JP2022170307A - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シールリップの先端部と、当該先端部が摺接する摺動面との間において、予め封入されたグリースが外部に押出されたとしても、比較的長期間に亘って、少なくとも必要最低限度の油膜効果を維持することができ、シールリップの先端部全面における摩耗を抑制することができるシール部材を備えた、車輪用軸受装置を提供する。【解決手段】シールリップ72bの先端部には、周方向断面視にて摺動面に向かって円弧状に膨出し、周方向に延びる円環状の膨出部10が設けられ、膨出部10の前記摺動面と対向する曲面10aには、周方向断面視にて、曲面10aの円弧形状に沿って連続する複数の突起部11a及び溝部11bによって構成された凹凸形状からなり、且つ周方向に連続して延びる環状溝部11が形成される。【選択図】図2

Description

本発明は、車輪用軸受装置に関する。
従来より、自動車等の車両の懸架装置において、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。
前記車輪用軸受装置は、例えば、車輪に接続されるハブ輪(内方部材)が、転動体を介して外方部材に回転自在に支持された構成からなる。
また、車輪用軸受装置は、主に上記懸架装置、車輪のタイヤホール、及びブレーキロータ等によって囲まれた空間内にて、外部に露出した状態で配置されることが多い。
このため、車輪用軸受装置には、泥水等の異物が、外部から転動体の設置空間内に侵入するのを防止するために、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間において、そのインナー側及びアウター側のそれぞれの開口端に、シール部材が設けられている。
ところで、図4は、従来の車輪用軸受装置101におけるアウター側のシール部材107の一例を示した図であるが、本図の(a)に示すように、シール部材107が有する複数のシールリップ172b・172b・172b(外側アキシアルリップ173、内側アキシアルリップ174、及びラジアルリップ175)の先端部は、全て内方部材であるハブ輪103が有する摺動面(平面部131a、軸周面部131b、及び円弧面部131c)と当接した状態となっている。
従って、これら複数のシールリップ172b・172b・172bと、ハブ輪103の上記摺動面との間には、内側アキシアルリップ174によって区切られた密閉空間、即ち、外側アキシアルリップ173と内側アキシアルリップ174とによって隔絶された第1リップ空間P1、及びラジアルリップ175と内側アキシアルリップ174とによって隔絶された第2リップ空間P2が形成されている。
そして、これらの第1リップ空間P1及び第2リップ空間P2において、各シールリップ172bの先端部と上記摺動面とによって形成される円環状の隙間には、潤滑材であるグリースZが各々封入されている。
このような車輪用軸受装置101が備えられた車両が運転され、上記の各密閉空間内の温度が上昇すると、これらの密閉空間内の空気は膨張し、シール部材107を通過して外部に排出される場合がある。
例えば、第1リップ空間P1内の空気は、体積の増加に伴い径方向外側(矢印Bの方向側)へと押出されて外部に排出され、また第2リップ空間P2内の空気は、体積の増加に伴い軸方向の一方側(矢印Cの方向側)へと押出されて外部に排出される。
そして、その後車両の運転が停止し、各密閉空間内の温度が常温付近にまで下がると、第1リップ空間P1内の圧力、及び第2リップ空間P2内の圧力は低下して、それぞれ外部の大気圧に対して負圧となることから、図4(b)に示すように、各シールリップ172bの先端部は、上記摺動面に沿って張り付くように接触し、上述した円環状の隙間は、押し潰されることとなる。
これにより、当該円環状の隙間に封入されていたグリースZは、各シールリップ172bの先端部を通過して、それぞれ外部に押出される。
その結果、車輪用軸受装置101が備えられた車両の運転が再開された場合、各シールリップ172bの先端部と上記摺動面との間に封入されるグリースZの供給量が不足して、十分な油膜効果を得ることができず、各シールリップ172bの先端部全面においては著しく摩耗が進み、シール性能が低下するだけでなく、各シールリップ172bの先端部と上記摺動面との接触面積が増大することから、車輪に接続されるハブ輪を回転させる際のトルクも増大し、不経済となる虞があった。
そこで、このような問題点を解決するための技術の一例が、特許文献1によって開示されている。
即ち、特許文献1においては、各シールリップの先端部に、周方向に連続して形成される複数の環状突起または環状凹溝を設ける技術が開示されている。
特開2021-1637号公報
前記特許文献1における技術によれば、例えば巨視的には、各シールリップの先端部が前記摺動面に沿って張り付くように接触し、封入されていたグリースが外部に押出されたとしても、微視的には、互いに隣接する環状突起の隙間、或いは環状凹溝を介して、所定量のグリースを捕集することが可能であるため、少なくとも必要最低限度の油膜効果を得ることができる。
従って、各シールリップの先端部全面において著しく摩耗が進むのを抑制し、シール部材の交換時期が早まるのを防止することができるとともに、各シールリップの先端部と上記摺動面との接触面積が増大するのを抑制し、車輪に接続されるハブ輪を回転させる際のトルクが増大するのを防止することができる。
しかしながら、上記複数の環状突起または環状凹溝は、微細な突起形状からなり、その突出した端面において前記摺動面と当接することから、摩耗等によって当該突起形状が消滅するまでの期間が比較的短く、上記突起形状が消滅した後は、直ちに従来のシールリップの先端部と同等の状態となる。
従って、各シールリップの先端部と前記摺動面との間において、少なくとも必要最低限度の油膜効果を比較的長期間に亘って維持し、各シールリップの先端部全面における摩耗が著しく進むのを抑制するとともに、各シールリップの先端部と上記摺動面との接触面積が増大するのを抑制することが困難であった。
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、シールリップの先端部と、当該先端部が摺接する摺動面との間において、予め封入されたグリースが外部に押出されたとしても、比較的長期間に亘って、少なくとも必要最低限度の油膜効果を維持することができ、シールリップの先端部全面における摩耗を抑制することができるシール部材を備えた、車輪用軸受装置を提供することを課題とする。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、本発明に係る車輪用軸受装置は、内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、外周において軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、及び当該ハブ輪の前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、前記外方部材及び前記内方部材の各々の軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材及び前記内方部材によって形成された環状空間の開口端を塞ぐシール部材とを備える車輪用軸受装置において、前記シール部材は、前記外方部材に嵌合される芯金と、前記芯金に接合された弾性体からなるシール体と備え、前記シール体は、軸方向に延び、その先端部にて前記内方部材が有する摺動面と摺動可能に接触するシールリップを有し、前記シールリップの前記先端部には、周方向断面視にて、前記摺動面に向かって円弧状に膨出する円環状の膨出部が設けられ、前記膨出部の前記摺動面と対向する曲面には、周方向断面視にて、前記曲面に沿って連続する複数の凹凸形状からなり、且つ周方向に連続する環状溝部が形成されることを特徴とする。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る車輪用軸受装置によれば、シールリップの先端部と、当該先端部が摺接する摺動面との間において、予め封入されたグリースが外部に押出されたとしても、比較的長期間に亘って、少なくとも必要最低限度の油膜効果を維持することができ、シールリップの先端部全面における摩耗を抑制することができるシール部材を実現することができる。
本発明に係る車輪用軸受装置の全体的な構成を示した断面図である。 本発明の第1実施形態におけるアウター側シール部材及びその近傍の構成を周方向断面視にて示した図であって、図1中の領域A1によって示された部分の拡大断面図である。 本発明の第1実施形態におけるアウター側シール部材の構成を示した図であって、(a)はその斜視図であり、(b)は図3(a)中の領域Bによって示された部分の拡大斜視図である。 本発明の第2実施形態~第4実施形態における車輪用軸受装置を説明するための周方向断面視における図であって、(a)は第2実施形態における図1中の領域A1によって示された部分の拡大断面図であり、(b)は第3実施形態における図1中の領域A2によって示された部分の拡大断面図であり、(c)は第4実施形態における図1中の領域A2によって示された部分の拡大断面図である。 従来の車輪用軸受装置における、図1中の領域A1によって示された部分の拡大図であって、(a)は正常な状態におけるアウター側シール部材を示した周方向断面視における拡大断面図であり、(b)はシールリップの先端部が摺動面に吸着した状態におけるアウター側シール部材を示した周方向断面視における拡大断面図である。
次に、本発明の一実施形態について、図1乃至図5を用いて説明する。
なお、本明細書においては便宜上、図1中の矢印の方向によって規定された、インナー側及びアウター側に基づき記述する。
ここで、「インナー側」とは、自動車等の車体に取り付けられた状態における車輪用軸受装置1に対して、当該車体の内側の方向を意味する。
また、「アウター側」とは、自動車等の車体に取り付けられた状態における車輪用軸受装置1に対して、上記インナー側との反対側、即ち、当該車輪用軸受装置1によって、回転自在に支持された車輪側の方向を意味する。
また、本明細書においては、車輪用軸受装置1の回転軸G(図1を参照)と平行な方向を「軸方向」、当該車輪用軸受装置1の回転軸Gと直交する方向を「径方向」、当該車輪用軸受装置1の回転軸Gを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」と規定して記述する。
[車輪用軸受装置1(第1実施形態)の全体構成]
先ず、本発明を具現化した第1実施形態における車輪用軸受装置1の全体構成について、図1を用いて説明する。
車輪用軸受装置1は、自動車等の車両の懸架装置において、車輪を回転自在に支持するものである。
車輪用軸受装置1は、主に、外方部材の一例である外輪2と、ハブ輪3及び内輪4と、複列(本実施形態においては二列)の転動体であるボール列5・5と、シール部材の一例であるインナー側シール部材6及びアウター側シール部材7とを備える。
外輪2は、ハブ輪3及び内輪4を支持するものである。
外輪2は、略中空円筒状の部材からなり、そのインナー側の端部には、インナー側シール部材6を嵌合可能なインナー側開口部2aが設けられ、且つそのアウター側の端部には、アウター側シール部材7を嵌合可能なアウター側開口部2bが設けられている。
そして、外輪2の内周には、周方向に環状の複列(本実施形態においては二列)の外側軌道面2c・2cが、軸方向に離間して同軸上に設けられるとともに、外輪2の外周には、懸架装置のナックルに取付可能なフランジ(図示せず)が、一体に設けられている。
ハブ輪3は、内輪4とともに内方部材を構成する部材であって、車両の車輪(図示せず)を回転自在に支持するものである。
ハブ輪3は、略中実円柱状の部材からなり、そのインナー側の外周には、軸方向に延びる縮径された小径段部3aが設けられている。
また、ハブ輪3のアウター側の端部には、上記車輪を取付可能な車輪取り付けフランジ3bが、径方向断面視にて円弧状に拡径するように一体的に設けられている。
そして、車輪取り付けフランジ3bには、上記車輪をハブ輪3に締結するための、複数本のハブボルト3c・3c・・・が圧入されている。
また、ハブ輪3のアウター側の外周には、周方向に環状の内側軌道面3dが、上述したアウター側の外側軌道面2cと対向して設けられている。
ハブ輪3の小径段部3aには、内輪4が圧入されている。
内輪4は、ハブ輪3とともに内方部材を構成する部材であって、略中空円筒状の部材からなり、その外周には、周方向に環状の内側軌道面4aが、上述したインナー側の外側軌道面2cと対向して設けられている。
そして、内輪4は、ハブ輪3のインナー側の端部が、径方向外側に向かって塑性変形(加締め)されることにより、当該ハブ輪3に固定される。
なお、ハブ輪3との内輪4の固定方法については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、ハブ輪3のインナー側の端部において、ナット等の締結部材を螺合固定することとしてもよい。
このように、ハブ輪3及び内輪4によって構成される内方部材において、そのインナー側の端部には、内輪4に設けられる内側軌道面4aが配置され、且つそのアウター側の端部には、ハブ輪3に設けられる内側軌道面3dが配置されるとともに、これら複列(本実施形態においては二列)の内側軌道面3d・4aは、上述した外輪2に設けられる二列の外側軌道面2c・2cと、互いに対向して配置されている。
二列のボール列5・5は、外輪2に対して相対的に、ハブ輪3及び内輪4からなる内方部材を回転自在に支持するものである。
各列におけるボール列5は、環状に配置された複数のボール5a・5a・・・、及びこれらのボール5a・5a・・・を転動自在に保持する保持器5bによって構成されている。
そして、これら二列のボール列5・5は、外輪2のインナー側及びアウター側の端部に各々設けられる二列の外側軌道面2c・2cと、内方部材(ハブ輪3及び内輪4)のインナー側及びアウター側の端部に各々設けられる二列の内側軌道面3d・4aとの間に形成された、二列の設置空間Q1・Q1内において、各々転動自在に収容されている。
このように、本実施形態における車輪用軸受装置1は、外輪2、ハブ輪3、内輪4、及び二列のボール列5・5からなる複列アンギュラ玉軸受として構成されている。
なお、車輪用軸受装置1の構成については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、ボール列5に代替して円錐ころ列を用いた、複列円錐ころ軸受として構成されていてもよい。
インナー側シール部材6は、外輪2及び内方部材(ハブ輪3及び内輪4)によって形成された環状空間Q2におけるインナー側の開口端を塞ぐものである。
インナー側シール部材6は、略円筒状のシール板6a、及び略円筒状のスリンガ6b等を備える。
シール板6aは、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、または防塵処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)等からなる円環状の鋼板を、プレス加工することによって形成される。
また、シール板6aは、環状、且つ周方向視にてL字状に屈曲形成され、そのインナー側には、例えば合成ゴムからなる複数のシールリップ6a1・6a1・6a1が加硫接着されている。
なお、シールリップ6a1は、例えば、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性及び耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、またはシリコンゴム等の合成ゴムからなる弾性体によって形成される。
一方、スリンガ6bも、シール板6aと同様に、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、または防塵処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)等からなる円環状の鋼板を、プレス加工することによって形成される。
また、スリンガ6bは環状、且つ周方向視にてL字状に屈曲形成された鋼板等により構成され、そのインナー側には、環状の磁気エンコーダ6b1が加硫接着されている。
なお、磁気エンコーダ6b1は、ゴム等のエラストマにフェライト等の磁性体粉が混入されることにより、周方向に交互、且つ等間隔に磁極N、Sが着磁されて磁気特性が変化する、車輪の回転速度検出用のロータリエンコーダとして構成される。
そして、シール板6aは、外輪2と同軸上、且つ複数のシールリップ6a1・6a1・6a1をスリンガ6b側に向けた状態で、当該外輪2のインナー側開口部2aに嵌合される。
また、スリンガ6bは、内輪4と同軸上、且つシール板6aのインナー側において、当該シール板6aと対向させた状態で、内輪4の外周に嵌合される。
これにより、インナー側シール部材6は、シール板6a及びスリンガ6bからなるパックシールとして構成される。
アウター側シール部材7は、外輪2及び内方部材(ハブ輪3及び内輪4)によって形成された環状空間Q2におけるアウター側の開口端(より具体的には、外輪2のアウター側開口部2b)を塞ぐものである。
なお、アウター側シール部材7の構成の詳細については、後述する。
以上のように、本実施形態における車輪用軸受装置1は、ハブ輪3の外周に、アウター側のボール列5が転動可能な内側軌道面3dが、直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置として構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、一対の内輪が、ハブ輪の外周において互いに同軸上に圧入固定されるとともに、各々の内輪の外周に、ボール列が転動可能な内側軌道面が、直接形成されている第2世代構造の車輪用軸受装置として構成されていてもよい。
[アウター側シール部材7の構成]
次に、アウター側シール部材7の構成について、図2、図3及び図5を用いて詳細に説明する。
図2に示すように、アウター側シール部材7は、外輪2に嵌合される芯金71、及び当該芯金71に接合された弾性体からなるシール体72等を備える。
芯金71は、例えば、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)、オーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、または防塵処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)等からなる円環状の鋼板を、プレス加工することによって形成される。
また、芯金71は、主に円筒部71a、湾曲部71b、及び円板部71c等により構成される。
円筒部71aは、軸方向に延出する中空円筒状に形成され、その外径は、外輪2のアウター側開口部2bの内径と略同等に設定されている。
また、湾曲部71bは、周方向視において軸方向のアウター側(図1を参照)に凸状となる円環状に形成され、円筒部71aのアウター側の端部より、径方向内側に向かって連続して設けられている。
さらに、円板部71cは、直立する円板状に形成され、湾曲部71bの端部より径方向内側に向かって連続して設けられている。
一方、芯金71のアウター側の側面には、シール体72が、円筒部71aの外周面に向かって回り込むように接合されており、アウター側シール部材7は、所謂ハーフメタル構造を成している。
そして、アウター側シール部材7は、芯金71の円筒部71aを介して、外輪2のアウター側開口部2b(即ち、前述した環状空間Q2(図1を参照)のアウター側の端部であって、外輪2の内周)に嵌合される。
これにより、車輪用軸受装置1の環状空間Q2は気密性が高めら、アウター側シール部材7によって軸受内部を保護することができる。
シール体72は、例えば、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性及び耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、またはシリコンゴム等の合成ゴムからなる弾性体によって形成され、加硫接着により芯金71と一体的に接合されている。
また、シール体72は、芯金71のアウター側の側面を覆う基部72a、及び当該基部72aより軸方向に延び、その先端部にて、内方部材であるハブ輪3が有する摺動面(後述する平面部31a、軸周面部31b、及び円弧面部31c)と摺動可能に接触する、複数のシールリップ72b・72b・72bを有する。
これら複数のシールリップ72b・72b・72bは、図3(a)に示すように、各々円環状に形成され、同軸上に配置される外側アキシアルリップ73、内側アキシアルリップ74、及びラジアルリップ75により構成される。
具体的には、図2に示すように、外側アキシアルリップ73は、周方向断面視において、径方向外側に傾斜して軸方向のアウター側(図1を参照)に延びるように形成されている。
また、内側アキシアルリップ74は、外側アキシアルリップ73の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向外側に傾斜して軸方向のアウター側に延びるように形成されている。
さらに、ラジアルリップ75は、内側アキシアルリップ74の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向内側に傾斜して軸方向のインナー側(図1を参照)の方向)に延びるように形成されている。
そして、これらの外側アキシアルリップ73、内側アキシアルリップ74、及びラジアルリップ75は、それぞれ先端部において、ハブ輪3の段差部31に摺接される。
ここで、上記段差部31は、ハブ輪3における車輪取り付けフランジ3bの基端部において、インナー側へ突出して設けられた部位を指す。
具体的には、段差部31は、回転軸G(図1を参照)に対して垂直な平面からなる平面部31a、当該平面部31aの径方向内側に位置し、回転軸Gと同軸上に延出する軸周面部31b、並びにこれらの平面部31a及び軸周面部31bを滑らかに繋げる円弧面部31cなどにより構成されている。
また、段差部31の外周面部31dは、所定の曲率にて傾斜しており、平面部31aの外縁からハブボルト3c(図1を参照)の座面31eまで、滑らかに繋がっている。
そして、外側アキシアルリップ73の先端部は、潤滑材であるグリースZの油膜を介して、段差部31の平面部31aと接触し、また、内側アキシアルリップ74の先端部は、当該油膜を介して、段差部31の円弧面部31cと接触し、さらに、ラジアルリップ75の先端部は、当該油膜を介して、段差部31の軸周面部31bと接触している。
これにより、これら複数のシールリップ72b・72b・72bと、ハブ輪3の段差部31との間には、内側アキシアルリップ74によって区切られた密閉空間、即ち、外側アキシアルリップ73と内側アキシアルリップ74とによって隔絶された第1リップ空間P1、及びラジアルリップ75と内側アキシアルリップ74とによって隔絶された第2リップ空間P2が形成される。
ところで、図3(b)に示すように、本実施形態において、シールリップ72bの一例である外側アキシアルリップ73及び内側アキシアルリップ74の先端部には、当該先端部の外縁に沿って周方向に延びる円環状の膨出部10・10が、各々設けられている。
なお、これらの膨出部10・10は、互いに略同等の構成からなるため、以下の説明においては、主に外側アキシアルリップ73に設けられる膨出部10について記載し、内側アキシアルリップ74に設けられる膨出部10についての記載は省略する。
膨出部10は、図2に示すように、周方向断面視において、段差部31に設けられた摺動面としての平面部31aに向かって、円弧状に膨出するように形成される。
また、膨出部10における上記摺動面(平面部31a)と対向する曲面10aには、周方向に連続して延びる環状溝部11が形成されている(図3(a)(b)を参照)。
なお、膨出部10の曲率半径R1については特に限定されないが、例えば、摺動面である円弧面部31cと接触する内側アキシアルリップ74の先端部に、膨出部10が設けられる場合であっても、後述するように、当該膨出部10の曲面10aと、円弧面部31cとが線接触の状態となるように、膨出部10の曲率半径R1は、円弧面部31cの曲率半径R2以下であることが望ましい(R1<R2)。
環状溝部11は、膨出部10の周方向断面視において、曲面10aの円弧形状に沿って連続する複数の凹凸形状により構成される。
具体的には、環状溝部11は、周方向断面視にて略三角形状に形成された、複数の円環状の突起部11a・11a・・・が、同軸上に、且つ曲面10aに沿って径方向に連続するように配置された構成からなる。
換言すると、互いに隣接する突条部11a・11a間には、周方向断面視にて略逆三角形状の溝部11bが形成されることとなり、環状溝部11は、凸部を構成する複数の突条部11a・11a・・・と、凹部を構成する複数の溝部11b・11b・・・とが、曲面10aに沿って径方向に交互に連続するように配置された構成からなる。
なお、各突起部11aの形状については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、周方向断面視にて略台形状、略略矩形状、または略円弧状等に形成されていてもよい。
ここで、外側アキシアルリップ73の先端部に対して、例えば、径方向外側に向かって屈曲させようとする過大な外力が付加された場合、環状溝部11には応力集中が生じるため、必要以上の形成範囲に環状溝部11を設けることは、外側アキシアルリップ73の剛性を低下させる要因となり得る。
そこで、本実施形態においては、予め検証実験を行い、このような過大な外力が付加された場合であっても、十分な剛性を確保することが可能な形成範囲を導き出し、その結果に基づき、当該形成範囲内に環状溝部11が形成されることとしている。
即ち、本実施形態においては、環状溝部11における径方向の幅寸法Pと、外側アキシアルリップ73の基端から先端に亘る径方向のリップ長さLとが、P≦(3/4)×Lを満たすように設定されている。
これにより、例えば、外部の大気圧との差圧によって、外側アキシアルリップ73の先端部が、段差部31に設けられた摺動面(平面部31a)に張り付くように接触する場合などのように、径方向外側に向かって外側アキシアルリップ73の先端部を屈曲させようとする過大な外力が付加されたとしても、外側アキシアルリップ73は、十分な剛性を確保することができる。
また、各溝部11bの深さ寸法Hについても同様に、予め検証実験を行い、十分な油膜効果を得るために最低限必要となるグリースZの所定量を予め導き出し、その結果に基づき、当該所定量のグリースZを捕集することが可能な寸法に設定されている。
即ち、本実施形態においては、環状溝部11における互いに隣接する突起部11a及び溝部11bにおいて、突起部11aの突先に対する、溝部11bの底面の深さ寸法Hは、1mm以下となるように設定されている。つまり、溝部11bの深さ寸法Hは環状溝部11の深さ寸法であり、環状溝部11の深さ寸法は1mm以下に設定されている。
このような構成を有することにより、例えば、外側アキシアルリップ73の先端部と、段差部31に設けられた摺動面(平面部31a)との間に封入されるグリースZが、当該先端部を通過して外側アキシアルリップ73の外部に押出されたとしても、複数の溝部11b・11b・・・を介して、所定量のグリースZを捕集することが可能であり、少なくとも必要最低限度の油膜効果を得ることができる。
なお、各溝部11bの深さ寸法Hを大きく設定すればするほど、外側アキシアルリップ73の先端部を径方向外側に向かって屈曲させようとする過大な外力に対して、剛性が低下する虞があるところ、各溝部11bの深さ寸法Hは、1mmを超えないことから、このような外力に対しても、十分な剛性を確保することができる。
このように、本実施形態においては、外側アキシアルリップ73の先端部に、周方向断面視にて円弧状に膨出する膨出部10が形成されており、当該膨出部10を介して、外側アキシアルリップ73は、上記摺動面(平面部31a)と当接される。
微視的には、膨出部10の曲面10a上における、上記摺動面(平面部31a)と線接触する頂点X1に位置した突起部11a(図2中の突起部11a1)を介して、外側アキシアルリップ73は、上記摺動面(平面部31a)と当接される。
そして、例えば、外部の大気圧との差圧によって、先端部が上記摺動面(平面部31a)に張り付くように変形された場合には、曲面10a上における上記摺動面(平面部31a)との接触箇所は、頂点X1に対して径方向内側に位置する頂点X2、頂点X3・・・と順に変移することとなり、外側アキシアルリップ73は、常に先端部に設けられる突起部11aを介して、上記摺動面(平面部31a)と当接される。
従って、例えば図5(b)に示すように、従来の外側アキシアルリップ173のような、外部の大気圧との差圧による変形によって、当該外側アキシアルリップ173の先端部と、ハブ輪103の摺動面(平面部131a)との接触面積が増大することもなく、本実施形態の外側アキシアルリップ73によれば、車輪(図示せず)に接続されるハブ輪3を回転させる際のトルクの増大を、抑制することができる。
また、図5(a)に示すように、従来の外側アキシアルリップ173では、車輪用軸受装置101にシール部材107が装着された状態において、基端から最も離れた外縁上の頂点Yに緊迫力(外側アキシアルリップ173の先端を摺動面である平面部131aに押付ける力)が集中するため、シール部材107とハブ輪103との相対回転による、外側アキシアルリップ173の先端部における摩耗が促進されることとなる。
しかしながら、図2に示すように、本実施形態においては、例えば、外側アキシアルリップ73の先端部が、頂点X1に位置した突起部11a(突起部11a1)を介して上記摺動面(平面部31a)と当接された状態において、当該突起部11a(突起部11a1)の摩耗が進むと、続いて、頂点X2に位置した突起部11a(図2中の突起部11a2)、頂点X3に位置した突起部11a(図2中の突起部11a3)・・・、と順に介して、上記摺動面(平面部31a)と当接されることとなる。
つまり、本実施形態においては、たとえ外側アキシアルリップ73の先端部に摩耗が発生したとしても、曲面10aに沿って径方向に連続する複数の突起部11a・11a・・・によって、シール機能(密封性)を再生可能な構成となっている。
このようなことから、本実施形態においては、上記緊迫力を複数の突起部11a・11a・・・に分散して付加させることができるため、アウター側シール部材7とハブ輪3との相対回転による、外側アキシアルリップ73の先端部における摩耗を緩和することが可能である。
また、車輪用軸受装置1に装着された時点における、アウター側シール部材7の初期的な密封性の確保、並びに摩耗が進行した場合における、当該密封性の維持・確保を実現することが可能である。
以上のように、本実施形態における車輪用軸受装置1において、シールリップ72b・72b(より具体的には、外側アキシアルリップ73及び内側アキシアルリップ74)の先端部には、周方向断面視にて、内方部材であるハブ輪3が有する摺動面、即ち平面部31a及び軸周面部31bに向かって各々円弧状に膨出する膨出部10・10が設けられている。
また、各膨出部10は、外側アキシアルリップ73(または内側アキシアルリップ74)の先端部の外縁に沿って円環状に設けられ、その曲面10a(摺動面と対向する面)には、当該曲面10aに沿って連続する複数の凹凸形状(突起部11aおよび溝部11b)からなり、且つ周方向に連続する環状溝部11が形成されている。
そして、外側アキシアルリップ73(または内側アキシアルリップ74)の先端部は、膨出部10を介して上記摺動面(平面部31aまたは軸周面部31b)と接触しており、微視的には、周方向断面視にて円弧状の環状溝部11を構成する複数の凹凸形状のうち、膨出部10の頂点(例えば、頂点X1)に位置する凸部(例えば、突起部11a1)を介して上記摺動面と当接している。
従って、上記突起部11a1が摩耗等によって消滅したとしても、直ちに外側アキシアルリップ73(または内側アキシアルリップ74)の先端部全面が上記摺動面と接触することはなく、膨出部10の一部分(突起部11a1が設けられていた部分)のみが上記摺動面と接触することとなるため、従来のように、外側アキシアルリップ73(または内側アキシアルリップ74)の先端部全面において著しく摩耗が進むのを抑制することができる。
また、上記突起部11a1が摩耗等によって消滅した後には、当該突起部11a1と隣接する新たな凸部(例えば、頂点X2に位置する突起部11a2)が、引き続き上記摺動面と接触することとなる。
このような構成を有することにより、車輪用軸受装置1に装着された時点における、アウター側シール部材7の初期的な密封性の確保、並びに摩耗が進行した場合における、当該密封性の維持・確保を実現することが可能である。
また、当該突起部11a2と隣接する凹部(溝部11b)を介して、所定量のグリースZを捕集することが可能であるため、このような作用を継続することにより、少なくとも必要最低限度の油膜効果を、比較的長期間に亘って維持することができる。
なお、本実施形態においては、外側アキシアルリップ73及び内側アキシアルリップ74の先端部のみに、膨出部10・10が設けられているが、これに限定されることはなく、例えば、シールリップ72bの他の一例である、ラジアルリップ75の先端部に、摺動面である軸周面部31bに向かって膨出する膨出部が設けられていてもよい。
[車輪用軸受装置201(第2実施形態)の構成]
次に、第2実施形態における車輪用軸受装置201の構成について、図1及び図4(a)を用いて説明する。
図1において、第2実施形態における車輪用軸受装置201は、前述した第1実施形態における車輪用軸受装置1と略同等な構成を有する一方、主に、アウター側シール部材207の構成が、堰部276(図4(a)を参照)を備えるタイプである点について、車輪用軸受装置1と相違する。
よって、以下の説明においては、主に前述した車輪用軸受装置1との相違点について記載し、当該車輪用軸受装置1と同等な構成についての記載は省略する。
図4(a)に示すように、アウター側シール部材207は、外輪2に嵌合される芯金271、及び当該芯金271に接合された弾性体からなるシール体272等を有する。
芯金271は、主に円筒部271a、屈曲部271b、円板部271c、及び鍔部271d等により構成される。
なお、芯金271の材質については、前述した車輪用軸受装置1におけるアウター側シール部材7の芯金71と同等であるため、説明は省略する。
円筒部271aは、外輪2のアウター側(図1を参照)の端部からインナー側(同じく、図1を参照)に向かって延出し、その外径は、外輪2のアウター側開口部2bの内径と略同等に設定されている。
また、屈曲部271bは、円筒部271aのインナー側の端部より、径方向内側に向かって一旦屈曲するとともに、アウター側に向かって上記円筒部271aの軸方向中途部にまで延出している。
さらに、円板部271cは、屈曲部271bのアウター側の端部より、径方向内側に向かってハブ輪3の外周近傍にまで延出している。
また、鍔部271dは、円筒部271aのアウター側の端部より、径方向外側に向かって延出している。
なお、鍔部271dの径方向外側の端部は、外輪2のアウター側の端部における外周面に比べて径方向外側に位置し、当該鍔部271dの径方向外側の端部には、上記外周面に対して所定の隙間を有しつつ、インナー側に向かって延出する外縁部271eが設けられている。
一方、シール体272は、芯金271の円板部271cに設けられる複数のシールリップ272b・272b・272bや、芯金271の外縁部271eに設けられる堰部276などを有し、これら複数のシールリップ272b・272b・272bは、外側アキシアルリップ273、内側アキシアルリップ274、及びラジアルリップ275により構成されている。
なお、シール体272の材質については、前述した車輪用軸受装置1におけるアウター側シール部材7のシール体72と同等であるため、説明は省略する。
外側アキシアルリップ273は、アウター側且つ径方向外側に向かって延出するように形成されている。
また、内側アキシアルリップ274は、外側アキシアルリップ273に対して径方向内側に設けられ、アウター側に向かって延出するように形成されている。
さらに、ラジアルリップ275は、内側アキシアルリップ274に対して径方向内側に設けられ、インナー側且つ径方向内側に向かって延出するように形成されている。
そして、これらの外側アキシアルリップ273、内側アキシアルリップ274、及びラジアルリップ275は、互いに同軸上に配置され、ハブ輪3に設けられた摺動面(平面部31a、軸周面部31b、及び円弧面部31c)に対して、それぞれ摺接されている。
堰部276は、周方向断面視にて略矩形状に設けられ、外輪2のアウター側の端部において、外周面と接触しつつ、径方向外側に突出するように配置されている。
また、堰部276は、芯金271において、鍔部271dの径方向外側の端部、及び外縁部271eを覆うようにして設けられている。
以上のような構成からなるアウター側シール部材207において、シールリップ272bの一例である外側アキシアルリップ273及び内側アキシアルリップ274の先端部には、当該先端部の外縁に沿った円環状の膨出部210・210が、各々設けられている。
また、各膨出部210の曲面210aには、周方向に連続する環状溝部(図示せず)が形成されている。
なお、膨出部210及び環状溝部の構成については、前述した車輪用軸受装置1における膨出部10及び環状溝部11と各々同等であるため、説明は省略する。
このような構成からなる、第2実施形態におけるアウター側シール部材207によっても、前述した車輪用軸受装置1におけるアウター側シール部材7と同様に、従来のように、外側アキシアルリップ273(または内側アキシアルリップ274)の先端部全面において著しく摩耗が進むのを抑制することができる。
また、車輪用軸受装置201に装着された時点における、アウター側シール部材207の初期的な密封性の確保、並びに摩耗が進行した場合における、当該密封性の維持・確保を実現することが可能である。
さらに、外側アキシアルリップ273(または内側アキシアルリップ274)の先端部において、摩耗の進行に応じて、上記環状溝部を構成する複数の溝部(図示せず)を介して、所定量のグリースZを捕集することが可能であるため、このような作用を継続することにより、少なくとも必要最低限度の油膜効果を、比較的長期間に亘って維持することができる。
[車輪用軸受装置301(第3実施形態)の構成]
次に、第3実施形態における車輪用軸受装置301の構成について、図1及び図4(b)を用いて説明する。
図1において、第3実施形態における車輪用軸受装置301は、前述した第1実施形態における車輪用軸受装置1と略同等な構成を有する一方、主に、インナー側シール部材306におけるシールリップ306a1の先端部に、膨出部310が設けられている点について、車輪用軸受装置1と相違する。
よって、以下の説明においては、主に前述した車輪用軸受装置1との相違点について記載し、当該車輪用軸受装置1と同等な構成についての記載は省略する。
図4(b)に示すように、インナー側シール部材306は、略円筒状のシール板306a、及び略円筒状のスリンガ306b等を備える。
なお、シール板306a及びスリンガ306bの主な構成については、前述した車輪用軸受装置1におけるシール板6a及びスリンガ6bと同等であるため、説明は省略する。
シールリップ306a1は、各々円環状に形成され、同軸上に配置される外側アキシアルリップ373、内側アキシアルリップ374、及びラジアルリップ375により構成される。
外側アキシアルリップ373は、周方向断面視において、径方向外側に傾斜して軸方向のインナー側(図1を参照)に延びるように形成されている。
また、内側アキシアルリップ374は、外側アキシアルリップ373の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向外側に傾斜して軸方向のインナー側に延びるように形成されている。
さらに、ラジアルリップ375は、内側アキシアルリップ374の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向内側に傾斜して軸方向のアウター側(図1を参照)に延びるように形成されている。
そして、外側アキシアルリップ373及び内側アキシアルリップ374は、それぞれ先端部において、内方部材である内輪4が有する摺動面、即ちスリンガ306bのアウター側の平面に摺接される。
また、ラジアルリップ375は、先端部において、内方部材である内輪4が有する摺動面、即ちスリンガ306bの外周面に摺接される。
以上のような構成からなるインナー側シール部材306において、シールリップ306a1の一例である外側アキシアルリップ373及び内側アキシアルリップ374の先端部には、当該先端部の外縁に沿った円環状の膨出部310・310が、各々設けられている。
また、各膨出部310の曲面310aには、周方向に連続する環状溝部(図示せず)が形成されている。
なお、膨出部310及び環状溝部の構成については、前述した車輪用軸受装置1における膨出部10及び環状溝部11と各々同等であるため、説明は省略する。
このような構成からなる、第3実施形態におけるインナー側シール部材306によっても、前述した車輪用軸受装置1におけるアウター側シール部材7と同様に、従来のように、外側アキシアルリップ373(または内側アキシアルリップ374)の先端部全面において著しく摩耗が進むのを抑制することができる。
また、車輪用軸受装置301に装着された時点における、インナー側シール部材306の初期的な密封性の確保、並びに摩耗が進行した場合における、当該密封性の維持・確保を実現することが可能である。
さらに、外側アキシアルリップ373(または内側アキシアルリップ374)の先端部において、摩耗の進行に応じて、上記環状溝部を構成する複数の溝部(図示せず)を介して、所定量のグリースZを捕集することが可能であるため、このような作用を継続することにより、少なくとも必要最低限度の油膜効果を、比較的長期間に亘って維持することができる。
[車輪用軸受装置401(第4実施形態)の構成]
次に、第4実施形態における車輪用軸受装置401の構成について、図1及び図4(c)を用いて説明する。
図1において、第4実施形態における車輪用軸受装置401は、前述した第1実施形態における車輪用軸受装置1と略同等な構成を有する一方、主に、ラビリンス構造からなる、インナー側シール部材406におけるシールリップ406a1の先端部に、膨出部410が設けられている点について、車輪用軸受装置1と相違する。
よって、以下の説明においては、主に前述した車輪用軸受装置1との相違点について記載し、当該車輪用軸受装置1と同等な構成についての記載は省略する。
図4(c)に示すように、インナー側シール部材406は、略円筒状のシール板406a、及び略円筒状のスリンガ406b等を備える。
なお、シール板406a及びスリンガ406bの主な構成については、前述した車輪用軸受装置1におけるシール板6a及びスリンガ6bと同等であるため、説明は省略する。
シールリップ406a1は、各々円環状に形成され、同軸上に配置されるアキシアルリップ473、ラジアルリップ474、及びグリスリップ475により構成される。
アキシアルリップ473は、周方向断面視において、径方向外側に傾斜して軸方向のインナー側(図1を参照)に延びるように形成されている。
また、ラジアルリップ474は、アキシアルリップ473の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向内側に傾斜して軸方向のインナー側に延びるように形成されている。
さらに、グリスリップ475は、アキシアルリップ473の径方向内側に位置し、且つ周方向断面視において、径方向内側に傾斜して軸方向のアウター側(図1を参照)に延びるように形成されている。
なお、ラジアルリップ474は、剛性の向上を目的として、先端に向かうにつれて肉厚が増加するように設定されている。
そして、アキシアルリップ473は、先端部において、内方部材である内輪4が有する摺動面、即ちスリンガ406bのアウター側の平面に摺接される。
また、ラジアルリップ474及びグリスリップ475は、先端部において、内方部材である内輪4が有する摺動面、即ちスリンガ406bの外周面に摺接される。
以上のような構成からなるインナー側シール部材406において、シールリップ406a1の一例であるアキシアルリップ473及びラジアルリップ474の先端部には、当該先端部の外縁に沿った円環状の膨出部410・410が、各々設けられている。
また、各膨出部410の曲面410aには、周方向に連続する環状溝部(図示せず)が形成されている。
なお、膨出部410及び環状溝部の構成については、前述した車輪用軸受装置1における膨出部10及び環状溝部11と各々同等であるため、説明は省略する。
このような構成からなる、第4実施形態におけるインナー側シール部材406によっても、前述した車輪用軸受装置1におけるアウター側シール部材7と同様に、従来のように、アキシアルリップ473(またはラジアルリップ474)の先端部全面において著しく摩耗が進むのを抑制することができる。
また、車輪用軸受装置401に装着された時点における、インナー側シール部材406の初期的な密封性の確保、並びに摩耗が進行した場合における、当該密封性の維持・確保を実現することが可能である。
さらに、アキシアルリップ473(またはラジアルリップ474)の先端部において、摩耗の進行に応じて、上記環状溝部を構成する複数の溝部(図示せず)を介して、所定量のグリースZを捕集することが可能であるため、このような作用を継続することにより、少なくとも必要最低限度の油膜効果を、比較的長期間に亘って維持することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内のすべての変更を含む。
1、201、301、401 車輪用軸受装置
2c 外側軌道面
2 外輪(外方部材)
3 ハブ輪(内方部材)
3a 小径段部
3d、4a 内側軌道面
4 内輪(内方部材)
5 ボール列
6 インナー側シール部材(シール部材)
7 アウター側シール部材(シール部材)
10、210、310、410 膨出部
10a、210a、310a、410a 曲面
11 環状溝部
11a 突起部(凸部)
11b 溝部(凹部)
31a 平面部(摺動面)
31b 軸周面部(摺動面)
31c 円弧面部(摺動面)
71、271 芯金
72、272 シール体
72b、272b、306a1、406a1 シールリップ
306b スリンガ(摺動面)
406b スリンガ(摺動面)
H 溝部の深さ寸法
L シールリップの基端から先端に亘る径方向のリップ長さ
P 環状溝部における径方向の幅寸法
Q2 環状空間

Claims (3)

  1. 内周に複列の外側軌道面を有する外方部材と、
    外周において軸方向に延びる小径段部を有するハブ輪、及び当該ハブ輪の前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側軌道面と対向する複列の内側軌道面を有する内方部材と、
    前記外方部材及び前記内方部材の各々の軌道面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
    前記外方部材及び前記内方部材によって形成された環状空間の開口端を塞ぐシール部材とを備える車輪用軸受装置において、
    前記シール部材は、
    前記外方部材に嵌合される芯金と、
    前記芯金に接合された弾性体からなるシール体と備え、
    前記シール体は、軸方向に延び、その先端部にて前記内方部材が有する摺動面と摺動可能に接触するシールリップを有し、
    前記シールリップの前記先端部には、周方向断面視にて前記摺動面に向かって円弧状に膨出し、周方向に延びる円環状の膨出部が設けられ、
    前記膨出部の前記摺動面と対向する曲面には、周方向断面視にて、前記曲面の円弧形状に沿って連続する複数の凹凸形状からなり、且つ周方向に連続して延びる環状溝部が形成される、
    ことを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記環状溝部における径方向の幅寸法Pと、前記シールリップの基端から先端に亘る径方向のリップ長さLとが、P≦(3/4)×Lを満たす、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記環状溝部の深さ寸法Hは1mm以下である、
    ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車輪用軸受装置。
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