JP2022177409A - 超伝導導体および巻線 - Google Patents

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Abstract

【課題】損失が低減された超伝導導体を提供する。【解決手段】超伝導導体10は、互いに撚り合わされた複数の金属素線11を有する撚り線1と、可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材2と、を備え、金属素線11の直径は0.3mm以下であり、撚り線1の直径は5mm以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、ケーブル状の超伝導導体および当該超伝導導体が巻回されてなる巻線に関する。
電気エネルギーを効率的に生成、伝送、変換、使用および貯蔵するための技術として、高温超伝導(high-temperature superconductivity)が注目されている。例えば高温超伝導材料を用いて作製された線材(以下、高温超伝導線材と呼ぶ)や、それを集合化した超伝導導体を、発電機や電動機(モータ)の電機子巻線に用いることにより、電機子巻線に高電流密度で大電流を流すことが可能となる。これにより、電機子鉄心を削減することが可能となり、発電機や電動機を軽量化することが期待されている。発電機や電動機を軽量化することが可能になると、例えば、航空機の電動化の実現や、大型の浮体式洋上風力発電の導入促進につながる。航空機の電動化が実現されたり、風力発電の導入が促進されたりすると、CO排出量の削減が期待されることから、高温超伝導技術は、脱炭素社会の実現に大きく寄与することが期待されている。
一方で、超伝導線材を交流で用いるときには、交流の磁界によって交流損失が発生する。一般に、超伝導線材に電流が流れる、または、磁界が加わっているときには、超伝導線材中に磁束が磁束量子という形で侵入している。直流電流または直流磁界が印加されている運転条件下においては、磁束量子は移動せず静止しているが、交流電流または交流磁界が印加されている運転条件下においては、超伝導線材の位置において磁束の分布が変化することにより、磁束量子が移動しなければならなくなる。磁束量子が移動する際にはいわば摩擦のようなものが生じ、この摩擦熱に相当するものが交流損失である。特に、巻線(コイル)の交流応用では、巻線に用いられる超伝導線材や超伝導導体に対して横方向(超伝導線材や超伝導導体が長手方向に延びる場合には、長手方向に交差する方向)から加わる交流磁界による交流損失が大きくなる。
超伝導線材において発生するこのような交流損失を低減させるために、これまでに様々な手法が提案されている。例えば特許文献1には、交流損失を低減させる超伝導導体および超伝導導体を備えた超伝導ケーブルが開示されている。
特開2008-47519号公報
超伝導線材は、1本では数十アンペアから数百アンペアの電流しか流せないことがほとんどである。高温超伝導を用いた機器の社会実装に向けて、複数本の超伝導線材を、高電流密度で大電流を流すことができ、かつ巻線を可能にするために可撓性に優れた超伝導導体に集合化することが求められている。
ところが、実用的な高温超伝導線材のほとんどはテープ形状をしており(以下、超伝導テープ線材とも呼ぶ)、複数本の超伝導テープ線材を集合化して、高電流密度で大電流を流すことができ、かつ可撓性に優れた超伝導導体を構成することは容易ではない。複数本の超伝導テープ線材を単純に重ねただけでは、複数本の超伝導テープ線材の間のインダクタンスが不平衡になり、その結果、交流通電時に電流分布が不均一になり、超伝導導体全体に超伝導状態で流せる電流が減ってしまったり、交流損失が増えてしまったりして、超伝導導体を交流応用に供することはできない。
また、超伝導導体の構成によっては、超伝導線材以外の部材として、例えば芯材等の金属構成部材を含み、そのような超伝導導体を交流で用いるときには、交流の磁界によって、金属構成部材である芯材において渦電流損失が発生する。
このような、超伝導線材において交流損失が発生する点、金属構成部材において渦電流損失が発生する点、および、複数本の超伝導テープ線材を集合化して、高電流密度で大電流を流すことができ、かつ可撓性に優れた超伝導導体を構成することが困難である点が、高温超伝導を用いた機器の社会実装に向けたボトルネックとなっている。
本発明は、損失が低減された超伝導導体を提供することを目的とする。
本発明の別の目的は、臨界電流の低下が軽減または防止された超伝導導体を提供することにある。
上記課題を解決するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
(項1)
互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
を備え、
前記金属素線の直径は0.3mm以下であり、前記撚り線の直径は5mm以下である、超伝導導体。
(項2)
前記超伝導線材の長手方向と前記撚り線の長手方向とのなす角度は、45度以上90度未満である、項1に記載の超伝導導体。
(項3)
前記複数の金属素線は同じ向きに撚り合わされている、項1または2に記載の超伝導導体。
(項4)
前記複数の金属素線は同じ撚りピッチで撚り合わされている、項1から3のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項5)
前記撚り線と前記超伝導線材との間に、前記撚り線の周囲を長手方向に沿って覆うように配置された、可撓性を有する平滑化層をさらに備える、項1から4のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項6)
前記平滑化層は、樹脂または金属を用いて形成されており、前記撚り線の周囲を筒状にまたは螺旋状に覆っている、項5に記載の超伝導導体。
(項7)
複数の前記超伝導線材を備え、
複数の前記超伝導線材は、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、項1から6のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項8)
複数の前記超伝導線材は異なる向きで、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、項7に記載の超伝導導体。
(項9)
前記超伝導線材において、
複数の前記超伝導層は、前記基板の長手方向に延伸し、前記基板の短手方向に並列に配置されている、項1から8のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項10)
前記超伝導線材と、前記撚り線が有する少なくとも一つの前記金属素線とを電気的に接続する常伝導部材をさらに備える、項1から9のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項11)
前記超伝導線材と、前記撚り線が有する少なくとも一つの前記金属素線とを電気的に接続する常伝導部材をさらに備え、
複数の前記常伝導部材は、隣接する前記常伝導部材間の前記超伝導導体の区間において、前記超伝導導体に対する横方向の磁界の積分値を最小化するように配置されている、項1から10のいずれか一項に記載の超伝導導体。
(項12)
互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
前記撚り線と前記超伝導線材との間に、前記撚り線の周囲を長手方向に沿って覆うように配置された、可撓性を有する平滑化層と、
を備える、超伝導導体。
(項13)
互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
を備え、
前記撚り線の外周に沿った前記超伝導線材の折れ曲がり角度は12度以下である、超伝導導体。
(項14)
項1から13のいずれか一項に記載の超伝導導体が巻回されてなる巻線。
本発明によると、損失が低減された超伝導導体を提供することができる。
本発明に係るケーブル状の超伝導導体において損失が低減する原理を説明するための模式的な図である。 本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aの構成を模式的に示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aが備える様々な態様の超伝導テープ線材2の構成を示す図であり、第1の態様の超伝導線材2Aの構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aが備える様々な態様の超伝導テープ線材2の構成を示す図であり、第2の態様の超伝導線材2Bの構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aが備える様々な態様の超伝導テープ線材2の構成を示す図であり、第3の態様の超伝導線材2Cの構成を模式的に示す斜視図である。 本発明の第2の実施形態に係る超伝導導体10Bの構成を模式的に示す図である。 様々な態様の超伝導テープ線材2(2D,2E,2F)の構成を模式的に示す斜視図である。 実施例1において損失の低減効果について検証した結果を示すグラフである。 実施例2において作製した超伝導導体10C(10)の構成を模式的に示す図である。 実施例2において作製した超伝導導体10C(10)の電界-電流特性の測定結果である。 実施例3において作製した超伝導導体10D(10)の構成を模式的に示す図である。 実施例3において作製した超伝導導体10D(10)の電界-電流特性の測定結果である。 実施例4において作製した超伝導導体10E(10)の構成を模式的に示す図である。 実施例4において作製した超伝導導体10E(10)の電界-電流特性の測定結果である。 実施例5において作製した超伝導導体10F(10)の構成を模式的に示す図である。 実施例5において作製した超伝導導体10F(10)の電界-電流特性の測定結果である。 実施例6において作製した超伝導導体10G(10)の構成を模式的に示す図である。 実施例6において作製した超伝導導体10G(10)の電界-電流特性の測定結果である。 比較例3として作製した超伝導導体90の構成を模式的に示す図である。 比較例3において作製した超伝導導体90の電界-電流特性の測定結果である。
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
[用語の意味]
以下の説明において用いる用語の意味を説明する。なお、一部の既出用語は、初出箇所でも説明済みであるが、念のため繰り返して説明する。
超伝導線材とは、超伝導材料を用いて作製された線材を意味し、超伝導テープ線材とは、テープ形状の平たい超伝導線材を意味する。例示的な超伝導テープ線材を図3~図5に示す。超伝導導体とは、超伝導線材を集合化して作製された導体を意味する。ケーブル状に集合化された例示的な超伝導導体を、図2および図6に示す。
交流損失とは、超伝導線材を交流で用いるときに、交流の磁界によって発生する損失である。一般に、超伝導線材に電流が流れる、または、磁界が加わっているときには、超伝導線材中に磁束が磁束量子という形で侵入している。直流電流または直流磁界が印加されている運転条件下においては、磁束量子は移動せず静止しているが、交流電流または交流磁界が印加されている運転条件下においては、超伝導線材の位置において磁束の分布が変化することにより、磁束量子が移動しなければならなくなる。磁束量子が移動する際にはいわば摩擦のようなものが生じ、この摩擦熱に相当するものが交流損失である。
起電力とは、超伝導線材の超伝導層に垂直に印加される磁界(厳密には、印加される磁界のうち、超伝導層に垂直な成分)が時間的に変動したときに、電磁誘導により、超伝導線材の中に渦電流を流そうとループ状に作用する「力」である。起電力のループの超伝導線材の長手方向に沿った最長部の長さ(以降、簡略化のため「起電力のループの長さ」と呼ぶ)は、磁界が同じ向きである、より正確には磁界の時間微分が同じ向きである、超伝導線材の長手方向の部分の長さに等しい。なお、起電力が発生しても、導電体や超伝導体が存在しなければ渦電流は流れ得ない。
渦電流とは、電磁誘導による起電力によって、導電体内または超伝導体内にループ状(渦状)に誘導される電流を意味する。渦電流は、持続的渦電流98および結合電流99の両方を含む概念である。
渦電流の長さとは、超伝導線材に分布して流れる渦電流の、超伝導線材の長手方向に沿った最長部の長さのことである。渦電流は、起電力のループの長さの内でしか流れ得ない。すなわち、渦電流の長さは起電力のループの長さを超えることはない。
結合電流とは、渦電流の一種であり、結合時定数とは、結合電流の減衰時定数である。結合電流は、その経路で決まる自己インダクタンスLccと抵抗Rccとの比である結合時定数τで減衰する。自己インダクタンスLccは渦電流(結合電流)の長さに比例し、抵抗Rccは渦電流(結合電流)の長さに反比例する。したがって、結合時定数τは渦電流(結合電流)の長さの2乗に比例する。
[損失低減の原理]
テープ形状の超伝導線材(超伝導テープ線材)を、芯材の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けて、ケーブル状の超伝導導体を作製することを想定する。このようなケーブル状の超伝導導体における損失は、芯材における渦電流損失と、超伝導テープ線材における交流損失とからなる。
本発明に係るケーブル状の超伝導導体では、以下に説明する構成を単独でまたは複数組み合わせて備えることにより、芯材における渦電流損失と、超伝導テープ線材における交流損失とを低減することができる。
図1は、本発明に係るケーブル状の超伝導導体において損失が低減する原理を説明するための模式的な図である。
本発明に係るケーブル状の超伝導導体10では、芯材として機能する撚り線1の周囲に、テープ形状の超伝導線材2が螺旋状に巻き付けられている。図1において、(A)は、撚り線1の径が太く、テープ形状の超伝導線材2の巻き付け角度θが小さい場合を例示しており、(B)は、撚り線1の径が細く、テープ形状の超伝導線材2の巻き付け角度θが大きい場合を例示している。なお、理解を容易にするために、図示する超伝導線材2(2A,2B,2C)は、超伝導層22が外側に向けて撚り線1に巻き付けられているが、超伝導層22が内側に向けて撚り線1に巻き付けられていても同様に、損失は低減する。
<芯材における渦電流損失の低減>
超伝導テープ線材2において超伝導状態が破壊したときや、例えば外部における何らかの事故に起因して、超伝導状態において流すことができる電流を上回る過電流が超伝導テープ線材2に流れたときに、電流の迂回路(分流路)となるように、芯材は、例えば銅のような電気伝導率が高い(電気抵抗率が低い)金属を用いて形成することが望ましい。
芯材に、中実(solid)な円形断面の単線や、径が比較的太い素線を撚り合わせた撚り線や、互いに絶縁されていない複数の素線を撚り合わせた撚り線を用いて、このような芯材の周囲に長手方向に沿って、超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて、ケーブル状の超伝導導体10を作製する。このように作製したケーブル状の超伝導導体10が横方向の交流磁界にさらされると、大きな渦電流損失が発生する。例示的には、直径が3mmの銅製の中実な芯材では、渦電流損失の実測値は、ピーク値100mT、周波数65.44Hzの交流磁界のもとで1.42W/m程度である。
図1に例示する本発明に係るケーブル状の超伝導導体10では、芯材に、径が比較的細い素線を撚り合わせた撚り線1を用いる。これにより、芯材における渦電流損失は低減する。例示的には、径が0.3mmの絶縁された素線11を50本撚り合わせて作製されている、直径が約3.1mmの撚り線(リッツ線)では、渦電流損失の実測値は、ピーク値100mT、周波数65.44Hzの交流磁界のもとで6.87mW/m程度である。
本発明において、径が比較的細い素線を撚り合わせた撚り線1の素線11の径とは、後述する実施例での撚り線の素線径である約0.3mm~約0.1mmを考慮して、例えば約0.3mm以下とすることができる。同様に、撚り線1の直径とは、後述する実施例での芯材の直径である約2.8mm~約3.5mmを考慮して、例えば約5mm以下とすることができる。
<超伝導テープ線材における交流損失の低減>
超伝導テープ線材2には、その幅広な形状に起因して、横方向(超伝導テープ線材が長手方向に延びる場合には、長手方向に交差する方向)、かつ、テープの広い面に垂直な方向の交流磁界にさらされると大きな交流損失(例えば、実測値で、ピーク値100mT、周波数65.44 Hzの交流磁界のもとで3.82W/m)が発生する。超伝導テープ線材2を多数本集合化した超伝導導体では、交流損失も線材の本数に比例して大きくなる。
ここで、図1に例示するように、テープ形状の超伝導線材2(超伝導テープ線材)を、芯材の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けると、超伝導テープ線材2の単位長さ(1m)の内での、横方向かつテープ面に垂直な方向の交流磁界にさらされる部分が短くなるので、交流損失は低減する。
さらに望ましくは、芯材の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付ける超伝導テープ線材2をマルチフィラメント化すると、横方向の交流磁界に対する超伝導テープ線材における交流損失はさらに低減する。図1に例示する超伝導線材2は、超伝導層22がマルチフィラメント化された、図3~5に例示するマルチフィラメント超伝導線材2(2A,2B,2C)である。絶縁部23は、複数の超伝導層22,22間に配置され、複数の超伝導層22,22を電気的に絶縁している。なお、超伝導線材2の態様によっては、超伝導線材2には接続部24および導電層25(25a,25b)が配置されるが、図1ではこれらの構成については図示は省略されている。
特に、芯材の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付ける超伝導テープ線材2を、図4に例示する導電層25aを備えた超伝導線材2Bとすると、図3に例示する超伝導線材2Aと比較してロバスト性が向上する。図4を参照して後述するように、導電層25aは、超伝導層22に異常が生じた際に、超伝導層22を流れる電流を迂回させる分流層として機能する。
交流損失が低減され且つロバスト性が向上する、導電層25aを備えた超伝導線材2Bを用いて、横方向の交流磁界に対する交流損失をより有効に低減しようとすると、導電層25aを介して超伝導線材2Bに流れる結合電流99を速やかに減衰させることが望まれる。結合電流99を速やかに減衰させるためには結合時定数を短くすることが望まれる。結合時定数は結合電流99の長さの2乗に比例するので、結合時定数を短くするためには結合電流99の長さを短くすることが望まれる。
作製しようとするケーブル状の超伝導導体において、図1(A)に例示するように、芯材の直径が比較的大きく超伝導テープ線材2(2B)の巻き付け角度θが比較的小さいと、結合電流99の長さが長くなり、結合時定数が大きくなり、横方向の交流磁界に対する交流損失を効果的に低減することはできない。加えて、このようなケーブル状の超伝導導体では、電流密度も低く、巻線を作製するには可撓性も不十分である。
これに対し、本発明に係るケーブル状の超伝導導体10では、望ましくは、図1(B)に例示するように結合電流99の長さが短くなるように、超伝導テープ線材2(2B)を、比較的小さな直径の芯材に比較的大きな巻き付け角度θで螺旋状に巻く。これにより、結合時定数が短くなり、結合電流99を速やかに減衰させることができ、芯材の周囲に螺旋状に巻き付けられた状態の超伝導テープ線材2(2B)における交流損失はさらに低減する。またこれにより、ケーブル状の超伝導導体10を巻回して巻線を作製する応用のために必要な、高い電流密度と可撓性とを得ることができる。
結合時定数τは渦電流(結合電流)の長さの2乗に比例する。よって、超伝導テープ線材2(2B)内をループ状に流れる結合電流99の長さが短くなるように、超伝導テープ線材2(2B)を芯材に巻き付けると、結合時定数は短くなり、結合電流を速やかに減衰させることができ、超伝導テープ線材2(2B)における交流損失はさらに低減する。本発明に係るケーブル状の超伝導導体10において、結合電流99の長さが短くなるような、芯材への超伝導テープ線材2(2B)の巻き付け方とは、超伝導テープ線材2(2B)を比較的小さな直径の芯材の周囲に螺旋状に巻き付けることと、超伝導テープ線材2(2B)を芯材の周囲に螺旋状に巻き付ける際の、超伝導テープ線材2(2B)の巻き付け角度θを大きくすることとである。これにより、超伝導テープ線材2(2B)内をループ状に流れる結合電流99の長さは短くなる。
なお、本発明において、芯材の比較的小さな直径とは、後述する実施例での芯材の直径である約2.8mm~約3.5mmを考慮して、例えば約5mm以下とすることができる。同様に、比較的大きな巻き付け角度θとは、後述する実施例での超伝導テープ線材2の巻き付け角度である約55度を考慮して、例えば約45度以上とすることができる。
超伝導テープ線材2を芯材の周囲に螺旋状に巻き付けることを想定すると、巻き付け角度θが0度もしくは90度が一番巻き付けやすく、正確に45度の場合は、超伝導テープ線材2に捻れが生じ巻き付け難くなる。この巻き付け角度θの値45度は、境界となる巻き付け角度の値であり、これより小さくなるべく0度に近い方、もしくはこれより大きくなるべく90度に近い方が巻き付けやすくなる。図1(B)に例示するように、結合電流99の長さが短くなるようにするためには、超伝導テープ線材2を、芯材に比較的大きな巻き付け角度θで螺旋状に巻く。すなわち、後述する実施例において55度と例示するように、境界となる巻き付け角度θの値である45度よりも大きな角度で、超伝導テープ線材2を芯材の周囲に螺旋状に巻き付けるとよい。
<臨界電流の低下防止>
超伝導テープ線材2を、比較的小さな直径(例えば、約5mm以下)の芯材に比較的大きな巻き付け角度θ(例えば、約45度以上)で螺旋状に巻き付けると、撚り線1の素線に触れる部分において超伝導テープ線材2が折れ曲がり易くなり、超伝導テープ線材2の臨界電流が低下するおそれがある。
本発明に係るケーブル状の超伝導導体10では、上記説明した構成を備えることに加えてさらに、以下に挙げる構成i)~iv)を単独で採用することにより、または複数を組み合わせて採用することにより、撚り線1の外周における凹凸(段差)を小さくする。これにより、上記した損失の低減に加えてさらに、超伝導テープ線材2の臨界電流の低下を防止する。
i)撚り線1を構成する素線の直径を小さくする。直径は約0.3mm以下とし、好ましくは約0.2mm以下とする。
ii)素線を同じ向きに撚り合わせる。
iii)素線を同じ撚りピッチで撚り合わせる。
iv)撚り線1の周囲(外周)を、可撓性を有する層で覆い平滑化する。層は樹脂または金属を用いて形成する。
[第1の実施形態]
<超伝導導体>
図2は、本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aの構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Aの斜視図であり、(B)は超伝導導体10Aの側面図である。図示する態様では、Y軸の方向が撚り線1の長手方向であり、X軸の方向およびZ軸の方向が撚り線1の半径方向(短手方向)である。
第1の実施形態に係る超伝導導体10A(10)は、互いに撚り合わされた複数の素線11を有する撚り線1と、可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材2と、を備える。
撚り線1は、複数の素線11が互いに撚り合わされて形成されている。例示的には、素線11の直径は約0.3mm以下であり、撚り線1の直径は約5mm以下である。好ましくは、素線11の直径は約0.2mm以下である。図示する態様では、素線11の直径は約0.1mmである。素線11は、例えば銅のような電気伝導率が高い(電気抵抗率が低い)金属を用いて形成されている。好ましくは、素線11の表面には例えばエナメル等の絶縁物質により絶縁層(図示せず)が形成されており、各々の素線11は絶縁されている。
超伝導テープ線材2は、テープ形状を有する超伝導線材であり、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている。超伝導テープ線材2は、可撓性を有する基板21と、基板21の表面に形成された超伝導層22とを有している。図示する本実施形態では、超伝導テープ線材2は、超伝導層22を内側に向けて撚り線1に巻き付けられている。本実施形態では、超伝導層22は、高温超伝導材料を用いて作製されている。超伝導テープ線材2については、図3~図5を参照して後述する。
第1の実施形態に係る超伝導導体10A(10)によると、芯材には、互いに撚り合わされた複数の素線11を有する撚り線1が用いられており、素線11の直径は約0.3mm以下であり、撚り線1の直径は約5mm以下である。これにより、芯材である撚り線1における渦電流損失を低減する。
超伝導テープ線材2における交流損失を低減するために、好ましくは、超伝導テープ線材2の巻き付け角度、すなわち、超伝導線材2の長手方向と撚り線1の長手方向とのなす角度θは、約45度以上約90度未満である。これに加え、超伝導テープ線材2を図3~図5に例示するようにマルチフィラメント化すると、超伝導テープ線材2における交流損失はさらに低減する。
超伝導テープ線材2における臨界電流の低下を防止するために、撚り線1を構成する素線11の直径は小さい。例示的には、素線11の直径は約0.3mm以下であり、好ましくは約0.2mm以下である。また、好ましくは、複数の素線11は同じ向きに撚り合わされており、好ましくは、複数の素線11は同じ撚りピッチで撚り合わされている。
<超伝導テープ線材>
図3~図5は、本発明の第1の実施形態に係る超伝導導体10Aが備える様々な態様の超伝導テープ線材2の構成を示す図である。図3は、第1の態様の超伝導線材2Aの構成を模式的に示す斜視図である。図4は、第2の態様の超伝導線材2Bの構成を模式的に示す斜視図である。図5は、第3の態様の超伝導線材2Cの構成を模式的に示す斜視図である。図示する態様では、Y軸の方向が超伝導線材2の長手方向であり、X軸の方向が超伝導線材2の短手方向であり、Z軸の方向が超伝導線材2の厚さ方向である。
図3~図5に示す態様の超伝導線材2A,2B,2Cのいずれにおいても、複数の超伝導層22が基板21の短手方向に並列に配置されている。図3~図5に示す態様の超伝導線材2A,2B,2Cは、マルチフィラメント超伝導線材と呼ばれている。
図3に例示する第1の態様の超伝導線材2A(2)は、基板21と、複数の超伝導層22と、絶縁部23と、複数の接続部24とを備える。
基板21は、例えばニッケル基合金やステンレス鋼等を用いてテープ形状に形成されている。例示的には、基板21の材料にはハステロイ(登録商標)を用いることができる。基板21は可撓性を有しており、図2に示すように超伝導線材2A(2)は螺旋状に巻かれて使用される。
基板21の表面には、超伝導層22の下地となる中間層(図示せず)が必要に応じて形成される。中間層の材料としては、熱膨張率や格子定数等の物理的な特性値が、基板21と超伝導層22を構成する超伝導体との中間的な値を示す材料を用いることができる。例示的には、中間層の材料にはLaMnOを用いることができる。本態様では、基板21の表面には中間層が形成されており、本明細書における説明では、中間層が表面に形成されている基板21をまとめて基板21と呼ぶ。
超伝導層22は、超伝導線材2Aにおいて超伝導的に電流を流す。本態様では、交流損失を低減するために、超伝導層22はマルチフィラメント化されて基板21の表面に形成されている。超伝導層22は、基板21の長手方向に延伸し、複数の超伝導層22が基板21の短手方向に並列に配置されている。例示的には、超伝導層22は、セラミックスであるREBCO高温超伝導体を用いて形成されている。REBCOは、化学式REBaCu7-δ(REは、YやGd,Eu,Smなどの希土類元素)で表される組成式を有する銅酸化物超伝導体である。以下の説明では、マルチフィラメント化した超伝導層22を、超伝導フィラメント22と呼ぶか、または省略して単にフィラメント22若しくは単に超伝導層22とも呼ぶ。
絶縁部23は、基板21の長手方向に延伸し、複数の超伝導層22,22間に配置され、複数の超伝導層22,22を電気的に絶縁する。例示的には、本態様では、絶縁部23は、例えば公知のフォトリソグラフィープロセスにより超伝導層22を三次元パターニングすることにより、基板21の表面を露出させる溝として形成されている。本態様では、超伝導線材2Aは複数の絶縁部23を備え、それぞれの絶縁部23は、並列に配置される複数の超伝導層22,22間に配置されている。
接続部24は、基板21の長手方向に沿って絶縁部23に配置され、隣り合う複数の超伝導層22,22を超伝導的に電気的に接続する。超伝導線材2Aには、基板21の長手方向に沿って、絶縁部23に複数の接続部24が備えられている。本態様では、接続部24は、超伝導層22と同じ超伝導体を用いて、超伝導層22と一体化して形成されている。
隣り合う複数の超伝導層22,22を接続部24が超伝導的に電気的に接続することにより、超伝導層22を流れる電流の超伝導的な分流性は向上し、超伝導線材2Aのロバスト性は向上する。すなわち、仮に何らかの原因で、或る超伝導層22において局所的に常伝導状態への転移が生じたとしても、隣り合う複数の超伝導層22,22間を接続部24が超伝導的にブリッジして、常伝導転移した超伝導層22から隣接する超伝導層22に電流を分流することにより、超伝導線材2A全体のクエンチは防止される。
例示的には、超伝導線材2Aの短手方向に沿った長さ(幅)は、約2mmから約4mmであり、好ましくは約1mmから約4mmである。マルチフィラメント化された一本の超伝導層22の短手方向に沿った長さ(幅)は、好ましくは約0.4mmから約1mmであり、より好ましくは約0.1mmから約1mmである。例示的には、基板21および超伝導層22を含む超伝導線材2A全体の厚さは、約150μmから約50μmまでの範囲内であり、好ましくは約50μmから約30μmまでの範囲内である。超伝導線材2Aは螺旋状に巻かれて使用されることから、より好ましくは、基板21および超伝導層22を含む超伝導線材2A全体の厚さは、約30μm未満である。
図4に例示する第2の態様の超伝導線材2B(2)は、超伝導層22、絶縁部23および接続部24を覆う導電層25a(25)をさらに備えている点において、図3に例示する第1の態様の超伝導線材2Aと異なっている。以下において説明する、第2の態様の超伝導線材2Bの構成は、特に言及しない限り、第1の態様の超伝導線材2Aと同様であるので、重複する説明は省略する。
第2の態様では、超伝導線材2B(2)は、超伝導層22、絶縁部23および接続部24を覆う導電層25a(25)をさらに備えている。図示する態様では、導電層25aは、超伝導層22だけではなく、超伝導層22、絶縁部23および接続部24を覆って形成されている。導電層25aは、超伝導層22に異常が生じた際に、超伝導層22を流れる電流を迂回させる分流層として機能する。例示的には、導電層25aは銅で形成されている。なお、例示する態様では、絶縁部23は、底面が基板21の表面に到達する溝として形成されており、溝には導電層25aとして機能する銅が満たされている。
第2の態様の超伝導線材2Bは、導電層25aを備えることにより、第1の態様の超伝導線材2Aと比較してロバスト性が向上する。
第2の態様の超伝導線材2Bによると、限定された、しかし、実用上十分な運転周波数領域にて、第1の態様の超伝導線材2Aと同じ交流損失低減効果を得ることができる。
第1の態様と同様に、第2の態様の超伝導線材2Bは、芯材である撚り線1の軸に沿って螺旋状に巻かれることにより、超伝導導体10を構成することができる。
図5に例示する第3の態様の超伝導線材2C(2)は、超伝導層22を覆う導電層25b(25)をさらに備えている点において、図3に例示する第1の態様の超伝導線材2Aと異なっている。以下において説明する、第3の態様の超伝導線材2Cの構成は、特に言及しない限り、第1の態様の超伝導線材2Aと同様であるので、重複する説明は省略する。
第3の態様では、超伝導線材2C(2)は、超伝導層22を覆う導電層25b(25)をさらに備えている。図示する態様では、導電層25bは、絶縁部23および接続部24を覆わず、超伝導層22だけを覆って形成されている。導電層25bは、超伝導層22に異常が生じた際に、超伝導層22を流れる電流を迂回させる分流層として機能する。例示的には、導電層25bは銅で形成されている。なお、例示する態様では、絶縁部23は、基板21の表面を露出させる溝として形成されているが、導電層25bは超伝導層22だけを覆って形成されており、溝には導電層25bとして機能する銅は満たされていない。
第3の態様の超伝導線材2Cによると、第1の態様の超伝導線材2Aと同じ交流損失低減効果を得ることができる。
第3の態様の超伝導線材2Cは、導電層25bを備えることにより、第1の態様の超伝導線材2Aと比較してロバスト性が向上する。より具体的には、超伝導層22から、超伝導層22の上部に設けられている導電層25bへの電流の分流により、ホットスポット温度の上昇を抑制することができる。
第1の態様と同様に、第3の態様の超伝導線材2Cは、芯材である撚り線1の軸に沿って螺旋状に巻かれることにより、超伝導導体10を構成することができる。
以上、第1の実施形態に係る超伝導導体10A(10)によると、損失が低減された超伝導導体を提供することができる。
第1の実施形態に係る超伝導導体10A(10)によると、芯材には、互いに撚り合わされた複数の素線11を有する撚り線1が用いられており、素線11の直径は約0.3mm以下であり、撚り線1の直径は約5mm以下である。これにより、芯材である撚り線1における渦電流損失を低減することができる。撚り線1を構成する素線11の直径を小さく、約0.3mm以下とすることにより、超伝導テープ線材2の臨界電流の低下を防止することができる。
素線11の直径が約0.3mm以下であることは、後述する実施例での撚り線の素線径である約0.3mm~約0.1mmを考慮したものである。同様に、撚り線1の直径が約5mm以下であることは、後述する実施例での芯材の直径である約2.8mm~約3.5mmを考慮したものである。
また、第1の実施形態に係る超伝導導体10Aにおいて、好ましくは、超伝導線材2の長手方向と撚り線1の長手方向とのなす角度θは、約45度以上約90度未満である。これにより、超伝導テープ線材2における交流損失を低減することができる。
超伝導線材2の長手方向と撚り線1の長手方向とのなす角度θ、すなわち巻き付け角度θが約45度以上約90度未満であることは、後述する実施例での超伝導テープ線材2の巻き付け角度である約55度を考慮したものである。
また、第1の実施形態に係る超伝導導体10Aにおいて、好ましくは、複数の素線11は同じ向きに撚り合わされている。これにより、撚り線1の外周を平滑化し、超伝導テープ線材2における臨界電流の低下を防止することができる。
また、第1の実施形態に係る超伝導導体10Aにおいて、好ましくは、複数の素線11は同じ撚りピッチで撚り合わされている。これにより、撚り線1の外周を平滑化し、超伝導テープ線材2における臨界電流の低下を防止することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る超伝導導体10B(10)の構成は、特に言及しない限り、第1の実施形態に係る超伝導導体10A(10)と同様であるので、重複する説明は省略する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る超伝導導体10Bの構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Bの側面図であり、(B)は(A)に示す5B-5B線に沿う超伝導導体の断面図である。
第2の実施形態に係る超伝導導体10B(10)は、撚り線1とテープ形状の超伝導線材2との間に、撚り線1の周囲を長手方向に沿って覆うように配置された、可撓性を有する平滑化層3A(3)をさらに備える点において、第1の実施形態に係る超伝導導体10Aと主に異なっている。平滑化層3A(3)は、樹脂または金属を用いて形成されており、撚り線1の周囲を筒状にまたは螺旋状に覆っている。
図示する態様では、素線11の径は約0.3mmであり、6本の素線11がZ撚りで撚り合わされて1つの1次撚り線が形成されて、7つの1次撚り線がS撚りで撚り合わされて1つの撚り線1が形成されている。
また、図示する態様では、テープ形状の複数の超伝導線材2,2が、一部が重ね合わされて、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている。超伝導線材2は、撚り線1の周囲にS巻きで巻き付けられており、超伝導線材2は、撚り線1の周囲にZ巻きで巻き付けられている。すなわち、図示する態様では、複数の超伝導線材2,2は異なる向きで、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている。
以上、第2の実施形態に係る超伝導導体10B(10)によると、損失が低減された超伝導導体を提供することができる。
第2の実施形態に係る超伝導導体10B(10)によると、撚り線1とテープ形状の超伝導線材2との間に、可撓性を有する平滑化層3A(3)をさらに備えている。これにより、撚り線1の外周を平滑化し、超伝導テープ線材2における臨界電流の低下を防止することができる。
また、第2の実施形態に係る超伝導導体10B(10)によると、撚り線1の周囲に複数の超伝導線材2,2が螺旋状に巻き付けられている。これにより、1本の超伝導導体10Bに流す電流の量を増大させることができる。
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
上記した実施形態では、超伝導導体10において、図3~図5に例示する様々な態様の超伝導テープ線材2(2A,2B,2C)が、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられているが、撚り線1の周囲に巻き付けられる超伝導テープ線材はこれらの態様に限定されない。超伝導導体10において、撚り線1の周囲には、例えば図7の(A)~(C)に例示する様々な態様の超伝導テープ線材2(2D,2E,2F)が、長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられていてもよい。
(A)に例示する態様の超伝導線材2D(2)では、超伝導層22は基板21の表面に一様に形成されている。(A)に示す態様の超伝導線材2Dは、モノフィラメント超伝導線材と呼ばれている。(B)に例示する態様の超伝導線材2E(2)では、超伝導層22aは、幅の細いフィラメントに分割されてマルチフィラメント化されている。(C)に例示する態様の超伝導線材2F(2)では、マルチフィラメント化された超伝導層22aの表面に、導電体の分流層として例えば銅分流層27がさらに形成されている。(B)および(C)に示す態様の超伝導線材2E,2Fも、マルチフィラメント超伝導線材である。
他の実施形態では、ケーブル状の超伝導導体10は、テープ形状の超伝導線材2と、撚り線1が有する少なくとも一つの素線11とを電気的に接続する常伝導部材をさらに備えることができる。これにより、導電性を有する芯材である撚り線1への電流分流を可能にし、超伝導導体10のロバスト性を向上させることができる。常伝導部材を配置する位置は、超伝導導体10の長手方向の端部とすることができるし、超伝導導体10長手方向の途中とすることもできる。
さらに他の実施形態では、これら複数の常伝導部材は、隣接する常伝導部材の間の超伝導導体の区間において、超伝導導体に対する横方向の磁界の積分値を最小化する、好ましくは零とするように配置される。これにより、常伝導部材が存在することに起因して、撚り線1内の素線11間を渡って流れる渦電流による渦電流損失や、撚り線1の素線11と超伝導線材2を渡って流れる結合電流による結合損失を抑制することができる。
上記した実施形態では、超伝導テープ線材2は、超伝導層22を内側に向けて撚り線1に巻き付けられているが、超伝導テープ線材2は、超伝導層22を外側に向けて撚り線1に巻き付けられていてもよい。
上記した実施形態において作製した超伝導導体10を1次導体として、この1次導体を複数本撚り合わせることにより2次導体を作製してもよい。これにより、作製した超伝導導体の電流容量を大きくすることができる。このような2次導体をさらに複数本撚り合わせることにより3次導体を作製してもよい。
上記した第2の実施形態では、テープ形状の複数の超伝導線材2,2は異なる向きで、撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている。この場合、複数の超伝導線材2,2は一部が重ね合わされて撚り線1の周囲に巻き付けられているが、複数の超伝導線材2,2が同じ向きで撚り線1の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられる場合は、複数の超伝導線材2,2は重なることなく撚り線1の周囲に巻き付けられることもできる。
上記した第2の実施形態では、超伝導導体10B(10)は、撚り線1とテープ形状の超伝導線材2との間に可撓性を有する平滑化層3A(3)を備えている。第2の実施形態では、この平滑化層3A(3)は、第1の実施形態と同様に、直径が約0.3mm以下である素線11が互いに撚り合わされて形成されている、直径が約5mm以下の撚り線1の周囲を長手方向に沿って覆うように配置されているが、平滑化層3Aにより撚り線1の外周が平滑化される限り、撚り線1の態様はこれに限定されない。また、超伝導導体10が、平滑化層3Aに代えて、以下の実施例において例示する平滑化層3B,3Cを備えている場合であっても、平滑化層3B,3Cにより撚り線1の外周が平滑化される限り、撚り線1の態様は限定されない。
すなわち、超伝導導体10が平滑化層3を備える場合は、平滑化層3により撚り線1の外周が平滑化される限り、撚り線1の態様に限定されることなく、超伝導テープ線材2の臨界電流の低下を軽減または防止することができる。なお、超伝導導体10が平滑化層3を備えることにより奏する、臨界電流の低下を軽減または防止することができる効果は、超伝導導体10における損失の低減に依らず発揮される。
また、以下の実施例において例示するように、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度が所定の角度以下であれば、平滑化層3を備えることなく、撚り線1の態様にも依らず、超伝導テープ線材2の臨界電流の低下を軽減または防止することができる。実施例によると、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度について、所定の角度とは12度以下である。
[実施例]
以下に本発明の実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。以下に説明する実施例および比較例では、テープ形状の超伝導線材2を巻き付ける対象である芯材を、様々な撚り線1、超伝導線材2および平滑化層3(3A,3B,3C)を用いて構成し、ケーブル状の超伝導導体10を作製、もしくは作製を想定した。作製、もしくは作製を想定した超伝導導体の一覧を表1に示す。このうち、比較例1は作製を想定した超伝導導体であり、他は実際に作製した超伝導導体である。なお、表中の線材の直径の欄の括弧内の数字は熱収縮チューブを被せたりHastelloyテープを巻いたりしたあとの直径である。同欄のPEYはテトロン糸を巻き付けたことにより直径が若干増していることを意味する。
実施例1では、テープ形状の超伝導線材2には、図7(C)に示す態様のマルチフィラメント超伝導線材2F(フィラメントの本数は5)を使用した。実施例2~6および比較例1~3では、テープ形状の超伝導線材2には、図7(A)に示す態様のモノフィラメント超伝導線材2Dを使用した。実施例1~6では、表2に示す型番の、絶縁された素線が撚り合わされた撚り線(リッツ線)を使用した。
Figure 2022177409000002
Figure 2022177409000003
損失の低減については、実施例1、比較例1および2に基づいて検証した。臨界電流の低下については、実施例2~6および比較例3に基づいて検証した。
<損失に関する検証>
以下に説明する実施例1、比較例1および2では、作製した超伝導導体および準備した平らな状態の超伝導線材2のそれぞれについて損失を測定した。測定により得られた損失から、超伝導導体の構成の違いにより、測定される損失の値がどのように変化するのかを確認した。
[実施例1]
実施例1では、樹脂製のチューブを用いて撚り線1の周囲を覆い、さらにその表面に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10を作製した。撚り線1には型番IZ05を使用した。テープ形状の超伝導線材2には、図7(C)に示す態様のマルチフィラメント超伝導線材2Fを使用した。
[比較例1]
比較例1では、直径が3mmの中実な銅製の単線を芯材として、この芯材の周囲に直接的に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けた状態の超伝導導体を想定した。テープ形状の超伝導線材2には、図7(A)に示す態様のモノフィラメント超伝導線材2Dを使用した。
[比較例2]
比較例2として、比較例1において使用したものと同じテープ形状の超伝導線材2(2D)を準備した。超伝導線材2は、芯材の周囲に螺旋状に巻き付けない平らな状態で損失が測定された。損失を測定する際に超伝導テープ線材2に印加する磁界の方向は、テープ面に垂直とした。
図8は、損失の低減効果について検証した結果を示すグラフである。(a)は、実施例1において作製した超伝導導体10について測定した損失を示している。(b)は、比較例1として想定した超伝導導体について測定した損失を示している。(b)において、棒グラフの下側部分は芯材(core)における損失を示し、上側部分は超伝導テープ線材(SC)における損失を示している。(c)は、比較例2として準備した平らな状態のテープ形状の超伝導線材2(2D)について測定した損失を示している。
なお、比較例1では、芯材における損失(渦電流損失)と超伝導テープ線材における損失(交流損失)とは別々に測定した。すなわち、芯材における損失として、直径が3mmの中実な銅製の単線について渦電流損失を測定し、超伝導テープ線材における交流損失として、直径が3mmのGFRP製の芯材の周囲に直接的に螺旋状に巻き付けられた状態の超伝導テープ線材2について、交流損失を測定した。
(a)に示す実施例1における損失の測定値は、芯材である撚り線1の渦電流損失を含んでいるが、これは極めて小さく無視することができる。よって、実施例1における損失の測定値は、超伝導テープ線材2における交流損失にほぼ等しいと判断された。
(b)に示す比較例1の測定値において、棒グラフの下側部分の芯材による損失が大きい理由は、芯材が撚り線1ではなく中実であるためであると判断された。
超伝導テープ線材2における損失について、(b)の棒グラフの上側部分に示す比較例1の測定値の方が、(c)に示す比較例2の測定値よりも小さくなっている理由は、超伝導テープ線材2を芯材の周囲に螺旋状に巻き付けることによる効果、すなわち、超伝導テープ線材2の単位長さ(1m)の内での、横方向かつテープ面に垂直な方向の交流磁界にさらされる部分が短くなることによる効果であると判断された。
(a)に示す実施例1における損失が、(b)の棒グラフの上側部分に示す比較例1の損失よりも小さくなっている理由は、超伝導テープ線材2をマルチフィラメント化したことによる効果であると判断された。
<臨界電流に関する検証>
以下に説明する実施例2~6および比較例3では、作製したそれぞれの超伝導導体10について電界-電流特性を測定した。電界-電流特性は、超伝導テープ線材2を芯材に螺旋状に巻き付ける前と後とで測定した。測定により得られた電界-電流特性から、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の劣化が生じているかを確認した。なお、臨界電流の値は、超伝導状態の破壊が確認されたときの電流の値とした。
[実施例2]
図9は、実施例2において作製した超伝導導体10C(10)の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Cの側面図であり、(B)は(A)に示す7B-7B線に沿う超伝導導体10Cの断面図である。
実施例2では、撚り線1の周囲に直接的に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10Cを作製した。撚り線1には、素線径が0.3mm、仕上がり径が2.8mmの型番IZ02を使用した。型番IZ02では、6本の素線11がZ撚りで撚り合わされて1つの1次撚り線が形成されており、7つの1次撚り線がS撚りで撚り合わされて1つの撚り線1が形成されていた。
図10は、実施例2において作製した超伝導導体10C(10)の電界-電流特性の測定結果である。図10に示す測定結果によると、実施例2に係る超伝導導体10Cでは、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、約半分の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。臨界電流で比較すると、実施例2に係る超伝導導体10Cは、超伝導テープ線材2単体と比較して約半分の性能を発揮することができていることが確認された。
発明者らの詳細な観察によると、超伝導導体10Cでは、撚り線1と超伝導テープ線材2との間に空隙8が確認され、幾つかの空隙8の付近において、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がりが確認された。このことから、超伝導テープ線材2の折れ曲がりは、撚り線1の外周に存在する凹凸に起因すると推定され、後述する比較例3において作製した超伝導導体90との比較から、超伝導テープ線材2が撚り線1の外周に沿って折れ曲がることにより、臨界電流の劣化が生じていると推定された。
なお、本実施例2において用いる型番IZ02の撚り線では、素線11の径は0.3mmであり、後述する実施例5および6で使用する型番IZ05またはIZ06の素線11の径0.1mmと比べても比較的太かった。また、型番IZ02の撚り線では、素線11を撚って1次撚り線を構成するときと、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときの撚り方向は相違していた。
続いて本実施例2では、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度を計算することにより、臨界電流の劣化度合いに関して、撚り線1の外周に存在する凹凸がどの程度許容されるのかを確認した。
芯材の直径2.8mmから計算した周長8.8mmに素線径0.3mmの素線を並べると約29本並ぶ。すなわち、芯材は真円ではなく29角形と想定される。これをさらに正29角形であると仮定すると、その外角は約12度であり、正29角形の芯材に沿って超伝導テープ線材が巻き付けられ折れ曲がると考えると、折れ曲がり角度は12度と想定される。
図10に示す測定結果に示されているように、実施例2では、超伝導テープ線材2単体と比較して約半分の性能を発揮することができていることが確認された。この場合の、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度は12度と想定された。よって、本実施例2によると、超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度が12度以下であれば、臨界電流の劣化度合いに関して、超伝導テープ線材2単体と比較して約半分の性能を発揮することができていることが確認された。
[実施例3]
図11は、実施例3において作製した超伝導導体10D(10)の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Dの側面図であり、(B)は(A)に示す9B-9B線に沿う超伝導導体10Dの断面図である。
実施例3では、平滑化層3B(3)としてテープ形状のハステロイ(登録商標)を撚り線1の周囲に螺旋状に巻き付けて、さらにその表面に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10Dを作製した。撚り線1には実施例2と同様に型番IZ02を使用した。金属製のハステロイテープは、撚り線1の周囲に螺旋状に2本並列に巻いた。超伝導テープ線材2の巻向きはZ巻きであり、ハステロイテープの巻向きはS巻きであった。
図12は、実施例3において作製した超伝導導体10D(10)の電界-電流特性の測定結果である。図12に示す測定結果によると、実施例3に係る超伝導導体10Dでは、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、約半分の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。臨界電流で比較すると、実施例3に係る超伝導導体10Dは、超伝導テープ線材2単体と比較して約半分の性能を発揮することができていることが確認された。
[実施例4]
図13は、実施例4において作製した超伝導導体10E(10)の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Eの側面図であり、(B)は(A)に示す11B-11B線に沿う超伝導導体10Eの断面図である。
実施例4では、平滑化層3A(3)として樹脂製のチューブを用いて撚り線1の周囲を覆い、さらにその表面に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10Dを作製した。撚り線1には実施例2と同様に型番IZ02を使用した。
図14は、実施例4において作製した超伝導導体10E(10)の電界-電流特性の測定結果である。図14に示す測定結果によると、実施例4に係る超伝導導体10Eでは、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、概ね同程度の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。このことから、平滑化層3Aとして樹脂製のチューブを用いることにより、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の実質的な劣化は生じていないことが確認された。
[実施例5]
図15は、実施例5において作製した超伝導導体10F(10)の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Fの側面図であり、(B)は(A)に示す13B-13B線に沿う超伝導導体10Fの断面図である。
実施例5では、平滑化層3C(3)としてテトロン(登録商標)製の糸(または繊維)を用いて撚り線1の周囲を覆い、さらにその表面に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10Fを作製した。テトロンはポリエステル樹脂製である。
実施例2~4にて使用した型番IZ02とは異なり、撚り線1には素線径が0.1mm、仕上がり径が2.8mmの型番IZ05を使用した。型番IZ05の素線11の径0.1mmは、実施例2~4にて使用した型番IZ02の素線11の径0.3mmよりも細かった。型番IZ05では、撚り方向は、素線11を撚って1次撚り線を構成するときも、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときも同じS撚りであり、撚りピッチも、素線11を撚って1次撚り線を構成するときも、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときも同じ50mmであった。
図16は、実施例5において作製した超伝導導体10F(10)の電界-電流特性の測定結果である。図16に示す測定結果によると、実施例5に係る超伝導導体10Fでは、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、概ね同程度の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。このことから、平滑化層3Cとしてテトロン製の糸を用いることにより、撚り線1の種類に依らず、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の実質的な劣化は生じていないことが確認された。
[実施例6]
図17は、実施例6において作製した超伝導導体10G(10)の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体10Gの側面図であり、(B)は(A)に示す15B-15B線に沿う超伝導導体10Gの断面図である。
実施例6では、実施例5において作製した超伝導導体10Fから平滑化層3Cを省いた構成として、超伝導導体10Gを作製した。実施例6では、撚り線1の周囲に直接的に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体10Gが作製された。実施例5において作製した超伝導導体10Fとは異なり、超伝導導体10Gでは、撚り線1の周囲はテトロン製の糸で覆われていなかった。
実施例6では、撚り線1には素線径が0.1mm、仕上がり径が3.2mmの型番IZ06を使用した。型番IZ06の素線11の径0.1mmは、実施例5にて使用した型番IZ05の素線11の径0.1mmと等しい。型番IZ06では、型番IZ05と同様に、撚り方向は、素線11を撚って1次撚り線を構成するときも、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときも同じS撚りであり、撚りピッチも、素線11を撚って1次撚り線を構成するときも、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときも同じ50mmであった。
芯材の直径3.2mmから計算した周長10mmに素線径0.1mmの素線を並べると約100本並ぶ。すなわち、芯材は真円ではなく100角形と想定される。これをさらに正100角形であると仮定すると、その外角は約3.6度であり、正100角形の芯材に沿って超伝導テープ線材が巻き付けられ折れ曲がると考えると、折れ曲がりが生じても、折れ曲がり角度は3.6度と想定される。
図18は、実施例6において作製した超伝導導体10G(10)の電界-電流特性の測定結果である。図18に示す測定結果によると、実施例6に係る超伝導導体10Gでは、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、概ね同程度の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。このことから、素線11の径が約0.1mmよりも細く、撚り方向および撚りピッチが、素線11を撚って1次撚り線を構成するときも、1次撚り線を撚って最終的な撚り線1を構成するときも同じである場合には、平滑化層3を備えていなくとも、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の実質的な劣化は生じていないことが確認された。
続いて本実施例6では、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度を計算することにより、臨界電流の劣化度合いに関して、撚り線1の外周に存在する凹凸がどの程度許容されるのかを確認した。
図18に示す測定結果に示されているように、実施例6では、平滑化層3を備えていなくとも、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の実質的な劣化は生じていないことが確認された。この場合の、撚り線1の外周に沿った超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度は3.6度と想定された。よって、本実施例6によると、超伝導テープ線材2の折れ曲がり角度が3.6度以下であれば、平滑化層3を備えていなくとも、臨界電流の実質的な劣化は生じていないことが確認された。
[比較例3]
図19は、比較例3として作製した超伝導導体90の構成を模式的に示す図である。(A)は超伝導導体90の側面図であり、(B)は(A)に示す17B-17B線に沿う超伝導導体90の断面図である。
比較例3では、芯材9として、表面が平坦なガラス繊維強化樹脂(glass fiber reinforced plastics; GFRP)を用い、GFRP製の芯材9の周囲に直接的に超伝導テープ線材2を螺旋状に巻き付けて超伝導導体90を作製した。芯材9が可撓性を有していないことから超伝導導体90も可撓性を有していなかった。
図20は、比較例3において作製した超伝導導体90の電界-電流特性の測定結果である。図20に示す測定結果によると、比較例3に係る超伝導導体90では、螺旋状に巻き付ける前の超伝導テープ線材2単体と比較して、概ね同程度の電流値において超伝導状態の破壊が確認された。このことから、芯材9の表面に沿って超伝導テープ線材2を長手方向に沿って螺旋状に巻き付けるにあたり、芯材9の表面が平坦である場合には、超伝導テープ線材2の巻き付けの前後で臨界電流の劣化は生じていないことが確認された。
1 撚り線
2(2A,2B,2C,2D,2E,2F) テープ形状の超伝導線材(超伝導テープ線材)
3(3A,3B,3C) 平滑化層
8 空隙
9 芯材
10(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G) ケーブル状の超伝導導体
11 素線
21 基板
22(22a) 超伝導層
23 絶縁部
24 接続部
25(25a,25b) 導電層
27 銅分流層
90 比較例として作製したケーブル状の超伝導導体
98 持続的渦電流
99 結合電流

Claims (14)

  1. 互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
    可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
    を備え、
    前記金属素線の直径は0.3mm以下であり、前記撚り線の直径は5mm以下である、超伝導導体。
  2. 前記超伝導線材の長手方向と前記撚り線の長手方向とのなす角度は、45度以上90度未満である、請求項1に記載の超伝導導体。
  3. 前記複数の金属素線は同じ向きに撚り合わされている、請求項1または2に記載の超伝導導体。
  4. 前記複数の金属素線は同じ撚りピッチで撚り合わされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  5. 前記撚り線と前記超伝導線材との間に、前記撚り線の周囲を長手方向に沿って覆うように配置された、可撓性を有する平滑化層をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  6. 前記平滑化層は、樹脂または金属を用いて形成されており、前記撚り線の周囲を筒状にまたは螺旋状に覆っている、請求項5に記載の超伝導導体。
  7. 複数の前記超伝導線材を備え、
    複数の前記超伝導線材は、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  8. 複数の前記超伝導線材は異なる向きで、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、請求項7に記載の超伝導導体。
  9. 前記超伝導線材において、
    複数の前記超伝導層は、前記基板の長手方向に延伸し、前記基板の短手方向に並列に配置されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  10. 前記超伝導線材と、前記撚り線が有する少なくとも一つの前記金属素線とを電気的に接続する常伝導部材をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  11. 前記超伝導線材と、前記撚り線が有する少なくとも一つの前記金属素線とを電気的に接続する常伝導部材をさらに備え、
    複数の前記常伝導部材は、隣接する前記常伝導部材間の前記超伝導導体の区間において、前記超伝導導体に対する横方向の磁界の積分値を最小化するように配置されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の超伝導導体。
  12. 互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
    可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
    前記撚り線と前記超伝導線材との間に、前記撚り線の周囲を長手方向に沿って覆うように配置された、可撓性を有する平滑化層と、
    を備える、超伝導導体。
  13. 互いに撚り合わされた複数の金属素線を有する撚り線と、
    可撓性を有する基板の表面に形成された超伝導層を有し、前記撚り線の周囲に長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられている、テープ形状の超伝導線材と、
    を備え、
    前記撚り線の外周に沿った前記超伝導線材の折れ曲がり角度は12度以下である、超伝導導体。
  14. 請求項1から13のいずれか一項に記載の超伝導導体が巻回されてなる巻線。
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