JP2022184160A - 2ストロークエンジン - Google Patents

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耕一 畑村
Koichi Hatamura
恵哉 西田
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【課題】燃費向上と排気ガスの確実な浄化とを両立させる。【解決手段】対向ピストンエンジン(1A)は、シリンダ(20)内の燃焼ガス(Gcom)と吸気側開口部(86)からシリンダ(20)内に供給された空気(Int3)との間にEGRガス(Gegr)から成る境界層(Lno)が形成されるように、EGRガス(Gegr)をシリンダ(20)内に供給するEGRポンプ(85a)を備えている。【選択図】図5

Description

本発明は、車両に搭載される2ストロークエンジンに関する。
内燃機関(エンジン)には、従前より各種構造のものが知られている。その一つとして、シリンダ内を往復するピストンの動作に合わせて燃焼室が膨張と圧縮とを繰り返し、その間に燃料を燃焼させる、いわゆる2ストロークエンジンがある。例えば、非特許文献1には、層状掃気機構を有する2ストロークエンジンが開示されている。非特許文献1の2ストロークエンジンは、掃気行程において、掃気ポートの開口部から燃焼室内に空気が供給された後、クランクケースの内部に充填された混合気が燃焼室内に供給される。燃焼室内に残留した燃焼ガスが排気ポートの開口部から排出される際、燃焼室内に供給された空気が混合気と燃焼ガスとの境界層を形成する。
"層状掃気機構とは?"、[online]、三菱重工業株式会社、ホームページ、[2021年4月16日検索]、インターネット〈URL:https://www.mhi.com/jp/products/industry/tle.html〉
しかしながら、非特許文献1に開示された2ストロークエンジンは、掃気ポートの開口部から燃焼室内に供給された空気の一部が、燃焼ガスの流れに巻き込まれて排気ポートの開口部から直接吹き抜けてしまう。そのため、いわゆるリーン排気となって三元触媒が働かなくなり、排気ガスの浄化が困難になる。この問題は前記の2ストロークエンジンをリッチバーンさせれば解決するものの、今度は燃費が悪化してしまう。
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、燃費向上と排気ガスの確実な浄化とを両立させることを目的とする。
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る2ストロークエンジンは、吸気ポートが設けられ、かつ排気側開口部が形成されたシリンダと、前記シリンダ内を往復運動し、前記吸気ポートの吸気側開口部を開閉するように動作するピストンと、前記ピストンの動作に連動して前記排気側開口部を開閉する排気開閉機構と、前記シリンダ内の燃焼ガスと前記吸気側開口部から前記シリンダ内に供給された新気との間に酸素を含まない気体から成る境界層が形成されるように、前記気体を前記シリンダ内に供給する供給部と、を備えている。
本発明の一態様によれば、燃費向上と排気ガスの確実な浄化とを両立させることができる。
本発明の実施形態1~3に係るシリーズ式のパワートレインの機能的構成を示すブロック図である。 符号201は、本発明の実施形態1に係るパワートレインの発電装置が有する対向ピストンエンジンおよびその周辺の各構造を概略的に示す平面図である。符号202は、符号201に示す対向ピストンエンジンおよびその周辺の各構造を概略的に示す側面図である。 プレチャンバーの内部構造を概略的に示す断面図である。 本発明の一態様に係る対向ピストンエンジンにおいて、吸気側開口部の全部と排気側開口部の全部とが開いた状態におけるシリンダ内の様子を示す概略図である。 符号501は、図2に示す対向ピストンエンジンにおける、吸気ポートおよびその周辺の各構造を示す概略図である。符号502は、図2に示す対向ピストンエンジンにおける、吸気ポートおよびその周辺の他の構造を概略的に示す断面図である。 本発明の実施形態2に係る対向ピストンエンジンにおける、吸気ポートおよびその周辺の各構造を示す概略図である。 本発明の実施形態3に係る対向ピストンエンジンにおける、吸気ポートおよびその周辺の各構造を示す概略図である。 本発明の実施形態3の変形例に係る対向ピストンエンジンにおける、吸気ポートおよびその周辺の各構造を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、以下の記載は発明の趣旨をより良く理解させるためのものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本出願における各図面に記載した構成の形状および寸法(長さ、奥行き、幅等)は、実際の形状および寸法を必ずしも反映させたものではなく、図面の明瞭化および簡略化のために適宜変更している。
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1について、図1~図5に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施形態以下の各実施形態では、本発明の一態様に係る2ストロークエンジンとして対向ピストンエンジンを例示する。また、本実施形態以下の各実施形態では、本発明の一態様に係るパワートレインが発電装置を備えている場合を例示する。発電装置は、前記の対向ピストンエンジンと、当該対向ピストンエンジンのエンジン動作に連動して回転することで電力を生成する発電モータとを有する。このような発電装置は、シリーズ方式のハイブリッド車に好適に搭載できる。
前記の対向ピストンエンジンの用途は、本実施形態以下の各実施形態の例に必ずしも限定されず、原動機が搭載されている各種の機器に適用できる。例えば、住宅および各種施設等に設置される定置型もしくは可搬型のガソリン発電機、送水用および排水用のポンプシステム、航空機、大型車両、ならびに船舶などに適用できる。
なお、本発明の一態様に係るパワートレインは、発電モータを備えていなくてもよい。この場合、前記のパワートレインは、例えばガソリン車およびディーゼル車に搭載できる。また、本発明の一態様に係る2ストロークエンジンは、例えば対向ピストンエンジン以外のユニフロー掃気方式のエンジン、ループ掃気方式のエンジンであってもよい。
<パワートレインの構成>
パワートレイン100の構成について、図1に基づいて説明する。パワートレイン100は、対向ピストンエンジン1A(詳細は後述)で発生した回転エネルギーを不図示の駆動輪に伝達するための装置類の総称であり、対向ピストンエンジン1Aおよび不図示のトランスミッション等を含む動力伝達装置である。パワートレイン100は、図1に示すように、PCU(パワーコントロールユニット)7、バッテリー8、駆動モータ9、および発電装置10Aを備えている。
対向ピストンエンジン1Aは、火花点火のガソリンエンジンであり、高い熱効率を得るために低負荷運転ではリーン燃焼を行い、NOxの発生量が増加する中高負荷はストイキ燃焼を行うように制御される。また対向ピストンエンジン1Aは、ストイキ燃焼時に排気の空燃比をストイキに保つことで、排気ガスExh1を三元触媒で確実に浄化してNOxの発生量を低減するものである。排気ガスExh1および三元触媒の詳細については後述する。
PCU7は、パワートレイン100を搭載したハイブリット車等の電力を適切に制御するための装置である。PCU7は、駆動モータ9を駆動するインバータ、電圧を制御する昇圧コンバータ、高電圧を降圧するDCDCコンバータ等の各種の電気制御系回路で構成されている。排気側および吸気側発電モータ11および12(以下、「各発電モータ11および12」と表記)で発生した電力は、PCU7を介してバッテリー8に充電される。PCU7は、バッテリー8から給電される電力を用いて駆動モータ9を駆動する。また、PCU7は、後述の制御装置92を制御する。駆動モータ9は、不図示の駆動ユニットを介して駆動輪を駆動する。
PCU7、バッテリー8、駆動モータ9ならびに各発電モータ11および12は、シリーズ方式のハイブリッド車に搭載される一般的なパワートレインが備える公知の機器を用いることができる。そのため、記載の冗長化を避けるために、これらに関する詳細な説明は省略する。
発電装置10Aは、図1に示すように、対向ピストンエンジン1A、排気側発電モータ11、吸気側発電モータ12、検出装置91および制御装置92(調整装置、増減調整装置)を備えている。対向ピストンエンジン1Aは、各発電モータ11および12とともに不図示の支持構造体によって筐体3に剛体結合されている。本明細書では、各種の補機を含めて対向ピストンエンジン1Aと称する。各発電モータ11および12の詳細については後述する。
検出装置91は、一般的な吸気圧力・温度センサおよび温度センサを有している。ちなみに、温度センサは、対向ピストンエンジン1Aの不図示のシリンダ冷却器に充填された冷却水の温度を検出する。また、検出装置91は、Oセンサ95(検出部)を有している(図5および図6参照)。Oセンサ95は、排気側開口部81から排気された排気ガスExh1中の酸素の有無を検出する。排気側開口部81および排気ガスExh1の詳細については後述する。
検出装置91は、一般的なトルク出力センサ(トルク検出部)を有している。トルク出力センサは、対向ピストンエンジン1Aのエンジン動作によって出力されるトルクを検出する。以下、トルク出力センサによって検出されたトルクを「エンジン出力値」と称する。なお、検出装置91はトルク出力センサを有していなくてもよく、PCU7からエンジン出力値を取得してもよい。また、トルク出力センサは、エンジン動作時に対向ピストンエンジン1Aに掛かる負荷を検出していてもよい。
検出装置91は、筒内圧力センサと、CA(クランクアングル)情報を検出するCAセンサと、を有している。検出装置91は、筒内圧力センサの検出結果である筒内圧力履歴、およびCAセンサが検出したCA情報に基づいてCA50を算出する。CA50とは、燃焼割合が50%となる最小容積基準クランク角度のことである。
検出装置91は、2つのクランク角度センサで構成されるタイミング検出センサを有している。対向ピストンエンジン1Aは、燃焼室容積が膨張する行程と燃焼室容積が収縮する行程との2行程(2ストローク)にて1サイクル動作する。燃焼室容積は、排気側ピストン21のピストンヘッド21aと吸気側ピストン22のピストンヘッド22a(ともに詳細は後述)との間の容積であり、後述の燃焼室23の容積である。検出装置91は、タイミング検出センサの検出結果を用いて、1サイクル動作中の各時点における燃焼室容積を算出する。
検出装置91はタイミング検出センサを有していることから、検出装置91は、例えばクランク角度センサからの角加速度信号を用いて擬似的なCA50を算出してもよい。検出装置91は、前述した各センサの検出結果、CA50および燃焼室容積を制御装置92に出力する。
制御装置92は、例えばCPUであり、検出装置91から出力された検出結果を取得する等して、対向ピストンエンジン1Aを統括的に制御する。例えば、制御装置92は、対向ピストンエンジン1Aの燃焼態様をストイキ燃焼とリーン燃焼との間で切り替える。ストイキ燃焼は、空燃比を精密に調整して排気の理論空燃比を実現した上で、理論空燃比で燃焼する燃焼態様である。ストイキ燃焼によって発生した排気ガスExh1は、三元触媒によって浄化される。リーン燃焼は、燃焼の際にリーンな混合気と後述のEGRガスGegrとを併用することでNOxの発生量を低減する燃焼態様である。リーン燃焼においては、排気ガスExh1の浄化にリーンNOx触媒を用いてもよい。
また制御装置92は、対向ピストンエンジン1Aが各燃焼態様において適した条件でエンジン動作するように、対向ピストンエンジン1Aを構成する各部品および各装置を制御する。具体的には、制御装置92は、インジェクター28、点火プラグ29、バイパスバルブ62aおよびEGRバルブ85を制御する。制御装置92によって制御されるこれらの制御対象の詳細、および制御装置92の制御内容の詳細については後述する。
検出装置91および制御装置92は、対向ピストンエンジン1Aに内蔵されて当該対向ピストンエンジン1Aの一部を構成している。なお、制御装置92については、対向ピストンエンジン1Aの外部に設けられてもよい。
<対向ピストンエンジンの構造>
対向ピストンエンジン1Aの構造について、図2および図3に基づいて説明する。なお、図2の符号201は、対向ピストンエンジン1Aの構造を分かり易く示すためにシリンダ20内の一部を透過して示している。また、図2は、検出装置91および制御装置92の図示を省略して対向ピストンエンジン1Aの構造を簡略化して示している。
対向ピストンエンジン1Aは、図2の符号201に示すように、シリンダ20、排気側ピストン21(排気開閉機構)および吸気側ピストン22(ピストン)を有している。また対向ピストンエンジン1Aは、排気側コンロッド26、吸気側コンロッド27、排気側クランクシャフト31および吸気側クランクシャフト32を有している。排気側および吸気側ピストン21および22のそれぞれは、シリンダ20内に挿通されている。また、排気側コンロッド26と排気側クランクシャフト31とが一組となって、排気側ピストン21に接続されている。さらに、吸気側コンロッド27と吸気側クランクシャフト32とが一組となって、吸気側ピストン22に接続されている。
具体的には、シリンダ20内にて排気側ピストン21と吸気側ピストン22とが互いに対向するように往復運動することにより、対向ピストンエンジン1Aがエンジン動作する。シリンダ20内には燃焼室23が形成されている。燃焼室23は、排気側ピストン21のピストンヘッド21a、吸気側ピストン22のピストンヘッド22a、およびシリンダ20の内壁20aに取り囲まれた空間である。図2の符号201は、排気側ピストン21が排気側上死点の近傍に位置し、吸気側ピストン22が吸気側上死点の近傍に位置する状態の対向ピストンエンジン1Aを例示している。
なお、排気側ピストン21はあくまで本発明の一態様に係る排気開閉機構の一例であり、当該排気開閉機構は排気側ピストン21に限定されるものではない。排気開閉機構は、シリンダ20内に残留する燃焼ガスGcomを排気ガスExh1として排気するための機構であり、吸気側開口部86を開閉するピストン(本実施形態では吸気側ピストン22)の動作に連動して排気側開口部81を開閉する。例えば、本発明の一態様に係る2ストロークエンジンが対向ピストンエンジン以外のユニフロー掃気方式のエンジンであれば、排気弁およびカムが前述の排気開閉機構に相当する。
対向ピストンエンジン1Aは、図2の符号202に示すように、シリンダ20にインジェクター28を有している。インジェクター28から燃焼室23内に燃料が噴射される。本実施形態以下の各実施形態では、燃料はガソリンであり、対向ピストンエンジン1Aならびに後述の対向ピストンエンジン2Aおよび3Aはガソリンエンジンとなっている。燃料は、不図示の燃料タンクからインジェクター28に供給される。
対向ピストンエンジン1Aは、シリンダ20に、点火プラグ29を内蔵するプレチャンバー94を有している。プレチャンバー94の詳細については後述する。点火プラグ29が点火すると、インジェクター28から燃焼室23内に噴射された燃料に着火して燃焼する。本実施形態以下の各実施形態では、制御装置92がストイキ燃焼とリーン燃焼とを切り替えることから、インジェクター28の動作も制御装置92によって制御される。
対向ピストンエンジン1Aは、プレチャンバーイグニッションにより点火する。具体的には、図3に示すようなプレチャンバー壁94aが、シリンダ20の内壁20aにおける中央部の上端に挿入されている。プレチャンバー壁94aは、点火プラグ29の先端を覆うキャップ状の筐体であり、その内部にプレチャンバー94と呼ばれる空間が形成されている。プレチャンバー94は、副室とも呼ばれる。プレチャンバー壁94aの頂壁には、オリフィス94bと呼ばれる微細な孔が複数、切断視で放射状に形成されている。この場合の切断視とは、頂壁の中央部を当該頂壁と直交する平面で切断したときの断面視のことである。
プレチャンバー94内の空間で混合気に点火することにより、オリフィス94bから火炎が勢い良く噴き出し、燃焼室(この場合は主室)23内の混合気が強く掻き混ぜられて瞬時に燃焼する。混合気は、本明細書では、空気と既燃ガス(後述のEGRガスGegrを含む)、燃料とが混合されたものである。
プレチャンバーイグニッションに基づく燃焼は、プレチャンバー94がないコンベンショナルな火花点火燃焼と比べて燃焼期間が圧倒的に短くなり、燃焼エネルギーが効率良く圧力に変換される。そのため、燃焼エネルギーの損失を低減でき、対向ピストンエンジン1Aの熱効率を向上させることができる。また、ノッキング発生の低減効果も高まる。加えて、例えば、プレチャンバー94内を着火し易い混合気として燃焼室23(主室)内をリーンな混合気とすれば、安定したリーン燃焼が可能になる。なお、対向ピストンエンジン1Aにプレチャンバーイグニッションを採用することは必須ではなく、プレチャンバー94が形成されていなくてもよい。
図2に示す燃焼室23の内部に記載された星形マークは、シリンダ20の中心位置CPを示している。中心位置CPは、燃料の理想的な点火位置となる。インジェクター28は、図2の符号202に示すように、シリンダ20の内壁20aにおける中央部の下端に設けられており、インジェクター28の中心軸を含む直線が中心位置CPと交差する。一方、点火プラグ29は、内壁20aにおける中央部の上端に設けられており、点火プラグ29の中心軸を含む直線も中心位置CPと交差する。
なお、インジェクター28の中心軸を含む直線および点火プラグ29の中心軸を含む直線のそれぞれは、中心位置CPと交差していなくてもよい。例えば、排気側および吸気側ピストン21および22の双方が各上死点に位置したときの混合気の状態を考慮して、前述の各直線が中心位置CPよりも排気側開口部81の側または吸気側開口部86の側のいずれか一方に偏るように設計してもよい。
インジェクター28の中心軸を含む直線と点火プラグ29の中心軸を含む直線とは一致する。つまり、中心位置CPを起点としたインジェクター28の中心軸の延伸方向と点火プラグ29の中心軸の延伸方向とが成す角度は略180°となる。このようなインジェクター28および点火プラグ29の各配置により、燃料が燃焼室23内の中心位置CP近傍にて燃焼し、排気側ピストン21および吸気側ピストン22が互いに対向して往復運動する。
シリンダ20の内壁20aには、図2の符号201に示すように、シリンダ20の中心位置CPからシリンダ20の延伸方向の中心軸AX(図4等参照)の方向に互いに離れた位置に排気側開口部81および吸気側開口部86が形成されている。排気側開口部81および吸気側開口部86は、ともに複数の開口部で構成されている。
排気側開口部81を構成する複数の開口部は、すべて同一の大きさの四角形状であり、内壁20aの周方向に略等間隔に形成されている。吸気側開口部86を構成する複数の開口部も、すべて同一の大きさの四角形状であり、内壁20aの周方向に略等間隔に形成されている。
なお、排気側開口部81の形成箇所は、本実施形態の例のようなシリンダ20の内壁20aに限定されない。例えば、本発明の一態様に係る2ストロークエンジンが対向ピストンエンジン以外のユニフロー掃気方式のエンジンであれば、排気側開口部81はシリンダヘッドに形成される。換言すれば、本発明の一態様に係る「シリンダ」は、内壁およびシリンダヘッドをその構成要素に含む概念である。
シリンダ20内において、排気側開口領域(不図示)の頂面から中心位置CPまでの第1の最短距離は、吸気側開口領域(不図示)の頂面から中心位置CPまでの第2の最短距離よりも若干短くなっている(図4、図7および図8参照)。排気側開口領域は、排気側開口部81を構成する開口部の中心軸AX方向の長さを高さとし、シリンダ20の内面における排気側開口部81を含む内面部分を側面とする、円筒形状の仮想的な空間である。排気側開口領域の頂面は、当該排気側開口領域における中心位置CPと対向する面である。
吸気側開口領域は、吸気側開口部86を構成する開口部の中心軸AX方向の長さを高さとし、シリンダ20の内面における吸気側開口部86を含む内面部分を側面とする、円筒形状の仮想的な空間である。吸気側開口領域の頂面は、当該吸気側開口領域における中心位置CPと対向する面である。「頂面から中心位置CPまでの最短距離」とは、頂面と中心位置CPとを結ぶ線分であり、かつ頂面と直交する直線の長さを指す。
前述のように第1の最短距離が第2の最短距離よりも短くなっていることから、排気側および吸気側ピストン21および22の双方が各上死点から各下死点に向けて動作する過程では、排気側開口部81の方が吸気側開口部86よりも早く開き始める。一方、排気側および吸気側ピストン21および22の双方が各下死点から各上死点に向けて動作する過程では、吸気側開口部86の方が排気側開口部81よりも早く閉じ始める。
なお、排気側開口部81および吸気側開口部86のそれぞれを構成する開口部の個数、形状および大きさは前述の例に限定されない。例えば、前述の開口部は、半径が大きい2つの円弧が連なった略楕円形状になっていてもよい。排気側開口部81は排気側ピストン21の往復運動によって開閉し、吸気側開口部86は吸気側ピストン22の往復運動によって開閉する。
対向ピストンエンジン1Aは、排気ポート82と吸気ポート87とを有している。排気ポート82および吸気ポート87は、図2の符号202に示すような、シリンダ20の内壁20aの一部を外側から取り囲むように設けられた環状の部品である。具体的には、排気ポート82は、内壁20aにおける排気側開口部81が形成されている部分を外側から取り囲むように設けられている。また、排気ポート82は、内部に排気側開口部81と連通する空間が形成されている。排気ポート82内の空間は、排気側開口部81を介してシリンダ20内の空間と連通している。
吸気ポート87は、内壁20aにおける吸気側開口部86が形成されている部分を外部から取り囲むように設けられている。また、吸気ポート87は、内部に吸気側開口部86と連通する空間が形成されている。吸気ポート87内の空間は、吸気側開口部86を介してシリンダ20内の空間と連通している。
対向ピストンエンジン1Aは、排気管83を有している。排気管83は、一端が排気ポート82に接続され、他端が触媒コンバータ84に接続されている。排気管83は、内部に排気流路としての空間が形成されている。
排気管83内の排気流路を流れて触媒コンバータ84に流入した排気ガスExh1は、触媒コンバータ84に格納された三元触媒によって浄化される。なお、触媒コンバータ84に格納される触媒は三元触媒でなくてもよく、酸化触媒、NOx吸蔵触媒、選択還元触媒またはGPF(Gasoline Particulate Filter)等が格納されていてもよい。触媒コンバータ84により浄化された排気ガスExh2は、例えば不図示のマフラーに流れる。
排気管83は、排気流路の途中で分岐しており、排気流路から分岐した分岐路が吸気ポート87内の空間と連通している(図5参照)。この分岐路は、EGR(Exhaust Gas Recirculation;排気再循環)のために形成されたものである。分岐路としての空間が内部に形成された分岐管83b(供給管)は、排気管83における、排気ポート82の近傍から分岐している。
分岐管83bには、EGRバルブ85(図5参照)、EGRポンプ85a(供給部)、圧力センサ85cおよびEGRクーラー88が設けられている。EGRクーラー88は、排気側開口部81から排気されて分岐管83b内の分岐路を流れる排気ガスExh1を冷却する。本明細書では、EGRクーラー88によって冷却された排気ガスExh1を「EGRガスGegr」と称する。EGRガスGegrは、分岐管83b内の分岐路を通過して当該分岐路の出口に向かう。
EGRガスGegrは、本発明に係る「酸素を含まない気体」の一例である。本明細書における「酸素を含まない気体」は、理論上酸素を含まない気体であればよく、対向ピストンエンジン1Aのエンジン動作の過程等で微量の酸素が不可避的に含まれる場合等を包含する概念である。EGRガスGegrの温度に特段の限定はないが、ノッキング発生の低減の観点からは60℃~120℃の温度範囲内であることが好ましい。
EGRポンプ85aは、EGRガスGegrを昇圧して、分岐管83b内の分岐路の出口から吸気ポート87内の第2連通部分87b(図5参照;詳細は後述)にEGRガスGegrを供給する。つまり、EGRポンプ85aは、吸気ポート87を介してEGRガスGegrをシリンダ20内に供給する。EGRポンプ85aから供給されるEGRガスGegrの供給圧力は、制御装置92によるEGRポンプ85aの制御によって目標値に保たれる。
圧力センサ85cは、分岐管83bにおける、EGRポンプ85aの出口近傍の箇所に設けられており、EGRポンプ85aから圧出されたEGRガスGegrの圧力を検出する。制御装置92は、圧力センサ85cの検出圧力に応じてEGRポンプ85aを適宜制御することで、EGRポンプ85aからのEGRガスGegrの供給量を変える。この制御により、制御装置92は、EGRポンプ85aから圧出されるEGRガスGegrの圧力を目標値に制御する。
EGRバルブ85は、EGRガスGegrの吸気ポート87内への流入期間を制御することで、シリンダ20内へのEGRガスGegrの供給量を増減する。この供給量は、EGRバルブ85の開弁期間を変更することで適宜増減可能となっており、EGRバルブ85の開弁期間は、制御装置92によるEGRバルブ85の制御によって調整される。この場合、EGRガスGegrと空気Int3(新気;詳細は後述)との混合を避けるために、EGRバルブ85の開弁期間を吸気側開口部86が閉じられている期間に一致させるのが望ましい。
なお、対向ピストンエンジン1Aは、EGRポンプ85aに替えてチェックバルブ85b(後掲の実施形態2および図6参照)を有していてもよい。この場合、排気ポート82内の圧力が吸気ポート87内の圧力よりも高くなった期間に、EGRガスGegrが吸気ポート87に供給される。また詳細は後述するが、制御装置92は、EGRバルブ85の開弁期間を調整してEGR(Exhaust Gas Recirculation)率も調整する。EGR率は、空気Int3に対する排気ガスExh1の質量比率である。
対向ピストンエンジン1Aは、機械式過給機61、吸気管62、インタークーラー63およびスロットルバルブ64を有している。機械式過給機61は、対向ピストンエンジン1Aにて発生した動力を利用して作動するメカニカルスーパーチャージャーであり、吸気側開口部86を介してシリンダ20内に空気Int3を圧送する。機械式過給機61は、回転するローターを内蔵している。
機械式過給機61は、当該機械式過給機61の吸入口に接続されたスロットルバルブ64を介して空気Int1を吸気して圧縮した後、吸気管62を通じて圧縮した空気Int2をインタークーラー63に圧送する。そして、機械式過給機61は、インタークーラー63によって冷却された空気Int3を吸気ポート87内の第1連通部分87a(図5等参照;詳細は後述)に圧送し、吸気側開口部86からシリンダ20内に空気Int3を供給する。
以下、過給圧について説明する。過給圧は、機械式過給機61が空気Int2およびInt3に加える圧力である。機械式過給機61に内蔵された不図示のローターに接続されているベルトドライブ65は、動力伝達部を介してフライホイール42aに接続されている。動力伝達部は、プーリー42bと増速ベルト42cとで構成される。ベルトドライブ65は、動力伝達部の増速比に応じて増速されることにより、後述のフライホイール42aと連動して回転する。
吸気管62には、バイパスバルブ62aが設けられている。バイパスバルブ62aを開けば、機械式過給機61の出口から圧送される空気Int3の一部を機械式過給機61の入口に戻すことができる。一方、バイパスバルブ62aを閉じれば、機械式過給機61の出口から空気Int3の全部を吸気ポート87に圧送できる。このような機能を有するバイパスバルブ62aの開閉角度を調整すれば、過給圧も調整できる。
なお、機械式過給機61に替えて電動コンプレッサを用いてもよい。この場合、電動コンプレッサの回転速度を変更することで過給圧を切り替える。また、必要に応じて電動コンプレッサの回転速度を調整することにより、過給圧を微調整できる。また、機械式過給機61は、空気Int1に替えて例えば混合気(新気)を吸気してもよい。この場合、インタークーラー63によって冷却された混合気が吸気ポート87を介してシリンダ20内に供給される。
対向ピストンエンジン1Aは、図2に示すように、排気側ピストン21が排気側コンロッド26を介して排気側クランクシャフト31のクランクピン31aと接続されている。また、対向ピストンエンジン1Aは、吸気側ピストン22が吸気側コンロッド27を介して吸気側クランクシャフト32のクランクピン32aと接続されている。対向ピストンエンジン1Aがエンジン動作する場合、排気側ピストン21の往復運動と連動して、排気側クランクシャフト31が第1の回転方向に回転する。また、吸気側ピストン22の往復運動と連動して、吸気側クランクシャフト32が第2の回転方向に回転する。第1の回転方向は、図2の符号202において、紙面向かって時計回りの方向となる。第2の回転方向は、図2の符号202において、紙面向かって反時計回りの方向となる。
排気側クランクシャフト31は、図2の符号201に示すようなバランスウェイト31bを有しているとともに、当該排気側クランクシャフト31の回転軸方向の一端にフライホイール41aを有している。フライホイール41aの回転軸は排気側クランクシャフト31の回転軸と同軸になる。フライホイール41aは、排気側クランクシャフト31の回転方向と同方向に同じ回転速度(回転数)にて回転する。
吸気側クランクシャフト32は、バランスウェイト32bを有しているとともに、当該吸気側クランクシャフト32の回転軸方向の一端にプーリー42bを有している。プーリー42bの回転軸は吸気側クランクシャフト32の回転軸と同軸になる。また吸気側クランクシャフト32は、プーリー42bが設けられている側の端部にフライホイール42aを有している。フライホイール42aの回転軸も吸気側クランクシャフト32の回転軸と同軸になる。フライホイール42aおよびプーリー42bは、吸気側クランクシャフト32の回転方向と同方向に同じ回転速度(回転数)にて回転する。
各発電モータ11および12は、対向ピストンエンジン1Aの側方部に設けられている。具体的には、各発電モータ11および12は、シリンダ20の内壁20aの一部と対向するように設けられている。排気側発電モータ11と対向する内壁20aの一部は、吸気側発電モータ12と対向する内壁20aの一部と同一である。各発電モータ11および12として用いる発電機に特段の限定はなく、公知の発電機を用いることができる。公知の発電機としては、例えば車両用発電機(オルタネータ)を大きくしたものが挙げられる。
排気側発電モータ11は、回転軸部11aを有している。回転軸部11aは、排気側発電モータ11におけるシリンダ20と対向する側の端部から、当該シリンダ20に向けて突出している。回転軸部11aには、排気側発電モータ11から近い順に、チェーン受け部52aおよび連動ギア71が設けられている。チェーン受け部52aおよび連動ギア71は、回転軸が回転軸部11aの回転軸と同軸になり、回転軸部11aと連動して回転する。つまり、チェーン受け部52aおよび連動ギア71は、排気側発電モータ11の回転方向と同方向に同じ回転速度(回転数)にて回転する。
吸気側発電モータ12は、回転軸部12aを有している。回転軸部12aは、吸気側発電モータ12におけるシリンダ20と対向する側の端部から、当該シリンダ20に向けて突出している。回転軸部12aには、吸気側発電モータ12から近い順に、チェーン受け部52bおよび連動ギア72が設けられている。チェーン受け部52bおよび連動ギア72は、回転軸が回転軸部12aの回転軸と同軸になり、回転軸部12aと連動して回転する。つまり、チェーン受け部52bおよび連動ギア72は、吸気側発電モータ12の回転方向と同方向に同じ回転速度(回転数)にて回転する。
フライホイール41aの外周部分およびフライホイール42aの外周部分には、それぞれ複数の歯が形成されている。フライホイール41aとチェーン受け部52aとは、増速チェーン56を介して接続されている。フライホイール42aとチェーン受け部52bとは、増速チェーン57を介して接続されている。
排気側発電モータ11は、第1の動力伝達部の増速比に応じて増速され、フライホイール41aと連動して第1の回転方向に回転する。第1の動力伝達部は、フライホイール41a、チェーン受け部52aおよび増速チェーン56で構成される。吸気側発電モータ12は、第2の動力伝達部の増速比(第1の動力伝達部の増速比と同じ)に応じて増速され、フライホイール42aと連動して第2の回転方向に回転する。第2の動力伝達部は、フライホイール42a、チェーン受け部52bおよび増速チェーン57で構成される。
排気側ピストン21、吸気側ピストン22、フライホイール41aおよび42a、プーリー42b、ならびに各発電モータ11および12は、前述の各動力伝達部によって接続されて互いに連動する。排気側クランクシャフト31、吸気側クランクシャフト32、フライホイール41aおよび42a、プーリー42b、ならびに各発電モータ11および12も、前述の各動力伝達部によって接続されて互いに連動する。排気側発電モータ11と吸気側発電モータ12とは、連動ギア71と連動ギア72とが歯合していることから、一方が他方に対して逆の回転方向に同じ回転速度で回転し、互いに連動する。
対向ピストンエンジン1Aは、連動ギア71および72に駆動トルクが略掛からないことから、連動ギア71および72としてアンチバックラッシュギアを用いることができる。また、対向ピストンエンジン1Aは、連動ギア71および72の周速が他の2ストロークエンジンよりも速い。これらのことから、対向ピストンエンジン1Aは、連動ギア71および72に歯打ち音が発生し難く静音性に優れ、連動ギア71および72としてアンチバックラッシュギアを用いた場合でも機械的なエネルギー損失の増加量を少なくできる。
機械式過給機61は、図2の符号202に示すように、ベルトドライブ65が増速ベルト42cを介してプーリー42bと接続されている。ベルトドライブ65は、所定の増速比で増速され、プーリー42bと連動して第2の回転方向に回転する。各発電モータ11および12、排気側クランクシャフト31、吸気側クランクシャフト32、ならびに機械式過給機61は、それぞれの回転軸方向が互いに平行となっている。
対向ピストンエンジン1Aは、排気側クランクシャフト31の回転と吸気側クランクシャフト32の回転との間に位相差がない場合、連動ギア71および72に駆動トルクが掛からない。一方、排気側クランクシャフト31の回転と吸気側クランクシャフト32の回転との間に位相差がある場合、進角側のクランクシャフトのトルクが遅角側のクランクシャフトのトルクよりも増加する。そして、進角側のクランクシャフトのトルクと遅角側のクランクシャフトのトルクとの差分、つまり駆動トルクが連動ギア71および72に掛かる。この場合、進角側の発電モータの発電量を増加することで駆動トルクを低減できる。
<制御装置による制御>
制御装置92による制御について、図1に基づいて説明する。制御装置92は、PCU7からの切り替え指令、および検出装置91から取得した検出結果に基づいて、対向ピストンエンジン1Aの燃焼態様をストイキ燃焼とリーン燃焼との間で切り替える。また、制御装置92は、このストイキ燃焼とリーン燃焼との間で切り替えに関連して、発電装置10Aが備える以下の各部材および各装置を制御する。
(インジェクターの燃料噴射量の調整)
制御装置92は、インジェクター28を制御してその燃料噴射量を調整する。燃料噴射量の調整方法としては公知の方法を採用できる。具体的には、制御装置92は、ストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替えるときには、インジェクター28に対してストイキ燃焼中の燃料噴射量から噴射量を減らす旨の減量指令を出力する。減量指令を受け付けたインジェクター28は、ストイキ燃焼中の燃料噴射量から噴射量を減らす。
一方、リーン燃焼からストイキ燃焼に切り替えるときには、制御装置92は、インジェクター28に対してリーン燃焼中の燃料噴射量から噴射量を増やす旨の増量指令を出力する。増量指令を受け付けたインジェクター28は、リーン燃焼中の燃料噴射量から噴射量を増やす。また制御装置92は、リーン燃焼に切り替えた後のリーン燃焼中においては、インジェクター28の燃焼噴射を掃気終了直後の主噴射に加え、その後に補助噴射を行う。補助噴射の燃料はプレチャンバー94内に流入し易いことから、プレチャンバー94内を着火し易い空燃比にできる。
なお制御装置92は、ストイキ運転中の点火時期について、暖機中は燃焼安定性の許容範囲で遅角制御する。暖機後は、制御装置92は、MBT(Minimum advance for the Best Torque;最適点火時期)またはノック限界となるように制御する。ノック限界は、ノッキングが生じない範囲で最も進角した点火時期である。
また、制御装置92は、バイパスバルブ62aの開閉を制御して機械式過給機61の過給圧を調整する。バイパスバルブ62aの開閉制御による過給圧の調整は、主にエンジン出力の制御に利用する。一方、低温始動時および暖機運転時では、制御装置92は、バイパスバルブ62aを閉じるとともにスロットルバルブ64を制御することで過給圧を調整する。この制御により、機械式過給機61の圧力比が増加して吸気温度が上昇し、対向ピストンエンジン1Aの燃焼安定性と排ガス性能が向上する。
具体的には、制御装置92は、ストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替えるときに、バイパスバルブ62aを開けて機械式過給機61の過給圧を低下させる。過給圧が低下すると、掃気が低下してシリンダ20内に残留する燃焼ガスGcomの量が増加するとともに、機械式過給機61の駆動損失を低減できる。
(EGR率の調整)
制御装置92は、EGRバルブ85を制御してEGR率を調整する。具体的には、制御装置92は、ストイキ燃焼からリーン燃焼に切り替えるときに、EGRバルブ85を閉めて当該EGRバルブ85の開度を切り替え前よりも小さくする。これにより、制御装置92は、切り替え後のEGR率をストイキ燃焼中のEGR率よりも下げる。
制御装置92は、リーン燃焼からストイキ燃焼に切り替えるときに、EGRポンプ85aを作動させるとともにEGRバルブ85を開弁制御してEGR率を調整する。また、制御装置92は、境界層Lno(詳細は後述)が必要な厚さになるのに十分な量のEGRガスGegrが供給される期間が開弁期間となるように、EGRバルブ85を開弁制御する。EGRガスGegrの供給量をさらに増加させる必要がある場合、制御装置92は、開弁時間がさらに長くなるようにEGRバルブ85を開弁制御してもよい。
(エンジン出力値の調整)
制御装置92は、バイパスバルブ62aおよびEGRバルブ85を制御してエンジン出力値を調整する。具体的には、制御装置92は、バイパスバルブ62aを制御してその開度を小さくしていく。この制御により、過給圧が上昇してエンジン出力値が増加する。また制御装置92は、バイパスバルブ62aを制御してその開度を大きくしていく。この制御により、過給圧が低下してエンジン出力値が減少する。
EGRバルブ85の開弁期間は、過給圧およびエンジン回転数等の運転条件に応じてあらかじめ設定される。また、EGRバルブ85の開弁期間は、境界層Lnoが必要な厚さになるのに十分な量のEGRガスGegrが供給される期間、またはEGR率が必要な率になるのに十分な量のEGRガスGegrが供給される期間に設定される。ここで、制御装置92は、過給圧を一定に保ったままEGRガスGegrの供給量を増加させてもよい。この制御により、シリンダ20内に流入する空気Int3の量が減少することから、エンジン出力値を減少させることができる。この場合、シリンダ20内に残留する高温の燃焼ガスGcomの量が増加しないことから、混合気の温度を低く維持できる。加えて、冷却されたEGRガスGegrがシリンダ20内に流入することで、ノッキングの発生を低減できる。
ここで、前述の「エンジン出力値が目標トルクと一致」は、エンジン出力値と目標トルクとが完全に一致することを要求するものではない。前述の「エンジン出力値が目標トルクと一致」は、例えば、エンジン出力値と目標トルクとの差分がエンジン出力値を目標トルクと見做せる範囲内の誤差のレベルであれば許容する概念である。
なお、対向ピストンエンジン1Aは、シリーズハイブリット方式のパワートレイン100に備えられていることから、エンジン出力値と目標トルクとの誤差が広い範囲で許容される。そのため、制御装置92が点火プラグ29の点火時期を制御することにより、対向ピストンエンジン1Aの燃焼時期を1サイクル毎に制御することが可能になる。また、パワートレイン100は、気筒(シリンダ)毎に生じるエンジン出力値の相違およびサイクル間のエンジン出力値の相違を吸収することが可能になる。
<燃焼ガスの掃気の基本原理>
対向ピストンエンジン1Aにおける燃焼ガスGcomの掃気の基本原理について、図4に基づいて説明する。なお、図4は、シリンダ20周りの構造のみを図示して対向ピストンエンジン1Aの構造を簡略化して示している。また、図4は、シリンダ20周りの構造を分かり易く示すためにシリンダ20内の一部を透過して示している。これらのことは、図5の符号501、および図6~図8についても同様である。
燃焼ガスGcomは、混合気が燃焼した後にシリンダ20内に残留するガスである。対向ピストンエンジン1Aは、EGRバルブ85およびEGRポンプ85aが特定期間内のいずれかのタイミングで吸気ポート87内にEGRガスGegrを供給することにより、当該シリンダ20内にEGRガスGegrから成る境界層Lnoを形成する。このようなEGRガスGegrの供給態様で境界層Lnoが形成されるのは、最初にEGRガスGegrが、遅れて空気Int3が、それぞれ吸気側開口部86からシリンダ20内に流入するためである。これにより、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lnoの2層状態になる。具体的には、燃焼ガスGcomの層が排気側開口部81の側に位置し、境界層Lnoが吸気側開口部86の側に位置する状態になる。
ここで、特定期間は、燃焼室23内の混合気が燃焼して排気側および吸気側ピストン21および22の双方が各上死点から各下死点に向けて動作を開始してから、吸気側開口部86が開いてシリンダ20内へのEGRガスGegrおよび空気Int3の供給が始まるまでの期間である。
シリンダ20内へのEGRガスGegrの供給が終わった後、対向ピストンエンジン1Aは、シリンダ20内に空気Int3を供給する。シリンダ20内への空気Int3の供給が始まると、シリンダ20内は、図4に示すような燃焼ガスGcomと境界層Lnoと空気Int3との3層状態となる。具体的には、燃焼ガスGcomの層が排気側開口部81の形成位置およびその近傍に位置し、空気Int3の層が中央位置CPから吸気側開口部86の形成位置にかけて位置する。そして、燃焼ガスGcomの層と空気Int3の層との間の領域に、境界層Lnoが位置する。
また、EGRガスGegrの供給が始まった時点では排気側開口部81の少なくとも一部が開いた状態になっており、シリンダ20内の燃焼ガスGcomの一部が排気側開口部81から押し出されている。つまり、シリンダ20内の燃焼ガスGcomの一部が掃気されている。続いて、空気Int3の供給が進むにつれて、燃焼ガスGcomのみならず境界層Lnoも掃気され始める。シリンダ20内への空気Int3の供給が完了すると、言い換えればシリンダ20内の燃焼ガスGcomの全量および境界層Lnoの一部の掃気が完了すると、シリンダ20内は空気Int3と境界層Lnoとの2層状態となる。なお、量は少ないものの、燃焼ガスGcomも境界層Lnoと混合した状態で排気側開口部81の周辺に残留する。
このように、燃焼ガスGcomの掃気が進んだ段階では、燃焼ガスGcomと空気Int3との間に境界層Lnoが形成されている。これにより、燃焼ガスGcomの掃気の過程において、空気Int3の一部が燃焼ガスGcomに混ざって排気側開口部81から外部に押し出されることを防ぐことができる。なお、排気側開口部81から掃気された燃焼ガスGcomと境界層Lno(境界層Lnoについては一部)とが、排気ガスExh1となる。
また対向ピストンエンジン1Aは、図4に示すように、排気側開口部81がシリンダ20の中心位置CPを基準とした場合に吸気側開口部86よりも若干内側に位置している。そのため、シリンダ20内の混合気が燃焼して排気側および吸気側ピストン21および22の双方がそれぞれの下死点に向けて動作する過程では、排気側開口部81よりも吸気側開口部86の方が若干遅く開く。このことから、シリンダ20内へのEGRガスGegrの供給が始まる吸気ポート87開時のシリンダ20内の圧力が低下しているため、燃焼ガスGcomが吸気側開口部86から逆流することが略ない。その結果、吸気ポート87内のEGRガスが攪乱されず、シリンダ20内に境界層Lnoが効率よく形成される。
なお、前述した燃焼ガスGcomと境界層Lnoとの2層状態、燃焼ガスGcomと境界層Lnoと空気Int3との3層状態、および境界層Lnoと空気Int3との2層状態は、どれも完全な層状態だけを意味するものではない。前述した燃焼ガスGcomと境界層Lnoとの2層状態および3層状態については、互いに隣り合う2つの層の少なくとも一方に、他方の層を構成する気体が不可避的に混じっている場合等を包含する。また、前述した境界層Lnoと空気Int3との2層状態については、掃気されずにシリンダ20内に残存した燃焼ガスGcomおよびEGRガスGegrの少なくとも一部が、空気Int3に不可避的に混じっている場合等を包含する。
<燃焼ガスの掃気の具体的態様>
対向ピストンエンジン1Aにおける燃焼ガスGcomの掃気の具体的態様について、図5に基づいて説明する。まず、対向ピストンエンジン1Aは、EGRポンプ85aが第1期間においてEGRガスGegrを吸気ポート87内の第2連通部分87bに供給する。第1期間は、吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程で吸気側開口部86が閉じられている期間である。具体的には、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側上死点から吸気側下死点に向けて動作を開始してから、吸気側開口部86が開き始めるまでの期間が、第1期間となる。
第2連通部分87bは、吸気ポート87と分岐管83bとの連通部分である。具体的には、図5の符号501に示すように、吸気ポート87内の空間における、分岐管83b内に形成された分岐路の出口(開口部)の近傍に位置する第2空間部分が第2連通部分87bとなる。第2空間部分は、吸気ポート87の下端部内に形成されている。また、第2連通部分87bと第1連通部分87aとは、中心軸AXを基準として対称となる箇所に位置している。第1連通部分87aは、吸気ポート87と吸気管62との連通部分である。具体的には、吸気ポート87内の空間における、吸気管62内に形成された吸気路の出口(開口部)の近傍に位置する第1空間部分が第1連通部分87aとなる。第1空間部分は、吸気ポート87の上端部内に形成されている。
ここで、「中心軸AXを基準として対称となる」とは、第1連通部分87aの重心と第2連通部分87bの重心とを結んだ線分が中心軸AXと直交し、かつ前述の線分と中心軸との交点が当該線分の中点になることを指す。なお、前述の「対称」は厳密な意味での対称を意味するものではなく、視認レベルで非対称になっていなければよい。
第1期間中は吸気側開口部86が閉じられていることから、第1期間中に第2連通部分87bに供給されたEGRガスGegrは、そのまま第2連通部分87bから吸気ポート87内および吸気管62の一部に充填される。以下、EGRポンプ85aが第1期間中に第2連通部分87bおよび吸気管62の一部に供給するEGRガスGegrを「第1EGRガスGegr-1」と称する。このような充填により、後述の第2期間においてEGRガスGegrと空気Int3とが吸気側開口部86からシリンダ20内に同時に供給されるのを防ぎ、境界層Lnoに空気Int3が混ざるのを防ぐ。
分岐管83bにおける吸気ポート87と接続している側の端部には、EGRバルブ85が設けられている。制御装置92は、EGRバルブ85の開弁期間の調整を、例えば第1期間中のみ行ってもよいし第2期間中を含めて行ってもよい。また例えば、制御装置92は、第1および第2期間を通じてEGRバルブ85の開弁期間を調整してもよい。
次に、対向ピストンエンジン1Aは、第1期間の終了後の第2期間において、EGRポンプ85aが吸気ポート87に供給したEGRガスGegrを吸気側開口部86からシリンダ20内に供給する。第2期間は、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程で、吸気側開口部86が開き始めてから当該吸気側開口部86の全部が開くまでの期間である。
具体的には、EGRポンプ85aは、第2期間が始まってから当該第2期間の途中までは第2連通部分87bへのEGRガスGegrの供給を継続してもよい。以下、EGRポンプ85aが第2期間において第2連通部分87bに供給するEGRガスGegrを「第2EGRガスGegr-2」と称する。ここで、第2EGRガスGegr-2が吸気ポート87からシリンダ20内に流入する期間では、吸気ポート87経由で空気Int3がシリンダ20内に流入することから、第2EGRガスGegr-2と空気Int3とが混合し易くなる。そのため、境界層Lnoと空気Int3とを層で分けるのが難しくなる。ただし、第2期間が始まってから当該第2期間の途中まで第2連通部分87bにEGRガスGegrを供給する手法は、大量のEGRガスGegrをシリンダ20内に供給する目的では利用できる。
以下の説明では、第1および第2EGRガスGegr-1およびGegr-2のシリンダ20内への供給をEGRバルブ85を閉じることで終える、第2期間の途中の時点を、「供給完了時点」と称する。供給完了時点は、第1および第2EGRガスGegr-1およびGegr-2の各供給量、ならびに吸気側ピストン22の往復運動の速度等に応じて、第2期間中の任意の時点に設定される。したがって、供給完了時点は第2期間の途中の時点でなくてもよく、例えば第2期間の終了時点(吸気側開口部86の全部が開いた時点)を供給完了時点に設定してもよい。
供給完了時点において、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lnoと空気Int3との3層状態になっている。この3層状態において、第2EGRガスGegr-2と空気Int3との混合は進んでおり、境界層Lnoは主として第1EGRガスGegr-1で形成される。また、対向ピストンエンジン1Aは2ストロークエンジンであることから、供給完了時点では、燃焼ガスGcomの一部が境界層Lnoによって排気側開口部81から掃気されている。
一方、機械式過給機61は、吸気ポート87内の第1EGRガスGegr-1をシリンダ20内に供給した後から第1吸気完了時点までの間において、シリンダ20内に空気Int3を供給する。具体的には、機械式過給機61は、例えば供給完了時点の直前から第1連通部分87aへの空気Int3の供給を開始する。供給完了時点では吸気側開口部86の一部が開いていることから、第1連通部分87aに供給された空気Int3は、供給完了後に吸気ポート87からシリンダ20内に供給され始める。第1吸気完了時点とは、供給完了時点の経過後、吸気側ピストン22が吸気側下死点から吸気側上死点に向けて動作する過程で吸気側開口部86の全部が閉じられる時点を指す。
供給完了時点の経過後は、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lnoと空気Int3との3層状態になり(図4参照)、空気Int3のシリンダ20内への供給量が増加するにつれて燃焼ガスGcomの排気側開口部81からの掃気が進行する。そして、排気側開口部81が中心位置CPを基準とした場合に吸気側開口部86よりも若干内側に位置していることから、吸気側開口部86の全部が閉じられた後に排気側開口部81の全部が排気側ピストン21によって閉じられる。つまり、空気Int3の供給が完了した後にも、境界層Lnoの一部が排気側開口部81から掃気される。第1吸気完了時点では、シリンダ20内は空気Int3と残った境界層Lnoとの2層状態になる。
なお、第2期間においてEGRガスGegrが第2連通部分87bに供給されなくてもよい。例えば、第2期間中にEGRガスGegrが供給されないように、制御装置92がEGRバルブ85を閉じてもよい。換言すれば、EGRバルブ85およびEGRポンプ85aは、第1EGRガスGegr-1のみを吸気ポート87から供給してもよい。
また、第1および第2連通部分87aおよび87bは、本実施形態の例のような構造および位置関係に限定されない。例えば、図5の符号502に示すように、吸気管62と分岐管83bとが、シリンダ20を正面視した場合において互いに隣り合っており、それに伴って第1連通部分87aと第2連通部分87bとが隣り合っていてもよい。ただし、この場合、第1連通部分87aと第2連通部分87bとの間に壁87cを設けて両空間を仕切る必要がある。
換言すれば、第1連通部分87aと第2連通部分87bとが離間しており、空気Int3とEGRガスGegrとが吸気ポート87内で混ざらなければ、第1および第2連通部分87aおよび87bはどのような構造および位置関係であってもよい。ここで、「第1連通部分87aと第2連通部分87bとが離間しており」とは、第1連通部分87aと第2連通部分87bとの間に空間が存在している場合の他、第1連通部分87aと第2連通部分87bとが何らかの部材で仕切られている場合も含む。
対向ピストンエンジン1Aは、排気管83における触媒コンバータ84の設置箇所の近傍部分にOセンサ95を有している。前述の近傍部分とは、具体的には排気ガスExh1が触媒コンバータ84に流入する側の近傍部分のことを指す。Oセンサ95は、排気側開口部81から排気ポート82を介して排気され、排気管83内の排気流路を流れてきた排気ガスExh1中の酸素の有無を検出する。
制御装置92は、Oセンサ95から取得した検出結果に応じて、インジェクター28の燃焼噴射量を調整する。Oセンサ95から酸素がない旨の検出結果を取得した場合、制御装置92は、それまでのインジェクター28の燃焼噴射量が多いと判定して燃料噴射量を減少させる。一方、Oセンサ95から酸素がある旨の検出結果を取得した場合、制御装置92は、それまでのインジェクター28の燃焼噴射量が少ないと判定して燃料噴射量を増加させる。
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図6に基づいて説明すれば以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前述の実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。このことは、後掲の実施形態3についても同様である。
本発明の実施形態2に係る対向ピストンエンジン2Aは、図6に示すような供給ポート90を有している点で、対向ピストンエンジン1Aと相違する。また、対向ピストンエンジン2Aは、シリンダ20の内壁20aに供給側開口部90aが形成されている点でも、対向ピストンエンジン1Aと相違する。
<対向ピストンエンジンの要部の構造>
対向ピストンエンジン2Aは、シリンダ20の内壁20aにおける吸気ポート87の近傍かつ当該吸気ポート87よりも中心位置CP側の部分に、供給ポート90が設けられている。供給ポート90は、シリンダ20の内壁20aの一部を外側から取り囲むように設けられた環状の部品であり、その内部には空間が形成されている。供給ポート90は、分岐管83bと接続されており、供給ポート90内の空間が分岐管83b内の分岐路の出口と連通している。EGRポンプ85aは、分岐管83bを通じて供給ポート90内の空間にEGRガスGegrを供給する。
また、内壁20aにおける供給ポート90が設けられた部分には、供給側開口部90aが形成されている。供給側開口部90aは、供給ポート90内の空間と連通しており、EGRポンプ85aによって供給ポート90内の空間に供給されたEGRガスGegrは、供給側開口部90aからシリンダ20内に供給される。供給側開口部90aは、吸気側ピストン22の動作によって開閉される。
供給側開口部90aは、複数の開口部で構成されている。これら複数の開口部は、すべて同一の大きさの四角形状であり、内壁20aの周方向に略等間隔に形成されている。本実施形態では、供給側開口部90aを構成する複数の開口部の個数が、吸気側開口部86を構成する複数の開口部の個数と同数になっている。勿論、供給側開口部90aを構成する複数の開口部の形状、大きさおよび個数は、本実施形態の例に限定されない。
また、供給ポート90および供給側開口部90aの内壁20aにおける位置も、本実施形態の例に限定されない。換言すれば、供給ポート90および供給側開口部90aは、内壁20aにおける排気側開口部81と吸気側開口部86との間の部分に位置し、かつ供給側開口部90aが吸気側ピストン22の動作によって開閉されるのであれば、どこに位置してもよい。
本実施形態では、分岐管83bにおけるEGRポンプ85aの設置箇所とEGRクーラー88の設置箇所との間の部分に、EGRバルブ85が設けられている。また、対向ピストンエンジン2Aは、圧力センサ85cに加えてチェックバルブ85bを有している。チェックバルブ85bは、分岐管83bにおける、供給ポート90と接続している側の端部とEGRポンプ85aの設置箇所との間の部分に設けられている。チェックバルブ85bは、供給側開口部90aが開口している期間にシリンダ20内から空気Int3および燃焼ガスGcomが逆流するのを防ぐ。
<燃焼ガスの掃気の具体的態様>
まず、対向ピストンエンジン2Aは、EGRポンプ85aが第3期間においてEGRガスGegrを供給ポート90内の空間に供給する。第3期間は、吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程で供給側開口部90aが閉じられている期間である。具体的には、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側上死点から吸気側下死点に向けて動作を開始してから、供給側開口部90aが開き始めるまでの期間が、第3期間となる。
第3期間中は供給側開口部90aが閉じられていることから、第3期間中に供給ポート90内の空間に供給されたEGRガスGegrは、そのまま当該空間に充填される。以下、EGRポンプ85aが第3期間中に供給ポート90内の空間に供給するEGRガスGegrを「第3EGRガスGegr-3」と称する。ここで、機械式過給機61は、第3期間中に空気Int3を第1連通部分87aに供給する。いずれにせよ吸気側開口部86と供給側開口部90aとが連通していないことから、後述の第4期間においてEGRガスGegrと空気Int3とが上下に分かれてシリンダ20内に供給されるので、境界層Lnoに空気Int3が混ざることを低減できる。
次に、対向ピストンエンジン2Aは、第3期間の終了後の第4期間において、EGRポンプ85aがEGRガスGegrを供給側開口部90aからシリンダ20内に供給する。第4期間は、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程で、供給側開口部90aが開き始めてから当該供給側開口部90aの全部が開くまでの期間である。
具体的には、EGRポンプ85aは、第4期間中も供給ポート90内の空間にEGRガスGegrを供給し続ける。供給ポート90内の圧力がシリンダ20内の圧力よりも高い間は、第4期間終了後もEGRガスGegrが供給される。なお、EGRポンプ85aの流量を増やして、必要な供給量を供給するまでEGRガスGegrを供給し続けてもよい。以下、EGRポンプ85aが第4期間において供給ポート90内の空間に供給するEGRガスGegrを「第4EGRガスGegr-4」と称する。
ここで、第4期間が始まると供給側開口部90aが開き始めることから、第4期間の開始とともに第3および第4EGRガスGegr-3およびGegr-4の供給側開口部90aからの供給が開始される。そして、第4期間の終了時点で供給側開口部90aの全部が開き、第3および第4EGRガスGegr-3およびGegr-4がシリンダ20内に供給される。換言すれば、EGRポンプ85aは、第4期間において第3および第4EGRガスGegr-3およびGegr-4を供給側開口部90aからシリンダ20内に供給する。
第4期間の終了時点において、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lnoとの2層状態になる。ここで、第4期間の開始時点では、排気側開口部81の一部が既に開いてシリンダ20内の圧力が低下している。したがって、第4期間の終了時点において、燃焼ガスGcomの一部が境界層Lnoによって排気側開口部81から掃気されている。
一方、機械式過給機61は、第4期間の終了後、吸気側開口部86が開き始めてから第2吸気完了時点までの間において、シリンダ20内に空気Int3を供給する。具体的には、機械式過給機61は、例えば第4期間の終了時点の前から第1連通部分87aへの空気Int3を供給する。第1連通部分87aに供給された空気Int3は、吸気側開口部86が開き始めた時点でタイミングよくシリンダ20内に供給され始める。第2吸気完了時点とは、第4期間の終了後、吸気側ピストン22が吸気側下死点から吸気側上死点に向けて動作する過程で吸気側開口部86の全部が閉じられる時点を指す。
第4期間の終了後、吸気側開口部86が開き始めて以降は、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lnoと空気Int3との3層状態になる(図4参照)。そして、空気Int3のシリンダ20内への供給量が増加するにつれて、燃焼ガスGcomの排気側開口部81からの掃気が進行する。空気Int3の供給が完了する前に燃焼ガスGcomおよび境界層Lnoの全部が排気側開口部81から掃気される点、ならびにシリンダ20内が第2吸気完了時点で空気Int3のみの1層状態になる点については、実施形態1と同様である。
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、図7および図8に基づいて説明すれば以下の通りである。本発明の実施形態3に係る対向ピストンエンジン3Aは、EGRのための部品および装置を有しておらず、替わりに図7に示すようなウォーターインジェクター93(供給部、第1ウォーターインジェクター)を有している。この点において、対向ピストンエンジン3Aは対向ピストンエンジン1Aおよび2Aと相違する。
<対向ピストンエンジンの要部の構造>
対向ピストンエンジン3Aは、図7に示すように、シリンダ20の内壁20aにおけるインジェクター28の設置箇所と吸気ポート87の下端部との間の部分にウォーターインジェクター93が設けられている。具体的には、ウォーターインジェクター93は、吸気ポート87の下端部の近傍(インジェクター28の設置箇所に近い側の)に位置している。また、対向ピストンエンジン3Aは、不図示のウォータータンク(供給部)を有している。
ウォーターインジェクター93は、吸気側ピストン22の頂面22bに向けて水Wを噴射する。頂面22bは、吸気側ピストン22のピストンヘッド22aにおける排気側ピストン21と対向する面である。制御装置92は、ウォーターインジェクター93の水Wの噴射量と、当該水Wの噴射タイミングと、を制御する。ウォータータンクは、ウォーターインジェクター93から噴射される水Wを貯槽する装置であり、ウォーターインジェクター93に高圧の水Wを供給する。
なお、ウォーターインジェクター93は、例えば吸気ポート87の上端部の近傍(点火プラグ29の設置箇所に近い側の)に設けられていてもよい。つまり、ウォーターインジェクター93は、頂面22bに向けて水Wを噴射できる箇所であればどのような箇所に設けられてもよい。
<燃焼ガスの掃気の具体的態様>
まず、対向ピストンエンジン3Aは、ウォーターインジェクター93が第5期間において水Wを噴射する。第5期間は、吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程の後期で吸気側開口部86が閉じられている期間である。「吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作する過程の後期」とは、吸気側ピストン22が吸気側上死点からストロークの2分の1の距離まで移動した時点から、頂面22bが吸気側下死点に到達するまでの期間を指す。
つまり、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側上死点から吸気側下死点に向けて動作を開始した後、吸気側ピストン22がストロークの2分の1の距離まで移動した時点から吸気側開口部86が開き始めるまでの期間が、第5期間となる。
ウォーターインジェクター93が第5期間において水Wを噴射すると、吸気側ピストン22の表面およびシリンダ20内は高温であることから、噴射された水Wが気化して水蒸気WVとなる。この水蒸気WVも、本発明に係る「酸素を含まない気体」の一例である。そして、この水蒸気WVから成る境界層Lno-1がシリンダ20内に形成される。換言すれば、ウォーターインジェクター93とウォータータンクとの組み合わせが、第5期間において前述の水蒸気WVをシリンダ20内に供給すると言える。
第5期間の終了時点では、吸気側開口部86がまだ閉じられていることから、シリンダ20内は燃焼ガスGcomと境界層Lno-1との2層状態になる。なお、第5期間の終了時点より前に排気側開口部81が開かれていることから、第5期間の終了時点において、燃焼ガスGcomは排気側開口部81から一部が掃気される。これにより、シリンダ20内の圧力が低下するので、ウォーターインジェクター93から水Wを噴射するときに必要な噴射圧力を低くできる。
一方、機械式過給機61は、第5期間の終了後、吸気側開口部86が開き始めてから第3吸気完了時点までの間において、シリンダ20内に空気Int3を供給する。具体的には、機械式過給機61は、例えば第5期間の終了時点の前から第1連通部分87aへの空気Int3を供給する。第1連通部分87aに供給された空気Int3は、吸気側開口部86が開き始めた時点でタイミングよくシリンダ20内に供給され始める。第3吸気完了時点とは、第5期間の終了後、吸気側ピストン22が吸気側下死点から吸気側上死点に向けて動作する過程で吸気側開口部86の全部が閉じられる時点を指す。
第5期間の終了後、吸気側開口部86が開き始めて以降は、シリンダ20内は図7に示すような燃焼ガスGcomと境界層Lno-1と空気Int3との3層状態になる。そして、空気Int3のシリンダ20内への供給量が増加するにつれて、燃焼ガスGcomの排気側開口部81からの掃気が進行する。空気Int3の供給が完了する前に燃焼ガスGcomおよび境界層Lno-1の一部が排気側開口部81から掃気される点については、実施形態1および2と同様である。また、シリンダ20内が第3吸気完了時点で空気Int3と境界層Lno-1の2層状態になる点についても、実施形態1および2と同様である。
<変形例>
ウォーターインジェクター93(供給部、第2ウォーターインジェクター)は、図8に示すように、排気側開口部81の近傍に向けて水Wを噴射してもよい。本変形例では、ウォーターインジェクター93が排気側開口部81の近傍に向けて水Wを噴射すると、排気側ピストン21の頂面21bに向けて水Wを噴射することにもなる。頂面21bは、排気側開口部81を開閉するピストンの頂面の一例であり、排気側ピストン21のピストンヘッド21aにおける吸気側ピストン22と対向する面である。
図8に示す例では、ウォーターインジェクター93は、シリンダ20の内壁20aにおける点火プラグ29の設置箇所と排気ポート82の上端部との間の部分に設けられている。具体的には、ウォーターインジェクター93は、排気ポート82の上端部の近傍(点火プラグ29の設置箇所に近い側の)に位置している。なお、ウォーターインジェクター93は、例えば排気ポート82の下端部の近傍(インジェクター28の設置箇所に近い側の)に設けられていてもよい。つまり、図8のウォーターインジェクター93は、頂面21bに向けて水Wを噴射できる箇所であればどのような箇所に設けられてもよい。
図8に示す例では、対向ピストンエンジン3Aは、ウォーターインジェクター93が第6期間において水Wを噴射する。第6期間は、燃焼室23内の混合気が燃焼して頂面21bが排気側下死点(下死点)に到達してから、排気側ピストン21が排気側上死点(上死点)向けて動作する過程で排気側開口部81が閉じるまでの期間である。
ウォーターインジェクター93が第6期間において水Wを噴射すると、噴射された水Wが気化して水蒸気WVとなり、この水蒸気から成る境界層Lno-1がシリンダ20内に形成される。第6期間の開始時点では、シリンダ20内の燃焼ガスGcomと空気Int3との境界が排気側開口部81の形成箇所に近い位置まで移動している。そのため、ウォーターインジェクター93が水Wを噴射すると、境界層Lno-1が排気側開口部81の近傍に直ちに形成される。
一方、機械式過給機61は、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作し始めた後、吸気側開口部86が開き始めてから第4吸気完了時点までの間において、シリンダ20内に空気Int3を供給する。具体的には、機械式過給機61は、例えば吸気側開口部86が開き始める前から第1連通部分87aへの空気Int3を供給する。第1連通部分87aに供給された空気Int3は、吸気側開口部86が開き始めた時点でタイミングよくシリンダ20内に供給され始める。第4吸気完了時点とは、燃焼室23内の混合気が燃焼して吸気側ピストン22が吸気側下死点に向けて動作し始めた後、吸気側ピストン22が吸気側下死点から吸気側上死点に向けて動作する過程で吸気側開口部86の全部が閉じられる時点を指す。
第6期間の開始時点では、既に空気Int3がシリンダ20内に供給されていることから、ウォーターインジェクター93が水Wを噴射すると、シリンダ20内は図8に示すような燃焼ガスGcomと境界層Lno-1と空気Int3との3層状態になる。そして、この3層状態を構成する燃焼ガスGcomの層と境界層Lno-1とは、3層状態になった時点で、既に排気側開口部81の形成箇所の近くに位置している。そのため、第6期間が終了するまでに空気Int3が排出されることはなく、燃焼ガスGcomおよび境界層Lno-1の一部が排気側開口部81から確実に掃気される。シリンダ20内が第4吸気完了時点で空気Int3と境界層Lno-1の2層状態になる点については、実施形態1および2と同様である。
図8に示すような、ウォーターインジェクター93が排気側開口部81の近傍に向けて水Wを噴射する構成は、実施形態1~3で例示したような対向ピストンエンジン以外の2ストロークエンジンにも適用できる。つまり、対向ピストンエンジン以外の2ストロークエンジンにおいても、ウォーターインジェクター93が、排気側開口部の近傍またはこれに相当する開口部を開閉するピストンのピストンヘッドの頂面に向けて水Wを噴射する構成を採用できる。
〔対向ピストンエンジンとSDGsとの関係〕
近年は、各種エンジン等から排出される排気ガスの規制を強化する流れが定着しており、排気ガス対策が困難と言われている2ストロークエンジンの研究開発は下火になっている。このような情勢下において、前掲の各実施形態にて説明した対向ピストンエンジン1A~3Aは、2ストロークエンジンを再普及させる契機となり得る効果を奏する。
すなわち、対向ピストンエンジン1A~3Aは、すべてストイキ排気を実現でき、触媒コンバータ84に格納された三元触媒を正常に働かせることができる。これにより、対向ピストンエンジン1A~3Aは、排気ガスExh1を確実に浄化できる。
このことから、対向ピストンエンジン1A~3Aは、SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)の達成に貢献できる。具体的には、対向ピストンエンジン1A~3Aは、「SDGs17の目標」のうち、「3 すべての健康と福祉を」、「7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに」および「13 気候変動に具体的な対策を」の3つの目標の達成に貢献できる。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置92(以下、「装置」と略記)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
この場合、前記装置は、前記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前記プログラムを実行することにより、前記各実施形態で説明した各機能が実現される。
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前記装置に供給されてもよい。
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る2ストロークエンジンは、吸気ポートが設けられ、かつ排気側開口部が形成されたシリンダと、前記シリンダ内を往復運動し、前記吸気ポートの吸気側開口部を開閉するように動作するピストンと、前記ピストンの動作に連動して前記排気側開口部を開閉する排気開閉機構と、前記シリンダ内の燃焼ガスと前記吸気側開口部から前記シリンダ内に供給された新気との間に酸素を含まない気体から成る境界層が形成されるように、前記気体を前記シリンダ内に供給する供給部と、を備えている。
前記構成によれば、供給部が、燃焼ガスと新気との間に境界層が形成されるように、酸素を含まない気体をシリンダ内に供給する。そのため、燃焼ガスを掃気する際に新気の排気開閉機構への移動が境界層によって遮られることから、新気が排気側開口部から排気開閉機構を通過して外部に吹き抜けることを防ぐことができる。これにより、リッチ燃焼することなくストイキ排気を実現でき、燃費を向上させることができる。また、ストイキ排気の実現で三元触媒が正常に働くことから、当該三元触媒を用いた排気ガスの浄化を確実に行うことができる。
本発明の態様2に係る2ストロークエンジンは、前記態様1において、前記2ストロークエンジンは、対向ピストンエンジンであり、前記ピストンは、前記シリンダ内を互いに対向して往復運動する吸気側ピストンと排気側ピストンとで構成され、前記吸気側ピストンは、前記吸気側開口部を開閉するように動作し、前記排気側ピストンは、前記排気開閉機構として、前記排気側開口部を開閉するように動作してもよい。
前記構成によれば、2ストロークの対向ピストンエンジンにおいて、リッチ燃焼することなくストイキ排気を実現でき、燃費を向上させることができる。また、三元触媒を用いた排気ガスの浄化を確実に行うことができる。
本発明の態様3に係る2ストロークエンジンは、前記態様2において、前記対向ピストンエンジンは、プレチャンバーイグニッションにより点火してもよい。前記構成によれば、シリンダ内の吸気流動を小さくしたとしても、プレチャンバー(副室)から燃焼室(主室)に向かう噴流によって、当該シリンダ内に強い流動と乱れと、を生成できる。これにより、シリンダ内を境界層が形成され易い状態に保ちつつ急速な燃焼を実現でき、さらなる燃費向上を図ることができる。また、リーン燃焼を安定させることができ、ノッキング発生の低減効果を得ることもできる。
また前記構成によれば、シリンダ内の燃焼ガスおよび境界層が排気側ピストンの近傍に存在し、新気がシリンダ内におけるプレチャンバーの配置箇所近傍に存在することとなる。これにより、プレチャンバー(副室)内に新気が多く入るので、着火性を向上させることができる。
本発明の態様4に係る2ストロークエンジンは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記供給部は、前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスを、前記気体として前記シリンダ内に供給してもよい。
前記構成によれば、シリンダ内に新気とEGRガスとが供給されることから、EGRガスが供給されない場合よりもシリンダ内の酸素量が少なくなって混合気の燃焼温度を下げることができる。これにより、NOxの発生量を少なくして有害物質が少ない排気ガスを実現できる。また、ノッキングの発生を低減して燃費を向上させることができる。
本発明の態様5に係る2ストロークエンジンは、前記態様2または3において、前記吸気ポートは、前記新気が通過する吸気管、および前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスが通過する供給管と連通しており、前記吸気ポートにおける前記吸気管との第1連通部分と、前記吸気ポートにおける前記供給管との第2連通部分と、が離間しており、前記供給部は、前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程で前記吸気側開口部が閉じられている第1期間において、前記EGRガスを前記第2連通部分に供給し、前記第1期間の終了後、前記吸気側ピストンが前記吸気側下死点に向けて動作する過程で、前記吸気側開口部が開き始めてから前記吸気側開口部の全部が開くまでの第2期間において、前記EGRガスを、前記気体として前記吸気側開口部から前記シリンダ内に供給してもよい。
前記構成によれば、EGRガスをシリンダ内に供給するための特別な構造等を採用することなく、境界層を形成できる。また、EGRガスが第1連通部分ではなく第2連通部分に供給されることから、シリンダ内に形成された境界層に新気が混ざることを低減できる。
本発明の態様6に係る2ストロークエンジンは、前記態様2または3において、前記シリンダには、前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスを前記シリンダ内に供給するための供給ポートが設けられており、前記シリンダにおける前記吸気側開口部と前記排気側開口部との間の部分には、前記供給ポートの供給側開口部が、前記吸気側ピストンの動作によって開閉されるように形成されており、前記供給部は、前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程で前記供給側開口部が閉じられている第3期間において、前記EGRガスを前記供給ポートに供給し、前記第3期間の終了後、前記吸気側ピストンが前記吸気側下死点に向けて動作する過程で、前記供給側開口部が開き始めてから前記供給側開口部の全部が開くまでの第4期間において、前記EGRガスを、前記気体として前記供給側開口部から前記シリンダ内に供給してもよい。
前記構成によれば、EGRガスが吸気側開口部と異なる供給側開口部からシリンダ内に供給されることから、シリンダ内に形成された境界層に新気が混ざることを低減できる。また、供給側開口部が吸気側開口部よりも排気側開口部に近い位置に形成されていることから、境界層を燃焼ガスと新気との間に形成させ易い。
本発明の態様7に係る2ストロークエンジンは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記供給部は、水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給してもよい。前記構成によれば、シリンダ内に新気と水蒸気とが供給されることから、水蒸気が供給されない場合よりもシリンダ内の酸素量が少なくなり、混合気の燃焼温度を下げることができる。これにより、NOxの発生量を少なくして有害物質が少ない排気ガスを実現できる。また、ノッキングの発生を低減して燃費を向上させることができる。
本発明の態様8に係る2ストロークエンジンは、前記態様2または3において、前記供給部は、前記吸気側ピストンの頂面に向けて水を噴射する第1ウォーターインジェクターを有しており、前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程の後期で前記吸気側開口部が閉じられている第5期間において、前記第1ウォーターインジェクターが前記吸気側ピストンの頂面に向けて前記水を噴射することにより、当該水が気化した水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給してもよい。前記構成によれば、本発明の態様7に係る2ストロークエンジンと同様の効果を奏する。
本発明の態様9に係る2ストロークエンジンは、前記態様1から3のいずれかにおいて、前記供給部は、前記排気側開口部の近傍に向けて水を噴射する第2ウォーターインジェクターを有しており、前記排気開閉機構の頂面が下死点に到達してから、前記排気開閉機構が上死点に向けて動作する過程で前記排気側開口部が閉じるまでの第6期間において、前記第2ウォーターインジェクターが前記排気側開口部の近傍に向けて前記水を噴射することにより、当該水が気化した水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給してもよい。
前記構成によれば、第2ウォーターインジェクターが第6期間で水を噴射し、かつ排気側開口部の近傍で当該水が気化することから、境界層をシリンダ内に確実に形成できる。また、水の噴射によって排気側開口部の周辺が冷却されることから、ノッキングを発生し難くできる。
本発明の態様10に係るパワートレインは、前記シリンダ内に燃料を噴射するインジェクターを備えた、本発明の態様1に係る2ストロークエンジンと、前記排気側開口部から排気された排気ガス中の酸素の有無を検出する検出部(Oセンサ95に対応)から取得した検出結果に応じて、前記インジェクターの燃料噴射量を調整する調整装置(制御装置92に対応)と、を備えている。
前記構成によれば、調整装置によるインジェクターの燃料噴射量の調整によってストイキ排気を安定的に実現できる。これにより、燃費向上を安定的に実現できるとともに、排気ガスをより確実に浄化できる。
1A、2A、3A 対向ピストンエンジン(2ストロークエンジン)
10A 発電装置
11 排気側発電モータ
12 吸気側発電モータ
20 シリンダ
21 排気側ピストン(排気開閉機構)
21b 頂面(排気開閉機構の頂面)
22 吸気側ピストン(ピストン)
22b 頂面(吸気側ピストンの頂面)
28 インジェクター
31 排気側クランクシャフト
32 吸気側クランクシャフト
42a フライホイール
61 機械式過給機
62 吸気管
62a バイパスバルブ
65 ベルトドライブ
81 排気側開口部
82 排気ポート
83 排気管
83b 分岐管(供給管)
84 触媒コンバータ
85 EGRバルブ
85a EGRポンプ(供給部)
86 吸気側開口部
87 吸気ポート
87a 第1連通部分
87b 第2連通部分
90 供給ポート
90a 供給側開口部
91 検出装置
92 制御装置
93 ウォーターインジェクター(供給部、第1ウォーターインジェクター、第2ウォーターインジェクター)
95 Oセンサ
100 パワートレイン
AX 中心軸(シリンダの延伸方向の中心軸)
Exh1 排気ガス
Gcom 燃焼ガス
Gegr EGRガス(酸素を含まない気体)
Int3 空気(新気)
Lno、Lno-1 境界層
W 水
WV 水蒸気

Claims (9)

  1. 吸気ポートが設けられ、かつ排気側開口部が形成されたシリンダと、
    前記シリンダ内を往復運動し、前記吸気ポートの吸気側開口部を開閉するように動作するピストンと、
    前記ピストンの動作に連動して前記排気側開口部を開閉する排気開閉機構と、
    前記シリンダ内の燃焼ガスと前記吸気側開口部から前記シリンダ内に供給された新気との間に酸素を含まない気体から成る境界層が形成されるように、前記気体を前記シリンダ内に供給する供給部と、を備えた、2ストロークエンジン。
  2. 前記2ストロークエンジンは、対向ピストンエンジンであり、
    前記ピストンは、前記シリンダ内を互いに対向して往復運動する吸気側ピストンと排気側ピストンとで構成され、
    前記吸気側ピストンは、前記吸気側開口部を開閉するように動作し、
    前記排気側ピストンは、前記排気開閉機構として、前記排気側開口部を開閉するように動作する、請求項1に記載の2ストロークエンジン。
  3. 前記対向ピストンエンジンは、プレチャンバーイグニッションにより点火する、請求項2に記載の2ストロークエンジン。
  4. 前記供給部は、前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスを、前記気体として前記シリンダ内に供給する、請求項1から3のいずれか1項に記載の2ストロークエンジン。
  5. 前記吸気ポートは、前記新気が通過する吸気管、および前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスが通過する供給管と連通しており、
    前記吸気ポートにおける前記吸気管との第1連通部分と、前記吸気ポートにおける前記供給管との第2連通部分と、が離間しており、
    前記供給部は、
    前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程で前記吸気側開口部が閉じられている第1期間において、前記EGRガスを前記第2連通部分に供給し、
    前記第1期間の終了後、前記吸気側ピストンが前記吸気側下死点に向けて動作する過程で、前記吸気側開口部が開き始めてから前記吸気側開口部の全部が開くまでの第2期間において、前記EGRガスを、前記気体として前記吸気側開口部から前記シリンダ内に供給する、請求項2または3に記載の2ストロークエンジン。
  6. 前記シリンダには、前記排気側開口部から排気された排気ガスがEGRクーラーで冷却されたEGRガスを前記シリンダ内に供給するための供給ポートが設けられており、
    前記シリンダにおける前記吸気側開口部と前記排気側開口部との間の部分には、前記供給ポートの供給側開口部が、前記吸気側ピストンの動作によって開閉されるように形成されており、
    前記供給部は、
    前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程で前記供給側開口部が閉じられている第3期間において、前記EGRガスを前記供給ポートに供給し、
    前記第3期間の終了後、前記吸気側ピストンが前記吸気側下死点に向けて動作する過程で、前記供給側開口部が開き始めてから前記供給側開口部の全部が開くまでの第4期間において、前記EGRガスを、前記気体として前記供給側開口部から前記シリンダ内に供給する、請求項2または3に記載の2ストロークエンジン。
  7. 前記供給部は、水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給する、請求項1から3のいずれか1項に記載の2ストロークエンジン。
  8. 前記供給部は、
    前記吸気側ピストンの頂面に向けて水を噴射する第1ウォーターインジェクターを有しており、
    前記吸気側ピストンが吸気側下死点に向けて動作する過程の後期で前記吸気側開口部が閉じられている第5期間において、前記第1ウォーターインジェクターが前記吸気側ピストンの頂面に向けて前記水を噴射することにより、当該水が気化した水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給する、請求項2または3に記載の2ストロークエンジン。
  9. 前記供給部は、
    前記排気側開口部の近傍に向けて水を噴射する第2ウォーターインジェクターを有しており、
    前記排気開閉機構の頂面が下死点に到達してから、前記排気開閉機構が上死点に向けて動作する過程で前記排気側開口部が閉じるまでの第6期間において、前記第2ウォーターインジェクターが前記排気側開口部の近傍に向けて前記水を噴射することにより、当該水が気化した水蒸気を前記気体として前記シリンダ内に供給する、請求項1から3のいずれか1項に記載の2ストロークエンジン。
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