JP2022183049A - カスタード呈味材、カスタード呈味材を含有する飲食品及びカスタード呈味材の製造方法 - Google Patents

カスタード呈味材、カスタード呈味材を含有する飲食品及びカスタード呈味材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】飲食品、とくにフラワーペースト類や油中水型クリームに使用した場合に、呈味発現性に優れ、殺菌機を使用した場合であっても良好なカスタード風味を付与することができるカスタード呈味材、良好なカスタード風味を呈するフラワーペースト類等の飲食品、及び、前記特徴を有するカスタード風味呈味材の製造方法を提供すること。【解決手段】プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有する混合液の加熱処理物を含むカスタード呈味材、該カスタード呈味材を含有する飲食品、並びに、プロテアーゼ処理卵黄、及び、糖類を含有する混合液を加熱するカスタード呈味材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、カスタード呈味材、カスタード呈味材を含有する飲食品及びカスタード呈味材の製造方法に関する。
カスタードクリームに代表されるフラワーペースト類としては、小麦粉や穀物澱粉等の澱粉類、ミルク、砂糖、卵、水等を混合した後、加熱して糊化させることによって得られるものが挙げられる。フラワーペースト類は、とろりとした重い食感と、コクと厚みのある風味が特徴である。
しかし、このフラワーペースト類はその澱粉骨格により風味が遅れて感じられるため、呈味発現性が悪いという問題があった。さらに、このフラワーペースト類を使用した飲食品、例えばシュークリームやクリームパンでは、生地部分に比べて呈味を遅れて感じるなど、呈味のバランスが悪くなるという問題があった。
なお、このフラワーペースト類は水分活性も高く保存性が悪いため、長期保存可能品の製造には、各種殺菌機を用いて糊化と殺菌を同時に行う製造法が行われる。ここで、超高温短時間殺菌(UHT殺菌)の製造ラインで製造した場合には、十分な風味が出ないという問題もあった。特にフラワーペースト類がカスタード風味、すなわち卵成分と乳成分を多く含有する場合はこの問題が大きく、呈味性の改良の要請が強かった。
上記のようなフラワーペースト類、特にカスタード風味のフラワーペーストにおける上記問題を解決するため、各種の改良方法の提案が行われた。
まず、澱粉のゲル化力を増粘多糖類で代替する方法(例えば特許文献1参照)が行われた。この方法であると、たしかに呈味速度を高めることができるが、呈味の質自体についての改良は行われない。
そこで、特定の遊離アミノ酸を添加する方法(例えば特許文献2参照)や、特定の乳蛋白質を使用する方法(例えば特許文献3参照)が提案された。しかし、特許文献2の方法では卵のコク味は増すものの、呈味速度バランスに優れたカスタード風味は得られず、特許文献3の方法では、カスタード風味の質は向上するが、呈味発現性の問題は解決されず、さらには殺菌機を使用した場合の問題の解決も行われない。
一方、カスタードの呈味の中でも糖とアミノ酸の反応で得られるメイラード反応に注目し、該反応で生じたメイラード反応生成物などの加熱生成物を添加する方法が各種提案されている(たとえば特許文献4~8参照)。しかし、特許文献4の方法はカスタード風味が単調であることに加え飲食品への添加時に油分や水分分離が起こりやすい問題があり、特許文献5の方法はカステラという特定の焼菓子用途であることからカスタードの呈味が弱く、また安定した生産が難しいという問題があり、特許文献6の方法はプリン用という口溶けの良好な食品用途であることからカスタード風味よりもカラメルの呈味が強いという問題に加え、着色が強く、他の用途には使用しにくいという問題があり、特許文献7の方法はカステラという特定の焼菓子用途であることからカスタードの呈味が極めて弱いという問題があり、特許文献8の方法は糖を含有しないことが好ましい加熱生成物であることからカスタードの呈味が極めて弱いという問題があった。
更に、上記のようなフラワーペースト類のほかにも、油中水型クリーム、特にカスタード風味の油中水型クリームもまた、油脂が外相であることに加え、水相成分が少ないため、呈味発現性が悪いという問題があった。
この油中水型クリームの呈味発現性の低さは、上記のフラワーペースト類の場合と異なり、使用油脂の組成、特に融点調整により改善可能であるが、耐熱保形性や口溶けなどの物性に直接影響してしまうため、物性に影響しない形での呈味発現性の改善が求められていた。
しかし、特許文献2及び4~8の方法では、上記のようなフラワーペースト類と同様の問題があることに加え、水相成分の含有量が少ない油中水型クリームでは、添加量が限定されるため、十分な呈味の強さが得られないという問題があった。
特開2002-335897号公報 WO2009/101972号 特開平10-262565号公報 特開昭55-099172号公報 特開昭61-088854号公報 特開平02-076549号公報 特開平11-276112号公報 特開2018-019635号公報
従って本発明の目的は、飲食品、とくにフラワーペースト類や油中水型クリームに使用した場合に、呈味発現性に優れ、殺菌機を使用した場合であっても良好なカスタード風味を付与することができるカスタード呈味材、及び該特徴を有する飲食品を提供することにある。
また本発明の目的は、該特徴を有するカスタード風味呈味材の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、メイラード反応生成物を製造する際にプロテアーゼ処理卵黄を用いることにより、上記問題を解決しうることを知見した。
すなわち、本発明は、プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有する混合液の加熱処理物を含む、カスタード呈味材を提供するものである。
また本発明は該カスタード呈味材を含有する飲食品を提供するものである。
また本発明はプロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有する混合液を加熱する工程を有する、カスタード呈味材の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、飲食品、特にフラワーペースト類や油中水型クリームに使用した場合に、呈味発現性に優れ、殺菌機を使用した場合であっても良好なカスタード風味を付与することができるカスタード呈味材を提供できる。
以下、本発明のカスタード呈味材、カスタード呈味材を含有する飲食品及びカスタード呈味材の製造方法それぞれの好ましい形態について順に述べる。本実施形態のカスタード呈味材は、プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有する混合液の加熱処理物を有効成分とする。
まず、本発明で使用するプロテアーゼ処理卵黄について述べる。プロテアーゼ処理卵黄を調製するための基質としては、全卵、卵黄、加塩卵黄、加塩全卵、加糖全卵、加糖卵黄、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結卵黄、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄等の卵黄を含有する卵類が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができるが、良好なカスタード呈味材を得るためには生卵黄、殺菌卵黄、加塩卵黄、加糖卵黄などの卵白を含有しない卵黄類の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することが好ましい。基質中の卵白は、卵黄100質量部に対し、50質量部以下となることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。なお、上記卵黄類に糖分が含まれる場合は、該糖分は、下記糖類の含有量に算入する。
本発明では、得られるカスタード呈味材の保存性、酵素反応時の微生物の増殖を抑えることを考慮すると特に加塩卵黄または加糖卵黄が適しており、風味が良好であることから加糖卵黄が好ましい。加糖卵黄は好ましくは糖類が5~80質量%添加された加糖卵黄を用いるのが良く、さらに好ましくは糖類が10~70質量%添加された加糖卵黄を用いるのが良い。このとき用いる糖類としては、下述の糖類の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。なお、ここでいう糖類の添加量とは、プロテアーゼ処理前の基質における、卵黄と糖類の合計量中の糖類の割合をいう。
上記プロテアーゼ処理卵黄において、基質である卵黄の酵素処理の際に用いるプロテアーゼは、蛋白質を加水分解する反応を触媒する酵素であり、植物、動物、微生物を起源とした、たとえばパイナップルを起源としたブロメライン、パパイヤを起源としたパパイン、哺乳類の膵液を起源としたトリプシン、哺乳類の胃液を起源としたペプシン、カビ由来のプロテアーゼ、アルカラーゼ等の市販のプロテアーゼを使用することができる。特に酵素活性の高さと得られるカスタード呈味材の効果の高さの点から、ブロメライン又はアルカラーゼが好ましく、特に良好なカスタード風味の飲食品が得られることから、アルカラーゼが最適である。
なお、上記プロテアーゼは、卵黄の酵素処理後に熱失活させる必要があることから、酵素の熱失活温度が80℃以下のものであることが好ましい。80℃超であると、卵黄蛋白が熱凝固してざらつきが発生するため好ましくない。
また、卵黄のプロテアーゼ処理の際、他の酵素、例えばホスホリパーゼA等のホスホリパーゼを併用してもよいが、好ましくはプロテアーゼ処理のみを行なうことが好ましい。卵黄に対し、プロテアーゼ以外の他の酵素で処理する場合、当該他の酵素の量は、合計で、プロテアーゼ100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
上記プロテアーゼは、遊離酵素の形で基質としての上記卵黄に配合して使用してもよいし、固定化酵素の形で使用してもよい。
プロテアーゼ処理の条件については、遊離酵素の形で使用する場合、及び、卵黄中に固定化酵素を添加・分散して使用する場合は、選択したプロテアーゼの至適温度及び時間で行えばよいが、通常、50~65℃で1~24時間の範囲から適宜選択することができる。
なお、プロテアーゼ使用量はプロテアーゼの種類により変動するが、基質における卵黄100質量部に対し、0.01~0.5質量部であることが製造効率等の点で好ましく、0.03~0.25質量部が特に好ましい。
また、固定化酵素をカラム状の筒に詰め、卵黄を通す又は循環させる方法の場合は、固定化酵素1g当たりの基質卵黄の通液量(単位通液速度)は、充填した固定化酵素の活性に大きく依存するが、概ね卵黄0.5~10(g)/hr/固定化酵素(g)である。
また、プロテアーゼ処理卵黄は市販品を使用することもでき、例えば、加糖ヨ―クレートM、エグレートS-2(以上太陽化学製)等を使用することができる。
本発明においては、加熱処理物の原料の一部として、上記プロテアーゼ処理卵黄を使用するものである。該プロテアーゼ処理卵黄を使用することで、得られる加熱処理物は、飲食品への配合適性、特にフラワーペースト類や油中水型クリームに使用する際に油分分離や水分分離を抑えることができ、飲食品、特にフラワーペーストや油中水型クリームに良好なカスタード風味を付与することができるものである。
ここで、プロテアーゼ処理していない卵黄を使用すると、得られる加熱処理物はカスタード呈味が弱く、コクがないものになってしまう。また、飲食品に添加した際に、油分分離や水分分離を起こしやすくなってしまう。
本発明において、上記プロテアーゼ処理卵黄の、混合液中の好ましい含有量は、加熱時にざらを生じない等の製造安定性及び良好なカスタード呈味が得られる等の理由から、処理前の卵黄換算で5~60質量%であることが好ましく、より好ましくは15~45質量%、最も好ましくは20~30質量%である。なお、処理前の卵黄換算とは、プロテアーゼ処理前の卵黄量への換算を意味する。
次に、本発明のカスタード呈味材に使用する糖類について述べる。
該糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ショ糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、パラチニット、ラクチトール、直鎖オリゴ糖アルコール、分岐オリゴ糖アルコール、高糖化還元水飴、還元麦芽糖水飴、還元水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記プロテアーゼ処理卵黄類や、下記の粉乳類、その他の原料に含まれる糖類も、混合液中の糖類に含めるものとする。
なかでも本発明では良好なカスタード呈味を得ることができる点、及び、得られる加熱処理物の着色を抑え、さまざまな飲食品に使用可能なカスタード呈味材とすることが可能である点で、還元糖と非還元糖とが、固形分として10:90~70:30の質量比であることが好ましく、20:80~60:40の質量比であることがより好ましい。還元糖と非還元糖との質量比が10:90以上であることはミドルからラストにかけて良好なカスタード風味を得ることができる点で好ましく、還元糖と非還元糖との質量比が70:30以下であることは、風味の一層の向上の点で好ましい。
なお、還元糖とは、開環して鎖状構造となった際に、アルデヒド基を有するアルドース又はケトン基を有するケトースを構成成分とし、還元性を示す糖類のことであり、非還元糖とは、それ以外の糖類のことである。
上記糖類の中で代表的な還元糖としては、ブドウ糖や果糖、アラビノース等の単糖が挙げられる。また、二糖のうち乳糖、麦芽糖、等が挙げられる。
上記糖類の中で代表的な非還元糖としては二糖の中でも、ショ糖、トレハロース等が挙げられる。その他、糖アルコール等が挙げられる。
上記糖類を使用する場合に、還元糖と非還元糖を共に含有する糖類を使用した場合は、それぞれの含有量を分けて算出するものとする。
なかでも本発明では良好なカスタード呈味を得ることができる点で、単糖と二糖を主要な糖として使用することが好ましい。具体的には、糖類の固形分中、50質量%以上が単糖と二糖であることが好ましく、80質量%以上が単糖と二糖であることがより好ましく、90質量%以上が単糖と二糖であることがさらに好ましく、95質量%以上が単糖と二糖であることが最も好ましい。
また、二糖は優れたカスタード呈味のためには乳糖を少なくとも含有することが好ましい。具体的には糖類の固形分中、10質量%以上、より好ましくは15質量%以上が乳糖であることが好ましい。上限については乳風味バランスの良好なカスタード呈味の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
本発明において、混合液中の糖類の好ましい含有量は、固形分として10~60質量%であることが好ましい。10質量%以上であることでミドルからラストにかけて良好なカスタード風味を得ることができる利点がある。60質量%以下であることで、優れた卵風味及び乳風味バランスの良好なカスタード呈味が得られるという利点がある。この観点から、混合液中の糖類の好ましい含有量はより好ましくは30~60質量%である。
本発明においては、混合液中に、上記プロテアーゼ処理卵黄及び糖類に加え、粉乳類を使用することが、乳味感に優れたカスタード呈味となることから好ましい。
本発明で用いる粉乳類としては乳に由来し、少なくとも乳蛋白質を含有する各種の乳や乳製品を粉末化したものであり、具体的には、全粉乳、脱脂粉乳、ハイファット全粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、カゼイン、脱乳糖ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、WPC(ホエープロテインコンセントレート)、TMP(トータルミルクプロテイン)、MPC(ミルクプロテインコンセントレート)、調整粉乳、クリームパウダー、加糖粉乳、SWP(スイートホエイパウダー)、WPI(ホエイプロテインアイソレート)、パーミネイトなどが挙げられるが、風味が良好である点及び上記乳糖を多く含有する点で全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、クリームパウダーのうちの1種又は2種以上を使用することが好ましく、より好ましくは全粉乳、及び/または、脱脂粉乳を使用する。
本発明において、混合液中の粉乳類の好ましい含有量は、乳味感の向上及び卵風味とのバランスの理由から、5~25質量%、より好ましくは7~20質量%である。
本発明においては、混合液中に、上記プロテアーゼ処理卵黄、糖類に加え、食用油脂を使用することが、メイラード反応時に高温処理が可能となること、糖類や粉乳類を油脂中に分散した状態としてからメイラード反応させることで安定的に反応生成物が得られる点で好ましい。
ここで使用する油脂としては、特に制限されるものではないが、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂、サル脂、シア脂、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂や、MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)等があげられる。本発明ではこれらの油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明では、濃厚なミルク感が感じられ、且つ、口溶けのよいカスタード呈味材が得られる点で、パーム油、カカオ脂、サル脂、シア脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することが好ましく、特に好ましくは加熱安定性が高く且つ呈味への影響が少ない点でパーム油及びパーム油に水素添加、分別及びエステル交換から選択された一又は二以上の処理を施した加工油脂の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することが好ましく、特にパーム軟質油を使用することが好ましい。なお、パーム軟質油とは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部のものである。
本発明において、混合液中の食用油脂の含有量は良好なカスタード風味を発現させる目的から25質量%以下であることが好ましい。特に、上述した油脂を含有することによる効果に優れる点から5~25質量%が好ましく、より好ましくは7~20質量%である。
本発明においては、混合液の原料として、上記プロテアーゼ処理卵黄、糖類、粉乳類、食用油脂以外のその他の原材料を本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
該その他の原材料としては、水、プロテアーゼ処理卵黄以外の卵黄や卵製品、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤、粉乳類以外の乳や乳製品、増粘安定剤、高甘味度甘味料、食塩、澱粉類、穀類、無機塩、有機酸塩、酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、直鎖デキストリン・デキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、強化剤等が挙げられる。
ただし、呈味への影響の点から、水以外の上記その他の原材料については合計して混合液中35質量%以下とすることが好ましく、15質量%以下とすることがより好ましい。とくに加熱処理時の副生物が呈味に影響することを防止する観点から、プロテアーゼ処理卵黄以外の蛋白質、ペプチド又はアミノ酸を含有する原材料については好ましくは混合液中、蛋白質、ペプチド及びアミノ酸の合計量が5質量%以下となる量であることが好ましく、2質量%以下となる量であることがより好ましく、使用しないことが最も好ましい。また、蛋白質、ペプチド又はアミノ酸を含有する原材料の合計も5質量%以下であることが好ましく、使用しなくてもよい。
本発明においては、この混合液は、安定した品質の加熱処理物の製造のために、水分含量が12~50質量%、より好ましくは12~35質量%、さらに好ましくは12~25質量%とすることが好ましい。
本発明のカスタード呈味材は、上記混合液の加熱処理物を含むものである。
上記混合液を加熱処理することにより、プロテアーゼ処理卵黄に含まれるアミノ酸と、糖類がメイラード反応を起こし、カスタード呈味を有するようになり、このカスタード呈味は、混合液が粉乳類や食用油脂を含むことでより良好なものとなるのは上述のとおりである。
なお、メイラード反応とはアミノカルボニル反応の一種であり、還元糖と、アミノ酸やペプチドなどのアミノ化合物を共存下で加熱したときに見られる褐色物質を生成する反応のことであり、原料に使用する糖類やアミノ酸の違いにより多種多様の着色成分、香気成分、呈味成分の混合物として生成する。そのため、生成した加熱処理物の成分で特定することが大変困難である。そのため、本発明では加熱処理する際の原材料混合液の成分で特定しているものである。
次に、本発明のカスタード呈味材の製造方法について述べる。
本発明のカスタード呈味材は、プロテアーゼ処理卵黄、及び、糖類を含有する混合液を加熱処理することによって得られるものである。
具体的に好ましい製造方法を述べると以下のとおりである。
まず、プロテアーゼ処理卵黄を準備し、糖類、好ましくは粉乳類、食用油脂を添加、さらに必要に応じ水やその他原材料を添加、混合し、必要に応じ加温溶解する。ここで、糖類や粉乳類のうち粉状のものは食用油脂に分散して添加することが好ましい。なお、食用油脂はその融点以上とすることにより、プロテアーゼ処理卵黄により水中油型に乳化することができる点で好ましい。
なお、本発明では、カスタード風味の向上効果が得られる点で次の加熱の前に脱気処理を行うことが好ましい。なお、上記脱気処理は、負圧で0.04~0.15MPaG程度で、真空ポンプを接続した密閉容器で行うのが好ましい。
続いて該混合液を加熱処理する。この加熱処理により、本発明の有効成分である加熱処理物を得ることができる。
この加熱処理においては好ましくは75~95℃、より好ましくは80~90℃で、好ましくは5~60分、より好ましくは10~40分加熱する。ここで加熱温度が75℃以上であるとメイラード反応が進行しやすく、少量の添加で飲食品に十分な呈味を付与できるカスタード呈味材になる。一方、95℃以下であると、メイラード反応とともに糖類単独のカラメル化反応が強くなることを防止でき、コク味は強くなるものの卵風味や乳風味といったカスタード風味が感じられなくなってしまう、といった状態を防ぐことができる。また、得られる加熱処理物の着色が強くなることを防止できるため当該着色に起因して使用可能な飲食品の幅が狭くなってしまうことを回避できる。
また、加熱時間が5分以上であると、メイラード反応が進行しやすく、少量の添加で飲食品に十分な呈味を付与できるカスタード呈味材になり、60分以下であると、出汁のような旨味成分の生成を抑制できるため、卵風味や乳風味といったカスタード風味が感じられなくなってしまうおそれを防止できる。
なお、加熱方法としては、レトルト、マイクロ波加熱、ニーダーや釜による炊き上げなどの加熱などが挙げられるが、ニーダーや釜による炊き上げによることが好ましい。
得られた加熱処理物は液体、詳しくは高粘度の液体~ペースト状であるが、これに賦形剤を使用したりスプレードライやフリーズドライにより粉体に加工してもよく、水、アルコールなどの液体で液状としてもよく、油脂中に分散させた形態としてもよい。
カスタード呈味材は、上記加熱処理物のみからなるものであってもよく、上記加熱処理物に加えて賦形剤や油脂、水、アルコール等の別成分を含有していてもよいが、好ましくは上記加熱処理物を10質量%以上含有することが使用容易性の点から好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であってもよい。
本発明の飲食品は、上記の本発明のカスタード呈味材を含有する飲食品である。
上記飲食品としてはカスタードクリーム、フラワーペースト等のフラワーペースト類のほか、ホイップクリーム、スフレケーキ、プリン、ババロア、アイスクリーム、ファットスプレッド、バタークリームなどが挙げられるが、澱粉骨格であることから呈味発現性が悪くカスタード風味が特に求められる食品であることからフラワーペースト類、具体的にはカスタードクリーム又はフラワーペーストであることが好ましく、フラワーペーストであることが特に好ましい。また、油脂が外相であることに加え、水相成分が少ないため、呈味発現性の改良が特に求められる食品であることから、ファットスプレッド、バタークリームなどの油中水型クリームであることも好ましい。なお、カスタードクリーム、フラワーペースト等のフラワーペースト類とは、パン類や菓子類のトッピング、フィリングとして広く利用されてきたものであり、澱粉類の糊化によるボディーを有し、油脂、澱粉、糖類及び水からなり、必要により乳化剤、安定剤、乳製品、卵、呈味成分、保存料、日持ち向上製剤、フレーバー、酸化防止剤、着色料、pH調整剤等を使用したものである。上記フラワーペーストに使用する澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀物類、アーモンド粉、ヘーゼルナッツ粉、カシューナッツ粉、オーナッツ粉、松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉などの澱粉や、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理などの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
上記飲食品における上記本発明のカスタード呈味材の含有量は、飲食品の種類、求められるカスタード呈味の強さによって異なるが、飲食品中に0.1~5.0質量%となることが、適度なカスタード呈味発現性がより得やすい点、適度な風味強度や風味質がより得やすい点から好ましく、特に好ましくは0.5~2.0質量%となる量である。特に、カスタード呈味材の含有量が加熱処理物の量として、飲食品中に0.1~5.0質量%となることが好ましく、0.5~2.0質量%となる量であることがより好ましい。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
<酵素処理卵黄の製造>
(製造例1)
卵黄50質量部に、ショ糖45質量部、水4.94質量部を添加し良く混合した後、50℃に加温し、ここにプロテアーゼ(アルカラーゼ:ノボザイム(株))0.06質量部を添加し、50℃にて4時間撹拌しながら反応させた後、75℃30分の加熱により酵素の失活処理を行ない、5℃まで冷却し、プロテアーゼ処理加糖卵黄Aを得た。
(製造例2)
卵黄50質量部に、ショ糖45質量部、水4.9976質量部を添加し良く混合した後、50℃に加温し、ここにホスホリパーゼ(粉末リゾナーゼ(サンヨーファイン株式会社))0.0024質量部を添加し、50℃にて4時間撹拌しながら反応させた後、75℃30分の加熱により酵素の失活処理を行ない、5℃まで冷却し、ホスホリパーゼ処理加糖卵黄Bを得た。
(製造例3)
卵黄50質量部に、ショ糖45質量部、水4.9376質量部を添加し良く混合した後、50℃に加温し、ここにプロテアーゼ(アルカラーゼ:ノボザイム(株)、熱失活温度が80℃以下)0.06質量部、及び、ホスホリパーゼ(粉末リゾナーゼ(サンヨーファイン株式会社))0.0024質量部を添加し、50℃にて4時間撹拌しながら反応させた後、75℃30分の加熱により酵素の失活処理を行ない、5℃まで冷却し、プロテアーゼ及びホスホリパーゼ処理加糖卵黄Cを得た。
<カスタード呈味材の製造>
〔実施例1〕
上記プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部、及び、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖(糖固形分75質量%、固形分中のショ糖含有量40質量%、果糖含有量25.2質量%、ブドウ糖含有量30質量%)20質量部を混合して水相とした。一方、パームスーパーオレイン(融点25℃未満)15質量部に脱脂粉乳10質量部及び乳糖5質量部を分散した油相とした。上記水相に上記油相を徐々に投入、混合乳化し水中油型乳化物とした。この水中油型乳化物を真空ポンプ(東京理化器械株式会社製、EVP-1000)を使用して0.08MPaGで30分脱気処理を行った。この水中油型乳化物を釜に入れ、直火で攪拌しながら30分かけて85℃まで上昇させ、攪拌しながら85℃で30分加熱した。液体が褐色化したことを確認し、直火から外し、室温で30℃となるまで放冷して、やや粘性のある淡褐色液体である加熱処理物を得た。
この加熱処理物をカスタード呈味材Aとした。
〔実施例2〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部を40質量部に変更し、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖20質量部を30質量部に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Bを得た。
〔実施例3〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部を60質量部に変更し、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖20質量部を10質量部に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Cを得た。
〔実施例4〕
砂糖混合ブドウ糖果糖液糖20質量部を10質量部に変更し、グラニュー糖7.5質量部を添加し、水を2.5質量部添加した水相に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Dを得た。
〔実施例5〕
脱脂粉乳10質量部を無添加とし、水を10質量部水相に添加した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Eを得た。
〔実施例6〕
乳糖5質量部を無添加とし、水を5質量部水相に添加した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Fを得た。
〔実施例7〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部、砂糖混合ブドウ糖果糖液糖(糖固形分75質量%、固形分中のショ糖含有量40質量%、果糖含有量25.2質量%、ブドウ糖含有量30質量%)20質量部、脱脂粉乳10質量部及び乳糖5質量部、水15質量部を混合した。この混合物を真空ポンプ(東京理化器械株式会社製、EVP-1000)を使用して0.08MPaGで30分脱気処理を行った。この混合物を釜に入れ、直火で攪拌しながら30分かけて85℃まで上昇させ、攪拌しながら85℃で30分加熱した。液体が褐色化したことを確認し、直火から外し、室温で30℃となるまで放冷して、やや粘性のある淡褐色液体である加熱処理物を得た。
この加熱処理物をカスタード呈味材Gとした。
〔比較例1〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部を加糖卵黄50質量部に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Hを得た。なお、加糖卵黄としては、製造例1におけるプロテアーゼ処理前の混合物(卵黄50質量部に、ショ糖45質量部、水4.94質量部を添加し良く混合したもの)を用いた。
〔比較例2〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部を、ホスホリパーゼ処理加糖卵黄B50質量部に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Iを得た。
〔実施例8〕
プロテアーゼ処理加糖卵黄A50質量部を、ホスホリパーゼ及びプロテアーゼ処理加糖卵黄C50質量部に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Jを得た。
〔実施例9〕
加熱温度を85℃から70℃に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Kを得た。
〔実施例10〕
加熱温度を85℃から95℃に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある褐色液体であるカスタード呈味材Lを得た。
〔実施例11〕
加熱温度を85℃から105℃に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、粘性のある強い褐色液体であるカスタード呈味材Mを得た。
〔実施例12〕
加熱時間を30分から15分に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Nを得た。
〔実施例13〕
加熱時間を30分から60分に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Oを得た。
〔実施例14〕
加熱時間を30分から90分に変更した以外は実施例1の配合及び製法に従って、やや粘性のある淡褐色液体であるカスタード呈味材Pを得た。
上記実施例1~8及び比較例1~2における、混合液中のプロテアーゼ処理卵黄の処理前の卵黄換算含量、糖類含有量、還元糖と非還元糖の含有質量比、糖類固形分中の単糖と二糖類の合計含量、糖類固形分中の乳糖含量、混合液中の粉乳量の含有量、混合液の油脂含有量について、表1に記載した。
Figure 2022183049000001
<フラワーペーストの製造>
〔実施例15〕
パーム軟部油のエステル交換油(融点36℃)8質量%及び大豆極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.02質量%に、レシチン0.5質量%及びキサンタンガム0.2質量%を添加し、油相とした。水47.88質量%、デンプン4質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)35質量%、小麦粉1質量%、脱脂粉乳1.1質量%、乾燥全卵2質量%及び香料0.1質量%、上記カスタード呈味材A0.1質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化後、UHT加熱殺菌(140℃3秒)し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、合成乳化剤無添加で、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストA1を得た。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価に供した。
〔実施例16〕
上記カスタード呈味材A0.1質量%を1質量%に変更し、さらに水47.88質量%を46.98質量%に変更した以外は実施例15の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストA2を得た。
〔実施例17〕
上記カスタード呈味材A1質量%を5.0質量%に変更し、さらに水47.88質量%を42.98質量%に変更した以外は実施例15の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストA3を得た。
〔実施例18〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材B1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストBを得た。
〔実施例19〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材C1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストCを得た。
〔実施例20〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材D1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストDを得た。
〔実施例21〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材E1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストEを得た。
〔実施例22〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材F1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストFを得た。
〔実施例23〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材G1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストGを得た。
〔比較例3〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材H1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストHを得た。
〔比較例4〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材I1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストIを得た。
〔実施例24〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材J1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストJを得た。
〔実施例25〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材K1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストKを得た。
〔実施例26〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材L1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストLを得た。
〔実施例27〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材M1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストMを得た。
〔実施例28〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材N1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストNを得た。
〔実施例29〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材O1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストOを得た。
〔実施例30〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材P1質量%に変更した以外は実施例16の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストPを得た。
〔比較例5〕
上記カスタード呈味材A0.1質量%を無添加とし、さらに水47.88質量%を47.98質量%に変更した以外は実施例15の配合及び製法に従って、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストQを得た。
<フラワーペーストの評価方法>
実施例及び比較例で得られたカスタード風味フラワーペーストについて、カスタードの風味の呈味発現性、質及び強度を、パネラー17名にて下記の基準にて評価し、その一番多かった回答を評価結果とし、表2に記載した。なお同数の場合は一番上の評価を評価結果とした。
<フラワーペースト評価基準>
(1)呈味発現性
◎:ミドルからラストまで良好なカスタードの呈味を感じる。
○:ミドルまたはラストがやや弱いが良好なカスタードの呈味を感じる。
△:ミドルからラストまでカスタード呈味がやや弱く、やや不良である。
×:トップからラストまでカスタードの呈味が弱い。
(2)カスタード風味質
◎ :極めて良好なカスタード風味質である。
○+:乳風味がやや弱いが良好なカスタード風味質である。
○-:出汁のような旨味のあるカスタード風味質である。
○=:ややえぐ味のあるカスタード風味質である。
△ :卵風味または乳風味が強くバランスが悪い。
△-:卵風味または乳風味が弱くバランスが悪い。
× :カスタード風味が弱い。または異味を感じる。
(3)カスタード風味強度
◎ :良好な風味強度である。
○+:やや風味強度が高いが良好である。
○-:やや風味強度が低いが良好である。
△+:風味強度が高くやや異味を感じる。
△-:風味強度が低くカスタード風味が弱い。
× :風味強度が低すぎる。
××:異味を感じる。
Figure 2022183049000002
表2に示す結果から明らかなとおり、各実施例で得られたカスタード風味フラワーペーストは、各比較例で得られたカスタード風味フラワーペーストよりも、(1)呈味発現性、(2)カスタード風味質及び(3)カスタード風味強度のすべての項目において、高い評価を得た。すなわち、本発明のカスタード呈味材を用いると、呈味発現性と良好なカスタード風味を付与することができる。
<油中水型クリームの製造>
〔実施例31〕
混合油脂として、質量比がパーム核油75%及びパーム極度硬化油25%からなる油脂配合物のランダムエステル交換油脂45質量%、質量比がパーム核油50%及びパーム極度硬化油50%からなる油脂配合物のランダムエステル交換油脂5質量%、ヨウ素価60のパームスーパーオレイン35質量%、及び、ナタネ液状油(キャノーラ油)15質量%からなる混合油脂Aを調製した。
得られた混合油脂A49.2質量%に、グリセリンモノパルミチン酸エステル0.1質量%、大豆レシチン0.2質量%及びポエムDES70-V(理研ビタミン製:グリセリンジ脂肪酸エステル含量69質量%:炭素数16以上の飽和脂肪酸100%)1.5質量%を添加し、加温溶解した油相と、脱脂粉乳4.5質量%、転化糖液糖(固形分75質量%)27.6質量%、水15.4質量%、香料0.3質量%、キサンタンガム0.1質量%、ローカストビーンガム0.1質量%及び上記カスタード呈味材A1質量%からなる水相とを、45~55℃の温度で混合乳化してW/O型乳化物を得た。このW/O型乳化物を80℃にて15秒間殺菌した後、コンビネーターにて急冷可塑化して、W/O型の油中水型クリーム1を製造した。急冷可塑化工程において、窒素ガスを吹き込み、油中水型クリームの比重を0.7とした。
得られた油中水型クリームは、後述の油中水型クリーム評価に供した。
〔比較例6〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材H1質量%に変更した以外は、実施例31の配合及び製法に従って、油中水型クリーム2を得た。
得られた油中水型クリームは、後述の油中水型クリーム評価に供した。
〔比較例7〕
上記カスタード呈味材A1質量%をカスタード呈味材I1質量%に変更した以外は、実施例31の配合及び製法に従って、油中水型クリーム3を得た。
得られた油中水型クリームは、後述の油中水型クリーム評価に供した。
〔比較例8〕
上記カスタード呈味材Aを無添加とし、さらに水15.4質量%を16.4質量%に変更した以外は実施例31の配合及び製法に従って、油中水型クリーム4を得た。
得られた油中水型クリームは、後述の油中水型クリーム評価に供した。
<油中水型クリームの評価方法>
実施例及び比較例で得られた油中水型クリームについて、カスタードの風味の呈味発現性、質及び強度を、パネラー17名にて下記の基準にて評価し、その一番多かった回答を評価結果とし、表3に記載した。なお同数の場合は一番上の評価を評価結果とした。
<油中水型クリーム評価基準>
(1)呈味発現性
◎:ミドルからラストまで良好なカスタードの呈味を感じる。
○:ミドルまたはラストがやや弱いが良好なカスタードの呈味を感じる。
△:ミドルからラストまでカスタード呈味がやや弱く、やや不良である。
×:トップからラストまでカスタードの呈味が弱い。
(2)カスタード風味質
◎ :極めて良好なカスタード風味質である。
○+:乳風味がやや弱いが良好なカスタード風味質である。
○-:出汁のような旨味のあるカスタード風味質である。
○=:ややえぐ味のあるカスタード風味質である。
△ :卵風味または乳風味が強くバランスが悪い。
△-:卵風味または乳風味が弱くバランスが悪い。
× :カスタード風味が弱い。または異味を感じる。
(3)カスタード風味強度
◎ :良好な風味強度である。
○+:やや風味強度が高いが良好である。
○-:やや風味強度が低いが良好である。
△+:風味強度が高くやや異味を感じる。
△-:風味強度が低くカスタード風味が弱い。
× :風味強度が低すぎる。
××:異味を感じる。
Figure 2022183049000003
表3に示す結果から明らかなとおり、実施例31で得られたカスタード風味油中水型クリームは、比較例6ないし8で得られたカスタード風味油中水型クリームよりも、(1)呈味発現性、(2)カスタード風味質及び(3)カスタード風味強度のすべての項目において、高い評価を得た。すなわち、本発明のカスタード呈味材を用いると、呈味発現性と良好なカスタード風味を付与することができる。

Claims (8)

  1. プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有した混合液の加熱処理物を含む、カスタード呈味材。
  2. 請求項1に記載のカスタード呈味材を含有する、飲食品。
  3. フラワーペースト類である、請求項2に記載の飲食品。
  4. 油中水型クリームである、請求項2に記載の飲食品。
  5. カスタード呈味材の製造方法であって、
    プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有した混合液を加熱する工程を有する、カスタード呈味材の製造方法。
  6. プロテアーゼ処理卵黄及び糖類を含有した混合液を、75℃~95℃、且つ5~60分加熱する、請求項5に記載のカスタード呈味材の製造方法。
  7. 前記混合液が粉乳類を含有する、請求項5又は6に記載のカスタード呈味材の製造方法。
  8. 前記混合液が食用油脂を含有する、請求項5又は6に記載のカスタード呈味材の製造方法。
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