JP2022179015A - 蓄電池システム、それを備えた鉄道車両、及び異常電池検知方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 異常セルを早期検知することが可能な異常電池検知方法を提供する。【解決手段】 組電池を容量調整しながら運用する蓄電池システムであって、組電池は、複数の電池セルが直列接続されており、容量調整も可能なコントローラを備え、コントローラは、複数の電池それぞれから電池状態を取得し、取得した電池状態に基づいて制御命令を生成し、制御命令により、組電池のうち許容範囲外の電圧となっている電池セルの容量を調整する過程で、組電池の平均電圧に対し、電圧の偏差が所定値以上の電池セルを異常電池として判断する。また、各電池セルの電圧と組電池の平均電圧との偏差を演算し、例えば、正規分布で3σ以上の偏差があれば、異常電池と判断しても良い。【選択図】図11
Description
本発明は、蓄電池の効率的運用に有用な蓄電池システム、それを備えた鉄道車両、及び異常電池検知方法に関する。
電池の劣化により、電池が自己放電する可能性がある。電池を直列接続した蓄電池システムでは、直列接続された複数の電池セルのうち1つでも自己放電していると、蓄電池システム全体の性能、すなわちエネルギー効率が低下してしまう。したがって、このような自己放電を、電池システムの性能に悪影響を及ぶ以前に検知する必要がある。
また、この自己放電の速度について、劣化の当初段階では数mV/dayオーダの速度であり、それほどの影響もないが、この段階を経ると自己放電速度が数十mV/dayオーダの速度へと急激に上昇して、エネルギー効率が著しく低下する。これを避けるためには、自己放電の速度は、数mV/dayオーダの段階で、検知される必要がある。しかし、電池のコントローラに搭載されている電圧センサは、10mV程度の精度でしかない。
それに加えて、蓄電池システムには、直列接続された各電池セルの電圧を均等化、すなわち、複数の電池セルそれぞれの電池容量を調整するための制御装置が装備されているため、個々の電池セルの微小な自己放電を検知することが困難であった。つまり、この電池容量調整により、自己放電を早期に発見され得ないようになってしまっている。そこで、容量調整目標となった最低電圧の電池が、容量調整後であっても平均電圧から乖離していた場合に、これを異常電池として判定する方法が知られている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載の技術における異常電池判定方法には、つぎに示す2点の課題があった。第1に、容量調整前後の電圧を監視するだけでは、数mV/dayの変化を捕捉することが困難であった。第2に、平均電圧から乖離して異常電池として検知された原因が、自己放電であるのか、その他の原因として容量劣化等であるのか、何れの原因によって異常が発生したのか、その原因を特定できなかった。本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異常セルを早期検知することが可能な蓄電池システムを提供することにある。
上記課題を解決する本発明は、組電池を容量調整しながら運用する蓄電池システムであって、組電池は、複数の電池セルが直列接続されており、容量調整も可能なコントローラを備え、コントローラは、複数の電池それぞれから電池状態を取得し、取得した電池状態に基づいて制御命令を生成し、制御命令により、組電池のうち許容範囲外の電圧となっている電池セルの容量を調整する過程で、組電池の平均電圧に対し、電圧の偏差が所定値以上の電池セルを異常電池として判断する。
本発明により、異常セルを早期検知することが可能な蓄電池システムを提供できる。
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。実施例1は、図1~図6を用いて説明する。実施例2は、図7及び図8を用いて説明する。実施例3は、図9を用いて説明する。実施例4は、図10及び図11を用いて説明する。実施例5は、図12を用いて説明する。実施例6は、図13及び図14を用いて説明する。
本発明は、具体例に係る以下の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その重複する説明を省略する場合がある。また、全実施例1~6において、セル番号1~6の電池セル(以下、単に「電池」又は「セル」ともいう)を明示し、それら以外の電池セル7~nについては、記載を省略しているが、それらの電池セル7~nも本発明の適用対象である。
図1は、本システムの概略構成を示す機能ブロック図である。図1の本システムは、上位コントローラ19と、それから通信線18を通じて情報を伝達し、入出力を制御される組電池(以下、「電池パック(Battery pack)」ともいう)10と、により構成される。電池パック10は、必要な電圧及び容量を確保するため、多数が直列接続されており、それらの調整を目的とするセルコン(Battery Cell Controllers)12と、電池制御装置(Battery control device)15と、を備える。
なお、上位コントローラ19は、自動車等に搭載されるECU(Electronic Control Unit)又は、鉄道車両の運転操作を支援するために具備された電子制御装置と考えても良く、電子回路を用いてシステム制御する装置(ユニット)の総称を意味する。ここで、上位コントローラ19は、電池パック10の用途に応じるべく、通信線18を通じて電池制御装置15及びその下位のセルコン12に情報を伝達し、電池パック10を監視するとともに、後述する高度な制御を実行することにより、入出力を制御する。
電池制御装置15は、上位コントローラ19の下位にあって、1つの電池パック10に1つが配設される。電池制御装置15は、その下位に複数のセルコン12を従属させ、それらのセルコン12が、それぞれ複数の電池セル(Battery cell)11を監視及び制御(以下、「監視制御」又は単に「制御」ともいう)するように、階層構成されている。セルコン12は、その監視下にある各電池セル11の状態を監視するため、電圧検出線13によって電圧を検出するほか、熱電対(thermocouple)14によって温度も検出する。
これらの検出結果に基づいて、セルコン12は、多数が直列接続された電池セル11の相互間で容量の不均衡が生じれば、それらの調整を目的とするバランシング制御を実行する。なお、温度検出に関しては、一例として、セルコン12の1つで1点のみを監視するものとする。
セルコン12は、予め紐づけられた制御対象である多数の電池セル11を同時に制御できる。このセルコン12は、図1で省略して図2で例示するように、6個が直列接続された(以下、「6直列ともいう」)組電池のほか、それ以上の個数として12個が直列接続された(以下、「12直列ともいう」)組電池の監視も可能である。
電池セル11の直列数に比例するセルコン12の個数であることが好ましい。このセルコン12は、通信線16を介して電池制御装置15の指令を受けることにより、バランシング制御等を実行する。そのための通信方式として、例えば、移動体であればCANの適用が列挙される。
また、複数のセルコン12相互間も通信線16を繋ぐことで、全部のセルコン12に電池制御装置15からの通信指令を同時に送ることが可能となる。電池制御装置15は、セルコン12から送られてくる各セルの電圧情報や温度情報と、電流センサ17の電流情報と、に基づいて、充電率(SOC:State of Charge)推定と、劣化率(容量維持率:SOH:State of Health)推定制御と、許容電力演算と、を実行する。
それと同時に、電池制御装置15は、上位コントローラ19との通信線18を通じて情報を伝達し、電池の入出力を制御する。なお、図1に示すように、電池パック10と、上位コントローラ19と、は通信線18を介して協働機能するが、両者は個別に調達できる独立の構成品である。ここでは、容量調整回路23、セルコン12、及び電池制御装置15、をまとめてコントローラともいう。このコントローラには、さらに上位コントローラ19まで含めると考えても良い。ここに記載した逆の順、すなわち、上位コントローラ19、電池制御装置15、セルコン12、容量調整回路23の順で、図1及び図2に示すような制御の階層が構成される。
図2と図3を用いてバランシング制御を行う回路の例と制御例を示す。図2は、セル数n個が直列接続された組電池に対する個別の容量調整回路を説明するための回路図である。図2に示すように、6直列の電池セル1~6と、それらをまとめて監視するセルコン12と、の間には容量調整(バランシング)回路23が存在する。このバランシング回路23は、主にMOSFET等のトランジスタ21とバランシング抵抗22で構成され、各電池セル11に対してトランジスタ21及びバランシング抵抗22が1つずつ並列に接続されている。
バランシング動作例を図3で説明する。図3は、パッシブバランシング制御を説明するための概要図である。図3に示すように、セル番号1~nで特定される各セルのうち、セル番号4(セル4)が最低電圧となっているとする。このように、最低電圧となっている電池をバランシング目標セルと呼ぶこととする。例えば、各セル1~nがバランシング目標セルに対して電圧閾値Vth以上の電圧差が開いた場合に、容量調整が必要と判定し対象とするセル4に対してバランシング制御を実施する。
この場合、セル番号1とセル番号3がこれに該当する。これらセル1とセル3に並列となっているトランジスタ21をONし並列するバランシング抵抗22に電流を流すことで対象のセルを放電し、バランシング目標セルであるセル4に容量を合わせる動作を実施する。このようにバランシング抵抗22に放電することで容量を調整するバランシング制御を、パッシブパランシング制御と呼び電池の容量調整方法として一般的に普及している。
電池パック10において、n直列の本システムではn個のうち、一番電圧の低い電池を目標とし、他のn-1個の電池全てがバランシング動作の対象となる。電池パック10では、このように直列接続された各電池セル11の全てを監視し、適宜に調整する必要がある。
そのため、セルコン12は、全てのセル番号1~nに紐づけられてセル別の電圧が把握できる情報を電池制御装置15へ通信する。電池制御装置15は、セルコン12より上位で制御範囲が広く、セルコン12から得た全てのセル情報を集約可能であり、それらの情報を用いて電池パック10の目標電圧を把握する。その一方で、セルコン12は、各電池セル11に対してバランシング動作のみを実行する。
実施例1の本システムでは、容量調整の目標セル指定回数に基づいた検知方法に関して説明する。ここで、電池制御装置15によるバランシング制御の制御フローと共に異常セルの検知手法に関して説明する。図4は、自己放電異常を検知する手順を示すフローチャートである。図4に示すように、自己放電異常セルの検知手順は、電池制御装置15によるステップS10~ステップS17を経て実行される。
まず、演算周期として、例えば、1秒毎にステップS10となり制御を開始する。つぎに、ステップS11にて、電池制御装置15が各セル電圧(Cell voltage)、各セル番号を検出する。電池制御装置15がこの制御を行う場合にはセルコン12からの通信にて、各セル電圧と各セル番号を入手する。このとき、全電圧の中で一番電圧の低いセルを検出し最低電圧値Vminとする。
つぎに、ステップS12にて、電池制御装置15がVmin+電圧閾値<セル電圧の判定を全セルで行う。該当セルがある場合には、ステップS13へ進み、該当セルがない場合には、ステップS17の演算終了へ進む。ステップS13において、電池制御装置15は、該当セルを(セル電圧-Vmin)分の容量が調整されるように、バランシング動作を開始した後、ステップS14へ進む。ステップS14では、電池制御装置15が、最低電圧となったセル番号のある期間内に、バランシングの目標に指定された回数である、目標指定回数値/時間をカウントアップした後、ステップS15へ進む。
この目標指定回数値/時間が、目標指定回数閾値以下か否かについて、電池制御装置15が、ステップS15で判定する。この判定が閾値以下(Yes)の場合は、自己放電異常セルでないので、ステップS17の演算終了に進む。電池制御装置15は、ステップS15(No)により、閾値以上のセルがある場合、S16により自己放電異常セルと判定した後、ステップS17の演算終了に進む。図5を用いて、ステップS14、及びステップS15について、制御内容の詳細を説明する。
図5は、目標指定回数/時間の閾値判定による検知方法を説明するためのグラフである。図5は、横軸にセル番号を示し、縦軸には時間間隔として、例えば1年での目標指定回数を示している。図5に示すように、目標指定回数とは、電池制御装置15におけるバランシング制御時に、最低電圧となり目標セルに指定された回数である。図3と同様に、セル4は他のセルと比較して目標指定回数の多いことが確認できる。
この目標指定回数が目標指定回数閾値Bよりも多い場合には、すなわち、電池制御装置15におけるステップS15の判定が閾値を超えた場合(No)は、ステップS16で異常セルと判定する。このようにして、電池制御装置15は、自己放電等の異常を検知することが可能である。目標指定回数閾値は、セルコン12の消費電力のばらつき、想定される劣化のばらつきを考慮して決定される。
本来、バランシング制御は容量調整機能であって、前述した消費電力のばらつきや劣化のばらつきを補正するためにある。例えば、前述したばらつきが容量A%分発生し、それを補正することがバランシング制御の目的であった場合、A%から想定されるバランシングの回数がB回であった場合に、目標指定回数は閾値Bよりも大きい値でなければならない。
このように、目標指定回数閾値Bは、想定されるバランシングの動作回数で決定される。図5ではセル4のみ該当しているように明示しているが、複数セルが該当することも有り得る。電池制御装置15は、ステップS16で自己放電異常セルと判定した場合、上位システム19へ警報信号を送信するか、又はシステム責任者に警告する。これは電池の交換を促すほか、運転を停止すべき旨を伝えるためである。
上位システム19及び電池制御装置15は、自己放電異常セルのために即時危険には至らないまでも、保護制御する必要がある場合には、そのように実行する。例えば、本システムは、全セル1~nのSOCそれぞれから得られた充電率の平均値を使用して監視制御されることが通常である。
しかし、この自己放電異常セルの発生が判定された場合、異常なセル4を保護して動作させるため、このセル4の電圧から算出されるSOCを制御値として使用すると良い。特に、充電率0%まで放電するような特殊な場合でも、最も劣化が進んだと推定される異常な電池のSOCを把握しながら、最適制御を可能にするためである。ステップS14、及びステップS15において、電池制御装置15は、目標指定回数値/時間が、ある閾値以上か否かで判定していたが、分散(Variance)を考慮する方法もある。
図6は、目標指定回数/時間の分散判定による検知方法を説明するためのグラフである。この図6は、横軸に目標指定回数/時間(Target specified number of times / time)を示し、縦軸に該当セル数(Number of applicable cells)を示している。ここで、該当セル数が統計学で有意水準とされる標本数であり、ばらつき等が理想的であれば、目標指定回数は分散0の中央値を中心に正規分布に沿うはずである。図6に示すように、バランシング目標指定回数の分布Cは、この正規分布に従うものと仮定し、分散の判定等を実施する。実際の系では動作条件や構成要素のばらつきが複雑なため、これには沿わないが判定の基準には使用できる。
実施例1では、分散閾値Dを3σの値と仮定する。正規分布に従う場合、分散3σ以上の目標指定回数は0.1%程度しか存在しないため、電池の直列数が96であった場合には1セルも該当しない確率が高い。しかし、図6で示すように、3σ以上の目標指定回数に該当セルが存在する場合、これを標準から大きく外れた異常セルと判定することに、統計的合理性がある。なお、分散閾値Dに関しては、どこまでの分散を異常ととらえるかによって決定されるべきであるので、3σである必要はない。
また、自己放電異常セルの判定基準として、ステップS15でしめした判定基準に加えて、つぎのような判定基準も追加することが可能である。すなわち、図5で説明した回数の絶対値で決定される目標指定回数閾値Bと、図6で説明した中央値からの分散で決定される分散閾値Dと、の両方とも成立(AND条件)した場合に、異常セルと判定しても良い。あるいは、目標指定回数閾値Bと、分散閾値Dと、の何れか片方のみ成立(OR条件)した場合に異常セル判定しても良い。
従来の組電池システムにおいて、多直列セルの何れかの自己放電を検知する方法として、周知のような、バランシング後の電圧を監視する方法では、バランシング動作で調整された容量分を考慮することが困難であった。また、つぎの2点の課題もあった。第1に、容量調整前後の電圧を監視するだけでは、数mV/dayの変化を捕捉することが困難であった。第2に、平均電圧から乖離して異常電池として検知された原因が、自己放電であるのか、その他の原因として容量劣化等であるのか、何れの原因によって異常が発生したのか、その原因を特定できなかった。
本システムにおける異常電池の検出方法は、全てのセル情報を集約可能な電池制御装置15によって、目標セルの指定回数に基づいて異常電池であることを判別する。すなわち、電池制御装置15は、複数の電池セル1~nが直列に接続されている電池パック(組電池)10の自己放電、各電池セルの電圧と組電池の平均電圧との偏差を演算し、偏差が所定値以上となった場合に自己放電が発生したと判断する。
換言すると、複数の電池セル1~nに対し、開路電圧(OCV:Open Circuit Voltage)のバランシング時に、最低セル電圧(バランシング目標セル)となっていた回数が所定値を超えたものがあれば、その電池セルをOCVが低下したものと判断する。このような本システムによれば、バランシングの目標指定回数を活用することで、バランシング動作を行う前のセル本来の性能に基づく差分を検知することが可能となる。そのため、バランシング後の電圧値で評価する従来の方法よりも、本システムの方が検知精度を高められる。
その結果、本システムによれば、別の原因による容量劣化等でなく、自己放電であることを検知できる。このように、電池制御装置15は、ステップS16で自己放電異常セルと判定した場合、上位システム19へ警報信号を送信するか、又はシステム責任者に警告する。これにより、電池制御装置15は、異常電池の交換を促すほか、運転を停止すべき旨を伝えられる。
実施例1ではバランシング目標回数を制御値としたが、同種の情報としてバランシング時間(Balancing time)やバランシングにて調整された(放電された)容量がある。このようなバランシング時間や、その調整に用いられた容量は、実施例1で説明したように、バランシング動作を行う前のセル本来の性能に基づく差分を検知するための処理に適用できる。ただし、このようなバランシング時間や、その調整に用いられた容量は、セルコン12や電池制御装置15において、通常は把握されないことが多いため、汎用性の点で実施例1のバランシング目標回数には及ばない。
図7は、バランシング時間/時間の閾値判定による検知方法を説明するためのグラフであり、横軸にセル番号を示し、縦軸にある期間内のバランシング時間、もしくはバランシング容量(Balancing capacity)を示す。通常バランシング時にバランシング抵抗に流れる電流値はほぼ一定であり、バランシング容量と時間は相関があることに基づいて、両者を同等の指標とみなして図7の縦軸に表示している。
図5のバランシング目標指定回数値は、多いほど最低セル電圧に近く、自己放電の進んでいる可能性の高いセルであった。これに対し、図7のバランシング時間もしくは容量は、小さいほど最低セル電圧に近く、バランシング調整の対象外であることを示し、バランシング容量閾値Eよりも小さい場合に異常セル判定を行う。
また、図6の目標指定回数に対して3σの分散を適用した例になぞらえて、バランシング時間もしくは容量という数値にも3σの分散を適用することにより、同様の結論を導き出すことが可能である。ここで、図8は、バランシング時間及び容量の分散判定による検知方法を説明するためのグラフである。図8に示すように、バランシング時間もしくは容量が極端に小さい場合、つまり分散として負側の分散閾値G以下となったセルに対し、図7と同様に異常判定を行う。
実施例1や実施例2のように、バランシング制御の目標指定回数や時間、容量によって自己放電セルを特定することは可能であるが、本来容量劣化が進行しているセルを保護するためのバランシング制御であるため、自己放電ではなく容量劣化を誤検知してしまう可能性がある。そのため図9に示すように、例えば容量の劣化率に差がないことを検知することで、自己放電の検知精度を向上することが可能である。図9は、容量劣化率(SOHQ)のばらつき判定を説明するためのグラフであり、横軸にセル番号を示し、縦軸に容量劣化率(SOHQ)をプロットしている。
容量劣化率は、セル毎に電池制御装置15にて推定しているものとする。図9では、平均SOHQ(Average SOHQ)から劣化許容値Hを逸脱したSOHQのセルの存在が読み取れる。一例として、バランシング制御にて目標指定された回数が多いにも関わらず、SOHQには差がない場合のバランシング動作は、容量の劣化でなく自己放電によることが推定できる。その結果、実施例3の組電池システム(これも「本システム」という)によれば、自己放電の検知精度を向上させることが可能である。
条件としては、図5の目標指定回数閾値B以上、且つ目標指定回数閾値BとなったセルのSOHQが劣化許容値H以上であった場合に、自己放電の異常を検知するという制御フローとなる。各セルのSOHQを判定していない場合には、例えば各セルの抵抗劣化率(SOHR)を代用する方法も有効である。また、各セルのSOHQとSOHRの何れも推定していない場合には、各セルの電圧情報から代用する方法も使用できる。
例えば、容量劣化が他よりも進行しているセルは、最低電圧となるため、バランシング制御の目標指定されることも多い。しかし、このような劣化セルは、本システムで調整充電されたならば、容量が小さいために最大セル電圧となる。この現象を検知することで、容量劣化のばらつきにより、バランシング制御の目標指定されているのか否かを判別することができる。条件としては、図5の目標指定回数閾値B以上、且つ、その目標指定回数閾値Bとなったセルが最大電圧セルとなることがない場合に、自己放電の異常を検知するという制御フローとなる。
実施例4ではバランシング制御関連の値ではなく電池セル11の電圧の偏差から異常を検知する方法を説明する。バランシング制御に関する情報を把握することができず、各セル電圧のみしか電池制御装置15で入手することができない場合、セル電圧で自己放電異常を検知する必要がある。
この場合の検知手法を図10と図11を用いて説明する。図10は、各セル電圧-平均電圧である電圧偏差Vdの測定による検知方法を説明するためのグラフである。図10は、各セル1~nの電圧を示している。全セル1~nの電圧の平均値である平均セル電圧(以下、単に「平均電圧」ともいう)Vが図10に示されている。
実施例4では、セル電圧-平均電圧である電圧偏差Vdをセル毎に測定することで検知を行う。この電圧偏差Vdを、例えば1ヶ月分のデータで移動平均化した電圧偏差移動平均Vd’を図11に示す。図11は、各セル電圧の偏差判定による検知方法を説明するためのグラフである。図11に示すように、ここでは単純な移動平均と仮定したが、平均化の処理は、ローパスフィルター、その他、何れの方法でも構わない。
図11では、セル4のみ電圧偏差閾値J以下となっている。電圧偏差閾値Jは、バランシングの制御閾値である電圧閾値Aと近い値に設定することで、バランシング制御がセル4を目標として実行されている可能性が高いことを判断することができる。
条件としては、電圧偏差移動平均Vd’が電圧偏差閾値J以上であった場合に、自己放電の異常を検知するという制御フローとなる。通常、電圧閾値Aでバランシングにより容量が調整されるため、電圧偏差移動平均Vd’が電圧閾値A以上になることは考えにくい。故に、電圧閾Aよりも電圧偏差閾値Jは小さい値に設定する。このようにすることで、電圧情報からも実施例1や2同等の検知が可能となる。
実施例5は、本システムにおいて、最高セル電圧と最低セル電圧と平均電圧といった限られた情報のみに基づいて異常判定する検知方法(以下、「本検知方法」ともいう)を示す。これまでの実施例1~4は、電池制御装置15に本検知方法のソフトを実装するという前提で記載してきた。本検知方法の手順を上位コントローラ19にプログラムとして実装する場合もあり得るため、実施例5では本検知方法がこの上位コントローラ19に実装されることを想定する。一般的に、電池制御装置15までは、各セルの電圧情報を全て得られるが、上位コントローラ19は、限られた情報しか得られない。
すなわち、上位コントローラ19へは、セル電圧の代表値である、最高電圧値、平均電圧値、及び最低電圧値といった程度の情報が伝搬するのみである。そのため、上位コントローラ19では、限られたこれらの代表値から自己放電異常を検知する手法が必要となる。ここで、自己放電が数セル規模で発生している場合を想定する。本システムにおいて、図3のセル1,3で示すような数セルが平均電圧値から電圧閾値Vthだけ乖離している場合、バランシング動作した後、セル1~n全ての電圧が、電圧閾値Vth以下になると、バランシングを停止するという状況になる。
このような場合、図12に示して後述するように、最高電圧値と平均電圧値の偏差が小さいが、最低電圧値と平均電圧値の偏差は大きい、といった状況になる。この状況を検知するためには、下記判定式(a),(b)の両方が同時に成立する条件を適用し、これに該当すれば自己放電を検知することが可能である。
(a)最高電圧値-平均電圧値<最高電圧偏差閾値M
(b)平均電圧値-最低電圧値>最低電圧偏差閾値L
また、上記判定式(a),(b)のみでも良いが、これだけでは一時的に判定式(a),(b)が成立した場合でも、過剰に異常判定するといった誤動作もある。このような誤動作を避けるため、上記判定式(a),(b)が連続した場合に限って異常判定すれば、より精度を向上させられる。
(b)平均電圧値-最低電圧値>最低電圧偏差閾値L
また、上記判定式(a),(b)のみでも良いが、これだけでは一時的に判定式(a),(b)が成立した場合でも、過剰に異常判定するといった誤動作もある。このような誤動作を避けるため、上記判定式(a),(b)が連続した場合に限って異常判定すれば、より精度を向上させられる。
下記条件(1),(2)に示す異常発令カウンタを導入することでこれを実現できる。
条件(1),判定式(a),(b)の両方が真の場合 且つ 異常発令カウンタ≧異常発令カウンタ閾値Kの場合
異常発令について
条件(2),判定式(a),(b)の両方が真の場合 且つ 異常発令カウンタ<異常発令カウンタ閾値Kの場合
条件(2),判定式(a),(b)の両方が真の場合 且つ 異常発令カウンタ<異常発令カウンタ閾値Kの場合
異常発令カウンタ = 異常発令カウンタ+1
条件(3) 上記以外の場合(判定式(a),(b)の何れかが偽の場合)
異常発令カウンタ = 0
条件(3) 上記以外の場合(判定式(a),(b)の何れかが偽の場合)
異常発令カウンタ = 0
この検知動作を図12にて説明する。図12は、最高/平均/最低電圧からの検知方法を説明するためのグラフである。図12の上方には、凡例に示すように、<丸印>で最高電圧値(Maximum voltage value)の推移を示し、<三角印>で平均電圧値(Average voltage value)の推移を示し、<四角印>で最低電圧値(Minimum voltage value)の推移を示している。
また、粗い破線が平均電圧値+最高電圧偏差閾値Mの推移を示し、緻密な点線が平均電圧値-最低電圧偏差閾値Lの推移を示している。粗い破線の内側に<丸印>が存在する場合と、緻密な破線の外側に<四角印>が存在する場合と、判定式(a),(b)が真の場合と、それぞれに対応している。条件成立時間Tに判定式(a),(b)の両方の条件が成立している。このタイミングで図12の下方の異常発令カウンタ(Abnormality announcement counter)はカウントアップを開始する。
これは判定式(a),(b)が成立し、条件(3)の状態から条件(2)の状態の条件に移行したことを示している。条件成立時間Tの後も、判定式(a),(b)は成立しているためカウントアップを継続する。これは条件(2)の状態が継続していることを示している。異常発令時間Nにて、異常発令カウンタが異常発令カウンタ閾値K以上となったため、この時点で異常との検知を上位コントローラ19(図1)に通知する。これは条件(2)の状態から条件(1)の状態に移行したことを示している。このように継続時間を判定に用いることで異常判定の精度を向上することが可能となる。
実施例1、及び実施例2では、パッシブバランシング制御を前提に記載してきたが、アクティブバランシング制御等において、最低電圧値を目標に設定しない場合が存在する。このような場合について、実施例6により説明する。
アクティブバランシング制御とは、SOC及び電圧が平均よりも高い電池から、SOC及び電圧が平均よりも低い電池に、エネルギーを転送することでエネルギーのロスなく容量調整できる制御である。図13は、アクティブバランシング制御を説明するための概要図である。図13において、エネルギー転送目標電圧Pを、例えば平均電圧値に設定する。
図13に示すように、このエネルギー転送目標電圧Pよりも高い電圧の電池であるバランシング放電指定セルQに対し、エネルギー転送目標電圧Pまで、電池制御装置15がバランシング放電Zを行う。つぎに、このエネルギー転送目標電圧Pよりも低い電圧の電池であるバランシング充電指定セルSに対し、エネルギー転送目標電圧Pまで、電池制御装置15がバランシング充電Uを行う。
このようにSOC及び電圧の高い電池からSOC及び電圧の低い電池へエネルギー転送する方式を、アクティブバランシング制御という。図13に示す実施例6では、エネルギー転送目標電圧よりも高ければ、全て放電指定セルのように例示している。しかし、全てがそうである必要はなく、一定偏差以上乖離した場合には、制御閾値を設けても良い。
同様に、エネルギー転送目標電圧よりも低ければ、全て充電指定セルのように例示している。しかし、一定偏差以上乖離した場合には、制御閾値を設けても良い。これを実現するシステム構成として、例えば、トランスを介してエネルギーを転送する構成を設けても良い。それらは、セルコン12のハードウェアとして、図2の回路に付加した構成により、エネルギーを転送するようにシステム構成することが必要となる。
前述したように、このアクティブバランシング制御の場合、最低電圧値をバランシングの目標値とせず、平均値を目標にする場合がある。この場合、目標指定回数をカウントアップすると、平均電圧のセルをカウントアップしてしまうため適切ではない。
したがって、実施例4、及び実施例5で示すように、各セル電圧の偏差を使用する方法、もしくは実施例6で説明する方法が好ましい。アクティブバランシング制御では、SOCの低いセル、つまりエネルギー転送先となるセルを指定してエネルギーを転送する。この場合、セルコン12において、これを判別し処理する必要があるため、制御値としてバランシング充電指定セルと、バランシング充電容量と、を使用する。
この制御値を電池制御装置15、もしくは上位コントローラ19によって、バランシング目標指定回数を集計することで、パッシブバランシング制御と同等の処理を行うことが可能である。この場合、図5で使用した最低電圧のバランシング目標指定回数に対応する値として、バランシング充電指定回数を代用可能である。また、図7で使用したバランシング時間、及びバランシング容量に対応する値として、バランシング充電容量を代用することも可能である。
これについて、図14を用いて説明する。図14は、横軸にセル番号(Cell No.)を、縦軸をある期間内のバランシング充電の指定回数/時間(Balancing charge specified number of times / time)、及びそのバランシング充電容量[Ah]/時間(Balancing charge capacity [Ah] / hour)を示す。図14において、バランシング充電指定回数、又はバランシング充電容量が、バランシング充電閾値(Balancing charge threshold)Yよりも大きい場合に、異常セル判定を行う。アクティブバランシング制御では、このような検知手法とすることでパッシブバランシング制御の検知と同等の検知が可能となる。
[補足1]
自己放電はセル内部の正負電極間の絶縁抵抗が低下することを原因とする。この自己放電は、消費しなくても無負荷電圧が4V→3.9Vに下落するような現象で、内部絶縁不良等が原因である。容量劣化は、負荷時電圧が4V(100%)→3.7V(40%)→2.7V(0%)といった放電経過が本来より早まって、エネルギー容量が低下する性能劣化現象である。
自己放電はセル内部の正負電極間の絶縁抵抗が低下することを原因とする。この自己放電は、消費しなくても無負荷電圧が4V→3.9Vに下落するような現象で、内部絶縁不良等が原因である。容量劣化は、負荷時電圧が4V(100%)→3.7V(40%)→2.7V(0%)といった放電経過が本来より早まって、エネルギー容量が低下する性能劣化現象である。
パッシブバランシングは、各セルで電圧を揃えるように、平均から40mVくらい外れていれば、高い方のセルを抵抗放電して均等化する。アクティブバランシングは、抵抗放電せずに余分な電力を不足するセルに補充して均等化する。
[補足2]
近年、リチウムイオン電池は、そのエネルギー密度が向上したことにより、電気自動車(EV)の普及を徐々に拡大させた。乗用車タイプのEVは、1充電の走行距離が400kmを超えている。一方、鉄道車両は、1両の質量が30~40tonであり、機器の車載スペースが限られる。このような制約条件に対し、高エネルギー密度と高出力密度を両立するリチウムイオン電池による蓄電池システムを車載した電車(EMU:Electric Multiple-Unit)も導入されている。
近年、リチウムイオン電池は、そのエネルギー密度が向上したことにより、電気自動車(EV)の普及を徐々に拡大させた。乗用車タイプのEVは、1充電の走行距離が400kmを超えている。一方、鉄道車両は、1両の質量が30~40tonであり、機器の車載スペースが限られる。このような制約条件に対し、高エネルギー密度と高出力密度を両立するリチウムイオン電池による蓄電池システムを車載した電車(EMU:Electric Multiple-Unit)も導入されている。
つまり、電車の回生エネルギーの一部を吸収して回生失効を防止する回生エネルギー吸収システムを高性能化する。その結果、1充電で100kmを超える走行を可能とする。さらに、電気式気動車(DEMU:Diesel-Electric Multiple-Unit)の回生エネルギーを吸収し、力行エネルギーをアシストするために、リチウムイオン電池を車載したハイブリッド気動車化も進められている。
蓄電池システムを車載した電車は、通常の電車システムと比較して、架線、変電所等の地上設備が設けられていない非電化区間であっても、始発駅と終端駅、場合によりいくつかの中間駅のみ充電設備を設け、充電設備毎に蓄電池を充電することによって当該区間を走行することができる。
電化路線であっても、蓄電池システムを車載した電車を導入し、支線等で運用頻度の低い路線は、架線、変電所等の地上設備を廃止し、メンテナンスコストを低減できる。このような、蓄電池システムを車載した電車では、一回の充電で所定の距離を走り切るため、高い蓄電率まで充電し、SOCを維持させるようにすることが一般的である。
一方、地上設備の故障時、特に架線停電時は、橋梁上やトンネル内など、乗客の退避が難しい区間での立ち往生を避けるため、一定距離の走行が可能である点で蓄電池システムの導入のニーズは高まりつつある。このように、蓄電池システムを地上設備故障時の車両立ち往生を防ぐことを目的として用いる場合には、万が一発生する故障時に備え、蓄電率が高い状態を長期間維持する必要がある。
本発明の実施形態に係る蓄電池システム(本システム)は、つぎのように総括できる。
[1]実施例4に記載の本システムは、組電池を容量調整(バランシング)制御しながら運用するものである。本システムは、組電池と、容量調整回路23と、セルコン(Battery Cell Controllers)12と、電池制御装置15と、を備える。なお、容量調整回路23、セルコン12、及び電池制御装置15、をまとめてコントローラともいう。このコントローラには、さらに上位コントローラ19まで含めると考えても良い。ここに記載した逆の順で、図1及び図2に示すような制御の階層が構成される。
[1]実施例4に記載の本システムは、組電池を容量調整(バランシング)制御しながら運用するものである。本システムは、組電池と、容量調整回路23と、セルコン(Battery Cell Controllers)12と、電池制御装置15と、を備える。なお、容量調整回路23、セルコン12、及び電池制御装置15、をまとめてコントローラともいう。このコントローラには、さらに上位コントローラ19まで含めると考えても良い。ここに記載した逆の順で、図1及び図2に示すような制御の階層が構成される。
組電池(電池パック)10は、複数の電池セル11が直列接続されて、所望の電圧及び容量を提供する。容量調整回路23は、コントローラの下部機能であり、組電池10を構成する複数の電池セル11相互間の不均衡を是正するように容量調整する。セルコン12は、容量調整回路23を制御する。このセルコン12は、全てのセル1~nから情報を集約可能であり、各セルの平均電圧との差分を常にモニタしておいて、常に一番下にはみ出続けているセル4を異常と判定する。電池制御装置15は、セルコン12の上位に階層構成され、取得した電池状態を示す情報と制御命令とを授受しながら電池セル11を監視及び制御する。
電池制御装置15は、組電池10のうち、電圧偏差閾値Jで示す許容範囲を超えた電圧となっている電池セル11(セル4)を容量調整する。すなわち、電池制御装置15は、実施例4の図11に示すように、組電池10の平均電圧に対し、電圧の偏差が所定値以上の電池セル11があれば(セル4)、それを自己放電が発生した異常電池と判断する。本システムによれば、各セルの電圧情報から推定することにより、自己放電が多くなった異常セルを早期検知することが可能である。
[2]上記[1]において、本システムは、各電池セル11から収集した電圧の統計情報を使用して異常電池を検出するように判断することが好ましい。すなわち、本システムは、各電池セル11の電圧と組電池10の平均電圧との偏差を演算し、偏差の分布の分散が所定値以上であれば自己放電が発生した異常電池と判断する、例えば統計学でいう正規分布において、3σ以上の偏差があれば、異常電池と判断しても良い。このように、統計学に基づいた合理的な品質管理体制を実現することにより、まだ使えるものを交換する無駄のほか、手遅れになって可用性を損ねるような無駄も低減できる。
[3]上記[1]又は[2]の本システムにおいて、容量調整回路23は、他より高い電池セル11を短絡調整させて、組電池10を構成する複数の電池セル11相互間の不均衡を是正するように、パッシブバランシング制御しても良い。このとき電池制御装置15は、このパッシブバランシング制御の実行中には、単位時間あたり最低電圧となった回数を計数する。このように計数された、最低電圧となった回数を異常電池と判断する判定基準に適用すると良い。
この判定基準は、上記[1]又は[2]において適用されていた、組電池10の平均電圧に対する各電池セル11の電圧の偏差に代わる判定基準である。このような判定基準を適用する本システムによれば、バランシングの目標指定回数を活用することで、バランシング動作を行う前のセル本来の性能に基づく差分を検知することが可能となる。そのため、バランシング後の電圧値で評価する従来の方法よりも、本システムの方が検知精度を高められる。
[4]上記[1]又は[2]において、組電池10の平均電圧に対する各電池セル11の電圧の偏差に代えて、容量調整における、単位時間あたりの、実行時間、又は調整容量値を適用しても良い。このような判定基準を適用する本システムによれば、上記[3]と同様に、バランシングの目標指定回数を活用することで、バランシング動作を行う前のセル本来の性能に基づく差分を検知することが可能となる。そのため、バランシング後の電圧値で評価する従来の方法よりも、本システムの方が検知精度を高められる。
[5]上記[1]又は[2]において、実施例5に記載の本システムは、組電池10の平均電圧に対する各電池セル11の電圧の偏差に代えて、容量調整の実行中の、平均電圧に対する、最高セル電圧と、最低セル電圧と、それぞれとの偏差を適用しても良い。その場合、最高セル電圧と平均電圧との偏差が所定値以下であり、平均電圧との偏差が所定値以上の最低セル電圧の電池セル11があれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する。
このような本システムによれば、全ての情報が集約できないセルコン12や、その上位コントローラ19で判定する場合にも、良好な判定性能が得られる。例えば、最低電圧、平均電圧、及び最高電圧のみと、いった限られた情報での判定を要する場合がそれに該当する。そのほか、パッシブバランシング制御しても最低電圧対象セルがいつまでも変化せず、電圧閾値程度の乖離状態が長時間にわたって継続し続けているような電池セル11があれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する。
[6]上記[1]又は[2]において、実施例6に記載したように、容量調整回路23は、容量調整のために他より低い電池セル11に充電調整させてアクティブバランシング制御しても良い。このアクティブバランシング制御の実行中には、単位時間あたりの、充電された回数と、充電された容量と、少なくとも何れかが所定値以上の電池セル11があれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する。
これは、上記[1]又は[2]における判定基準として用いた、組電池10の平均電圧に対する各電池セル11の電圧の偏差に代えたものである。パッシブバランシング制御は、良好なセルを短絡調整するため、無駄に電力を消費する。これに対し、本システムのアクティブバランシング制御では、弱ったセルに加勢するので、そのための最適なシステムに構成すれば、調整用の無駄な電力消費を低減できる。
[7]上記[1]において、実施例3に記載したように、電池制御装置15は、取得した電池状態を示す情報に基づいて各電池セル1~nの容量劣化率(SOHQ)を推定し、それらを組電池全体で平均した容量劣化率平均値(平均SOHQ)を算出可能であると良い。電池制御装置15は、推定した各電池セル1~nの容量劣化率(SOHQ)が、劣化許容値Hの範囲内に含まれる場合に、自己放電が各電池セル1~nの何れかで発生したと判断することが好ましい。
この実施例3の本システムによれば、組電池の各電池1~nにおける容量の劣化度(SOHQ)に差が少ない場合に限って、上記[1]のように自己放電が発生した異常電池と判断することにより、異常検出の精度を向上できる。つまり、劣化許容値Hの範囲を超えるほどに、容量の劣化度(SOHQ)に差が大きければ、上記[1]のように、自己放電を原因とする電圧低下ではないと判断することにより、異常検出の精度を向上できる。つまり、より早めの対応が必要な自己放電について、誤報の無駄をなくせる。
このような本システムによれば、直列接続された組電池10にとって、容量劣化率(SOHQ)が劣化したものよりも、危害の程度が大きい自己放電の傾向に着目した検出ができる。なお、容量劣化率(SOHQ)は、経年劣化や使用頻度に応じて負荷時の充放電効率が低下するといった、蓄電池に規定された寿命として予想される現象であり、相応の運用で対処できる。
しかし、自己放電は、本来あってはならないセル内部の絶縁劣化であり、これを長期間放置すると無負荷時の放電により発熱故障を増大させる、といった深刻な事態も予想される。このように、あってはならない自己放電を、必然的なSOHQと区別し、無負荷時にも早期発見できる本システムは、安全の点で有利である。
なお、電池制御装置15は、1チップマイコン等のコンピュータであり、不図示のメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、容量の劣化度(SOHQ)や抵抗劣化を推定するアルゴリズムを作動させると良い。これにより推定されたSOHQを電圧情報で補完して高精度にしても良い。例えば、最大電圧となる電池セルとバランシング目標が同じ場合は、SOHQをより確実に推定できる。さらに、コンピュータの形状はいかなるものでも良く、他の用途のコンピュータの一部を兼用利用しても構わない。
[8]上記[1]~[7]に記載の蓄電池システムを鉄道車両に備えることが好ましい。このような鉄道車両の蓄電池システムは、自己放電が多くなった異常セルを早期検知できるので、検知された異常電池のみを交換する、といったメンテナンスを遅滞なく実行すれば、可用性を高められる。
10:電池パック(組電池:Battery pack)、11:電池セル(Battery cell)、12:セルコン(Battery Cell Controllers)、13:電圧検出線(Voltage detection line)、14:熱電対(thermocouple)、15:電池制御装置(Battery control device)、16:通信線(Communication line)、17:電流センサ(Current sensor)、18:上位との通信線(Communication line with higher level)、19:上位コントローラ(Upper controller)、23:容量調整回路(バランシング回路)(Balancing circuit)、21:トランジスタ(Transistor)、22:バランシング抵抗(Balancing resistor)、B:目標指定回数閾値(Target specified number of times threshold)、C:バランシング目標指定回数の分布(Distribution of the number of times the balancing target is specified)、D:バランシング目標指定回数の分散閾値(Variance threshold of the number of times the balancing target is specified)、E:バランシング容量閾値(Balancing capacity threshold)、F:バランシング時間の分布(Balancing time distribution)、G:バランシング時間の分散閾値(Balancing time variance threshold)、H:劣化許容値(Deterioration tolerance)、J:電圧偏差閾値(Voltage deviation threshold)、K:異常発令カウンタ閾値(Abnormal announcement counter threshold)、L:最低電圧偏差閾値(Minimum voltage deviation threshold)、M:最高電圧偏差閾値(Maximum voltage deviation threshold)、N:異常発令時間(Abnormal announcement time)、P:エネルギー転送目標電圧(Energy transfer target voltage)、Q:バランシング放電指定セル(Balancing discharge designated cell)、S:バランシング充電指定セル(Balancing charge designated cell)、T:条件成立時間(Condition fulfillment time)、U:バランシング充電(Balancing charging)、V:平均電圧(Average cell voltage)、Vd:電圧偏差(Voltage deviation)、Vd’:電圧偏差移動平均(Voltage deviation moving average)、Vth:電圧閾値(Voltage threshold)、Y:バランシング充電閾値(Balancing charge threshold)、Z:バランシング放電(Balancing discharge)
Claims (14)
- 組電池を容量調整しながら運用する蓄電池システムであって、
前記組電池は、複数の電池セルが直列接続されており、
前記容量調整も可能なコントローラを備え、
該コントローラは、
前記複数の電池それぞれから電池状態を取得し、取得した電池状態に基づいて制御命令を生成し、
該制御命令により、前記組電池のうち許容範囲外の電圧となっている電池セルの容量を調整する過程で、当該組電池の平均電圧に対し、電圧の偏差が所定値以上の電池セルを異常電池として判断する、
蓄電池システム。 - 各電池セルの電圧と前記組電池の前記平均電圧との偏差を演算し、
該偏差の分布の分散が所定値以上であれば自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項1に記載の蓄電池システム。 - 前記コントローラの下部機能の容量調整回路をさらに有し、
該容量調整回路は、前記容量調整のために他より高い電池セルを短絡調整させてパッシブバランシング制御し、
前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
該パッシブバランシング制御の実行中に、単位時間あたり最低電圧となった回数を適用する、
請求項1又は2に記載の蓄電池システム。 - 前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記容量調整における、単位時間あたりの、実行時間、又は調整容量値を適用する、
請求項1又は2に記載の蓄電池システム。 - 前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記容量調整の実行中の、前記平均電圧に対する、最高セル電圧と、最低セル電圧と、それぞれとの偏差を適用し、
前記最高セル電圧と前記平均電圧との偏差が所定値以下であり、前記平均電圧との偏差が所定値以上の前記最低セル電圧の電池セルがあれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項1又は2に記載の蓄電池システム。 - 前記容量調整回路は、前記容量調整のために他より低い電池セルに充電調整させてアクティブバランシング制御し、
前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記アクティブバランシング制御の実行中に、単位時間あたりの、充電された回数と、充電された容量と、少なくとも何れかが所定値以上の電池セルがあれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項3に記載の蓄電池システム。 - 前記コントローラは、取得した前記電池状態を示す情報に基づいて各電池セルの容量劣化率を推定可能であり、
容量劣化率平均値に対する偏差が所定値以下と規定された劣化許容値の範囲内に前記各電池セルの容量劣化率が含まれる場合に、前記各電池セルの何れかで異常が発生したと判断する、
請求項1に記載の蓄電池システム。 - 請求項1~7の何れか1項に記載の蓄電池システムを備えた鉄道車両。
- 複数の電池セルが直列接続された組電池をコントローラが容量調整しながら運用する異常電池検知方法であって、
前記コントローラは、取得した電池状態を示す情報と制御命令とを授受しながら前記電池セルを監視及び制御し、
前記コントローラは、前記組電池のうち許容範囲外の電圧となっている電池セルを前記容量調整するとともに、
前記組電池の平均電圧に対し、電圧の偏差が所定値以上の前記電池セルがあれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する、
異常電池検知方法。 - 各電池セルの電圧と前記組電池の前記平均電圧との偏差を演算し、
該偏差の分布の分散が所定値以上であれば自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項9に記載の異常電池検知方法。 - 前記コントローラの下部機能の容量調整回路をさらに有し、
該容量調整回路は、前記容量調整のために他より高い電池セルを短絡調整させてパッシブバランシング制御し、
前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
該パッシブバランシング制御の実行中に、単位時間あたり最低電圧となった回数を適用する、
請求項9又は10に記載の異常電池検知方法。 - 前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記容量調整における、単位時間あたりの、実行時間、又は調整容量値を適用する、
請求項9又は10に記載の異常電池検知方法。 - 前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記容量調整の実行中の、前記平均電圧に対する、最高セル電圧と、最低セル電圧と、それぞれとの偏差を適用し、
前記最高セル電圧と前記平均電圧との偏差が所定値以下であり、前記平均電圧との偏差が所定値以上の前記最低セル電圧の電池セルがあれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項9又は10に記載の異常電池検知方法。 - 前記容量調整回路は、前記容量調整のために他より低い電池セルに充電調整させてアクティブバランシング制御し、
前記組電池の平均電圧に対する各電池セルの電圧の前記偏差に代えて、
前記アクティブバランシング制御の実行中に、単位時間あたりの、充電された回数と、充電された容量と、少なくとも何れかが所定値以上の電池セルがあれば、それを自己放電が発生した異常電池と判断する、
請求項11に記載の異常電池検知方法。
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