産生する場合、またはそれがFPPを天然に産生しないが、本明細書に記載されているように核酸でFPPを産生するように形質転換されている場合、「FPPを産生することができる」ことを意味する。天然に存在する生物または細胞よりも多量のFPPを産生するように形質転換された生物または細胞もまた、「FPPを産生することができる生物または細胞」に包含される。
特定の生物または細胞は、それがドリマニルアセテートを天然に産生する場合、またはそれがドリマニルアセテートを天然に産生しないが、本明細書に記載されているように核酸でドリマニルアセテートを産生するように形質転換されている場合、「ドリマニルアセテートを産生することができる」ことを意味する。天然に存在する生物または細胞よりも多量のドリマニルアセテートを産生するように形質転換された生物または細胞もまた、「ドリマニルアセテートを産生することができる生物または細胞」に包含される。
特定の生物または細胞は、それがドリマニルアルコールを天然に産生する場合、またはそれがドリマニルアルコールを天然に産生しないが、ドリマニル二リン酸を産生するように形質転換されており、任意にさらに核酸で形質転換されてドリマニル二リン酸をドリマニルアルコールに変換する酵素活性を産生する場合、「ドリマニルアルコールを生成することができる」ことを意味する。天然に存在する生物または細胞よりも多量のドリマニルアルコールを生成するように形質転換された生物または細胞も、「ドリマニルアルコールを生成することができる生物または細胞」に包含される。
本明細書の説明および添付の特許請求の範囲において、「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は互換性があり、限定することを意図していない。
様々な実施形態の説明が「含む(comprising)」という用語を使用する場合、当業者であれば、いくつかの特定の例において、実施形態が「本質的に〜からなる」または「〜からなる」という言語を使用して代替的に記載され得ることを理解するであろうことをさらに理解されたい。
本明細書で使用される「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語は、本発明の化合物が通常その天然状態で付随する他の異種化合物を含まない状態を指し、そのため、「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」対象は、所定のサンプルの質量の少なくとも0.5重量%、1重量%、5重量%、10重量%もしくは20重量%、または少なくとも50重量%もしくは75重量%を含む。一実施形態では、これらの用語は、所定のサンプルの質量の少なくとも95重量%、96重量%、97重量%、98重量%、99重量%または100%重量%を含む本発明の化合物を指す。本明細書で使用される場合、核酸またはタンパク質を指すときの核酸またはタンパク質の「精製された」、「実質的に精製された」および「単離された」という用語はまた、例えば、原核生物または真核生物の環境において、例えば、細菌もしくは真菌の細胞、または哺乳類の生物、特に人体のような環境において天然に存在するものとは異なる精製または濃度の状態を指す。(1)他の関連する構造物もしくは化合物からの精製、または(2)前記原核生物もしくは真核生物の環境において通常は付随しない構造物もしくは化合物との関連付けを含む、天然に存在するものよりも高い精製または濃度の任意の程度は、「単離された」の意味の範囲内である。本明細書に記載される核酸もしくはタンパク質または核酸もしくはタンパク質のクラスは、当業者に知られている様々な方法およびプロセスに従って、単離されていてもよいし、そうでなければ、自然界に通常は付随しない構造物または化合物と関連付けされていてもよい。
「約」という用語は、記載された値の±25%、特に±15%、±10%、より具体的には±5%、±2%または±1%の潜在的な変動を示す。
「実質的に」という用語は、約80〜100%の範囲の値、例えば、85〜99.9%、特に90〜99.9%、より具体的には95〜99.9%、または98〜99.9%、特に99〜99.9%などの範囲の値を記載する。
「優勢に」とは、例えば、51〜100%の範囲、特に75〜99.99%、より具体的には85〜99.5%、例えば95〜99%の範囲のように、50%を超える範囲の割合を指す。
本発明の文脈における「主生成物」は、単一の化合物または少なくとも2種の化合物、例えば2種、3種、4種、5種以上、特に2種もしくは3種の化合物の群を示し、この単一の化合物または化合物の群は、本明細書に記載されるような反応によって「優勢に」調製され、かつ前記反応によって形成された生成物の構成成分の総量を基準として優勢な割合で前記反応中に含まれる。前記割合は、モル比、重量比、または好ましくはクロマトグラフィー分析に基づいて、反応生成物の対応するクロマトグラムから計算された面積比であってもよい。
本発明の文脈における「副生成物」は、単一の化合物または少なくとも2種の化合物、例えば2種、3種、4種、5種以上、特に2種もしくは3種の化合物の群を示し、この単一の化合物または化合物の群は、本明細書に記載されるような反応によって「優勢に」調製されない。
酵素反応は可逆性を有するため、本発明は、別段の記載がない限り、本明細書に記載される酵素反応または生体触媒反応の両方向の反応に関する。
本明細書に記載されるポリペプチドの「機能的変異体」には、以下に定義されているポリペプチドの「機能的等価物」が含まれる。
「立体異性体」という用語には、特に立体配座異性体が含まれる。
一般に、本発明によれば、本明細書に記載される化合物のすべての「立体異性体の形態」、例えば、構造異性体、特に立体異性体およびそれらの混合物、例えば、光学異性体、またはE−異性体およびZ−異性体などの幾何異性体、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。複数の不斉中心が1分子中に存在する場合、本発明は、これらの不斉中心の異なる立体配座のすべての組み合わせ、例えば、エナンチオマー対を包含する。
「立体選択性」は、化合物の特定の立体異性体を立体異性体的に純粋な形態で生成する能力、または複数の立体異性体から本明細書に記載されるような酵素触媒法で特定の立体異性体を特異的に変換する能力を記載する。より具体的には、これは、本発明の生成物が特定の立体異性体に関して濃縮されていたり、抽出物が特定の立体異性体に関して希釈されていたりすることを意味する。これは、次の式に従って計算された純度%eeパラメーターを介して定量化され得る:
%ee=[X−X]/[X+X100
式中、XおよびXは、立体異性体AおよびBのモル比(モル分率)を表す。
「選択的に変換する」または「選択性を高める」という用語は、一般に、不飽和炭化水素の特定の立体異性体の形態、例えばE形態のようなものが、対応する他の立体異性体の形態、例えばZ形態のようなものよりも(モルベースで比較して)高い割合または量で、前記反応の全過程中(すなわち、反応の開始と終了の間)、前記反応の特定の時点で、または前記反応の「間隔」中のいずれかで変換されることを意味する。特に、前記選択性は、基質の初期量の1〜99%、2〜95%、3〜90%、5〜85%、10〜80%、15〜75%、20〜70%、25〜65%、30〜60%、または40〜50%の変換率に対応する「間隔」中に観察され得る。前記のより高い割合または量は、例えば、以下の観点から表現され得る:
− 反応の全過程またはその前記間隔中に観察された異性体のより高い最大収率;
− 基質の変換値の定義された%度での異性体のより高い相対量;および/または
− より高い変換値の%度での異性体の同一の相対量
であって、それぞれが参照方法と比較して観察されることが好ましく、前記参照方法は、既知の化学的または生化学的手段と他の点では同一の条件下で実施される。
一般に、本発明に従って、本明細書に記載される化合物のすべての「異性体の形態」、例えば、構造異性体、特に立体異性体およびそれらの混合物、例えば、光学異性体、またはE−異性体およびZ−異性体などの幾何異性体、ならびにそれらの組み合わせなども含まれる。複数の不斉中心が分子中に存在する場合、本発明は、これらの不斉中心の異なる立体配座のすべての組み合わせ、例えば、エナンチオマー対、または立体異性体の形態の任意の混合物などを含む。
本発明による反応の「収率」および/または「変換率」は、例えば、反応が行われる4、6、8、10、12、16、20、24、36または48時間の定義された期間にわたって決定される。特に、反応は、正確に定義された条件、例えば、本明細書で定義されるような「標準的な条件」で行われる。
異なる収率パラメーター(「収率」またはYP/S;「比産性収率」;または「空時収率(STY)」)は、当該技術分野で周知であり、文献に記載されているように決定される。
「収率」および「YP/S」(それぞれ、産生された生成物の質量/消費された材料の質量で表される)は、本明細書では同義語として使用される。
比産性収率は、バイオマス1gあたり1時間および発酵ブロス1Lあたりで産生される生成物の量を記載する。WCWと記載される湿潤細胞重量の量は、生化学反応における生物学的に活性な微生物の量を記載する。この値は、1時間あたりのWCW1gあたりの生成物のg数(すなわち、g/gWCW−1−1)として与えられる。あるいは、バイオマスの量は、DCWとして記載される乾燥細胞重量の量として表すこともできる。さらに、バイオマス濃度は、600nm(OD600)での光学密度を測定し、実験的に決定された相関係数を使用して対応する湿潤細胞重量または乾燥細胞重量をそれぞれ推定することによって、より簡単に決定することができる。
「発酵産生」または「発酵」という用語は、インキュベーションに添加された少なくとも1つの炭素源を利用して、細胞培養において化合物を生成する微生物の能力(前記微生物に含まれるか、または前記微生物によって引き起こされる酵素活性によって支援される)を指す。
「発酵ブロス」という用語は、発酵プロセスに基づいており、かつ処理されていないか、または、例えば、本明細書に記載されているように処理された液体、特に水性または水性/有機溶液を意味すると理解される。
「酵素的に触媒される」または「生体触媒による」方法とは、前記方法が、本明細書で定義されているように、酵素変異体を含む酵素の触媒作用下で実施されることを意味する。したがって、この方法は、単離された(精製された、濃縮された)もしくは粗製の形態の前記酵素の存在下で、または細胞系、特に、前記酵素を活性形態で含有し、かつ本明細書に開示されているような変換反応を触媒する能力を有する天然または組換え微生物細胞の存在下のいずれかで実施され得る。
本開示が、異なる優先性の程度の特徴、パラメーターおよびその範囲(一般的な、明示的に好ましくない特徴、パラメーターおよび範囲を含む)に言及する場合、別段の記載がない限り、そのような特徴、パラメーターおよび範囲の2つ以上の組み合わせが、それらのそれぞれの優先性の程度にかかわらず、本明細書の開示によって包含される。
詳細な説明
a.本発明の特定の実施形態
1.少なくとも1種の、特に1種、2種または3種、特に1種または2種のドリマニルアセテート化合物を生体触媒的に生成する方法であって、
(1)アセチル基供与体の存在下で、立体異性的に純粋な形態または立体異性体の混合物の形態における少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアルコールを、特に、前記アセチル基供与体からのアセチル基を少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアルコールに移動させることができるアセチルトランスフェラーゼ活性を有する少なくとも1種の、特に1つのポリペプチドと接触させて、主生成物として少なくとも1種のドリマニルアセテート、特に主生成物として1種のドリマニルアセテートを得るステップと、
(2)任意に、ステップ(1)の反応生成物から少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアセテート化合物を単離するステップと
を含む、方法。
複数のドリマニルアセテートが形成される場合、混合物をさらに分離し、個々のアセテートを精製してもよい。
2.前記ドリマニルアセテート化合物が、アルビカニルアセテート、ドリメニルアセテート、およびビシクロファルネシルアセテートからなる群から選択され、それぞれが立体異性体的に純粋な形態で、またはその少なくとも2つの立体異性体の混合物、または前記アセテートの群のうちの少なくとも2つのメンバーを含むそれらの組み合わせとして存在する、実施形態1の方法。特定の実施形態では、単に1種のドリマニルアルコールが基質として使用され、単に1種のドリマニルアセテートが、立体異性体的に純粋な形態で、またはその少なくとも2種の立体異性体の混合物として、特に立体異性体的に純粋な形態で、生成物として得られる。
3.前記ドリマニルアルコールが、アルビカノール、特に(+)−アルビカノール、ドリメノール、特に(−)−ドリメノール、およびビシクロファルネソール、特に(+)−ビシクロファルネソールからなる群から選択され、それぞれが立体異性的に純粋な形態で、またはその少なくとも2つの立体異性体の混合物、または前記アルコールの群のうちの少なくとも2つのメンバーを含むそれらの組み合わせとして存在する、実施形態1または2の方法。特定の実施形態では、単に1種のドリマニルアルコール、特に立体異性体的に純粋な形態のものが基質として使用される。
4.前記アセチル基供与体がアセチル−コエンザイムA(アセチル−CoA)である、前記先行する実施形態のいずれか1つの方法。前記供与体は、外因的に反応混合物に添加されてもよく、例えば、単離された、濃縮された、もしくは精製された酵素を適用するインビトロプロセスにおいて添加されてもよく、またはより具体的には内因的に存在してもよく、例えば、代謝物としてアセチル−CoAを産生し、かつ意図されたアセチル化もしくは前記アセチル化を1つのステップとして包含するより複雑な多段階のプロセスを実施するために必要とされるポリペプチドまたはポリペプチド類を発現する宿主細胞系を適用するインビボプロセスにおいて存在してもよい。
5.前記アセチルトランスフェラーゼが、
a)配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、118、121、124、127、130、133、136、143および144から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに
b)アセチルトランスフェラーゼ活性を有し、かつ配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、118、121、124、127、130、133、136、143および144の前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド
から選択される、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
本発明の特定のアセチルトランスフェラーゼが、アルビカニルアセテート、ドリメニルアセテート、およびビシクロファルネシルアセテートからなる群から選択される1種以上のドリメニルアセテート化合物を生成する能力は、以下のリストによって示される:
Figure 2022502008
6.ステップ1)に先立って、前記少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアルコール化合物を生体触媒的に形成することをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
7.前記ドリマニルアルコール化合物が反応混合物中に内因的に存在してもよく、例えば、代謝物として前記ドリマニルアセテート化合物を生成し、かつ意図されたドリマニルアルコール合成または前記ドリマニルアルコール合成を1つのステップとして包含するより複雑な多段階のプロセスを実施するために必要とされるポリペプチドまたはポリペプチド類を発現する宿主細胞系を適用するインビボプロセスにおいて存在してもよく、それによって前記ドリマニルアルコールは、非環状セスキテルペン前駆体から酵素的に合成される、実施形態6の方法。
あるいは、前記ドリマニルアルコール化合物は、化学的または酵素的に生成され、かつ反応混合物に外因的に添加され、例えば、以下に定義されているように、その形成に必要とされる単離された、濃縮された、または精製されたシンターゼ酵素を適用するインビトロプロセスにおいて添加される。
8.前記非環状セスキテルペン前駆体がファルネシルピロリン酸(FPP)である、実施形態7の方法。
9.ドリマニルアルコールの前記酵素的合成が、前記非環状セスキテルペン前駆体を、1つ以上の酵素的ステップにおいて、特に主生成物として少なくとも1種のドリマニルアルコール、特に1種のドリマニルアルコールに変換する能力を有する1つ以上のポリペプチドによって触媒される、実施形態7または8の方法。
10.前記少なくとも1種のドリマニルアルコールが、1つまたはそれ以上、特に2つの酵素的ステップでFPPから産生される、実施形態6から9のうちのいずれか1つの方法。
11.前記少なくとも1種のドリマニルアルコールが、
a)前記ドリマニルアルコールを形成するドリマンセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド(1段階生合成);または
b)少なくとも1種のドリマニルリン酸中間体を形成するドリマニルリン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドと、前記少なくとも1種のドリマニルリン酸(一リン酸および/または二リン酸)中間体を少なくとも1種のドリマニルアルコールに変換するホスファターゼ活性を有するポリペプチドとの組み合わせ(2段階生合成)
によって触媒される、FPPの酵素的変換によって生成される、実施形態10の方法。
12.
a)前記ドリマンセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、アルビカノールシンターゼ活性、ドリメノールシンターゼ活性、ビシクロファルネソールシンターゼ活性またはそのような活性の任意の組み合わせから選択され、特に、前記活性のうちの1つを優先的に示し、より具体的には、前記活性のうちの1つを特異的に示し、かつ
b)前記ポリペプチドの組み合わせが、ドリマニル二リン酸シンターゼ活性、特にアルビカニル二リン酸シンターゼ活性およびホスファターゼ酵素、例えば細菌性アルカリホスファターゼを含む、
実施形態11の方法。
13.
a)前記ドリマンセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、国際出願PCT/EP2018/064344号明細書(2018年5月31日付出願)に記載されるようなドリマンシンターゼならびに国際公開第2015/169871号および国際公開第2015/176959号に記載されるようなドリメノールシンターゼから選択され、
b)前記ドリマニルリン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドが、モノリン酸のようなアルビカニルリン酸誘導体、より具体的には基質としてのファルネシル二リン酸(FPP)からアルビカニル二リン酸誘導体を産生する能力を含む、2018年5月29日に出願された国際出願PCT/CN2018/088902号明細書に記載されるようなアルビカニル二リン酸シンターゼである。
実施形態12の方法。
国際出願PCT/CN2018/088902号明細書(2018年5月29日付出願)に記載されるようなアルビカニル二リン酸シンターゼは、
Dryopteris fragransのDfHAD、DfHAD−9(V274A)、DfHAD−His_GST、およびDfHAD−8(K532R)
ならびにそれらと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、それらに由来するポリペプチド
である。
国際出願PCT/EP2018/064344号明細書(2018年5月31日付出願)に記載されるようなドリマンシンターゼ(すなわち、アルビカノールシンターゼまたはドリメノールシンターゼ)は、
Figure 2022502008
およびそれらと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、それらに由来するポリペプチド
である。
国際公開第2015/169871号に記載されるようなドリメノールシンターゼは、
Figure 2022502008
およびそれらと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、それらに由来するポリペプチド
である。
国際公開第2015/176959号に記載されるようなドリメノールシンターゼは、
Valeriana amurensisのVaTPS3
およびそれと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、それに由来するポリペプチド
である。
上記シンターゼ酵素のそれぞれのアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の配列番号は、本明細書の末尾に列挙されている。これらのポリペプチドおよび核酸ならびにこれらの配列のうちの少なくとも1つと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する、それらに由来するポリペプチドおよび核酸も本開示の一部である。
14.前記ドリマンセスキテルペンシンターゼが、
a)国際出願PCT/EP2018/064344号明細書に記載されるような、(二官能性)アルビカノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはアルビカノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号5と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体もしくは多様体ポリペプチド;
b)国際出願PCT/EP2018/064344号明細書に記載されるような、(二官能性)ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号7と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体もしくは多様体ポリペプチド
から選択される、実施形態13の方法。
15.インビボでは宿主細胞培養中で、またはインビトロでは宿主細胞溶解物もしくは少なくとも1種のドリマニルアセテートを産生するのに必要とされる濃縮もしくは単離されたポリペプチドを含む液体反応媒体中で実施され、それぞれ少なくとも1種のドリマニルアセテートの生成を助長する条件下にある、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
特に反応は、アセチル基供与体として内因的に形成されたまたは外因的に添加されたアセチル−CoAの存在下で行われる。特に反応は、内因的に形成されたまたは外因的に添加されたFPPの存在下で行われる。特に内因的に形成されたFPPは、FPPに生体変換可能な少なくとも1つの炭素源、例えば糖基質のような炭素源の代謝の結果である。FPPおよびアセチル−CoAが内因的に形成された細胞内インビボ法が特に着目される。
これらの宿主細胞または生物の中には、FPPを天然に産生しないものもある。本明細書に記載されるような実施形態の方法を行うのに好適には、非環状テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPPを天然に産生しない生物または細胞は、前記前駆体を生成するように遺伝子改変される。生物または細胞は、例えば、上記の実施形態のいずれかに従って記載された核酸による修飾前に、または同時に、そのように形質転換され得る。非環状テルペンピロリン酸前駆体、例えばFPPを産生するように生物を形質転換する方法は、当該技術分野で既に知られている。例えば、メバロン酸経路の酵素活性を導入することは、生物にFPPを産生させるのに適した戦略である。
16.
a)実施形態5に定義されている少なくとも1種のアセチルトランスフェラーゼ;任意に
b)非環状セスキテルペン前駆体FPPを、実施形態9から14のうちのいずれか1つに定義されている少なくとも1種のドリマニルアルコールに変換する能力を有する少なくとも1つのポリペプチド;および任意に
c)上記で定義されているメバロン酸経路に関与する酵素から選択される少なくとも1種の酵素
を機能的に発現することができる、組換え非ヒト宿主細胞または組換え非ヒト宿主生物中で実施される、実施形態15の方法。
特定の実施形態では、酵素a)およびb)、または酵素a)、b)およびc)は、本発明のインビボ法において適用されるような細胞系によって機能的に発現される。
17.前記非ヒト宿主細胞または宿主生物が、原核生物もしくは真核生物の微生物、またはそれらに由来する細胞から選択される、実施形態16の方法。
18.前記非ヒト宿主細胞または宿主生物が、細菌、真菌および植物の細胞または植物から選択される、実施形態17の方法。
19.前記真菌細胞が、酵母細胞であって、特に、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、ピキア(Pichia)属またはヤロウイア(Yarrowia)属から、特に、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(出芽酵母)種、ピキア・パストリ(Pichia pastori)(ピキア酵母)種またはヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)(アルカン資化酵母)種から選択された酵母細胞である、実施形態18の方法。
20.前記細菌細胞が、ロドコッカス(Rhodococcus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バチルス(Bacillus)属、またはエシェリヒア(Escherichia)属、特に大腸菌から選択される、実施形態18の方法。
21.ステップ(3)として、ステップ(1)またはステップ(2)の少なくとも1種のドリマニルアセテートを処理して、化学合成または生体触媒合成またはその両方の組み合わせを使用して誘導体を得ることをさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
22.誘導体が、炭化水素、アルコール、ジオール、トリオール、アセタール、ケタール、アルデヒド、酸、エーテル、アミド、ケトン、ラクトン、エポキシド、アセテート、グリコシド、エステルおよび/または多環式化合物である、実施形態21の方法。
23.ドリマニルアセテートが、アルビカニルアセテート、ドリメニルアセテートまたはビシクロファルネシルアセテート、特にアルビカニルアセテートまたはドリメニルアセテートを、主たるドリマニルアルコール生成物として、または特に単一のドリマニルアルコール生成物として含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
24.前記方法が、特に、非ヒト宿主生物または宿主細胞を、
a)アセチル基供与体からのアセチル基をドリマニルアルコールに移動させることができるアセチルトランスフェラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸、発現構築物またはベクターであって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと、任意に
b)非環状セスキテルペン前駆体からドリマニルアルコールを生成することができるドリマニルアルコールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸、発現構築物またはベクターであって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと、任意に
c)前記非環状セスキテルペン前駆体を生成するための生合成経路に関与する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸、発現構築物またはベクターであって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと
で形質転換することを含む、先行する実施形態のいずれか1つの方法。
特定の実施形態では、非ヒト宿主生物または宿主細胞は、a)およびb)、またはa)、b)およびc)で形質転換され、より具体的には、安定的にゲノムに組み込まれた前記核酸を含む。前記核酸a)、b)および/またはc)は、同一もしくは2種以上の異なるベクター上に位置していてもよい。
25.アセチルトランスフェラーゼ活性を有し、ドリマニルアセテートを産生するためにアセチル基供与体からのアセチル基をドリマニルアルコールに移動させることができるポリペプチドであって、当該ポリペプチドは、配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、118、121、124、127、130、133、136、143および144から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列と40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上100%未満の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
26.単離された核酸分子であって、
a)実施形態5のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、または
b)配列番号8、10、12、14、16、18、20、22、24、116、117、119、120、122、123、125、126、128、129、131、132、134および135から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上100%未満の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、または
c)a)もしくはb)の配列のうちの1つに相補的な配列を含むヌクレオチド配列を含むか、または
d)a)、b)もしくはc)のヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、
単離された核酸分子。
27.実施形態26の少なくとも1つの核酸分子を含む発現構築物。
28.実施形態25の少なくとも1つの核酸分子または実施形態26の少なくとも1つの発現構築物を含むベクター。
29.ベクターが、原核生物、ウイルスまたは真核生物のベクターである、実施形態28のベクター。
30.ベクターが発現ベクターである、実施形態28または29のベクター。
31.ベクターがプラスミドベクターである、実施形態28〜30のいずれか1つのベクター。
32.組換え宿主細胞または組換え非ヒト宿主生物であって、
a)実施形態26の少なくとも1つの単離された核酸分子であって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているもの、または
b)実施形態27の少なくとも1つの発現構築物であって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているもの、または
c)実施形態28から31のうちのいずれか1つの少なくとも1つのベクター
を含む、組換え宿主細胞または組換え非ヒト宿主生物。
特定の実施形態では、非ヒト宿主生物または宿主細胞は、a)およびb)、またはa)、b)およびc)で形質転換され、より具体的には、安定的にゲノムに組み込まれた前記核酸を含む。
33.原核生物または真核生物の微生物、またはそれらに由来する細胞から選択される、実施形態32の宿主細胞または宿主生物。
34.細菌、真菌および植物の細胞または植物から選択される、実施形態33の宿主細胞または宿主生物。
35.前記真菌細胞が酵母細胞である、実施形態34の宿主細胞または宿主生物。
36.前記細菌細胞が、エシェリヒア属、特に大腸菌種から選択され、前記酵母細胞が、サッカロマイセス属、ピキア属、またはヤロウイア属から、特に、サッカロマイセス・セレビシエ種、ピキア・パストリス種、またはヤロウイア・リポリティカ種から選択される、実施形態35の宿主細胞または宿主生物。
37.実施形態25記載の少なくとも1種の触媒活性ポリペプチドを産生する方法であって、
a)実施形態32から34のうちのいずれか1つの非ヒト宿主生物または宿主細胞を培養して、実施形態25記載の少なくとも1つのポリペプチドを発現または過剰発現させるステップと、
b)任意に、ステップa)で培養された非ヒト宿主細胞または生物からポリペプチドを単離するステップと
を含む、方法。
38.ステップa)に先立って、特に、非ヒト宿主生物または細胞を、それが請求項25記載のポリペプチドを発現または過剰発現するように、請求項26記載の少なくとも1つの核酸、または請求項27記載の少なくとも1つの構築物、または請求項28から31のうちのいずれか1つのうちの少なくとも1つのベクターで形質転換することを提供するステップをさらに含む、実施形態37の方法。
39.アセチルトランスフェラーゼ活性を含み、少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアセテートを産生するためにアセチル基供与体からのアセチル基を少なくとも1種の、特に1種のドリマニルアルコールに移動させることができる変異体ポリペプチドを調製する方法であって、当該方法は、
a)配列番号9、11、13、15、17、19、21、23、25、118、121、124、127、130、133、133、136、143および144から選択されるポリペプチドをコードする核酸分子を選択するステップと、
b)選択された核酸分子を改変して、少なくとも1つの変異体核酸分子を得るステップと、
c)宿主細胞または単細胞宿主生物を変異体核酸配列で形質転換して、変異体核酸配列によってコードされたポリペプチドを発現させるステップと、
d)発現産物を、アセチルトランスフェラーゼ活性を含む少なくとも1つの変異体についてスクリーニングするステップと、
e)任意に、ポリペプチドが所望の変異体活性を有しない場合、所望の変異体活性を有するポリペプチドが得られるまで、プロセスステップa)〜d)を繰り返すステップと、
f)任意に、ステップd)で所望の変異体活性を有するポリペプチドが同定された場合、ステップc)で得られた対応する変異体核酸を単離するステップと
を含む、方法。
40.匂い物質、フレーバーもしくはフレグランス成分または昆虫/害虫防除成分を調製するための、例えば、ボディケア、ホームケア、またはフレグランス組成物から選択される組成物の調製における使用のための、先行する実施形態のいずれか1つに定義されているアセチルトランスフェラーゼの使用。
b.本発明に従って適用可能なポリペプチド
この文脈では、以下の定義が適用される:
「ポリペプチド」または「ペプチド」という一般用語は、互換的に使用することができ、約10〜約1,000を超える残基までを含む、ペプチドで連結された連続アミノ酸残基の天然もしくは合成の直鎖または配列を指す。30残基までを有する短鎖ポリペプチドは、「オリゴペプチド」とも称される。
「タンパク質」という用語は、1つ以上のポリペプチドを含む高分子構造を指す。そのポリペプチド(類)のアミノ酸配列は、タンパク質の「一次構造」を表す。アミノ酸配列はまた、ポリペプチド鎖内に形成されたα−ヘリカル構造およびβ−シート構造などの特殊な構造要素の形成によって、タンパク質の「二次構造」を決定する。そのような二次構造要素の複数の配置は、タンパク質の「三次構造」または空間的配置を規定する。タンパク質が複数のポリペプチド鎖を含む場合、前記鎖は空間的に配置され、タンパク質の「四次構造」を形成する。タンパク質の正しい空間的配置または「フォールディング」は、タンパク質の機能の必須条件である。変性またはアンフォールディングは、タンパク質の機能を破壊する。そのような破壊が可逆的である場合、タンパク質の機能はリフォールディングによって回復され得る。
本明細書で言及される典型的なタンパク質の機能は、「酵素機能」であり、すなわち、タンパク質は、基質、例えば化合物上で生体触媒として作用し、前記基質の産物への変換を触媒する。酵素は、高度または低度の基質特異性および/または産物特異性を示し得る。
したがって、特定の「活性」を有するものとして本明細書で言及される「ポリペプチド」とは、例えば特定の酵素活性のように、指標活性を示す正しく折り畳まれたタンパク質を暗示的に指す。
したがって、別段の指示がない限り、「ポリペプチド」という用語はまた、「タンパク質」および「酵素」という用語を包含する。
同様に、「ポリペプチド断片」という用語は、「タンパク質断片」および「酵素断片」という用語を包含する。
「単離されたポリペプチド」という用語は、当該技術分野で知られている任意の方法または方法の組み合わせによって自然環境から除去されたアミノ酸配列を指し、組換え法、生化学的法および合成法を含む。
「標的ペプチド」とは、タンパク質またはポリペプチドを細胞内小器官、すなわちミトコンドリアもしくはプラスチド、または細胞外空間(分泌シグナルペプチド)に標的化するアミノ酸配列を指す。標的ペプチドをコードする核酸配列は、タンパク質またはポリペプチドのアミノ末端、例えばN末端をコードする核酸配列に融合され得るか、または天然の標的化ポリペプチドの代わりに使用され得る。
本発明はまた、本明細書に具体的に記載されるポリペプチドの「機能的等価物」(「アナログ」または「機能的変異」とも称される)に関する。
例えば、「機能的等価物」とは、酵素活性の決定に使用される試験において、本明細書に具体的に記載されるポリペプチドの酵素活性より少なくとも1〜10%、または少なくとも20%、または少なくとも50%、または少なくとも75%、または少なくとも90%高いまたは低い酵素活性を示し、前記比較の基礎として役立つポリペプチドを指す。
「機能的等価物」はまた、本発明によれば、本明細書に記載されるアミノ酸配列の少なくとも1つの配列位置において、具体的に記載されたアミノ酸とは異なるアミノ酸を有するが、それにもかかわらず、例えば酵素活性のような上述の生物学的活性のうちの1つを有する特定の変異体を対象とする。したがって、「機能的等価物」は、1以上、例えば1〜20、特に1〜15または5〜10のアミノ酸の付加、置換、特に保存的置換(すなわち、その結果、当該アミノ酸は、同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸で置き換えられる)、欠失および/または逆転によって得られる変異体を含み、この場合、記載された変化は、本発明による特性のプロファイルを有する変異体をもたらすことを条件として、いかなる配列位置でも起こり得るものである。機能的等価性は、活性パターンが、変異体と未変化ポリペプチドとの間で定性的に一致する場合、すなわち、例えば、同じアゴニストまたはアンタゴニストまたは基質との相互作用が、しかしながら異なる速度で観察される場合(すなわち、EC50またはIC50値または当該技術分野において適切な他の任意のパラメーターによって表される場合)にも、特に提供される。適切な(保存的)アミノ酸置換の例を以下の表に示す。
Figure 2022502008
上記の意味での「機能的等価物」はまた、本明細書に記載されるポリペプチドの「前駆体」、ならびにポリペプチドの「機能的誘導体」および「塩」である。
「前駆体」は、その場合、所望の生物学的活性の有無にかかわらず、ポリペプチドの天然または合成の前駆体である。
「塩」という表現は、本発明によるタンパク質分子のアミノ基の酸付加塩と同様に、カルボキシル基の塩を意味する。カルボキシル基の塩は、公知の方法で生成することができ、無機塩、例えば、ナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄および亜鉛の塩、ならびに有機塩基、例えば、トリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンなどのアミン類との塩を含む。酸付加塩、例えば、塩酸および硫酸などの無機酸との塩、ならびに酢酸およびシュウ酸などの有機酸との塩も本発明の対象となる。
本発明によるポリペプチドの「機能的誘導体」はまた、公知の技術を用いて、機能的アミノ酸側基上またはそのN末端もしくはC末端で生成することができる。そのような誘導体は、例えば、アンモニアとの反応または第一級もしくは第二級アミンとの反応によって得られるカルボン酸基の脂肪族エステル、カルボン酸基のアミド;アシル基との反応によって生成される遊離アミノ基のN−アシル誘導体;またはアシル基との反応により生成される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体を含む。
「機能的等価物」はまた、当然、天然に存在する多様体だけでなく、他の生物から得ることができるポリペプチドも含む。例えば、配列比較によって相同配列領域の範囲を確立することができ、本発明の具体的なパラメーターに基づいて等価なポリペプチドを決定することができる。
「機能的等価物」はまた、本発明によるポリペプチドの個々のドメインもしくは配列モチーフ、またはN末端および/またはC末端で切断された形態のような「断片」を含み、これらは所望の生物学的機能を示していてもよいし、示していなくてもよい。好ましくは、そのような「断片」は、少なくとも定性的に所望の生物学的機能を保持する。
「機能的等価物」はさらに融合タンパク質であって、当該融合タンパク質は、本明細書に記載されるポリペプチド配列またはそれに由来する機能的等価物のうちの1つと、機能的にN末端またはC末端が会合した少なくとも1つの更なる、機能的に異なる異種配列とを有する(すなわち、融合タンパク質部分の実質的な相互機能障害を伴わない)。これらの異種配列の非限定的な例は、例えば、シグナルペプチド、ヒスチジンアンカーまたは酵素である。
本発明に従ってまた含まれる「機能的等価物」は、具体的に開示されたポリペプチドに対するホモログである。これらは、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad, Sci. (USA) 85(8), 1988, 2444-2448のアルゴリズムによって計算して、具体的に開示されたアミノ酸配列のうちの1つと少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも80または85%、例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98または99%などの相同性(または同一性)を有する。本発明による相同ポリペプチドの相同性または同一性(パーセンテージで表される)とは、特に、本明細書に具体的に記載されるアミノ酸配列のうちの1つの全長に基づくアミノ酸残基の同一性(パーセンテージで表される)を意味する。
パーセンテージで表される同一性データはまた、BLASTアラインメント、アルゴリズムblastp(タンパク質−タンパク質BLAST)を用いて、または以下に記載されるClustal設定を適用することによって決定されてもよい。
可能なタンパク質のグリコシル化の場合、本発明による「機能的等価物」は、脱グリコシル化またはグリコシル化された形態で本明細書に記載されるようなポリペプチドだけでなく、グリコシル化パターンを変更することによって得ることができる改変された形態も含む。
本発明によるポリペプチドの機能的等価物またはホモログは、突然変異誘発によって、例えば、点突然変異、タンパク質の延長もしくは短縮によって、または以下でより詳細に説明されるように生成され得る。
本発明によるポリペプチドの機能的等価物またはホモログは、変異体、例えば短縮変異体のコンビナトリアルデータベースをスクリーニングすることによって同定され得る。例えば、タンパク質多様体の多彩なデータベースは、核酸レベルでのコンビナトリアル突然変異誘発によって、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物の酵素的ライゲーションによって作成され得る。縮重したオリゴヌクレオチド配列からの潜在的なホモログのデータベースの作成には、非常に多くの方法を使用することができる。縮重した遺伝子配列の化学合成は、自動DNAシンセサイザーで行うことができ、次いで合成遺伝子を適切な発現ベクターでライゲーションすることができる。縮重したゲノムの使用により、混合物中のすべての配列を供給することが可能になり、これらは潜在的なタンパク質配列の所望のセットをコードする。縮重したオリゴヌクレオチドの合成方法は、当業者に知られている。
先行技術では、点突然変異または短縮により作成されたコンビナトリアルデータベースの遺伝子産物のスクリーニング、および選択された特性を有する遺伝子産物のcDNAライブラリーのスクリーニングのためのいくつかの技術が知られている。これらの技術は、本発明によるホモログのコンビナトリアル突然変異誘発によって産生された遺伝子バンクの迅速なスクリーニングに適合させることができる。ハイスループット分析に基づく大規模な遺伝子バンクのスクリーニングに最も頻繁に使用される技術は、複製可能な発現ベクター中での遺伝子バンクのクローニング、結果として得られたベクターデータベースを用いた適切な細胞の形質転換、および所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件でのコンビナトリアル遺伝子の発現を含む。再帰的アンサンブル変異誘発法(REM)は、データベース内の機能的変異体の頻度を増加させる技術であり、ホモログを同定するために、スクリーニング検査と組み合わせて使用することができる。
本明細書で提供される実施形態は、本明細書で開示されたポリペプチドのオルソログおよびパラログ、ならびにそのようなオルソログおよびパラログを同定し単離するための方法を提供する。「オルソログ」および「パラログ」という用語の定義は以下に与えられ、アミノ酸配列および核酸配列に適用される。
c.本発明に従って適用可能なコーディング核酸配列
この文脈では、以下の定義が適用される:
「核酸配列」、「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、ヌクレオチドの配列を意味する。核酸配列は、任意の長さの一本鎖もしくは二本鎖のデオキシリボヌクレオチド、またはリボヌクレオチドであり得、遺伝子のコーディング配列および非コーディング配列、エクソン、イントロン、センスおよびアンチセンス相補配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え核酸配列、単離および精製された天然に存在するDNAおよび/またはRNA配列、合成DNAおよびRNA配列、断片、プライマーおよび核酸プローブを含む。当業者は、RNAの核酸配列がDNA配列と同一であり、チミン(T)の代わりにウラシル(U)が用いられているという違いを有する。「核酸配列」という用語はまた、ポリヌクレオチド分子もしくはオリゴヌクレオチド分子を別個の断片の形態で含むものとして、またはより大きな核酸の構成要素として理解されるべきである。
「単離された核酸」または「単離された核酸配列」は、核酸または核酸配列が天然に存在する環境とは異なる環境にある核酸または核酸配列に関し、内因性物質を汚染していないものを実質的に含み得る。
本明細書で核酸に適用される「天然に存在する」という用語は、自然界の生物の細胞内に見出され、実験室でヒトによって意図的に改変されていない核酸を指す。
ポリヌクレオチドまたは核酸配列の「断片」とは、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの長さが、特に少なくとも15bp、少なくとも30bp、少なくとも40bp、少なくとも50bpおよび/または少なくとも60bpである連続したヌクレオチドを指す。特に、ポリヌクレオチドの断片は、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの少なくとも25、より具体的には少なくとも50、より具体的には少なくとも75、より具体的には少なくとも100、より具体的には少なくとも150、より具体的には少なくとも200、より具体的には少なくとも300、より具体的には少なくとも400、より具体的には少なくとも500、より具体的には少なくとも600、より具体的には少なくとも700、より具体的には少なくとも800、より具体的には少なくとも900、より具体的には少なくとも1000の連続したヌクレオチドを含む。限定されることなく、本明細書のポリヌクレオチドの断片は、PCRプライマーとして、および/またはプローブとして、またはアンチセンス遺伝子サイレンシングもしくはRNAiのために使用され得る。
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」または特定の条件下でハイブリダイズするという用語は、互いに有意に同一または相同であるヌクレオチド配列が互いに結合したままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載することを意図している。条件は、少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、90%、または95%の同一性を有する配列が互いに結合したままであるような条件であってもよい。低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、および高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義が、以下に本明細書で提供される。適切なハイブリダイゼーション条件は、Ausubel et al. (1995, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, sections 2, 4, and 6)に例示されているように、当業者が最小限の実験で選択することも可能である。さらに、ストリンジェンシーの条件は、Sambrook et al. (1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, chapters 7, 9, and 11)に記載されている。
「組換え核酸配列」は、実験室的方法(例えば、分子クローニング)を使用して、ソースを上回る遺伝物質を一緒にして、天然には存在せず、他の方法では生物には見出されない核酸配列を作製または改変することにより生じる核酸配列である。
「組換えDNA技術」とは、例えば、Laboratory Manuals edited by Weigel and Glazebrook, 2002, Cold Spring Harbor Lab Press; and Sambrook et al., 1989, Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されるような組換え核酸配列を調製するための分子生物学的手順を指す。
「遺伝子」という用語は、適切な調節領域、例えばプロモーターに操作可能に連結されたRNA分子、例えば細胞内のmRNAに転写される領域を含むDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、プロモーター、例えば翻訳開始に関与する配列、cDNAまたはゲノムDNAのコーディング領域、イントロン、エクソンを含む5’リーダー配列、および/または例えば転写終結部位を含む3’非翻訳配列などの、複数の操作可能に連結された配列を含み得る。
「ポリシストロニック」とは、核酸分子、特にmRNAを指し、同じ核酸分子内で2つ以上のポリペプチドを別々にコードすることができる。
「キメラ遺伝子」とは、ある種において自然界で通常は見出されない任意の遺伝子、特に、自然界で互いに関連していない核酸配列の1つ以上の部分が存在する遺伝子を指す。例えば、プロモーターは、転写領域の一部もしくは全部、または別の調節領域と自然界では関連していない。「キメラ遺伝子」という用語は、プロモーターまたは転写調節配列が、1つ以上のコーディング配列またはアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補体、または逆方向反復配列(センスおよびアンチセンス、それによってRNA転写物は転写時に二本鎖RNAを形成する)に操作可能に連結された発現構築物を含むことが理解される。「キメラ遺伝子」という用語はまた、1つ以上のコーディング配列の一部を組み合わせて新たな遺伝子を産生することによって得られる遺伝子も含む。
「3’UTR」または「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」または「3’末端」とも呼ばれる)とは、遺伝子のコーディング配列の下流に見出される核酸配列を指し、これは、例えば、転写終結部位および(すべてではないが、ほとんどの真核生物のmRNAで)ポリアデニル化シグナル、例えばAAUAAAまたはその多様体を含む。mRNA転写物は、転写終結後、ポリアデニル化シグナルの下流で切断されてもよく、翻訳部位、例えば細胞質へのmRNAの輸送に関与するポリ(A)テールが付加されてもよい。
「プライマー」という用語は、テンプレート核酸配列にハイブリダイズされた短い核酸配列を指し、テンプレートに相補的な核酸配列を重合させるために使用される。
「選択可能なマーカー」という用語は、発現時に、選択可能なマーカーを含む細胞または細胞を選択するために使用され得る任意の遺伝子を指す。選択可能なマーカーの例を以下に記載する。当業者であれば、異なる抗生物質、殺菌剤、栄養要求菌株または除草剤の選択可能なマーカーが、異なる標的種に適用可能であることを知るであろう。
本発明はまた、本明細書で定義されるポリペプチドをコードする核酸配列に関する。
特に、本発明はまた、上記のポリペプチドおよびそれらの機能的等価物(これらは、例えば人工ヌクレオチドアナログを使用して得ることができる)のうちの1つをコードする核酸配列(一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNA配列、例えばcDNA、ゲノムDNAおよびmRNA)に関する。
本発明は、本発明によるポリペプチドまたはその生物学的に活性なセグメントをコードする単離された核酸分子と、例えば本発明によるコーディング核酸を同定または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーとして使用することができる核酸断片との両方に関する。
本発明はまた、本明細書に具体的に開示された配列とある程度の「同一性」を有する核酸に関する。2つの核酸間の「同一性」とは、いずれの場合においても核酸の全長にわたるヌクレオチドの同一性を意味する。
2つのヌクレオチド配列間の「同一性」(ペプチド配列またはアミノ酸配列についても同様)は、これらの2つの配列のアラインメントが生成されたときの2つの配列において同一であるヌクレオチド残基(またはアミノ酸残基)の数の関数である。同一残基は、アラインメントの所定の位置にある2つの配列において同一である残基と定義される。本明細書で使用される配列同一性のパーセンテージは、2つの配列間で同一の残基の数を取り、それを最短配列における残基の総数で割って100を掛けることによって、最適なアラインメントから計算される。最適なアラインメントは、同一性のパーセンテージが可能な限り最も高いアラインメントである。最適なアラインメントを得るために、アラインメントの1つ以上の位置で一方または両方の配列にギャップを導入してもよい。次いで、これらのギャップは、配列同一性のパーセンテージを計算するための非同一残基として考慮される。アミノ酸または核酸の配列同一性のパーセンテージを決定する目的のためのアラインメントは、コンピュータープログラム、例えば、ワールド・ワイド・ウェブ上で利用可能な公的に入手可能なコンピュータープログラムを使用して、様々な方法で達成することができる。
特に、米国国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgi)から入手可能である、デフォルトパラメーターに設定されたBLASTプログラム(Tatiana et al, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250, 1999)は、タンパク質または核酸配列の最適なアラインメントを取得し、配列同一性のパーセンテージを計算するために使用することができる。
別の例では、同一性は、以下の設定を伴うClustal Method(Higgins DG, Sharp PM. (1989))を用いて、Informax社(USA)のVector NTI Suite 7.1により計算することができる:
多重アラインメントパラメーター
ギャップオープニングペナルティ 10
ギャップ伸長ペナルティ 10
ギャップ分離ペナルティ範囲 8
ギャップ分離ペナルティ オフ
アラインメント遅延に対する%同一性 40
残基特異性ギャップ オフ
親水性残基ギャップ オフ
トランジション重み付け(Transition weighing) 0
ペアワイズアラインメントパラメーター:
FASTアルゴリズム オン
Kタプルサイズ 1
ギャップペナルティ 3
ウィンドウサイズ 5
最良の対角線数 5
あるいは、同一性は、Chenna, et al. (2003)、ウェブページ:http://www.ebi.ac.uk/Tools/clustalw/index.html#、および以下の設定に従って決定してもよい:
DNAギャップオープンペナルティ 15.0
DNAギャップ伸長ペナルティ 6.66
DNAマトリックス Identity
タンパク質ギャップオープンペナルティ 10.0
タンパク質伸長ペナルティ 0.2
タンパク質マトリックス Gonnet
タンパク質/DNA ENDGAP −1
タンパク質/DNA GAPDIST 4
本明細書に記載されるすべての核酸配列(一本鎖および二本鎖のDNAおよびRNA配列、例えばcDNAおよびmRNA)は、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成、例えば二重らせんの個々の重なり合う相補的な核酸ビルディングブロックの断片縮合によって、公知の方法で生成することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, Voet, 2nd edition, Wiley Press, New York, pages 896-897)によって、公知の方法で実施することができる。DNAポリメラーゼのクレノウ断片およびライゲーション反応による合成オリゴヌクレオチドの蓄積およびギャップの充填、ならびに一般的なクローニング技術は、Sambrook et al. (1989)に記載されており、以下を参照されたい。
本発明による核酸分子は、コーディング遺伝子領域の3’末端および/または5’末端からの非翻訳配列をさらに含み得る。
本発明はさらに、具体的に記載されたヌクレオチド配列またはそのセグメントに相補的な核酸分子に関する。
本発明によるヌクレオチド配列は、他の細胞型および生物における相同配列の同定および/またはクローニングに使用され得るプローブおよびプライマーの生成を可能にする。そのようなプローブまたはプライマーは、一般に、「ストリンジェントな」条件下で(本明細書の他の箇所で定義されているように)本発明による核酸配列のセンス鎖または対応するアンチセンス鎖の少なくとも約12、好ましくは少なくとも約25、例えば約40、50または75の連続したヌクレオチド上でハイブリダイズするヌクレオチド配列領域を含む。
「相同」配列には、オルソログまたはパラログ配列が含まれる。系統解析法、配列類似性およびハイブリダイゼーション法を含む、オルソログまたはパラログを同定する方法は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載されている。
「パラログ」は、類似の配列と類似の機能とを有する2つ以上の遺伝子を生じさせる遺伝子重複から生じる。パラログは、典型的には、一緒にクラスター化し、関連する植物種内での遺伝子重複によって形成される。ペアワイズBlast解析を用いた類似遺伝子のグループ内で、またはCLUSTALなどのプログラムを用いた遺伝子ファミリーの系統解析中にパラログが見出される。パラログでは、関連する遺伝子内の配列に特徴があり、かつ遺伝子の類似の機能を有するコンセンサス配列が同定され得る。
「オルソログ」またはオルソログ配列は、共通の祖先の子孫である種に見出されるため、互いに類似の配列である。例えば、共通の祖先を有する植物種には、類似の配列および機能を有する酵素が多く含まれていることが知られている。当業者であれば、例えば、CLUSTALまたはBLASTプログラムを用いて、ある種の遺伝子ファミリーのポリジーン系図を構築することによって、オルソログ配列を同定し、オルソログの機能を予測することができる。相同配列間の類似機能を同定または確認する方法としては、宿主細胞または生物、例えば植物もしくは微生物において、関連するポリペプチドを過剰に発現させた場合と欠失させた場合(ノックアウト/ノックダウンにおいて)との転写物プロファイルを比較することによる方法がある。当業者であれば、類似した転写物プロファイルを有する遺伝子、共通して50%を超える調節された転写物を有する遺伝子、または共通して70%を超える調節された転写物を有する遺伝子、または共通して90%を超える調節された転写物を有する遺伝子が、類似の機能を有することを理解するであろう。本明細書の配列のホモログ、パラログ、オルソログおよび任意の他の多様体は、テルペンシンターゼタンパク質を産生する宿主細胞、生物、例えば植物または微生物を作製することによって、同様の方法で機能することが期待される。
「選択可能なマーカー」という用語は、発現時に、選択可能なマーカーを含む細胞または細胞を選択するために使用され得る任意の遺伝子を指す。選択可能なマーカーの例を以下に記載する。当業者であれば、異なる抗生物質、殺菌剤、栄養要求菌株または除草剤の選択可能なマーカーが、異なる標的種に適用可能であることを知るであろう。
「単離された」核酸分子は、核酸の天然源に存在する他の核酸分子から分離されており、さらに、それが組換え技術によって産生されている場合には、他の細胞物質または培地を実質的に含まないことができる、それが化学的に合成されている場合には、化学前駆体または他の化学物質を含まないことができる。
本発明による核酸分子は、分子生物学の標準的な技術および本発明による提供される配列情報によって単離することができる。例えば、具体的に開示された完全配列のうちの1つまたはそのセグメントをハイブリダイゼーションプローブおよび標準的なハイブリダイゼーション技術(例えば、Sambrook, (1989)に記載されているように)を使用して、適切なcDNAライブラリーからcDNAを単離することができる。
さらに、開示された配列の1つまたはそのセグメントを含む核酸分子を、この配列に基づいて構築されたオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応によって単離することができる。このようにして増幅された核酸は、適切なベクターにクローン化することができ、DNAシークエンシングによって特徴付けることができる。本発明によるオリゴヌクレオチドはまた、標準的な合成方法、例えば自動DNAシンセサイザーを使用して生成することができる。
本発明による核酸配列またはその誘導体、これらの配列のホモログまたは一部を、例えば、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを介して、他の細菌から通常のハイブリダイゼーション技術またはPCR技術によって単離することができる。これらのDNA配列は、標準的な条件下で本発明による配列とハイブリダイズする。
「ハイブリダイズ」とは、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが、標準的な条件下でほぼ相補的な配列に結合する能力を意味するが、これらの条件下では、非相補的なパートナー間で非特異的結合が起こらない。このために、配列は90〜100%相補的であり得る。互いに特異的に結合することができるという相補的な配列の特性は、例えば、ノーザンブロッティングまたはサザンブロッティングにおいて、またはPCRもしくはRT−PCRにおけるプライマー結合において利用される。
保存領域の短いオリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションに有利に使用される。しかしながら、ハイブリダイゼーションのために、本発明による核酸のより長い断片または完全配列を使用することも可能である。これらの「標準的な条件」は、使用される核酸(オリゴヌクレオチド、より長い断片、または完全配列)、またはハイブリダイゼーションに使用される核酸の種類(DNAまたはRNA)に応じて異なる。例えば、DNA:DNAハイブリッドの融解温度は、同じ長さのDNA:RNAハイブリッドの融解温度よりも約10℃低い。
例えば、特定の核酸に応じて、標準的な条件は、0.1〜5×SSC(1×SSC=0.15M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム、pH7.2)の濃度の緩衝水溶液中で、またはさらに50%ホルムアミドの存在下で42〜58℃の温度、例えば、5×SSC、50%のホルムアミド中42℃を意味する。有利には、DNA:DNAハイブリッドの場合のハイブリダイゼーション条件は0.1×SSCであり、温度は約20℃〜45℃、好ましくは約30℃〜45℃である。DNA:RNAハイブリッドの場合、ハイブリダイゼーション条件は、有利には0.1×SSCであり、温度は約30℃〜55℃、好ましくは約45℃〜55℃である。ハイブリダイゼーションのためのこれらの記載された温度は、ホルムアミドの非存在下で約100ヌクレオチドの長さおよび50%のG+C含有量を有する核酸について計算された融解温度の値の例である。DNAハイブリダイゼーションの実験条件は、関連する遺伝学の教科書、例えばSambrook et al., 1989に記載されており、例えば、核酸の長さ、ハイブリッドの種類またはG+C含有量に応じて、当業者に知られている式を用いて計算することができる。当業者であれば、以下の教科書からハイブリダイゼーションに関する更なる情報を得ることができる:Ausubel et al. (eds), (1985), Brown (ed) (1991)。
「ハイブリダイゼーション」は、特に、ストリンジェントな条件下で行うことができる。そのようなハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook (1989)、またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
本明細書で使用される場合、ハイブリダイゼーションまたは特定の条件下でハイブリダイズするという用語は、互いに有意に同一または相同であるヌクレオチド配列が互いに結合したままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を記載することを意図している。条件は、少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、例えば少なくとも約85%、90%、または95%の同一性を有する配列が互いに結合したままであるような条件であってもよい。低ストリンジェンシー、中ストリンジェンシー、および高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の定義が、以下に本明細書で提供される。
適切なハイブリダイゼーション条件は、Ausubel et al. (1995, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, sections 2, 4, and 6)に例示されているように、当業者が最小限の実験で選択することも可能である。さらに、ストリンジェンシーの条件は、Sambrook et al. (1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, chapters 7, 9, and 11)に記載されている。
本明細書で使用される場合、低ストリンジェンシーの定義された条件は以下のとおりである。DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1%PVP、0.1%Ficoll、1%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中で40℃にて6時間前処理する。ハイブリダイゼーションを、以下の変更を加えた同じ溶液中で行う:0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(w/v)デキストラン硫酸塩、および5〜20×10の32P標識プローブを使用する。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で40℃にて18〜20時間インキュベートし、次いで55℃で1.5時間洗浄する。2×SSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mM EDTA、および0.1%SDSを含む溶液中で。洗浄液を新しい溶液に交換し、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターを吸い取って乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露光する。
本明細書で使用される場合、中ストリンジェンシーの定義された条件は以下のとおりである。DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、5mM EDTA、0.1%PVP、0.1%Ficoll、1%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中で50℃にて7時間前処理する。ハイブリダイゼーションを、以下の変更を加えた同じ溶液中で行う:0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.2%BSA、100μg/mlのサケ精子DNA、10%(w/v)デキストラン硫酸塩、および5〜20×10の32P標識プローブを使用する。フィルターをハイブリダイゼーション混合物中で50℃にて30時間インキュベートし、次いで55℃で1.5時間洗浄する。2×SSC、25mM Tris−HCl(pH7.4)、5mMEDTA、および0.1%SDSを含む溶液中で。洗浄液を新しい溶液に交換し、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターを吸い取って乾燥させ、オートラジオグラフィーのために露光する。
本明細書で使用される場合、高ストリンジェンシーの定義された条件は以下のとおりである。DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションは、6×SSC、50mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM EDTA、0.02%PVP、0.02%Ficoll、0.02%BSA、および500μg/mlの変性サケ精子DNAで構成される緩衝液中で65℃にて8時間〜一晩中行う。100μg/mlの変性サケ精子DNAおよび5〜20×10cpmの32P標識プローブを含むプレハイブリダイゼーション混合物中で、フィルターを65℃にて48時間ハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.01%PVP、0.01%Ficoll、および0.01%BSAを含む溶液中で37℃にて1時間行う。その後、0.1×SSCで50℃にて45分間洗浄する。
当該技術分野で周知の低、中、および高ストリンジェンシーの他の条件(例えば、異種間ハイブリダイゼーションに用いられるような条件)を、上記の条件が不適切である場合に使用することができる(例えば、異種間ハイブリダイゼーションに用いられるような条件)。
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列の検出キットは、ポリペプチドをコードする核酸配列に特異的なプライマーおよび/またはプローブ、ならびに当該プライマーおよび/またはプローブを用いてサンプル中のポリペプチドをコードする核酸配列を検出するための関連プロトコルを含み得る。そのような検出キットは、植物、生物、微生物または細胞が改変されたかどうかを、すなわちポリペプチドをコードする配列で形質転換されたかどうかを判定するために使用することができる。
本明細書の実施形態による多様体DNA配列の機能を試験するために、目的の配列は、選択可能なまたはスクリーニング可能なマーカー遺伝子に操作可能に連結され、前記レポーター遺伝子の発現は、例えば、微生物を用いて、またはプロトプラストを用いて、または安定的に形質転換された植物を用いて、一過性の発現アッセイにおいて試験される。
本発明はまた、具体的に開示されたまたは誘導化可能な核酸配列の誘導体に関する。
したがって、本発明による更なる核酸配列は、本明細書に具体的に開示された配列に由来することができ、それとは、1または複数(例えば1〜10のような)のヌクレオチドの1以上、例えば1〜20、特に1〜15または5〜10のアミノ酸の付加、置換、挿入または欠失だけ異なり、さらに所望の特性プロファイルを有するポリペプチドをコードすることができる。
本発明はまた、特殊な起源または宿主生物のコドン使用頻度に従って、いわゆるサイレント突然変異を含むか、または具体的に記載された配列と比較して改変された核酸配列を包含する。
本発明の特定の実施形態によれば、多様体核酸を、特定の発現系にそのヌクレオチド配列を適合させるために調製することができる。例えば、細菌の発現系は、アミノ酸が特定のコドンによってコードされている場合、ポリペプチドをより効率的に発現させることが知られている。遺伝暗号の縮退性のために、2つ以上のコドンが同じアミノ酸配列をコードする可能性があり、複数の核酸配列が同じタンパク質またはポリペプチドをコードする可能性があり、これらのDNA配列はすべて本明細書の実施形態によって包含される。適切な場合には、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列は、宿主細胞における発現の増加のために最適化されてもよい。例えば、本明細書の実施形態の核酸は、発現を改善するために宿主に特定のコドンを用いて合成されてもよい。
本発明はまた、本明細書に記載される配列の天然に存在する多様体、例えば、スプライシング多様体または対立遺伝子変異体を包含する。
対立遺伝子変異体は、誘導されたアミノ酸のレベルで少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、特に好ましくは全配列範囲にわたって少なくとも90%の相同性を有し得る(アミノ酸レベルでの相同性に関しては、ポリペプチドについて上述した詳細を参照されたい)。有利には、相同性は、配列の部分領域にわたってより高いものであり得る。
本発明はまた、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、その結果、対象となるアミノ酸は、同じ電荷、サイズ、極性および/または溶解度のアミノ酸で置き換えられる)によって得られる配列に関する。
本発明はまた、配列多型による具体的に開示された核酸に由来する分子に関する。そのような遺伝的多型は、自然な対立遺伝子変異のために、異なる集団からの細胞または集団内に存在してもよい。対立遺伝子変異体は、機能的等価物を含み得る。これらの自然変異は、通常、遺伝子のヌクレオチド配列において1〜5%のばらつきを生じさせる。前記多型は、本明細書に開示されたポリペプチドのアミノ酸配列の変化をもたらし得る。対立遺伝子変異体はまた、機能的等価物を含み得る。
さらに、誘導体はまた、本発明による核酸配列のホモログ、例えば、動物、植物、真菌または細菌のホモログ、短縮配列、コーディングおよび非コーディングDNA配列の一本鎖DNAまたはRNAであると理解されるべきである。例えば、ホモログは、DNAレベルで、本明細書に具体的に開示された配列で与えられる全DNA領域にわたって、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%、非常に好ましくは少なくとも80%の相同性を有する。
さらに、誘導体は、例えばプロモーターとの融合体であると理解されるべきである。記載されたヌクレオチド配列に付加されるプロモーターは、少なくとも1つのヌクレオチド交換、少なくとも1つの挿入、反転および/または欠失によって改変することができるが、プロモーターの機能性または有効性は損なわれない。さらに、プロモーターの有効性は、それらの配列を変更することによって高めることもできるし、異なる属の生物であっても、より有効なプロモーターと完全に交換することもできる。
d.機能性ポリペプチド変異体の生成
さらに、当業者であれば、機能的変異体を生成する方法、すなわち、本明細書に開示されているようなアミノ酸関連配列番号のいずれか1つと少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するポリペプチド、および/または本明細書に開示されているようなヌクレオチド関連配列番号のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコードされたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を生成する方法に精通している。
使用される技術に応じて、当業者であれば、遺伝子あるいは非コーディング核酸領域(当該領域は、例えば発現を調節するために重要である)に、完全にランダムな、あるいはより指向性のある突然変異を導入し、その後、遺伝子ライブラリーを生成することができる。この目的のために必要とされる分子生物学の方法は当業者に知られており、例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning. 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press 2001に記載されている。
遺伝子を改変するための方法、ひいては遺伝子によってコードされるポリペプチドを改変するための方法は、当業者には長い間知られており、例えば、以下のようなものがある:
− 遺伝子の個々のヌクレオチドまたは複数のヌクレオチドが指示された方法で置換される部位特異的突然変異誘発(Trower MK (Ed.) 1996; In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、
− 遺伝子の任意の点で任意のアミノ酸のコドンを交換または追加することができる、飽和突然変異誘発(Kegler-Ebo DM, Docktor CM, DiMaio D (1994) Nucleic Acids Res 22:1593; Barettino D, Feigenbutz M, Valcarel R, Stunnenberg HG (1994) Nucleic Acids Res 22:541; Barik S (1995) Mol Biotechnol 3:1)、
− ヌクレオチド配列が変異性DNAポリメラーゼによって変異させられる、変異性ポリメラーゼ連鎖反応(Eckert KA, Kunkel TA (1990) Nucleic Acids Res 18:3739)、
− 好ましい交換がポリメラーゼによって妨げられる、SeSaM法(配列飽和法)Schenk et al., Biospektrum, Vol. 3, 2006, 277-279、
− 例えばヌクレオチド配列の変異率の増加がDNA修復機構の欠陥のために起きる、突然変異誘発株における遺伝子の継代(Greener A, Callahan M, Jerpseth B (1996) An efficient random mutagenesis technique using an E.coli mutator strain. In: Trower MK (Ed.) In vitro mutagenesis protocols. Humana Press, New Jersey)、または
− 密接に関連する遺伝子のプールが形成され、消化され、その断片がポリメラーゼ連鎖反応のテンプレートとして使用され、鎖の分離および再アニーリングの繰り返しによって全長のモザイク遺伝子が最終的に生成される、DNAシャッフリング(Stemmer WPC (1994) Nature 370:389; Stemmer WPC (1994) Proc Natl Acad Sci USA 91:10747)。
いわゆる定方向進化(とりわけ、Reetz MT and Jaeger K-E (1999), Topics Curr Chem 200:31; Zhao H, Moore JC, Volkov AA, Arnold FH (1999), Methods for optimizing industrial polypeptides by directed evolution, In: Demain AL, Davies JE (Ed.) Manual of industrial microbiology and biotechnology. American Society for Microbiologyに記載される)を用いて、当業者であれば、指示された方法で、大規模に機能的変異体を生成することができる。このために、第1のステップでは、それぞれのポリペプチドの遺伝子ライブラリーが、例えば上記に示した方法を用いて、最初に作成される。この遺伝子ライブラリーは、適切な方法で、例えば、細菌またはファージディスプレイシステムによって発現される。
所望の特性に概ね対応する特性を有する機能的変異体を発現する宿主生物の関連遺伝子は、別の突然変異サイクルに供され得る。突然変異および選択またはスクリーニングのステップは、存在する機能的変異体が所望の特性を十分な程度で有するまで反復的に繰り返され得る。この反復手順を使用して、限定された数の突然変異、例えば1、2、3、4または5の突然変異を段階的に実施し、対象となる活性に及ぼすそれらの影響について評価し、選択することができる。次いで、選択された変異体は、同様の方法で更なる突然変異ステップに供され得る。このようにして、調査される個々の変異体の数を有意に減少させることができる。
本発明による結果はまた、所望の改変された特性を有する更なるポリペプチドを標的化された方法で生成するために必要とされる、関連するポリペプチドの構造および配列に関して重要な情報を提供する。特に、いわゆる「ホットスポット」、すなわち、標的突然変異を導入することによって特性を改変するのに適している可能性のある配列セグメントを規定することが可能である。
また、活性にほとんど影響を与えないと予想される突然変異が周辺でなされている可能性があるアミノ酸配列の位置に関しての情報を導き出すこともでき、こうした突然変異は、潜在的な「サイレント突然変異」と称され得る。
e.本発明のポリペプチドを発現させるための構築物
この文脈では、以下の定義が適用される:
「遺伝子の発現」は、「異種発現」および「過剰発現」を包含し、遺伝子の転写およびmRNAのタンパク質への翻訳を含む。過剰発現とは、遺伝子導入細胞または生物におけるmRNA、ポリペプチドおよび/または酵素活性のレベルによって測定される遺伝子産物の産生が、非形質転換細胞または類似の遺伝的背景を持つ生物における産生レベルを上回ることを意味する。
本明細書で使用される「発現ベクター」とは、宿主細胞への外来または外因性DNAの送達のために、分子生物学的方法および組換えDNA技術を用いて操作された核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的には、ヌクレオチド配列の適切な転写に必要とされる配列を含む。コーディング領域は、通常、目的のタンパク質をコードするが、RNA、例えば、アンチセンスRNA、siRNAなどをコードしてもよい。
本明細書で使用される「発現ベクター」には、ウイルスベクター、バクテリオファージおよびプラスミドを含むがこれらに限定されない任意の線状または環状の組換えベクターを含む。当業者であれば、発現系に応じて適切なベクターを選択することができる。一実施形態では、発現ベクターは、転写プロモーター、オペレーターもしくはエンハンサー、またはmRNAリボソーム結合部位などの、転写、翻訳、開始および終結を制御する少なくとも1つの「調節配列」に操作可能に連結された本明細書の実施形態の核酸を含み、任意に、少なくとも1つの選択マーカーを含む。ヌクレオチド配列は、調節配列が本明細書の実施形態の核酸に機能的に関連する場合、「操作可能に連結されている」。
本明細書で使用される「発現系」は、所与の発現宿主のインビボまたはインビトロのいずれかにおいて、1つの発現、または2つ以上のポリペプチドの共発現に必要とされる核酸分子の任意の組み合わせを包含する。それぞれのコーディング配列は、例えば、多重クローニング部位を含むベクターなどの、単一の核酸分子またはベクター上に、もしくはポリシストロニック核酸上に位置してもよく、または2つ以上の物理的に異なるベクター上に分散されてもよい。
本明細書で使用される場合、「増幅する」および「増幅」という用語は、以下に詳細に記載されているように、天然に発現された核酸の組換え体を生成または検出するための任意の適切な増幅法の使用を指す。例えば、本発明は、天然に発現された本発明の(例えば、ゲノムDNAもしくはmRNA)または組換え(例えば、cDNA)核酸をインビボ、エクスビボまたはインビトロで(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、PCRによって)増幅するための方法および試薬(例えば、特異的変性オリゴヌクレオチドプライマー対、オリゴdTプライマー)を提供する。
「調節配列」とは、本明細書の実施形態の核酸配列の発現レベルを決定する核酸配列であって、調節配列に操作可能に連結された核酸配列の転写速度を調節することができる核酸配列を指す。調節配列は、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーターエレメントなどを含む。
「プロモーター」、「プロモーター活性を有する核酸」または「プロモーター配列」は、本発明に従って、転写される核酸に機能的に連結された場合に、前記核酸の転写を調節する核酸を意味するものとして理解される。「プロモーター」とは、特に、RNAポリメラーゼ、および転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位を含むがこれらに限定されない適切な転写に必要な他の因子の結合部位を提供することによって、コーディング配列の発現を制御する核酸配列を指す。プロモーターという用語の意味にはまた、「プロモーター調節配列」という用語も含まれる。プロモーター調節配列には、転写、RNA処理、または関連するコーディング核酸配列の安定性に影響を与え得る上流および下流のエレメントが含まれ得る。プロモーターには、天然由来の配列と合成配列とが含まれる。コーディング核酸配列は、通常、転写開始部位から始まる転写の方向に対してプロモーターの下流側に位置する。
この文脈では、「機能的」または「操作可能な」な連結は、例えば、核酸の1つと調節配列との連続配列を意味するものとして理解される。例えば、プロモーター活性を有する配列と、転写される核酸配列の配列と、任意に更なる調節エレメント、例えば核酸の転写を確実にする核酸配列と、例えばターミネーターが、調節エレメントの各々が核酸配列の転写時にその機能を果たすことができるように連結されている。これは、必ずしも化学的な意味での直接的な連結を必要としない。遺伝的制御配列、例えばエンハンサー配列は、より遠隔の位置からの標的配列、または他のDNA分子からの標的配列にもそれらの機能を発揮することができる。好ましい配列は、2つの配列が共有結合的に結合されるように、転写される核酸配列がプロモーター配列の後ろ(すなわち、3’末端)に位置した配列である。プロモーター配列と組換え発現される核酸配列との距離は、200塩基対未満、または100塩基対未満、または50塩基対未満であってよい。
プロモーターおよびターミネーターに加えて、他の調節エレメントの例としては、ターゲティング配列、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、選択可能なマーカー、増幅シグナル、複製起点などを挙げることができる。適切な調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990)に記載されている。
「構成的プロモーター」という用語は、それが操作可能に連結された核酸配列の継続的な転写を可能にする非調節プロモーターを指す。
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結」という用語は、ポリヌクレオチドエレメントの機能的関係にある連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的関係に置かれたときに「操作可能に連結」されている。例えば、プロモーター、あるいはむしろ転写調節配列は、それがコーディング配列の転写に影響を与える場合には、コーディング配列に操作可能に連結されている。操作可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が典型的には連続していることを意味する。プロモーター配列に関連するヌクレオチド配列は、形質転換される植物に関して相同または異種起源であり得る。この配列はまた、全体的にまたは部分的に合成されたものであってもよい。起源にかかわらず、プロモーター配列に関連する核酸配列は、本明細書の一実施形態のポリペプチドに結合した後、それが連結されたプロモーターの特性に従って発現またはサイレンシングされる。関連する核酸は、生物全体で常時、あるいは特定の時間に、または特定の組織、細胞、もしくは細胞コンパートメントで発現または抑制されることが望ましいタンパク質をコードしてもよい。そのようなヌクレオチド配列は、特に、それによって改変もしくは形質転換された宿主細胞または生物に望ましい表現型形質を与えるタンパク質をコードする。より具体的には、関連するヌクレオチド配列は、細胞または生物において、本明細書で定義されるような目的の生成物または複数の生成物の産生をもたらす。特に、ヌクレオチド配列は、本明細書で定義されるような酵素活性を有するポリペプチドをコードする。
本明細書に記載されるようなヌクレオチド配列は、「発現カセット」の一部であってもよい。「発現カセット」および「発現構築物」という用語は同義的に使用される。(好ましくは組換え)発現構築物は、本発明によるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、このヌクレオチド配列は、調節核酸配列の遺伝的制御下にある。
本発明に従って適用されるプロセスにおいて、発現カセットは、「発現ベクター」、特に組換え発現ベクターの一部であってもよい。
「発現ユニット」は、本発明に従って、本明細書に定義されるようなプロモーターを含み、かつ発現される核酸または遺伝子との機能的な連結後、発現を調節する、すなわち、前記核酸または前記遺伝子の転写および翻訳を調節する、発現活性を有する核酸を意味するものと理解される。したがって、これに関連して、「発現ユニット」は「調節核酸配列」とも呼ばれる。プロモーターに加えて、他の調節エレメント、例えばエンハンサーも存在してよい。
「発現カセット」または「発現構築物」は、本発明に従って、発現される核酸または発現される遺伝子に機能的に連結された発現ユニットを意味するものと理解される。したがって、発現カセットは、発現ユニットとは対照的に、転写および翻訳を調節する核酸配列だけでなく、転写および翻訳の結果としてタンパク質として発現される核酸配列も含む。
「発現」または「過剰発現」という用語は、本発明の文脈では、対応するDNAによってコードされた微生物における1つ以上のポリペプチドの細胞内活性の産生または増加を記載する。このために、例えば、遺伝子を生物に導入すること、既存の遺伝子を別の遺伝子で置き換えること、遺伝子のコピー数を増加させること、強力なプロモーターを使用すること、または高い活性を有する対応するポリペプチドをコードする遺伝子を使用することが可能であり、これらの手段は任意に組み合わせることができる。
好ましくは、本発明によるそのような構築物は、それぞれのコード配列の5’上流にプロモーターおよび3’下流にターミネーター配列、ならびに任意に他の通常の調節エレメントを含み、いずれの場合においてもコード配列に操作可能に連結されている。
本発明に従った核酸構築物は、特に、例えば本明細書に記載されるようなアミノ酸関連配列番号もしくはその逆相補体に由来するポリペプチドをコードする配列、またはその誘導体およびホモログを含み、有利には、遺伝子発現を制御するために、例えば遺伝子発現を増加させるために、1つ以上の調節シグナルと操作可能にもしくは機能的に連結されたものである。
これらの調節配列に加えて、これらの配列の天然の調節が依然として実際の構造遺伝子の前に存在していてもよく、任意に、天然の調節がスイッチオフされ、遺伝子の発現が増強されたように遺伝子的に改変されていてもよい。しかしながら、核酸構築物はまた、より単純な構築物、すなわち、コーディング配列の前に追加の調節シグナルが挿入されておらず、その調節を有する天然のプロモーターが除去されていないものであってもよい。その代わりに、天然の調節配列は、もはや調節が起こらず、遺伝子発現が増加するように突然変異される。
好ましい核酸構築物はまた、有利には、プロモーターと機能的に連結している既述の「エンハンサー」配列のうちの1つ以上を含み、この配列は、核酸配列の増強された発現を可能にする。追加の有利な配列はまた、更なる調節エレメントまたはターミネーターなどのDNA配列の3’末端に挿入されてもよい。本発明による核酸の1つ以上のコピーが、構築物中に存在してもよい。構築物において、他のマーカー、例えば、栄養要求性または抗生物質耐性を補完する遺伝子もまた、構築物を選択するように任意に存在してもよい。
適切な調節配列の例は、プロモーター、例えばcos、tac、trp、tet、trp−tet、lpp、lac、lpp−lac、lacI、T7、T5、T3、gal、trc、ara、rhaP(rhaPBAD)SP6、lambda−P、またはlambda−Pプロモーターに存在し、これらはグラム陰性細菌において有利に用いられる。更なる有利な調節配列は、例えば、グラム陽性プロモーターamyおよびSPO2、酵母または真菌プロモーターADC1、MFalpha、AC、P−60、CYC1、GAPDH、TEF、rp28、ADHに存在する。人工プロモーターもまた、調節のために使用され得る。
宿主生物における発現のために、核酸構築物は、有利には、宿主中の遺伝子の最適な発現を可能にするプラスミドまたはファージなどのベクターに挿入される。ベクターはまた、プラスミドおよびファージに加えて、当業者に知られている他のすべてのベクター、すなわち、例えば、SV40、CMV、バキュロウイルスおよびアデノウイルスなどのウイルス、トランスポゾン、ISエレメント、ファスミド、コスミドおよび線状もしくは環状のDNAまたは人工染色体を意味するものと理解される。これらのベクターは、宿主生物において自律的に複製され得るか、または染色体的に複製され得る。これらのベクターは、本発明の更なる発展形である。バイナリーベクターまたはcpo組込み型ベクターも適用可能である。
適切なプラスミドは、例えば、大腸菌におけるpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223−3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN−III113−B1、λgt11もしくはpBdCI、ストレプトマイセス(Streptomyces)におけるpIJ101、pIJ364、pIJ702もしくはpIJ361、バチルス(Bacillus)におけるpUB110、pC194もしくはpBD214、コリネバクテリウム(Corynebacterium)におけるpSA77もしくはpAJ667、真菌類におけるpALS1、pIL2もしくはpBB116、酵母における2alphaM、pAG−1、YEp6、YEp13もしくはpEMBLYe23、または植物におけるpLGV23、pGHlac、pBIN19、pAK2004もしくはpDH51である。上述のプラスミドは、可能なプラスミドのほんの一部の選択肢である。更なるプラスミドは当業者に周知であり、例えば、書籍Cloning Vectors (Eds. Pouwels P. H. et al. Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985, ISBN 0 444 904018)に見出すことができる。
ベクターの更なる開発において、本発明による核酸構築物または本発明による核酸を含むベクターはまた、有利には、線状DNAの形態で微生物に導入され、異種または相同組換えを介して宿主生物のゲノムに組み込まれ得る。この線状DNAは、プラスミドなどの線状化ベクターから、または本発明による核酸構築物もしくは核酸のみからなることができる。
生物における異種遺伝子の最適な発現のためには、その生物において使用される特異的な「コドン使用頻度」に一致するように核酸配列を改変することが有利である。「コドン使用頻度」は、対象となる生物の他の既知の遺伝子のコンピューター評価によって容易に決定することができる。
本発明による発現カセットは、適切なプロモーターを適切なコーディングヌクレオチド配列およびターミネーターまたはポリアデニル化シグナルに融合させることによって生成される。この目的のために慣用の組換えおよびクローニング技術が記載され、例えば、T. Maniatis, E.F. Fritsch and J. Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1989) and in T.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1984)およびAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience (1987)に記載されている。
適切な宿主生物における発現のために、組換え核酸構築物または遺伝子構築物は、宿主における遺伝子の最適な発現を可能にする宿主特異的ベクターに有利に挿入される。ベクターは当業者に周知であり、例えば、「cloning vectors」(Pouwels P. H. et al., Ed., Elsevier, Amsterdam-New York-Oxford, 1985)に見出すことができる。
本明細書の実施形態の代替的な実施形態は、宿主細胞において「遺伝子発現を改変させる」方法を提供する。例えば、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドは、宿主細胞または宿主生物において、特定の状況(例えば、特定の温度または培養条件への曝露時)において、増強されるか、または過剰発現されるか、または誘発され得る。
本明細書で提供されるポリヌクレオチドの発現の改変はまた、改変された生物と対照または野生型生物とにおける異なる発現パターンである異所性発現をもたらし得る。発現の改変は、本明細書の実施形態のポリペプチドと外因性または内因性モジュレーターとの相互作用から、またはポリペプチドの化学修飾の結果として生じる。この用語はまた、検出レベル未満で改変されているか、または完全に抑制された活性である、本明細書の実施形態のポリヌクレオチドの改変された発現パターンを指す。
一実施形態では、本明細書で提供されるポリペプチドまたは多様体ポリペプチドをコードする単離された、組換えまたは合成ポリヌクレオチドも本明細書で提供される。
一実施形態では、核酸配列をコードするいくつかのポリペプチドが、単一の宿主において、特に異なるプロモーターの制御下で共発現される。別の実施形態では、核酸配列をコードするいくつかのポリペプチドが、単一の形質転換ベクター上に存在し得るか、または別々のベクターを使用し、両方のキメラ遺伝子を含む形質転換体を選択すると同時に共形質転換され得る。同様に、遺伝子をコードする1つまたはポリペプチドが、他のキメラ遺伝子と一緒に、単一の植物、細胞、微生物または生物において発現され得る。
f.本発明に適用される宿主
文脈に応じて、「宿主」という用語は、野生型宿主もしくは遺伝子的に改変された、組換え宿主、またはその両方を意味し得る。
原則として、すべての原核生物または真核生物は、本発明による核酸または核酸構築物のための宿主または組換え宿主生物とみなすことができる。
本発明によるベクターを使用して、組換え宿主を産生することができ、これは、例えば、本発明による少なくとも1つのベクターで形質転換され、本発明によるポリペプチドを産生するために使用することができる。有利には、上記の本発明による組換え構築物は、適切な宿主系に導入され、発現される。好ましくは、記載された核酸をそれぞれの発現系において発現させるために、当業者に知られている一般的なクローニング法およびトランスフェクション法、例えば、共沈法、プロトプラスト融合法、エレクトロポレーション法、レトロウイルストランスフェクション法が使用される。適切な系は、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, F. Ausubel et al., Ed., Wiley Interscience, New York 1997, or Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されている。
有利には、宿主生物として、細菌、真菌または酵母などの微生物が使用される。有利には、グラム陽性またはグラム陰性の細菌が使用され、好ましくは、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、シュードモナス科(Pseudomonadaceae)、リゾビウム科(Rhizobiaceae)、ストレプトマイセス科(Streptomycetaceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)またはノカルディア科(Nocardiaceae)のファミリーの細菌、特に好ましくは、エシェリヒア属、シュードモナス属、ストレプトマイセス属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ノカルディア属、バークホルデリア(Burkholderia)属、サルモネラ(Salmonella)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、クロストリジウム(Clostridium)属またはロドコッカス属の細菌が使用される。大腸菌の属および種が非常に好ましい。さらに、他の有利な細菌は、α−プロテオバクテリア、β−プロテオバクテリアまたはγ−プロテオバクテリアからなる群に見出され得る。有利にはまた、サッカロマイセスまたはピキアのようなファミリーの酵母も適切な宿主である。
あるいは、植物または植物細胞全体は、天然または組換え宿主として機能し得る。非限定的な例としては、それらに由来する以下の植物または細胞:ニコチアナ(Nicotiana)属、特にニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)およびニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)(タバコ);ならびにシロイヌナズナ(Arabidopsis)属、特にシロイヌナズナ・タリアナ(Arabidopsis thaliana)を挙げることができる。
宿主生物に応じて、本発明による方法で使用される生物は、当業者によって知られている方法で増殖または培養される。培養は、バッチ式、セミバッチ式または連続式とすることができる。栄養素は、発酵の開始時に存在してもよいし、後で半連続的もしくは連続的に供給してもよい。これについても、以下で詳しく説明される。
g.本発明によるポリペプチドの組換え産生
本発明はさらに、本発明によるポリペプチドまたはその機能的、生物学的に活性な断片を組換え産生するための方法であって、ポリペプチド産生微生物を培養し、任意に、遺伝子発現を有する少なくとも1種の誘導物質を適用することによってポリペプチドの発現を誘導し、発現されたポリペプチドを培養物から単離する方法に関する。ポリペプチドはまた、所望される場合、工業的規模でこのようにして生成することもできる。
本発明により産生された微生物は、バッチ法で連続的もしくは非連続的に培養してもよいし、またはフェッドバッチ法で培養してもよいし、フェッドバッチ法を繰り返して培養してもよい。既知の培養法の概要は、以下の教科書に見出すことができる:Chmiel (Bioprozesstechnik 1. Einfuehrung in die Bioverfahrenstechnik [Bioprocess technology 1. Introduction to bioprocess technology] (Gustav Fischer Verlag, Stuttgart, 1991))またはStorhas (Bioreaktoren und periphere Einrichtungen [Bioreactors and peripheral equipment] (Vieweg Verlag, Braunschweig/Wiesbaden, 1994))。
使用される培養培地は、それぞれの菌株の要件を適切に満たすものでなければならない。様々な微生物用培地の説明は、米国細菌学会(ワシントンD.C.、米国、1981)のマニュアル「一般細菌学の方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology)」に記載されている。
本発明に従って使用可能なこれらの培地は、通常、1つ以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン類および/または微量元素を含む。
好ましい炭素源は、単糖類、二糖類または多糖類などの糖類である。非常に良好な炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖類はまた、複合化合物、例えば糖蜜、または糖精製の他の副生成物を介して媒体に添加してもよい。また、異なる炭素源の混合物を添加することも有利であり得る。他の可能な炭素源は、油脂、例えば大豆油、ヒマワリ油、落花生油およびココナッツ油、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸、アルコール、例えばグリセロール、メタノールまたはエタノール、および有機酸、例えば酢酸または乳酸である。
窒素源は、通常、有機もしくは無機の窒素化合物またはこれらの化合物を含む材料である。窒素源の例には、アンモニアガスもしくはアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸、または複合窒素源、例えばコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母エキス、肉エキスなどが含まれる。窒素源は、単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。
媒体中に存在し得る無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩を含む。
硫黄源としては、無機硫黄含有化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物、ならびに有機硫黄含有化合物、例えばメルカプタンおよびチオールを使用することができる。
リン源としては、リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することができる。
金属イオンを溶液中に保持するために、キレート剤を媒体に添加してもよい。特に適切なキレート剤は、ジヒドロキシフェノール類、例えばカテコールもしくはプロトカテキン酸、または有機酸、例えばクエン酸を含む。
本発明に従って使用される発酵培地は、通常、他の成長因子、例えばビタミン類または成長促進剤を含有し、これには、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸およびピリドキシンが含まれる。成長因子および塩類は、しばしば、複合培地、例えば酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなどの成分に由来する。さらに、適切な前駆体を培養培地に添加してもよい。培地中の化合物の正確な組成は、それぞれの実験に強く依存し、それぞれの特定のケースごとに個別に決定される。培地の最適化に関する情報は、教科書「Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach」(Ed. P.M. Rhodes, P.F. Stanbury, IRL Press (1997) p. 53-73, ISBN 0 19 963577 3)に見出すことができる。増殖培地はまた、Standard 1(Merck)またはBHI(脳心臓注入、DIFCO)などの商業的供給業者から得ることができる。
すべての培地成分は、加熱(1.5barおよび121℃で20分)または滅菌濾過によって滅菌される。これらの成分は、一緒に滅菌してもよいし、必要に応じて別々に滅菌してもよい。すべての培地成分は培養の開始時に存在してもよいし、連続的にまたはバッチ式に添加してもよい。
培養物の温度は、通常15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、実験中は変化させたり、一定に保つようにしたりしてもよい。培地のpHは、5〜8.5、好ましくは7.0前後の範囲とすることが望ましい。増殖のためのpHは、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水、または酸性化合物、例えばリン酸もしくは硫酸を添加することによって増殖中に制御することができる。発泡を制御するために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルを使用してもよい。プラスミドの安定性を維持するために、適切な選択的に作用する物質、例えば抗生物質を培地に添加してもよい。好気性条件を維持するために、酸素または酸素含有ガスの混合物、例えば周囲空気を培養物に通す。培養物の温度は、通常、20℃〜45℃の範囲である。最大限の所望の生成物が形成されるまで、培養を続ける。この目標は、通常、10時間〜160時間以内に達成される。
次いで、発酵ブロスをさらに処理する。必要に応じて、バイオマスは、分離技術、例えば遠心分離、濾過、デカンテーション、またはこれらの方法の組み合わせによって、発酵ブロスから完全にもしくは部分的に除去することができ、または完全に発酵ブロス中に残すこともできる。
ポリペプチドが培養培地中で分泌されない場合、細胞を溶解し、公知のタンパク質単離法によって溶解物から産物を得ることもできる。細胞は、任意に、高周波超音波、高圧、例えばフレンチプレス、浸透圧溶解、界面活性剤、溶菌酵素または有機溶媒の作用、ホモジナイザーにより、または前述の方法のいくつかの組み合わせによって破砕することができる。
ポリペプチドは、Q−セファロースクロマトグラフィーなどのモレキュラーシーブクロマトグラフィー(ゲル濾過)、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー技術、ならびに限外濾過、結晶化、塩析、透析およびネイティブゲル電気泳動などの他の通常の技術を用いて精製することができる。適切な方法は、例えば、Cooper, T. G., Biochemische Arbeitsmethoden [Biochemical processes], Verlag Walter de Gruyter, Berlin, New York or in Scopes, R., Protein Purification, Springer Verlag, New York, Heidelberg, Berlinに記載されている。
組換えタンパク質を単離するためには、定義されたヌクレオチド配列によってcDNAを伸長し、したがって、例えば精製を容易にする改変されたポリペプチドまたは融合タンパク質をコードするベクター系またはオリゴヌクレオチドを使用することが有利であり得る。このタイプの適切な修飾は、例えば、ヘキサヒスチジンアンカーとして知られている修飾のようなアンカー、または抗体の抗原として認識され得るエピトープとして機能する、いわゆる「タグ」である(例えば、Harlow, E. and Lane, D., 1988, Antibodies: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor (N.Y.) Pressに記載されている)。これらのアンカーは、固体支持体、例えば、クロマトグラフィーカラムにおける充填物として使用され得るか、またはマイクロタイタープレートもしくは他のいくつかの担体上で使用され得るポリマーマトリックスへのタンパク質の結合に役立ち得る。
同時に、これらのアンカーはまた、タンパク質の認識のために使用され得る。タンパク質の認識のために、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する蛍光色素、酵素マーカー、または放射性マーカーなどの通常のマーカーを、単独でまたはタンパク質の誘導体化のためのアンカーと組み合わせて使用することも可能である。
h.ポリペプチド固定化
本発明による酵素またはポリペプチドは、本明細書に記載される方法において、遊離または固定化された形態で使用することができる。固定化された酵素は、不活性担体に固定化された酵素である。適切な担体材料およびその上に固定化された酵素は、欧州特許出願公開第1149849号明細書、欧州特許出願公開第1069183号明細書および独国特許出願DE−OS100193773号明細書およびそこに引用された参考文献から知られている。これに関して、これらの文献の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。適切な担体材料としては、例えば、粘土、粘土鉱物、例えばカオリナイト、珪藻土、パーライト、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、セルロース粉末、アニオン交換体材料、合成ポリマー、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリオレフィン類、例えばポリウレタン、ポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。担持された酵素を作製するために、担体材料は、通常、微細に分割された粒状形態で用いられ、多孔質状形態が好ましい。担体材料の粒径は、通常5mm以下、特に2mm以下(粒度分布曲線)である。同様に、全細胞触媒としてデヒドロゲナーゼを使用する場合には、遊離形態または固定化形態を選択することができる。担体材料は、例えば、アルギン酸カルシウムおよびカラギーナンである。細胞と同様に酵素もまた、グルタルアルデヒドと直接架橋され得る(CLEAへの架橋)。対応する他の固定化技術が、例えば、J. Lalonde and A. Margolin 「Immobilization of Enzymes」、K. Drauz and H. Waldmann, Enzyme Catalysis in Organic Synthesis 2002, Vol. III, 991-1032, Wiley-VCH, Weinheimに記載されている。本発明による方法を行うためのバイオ形質転換およびバイオリアクターに関する更なる情報も、例えば、Rehm et al. (Ed.) Biotechnology, 2nd Edn, Vol 3, Chapter 17, VCH, Weinheimに与えられる。
i.本発明の生体触媒による製造方法の反応条件
本発明の反応は、インビボまたはインビトロ条件下で実施することができる。
本発明の方法または上記で定義されるような多段階法の個々のステップの間に存在する少なくとも1つのポリペプチド/酵素は、天然にまたは組換えにより酵素または酵素類を産生する生細胞中に、採取細胞中に、すなわちインビボ条件下で、または死細胞中に、透過性細胞中に、粗細胞抽出物中に、精製抽出物中に、または本質的に純粋なまたは完全に純粋な形態で、すなわちインビトロ条件下で存在し得る。少なくとも1つの酵素が、溶液中に存在してもよいし、担体上に固定化された酵素として存在してもよい。1つまたは複数の酵素が、同時に可溶性および/または固定化された形態で存在してもよい。
本発明による方法は、当業者に知られている一般的な反応器で、異なる範囲の規模、例えば、実験室規模(数ミリリットルから数十リットルの反応量)から工業的規模(数リットルから数千立方メートルの反応量)までの規模で実施することができる。ポリペプチドが、多少なりとも精製された細胞抽出物の形態で、または精製された形態で、生存していない、任意に透過処理された細胞によってカプセル化された形態で使用される場合、化学反応器を使用することができる。化学反応器は、通常、少なくとも1つの酵素の量、少なくとも1つの基質の量、pH、温度、および反応媒体の循環を制御することを可能にする。少なくとも1つのポリペプチド/酵素が生細胞中に存在する場合、プロセスは発酵となる。この場合、生体触媒による製造は、バイオリアクター(発酵槽)で行われ、ここでは、生細胞に適した生存条件に必要なパラメーター(例えば、栄養素、温度、通気、酸素または他のガスの有無、抗生物質などを伴う培養培地)が制御され得る。当業者であれば、例えば、化学的もしくはバイオテクノロジー的手法を実験室規模から工業的規模に拡大するための手順、またはプロセスパラメーターを最適化するための手順と共に、化学反応器またはバイオリアクターに精通しており、これらはまた、文献に広く記載されている(バイオテクノロジー的手法については、例えば、Crueger und Crueger, Biotechnologie − Lehrbuch der angewandten Mikrobiologie, 2. Ed., R. Oldenbourg Verlag, Muenchen, Wien, 1984を参照されたい)。
少なくとも1つの酵素を含む細胞は、物理的または機械的手段、例えば超音波または高周波パルス、フレンチプレス、または化学的手段、例えば低張培地、培地中に存在する溶菌酵素および界面活性剤、またはそのような方法の組み合わせによって透過処理することができる。界面活性剤の例は、ジギトニン、n−ドデシルマルトシド、オクチルグリコシド、Triton(登録商標)X−100、Tween(登録商標)20、デオキシコール酸塩、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホン酸塩)、Nonidet(登録商標)P40(エチルフェノールポリ(エチレングリコルエーテル))などである。
生細胞の代わりに、必要とされる生体触媒を含む非生存細胞のバイオマスを本発明の生体内変換反応に適用してもよい。
少なくとも1つの酵素が固定化されている場合、上記のように不活性担体に結合される。
変換反応は、バッチ式、セミバッチ式、または連続的に行うことができる。反応物(および任意に栄養素)は、反応の開始時に供給してもよいし、後で半連続的または連続的に供給してもよい。
本発明の反応は、特定の反応タイプに応じて、水性、水性有機または非水性反応媒体中で実施することができる。
水性または水性有機媒体は、pHを5〜11、例えば6〜10の範囲の値に調整するために、適切な緩衝液を含んでもよい。
水性−有機媒体中には、水と混和性、部分的に混和性または非混和性の有機溶媒を適用することができる。適切な有機溶媒の非限定的な例を以下に列挙する。更なる例は、一価または多価の、芳香族または脂肪族アルコール、特にグリセロールのような多価脂肪族アルコールである。
非水性媒体は、実質的に水を含んでいなくてもよく、すなわち、約1重量%または約0.5重量%未満の水を含むであろう。
生体触媒法はまた、有機非水性媒体中で実施されてもよい。適切な有機溶媒としては、例えば5〜8個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えばペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタンまたはシクロオクタン;芳香族炭水化物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはジクロロベンゼン、脂肪族非環式およびエーテル類、例えばジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル;またはそれらの混合物を挙げることができる。
反応物/基質の濃度は、適用される特定の酵素に依存し得る最適な反応条件に適合させることができる。例えば、初期の基質濃度は、0.1〜0.5M、例えば10〜100mMなどの範囲であり得る。
反応温度は、適用される特定の酵素に依存し得る最適な反応条件に適合させることができる。例えば、反応は、0〜70℃、例えば20〜50℃または25〜40℃の範囲の温度で実施することができる。反応温度の例は、約30℃、約35℃、約37℃、約40℃、約45℃、約50℃、約55℃および約60℃である。
プロセスは、基質とその後の産物との間の平衡が達成されるまで進行してもよいが、早めに停止してもよい。通常のプロセス時間は、1分〜25時間、特に10分〜6時間の範囲であり、例えば1時間〜4時間、特に1.5時間〜3.5時間の範囲である。これらのパラメーターは、適切なプロセス条件の非限定的な例である。
宿主がトランスジェニック植物である場合、最適な増殖条件、例えば最適な光、水、栄養条件などを提供することができる。
ドリマニルアセテート化合物の調製を実施するための特定の反応条件は、以下のとおりである。20〜35℃およびpH4〜7でインキュベートされた水性環境において、アセチルトランスフェラーゼ酵素は、精製されたポリペプチドとして、または全細胞系に存在し得る。基質濃度は10〜100mMの間で変動し得る。
k.生成物の単離
本発明の方法は、任意に立体異性体的または鏡像異性体的に実質的に純粋な形態で、最終生成物または中間生成物を回収するステップをさらに含み得る。「回収する」という用語には、培養物または反応媒体から化合物を抽出、採取、単離または精製することが含まれる。化合物の回収は、従来の樹脂(例えば、アニオンまたはカチオン交換樹脂、非イオン吸着樹脂など)による処理、従来の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による処理、pHの変化、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの従来の溶媒による)、蒸留、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶、pH調整、凍結乾燥などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意の従来の単離法または精製法に従って実施することができる。
単離された生成物の同定および純度は、公知の技術、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、分光法(IR、UV、NMRなど)、着色法、TLC、NIRS、酵素または微生物アッセイによって決定することができる(例えば、Patek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140; Malakhova et al. (1996) Biotekhnologiya 11 27-32;およびSchmidt et al. (1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70. Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) Bd. A27, VCH: Weinheim, pp. 89-90, pp. 521-540, pp. 540-547, pp. 559-566, 575-581 and pp. 581-587; Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Bd. 17.を参照されたい)。
本明細書に記載される方法のいずれかで生成された環状テルペン化合物は、炭化水素、エステル、アミド、グリコシド、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、アルコール、ジオール、アセタールまたはケタールなどの誘導体に変換されることができるが、これらに限定されない。テルペン化合物誘導体は、酸化、還元、アルキル化、アシル化および/または転位などの化学的方法によって得ることができるが、これらに限定されない。あるいは、テルペン化合物誘導体は、テルペン化合物をオキシドレダクターゼ、モノオキシゲナーゼ、ジオキシゲナーゼ、トランスフェラーゼなどの酵素と接触させることによって、生化学的方法を用いて得ることができるが、これらに限定されない。生化学的変換は、単離された酵素、溶解細胞からの酵素を使用してインビトロで、または全細胞を使用してインビボで実施することができる。
l.ドリメニルアセテートの発酵産生
本発明はまた、ドリマニルアセテートを発酵産生するための方法に関する。
本発明に従って使用されるような発酵は、例えば、撹拌発酵槽、気泡塔およびループ反応器で実施することができる。撹拌器の種類および幾何学的設計を含む、可能な方法の種類の包括的な概要は、「Chmiel: Bioprozesstechnik: Einfuhrung in die Bioverfahrenstechnik, Band 1」に見出すことができる。本発明のプロセスにおいて、利用可能な典型的な多様体は、例えば、当業者に知られているか、または例えば「Chmiel, Hammes and Bailey: Biochemical Engineering」に説明されている以下の変異体、例えば、バイオマスのリサイクルの有無にかかわらず、バッチ式、フェッドバッチ式、フェッドバッチ式の繰り返し、または連続発酵により培養されたものである。産生株に応じて、良好な収率(YP/S)を得るために、空気、酸素、二酸化炭素、水素、窒素または適切なガス混合物によるスパージングを行ってもよい。
使用される培養培地は、特定の菌株の要件を適切に満たすものでなければならない。様々な微生物用培地の説明は、米国細菌学会(ワシントンD.C.、米国、1981)のマニュアル「一般細菌学の方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology)」に記載されている。
本発明に従って使用可能なこれらの培地は、通常、1つ以上の炭素源、窒素源、無機塩、ビタミン類および/または微量元素を含む。
好ましい炭素源は、単糖類、二糖類または多糖類などの糖類である。非常に良好な炭素源は、例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース、ソルボース、リブロース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、デンプンまたはセルロースである。糖類はまた、複合化合物、例えば糖蜜、または糖精製の他の副生成物を介して媒体に添加してもよい。また、様々な炭素源の混合物を添加することも有利であり得る。他の可能な炭素源は、油脂、例えば大豆油、ヒマワリ油、落花生油およびココナッツ油、脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはリノール酸、アルコール、例えばグリセロール、メタノールまたはエタノール、および有機酸、例えば酢酸または乳酸である。
窒素源は、通常、有機もしくは無機の窒素化合物またはこれらの化合物を含む材料である。窒素源の例には、アンモニアガスもしくはアンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウム、硝酸塩、尿素、アミノ酸、または複合窒素源、例えばコーンスティープリカー、大豆粉、大豆タンパク質、酵母エキス、肉エキスなどが含まれる。窒素源は、単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。
媒体中に存在し得る無機塩化合物は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、コバルト、モリブデン、カリウム、マンガン、亜鉛、銅および鉄の塩化物、リン酸塩または硫酸塩を含む。
硫黄源としては、無機硫黄含有化合物、例えば、硫酸塩、亜硫酸塩、亜ジチオン酸塩、テトラチオン酸塩、チオ硫酸塩、硫化物だけでなく、有機硫黄含有化合物、例えばメルカプタンおよびチオールを使用することができる。
リン源としては、リン酸、リン酸二水素カリウムもしくはリン酸水素二カリウムまたは対応するナトリウム含有塩を使用することができる。
金属イオンを溶液中に保持するために、キレート剤を媒体に添加してもよい。特に適切なキレート剤は、ジヒドロキシフェノール類、例えばカテコールもしくはプロトカテキン酸、または有機酸、例えばクエン酸を含む。
本発明に従って使用される発酵培地は、他の成長因子、例えばビタミン類または成長促進剤を含有し、これには、例えば、ビオチン、リボフラビン、チアミン、葉酸、ニコチン酸、パントテン酸およびピリドキシンが含まれる。成長因子および塩類は、しばしば、複合培地、例えば酵母エキス、糖蜜、コーンスティープリカーなどの成分に由来する。さらに、適切な前駆体を培養培地に添加してもよい。培地中の化合物の正確な組成は、特定の実験に強く依存し、それぞれの特定のケースごとに個別に決定されなければならない。培地の最適化に関する情報は、教科書「Applied Microbiol. Physiology, A Practical Approach」(1997)に見出すことができる。増殖培地はまた、Standard 1(Merck)またはBHI(脳心臓注入、DIFCO)などの商業的供給業者から得ることができる。
すべての培地成分は、加熱(1.5barおよび121℃で20分)または滅菌濾過によって滅菌される。これらの成分は、一緒に滅菌してもよいし、必要に応じて別々に滅菌してもよい。すべての培地成分は培養の開始時に存在してもよいし、任意に連続的にまたはバッチ式に添加してもよい。
培養物の温度は、通常15℃〜45℃、好ましくは25℃〜40℃であり、実験中は変化させたり、一定に保つようにしたりしてもよい。培地のpHは、5〜8.5、好ましくは7.0前後の範囲とすることが望ましい。増殖のためのpHは、塩基性化合物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアもしくはアンモニア水、または酸性化合物、例えばリン酸もしくは硫酸を添加することによって増殖中に制御することができる。発泡を制御するために、消泡剤、例えば脂肪酸ポリグリコールエステルを使用してもよい。プラスミドの安定性を維持するために、適切な選択的に作用する物質、例えば抗生物質を培地に添加してもよい。好気性条件を維持するために、酸素または酸素含有ガスの混合物、例えば周囲空気を培養物に通す。培養物の温度は、通常、20℃〜45℃の範囲である。最大限の所望の生成物が形成されるまで、培養を続ける。これは、通常、1時間〜160時間以内に達成される。
本発明の方法は、前記ドリマニルアセテートを回収するステップをさらに含み得る。
「回収する」という用語には、培養培地から化合物を抽出、採取、単離または精製することが含まれる。化合物の回収は、従来の樹脂(例えば、アニオンまたはカチオン交換樹脂、非イオン吸着樹脂など)による処理、従来の吸着剤(例えば、活性炭、ケイ酸、シリカゲル、セルロース、アルミナなど)による処理、pHの変化、溶媒抽出(例えば、アルコール、酢酸エチル、ヘキサンなどの従来の溶媒による)、蒸留、透析、濾過、濃縮、結晶化、再結晶、pH調整、凍結乾燥などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で知られている任意の従来の単離法または精製法に従って実施することができる。
意図した分離の前に、ブロスのバイオマスを除去することができる。バイオマスを除去するためのプロセス、例えば、濾過、沈降および浮遊は、当業者に知られている。その結果、バイオマスは、例えば、遠心器、分離器、デカンター、フィルター、または浮遊選別器を用いて除去することができる。有価生成物を最大限に回収するために、例えば、透析濾過の形態で、バイオマスの洗浄がしばしば推奨される。方法の選択は、発酵槽ブロス中のバイオマス含有量およびバイオマスの特性、ならびにバイオマスと有価生成物との相互作用にも依存する。
一実施形態では、発酵ブロスは、滅菌または低温殺菌することができる。更なる実施形態では、発酵ブロスは濃縮される。要件に応じて、この濃縮はバッチ式または連続的に行うことができる。圧力と温度の範囲は、まず生成物の損傷が起こらないように選択することが望ましく、次に装置とエネルギーの使用を最小限に抑える必要がある。特に多段蒸発のための圧力と温度レベルの熟練した選択により、エネルギーの節約が可能になる。
以下の例は、例示的なものに過ぎず、本明細書に記載される特許請求の範囲および実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書で提供される開示を検討した後に、当業者に直ちに明らかになるであろう多数の可能な変形もまた、本発明の範囲内に含まれる。
実験部
材料:
別段の記載がない限り、本明細書で用いられるすべての化学的および生化学的な材料ならびに微生物または細胞は市販品である。
別段の定めがない限り、組換えタンパク質は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T., Molecular cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989に記載されているような標準的な方法でクローン化され、発現される。
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)
DB−5MS UIカラム(膜厚10m×0.25mm×0.25μm)(Agilent Technologies Inc(カリフォルニア州サンタ・クララ)製)のカスタムカラムを備えたAgilent Intuvo 9000シリーズGCシステム。GCは、1:1検出器スプリッターチップ(G4588−60502,Agilent Technologies Inc(カリフォルニア州サンタ・クララ))によって2つの検出器に結合した。1つ目の検出器はAgilent 5977Bシリーズ質量分析計で、2つ目の検出器は標準的なIntuvo 9000水素炎イオン化検出器(FID)である。キャリアガスとして、ヘリウムを2.5ml/分の一定流量で使用した。インジェクションは、インジェクター温度を240℃に設定したスプリット(1:100)モードで行った。オーブン温度は、150℃(0.1分保持)から240℃に40℃/分で、次いで325℃に180℃/分でプログラムし、0.5分保持した。
例1
ドリマンセスキテルペンをドリマニルアセチル化セスキテルペンに変換するためのアセチルトランスフェラーゼ候補の選択
アセチルトランスフェラーゼは、8,000を超える既知の代表例を有する遺伝的に多様な酵素のクラスを構成している(PFAMデータベース:PF02458トランスフェラーゼファミリー)。アセチルトランスフェラーゼが基質として受容する分子のレパートリーは膨大であるが、セスキテルペンアルコールを基質として受容することは報告されていない。ドリマン型セスキテルペンアルコールをアセチル化できるアセチルトランスフェラーゼを同定するために、植物、真菌、細菌由来の既知のアセチルトランスフェラーゼ数千種のうち54種(第1表)を、以下の根拠に基づいて選択した。
植物アセチルトランスフェラーゼBAHDファミリーから知られている5つのクレードのうち2つの、クレード3および5は、アシル供与体としてアセチル−CoAを用いたアルカロイド類およびテルペノイド類のアセチル化について同定されたメンバーを有する(Curr Opin Plant Biol. 2006, 9(3):331-40)。さらに、クレード3および5からのアセチルトランスフェラーゼが使用する基質のいくつかは、バルキーで、多環式であり、かつアシル受容体として立体障害されたアルコール基を有する(BMC Genomics 2011, 12:236; Curr Opin Plant Biol. 2006, 9:331-40; Elife. 2017 Mar 14;6: e23001; Planta. 2015, 242:709-19)。これに基づいて、植物のBAHDファミリークレード3および5から21の候補が選択され、これらの候補には、多環式ジテルペンパクリタキセル(タキソール)の生合成に関与する同定されたアセチルトランスフェラーゼ(Proc Natl Acad Sci U S A.2000, 18; 97(2): 583-587)および二環式のラブダンジテルペンフォルスコリン(Elife 2017, 14; 6: e23001)の生合成に関与するコレウス・フォルスコリ(Plectranthus barbatus)からの2つのアセチルトランスフェラーゼが含まれる。
植物候補と同様に、7つの真菌アセチルトランスフェラーゼを、アシル供与体としてアセチル−CoAを受容する能力と、それらの基質の構造的特徴:立体障害されたアルコール基を有するバルキーな多環式化合物に基づいて選択した(FEMS Microbiol Lett. 2005, 251:193-201; Chembiochem. 2009, 10:2325-8; Biotechnol Equip. 2014, 28(5):818-826; Nat Chem. 2010, 2:858-64)。これらの中から、アリール酸エステル化ドリマン型セスキテルペンラクトンの生合成に関与するタンパク質AstG(アルペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来、NCBIアクセッション番号XP_023091083.1)、アステロリド(Sci Rep. 2016, 6:32865)を選択した。
さらに、PSI Blast検索(Trends Biochem Sci. 2002, 27:161-4)を用いて、AstGとの配列類似性に基づいて、NCBIタンパク質データベースから21の真菌アセチルトランスフェラーゼを検索した(標準パラメーター、2回の反復)。結果は、NCBI Blast Tree View機能を使用して系統樹上に可視化して、AstGと500PSI−Blast由来の配列間の相同性を示した。候補は、系統樹の単一枝に由来するクエリ配列との相同性によって選択した。
最後に、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼは、無差別酵素であることが知られており、クロラムフェニコールよりも大きいバルキーな基質を収容することができる(Protein Sci. 2012, 21(4): 520−530)。このように、クラス1からクラス3までの5つの細菌クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼをNCBIタンパク質データベースから推定クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼとして選択するか、または文献から選択した(Biochem J. 1990, 272:505-10)。
Figure 2022502008
Figure 2022502008
例2
アルビカノールシンターゼおよび異なるアセチルトランスフェラーゼ候補を共発現するSaccharomyces cerevisiaeにおけるアルビカニルアセテートのインビボ生成
酵素候補をそれぞれ、アルビカノールからアルビカニルアセテートへのインビボ生物変換についてスクリーニングした。スクリーニングのために、アセチルトランスフェラーゼ候補をそれぞれ、内因性ファルネシル二リン酸(FPP)のレベルが増加した、操作されたSaccharomyces cerevisiae株におけるディコミタス・スクアレン(Dichomitus squalens)由来のアルビカノールシンターゼXP_007369631.1(NCBIアクセッション番号XP_007369631.1)をコードする遺伝子と共発現させた。
S. cerevisiaeにおける内因性FPPプールのレベルを増加させるために、アセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼをコードするERG10からFPPシンターゼをコードするERG20まで、メバロン酸経路に関与するすべての酵母内因性遺伝子の余分なコピーを、Paddon et al., Nature, 2013, 496:528-532に記載されているのと同様に、ガラクトース誘導性プロモーターの制御下でS. cerevisiae株CEN.PK2−1C(Euroscarf,フランクフルト、ドイツ)のゲノムに組み込んだ。簡単に言えば、3つのカセットを、それぞれLEU2、TRP1およびURA3遺伝子座に組み込んだ。GAL10/GAL1の双方向プロモーターの制御下にある遺伝子ERG20および切断型HMG1(Proc Natl Acad Sci USA, 1997, 109:E111-8に記載されているようなtHMG1)ならびに同じくGAL10/GAL1プロモーターの制御下にある遺伝子ERG19およびERG13を含む第1のカセットは、LEU2の上流セクションおよび下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に隣接していた。遺伝子IDI1およびtHMG1がGAL10/GAL1プロモーターの制御下にあり、遺伝子ERG13がGAL7プロモーター領域の制御下にある第2のカセットでは、このカセットは、TRP1の上流セクションおよび下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に隣接していた。遺伝子ERG10、ERG12、tHMG1およびERG8を有し、これらすべてGAL10/GAL1プロモーターの制御下にある第3のカセットは、URA3の上流および下流セクションに対応する2つの100ヌクレオチド領域に隣接していた。3つのカセットのすべての遺伝子には、それ自身のターミネーター領域の200ヌクレオチドが含まれていたいた。また、Proc Natl Acad Sci USA, 1991, 88:8597-8601に記載されるように、それ自身のプロモーターの突然変異型の制御下にあるGAL4の余分なコピーを、ERG9プロモーター領域の上流に組み込んだ。さらに、プロモーター交換によってERG9の発現を改変させた。GAL7、GAL10およびGAL1遺伝子は、それ自身のプロモーターおよびターミネーターを有するHIS3遺伝子を含むカセットを用いて欠失させた。得られた株を、株CEN.PK2−1D(Euroscarf,フランクフルト、ドイツ)と交配させ、Solis-Escalante et al, FEMS Yeast Res, 2015, 15:2に従って胞子形成のために誘導されたYST045と呼ばれる二倍体株を得た。胞子分離は、2μLのザイモリアーゼ(1000UmL−1、Zymo research,カリフォルニア州アーバイン)を含む200μLの0.5Mソルビトールに子嚢を再懸濁し、37℃で20分間インキュベートすることによって達成された。次いで、20g/Lペプトン、10g/L酵母エキス、20g/Lグルコースおよび20g/L寒天を含む培地上にプレーティングし、1つの発芽胞子を単離し、YST069と呼んだ。
XP_007369631.1および評価されたアセチルトランスフェラーゼをYST069で発現させるために、Kuijpers et al., Microb Cell Fact., 2013, 12:47に以前記載されていたように、酵母内因性相同組換えを用いてプラスミドをインビボで構築した。このプラスミドは、S. cerevisiaeの共形質転換に用いた4つのDNA断片から構成されている。断片は、以下のとおりであった:
a)BsmBIを用いた酵素的制限により線形化されたプラスミドpF167(配列番号1)。pF167は、以前は酵母でのインビボアセンブリによって構築されており、pF167は、それ自身のプロモーターおよびターミネーターを有する酵母マーカーLEU2、大腸菌マーカーAmpR、2μ酵母複製起点、大腸菌pUC複製起点ならびに相同組換えのための5’−GCACTTGCTACACTGTCAGGATAGCTTCCGTCACATGGTGGCGATCACCGTACATCTGAG−3’(配列番号2)および5’−AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCAT−3’(配列番号3)を含む;
b)5’−GCACTTGCTACACTGTCAGGATAGCTTCCGTCACATGGTGGCGATCACCGTACATCTGAG−3’(配列番号2)、酵母遺伝子PGK1のターミネーター領域およびS. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたセスキテルペンシンターゼXP_007369631.1 DNA配列コドン(配列番号4)によって構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた。酵母由来の双方向性GAL1/GAL10プロモーター領域をPCRオーバーラップエクステンションによって、この断片に付加した。(Yolov and Shabarova., Nucleic Acids Res. 1990, 18(13):3983-6);
c)評価されるアセチルトランスフェラーゼDNAコーディング配列(S. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたコドン)の1つである酵母GAL10プロモーター領域の最初のヌクレオチドに対応する60bpと、酵母CYC1ターミネーター領域の60bpとから構成される断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた;ならびに
d)酵母遺伝子CYC1のターミネーター領域と、配列5’−AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCAT−3’(配列番号3)とから構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)により得られた。
YST069を、インビボでのプラスミドアセンブリに必要とされる断片を用いて形質転換した。酵母の形質転換は、Gietz and Woods, Methods Enzymol., 2002, 350:87−96に記載されているように、酢酸リチウムプロトコルを用いて実施した。形質転換混合物を、アミノ酸を含まない6.7g/L酵母培養用ニトロゲンベース(BD Difco、ニュージャージー州、米国)、ロイシンを含まない1.6g/Lドロップアウトサプリメント(Sigma Aldrich、ミズーリ州、米国)、20g/Lグルコースおよび20g/L寒天を含むSmLeu−培地上にプレーティングした。プレートを30℃で3〜4日間インキュベートした。個々のコロニーを、Westfall et al., Proc Natl Acad Sci USA, 2012, 109:E111-118に記載されているように250μLの培地と、有機オーバーレイとして50μLのアジピン酸ジイソデシルエステル(abcr GmbH、ドイツ)を含むディープウェルプレート中でアルビカノールおよびアルビカニルアセテートを産生するために使用した。ディープウェルプレートをプレートインキュベーターで30℃にて3日間インキュベートした。酵母細胞によって産生されるアルビカノールおよびアルビカニルアセテートを抽出するために、ディープウェルプレートの各ウェルを、内部標準物質を含む酢酸エチル700μLで抽出した。アルビカノールおよびアルビカニルアセテートの生成は、GC−MS分析を用いて同定し、上記の内部標準物質を用いてGC−FIDにより定量化した。
これらの実験条件下で、アルビカノールシンターゼとアセチルトランスフェラーゼとの9つの組み合わせにおいて、アルビカニルアセテートが検出された(第2表)。驚くべきことに、2つの最も活性の高いアセチルトランスフェラーゼ(CrDATおよびFgaAT)は、最適化されていないスクリーニング条件で150mg/L以上のアルビカニルアセテートの力価を産生した。GC−FIDクロマトグラムを図2に示す。さらに、図2から、酵母由来のアルビカニルアセテートのMSスペクトルは、基準となるアルビカニルアセテートのMSスペクトルと同一であることがわかる。
興味深いことに、我々のスクリーニングで最も活性の高いアセチルトランスフェラーゼであるCrDATは、植物BAHDファミリーのクレード3のメンバーであり、植物アルカロイドの生合成に関与しているが、同じファミリーおよびクレードからの他の試験されたアセチルトランスフェラーゼであるPsSalATおよびRsVISYは、植物アルカロイド生合成に関与しているが(それぞれテバインおよびビノリン)、アルビカノールが基質として提示された場合には活性ではなかった。さらに、同じくアルカロイドの生合成に関与するアスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)由来のFgaAT(フミガラクビンBに対して活性)は、我々のスクリーニングでは相当量のアルビカニルアセテートを産生していたが、推定フミガラクビンB O−アセチルトランスフェラーゼGAO81666.1は、驚くべきことに、FgaATよりも一桁少ないアルビカニルアセテートを産生していた。
注目に値するのは、アセチルトランスフェラーゼAstGも、AstGとの類似性に基づいて選択されたタンパク質(GAO81666.1を除く、上記参照)のいずれも、AstGが、修飾されたドリマン型セスキテルペンアステロリドの生合成に関与しているという事実にもかかわらず、ドリマニルアセチル化セスキテルペンアルビカニルアセテートを産生しなかったことである。
ジテルペン生合成において唯一の同定されたアセチルトランスフェラーゼは、パクリタキセル(タキソール)およびフォルスコリンの産生に関与するものである。C. forskohliiから試験された8つのアセチルトランスフェラーゼのうち、CfACT1−6とCfACT1−8のみがアルビカノールをアセチル化することができた。TcTATおよびTcDBAT遺伝子は、タキソールの生合成において構造的に類似した中間体をアセチル化することができるが(それぞれタキサ−4(20),11(12)−ジエン−5a−イルアセテートおよびバッカチンIII)、TcTATのみがアルビカニルアセテートを産生した。
アシル受容体としてアルビカノールを使用することができるアセチルトランスフェラーゼを同定するために、現在文書化されている複雑さに加えて、5つの試験された基質汎用性の高いクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼのうち、アルビカノールをアルビカニルアセテートに変換することができたのは1つだけであった。
Figure 2022502008
例3
ドリメノールシンターゼと選択されたアセチルトランスフェラーゼ候補とを共発現するSaccharomyces cerevisiaeにおけるドリメニルアセテートのインビボ産生
Saccharomyces cerevisiaeにおけるドリメニルアセテートの生成のために、例2に示すように、アルビカノールをアルビカニルアセテートに変換することができる9種類の選択されたアセチルトランスフェラーゼ(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8)を使用して、ドリメノールからドリメニルアセテートへの変換を評価した。
ドリメニルアセテートは、内因性FPPのレベルが増加した、操作されたS. cerevisiae株YST069(例2参照)において、選択されたアセチルトランスフェラーゼ酵素候補の各々を、アガリクス・ビスポラス(Agaricus bisporus)由来のドリメノールシンターゼXP_006461126(NCBIアクセッション番号XP_006461126)をコードする遺伝子と共発現させることによってインビボで産生した。
XP_006461126および選択されたアセチルトランスフェラーゼ(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6およびCfACT1−8)をYST069で発現させるために、Kuijpers et al., Microb Cell Fact., 2013, 12:47に以前記載されていたように、酵母内因性相同組換えを用いてプラスミドをインビボで構築した。このプラスミドは、S. cerevisiaeの共形質転換に用いた4つのDNA断片から構成されている。断片は、以下のとおりであった:
a)BsmBIを用いた酵素的制限により線形化されたプラスミドpF167(配列番号1)。pF167は、以前は酵母でのインビボアセンブリによって構築されており、pF167は、それ自身のプロモーターおよびターミネーターを有する酵母マーカーLEU2、大腸菌マーカーAmpR、2μ酵母複製起点、大腸菌pUC複製起点ならびに相同組換えのための5’−GCACTTGCTACACTGTCAGGATAGCTTCCGTCACATGGTGGCGATCACCGTACATCTGAG−3’(配列番号2)および5’−AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCAT−3’(配列番号3)を含む;
b)5’−GCACTTGCTACACTGTCAGGATAGCTTCCGTCACATGGTGGCGATCACCGTACATCTGAG−3’(配列番号2)、酵母遺伝子PGK1のターミネーター領域およびS. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたセスキテルペンシンターゼXP_006461126 DNA配列コドン(配列番号6)によって構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた。酵母由来の双方向性GAL1/GAL10プロモーター領域をPCRオーバーラップエクステンションによって、この断片に付加した。(Yolov and Shabarova., Nucleic Acids Res. 1990, 18(13):3983-6);
c)評価されるアセチルトランスフェラーゼDNAコーディング配列(S. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたコドン)の1つである酵母GAL10プロモーター領域の最初のヌクレオチドに対応する60bpと、酵母CYC1ターミネーター領域の60bpとから構成される断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた;ならびに
d)酵母遺伝子CYC1のターミネーター領域と、配列5’−AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCAT−3’(配列番号3)とから構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)により得られた。
酵母の形質転換、スクリーニング条件、およびドリメノールおよびドリメニルアセテートの定量化は、アルビカノールおよびアルビカニルアセテートの生成について例2に記載したように実施した。
(例2からの)アルビカニルアセテートおよびドリメニルアセテートの相対量をそれぞれ図3および図4に示す。試験した9つの酵素候補から、7つの酵素(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、GAO81666.1、CfACT1−6およびCfACT1−8)がドリメニルアセテートを産生した。アルビカノールおよびドリメノールの構造的類似性が高いために、類似した相対変換率が見出されることが期待された。
予期せぬことに、ドリメノールの対応するアセテートへの変換が著しく変化していることが判明した。特に、最も高い相対量のアルビカニルアセテートを産生することが判明したCrDATは、ドリメニルアセテートの生成量が最も少ない物質の1つであることが判明した。対照的に、FgaATおよびCfACT1−8は、最も高い相対量のofdアセテートを産生することがわかったが、アルビカノールに対しては活性が低かった。これらの驚くべき知見は、非生理学的基質を受容する適切なアセチルトランスフェラーゼ酵素の候補を同定することの難しさを示している。
例4
ドリメノールおよびアルビカノール対して活性を有するアセチルトランスフェラーゼに基づきドリマンセスキテルペンをアセチル化ドリマニルセスキテルペンに変換するためのアセチルトランスフェラーゼ候補の選択
a)実験1
ドリマン型セスキテルペンアルコールをアセチル化することができるアセチルトランスフェラーゼをさらに同定するために、アルビカノールおよびドリメノールに対して活性を有するアセチルトランスフェラーゼCrDATおよびFgaAT(例2および3に示す)のアミノ酸配列を用いて、NCBI Protein Blast検索を行い、類似したタンパク質配列のホモログを見つけ出した。Protein Blast検索は、デフォルトのパラメーターを使用して実行した(Tatiana et al, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250, 1999)。
CrDATに対する植物アセチルトランスフェラーゼXP_008340165.2ホモログおよびFgaATに対する4つの真菌アセチルトランスフェラーゼホモログ(KEY80391、PYI04555.1、XP_001276734.1、XP_024709055.1)をBlast検索で検索した。それらを表3に列挙する。
Figure 2022502008
b)実験2
さらに、追加のアセチルトランスフェラーゼ候補を、苔類エゾムチゴケ(Bazzania trilobata)およびシダ植物ニオイシダ(Dryopteris fragrans)のトランスクリプトームから検索した。苔類Bazzaniaは、ドリマンセスキテルペンを含むテルペノイド類を豊富に含んでおり、さらに、Bazzania属の苔類からの天然物としてアルビカニルアセテートおよびアルビカニルカフェートが報告されている(Asakawa et al, Phytochemistry, Volume 30, Issue 9, 1991, Pages 3037-3040)。同様に、Dryopteris属では、アルビカニルアセテートを含むいくつかの異なる天然物が報告されている(Hideyuki Ito et al. Chem. Pharm. Bull. 48(8) 1190-1195 (2000); Froissard D et al. Nat Prod Commun. 2014 Jan;9(1):137-40.)。
Bazzania trilobata(NCBIアクセッション番号ER364415)のトランスクリプトームを、CLC Genomic Workbench(Qiagen)を用いてアセンブルした結果、平均長さ1,225塩基対で合計22083コンティグが得られた。CrDATアミノ酸配列を用いて、Bazzania trilobataのトランスクリプトームの相同配列を検索した。この検索のために、デフォルトのパラメーターでtBlastnアルゴリズム(Altschul et al. 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410)を使用した。E値が0.001を超える転写物を考慮した。CrDATに対して20%という低いアミノ酸配列相同性を有する植物アセチルトランスフェラーゼBAHDファミリーに属する10個の転写物を選択した。
D. fragransからの植物材料を中国北部から収集した。D. fragransの生葉(サンプルID PNLI20141074)をトランスクリプトーム解析のために用いた。D. fragransのトータルRNAを、QIAGEN社のRNeasy Plant Mini Kit(カタログ番号74904)を用いて抽出した。トータルRNAサンプルPNLI20141074を、NEBNext(登録商標)UltraTM RNA Library Prep Kit for Illumina(NEB、米国)およびTruSeq PE Cluster Kit(Illumina、米国)を用いて処理し、次いでIllumina Miseqシーケンサー上でシークエンシングした。2×350bpのペアエンドリード2,088万個を生成した。このリードをTrinity(http://trinityrnaseq.sf.net/)ソフトウェアを用いてアセンブルし、1373bpのN50を有する85753コンティグを得た。コンティグをEMBOSSソフトウェア(http://emboss.sourceforge.net/)を用いて解析し、タンパク質配列を得た。アセチルトランスフェラーゼERR364415−1_contig_8546(上記のようにBazzania trilobata(NCBIアクセッション番号ERR364415)トランスクリプトームから得られたもの)のアミノ酸配列(配列番号144)を用いて、D. fragransトランスクリプトームの相同配列を検索した。この検索のために、標準パラメーターを用いてtBlastnアルゴリズムを用いた(Altschul et al 1990, J. Mol. Biol. 215, 403-410)。このアプローチにより、植物アセチルトランスフェラーゼBAHDファミリーに属する20個の転写物が提供された。
例5
アルビカノール、ドリメノールまたはビシクロファルネソールのいずれかを産生するための酵素を、選択されたアセチルトランスフェラーゼ候補と共に共発現させることよる、Saccharomyces cerevisiaeにおけるドリマニルアセテートのインビボ産生
アルビカノール、ドリメノールおよびビシクロファルネソールをそれらの対応するアセテート誘導体に変換するためのアセチルトランスフェラーゼの拡張スクリーニングを実施した。例1の表1および例4に記載される計89のアセチルトランスフェラーゼを、操作されたSaccharomyces cerevisiae細胞においてインビボでスクリーニングした。例2および例3に記載されるような予備的な数のアセチルトランスフェラーゼについて産生されたスクリーニングデータは繰り返さなかった。したがって、例2および例3で試験されなかったアルビカノール、ドリメノールまたはビシクロファルネソールのいずれかを産生するSaccharomyces cerevisiae細胞とのアセチルトランスフェラーゼの新しい組み合わせのみをスクリーニングした。
操作されたS. cerevisiae株YST069を、例2および例3に記載されているように、アルビカニルアセテートおよびドリメニルアセテートの生成スクリーニングのために使用した。
ビシクロファルネシルアセテートは、操作されたS. cerevisiae株YST069において、選択されたアセチルトランスフェラーゼ酵素候補の各々を、アステロリド生合成からのビシクロファルネソールの産生を担う酵素AstC(配列番号138)、AstI(配列番号140)およびAstK(配列番号142)と一緒に共発現させることによってインビボで産生した(Yasutomo Shinohara et al. Sci Rep. 2016, 6: 32865)。
AstCおよびAstIの同時発現のために、AstCをコードする遺伝子(配列番号138)とAstIをコードする遺伝子(配列番号140)のS. cerevisiae型用に最適化されたコドンならびに双方向性GAL1/GAL10プロモーターを含む発現カセットを構築し、YST069のゲノムに組み込んだ結果、YST216と呼ばれる新しい株が得られた。AstCおよびAstIのコドン最適化DNA配列は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)により得られた。酵母由来の双方向性GAL1/GAL10プロモーター領域をPCRオーバーラップ拡張によりこれらの遺伝子に付加した(Yolov and Shabarova., Nucleic Acids Res. 1990, 18(13):3983-6)。
AstKおよび評価されたアセチルトランスフェラーゼをYST216で発現させるために、Kuijpers et al., Microb Cell Fact., 2013, 12:47に以前記載されていたように、酵母内因性相同組換えを用いてプラスミドをインビボで構築した。プラスミドは、S. cerevisiaeの共形質転換に用いた4つのDNA断片から構成されている。断片は、以下のとおりであった:
a)BsmBIを用いた酵素的制限により線形化されたプラスミドpF167(配列番号1);
b)5’−GCACTTGCTACACTGTCAGGATAGCTTCCGTCACATGGTGGCGATCACCGTACATCTGAG−3’(配列番号2)、酵母遺伝子PGK1のターミネーター領域およびS. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたAstK DNA配列コドン(配列番号141)によって構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた。酵母由来の双方向性GAL1/GAL10プロモーター領域をPCRオーバーラップエクステンションによって、この断片に付加した。(Yolov and Shabarova., Nucleic Acids Res. 1990, 18(13):3983-6);
c)評価されるアセチルトランスフェラーゼDNAコーディング配列(S. cerevisiaeにおけるその発現のために最適化されたコドン)の1つである酵母GAL10プロモーター領域の最初のヌクレオチドに対応する60bpと、酵母CYC1ターミネーター領域の60bpとから構成される断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)によって得られた;ならびに
d)酵母遺伝子CYC1のターミネーター領域と、配列5’−AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCAT−3’(配列番号3)とから構成された断片であって、この断片は、DNA合成(ATUM、カリフォルニア州メンローパーク94025)により得られた。
YST216を、インビボでのプラスミドアセンブリに必要とされる断片で形質転換した。酵母の形質転換は、例2に記載したように実施した。スクリーニング条件およびビシクロファルネソールおよびビシクロファルネシルアセテートの定量化は、スクリーニング手順において有機オーバーレイとして25μLの鉱油(2705-01、VWR International, LLC.)を使用したことを除き、例2に記載したものと同一であった。
結果:
アルビカノールに対して活性を有する前述の9つの酵素(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、CrMAT、LiAAT−4、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8)(例2参照)に加えて、これらの条件下で、Bazzania trilobata(配列番号124または144)由来のアセチルトランスフェラーゼERR364415−1_contig_8546、およびDryopteris fragrans(配列番号118)由来のDfATC13を使用した場合、アルビカニルアセテートが検出された。しかしながら、それらの活性はCrDATおよびFgaATに比べて低かった。アルビカニルアセテートの相対量を図5に示す。
ドリメノールをドリメニルアセテートに変換し得る7つの酵素候補(CrDAT、FgaAT、OAH94415.1、TcTAT、GAO81666.1、CfACT1−6およびCfACT1−8)(例3参照)の他に、3つの追加のアセチルトランスフェラーゼ、Aspergillus fischeri由来のXP_001258079.1(配列番号127)、Bazzania trilobata由来のERR364415−1_contig_8546(配列番号124または144)およびDryopteris fragrans由来のDfATC13(配列番号118)が、拡大スクリーニングにおいて、ドリメノールからドリメニルアセテートを産生することが見出された。得られたドリメニルアセテートの相対量を図6に示す。図7に示すように、酵母由来のドリメニルアセテートのMSスペクトルは、基準となるドリメニルアセテートのMSスペクトルと同一であることがわかる。興味深いことに、これらの実験条件下では、ERR364415−1_contig_8546およびDfATC13は、試験したすべてのアセチルトランスフェラーゼの中で最も高い活性を示した。
ビシクロファルネシルアセテートを、試験した89のアセチルトランスフェラーゼを用いて、AstC、AstIおよびAstKの13の組み合わせについて検出した。図8は、酵母由来のビシクロファルネシルアセテートのMSスペクトルが、基準となるビシクロファルネシルアセテートのMSスペクトルと同一であることを示している。ビシクロファルネシルアセテートの相対量を図9に示す。Aspergillus fumigatus由来のアセチルトランスフェラーゼFgaATおよびBazzania trilobata由来のERR364415−1_contig_8546は、ビシクロファルネソールを用いて最も高いアセチル化活性を示した。ビシクロファルネソールに対して活性を有する、これらの13の発見されたアセチルトランスフェラーゼ、すなわち、上記例2に記載のCrDAT、FgaAT、TcTAT、CrMAT、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8、およびBAU61551.1(配列番号133)、PsSalAT(配列番号136)、XP_001217250.1(配列番号130)、ERR364415−1_contig_8546(配列番号124または144)、PYI04555.1(配列番号121または143)、DfACT13(配列番号118)のうち、9つの、すなわち、CrDAT、FgaAT、TcTAT、CrMAT、GAO81666.1、CfACT1−6、CfACT1−8、ERR364415−1_contig_8546、DfACT13は、アルビカノールおよびドリメノールに対しても活性を有することが判明した。アリール酸エステル化されたドリマン型セスキテルペンラクトンであるアステロリド(Sci Rep. 2016, 6:32865)の生合成に関与するアセチルトランスフェラーゼAstGが、試験した任意のドリマン型セスキテルペンアルコールに対して活性を有していなかったことは注目する価値がある。このことは、アルビカノール、ドリメノール、またはビシクロファルネソールをアシル受容体として使用することができるアセチルトランスフェラーゼを同定することの予測不可能性と複雑さを改めて示している。
相互参照された文書の内容は、参照により組み込まれる。
Figure 2022502008
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配列表リスト
配列番号1
プラスミドpF167
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配列番号2
相同組換え用配列
Figure 2022502008
配列番号3
相同組換え用配列
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配列番号4
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたXP_007369631.1DNA配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号5
ディコミタス・スクアレン(Dichomitus squalens)アルビカノールシンターゼのXP_007369631.1アミノ酸配列
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配列番号6
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたXP_006461126アガリクス・ビスポラス(Agaricus bisporus)ドリメノールシンターゼDNA配列コドン
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配列番号7
アガリクス・ビスポラス(Agaricus bisporus)ドリメノールシンターゼのXP_006461126タンパク質配列
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配列番号8
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたCrDATDNA配列コドン
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配列番号9
CrDATタンパク質配列
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配列番号10
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたTcTATDNA配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号11
TcTATタンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号12
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたCrMATDNA配列コドン
Figure 2022502008
配列番号13
CrMATタンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号14
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたLiAAT−4DNA配列コドン
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配列番号15
LiAAT−4タンパク質配列
Figure 2022502008
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配列番号16
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたFgaATDNA配列コドン
Figure 2022502008
配列番号17
FgaATタンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号18
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたGAO81666.1DNA配列コドン
Figure 2022502008
配列番号19
GAO81666.1タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号20
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたCfACT1−6DNA配列コドン
Figure 2022502008
配列番号21
CfACT1−6タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号22
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたCfACT1−8DNA配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号23
CfACT1−8タンパク質配列
Figure 2022502008
任意にC末端の「T」が欠けていてもよい。
配列番号24
S. cerevisiae におけるその発現に最適化されたOAH94415.1DNA配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号25
OAH94415.1タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号116
DfACT13天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
配列番号117
S. cerevisiae におけるその発現に最適化されたDfACT13ヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号118
DfACT13タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号119
PYI04555.1天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
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配列番号120
配列番号143のC末端拡張型タンパク質多様体をコードする、S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたPYI04555.1ヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号121
配列番号143のPYI04555.1タンパク質配列C末端拡張型タンパク質多様体
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配列番号122
ERR364415−1_contig_8546天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
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配列番号123
配列番号144のC末端拡張型タンパク質多様体をコードする、S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたERR364415−1_contig_8546ヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号124
配列番号144のERR364415−1_contig_8546タンパク質配列C末端拡張型タンパク質多様体
Figure 2022502008
配列番号125
XP_001258079.1天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
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配列番号126
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたXP_001258079.1ヌクレオチド配列コドン
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配列番号127
XP_001258079.1タンパク質配列
Figure 2022502008
Figure 2022502008
配列番号128
XP_001217250.1天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
配列番号129
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたXP_001217250.1ヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
Figure 2022502008
配列番号130
XP_001217250.1タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号131
BAU61551.1天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
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配列番号132
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたBAU61551.1ヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
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配列番号133
BAU61551.1タンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号134
PsSalAT天然ヌクレオチド配列
Figure 2022502008
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配列番号135
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたPsSalATヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号136
PsSalATタンパク質配列
Figure 2022502008
Figure 2022502008
配列番号137
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたAstCヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号138
AstC タンパク質配列
Figure 2022502008
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配列番号139
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたAstIヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号140
AstIタンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号141
S. cerevisiaeにおけるその発現に最適化されたAstKヌクレオチド配列コドン
Figure 2022502008
配列番号142
AstKタンパク質配列
Figure 2022502008
配列番号143
C末端が拡張されていないPYI04555.1タンパク質配列
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配列番号144
C末端が拡張されていないERR364415−1_contig_8546タンパク質配列
Figure 2022502008
本発明において適用可能な更なる配列を以下に列挙する。「以前の」配列番号は、それぞれの特許文献で使用されているものを指す。
Figure 2022502008
Figure 2022502008
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Claims (17)

  1. ドリマニルアセテート化合物を生体触媒的に生成する方法であって、
    (1)アセチル基供与体の存在下で、ドリマニルアルコールを、前記アセチル基供与体からのアセチル基を前記ドリマニルアルコールに移動させることができる酵素クラスEC2.3.1のアセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドと接触させて、ドリマニルアセテートを得るステップと、
    (2)任意に、ステップ(1)の反応生成物からドリマニルアセテート化合物を単離するステップと
    を含む、方法。
  2. 前記ドリマニルアセテート化合物が、アルビカニルアセテート、ドリメニルアセテート、およびビシクロファルネシルアセテートからなる群から選択され、それぞれが立体異性体的に純粋な形態で、またはその少なくとも2つの立体異性体の混合物、または前記群のうちの少なくとも2つのメンバーを含むそれらの組み合わせとして存在する、請求項1記載の方法。
  3. 前記ドリマニルアルコールが、アルビカノール、ドリメノール、およびビシクロファルネソールからなる群から選択され、それぞれが立体異性的に純粋な形態で、またはその少なくとも2つの立体異性体の混合物、または前記群のうちの少なくとも2つのメンバーを含むそれらの組み合わせとして存在する、請求項1または2記載の方法。
  4. 前記アセチル基供与体がアセチル−コエンザイムA(アセチル−CoA)である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 前記アセチルトランスフェラーゼが、
    a)配列番号9、17、118、124、144、23、21、11、19、13、15、25、121、143、127、130、133または136から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、ならびに
    b)アセチルトランスフェラーゼ活性を有し、かつ配列番号9、17、118、124、144、23、21、11、19、13、15、25、121、143、127、130、133または136の前記アミノ酸配列のうちの少なくとも1つと少なくとも40%の配列同一性の程度を示すアミノ酸配列を含むポリペプチド
    から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. ステップ1)に先立って、前記ドリマニルアルコール化合物の生体触媒的形成、特に、非環状セスキテルペン前駆体、例えばファルネシルピロリン酸(FPP)からの酵素的合成をさらに含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
  7. 前記ドリマニルアルコールの前記酵素的合成が、前記非環状セスキテルペン前駆体を1つ以上の酵素的ステップで少なくとも1種のドリマニルアルコールに変換する能力を有する1つ以上のポリペプチドによって触媒される、請求項6記載の方法。
  8. 前記少なくとも1種のドリマニルアルコールを、FPPから単一のステップまたは2つ以上の酵素的ステップで生成する、請求項7記載の方法。
  9. 前記少なくとも1種のドリマニルアルコールが、
    a)前記ドリマニルアルコールを形成するドリマンセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチド;または
    b)少なくとも1種のドリマニルリン酸中間体を形成するドリマニルリン酸シンターゼ活性を有するポリペプチドと、前記少なくとも1種のドリマニルリン酸中間体を少なくとも1種のドリマニルアルコールに変換するホスファターゼ活性を有するポリペプチドとの組み合わせ
    によって触媒される、FPPの酵素的変換によって生成される、請求項8記載の方法。
  10. a)前記ドリマンセスキテルペンシンターゼ活性を有するポリペプチドが、アルビカノールシンターゼ活性、ドリメノールシンターゼ活性、ビシクロファルネソールシンターゼ活性またはそのような活性の任意の組み合わせから選択され、かつ
    b)前記ポリペプチドの組み合わせが、ドリマニル二リン酸シンターゼ活性、特にアルビカニル二リン酸シンターゼ活性およびホスファターゼを含む、
    請求項9記載の方法。
  11. 前記ドリマリンセスキテルペンシンターゼが、
    a)アルビカノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号5のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはアルビカノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号5と少なくとも40%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体もしくは多様体ポリペプチド;
    b)ドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号7のアミノ酸配列を含むポリペプチド、またはドリメノールシンターゼ活性を有し、かつ配列番号7と少なくとも40%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体もしくは多様体ポリペプチド
    から選択される、請求項10記載の方法。
  12. インビボでは宿主細胞培養中で、またはインビトロでは液体反応媒体中で実施され、それぞれ少なくとも1種のドリマニルアセテートの生成を助長する条件下にある、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
  13. a)請求項5に定義されている少なくとも1種のアセチルトランスフェラーゼと、任意に
    b)非環状セスキテルペン前駆体FPPを、請求項7から11までのいずれか1項において定義されている少なくとも1種のドリマニルアルコールに変換する能力を有する少なくとも1つのポリペプチドと、任意に
    c)メバロン酸経路に関与する酵素から選択される少なくとも1種の酵素と
    を機能的に発現することができる、組換え宿主細胞または組換え非ヒト宿主生物中で実施される、請求項12記載の方法。
  14. 前記非ヒト宿主細胞または宿主生物が、原核生物もしくは真核生物の微生物、またはそれらに由来する細胞から選択され、特に、ここで、前記非ヒト宿主細胞または宿主生物は、細菌、真菌および植物の細胞または植物から選択される、請求項13記載の方法。
  15. ステップ(3)として、ステップ(1)またはステップ(2)の前記ドリマニルアセテートを処理して、化学合成または生体触媒合成またはその両方の組み合わせを使用して誘導体を得ることをさらに含む、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
  16. 前記方法が、特に、非ヒト宿主生物または宿主細胞を、
    a)アセチル基供与体からのアセチル基をドリマニルアルコールに移動させることができるアセチルトランスフェラーゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸であって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと、任意に
    b)非環状セスキテルペン前駆体からドリマニルアルコールを生成することができるドリマニルアルコールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸であって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと、任意に
    c)前記非環状セスキテルペン前駆体を生成するための生合成経路に関与する少なくとも1つのポリペプチドをコードする核酸配列を含む少なくとも1つの核酸であって、任意に安定的にゲノムに組み込まれているものと
    で形質転換することを含む、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
  17. 匂い物質、フレーバーもしくはフレグランス成分または昆虫/害虫防除成分を調製するための、請求項1から15までのいずれか1項において定義されるアセチルトランスフェラーゼの使用。
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