JP2022181250A - 電力系統運用計画生成装置および電力系統運用計画生成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】短い計算時間、予測外れへのロバスト性および時間帯を跨ぐ制約の考慮の3点を満たす運用計画を求めることができる、電力系統運用計画生成装置および電力系統運用計画生成技術を提供する。【解決手段】電力系統における不確実性パラメータを考慮に入れ、決定すべき運用計画変数とリアルタイムに決定できる当日制御変数を定め、電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成装置10であって、電力系統における運用計画変数の情報と当日制御変数の情報を入手して、電力系統の過酷状態を想定した最過酷シナリオのときの目的関数値に対する運用計画案を作成する運用計画生成部20と、不確実性パラメータの変動情報と運用計画案と当日制御変数の目的関数値とから最過酷シナリオとそのときの目的関数値を求める最過酷シナリオ生成部30と、電力系統の系統情報と需要情報と最過酷シナリオとを用いて運用計画を決定する当日制御量生成部40を備える。【選択図】図1
Description
本発明は、電力系統運用計画生成装置および電力系統運用計画生成方法に関する。
電力系統では,温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー電源の導入が進んでいる。代表的な再生可能エネルギー電源である太陽光発電や風力発電は気象条件よって出力が変動する。加えて、電気自動車の普及を背景に、急速充電ステーションの普及や大容量化が進んでおり、この電力需要が電力系統に影響を与える可能性がある。こうした再生可能エネルギー電源の出力や電気自動車の充電需要に代表される、不確実性を有するパラメータ(以下、不確実パラメータという)を考慮に入れた系統運用が求められている。
一方、系統運用には、前日等の事前の段階で決定すべき変数(以下、運用計画変数という)とリアルタイムに決定できる変数(以下、当日制御変数という)の2種類の変数が存在する。例えば、配電系統における運用計画変数としては、タップ調整機器(例、LRT:Load Ratio control Transfomer、SVR:Step Voltage Regulator)のタップ位置、自家用発電機や蓄電池、電気自動車などの需要家所有の分散エネルギー源(DER:Destributed Energy Resource)の調整余力の予約量などが挙げられる。また、当日制御変数としては、SVC(:Static Var Compensator)や、系統運用事業者が所有する系統用蓄電池などの分散エネルギー源DER、予約した需要家所有の分散エネルギー源DERの調整余力の発動指令量などが挙げられる。
運用計画変数の決定方法としてまず考えられるのは、不確実パラメータの予測が当たると仮定し、系統運用KPI(例:電圧許容範囲や線路容量の違反量、対応コスト)が最良となる値の組み合わせを選ぶ方法である。この方法では、予測が外れた場合は考慮されておらず、不確実パラメータの変動パターンによっては系統運用KPIの極端な悪化(例:電圧許容範囲や線路容量などの制約違反の発生、追加対応による極端なコスト増など)が発生する可能性がある。
そのため、不確実パラメータの予測が変動した場合も、系統運用KPI(例:電圧許容範囲や線路容量の違反量、対応コスト)が極端に悪化しない(以下、ロバストな、と表記する)ように運用計画変数を決定する必要がある。
ロバストな系統運用を目的とした運用計画変数の決定技術の一つとして、特許文献1には、「運用計画策定装置、運用計画策定方法および運用計画策定プログラム」が記されている。特許文献1では、発電機の起動停止計画を解く最適化問題の中で、再生可能エネルギー電源の出力の不確実性を取り扱うために、この不確実性を複数シナリオで表現する手法が用いられている。
一般に、シナリオ数を増やすと最適化問題の計算時間が増加する。このため、例えば、計算時間に制限がある場合は、十分な数のシナリオを用いることができず、得られる解の信頼性が低下するという課題がある。
上記課題解決のため、特許文献1では、少ないシナリオ数で不確実性を表現することを目的に、最適化問題を時間帯ごとに独立なものへと単純化できるという仮定を置いている。しかし、配電系統で用いられるタップ調整機器は、日当たりのタップ位置調整回数上限などの、時間帯を跨ぐ制約が存在する。そのため、時間帯ごとに独立なものへと単純化することができない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、短い計算時間、予測外れへのロバスト性、および時間帯を跨ぐ制約の考慮の3点を満たす運用計画を求めることができる、電力系統運用計画生成装置および電力系統運用計画生成技術を提供することを目的とする。
以上のことから本発明においては、「電力系統における不確実性パラメータを考慮に入れ、事前の段階で決定すべき運用計画変数とリアルタイムに決定できる当日制御変数を定め、電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成装置であって、電力系統における運用計画変数の情報と当日制御変数の情報を入手して、電力系統の過酷状態を想定した最過酷シナリオのときの目的関数値に対する運用計画案を作成する運用計画生成部と、不確実性パラメータの変動情報と運用計画案と当日制御変数の目的関数値とから最過酷シナリオとそのときの目的関数値を求める最過酷シナリオ生成部と、電力系統の系統情報と需要情報と最過酷シナリオとを用いて運用計画を決定する当日制御量生成部を備えることを特徴とする電力系統運用計画生成装置」としたものである。
また本発明においては、「電力系統における不確実性パラメータを考慮に入れ、事前の段階で決定すべき運用計画変数とリアルタイムに決定できる当日制御変数を定め、電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成方法であって、電力系統における運用計画変数の情報と当日制御変数の情報を入手して、電力系統の過酷状態を想定した最過酷シナリオのときの目的関数値に対する運用計画案を作成する電力系統運用計画問題について、電力系統運用計画問題を主問題である運用計画決定問題と従属問題にわけ、さらに従属問題を主問題である最過酷シナリオ決定問題と従属問題である当日制御量決定問題に分け、これにより3重構造の電力系統運用計画問題の解として電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成方法」としたものである。
本発明によれば、短い計算時間、予測外れへのロバスト性、および時間帯を跨ぐ制約の考慮の3点を満たす運用計画を求めることができるという効果を奏する。
以下に、本発明に係る電力系統運用計画生成装置および電力系統運用計画生成技術の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。そして、各実施例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
以下の説明では、実施例1において電力系統運用計画生成装置について、実施例2において電力系統運用計画生成の考え方について、実施例3において電力系統運用計画生成方法について説明する。
本発明の実施例1では、電力系統運用計画生成装置について説明するが、この適用事例をタップ調節機器と需要家所有DERを含む配電系統を対象として、不確実パラメータの変動に対しロバストな運用計画を策定する電力系統運用計画生成装置について述べる。
まず電力系統運用計画生成装置の構成について説明する。図1は、計算機装置を用いて実現される電力系統運用計画生成装置の演算部における処理内容を、その代表的な処理機能部として表記した図である。
図1に示すように、ロバスト運用計画生成装置10は、運用計画生成部20と最過酷シナリオ生成部30と当日制御量生成部40を有している。ただし運用計画策定装置10は、図1に示した機能部以外にも、例えば、各種情報を表示する表示部、入力データを入力する入力部、他の端末と通信を行う通信インタフェース部などを有してもよい。
ロバスト運用計画生成装置10は、その処理遂行のために、外部からの入力として、タップ調整機器情報D1と需要家所有DER情報D2と不確実パラメータ変動情報D3と需要情報D4系統情報D5を得る。
ロバスト運用計画生成装置10内の運用計画生成部20では、外部からの入力データとして、タップ調整機器情報D1と需要家所有DER情報D2を入手し、また最過酷シナリオ生成部30で求めた目的関数値ηpおよび感度情報b1を入力して、これらの入力データを基に運用計画決定問題を生成し、求解した運用計画案xpを最過酷シナリオ生成部30に出力する。
この場合に使用する外部入力のうちタップ調整機器情報D1は、例えば、各タップ調整機器の機器種別(例えば、LRT、SVRなど)、設置バスID、タップ段数、1段毎のタップ幅、タップ基準位置、制御指令への応答速度、日当たりのタップ調整制限回数、設備コスト、設置コストなどを含む。
また同じ外部入力のうち需要家所有DER情報D2は、例えば、機器種別(例えば、自家発、電気自動車など)、設置バスID、設備容量、制御指令への応答速度などがある。また、上記需要家所有DER情報110は、個別に分散エネルギー源DER毎に入力しても、複数の分散エネルギー源DERの合算値を入力してもよい。
またここで目的関数値ηは、最過酷シナリオ生成部30において最過酷シナリオ決定問題を解いたときの目的関数、即ち後述する(14)式の値を表す。また感度情報b1は、運用計画案xpをわずかに変化させたときの目的関数値ηpの変化量である。
運用計画案xpは、運用計画決定問題の解として求まる。この例を、図2を用いて説明する。図2の各行は各時間ステップ221を表し、各列はタップ調節機器のID222および需要家所有DERのID223を表す。各タップ調節機器のID222については、各時間ステップ221におけるタップ位置224を格納する。また、各需要家所有DERのID223については、各時間ステップの調整余力の予約量225を格納する。調整余力の予約量225は需要増減双方の値を取り得るため、図2で示すように負の値も取り得る。
図1に戻り、電力系統運用計画生成装置10内の最過酷シナリオ生成部30では、外部からの入力データとして不確実パラメータ変動情報D3を入力し、また運用計画生成部20で求めた運用計画案xと、当日制御量生成部40で求めた目的関数値φpKPIと感度情報b2を入力して、これら入力データを基に最過酷シナリオ決定問題を生成し、求解した最過酷シナリオupを当日制御量生成部40に出力し、目的関数値φpKPIと感度情報b2を最過酷シナリオ生成部30に出力する。
この場合に使用する外部入力である不確実パラメータ変動情報D3の例を、図3のグラフに示している。グラフでは、不確実パラメータの例として太陽光発電出力を考えている。横軸は1日、24時間の時刻を、縦軸は太陽光発電出力を表す。グレーの範囲で表す部分が太陽光発電出力の変動情報121である。太陽光発電出力はこのグレーの範囲内で変動する可能性があるとする。上記変動情報121の範囲は、実績値に基づき決定しても良いし、気象予報などに基づき決定してもよい。
目的関数値φpKPIは、最過酷シナリオ決定問題を解いたときの目的関数、即ち後述する(15)式の値を表す。感度情報b2は、最過酷シナリオuをわずかに変化させたときの目的関数値φpKPIの変化量である。
最過酷シナリオupの例を、図4のグラフに示す。グラフでは、不確実パラメータの例として太陽光発電出力を考えている。横軸は1日、24時間の時刻を、縦軸は太陽光発電出力を表す。グレーの範囲で表す部分が太陽光発電出力の変動情報121である。太線241が、最過酷シナリオupを表す。最過酷シナリオupは、最過酷シナリオ決定問題を解くことで決定される。また、太線241はいずれの時間ステップに置いても、グレーの範囲121に入る。
再度図1に戻り、電力系統運用計画生成装置10内の当日制御量生成部40では、外部からの入力データとして、需要家所有DER情報D2と需要情報D4と系統情報D5を入手し、また最過酷シナリオ生成部30で求めた最過酷シナリオupを入力し、これらの入力データを基に当日制御量決定問題を生成し、求解した目的関数値φpKPIと感度情報b2を、最過酷シナリオ生成部30に出力する。
また、運用計画生成部20と最過酷シナリオ生成部30と当日制御量生成部40の処理における繰り返し処理の結果得られた最終的な解として、運用計画案xpと目的関数値ηp(=系統運用KPIの理論最悪値)を電力系統運用計画生成装置10から出力する。
実施例2では、電力系統運用計画生成の考え方について、図1に示した装置により、ロバストな運用計画が生成できることについて、数式を用いて詳細に説明する。なお、本発明に係る運用計画手法の特徴を明確にするには、通常の運用計画手法と対比して述べるのがよいことから、まず通常の運用計画手法について説明する。
通常の運用計画手法の特徴は、不確実性を表現するシナリオ群を予め利用者が入力し、系統運用KPIの最良化を目的関数とする数理計画問題を解くことで、運用計画を求める点である。より具体的に数式事例で述べると、上記数理計画問題の例は、以下の(1)(2)式に表すものである。
(1)(2)式において、小文字のsはシナリオ、大文字のSは入力されたシナリオ群の集合を表している。また小文字のtは時刻、大文字のTは計画期間に含まれる時刻tの集合、φKPIは系統運用KPIを表している。minの下付き文字は決定変数を表し、xは運用計画変数のベクトル(例:タップ位置制御量、需要家所有DERの調整余力予約量)、yは当日制御変数のベクトル(例:予約した調整余力の発動指令量)をそれぞれ表す。なお、これらはベクトルであり、(2)式は(1)式を求めるうえでの系統制約条件を示す制約式である。
ここで運用計画変数ベクトルxは、不確実パラメータが予測値から変動するリスクが残る段階で決定する必要があるため、予め利用者が入力した全てのシナリオSに対し同一の運用計画xが決定される。これに対し、当日制御変数ベクトルyは、不確実パラメータが明らかになった後(例えば、実際の太陽光発電出力の計測後)にリアルタイムで調整可能な変数であるため、シナリオs毎に異なる当日制御yが決定される。通常の運用計画手法では、上記の決定変数xおよび決定変数yを、単一の数理計画問題の中で、同時に最適化する。
また、(1)式に示す数理計画問題の制約式として、(2)式の系統制約を設定する。系統制約としては、各バスのエネルギーバランス式、各バスの電圧の計算式、各線路の配電ロス計算式、タップ調節機器の日当たりのタップ位置調整回数上限、需要家DERの機器の調整可能量上下限などが挙げられる。なお、(2)式のA1,A2,Cは系統制約を表す行列またはベクトルであり、(2)式の制約式は、系統制約を行列表記したものである。
この数理計画問題は、混合整数計画(以下、MILP)、または、混合整数二次錐計画(以下、MISOCP)として、CPLEXやGurobi等の数理計画ソルバーで解くことができる。求解結果として、入力したシナリオsに対し、計画期間Tにおける系統運用KPIを最小(=最良)にする運用計画xが得られる。この運用計画xは、入力シナリオsに対しては、電圧許容範囲などの違反による系統運用KPIの極端な悪化が発生しないと期待できる。
しかし、入力したシナリオ群Sに系統運用KPIを最悪化させるシナリオu(以下、最過酷シナリオ)が含まれていないとき、場合によっては系統運用KPIの極端な悪化等が発生する可能性がある。そのため、いかなる変動パターンに対してもロバストな運用計画xを得るには、入力するシナリオ群Sに最過酷シナリオuを含める必要がある。しかし、最過酷シナリオuの適切な選定を事前に行うことは、以下2つの理由から難しい。
第1の理由は、最過酷シナリオuの候補は膨大に存在することにある。特に、再生可能エネルギー電源や電気自動車の普及により不確実パラメータ数が増大した場合、候補数は爆発的に増加する。
第2の理由は、どれが最過酷シナリオuとなるかは、運用計画xにより変動するため、運用計画xを決定する前段階で、最過酷シナリオuを適切に選定することは難しいことである。
然るに、その一方で、考え得る最過酷シナリオuの候補を全て入力する方法も考え得るが、入力シナリオ数が膨大になるため、計算時間が増加し、所定の制限時間内に計算が終了しない可能性がある。
通常の運用計画手法における上記問題点のゆえに、本発明においては、以下の運用計画手法を提案する。提案する運用計画手法(以下、提案方式)は、通常の運用計画手法に対し、以下2点で優位性がある。
第1点は、通常の運用計画手法では、不確実性を表現するシナリオ群を準備する必要があるのに対し、提案方式では、不確実パラメータの変動範囲を入力するだけで良く、シナリオ群の準備が不要であることである。
第1点は、通常の運用計画手法では、入力したシナリオ群に対するロバスト性しか担保できないが、提案方式では、変動範囲中のいかなる変動パターンに対してもロバスト性を担保できることである。
本発明に係る提案方式で解く数理計画問題(以下、ロバスト運用計画問題)を以下の(3)(4)式に示す。なお、すでに説明済みの事項については説明を割愛することがある。
(3)式において、uは不確実パラメータのベクトルであり、x,yと同様に、電力系統運用計画問題の決定変数である。目的関数および制約式としては、通常の運用計画手法の時と同様に、系統運用KPIであるφKPIおよび系統制約として(4)式を設定する。
この電力系統運用計画問題の特徴は、目的関数がminおよびmaxの3層構造となっている点である。(3)式の外側から順に、系統運用KPIを最小化(=最良化)する運用計画xを決定する部分、系統運用KPIを最大化(=最悪化)する不確実パラメータuの値(=最過酷シナリオ)を決定する部分、系統運用KPIを最小化する当日制御yを決定する部分である。
これを解くことで、変動範囲内における変動パターンの中で、最も系統運用KPIが悪化する最過酷シナリオuが決定される。同時に、最過酷シナリオuにおける系統運用KPIを最良化する運用計画xおよび当日制御yを決定される。また、この時の系統運用KPIの値が理論最悪値となり、それ以外のいかなる変動パターンが発生しても、この理論最悪値より悪化することがない。従って、本電力系統運用計画問題を解くことで、いかなる変動パターンに対してもロバストな運用計画xを得ることができる。また、最過酷シナリオuは電力系統運用計画問題を解く中で生成されるため、その候補となるシナリオsを事前に準備する必要がない。
また、目的関数である系統運用KPI(φKPI)は例として、以下の(5)式で定義される。
この(5)式において、φcost、φloss、φpenaltyはそれぞれ、運用コスト、送電ロス、および制約違反ペナルティを表す。Wc,Wl,Wpは、それぞれ運用コスト、送電ロスおよび制約違反ペナルティの重み係数を表す。重み係数の比率は、一般に(6)式のように設定する。なお、これら以外の項を系統運用KPIに追加しても良い。
また送電ロスφlossは例として、以下の(7)式で表される。ただし、(7)式において小文字の時刻tと、計画期間に含まれる時刻tの集合である大文字の時刻Tは、t∈Tの関係にあるものとする。
この(7)式において、jはバス番号、NtapはSVRなどのタップ調整機器があるバス番号の集合、Nderは需要家所有DERがあるバス番号の集合を表す。Cj
tapはタップ調整機器におけるタップ調節1回あたりのコストを表す。なお、Cj
tapの値は、例えばタップ調整機器価格と取り付け費用の和を、機器寿命を迎えるタップ調整回数で割ることで求める。xj,t
tapはタップ調整機器におけるタップ調整回数を表す。またcj,t
der_r、cj,t
der_cは需要家所有DERの調整余力予約のインセンティブ単価、および当日制御のインセンティブ単価を表す。xj,t
der、yj,t
derは、需要家所有DERの調整余力の予約量および当日の発動指令量を表す。
以上により、(7)式の右辺第1項はタップ調整機器の調整コスト、第2項は調整余力予約に対するインセンティブコスト、第3項は実際の制御指令に対するインセンティブコストに相当する。なお、xj,t
tap、yj,t
derは、上記運用計画変数のベクトルxに、xj,t
derは当日制御変数のベクトルyに含まれる。
また(5)式の送電ロスφlossは、例として、以下の(8)式で表される。ただし、(8)式において小文字の時刻tと、計画期間に含まれる時刻tの集合である大文字の時刻Tは、t∈Tの関係にあるものとする。
なお(8)式においてBは線路の集合を表す。rijはバス(母線)iからバスjへの線路における抵抗値、lij,s,tは、バスiからバスjへの線路における、シナリオs、時刻tでの電流量の絶対値を表す。
また(5)式の制約違反ペナルティφpenaltyは例として、以下の(9)式で表される。ただし、(9)式において小文字の時刻tと、計画期間に含まれる時刻tの集合である大文字の時刻Tは、t∈Tの関係にあるものとする。
なお(9)式においてζij,tはバスiからバスjに繋がる線路における線路制約の超過量を表し、ηj,tはバスjにおける電圧の許容範囲からの逸脱量を表す。Bはバスの集合を表す。
図1に示す電力系統運用計画生成装置10内の運用計画生成部20では、上記した(1)式から(9)式に示される電力系統運用計画問題を解くことになる。然るに、上述のように電力系統運用計画問題は3層構造から成ため、CPLEXやGurobi等の数理計画ソルバーは多重構造の数理計画問題をサポートしておらず、そのままでは解けない。
そこで、以下では代表的な分解手法であるベンダーズ分解を用いた解き方の例を説明する。ベンダーズ分解では,数理計画問題を主問題と従属問題の2つに分解する。まず主問題を解き、その解を制約として従属問題を解く。従属問題は、ベンダーズカットと呼ばれる制約式を主問題に渡す。主問題のこの制約式を追加し,解の探索領域を制限した上で解く。以上を繰り返すことで,全体最適解を求める。
電力系統運用計画問題は3層構造から成るため、このベンダーズ分解を2度適用する。まず、最も外側のminの部分を主問題(以下、運用計画決定問題)、それ以外の部分を従属問題に分ける。この従属問題はmaxとminの2重構造となるため、ベンダーズ分解を再度適用し、再度主問題、従属問題(以下、それぞれ最過酷シナリオ決定問題、当日制御量決定問題)に分ける。これにより3重構造の電力系統運用計画問題を、以下の3つの数理計画問題に分解することができる。
これらは、運用計画決定問題と、最過酷シナリオ決定問題と、当日制御量決定問題であり、運用計画決定問題を図1の運用計画生成部20で処理し、最過酷シナリオ決定問題を最過酷シナリオ生成部30で処理し、当日制御量決定問題を当日制御量生成部40で処理する。
またこの関係において、運用計画決定問題は主問題で、その従属問題は最過酷シナリオ決定問題に当たる。同時に、最過酷シナリオ決定問題は当日制御量決定問題に対する主問題であり、当日制御量決定問題はその従属問題に当たる。
運用計画生成部20で処理する上記運用計画決定問題は、以下の(10)(11)式で表される。
これらの式において、運用計画決定問題の目的関数のθは、最過酷シナリオ決定問題の目的関数値ηpの推定値(=系統運用KPIの推定値)を表す。決定変数はθおよびxである。これを解くことで得られる運用計画の案xpは、系統運用KPIの推定値を最小にするように決定される。なお、記号p付きの変数は、計算結果として得られる定数値を示す。
(11)式の制約条件にはベンダーズカットを設定し、繰り返し計算毎に追加する。b1は、運用計画案xpをわずかに変化させたときのηpの変化量として定義される感度情報であり、shadow priceとも呼ばれる。感度情報は従属問題の双対問題の解として求められる。以上で構成されるベンダーズカットの式は、xに対するηの線形近似式と見做せる。これを順次追加することにより、θの推定精度を向上し、運用計画案xpを更新する。
最過酷シナリオ生成部30で処理する上記最過酷シナリオ決定問題は、以下の式(9)で表される。
これらの式において、最過酷シナリオ決定問題の目的関数のθは、最過酷シナリオ決定問題の目的関数値φpKPI(=系統運用KPI)の推定値を表す。決定変数はθおよびxである。これを解くことで得られる運用計画の案xpは、系統運用KPIの推定値を最小にするように決定される。(13)式の制約条件にはベンダーズカットを設定し、繰り返し計算毎に追加する。b2は、シナリオupをわずかに変化させたときのφKPIの変化量として定義される感度情報である。これを順次追加することにより、の推定精度を向上し、最過酷シナリオupを更新する。
当日制御量生成部40で処理される当日制御量決定問題は、以下の(14)(15)式で表される。決定変数は当日制御yであり、これを解くことで系統運用KPIの推定値を最小にするように決定される。
これらの式において、当日制御量決定問題の目的関数のφKPIは、系統運用KPIを表す。(15)式の制約条件には系統制約を設定する。従って、当日制御量決定問題では、系統制約に基づき系統運用KPIを直接計算する。
分解した3つの数理計画問題は、上記のように繰り返し計算により交互に解く。繰り返し計算の終了判定条件を、以下の(16)式で表す。
この式において、εは許容誤差率であり、例えば、0.0001などと設定する。UBおよびLBはそれぞれ目的関数値の上限および下限を表す。運用計画決定問題と最過酷シナリオ決定問題間の繰り返し計算の場合、UBおよびLBは以下の(17)式で計算される。
この式において、θpは運用計画決定問題により決定されるθの値である。すなわち、ηの推定値であるθが、真値であるηと十分に近い値になるまで、繰り返し計算を行う、と解釈できる。また最過酷シナリオ決定問題と当日制御計画間の繰り返し計算の場合、UBおよびLBは以下の(18)式で計算される。
この式において、ηpは不確実パラメータ決定問題により決定されるηの値である。これについても、φKPIの推定値であるηが、真値であるφKPIと十分に近い値になるまで、繰り返し計算を行う、と解釈できる。
実施例3では、電力系統運用計画生成方法について図5の処理フローを用いて説明する。
図5のフローにおいて、処理が開始されると処理ステップS2では、運用計画生成部20の機能として運用計画決定問題である(10)(11)式の解を求める。但し、ここでは運用計画決定問題を主問題とし、他の部分を従属問題とするために、処理ステップS1においてベンダーズカットの生成、追加を(10)(11)式により実施し、これを条件として処理ステップS2が実施される。なお、この時に使用する運用計画変数の入力(タップ調整機器入力100,需要家所有DER情報110)や最過酷シナリオの条件(目的関数値η、感度情報b1)などは、図1に示すとおりである。
次に、最過酷シナリオ生成部30の処理として、処理ステップS4では、最過酷シナリオ決定問題である(12)(13)式の解を求める。但し、ここでは最過酷シナリオ決定問題を主問題とし、当日制御量決定問題を従属問題とするために、処理ステップS3においてベンダーズカットの生成、追加を(12)(13)式により実施し、これを条件として処理ステップS4が実施される。なお、この時に使用する不確実パラメータ変動情報(再生可能エネルギー電源の出力や電気自動車の充電需要)や当日制御量の条件(目的関数値η、感度情報b2)や運用計画案xpなどは、図1に示すとおりである。
次に、当日制御量生成部40の処理として、処理ステップS5では、当日制御量決定問題である(14)(15)式の解を求める。但し処理ステップS5の当日制御量決定処理は、処理ステップS6における最過酷シナリオ決定問題が収束することの(16)(18)式を用いた計算終了判定、および処理ステップS7における運用計画決定問題が収束することの(16)(17)式を用いた計算終了判定が成立するまで繰り返し実行される。なお、この時に使用する需要情報及び系統情報などは、図1に示すとおりである。
図6は、本発明と従来方式を比較した時の効果の相違を示す図である。図1の電力系統運用計画生成装置の最終出力はモニタ画面などに表示出力されることになるが、その場合のイメージ図として表記している。
この表記によれば、従来の場合には、あらかじめ想定した1つのシナリオの時の系統運用KPIが点情報として求められることになるが、本発明の場合には最過酷シナリオを内部で生成し、それに対する系統運用KPI値270(理論最悪値)が計算されている。そのため、考えうるどんなシナリオが発生しても系統運用KPI値は、範囲内に収まるという形式で出力される。つまり、従来に比べると点ではなく、範囲として求められることになる。
10:電力系統運用計画生成装置
20:運用計画生成部
30:最過酷シナリオ生成部
40:当日制御量生成部
20:運用計画生成部
30:最過酷シナリオ生成部
40:当日制御量生成部
Claims (4)
- 電力系統における不確実性パラメータを考慮に入れ、事前の段階で決定すべき運用計画変数とリアルタイムに決定できる当日制御変数を定め、電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成装置であって、
電力系統における運用計画変数の情報と当日制御変数の情報を入手して、電力系統の過酷状態を想定した最過酷シナリオのときの目的関数値に対する運用計画案を作成する運用計画生成部と、不確実性パラメータの変動情報と前記運用計画案と当日制御変数の目的関数値とから前記最過酷シナリオとそのときの目的関数値を求める最過酷シナリオ生成部と、電力系統の系統情報と需要情報と前記最過酷シナリオとを用いて運用計画を決定する当日制御量生成部を備えることを特徴とする電力系統運用計画生成装置。 - 請求項1に記載の電力系統運用計画生成装置であって、
前記運用計画変数は、タップ調整機器のタップ位置、需要家所有の分散エネルギー源の調整余力の一つ以上を含むことを特徴とする電力系統運用計画生成装置。 - 請求項1に記載の電力系統運用計画生成装置であって、
前記当日制御変数は、系統運用事業者が所有する分散エネルギー源、予約した需要家所有の分散エネルギー源の調整余力の発動指令量の一つ以上を含むことを特徴とする電力系統運用計画生成装置。 - 電力系統における不確実性パラメータを考慮に入れ、事前の段階で決定すべき運用計画変数とリアルタイムに決定できる当日制御変数を定め、電力系統の運用計画を行う電力系統運用計画生成方法であって、
電力系統における運用計画変数の情報と当日制御変数の情報を入手して、電力系統の過酷状態を想定した最過酷シナリオのときの目的関数値に対する運用計画案を作成する電力系統運用計画問題について、前記電力系統運用計画問題を主問題である運用計画決定問題と従属問題にわけ、さらに前記従属問題を主問題である最過酷シナリオ決定問題と従属問題である当日制御量決定問題に分け、これにより3重構造の電力系統運用計画問題の解として電力系統の運用計画を行うことを特徴とする電力系統運用計画生成方法。
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