JP2022175507A - リチウムイオン電池用正極活物質及びその製造方法並びにそれを用いたリチウムイオン電池用正極活物質層及びリチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極活物質及びその製造方法並びにそれを用いたリチウムイオン電池用正極活物質層及びリチウムイオン電池 Download PDF

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Abstract

【課題】従来と比較して容量維持率を向上することができる、リチウムイオン電池用正極活物質及びその製造方法並びに前記リチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極活物質層及びリチウムイオン電池を提供する。【解決手段】本開示のリチウムイオン電池用正極活物質は、モル比での組成式LixMn1-yNbyO2(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表される酸化物を備える。その酸化物は、斜方晶の母構造及びα-NaFeO2型層状構造のドメインを有する。本開示のリチウムイオン用正極活物質を用いたリチウムイオン電池は、従来と比較して、高い容量維持率を有する。本開示のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法は、斜方晶LixMn1-yNbyO2を乾式粉砕して岩塩型LixMn1-yNbyO2を得て、それを500~900℃で焼成して、α-NaFeO2型層状構造のドメインを導入する。【選択図】図3

Description

本開示は、リチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池の正極活物質には、リチウムを含有する遷移金属酸化物が用いられることが一般的である。このような酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、及びマンガン酸リチウム(LiMn)等が挙げられる。容量、サイクル特性、保存特性、内部抵抗、及びレート特性等、リチウムイオン電池の諸特性向上のため、種々の試みがなされている。
例えば、特許文献1には、組成式LiMnOで表され、結晶構造が、ジグザク層状構造を母構造とし、α-NaFeO型の層状構造のドメインを有するリチウムイオン電池用正極活物質が開示されている。そして、特許文献1の正極活物質を用いると、リチウムイオン電池の容量を向上可能であることが開示されている。
また、特許文献2には、組成式LiMn1-x3-α(MはMn及びLi以外の一種以上の金属元素であり、かつ0≦x<1及び0≦α<1である。)で表され、Liが層状に配列した層状結晶構造を有する正極活物質が開示されている。そして、特許文献2には、正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池が、高容量及び高レート特性を有することが開示されている。
特開2019-153564号公報 特開2016-76369号公報
特許文献1及び特許文献2等に開示された従来の正極活物質を用いたリチウムイオン電池では、容量維持率が充分ではなかった。そのことから、容量維持率を向上可能な、リチウムイオン電池用正極活物質が期待されている、という課題を本発明者は見出した。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、本開示は、従来と比較して容量維持率を向上することができる、リチウムイオン電池用正極活物質及びその製造方法並びにそれを用いたリチウムイオン電池用正極活物質層及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質を完成させた。本開示のリチウムイオン電池用正極活物質は、次の態様を含む。
〈1〉モル比での組成式LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表され、かつ、斜方晶の母構造及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する酸化物を備える、リチウムイオン電池用正極活物質。
〈2〉前記yが、0.02≦y≦0.05を満足する、〈1〉項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
〈3〉〈1〉又は〈2〉項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質、及び導電材を含有する、リチウムイオン電池用正極活物質層。
〈4〉〈3〉項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質層を備える、リチウムイオン電池。
〈5〉容量維持率が75%以上である、〈4〉項に記載のリチウムイオン電池。
〈6〉斜方晶LiMn1-yNbを乾式粉砕して、岩塩型LiMn1-yNbを得ること、及び
前記岩塩型LiMn1-yNbを500~900℃で焼成して、α-NaFeO型層状構造のドメインを導入すること、
を含む、〈1〉項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
本開示によれば、組成式LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物のMnの一部を、所定割合のNbで置換することによって、従来と比較して容量維持率を向上可能な、リチウムイオン電池用正極活物質及びその製造方法並びにそれを用いたリチウムイオン電池用正極活物質層及びリチウムイオン電池を提供することができる。
図1は、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質の製造(合成)過程の一例を示す説明図である。 図2は、各試料のXRDパターンを示す説明図である。 図3は、Ndの置換割合yと容量維持率の関係を示すグラフである。 図4は、Ndの置換割合yと放電容量の関係を示すグラフである。 図5は、Ndの置換割合yが0の場合についての充放電曲線を示すグラフである。 図6は、Ndの置換割合yが0.03の場合についての充放電曲線を示すグラフである。 図7は、Ndの置換割合yが0.05の場合についての充放電曲線を示すグラフである。
以下、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質を限定するものではない。
理論に拘束されないが、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質によって、従来と比較して、容量維持率を向上することができる理由について説明する。
LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物を正極活物質として用いたリチウムイオン電池は、Mnが酸化還元することによって、容量を確保することができる。そのため、Mnの存在割合が過剰に小さいと、容量を確保することが困難になる。一方、LiNbOで表される酸化物を合成しようとしても、Nbは5価であるため、電気化学的なバランスが良好ではなく、その合成は非常に困難である。仮にLiNbOで表される酸化物を合成できたとしても、Ndは5価のままで酸化還元しないため、LiNbOで表される酸化物は、正極活物質としての機能を有しない。
そこで、LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物のMnの一部を、所定割合のNbで置換することによって、それを正極活物質として用いたとき、リチウムイオン電池の容量維持率が向上することを、本発明者は知見した。また、Mnの一部を、所定割合のNbで置換することで、所望の容量維持率を得られるため、高価なNbを多量に使用しなくてもよく、好都合である。
Mnのイオン半径と比較して、Nbのイオン半径は過度に小さくない。そのため、LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物のMnの一部をNbで置換しても、LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物のMnのサイトにはNbが固溶しない。そして、LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表される酸化物は、Nbの非晶質化合物とLiMnO(0.9≦x≦1)の複合体になっているものと考えられる。そして、そのNbの非晶質化合物が、充電時(高電圧時)に、電解質中に溶け出し、LiMnO(0.9≦x≦1)で表される酸化物の粒子の表面上に、Ndが被膜として堆積する。このようにして、容量維持率が向上すると考えられる。
これまでに説明した知見等によって完成された、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質の構成要件を、次に説明する。
《リチウムイオン電池用正極活物質》
本開示のリチウムイオン電池用正極活物質(以下、「本開示の正極活物質」ということがある。)は、モル比での組成式LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表される酸化物を備える。
本開示の正極活物質は、LiMnOで表される酸化物のMnの一部が、Nbで置換されている。上述の組成式で、xの範囲が0.9~1の範囲であれば、LiMn1-yNbで表される酸化物は、LiMn1-yNbで表される酸化物と、実質的に同等であると考えてよい。xは、上述の範囲内で、0.92以上、0.94以上、0.95以上、0.96以上、0.98以上、又は0.99以上であってもよい。
本開示の正極活物質は、上述の組成式のyが0.02~0.1であることにより、所望の容量維持率を得ることができる。yの値が0.02以上であれば、容量維持率の向上が顕著に認められるようになる。この観点からは、yの値は0.025以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。一方、yの値が過剰に大きくなる、すなわち、Mnの一部がNdで過剰に置換されると、上述した、Nbの非晶質化合物とLiMnO(0.9≦x≦1)の複合体が分解することによって、Mn及びNbOが多量に生成されるようになる。Mn及びNbOは、容量維持率の向上に寄与しないか、あるいは、容量維持率の向上を阻害する。yの値が0.1以下であれば、実用的に問題はない。この観点からは、yの値は、0.08以下が好ましく、0.06以下がより好ましく、0.05以下がより一層好ましい。また、Mn及びNbOは、放電容量の低下も招くため、yの値は上述の範囲であることが好ましい。
LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表される酸化物は、斜方晶の母構造及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する。このような結晶構造は、LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表される酸化物をXRD分析することによって同定することができる。
斜方晶は、より詳細には、ジグザク層状構造の斜方晶である。「斜方晶の母構造を有する」とは、上述の組成を有する酸化物(以下、「当該酸化物」ということがある。)中で、その大半が斜方晶であることを意味する。斜方晶は、例えば、当該酸化物に対して、60体積%以上、70体積%以上、又は80体積%以上であってよく、90体積%以下、88体積%以下、86体積%、84体積%以下、又は82体積%以下であってよい。
また、「α-NaFeO型層状構造のドメインを有する」とは、当該酸化物中で、その一部に、α-NaFeO型層状構造が存在していることを意味する。α-NaFeO型層状構造は、例えば、当該酸化物に対して、2体積%以上、4体積%以上、6体積%以上、8体積%以上、又は10体積%以上であってよく、40体積%以下、30体積%以下、又は20体積%以下であってよい。
ジグザク層状構造の斜方晶及びα-NaFeO型層状構造の詳細は、特許文献1を参照することができる。
本開示の正極活物質は、実用的に、その効果を妨げない範囲で、これまで説明してきた酸化物以外の物質の含有を許容することができる。このような物質は、典型的には、不可避的不純物である。不可避的不純物とは、本開示の正極活物質の原材料に含まれる不純物、あるいは、製造工程で混入してしまう不純物元素等、その含有を回避することが避けられない、あるいは、回避するためには著しい製造コストの上昇を招くような不純物等を意味する。製造工程で混入してしまう不純物等には、製造上の都合により、特性に影響を与えない範囲で含有させる物質を含む。本開示の正極活物質は、これまで説明してきた酸化物を、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、又は99質量%以上含有する(備える)ことが好ましい。
〈リチウムイオン電池用正極活物質層〉
本開示のリチウムイオン電池用正極活物質を用いて、リチウムイオン電池用正極活物質層を形成することができる。リチウムイオン電池用正極活物質層は、本開示のリチウムイオン電池用正極活物質の他に、導電材及び結着剤を含有していてもよい。導電材及び結着剤は、リチウムイオン電池に通常用いられている周知の材料であってよい。
導電材としては、例えば、炭素系導電材、特にアセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)等のカーボンブラック、及び黒鉛(グラファイト)を挙げることができる。これらを組み合わせて用いてもよい。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)等のポリマー系結着剤を挙げることができる。これらを組み合わせて用いてもよい。
〈リチウムイオン電池〉
本開示のリチウムイオン電池は、正極集電体、上述のリチウムイオン電池用正極活物質層、セパレータ、負極活物質層、及び負極集電体をこの積層順で備えている。
本開示のリチウムイオン電池は、従来のリチウムイオン電池と比較して、容量維持率が向上している。本開示のリチウムイオン電池の容量維持率は、例えば、75%以上、76%以上、77%以上、又は78%以上であってよく、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、又は80%以下であってよい。容量維持率とは、初期の容量に対する40サイクル後の容量の比×100(百分率)である。容量維持率は、例えば、コインセル(CR2032)を用いて、25℃及び60℃で保持した恒温槽で、1.5~4.8Vの電圧範囲について、0.1Cレート(1C=285mAg-1)で評価することができる。レート特性は、充電レートを0.1C、放電レートを0.1Cにしてよい。
《製造方法》
本開示の正極活物質の製造方法(合成方法)については、得られる正極活物質が、上述の構成要件を満足すれば、その製造方法(合成方法)に特に制限はない。本開示の正極活物質の製造方法(合成方法)は、例えば、以下のとおりであってよい。
図1は、本開示の正極活物質の製造(合成)過程の一例を示す説明図である。図1に示した一例では、Mn合成工程、斜方晶LiMn1-yNb合成工程、岩塩型LiMn1-yNb合成工程、及びα-NaFeO型層状構造のドメイン導入工程を含む。以下、それぞれの工程について説明する。ここでは、LiMnO及びLiMn1-yNbが合成される例を説明するが、合成条件によっては、LiMnO及びLiMn1-yNbが得られる。
〈Mn合成工程〉
大気中でMnCOを焼成して、Mnを得る。焼成温度は、例えば、600℃以上、650℃以上、又は700℃以上であってよく、900℃以下、850℃以下、又は750℃以下であってよい。焼成温度は、例えば、8時間以上、9時間以上、10時間以上、又は11時間以上であってよく、15時間以下、14時間以下、13時間以下、又は12時間以下であってよい。
〈斜方晶LiMn1-yNb合成工程〉
Mn、Nb、及びLiCOを湿式粉砕混合する。湿式粉砕混合の方法に特に制限はないが、典型的には、ボールミルを用いる方法等が挙げられる。溶媒は、混合物を変質させないものであれば、特に制限はないが、例えば、エタノールが挙げられる。このようにして得た混合物を圧縮成型して、ペレットを得る。そして、ペレットを、例えば、銅箔等で包囲し、不活性ガス雰囲気中で焼成する。これにより、斜方晶、より詳細には、ジグザク層状構造の斜方晶を有しているLiMn1-yNbを得る。焼成温度は、例えば、700℃以上、800℃以上、又は850℃以上であってよく、1000℃以下、950℃以下、又は900℃以下であってよい。焼成時間は、例えば、6時間以上、8時間以上、10時間以上、又は12時間以上であってよく、24時間以下、20時間以下、又は15時間以下であってよい。
〈岩塩型LiMn1-yNb合成工程〉
斜方晶LiMn1-yNb合成工程で得た焼成物を乾式粉砕混合する。この乾式粉砕混合により、メカニカルミリングされ、斜方晶、より詳細には、ジグザク層状構造の斜方晶を有するLiMnOから、岩塩型結晶構造を有するLiMn1-yNbを得る。岩塩型結晶構造を有するLiMn1-yNbを得ることができれば、乾式粉砕混合の方法に特に制限はなく、典型的には、ボールミルを用いる方法等が挙げられる。
〈α-NaFeO型層状構造のドメイン導入工程〉
上述のようにして得た粉末を圧縮成型してペレットを得る。そして、ペレットを、例えば、銅箔等で包囲し、不活性ガス雰囲気中で焼成する。この焼成により、α-NaFeO型層状構造のドメインを導入する。そして、この焼成により、斜方晶の母構造、より詳細には、ジグザク層状の母構造、及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する、LiMn1-yNbを得る。焼成温度は、例えば、500℃以上、600℃以上、又は700℃以上であってよく、900℃以下、800℃以下、又は750℃以下であってよい。焼成時間は、例えば、1時間以上、2時間以上、又は3時間以上であってよく、12時間以下、9時間以下、6時間以下、又は4時間以下であってよい。このようにして得たLiMn1-yNbについては、リチウムイオン電池の正極活物質層を準備するための正極合剤ペーストを得るために、適宜、例えば、乳鉢等を用いて、これを粉砕してもよい。
以下、本開示の正極活物質を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、本開示の正極活物質は、以下の実施例で用いた条件に限定されない。
《正極活物質試料の準備》
図1に示した要領で、yが0、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、及び0.1の場合それぞれについて、正極活物質試料を準備した。詳細は、次のとおりである。なお、図1の「新規構造LiMn1-yNb」は、斜方晶の母構造、より詳細には、ジグザク層状の母構造、及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する、LiMn1-yNbを意味する。また、以下の記載において、「新規構造LiMn1-yNb」は、斜方晶の母構造、より詳細には、ジグザク層状の母構造、及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する、LiMn1-yNbを意味する。
大気中でMnOを焼成して、Mnを得た。焼成温度は700℃、焼成時間は12時間であった。
Mn、Nb、及びLiCOを、ボールミルを用いて湿式粉砕混合し、その混合物を圧縮成型してペレットを得た。溶媒はエタノールを用いた。湿式粉砕混合条件は、表1のとおりであった(表1の「湿式BM」、参照)。舟形アルミニウムボートにペレットを装入し、それを銅箔で包み、アルゴンガス雰囲気中で焼成し、斜方晶LiMn1-yNbを含む焼成物を得た。焼成時間は900℃であり、焼成時間は12時間であった。
斜方晶LiMn1-yNbを含む焼成物を、ボールミルを用いて乾式粉砕混合し、その混合物を圧縮成型してペレットを得た。乾式粉砕混合条件は、表1のとおりであった(表1の「乾式BM」、参照)。表1に示したように乾式粉砕混合は3回(3セット)行ったが、セット毎にボールミルのポット壁面に付着した粉末を剥離し、次のセットを行った。そして、舟形アルミニウムボートにペレットを装入し、それを銅箔で包み、アルゴンガス雰囲気中で焼成して、新規構造LiMn1-yNbを得た。そして、新規構造LiMn1-yNbを、乳鉢を用いて粉砕した。
Figure 2022175507000002
《評価》
新規構造LiMn1-yNbの粉末をXRD分析して、結晶構造を調査した。
また、コインセル(CR2032)を用いて、容量維持率及び放電容量を評価した。評価方法の詳細は、次のとおりである。
LiMn1-yNb、アセチレンブラック(AB)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、76.5:13.5:10の質量比で秤量し、これを、N-メチル-2-ピロリドン中に分散させ、スラリーを得た。アルミニウム集電箔の表面上にスラリーを塗布し、120℃で8時間以上にわたり、これを真空乾燥して、正極を得た。負極には金属リチウム箔を用いた。
上述のようにした準備したコインセルを、次の条件で評価した。
25℃及び60℃で保持した恒温槽で、1.5~4.8Vの電圧範囲について、0.1Cレート(1C=285mAg-1)で評価した。レート特性は、充電レートを0.1C、放電レートを0.1Cにした。
結果を図2~7に示す。図2は、各試料のXRDパターンを示す説明図である。図3は、Ndの置換割合yと容量維持率の関係を示すグラフである。図4は、Ndの置換割合yと放電容量の関係を示すグラフである。図5は、Ndの置換割合yが0の場合についての充放電曲線を示すグラフである。図6は、Ndの置換割合yが0.03の場合についての充放電曲線を示すグラフである。そして、図7は、Ndの置換割合yが0.05の場合についての充放電曲線を示すグラフである。
図2のXRDパターンから、すべての試料について、斜方晶、より詳細には、ジグザク層状構造の斜方晶の母構造、及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有していることを理解できる。また、y=0.1の試料のように、Ndの含有割合(置換割合)が高い試料では、上述した、Nbの非晶質化合物とLiMnO(0.9≦x≦1)の複合体が分解することによって、比較的多くのMn及びNbOが生成されていることが理解できる。
また、図3において、yが0でないとき、すなわち、Mnの一部がNbで置換されているときは、yが0であるときよりも、容量維持率が上昇している。これは、上述した、Nbの非晶質化合物とLiMnO(0.9≦x≦1)の複合体に起因するものであると考えられる。また、yが0.03であるときをピークに、容量維持率が徐々に低下しているのは、上述の複合体が分解して、Mn及びNbOが生成しているためであると考えられる。しかし、y=0.1であれば、容量維持率の低下は、実用上、問題ない範囲であることを確認できた。
そして、図4から、yの増加に伴って、放電容量が低下しているが、y=0.1であれば、放電容量の低下は、実用上、問題ない範囲であることを確認できた。
以上の結果から、本開示の正極活物質の効果を確認できた。

Claims (6)

  1. モル比での組成式LiMn1-yNb(0.9≦x≦1及び0.02≦y≦0.1)で表され、かつ、斜方晶の母構造及びα-NaFeO型層状構造のドメインを有する酸化物を備える、リチウムイオン電池用正極活物質。
  2. 前記yが、0.02≦y≦0.05を満足する、請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
  3. 請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池用正極活物質、及び導電材を含有する、リチウムイオン電池用正極活物質層。
  4. 請求項3に記載のリチウムイオン電池用正極活物質層を備える、リチウムイオン電池。
  5. 容量維持率が75%以上である、請求項4に記載のリチウムイオン電池。
  6. 斜方晶LiMn1-yNbを乾式粉砕して、岩塩型LiMn1-yNbを得ること、及び
    前記岩塩型LiMn1-yNbを500~900℃で焼成して、α-NaFeO型層状構造のドメインを導入すること、
    を含む、請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法。
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