JP2022186377A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】還元剤を排気通路に噴射する添加弁の供給異常を判定する機会を減少することなく、精度良く供給異常を判定可能とする。【解決手段】ポンプ制御部110は、供給通路内の尿素水圧力を所定圧に制御する。実噴射量算出部130は、噴射停止時におけるポンプの回転速度である基準回転速度N0を、車両の加速度に応じて補正し、補正後基準回転速度Ncを算出し、補正後基準回転速度Ncと噴射時におけるポンプの回転速度である噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量Qpを算出する。判定部140は、実噴射量Qpと指令噴射量Qoを比較することにより、尿素水の供給異常を判定する。【選択図】図4

Description

本開示は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特に、還元剤を用いて排気を浄化する内燃機の排気浄化装置に関する。
内燃機関の排気に含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する排気浄化装置として、内燃機関の排気通路に還元剤を供給してNOxを還元することが知られている。たとえば、特開2019-70351号公報(特許文献1)には、排気通路に噴射された尿素水からアンモニアを生成し、生成したアンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元触媒(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒とも称する)を備えた排気浄化装置が開示されている。この特許文献1に開示された内燃機関の排気浄化装置は、還元剤の供給異常が発生しているか否かの診断を行う異常診断装置を備えている。
特開2019-70351号公報
特許文献1では、還元剤を添加弁から排気通路に噴射したときの還元剤通路内の圧力低下量に基づき還元剤の供給異常の診断(異常診断)を行う際、還元剤供給通路に加わる加速度の影響による誤診断を防止するため、車両が停止していることを条件として、異常診断を行っている。このため、異常診断を行う機会が減少するという課題がある。
本開示の目的は、還元剤を排気通路に噴射する添加弁の供給異常を判定する機会を減少することなく、精度良く供給異常を判定可能な、内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
本開示の内燃機関の排気浄化装置は、車両に搭載された内燃機関の排気通路に還元剤を供給し、内燃機関から排出されたNOxを浄化する内燃機関の排気浄化装置である。内燃機関の排気浄化装置は、排気通路に還元剤を噴射する添加弁と、回転駆動されることにより還元剤を添加弁へ吐出するポンプと、ポンプから吐出された還元剤を添加弁に供給する供給通路と、添加弁と前記ポンプを制御する制御装置と、を備える。制御装置は、供給通路内の還元剤の圧力を所定圧に制御するポンプ制御部と、添加弁の指令噴射量を算出する指令噴射量算出部と、添加弁から噴射される実噴射量を算出する実噴射量算出部と、指令噴射量と実噴射量とを比較することにより、添加弁の供給異常の有無を判定する判定部と、を含む。実噴射量算出部は、添加弁の噴射停止時におけるポンプの回転速度である基準回転速度と添加弁の噴射時におけるポンプの回転速度である噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量を算出するとともに、車両の加速度に応じて前記基準回転速度を補正する。
この構成によれば、供給通路内の還元剤は、添加弁から排気通路に噴射される。ポンプ制御部は、供給通路内の還元剤の圧力が所定圧になるようポンプを制御する。判定部は、指令噴射量算出部で算出した添加弁の指令噴射量と、実噴射量算出部で算出した添加弁から噴射される実噴射量とを比較することにより、添加弁の供給異常を判定する。
添加弁から還元剤が噴射されると、供給通路内の還元剤の圧力が低下する。添加弁から噴射された還元剤の量は、供給通路内の還元剤の圧力低下量と相関する。供給通路内の還元剤の圧力は所定圧に制御されているので、供給通路内の還元剤の圧力が低下するとポンプの回転速度が上昇する。このため、添加弁から噴射された還元剤の量と、ポンプの回転速度の上昇量は相関する。
実噴射量算出部は、添加弁の噴射停止時におけるポンプの回転速度である基準回転速度と添加弁の噴射時におけるポンプの回転速度である噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量を算出する。基準回転速度と噴射時回転速度の差は、ポンプの回転速度の上昇量に相当するので、添加弁から噴射される実噴射量を算出することができる。
車両の走行時、車両に加わる加速度によってポンプにも加速度が加わると、添加弁の噴射停止時におけるポンプの回転速度である基準回転速度が変化する。このため、車両の走行時に、実噴射量を精度良く算出するには、車両に加わる加速度の影響を考慮する(加速度の影響を排除する)ことが望まれる。実噴射量算出部は、車両の加速度に応じて基準回転速度を補正する。したがって、車両の走行時、基準回転速度と噴射時回転速度の差に基づいて実噴射量を精度良く算出することができるので、添加弁の供給異常を判定する機会を減少することなく、精度良く供給異常を判定することができる。
好ましくは、実噴射量算出部は、車両の停車時に基準回転速度を算出するようにしても良い。
この構成によれば、車両の走行による加速度が発生せず、かつ、添加弁の噴射停止期間が比較的長い停車時に、基準回転速度が算出されるので、基準回転速度を精度良く算出することができる。そして、停車時に算出した基準回転速度を車両の加速度で補正することにより、実噴射量を精度良く算出することが可能になる。
好ましくは、添加弁は、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行するよう制御され、実噴射量算出部は、添加弁の噴射開始前の基準回転速度を取得し、添加弁の噴射開始後の噴射時回転速度を取得するとともに、添加弁の噴射開始前の基準回転速度に対する添加弁の噴射開始後の噴射時回転速度の上昇量に基づいて実噴射量を算出し、実噴射量算出部は、添加弁の噴射開始前の基準回転速度を取得できない場合、車両の停車時に算出した基準回転速度を車両の加速度に応じて補正するとともに、補正後の基準回転速度と噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量を算出するようにしてもよい。
この構成によれば、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行するよう、添加弁が制御される。実噴射量算出部は、添加弁の噴射開始前の基準回転速度に対する添加弁の噴射開始後の噴射時回転速度の上昇量に基づいて実噴射量を算出する。車両の走行時、車両に加わる加速度によってポンプにも加速度が加わると、基準回転速度が変化するが、連続して算出される噴射時回転速度も、ポンプに加わった加速度によって、基準回転速度と同様に変化する。このため、基準回転速度と噴射時回転速度を連続して算出できる場合、加速度が実噴射量の算出精度へ与える影響はほとんどない。
実噴射量算出部は、添加弁の噴射開始前の基準回転速度を取得できない場合、車両の停車時に算出した基準回転速度を車両の加速度に応じて補正するとともに、補正後の基準回転速度と噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量を算出する。たとえば、還元剤の噴射量が大きくなって噴射期間が長くなり、噴射停止期間が短くなると、添加弁の噴射開始前の基準回転速度を取得することが困難になる。この場合、車両の停車時に算出した基準回転速度を車両の加速度に応じて補正するとともに、補正後の基準回転速度と噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量を算出するので、車両の走行時、ポンプに加速度が加わって基準回転速度が変化しても、実噴射量の算出精度を担保することができ、精度良く供給異常を判定することができる。
好ましくは、添加弁は、所定の周期で噴射と噴射停止を繰り返し実行するよう制御され、実噴射量算出部は、添加弁の噴射と噴射停止の1周期における車両の加速度の平均値である平均加速度を算出し、この平均加速度を用いて、1周期における実噴射量を算出するための基準回転速度を補正するようにしてもよい。
この構成によれば、車両の加速度の取得時期が、添加弁の噴射期間(噴射時回転速度の取得期間)と一致しない場合であっても(車両の加速度をリアルタイムで取得できない状況においても)、添加弁の噴射と噴射停止の1周期における車両の加速度の平均値である平均加速度によって基準回転速度を補正し、実噴射量を算出するので、実噴射量の算出精度を担保することができる。
本開示によれば、還元剤を排気通路に噴射する添加弁の供給異常を判定する機会を減少することなく、精度良く供給異常を判定可能な、内燃機関の排気浄化装置を提供することができる。
本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置を搭載した車両の全体構成図である。 尿素添加弁30の尿素水噴射時における、ポンプ41のポンプ回転速度Nと供給通路42内の尿素水圧力Pの推移を示した図である。 車両1に加わる加速度とポンプ回転速度Nの関係を示した図である。 本実施の形態において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。 指令噴射量算出部120で実行される噴射期間Tp算出制御の処理を示すフローチャートである。 実噴射量算出部130で実行される基準回転速度N0算出制御の処理を示すフローチャートである。 実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。 補正値Nhの算出用マップである。 上昇量積算値ΣΔNと実噴射量Qpの換算マップである。 積算指令噴射量ΣQoと積算実噴射量ΣQpの推移を示す図である。 前後Gとポンプ回転速度Nの関係を示した図である。 変形例1における、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。 変形例1における、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。 変形例2における、補正値Nhの算出用マップである。 変形例3における、前後Gとポンプ回転速度Nの関係を示した図である。 変形例3における、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、本実施の形態に係る内燃機関の排気浄化装置を搭載した車両1の全体構成図である。図1において、車両1は、内燃機関10と、トルクコンバータ付き自動変速機3と、ディファレンシャルギヤ5と、駆動輪7とを備える。内燃機関10は、圧縮自己着火式内燃機関(ディーゼルエンジン)であり、内燃機関本体のシリンダ(気筒)に形成された燃焼室に、燃料噴射弁(インジェクター)から燃料を噴射し、圧縮自己着火を行う内燃機関である。内燃機関10から出力された動力は、自動変速機3およびディファレンシャルギヤ5を介して駆動輪7に伝達される。
内燃機関10の燃焼室から排出される排気(排気ガス)は、排気マニホールドに集められ、排気通路20を介して、外気に放出される。排気通路20には、排気浄化装置2が設けられており、上流側から、酸化触媒22、DPF(Diesel Particulate Filter)24、選択還元触媒26(以下、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒26とも称する)、酸化触媒28が設けられている。酸化触媒22は、排気中の一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)に酸化し、排気中の炭化水素(HC)を水(HO)とCOに酸化する。また、排気中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO)に酸化する。これは、窒素酸化物(NOx)の還元反応は、NOとNOが1:1の比率のとき、反応速度が速いため、ディーゼル内燃機関の排気中にはNOが多く含まれているため、排気中のNOをNOに酸化して、NOとNOの比を1:1に近づけるためである。
DPF24は、排気中の微粒子を捕集し、捕集した微粒子を適宜燃焼除去することにより、浄化する。SCR触媒26は、排気中のNOxを還元浄化する。SCR触媒26は、たとえば、セラミック担体に銅(Cu)イオン交換ゼオライトを触媒として担持したものであり、アンモニア(NH)を還元剤として用いることにより、高い浄化率を示すものである。還元剤として利用するアンモニアは、SCR触媒26の上流の排気通路20に供給した尿素水を加水分解することにより生成する。本実施の形態において、排気通路20に供給される還元剤は尿素水である。SCR触媒26の上流の排気通路には、尿素添加弁(尿素水噴射インジェクター)30が設けられ、尿素水タンク40からポンプ41によって圧送される尿素水を、尿素添加弁30から、SCR触媒26の上流の排気通路20に噴射する。酸化触媒28は、SCR触媒26から排出された(スリップした)アンモニアを酸化して浄化する。
図1において、尿素水タンク40には、所定の濃度の尿素水が貯留されている。尿素水タンク40に貯留された尿素水は、ポンプ41によって、供給通路42を介して尿素添加弁30に圧送される。
ポンプ41は、たとえば、電動モータ(図示しない)によって回転駆動される外接歯車ポンプであり、その歯車の回転速度に応じて、尿素水タンク40内の尿素水を供給通路42へ吐出する。ポンプ41には、回転速度センサ45が設けられている。回転速度センサ45は、単位時間当たりのポンプの回転数であるポンプ回転速度Nを検出する。ポンプ41は、回転駆動されて尿素水を吐出するものであればよく、たとえば、ベーンポンプであってもよい。
ポンプ41から吐出された尿素水を尿素添加弁30に供給する供給通路42には、圧力センサ46が設けられており、供給通路42内の尿素水の圧力(尿素水圧力)Pを検出する。供給通路42には、リターン通路43が連通している。リターン通路43はポンプ41から吐出された余剰の尿素水を尿素水タンク40に戻す。リターン通路43と尿素水タンク40の接続部には、逆止弁44が設けられており、尿素水タンク40の尿素水がリターン通路43に逆流することが抑止される。逆止弁44は、供給通路42内の尿素水圧力Pが所定圧より高くなると開弁し、リターン通路43を介して、余剰の尿素水を尿素水タンク40へ戻す。
尿素添加弁30は、たとえば、ニードルタイプの噴射弁であり、電磁ソレノイド等からなる駆動部と、噴射口を開閉するためのニードルを有する弁体部とを備えた電磁式開閉弁として構成されている。添加弁開弁指示信号に基づいて、電磁ソレノイドが通電されると、ニードルが開放方向に移動し、ニードルの移動によって噴射口が開放されて尿素水が噴射される。
水位センサ47は、たとえば、尿素水タンク40の底面に設けられており、超音波を水面(液面)に向かって照射し、水面で反射した反射波の伝搬時間を用いて、尿素水タンク40に貯留された尿素水の水位Lwを検出する。
排気浄化装置2は、制御装置として、E/G-ECU(Electronic Control Unit)100を備える。E/G-ECU100は、CPU(Central Processing Unit)101、処理プログラム等を記憶するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等からなるメモリ102、各種信号を入出力するための入出力ポート(図示せず)等を含み、メモリ102に記憶された情報、回転速度センサ45、圧力センサ46、水位センサ47、車速センサ61、前後加速度センサ62、横加速度センサ63、アクセル開度センサ64、エンジン回転速度センサ65、等の各種センサからの情報に基づいて、所定の演算処理を実行する。そして、E/G-ECU100は、演算処理の結果に基づいて、尿素添加弁30、ポンプ41、および内燃機関10等を制御する。なお、車速センサ61は車両1の車速(車体速度)を検出し、前後加速度センサ62は車両1の前後加速度(前後G)を検出し、横加速度センサ63は車両1の横加速度(横G)を検出し、アクセル開度センサ64はアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量)APを検出し、エンジン回転速度センサ65は内燃機関10の回転速度NEを検出する。
HMI装置50は、車両1の運転を支援するための情報をユーザに提供する装置である。HMI装置50は、代表的には、車室内に設けられたディスプレイであり、スピーカ等も含む。HMI装置50は、視覚情報(図形情報、文字情報)や聴覚情報(音声情報、音情報)等を出力することによって様々な情報をユーザに提供する。
図2は、尿素添加弁30の尿素水噴射時における、ポンプ41のポンプ回転速度Nと供給通路42内の尿素水圧力Pの推移を示した図である。図2において、上段は尿素添加弁30の開閉指示(添加弁開閉指示)を示し、中段はポンプ41のポンプ回転速度Nを示し、下段は供給通路42内の尿素水圧力Pを示している。横軸は、時間を表す。
本実施の形態において、尿素添加弁30は、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行するよう制御される。図2の上段に示すように、添加弁開閉指示は、ON指示とOFF指示の2値からなる信号である。ON指示では、尿素添加弁30が開弁され、尿素水が噴射される。OFF指示では、尿素添加弁30が閉弁して、噴射が停止される。図2において、TはON指示とOFF指示が繰り返される周期であり、周期T毎に、尿素水の噴射と噴射停止が繰り返される。ON指示の期間を噴射期間Tpと称し、OFF指示の期間を噴射停止期間Tsと称する。
添加弁開閉指示がON指示となり、尿素添加弁30から尿素水が噴射されると、噴射に伴い供給通路42内の尿素水圧力Pが低下する。ポンプ41は、尿素水圧力Pが所定圧(基準圧)P0になるよう、フィードバック制御されている。噴射に伴う尿素水圧力Pの低下を補うため、ポンプ41から吐出される尿素水量が増加し、これに伴いポンプ41のポンプ回転速度Nが上昇する。
供給通路42内の尿素水圧力Pが基準圧P0にフィードバック制御されるので、尿素水の噴射が停止しているとき、ポンプ回転速度Nは基準回転速度N0に制御される。したがって、噴射による尿素水圧力Pの低下に伴うポンプ回転速度Nの上昇量ΔN(基準回転速度N0と噴射時のポンプ回転速度Nの差)は、尿素添加弁30から噴射された尿素水量と相関し、上昇量ΔNの積算値(基準回転速度N0とポンプ回転速度Nに囲まれた面積)は、尿素添加弁30から噴射された尿素水量に相当する。
尿素添加弁30が目詰等により、尿素水の供給異常(噴射異常)が生じる可能性がある。このため、尿素添加弁30の供給異常を判定することが望ましい。本実施の形態では、ポンプ回転速度Nの上昇量ΔN(基準回転速度N0と噴射時のポンプ回転速度Nの差)に基づいて、尿素添加弁30から噴射された実噴射量Qpを算出することにより、尿素添加弁30の供給異常を判定する。
図3は、車両1に加わる加速度とポンプ回転速度Nの関係を示した図である。図3において、上段は添加弁開閉指示であり、ON指示とOFF指示が周期T毎に繰り返される。中段は車両1に加わる前後加速度(前後G)であり、下段はポンプ回転速度Nである。横軸は、時間を表している。定速走行中(あるいは、停車中)の車両1において、時刻t1にアクセルペダルを踏み込み加速を開始すると、中段に示すように、前後加速度(前後G)が立ち上がる(前加速度が大きくなる)。車両1に加速度が加わると、ポンプ41にも加速度が加わる。ポンプ41に加速度が加わると、ポンプ回転速度Nと吐出量の関係が変化する。このため、車両1に加わる(ポンプ41に加わる)加速度の影響を受け、噴射停止時のポンプ回転速度N(基準回転速度N0)が変化する。図3に示す例では、時刻t1で車両1の加速が開始されると、噴射停止時のポンプ回転速度Nが低下している。したがって、噴射停止時のポンプ回転速度Nを精度良く検出可能な停車時等に基準回転速度N0を検出し、停車時等に検出した基準回転速度N0を用いてポンプ回転速度Nの上昇量ΔNを求め、実噴射量Qpを算出すると、車両1に加速度が加わった際、実噴射量Qpの算出精度が悪化する。たとえば、図3に示した例では、斜線で示した領域分だけ、実噴射量Qpが少なく算出される。
本実施形態では、車両1に加わる加速度に応じて、車両1の停車時等に検出した基準回転速度N0を補正することにより、車両1に加わる加速度の影響を排除し、実噴射量Qpの算出精度の悪化を抑制する。
図4は、本実施の形態において、E/G-ECU100に構成される機能ブロックを示す図である。各機能ブロックは、メモリ102に記憶されたプログラムによって達成されてよく、E/G-ECU100内に構成された、図示しないハードウェア(たとえば、カウンタ、タイマ等)を併用してもよい。
図4において、ポンプ制御部110は、圧力センサ46が検出した供給通路42内の尿素水圧力Pが所定圧(基準圧)P0になるよう、ポンプ41の回転速度(ポンプ回転速度N)を制御する。これにより、ポンプ41は、尿素水圧力Pが基準圧P0になるようフィードバック制御されるので、尿素添加弁30から尿素水が噴射され尿素水圧力Pが低下すると、尿素水圧力Pの低下を補うため、ポンプ41から吐出される尿素水量が増加し、ポンプ41のポンプ回転速度Nが上昇する。
指令噴射量算出部120は、尿素添加弁30から噴射される尿素水の量が内燃機関10から排出されるNOx量に応じた値になるよう、指令噴射量Qoを算出する。実噴射量算出部130は、ポンプ回転速度Nを用いて、尿素添加弁30から実際に噴射された尿素水の量である実噴射量Qpを算出する。判定部140は、指令噴射量Qoと実噴射量Qpを比較し、尿素添加弁30から噴射される尿素水の供給異常の有無を判定する。
図5は、指令噴射量算出部120で実行される噴射期間Tp算出制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関10の作動中、所定期間毎に繰り返し処理される。ステップ(以下、ステップをSと略す)10において、内燃機関10の燃料噴射量Fqとエンジン回転速度NEをパラメータとしたマップを用いて、内燃機関10から排出されるNOx量(排出NOx量)を算出する。燃料噴射量Fqは、アクセル開度APとエンジン回転速度NEに基づいて決定される。
続くS11では、S10で算出した排出NOx量に基づいて、尿素水の指令噴射量Qoを算出する。指令噴射量Qoは、内燃機関10から排出されるNOxの全てを還元するのに必要な尿素水の量として決定される。
S12では、尿素添加弁30から噴射される尿素水の量が、指令噴射量Qoになるよう、尿素添加弁30の噴射期間Tpを決定し、今回のルーチンを終了する。噴射期間Tpの間、添加弁開閉指示がON指示になることにより、尿素添加弁30から、指令噴射量Qoの尿素水が噴射される。なお、周期Tの残りの期間(噴射期間Tpでない期間)は、噴射停止期間Tsとされ、添加弁開閉指示はOFF指示になる。
図6は、実噴射量算出部130で実行される基準回転速度N0算出制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関10の作動中、所定期間毎に繰り返し処理される。まず、S20で、車速センサ61で検出した車速SPDが所定値A以下か否かを判定する。所定値Aは、たとえば、3km/hであり、車速SPDが所定値以下の場合は、車両1がほぼ停車状態と見做せる。車両1がほぼ停車状態であり、S20で肯定判定されると、S21へ進む。車両1が走行状態であり、S20で否定判定されると、今回のルーチンを終了する。
S21では、前後加速度センサ62で検出した、車両1の前後加速度(前後G)が、所定値B以下か否かを判定する。所定値Bは、車両1がほぼ平坦路に停車しているか否かを判定するための閾値であり、たとえば、勾配が5%以内の路面に車両1が停車しているか否かを判定するための閾値であり、0.05Gであってよい。車両1がほぼ平坦路に停車しており、S21で肯定判定されると、S22へ進む。車両1が坂道に停車しており、S21で否定判定されると、今回のルーチンを終了する。なお、車両1がほぼ平坦路に停車している状態でアクセルベダルが踏み込まれ、車両1に所定値Bより大きな前後Gが加わると、S21で否定判定される。
S22では、添加弁開閉指示がON指示であるか否かを判定する。添加弁開閉指示がON指示の場合は、尿素添加弁30から尿素水が噴射されているので、今回のルーチンを終了する。添加弁開閉指示がOFF指示の場合、S22で否定判定され、S23へ進む。
S23では、回転速度センサ45で検出したポンプ回転速度Nに基づいて、基準回転速度N0を算出する。図2に示すように、車両1が平坦路に停車している場合、添加弁開閉指示がOFF指示(噴射停止期間Ts)におけるポンプ回転速度Nは、基準回転速度N0であるが、応答遅れに起因して、直前の噴射により基準回転速度N0から変動している場合がある。このため、今回の噴射停止期間Tsの直前に尿素水の噴射を行っている場合は、噴射停止期間Tsの開始から(噴射期間Tpの終了から)所定期間Td経過後に、ポンプ回転速度Nを取得する。なお、今回の噴射停止期間Tsの直前に尿素水の噴射を行っていない場合、ポンプ回転速度Nを取得するタイミングは、噴射停止期間Ts内であればよい。以下、噴射停止期間Ts内、あるいは、噴射停止期間Tsの開始から所定期間Td経過後に取得したポンプ回転速度Nを、噴射停止時回転速度Nsと称する。
S23においては、今回取得した噴射停止時回転速度Nsを用いて、下記の式1により、基準回転速度N0を算出する。
基準回転速度N0=N0p×k+Ns×(1-k)・・・(式1)
但し、N0pは基準回転速度N0の前回値である。kは係数であり、「0<k<1」を満たす値であって、たとえば、0.9であってよい。
なお、所定期間平均化した値を用いて基準回転速度N0を算出してもよい。
S23で基準回転速度N0を算出すると、今回のルーチンを終了する。
図7は、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関10の作動中、所定期間毎に繰り返し処理される。本実施の形態では、このフローチャートにおいて、S30~S35までの処理を実噴射量算出部130で実行し、S36以降の処理を判定部140で実行するが、いずれの機能ブロックで実行してもよい。
S30で、添加弁開閉指示がON指示であるか否かを判定する。OFF指示(噴射停止期間Ts)である場合は、否定判定され、今回のルーチンを終了する。ON指示(噴射期間Tp)である場合は、肯定判定され、S31へ進む。
S31では、前後加速度センサ62で検出した前後加速度(前後G)に基づいて補正値Nhを求め、補正値Nhを用いて基準回転速度N0を補正して、補正後基準回転速度Ncを算出する。図8は、補正値Nhの算出用マップである。本実施の形態では、図8に示すように、車両1が加速して正方向(前方向)の加速度(前後G)が大きくなると、補正値Nhは負方向に大きくなり、車両1が減速して負方向(後方向)の加速度(前後G)が大きくなると、補正値は正方向に大きくなる。補正値Nhと前後Gの関係は、ポンプ41の配置位置および配置方向によって異なるので、予め実験等によって、補正値Nhの算出用マップ(図8)が作成される。
S31では、検出した前後Gに基づいて、図8の算出用マップから補正値Nhを求める。そして、基準回転速度N0に補正値Nhを加算することにより、補正後基準回転速度Ncを求める。(補正後基準回転速度Nc=基準回転速度N0+補正値Nh)なお、基準回転速度N0は、図6のS23で算出した値である。
続くS32では、補正後基準回転速度Ncと尿素水噴射時のポンプ回転速度Nの差に基づいて、尿素水噴射に伴うポンプ回転速度Nの上昇量ΔNを算出する。図2に示すように、尿素添加弁30から尿素水が噴射されると、噴射期間Tpの終了から所定期間Tdが経過するまで、ポンプ回転速度Nが上昇する。噴射期間Tpと所定期間Tdを併せた期間を計算期間Tcと称する。本実施の形態では、計算期間Tcに亘ってポンプ回転速度Nを取得する。なお。計算期間Tcに亘って取得したポンプ回転速度Nを、噴射時回転速度とも称する。そして、取得したポンプ回転速度N(噴射時回転速度)から補正後基準回転速度Ncを差し引く(減算する)ことにより、計算期間Tcに亘って上昇量ΔNを算出する。
S33では、計算期間Tcに亘って算出した上昇量ΔNに基づいて、実噴射量Qpを算出する。図9は、上昇量積算値ΣΔNと実噴射量Qpの換算マップである。上昇量積算値ΣΔNは上昇量ΔNの積算値であり、計算期間Tcにおいて、補正後基準回転速度Ncとポンプ回転速度Nに囲まれた面積の大きさである。S33では、計算期間Tcに亘って算出した上昇量ΔNを積算して上昇量積算値ΣΔNを算出し、算出した上昇量積算値ΣΔNを、図9の換算マップを用いて実噴射量Qpに換算し、実噴射量Qpを算出する。
続くS34で、実噴射量Qpを算出した回数を示すカウンタCtをインクリメントしたあと、S35へ進む。S35では、カウンタCtの値が所定値α以上であるか否かを判定する。所定値αは、尿素添加弁30の供給異常を適正に判定するために、実噴射量Qpを積算する計算期間Tcの数であり、たとえば、本実施の形態では「100」に設定している。カウンタCtの値が所定値α未満であり、S35で否定判定されると、今回のルーチンを終了する。カウンタCtの値が所定値α以上であり、S35で肯定判定されると、S36へ進む。
S36では、積算実噴射量ΣQpと積算指令噴射量ΣQoを算出する。積算実噴射量ΣQpは、カウンタCtが1から所定値αになるまで、S33で算出された(α個の)実噴射量Qpを積算したものである。同様に、積算指令噴射量ΣQoは、カウンタCtが1から所定値αになるまで、図5のS11で算出された(α個の)指令噴射量Qoを積算したものである。
続くS37では、積算実噴射量ΣQpと積算指令噴射量ΣQoとの差の絶対値である噴射量差Dc(Dc=|ΣQp-ΣQo|)を算出したあと、S38に進み、カウンタCtを0にリセットする。
S39では、噴射量差Dcが異常判定閾値β以上か否かを判定する。異常判定閾値βは、尿素添加弁30から供給(噴射)される尿素水の供給量に、尿素添加弁30の経年変化以上の許容できない変化が生じているか否かを判定する閾値である。たとえば、異常判定閾値βは、積算指令噴射量ΣQoの1/4に相当する値であってよい。噴射量差Dcが異常判定閾値β未満の場合は、尿素添加弁30の供給異常は発生していないので、S39で否定判定され、S40に進み、正常判定を行ったあと、今回のルーチンを終了する。
噴射量差Dcが異常判定閾値β以上の場合は、尿素水の供給異常(噴射異常)が発生しているので、S39で肯定判定され、S41に進む。S41では、異常判定を行い、たとえば、HMI装置50のディスプレイに、尿素水の供給異常である旨を表示して、今回のルーチンを終了する。
図10は、積算指令噴射量ΣQoと積算実噴射量ΣQpの推移を示す図である。カウンタCtの値が大きくなるにしたがい、積算指令噴射量ΣQoと積算実噴射量ΣQpも大きくなる。カウンタCtの値が所定値αになると、S37で噴射量差Dcが算出される。図10の実線で示した積算実噴射量ΣQpのように、噴射量差Dcが異常判定閾値βより小さい場合は、実噴射量Qpと指令噴射量Qoの乖離が小さいので、尿素水の供給異常は発生していないと判断できる(正常であると判断できる)。一方、図10の破線で示した積算実噴射量ΣQpのように、噴射量差Dcが異常判定閾値β以上である場合、実噴射量Qpと指令噴射量Qoの乖離が大きいので、尿素水の供給異常(噴射異常)が発生していると判断できる。
本実施の形態によれば、判定部140は、指令噴射量算出部120で算出した指令噴射量Qoと、実噴射量算出部130で算出した実噴射量Qpとを比較することにより、尿素添加弁30の供給異常を判定する。実噴射量算出部130は、尿素水噴射停止時における基準回転速度N0と尿素水噴射時におけるポンプ回転速度N(噴射時回転速度)との差に基づいて実噴射量Qpを算出する際、車両1に加わる前後加速度(前後G)を用いて基準回転速度N0を補正することにより補正後基準回転速度Ncを算出し、補正後基準回転速度Ncと噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量Qpを算出する。前後G応じて基準回転速度N0を補正して、実噴射量Qpを算出するので、車両1に加わる前後Gの影響を排除することができ、実噴射量Qpを精度良く算出することができる。したがって、車両1の走行中であっても、尿素添加弁30の供給異常を精度良く判定でき、供給異常を判定する機会が減少することもない。
本実施の形態によれば、実噴射量算出部130は、車両1が平坦路に停車しているときに基準回転速度N0を取得している。したがって、前後Gがポンプ41に加わらず、かつ、噴射停止期間Tsが比較的長い停車時に、基準回転速度N0を算出するので、基準回転速度N0を精度良く算出することができる。なお、S21を廃止して、車両1が停車しているときに、基準回転速度N0を取得するようにしてもよい。これにより、車両1の走行による前後Gがポンプ41に加わらず、かつ、噴射停止期間Tsが比較的長い停車時に、基準回転速度N0を算出するので、基準回転速度N0を精度良く算出することができる。また、S20を廃止して、車両1が定速走行しているときにも、基準回転速度N0を取得するようにしてもよい。これにより、機会を減少することなく基準回転速度N0を精度良く算出することができる。
本実施の形態によれば、判定部140は、指令噴射量Qoを積算した積算指令噴射量ΣQoと、実噴射量Qpを積算した積算実噴射量ΣQpとを比較することにより、尿素添加弁30の供給異常を判定している。したがって、計算期間Tcにおける、指令噴射量Qoおよび実噴射量Qpの値が小さくとも、尿素添加弁30の供給異常を、的確に判定することができる。
なお、本実施の形態では、実噴射量Qpを算出した回数を示すカウンタCtの値が所定値α以上になったとき、積算実噴射量ΣQpと積算指令噴射量ΣQoを算出し、噴射量差Dc(Dc=|ΣQp-ΣQo|)を求めている。しかし、カウンタCtを用いることなく、噴射量差Dcを求めるようにしてもよい。たとえば、図7のS34~S38を廃止し、S33が処理されたあと、積算実噴射量ΣQpと積算指令噴射量ΣQoを算出する。この場合、積算実噴射量ΣQpは、S33で算出された実噴射量Qpの積算値である。また、積算指令噴射量ΣQoは、積算実噴射量ΣQpの積算期間における指令噴射量Qoを積算したものである。そして、積算実噴射量ΣQpが所定値A以上になったときに、噴射量差Dc(Dc=|ΣQp-ΣQo|)を算出し、S39へ進む。このように噴射量差Dcを算出すれば、指令噴射量Qoおよび実噴射量Qpの値が小さくとも、尿素添加弁30の供給異常を、的確に判定することができる。
(変形例1)
尿素添加弁30が、周期T毎に尿素水の噴射と噴射停止を繰り返す場合、噴射停止時におけるポンプ回転速度Nは、前後Gによって変化するが、連続して算出される噴射時回転速度も、ポンプ41に加わった加速度によって同様に変化する。このため、噴射停止時回転速度Nsと噴射時回転速度とを連続して算出(取得)でき、噴射停止時回転速度Nsと噴射時回転速度の差から、上昇量ΔNを算出できる場合は、前後Gが実噴射量Qpの算出精度へ与える影響は無視し得る。
図11は、前後Gとポンプ回転速度Nの関係を示した図である。時刻t1にアクセルペダルを踏み込み加速を開始すると、中段に示すように、前後加速度(前後G)が立ち上がる(前加速度が大きくなる)。ポンプ41に加わる前後Gによって、噴射停止時回転速度Nsが低下する。このため、図11に示すように、加速が開始された時刻t1直後の噴射区間iにおいて、噴射停止時のポンプ回転速度Nの大きさは、加速が開始する前の噴射区間i-1における基準回転速度N0より小さな噴射停止時回転速度Nsとなるが、噴射区間iに続く噴射区間i+1における噴射時回転速度も、ポンプ41に加わる前後Gによって、同様に変化する。したがって、噴射区間iにおける噴射停止時回転速度Nsに対する、噴射区間i+1における噴射時のポンプ回転速度Nの上昇量ΔNに基づいて、実噴射量Qpを算出することにより、前後Gによる実噴射量Qpの算出精度の影響を排除することができる(前後Gの影響を無視し得る)。
変形例1では、実噴射量Qpの算出対象となる噴射期間Tpの噴射開始前における噴射停止時回転速度Nsを取得し、取得した噴射停止時回転速度Nsと算出対象となる噴射期間Tpにおける噴射時回転速度との差を用いて、実噴射量Qpを算出する。
図12および図13は、変形例1における、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、図7のフローチャートのS30を、S50~S55に置き換えたものであり、S31~S41の処理は、図7のフローチャートと同一であるので、S31~S41の処理の説明は省略する。なお、変形例1においても、噴射期間Tp算出制御(図5)および基準回転速度N0算出制御(図6)を、上記実施の形態と同様に、実行する。
図12において、S50では、添加弁開閉指示がON指示であるか否かを判定する。OFF指示(噴射停止期間Ts)である場合は、否定判定され、S51へ進む。S51では、回転速度センサ45で検出したポンプ回転速度Nに基づいて、噴射停止時回転速度Nsを取得する。噴射停止時回転速度Nsは、上記実施の形態と同様に、(図2を参照して)噴射停止期間Tsの開始から(噴射期間Tpの終了から)所定期間Td経過後における、ポンプ回転速度Nの値である。今回の噴射停止期間Tsの直前に尿素水の噴射を行っていない場合、噴射停止時回転速度Nsを取得するタイミングは、噴射停止期間Ts内であればよい。
尿素添加弁30から噴射される尿素水量が多くなり、噴射期間Tpが長くなると、噴射停止期間Tsの開始から所定期間Td経過後には、次回の噴射が開始されており、噴射停止時回転速度Nsを取得できない場合がある、この場合は、S51において、噴射停止時回転速度Nsを取得することなく、今回のルーチンを終了する。
S50において、添加弁開閉指示がON指示(噴射期間Tp)である場合は、肯定判定されS52へ進む。S52では、今回の噴射期間Tpの前の噴射区間において、噴射停止時回転速度Nsを取得済みであるか否かを判定する。たとえば、今回の噴射期間Tpが噴射区間i+1(図11参照)である場合は、噴射区間iにおいて噴射停止時回転速度Nsが取得されているか否かを判定する。今回の噴射期間Tpの前の噴射区間において、噴射停止時回転速度Nsを取得済みである場合は、S52で肯定判定されS53へ進む。
S53では、上記実施の形態と同様に、計算期間Tc(図2参照)に亘って噴射時回転速度を取得する。そして、取得した噴射時回転速度から、今回の噴射期間Tpの前の噴射区間において取得した噴射停止時回転速度Nsを差し引く(減算する)ことにより、計算期間Tcに亘って上昇量ΔNを算出する。たとえば、今回の噴射期間Tpが噴射区間i+1(図11参照)である場合は、噴射区間i+1の噴射時回転速度から、噴射区間iの噴射停止時回転速度Nsを減算することにより、上昇量ΔNを算出する。
続くS54では、S53で算出した上昇量ΔNに基づいて、実噴射量Qpを算出する。上記実施の形態と同様に、S53で算出した上昇量ΔNを積算して上昇量積算値ΣΔNを算出し、算出した上昇量積算値ΣΔNを、図9の換算マップを用いて実噴射量Qpに換算し、実噴射量Qpを算出したあと、S55へ進み、実噴射量Qpを算出した回数を示すカウンタCtをインクリメントし、S35へ進む。S35以降の処理は、図7のフローチャートと同様である。
S52において、今回の噴射期間Tpの前の噴射区間において、噴射停止時回転速度Nsを取得できていないとき、たとえば、今回の噴射期間Tpが噴射区間i+1(図11参照)である場合に、噴射区間iにおいて噴射停止時回転速度Nsを取得できていないときには、否定判定されS31へ進む。S31以降に処理は、図7のフローチャートと同様である。
この変形例1によれば、実噴射量算出部130は、尿素添加弁30の噴射開始前の噴射停止時回転速度Ns対する噴射開始後の噴射時回転速度の上昇量に基づいて実噴射量Qpを算出する(S50~S54)。尿素添加弁30の噴射開始前の噴射停止時回転速度Nsは、尿素添加弁30の噴射停止時におけるポンプの回転速度である基準回転速度N0に相当し、ポンプ41に前後Gが加わると変化するが、連続して算出される噴射時回転速度も、ポンプ41に加わった前後Gによって同様に変化する。このため、尿素添加弁30の噴射開始前の噴射停止時回転速度Ns対する噴射開始後の噴射時回転速度の上昇量ΔNに基づいて、実噴射量Qpを算出しても、前後Gによる影響を排除できる。したがって、車両1の走行中であっても、尿素添加弁30の供給異常を精度良く判定でき、供給異常を判定する機会が減少することもない。
この変形例1によれば、尿素添加弁30の噴射開始前の噴射停止時回転速度Nsを取得できない場合には(S52で否定判定)、上記実施の形態と同様に、車両1が停車しているときに取得した基準回転速度N0を前後Gで補正した補正後基準回転速度Ncと、噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量Qpを算出する。前後G応じて基準回転速度N0を補正して、実噴射量Qpを算出するので、車両1に加わる前後Gの影響を排除することができ、実噴射量Qpを精度良く算出することができる。したがって、車両1の走行中であっても、尿素添加弁30の供給異常を精度良く判定でき、供給異常を判定する機会が減少することもない。
(変形例2)
上記の実施の形態では、実噴射量Qp算出/異常判定制御(図7)において、前後加速度(前後G)に基づいて基準回転速度N0を補正し、補正後基準回転速度Ncを求めていた(S31)。しかし、車両1に加わる横加速度(横G)を、横加速度センサ63で検出し、前後Gに加え横Gを用いて、基準回転速度N0を補正し、補正後基準回転速度Ncを求めてもよい。
図14は、変形例2における、補正値Nhの算出用マップである。図14に示すように、変形例2では、前後加速度センサ62で検出した前後Gと、横加速度センサ63で検出した横Gとを用いて、補正値Nhが算出される。補正値Nhと前後Gおよび横Gの関係は、ポンプ41配置位置および配置方向によって異なるので、予め実験等によって、図14の補正値Nhの算出用マップが作成される。なお、図14において、車両1の右旋回時に発生する横Gが正であり、左旋回時に発生する横Gが負である。
実噴射量Qp算出/異常判定制御(図7)のS31において、前後Gおよび横Gを用いて、図14の算出マップより補正値Nhを求めることにより、ポンプ41に加わる横Gの影響も考慮し(横Gの影響を排除し)て、実噴射量Qpを算出できるので、さらに精度よく、尿素添加弁30の供給異常を判定することができる。
(変形例3)
上記の実施の形態では、実噴射量Qp算出/異常判定制御(図7)において、添加弁開閉指示がON指示であり、尿素添加弁30から尿素水が噴射されているとき(S30で肯定判定)、S31で、前後加速度センサ62で検出した前後Gに基づいて基準回転速度N0を補正し、補正後基準回転速度Ncを求めている。前後加速度センサ62の検出信号が、E/G-ECU100以外の他のECU(たとえば、ブレーキECU)に入力されている場合、E/G-EUC100は、CAN(Controller Area Network)通信等によりブレーキECUから前後Gを取得する。これにより、前後加速度センサ62とE/G-ECU100を、じか線で接続するよりも、コストの低減が図れる。この場合、E/G-ECU100による前後Gの取得時期が、尿素添加弁30の噴射期間よりも遅れ、噴射時回転速度を取得する時期と横Gの取得時期が一致しない状況もある。
変形例3では、尿素添加弁30の噴射と噴射停止の1周期における前後Gの平均値である平均前後Gを算出し、この平均前後Gを用いて、この1周期における実噴射量Qpを算出するための基準回転速度N0を補正することにより、噴射時回転速度を取得する時期と横Gの取得時期が一致しない状況であっても(噴射時回転速度を取得するタイミングにおける前後Gを、リアルタイムで取得できない状況であっても)、実噴射量Qpを精度よく算出可能とする。
図15は、変形例3における、前後Gとポンプ回転速度Nの関係を示した図である。噴射区間iの開始と同時に時刻t1でアクセルペダルを踏み込み加速を開始すると、前後加速度(前後G)が立ち上がる(前加速度が大きくなる)。E/G-ECU100がCAN通信により噴射区間iにおける前後Gの取得する場合、前後Gの取得時期(取得タイミング)が遅れる。この場合、噴射区間i+1において、噴射区間iの1周期における前後Gの平均値である平均前後Gを算出し、平均前後Gを用いて、基準回転速度N0を補正し、補正後基準回転速度Ncを求める。そして、この補正後基準回転速度Ncと噴射区間iにおける噴射時回転速度との差から、上昇量ΔNを求め、実噴射量Qpを算出する。
図16は、変形例3における、実噴射量算出部130および判定部140で実行される、実噴射量Qp算出/判定制御の処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、図7のフローチャートのS31、S32を、S60、S61、S62に置き換えたものであり、S30、S33~S41の処理は、図7のフローチャートと同一であるので、S30、S33~S41の処理の説明は省略する。なお、変形例3においても、噴射期間Tp算出制御(図5)および基準回転速度N0算出制御(図6)を、上記実施の形態と同様に、実行する。
図16において、添加弁開閉指示がON指示(噴射期間Tp)であり、S30で肯定判定されると、S60に進む、S60では、前回噴射区間における前後Gの平均値である平均前後Gを算出する。たとえば、前回噴射区間における前後Gを、前後Gのサンプリング時間毎(サンプリング間隔毎)に積算し、その積算値を積算回数で除することにより、前回噴射区間における平均前後Gを算出してよい。また、前回噴射区間の開始時の前後Gと前回噴射区間の終了時の前後Gを加算し、その加算値を2で除することにより、平均前後Gを求めてもよい。
続くS61では、S60で算出した平均前後Gを用いて、基準回転速度N0を補正して、補正後基準回転速度Ncを求める。上記実施の形態と同様に、平均前後Gに基づいて、図8の算出用マップから補正値Nhを求め、基準回転速度N0に補正値Nhを加算することにより、補正後基準回転速度Ncを算出する。基準回転速度N0は、図6のS23で算出した値である。
続くS62では、S61で算出した補正後基準回転速度Ncと、前回噴射区間における噴射時回転速度との差に基づいて、前回噴射区間における上昇量ΔNを算出する。たとえば、前回の噴射区間のとき、計算期間Tcに亘ってポンプ回転速度Nを取得し、前回噴射区間の噴射時回転速度として、メモリ102に記憶する。そして、S62において、メモリ102から前回噴射区間の噴射時回転速度を読み出し、読み出した噴射時回転速度からS61で算出した補正後基準回転速度Ncを差し引く(減算する)ことにより、前回噴射区間における計算期間Tcに亘った上昇量ΔNを算出する。
S33では、計算期間Tcに亘って算出した上昇量ΔNに基づいて、前回噴射区間における実噴射量Qpを算出する。S33以降の処理は、図7のフローチャート(上記実施の形態)と同様であるので、その説明を省略する。
この変形例3によれば、尿素添加弁30の前回噴射区間(噴射と噴射停止)の1周期における前後Gの平均値である平均前後Gを算出し、この平均前後Gを用いて、この1周期(前回噴射区間)における実噴射量Qpを算出するための基準回転速度N0を補正し、補正後基準回転速度Ncを算出している。そして、その1周期(前回噴射区間)における噴射時回転速度から補正後基準回転速度Ncを減算して、その1周期(前回噴射期間)の上昇量ΔNを求め、その1周期(前回噴射期間)の実噴射量Qpを算出している。
尿素添加弁30の噴射と噴射停止の1周期における平均前後Gの算出は、一般的に、この1周期が終了した後に実行される。(1周期における前後Gを取得した後に、平均前後Gを算出する。)変形例3では、平均前後Gを用いて基準回転速度N0を補正しているので、前後加速度センサ62で検出される前後Gをリアルタイムで取得できなくとも、1周期における前後Gを取得した後に平均前後Gを算出して、基準回転速度N0を補正することができる。これにより、前後加速度センサ62とE/G-ECU100が、じか線で接続されていなくとも、実噴射量Qpの算出精度を担保でき、精度良く供給異常を判定することができる。
変形例3では、S60~S62において、前回噴射区間の平均前後G、前回噴射区間の補正後基準回転速度Nc、前回噴射区間の上昇量ΔNを算出しているが、前々回噴射区間の平均前後G、前々回噴射区間の補正後基準回転速度Nc、前々回噴射区間の上昇量ΔNを算出し、S33で、前々回噴射区間における実噴射量Qpを算出してもよい。また、3回以上前の噴射区間の平均前後G等を算出して、3回以上前の噴射区間の実噴射量Qpを求めるようにしてもよい。
本開示における実施態様を例示すると、次のような態様を例示できる。
内燃機関の排気浄化装置は、車両(1)に搭載された内燃機関(10)の排気通路(20)に還元剤を供給し、内燃機関(10)から排出されたNOxを浄化する内燃機関(10)の排気浄化装置であって、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行することにより、排気通路(20)に還元剤を噴射する添加弁(30)と、回転駆動されることにより、還元剤を前記添加弁へ吐出するポンプ(41)と、ポンプ(41)から吐出された還元剤を添加弁(30)に供給する供給通路(42)と、添加弁(30)とポンプ(41)を制御する制御装置(100)と、を備え、制御装置(100)は、供給通路(42)内の還元剤の圧力を所定圧に制御するポンプ制御部(110)と、添加弁(30)の指令噴射量Qoを算出する指令噴射量算出部(120)と、添加弁(30)から噴射される実噴射量Qpを算出する実噴射量算出部(130)と、指令噴射量Qoと実噴射量Qpとを比較することにより、添加弁(30)の供給異常の有無を判定する判定部(140)と、を含み、実噴射量算出部(130)は、添加弁(30)の噴射開始前に、噴射停止時におけるポンプ(41)の回転速度である基準回転速度N0を取得し、続く噴射時におけるポンプ(41)の回転速度である噴射時回転速度を取得するとともに、添加弁(30)の噴射開始前の基準回転速度N0に対する添加弁(30)の噴射開始後の噴射時回転速度の上昇量ΔNに基づいて実噴射量Qpを算出し、実噴射量算出部(130)は、添加弁(30)の噴射開始前の基準回転速度N0を取得できない場合、車両(1)の停車時に算出した基準回転速度N0を車両(1)の加速度に応じて補正するとともに、補正後の基準回転速度N0と噴射時回転速度との差に基づいて実噴射量Qpを算出する。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、2 排気浄化装置、3 トルクコンバータ付き自動変速機、5 ディファレンシャルギヤ、7 駆動輪、10 内燃機関、20 排気通路、22 酸化触媒、24 DPF、26 SCR触媒、28 酸化触媒、30 尿素添加弁、40 尿素水タンク、41 ポンプ、42 供給通路、43 リターン通路、44 逆止弁、45 回転速度センサ、46 圧力センサ、47 水位センサ、50 HMI装置、61 車速センサ、62 前後加速度センサ、63 横加速度センサ、64 アクセル開度センサ、65 エンジン回転速度センサ、100 E/G-ECU、101 CPU。102 メモリ、110 ポンプ制御部、120 指令噴射量算出部、130 実噴射量算出部、140 判定部。

Claims (7)

  1. 車両に搭載された内燃機関の排気通路に還元剤を供給し、前記内燃機関から排出されたNOxを浄化する内燃機関の排気浄化装置であって、
    前記排気通路に還元剤を噴射する添加弁と、
    回転駆動されることにより、還元剤を前記添加弁へ吐出するポンプと、
    前記ポンプから吐出された還元剤を前記添加弁に供給する供給通路と、
    前記添加弁と前記ポンプを制御する制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、
    前記供給通路内の還元剤の圧力を所定圧に制御するポンプ制御部と、
    前記添加弁の指令噴射量を算出する指令噴射量算出部と、
    前記添加弁から噴射される実噴射量を算出する実噴射量算出部と、
    前記指令噴射量と前記実噴射量とを比較することにより、前記添加弁の供給異常の有無を判定する判定部と、を含み、
    前記実噴射量算出部は、前記添加弁の噴射停止時における前記ポンプの回転速度である基準回転速度と前記添加弁の噴射時における前記ポンプの回転速度である噴射時回転速度との差に基づいて前記実噴射量を算出するとともに、前記車両の加速度に応じて前記基準回転速度を補正する、内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記実噴射量算出部は、前記車両の停車時に前記基準回転速度を算出する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記添加弁は、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行するよう制御され、
    前記実噴射量算出部は、前記添加弁の噴射開始前の前記基準回転速度を取得し、前記添加弁の噴射開始後の前記噴射時回転速度を取得するとともに、前記添加弁の噴射開始前の前記基準回転速度に対する前記添加弁の噴射開始後の前記噴射時回転速度の上昇量に基づいて前記実噴射量を算出し、
    前記実噴射量算出部は、前記添加弁の噴射開始前の前記基準回転速度を取得できない場合、前記車両の停車時に算出した前記基準回転速度を前記車両の加速度に応じて補正するとともに、補正後の前記基準回転速度と前記噴射時回転速度との差に基づいて前記実噴射量を算出する、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記添加弁は、所定の周期で噴射と噴射停止を繰り返し実行するよう制御され、
    前記実噴射量算出部は、前記噴射と前記噴射停止の1周期における前記車両の加速度の平均値である平均加速度を算出し、前記平均加速度を用いて、前記1周期における実噴射量を算出するための前記基準回転速度を補正する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 前記車両の前後加速度を検出する前後加速度センサを、さらに備え、
    前記実噴射量算出部は、前記前後加速度に応じて前記基準回転速度を補正する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  6. 前記車両の横加速度を検出する横加速度センサを、さらに備え、
    前記実噴射量算出部は、前記前後加速度および前記横加速度に応じて前記基準回転速度を補正する、請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  7. 前記添加弁は、所定の周期で噴射と噴射停止とを繰り返し実行するよう制御され、
    前記判定部は、複数の噴射における前記指令噴射量の積算値と、前記複数の噴射における前記実噴射量の積算値との差に基づいて、前記添加弁の供給異常の有無を判定する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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