JP2022180115A - 水性塗料組成物および塗装物品の製造方法 - Google Patents

水性塗料組成物および塗装物品の製造方法 Download PDF

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Kazuma Tanishi
弘隆 小川
Hirotaka Ogawa
智明 松田
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Abstract

【課題】乾燥性を任意に制御できるとともに、優れた外観を有する塗膜が得られる水性塗料組成物を提供する。【解決手段】水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)と、の混合物を含む、水性塗料組成物である。前記硬化促進剤(c1)は、モリブデン化合物を含むことが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、水性塗料組成物および塗装物品の製造方法に関する。
従来、自動車の塗装には、鮮映性や仕上がり外観が向上し易い点で、溶剤系の塗料が用いられている(例えば、特許文献1)。
近年、環境に対する関心が高まり、溶剤系塗料に替わって、水性塗料の需要が高まっている。
特開2019-166454号公報
しかしながら、水性塗料は、一般に自動車の補修にはあまり適していない。自動車の補修は、外気の雰囲気に影響され易い環境で行われる場合が多く、水性塗料は、季節やその日の気候による影響を受け易いためである。
補修の内容によって、求められる乾燥速度(硬化速度)は異なる。例えば、塗装後にポリッシュ(塗膜の艶出し)を行う場合、作業効率が優先されるため、より高い速乾性が求められる。しかし、水性塗料の乾燥性は、一般に低い。加えて、補修する場合、新車の製造ラインとは異なり、塗料の硬化のために十分に高い温度で熱処理を行うことが難しい。他方、ポリッシュを行わない場合には、速乾性よりも、高い外観性が求められる。しかし、溶剤系塗料を用いる場合と比較して、水性塗料から得られる塗膜の外観は劣るといわれている。
本発明の目的は、乾燥性を任意に制御できるとともに、優れた外観を有する塗膜が得られる水性の塗料組成物を提供することである。本発明の目的は、また、上記塗料組成物により形成される塗膜を有する塗装物品の製造方法を提供することである。
本発明は、下記態様[1]~[8]を提供する。
[1]
水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、
ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、
硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)と、の混合物を含む、水性塗料組成物。
[2]
前記硬化促進剤(c1)は、モリブデン化合物を含む、上記[1]に記載の水性塗料組成物。
[3]
前記第3液(C)は、前記硬化促進剤(c1)が、前記水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下含まれるように混合されている、上記[1]または[2]に記載の水性塗料組成物。
[4]
前記第3液(C)における前記硬化促進剤(c1)の濃度は、0.0005質量%以上10質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
[5]
水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)とを、それぞれ準備する工程と、
前記第3液(C)の混合量を決定する工程と、
前記第1液(A)と、前記第2液(B)と、決定された量の前記第3液(C)と、を混合して、水性塗料組成物を調製する工程と、
被塗物上に前記水性塗料組成物を塗装して、未硬化の塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の塗膜を硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
[6]
前記硬化促進剤(c1)は、モリブデン化合物を含む、上記[5]に記載の塗装物品の製造方法。
[7]
前記第3液(C)の混合量を決定する工程において、
前記第3液(C)の混合量は、前記硬化促進剤(c1)が、前記水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下添加されるように、決定される、上記[5]または[6]に記載の塗装物品の製造方法。
[8]
前記第3液(C)における前記硬化促進剤(c1)の濃度は、0.0005質量%以上10質量%以下である、上記[5]~[7]のいずれか一項に記載の塗装物品の製造方法。
本発明によれば、乾燥性を任意に制御できるとともに、優れた外観を有する塗膜が得られる水性塗料組成物が提供される。本発明によれば、また、上記水性塗料組成物により形成される塗膜を有する塗装物品の製造方法が提供される。
本実施形態に係る水性塗料組成物は、主剤および硬化剤に加えて、さらに硬化促進剤を含む。ただし、硬化促進剤は、主剤および硬化剤とは別の液に配合されている。これにより、任意の量の硬化促進剤を混合することができる。よって、硬化環境および/または要求に応じて、硬化速度(以下、乾燥速度と称する。)を制御することが可能となる。乾燥速度が適切に制御されるため、ツヤの低下、ワキの発生等の欠陥が抑制されて、得られる塗膜の外観が向上する。さらに、主剤および/または硬化剤の貯蔵安定性が向上するとともに、硬化促進剤の機能(触媒機能)が損なわれ難い。加えて、適切な量の硬化促進剤が添加されるため、所望の硬度を有する塗膜を容易に得ることができる。
[水性塗料組成物]
水性塗料組成物は、少なくとも、第1液(A)と、第2液(B)と、第3液(C)と、の混合物である。水性塗料組成物には、さらに希釈成分(D)が混合されてもよい。
水性塗料組成物は、いわゆる中塗り塗膜用であってよく、ベースコート塗膜用であってよく、クリヤー塗膜用であってよい。なかでも、良好な外観が得られ易い点で、水性塗料組成物は、クリヤー塗膜の形成に適している。任意の乾燥速度に制御できる点で、水性塗料組成物は、特に、補修用のクリヤー塗膜の形成に適している。
第1液(A)は、水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む。第2液(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む。第3液(C)は、硬化促進剤(c1)を含む。第1液(A)と第2液(B)とを混合することにより、硬化反応が起きて硬化塗膜が得られる。水酸基含有樹脂(a1)とポリイソシアネート化合物(b1)との反応により得られる硬化塗膜は、高い密着性を示す。第3液(C)は、この硬化反応を促進させる。
第3液(C)の混合量は、乾燥(硬化)環境および/または要求に応じて、任意に決定できる。例えば、速乾性が要求される場合や、硬化に適さない環境下で作業する場合には、第3液(C)の混合量を増やすことができる。一方、硬化が順調に進行するような環境下では、第3液(C)の混合量を減らすことができる。ただし、水性塗料組成物は、一般に乾燥性が低いため、本実施形態においては硬化促進剤が用いられる。
第3液(C)は、例えば、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下添加される範囲で、混合される。この場合、乾燥速度が制御され易く、得られる塗膜の外観および塗膜性能が向上し易い。第3液(C)は、これらの範囲の中で、さらに、硬化環境および/または要求に応じて、任意に決定されることが好ましい。
第1液(A)および第2液(B)は、水酸基含有樹脂(a1)の水酸基当量とポリイソシアネート化合物(b1)のイソシアネート基当量とが、例えば、イソシアネート基当量/水酸基当量=1/0.5~1/1.5になるように混合される。
水性塗料組成物は、当業者において通常用いられる方法を用いて調製される。水性塗料組成物は、例えば、ニーダーまたはロール等を用いた混練混合法、サンドグラインドミルまたはディスパー等を用いた分散混合法により、各成分が混合されることにより調製される。
<第1液(A)>
第1液(A)は、水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む。
第1液(A)の固形分量は特に限定されない。第1液(A)の固形分濃度は、例えば、30質量%以上60質量%以下である。
(水酸基含有樹脂(a1))
水酸基含有樹脂(a1)は、水性溶媒(a2)に分散したエマルションの形態を有している。第1液(A)における水酸基含有樹脂(a1)の粒子径は特に限定されない。粘度制御のし易さ、および得られる塗膜の外観の点で、水酸基含有樹脂(a1)の平均粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましく、0.05μm以上0.5μm以下がより好ましい。平均粒子径は、動的光散乱法により測定される、体積基準の粒度分布における50%径(メジアン径、D50)である。
水酸基含有樹脂(a1)の固形分濃度は、例えば、第1液(A)に含まれる全固形分の30質量%以上95質量%以下である。水酸基含有樹脂(a1)の固形分濃度が上記の範囲であると、得られる塗膜の強度が高まり易い。水酸基含有樹脂(a1)の固形分濃度は、第1液(A)に含まれる全固形分の40質量%以上であってよく、45質量%以上であってよい。水酸基含有樹脂(a1)の固形分濃度は、第1液(A)に含まれる全固形分の94質量%以下であってよく、92質量%以下であってよい。
水酸基含有樹脂(a1)の水酸基価は、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下がより好ましい。水酸基含有樹脂(a1)の水酸基価が上記の範囲であると、得られる塗膜の強度が十分に高くなるとともに、耐水性も向上し易い。
水酸基含有樹脂(a1)の酸価は特に限定されず、例えば、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であってよく、10mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であってよい。水酸基含有樹脂(a1)の酸価が上記の範囲であると、水酸基含有樹脂(a1)の水分散性が高まるとともに、得られる塗膜の耐水性も向上し易い。
水酸基含有樹脂(a1)の数平均分子量は特に限定されず、例えば、1,000以上100,000以下であってよく、2,000以上50,000以下であってよく、3,000以上10,000以下であってよい。水酸基含有樹脂(a1)の数平均分子量が上記の範囲であると、水性塗料組成物の粘度の過度な上昇が抑制されて、得られる塗膜の外観が向上するとともに、その強度も十分に高くなり易い。
水酸基価および酸価は、いずれも固形分を基準としており、JIS K 0070に準じて測定することができる。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される、スチレンホモポリマー換算値である。
水酸基含有樹脂(a1)は、1以上、好ましくは2以上の水酸基を有する限り特に限定されない。水酸基含有樹脂(a1)としては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。なかでも、得られる塗膜の外観、耐候性、耐薬品性等の諸物性が良好になり易い点で、アクリルポリオールが好ましい。
水酸基含有樹脂(a1)は、例えば、1種以上の原料モノマーを乳化重合することによって得られる。乳化重合は、当業者において一般的に行われる方法により行われる。具体的には、必要に応じてアルコール等の有機溶剤を含む水性媒体に乳化剤を混合し、得られた混合物を加熱および撹拌させながら、原料モノマーおよび重合開始剤を滴下する。また、原料モノマー、乳化剤および水を予め乳化した乳化混合物を、水性媒体中に滴下してもよい。上記水性媒体は、水性溶媒(a2)と同じでも異なっていてもよい。
アクリルポリオールのエマルションは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、酸基含有エチレン性不飽和モノマー、水酸基含有エチレン性不飽和モノマー、およびスチレン系モノマーを含む原料モノマー混合物を、乳化重合することにより得られる。
(水性溶媒(a2))
水性溶媒としては、純水、イオン交換水、水道水、工業水などの各種水が挙げられる。第1液(A)は、水性溶媒とともに、有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、n-ブチルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンが挙げられる。
(その他)
第1液(A)は、必要に応じて、水酸基を含有しない樹脂を含み得る。第1液(A)はまた、水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)以外に、必要に応じて、各種添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、粘性調整剤、表面調整剤、造膜助剤、防錆剤および増粘剤が挙げられる。なかでも、得られる塗膜の外観がさらに向上し易い点で、粘性調整剤および/または表面調整剤が含まれることが好ましい。
粘性調整剤としては、例えば、架橋樹脂粒子(分子内に架橋構造を有する高分子化合物)、無機系粘性剤、セルロース誘導体、ウレタン会合型粘性剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。粘性調整剤の量は、例えば、水酸基含有樹脂(a1)の固形分の0.1質量%以上50質量%以下であってよく、0.5質量%以上30質量%以下であってよい。
表面調整剤としては、例えば、シリコーン系、アクリル系、ビニル系、フッ素系の表面調整剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。表面調整剤の量は、例えば、水酸基含有樹脂(a1)の固形分の0.1質量%以上10質量%以下であってよく、0.2質量%以上8質量%以下であってよい。
(第1液(A)の調製方法)
第1液(A)は、上記成分を当業者に知られた方法によって混合することによって、調製することができる。混合方法としては、水性塗料組成物の調製と同様の方法が挙げられる。
<第2液(B)>
第2液(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む。第2液(B)の固形分量は特に限定されない。第2液(B)の固形分濃度は、例えば、20質量%以上50質量%以下である。
ポリイソシアネート化合物(b1)の含有量は、例えば、第2液(B)の全固形分の20質量%以上50質量%以下である。ポリイソシアネート化合物(b1)の含有量は、第2液(B)の全固形分の30質量%以上であってよい。
ポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子中に平均で2個以上のイソシアネート基を有するものであれば特に限定されない。ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;これらの変性体(例えば、ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット体、イソシアヌレート等)が挙げられる。
(有機溶媒(b2))
有機溶媒(b2)は、水酸基を有さない限り特に限定されない。有機溶媒(b2)としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジイソブチルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールジエチルエーテル、ブチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、2-ブトキシエチルジエトキシエチルエーテル、2-ブトキシエチルトリエトキシエーテル、2-ブトキシエチルテトラエトキシエチルエーテル等のグリコールエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアセテート系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系有機溶剤;が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
(その他)
第2液(B)は、ポリイソシアネート化合物(b1)以外の硬化剤を含み得る。ポリイソシアネート化合物(b1)以外の硬化剤としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。他の硬化剤の含有量は、例えば、すべての硬化剤の合計固形分量の10質量%以下である。
(第2液(B)の調製方法)
第2液(B)は、上記成分を当業者に知られた方法によって混合することによって、調製することができる。混合方法としては、水性塗料組成物の調製と同様の方法が挙げられる。
<第3液(C)>
第3液(C)は、硬化促進剤(c1)を含む。第3液(C)における硬化促進剤(c1)の濃度は、0.0005質量%以上10質量%以下が好ましい。硬化促進剤(c1)の濃度は、0.002質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。硬化促進剤(c1)の濃度は、3質量%以下がより好ましい。
硬化促進剤(c1)は、水酸基とイソシアネート基との反応を促進する限り、特に限定されない。硬化促進剤(c1)としては、例えば、アミン化合物、金属化合物、酸が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の三級アミンが挙げられる。金属化合物としては、例えば、スズ化合物、ビスマス化合物、モリブデン化合物、亜鉛化合物が挙げられる。酸としては、例えば、スルフォン酸、無機酸、リン酸エステル、オキシ酸、カルボン酸が挙げられる。なかでも、金属化合物が好ましい。特に、乾燥速度の制御がし易く、さらに、塗膜の外観が向上し易い点で、モリブデン化合物が好ましい。加えて、モリブデン化合物は水と反応し難いため、水性溶媒中でも安定して存在し得る。
モリブデン化合物としては、例えば、酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸塩、有機モリブデンが挙げられる。モリブデン酸塩としては、例えば、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン(VI)酸二ナトリウム二水和物、モリブデン酸リチウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ルビジウム、モリブデン酸セシウム、モリブデン酸コバルト(II)、モリブデン酸マンガン(II)、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸六アンモニウム四水和物、七モリブデン酸六アンモニウム四水和物が挙げられる。リンモリブデン酸塩としては、例えば、リンモリブデン酸n水和物、リンモリブデン酸ナトリウムn水和物、リンモリブデン酸アンモニウム三水和物が挙げられる。有機モリブデンとしては、例えば、モリブデニム(IV)オキサイドビスアセチルアセトネート、ビス(アセチルアセトナト)酸化モリブデン(IV)、二酸化モリブデンテトラメチルヘプタジオネート、モリブデン酸テトラエチルアンモニウム、モリブデン酸トリメチルスタンニル・テトラブチルアンモニウム、モリブデンアルコキシド、2-エチルヘキサン酸モリブデン、ヘキサカルボニルモリブデンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
第3液(C)は、さらに溶媒(c2)を含む。溶媒(c2)は、水性溶媒および有機溶媒の少なくとも一方である。水性溶媒と親水性の有機溶媒とを併用してもよい。この場合、親水性の有機溶媒は、全溶媒の30質量%程度になるように配合することができる。水性溶媒および有機溶媒としては、第1液(A)に含まれ得る水性溶媒(a2)や有機溶媒、第2液(B)に含まれ得る有機溶媒(b2)と同じものが例示される。溶媒(c2)は、水性溶媒(a2)および/または有機溶媒(b2)と同じであってよく、異なっていてもよい。
第3液(C)は、水酸基含有樹脂およびポリイソシアネート化合物のいずれか一方を含んでいてもよい。第3液(C)に含まれる水酸基含有樹脂は、第1液(A)に含まれる水水酸基含有樹脂(a1)と同種であってよく、異種であってよい。第3液(C)に含まれるポリイソシアネート化合物は、第2液(B)に含まれるポリイソシアネート化合物(b1)と同種であってよく、異種であってよい。第3液(C)がポリイソシアネート化合物を含む場合、水性溶媒は含まれない。
(第3液(C)の調製方法)
第3液(C)は、上記成分を当業者に知られた方法によって混合することによって、調製することができる。混合方法としては、水性塗料組成物の調製と同様の方法が挙げられる。
<希釈成分(D)>
水性塗料組成物には、さらに希釈成分(D)が混合されてもよい。希釈成分(D)としては、水性溶媒(a2)の例示と同じものが挙げられる。希釈成分(D)は、水性溶媒(a2)と同じであってよく、異なっていてもよい。
希釈成分(D)の混合量は、水性塗料組成物の粘度、塗装方法等を考慮して適宜設定される。希釈成分(D)の混合量は、例えば、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、10質量部以上70質量部以下である。
[塗装物品の製造方法]
塗装物品は、被塗物上に、上記の水性塗料組成物を塗装して、未硬化の塗膜を形成する工程と、未硬化の塗膜を硬化させる硬化工程と、を備える方法により製造される。水性塗料組成物は、水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)とを、それぞれ準備する工程と、第3液(C)の混合量を決定する工程と、第1液(A)と、第2液(B)と、決定された量の第3液(C)と、を混合することにより、調製される。
第3液(C)の混合量が、硬化環境および/または要求に応じて、任意に決定されることにより、所望の乾燥速度で塗膜を形成することができる。本実施形態では、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)が別に準備されるため、乾燥速度の制御が可能となる。乾燥速度が適切に制御されることにより、作業効率が向上するとともに、得られる塗膜の外観が良好になる。
(1)各液の準備
水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)と、をそれぞれ準備する。各液は、必要な成分を公知の方法により混合および攪拌することにより、調製される。
(2)混合量の決定
第3液(C)の混合量を決定する。第3液(C)の混合量は、塗装環境の温度および湿度や、ユーザーの要求等を考慮して決定される。この場合、第3液(C)の量は、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下添加される範囲で、硬化環境および/または要求に応じて、決定されることが好ましい。この場合、乾燥速度が制御され易く、得られる塗膜の外観および塗膜性能が向上し易い。第3液(C)における硬化促進剤(c1)の濃度は、例えば、0.0005質量%以上10質量%以下である。
例えば、高湿および/または低温環境下では、硬化は進行し難い。そのため、この場合、第3液(C)の混合量は、多めに設定される。具体的には、加熱温度が40℃から60℃程度の低温である場合、第3液(C)の混合量は、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.08質量部以上0.3質量部以下、好ましくは、0.1質量部以上0.3質量部以下添加されるように、決定される。加熱温度が60℃を超える場合(例えば、60℃超100℃以下)、第3液(C)は、硬化促進剤(c1)が、前記水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.2質量部以下、好ましくは、0.03質量部以上0.15質量部以下含まれるように、決定される。
加熱時間は、15分から60分程度が好ましい。これにより、作業効率がさらに向上し易くなるとともに、得られる塗膜の外観がより良好になり易い。第3液(C)の混合量は、加熱時間も考慮して決定され得る。
第1液(A)と第2液(B)とは、水酸基含有樹脂(a1)の水酸基当量とポリイソシアネート化合物(b1)のイソシアネート基当量とが、イソシアネート基当量/水酸基当量=1/0.5~1/1.5になるように混合される。
(3)各液の混合
混合は、塗装の直前に行われる。第1液(A)と第2液(B)と第3液(C)とは、混合された後、塗装装置に供給されてもよいし、塗装装置内で混合されてもよい。
各液の混合順序は特に限定されない。なかでも、第1液(A)と第2液(B)とを混合した後、第3液(C)、さらには必要に応じて希釈成分(D)を混合することが好ましい。第1液(A)と第2液(B)とを先に混合することにより、水酸基含有樹脂(a1)とポリイソシアネート化合物(b1)との反応の偏りが生じ難くなって、良好な外観を有する硬化塗膜が得られ易い。
(4)水性塗料組成物の塗装
調製された水性塗料組成物を、被塗物上に塗装する。
水性塗料組成物の塗布量は特に限定されず、塗膜に求められる性能に応じて適宜設定される。クリヤー塗膜用の水性塗料組成物は、例えば、硬化後の塗膜の厚さが5μm以上70μm以下になるように、塗布される。
(被塗物)
被塗物の形状は特に限定されない。被塗物は、平板状であってよく、立体形状を有していてもよい。被塗物の材質も特に限定されない。被塗物の材質としては、例えば、金属、樹脂、ガラスが挙げられる。金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛またはこれらの合金が挙げられる。
金属製の被塗物は、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、リン酸塩処理、クロメート処理、ジルコニウム化成処理、複合酸化物処理が挙げられる。金属製の被塗物は、表面処理後、さらに電着塗料によって塗装されていてもよい。電着塗料は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。
樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられる。樹脂製の被塗物は、脱脂処理されていることが好ましい。
被塗物としては、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体、あるいは、これらの一部が挙げられる。
水性塗料組成物の塗装前に、被塗物には、プライマー塗料あるいは補修用下塗り塗料(プライマーサーフェーサーとも呼ばれる。)が塗装されていてよい。プライマー塗料および補修用下塗り塗料は特に限定されず、その上方に塗装される塗料の種類に応じて適宜選択される。プライマー塗料および補修用下塗り塗料は、例えば、水性あるいは溶剤系の2液型ウレタン塗料である。
水性塗料組成物の塗装前、さらにはプライマー塗料あるいは補修用下塗り塗料の塗装後、被塗物には、ベースコート塗料が塗装されてもよい。ベースコート塗料は、硬化タイプであってよく、ラッカータイプであってよい。硬化タイプのベースコート塗料は、上記のように主剤と硬化剤との硬化反応によって、硬化塗膜を形成する。ラッカータイプのベースコート塗料は、溶媒の揮発によって、硬化塗膜を形成する。ベースコート塗料の塗装は、複数回行われてもよい。
(塗装方法)
水性塗料組成物の塗装方法は特に限定されない。塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装が挙げられる。これらの方法と静電塗装とを組み合わせてもよい。補修の場合、局所的な塗装が容易である点で、エアスプレー塗装が好ましい。
以下、水性塗料組成物を補修用のクリヤー塗料として用いる場合を例に挙げて、塗装方法を説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。
まず、必要に応じて、被塗物の対象部位とその周辺が研磨され、パテで凹凸が埋められる。その後、当該部分が再度研磨される。次いで、プライマー塗料あるいはプライマーサーフェーサーが塗装される。プライマー塗料あるいはプライマーサーフェーサーが塗装された後、塗膜を硬化させ、さらに研磨および脱脂する。硬化は、例えば、40℃以上70℃以下で、30分から60分間程度行われる。研磨は、サンドペーパー等を用いて行われる。
続いて、補修用ベースコート塗料が塗装される。補修用ベースコート塗料の塗装は、複数回行われてもよい。補修用ベースコート塗料の塗装後、塗膜を硬化させる。硬化条件は、ベースコート塗料の組成によって、適宜設定される。
最後に、水性塗料組成物が塗装される。水性塗料組成物の塗装は、複数回行われてもよい。次いで、例えば40℃以上100℃以下で、15分から60分間程度加熱して、塗膜を硬化させる。
以下、実施例を用いて本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は実施例により何ら制限されるものではない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
[評価方法]
水性塗料組成物および塗装物品を、以下の方法により評価した。評価結果を、表1から表3に示す。
(1)ポットライフ
第1液(A)、第2液(B)、第3液(C)および希釈成分(D)を、それぞれ20℃下に置き、液温を一定にした。次いで、各液を、所定量、順に混合して水性塗料組成物を調製した。すぐに、アネスト岩田株式会社製の粘度カップNK-2を、この水性塗料組成物に沈めて、引き上げた。引き上げた瞬間から、水性塗料組成物がすべて排出されるまでの時間を計測した。これを、初期値T(秒)とした。
次に、水性塗料組成物を調製してから、30分間静置した後に、上記と同様にして、引き上げから排出するまでの時間(T(秒))を計測した。静置時間を30分ずつ延長しながら、上記と同様にして、引き上げから排出するまでの時間(T(秒))を計測した。T-Tが2以上(T-T≧2)になったときの静置時間を、ポットライフとした。
(2)乾燥性
各実施例または比較例と同様にして、未硬化のクリヤー塗膜を備える被塗物をそれぞれ作製した。次いで、温度23±2℃、湿度50±2%の環境下で15分間静置した。その後、各実施例または比較例と同じ温度に設定されたオーブンで、乾燥時間を変えて上記被塗物を加熱し、複数のサンプルを作製した。乾燥時間は、10分から60分まで5分間隔で変更した。
各サンプルを、♯2000研磨紙により研磨した。次いで、ウールバフおよびコンパウンド(3M社製、3MTMウルトラフィーナTMコンパウンド・プレミアム5949)を用いて、電動ポリッシャーによりポリッシングした。ポリッシング後のサンプルの塗膜を、目視により評価した。塗膜にバフ傷が確認されず、かつ、熱軟化することなくポリッシュ(クリヤー塗膜の艶出し)できたサンプルの加熱時間を、乾燥性の指標とした。この加熱時間が短いほど、乾燥性が高いといえる。
(3)外観
(3-1)光沢
硬化されたクリヤー塗膜の光沢値を、BYK製のマイクロトリグロスを使用して測定した。光沢値は、測定個所を変えて3回測定した数値の平均値とした。光沢値を、以下の基準に基づき評価した。
最良:60°光沢値が90以上
良:60°光沢値が85以上90未満
可:60°光沢値が80以上85未満
不良:60°光沢値が80未満
(3-2)肌荒れ
硬化されたクリヤー塗膜の平滑性を、表面測定機(BYK社製、Wave Scan-dual)により評価した。具体的には、レーザー光を、その光源を移動させながら、クリヤー塗膜に角度60°で照射して、その反射光を測定する。測定された反射光を波長ごとに分類する。長波長領域(1200μm~12000μm)の反射光の量(LW)が小さいほど、平滑性が良い。評価基準は、以下の通りである。
最良:LWが10未満
良:LWが10以上20未満
可:LWが20以上30未満
不良:LWが30以上
(3-3)ワキ
硬化されたクリヤー塗膜の欠陥を、目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。
最良:ワキ、ピンが確認されない
良:塗膜の端部にのみ、5点以下のワキがみられる
可:塗膜の全面に、5点以下のワキあるいはピンがみられる
不良:塗膜の全面に、5点を超えるワキ、ピンがみられる
(4)塗膜性能
(4-1)密着性
硬化されたクリヤー塗膜に、NTカッター(エヌティー株式会社製)により、鋼板に達する切れ目(縦11本、横11本、2mm間隔)を入れ、100個のマス目を作った。すべてのマス目を覆うように、テープ(ニチバン株式会社製、セロテープ(登録商標)、24mm幅)を貼り付けて、上から爪等で強く密着させた。次いで、テープを、塗膜との成す角が約45°になるように引っ張りながら、剥離した。テープ剥離後の塗膜を、目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。
10点:切れ目1本ごとが細かく、その両側が滑らかであり、かつ、切れ目同士の交点およびマス目内に剥がれがみられない
8点:切れ目同士の交点にわずかに剥がれがあるが、マス目内に剥がれはみられず、剥がれの面積は全マス目の面積の5%未満
6点:マス目内および切れ目同士の交点に剥がれがあり、剥がれの面積は全マス目の面積の5%以上15%未満
4点:マス目内の剥がれ幅が広く、剥がれの面積は全マス目の面積の15%以上35%未満
2点:マス目内の剥がれ幅がより広く、剥がれの面積は全マス目の面積の35%以上65%未満
0点:剥がれの面積は全マス目の面積の65%以上
(4-2)耐水性
循環機能の付いた恒温水槽を40℃に設定し、脱イオン水で満たした。ここに、塗装物品を3/4程度、浸漬した。240時間浸漬した後、塗装物品を引き上げて、水滴を軽くふき取った。引き上げた後、塗装物品を室温(23℃)で1時間放置して、塗膜を目視により評価した。評価基準は、以下の通りである。
最良:異常なし
良:極小のブリスターが発生しているが、実用上問題ない
可:部分的に1mm以上のブリスターが発生している
不良:全体に1mm以上のブリスターが発生している
[実施例]
(1)硬化促進剤の添加量の検討
実施例1~5および比較例1では、第3液の混合量を変えて、得られた水性塗料組成物および塗装物品を評価した。評価結果を、表1に示す。表1~4に記載されている各成分の質量部は、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対する値である。
[実施例1]
以下のようにして、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を作製した。
(I)各液の準備
第1液(A)として、アクリルポリオール(水酸基含有樹脂(a1)、水酸基価:130mgKOH/g、酸価:10mgKOH/g、数平均分子量:3,500)と、純水(水性溶媒(a2))との混合物を準備した。水酸基含有樹脂(a1)は、混合物中でエマルションの形態で存在しており、平均粒子径は0.17μmであった。水酸基含有樹脂(a1)の固形分濃度は、第1液(A)に含まれる全固形分の91.5%であった。
第2液(B)として、バーノックDNW-5500(ポリイソシアネート化合物(b1)、DIC社製)84部と、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM、有機溶媒(b2))56部との混合物を準備した。
第3液(C)として、モリブデン酸ナトリウム(硬化促進剤(c1))約0.08部と、純水(溶媒(c2))7.71部との混合物(硬化促進剤の濃度:約1質量%)を準備した。
希釈成分(D)として、純水を準備した。
(II)第3液(C)の混合量の決定
硬化環境を考慮して、第3液(C)の混合量を決定した。
ここでは、温度70℃、湿度20RH%の条件で加熱するため、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、約0.08質量部となるように、第3液(C)の混合量を決定した。
(III)塗装物品の作製
(III-1)下塗り塗膜の形成
nax E-CUBE WBプラサフ ヴィータ グレー(主剤、日本ペイント社製、固形分約56%)100部、nax E-CUBE WB水性用 ハードナー(硬化剤、日本ペイント社製、固形分約64%)12.5部、および、nax E-CUBE WBクリヤー・プラサフ専用希釈水(希釈成分、日本ペイント社製)適量を混合して、プライマーサーフェーサーを調製した。
60cm×40cmの鋼板(被塗物)に、スプレーガンによりプライマーサーフェーサーを塗装し、指で触れて塗料が付着しなくなるまでエアブロー乾燥を行った。この塗装および乾燥を、さらに2回繰り返した。続いて、この鋼板を60℃に設定されたオーブンに投入し、30分加熱して、硬化塗膜を形成した。次いで、得られた塗膜の表面を研磨した。最後に、塗膜の表面を脱脂して、下塗り塗膜(硬化膜厚45μm)を備える被塗物を作製した。
(III-2)ベースコート塗膜の形成
nax E-CUBE WB412 サイレントブラック(主剤、日本ペイント社製、固形分約22%)100部、nax E-CUBE WB911 S-バインダー(硬化剤、日本ペイント社製、固形分約26%)50部、および、nax E-CUBE WBR20 標準希釈剤(希釈成分、日本ペイント社製)45部を混合して、ベースコート塗料を調製した。
下塗り塗膜を備える被塗物に、スプレーガンによりベースコート塗料を塗装し、指で触れて塗料が付着しなくなるまでエアブロー乾燥を行った。この塗装および乾燥を、さらに2回繰り返して、ベースコート塗膜(硬化膜厚20μm)を形成した。
このようにして、下塗り塗膜およびベースコート塗膜を備える被塗物を準備した。
(III-3)クリヤー塗膜の形成
第1液(A)100部と、第2液(B)84部と、硬化促進剤(c1)が水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して0.08質量部となる量の、第3液(C)とを混合し、水性塗料組成物を調製した。
上記で準備された被塗物に、スプレーガンにより水性塗料組成物を3回塗装した。各塗装は、1分間間隔をあけて行った。このようにして、未硬化のクリヤー塗膜を形成した。その後、未硬化のクリヤー塗膜を備える被塗物を、温度23±2℃、湿度50±2RH%の環境下で15分間静置した。次いで、上記被塗物を70℃設定のオーブンに投入し、40分間加熱し、クリヤー塗膜を硬化させた。オーブン内の湿度は10RH%であった。このようにして、塗装物品を作製した。
加熱時間は、上記(2)乾燥性の評価と同じ方法により、クリヤー塗膜にバフ傷が確認されず、かつ、熱軟化することなくポリッシュできるのに必要な時間に設定した。以下の実施例および比較例も同様である。
[実施例2~5]
第3液(C)の混合量および加熱時間を表1に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を作製した。
[比較例1]
第3液(C)を混合せず、加熱時間を60分にしたこと以外、実施例1と同様にして、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を作製した。
Figure 2022180115000001
表1からもわかるように、硬化促進剤を添加することにより、良好な塗膜を短時間で得ることができる。
(2)硬化促進剤の種類の検討
実施例6~11では、添加する硬化促進剤の種類を変えて、得られた水性塗料組成物および塗装物品を評価した。評価結果を、表2に示す。
[実施例6~11]
硬化促進剤の種類および加熱時間を、表2に示すように変更したこと以外、実施例1と同様にして、水性塗料組成物を調製し、塗装物品を作製した。表2に記載されている質量部は、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対する値である。
実施例9の第3液(C)は、さらに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PM、有機溶媒)を含む。実施例10の第3液(C)は、さらに、水酸基含有樹脂(アクリルポリオール、水酸基価:130mgKOH/g、酸価:10mgKOH/g、数平均分子量:3,500)を含む。実施例11の第3液(C)に含まれる亜鉛化合物として、XK-614(楠本化成株式会社製)を使用した。
Figure 2022180115000002
表2からもわかるように、硬化促進剤を添加することにより、硬化促進剤の種類に関わらず、良好な塗膜を短時間で得ることができる。なかでも、モリブデン化合物を用いると、塗膜の外観が向上し易い。
(3)加熱時間の検討
比較例2~4および実施例12~13では、加熱温度を変えて、クリヤー塗膜が十分に乾燥するのに必要な加熱時間を評価した。評価結果を、実施例1とともに、表3に示す。
[比較例2]
第3液(C)を使用せず、硬化促進剤(c1)を第1液(A)に添加したこと以外、実施例1と同様にして水性塗料組成物を調製した。水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対する硬化促進剤(c1)の量は、実施例1と同じとした。調製された水性塗料組成物を用いて、加熱時間以外、実施例1と同様の条件にて、塗装物品を作製した。
[実施例12]
第3液(C)の混合量の決定(I-2)において、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.13質量部となるように、第3液(C)の混合量を決定した。これ以外は、実施例1と同様にして水性塗料組成物を調製した。この水性塗料組成物を用いたこと、および、50℃、10RH%の条件下で40分間、加熱したこと以外、実施例1と同様にしてクリヤー塗膜を形成し、塗装物品を得た。
[比較例3]
比較例2と同様にして調製された水性塗料組成物を用いて、加熱時間以外、実施例12と同様の条件にて、塗装物品を作製した。
[実施例13]
第3液(C)の混合量の決定(I-2)において、硬化促進剤(c1)が、水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、約0.03質量部となるように、第3液(C)の混合量を決定した。これ以外は、実施例1と同様にして水性塗料組成物を調製した。この水性塗料組成物を用いたこと、および、80℃、10RH%の条件下で40分間、加熱したこと以外、実施例1と同様にしてクリヤー塗膜を形成し、塗装物品を得た。
[比較例4]
比較例2と同様にして調製された水性塗料組成物を用いて、実施例13と同様の条件にて、塗装物品を作製した。
Figure 2022180115000003
表3からわかるように、比較例2の水性塗料組成物は、実施例1と同量の硬化促進剤を含有しているが、十分に乾燥するのに必要な加熱時間は、実施例1よりも長かった。これは、硬化促進剤を第1液(主剤)に添加したため、その安定性が低下して、触媒機能が十分に発揮されなかったためだと考えられる。
比較例3の水性塗料組成物は、実施例12より少ない硬化促進剤を含有している。そのため、十分に乾燥するのに必要な加熱時間は、実施例12よりも長かった。これは、上記の通り、硬化促進剤の触媒機能が低下したことに加えて、乾燥温度に対する硬化促進剤の量が十分でなかったためだと考えられる。
比較例4の水性塗料組成物は、実施例13より多い硬化促進剤を含有しているにもかかわらず、十分に乾燥するのに必要な加熱時間は、実施例13と同じであった。これは、上記の通り、硬化促進剤の触媒機能が低下したためだと考えられる。
(4)乾燥条件の検討
比較例5および6では、比較例2で調製された水性塗料組成物を用いて、実施例1または実施例12と同じ条件でクリヤー塗膜を形成した。得られた塗装物品の評価結果を、実施例1および12とともに、表4に示す。
[比較例5]
比較例2と同様にして調製された水性塗料組成物を用いて、実施例1と同様の条件(70℃×40分)にて、塗装物品を作製した。
[比較例6]
比較例2と同様にして調製された水性塗料組成物を用いて、実施例12と同様の条件(50℃×40分)にて、塗装物品を作製した。
Figure 2022180115000004
比較例5および6で得られた塗膜は、いずれも乾燥が不十分であったため、実施例1および12よりも外観および塗膜性能に劣っていた。
本発明によれば、乾燥性を任意に制御できるとともに、優れた外観を有する塗膜が得られる水性塗料組成物が提供される。そのため、水性塗料組成物は、特に、補修用のクリヤー塗膜の形成に適している。

Claims (8)

  1. 水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、
    ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、
    硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)と、の混合物を含む、水性塗料組成物。
  2. 前記硬化促進剤(c1)は、モリブデン化合物を含む、請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 前記第3液(C)は、前記硬化促進剤(c1)が、前記水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下含まれるように混合されている、請求項1または2に記載の水性塗料組成物。
  4. 前記第3液(C)における前記硬化促進剤(c1)の濃度は、0.0005質量%以上10質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。
  5. 水酸基含有樹脂(a1)および水性溶媒(a2)を含む第1液(A)と、ポリイソシアネート化合物(b1)および水酸基を有さない有機溶媒(b2)を含む第2液(B)と、硬化促進剤(c1)を含む第3液(C)とを、それぞれ準備する工程と、
    前記第3液(C)の混合量を決定する工程と、
    前記第1液(A)と、前記第2液(B)と、決定された量の前記第3液(C)と、を混合して、水性塗料組成物を調製する工程と、
    被塗物上に前記水性塗料組成物を塗装して、未硬化の塗膜を形成する工程と、
    前記未硬化の塗膜を硬化させる工程と、を備える、塗装物品の製造方法。
  6. 前記硬化促進剤(c1)は、モリブデン化合物を含む、請求項5に記載の塗装物品の製造方法。
  7. 前記第3液(C)の混合量を決定する工程において、
    前記第3液(C)の混合量は、前記硬化促進剤(c1)が、前記水酸基含有樹脂(a1)の固形分100質量部に対して、0.03質量部以上0.3質量部以下添加されるように、決定される、請求項5または6に記載の塗装物品の製造方法。
  8. 前記第3液(C)における前記硬化促進剤(c1)の濃度は、0.0005質量%以上10質量%以下である、請求項5~7のいずれか一項に記載の塗装物品の製造方法。
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