JP2022173001A - 抗菌性を持つ長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗菌性を有する新規のアルコキシ基含有ケイ素化合物とその合成方法を提供する。【解決手段】8-クロロオクチルトリアルコキシシランと長鎖アルキルアミンを反応させることによって得られる長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物。【効果】本発明は新規の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物であり、特性として抗菌性、抗ウイルス性を有する。【選択図】なし
Description
本発明は、新規の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物を提供することを目的とする。
長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物としてのシランカップリング剤としてはオクタデシルジメチル(8-トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリドのメタノール溶液がよく知られており、これまでTHE DOW CHEMICAL COMPANY(旧DOW CORNING CORPORATION)から DC5700抗微生物処理剤という名称で提供され、BIOSIL加工という繊維に抗菌性を付与する方法として活用されてきた。また、オクタデシルジメチル(8-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリドのエタノール溶液も近年工業化されている(特許文献1)。
通常、シランカップリング剤は原料入手が容易であることからプロピレン基をスペーサーとするクロロプロピルトリアルコキシシランを出発原料として合成される。工業化されているアンモニウム官能性アルコキシシランでも、抗菌効果を発揮するアンモニウム官能基と基材と結合することが期待されるアルコキシシリル基の間は炭素数3個のプロピレン基で結合された材料である。この中でもオクタデシルジメチル(8-トリエトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリドのエタノール溶液は抗ウイルス剤としての効果があるとして使用されるようになってきた(特許文献1)。
本発明は、抗菌性を持つ長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシランについて、有機官能基の持つ効果をより高く、より長く持続させることを目的として、従来のスペーサーがプロピレン基であるシランカップリング剤に比べて、有機官能基とアルコキシシリル基の距離を長くすることにより有機官能基の動きの自由度を増した材料に関する。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、8-クロロオクタ-1-エンとトリアルコキシシランのヒドロシリル化反応により8-クロロオクチルトリアルコキシシランが製造できることを見出し、さらに長鎖アルキルジメチルアミンとの反応によって長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩を持ち、炭素数8のアルキレン基でアルコキシシランと結合した長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物が合成できることを見出して本発明をなすに至った。8-クロロオクタ-1-エンとトリエトキシシランのヒドロシリル化反応によって得られた8-クロロオクチルトリエトキシシランは蒸留で純化し(沸点109℃/60Pa)、ガスクロマトグラフィー、1H-NMRとFT-IRで確認することができた(図1、図2)。
本発明の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物は従来の炭素数3のプロピレン基で長鎖アルキルアンモニウム基とトリアルコキシシリル基が結合したシランカップリング剤と比べて自由度が高いために官能基の効果として高い活性が期待できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本願明細書に記載の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物は、下記一般式 (a);
(式中、Xはハロゲン原子を示し、R3は炭素数1~6のアルキル基を示す。)で表される8-ハロオクチルトリアルコキシシランとアミン化合物を反応させて得られる下記一般式(1);
(式中、R1は炭素数10~18のアルキル基を示し、R2、R3は炭素数1~6のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)で表される新規の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物である。
式(a)及び式(1)中のXは、塩素原子、臭素原子、よう素原子から選ばれるハロゲン原子で、中でも原料事情から塩素原子が好ましい。
式(1)中のR1の炭素数10~18のアルキル基としてはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基が例示される。
式(1)中のR2の炭素数1~6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示される。中でもメチル基が好ましい。
式(1)中のR3の炭素数1~6のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が例示されるが、中でもメチル基、エチル基が好ましい。
式(1)で示される長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物は室温では粘ちょうの液体又は固体なのでメタノールやエタノールに希釈した溶液として取り扱うことができる。アルコキシシリル基のアルコキシ基がメトキシ基の時にはメタノールでの希釈、アルコキシシリル基のアルコキシ基がエトキシ基の時にはエタノールでの希釈で取り扱うことが好ましい。希釈倍率は5%から80%の固形分の希釈率として用いることができるが、30%から60%程度の固形分の希釈率で用いるのが好ましい。
このようにして得られた長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物のアルコール溶液はさまざまな基材に塗布や噴霧、あるいは浸漬することによりアルコキシシリル基の特性から長鎖アルキルアンモニウム官能性シリル基が基材表面の水分や水酸基と化学的に結合し、長期に基材表面に長鎖アルキルアンモニウム官能基を有する基材を得ることができる。この表面処理を行うには、さらにアルコールで希釈した希薄溶液でもよく、また数パーセントの水溶液にして表面処理を行ってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
窒素雰囲気下、500mLフラスコに8-クロロオクタ-1-エン145gを仕込み、白金触媒を白金量で全体量の5ppmになるように添加した。磁気撹拌子で撹拌しながら120℃に加熱してトリエトキシシラン130gをゆっくりと滴下した。発熱反応が起こり、滴下後ガスクロマトグラフで反応液を確認すると、少量の8-クロロオクタ-1-エンのオレフィン部分が異性化したクロロオクテンと8-クロロオクチルトリエトキシシランの存在が確認された。減圧蒸留することで純度よく204gの8-クロロオクチルトリエトキシシランが得られた(屈折率 1.4313)。構造は1H-NMRとFT-IRで確認された。
窒素雰囲気下、実施例1で得られた8-クロロオクチルトリエトキシシラン84gとジメチルオクタデシルアミン80gを混合して、磁気撹拌子で撹拌しながら170℃に加熱した。10時間後に自然冷却して室温まで温度を戻すと淡黄色の固体となった。エタノールで希釈して固形分40%の黄褐色透明液体のエタノール溶液410gとして採取した。塩素イオン濃度を測定したところ、塩素イオンは2.3%でアンモニウム塩が生成していることが確認された。
窒素雰囲気下、実施例1で得られた8-クロロオクチルトリエトキシシラン84gとジメチルドデシルアミン57.6gを混合して、磁気撹拌子で撹拌しながら170℃に加熱した。10時間後に自然冷却して室温まで温度を戻すと淡黄色の固体となった。エタノールで希釈して固形分40%の黄褐色透明液体のエタノール溶液354gとして採取した。塩素イオン濃度を測定したところ、塩素イオンは2.7%でアンモニウム塩が生成していることが確認された。
本発明の新規の長鎖アルキルアンモニウム官能性アルコキシシラン化合物は、抗菌、抗ウイルス作用を持つ材料として利用可能と期待される。特に抗菌、抗ウイルス作用を持つと期待される長鎖アルキルアンモニウム官能基と基材に付着する機能を有するアルコキシシリル基の距離が長く、高い効果と高い持続性が期待される。
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