JP2022177504A - 熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、化粧フィルム、および化粧用粘着フィルム - Google Patents

熱可塑性樹脂フィルム、粘着フィルム、化粧フィルム、および化粧用粘着フィルム Download PDF

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Abstract

【解決課題】取扱い性や加工性に優れ、且つ粘着剤や印刷層との密着性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供すること。【解決手段】230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物からなる層を表裏の少なくとも一方の面に有する熱可塑性樹脂フィルム。

Description

本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、又は化粧シート等の基材として好適に用いられる熱可塑性樹脂フィルム、当該フィルムに粘着剤層を設けた粘着フィルム、及び当該フィルムに印刷層を設けた化粧フィルム等に関する。
従来、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の化粧用粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されてきた。
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るよう、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウエハやパッケージ等を切断する際に半導体ウエハ加工用の粘着フィルムが用いられており、上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、PVC系、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。
近年、半導体素子の小型化・薄型化が進みこれまでは問題になっていなかった、静電気によるデバイス破壊の問題が顕在化してきている。また、特にエチレンビニルアルコール系シートやエチレンメタクリル酸アクリレート系のシートで切り屑(基材シートのカットラインから伸びたヒゲ状の切り残査)のデバイスへの付着が問題になっている。そのため、半導体ウエハ加工用粘着テープにおいて、帯電防止性能が優れ、切り屑の発生が少ないポリオレフィン系シートへの要求が高まっている。
また、ウエハ加工後に粘着テープを剥離する際に、ウエハに粘着剤が転写し、その後の工程においてウエハへの粘着剤の転写に起因する不具合が発生するケースもある。その場合、基材と粘着剤との間の密着性を向上させるために、粘着剤の変更以外の手法として、基材側に極性のある官能基を付与し、密着性を向上させたいという要望がある。
特許文献2には、帯電防止性に優れ、ダイシング時の切り屑の発生が少ない、ポリオレフィン系シート及びその基材シートを用いたポリオレフィン系半導体ウエハ加工用粘着テープが開示されている。
また、特許文献3には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
しかしながら、特許文献2及び3に記載されている発明のような一般的なポリオレフィン系樹脂を主成分としたフィルムでは、取扱い性や加工性には優れるものの、ポリオレフィン系樹脂自体が極性を有する官能基を有していないため、粘着剤や印刷層との樹脂との相溶性や反応性が乏しく密着性が向上しないという課題があった。
特開平09-008111号公報 特開2012-69999号公報 特開2020-84143号公報
本発明は、上記の問題に鑑みて、取扱い性や加工性に優れ、且つ粘着剤や印刷層との密着性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを提供することを目的とする。また、本発明は、該フィルムに粘着剤層や印刷層を設けることで、半導体製造工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる粘着フィルム、化粧フィルム、及び化粧用粘着フィルムを提供することも目的とする。
本発明者は、特定のポリオレフィン系樹脂を用いることで、粘着剤や印刷層との密着性に優れたフィルムを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物からなる層を表裏の少なくとも一方の面に有する熱可塑性樹脂フィルム。
[2]
前記酸無水物が無水マレイン酸である、[1]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[3]
前記樹脂組成物が、当該樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂100質量%に対して、ポリオレフィン系樹脂(A)を20質量%以上含有する、[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[4]
前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂(A)以外の樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[5]
前記樹脂組成物が、高分子型帯電防止剤を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの、少なくとも1つの前記樹脂組成物からなる層の上に粘着剤層が設けられている、粘着フィルム。
[7]
半導体製造工程用フィルムとして用いられる[6]に記載の粘着フィルム。
[8]
[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの、少なくとも1つの前記樹脂組成物からなる層の上に印刷層が設けられている、化粧フィルム。
[9]
[8]に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着剤層が設けられている、化粧用粘着フィルム。
本発明の熱可塑性樹脂フィルムを用いることで、取扱い性や加工性に優れ、且つ粘着剤や印刷層との密着性に優れたフィルムを提供することが可能となる。また、本発明は、該フィルムに粘着剤層や印刷層を設けることで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、これらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる。
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明の1つの実施態様は、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物からなる層を表裏の少なくともいずれか一方の面に有する熱可塑性樹脂フィルムである(以下「本発明のフィルム」ともいう)。
1. 樹脂組成物A
本発明のフィルムに使用する樹脂組成物は、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物である。以下、本発明のフィルムに使用する上記の樹脂組成物を「樹脂組成物A」ともいう。
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
樹脂組成物Aには、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)が必須成分として含まれる。
ポリオレフィン系樹脂(A)としては、粘着剤との密着性を向上させる観点から極性を有する官能基として、酸無水物に由来する構造単位を有することが必要である。酸無水物を有する構造単位を有することで、当該ポリオレフィン系樹脂(A)を含有するフィルムと粘着剤との相溶性や反応性が向上し、密着性を良好なものとすることができる。
酸無水物の構造としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水フマル酸、無水フタル酸等を挙げることができる。中でも入手のし易さの観点から無水マレイン酸に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)が好適に用いられる。
本発明に用いるポリオレフィン系樹脂(A)としては、樹脂を製造する際に、不飽和二重結合を有する単量体と酸無水物に由来する構造を有する単量体とを共重合して得られるポリオレフィン系樹脂であってもよいし、酸無水物に由来する構造を有する単量体を樹脂の側鎖にグラフトさせることで側鎖に酸無水物に由来する構造を有するポリオレフィン系樹脂であってもよい。
前述の不飽和二重結合を有する単量体と酸無水物に由来する構造を有する単量体との共重合に用いられる不飽和二重結合を有する単量体としては、プロピレン、エチレンまたは他のα-オレフィンが好適に用いられる。α-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられる。プロピレン、エチレンまたは他のα-オレフィンは、その1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
また、より多くの極性を持つ官能基を導入するために、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等に代表されるアクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキル、反応性を有するヒドロキシ基やグリシジル基を有するメタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル等の単量体を共重合の際に用いてもよい。
このようなポリオレフィン系樹脂(A)の市販品の具体例としては、モディックP512V、モディックP565、モディックP664、モディックP502、モディックM545、モディックF573等(以上、三菱ケミカル社製)、LOTADER3210、LOTADER4210、LOTADER6200、LOTADER3430、LOTADER4503、BONDINELX4110、BONDINETX8030、BONDINE5500、BONDINEAX8390等(以上、アルケマ社製)、アドマーLF128、アドマーNF528、アドマーQF551、アドマーSF731等(以上、三井化学社製)を挙げることができる。
また、ポリオレフィン系樹脂(A)のメルトフローレートとしては、230℃、2.16kg荷重の条件で測定した値が、1~30g/10分の範囲内にあることが必要である。
メルトフローレートが上記の範囲内にあることで、ポリオレフィン系樹脂(A)の分子量を最適なものとすることができ、フィルムの製膜性を良好に維持しつつ、粘着剤の密着性や基材の強度も十分なものとすることができる。メルトフローレートが30g/10分を超えると、ポリオレフィン系樹脂(A)の分子量が低下し、分子鎖が短くなることに起因するフィルムの強度の低下により、粘着剤を剥離する際にポリオレフィン系樹脂(A)を含有する層の破壊が発生し、粘着剤側に当該層の一部が付着してしまうことがある。この現象により、フィルムと粘着剤との密着性は認められるものの、被着体側に粘着剤およびフィルムの一部が転写することから、前述した半導体工程において不具合が発生する原因となる。また、メルトフローレートが1g/10分未満であると、溶融時の樹脂の粘度が高いことに起因する、樹脂の流れ不良による外観のムラの発生や、後述する溶融押出成形法に用いられる押出機への負荷の増加による製膜性への悪化の観点から好ましくない。メルトフローレートの範囲として、より好ましくは1~20g/10分、さらに好ましくは1~10g/10分である。
樹脂組成物Aは、樹脂組成物Aを構成する熱可塑性樹脂100質量%に対して、ポリオレフィン系樹脂(A)を20質量%以上含有することが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(A)を20質量%以上含有することにより、当該樹脂組成物Aからなる層に十分な酸無水物に由来する構造を付与することができ、粘着剤や印刷層と当該層との相溶性や反応性を向上させることが可能となる。より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは24質量%以上である。
<その他の熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂フィルムには、前述したポリオレフィン系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂を含有させることができる。
ポリオレフィン系樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリメチルペンテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等を挙げることができる。
中でもポリオレフィン系樹脂(A)との相溶性、入手のし易さ、経済性の観点から、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレートは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは80~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは100~1800MPaの範囲内である。
上記、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として、スチレン系エラストマーを用いることも可能である。
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
スチレン系エラストマーのメルトフローレート(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレートが0.1g/10分以上、10g/10分以下であれば、他樹脂との相溶性がよく、製膜性の点で好ましい。
スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、アサプレンT-438、アサプレンT-439、タフテックH1221、タフテックH1041、タフテックH1052、タフテックH1053、タフテックH1517(以上、旭化成社製)、セプトン4099、セプトンHG252、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L、セプトンHG252、セプトンV9461、セプトンV9475、ハイブラー7311、ハイブラー7125F、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、ダイナロン8300P、ダイナロン8903P、ダイナロン9901P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。熱可塑性樹脂フィルムを得る際の製膜性や、得られるフィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
ポリメチルペンテン系樹脂としては、メチルペンテンをモノマーとする単独重合体またはその他のモノマーとの共重合体を用いることが好ましい。具体例としては、ポリプロピレン系樹脂についてプロピレンと共重合可能な他の単量体として例示したα-オレフィンと4-メチルペンテン-1との共重合体を挙げることができる。
ポリメチルペンテン系樹脂が、共重合体である場合は、共重合に用いられるα-オレフィン成分の含有量が20質量%以下であることが好ましい。20質量%以下とすることで、結晶融解ピークの低下を抑制することが可能となる。より好ましくは10質量%以下である。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
<高分子型帯電防止剤>
本発明の樹脂組成物Aには、以下に示す高分子型帯電防止剤を含むこともできる。
高分子型帯電防止剤としては公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
以上のような構造を示す高分子型帯電防止剤のうち、例えば、ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体、ポリエーテルと疎水性エステルアミドとのブロック共重合体であるポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルと疎水性アミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミド、又は、ポリエーテルと疎水性アミドイミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミドイミド、或いは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体をより好ましく用いることができる。また、例えば、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いる場合、高分子型帯電防止剤には、ポリオレフィン系樹脂との相溶性の観点からポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体に例示される、特開2008-274031号公報に記載されたポリオレフィン部及び親水性ポリマー部の各々のブロックが繰り返し交互に結合した構造を有するブロック共重合体を用いることが好ましい。
なお、高分子型帯電防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に帯電防止性を向上させるために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤及びイオン性液体等が配合されていてもよい。
ポリエーテルエステルアミドの市販品としては、富士化成工業株式会社製のTPAEが挙げられる。ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体の市販品としては、三洋化成工業社製のペレスタット300、ペレスタット230及びペレクトロンPVL、ぺレクトロンPVH等が挙げられる。
<その他成分>
樹脂組成物Aには、前述したポリオレフィン系樹脂や高分子型帯電防止剤以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、前述した高分子型帯電防止剤以外の帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
滑剤やアンチブロッキング剤としては、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
2.熱可塑性樹脂フィルム
本発明のフィルムは、前述したポリオレフィン系樹脂(A)を含む樹脂組成物Aからなる層を少なくとも表裏のいずれか一方の面の側に有する熱可塑性樹脂フィルムである。
前述した各種樹脂と高分子型帯電防止剤を有する層を表裏のいずれか一方の面に有することで、得られる熱可塑性樹脂フィルムに良好な帯電防止性能を付与することが可能となる。
表裏のいずれか一方の面の側にのみ樹脂組成物Aからなる層を設けるか、表裏の両面の側ともに樹脂組成物Aからなる層を設けるかは適宜用途に応じて決めることができる。フィルムの両面への粘着剤層の積層の有無により、表裏のいずれか一方の面とするか両面ともにするかを選択することができる。
本発明のフィルムは、樹脂組成物Aからなる層を、表裏の少なくともいずれか一方の面の側に有するが、その基本的な構成は次の通りである。
(1)樹脂組成物Aからなる層、樹脂組成物Aとは同一または異なる樹脂の構成である樹脂組成物(以下「樹脂組成物B」ともいう)からなる層を備える2層フィルムの構成。
(2)樹脂組成物Aからなる層(表層)、樹脂組成物Bからなる層(中間層)、及び樹脂組成物Aからなる層(裏層)を備える3層フィルムの構成。
(3)樹脂組成物Aからなる層(表層)、樹脂組成物Bからなる層(中間層)、及び樹脂組成物Bからなる層(裏層)を備える3層フィルムの構成。
ここで、(2)の3層フィルムの構成において、表層と裏層を構成する樹脂組成物Aは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、(3)の3層フィルムの構成において、中間層と裏層を構成する樹脂組成物Bは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
また、(2)、(3)の構成においては、中間層が2以上の多層から構成されていてもよい。その場合には、(2)、(3)の構成は、3層以上からなるフィルム構成も包含する。
上記の樹脂組成物Bは、熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物であるが、その詳細は、樹脂組成物Aについて詳述した内容と同様である。
即ち、樹脂組成物Bにおいても、ポリオレフィン系樹脂(A)、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリメチルペンテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂等を好適に用いることができる。
更に、樹脂組成物Bには、ポリオレフィン系樹脂等以外に耐熱性や耐候性等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
また、本発明の1つの態様においては、上記の樹脂組成物Bは、ポリオレフィン系樹脂(A)を含有せずに、樹脂成分として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリメチルペンテン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、高分子型帯電防止剤から選択される1種以上を含有する。
本発明の1つの態様においては、中間層を構成する樹脂組成物Bは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーから選択される1種以上と、スチレン系エラストマーを含有する。
また、本発明の1つの態様においては、上記2層フィルムの一方の層、3層フィルムの裏層を構成する樹脂組成物Bは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーから選択される1種以上と、高分子型帯電防止剤を含有する。
本発明のフィルムの1つの側面は、2以上の層を有する熱可塑性樹脂フィルムであって、少なくとも1つの層が樹脂組成物Aからなり、樹脂組成物Aからなる層を、該熱可塑性樹脂フィルムの表裏の少なくとも一方の面側に有する、熱可塑性樹脂フィルムである。
ここで、少なくとも1つの層以外の層は、樹脂組成物Bからなるのが好ましい。
また、樹脂組成物Aからなる層を設けた面の表面抵抗値としては、1.0×1013Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗値が1.0×1013Ω/□以下であれば、優れた帯電防止性能を有し、フィルムの生産時や続く印刷層、粘着層を積層する工程においても埃やその他浮遊物等の異物が付着しにくくなるため好ましい。より好ましくは1.0×1012Ω/□以下、さらに好ましくは1.0×1011Ω/□以下である。
本発明で行われる表面抵抗値の測定は、JISK6911に準拠し、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、2重リング法の電極を用いて行うものである。
また、本発明のフィルムの厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、250μm以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの取り扱い性や工程通過性を良好に保つことが可能となる。本発明のフィルムの厚みは、より好ましくは40~230μm、さらに好ましくは50~210μmである。
また、本発明のフィルムの引張弾性率が、50~1500MPaの範囲内であることが好ましい。50MPa以上であればフィルムに十分な剛性が付与されていることから、取り扱い性を良好に保つことが可能となり、1500MPa以下であれば該フィルムに印刷層や粘着層を積層する工程におけるフィルムの加工性を良好に保つことが可能となる。より好ましくは70~1400MPa、さらに好ましくは90~1300MPaの範囲内である。
本発明のフィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の樹脂組成物Aからなる層を表裏の一方の面のみとすることも、表裏の両面とすることも可能となる。
さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで全層が同一の樹脂組成物からなる実質的に単層のフィルムを得ることも可能となる。
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
また、樹脂組成物Aからなる層の厚みが、フィルム全体の厚みの1~50%の範囲内とすることが好ましい。1%以上とすることで、高分子型帯電防止剤を含有する層の帯電防止性能を十分に発現させることが可能となり、50%以下とすることで、フィルムを生産する際の製膜性を良好に保つことができ、経済性の観点からも好ましい。より好ましくはフィルム全体の厚みの1~45%、さらに好ましくは1~40%の範囲内である。
3.粘着フィルム
本発明のフィルムには、少なくとも1つの、ポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物Aからなる層の上に粘着剤層を設けることで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
粘着剤層に用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
樹脂組成物Aからなる層の上に粘着剤層を設けるには、樹脂組成物Aからなる層の上に粘着剤をコーティングすることにより設けることもでき、また、別途調製した粘着剤層を、樹脂組成物Aからなる層に積層することにより設けることもできる。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着剤層を設ける前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、フィルムと粘着剤層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着剤層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
4.化粧フィルム
本発明のフィルムの、少なくとも1つの、ポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物Aからなる層の上に印刷層を設けて、化粧フィルムとすることができる(以下「本発明の化粧フィルム」ともいう)。
ポリオレフィン系樹脂(A)が酸無水物に由来する構造単位を有するため、印刷層との密着性を向上させることができる。
化粧フィルムを構成する、印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
本発明の化粧フィルムにおいて、印刷層を設ける前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムである本発明のフィルムと印刷層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
印刷層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
5.化粧用粘着フィルム
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層にさらに粘着剤層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、自動車内外装の化粧用途、その他の成形体や積層体、建築内外装用途等に用いることが可能となる。
本発明のフィルムは、取扱い性や加工性に優れ、且つ粘着剤や印刷層との密着性に優れたフィルムである。
さらに、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、それらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
[使用材料]
熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂、酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(以下、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A))、スチレン系エラストマーを、帯電防止剤として、高分子型帯電防止剤を以下に示す種類の通り用いた。
<ポリオレフィン系樹脂>
ランダムポリプロピレン:
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:7.5g/10分、融点:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
ホモポリプロピレン:
日本ポリプロ社製、「MA3U」(ホモポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:15.0g/10分、融点:168℃、単独フィルムの引張弾性率:900MPa)
オレフィン系エラストマー:
日本ポリプロ製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレート:6.0g/10分、融点:127℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
<酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A)>
酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-1)
三菱ケミカル社製、「モディックP565」(無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、230℃、2.16kgでのメルトフローレート:5.7g/10分、融点:143℃)
酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-2)
三菱ケミカル社製、「モディックP664」(無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、230℃、2.16kgでのメルトフローレート:3.2g/10分、融点:141℃)
酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)
三菱ケミカル社製、「モディックP908」(無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、230℃、2.16kgでのメルトフローレート:45g/10分、融点:150~160℃)
酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-4)
アルケマ社製、「BONDINE AX8390」(無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂、190℃、2.16kgでのメルトフローレート:7.0g/10分、融点:67℃)
<スチレン系エラストマー(B)>
スチレン系エラストマー(B-1):
クラレ社製、「ハイブラー7311F、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:2.0g/10分、スチレンとイソプレンのブロック共重合体の水素添加物)
スチレン系エラストマー(B-2):
旭化成社製、「タフテックH1041」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:3.0g/10分、スチレン成分含有量:30質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(B-3):
旭化成社製、「タフテックH1517」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:5.0g/10分、スチレン成分含有量:43質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
<高分子型帯電防止剤>
高分子型帯電防止剤(ポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体):
三洋化成工業社製、「ペレクトロンPVL、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート:15.0g/10分)」
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂と高分子型帯電防止剤を合計で100質量部となるよう配合し、ドライブレンドにより混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用の樹脂組成物を調製した。
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、各押出機の押出機温度を190~210℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210~230℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、鏡面状の冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、厚みが約80μmの2種3層もしくは3種3層となる複層のフィルムを得た。
また、本発明では、得られたフィルムの鏡面上の冷却ロール側の面を表層と表現している。
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
[表層のインキの密着性]
以下に記載のDICグラフィックス(株)製の塩ビ化粧フィルム用インキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP-2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、フィルムの表層側に塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
得られた化粧フィルムの印刷層にセロテープを貼り、それを剥離することで印刷層とフィルムとの密着性を以下の基準により評価した。
◎:6階調全てのインキが残り、剥離が認められない
〇:4~5階調のインキが残り、1~2階調の剥離が認められる
△:2~3階調のインキが残り、3~4階調の剥離が認められる
×:インキの残りが1階調以下もしくは基材の破壊によるインキ残り無し
<DICグラフィックス(株)製の塩ビ化粧フィルム用インキ>
「VTP-NT40黄(A)」を95質量部、「AT-NT溶剤」を5質量部用い、それらを混合・撹拌しインキを調製した。
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照した次の条件、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
[表面抵抗値]
JISK6911に準拠したダイアインスツルメンツ社製ハイレスタUP高抵抗率計(MCP-HT450,電極:2重リング法(URSプローブ)を用い、フィルムの表層および裏層のそれぞれの表面抵抗値を測定した。また、500Vの電圧で10秒後の値を測定値として採用した。
[実施例1]
表層および裏層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-1)およびスチレン系エラストマー(B-1)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。中間層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレンおよびスチレン系エラストマー(B-1)を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層および裏層用の樹脂組成物と、中間層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-1)のMFRが5.7g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は240MPaであり、引張破断伸度は760%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が3.5×10Ω/□、裏層側が4.4×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[実施例2]
表層および裏層に用いる熱可塑性樹脂として、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-1)およびスチレン系エラストマー(B-1)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムであり、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-1)のMFRが5.7g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は230MPaであり、引張破断伸度は750%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が2.5×10Ω/□、裏層側が2.7×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[実施例3]
表層および裏層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-2)およびスチレン系エラストマー(B-1)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムであり、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-2)のMFRが3.2g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は250MPaであり、引張破断伸度は710%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が2.2×10Ω/□、裏層側が3.1×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[実施例4]
表層および裏層に用いる熱可塑性樹脂として、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-2)およびスチレン系エラストマー(B-1)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
2種3層からなる総厚みが80μmのフィルムであり、各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-2)のMFRが3.2g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は240MPaであり、引張破断伸度は760%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が1.9×10Ω/□、裏層側が2.3×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[実施例5]
表層に用いる熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよび酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-4)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。中間層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(B-2)を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。裏層用の熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーを、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層、裏層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-4)のMFRが7.0g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は200MPaであり、引張破断伸度は700%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が4.6×10Ω/□、裏層側が2.0×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[実施例6]
表層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーおよび酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-4)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。中間層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマー(B-3)を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。裏層用の熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーを、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層、裏層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られず優れた密着性を示し、良好な密着性を有していることが確認された。また、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-4)のMFRが7.0g/10分であり、1~30g/10分の範囲内であることから、基材の破壊によるインキの剥がれの不具合も見られなかった。
引張弾性率は200MPaであり、引張破断伸度は710%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が5.8×10Ω/□、裏層側が1.4×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
よって、本フィルムはインキとの優れた密着性を有し、良好な柔軟性と破断特性を備え、さらに帯電防止性能にも優れるフィルムであることが確認された。
[比較例1]
表層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーおよび酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。中間層に用いる熱可塑性樹脂として、ホモポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。裏層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーを、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層、裏層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られた。またインキとフィルムとの剥離ではなく、基材の破壊に起因するインキの残りの無い状態であることが確認された。これは、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)のMFRが45g/10分であり、30g/10分を超えており、MFRが高く分子鎖が短くなることに起因するフィルムの強度の低下によって発生したインキの密着性不良であると推察される。
得られた引張弾性率は160MPaであり、引張破断伸度は740%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が3.1×10Ω/□、裏層側が5.5×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
本フィルムは良好な柔軟性と破断特性を備え、帯電防止性能にも優れるものの、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)のMFRが高いことから、基材の強度不足によるインキとの密着性不良が発生するフィルムであることが確認された。
[比較例2]
表層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよび酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)を、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。中間層に用いる熱可塑性樹脂として、ランダムポリプロピレン、オレフィン系エラストマーおよびスチレン系エラストマーを表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。裏層に用いる熱可塑性樹脂として、オレフィン系エラストマーを、さらに高分子型帯電防止剤を表1に記載の配合量とし、樹脂組成物を調製した。
上記の表層、中間層、裏層用の樹脂組成物を用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる総厚みが80μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が4μm、中間層が72μm、裏層が4μmとなるよう製膜の条件の調整を行った。
本フィルムの表層側に設けたインキの密着性については、6階調全てで剥離が見られた。またインキとフィルムとの剥離ではなく、基材の破壊に起因するインキの残りの無い状態であることが確認された。これは、用いた酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)のMFRが45g/10分であり、30g/10分を超えており、MFRが高く分子鎖が短くなることに起因するフィルムの強度の低下によって発生したインキの密着性不良であると推察される。
得られた引張弾性率は150MPaであり、引張破断伸度は750%を示し、十分な柔軟性と破断特性を備えることを確認した。
また、得られたフィルムの表層および裏層には十分な高分子型帯電防止剤が含まれていることから、表面抵抗値は、表層側が4.0×10Ω/□、裏層側が9.0×10Ω/□を示し、いずれの面も1.0×1013Ω/□以下であることから、帯電防止性能にも優れていることが確認された。
本フィルムは良好な柔軟性と破断特性を備え、帯電防止性能にも優れるものの、酸無水物含有ポリオレフィン系樹脂(A-3)のMFRが高いことから、基材の強度不足によるインキとの密着性不良が発生するフィルムであることが確認された。
Figure 2022177504000001
[実施例7]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成した。
作製したセパレータの粘着剤層側の面を実施例1で得られたフィルムの表層側の面に貼り合わせることで本発明のフィルムと粘着剤層とが積層された粘着フィルムを得た。
また、粘着剤との密着性に優れ、且つ帯電防止性能に優れる本粘着フィルムを半導体製造工程用粘着フィルムとして用いることで、粘着剤がフィルムから剥離することによって発生する不良を抑制することが可能となると推察される。
[産業上の利用可能性]
本発明により、取扱い性や加工性に優れ、且つ粘着剤や印刷層との密着性に優れたフィルムを提供することが可能となる。また、該フィルムに粘着剤層や印刷層を積層することで粘着フィルム、化粧フィルムや化粧用粘着フィルムを得ることも可能であり、これらのフィルムを半導体製造工程用、自動車内外装や自動車化粧用途にも好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. 230℃、2.16kg荷重の条件で測定した際のメルトフローレートが1~30g/10分であり、且つ酸無水物に由来する構造単位を有するポリオレフィン系樹脂(A)を含有する樹脂組成物からなる層を表裏の少なくともいずれか一方の面に有する熱可塑性樹脂フィルム。
  2. 前記酸無水物が無水マレイン酸である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  3. 前記樹脂組成物が、当該樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂100質量%に対して、ポリオレフィン系樹脂(A)を20質量%以上含有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  4. 前記樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂(A)以外の樹脂として、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  5. 前記樹脂組成物が、高分子型帯電防止剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、少なくとも1つの前記樹脂組成物からなる層の上に粘着剤層が設けられている、粘着フィルム。
  7. 半導体製造工程用フィルムとして用いられる請求項6に記載の粘着フィルム。
  8. 請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂フィルムの、少なくとも1つの前記樹脂組成物からなる層の上に印刷層が設けられている、化粧フィルム。
  9. 請求項8に記載の化粧フィルムの印刷層側にさらに粘着剤層が設けられている、化粧用粘着フィルム。
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