JP2022176711A - 包装材用フィルム、包装材、包装袋及び包装体 - Google Patents

包装材用フィルム、包装材、包装袋及び包装体 Download PDF

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Abstract

【課題】加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム等を提供すること。【解決手段】ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む第一の樹脂層を備え、第一の樹脂層の表面の算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層の表面の表面積率Yの比Y/Xが0.4~8.0μm-1である、包装材用フィルム。【選択図】図2

Description

本発明は、包装材用フィルム、包装材、包装袋及び包装体に関する。
カレーなどの水中油分散型内容物を封入した包装体が知られている。このような包装体においては、包装体を開封して内容物を排出させる際に、内容物を全て使い切ることができずに無駄が生じることや、内容物の付着により汚れが生じること、内容物の排出作業に手間がかかることなどの問題が指摘されている。
そのため、包装体には、その開封時に、内容物を滑落しやすくすること、すなわち、内容物に対して優れた滑落性を付与することが求められている。
例えば特許文献1には、平均粒径D50が10~50μmであり且つ融点が100~180℃のポリオレフィン系粒子を含み、表面粗さRaが1.00~7.00μmのヒートシール層を備える包装シートを用いた包装体により、内容物を表面により付着しにくくして、包装体から容易に排出させることが提案されている。
国際公開第2018/003978号
しかし、上記特許文献1に記載の包装体は、以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の包装体は、開封時の内容物の排出容易性、すなわち滑落性の点で改善の余地を有していた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム、これを備える包装材、包装袋及び包装体を提供することを目的とする。なお、本発明において、水中油分散型の内容物とは、水と脂質とを含有し、水の含有量が脂質の含有量よりも多い内容物を意味する。「脂質」は20℃(常温)において液状である油と、20℃において固体である脂とを包含する概念である。以下、水中油分散型の内容物に含まれる上記油と、上記脂であって本発明に係る包装材用フィルムに施される加熱処理によって液状となる脂とをまとめて「油分」と称する。
上記課題を解決するための、本発明の一側面は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む第一の樹脂層を備え、第一の樹脂層の表面の算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層の表面の表面積率Yの比Y/Xが0.4~8.0μm-1である、包装材用フィルムである。
この包装材用フィルムによれば、第一の樹脂層中のポリオレフィン樹脂が、レトルト処理又はボイル処理の温度条件下において、油分を吸収して膨潤することが可能である。このため、包装材用フィルムを、水中油分散型の内容物を封入した包装体の包装材に用い、水中油分散型の内容物を包装材用フィルムの第一の樹脂層の表面に接触させた状態でレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理を行うと、内容物中の油分の一部が第一の樹脂層に吸収される。このとき、第一の樹脂層において、第一の樹脂層の表面の算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層21の表面Sの表面積率Yの比Y/Xが0.4~8.0μm-1となっているため、第一の樹脂層の内容物側の表面がフィラーに起因して適度な凹凸を有することが可能となり、第一の樹脂層と水中油分散型の内容物との接触面積が大きくなる。このため、内容物に含まれる油分が、第一の樹脂層に吸収されやすくなり、第一の樹脂層の親油性が向上する。これにより、第一の樹脂層の表面と内容物との間に油膜が安定的に形成され易くなる。第一の樹脂層の表面と内容物との間に油膜が介在することで、内容物が第一の樹脂層の表面に直接的に接することが抑制されるとともに、撥水性を有する油膜を界面として、表層部が水で構成される内容物が滑りやすくなる。従って、本発明の包装材用フィルムは、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。
上記包装材用フィルムにおいて、第一の樹脂層の表面の、フィラーにより形成される凸部が占める投影面積率が8~45%であることが好ましい。投影面積率が上記範囲内にあると、内容物に対する良好な滑落性を維持し易い。
上記包装材用フィルムにおいて、フィラーが多孔質フィラーを含むことが好ましい。多孔質フィラーを用いることで、第一の樹脂層の表面と内容物との間に油膜がより安定的に形成され易くなり、内容物に対するより一層優れた滑落性を発現し易い。
上記包装材用フィルムにおいて、第一の樹脂層がエラストマー成分を更に含むことが好ましい。これにより、内容物に対するより一層優れた滑落性を発現し易い。
また、本発明の別の一側面は、基材と、基材上に設けられる包装材用フィルムとを備え、包装材用フィルムが上述した包装材用フィルムからなり、包装材用フィルムの第一の樹脂層のうち基材と反対側の表面が露出されている包装材である。
この包装材は、上記包装材用フィルムを備えており、包装材用フィルムは、基材と反対側の露出された表面に水中油分散型の内容物を接触させた状態で加熱処理することによって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。また、この包装材は、基材をさらに備えるため、包装材用フィルムが基材によって補強される。
本発明のさらに別の一側面は、水中油分散型の内容物を収容するための包装袋であって、上述した包装材を用いて形成され、第一の樹脂層が内側に配置されている包装袋である。
この包装袋によれば、包装材に含まれる包装材用フィルムが、加熱処理によって、第一の樹脂層と接触する水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。このため、水中油分散型の内容物を包装袋内に封入して包装体を得た後、当該包装体に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体の開封後に包装体から水中油分散型の内容物を排出させる際に、その水中油分散型の内容物を容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物の残液量を低減させることができ、内容物の無駄を防止でき、内容物の付着による汚れを防止できるとともに、内容物の排出作業を効率よく行うことができる。
本発明のさらにまた別の側面は、上述した包装袋と、包装袋内に封入された水中油分散型の内容物とを備える包装体である。
この包装体によれば、包装材に含まれる包装材用フィルムが、加熱処理によって、第一の樹脂層と接触する水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できる。このため、包装体に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体の開封後に包装体から水中油分散型の内容物を排出させる際に、その水中油分散型の内容物を容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物の残液量を低減させることができ、内容物の無駄を防止でき、内容物の付着による汚れを防止できるとともに、内容物の排出作業を効率よく行うことができる。
本発明によれば、加熱処理によって、水中油分散型に対して優れた滑落性を付与できる包装材用フィルム、これを備える包装材、包装袋及び包装体が提供される。
図1は、本発明に係る包装材の一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2(a)~図2(c)は、本発明に係る包装材によって、水中油分散型の内容物に対する優れた滑落性を付与できるメカニズムを説明する一連の模式図である。 図3は本発明に係る包装体の一実施形態を示す断面図である。 図4(a)~図4(e)は、包装材について、内容物の滑落性の評価方法を説明する一連の模式図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
<包装材>
まず本発明の包装材の一実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る包装材の一実施形態を模式的に示す断面図、図2(a)~図2(c)は、本発明に係る包装材によって、水中油分散型の内容物に対する優れた滑落性を付与できるメカニズムを説明する一連の模式図である。
図1に示す包装材100は、水中油分散型の内容物を収容するための包装袋の形成に用いられるものである。水中油分散型の内容物とは、水と油分とを含有し、水の含有量が油分の含有量よりも多い内容物である。水中油分散型の内容物に含まれる油分の量は、例えば、0.1質量%以上50質量%未満であり、0.5~40質量%又は1~20質量%であってもよい。水中油分散型の内容物の具体例としては、カレー、ハヤシソース、パスタソース(例えば、ミートソース)及びペットフードが挙げられる。なお、カレーに含まれる油分の量は、例えば、0.2~15質量%程度であり、カレーに含まれる水分の量は、例えば、70~90質量%程度である。
包装材100は、基材10と、基材10上に設けられる包装材用フィルム20と、基材10及び包装材用フィルム20を接着する接着剤層30とを備えている。
包装材用フィルム20は、ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む第一の樹脂層21と第二の樹脂層22とを備えており、包装材用フィルム20において、第一の樹脂層21は、基材10と反対側に配置され、第二の樹脂層22は、基材10側に配置されている。すなわち、第一の樹脂層21のうち基材10と反対側の表面Sは露出されている。この第一の樹脂層21の表面Sは、包装材100を用いて包装袋(例えば、レトルトパウチ)を形成した場合に、包装袋の内面となるものである。
第一の樹脂層21は、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物21aと、樹脂組成物21a中に分散しているフィラー21bとを含有する。第一の樹脂層の表面の算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層の表面の表面積率Yの比Y/Xは0.4~8.0μm-1である。第一の樹脂層の表面Sには、フィラー21bにより凸部が形成されている。
上記包装材100によれば、包装材用フィルム20の第一の樹脂層21中に含まれるポリオレフィン樹脂は、レトルト処理又はボイル処理の温度条件下において、油分を吸収して膨潤することが可能である。このため、包装材100を、水中油分散型の内容物Cを封入した包装体に用い、水中油分散型の内容物Cを包装材用フィルム20の第一の樹脂層21の表面Sに接触させた状態とし(図2(a)参照)、この状態で、レトルト処理又はボイル処理などの加熱処理を行うと、内容物Cに含まれている油分Cの一部が第一の樹脂層21に吸収される(図2(b)参照)。
このとき、第一の樹脂層21において、第一の樹脂層21の表面Sの算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層21の表面Sの表面積率Yの比Y/Xが0.4~8.0μm-1となっているため、第一の樹脂層21の内容物C側の表面Sがフィラー21bに起因して適度な凹凸を有することが可能となり、第一の樹脂層21と水中油分散型の内容物Cとの接触面積が大きくなる。このため、内容物Cに含まれる油分Cが、第一の樹脂層21に吸収されやすくなり、第一の樹脂層21の親油性が向上する。発明者らは、油膜Foの形成にはフィラー21bにより生じる数μm程度の多数の凸構造が重要であり、これは例えば賦形処理などの一般的な加工方法では得ることのできない構造であると推察している。
ここで、Y/Xは、算術平均高さSaが表面積率に寄与する効率を表す三次元パラメータである。算術平均高さSaは、Ra(線の算術平均高さ)を面に拡張したパラメータである。表面積率とは、表面形状を測定した面が完全にフラットであると仮定したときの面積に対する実際の表面積の比率を表すパラメータである。両者の比Y/Xが上記範囲内である場合、内容物Cに対する良好な滑落性を有することができる。例えば、Saの値が同等であっても、表面積率が大きい方が滑落性への寄与効率が良いといえる。
第一の樹脂層21の表面Sの粗さ及び表面積率の程度を適切に調整することにより、第一の樹脂層21の表面Sと内容物Cとの間に油膜Fが安定的に形成されやすくなる。そして、第一の樹脂層21の表面Sと内容物Cとの間に油膜Fが介在することで、内容物Cが第一の樹脂層21の表面Sに直接的に接することが抑制されるとともに、撥水性を有する油膜Fを界面として、表層部が水で構成される内容物Cが滑りやすくなる。
このため、図2(c)に示すように、水中油分散型の内容物Cは、包装材100の表面Sを傾斜させるだけで油膜F上を滑りやすくなる。従って、包装材100は、加熱処理によって、水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与できる。
また、ポリオレフィン樹脂は熱融着性を有しているため、第一の樹脂層21はシーラントフィルムの役割も果たすことができる。従って、包装材100は、包装体を形成する際に、第一の樹脂層21を内側に向けて第一の樹脂層21同士を熱融着させることで容易に包装体を形成することができる。
以下、包装材100を構成する第一の樹脂層21、第二の樹脂層22、基材10及び接着剤層30について説明する。
(第一の樹脂層)
第一の樹脂層21は、水中油分散型の内容物Cと接した状態で加熱処理(例えば、レトルト処理及びボイル処理)が施されることにより、水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与する層である。
樹脂組成物21a中のポリオレフィン樹脂の含有率は通常、75質量%以上であり、80質量%以上又は90質量%以上であってもよい。樹脂組成物21aが実質的にポリオレフィン樹脂からなるものであってもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブチレン樹脂などが挙げられる。中でも、耐熱性に優れることから、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、プロピレン-αオレフィン共重合体、及び変性ポリプロピレンなどが挙げられる。ポリプロピレン樹脂として、ブロックポリプロピレン及びランダムポリプロピレンを組み合わせて用いる場合、ブロックポリプロピレンと、ランダムポリプロピレンとの質量比(ブロックポリプロピレン/ランダムポリプロピレン)は、20/80~80/20であることが好ましく、40/60~60/40であることが更に好ましい。ランダムポリプロピレンとしては、株式会社プライムポリマー製のプライムポリプロ F744NP、F-300SP等が挙げられる。ブロックポリプロピレンとしては、日本ポリプロ株式会社製のノバテック BC3HF、BC5FA等が挙げられる。
上記以外でも、ポリオレフィン樹脂は、ポリノルボルネンなどの環状ポリオレフィンであってもよい。また、上記ポリオレフィン樹脂としては、シール性及び強度物性(引張強度、衝撃強度など)の観点から、線状ポリオレフィンが好ましく、線状ポリオレフィンは直鎖状でも分岐状でもよい。
エチレン-αオレフィン共重合体及びプロピレン-αオレフィン共重合体におけるαオレフィン成分としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
変性ポリプロピレンは、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の酸無水物、不飽和カルボン酸のエステル等から導かれる不飽和カルボン酸誘導体成分で、ポリプロピレンをグラフト変性することで得られる。また、ポリプロピレン樹脂として、水酸基変性ポリプロピレンやアクリル変性ポリプロピレン等の変性ポリプロピレンを使用することもできる。プロピレン系共重合体を得るために用いられるαオレフィン成分としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンなどを例示することができる。
フィラー21bとしては、オレフィンフィラー及びアクリルフィラー等の有機フィラー、シリカフィラー等の無機フィラー、多孔質フィラーなどが挙げられる。
オレフィンフィラーとして、例えば、三井化学株式会社製のミペロン(登録商標)シリーズ及び住友化学株式会社製のCSシリーズが挙げられる。
アクリルフィラーとして、例えば、綜研化学株式会社製のMXシリーズ、ENEOS液晶株式会社製のユニパウダー NMBシリーズが挙げられる。
シリカフィラーとして、例えば、大日精化工業株式会社製のスムースマスターシリーズ、富士シリシア化学株式会社製のサイロホービックシリーズ、株式会社アドマテックス製のアドマファインSOシリーズ、テイカ株式会社製のシリカTMSシリーズ、AGCエスアイテック株式会社製のサンスフェアシリーズが挙げられる。
有機物からなる多孔質フィラーとしては、例えば、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーMBPシリーズ、積水化成品工業株式会社製のテクポリマーACPシリーズ等が挙げられる。
無機物からなる多孔質フィラーとしては、例えば、富士シリシア化学株式会社製のサイロホービックシリーズ、AGCエスアイテック株式会社製のサンスフェアシリーズなどが挙げられる。
フィラーは1種類を単独で用いてもよく、組成や粒径等が異なる2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
第一の樹脂層21中に多孔質フィラーが適度な含有率で含まれる場合、この多孔質フィラーが油分Cを吸着することが可能であり、水中油分散型の内容物Cに含まれている油分Cの第一の樹脂層21への吸収が促進される。この場合、第一の樹脂層21の表面Sの凹凸と、吸油による親油性の向上との相乗効果により、第一の樹脂層21の表面Sと内容物Cとの間に油膜Fがより安定的に形成されやすくなる。そのため、内容物Cに対するより一層優れた滑落性を発現し易い。
多孔質フィラーは、本体部を含むということができる。多孔質フィラーに含まれる本体部は、無機物でも有機物でもよい。有機物としては、ポリオレフィン樹脂及びアクリル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂としては、架橋ポリメタクリル酸メチルなどの架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。無機物としては、シリカ、タルク、セラミック、ガラスビーズ、炭酸カルシウム等のミネラルフィラー、カーボンブラック、ガラス繊維、セラミック繊維及び炭素繊維等が挙げられる。これらも、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
多孔質フィラーは、本体部の少なくとも一部を被覆する被覆部をさらに備えてもよい。被覆部は、親水性材料で構成されても疎水性材料で構成されてもよいが、疎水性材料で構成されることが好ましい。ここで、疎水性材料とは、DBA(ジ-n-ブチルアミン)値が200mEq/kg以下である材料をいい、DBA値とは、本体部の表面に吸着したDBAの量をいう。DBA値は、DBAが本体部表面の水酸基に吸着される量に対応するものであり、DBA値が小さいほど、水酸基が少ないこと(疎水性が高いこと)を意味する。
本体部及び被覆部で構成される多孔質フィラーは、例えば本体部と、疎水性材料の原料とを化学的に反応させることによって、すなわち、本体部を疎水化処理することによって得ることができる。疎水性材料の原料としては、例えば有機ケイ素化合物などが挙げられる。中でも、疎水性材料の原料としては、有機ケイ素化合物が好ましい。
フィラー21bの平均粒子径は、フィラーの種類に応じて以下の方法によって求められる。
(レーザー回折式粒度分布測定による算出方法)
(1)フィラー21bを分散媒中に分散させる。分散媒は、例えば、水又は有機溶剤であり、フィラーの種類に応じて適切なものを選択する。
(2)レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:「MT3300EX II」、マイクロトラックベル社製)を用い、レーザー回折・散乱法にてフィラー21bの平均粒子径を算出する。
(顕微鏡観察による算出方法)
上記レーザー回折式粒度分布測定が適さない場合又は困難である場合、走査型電子顕微鏡(SEM)又はレーザー顕微鏡等の光学顕微鏡を用いてフィラー21bの平均粒子径を求めてもよい。
顕微鏡観察により観察される視野内における任意の粒子について、粒子の最長径と最短径の長さを測定し、その和を2で割った値を粒子径とする。複数の粒子について粒子径を測定及び算出し、その平均値を平均粒子径とみなす。上記任意の粒子の数は、10個以上であることが好ましい。
フィラー21bの平均粒子径は、好ましくは3μm以上である。この場合、フィラー21bの適度な添加量で適度な算術平均高さSaを付与することができるため、シール強度低下などの包装材用フィルム20の物性への影響を低減しながら、効率的に内容物Cの滑落性を向上させることができる。
フィラー21bの平均粒子径は、より好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは7μm以上である。
フィラー21bの平均粒子径は、30μm以下であることが好ましい。この場合、フィラー21bの平均粒子径が30μmを超える場合に比べて、第一の樹脂層21の表面において油膜Fをより形成しやすくなり、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、より優れた滑落性を付与することができる。
フィラー21bの平均粒子径は、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。
第一の樹脂層21中のフィラー21bの含有率は、0.5~30質量%であることが好ましい。この場合、フィラー21bの含有率が上記範囲を外れる場合に比べて、包装材用フィルム20が、包装体に封入された水中油分散型内容物Cに対して、より優れた滑落性を付与し易くなる。第一の樹脂層21中のフィラー21bの含有率は、好ましくは1~15質量%であり、より好ましくは3~10質量%である。第一の樹脂層21のフィラー21bの含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、例えば、0.5~10質量部であり、好ましくは1~8質量部であり、より好ましくは2~8質量部である。フィラー21bの含有量が上記範囲内にあることで第一の樹脂層21の表面Sに適度な凹凸を付与することができる。
第一の樹脂層21の厚さは、以下のようにして求められる値をいう。
(1)まず、包装材用フィルム20を、包埋樹脂(アクリル樹脂)で固定して構造体を準備する。
(2)ミクロトームにて構造体から断面観察用の試料の切り出しを行う。
(3)切り出した断面観察用の試料の断面をマイクロスコープ(製品名:VHX-1000、株式会社キーエンス製)で観察する。
(4)第一の樹脂層21の厚さ方向に沿ってフィラー21bが存在しない3箇所における厚さを測定し、これらの3箇所の厚さの平均値を第一の樹脂層21の厚さとして算出する。
第一の樹脂層21の厚さは、例えば、2~100μmであり、好ましくは4~70μmであり、より好ましくは6~50μmであり、更に好ましは8~30μmである。第一の樹脂層21の厚さが上記範囲内にあることで内容物Cの滑落性とヒートシール性の両方を高水準に達成できる。ここで、ヒートシール性とは、一例として、100~200℃、0.1~0.3MPa、1~3秒間の条件にてヒートシールが可能である性質をいう。
第一の樹脂層21の表面Sの算術平均高さSaは、上記の比Y/Xが0.4~8.0μm-1である範囲において適宜に調整すればよく、好ましくは2.0μm以下である。これにより、第一の樹脂層21の表面Sに適度な凹凸が形成され易くなり、水中油分散型の内容物Cに対してより優れた滑落性を付与できる。表面Sの算術平均高さSaは、より好ましくは1.5μm以下であり、更に好ましくは1μm以下である。
表面Sの算術平均高さSaは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上であり、更に好ましくは0.5μm以上である。
第一の樹脂層21の表面Sの表面積率は、上記の比Y/Xが0.4~8.0μm-1である範囲において適宜に調整すればよく、好ましくは1.00超である。これにより、第一の樹脂層21の表面Sに適度な凹凸が形成され易くなり、水中油分散型の内容物Cに対してより優れた滑落性を付与できる。表面Sの表面積率は、より好ましくは1.01以上であり、更に好ましくは1.02以上である。
表面Sの表面積率は、好ましくは1.10以下であり、より好ましくは1.09以下であり、更に好ましくは1.08以下である。
表面Sの算術平均高さSa及び表面積率は、例えば、フィラー21bの配合量及び平均粒子径、第一の樹脂層21の製膜条件(厚さ及び温度など)によって調整することができる。なお、ここでいう「算術平均高さSa」及び「表面積率」の値は、レーザー顕微鏡(商品名「OLS-4000」、オリンパス株式会社製)を使用し、以下の条件で測定された値を意味する。
・対物レンズの倍率:50倍
・傾き補正:直線補正
・平滑化補正:メディアン 1回
・カットオフ:λc=80μm
第一の樹脂層21の表面Sの算術平均高さSaXμmに対する、第一の樹脂層21の表面Sの表面積率Yの比Y/Xは0.4~8.0μm-1である。比Y/Xが上記範囲内にあることで、第一の樹脂層21の表面Sにおいて適度な凹凸が形成される。比Y/Xが下限値未満の場合、Saが過剰に大きい傾向があり、内容物Cの滑落を阻害し得る。比Y/Xが上限値超の場合、Saが小さく表面積率増加への寄与が小さいため、形成される油膜の保持や安定化効果が得られ難い。比Y/Xは、好ましくは0.7μm-1以上であり、より好ましくは1.0μm-1以上であり、更に好ましくは1.2μm-1以上である。比Y/Xは、好ましくは7.0μm-1以下であり、より好ましくは5.0μm-1以下であり、更に好ましくは4.0μm-1以下である。
第一の樹脂層21の表面Sの、フィラー21bにより形成される凸部が占める投影面積率は8~45%であることが好ましい。投影面積率は、第一の樹脂層21の表面Sにて、凸部形成に寄与するフィラー21bの数、大きさ、表面Sにおける突出の程度等が反映される2次元パラメータである。例えば、フィラー21bの1個の投影面積は、フィラー21bの粒径及び表面Sにおける突出の程度に依存しており、同じ粒径のフィラー21bにより凸部が形成されていたとしても、突出の程度によっては投影面積が変動する。投影面積率は、表面Sの平坦部を面積I、凸部を面積IIとしたとき、下記の式により算出される。なお、面積Iと面積IIとは、マイクロスコープによる観察画像を輝度による閾値にて二値化することで決定される。
投影面積率=面積II/(面積I+面積II)×100 [%]
投影面積率が上限値超である場合、凸部が過度に大きく内容物Cに対する滑落性が低下し易い。投影面積率が下限値未満である場合、凸部による油膜の保持・安定化作用が不充分となり易く、内容物Cに対する滑落性が低下し易い。投影面積率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上であり、更に好ましくは15%以上である。投影面積率は、好ましくは42%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは38%以下である。
第一の樹脂層21は、より一層優れた滑落性発現の観点から、エラストマー成分を更に含んでいてよい。エラストマー成分としては、ポリプロピレンとポリエチレンのブロック共重合体、ポリエチレンとエチレン-ブチレンのブロック共重合体、ポリエチレンとエチレン-オクテンのブロック共重合体、エチレン系エラストマー、プロピレン系エラストマー、ブテン系エラストマー、リアクターTPO等が挙げられる。リアクターTPO(reactor thermoplactic polyolefin)は、オレフィン系熱可塑性エラストマ(TPO)の一種であり、例えば、重合時に高濃度のゴム成分添加することで、ベース樹脂としてのポリプロピレンと、これに微分散したゴム成分とによって構成されるものである。エチレン系エラストマーやプロピレン系エラストマーとしては、三井化学株式会社製のタフマーシリーズ等が挙げられる。エラストマー成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エラストマー成分の添加量(複数のエラストマー成分を添加する場合は合計量)は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対し、例えば、30質量部以下であり、好ましくは1~25質量部であり、より好ましくは2~20質量部であり、更に好ましくは3~15質量部である。エラストマー成分に含まれる非晶部(ゴム成分)は油を吸収する性質を有している。このため、エラストマー成分は、安定且つ均一な油膜Fの形成を促し、これにより、内容物Cに対する滑落性をより一層向上させる。
(第二の樹脂層)
第二の樹脂層22は、第一の樹脂層21と基材10との間に設けられる層である。包装材100が第二の樹脂層22を更に備えることで、第二の樹脂層22の持つ機能(ヒートシール性、耐熱性及び耐衝撃性、酸素・水蒸気バリア性等)に応じた機能を包装材100に付与することができる。例えば、ヒートシール性の向上の観点から、第二の樹脂層22は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂の具体例として、ポリオレフィン樹脂、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのエステル化物又はイオン架橋物、エチレン-酢酸ビニル共重合体又はそのケン化物、ポリ酢酸ビニル又はそのケン化物、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸樹脂、フラン樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
第二の樹脂層22の厚さは、包装材100の用途に応じて適宜設定できる。第二の樹脂層22の厚さは、例えば、1~300μmであり、好ましくは2~200μmであり、より好ましくは5~150μmであり、更に好ましくは10~100μmである。
(基材)
基材10は、支持体となるものであり且つレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理に対する耐久性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、樹脂フィルム及び金属箔等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、酸変性ポリオレフィン、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、セルロースアセテート、セロファン樹脂の少なくとも一種を含むフィルムが挙げられる。このフィルムは延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよい。金属箔としては、例えばアルミ箔、ニッケル箔等が挙げられる。基材10は、材質の異なる複数の基材を積層したものであってもよく、コート層や金属蒸着層を含むものであってもよい。
基材10の厚さは、包装材100の用途に応じて適宜設定できる。基材10の厚さは、例えば、1~500μmであり、10~100μmであってもよい。
(接着剤層)
接着剤層30は、包装材用フィルム20(第一の樹脂層21と第二の樹脂層22の積層体)と基材10とを接着するものである。接着剤層30を構成する接着剤は、包装材用フィルム20と基材10とを接着させることができるものであれば特に制限されるものでなく、このような接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、二官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂等が挙げられる。各種ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着剤層30は、接着促進を目的として、上述のポリウレタン樹脂に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物、シランカップリング剤などを配合してもよい。接着剤層30に求められる性能に応じて、上述のポリウレタン樹脂に、その他の各種添加剤や安定剤を配合してもよい。
接着剤層30の厚さは、所望の接着強度、追随性、及び加工性等を得る観点から、例えば、1~10μmであり、3~7μmであってもよい。
基材10には、接着性プライマー(アンカーコート)を設けることも可能であり、その材料として、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアリルアミン系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素-酢酸ビニル系樹脂などを用いることが可能である。接着性プライマーには、必要に応じて、接着剤として使用可能な各種硬化剤や添加剤を配合してもよい。
<包装材の製造方法>
次に、上述した包装材の製造方法について説明する。
包装材100は、包装材用フィルム20と基材10とを貼り合わせることにより得ることができる。基材10と包装材用フィルム20とを貼り合わせる方法としては、例えば、接着剤によるラミネート法、及び、熱処理によるラミネート法が挙げられる。
接着剤によるラミネート方法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ノンソルベントラミネート法などの各種公知のラミネート方法を用いることができる。
熱処理によるラミネート方法としては、大別して以下の(1)~(4)の方法が挙げられる。
(1)接着性樹脂を、あらかじめ作製した包装材用フィルム20と基材10との間に押出し、ラミネートする方法。
(2)包装材用フィルム20と接着性樹脂とを共押出しし、接着性樹脂を基材10側に向けて基材10とラミネートする方法。
(3)上記(1)又は(2)の方法で得られたラミネート体を、更に熱ロールで加熱しながら加圧することにより接着させる方法。
(4)上記(1)又は(2)の方法で得られたラミネート体を、更に高温雰囲気下で保管する、あるいは高温雰囲気下の乾燥・焼付け炉を通過させる方法。
<包装体>
次に、本発明の包装体の一実施形態について図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の包装体の一実施形態を示す断面図である。
図3に示すように、包装体300は、包装袋200と、包装袋200内に封入される水中油分散型の内容物Cとを備える。包装体300においては、包装袋200の包装材用フィルム20の第一の樹脂層21が内側に配置されており、水中油分散型の内容物Cに接触している。
上記包装体300によれば、包装袋200を形成する包装材100に含まれる包装材用フィルム20が、加熱処理によって、第一の樹脂層21と接触する水中油分散型の内容物Cに対して優れた滑落性を付与できる。このため、包装体300に対してレトルト処理又はボイル処理などの加熱処理が行われると、包装体300の開封後に包装体300から水中油分散型の内容物Cを排出させる際に、その水中油分散型の内容物Cを容易に滑落させることができる。このため、水中油分散型の内容物Cの残液量を低減させることができ、内容物Cの無駄を防止でき、内容物Cの付着による汚れを防止できるとともに、内容物Cの排出作業を効率よく行うことができる。
上記包装体300は、包装材100を用いて包装袋200を形成し、包装袋200内に水中油分散型の内容物Cを封入することによって得ることができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、包装材用フィルム20が第一の樹脂層21及び第二の樹脂層22で構成されているが、包装材用フィルム20は、第一の樹脂層21のみで構成されていてもよい。
また、上記包装材100は、包装材用フィルム20と基材10とを接着する接着剤層30を備えているが、包装材用フィルム20と基材10とを直接融着させることができるならば、接着剤層30は省略することが可能である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
各実験例で使用される材料は以下の通りである。
<ポリオレフィン樹脂>
(A1)ランダムポリプロピレン樹脂(プロピレン-エチレンランダム共重合体、商品名「プライムポリプロ F744NP」、株式会社プライムポリマー製)
(A2)ブロックポリプロピレン樹脂(プロピレン-エチレンブロック共重合体、商品名「ノバテック BC5FA」、日本ポリプロ株式会社製)
(A3)ブロックポリプロピレン樹脂(プロピレン-エチレンブロック共重合体、商品名「ノバテック BC3HF」、日本ポリプロ株式会社製)
<フィラー>
(B1)アクリルフィラー(平均粒子径:3μm、商品名「ユニパウダー NMB-0320C」、ENEOS液晶株式会社製)
(B2)アクリルフィラー(平均粒子径:5μm、商品名「ユニパウダー NMB-0520」、ENEOS液晶株式会社製)
(B3)アクリルフィラー(平均粒子径:10μm、商品名「ユニパウダー NMB-1020」、ENEOS液晶株式会社製)
(B4)ポリエチレンフィラー(平均粒子径:10μm、商品名「ミペロン PMPC-1010」、三井化学株式会社製)
(B5)シリカフィラー(平均粒子径:10μm、商品名「TMS-10」、テイカ株式会社製)
(B6)シリカフィラー(平均粒子径:5μm、商品名「TMS-05DCA」、テイカ株式会社製)
(B7)シリカフィラー(平均粒子径:4μm、商品名「サンスフェア NP30」、AGCエスアイテック株式会社製)
(B8)シリカフィラー(平均粒子径:10μm、商品名「サンスフェア NP100」、AGCエスアイテック株式会社製)
(B9)多孔質シリカフィラー(平均粒子径:7μm、商品名「サンスフェア L-71-N」、AGCエスアイテック株式会社製)
(B10)多孔質シリカフィラー(平均粒子径:12μm、商品名「サンスフェア H-121-N」、AGCエスアイテック株式会社製)
(B11)シリカフィラー(平均粒子径:2μm、商品名「FMB-1650B」、日本ポリプロ株式会社製)
(B12)ポリエチレンフィラー(平均粒子径:30μm、商品名「ミペロン XM-220UC」、三井化学株式会社製)
<エラストマー成分>
(C1)ポリプロピレン-ポリエチレンブロック共重合体
(C2)ポリプロピレン系エラストマー(商品名「タフマー PN3560」、三井化学株式会社製)
(C3)ポリエチレン系エラストマー(商品名「タフマー A4085S」、三井化学株式会社製)
<包装材の作製>
共押出機を用いて、表1及び表2に示す組成の第一の樹脂層と、ブロックポリプロピレン樹脂(A3)からなる第二の樹脂層とを備える二層構成の包装材用フィルム(シーラントフィルム)を作製した。このとき、第一の樹脂層における、ランダムポリプロピレン樹脂(A1)及びブロックポリプロピレン樹脂(A2)の混合比は、質量比50/50とした。実験例29については、第一の樹脂層の表面性状をミラー仕上げ(平滑化処理)にて調整し、実験例30~31については、第一の樹脂層の表面性状を賦形処理にて調整した。
次に、得られた包装材用フィルムと、基材である厚さ38μmのPETフィルム(商品名「エンブレット」、ユニチカ株式会社製)とを、ポリウレタン系接着剤(三井化学株式会社製)を用いてドライラミネートし、50℃で5日間エージングして、包装材を得た。なお、各例において、第一の樹脂層及び第二の樹脂層は、第一の樹脂層と第二の樹脂層の合計の厚さが60μmとなるように製膜した。
<算術平均高さSaの測定>
各例の包装材について、第一の樹脂層の算術平均高さSa及び表面積率を、レーザー顕微鏡(商品名「OLS-4000」、オリンパス株式会社製)を用いて以下の条件で測定した。結果を表1及び表2に示す。
・対物レンズの倍率:50倍
・傾き補正:直線補正
・平滑化補正:メディアン 1回
・カットオフ:λc=80μm
<投影面積率の測定>
各例の包装材について、第一の樹脂層の投影面積率を、デジタルマイクロスコープ(商品名「VHX-1000」、株式会社キーエンス製)を用いて、以下の手順で測定した。結果を表1及び表2に示す。
(手順)
a)500倍の倍率にて、第一の樹脂層表面の画像撮影を行う。
b)輝度抽出を行い、平坦部の正規分布と凸部の正規分布が交わる極小値を閾値として調整する。
c)明輝度領域が平坦部、暗輝度領域が凸部となった場合、閾値以上を白色、閾値以下を黒色として二値化する。
d)凸部のフィラー頂点がハレーション等により明輝度(白色)と 認識される場合は、上記a)の実画像と見比べ、フィラー頂点が 黒色と認識されるように補正を行う。
e)平坦部面積を面積I(白色)、凸部面積を面積II(黒色)とし、下記式に基づき面積IIの面積率を算出する。これを凸部の投影面積率とする。
投影面積率=面積II/(面積I+面積II)×100 [%]
<内容物の滑落性評価>
(レトルト処理後の残液評価)
各例で得られた包装材について、図4(a)~図4(e)に示した方法により、レトルト処理後の内容物の滑落性の評価を行った。
まず、縦150mm×横138mmにカットした包装材を二枚用意した。そして、二枚の包装材を、それぞれの第一の樹脂層が内側となるように重ねた状態とし、ヒートシーラーを使用して三辺をシールした。こうして、図4(a)に示すように、三辺にシール部200aが形成され、一辺が開口しているパウチで構成される包装袋200を作製した。このとき、三辺のヒートシールは、190℃、0.03MPa、2秒の条件で実施し、シール部200aの幅は10mmとした。
次に、図4(b)に示すように、包装袋200の開口部から内容物Cとしてのカレー(商品名「ボンカレーゴールド 中辛」、脂質量7.0g/180g、大塚食品株式会社製)180gを注液した。
その後、ヒートシーラーを使用して開口部(残りの一辺)をシールし、図4(c)に示すように、残りの一辺にシール部200bを形成した。こうして、四辺がシールされ且つ内容物Cが封入された包装体300を作製した。このとき、開口部のヒートシールは、190℃、0.03MPa、2秒の条件で実施し、シール部の幅は10mmとした。
こうして作製された包装体300について、高温高圧調理殺菌装置(日立キャピタル株式会社製)に投入して高温の水蒸気でレトルト処理を行った。レトルト処理は以下の条件で実施した。
・圧力:0.2MPa
・温度121℃
・処理時間:30分間
レトルト処理後、包装体300を100℃で5分間にわたって湯煎処理した。その後、図4(d)に示すように、包装体300の上部を切断して注ぎ口を形成した。次いで、図4(e)に示すように、パウチを逆さにし、注ぎ口を水平面から45°傾けた状態で10秒間保持し、容器400内に内容物Cを排出させて、秤500により排出量を秤量した。そして、秤量した排出量から、下記式により残液率(%)を求めた。
残液率(%)={(180-排出量)/180}×100
同様の測定を、包装体300を代えて3回行い、3回の残液率の平均値を平均残液率として算出した。また、平均残液率に基づいて下記評価基準により内容物の滑落性の評価を行った。平均残液率及び内容物の滑落性の評価の結果を表1及び表2に示す。
A:平均残液率が6.5%未満
B:平均残液率が6.5%以上8.0%未満
C:平均残液率が8.0%以上10.0%未満
D:平均残液率が10.0%以上
(レトルト処理後の外観評価)
上記のようにして残液率を測定する際に、パウチ内から内容物(カレー)Cを排出した際の内容物Cの排出挙動を目視にて観察し、下記評価基準により外観評価も行った。結果を表1及び表2に示す。
A:内容物が綺麗に滑落する様子が見られ、包装材用フィルムへの内容物の付着がほぼない。
B:内容物が滑落する様子が見られ、包装材用フィルムへの内容物の付着量が少ない。
C:内容物が滑落する様子が見られるが、包装材用フィルムへの内容物の付着量が多い。
D:内容物が滑落する様子が見られない。
Figure 2022176711000002
Figure 2022176711000003
表1及び表2に示す結果より、実験例1~28(実施例)で得られた包装体では、平均残液率が小さく、外観上も、内容物が滑落する様子が見られた。これに対し、実験例29~33(比較例)で得られた包装体では、平均残液率が大きく、外観上も内容物が滑落する様子が見られなかった。
以上のことから、本発明の包装材用フィルムによれば、加熱処理によって、水中油分散型の内容物に対して優れた滑落性を付与できることが確認された。
10…基材、20…包装材用フィルム、21…第一の樹脂層、21a…樹脂組成物、21b…フィラー、30…接着剤層、100…包装材、200…包装袋、300…包装体、C…内容物、C…油分、S…第一の樹脂層の表面、F…油膜。

Claims (7)

  1. ポリオレフィン樹脂及びフィラーを含む第一の樹脂層を備え、
    前記第一の樹脂層の表面の算術平均高さSaXμmに対する、前記第一の樹脂層の表面の表面積率Yの比Y/Xが0.4~8.0μm-1である、包装材用フィルム。
  2. 前記第一の樹脂層の表面の、前記フィラーにより形成される凸部が占める投影面積率が8~45%である、請求項1に記載の包装材用フィルム。
  3. 前記フィラーが多孔質フィラーを含む、請求項1又は2に記載の包装材用フィルム。
  4. 前記第一の樹脂層がエラストマー成分を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装材用フィルム。
  5. 基材と、
    前記基材上に設けられる包装材用フィルムと、
    を備え、
    前記包装材用フィルムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装材用フィルムからなり、
    前記包装材用フィルムの前記第一の樹脂層のうち前記基材と反対側の表面が露出されている包装材。
  6. 水中油分散型の内容物を収容するための包装袋であって、
    請求項5に記載の包装材を用いて形成され、前記第一の樹脂層が内側に配置されている、包装袋。
  7. 請求項6に記載の包装袋と、
    前記包装袋内に封入された水中油分散型の内容物と、を備える包装体。

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