JP2022182520A - 離型フィルム - Google Patents

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【課題】離型フィルムの作業性を良好にしつつ、外観が良好な成形体が得られる離型フィルムを提供する。【解決手段】本発明の離型フィルム10は、離型層1、第1基材層3、及び第2基材層2の順で積層された多層構造であって、離型層1は離型フィルム10の離型面11を構成し、第2基材層2は離型フィルム10の離型面11とは反対側の面21を構成するものであって、離型層1は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、およびフェノール樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含み、第1基材層3は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなり、第2基材層2は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなる。【選択図】図1

Description

本発明は、離型フィルムに関する。
従来、離型フィルムの分野では様々な技術が開発されている。例えば、半導体装置の製造プロセスの分野においては、金型と、成形対象物との間に離型フィルムを配置し、トランスファーモールド成形法やコンプレッションモールド成形法などの成形手法により、半導体素子などの電子部材が搭載された成形対象物を樹脂封止することにより、成形体を製造することが知られている(例えば、特許文献1~3)。離型フィルムが、金型と、成形対象物との間に配置されることにより、樹脂封止後、金型から成形体を容易にはずすことができる。また、このような金型を用いて樹脂成形する際に用いられる離型フィルムは、一般に、モールド成形用離型フィルムとも呼ばれる。
特開2020-151949号公報 特開2020-19264号公報 特開2016-092272号公報
しかしながら、従来の離型フィルムを用いて得られた成形体の表面には、離型フィルムに生じたシワやゆがみが転写される場合があり、より高水準で外観が良好な成形体を得る点で改善の余地があった。
本件発明者は、離型フィルムに生じるシワやゆがみの要因について鋭意検討を進めたところ、次のような課題があることを判明した。
通常、下金型のキャビティ凹部の周辺には、離型フィルムをキャビティ凹部の内面に真空密着させるため、真空排気用の吸引口が設けられている。当該キャビティ凹部とその周囲の吸引口をともに覆うように離型フィルムを配置したのち、離型フィルムとキャビティ凹部との間の空気を吸引口から吸引し、真空排気することによって、離型フィルムをキャビティ凹部の内面に真空密着させることができる。この真空排気の際、吸引口に離型フィルムもある程度引き込まれることになるが、離型フィルムの変形量が十分でないと、離型フィルムの一部が吸引口に引き込まれることにより吸引口の近傍の離型フィルムの端部が立ちあがってしまう場合がある。その結果、立ち上がった離型フィルムの端部と下型との間にわずかな隙間が生じ、吸引が十分に行われなくなるために、離型フィルムのキャビティ凹部への密着性が低下して、離型フィルムにシワなどが発生しやすくなることが明らかになった。
また、上金型には、半導体素子などの電子部材が搭載された成形対象物が保持されている。そして、キャビティ凹部内に封止用の樹脂材料が充填された下金型と、成形対象物が固定された上金型とで、成形対象物を上下方向からクランプして圧縮成形することで、樹脂モールドする。この際、下金型の台座が上昇する事で封止用樹脂材料を圧縮する様に圧力が掛かる。この時、キャビティの深さが浅くなるため、離型フィルムとキャビティ凹部の内面との間にわずかな隙間が生じるようになる。そのため、離型フィルムに変形が生じ、ゆがみやシワの要因となることが明らかになった。
そのため、金型に配された離型フィルムは、局所的な変形に対応すべく十分な柔軟性や伸び性が求められた。
一方で、本発明者によれば、離型フィルムの柔軟性や伸びを高くしようすると、離型フィルムの厚みを低くしなければならないという制約が生じてしまい、フィルムを薄くするとフィルムのコシが十分に確保出来ない等の理由から作業性が低下する傾向が見出だされた。
そこで、本件発明者は、離型フィルムにより外観が良好な成形体と、離型フィルムの作業性とを両立する観点からさらに鋭意検討を行ったところ、離型フィルムの離型面を構成する離型層と、その反対側の面を構成する第2基材層と、両者の間に介在する第1基材層の材料を特定して組み合わせることが有効であることを知見した。
本発明によれば、
離型層、第1基材層、及び第2基材層の順で積層された多層構造の離型フィルムであって、
前記離型層は当該離型フィルムの離型面を構成し、前記第2基材層は当該離型フィルムの前記離型面とは反対側の面を構成するものであって、
前記離型層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびアクリル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含み、
前記第1基材層は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなり、
前記第2基材層は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなる、離型フィルムが提供される。
本発明によれば、離型フィルムの作業性を良好にしつつ、外観が良好な成形体が得られる離型フィルムが提供される。
本実施形態の離型フィルムの断面を模式的に示す断面図である
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。煩雑さを避けるため、同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合がある。図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
<離型フィルム>
図1は、本実施形態の離型フィルムの断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の離型フィルム10は、離型層1、第1基材層3、及び第2基材層2の順で積層された多層構造であって、離型層1は離型フィルム10の離型面11を構成し、第2基材層2は離型フィルム10の離型面11とは反対側の面21を構成する。
なお、本実施形態においては、離型層1、第1基材層3、及び第2基材層2の順で積層された三層構造の離型フィルム10について説明するが、離型層1と第2基材層2がそれぞれ離型フィルム10の外面を構成するものであればよく、離型層1と第2基材層2との間には第1基材層3以外の層がさらに介在してもよい。
本実施形態の離型フィルム10は、熱機械分析(TMA)により、引張荷重を500mNとして、30℃から180℃まで2℃/分で昇温したときの180℃での寸法変化率が4~40%であることが好ましく、5~35%であることがより好ましく、7~30%であることがさらに好ましい。
当該寸法変化率を上記数値範囲内とすることにより、作業性を保持しつつ、離型フィルム10を金型に配置したときに金型に対する良好な追従性が得られ、離型フィルム10にシワやゆがみが生じることを抑制して、離型フィルム10のシワやゆがみが成形体に転写されることを抑制できる。その結果、外観が良好な成形体が得られるようになる。なかでも、離型フィルム10をキャビティ凹部の内面に真空密着させる際、金型の吸引口が比較的深い溝になっている場合、離型フィルム10もその深い溝に引き込まれることとなる。そのため、離型フィルム10には、局所的に十分に伸びることが求められるが、本実施形態の離型フィルム10は、これを実現できる。
また、本実施形態の離型フィルム10は、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したとき、180℃における貯蔵弾性率が10~500MPaであることが好ましく、70~400MPaであることがより好ましい。
離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率は、離型フィルム10が金型に配置され加熱圧縮される際の貯蔵弾性率を意図する。
離型フィルム10の180℃における貯蔵弾性率を上記数値範囲内とすることにより、真空密着時の金型追従性を高めつつ、良好な離型性とクッション性を保持できる。
また本実施形態の離型フィルム10は、ループスティフネス試験により測定された値が2mN/cm以上であることが好ましく、5mN/cm以上であることがより好ましく、10mN/cm以上であることがさらに好ましい。これにより、フィルムの作業性を改善できる。
一方、ループスティフネス試験により測定された値の上限値は特に限定されないが、離型フィルムとしての特性を保持する観点から、例えば、100mN/cm以下としてもよく、80mN/cm以下としてもよい。
本実施形態の離型フィルム10が備える上記の寸法変化率、貯蔵弾性率、ループスティフネスは、たとえば、離型層1、第1基材層3、第2基材層2の原材料の種類や成膜方法、離型フィルム10の表面粗さの制御、および離型フィルム10の製造方法などの公知の方法を、選択し、組み合わせ、従来法とは異なる手法とすることで実現することができる。
例えば、成膜方法として、フィルムを延伸すると、未延伸のものに比べて、硬くてコシがあるフィルムとすることができる。また、離型フィルム10の取り扱い性を良好にするため、離型フィルム10の外面を構成する離型層1による離型面11および第2基材層2による面21の表面状態を制御し、表面粗さ、タック性を所定の状態としつつ、第1基材層3にコシをもたせることが挙げられる。また、本実施形態の離型フィルム10の製造方法の一例として、ロールtoロール方式で、第2基材層2及び第1基材層3の帯状の積層体上に、離型層1を構成する第1樹脂組成物の塗工液を塗工してもよい。このとき、第2基材層2および第1基材層3の少なくとも一方が未延伸フィルムであると、ロールtoロール方式による張力が第2基材層2及び第1基材層3にかかりやすくなる。そのため、ロールtoロール方式のロールの搬送張力を100N以下とすることで、第2基材層2及び第1基材層3にかかる応力を低減でき、所望の離型フィルム10を得ることができる。
離型フィルム10の厚みは、5μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、15μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。
以下、本実施形態の離型フィルム10が備える各層の詳細について説明する。
[離型層1]
本実施形態において離型層1は、離型フィルム10の一方の面11を形成し、離型フィルム10を金型に配置した際に、封止樹脂(のちの成形体)に接する側の面を構成する樹脂層である。
離型層1の厚みは、0.01~50μmであることが好ましく、0.05~30μmであることがより好ましく、0.08~25μmであることがさらに好ましく、0.1~15μmであることがことさらに好ましい。
離型層1の厚みを上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10に必要な離型性を付与する事が出来る。一方、離型層1の厚みを上記上限値以下とすることで、離型フィルム10の剛性を制御し、型追従性と離型性のバランスを良好にできる。
また、離型フィルム10の離型層1側の面11の表面粗さRaは、離型性や成形体の良好な外観の観点から、好ましくは0.3~2μmであり、より好ましくは0.4~1.5μmであり、さらに好ましくは0.5~1.2μmである。
面11の表面粗さRaを上記下限値以上とすることにより、成形時の離型性と型追従性のバランスを良好にできる。一方、面11の表面粗さRaを上記上限値以下とすることにより、離型性と成形体の良好な外観とのバランスを良好にできる。
なお、離型フィルム10を用いて得られる成形体の外観に光沢を付与する観点からは、面11の表面粗さRaは、0.2μm未満であることが好ましい。
離型層1側の面11の表面粗さの制御方法は、離型フィルムの製造工程においてエンボス加工が施されたロールを用いてフィルムにエンボス模様を転写したり、離型層の材料に粒子を配合する等、公知の方法で調整することができる。
離型層1の表面粗さRaは、JIS B0601:2013に準拠して測定される。
本実施形態において離型層1は、樹脂を含む第1樹脂組成物から構成される。
離型層1は、樹脂として、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびアクリル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含むものである。なかでも、成形体の良好な外観を得つつも、離型フィルム10の作業性を良好にする観点から、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、およびアクリル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく、メラミン樹脂、またはアクリル樹脂を含むことがより好ましい。
(シリコーン樹脂)
シリコーン樹脂としては特に限定されない。例えば、公知または市販の各種シロキサン系ポリマーなど、2以上のシロキサン結合(-Si-O-)を含む化合物を用いることができる。
シリコーン樹脂としては、例えば、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の中から選ばれる1種または2種を含むことが好ましい。これにより、シリコーンの弾性、圧縮性などといったゴム様の特性が得られ、離型フィルムの十分な伸びと、伸びに対する形状回復性をより得やすくなる。
<<ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)>>
上記ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、直鎖構造を有するビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を含むことができる。
上記ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、例えば、分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ15モル%以下であるのが好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中におけるビニル基の量が最適化され、後述する各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
なお、本明細書中において、ビニル基含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基1つであると考える。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の重合度は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1000~10000程度、より好ましくは2000~5000程度の範囲内である。なお、重合度は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の比重は、特に限定されないが、0.9~1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴムの耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)としては、以下の式(1)で表される構造を有するものであるが好ましい。
Figure 2022182520000002
式(1)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは0~2000の整数、nは1000~10000の整数である。mは、好ましくは0~1000であり、nは、好ましくは2000~5000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)の具体的構造としては、例えば以下の式(1-1)で表されるものが挙げられる。
Figure 2022182520000003
式(1-1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくとも一方がビニル基である。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、ビニル基含有量が分子内に2個以上のビニル基を有し、かつ0.4モル%以下である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を含んでもよい。第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)のビニル基量は、0.1モル%以下でもよい。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)とビニル基含有量が0.5~15モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを含有してもよい。
シリコーンゴムの原料である生ゴムとして、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的に離型フィルムの引裂強度を高めるとともに、寸法安定性、転写性を制御しやすくなる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)として、例えば、上記式(1-1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、分子内に2個以上有し、かつ0.4モル%以下を含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5~15モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)は、ビニル基含有量が0.01~0.2モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)は、ビニル基含有量が、0.8~12モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)とを組み合わせて配合する場合、(A1-1)と(A1-2)の比率は特に限定されないが、例えば、重量比で(A1-1):(A1-2)が50:50~95:5であるのが好ましく、80:20~90:10であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)および(A1-2)は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)は、分岐構造を有するビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン(A2)を含んでもよい。
<<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)>>
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)とに分類され、これらのうちのいずれか一方または双方を含むことができる。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、離型層1の原材料に含まれる成分が有するビニル基とヒドロシリル化反応し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子量は特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の重量平均分子量は、例えばクロロホルムを展開溶媒としたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)としては、例えば、以下の式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2022182520000004
式(2)中、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは2~150整数、nは2~150の整数である。好ましくは、mは2~100の整数、nは2~100の整数である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si-H)を有し、ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)のビニル基の他、離型層1に原材料に含まれる成分のビニル基とヒドロシリル化反応し、これら成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の比重は、0.9~0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)としては、以下の平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3-aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1~3の範囲の整数、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1~10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1~3の範囲の整数、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3-aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)では1.8~2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)では0.8~1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の具体例としては、以下の式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2022182520000005
式(3)中、Rは炭素数1~8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1~8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「-O-Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。
ただし、離型層1において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)の合計のヒドリド基量が、0.5~5モルとなる量が好ましく、1~3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B1)および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B2)と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
(フッ素樹脂)
上記のフッ素系樹脂としては、具体的には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロアルキルビニルエーテルなどのモノマーの重合体、または、2種以上のモノマーの共重合体などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メラミン樹脂)
上記のメラミン樹脂は、たとえば、メラミン化合物とホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において重縮合させて得られる。具体的には、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂等のアルキル化メラミン樹脂、メチロール化メラミン樹脂、アルキルエーテル化メラミン等が挙げられる。
なかでもメチル化メラミンに由来する構成単位を含むメチル化メラミン樹脂であるのが好ましい。メチル化メラミン樹脂は、メトキシメチル基(-CHOCH)を少なくとも1つ有するものであり、平均重合度は1.1~10である。
(エポキシ樹脂)
上記のエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。
(フェノール樹脂)
上記のフェノール樹脂としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert-ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂等のフェノールアラルキル樹脂;ナフタレン骨格やアントラセン骨格のような縮合多環構造を有するフェノール樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂の具体例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、およびアクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、およびメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、およびアクリルアミド等のモノマーから構成される樹脂である。アクリル系樹脂の構成モノマーとしては、これらの例示のうち1種または2種以上のモノマーを含む。また、アクリル系樹脂の構成モノマーとしては、これらの例示以外のモノマーをさらに含んでもよい。また、これらのモノマーの誘導体であってもよい。
第1樹脂組成物は、上述した樹脂の他に、離型フィルム10の特性を損なわない範囲でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては限定されないが、粒子、カップリング剤、酸触媒、溶媒、帯電防止剤、レベリング剤、分散剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等の他、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリペンタジエン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、イソプレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、ポリオレフィンおよびこれらの誘導体等、シリコーン樹脂、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、アミン、カルボン酸無水物、長鎖アルキル基含有アルコールを適宜配合することができる。以下、代表成分について説明する。
(粒子)
離型層1は粒子を含んでもよい。これにより、離型層1の成膜方法によらずに、離型フィルム10の面11の表面粗さを簡便に制御できる。すなわち、離型層1が延伸フィルムである場合、離型フィルム10の離型層1側の面11にエンボス加工を施すことが困難になるが、離型層1が粒子を含むことで、離型層1が延伸フィルムであっても未延伸フィルムであっても、表面粗さを制御することができる。また、離型フィルム10の離型層1側の面11を粗化処理しようとした場合と比較して、粒子の粒径、含有量によって、簡便に、表面粗さを大きくすることができる。
離型層1に含まれる粒子としては、例えば、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の有機粒子および/または無機粒子を含むものが挙げられる。本実施形態の離型層1は、これら粒子を1種又は2種以上を含むことができる。
上記の無機粒子としては、たとえば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、およびガラスなどのケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、ベーマイト、およびシリカなどの酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、およびハイドロタルサイトなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および水酸化カルシウムなどの水酸化物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、および亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、およびホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩;窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、および窒化炭素などの窒化物;チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸バリウムなどのチタン酸塩などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機粒子は、離型層1への密着性を高める観点から、表面処理が施されていることがよい。表面処理としては、離型層1を構成する有機材料に応じて適宜選択されるが、例えば、離型層1にメラミン樹脂が含まれる場合は、アミン、エポキシ、およびイソシアネート等の官能基を有するカップリング剤を用いることが挙げられる。カップリング剤については、後述する。
離型層1に含まれる粒子の含有量は、離型層1全量に対して10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることがさらに好ましい。
粒子の含有量を上記下限値以上とすることにより、面11の表面粗さを高くすることができ、良好な離型性、取扱い性が得られるようになる。
一方、粒子の含有量を上記上限値以下とすることにより、成膜性を良好に保持できる。
なお、離型フィルム10を用いて得られる成形体への光沢を付与する場合は、粒子の含有量は、0質量%であってもよい。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤は、加水分解性基を有することができる。加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基が無機粒子の表面の水酸基と脱水縮合反応することで、無機粒子の表面改質を行うことができる。
また、シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、イソシアネート基、及びアミノ基等の反応性基を有するシランカップリング剤を含むことができる。これにより、シランカップリング剤により表面改質された無機粒子が、離型層1中の樹脂と反応できるようになり、その結果、無機粒子が離型層1から脱落することを抑制できる。
(酸触媒)
酸触媒は、特に限定されないが、無機酸や有機酸等が挙げられる。無機酸の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。有機酸の例としては、有機カルボン酸、有機スルホン酸、および有機リン酸等が挙げられる。
有機カルボン酸の例としては、シュウ酸、酢酸、ギ酸等が挙げられる。有機スルホン酸の例としては、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、およびノニルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。
有機リン酸の例としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、およびビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
また熱酸発生剤の例としては、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、およびホスホニウム塩等が挙げられる。
かかる酸触媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
(溶媒)
第1樹脂組成物は、離型層1の製造方法に応じて、例えば、溶媒を含んでもよい。溶媒を含む場合、第1樹脂組成物を溶媒に溶解し、塗工することで離型層1を作製することができる。
溶媒としては限定されず、具体的には、水、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、およびテトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、およびベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、および1,1,2-トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N-ジメチルホルムアミド、およびN,N-ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、およびジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類などを例示することができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[第2基材層2]
本実施形態において第2基材層2は、離型フィルム10の一方の面21を形成し、離型フィルム10を金型に配置した際に、金型に接する側の面を構成する樹脂層である。
第2基材層2の厚みは、10~100μmであることが好ましく、15~80mmであることがより好ましく、20~50μmであることがさらに好ましい。
第2基材層2の厚みを上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10の追従性を保持しつつ、剛性を高めて取扱い性を良好に保持できる。一方、第2基材層2の厚みを上記上限値以下とすることで、離型フィルム10の柔軟性を向上し、型追従性を得られやすくなる。
本実施形態において第2基材層2は、樹脂を含む第2樹脂組成物から構成される延伸または未延伸フィルムである。延伸または未延伸とするかは、離型層1および第1基材層3との組み合わせに応じで適宜設定することができるが、フィルムの剛性を向上させるときは延伸フィルム、成形性を向上させるときは未延伸フィルムとすることが好ましい。
また、延伸は逐次二軸延伸、同時二軸延伸、およびチューブラー延伸等の公知の方法を用いて製造することが出来る。
本実施形態において、第2基材層2は、樹脂として、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む。なかでも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
(ポリエステル樹脂)
上記のポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート樹脂(PHT)、およびポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリオレフィン樹脂)
上記のポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン、およびブテン等のα-オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂であり、公知のものを用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、および線上低密度ポリエチレン(mLLPE)などのポリエチレン(PE);ポリプロピレン(PP);ポリビニルアルコール(PVA);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA);エチレン-アクリル酸共重合体(EAA);エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA);エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA);エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA);アイオノマー樹脂;エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、環状オレフィン樹脂(COP)などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(ポリアミド樹脂)
上記のポリアミド樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等が挙げられる。脂肪族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6-6,6共重合体、ポリアミド11、およびポリアミド12などが挙げられる。芳香族ポリアミドの具体例としては、ポリアミド61、ポリアミド66/6T、ポリアミド6T/6、およびポリアミド12/6Tなどが挙げられる。
第2樹脂組成物は、上述した成分に、離型フィルム10の特性を損なわない範囲でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては限定されず、上記の第1樹脂組成物について挙げられたものと同様のものを用いることができる。
[第1基材層3]
本実施形態において第1基材層3は、多層構造の離型フィルム10において、離型層1と第2基材層2との間に位置する樹脂層である。
本実施形態において第1基材層3は、離型フィルム10に適度なコシを付与し、離型フィルム10の追従性を保持しつつ、取り扱い性を向上させることができる。
第1基材層3の厚みは、第2基材層2の厚みに応じて適宜調整されることが好ましく、第1基材層3および第2基材層2の厚みの合計が25~70μmであることが好ましく、30~50μmであることがより好ましい。
第1基材層3および第2基材層2の厚みの合計を上記下限値以上とすることにより、離型フィルム10の追従性を保持しつつ、剛性を高めて取扱い性を良好に保持できる。一方、第1基材層3および第2基材層2の厚みの合計を上記上限値以下とすることで、離型フィルム10の柔軟性を向上し、型追従性を得られやすくなる。
本実施形態において第1基材層3は、樹脂を含む第3樹脂組成物から構成される延伸または未延伸フィルムである。延伸または未延伸とするかは、離型層1および第2基材層2との組み合わせに応じで適宜設定することができるが、フィルムの剛性を向上させるときは延伸フィルム、成形性を向上させるときとすることが好ましい。
また、延伸は逐次二軸延伸、同時二軸延伸、およびチューブラー延伸等の公知の方法を用いて製造することが出来る。
第3樹脂組成物としては、上記の第2基材層2を構成する第2樹脂組成物において説明した成分と同じものを用いることができる。
また、第3樹脂組成物と第2樹脂組成物とは、同一であってもよく、また異なるものであってよい。
本実施形態において、第1基材層3は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む。これら、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂としては、上記の第2基材層2において説明したのと同じものを用いることができる。
なかでも、第1基材層3としてはポリアミド樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
<離型フィルムの製造方法>
次に、本実施形態の離型フィルム10の製造方法について説明する。
離型フィルム10、または離型層1、第1基材層3および第2基材層2の製造方法は、公知の方法を用いることができるが、例えば、共押出法、押出ラミネート法、ドライラミネート法、インフレーション法、インフレーション押出法、Tダイ押出法等の公知の方法を用いて製造することができる。
具体的には、例えば、(i)フィルム状の第2基材層2および第1基材層3を形成し、第2基材層2および第1基材層3をラミネート加工等により積層した後に、第1基材層3上に離型層1を構成する第1樹脂組成物の塗工液(ワニスまたはペースト)を塗工し、硬化して離型層1を形成、積層してもよく、(ii)フィルム状の離型層1、第2基材層2および第1基材層3を別々に形成したのち、第1基材層3を離型層1および第2基材層2で挟むように積層し、ラミネート加工等や接着層等を介して接合し、離型フィルム10としてもよい。上記(i)の製法とすることで、より簡便かつ安定的に、離型層1の厚みを小さくすることができる。上記(ii)の製法とすることで、より簡便かつ安定的に、離型層1の厚みを大きくすることができる。
離型層1、第2基材層2および第1基材層3を別々に形成する場合、いずれも押出成形法、カレンダー成形法、プレス成型法、または塗布法等の公知の方法を用い、フィルムを得ることができる。また、得られた各フィルムは、必要に応じて、延伸処理を施すことができる。
また、上記の塗布法を用いる場合は、例えば、離型層1を構成する第1樹脂組成物を任意の混練装置により、均一に混合して、塗工液(ワニスまたはペースト)を調製し、これを第1基材層3上に塗工することで第1基材層3と離型層1との積層構造を得ることができる。
混練する際の温度は、樹脂の種類に応じて適宜設定されるが、例えば、ロール設定温度として、10~70℃程度であるのが好ましく、25~30℃程度であるのがより好ましい。また、混練時間は、例えば、5分~1時間程度であるのが好ましく、10~40分程度であるのがより好ましい。混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
つぎに、得られた塗工液を、被塗工面に塗工して、塗工膜を形成する。
塗工方法は特に限定されず、各種公知の手段による。例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター等が挙げられる。なお、ロールtoロール方式で、離型層1、第2基材層2、第1基材層3のうちいずれかをロールに巻き取ったり送り出したりしながら、積層構造を形成する場合は、巻き取りや送り出しによる張力をできるだけ低減することが好ましい。また、塗工量は、硬化後の重量が好ましくは0.01~10g/m、より好ましくは0.05~5g/mである。
各塗工膜は、その後、硬化されることにより、所望のフィルムとすることができる。硬化条件としては、たとえば、90~170℃で30秒~5分で硬化する。
<離型フィルムの用途・使用方法>
本実施形態の離型フィルム10は、半導体装置の樹脂封止工程において、封止樹脂が供給される型と樹脂封止される半導体装置との間に配置される用途に供される。すなわち、いわゆる、モールド成形用離型フィルムであってもよく、他の用途であってもよい。他の用途としては、例えば、回路が露出したフレキシブルフィルム(以下「回路露出フィルム」とも称する)に接着剤を介してカバーレイフィルム(以下「CLフィルム」とも称する)を加熱プレスにより接着してフレキシブルプリント回路基板(以下「FPC」とも称する)を作製する際に、カバーフィルムと金型との間に配置される用途が挙げられる。また、例えば、CFRP等の熱硬化性樹脂のプリプレグを硬化させる時の離型フィルム、熱硬化性樹脂の成形用離型フィルム、立体形状を有する製品へ印刷等を施す加飾用転写離型フィルム等としても使用できる。
以下、離型フィルム10を用いた樹脂封止半導体装置の製造方法の一例について説明する。
樹脂封止半導体装置の製造方法は、以下の工程を含む。
(工程1)半導体装置の準備工程
(工程2)離型フィルムの設置工程
(工程3)封止樹脂の供給工程
(工程4)硬化工程
(工程5)成形体の脱型工程
以下各工程についての詳細を説明する。
(工程1)半導体装置の準備工程
半導体装置は、支持体に設けられた回路配線上の電極パッドと、半導体素子に設けられた電極と、を電気的に接続したものである。
半導体素子としては、発光素子や受光素子などの光素子が例示される。発光素子としては、LEDチップ(発光ダイオード)が例示され、受光素子としては、イメージセンサが例示される。
また、支持体は、円形状或いは多角形状等の任意の形状で形成された基板である。支持体としては、セラミックス基板、シリコーン基板、金属基板、エポキシ樹脂及びBTレジン等のリジット基板、又は、ポリイミド樹脂及びポリエチレン基板等のフレキシブル基板が例示される。
(工程2)離型フィルムの設置工程
離型フィルム10を、封止樹脂が供給されるためのキャビティ凹部を有する下金型に配置する。このとき離型フィルム10の離型面3が表側、すなわち後に供給される封止樹脂と接するように配置する。
また、離型フィルム10は、下金型のキャビティ凹部内およびキャビティ凹部を囲む平面部の表面に沿って配設される。このとき、キャビティ凹部を囲む平面部には、離型フィルム10が下金型のキャビティ凹部の形状に追従させるための吸引口が設けられている。かかる吸引口から、吸引装置などを用いて離型フィルム10と型との間の空間にある空気・水分・ガス等を吸引排出して、真空吸着する。さらに、離型フィルム10を型にしっかりと固定するために、封止樹脂注入領域の外周部、離型フィルム10全体の外周部、又は、型全体の外周部に対応する位置に配されたチャック機構によって、離型フィルム10を挟持してもよい。
型としては、公知の金型及び樹脂性金型が例示される。
(工程3)封止樹脂の供給工程
次に、型の凹部であって、離型フィルム10が配置された領域に封止樹脂を供給する。供給方法は公知の方法を用いることができる。また、封止樹脂は、公知の樹脂を用いることができるが、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン変形エポキシ系樹脂等の1種またはこれらの混合物、ならびにこれらの前駆体などが挙げられる。
本実施形態において、離型フィルム10をコンプレッションモールド成形法(圧縮成形法)に適用する場合、封止樹脂の形状は、タブレット状、顆粒状、封粒状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。
型内において、封止樹脂は所定温度に加熱され、流動状態となっている。
(工程4)硬化工程
次に、成形対象物が落下しないよう、当該成形対象物の外縁を保持するための突起状の固定具が設けられた上金型に、成形対象物となる半導体装置を取り付け、半導体装置の半導体素子が設けられた面を下金型に対向させ、封止樹脂が凹部に供給された型に対して、圧接する。このとき、上金型の固定具は、下金型の溝部に嵌合し、半導体素子が封止樹脂によって覆われる。続けて封止樹脂を、加熱加圧することによって、硬化し、成形体を得る。
なお、封止樹脂が硬化性樹脂の前駆体である場合は、加熱及び活性エネルギー線照射によって硬化してもよい。上記の活性エネルギー線としては、放射線、紫外線、可視光線及び電子線が例示される。
(工程5)成形体の脱型工程
その後、成形体を型から外す。成形体の脱型工程は、離型フィルム10と型との間に空気・水分・ガス等を供給することにより、離型フィルム10が型から剥がされると共に、成形体が脱型される。これと同時またはのちに、離型フィルム10は成形体から離型する。
支持体に設けられた半導体素子が1つの場合、この成形体が樹脂封止半導体装置となる。
これにより、外観が良好な半導体装置が得られる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(1)第1樹脂組成物の調製
以下に示す原料を用いて、第1樹脂組成物を調製した。
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A))
・低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1):合成スキーム1により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記の式(1-1)で表わされる構造でR(末端)のみがビニル基である構造)
・高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2):合成スキーム2により合成したビニル基含有ジメチルポリシロキサン(上記の式(1-1)で表わされる構造でRおよびRがビニル基である構造)
(オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B))
・モメンティブ社製:「TC-25D」
(無機充填材)
・無機充填材(C):シリカ微粒子(粒径7nm、比表面積300m/g)、日本アエロジル社製、「AEROSIL300」
(シランカップリング剤)
・シランカップリング剤(D-1):ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、Gelest社製、「HEXAMETHYLDISILAZANE(SIH6110.1)」
・シランカップリング剤(D-2):ジビニルテトラメチルジシラザン、Gelest社製、「1,3-DIVINYLTETRAMETHYLDISILAZANE(SID4612.0)」
(白金または白金化合物(E))
・モメンティブ社製:「TC-25A」
(ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)の合成)
[合成スキーム1:低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)の合成]
以下の式(5)にしたがって、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を合成した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、カリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、低ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-1)を得た(Mn=2.2×10、Mw=4.8×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.04モル%であった。
Figure 2022182520000006
[合成スキーム2:高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)の合成]
上記(A1-1)の合成工程において、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)に加えて2,4,6,8-テトラメチル2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン0.86g(2.5mmol)を用いたこと以外は、(A1-1)の合成工程と同様にすることで、以下の式(6)のように、高ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A1-2)を合成した。(Mn=2.3×10、Mw=5.0×10)。また、H-NMRスペクトル測定により算出したビニル基含有量は0.92モル%であった。
Figure 2022182520000007
次に、以下の表1に示す割合で、90%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)、シランカップリング剤および水(F)の混合物を予め混練し、その後、混合物に無機充填材を加えてさらに混練し、混練物(シリコーンゴムコンパウンド)を得た。
ここで、無機充填材添加後の混練は、カップリング反応のために窒素雰囲気下、60~90℃の条件下で1時間混練する第1ステップと、副生成物(アンモニア)の除去のために減圧雰囲気下、160~180℃の条件下で2時間混練する第2ステップとを経ることで行い、その後、冷却し、残り10%のビニル基含有オルガノポリシロキサン(A)を2回に分けて添加し、20分間混練した。
続いて、得られた混練物(シリコーンゴムコンパウンド)100重量部に、以下の表1に示す割合で、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)(TC-25D)および白金または白金化合物(E)(TC-25A)を加えて、ロールで混練し、各第1樹脂組成物を得た。
Figure 2022182520000008
(2)離型フィルムの作成
以下のようにして、実施例および比較例の各離型フィルムを作製した。
<実施例1>
表2に示すように、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚を第1基材層、ポリブチレンテレフタレートフィルム(CPBT:大倉工業社製、ESRM)25μm厚を第2基材層とし、ラミネート用接着剤(TM593(主剤)、CAT-10L(硬化剤)、東洋モートン製(固形分量25質量%、溶剤:酢酸エチル))を用いて第1基材層と第2基材等とを積層した。さらに、第1基材層上に調製したメラミン系離型剤(メラミン:荒川化学工業社製、アラコート、RL3021(主剤)/RA2000(硬化剤))(固形分量10質量%、溶剤:IPA)を、バーコーターを用いて塗工し、120℃、1分で硬化させ、第1基材層上に離型層を備える離型フィルムを得た。得られた離型フィルムの離型層の厚みは40μm、離型層の離型面の表面粗さRaは0.12μmであった。
<実施例2>
表2に示すように、離型層として上記メラミン系離型剤をアクリル系離型剤(アクリル:トクシキ社製、SQ100(主剤)/UAX-615(硬化剤))(固形分量10質量%、溶剤:酢酸エチル)に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。なお、乾燥条件は80℃3分/40℃3日とした。
<実施例3>
表2に示すように、離型層としてメラミン系離型剤を上記(2)で調製した第1樹脂組成物からなるペースト(固形分量25質量%、溶剤デカン)に変更して離型層を形成し、積層フィルムを得た。得られた積層フィルムをロールで巻き取る際にロールとマットフィルムの間に挟み込むことにより、離型層の表面に凹凸加工を行った以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。なお、離型層は180℃、120分で硬化させた。
<実施例4>
表2に示すように、マットフィルムの表面粗さを変更した以外は、実施例3と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例5>
表2に示すように、第2基材層をポリブチレンテレフタレートフィルム(CPBT:大倉工業社製、ESRM)35μm厚に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例6>
表2に示すように、ポリブチレンテレフタレートフィルム(CPBT:大倉工業社製、ESRM)25μm厚を第1基材層、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚を第2基材層に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例7>
表2に示すように、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET1:東洋紡フィルムソリューション社製、テフレックス(登録商標)フィルム FW2)13μm厚を第1基材層、ポリブチレンテレフタレートフィルム(CPBT:大倉工業社製、ESRM)25μm厚を第2基材層に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例8>
表2に示すように、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP:東レ社製、トレファン(登録商標)フィルム #40-2500)40μm厚を第1基材層、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚を第2基材層に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例9>
表2に示すように、二軸延伸ナイロンフィルム(ONy:ユニチカ社製、エンブレム(登録商標)フィルム ON-15)15μm厚を第1基材層、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚を第2基材層に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<実施例10>
表2に示すように、押出製膜で作製したナイロンフィルム(CNy:宇部興産社製、UBEナイロン(登録商標) 1022B)25μm厚を第1基材層、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚を第2基材層に変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<比較例1>
表2に示すように、基材層を、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)15μm厚の第1基材層のみに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<比較例2>
表2に示すように、基材層を、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(OPBT:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム、DE048)20μm厚の第1基材層のみに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
<比較例3>
表2に示すように、基材層を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET2:東洋紡社製、東洋紡エステル(登録商標)フィルム E5100)50μm厚の第1基材層のみに変更した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
(3)離型フィルムの物性の測定
得られた離型フィルムを用いて、以下の測定・評価を行った。結果を表2に示す。
(a)離型フィルムの離型層側の面の表面粗さRa
・JIS B0601:2013に準拠して測定した。
(b)ループスティフネス試験により測定された値
・ループスティフネステスター(東洋精機株式会社社製)を用いて、試験片サイズ:25mm×110mm(離型フィルムの製膜時の流れ方向)、ループ長さ:62mm、押し込み量:5mmの条件で経時的にスティフネス強度を測定し、その間における最大値を「ループスティフネス試験により測定された値」(mN/cm)とした。
(c)熱機械分析(TMA)により、引張荷重を500mNとして、30℃から180℃まで2℃/分で昇温したときの180℃での寸法変化率(%)
・TMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて測定した。
(d)昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したときの180℃での貯蔵弾性率(MPa)
・JIS K 7244:1998に準拠して測定した。
(4)成形体の作製
得られた離型フィルムを用いて樹脂封止を行い、成形体を得た。
まず、封止用の樹脂として、以下の顆粒状の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
(原料)
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000)
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学社製、YL6677)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(日本化薬社製、GPH-65)
・硬化剤2:ホルムアルデヒドで変性したトリフェニルメタン型フェノール樹脂(エア・ウォーター社製、HE910-20)
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学工業社製、TPP)
・無機充填材:溶融球状シリカ(電気化学工業社製、FB-950FC)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、MA-600)
・カップリング剤:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製、KBM-573)
・離型剤:カルナバワックス(日興ファイン社製、ニッコウカルナバ)
(手順)
上述したエポキシ樹脂1を4.5質量部、エポキシ樹脂2を4.5質量部、硬化剤1を2.8質量部、硬化剤2を2.8質量部、硬化促進剤を0.4質量部、無機充填材を84.2質量部、着色剤を0.2質量部、カップリング剤を0.4質量部、離型剤を0.2質量部準備した。次いで、各原料成分を常温でミキサーを用いて混合した後、45℃及び90℃の2本ロールで加熱しながらロール混練し、混練物を得た。次いで、前記混練物を冷却した後、これを粉砕し、顆粒状の熱硬化性樹脂組成物を得た。
次に、各離型フィルムを用いて、以下のような手順で熱硬化性樹脂組成物の硬化(樹脂封止)を行い、成形体を得た。
(手順)
まず、厚み0.4mm、幅65mm、長さ190mmの有機基板上に、厚み0.3mm、7.5mm角の半導体素子を5個銀ペーストにて接着し、径18μm、長さ7mmの金線ワイヤをピッチ間隔60μmでボンディングした。次いで、圧縮成形機(TOWA(株)製、PMC1040)の金型温度を予め175℃とした。次いで、有機基板を、半導体素子を搭載した面が下金型へ対向するよう、上金型に固定した。次いで、下金型上に各実施例及び比較例で作成した離型フィルムの第2基材層側が下金型側となるように配置した後、金型内部空間を真空引きすることにより、該離型フィルムを下金型に追従させた。その後、当該離型フィルム上に用意した顆粒状の熱硬化性樹脂組成物(封止用樹脂組成物)を均一に供給した。次いで、封止用樹脂組成物を供給した直後に、有機基板と離型フィルムの間隔が4mmとなるところまで金型を型締めすると同時に下金型と上金型により形成されるキャビティ内を4秒で減圧度0.8Torrに減圧した後、減圧を継続しながら12秒で金型を完全に型締めして、成形圧力3.9MPa、硬化時間90秒の条件で封止成形を行い、成形体(硬化物)を得た。
(5)離型フィルムの評価
各離型フィルムについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
[型追従性]
上記手順において、離型フィルムを真空引きによって金型に追従させたときの金型と離型フィルムとの間の空気だまりの程度について以下の基準で評価した。
◎;空気溜まりが不発生
〇;微小な空気溜まりはあるが、実用上問題なし
△;微小な空気溜まりがあり、フィルム吸着の真空度が低下していた
×;空気溜まりが大きく追従不良が発生(又は評価不能)
[寸法安定性]
上記手順において、成形後の離型フィルムから硬化物を離型した後の硬化物の外観状態(シワなど)について以下の基準で評価した。
〇;シワ、変形が無く問題無し
△;若干のシワがあるが、実用上問題なし
×;大きなシワ、成形不良が発生していた
[離型性]
上記手順において、成形後の離型フィルムから硬化物を離型した時の離型挙動、及び硬化物の状態(ズレ、撓みなど)から以下の基準で評価した。
〇;離型性、成形体共に問題無し
△;離型時に成形体のズレや撓みがあるが、実用上問題なし
×;離型不能、又は成形体に大きなズレや撓みが発生していた
[作業性]
上記手順において、離型フィルムを成形機に配置した時の当該フィルムの状態について以下の基準で評価した。
〇;取り扱い時にフィルムのシワや折れが無く問題無し
△;取り扱い時にフィルムの撓みなどが生じるが、実用上問題なし
×;取り扱い時にフィルムのシワや折れによる変形が発生していた
Figure 2022182520000009
1 離型層
2 第2基材層
3 第1基材層
10 離型フィルム
11 面
21 面

Claims (8)

  1. 離型層、第1基材層、及び第2基材層の順で積層された多層構造の離型フィルムであって、
    前記離型層は当該離型フィルムの離型面を構成し、前記第2基材層は当該離型フィルムの前記離型面とは反対側の面を構成するものであって、
    前記離型層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびアクリル樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含み、
    前記第1基材層は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなり、
    前記第2基材層は、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびポリアミド樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む延伸または未延伸フィルムからなる、離型フィルム。
  2. 請求項1に記載の離型フィルムであって、
    当該離型フィルムについて、ループスティフネス試験により測定された値が2mN/cm以上である、離型フィルム。
  3. 請求項1または2に記載の離型フィルムであって、
    当該離型フィルムについて、熱機械分析(TMA)により、引張荷重を500mNとして、30℃から180℃まで2℃/分で昇温したときの180℃での寸法変化率が4~40%である、離型フィルム。
  4. 請求項1乃至3いずれか一項に記載の離型フィルムであって、
    当該離型フィルムについて、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件で動的粘弾性(DMA)測定したとき、180℃における貯蔵弾性率が10~500MPaである、離型フィルム。
  5. 請求項1乃至4いずれか一項に記載の離型フィルムであって、
    当該離型フィルムの前記離型層側の面の表面粗さRaが0.3~2μmである、離型フィルム。
  6. 請求項1乃至4いずれか一項に記載の離型フィルムであって、
    当該離型フィルムの前記離型層側の面の表面粗さRaが0.2μm未満である、離型フィルム。
  7. 請求項1乃至6いずれか一項に記載の離型フィルムであって、
    前記第1基材層および前記第2基材層の厚みの合計が25~70μmである、離型フィルム。
  8. 前記離型フィルムは、半導体装置を樹脂封止する樹脂封止半導体装置の封止樹脂成形プロセスにおいて、型と前記半導体装置との間に配する用途に供される、請求項1乃至7いずれか一項に記載の離型フィルム。
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