JP2022172876A - 衣料用積層体および感染防止衣料 - Google Patents

衣料用積層体および感染防止衣料 Download PDF

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Abstract

【課題】透湿防水性に加え、十分なストレッチ性を有する衣料用積層体を提供する。また、前記積層体を用いて、血液やウイルスをバリアする防水性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、動作をする際にも十分なストレッチ性を有することにより動きやすく、着用快適性に優れた感染防止衣料を提供する。【解決手段】織物、微多孔膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、タテ方向またはヨコ方向の伸長率が5~15%、かつタテ方向およびヨコ方向の30秒後の伸長回復率が80%以上であり、さらに耐水圧が300kPa以上である衣料用積層体。【選択図】 なし

Description

本発明は、血液やウイルスに対するバリア性を有し、かつ透湿性やストレッチ性にも優れる衣料用積層体および感染防止衣料に関するものである。
近年、メディカル分野において医師、看護師、救急隊員などの医療従事者がウイルスなどの有害物質から身体を守るために感染防護衣が用いられている。感染防護衣には高いウイルスバリア性や血液バリア性を有するだけでなく、着用快適性の観点から、発汗に伴って発生する熱・蒸れを布帛外へ効率的に放出できる高い透湿性も求められる。ここで、高いウイルスバリア性や血液バリア性を有するためには、それに見合うだけの高い防水性能を有することが求められる。所望の防水性が達成されない場合、血液、体液などが浸透しやすくなり、ひいては細菌、ウイルスなどに接触する機会も増えることになる。そして、ウイルスバリア性や血液バリア性、すなわち防水性と透湿性を併せ持つ布帛としては、基材、樹脂膜および接着層が積層された血液・ウイルスバリア性積層布帛が従来から知られている。
例えば、特許文献1には、表地用繊維布帛、微多孔膜、接着剤層および裏地用繊維布帛が、この順に積層された布帛で、表地用布帛および裏地用布帛は共にポリエステル系繊維からなる医療用透湿防水性布帛が記載されている。また、特許文献2には、表地、接着剤、防水膜、接着剤および裏地の順で積層一体化されてなる生地とシームテープまたはリペアパッチを有する医療用外衣で、前記表地および裏地はいずれもポリエステル布帛であり、前記接着剤はいずれもポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主体とする接着剤であり、前記防水膜はポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を主体とするポリウレタン膜である医療用外衣が記載されている。
特開2014-46576号公報 特開2017-35826号公報
従来より感染防護衣としては、使い捨てを前提とするディスポーザブルタイプのものと、使用の都度洗濯を行いながら複数回利用することを前提とするリユーザブルタイプのものがある。
特にリユーザブルタイプのものにおいては、洗濯耐久性が要求されることから生地の厚みが厚く、特に夏場の着用においては蒸れが生じ、着用感や作業性に劣るものであった。
近年、地球温暖化により気温が上昇している中で、夏場の着用における蒸れを防ぎ、着用感を向上させた感染防護衣の要望が高まっている。
特許文献1に開示された医療用透湿防水性布帛は、透湿性を付与することにより着用快適性を付与することを考慮したものではあるが、夏場の着用においては、蒸れが生じやすく、着用感にも劣るものであった。また、特許文献2に開示された医療用外衣は、医療用外衣を構成する層の数が多いため、軽量性に劣り、夏場の着用においては、蒸れが生じやすく、着用感にも劣るものであった。
夏場の着用における蒸れを防ぎ、着用感を向上させるには、構成する生地に十分なストレッチ性を付与することが求められるが、十分なストレッチ性と透湿防水性の両性能を満足する感染防止衣料は未だ提案されていない。
そこで本発明の目的は、透湿防水性に加え、十分なストレッチ性を有する衣料用積層体を提供することにある。また、前記積層体を用いて、血液やウイルスをバリアする防水性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、動作をする際にも十分なストレッチ性を有することにより動きやすく、着用快適性に優れた感染防止衣料を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために、鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、次の(イ)~(ホ)を要旨とするものである。
(イ)織物、微多孔膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、JIS L 1096 B法により測定する、タテ方向またはヨコ方向の伸長率が5~15%、かつJIS L 1096 B-1法により測定する、タテ方向およびヨコ方向の30秒後の伸長回復率が80%以上であり、さらにJIS L 1092(2009)B法により測定する耐水圧が200kPa以上であり、JIS L 1099 A-1法(塩化カルシウム法)により測定する透湿度が5000~8000g/m/24hである衣料用積層体。
(ロ)前記織物のカバーファクター(CF)が20~30である、(イ)の衣料用積層体。
(ハ)前記織物中に捲縮率が50~80%、かつ単糸繊度が3dtex以下の高捲縮糸を含む、(イ)または(ロ)のいずれかの衣料用積層体。
(ニ)初期のウイルスバリア性がASTM F1670-08B法の試験に合格し、
初期の人工血液バリア性がASTM F1671-07B法の試験に合格する(イ)~(ハ)のいずれかの衣料用積層体。
(ホ)(イ)~(ニ)のいずれかに記載の衣料用積層体を用いた感染防止衣料。
本発明の衣料用積層体は、透湿防水性およびストレッチ性に優れる。そのため、本発明の衣料用積層体を用いて感染防止衣料とした際には、夏場の着用においても、蒸れが生じにくく、着用感や作業性にも優れる感染防止衣料を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の衣料用積層体は、織物、微多孔膜、接着剤層および編物をこの順に積層したものである。なお、本発明では、衣料用積層体を「本発明積層体」、微多孔膜および接着剤層を総称して「樹脂層」と称することがある。
[織物・編物]
本発明における織物および編物について以下に説明する。
本発明における織物および編物を構成する繊維としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66で代表されるポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維などの合成繊維、トリアセテートなどの半合成繊維、あるいはナイロン6/綿、ポリエチレンテレフタレート/綿などの混合繊維が挙げられる。中でも、強度や汎用性、製造コストの点でポリエステル系繊維を80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
ポリエステル系繊維を構成するポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどがあげられる。本発明では、かかる樹脂を使用してフィラメント、ステープルとしたもの、さらにはマルチフィラメント糸、紡績糸としたものなどが使用できる。
本発明者は透湿防水性に加え、十分なストレッチ性を有する衣料用積層体を得るにあたり、積層体を構成する織物がストレッチ性を有していることが重要であると考えた。すなわち、樹脂層が積層された織物や編物の糸の目を高密度なものとすることで発現する透湿防水性に対して、織物や編物の糸の目の空きの開閉により発現するストレッチ性を付与することは相反する特性として従来行われてこなかったが、本発明では、衣料用積層体の伸長率および伸長回復率を特定の範囲とすることで、優れた透湿防水性を維持しながら、さらにストレッチ性も兼ね備える積層体が得られることを見出した。そして、前記伸長率および伸長回復率を満足するためには、衣料用積層体を構成する織物が適度なストレッチ性を有していることが重要であり、具体的には、後述するような構成を有するものとし、ストレッチ性を付与することが重要である。
以下に、本発明における織物について説明する。
本発明における織物は、高捲縮糸を含有していることが好ましく、当該高捲縮糸は、単糸繊度が3dtex以下の繊維からなるマルチフィラメントであることが好ましく、2dtex以下がより好ましく、1.5dtex以下が特に好ましい。高捲縮糸の単糸繊度が上記範囲内であれば、ストレッチ性を有し、かつ高密度な織物とすることができ、織物と樹脂層との接着性が良好で、また、樹脂層が積層体の表面に滲み出すことを抑制できる。そのため、本発明積層体が防水性や耐水圧性に優れたものとなる。一方、単糸繊度の下限値は特に限定されないが、細すぎるものであると織物にした時に重量が重くなるため、0.5dtex以上であることが好ましい。
高捲縮糸としては、高捲縮加工糸や潜在捲縮糸が挙げられるが、本発明を満足する伸縮性能を有するものであればいずれでもよい。高捲縮加工糸としては、仮撚加工やその他の糸加工によって捲縮構造を付与した糸条が挙げられ、潜在捲縮糸としては、熱収縮特性の異なる2種の成分をサイドバイサイド型や偏芯芯鞘型に接合した糸条で、熱処理などによって捲縮を発現させることができる潜在捲縮性コンジュゲート糸が好ましく用いられる。本発明においては、高捲縮仮撚加工糸を用いることが好ましい。
前記高捲縮糸の捲縮率は、50~80%であることが好ましく、中でも60~75%がより好ましい。本発明における織物に含まれる高捲縮糸の捲縮率が上記範囲を満足することで、本発明積層体が十分なストレッチ性を有するものとなり、積層体を用いて感染防止衣料とした場合に、着用快適性に優れたものとなる。
織物中の高捲縮糸の含有量は、上記のように、本発明積層体に十分なストレッチ性を付与するためには、40質量%以上であることが好ましく、中でも織物のヨコ糸全てに高捲縮糸を用いることが好ましい。
また、本発明における織物を構成する高捲縮糸以外の繊維は、単糸繊度が3tex以下のマルチフィラメントであることが好ましく、中でも2dtex以下、特に1.5dtex以下のマルチフィラメントが好ましい。織物を構成する高捲縮糸以外の繊維の単糸繊度が上記範囲内であれば、織物が高密度を有するものとすることができ、織物と樹脂層との接着性が良好で、また、樹脂層が積層体の表面に滲み出すことを抑制できる。そのため、防水性や耐水圧性に優れたものとなる。一方、単糸繊度の下限値は特に限定されないが、細すぎるものであると織物にした時に重量が重くなるので0.5dtex以上であることが好ましい。なお、高捲縮糸以外の繊維としては、仮撚加工が施されていない原糸、仮撚加工糸、原糸や仮撚加工糸を撚糸したものであってもよいが、本発明では、マルチフィラメントの仮撚加工糸を用いることが好ましい。
本発明では、織物を構成する高捲縮糸、高捲縮糸以外の繊維ともに、総繊度は50~120dtexであることが好ましく、70~100dtexがより好ましい。総繊度が50dtex未満になると、織物の強度が低下する恐れがあり、一方、120dtexを超えると、織物の重量が重くなり、軽量性に劣るものとなる。
なお、本発明における捲縮率は、以下の方法により測定して得られる。
<捲縮率の測定方法>
まず、枠周1.125mの検尺機を用いて巻き数5回で試料をカセ取りした後、カセを室温下フリー状態でスタンドに一昼夜吊り下げる。次に、カセに0.000147cN/dtexの荷重を掛けたまま沸水中に投入し30分間湿熱処理する。その後、カセを取り出し、水分を濾紙で軽く取り、室温下フリー状態で30分間放置する。そして、カセに0.000147cN/dtexの荷重および0.00177cN/dtex(軽重荷)を掛け、長さXを測定する。続いて、0.000147cN/dtexの荷重は掛けたまま、軽重荷に代えて0.044cN/dtexの荷重(重荷重)を掛け、長さYを測定する。その後、捲縮率(%)=(Y-X)/Y×100なる式に基づき、算出する。捲縮率の測定は、5本の試料について行い、その平均をその試料(糸)の捲縮率とする。
本発明における織物は、透湿防水性とストレッチ性の点からカバーファクター(CF)が20~30であることが好ましく、22~28の高密度織物であることが特に好ましい。CFが20以上であれば織物が高密度のものとなり、織物と樹脂層との接着性が良好で、防水性や耐水圧性に優れたものとできる。一方、CFが30以下であれば、織物が高密度になりすぎず、本発明積層体を後述する特定範囲の伸縮性や伸縮回復性を満足するストレッチ性を有するものとできる。ここで、カバーファクター(CF)とは、織編物の粗密を数値化したものであり、織物の場合、以下の式により算出される。
カバーファクター(CF)=A+B
ただし、A、Bは下記式により算出される数値である。
A={(織物の経糸の密度(本/2.54cm)÷ √経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/2.54cm)÷√緯糸の番手)}÷2
B={(織物の経糸の密度(本/2.54cm)÷ √経糸の番手)+(織物の緯糸の密度(本/2.54cm)÷√緯糸の番手)}×(1÷一完全組織の数)
本発明における織物は、目付が50~250g/mであることが好ましく、100~200g/mがより好ましい。目付を50g/m以上とすることで、本発明積層体が引張強度や破裂強度、耐水圧性に優れたものとなる。一方、織物の目付を250g/m以下とすることで、本発明積層体を感染防止衣料などにした場合、感染防止衣料が軽量となり、その着心地が向上する。
本発明における織物は、平、綾、朱子、パイルおよびこれらの変化組織などが挙げられるが、防水性や耐水圧性、耐久性の観点から平織物が好ましい。
以下に、本発明における編物について説明する。
本発明における編物を構成する繊維の単糸繊度は、0.7~10dtexであることが好ましく、1.0~3dtexがより好ましい。単糸繊度が0.7dtex未満になると、単糸繊度が細すぎて透湿性が低下する恐れがある。一方、単糸繊度が10dtexを超えると、単糸繊度が太すぎて編物の目が粗くなることで肌触りが低下したり、微多孔膜が編地表面から露出することで、積層体の耐久性が低下する恐れがある。
本発明における編物を構成する繊維の総繊度は、20~80dtexであることが好ましく、30~60dtexがより好ましい。総繊度が20dtex未満になると、編物と樹脂層との接着性が低下する恐れがあり、一方、80dtexを超えると、編物の重量が重くなり、軽量性に劣るものとなる。
なお、本発明における編物には、導電糸などの繊維を必要に応じて適宜含有させることができる。
本発明における編物の編密度は50~150コース/2.54cmかつ30~100ウェール/2.54cmが好ましく、50~100コース/2.54cmかつ35~80ウェール/2.54cmがより好ましい。コース密度、ウェール密度がそれぞれ上記の範囲を下回ると組織点の粗い編物となり、編物内に空隙が増える傾向となり、その結果、該空隙から樹脂層が滲み出したり、防水性が低下することがある。一方、コース密度、ウェール密度がそれぞれ上記の範囲を上回ると組織点による拘束が強まり、編物としての引裂強力や破裂強力が低下したり、積層体の透湿性が低下することがある。
本発明における編物は、目付が50~250g/mであることが好ましく、100~200g/mがより好ましい。目付を50g/m以上とすることで、本発明積層体が引張強度や破裂強度や耐水圧性に優れたものとなる。一方、編物の目付を250g/m以下とすることで、本発明積層体を感染防止衣料などにした場合、感染防止衣料がより軽量となり、その着心地が向上する。
本発明における編物は、経編物または緯編物のいずれであってもよい。経編物としては、例えば、デンビー編、コード編、アトラス編などが挙げられ、緯編物としては、例えば、平編、ゴム編、パール編、スムース編などが挙げられる。とりわけ、トリコット編地は、それ以外の組織を有する編地と比較すると伸縮性が抑えられており、編目空隙が大きくなり過ぎないので好ましい。また、トリコット編地は製編時に長い生機を得ることができ、繋ぎ目が少なく、樹脂層上に均一に積層することができる点でも好ましい。中でも、軽量性や耐久性、形態安定性の観点からアトラス編が好ましい。
[微多孔膜]
次に、本発明における微多孔膜について説明する。
本発明における微多孔膜としては微多孔を有する平面状の公知の素材が使用でき、例えばポリウレタン系樹脂やポリアクリロニトリル系樹脂の湿式凝固膜、ポリオレフィン系樹脂やポリウレタン系樹脂の発泡材(フォーム)が使用できるが、本発明においては積層体の形成が容易な点で湿式凝固法により得られる微多孔膜が好ましく、中でもポリウレタン樹脂の湿式凝固膜が好ましい。
本発明に使用しうるポリウレタン樹脂は、バージンポリウレタン樹脂に限定されず、ポリウレタン樹脂以外の樹脂が少量、たとえば固形分中に20質量%以下程度含有されていてもよい。かかる樹脂としては、たとえば、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミノ酸、ポリカーボネートなどの重合体または共重合体が用いられる。また、これらの重合体または共重合体をフッ素やシリコンなどで変成したものも用いられる。中でも耐久性の観点からポリカーボネートが共重合されていることが好ましい。
ここで、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂とは、ジオール成分とジイソシアネート成分とからなるポリウレタンであって、ジオール成分がポリカーボネートポリオールからなるものをいう。イソシアネート成分としては特に限定されないが、芳香族系ジフェニルメタンジイソシアネートがあげられる。特に、ポリカーボネートポリオールおよび芳香族系ジフェニルメタンジイソシアネートからなるポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を使用すると、耐久性の向上に一層貢献できるため好ましい。
また、ポリウレタン樹脂としては、繊維布帛との接着性向上の観点から、架橋されたものを用いることも有効である。架橋に用いる架橋剤としては、イソシアネート化合物などが好適であり、同化合物を含有させることで、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が架橋し、微多孔膜の強度と接着剤層の編物に対する接着性とを同時に向上させることができる。一般には、ポリウレタン樹脂に対し1~10質量%程度の割合で用いることが好ましい。
本発明における微多孔膜は、透湿性を向上させる目的で、微多孔膜中に無機微粉末を含有させることができる。
無機微粉末としては、例えば二酸化珪素、二酸化アルミニウム、または二酸化チタンなどからなる微粉末が挙げられ、種類としては、アモルファスのガラス状であって細孔がなく、乾式法で製造されるフュームドタイプのものが好ましい。
また、無機微粉末の平均一次粒子径としては、7~40nm程度が好ましい。7nm未満になると、透湿性の向上効果があまり認められない傾向にあり、40nmを超えると、微多孔膜中に大きな孔が形成され易く、耐水圧が低下する傾向にあるため、いずれも好ましくない。
無機微粉末の含有量としては、微多孔膜全体に対し3~50質量%であることが好ましく、5~50質量%がより好ましい。3質量%未満では、透湿性の向上効果が認められず、50質量%を超えると、樹脂成分の含有量が相対的に低下するため、微多孔膜が脆くなり、洗濯や滅菌処理に対する耐久性が低下する。また、微多孔膜を形成する際の作業性や製膜コストの点においても不利なものとなる。
その他、微多孔膜を構成する樹脂中には目的に応じて、顔料、フィラーなどの各種添加剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤などの各種機能材を含有させてもよい。これらの含有量は、微多孔膜全体に対し10質量%程度以下とすることが好ましい。
微多孔膜は、厚みとして5~80μmの範囲であることが好ましく、15~70μmがより好ましい。厚みが5μm未満になると、防水性能が低減する傾向にあり、一方、80μmを超えると、積層体の重量が重くなり軽量性に劣るものとなるため、いずれも好ましくない。
本発明積層体において、織物と微多孔膜との積層は、樹脂、既知の膜、フィルム、積層物などをラミネート法やコーティング法を用いて行えばよく、前記樹脂を2種類以上併用する場合は、樹脂を混合、あるいは順次コーティングおよび積層して皮膜を形成しても構わない。中でも、樹脂層の厚みを薄くし、得られる積層体の重量を軽くする観点から、コーティング法によりポリウレタン樹脂を織物に積層接着し、湿式凝固法によりポリウレタン樹脂微多孔膜を形成することが好ましい。
本発明積層体は、このように織物、微多孔膜、接着剤層および編物をこの順に積層したものであるが、必要に応じて織物と編物の間の任意の場所に任意の膜を設けてもよい。例えば、積層体の防水性を向上させたいという場合には、微多孔膜の上に無孔膜を積層するとよい。この場合、無孔膜を構成する樹脂としては、接着性の観点からポリウレタン樹脂が好適であり、特にエーテル系ポリウレタン樹脂が透湿性の点で好ましく、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が防水性や耐久性の点でも好ましい。ただし、無孔膜を設けると布帛の透湿性が低下する傾向にあるので、用途、目的などを十分に考慮したうえで無孔膜を設けるのがよい。
[接着剤層]
次に、本発明における接着剤層について説明する。
本発明における接着剤層に使用される接着剤の種類については、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂などが挙げられる。また、透湿防水層との相溶性に優れるものであることが好ましく、例えば、微多孔膜を構成する樹脂として、ポリウレタン樹脂を主成分とするものを選定した場合は、ポリウレタン系接着剤からなる接着剤層を採用することが好ましい。ポリウレタン系接着剤は、エーテル系、エステル系、ポリカーボネート系などのいずれの構造のものを使用してもよいが、優れた接着性や耐久性の観点から、好ましくはエーテル系やポリカーボネート系が挙げられる。
接着剤層は、微多孔膜上に全面状に形成されてもよいが、衣料用積層体の透湿性、風合いなどの観点からパターン状に形成されていてもよい。パターン状の形態としては、特に限定されないが、点状、線状、格子状、市松模様、亀甲模様などがあげられ、基本的に全体に均一に配置されていることが好ましい。
また、微多孔膜もしくは繊維布帛に対する接着剤層の占有面積としては、全面積に対し25~90%程度が好ましく、40~70%がより好ましい。接着剤層の塗布面積が著しく低いと、剥離性が低下し透湿性が向上する傾向となり、一方、接着剤層の塗布面積が著しく高いと、剥離性が向上し透湿性が低下する傾向となるが、両者のバランスの為に、上記の範囲とすることが好ましいのである。
接着剤層の厚みとしては、一般に5~100μmが好ましく、10~70μmがより好ましく、20~50μmが特に好ましい。厚みが5μm未満になると、接着剤の占有面積を広くしても、耐久性ある積層体が得られ難く、一方、100μmを超えると、製造コストがかさむうえに透湿性能が低下したり、風合いが硬化したりすることがあるので、いずれも好ましくない。
[衣料用積層体の特性]
次に、本発明の衣料用積層体の特性について説明する。
本発明積層体は、JIS L 1096 B法に従って測定するタテ方向またはヨコ方向の伸長率が5~15%であり、中でも7~12%であることが好ましい。本発明積層体のタテ方向またはヨコ方向の伸長率が5%以上であると、積層体を用いて感染防止衣料などとした際に、着用者の身体の動きに合わせて積層体が伸びるため、より動きやすく、着用快適性に優れるものとなる。一方で、積層体のタテ方向またはヨコ方向の伸長率が15%以下であれば、感染防止衣料の着用者の動作時などに積層体に力が加わり、樹脂層が伸びても、微多孔膜の孔が広がることを抑制でき、血液やウイルスが微多孔膜を透過することを防止することができるため好ましい。なお、本発明積層体においては、中でもヨコ方向の伸長率が上記範囲内であることが好ましい。
本発明積層体は、JIS L 1096 B-1法に従って測定するタテ方向およびヨコ方向の除重後30秒後の伸長回復率が80%以上であり、中でも着用快適性の観点から85%以上であることが好ましい。伸長回復率が80%以上であれば、実用上十分な伸縮性を有するといえる。また、除重後1時間後の伸長回復率は特に限定されないが、着用快適性の観点から85%以上であることが好ましい。なお、測定方法の詳細については、後述する。
本発明積層体は、JIS L 1099 A-1法(塩化カルシウム法)に従って測定する透湿度が5000g~8000/m/24hであり、中でも、6000~7500g/m/24hであることが好ましい。また、本発明積層体は、JIS L 1099 B-1法(酢酸カリウム法)に従って測定する透湿度が15000~18000g/m/24hであることが好ましく、16000~17500g/m/24hであることがより好ましい。いずれの測定法であっても透湿度の範囲が上記範囲を下回ると、透湿性が不十分であるため樹脂層表面が結露しやすく、本発明積層体を感染防止衣料などとした際に蒸れ感が生じて着用快適性が低下する。一方で上記範囲を上回ると、血液やウイルスへのバリア性に関わる所望の防水性が得られない恐れがある。
本発明積層体は、防水性の指標として、JIS L 1092(2009)B法(高水圧法)により測定する耐水圧が200kPa以上であり、250kPa以上が好ましく、さらには、300kPa~600kPaであることが好ましい。耐水圧を上記範囲内のものにすることによって、本発明積層体は優れた防水性を示し、血液やウイルスへの優れたバリア性を有するものとなる。また、微多孔膜の貫通孔を適当数設けることができるため透湿性にも優れたものとできる。
本発明積層体の初期の血液バリア性は、ASTM F1670-08B法に記載の試験に合格するものであることが好ましい。上記試験の判定が合格であれば、実用する上で十分な血液バリア性を有するものであり、好ましいと評価できる。なお、初期とは加工上がりで洗濯前の状態を指す。
本発明積層体の初期のウイルスバリア性は、ASTM F1671-07B法に記載の試験に合格するものであることが好ましい。上記試験の判定が合格であれば、実用する上で十分なウイルスバリア性を有するものであり、好ましいと評価できる。なお、初期とは加工上がりで洗濯前の状態を指す。
[衣料用積層体の製造方法]
次に、本発明の衣料用積層体を得るための方法について、一例を述べる。
まず、織物の片方の面に微多孔膜を形成する。微多孔膜を織物の上に形成させる方法としては、織物に直接に樹脂溶液を塗布するコーティング法や、すでに微多孔が形成されている膜やフィルムを織物に貼り合せるラミネート法が挙げられる。コーティング法では、前記樹脂溶液を織物に塗布し、次いで該織物を凝固浴中に浸漬してエラストマーを凝固させて微多孔構造を形成する湿式凝固法を採用すればよく、塗布する際には、ナイフコーティング法、コンマコーティング法、グラビアコーティング法などを用いればよい。本発明では、優れた透湿性を備えさせるという観点から、コーティング法、すなわち、予め用意しておいた織物に樹脂溶液を塗布した後、これを湿式凝固液に浸漬することにより微多孔膜を形成することが好ましい。
樹脂溶液は、主成分となる樹脂と、必要に応じて無機微粒子やその他添加物とを有機溶媒に溶解または分散することにより調製することができる。有機溶媒としては、主成分となる樹脂に対して親和性を示すものであれば任意のものが使用でき、例えばポリウレタン樹脂の場合には、N,N-ジメチルホルムアミドを使用することが好ましい。有機溶媒の含有量としては、おおむね70~85質量%程度が好ましい。
以下、微多孔膜を構成する樹脂として、ポリウレタン樹脂を用いた場合の一実施態様を説明する。
湿式凝固液としては、水もしくは極性有機溶剤を含有する水溶液が好適であり、極性有機溶剤としてはN,N-ジメチルホルムアミドなどが好適である。特に湿式凝固液としてN,N-ジメチルホルムアミド水溶液を用いる場合、その濃度は30%以下が好ましく、5~30%がより好ましい。
湿式凝固の条件としては、凝固液温度を5~35℃、凝固時間を30秒~5分程度にそれぞれ設定することが好ましく、湿式凝固液中でポリウレタン樹脂系溶液に含まれる固形分を凝固することで、微多孔膜を形成する。その後、必要に応じて微多孔膜に付着するN,N-ジメチルホルムアミドを除去する目的で、35~80℃の温度下で1~10分間湯洗し、さらに続いて、50~150℃の温度下で1~10分間乾燥するとよい。
一般に、ポリウレタン樹脂系溶液を繊維布帛に塗布した後、水に浸漬すると、ポリウレタン樹脂系溶液中の有機溶剤と水とが素早く溶媒置換し、直径5~50μm相当の大きな孔(長孔)が膜内に形成される。このとき、湿式凝固液として、水に代えて、極性有機溶剤を含有する水溶液を用いると、ポリウレタン樹脂を主体とする固形分の凝固速度を遅らせることができる。そうすると、長孔の形成が抑えられ、より微多孔質に富む形態(ナノポーラス)の膜が形成され易くなる。この点、膜内に大きな孔が形成されることは、所望の防水性を得るうえで不利となる傾向にある。そして、不利となる防水性を補う目的で膜を厚くすると、透湿抵抗によりかえって透湿性が低下し、しかも風合いも損なわれる傾向にある。よって、微多孔膜の形態をナノポーラスなものとすればするほど、衣料用積層体において透湿・防水・風合いの調和が取り易い傾向にあるといえる。
本発明における微多孔膜には、無機微粉末が3~50質量%含有されていることが好ましく、無機微粉末を使用することも、ナノポーラスな微多孔膜を形成するうえで有利となる。これは、無機微粉末を使用すると、その表面に有機溶媒が吸着され、無機微粉末の周囲で有機溶媒の濃度が高くなる。そして、その状態で固形分を凝固させると、無機微粉末の周囲で孔が形成され易くなり、結果、大きな孔が形成され難くなることによる。本発明者らの研究によれば、微多孔膜における無機微粉末の含有量が、好ましくは15~50質量%、よりこの好ましくは20~50質量%となるように調製されたポリウレタン樹脂系溶液を用いると、好ましくは孔径3μm以下、より好ましくは孔径1μm以下の多数の微細孔を有する均一な膜が形成されることがわかった。そして、このようなナノポーラスな微多孔膜を形成すると、前記のように衣料用積層体において透湿・防水・風合いの調和を図る点で有利となり、同時に耐湿熱性や血液、体液、薬品などに対する防護性、特にウイルスバリア性の点で顕著に有利となることを本発明者らは新たに見出した。
また、本発明では、前記のように微多孔膜上に無孔膜を設けることができる。無孔膜の形成には、ポリウレタン樹脂系溶液が好ましく使用され、溶液の種類としては、溶剤型、エマルジョン型、水溶性型のいずれもが使用可能である。
無孔膜を形成するための具体的な条件としては、所定のポリウレタン樹脂系溶液を用意し、ナイフコーティング法、コンマコーティング法、グラビアコーティング法などを採用して微多孔膜の上に当該溶液をコーティングした後、50~150℃で30秒~10分間乾燥する条件が採用できる。
無孔膜の厚みとしては、0.5~10μm程度が好ましく、1~5μmがより好ましい。
本発明積層体は、さらに接着剤層と編物とを備えている。すなわち、微多孔膜と編物とが接着剤層により貼合されている。なお、いうまでもないが、微多孔膜の上に無孔膜を積層した場合には、無孔膜と編物とが接着剤層を介して貼合されることになる。
接着剤層を構成する樹脂としては、基本的に微多孔膜を構成する樹脂と同一組成のものが使用できるが、分子量その他を調製することでタッグ感、粘性など接着剤として好ましいとされる各種特性が最適化されたものを使用するとよい。また、樹脂の種類として、架橋型の樹脂を使用することが実用上好ましい。
接着剤層の形成には、微多孔膜および無孔膜のときと同様の方法が採用できる他、ホットメルトによる方法も採用できる。
例えば、ポリウレタン樹脂系溶液であれば、二液硬化型であって粘度500~5000mPa・sの範囲に調製したものが好適である。まず、グラビアコーティング法、コンマコーティング法などを採用して、微多孔膜(もしくは無孔膜)または編物の上に溶液を塗布する。その後、乾燥し、ラミネート機などを用いて、両者を圧着もしくは熱圧着すれば、両者を貼合することができる。
一方、ホットメルトの場合には、空気中の水分と反応する湿気硬化型のものが好適であり、実用上、80~150℃程度の温度域で溶融するものがより好ましい。まず、樹脂の融点および溶融時の粘性などを考慮しながらホットメルト樹脂を溶融させる。その後、微多孔膜(もしくは無孔膜)または編物の上に溶融した樹脂を塗布し、常温で冷却しながら、ラミネート機などを用いて両者を圧着すればよい。
以上のように、本発明の衣料用積層体は、前記織物の上に微多孔膜および接着剤層がこの順に積層されている。すなわち、本発明では、微多孔膜および接着剤層が織物および編物に挟まれた構造をなしている。本発明積層体に本発明織物および編物の2枚を用いる理由としては、樹脂層の一方の面を露出させた状態で使用すると、その露出している樹脂層が物体と接触した時に摩擦による剥離が生じるなど劣化が進みやすくなるため、樹脂層を保護する目的がある他、本発明積層体を用いた衣料として着用した際に生じうる、樹脂層と肌面との直接接触や透湿性能不足による不快感を防ぐ目的がある。すなわち、本発明積層体を衣料として用いる場合には透湿性やストレッチ性の観点から、前記織物が肌面から遠い側、前記編物が肌面に近い側となるように配置された状態で使用することが好ましい。
また本発明の衣料用積層体は、医療用途に使用される衣料に好適であり、血液やウイルスをバリアする防水性に優れ、着用した際の蒸れ感を軽減し、動作をする際にも十分なストレッチ性を有することにより動きやすく、着用快適性に優れた衣料などを提供することができる。なお、本発明にいう医療用途とは、病院を対象とするメディカル分野に限定されるものではなく、その周囲に位置する介護、看護、製薬分野なども包含するものである。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。各種の特性値などの測定、評価方法は次の通りである。
(a)伸長率
得られた衣料用積層体を60mm×300mmに切り出したものを試験片として用いて、JIS L1096(2010)の8.16.1に記載のB法に規定されている方法に従って伸長率を測定した。つかみ間隔を200mm、引っ張り速度20cm/分の条件で引張荷重14.7Nまで伸長させたときの伸長率をタテ方向およびヨコ方向についてそれぞれ求めた。
(b)伸長回復率
得られた衣料用積層体を60mm×300mmに切り出したものを試験片として用いて、JIS L1096(2010)の8.16.2に記載のB-1法(定荷重法)に規定されている方法に従って伸長回復率を測定した。試験片を上部クランプに固定し、初荷重をかけた後、下部クランプを固定し、次いで200mmの間隔(L0)に印をつけ14.7Nの荷重をかけ、1時間放置後、印間の長さ(L1)を計測した。次いで除重し、30秒後および1時間後に初荷重をかけ、再度印間の長さ(L2)を計測し、次式で伸長回復率を算出した。
伸長回復率(%)=[(L1-L2)/(L1-L0)]×100
(c)透湿性
得られた衣料用積層体を試験片として用いて、JIS L1099 A-1法(塩化カルシウム法)およびB-1法(酢酸カリウム法)に規定されている方法に従って透湿度を測定し、透湿性を評価した。
(d)防水性
得られた衣料用積層体を試験片として用いて、JIS L 1092(2009)B法(高水圧法)に規定されている方法に従って耐水圧を測定し、防水性を評価した。
(e)血液バリア性
得られた衣料用積層体の初期の血液バリア性は、ASTM F1670-08B法に規定されている方法に従って、合否判定により評価した。
工業洗濯50洗後の血液バリア性は、JIS T 8060(2015)に記載の手順Bに規定されている方法に従って評価し、クラス6以上を○とし、クラス6未満を×とした。工業洗濯はJIS L1096 F-2法(ワッシャー洗濯、高温タンブル乾燥)に規定される方法で行った。
(f)ウイルスバリア性
得られた衣料用積層体の初期のウイルスバリア性は、ASTM F1671-07B法に規定されている方法に従って、合否評価により評価した。
(g)微多孔膜の厚み、断面形状の観察
(株)日立製作所製、S-4000形電界放射形走査電子顕微鏡を用いて、倍率2000倍の断面写真を撮影し、微多孔膜の厚みを測定すると共に断面形状を観察した。
(h)着用快適性
衣料用積層体を用いて長袖上衣とパンツからなる感染防止衣料を作成し、医療従事者にこれを着用してもらい、真夏日の環境下(気温30℃以上)で通常の医療従事時と同様の作業を1日行った際の着用感を、快適性(蒸れ感を感じないこと)および動作のしやすさの観点から判断し、以下の2段階評価を行った。
○:快適性、動作のしやすさともに良好である
×:快適性、動作のしやすさともに不良である
(実施例1)
〔織物の作製〕
ウォータジェットルーム(WJL)織機を用い、経糸にポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸84dtex/72f、緯糸に捲縮率が69.1%のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント高捲縮仮撚加工糸90dtex/72fを用いて、経糸密度104本/2.54cm、緯糸密度81本/2.54cmの平組織の織物生機を製織した。
得られた生機を製織後、精練剤を用いて80℃で20分間の精練し、分散染料を用いて130℃で30分間染色した。続いて、170℃で1分間ファイナルセットした後、市販のフッ素系撥水剤を用いて有効成分5質量%の水分散液を調製し、パディング法にて織物に水分散液をピックアップ率40%の割合で付与した。付与後、120℃で2分間乾燥し、さらに170℃で40秒間熱処理した後、鏡面ロールを有するカレンダー加工機を用いて、温度175℃、圧力300kPa、速度25m/分の条件でカレンダー加工し、経糸密度128本/2.54cm、緯糸密度90本/2.54cmの平組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
28ゲージトリコット編機を用い、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸56dtex/36fに、ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸56dtex/36fとポリエチレンテレフタレート導電性フィラメント原糸28dtex/2fとをZ300T/Mで合撚した糸を2本/2.54cmのピッチで配列させ、編組織を1-0/2-1/2-3/1-2とした閉じ目のシングルアトラストリコット編地生機を編立した。
得られた生機を公知の条件で染色加工を実施し、生地の編密度が65コース/2.54cm×44ウェール/2.54cmの編物を得た。
〔積層体の作製〕
レザミンCUS-1500(大日精化工業社製、固形分濃度30質量%、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)100質量部と、AEROSIL COK84(日本アエロジル社製、平均一次粒子径が約16nmを主体とする親水性二酸化珪素と、酸化アルミニウムとの混合微粉末)2質量部とを粗練りした後、3本ロールミル機を用いて本練りした。そして、レザミンX(大日精化工業社製、固形分濃度100質量%、架橋性イソシアネート化合物)およびN,N-ジメチルホルムアミドを添加し、脱泡することで、下記処方1に示す組成のポリウレタン樹脂系溶液を調製した。得られた溶液の固形分濃度は24質量%で、粘度は25℃下において12000mPa・sであった。また、混合微粉末は、全固形分100質量%に対し6質量%含有されていた。
次に、織物のカレンダー加工面に、コンマコーティング法を採用して上記ポリウレタン樹脂系溶液を100g/m塗布した。そして、濃度15%のN,N-ジメチルホルムアミド水溶液(20℃)の浴に織物を導入し、2分間浸漬して固形分を凝固した。続いて、50℃の温水浴を使用して十分にオーバーフロー湯洗し、織物をマングルで絞り、引き続き、乾燥機に導入して140℃で2分間乾燥し、微多孔膜を形成した。
得られた微多孔膜の断面形状を走査電子顕微鏡で観察したところ、厚みは50~60μmであった。また、膜中には5~40μmの範囲で長孔が形成されていたものの、孔径3μm以下の微細孔も多数形成されていた。
〈処方1〉
レザミンCUS-1500 100質量部
AEROSIL COK84 2質量部
レザミンX 2質量部
N,N-ジメチルホルムアミド 40質量部
次いで、ドット状グラビアロール(ドット径0.75mm、ドット間隔0.25mm、25メッシュ、深度0.25mm)を用いて、下記処方2に示す組成のポリウレタン樹脂系溶液(固形分濃度59質量%、25℃下における粘度4000mPa・s)を微多孔膜の上に占有面積約50%の割合で点状に約60g/m塗布した。その後、120℃で2分間乾燥することで、接着剤層を形成した。そして、圧力300kPaで編物を貼合し、40℃×80%RHの環境下で3日間エージングして、衣料用積層体を得た。
〈処方2〉
レザミンUD-8373 100質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度70質量%、二液硬化型ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)
レザミンNE 12質量部
(大日精化工業株式会社製、固形分濃度70質量%、架橋性イソシネート化合物)
レザミンUD-103NT 1質量部
(大日精化工業株式会社製、架橋促進剤)
メチルエチルケトン 20質量部
(比較例1)
〔織物の作製〕
経糸密度155本/2.54cm、緯糸密度115本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にして平組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例1と同様にして、生地密度65コース/2.54cm×44ウェール/2.54cmの編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、微多孔膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂層、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
(比較例2)
〔織物の作製〕
経糸密度100本/2.54cm、緯糸密度60本/2.54cmとした以外は実施例1と同様にして平組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例1と同様にして、生地密度65コース/2.54cm×44ウェール/2.54cmの編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、微多孔膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂層、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
(比較例3)
〔織物の作製〕
緯糸に捲縮率が24.3%のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント高捲縮仮撚加工糸84dtex72fを用いた以外は実施例1と同様にして平組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例1と同様にして、生地密度65コース/2.54cm×44ウェール/2.54cmの編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、微多孔膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂層、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
(比較例4)
〔織物の作製〕
経糸にポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚加工糸84dtex36f、緯糸に捲縮率が68.7%のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント高捲縮仮撚加工糸90dtex24fを用いた以外は実施例1と同様にして平組織の織物を得た。
〔編物の作製〕
実施例1と同様にして、生地密度65コース/2.54cm×44ウェール/2.54cmの編物を得た。
〔積層体の作製〕
実施例1と同様にして、ポリウレタン樹脂系溶液の調製、微多孔膜および接着剤層の形成、および織物、樹脂層、編物との積層を行い、衣料用積層体を得た。
実施例1および比較例1~4で用いた織物の構成を表1に、得られた衣料用積層体の特性値や評価結果を表2に示す。
Figure 2022172876000001
Figure 2022172876000002
表2から明らかなように、実施例1の衣料用積層体は、ヨコ方向の伸長率が5%以上、タテ方向およびヨコ方向の30秒後の伸長回復率が80%以上、かつ耐水圧が200kPa以上、透湿度が6240g/m/24hであり、透湿防水性に優れ、十分なストレッチ性を有するものであった。また、前記積層体を用いて得た感染防止衣料は、着用した場合にも動きやすく、蒸れ感も少なく、着用快適性に優れたものであった。
一方、比較例1では織物のCFが大きく、得られた衣料用積層体は伸長率が5%以下とストレッチ性に劣るものであり、感染防止衣料として着用した場合に動きづらく、蒸れ感を感じるものとなった。
比較例2では織物のCFが小さく、織物の糸の目が粗いものとなったことで、織物上で微多孔膜を形成する際にピンホールが発生するなどの不良が生じた。その結果、得られた衣料用積層体は伸長回復率が80%未満と小さく、また、耐水圧が200kPa未満、透湿度が8000g/m/24hを超えるものとなり、透湿防水性とストレッチ性の両性能に劣るものとなった。
比較例3では織物中に高捲縮糸が含有しない織物を用いたため、得られた積層体は伸長率が5%未満とストレッチ性に劣るものとなり、感染防止衣料として着用した場合に動きづらく、また蒸れ感を感じるものとなった。
比較例4では高捲縮糸の単糸繊度が太い織物を用いたため、織物上で微多孔膜を形成する際にピンホールが発生するなどの不良が生じた。その結果、得られた衣料用積層体は耐水圧が200kPa未満となり、ウイルスバリア性に劣るものとなった。

Claims (5)

  1. 織物、微多孔膜、接着剤層および編物をこの順に積層してなる積層体であって、JIS L 1096 B法により測定する、タテ方向またはヨコ方向の伸長率が5~15%、かつJIS L 1096 B-1法により測定する、タテ方向およびヨコ方向の30秒後の伸長回復率が80%以上であり、さらにJIS L 1092(2009)B法により測定する耐水圧が200kPa以上であり、JIS L 1099 A-1法(塩化カルシウム法)により測定する透湿度が5000~8000g/m/24hである衣料用積層体。
  2. 前記織物のカバーファクター(CF)が20~30である、請求項1に記載の衣料用積層体。
  3. 前記織物中に捲縮率が50~80%、かつ単糸繊度が3dtex以下の高捲縮糸を含む、請求項1または2のいずれかに記載の衣料用積層体。
  4. 初期のウイルスバリア性がASTM F1670-08B法の試験に合格し、
    初期の人工血液バリア性がASTM F1671-07B法の試験に合格する請求項1~3のいずれかに記載の衣料用積層体。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の衣料用積層体を用いた感染防止衣料。
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