JP2022173868A - 抗菌性耐熱樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐衝撃性及び耐熱性に優れ抗菌性を有する抗菌性耐熱樹脂組成物を提供することを課題とする。【解決手段】本発明によれば、マレイミド系共重合体(A)、ABS系樹脂(B)、及び平均粒径が4μm以下である無機系抗菌剤(C)を含有する、抗菌性耐熱樹脂組成物が提供される。【選択図】なし

Description

本発明は耐衝撃性及び耐熱性に優れ抗菌性を有する抗菌性耐熱樹脂組成物に関するものである。
ABS樹脂はアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを主成分とする熱可塑性樹脂であり、その優れた機械的強度、外観、耐薬品性、成形性等を活かし、自動車、家電、OA機器、住宅建材、日用品などに幅広く使用されている。一方、自動車の内装材のように耐熱性が要求される用途では、耐熱性が不足することがある。耐熱性を高める技術としては下記があり、マレイミド系共重合体やα-メチルスチレン系共重合体等が使用される(特許文献1~2)。
また、抗菌剤を練り込み抗菌性を付与したABS樹脂(特許文献3)や抗菌、防カビ性が付与されたスチレン系熱可塑性樹脂組成物(特許文献4)が提案されている。
特開昭58-183729号公報 特開2003-41080号公報 特許3440606号公報 特開2020-041094号公報
本発明は、耐衝撃性及び耐熱性に優れ抗菌性を有する抗菌性耐熱樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らの検討の結果、マレイミド系共重合体と、ABS系樹脂と、4μm以下の無機系抗菌剤とを含有させることで、耐衝撃性及び耐熱性に優れ、かつ抗菌性を有する抗菌性耐熱樹脂組成物が得られることを見出した。
即ち、本発明は、
(1)マレイミド系共重合体(A)、ABS系樹脂(B)、及び平均粒径が4μm以下である無機系抗菌剤(C)を含有する、抗菌性耐熱樹脂組成物、
(2)前記無機系抗菌剤(C)が銀を含む(1)に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物、
(3)前記マレイミド系共重合体(A)と前記ABS系樹脂(B)の合計100質量部に対する前記無機系抗菌剤(C)の含有量が0.1~5.0質量部である、(1)~(2)のいずれか一つに記載の抗菌性耐熱樹脂組成物、
(4)前記マレイミド系共重合体(A)のガラス転移温度が175℃~210℃である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の抗菌性耐熱樹脂組成物、
(5)ビカット軟化温度が105℃以上である、(1)~(4)のいずれか一つに記載の抗菌性耐熱樹脂組成物、
(6)(1)~(5)のいずれか一つに記載の抗菌性耐熱樹脂組成物の製造方法であって、押出機で前記マレイミド系共重合体(A)、前記ABS系樹脂(B)、および前記無機系抗菌剤(C)を溶融混練する工程を含み、前記押出機が二軸押出機である、製造方法、
(7)(1)~(5)のいずれか一つに記載の抗菌性耐熱樹脂組成物から成形される自動車の内装材、
に関する。
本実施形態にかかる抗菌性耐熱樹脂組成物は、マレイミド系共重合体と、ABS系樹脂と、4μm以下の無機系抗菌剤とを含有させることで耐衝撃性及び耐熱性に優れ、かつ抗菌性を有する。
本実施形態にかかる抗菌性耐熱樹脂組成物は、マレイミド系共重合体(A)と、ABS系樹脂(B)と、無機系抗菌剤(C)を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
<1.マレイミド系共重合体(A)>
マレイミド系共重合体(A)とは、マレイミド系単量体単位、スチレン系単量体単位を有する共重合体である。本発明においては、更にアクリロニトリル系単量体単位、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位をさらに有することができる。
マレイミド系単量体単位とは、例えば、N-メチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-アルキルマレイミド、及びN-フェニルマレイミド、N-クロルフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド等である。これらの中でも、N-フェニルマレイミドが好ましい。マレイミド系単量体単位は、単独でも良いが2種類以上を併用しても良い。マレイミド系単量体単位については、例えば、マレイミド系単量体からなる原料を用いることができる。または、不飽和ジカルボン酸単量体単位からなる原料をアンモニア又は第1級アミンでイミド化することによって得ることができる。
マレイミド系共重合体(A)は、マレイミド系共重合体(A)100質量%中にマレイミド系単量体単位を30~70質量%含有することが好ましく、35~60質量%含有することがより好ましい。マレイミド系単量体単位の含有量は、具体的には例えば、30、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、50、55、60、又は70質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。マレイミド系単量体単位の含有量がこの範囲内であれば、後述するABS系樹脂(B)である、ABS樹脂を必須成分とし、さらに任意でASA樹脂、AES樹脂、SAN樹脂から選ばれる少なくも1種類の樹脂を併用する樹脂との相溶性が向上し、抗菌性耐熱樹脂組成物の衝撃強度が優れる。マレイミド系単量体単位の含有量は、13C-NMRによって測定した値である。
スチレン系単量体単位とは、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等である。これらの中でも、工業的に入手しやすく、低コストで使用でき、様々なモノマーと共重合が可能である観点、および軽量で成形性に優れる観点からスチレンが好ましい。スチレン系単量体単位は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
マレイミド系共重合体(A)は、マレイミド系共重合体(A)100質量%中にスチレン系単量体単位を20~60質量%含有することが好ましく、35~55質量%含有することがより好ましい。具体的には例えば、20、30、40、45、46、47、48、49、50、55、又は60質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。スチレン系単量体単位の含有量がこの範囲内であれば、後述するABS系樹脂(B)である、ABS樹脂を必須成分とし、さらに任意でASA樹脂、AES樹脂、SAN樹脂から選ばれる少なくも1種類の樹脂を併用する樹脂との相溶性が向上し、抗菌性耐熱樹脂組成物の衝撃強度が優れる。スチレン系単量体単位の含有量は、13C-NMRによって測定した値である。
アクリロニトリル系単量体単位とは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等である。これらの中でも、工業的に入手しやすい観点から、アクリロニトリルが好ましい。アクリロニトリル系単量体単位は単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
マレイミド系共重合体(A)は、マレイミド系共重合体(A)100質量%中にアクリロニトリル系単量体単位を0~20質量%含有することが好ましく、0~15質量%含有することがより好ましい。具体的には例えば、0、5、6、7、8、9、10、15、又は20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。アクリロニトリル系単量体単位の含有量がこの範囲内であれば、抗菌性耐熱樹脂組成物の耐薬品性が優れる。アクリロニトリル系単量体単位の含有量は、13C-NMRによって測定した値である。
不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位とは、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、アコニット酸無水物等である。これらの中でも、工業的に入手しやすい観点から、マレイン酸無水物が好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位は、単独でも良いが2種類以上を併用してもよい。
マレイミド系共重合体(A)は、マレイミド系共重合体(A)100質量%中に不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位を0~10質量%含有することが好ましく、0~5質量%含有することがより好ましい。具体的には例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の含有量がこの範囲内であれば、マレイミド系共重合体の熱安定性が優れる。不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の含有量は、滴定法によって測定した値である。
本発明の一態様におけるマレイミド系共重合体(A)は、マレイミド系共重合体(A)100質量%中にマレイミド系単量体単位を30~70質量%、スチレン系単量体単位を20~60質量%、アクリロニトリル系単量体単位を0~20質量%、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位を0~10質量%含有することが好ましい。更に好ましくは、マレイミド系共重合体(A)100質量%中にマレイミド系単量体単位を35~60質量%、スチレン系単量体単位を35~55質量%、アクリロニトリル系単量体単位を0~15質量%、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位を0~5質量%含有する。構成単位が上記範囲内であれば、マレイミド系共重合体(A)の流動性、耐熱性、熱安定性が優れる。
抗菌性耐熱樹脂組成物の耐熱性を効率的に向上させるという点で、マレイミド系共重合体(A)のガラス転移温度(中間点ガラス転移温度:Tmg)は175℃~210℃であることが好ましく、より好ましくは185℃~205℃である。ガラス転移温度はDSCにて測定される値であり、下記記載の測定条件における測定値である。
装置名:セイコーインスツルメンツ(株)社製 Robot DSC6200
昇温速度:10℃/分
マレイミド系共重合体(A)の製造方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、スチレン系単量体、マレイミド系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、その他の共重合可能な単量体からなる単量体混合物を共重合させる方法がある。スチレン系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、その他の共重合可能な単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の一部をアンモニア又は第1級アミンを反応させてイミド化し、マレイミド系単量体単位に変換させる方法がある(以下、「後イミド化法」と称する)。
マレイミド系共重合体(A)の重合様式は、例えば、溶液重合、塊状重合等がある。分添等を行いながら重合することで、共重合組成がより均一なマレイミド系共重合体(A)を得られるという観点から、溶液重合が好ましい。溶液重合の溶媒は、副生成物が出来難く、悪影響が少ないという観点から非重合性であることが好ましい。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン等であり、マレイミド系共重合体(A)の脱揮回収時における溶媒除去の容易性から、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。重合プロセスは、連続重合式、バッチ式(回分式)、半回分式のいずれも適用できる。重合方法は、特に限定されないが、簡潔なプロセスによって生産性よく製造することが可能である観点から、ラジカル重合が好ましい。
溶液重合或いは塊状重合では、重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができ、重合温度は80~150℃の範囲であることが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスメチルプロポニトリル、アゾビスメチルブチロニトリル等のアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、エチル-3,3-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブチレート等のパーオキサイド類であり、これらの1種あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。重合の反応速度や重合率制御の観点から、10時間半減期が70~120℃であるアゾ系化合物や有機過酸化物を用いるのが好ましい。重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、全単量体単位100質量%に対して0.1~1.5質量%使用することが好ましく、さらに好ましくは0.1~1.0質量%である。重合開始剤の使用量が0.1質量%以上であれば、十分な重合速度が得られるため好ましい。重合開始剤の使用量が1.5質量%以下であれば、重合速度が抑制できるため反応制御が容易になり、目標分子量を得ることが簡単になる。連鎖移動剤は、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。連鎖移動剤量の使用量は、目標分子量が得られる範囲であれば、特に限定されるものではないが、全単量体単位100質量%に対して0.1~0.8質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.15~0.5質量%である。連鎖移動剤の使用量が0.1質量%~0.8質量%であれば、目標分子量を容易に得ることができる。
マレイミド系共重合体(A)へのマレイミド系単量体単位の導入は、マレイミド系単量体を共重合させる方法と後イミド化法がある。後イミド化法の方が、マレイミド系共重合体(A)中の残存マレイミド系単量体量が少なくなるので好ましい。後イミド化法とは、スチレン系単量体、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、その他の共重合可能な単量体からなる単量体混合物を共重合させた後、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体単位の一部をアンモニア又は第1級アミンを反応させてイミド化し、マレイミド系単量体単位に変換させる方法である。第1級アミンとは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、iso-プロピルアミン、n-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、シクロヘキシルアミン、デシルアミン等のアルキルアミン類及びクロル又はブロム置換アルキルアミン、アニリン、トルイジン、ナフチルアミン等の芳香族アミンがあり、この中でもアニリンが好ましい。これらの第1級アミンは、単独で使用しても2種類以上を組み合わせて使用してもよい。後イミド化の際、第1級アミンと不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位との反応において、脱水閉環反応を向上させるために触媒を使用することができる。触媒は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン等の第3級アミンである。後イミド化の温度は、100~250℃であることが好ましく、より好ましくは120~200℃である。イミド化反応の温度が100℃以上であれば、反応速度が向上し、生産性の面から好ましい。イミド化反応の温度が250℃以下であれば、マレイミド系共重合体(A)の熱劣化による物性低下を抑制できるので好ましい。
マレイミド系共重合体(A)の溶液重合終了後の溶液或いは後イミド化終了後の溶液から、溶液重合に用いた溶媒や未反応の単量体などの揮発分を取り除く方法(脱揮方法)は、公知の手法が採用できる。例えば、加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機を用いることができる。脱揮された溶融状態のマレイミド系共重合体(A)は、造粒工程に移送され、多孔ダイよりストランド状に押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット状に加工することができる。
抗菌性耐熱樹脂組成物中のマレイミド系共重合体(A)の含有量は、マレイミド系共重合体(A)とABS系樹脂(B)の合計量を100質量%とした場合に、5~45質量%であることが好ましく、より好ましくは7~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは20~30質量%である。具体的には例えば、5、10、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、又は45質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。マレイミド系共重合体(A)の含有量が少なすぎると抗菌性耐熱樹脂組成物の耐熱性が十分に向上しないことがある。多すぎると、流動性が低下し、成形性が悪化することがある。
<2.ABS系樹脂(B)>
ABS系樹脂(B)は、ABS樹脂を必須成分とし、さらに任意でASA樹脂、AES樹脂、SAN樹脂から選ばれる少なくも1種類の樹脂を併用する樹脂である。ABS樹脂は、ゴム状重合体に、少なくともスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体をグラフト共重合させたグラフト共重合体である。例えば、ゴム状重合体として、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体等のブタジエン系ゴムを用いる。グラフト共重合時に、これらのゴム状重合体を2種類以上組合せて使用してもよい。アクリル酸ブチルやアクリル酸エチル等からなるアクリル系ゴムを用いる場合はASA樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体等のエチレン系ゴムを用いる場合はAES樹脂を併用することもできる。
ABS系樹脂(B)中のABS樹脂の含有量は、ABS系樹脂(B)100質量%中10~100質量%であることが好ましく、より好ましくは15~60質量%である。具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、又は100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。なお、ABS系樹脂(B)は、実質的にABS樹脂のみであってもよい。
また、ABS系樹脂(B)中のポリブタジエン成分の含有量は、衝撃強度の観点から、ABS系樹脂(B)100質量%中10~35質量%であることが好ましく、より好ましくは15~30質量%である。具体的には例えば、10、15、20、25、30、又は35質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
ABS樹脂等のグラフト共重合体の製造方法としては、公知の手法が採用できる。例えば、乳化重合や連続塊状重合による製造方法が挙げられる。乳化重合による方法は、最終的な抗菌性耐熱樹脂組成物中のゴム状重合体の含有量を調整し易いことから好ましい。
乳化重合によるグラフト共重合体の製造方法は、ゴム状重合体のラテックスに、スチレン系単量体とアクリロニトリル系単量体を乳化グラフト重合させる方法がある(以下、「乳化グラフト重合法」と称する)。乳化グラフト重合法により、グラフト共重合体のラテックスを得ることができる。
乳化グラフト重合法では、水、乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤を用い、重合温度は30~90℃の範囲であることが好ましい。乳化剤は、例えば、アニオン系界面活性剤、オニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等がある。重合開始剤は、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルエンゼンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、アゾビスブチロニトリル等のアゾ系化合物、鉄イオン等の還元剤、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の二次還元剤及びエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム等のキレート剤等がある。連鎖移動剤は、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。
グラフト共重合体のラテックスは、公知の方法により凝固し、グラフト共重合体を回収することができる。例えば、グラフト共重合体のラテックスに凝固剤を加えて凝固し、脱水機で洗浄脱水し、乾燥工程を経ることで粉末状のグラフト共重合体が得られる。
乳化グラフト重合法によって得られるグラフト共重合体中のゴム状重合体の含有量は、耐衝撃性の観点から、40~70質量%であることが好ましく、より好ましくは45~65質量%である。ゴム状重合体の含有量は、例えば、乳化グラフト重合する際、ゴム状重合体に対するスチレン系単量体及びアクリロニトリル系単量体の使用比率によって調整することができる。
乳化グラフト重合法によって得られるグラフト共重合体のゴム状重合体を除いた構成単位は、耐衝撃性や耐薬品性の観点から、スチレン系単量体単位65~85質量%、アクリロニトリル系単量体単位15~35質量%であることが好ましい。
SAN樹脂とは、スチレン系単量体単位とアクリロニトリル系単量体単位を有する共重合体であり、例えば、スチレン-アクリロニトリル系共重合体がある。
SAN樹脂のその他の共重合可能な単量体として、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリル酸ブチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸系単量体、アクリル酸等のアクリル酸系単量体、N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド系単量体を用いることができる。
SAN樹脂の構成単位は、スチレン系単量体単位60~90質量%、シアン化ビニル単量体単位10~40質量%であることが好ましく、より好ましくは、スチレン系単量体単位65~80質量%、シアン化ビニル単量体単位20~35質量%である。構成単位が上記範囲内であれば、得られる抗菌性耐熱樹脂組成物の衝撃強度と流動性のバランスに優れる。スチレン系単量体単位、シアン化ビニル単量体単位は13C-NMRによって測定した値である。
SAN樹脂の製造方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等により製造することができる。反応装置の操作法としては、連続式、バッチ式(回分式)、半回分式のいずれも適用できる。品質面や生産性の面から、塊状重合或いは溶液重合が好ましく、連続式であることが好ましい。塊状重合或いは溶液重合の溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等がある。
SAN樹脂の塊状重合或いは溶液重合では、重合開始剤、連鎖移動剤を用いることができ、重合温度は120~170℃の範囲であることが好ましい。重合開始剤は、例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ジ(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、N,N'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、N,N'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、N,N'-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等があり、これらの1種あるいは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。連鎖移動剤は、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、チオグリコール酸エチル、リモネン、ターピノーレン等がある。
SAN樹脂の重合終了後の溶液から、未反応の単量体や溶液重合に用いた溶媒などの揮発分を取り除く脱揮方法は、公知の手法が採用できる。例えば、予熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機を用いることができる。脱揮された溶融状態のSAN樹脂は、造粒工程に移送され、多孔ダイよりストランド状に押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット状に加工することができる。
SAN樹脂の重量平均分子量は、抗菌性耐熱樹脂組成物の耐衝撃性と成形性の観点から、5万~25万であることが好ましく、より好ましくは7万~20万である。具体的には例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。SAN樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、THF溶媒中で測定されるポリスチレン換算の値であり、マレイミド系共重合体(A)と同様の方法で測定した値である。重量平均分子量は、重合時の連鎖移動剤の種類及び量、溶媒濃度、重合温度、重合開始剤の種類及び量によって調整することができる。
ABS系樹脂(B)として、例えば、乳化重合法によって得られた粉末状のABS樹脂と、連続式の塊状重合法によって得られたペレット状のSAN樹脂の2種類を使用する方法が挙げられる。また、乳化重合法によって得られた粉末状のABS樹脂と、連続塊状重合によって得られたペレット状のSAN樹脂を一旦、押出機等で溶融ブレンドし、ペレット状のABS系樹脂(B)としたものを使用する方法が挙げられる。
<3.無機系抗菌剤(C)>
抗菌性耐熱樹脂組成物中の無機系抗菌剤としては銀系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤、銅系抗菌剤などが挙げられる。これらはゼオライト、ガラス、リン酸系化合物などに銀、亜鉛、銅イオンなどを担持したものであり、金属イオンが放出されることにより抗菌効果が発現される。また、化学的・物理的に安定性が高いため耐熱性を有し、高い混錬温度が必要となる樹脂の練り込みに使用することができる。特に、安定性が高く、高い抗菌活性を有する銀系抗菌剤が好ましい。
無機系抗菌剤(C)の平均粒径は4.0μm以下であり、好ましくは3.0μm以下であり、より好ましくは1.5μm以下である。具体的には例えば、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5、又は1.0μm以下である。平均粒径が4.0μmより大きい場合、樹脂中の分散が不充分となり、実用上充分な耐衝撃性とならない。
抗菌性耐熱樹脂組成物中の無機系抗菌剤(C)の含有量は、マレイミド系共重合体(A)とABS系樹脂(B)を含む樹脂組成物の合計量100質量部に対し、0.1~5.0質量部であることが好ましく、0.3~4.0質量部であることが更に好ましく0.5~3.0質量部であることが更により好ましい。含有量が0.1質量部以下の場合、抗菌性を充分発揮出来ない可能性がある。また、5.0質量部以上であると、衝撃強度が低下し、充分な耐衝撃性とならない懸念がある。
押出機を用いて、マレイミド系共重合体(A)、ABS系樹脂(B)と、無機系抗菌剤(C)を溶融混練する方法は、公知の方法が採用できる。押出機は公知の装置を使用することができ、例えば、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、二軸ロータ付きの連続混練機などが挙げられる。スクリュー構成を任意に設定することができ混練性を調整することが可能である観点から、二軸押出機を使用することが好ましく、噛み合い形同方向回転二軸スクリュー押出機が、一般的に広く使用されており、更に好ましい。本発明の実施形態における押出機の混練部のシリンダー温度は260℃を超える温度であり、好ましくは270~330℃である。混練部のシリンダー温度が260℃以下では、マレイミド系共重合体及び無機系抗菌剤の分散性が悪化することや、溶融粘度が高すぎるために押出が困難となる。
溶融混練の際、酸化防止剤を併用することができ、酸化防止剤はヒンダードフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤を単独または併用して使用してもよい。酸化防止剤の添加により抗菌性耐熱樹脂組成物の成形加工時や実使用時の黄変等を防止することができる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、3,9-ビス[2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕-o-クレゾール、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、4,4'-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス-[3,3-ビス-(4'-ヒドロキシ-3'-tert―ブチルフェニル)-ブタン酸]-グリコールエステル、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。より好ましくはオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートである。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でもよいが2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
リン系酸化防止剤とは、三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤は、例えば、6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4'-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。好ましくは、6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2'-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。より好ましくは、6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトであり、さらに好ましくは6-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルベンズ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。リン系酸化防止剤は、単独でもよいが2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
抗菌性耐熱樹脂組成物の製造時には、本発明の効果を損ねない範囲で、その他の樹脂成分、耐衝撃改質材、流動性改質材、硬度改質材、酸化防止剤、無機充填剤、艶消し剤、難燃剤、難燃助剤、ドリップ防止剤、摺動性付与剤、放熱材、電磁波吸収材、可塑剤、滑剤、離型剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗カビ剤、帯電防止剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、染料等を配合してもよい。
以下、詳細な内容について実施例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<マレイミド系共重合体(A-1)の製造例>
以下の方法でマレイミド系共重合体(A-1)を製造した。
攪拌機を備えた容積約120リットルのオートクレーブ中に、スチレン62質量部、マレイン酸無水物11質量部、2、4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン0.2質量部、メチルエチルケトン31質量部を仕込み、系内を窒素ガスで置換した後、温度を92℃に昇温し、マレイン酸無水物28質量部とt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.19質量部をメチルエチルケトン110質量部に溶解した溶液を7時間かけて連続的に添加した。添加後、120℃に昇温し、30分反応させて重合を終了させた。その後、重合液にアニリン35質量部、トリエチルアミン0.6質量部を加え140℃で7時間反応させた。反応終了後のイミド化反応液をベントタイプスクリュー式押出機に投入し、揮発分を除去してペレット状のマレイミド系共重合体(A-1)を得た。(A-1)は、スチレン単位48質量%、N-フェニルマレイミド単位51質量%、無水マレイン酸単位1質量%であり、重量平均分子量Mwは13万、ガラス転移温度(中間点ガラス転移温度:Tmg)は200℃であった。
<ABS樹脂(B-1)>
ABS樹脂(B-1)は、乳化グラフト重合法にて作製した。攪拌機を備えた反応缶中に、ポリブタジエンラテックス97質量部(固形分濃度50質量%、平均粒子径が0.3μm)、スチレン含有量24質量%のスチレン-ブタジエンラテックス12質量部(固形分濃度70質量%、平均粒子径が0.5μm、)、ステアリン酸ソーダ1質量部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部、テトラソジウムエチレンジアミンテトラアセチックアシッド0.01質量部、硫酸第一鉄0.005質量部、及び純水200部を仕込み、温度を50℃に加熱した。ここにスチレン75質量%及びアクリロニトリル25質量%の単量体混合物43質量部、t-ドデシルメルカプタン0.2質量部、t-ブチルパーオキシアセテート0.06質量部を5時間で連続的に分割添加した。分割添加終了後、ジイソプロピルエンゼンパーオキサイドを0.04質量部加え、70℃でさらに2時間かけて重合を完結させ、ABS樹脂のラテックスを得た。得られたラテックスにイルガノックス1076(チバスペシャリティケミカル社製)を0.3部添加した後、硫酸マグネシウムと硫酸を用い、凝固時のスラリーのpHが6.8となるよう凝固を行い、洗浄脱水後、乾燥することで粉末状のABS樹脂(B-1)を得た。原料の配合比より、ゴム状重合体含有量は57質量%である。ゴム状重合体を除いた構成単位は、NMRによって測定し、スチレン単位が75質量%、アクリロニトリル単位が25質量%であった。
<SAN樹脂(B-2)>
連続式の塊状重合にて作製した。反応器として完全混合槽型撹拌槽を1基使用し、50Lの容量で重合を行った。スチレン58質量%、アクリロニトリル22質量%、エチルベンゼン20質量%の原料溶液を作製し、反応器に8.0L/hの流量で連続的に供給した。また、原料溶液に対して、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートを200ppm、連鎖移動剤としてn-ドデシルメルカプタン400ppmの濃度となるよう、原料溶液の供給ラインに連続的に添加した。反応器の反応温度は145℃となるよう調整した。反応器から連続的に取り出されたポリマー溶液は、予熱器付き真空脱揮槽に供給され、未反応のスチレン及びアクリロニトリル、エチルベンゼンを分離した。脱揮槽内のポリマー温度が235℃となるように予熱器の温度を調整し、脱揮槽内の圧力は0.4kPaとした。ギヤーポンプにより真空脱揮槽からポリマーを抜出し、ストランド状に押出して冷却水にて冷却後、切断してペレット状のSAN樹脂(B-2)を得た。(B-2)の構成単位は、スチレン単位が73.7質量%、アクリロニトリル単位が26.3質量%であった。また、重量平均分子量は14.8万であった。
<ABS樹脂(B-3)>
一般に市販されているABS樹脂GR-2000(デンカ株式会社製)を使用した。
<実施例・比較例>
マレイミド系共重合体、ABS系樹脂、無機系抗菌剤を表1に示す配合および条件で押出機を用いて溶融混錬し、抗菌性耐熱樹脂組成物の製造を行った。押出機は、二軸スクリュー押出機(東芝機械株式会社製 TEM-35B)を使用し、表1に示す混練部のシリンダー温度で、スクリュー回転数は250rpm、フィード量は30kg/hrで押出を行った。使用した無機系抗菌剤は次の通りである。評価結果を表1に示す。
(C-1)富士ケミカル社 BM-102SVP01 銀系抗菌剤 平均粒径2.0μm
(C-2)東亜合成株式会社 ノバロンAGZ330 銀系抗菌剤 平均粒径1.2μm
(C-3)富士ケミカル社 バクテキラー BM-102TG 銀系抗菌剤 平均粒径5.0μm
(C-4)石塚硝子株式会社 イオンピュアIPI 銀系抗菌剤 平均粒径12.5μm
(メルトマスフローレイト)
メルトマスフローレイトは、JIS K7210に基づき、220℃、98N荷重にて測定した。
(ビカット軟化温度)
ビカット軟化点は、JIS K7206に基づき、50法(荷重50N、昇温速度50℃/時間)で試験片は10mm×10mm、厚さ4mmのものを用いて測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製HDT&VSPT試験装置を使用した。
(シャルピー衝撃強さ)
シャルピー衝撃強さは、JIS K7111-1に基づき、ノッチあり試験片を用い、打撃方向はエッジワイズを採用して測定した。なお、測定機は東洋精機製作所社製デジタル衝撃試験機を使用した。
(抗菌性)
得られたペレットを用いて射出成形機(J140AD-180H、株式会社日本鉄鋼所製)により、127×127×2mm厚みの板状成形品を成形温度260℃で成形した。成形品を用いJIS Z 2801:2012 抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果 (フィルム密着法)による試験を実施した。試験条件は下記の通りである。
菌種:E.coli(大腸菌)NBRC3972、S.aureus(黄色ブドウ球菌)NBRC12732
菌液条件:1/500NB、0.4mL
作用条件:35℃、24時間
得られた結果について、抗菌製品技術協議会の抗菌製品の抗菌性能基準に記載されている抗菌活性値の測定方法を参考にして以下の判定を行った。
抗菌活性値が4.0以上:A
抗菌活性値が4.0未満、2.0以上:B
抗菌活性値が2.0未満、1.0以上:C
抗菌活性値が1.0未満:D
Figure 2022173868000001
本発明にかかる抗菌性耐熱樹脂組成物を用いた実施例1~6は、耐衝撃性及び耐熱性に優れ抗菌性を有していた。
これに対し、本発明の規定を満たさない抗菌性耐熱樹脂組成物や樹脂組成物を用いた比較例1~6では、耐衝撃性、耐熱性、及び抗菌性の少なくとも1つにおいて性能が劣っていた。
本発明により、耐衝撃性及び耐熱性に優れ抗菌性を有する抗菌性耐熱樹脂組成物が提供され、耐衝撃性、耐熱性、及び抗菌性が要求される自動車の内装材のような用途に好適に利用される。

Claims (7)

  1. マレイミド系共重合体(A)、ABS系樹脂(B)、及び平均粒径が4μm以下である無機系抗菌剤(C)を含有する、抗菌性耐熱樹脂組成物。
  2. 前記無機系抗菌剤(C)が銀を含む請求項1に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物。
  3. 前記マレイミド系共重合体(A)と前記ABS系樹脂(B)の合計100質量部に対する前記無機系抗菌剤(C)の含有量が0.1~5.0質量部である、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物。
  4. 前記マレイミド系共重合体(A)のガラス転移温度が175℃~210℃である、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物。
  5. ビカット軟化温度が105℃以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物の製造方法であって、押出機で前記マレイミド系共重合体(A)、前記ABS系樹脂(B)、および前記無機系抗菌剤(C)を溶融混練する工程を含み、前記押出機が二軸押出機である、製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の抗菌性耐熱樹脂組成物から成形される自動車の内装材。
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