JP2022168743A - 基板処理方法、および、基板処理装置 - Google Patents

基板処理方法、および、基板処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる基板処理方法、および、基板処理装置を提供する。【解決手段】酸化層が露出する主面を有する基板が準備される(基板準備工程)。酸性ポリマーを含有するポリマー膜が前記基板の主面に形成される(ポリマー膜形成工程)。酸性ポリマーに対して親和性を有する処理液のミストおよび蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体が、基板の主面に形成されているポリマー膜に供給される。処理流体供給工程の後、基板の主面に向けてリンス液が供給される(リンス工程)。【選択図】図5

Description

この発明は、基板を処理する基板処理方法、および、基板を処理する基板処理装置に関する。
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
下記特許文献1では、過酸化水素水(H水)等の酸化流体を基板に供給して酸化金属層を形成する工程と、希フッ酸(DHF)等のエッチング液を基板に供給して酸化金属層を除去する工程とを繰り返すことで所望のエッチング量を達成する基板処理が開示されている。
特開2020-155615号公報
特許文献1の基板処理では、酸化金属層の形成および酸化金属層の除去を繰り返すことで酸化金属層をエッチングするので、多量の酸化金属層を一度に除去する場合と比較して、酸化金属層を精度良くエッチングできる。
しかしながら、特許文献1の基板処理では、酸化金属層の形成および除去において、それぞれ、連続流の希フッ酸および過酸化水素水による処理が採用されている。そのため、基板処理において、希フッ酸、過酸化水素水等の薬液を多量に使用する必要があるため、環境負荷が問題となる。
そこで、この発明の1つの目的は、基板のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる基板処理方法、および、基板処理装置を提供することである。
この発明の一実施形態は、酸化層が露出する主面を有する基板を準備する基板準備工程と、酸性ポリマーを含有するポリマー膜を前記基板の主面上に形成するポリマー膜形成工程と、前記酸性ポリマーに対して親和性を有する処理液のミストおよび前記処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体を、前記基板の主面上に形成されている前記ポリマー膜に供給する処理流体供給工程と、前記処理流体供給工程の後、前記基板の主面に向けてリンス液を供給するリンス工程とを含む、基板処理方法を提供する。
この方法によれば、基板の主面上にポリマー膜が形成される。そのため、基板がエッチングされて、基板から酸化層が除去される。その際、処理液のミストおよび処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体がポリマー膜に供給される。ポリマー膜が処理流体に接触することによって、処理液の微小な液滴がポリマー膜の表面に付着する。そのため、ポリマー膜を基板の主面上に維持しつつ、ポリマー膜に適度に処理液を供給することができる。処理液は、酸性ポリマーに対する親和性を有するため、処理液がポリマー膜の内部に入り込む。これにより、酸性ポリマーのプロトン(水素イオン)の放出を促進することができる。すなわち、基板のエッチングを促進できる。その後、リンス液によって基板の主面を洗浄することで基板の主面からポリマー膜が除去されるので、基板のエッチングを停止することができる。
基板のエッチングに用いられるポリマー膜は、酸性ポリマーを含有するため、フッ酸等の液体よりも粘度が高い。そのため、ポリマー膜は、基板の主面上に留まりやすい。そのため、基板をエッチングする間の全期間において基板の主面に酸性ポリマーを連続的に供給する必要がない。言い換えると、少なくともポリマー膜を形成した後においては、酸性ポリマーを基板の主面に追加的に供給する必要がない。したがって、環境負荷を低減できる。
この発明の一実施形態では、前記基板準備工程が、前記基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する酸化層形成工程を含む。
この方法によれば、基板の主面の表層部を酸化することで、表層部に酸化層が形成された基板が準備される。したがって、主面の表層部に酸化層が形成されていない基板を用いて基板処理を開始することができる。
酸化層は、たとえば、ウェット酸化処理またはドライ酸化処理によって形成することができる。ウェット酸化処理は、たとえば、液状酸化剤を基板の主面に供給する処理である。ドライ酸化処理は、たとえば、光照射、加熱、および、ガス状酸化剤の供給の少なくともいずれかによって、酸化層を形成する処理である。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記リンス工程の後、前記基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する再形成工程をさらに含む。前記リンス工程の後、前記再形成工程、前記ポリマー膜形成工程、前記処理流体供給工程および前記リンス工程がこの順番で少なくとも1回ずつ実行される。
この方法によれば、酸化層の形成および除去が交互に繰り返される。そのため、基板を精度良くエッチングできる。
この発明の一実施形態では、前記ポリマー膜形成工程において形成される前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有する。前記基板処理方法が、前記処理流体供給工程の開始に、前記ポリマー膜を加熱するポリマー膜加熱工程をさらに含む。
この方法によれば、酸性ポリマーとともにアルカリ成分がポリマー膜に含有されている。そのため、ポリマー膜が形成された後、ポリマー膜が加熱されるまでの間、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されており、ほぼ失活している。そのため、ポリマー膜が形成された後、ポリマー膜が加熱されるまでの間、酸化層の除去はほとんど開始されない。ポリマー膜を加熱してアルカリ成分を蒸発させることによって、ポリマー膜中の酸性ポリマーが活性を取り戻す。そのため、基板のエッチングの開始のタイミングを制御しやすい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有するポリマー含有液を前記基板の主面に供給するポリマー含有液供給工程をさらに含む。前記ポリマー膜形成工程が、前記基板の主面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成する工程を含む。
この方法によれば、基板に供給されたポリマー含有液から溶媒を蒸発させることによって、ポリマー膜を形成することができる。そのため、溶媒の蒸発によってポリマー膜中の酸性ポリマーの濃度(密度)を高めることができる。したがって、高濃度(高密度)の酸性ポリマーによって基板を速やかにエッチングすることができる。
この発明の一実施形態では、前記溶媒が、前記処理液と混和する液体である。
ポリマー膜は、ポリマー含有液から溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって形成されるため、ポリマー膜には溶媒が残留する場合がある。溶媒が処理液と混和する液体であれば、ポリマー膜が処理流体に接触することによってポリマー膜に付着する処理液が、ポリマー膜に残留する溶媒と混ざり合う。そのため、処理液がポリマー膜の内部に入り込みやすい。そのため、基板のエッチングを促進できる。
この発明の一実施形態では、前記処理液が水である。処理流体の湿度が、50%よりも高く、100%以下であれば、ポリマー膜に液体状態の水を適度に供給できる。
処理流体の湿度は、80%以上で、かつ、100%以下であることが一層好ましい。処理流体の湿度が80%以上で、かつ、100%以下であれば、液体状態の水をポリマー膜に充分に供給することができる。
処理流体の湿度は、85%以上で、かつ、95%以下であることがより一層好ましい。処理流体の湿度が85%以上で、かつ、95%以下であれば、液体状態の水をポリマー膜に充分に供給しつつ、ポリマー膜への液体状態の水の供給量を制御しやすい。
この発明の一実施形態では、前記基板処理方法が、前記基板の主面に対向する対向面、および、前記対向面で開口し前記処理流体を吐出する吐出口を有する対向部材を配置する対向部材配置工程をさらに含む。前記処理流体供給工程が、前記吐出口から前記処理流体を吐出させることで、前記対向面と前記基板の主面との間の空間に前記処理流体を供給する工程を含む。
この方法によれば、対向部材に設けられた吐出口から処理流体が吐出される。そのため基板が配置される空間の全体を処理流体で置換する構成と比較して、対向面と基板の主面との間の空間の雰囲気を処理流体で速やかに置換することができる。
この発明の一実施形態では、前記処理流体供給工程が、前記基板の主面上の前記ポリマー膜に接する空間に向けて、処理流体ノズルから前記処理流体を吐出させながら、前記処理流体ノズルを前記基板の主面に沿って移動させる工程を含む。
この方法によれば、処理流体ノズルは、基板の主面に沿って移動しながら、基板の主面上のポリマー膜に接する空間に向けて処理流体を吐出する。したがって、基板の主面に接する空間の一部のみに向けて処理流体を供給する場合と比較して、基板の主面上のポリマー膜の全体に速やかに処理流体を供給することができる。
この発明の他の実施形態は、酸性ポリマーを含有するポリマー膜を基板の主面上に形成するポリマー膜形成ユニットと、前記酸性ポリマーに対して親和性を有する処理液のミストおよび前記処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体を、前記基板の主面に向けて供給する処理流体供給ユニットと、前記基板の主面に向けてリンス液を供給するリンス液供給ユニットとを含む、基板処理装置を提供する。
この構成によれば、ポリマー膜形成ユニットによって、基板の主面上にポリマー膜を形成できる。基板の主面上にポリマー膜を形成することによって、基板がエッチングされて、基板から酸化層が除去される。
また、基板の主面上にポリマー膜が形成された状態で、処理液のミストおよび蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体を処理流体供給ユニットから基板の主面に向けて供給することができる。ポリマー膜が処理流体に接触することによって、処理液の微小な液滴がポリマー膜の表面に付着する。そのため、ポリマー膜を基板の主面上に維持しつつ、ポリマー膜に適度に処理液を供給することができる。処理液は、酸性ポリマーに対する親和性を有するため、処理液がポリマー膜の内部に入り込む。これにより、酸性ポリマーのプロトン(水素イオン)の放出を促進することができる。すなわち、基板のエッチングを促進できる。
ポリマー膜によって基板がエッチングされた後、リンス液供給ユニットから基板の主面に向けてリンス液を供給すれば、基板の主面が洗浄されて基板の主面からポリマー膜が除去される。そのため、ポリマー膜の形成によって基板のエッチングを開始でき、基板の主面からポリマー膜を除去して、基板のエッチングを停止できる。
したがって、ポリマー膜の形成および除去によって基板のエッチング量を調整できるので、基板を良好にエッチングすることができる。
基板のエッチングに用いられるポリマー膜は、酸性ポリマーを含有するため、フッ酸等の液体よりも粘度が高い。そのため、ポリマー膜は、基板の主面上に留まりやすい。そのため、基板をエッチングする間の全期間において基板の主面に酸性ポリマーを連続的に供給する必要がない。言い換えると、少なくともポリマー膜を形成した後においては、酸性ポリマーを基板の主面に追加的に供給する必要がない。したがって、環境負荷を低減できる。
この発明の他の実施形態では、前記基板処理装置が、前記基板の主面の中心部を通る回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットをさらに含む。そして、前記ポリマー膜形成ユニットが、溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有し前記溶媒の蒸発によって前記ポリマー膜を形成するポリマー含有液を前記基板の主面に向けて吐出するポリマー含有液ノズルを含む。
この構成によれば、ポリマー含有液ノズルからポリマー含有液を吐出して基板の主面にポリマー含有液を供給しながら、または、基板の主面にポリマー含有液を供給した後に、基板回転ユニットによって基板を回転させることができる。それによって、基板の主面のほぼ全域にポリマー含有液を広げると同時に、ポリマー含有液からの溶媒の蒸発を促進させてポリマー膜を形成することができる。そのため、溶媒の蒸発によってポリマー膜中の酸性ポリマーの濃度(密度)を高めることができる。したがって、高濃度(高密度)の酸性ポリマーによって基板を速やかにエッチングすることができる。
この発明の他の実施形態では、前記溶媒が、前記処理液と混和する液体である。
ポリマー膜は、ポリマー含有液から溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって形成されるため、ポリマー膜には溶媒が残留する場合がある。溶媒が処理液と混和する液体であれば、ポリマー膜が処理流体に接触することによってポリマー膜に付着する処理液が、ポリマー膜に残留する溶媒と混ざり合う。そのため、処理液がポリマー膜の内部に入り込みやすい。そのため、基板のエッチングを促進できる。
この発明の他の実施形態では、前記ポリマー膜形成ユニットによって形成される前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有する。前記基板処理装置が、前記基板を介して前記ポリマー膜を加熱する加熱ユニットをさらに含む。
この装置によれば、酸性ポリマーとともにアルカリ成分がポリマー膜に含有されている。そのため、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されており、ほぼ失活しており、酸化層の除去はほとんど開始されない。
加熱ユニットによって、基板を介してポリマー膜を加熱することで、アルカリ成分を蒸発させることができる。これにより、ポリマー膜中の酸性ポリマーが活性を取り戻す。そのため、基板のエッチングの開始のタイミングを制御しやすい。
この発明の他の実施形態では、前記処理流体供給ユニットが、前記基板の主面に対向する対向面と、前記対向面で開口し前記基板の主面に向けて前記処理流体を吐出する吐出口とを有する対向部材を含む。
この構成によれば、対向部材に設けられた吐出口から処理流体を吐出させることができる。そのため基板が配置される空間の全体を処理流体で置換する構成と比較して、対向面と基板の主面との間の空間の雰囲気を処理流体で速やかに置換することができる。
この発明の他の実施形態では、記処理液が水である。前記基板処理装置が、前記処理流体の湿度を調整する加湿ユニットと、前記加湿ユニットによって湿度が調整された前記処理流体を前記吐出口に供給する供給経路と、前記供給経路を通過する前記処理流体の湿度を測定する湿度測定ユニットとをさらに含む。
そのため、湿度測定ユニットによって測定される湿度に基づいて、湿度調整ユニットによって、供給経路を通過する処理流体の湿度を調整することができる。これにより、供給経路を通過する処理流体の湿度、すなわち、吐出口から吐出される処理流体の湿度が所望の湿度となるよう処理流体の湿度を調整できる。その結果、対向面と基板の主面との間の空間の雰囲気の湿度を、ポリマー膜による基板のエッチングを効果的に促進できる湿度に調整ことができる。
この発明の他の実施形態では、前記処理流体供給ユニットが、前記基板の主面に向けて、前記処理流体を吐出し、前記基板の主面に沿って移動可能な処理流体ノズルを含む。
この方法によれば、処理流体ノズルは、基板の主面に沿って移動しながら、基板の主面に接する空間に向けて処理流体を吐出する。したがって、基板の主面に接する空間の一部のみに向けて処理流体を供給する場合と比較して、基板の主面上のポリマー膜の広範囲に速やかに処理流体を供給することができる。
この発明の他の実施形態では、前記処理液が水である。前記基板処理装置が、前記処理流体の湿度を調整する加湿ユニットと、前記加湿ユニットによって湿度が調整された前記処理流体を前記処理流体ノズルの吐出口に供給する供給経路と、前記供給経路を通過する前記処理流体の湿度を測定する湿度測定ユニットとをさらに含む。
そのため、湿度測定ユニットによって測定される湿度に基づいて、湿度調整ユニットによって、供給経路を通過する処理流体の湿度を調整することができる。これにより、供給経路を通過する処理流体の湿度、すなわち、処理流体ノズルの吐出口から吐出される処理流体の湿度が所望の湿度となるよう処理流体の湿度を調整できる。その結果、基板の主面上のポリマー膜に接する雰囲気の湿度を、ポリマー膜による基板のエッチングを効果的に促進できる湿度に調整ことができる。
図1は、処理対象となる基板の表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。 図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。 図2Bは、前記基板処理装置の構成を説明するための立面図である。 図3は、前記基板処理装置に備えられるウェット処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。 図4は、前記基板処理装置の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。 図5は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。 図6Aは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Bは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Cは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Dは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Eは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Fは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Gは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図6Hは、前記基板処理が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図7は、前記基板処理における基板の上面の表層部の変化について説明するための模式図である。 図8は、ポリマー膜が形成されているときの基板の表層部の構造を説明するための模式図である。 図9Aは、低分子量エッチング成分によって構成されるエッチング液によって結晶粒界における酸化層がエッチングされる様子について説明するための模式図である。 図9Bは、ポリマー膜によって結晶粒界における酸化層がエッチングされる様子について説明するための模式図である。 図10は、前記基板処理装置における基板に対するポリマー含有液の供給方法の第1例について説明するための模式図である。 図11は、前記基板処理装置における基板に対するポリマー含有液の供給方法の第2例について説明するための模式図である。 図12は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第1変形例を説明するための流れ図である。 図13は、前記基板処理において酸化層の形成と酸化層の除去とが交互に繰り返されることによる基板の上面の表層部の変化について説明するための模式図である。 図14は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第2変形例を説明するための流れ図である。 図15は、前記基板処理の第2変形例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図16は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第3変形例を説明するための流れ図である。 図17は、前記基板処理の第3変形例が行われているときの基板の様子を説明するための模式図である。 図18は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第4変形例を説明するための流れ図である。 図19は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第5変形例を説明するための流れ図である。 図20は、前記基板処理装置によって実行される基板処理の第6変形例を説明するための流れ図である。 図21は、前記ウェット処理ユニットに備えられる基板加熱ユニットの変形例について説明するための模式図である。 図22は、前記ウェット処理ユニットに備えられる対向部材の変形例について説明するための模式図である。 図23は、前記ウェット処理ユニットに備えられる処理流体ノズルの第1変形例について説明するための模式図である。 図24は、前記ウェット処理ユニットに備えられる処理流体ノズルの第2変形例について説明するための模式図である。 図25は、前記ウェット処理ユニットに備えられる処理流体ノズルの第3変形例について説明するための模式図である。 図26は、第2実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための平面図である。 図27は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる光照射処理ユニットの構成例を説明するための模式的な断面図である。 図28は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。 図29は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる熱処理ユニットを説明するための模式的な断面図である。 図30は、第2実施形態に係る基板処理装置によって実行される基板処理の別の例を説明するための流れ図である。 図31Aは、処理方法の違いによるエッチング量の変化を観測するためのエッチング実験の処理手順について説明するための模式図であり、ポリマー含有液の液膜によって基板をエッチングする第1処理手順について説明するための模式図である。 図31Bは、エッチング実験の処理手順について説明するための模式図であり、ポリマー膜によって基板をエッチングする第2処理手順について説明するための模式図である。 図31Cは、エッチング実験の処理手順について説明するための模式図であり、処理流体が供給されたポリマー膜によって基板をエッチングする第3処理手順を説明するための模式図である。 図32は、エッチング実験の結果を示すグラフである。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<処理対象となる基板の表層部の構造>
図1は、処理対象となる基板Wの表層部の構造を説明するための模式的な断面図である。基板Wは、シリコンウエハ等の基板であり、一対の主面を有する。一対の主面のうち少なくとも一方が、凹凸パターン120が形成されたデバイス面である。一対の主面のうちの一方は、デバイスが形成されていない非デバイス面であってもよい。
デバイス面の表層部には、たとえば、複数のトレンチ122が形成された絶縁層105と、表面が露出するように各トレンチ122内に形成された処理対象層102とが形成されている。絶縁層105は、隣接するトレンチ122同士の間に位置する微細な凸状の構造体121と、トレンチ122の底部を区画する底区画部123とを有する。複数の構造体121および複数のトレンチ122によって凹凸パターン120が構成されている。処理対象層102の表面および絶縁層105(構造体121)の表面は、基板Wの主面の少なくとも一部を構成している。
絶縁層105は、たとえば、酸化シリコン(SiO)層または低誘電率層である。低誘電率層は、酸化シリコンよりも誘電率の低い材料である低誘電率(Low-k)材料からなる。低誘電率層は、具体的には、酸化シリコンに炭素を加えた絶縁材料(SiOC)からなる。
処理対象層102は、たとえば、金属層、シリコン層等であり、典型的には、銅配線である。金属層は、たとえば、スパッタリング等の手法によりトレンチ122内に形成されたシード層(図示せず)を核として、電気めっき技術等によって結晶成長させることによって形成される。金属層の形成手法は、この手法に限られない。金属層は、スパッタリングのみによって形成されてもよいし、他の手法で形成されてもよい。
処理対象層102が酸化されることによって、酸化層103が形成される(図1の二点鎖線を参照)。酸化層103は、たとえば、酸化金属層であり、典型的には、酸化銅層である。
図示しないが、トレンチ122内において処理対象層102と絶縁層105との間には、バリア層およびライナ層が設けられていてもよい。バリア層は、たとえば、窒化タンタル(TaN)であり、ライナ層は、たとえば、ルテニウム(Ru)またはコバルト(Co)である。
トレンチ122は、たとえば、ライン状である。ライン状のトレンチ122の幅Lは、トレンチ122が延びる方向および基板Wの厚さ方向Tに直交する方向におけるトレンチ122の大きさのことである。
複数のトレンチ122の幅Lは全て同一というわけではなく、基板Wの表層部付近には、少なくとも2種類以上の幅Lのトレンチ122が形成されている。幅Lは、処理対象層102の幅でもあり、酸化層103の幅でもある。トレンチ122は、ライン状には限られない。
トレンチ122の幅Lは、たとえば、20nm以上500nm以下である。トレンチ122の深さDは、厚さ方向Tにおけるトレンチ122の大きさであり、たとえば、200nm以下である。
トレンチ122が平面視で(基板Wの主面に対する法線方向から見て)円形状である場合、幅Lは、トレンチ122の直径に相当する。
処理対象層102は、たとえば、スパッタリング等の手法によりトレンチ122内に形成されたシード層(図示せず)を核として、電気めっき技術等によって結晶成長させることによって形成される。
処理対象層102および酸化層103は、複数の結晶粒110によって構成されている。結晶粒110同士の界面のことを結晶粒界111という。結晶粒界111とは、格子欠陥の一種であり、原子配列の乱れによって形成される。
結晶粒110は、トレンチ122の幅Lが狭いほど成長しにくく、トレンチ122の幅Lが広いほど成長しやすい。そのため、トレンチ122の幅Lが狭いほど小さい結晶粒110ができやすく、トレンチ122の幅Lが広いほど大きい結晶粒110ができやすい。すなわち、トレンチ122の幅Lが狭いほど結晶粒界密度が高くなり、トレンチ122の幅Lが広いほど結晶粒界密度が低くなる。
<第1実施形態に係る基板処理装置の構成>
図2Aは、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための平面図である。図2Bは、基板処理装置1の構成を説明するための立面図である。
基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。この実施形態では、基板Wは、デバイス面を上方に向けた姿勢で処理される。
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置されるロードポートLPと、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットIRおよびCRと、基板処理装置1を制御するコントローラ3とを備える。
搬送ロボットIRは、キャリアCと搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。搬送ロボットCRは、搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。
各搬送ロボットIR,CRは、たとえば、いずれも、一対の多関節アームARと、上下に互いに離間するように一対の多関節アームARの先端にそれぞれ設けられた一対のハンドHとを含む多関節アームロボットである。
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーを形成している。各処理タワーは、上下方向に積層された複数(この実施形態では、3つ)の処理ユニット2を含む(図2Bを参照)。4つの処理タワーは、ロードポートLPから搬送ロボットIR,CRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている(図2Aを参照)。
第1実施形態では、処理ユニット2は、液体で基板Wを処理するウェット処理ユニット2Wである。各ウェット処理ユニット2Wは、チャンバ4と、チャンバ4内に配置された処理カップ7とを備えており、処理カップ7内で基板Wに対する処理を実行する。
チャンバ4には、搬送ロボットCRによって、基板Wを搬入したり基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)が形成されている。チャンバ4には、この出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)が備えられている。
<ウェット処理ユニットの構成>
図3は、ウェット処理ユニット2Wの構成例を説明するための模式的な断面図である。
ウェット処理ユニット2Wは、基板Wを所定の保持位置に基板Wを保持しながら、回転軸線A1(鉛直軸線)まわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、スピンチャック5に保持されている基板Wを加熱するヒータユニット6とをさらに備える。回転軸線A1は、基板Wの中心部を通る鉛直な直線である。所定の保持位置は、図3に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
スピンチャック5は、基板Wを所定の保持位置に保持する基板保持ユニットの一例であり、回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板回転ユニットの一例でもある。スピンチャック5は、基板回転保持ユニットともいう。
スピンチャック5は、水平方向に沿う円板形状を有するスピンベース21と、スピンベース21の上方で基板Wを把持し保持位置に基板Wを保持する複数のチャックピン20と、スピンベース21に上端が連結され鉛直方向に延びる回転軸22と、回転軸22の中心軸線(回転軸線A1)まわりに回転軸22を回転させるスピンモータ23とを含む。
複数のチャックピン20は、スピンベース21の周方向に間隔を空けてスピンベース21の上面に配置されている。スピンモータ23は、電動モータである。スピンモータ23は、回転軸22を回転させることでスピンベース21および複数のチャックピン20が回転軸線A1まわりに回転する。これにより、基板Wは、スピンベース21および複数のチャックピン20と共に、回転軸線A1まわりに回転される。
複数のチャックピン20は、閉位置および開位置の間で移動可能である。複数のチャックピン20は、開閉機構25によって移動される。複数のチャックピン20は、閉位置に位置するとき、基板Wの周縁部に接触して基板Wを把持する。複数のチャックピン20は、開位置に位置するとき、基板Wの周縁部の把持を解放する一方で、基板Wの下面(下側の主面)の周縁部に接触して基板Wを下方から支持する。
開閉機構25は、たとえば、複数のチャックピン20を移動させるリンク機構と、リンク機構に駆動力を付与する駆動源とを含む。駆動源は、たとえば、電動モータを含む。
ヒータユニット6は、基板Wの全体を加熱する基板加熱ユニットの一例である。ヒータユニット6は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット6は、スピンベース21の上面と基板Wの下面との間に配置されている。ヒータユニット6は、基板Wの下面に下方から対向する加熱面6aを有する。
ヒータユニット6は、プレート本体61およびヒータ62を含む。プレート本体61は、平面視において、基板Wよりも僅かに小さい。プレート本体61の上面が加熱面6aを構成している。ヒータ62は、プレート本体61に内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ62に通電することによって、加熱面6aが加熱される。ヒータ62は、ヒータ62の温度とほぼ等しい温度に基板Wを加熱できる。
ヒータ62は、基板Wを常温(たとえば、5℃以上で、かつ、25℃以下の温度)以上で、かつ、400℃以下の温度範囲で加熱できるように構成されている。ヒータ62には、給電線63を介して通電ユニット64が接続されている。通電ユニット64からヒータ62に供給される電流が調整されることによって、ヒータ62の温度が調整される。
ヒータユニット6の下面には、昇降軸66が接続されている。昇降軸66は、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔21aと、回転軸22の内部空間とに挿入される。ヒータユニット6は、ヒータ昇降機構65によって昇降される。
ヒータ昇降機構65は、たとえば、昇降軸66を昇降駆動する電動モータまたはエアシリンダ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。ヒータ昇降機構65は、昇降軸66を介してヒータユニット6を昇降させる。ヒータユニット6は、基板Wの下面とスピンベース21の上面との間で昇降可能である。
ヒータユニット6は、上昇する際に、開位置に位置する複数のチャックピン20から基板Wを受け取ることが可能である。ヒータユニット6は、加熱面6aが基板Wの下面に接触する接触位置、または、基板Wの下面に非接触で近接する近接位置に配置されることによって、基板Wを加熱することができる。ヒータユニット6による基板Wの加熱が停止される程度に基板Wの下面から充分に退避する位置を退避位置という。
処理カップ7は、スピンチャック5に保持されている基板Wから飛散する液体を受ける。処理カップ7は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する液体を受け止める複数(図3の例では2つ)のガード30と、複数のガード30によって下方に案内された液体を受け止める複数(図3の例では2つ)のカップ31と、複数のガード30および複数のカップ31を取り囲む円筒状の外壁部材32とを含む。
複数のガード30は、ガード昇降機構(図示せず)によって個別に昇降される。各ガード30は、その上端が基板Wの上面(上側の主面)よりも上方に位置する上位置と、その上端が基板Wの上面よりも下方に位置する下位置と、上位置および下位置の間の任意の位置とに移動できる。
処理ユニット2は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に過酸化水素水等の液状酸化剤を供給する酸化剤ノズル9と、酸性ポリマー、および、アルカリ成分を含有するポリマー含有液を、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に供給するポリマー含有液ノズル10と、スピンチャック5に保持された基板Wの上面にDIW(Deionized Water)等のリンス液を供給するリンス液ノズル11とをさらに備える。
液状酸化剤は、基板Wの上面から露出する処理対象層の表層部を酸化させて、処理対象層の表層部に酸化層を形成する液体である。液状酸化剤によって形成される酸化層は、たとえば、1nm以上2nm以下の厚みを有する。しかしながら、液状酸化剤によって形成される酸化層は、1nmよりも小さくてもよいし、2nmよりも大きくてもよい。
液状酸化剤は、たとえば、酸化剤として過酸化水素(H)を含有する過酸化水素水(H水)、または、酸化剤としてオゾン(O)を含有するオゾン水(O水)である。
酸化剤は、必ずしも過酸化水素またはオゾンである必要はない。たとえば、液状酸化剤には、複数の酸化剤が含有されていてもよく、具体的には、液状酸化剤は、過酸化水素およびオゾンの両方をDIWに溶解させることによって形成される液体であってもよい。酸化剤ノズル9は、基板酸化ユニットの一例である。
酸化剤ノズル9は、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。酸化剤ノズル9は、第1ノズル移動機構33によって、水平方向に移動される。第1ノズル移動機構33は、酸化剤ノズル9に結合され水平に延びるアーム(図示せず)と、アームを水平方向に移動させるアーム移動ユニット(図示せず)とを含む。アーム移動ユニットは、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。以下で説明するノズル移動機構についても同様の構成を有する。
酸化剤ノズル9は、鉛直方向に移動可能であってもよい。酸化剤ノズル9は、鉛直方向への移動によって、基板Wの上面に接近したり、基板Wの上面から上方に退避したりできる。酸化剤ノズル9は、この実施形態とは異なり、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであってもよい。
酸化剤ノズル9は、酸化剤ノズル9に液状酸化剤を案内する酸化剤配管40の一端に接続されている。酸化剤配管40の他端は、液状酸化剤を貯留する酸化剤タンク(図示せず)に接続されている。酸化剤配管40には、酸化剤配管40内の流路を開閉する酸化剤バルブ50Aと、当該流路内の液状酸化剤の流量を調整する酸化剤流量調整バルブ50Bとが介装されている。
酸化剤バルブ50Aが開かれると、酸化剤流量調整バルブ50Bの開度に応じた流量で、液状酸化剤が、酸化剤ノズル9の吐出口から下方に連続流で吐出される。
ポリマー含有液は、溶質と、溶質を溶解させる溶媒とを含有している。ポリマー含有液の溶質は、酸性ポリマー、および、アルカリ成分を含む。
酸性ポリマーは、処理対象層を酸化させることなく、酸化層を溶解する酸性ポリマーである。酸性ポリマーは、常温で固体または液体であり、溶媒中でプロトンを放出して酸性を示す。
酸性ポリマーの分子量は、たとえば、1000以上で、かつ、100000以下である。酸性ポリマーは、ポリアクリル酸に限られない。酸性ポリマーは、たとえば、カルボキシ基含有ポリマー、スルホ基含有ポリマーまたはこれらの混合物である。カルボン酸ポリマーは、たとえば、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、カルボキシメチルセルロール、またはこれらの混合物である。言い換えると、カルボン酸ポリマーは、たとえば、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、および、カルボキシメチルセルロールのうちの少なくとも一種を含んでいてもよい。スルホ基含有ポリマーは、たとえば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、または、これらの混合物である。スルホ基含有ポリマーは、たとえば、ポリスチレンスルホン酸、および、ポリビニルスルホン酸の内の少なくとも一種を含んでいてもよい。
ポリマー含有液に含有される溶媒は、常温で液体であり、酸性ポリマーに対して親和性を有し、基板Wの回転または加熱によって蒸発する物質であることが好ましい。酸性ポリマーに対して親和性を有するとは、酸性ポリマーを溶解または膨潤させることができることを意味する。
ポリマー含有液に含有される溶媒は、DIWに限られないが、水系の溶媒であることが好ましい。溶媒は、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する。
アルカリ成分は、たとえば、アンモニアである。アルカリ成分は、アンモニアに限られない。具体的には、アルカリ成分は、たとえば、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、ジメチルアミン、またはこれらの混合物を含む。言い換えると、アルカリ成分は、たとえば、アンモニア、TMAHおよびジメチルアミンのうちの少なくとも一種を含んでいてもよい。
アルカリ成分は、溶媒中でアルカリ性を示し、溶媒の沸点未満の温度に加熱されることによって蒸発する成分であることが好ましい。アルカリ成分は、常温で気体である成分によって構成されていることが好ましい。したがって、アルカリ成分は、アンモニア、ジメチルアミン、または、これらの混合物であることが特に好ましい。
ポリマー含有液ノズル10は、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルである。ポリマー含有液ノズル10は、第1ノズル移動機構33と同様の構成の第2ノズル移動機構34によって、水平方向に移動される。ポリマー含有液ノズル10は、鉛直方向に移動可能であってもよい。ポリマー含有液ノズル10は、この実施形態とは異なり、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルであってもよい。
ポリマー含有液ノズル10は、ポリマー含有液ノズル10にポリマー含有液を案内するポリマー含有液配管41の一端に接続されている。ポリマー含有液配管41の他端は、ポリマー含有液タンク(図示せず)に接続されている。ポリマー含有液配管41には、ポリマー含有液配管41内の流路を開閉するポリマー含有液バルブ51Aと、当該流路内のポリマー含有液の流量を調整するポリマー含有液流量調整バルブ51Bとが介装されている。
ポリマー含有液バルブ51Aが開かれると、ポリマー含有液流量調整バルブ51Bの開度に応じた流量で、ポリマー含有液が、ポリマー含有液ノズル10の吐出口から下方に連続流で吐出される。
基板Wの上面に供給されたポリマー含有液から溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって、基板W上のポリマー含有液が半固体状または固体状のポリマー膜に変化する。半固体状とは、固体成分と液体成分とが混合している状態、または、基板W上で一定の形状を保つことができる程度の粘度を有する状態である。固体状とは、液体成分が含有されておらず、固体成分のみによって構成されている状態である。溶媒が残存しているポリマー膜は、半固体状であり、溶媒が完全に消失しているポリマー膜は、固体状である。
ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマーに加えて、アルカリ成分が含有されている。そのため、ポリマー膜には、酸性ポリマー、および、アルカリ成分が含有されている。
ポリマー膜にアルカリ成分と酸性ポリマーとが含有されている状態では、ポリマー膜は中性となっている。すなわち、酸性ポリマーは、アルカリ成分によって中和されておりほぼ失活している。そのため、酸性ポリマーの作用による基板Wの酸化層の溶解が行われない。ポリマー膜を加熱してポリマー膜からアルカリ成分を蒸発させれば、酸性ポリマーが活性を取り戻す。すなわち、酸性ポリマーの作用によって基板Wの酸化層が溶解される。
ポリマー膜中には、溶媒が完全に蒸発し尽くされずに残存していることが好ましい。そうであれば、ポリマー膜中の酸性ポリマーが酸としての機能を充分に発現できるため、酸化層を効率よく除去することができる。溶媒が残存していれば、アルカリ成分がポリマー膜に存在しているときに、ポリマー膜が中性を呈し、アルカリ成分が蒸発した後には、ポリマー膜が酸性を呈する。
また、ポリマー膜中の溶媒を適度に蒸発させることによって、ポリマー膜中の溶媒に溶解されている酸性ポリマー成分の濃度を高めることができる。これにより、酸化層を効率よく除去することができる。また、ポリマー膜の温度が高くなるほど、酸性ポリマーによって酸化層を除去(溶解)する化学反応が促進される。すなわち、酸性ポリマーは、温度が高いほど酸化層の除去速度が高くなる性質を有する。そのため、基板Wの上面に形成されたポリマー膜を加熱することで酸化層を効率よく除去できる。
リンス液は、基板Wの上面に付着している液状酸化剤を除去する(洗い流す)酸化剤除去液として機能し、基板Wの上面に形成されたポリマー膜を溶解させて基板Wの主面から除去するポリマー除去液としても機能する。
リンス液は、DIWに限られない。リンス液は、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する。すなわち、リンス液としては、ポリマー含有液の溶媒と同様の液体を用いることができる。リンス液、および、ポリマー含有液の溶媒として、ともにDIWを用いれば、使用する液体(物質)の種類を少なくすることができる。
リンス液ノズル11は、基板Wの上面にリンス液を供給するリンス液供給ユニットの一例である。リンス液ノズル11は、この実施形態では、水平位置および鉛直位置が固定された固定ノズルである。リンス液ノズル11は、この実施形態とは異なり、少なくとも水平方向に移動可能な移動ノズルであってもよい。
リンス液ノズル11は、リンス液ノズル11にリンス液を案内するリンス液配管42の一端に接続されている。リンス液配管42の他端は、リンス液タンク(図示せず)に接続されている。リンス液配管42には、リンス液配管42内の流路を開閉するリンス液バルブ52Aと、当該流路内のリンス液の流量を調整するリンス液流量調整バルブ52Bとが介装されている。リンス液バルブ52Aが開かれると、リンス液ノズル11の吐出口から連続流で吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する。
ウェット処理ユニット2Wは、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面から間隔を空けて基板Wの上面に対向する対向部材8をさらに備える。対向部材8は、スピンチャック5に保持された基板Wの上面に上側から対向する対向面8aを有する。対向部材8は、基板Wとほぼ同じ径またはそれ以上の径を有する円板状に形成されている。対向部材8において対向面8aとは反対側には、支持軸28が固定されている。
対向部材8は、対向部材8を昇降させる対向部材昇降機構26に接続されている。対向部材昇降機構26は、たとえば、支持軸28を昇降駆動する電動モータまたはエアシリンダ等のアクチュエータ(図示せず)を含む。対向部材8は、回転軸線A1まわりに回転可能であってもよい。
対向部材8は、対向部材昇降機構26によって、対向部材8の可動範囲の上限位置である上位置と対向部材8の可動範囲の下限位置である下位置との間で昇降される。対向部材8は、対向部材8と基板Wとの間を各移動ノズル(酸化剤ノズル9およびポリマー含有液ノズル10)が通過できる離間位置に位置できる。離間位置は、たとえば、上位置である。対向部材8は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面との間の空間SP1内の雰囲気を空間SP1の外部の雰囲気から遮断する遮断位置に位置できる。そのため、対向部材8は、遮断板とも呼ばれる。遮断位置は、例えば、下位置である。
対向部材8は、対向面8aで開口し、処理流体を吐出する吐出口8bを有する。吐出口8bから吐出される処理流体は、処理液のミストおよび処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する流体である。処理液は、酸性ポリマーに対して親和性を有する液体である。ミストは、空間中に浮遊する複数の微小な処理液の液滴のことである。
処理流体は、処理液のミストおよび蒸気の少なくとも一方のみによって構成されている必要はなく、処理液のミストおよび処理液の蒸気の少なくとも一方と、キャリアガスとを含有していてもよい。キャリアガスは、処理液のミストおよび処理液の蒸気を吐出口8bに送るためのガスである。キャリアガスとしては、不活性ガスまたは空気が挙げられる。
不活性ガスは、たとえば、窒素(N)ガスである。不活性ガスは、処理対象層および酸化層と反応しないガスである。不活性ガスは、窒素ガスに限られず、たとえば、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスであってもよいし、窒素ガスおよび希ガスの混合ガスであってもよい。すなわち、不活性ガスは、窒素ガスおよび希ガスのうち少なくとも一方を含むガスであってもよい。
処理液は、たとえば、DIW等の水であるが、水に限られない。処理液は、単一の物質みによって構成されている必要はなく、たとえば、DIW等の水に少量の有機溶剤が含有された液体であってもよい。処理液は、ポリマー含有液に含有される溶媒と混和する液体であることが好ましい。
以下では、処理液はDIWであるとしてこの実施形態を説明する。処理液がDIWである場合、処理流体は、DIWのミストと水蒸気(DIWの蒸気)との少なくとも一方を含有する。
ウェット処理ユニット2Wには、吐出口8bに処理流体を供給する構成が設けられている。具体的には、ウェット処理ユニット2Wは、DIWから処理流体を形成し、処理流体の湿度を調整する加湿ユニット36と、DIW供給源(図示せず)から加湿ユニット36に液体状態のDIWを送るDIW供給管43と、加湿ユニット36から吐出口8bへ処理流体を供給する供給経路37と、供給経路37を通過する処理流体の湿度を測定する湿度計等の湿度測定ユニット38とを含む。
加湿ユニット36は、たとえば、加湿器である。加湿器は、超音波式、加熱式、気化式、または、ハイブリッド式の加湿器であってもよい。超音波式の加湿器は、超音波を用いてDIWに振動を与えることによって処理流体を形成する。加熱式の加湿器は、DIWをヒータ等で加熱することによって、処理流体を形成する。気化式の加湿器は、DIWを保持するフィルタにキャリアガスを吹き付けることで処理流体を形成する。ハイブリッド式の加湿器は、ヒータ等で加熱されたキャリアガスを、DIWを保持するフィルタに吹き付けることで処理流体を形成する。
供給経路37は、対向部材8内に配置され、処理流体を吐出する処理流体ノズル12と、処理流体ノズル12に連結され、処理流体ノズル12に処理流体を供給する処理流体配管44とを含む。処理流体ノズル12の吐出口12aは、対向部材8の吐出口8bと繋がっている。
処理流体配管44には、処理流体配管44内の流路を開閉する処理流体バルブ54Aと、当該流路内の処理流体の流量を調整する処理流体流量調整バルブ54Bとが介装されている。処理流体バルブ54Aが開かれると、処理流体流量調整バルブ54Bの開度に応じた流量で、吐出口8bから処理流体が吐出される。
湿度測定ユニット38は、たとえば、湿度計である。湿度は、処理流体の飽和水蒸気量を1とした場合の、処理流体中の実際の水分量の割合で表した数値である。湿度測定ユニット38は、供給経路37において吐出口8bに近い位置に設けられていることが好ましい。図3に示す例では、湿度測定ユニット38は、たとえば、処理流体ノズル12の先端に取り付けられている。
湿度測定ユニット38は、図3に二点鎖線で示すように、基板Wの側方に設けられていてもよい。具体的には、湿度測定ユニット38は、ガード30に取り付けられていてもよい。
処理流体の湿度は、基板処理装置1が配置されるクリーンルームの湿度よりも高く、100%以下であることが好ましい。クリーンルームの湿度は、たとえば、50%であるが、50%よりも低いこともあり得るし、50%よりも高いこともあり得る。処理流体の湿度は、80%以上で、かつ、100%以下であること一層好ましい。処理流体の湿度は、85%以上で、かつ、95%以下であることがより一層好ましい。
<基板処理装置の電気的構成>
図4は、基板処理装置1の制御に関する構成例を説明するためのブロック図である。コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。具体的には、コントローラ3は、プロセッサ(CPU)3Aと、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
特に、コントローラ3は、搬送ロボットIR,CR、スピンモータ23、開閉機構25、対向部材昇降機構26、第1ノズル移動機構33、第2ノズル移動機構34、第3ノズル移動機構35、加湿ユニット36、湿度測定ユニット38、通電ユニット64、ヒータ昇降機構65、酸化剤バルブ50A、酸化剤流量調整バルブ50B、ポリマー含有液バルブ51A、ポリマー含有液流量調整バルブ51B、リンス液バルブ52A、リンス液流量調整バルブ52B、処理流体バルブ54A、処理流体流量調整バルブ54B、等を制御するようにプログラムされている。
コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの流体の吐出の有無や、対応するノズルからの流体の吐出流量が制御される。以下の各工程は、コントローラ3がこれらの構成を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
<第1実施形態に係る基板処理>
図5は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。図6A~図6Hは、基板処理装置1によって実行される基板処理の各工程の様子を説明するための模式図である。
以下では、基板処理装置1によって実行される基板処理について、主に図3および図5を参照して説明する。図6A~図6Hについては適宜参照する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(図2Aを参照)によってキャリアCからウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。開閉機構25が複数のチャックピン20を閉位置に移動させることによって、基板Wが複数のチャックピン20に把持される。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、スピンモータ23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
次に、搬送ロボットCRがウェット処理ユニット2W外に退避した後、基板Wの上面に液状酸化剤を供給する液状酸化剤供給工程(ステップS2)が実行される。具体的には、まず、対向部材8が、対向部材昇降機構26によって、離間位置に配置される。対向部材8は、後述する処理流体供給工程(ステップS7)が開始されるまでの間、離間位置に位置する。対向部材8が離間位置に配置されている状態で、第1ノズル移動機構33が、酸化剤ノズル9を処理位置に移動させる。酸化剤ノズル9の処理位置は、たとえば、基板Wの上面の中央領域に酸化剤ノズル9が対向する中央位置である。基板Wの上面の中央領域は、基板Wの上面の中心部および中心部の周囲を含む領域である。
酸化剤ノズル9が処理位置に位置する状態で、酸化剤バルブ50Aが開かれる。これにより、図6Aに示すように、基板Wの上面の中央領域に向けて、酸化剤ノズル9から液状酸化剤が供給(吐出)される(液状酸化剤供給工程、液状酸化剤吐出工程)。
基板Wの上面に供給された液状酸化剤が、遠心力により、基板Wの上面の全体に広がる。基板Wの上面の周縁部に達した液状酸化剤は、基板Wの上面の周縁部から基板W外に排出される。基板Wの上面に対する液状酸化剤の供給によって、基板Wの上面から露出する処理対象層に酸化層が形成される(酸化層形成工程、ウェット酸化工程)。処理対象層(基板Wの上面の表層部)を酸化することによって、酸化層が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。この基板処理では、液状酸化剤を基板の主面に供給するウェット酸化処理という簡易な工程によって基板Wを酸化することができる。
基板Wの上面に液状酸化剤を供給している間、ヒータユニット6を用いて、基板Wを介して液状酸化剤を加熱してもよい。具体的には、ヒータユニット6を近接位置に配置して回転中の基板Wを加熱する。液状酸化剤を加熱することによって、酸化層の形成が促進される(酸化層形成促進工程)。
図6Aとは異なり、液状酸化剤の供給中においてヒータユニット6を接触位置に配置してもよい。図6Aとは異なり、液状酸化剤の供給中においてヒータユニット6を退避位置に配置し、基板Wの加熱を停止していてもよい。
液状酸化剤の供給が所定時間継続された後、基板Wの上面にリンス液を供給し、基板Wの上面から液状酸化剤を除去する酸化剤除去工程(ステップS3)が実行される。具体的には、酸化剤バルブ50Aが閉じられ、リンス液バルブ52Aが開かれる。これにより、基板Wの上面への液状酸化剤の供給が停止され、その代わりに、図6Bに示すように、リンス液ノズル11から基板Wの上面へのリンス液の供給(吐出)が開始される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。これにより、基板W上の液状酸化剤がリンス液で置換されて、基板Wの上面から液状酸化剤が除去される。
酸化剤バルブ50Aが閉じられた後、第1ノズル移動機構33が酸化剤ノズル9を退避位置に移動させる。酸化剤ノズル9は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
リンス液の供給が所定時間継続された後、基板Wの上面にポリマー含有液を供給するポリマー含有液供給工程(ステップS4)が実行される。
具体的には、第2ノズル移動機構34が、ポリマー含有液ノズル10を処理位置に移動させる。ポリマー含有液ノズル10の処理位置は、たとえば、ポリマー含有液ノズル10が基板Wの上面の中央領域に対向する中央位置である。ポリマー含有液ノズル10が処理位置に位置する状態で、ポリマー含有液バルブ51Aが開かれる。これにより、図6Cに示すように、基板Wの上面の中央領域に向けて、ポリマー含有液ノズル10からポリマー含有液が供給(吐出)される(ポリマー含有液供給工程、ポリマー含有液吐出工程)。
ポリマー含有液ノズル10から吐出されたポリマー含有液は、基板Wの上面の中央領域に着液する。
基板Wの上面にポリマー含有液を供給する際、基板Wを低速度(たとえば、10rpm)で回転させてもよい(低速回転工程)。あるいは、基板Wの上面にポリマー含有液を供給する際、基板Wの回転は停止されていてもよい。基板Wの回転速度を低速度としたり、基板Wの回転を停止させたりすることで、基板Wに供給されたポリマー含有液は、基板Wの上面の中央領域に留まる。これにより、基板Wを高速回転させて基板Wの上面上のポリマー含有液を基板W外へ排出する場合と比較して、ポリマー含有液の使用量を低減できる。
次に、図6Dおよび図6Eに示すように、基板Wの上面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、基板Wの上面に固体状または半固体状のポリマー膜101(図6Eを参照)を形成するポリマー膜形成工程(ステップS5)が実行される。
具体的には、ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられてポリマー含有液ノズル10からのポリマー含有液の吐出が停止される。ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられた後、第2ノズル移動機構34によってポリマー含有液ノズル10が退避位置に移動される。ポリマー含有液ノズル10は、退避位置に位置するとき、基板Wの上面には対向せず、平面視において、処理カップ7の外方に位置する。
ポリマー含有液バルブ51Aが閉じられた後、図6Dに示すように、基板Wの回転速度が所定のスピンオフ速度になるように基板Wの回転が加速される(回転加速工程)。スピンオフ速度は、たとえば、1500rpmである。スピンオフ速度での基板Wの回転は、たとえば、30秒の間継続される。基板Wの回転に起因する遠心力によって、基板Wの上面の中央領域に留まっていたポリマー含有液が基板Wの上面の周縁部に向けて広がり、基板Wの上面の全体に広げられる。図6Dに示すように、基板W上のポリマー含有液の一部は、基板Wの周縁部から基板W外に飛散し、基板W上のポリマー含有液の液膜が薄膜化される(スピンオフ工程)。基板Wの上面上のポリマー含有液は、基板W外に飛散する必要はなく、基板Wの回転の遠心力の作用によって、基板Wの上面の全体に広がればよい。
基板Wの回転に起因する遠心力は、基板W上のポリマー含有液だけでなく、基板W上のポリマー含有液に接する気体にも作用する。そのため、遠心力の作用により、当該気体が基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう気流が形成される。この気流により、基板W上のポリマー含有液に接する気体状態の溶媒が基板Wに接する雰囲気から排除される。そのため、図6Eに示すように、基板W上のポリマー含有液からの溶媒の蒸発(揮発)が促進され、固体状または半固体状のポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。このように、ポリマー含有液ノズル10が、ポリマー膜形成ユニットとして機能する。
ポリマー膜101は、フッ酸およびポリマー含有液と比較して粘度が高いため、基板Wが回転しているにもかかわらず、基板W上から完全に排除されずに基板W上に留まる。この実施形態では、基板Wの上面の中央領域に留まっていたポリマー含有液を遠心力で基板Wの上面の全体に塗り広げてポリマー膜101を形成するため、基板Wの上面の全体を覆うポリマー含有液の液膜から溶媒を蒸発させてポリマー膜101を形成する場合と比較して、ポリマー含有液の使用量を低減できる。
ポリマー膜101が形成された直後において、ポリマー膜101には、アルカリ成分が含有されている。そのため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーはほぼ失活しているので、酸化層の除去はほとんど行われない。
次に、基板W上のポリマー膜101を加熱するポリマー膜加熱工程(ステップS6)が実行される。具体的には、図6Fに示すように、ヒータユニット6が近接位置に配置されて、基板Wが加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。
ポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜101が加熱されるまでの間、基板Wのエッチングはほとんど開始されない。基板W上に形成されたポリマー膜101が基板Wを介して加熱される。ポリマー膜101が加熱されることによって、アルカリ成分が蒸発し、酸性ポリマーが活性を取り戻す(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。そのため、ポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、基板Wのエッチングが開始される(エッチング開始工程、エッチング工程)。詳しくは、基板Wの上面の表層部に形成されている酸化層の除去が開始される(酸化層除去開始工程、酸化層除去工程)。
上述したように、酸性ポリマーは、温度が高いほど酸化層の除去速度が高くなる性質を有する。そのため、ポリマー膜101からアルカリ成分が除去された後においてもポリマー膜101の加熱を継続することによって、酸性ポリマーによる酸化層の除去が促進される(除去促進工程)。
ポリマー膜101が加熱されることでポリマー膜101中の溶媒が蒸発する。そのため、ポリマー膜101中の溶媒に溶解されている酸性ポリマーの濃度が高くなる(ポリマー濃縮工程)。これにより、酸性ポリマーの濃度が上昇して酸性ポリマーの作用による酸化層の除去速度が向上される。
基板Wの加熱温度は、ポリマー膜101中の溶媒の沸点よりも低い温度であることが好ましい。そうであれば、基板W上のポリマー膜101から溶媒を適度に蒸発させることができる。そのため、ポリマー膜101中の溶媒に溶解されている酸性ポリマーの濃度を高めることができる。さらに、溶媒が蒸発し尽くされてポリマー膜101中から完全に除去されることを抑制できる。
次に、基板W上のポリマー膜101に向けて処理流体を供給する処理流体供給工程(ステップS7)が実行される。
詳しくは、対向部材昇降機構26が、対向部材8を遮断位置に配置する(対向部材配置工程)。対向部材8が遮断位置に位置する状態で、加湿ユニット36が稼働され、かつ、処理流体バルブ54Aが開かれる。これにより、図6Gに示すように、対向部材8の吐出口8bから処理流体が吐出される。吐出口8bから吐出された処理流体は、対向部材8と基板Wの上面(厳密には、ポリマー膜101の表面)との間の空間SP1に供給される。空間SP1は、ポリマー膜101に接する空間である。
処理流体が空間SP1の全体に広がることによって、空間SP1の雰囲気が処理流体で置換される。そのため、基板Wが配置される空間(チャンバ4内の空間)の全体を処理流体で置換する構成と比較して、対向面8aと基板Wの上面との間の空間SP1の雰囲気を処理流体で速やかに置換することができる。このように、対向部材8および処理流体ノズル12が、処理流体供給ユニットとして機能する。
処理流体が空間SP1に供給されることによって、ポリマー膜101が処理流体を含む雰囲気に曝される。ポリマー膜101が処理流体に接触することによって、処理液の微小な液滴がポリマー膜101の表面に付着する。この実施形態とは異なり、連続流のDIWを基板Wの上面に供給する場合、DIWの供給量によっては、酸性ポリマーがDIWに溶解されて基板W上からポリマー膜101が除去されるおそれがある。
そのため、この実施形態のように、ポリマー膜101に処理流体を接触させる手法であれば、ポリマー膜101を基板Wの上面上に維持しつつ、ポリマー膜101に適度にDIWを供給することができる。処理液は、酸性ポリマーに対する親和性を有するため、DIWがポリマー膜101の内部に入り込む。これにより、酸性ポリマーのプロトン(水素イオン)の放出を促進することができる。すなわち、基板Wのエッチングを促進できる。
なお、処理流体供給工程の開始前にポリマー膜101の加熱が開始されているため、ポリマー膜101からのアルカリ成分の蒸発によって、ポリマー膜101中の酸性ポリマーは活性を取り戻している。
仮に、ポリマー加熱工程(ステップS6)において、ポリマー膜101から溶媒の大半が除去された場合であっても、処理流体の供給によってポリマー膜101にDIWを適度に付与することができる。そのため、溶媒の除去による酸化層103の除去速度の低減を抑制できる。
また、ポリマー加熱工程(ステップS6)において、ポリマー膜101から溶媒の大半が除去された場合、ポリマー加熱工程によってアルカリ成分がポリマー膜101から除去されたとしても、基板Wのエッチングが充分に開始されないことがある。その場合、処理流体供給工程(ステップS7)においてポリマー膜101にDIWが供給されることによって、基板Wのエッチングが開始される(エッチング開始工程、エッチング工程)。詳しくは、基板Wの上面の表層部に形成されている酸化層の除去が開始される(酸化層除去開始工程、酸化層除去工程)。
すなわち、この実施形態では、基板Wのエッチングが、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)および処理流体供給工程(ステップS7)のいずれかの実行によって開始される。
対向部材8の吐出口8bから処理流体が吐出されている間、図6Gに示すように、ヒータユニット6による基板Wの加熱が継続されてもよい(加熱継続工程)。これにより、酸性ポリマーの温度を上昇させて、酸性ポリマーによる酸化層の除去を促進できる(除去促進工程)。
また、空間SP1内の雰囲気の湿度は、湿度測定ユニット38の測定結果に基づくフィードバック制御によって調整されてもよい。詳しくは、湿度測定ユニット38の測定結果が所定の基準湿度範囲外であれば、コントローラ3が、湿度測定ユニット38の測定結果が基準湿度範囲内になるように、加湿ユニット36および処理流体流量調整バルブ54Bの少なくとも一方を制御する。これにより、吐出口8bから吐出される処理流体の湿度が調整される。基準湿度範囲は、たとえば、クリーンルームの湿度(たとえば、50%)よりも高く、100%以下の範囲、80%以上で、かつ、100%以下の範囲、または、80%以上で、かつ、95%以下の範囲であってもよい。
空間SP1の雰囲気は、吐出口8bから吐出される処理流体によって置換されるため、空間SP1内の雰囲気の湿度は、吐出口8bから吐出される処理流体の湿度に徐々に近づく。そのため、吐出口8bから吐出される処理流体の湿度によって、吐出口8bから吐出される処理流体の湿度が調整されることによって、実質的に空間SP1内の雰囲気の湿度を調整することができる。その結果、対向面8aと基板Wの主面との間の空間SP1の雰囲気の湿度を、ポリマー膜101による基板Wのエッチングを効果的に促進できる湿度に調整することができる。
図3に二点鎖線で示すように、湿度測定ユニット38が基板Wの側方に設けられている場合には、湿度測定ユニット38が空間SP1の近傍の湿度を測定し、その測定結果をフィードバック制御に利用することができる。
ポリマー膜101に、基板W上のポリマー膜101が除去されるポリマー膜除去工程(ステップS8)が実行される。具体的には、対向部材8が離間位置に退避し、リンス液バルブ52Aが開かれる。これにより、図6Hに示すように、ポリマー膜101が形成されている基板Wの上面の中央領域に向けて、リンス液ノズル11からリンス液が供給(吐出)される(リンス液供給工程、リンス液吐出工程)。
基板Wに供給されたリンス液によって、基板W上のポリマー膜101が溶解される(ポリマー膜溶解工程)。基板Wへのリンス液の供給を継続することによって、基板Wの上面からポリマー膜101が除去される(ポリマー膜除去工程)。リンス液による溶解作用と、基板Wの上面に形成されるリンス液の流れとによって、ポリマー膜101が基板Wの上面から除去される(リンス工程)。
リンス液によって基板Wの上面からポリマー膜101が除去された後、スピンドライ工程(ステップS9)が行われる。
具体的には、リンス液バルブ52Aが閉じられ、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される。そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。それによって、大きな遠心力が基板W上のリンス液に作用し、基板W上のリンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、複数のチャックピン20から処理済みの基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS10)。その基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。
図7は、基板処理における基板Wの上面の表層部の変化について説明するための模式図である。
図7(a)および図7(b)に示すように、基板Wの上面に液状酸化剤を供給することによって、酸化層103が処理対象層102の表層部に形成される(酸化層形成工程)。処理対象層102を酸化することによって、酸化層103が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
その後、基板Wの上面にポリマー含有液が供給され、基板W上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、図7(c)に示すように、基板Wの上面にポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。
その後、図7(d)に示すように、ポリマー膜101を加熱することによってアルカリ成分が蒸発しポリマー膜101からアルカリ成分が除去される(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。そして、図7(e)に示すように、ポリマー膜101に水蒸気およびミスト状の水のいずれか一方が含まれる処理流体が供給されることによって、基板Wの上面上のポリマー膜101中の酸性ポリマーによる酸化層103のエッチングが促進される。
基板Wの上面上のポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、酸化層103が溶解されてポリマー膜101に溶け込む。これにより、図7(f)に示すように、酸化層103が基板Wの上面から選択的に除去される(酸化層除去工程)。図7(g)は、その後、ポリマー膜101が除去された後の処理対象層102の表面の状態を示している。
第1実施形態によれば、基板Wの上面上にポリマー膜101が形成される。そのため、基板Wがエッチングされて、基板Wから酸化層103が除去される。
ポリマー膜101は、酸性ポリマーを含有するため、ポリマー含有液およびフッ酸等の液体よりも粘度が高い。そのため、ポリマー膜101は、基板Wの上面上に留まりやすい。そのため、基板Wをエッチングする間の全期間において基板Wの上面に酸性ポリマーを連続的に供給する必要がない。言い換えると、少なくともポリマー膜101を形成した後においては、酸性ポリマーを基板Wの上面に追加的に供給する必要がない。そのため、フッ酸等の低分子量のエッチング成分を含有するエッチング液によって酸化層103を除去する場合と比較して、処理対象層102のエッチングに要する物質(フッ酸や酸性ポリマー)の使用量を低減できる。
したがって、処理対象層102のエッチングに用いられる物質の使用量を低減できる。
第1実施形態のように、酸性ポリマーを含有するポリマー膜101を用いて処理対象層102をエッチングすることで以下のような効果を奏する。
連続流のエッチング液によって酸化層103を除去する場合、エッチング液が基板Wの上面の中心側から周縁側に向かう過程でエッチング液の温度が低下する。そのため、エッチング液の温度低下に起因して基板Wの上面の周縁領域におけるエッチング量(除去量)が、基板Wの上面の中央領域におけるエッチング量よりも低くなり、基板Wの上面の各位置におけるエッチング量の均一性が低下するおそれがある。
一方、第1実施形態によれば、半固体状または固体状のポリマー膜101によって基板Wの上面の全体が覆われており、ポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって酸化層103が除去される。そのため、ポリマー膜101が形成されている状態では、酸性ポリマーは基板Wの上面の中心側から周縁側に向かって移動しないため、ポリマー膜101において基板Wの上面の各位置に接する部分の温度がほぼ一律に変化する。そのため、エッチング量の均一性の向上を図ることができる。
第1実施形態によれば、ポリマー膜101を加熱してアルカリ成分を蒸発させることによって、ポリマー膜101中の酸性ポリマーが活性を取り戻す。そのため、ポリマー膜101の形成途中に基板Wのエッチングが開始されることを抑制できる。
具体的には、ポリマー含有液の供給中に基板Wのエッチングが開始されることを抑制できるので、基板Wの上面においてポリマー含有液が着液する位置(たとえば、基板Wの上面の中心部)と、基板Wの上面においてポリマー含有液が行き渡るまでにある程度の時間を要する位置(基板Wの上面の周縁部)とでエッチングの開始タイミングにばらつきが生じることを抑制できる。したがって、基板Wの上面の各位置におけるエッチングの開始タイミングのばらつきを抑制できる。
また、第1実施形態では、ポリマー膜101が形成された後に基板Wが加熱されるため、基板Wの上面上のポリマー膜101が全体的に加熱される。そのため、エッチング量の均一性が一層向上する。
第1実施形態とは異なり、連続流のエッチング液で酸化層103を除去する構成では、基板Wの上面に形成されているトレンチ122の幅Lが狭い場合には、トレンチ122に入り込んでいる液体をエッチング液で充分に置換できないことがある。そのため、互いに幅Lが異なる複数のトレンチ122が基板Wの上面に形成されている場合には、トレンチ122に入り込んでいる液体のエッチング液による置換の度合いにばらつきが生じ、基板Wの上面におけるエッチング量の均一性が低下するおそれがある。
一方、第1実施形態によれば、図8に示すように、ポリマー膜101は、トレンチ122の幅Lにかかわらず、処理対象層102およびトレンチ122に倣うように形成される。詳しくは、ポリマー膜101は、酸化層103の表面103a、トレンチ122の側面122aおよび構造体121の頂部121aに沿うように形成される。そのため、互いに幅Lの異なるトレンチ122が形成されている場合であっても、トレンチ122間での処理対象層102のエッチング量のばらつきを低減できる。
図9Aおよび図9Bに示すように、結晶粒界111において酸化層103を構成する構成物質116同士の間の距離は、結晶粒110における構成物質116同士の間の距離よりも広い。そのため、結晶粒界111において構成物質116同士の間には、隙間113が存在する。構成物質116は、たとえば、分子であり、典型的には、酸化銅分子である。
第1実施形態とは異なり、図9Aに示すように、フッ酸等の低分子量エッチング成分114を含有するエッチング液によって酸化層103を除去する場合、基板Wの結晶粒界111に存在する隙間113に低分子量エッチング成分114が入り込みやすい。そのため、図1も参照して、結晶粒界密度が大きい箇所(幅Lが狭いトレンチ122内)において酸化層103が除去されやすく、結晶粒界密度が小さい箇所(幅Lが広いトレンチ122内)において酸化層103が除去されにくい。したがって、処理対象層102が均一にエッチングされにくく、基板Wの上面のラフネス(表面粗さ)が増大する。
一方、第1実施形態によれば、図9Bに示すように、高分子量エッチング成分である酸性ポリマー115は、低分子量エッチング成分114よりも結晶粒界111に存在する隙間113に入りにくい。そのため、結晶粒界密度に起因する処理対象層102のエッチングのばらつきを低減することができる。基板Wの上面のラフネスを低減できる。
また、第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
第1実施形態によれば、基板Wの上面に供給されたポリマー含有液から溶媒を蒸発させることによって、ポリマー膜101を形成することができる。そのため、溶媒の蒸発によってポリマー膜101中の酸性ポリマーの濃度(密度)を高めることができる。したがって、高濃度(高密度)の酸性ポリマーによって基板Wを速やかにエッチングすることができる。
ポリマー膜101は、ポリマー含有液から溶媒の少なくとも一部が蒸発することによって形成されるため、ポリマー膜101には溶媒が残留する場合がある。ポリマー含有液の溶媒および処理液がともにDIWであれば、すなわち、溶媒が処理液と混和する液体であれば、ポリマー膜101が処理流体に接触することによってポリマー膜101に付着するDIWが、ポリマー膜101に残留する溶媒と混ざり合う。そのため、DIWがポリマー膜の内部に入り込みやすい。そのため、基板Wのエッチングを促進できる。
処理流体の湿度が、50%よりも高く、100%以下であれば、ポリマー膜101に液体状態のDIWを適度に供給できる。処理流体の湿度が80%以上で、かつ、100%以下であれば、DIWをポリマー膜101に充分に供給することができる。処理流体の湿度が85%以上で、かつ、95%以下であれば、DIWをポリマー膜101に充分に供給しつつ、ポリマー膜101へのDIWの供給量を制御しやすい。
<ポリマー含有液の供給方法>
図10および図11は、基板Wに対するポリマー含有液の供給方法の第1例および第2例について説明するための模式図である。図10および図11では、説明の便宜上、スピンチャック5、ヒータユニット6、処理カップ7、対向部材8,酸化剤ノズル9、および、リンス液ノズル11等の図示を省略している。
図10に示す供給方法の第1例では、酸性ポリマー液、および、アルカリ性液体が、混合配管130内で混合されてポリマー含有液が形成され、混合配管130内で形成されたポリマー含有液がポリマー含有液ノズル10から吐出されることによって基板Wの上面に供給される(ポリマー含有液供給工程)。混合配管130は、複数の液体を混合するための配管である。
酸性ポリマー液は、酸性ポリマーおよび溶媒を含有する液体であり、アルカリ性液体は、アルカリ成分および溶媒を含有する液体である。これらの液体に含まれる溶媒は、同種の液体であることが好ましく、たとえば、DIWであることが好ましい。ポリマー含有液は、酸性ポリマー液およびアルカリ性液体の混合液である。
酸性ポリマー液は、酸性ポリマー液配管131介して、酸性ポリマー液タンク141から混合配管130へ供給される。アルカリ性液体は、アルカリ性液体配管132介して、アルカリ性液体タンク142から混合配管130へ供給される。混合配管130内で形成されたポリマー含有液は、ポリマー含有液配管41を介してポリマー含有液ノズル10に供給される。
酸性ポリマー液配管131、および、アルカリ性液体配管132には、対応する配管内の流路を開閉する複数のバルブ(酸性ポリマー液バルブ135A、および、アルカリ性液体バルブ136A)がそれぞれ介装されている。酸性ポリマー液配管131、および、アルカリ性液体配管132には、対応する配管内の液体の流量を調整する複数の流量調整バルブ(酸性ポリマー液流量調整バルブ135B、および、アルカリ性液体流量調整バルブ136B)がそれぞれ介装されている。
ポリマー含有液配管41には、pHメータ129が分岐接続されていてもよい。コントローラ3が、pHメータ129が検出するpHに基づいて、フィードバック制御してもよい。フィードバック制御は、酸性ポリマー液バルブ135A、アルカリ性液体バルブ136A、酸性ポリマー液流量調整バルブ135B、および、アルカリ性液体流量調整バルブ136Bの少なくとも1つを調整することによって、ポリマー含有液のpHが中性を維持するように行われる。
図11に示すポリマー含有液の供給方法の第2例では、ポリマー含有液は、ポリマー含有液配管41を介して、ポリマー含有液タンク140からポリマー含有液ノズル10に供給される。ポリマー含有液タンク140には、酸性ポリマー液、および、アルカリ性液体が、酸性ポリマー液補充管145、および、アルカリ性液体補充管146をそれぞれ介して補充される。ポリマー含有液は、ポリマー含有液タンク140内で酸性ポリマー液、および、アルカリ性液体が混合されることによって形成される。ポリマー含有液は、酸性ポリマー液およびアルカリ性液体の混合液である。
ポリマー含有液タンク140には、pHメータ129が設けられていてもよい。コントローラ3が、pHメータ129が検出するpHに基づいて、フィードバック制御してもよい。フィードバック制御は、複数の補充管(酸性ポリマー液補充管145、および、アルカリ性液体補充管146)にそれぞれ介装された複数の補充バルブ148を調整することによって、ポリマー含有液のpHが中性を維持するように行われる。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第1変形例>
図12は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第1変形例を説明するための流れ図である。基板処理の第1変形例では、最初のポリマー膜除去工程(ステップS8)が終了した後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)からポリマー膜除去工程(ステップS8)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われる。図12における「N」は、自然数を意味している。
2回目以降の液状酸化剤供給工程は、ポリマー膜除去工程(リンス工程)の後、基板Wの上面の表層部を酸化して酸化層103を形成する再形成工程の一例である。サイクル処理の実行によって、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に繰り返される。言い換えると、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に複数回ずつ実行される。サイクル処理が複数サイクル行われ、最後のポリマー膜除去工程(ステップS8)の後、スピンドライ工程(ステップS9)が行われる。
図13は、基板処理において酸化層103の形成と酸化層103の除去とが交互に繰り返されることによる基板Wの上面の表層部の変化について説明するための模式図である。
図13(a)に示すように、基板Wの上面に液状酸化剤を供給することによって、酸化層103が処理対象層102の表層部に形成される(酸化層形成工程)。処理対象層102を酸化することによって、酸化層103が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
その後、基板Wの上面にポリマー含有液が供給され、基板W上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって、図13(b)に示すように、基板Wの上面にポリマー膜101が形成される(ポリマー膜形成工程)。
その後、図13(c)に示すように、ポリマー膜101を加熱することによってアルカリ成分が蒸発しポリマー膜101からアルカリ成分が除去される(アルカリ成分蒸発工程、アルカリ成分除去工程)。そして、図13(d)に示すように、ポリマー膜101に水蒸気等を含む処理流体が供給されることによって、基板Wの上面上のポリマー膜101中の酸性ポリマーによる酸化層103のエッチングが促進される。
基板Wの上面上のポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって、酸化層103が溶解されてポリマー膜101に溶け込む。これにより、図13(e)に示すように、酸化層103が基板Wの上面から選択的に除去される(酸化層除去工程)。図13(f)は、その後、ポリマー膜101が除去された後の処理対象層102の表面の状態を示している。
酸化層形成工程および酸化層除去工程を一回ずつ実行することによって、酸化される処理対象層102の厚みは、ほぼ一定である(図13(a)および(g)を参照)。そのため、除去される酸化層103の厚み(エッチング量D1)も、ほぼ一定である(図13(e)を参照)。
図13(h)に示すように、サイクル処理を複数サイクル実行することによって、処理対象層102において、厚みD1とサイクル数(図13(h)では3サイクル)との積に相当する厚みD2の部分が基板Wから除去される(D2=D1xサイクル数)。サイクル処理を複数サイクル行うことによってエッチングされる処理対象層102の量が、厚みD2に相当する。そのため、酸化層形成工程および酸化層除去工程を繰り返し実行する回数を調整することによって、所望のエッチング量(厚みD2と同じ量)を達成することができる。
このように、一定のエッチング量で段階的に処理対象層102をエッチングすることをデジタルエッチングという。また、酸化層形成工程および酸化層除去工程を繰り返し実行することによって処理対象層102をエッチングすることをサイクルエッチングという。
第1実施形態によれば、コントローラ3が、酸化剤ノズル9、ポリマー含有液ノズル10およびスピンベース21等を制御することによって、処理対象層の酸化(酸化層の形成)、および、ポリマー膜101の形成が交互に繰り返される。酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されることによって、処理対象層102を精度良くエッチングできる。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第2変形例>
図14は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第2変形例を説明するための流れ図である。図15は、基板処理の第2変形例例が行われているときの基板Wの様子を説明するための模式図である。
図14に示す基板処理が、図5に示す基板処理と主に異なる点は、液状酸化剤供給工程(ステップS2)および酸化剤除去工程(ステップS3)の代わりに、ヒータユニット6による加熱によって酸化層を形成する加熱酸化工程(ステップS11)が実行される点である。
詳しくは、基板Wがウェット処理ユニット2Wに搬入された後、スピンチャック5に保持されている基板Wがヒータユニット6によって所定の酸化温度に加熱される(加熱酸化工程)。これにより、基板Wの上面から露出する処理対象層が酸化されて酸化層が形成される(酸化層形成工程)。処理対象層(基板Wの上面の表層部)を酸化することによって、酸化層が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
所定の酸化温度は、たとえば、100℃以上で、かつ、400℃以下の温度である。加熱によって形成される酸化層は、たとえば、10nm以上20nm以下の厚みを有する。
ヒータユニット6は、たとえば、図15に示すように接触位置に配置される。これにより、処理対象層が酸化される程度の高温に基板Wを加熱することができる。この基板処理では、ヒータユニット6が基板酸化ユニットとして機能する。基板Wの処理対象層を酸化することができれば、ヒータユニット6の位置は近接位置であってもよい。
その後、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)が実行される。詳しくは、第2ノズル移動機構34がポリマー含有液ノズル10を処理位置に移動させ、ポリマー含有液バルブ51Aが開かれる。これにより、基板Wの上面にポリマー含有液が供給される。
その後、ポリマー膜形成工程(ステップS5)およびポリマー膜加熱工程(ステップS6)が実行される。ポリマー膜加熱工程(ステップS6)おける基板Wの加熱温度は、加熱酸化工程における基板Wの加熱温度よりも低いことが好ましい。たとえば、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)では、図6Fに示すように、ヒータユニット6を接触位置よりも基板Wから離間する近接位置に配置しながら行われることが好ましい。少なくとも、ポリマー加熱工程(ステップS6)におけるヒータユニット6の位置は、加熱酸化工程におけるヒータユニット6の位置よりも基板Wから離間していることが好ましい。これにより、基板Wの上面の表層部の酸化を抑制しながら、ポリマー膜101による酸化層103の除去を開始および促進できる。
この基板処理を採用すれば、基板Wを加熱することによって、基板Wの上面から露出する処理対象層102(図1を参照)を酸化することができる。すなわち、液体を用いることなく、酸化層103(図1を参照)を形成することができる。そのため、処理対象層102のエッチングに用いられる物質(酸化剤)の使用量を低減できる。さらに、酸化層103の形成および除去が、同一のスピンチャック5に基板Wが保持されている状態で行われる。したがって、基板Wを移動させる必要がないため、別々のスピンチャックに基板Wが保持された状態で酸化層103の形成および除去が行われる構成と比較して、酸化層103を速やかに除去できる。
さらに、基板Wを酸化するために加熱された基板Wの熱量をポリマー膜101の加熱に利用できる。ひいては、基板処理に要する時間を削減できる。
また、この基板処理を採用すれば、酸化層103の形成に用いられるヒータユニット6を、酸化層103の除去を促進するための加熱にも利用することができる。そのため、基板Wを酸化するための加熱に用いられるヒータユニット6とは別のヒータを酸化層103の除去の促進ために設ける必要がないため、基板処理を簡素化できる。
さらに、酸化層103を形成するための加熱に用いられるヒータユニット6を、酸化層103の除去を促進するための加熱にも利用することで、酸化層103の形成のためにヒータユニット6に与えられた熱量をポリマー膜101の加熱に利用できる。そのため、酸化層103の酸化に用いられるヒータユニット6とは別のヒータユニットをポリマー膜101の加熱のために設ける構成と比較して、処理対象層102のエッチングを効率良く促進できる。
図14に二点鎖線で示すように、最初のポリマー膜除去工程(ステップS8)が終了した後、加熱酸化工程(ステップS11)からポリマー膜除去工程(ステップS8)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われてもよい。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第3変形例>
図16は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第3変形例を説明するための流れ図である。図17は、基板処理の第3変形例が行われているときの基板Wの様子を説明するための模式図である。基板処理の第3変形例では、ポリマー膜形成工程(ステップS5)においてポリマー膜101が形成された後、図17に示すように、ポリマー膜101を加熱することなく処理流体供給工程(ステップS7)が実行される。
この基板処理では、ポリマー膜101から積極的にアルカリ成分を蒸発させることなく、ポリマー膜101と対向面8aとの間の空間SP1に処理流体が供給される。そのため、ポリマー膜101に処理流体を供給する前にポリマー膜101を加熱する場合と比較して、エッチングの開始が遅くなる。しかしながら、ポリマー膜101からアルカリ成分が徐々に蒸発されるため、ポリマー膜101による基板Wのエッチングは開始され得る。
図16に二点鎖線で示すように、最初のポリマー膜除去工程(ステップS8)が終了した後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)からポリマー膜除去工程(ステップS8)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われてもよい。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第4変形例>
図18は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第4変形例を説明するための流れ図である。基板処理の第4変形例では、ポリマー膜形成工程(ステップS5)においてポリマー膜101が形成された後、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)と並行して処理流体供給工程(ステップS7)が実行される。詳しくは、ポリマー膜101を加熱してアルカリ成分を蒸発させながら、ポリマー膜101と対向面8aとの間の空間SP1に処理流体が供給される。
そのため、ポリマー膜101に処理流体を供給する前にポリマー膜101を加熱する場合と比較して、エッチングの開始が遅くなる。しかしながら、処理流体の供給と並行して行われる基板Wの加熱によって、ポリマー膜101からアルカリ成分が蒸発される。そのため、ポリマー膜101による基板Wのエッチングが開始される。
図18に二点鎖線で示すように、最初のポリマー膜除去工程(ステップS8)が終了した後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)からポリマー膜除去工程(ステップS8)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われてもよい。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第5変形例>
図19は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第5変形例を説明するための流れ図である。基板処理の第5変形例は、予め酸化層103(図1を参照)が形成されている基板Wを用いる場合の基板処理である。基板処理の第5変形例では、まず、酸化層103が露出する主面を有する基板Wを準備する(基板準備工程)。具体的には、第1酸化層が露出する上面を有する基板Wが収容されたキャリアCがロードポートLP上に載置される。
酸化層103が露出する上面を有する基板Wが、搬送ロボットIR,CR(図2Aを参照)によってキャリアCからウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。その後、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)~基板搬出工程(ステップS10)が実行される。
<第1実施形態に係る基板処理装置による基板処理の第6変形例>
図20は、基板処理装置1によって実行される基板処理の第6変形例を説明するための流れ図である。
図20に示す基板処理の第6変形例は、図19に示す基板処理と同様に、予め酸化層103(図1を参照)が形成されている基板Wを用いる場合の基板処理である。ただし、基板処理の第6変形例では、図19に示す基板処理とは異なり、最初のポリマー膜除去工程(ステップS8)の後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)~ポリマー膜除去工程(ステップS8)が少なくとも1回ずつ実行される。図20における「M」は、0以上の整数を意味している。
液状酸化剤供給工程は、ポリマー膜除去工程(リンス工程)の後、基板Wの上面の表層部を酸化して酸化層103を形成する再形成工程の一例である。サイクル処理の実行によって、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に繰り返される。言い換えると、酸化層形成工程および酸化層除去工程が交互に複数回ずつ実行される。
サイクル処理が複数サイクル行われ、最後のポリマー膜除去工程(ステップS7)の後、スピンドライ工程(ステップS9)が行われる。基板処理の第6変形例における酸化層103の形成および除去の様子は、図13と同様であるため、説明を省略する。
<ウェット処理ユニット2Wの変形例>
図21は、ウェット処理ユニット2Wに備えられる基板加熱ユニットの変形例について説明するための模式図である。ウェット処理ユニット2Wは、図21に示すように、基板加熱ユニットとして、ヒータユニット6の代わりに、スピンチャック5に保持された基板Wの下面に向けて、基板Wを加熱する加熱流体を供給する加熱流体ノズル13を備えていてもよい。
加熱流体ノズル13は、たとえば、スピンベース21の貫通孔21aに挿入されている。加熱流体ノズル13の吐出口13aは、基板Wの下面の中央領域に下方から対向する。
加熱流体ノズル13には、加熱流体ノズル13に加熱流体を案内する加熱流体配管45に接続されている。加熱流体配管45には、加熱流体配管45内の流路を開閉する加熱流体バルブ55Aと、当該加熱流体配管45内の加熱流体の流量を調整する加熱流体流量調整バルブ55Bとが介装されている。加熱流体ノズル13に供給される加熱流体の温度を調整するヒータ55C(温度調整ユニット)が設けられていてもよい。
加熱流体バルブ55Aが開かれると、加熱流体が、加熱流体流量調整バルブ55Bの開度に応じた流量で、加熱流体ノズル13の吐出口13aから上方に連続流で吐出され、基板Wの下面の中央領域に供給される。
図21に示すウェット処理ユニット2Wを用いて、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)において基板Wの下面に加熱流体を供給することによって、基板Wを介して、基板Wの上面上のポリマー膜101を加熱することができる。
加熱流体ノズル13から吐出される加熱流体は、たとえば、常温よりも高く、ポリマー含有液の溶媒の沸点よりも低い温度の高温DIWである。加熱流体ノズル13から吐出される加熱流体は、高温DIWには限られず、高温不活性ガスや高温空気等の高温気体であってもよい。
図21に示すウェット処理ユニット2Wを備える基板処理装置1によって、図5に示す基板処理を実行することができるし、基板処理の各変形例(第1変形例~第6変形例)を実行することもできる。
図21に示すウェット処理ユニット2Wを備える基板処理装置1によって図14に示す基板処理を実行する場合、基板Wの下面に加熱流体を供給することによって、処理対象層を酸化して酸化層を形成することも可能である(酸化層形成工程)。このように、加熱流体ノズル13が基板酸化ユニットとして機能する。処理対象層(基板Wの上面の表層部)を酸化することによって、酸化層が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
図21に示すウェット処理ユニット2Wを用いて加熱酸化工程(ステップS11)を実行する場合、酸化層を形成する際の加熱流体の温度が、ポリマー膜101を加熱する際の加熱流体の温度よりも高くなるように、加熱流体の温度が調整されることが好ましい。
<ウェット処理ユニットに備えられる対向部材の変形例>
図22は、対向部材8の変形例について説明するための模式図である。図22に示す対向部材8は、処理流体ノズル12の吐出口12aから吐出される処理流体を貯留する処理流体貯留空間27を有している。
図22に示す対向部材8には、吐出口8bが複数設けられている。複数の吐出口8bは、対向面8aから開口しており、対向面8aの全体に等間隔に設けられている。複数の吐出口8bは、処理流体貯留空間27と繋がっており、処理流体貯留空間27内の処理流体を吐出する。
複数の吐出口8bが対向面8aに等間隔に設けられているため、処理流体供給工程(ステップS7)において、基板Wの上面と対向面8aとの間の空間SP1の全体に処理流体を満遍なく供給しやすい。そのため、空間SP1内の各位置における湿度を均一に維持しやすい。
<処理流体ノズルの変形例>
図23~図25は、それぞれ、処理流体ノズル12の第1変形例~第3変形例について説明するための模式図である。
図23に第1変形例として示すように、処理流体ノズル12は、対向部材8内に配置されておらず、基板Wの上面に沿って水平方向に移動可能な移動ノズルであってもよい。処理流体ノズル12は、第1ノズル移動機構33と同様の構成の第3ノズル移動機構35によって、水平方向に移動される。処理流体ノズル12は、鉛直方向に移動可能であってもよい。
処理流体ノズル12は、処理流体ノズル12にDIWを案内するDIW供給管43の一端に接続されている。DIW供給管43の他端は、DIWタンク(図示せず)に接続されている。処理流体ノズル12には、加湿ユニット36および湿度測定ユニット38が取り付けられている。処理流体ノズル12は、処理流体を吐出する吐出口12aと、加湿ユニット36によって湿度が調整された処理流体を吐出口12aに送る流路が形成されている供給部12b(供給経路37)とを有する。
図23に示すDIW供給管43には、DIW供給管43内の流路を開閉するDIWバルブ53Aと、当該流路内の液体状態のDIWの流量を調整するDIW流量調整バルブ53Bとが介装されている。DIWバルブ53A開かれると、DIW流量調整バルブ53Bの開度に応じた流量で、加湿ユニット36に液体状態のDIWが供給される。加湿ユニット36は、液体状態のDIWから処理流体を形成する。加湿ユニット36によって形成された処理流体は、処理流体ノズル12の吐出口12aから吐出される。
処理流体供給工程(ステップS7)において、基板Wの上面上のポリマー膜101に接する空間SP2に向けて、処理流体ノズル12から処理流体を吐出させながら、処理流体ノズル12が基板Wの上面に沿って移動される。具体的には、処理流体ノズル12は、基板Wの上面の中央領域に対向する中央位置(図23の実線を参照)と、基板Wの上面の周縁領域に対向する周縁位置(図23の二点鎖線を参照)との間で移動しながら、ポリマー膜101に接する空間SP2に向けて処理流体を吐出する。したがって、基板Wの上面に接する空間SP2の一部のみに向けて処理流体を供給する場合と比較して、基板Wの上面上のポリマー膜101の全体に速やかに処理流体を供給することができる。
図23に示す構成によれば、湿度測定ユニット38によって測定される湿度に基づいて、加湿ユニット36によって、供給部12bを通過する処理流体の湿度を調整することができる。これにより、供給部12bを通過する処理流体の湿度、すなわち、処理流体ノズル12の吐出口12aから吐出される処理流体の湿度が所望の湿度となるよう処理流体の湿度を調整できる。その結果、基板Wの上面上のポリマー膜101に接する雰囲気の湿度を、ポリマー膜101による基板Wのエッチングを効果的に促進できる湿度に調整ことができる。
湿度測定ユニット38および加湿ユニット36は、必ずしも処理流体ノズル12に取り付けられている必要はない。詳しくは、図24に第2変形例として示すように、加湿ユニット36が処理流体ノズル12に処理流体を供給する処理流体配管44に接続されていて、湿度測定ユニット38が処理流体配管44に取り付けられていてもよい。図24に示す構成では、処理流体ノズル12の供給部12bと、処理流体配管44によって、供給経路37が構成されている。図24に示す構成においても、図23に示す構成と同様の効果を奏する。
図24に示す構成において、湿度測定ユニット38および加湿ユニット36を、チャンバ4の外側に配置することが可能である。たとえば、チャンバ4内に湿度測定ユニット38および加湿ユニット36の配置スペースを充分に確保できない場合には、チャンバ4の外側に湿度測定ユニット38および加湿ユニット36を配置することでチャンバ4外の空間を有効に活用することができる。
さらに、第3変形例として図25に示すように、処理流体ノズル12は、下方および水平方向の両方に処理流体を吐出できるように構成されていてもよい。具体的には、処理流体ノズル12が、底面(下面)150、および、底面150に連結され鉛直方向に延びる略円筒状の側面151を有するノズル本体152を含む。処理流体ノズル12は、底面150から開口し処理流体を下方に向けて直線状に吐出する平面視円形状の第1吐出口150aと、側面151から開口し側面151の外方に向けて放射状に気体を吐出する環状の第2吐出口150bとを含む。
ノズル本体152の内部には、第1吐出口150aに処理流体を供給する第1流路152aと、第2吐出口150bに処理流体を供給する第2流路152bとが形成されている。
ウェット処理ユニット2Wは、ノズル本体152に接続されノズル本体152の第1流路152aに処理流体を供給する第1処理流体配管44Aと、ノズル本体152に接続され、ノズル本体152の第2流路152bに処理流体を供給する第2処理流体配管44Bと、第1処理流体配管44Aに取り付けられている第1湿度測定ユニット38Aと、第2処理流体配管44Bに取り付けられている第2湿度測定ユニット38Bとを含む。
ウェット処理ユニット2Wは、第1処理流体配管44Aに接続され、処理流体の湿度を調整する第1加湿ユニット36Aと、DIW供給源(図示せず)から第1加湿ユニット36Aに液体状態のDIWを送る第1DIW供給管43Aと、第2処理流体配管44Bに接続され、処理流体の湿度を調整する第2加湿ユニット36Bと、DIW供給源(図示せず)から第2加湿ユニット36Bに液体状態のDIWを送る第2DIW供給管43Bとを含む。
各DIW供給管(第1DIW供給管43Aおよび第2DIW供給管43B)には、DIWバルブ53AおよびDIW流量調整バルブ53Bが介装されている。
図25に示す第3変形例に係る処理流体ノズル12において、ノズル本体152と、第1処理流体配管44Aと、第2処理流体配管44Bとによって、第1吐出口150aおよび第2吐出口150bに処理流体を供給する供給経路37が構成されている。ノズル本体152と第1処理流体配管44Aとによって構成される処理流体の経路を、第1吐出口150aに処理流体を供給する第1供給経路という。同様に、ノズル本体152と第2処理流体配管44Bとによって構成される処理流体の経路を、第2吐出口150bに処理流体を供給する第2供給経路という。
図25に示す第3変形例では、各処理液供給配管に別々の加湿ユニットが設けられているが、単一の加湿ユニットに第1処理流体配管44Aおよび第2処理流体配管44Bが接続されていてもよい。また、第3変形例では、各処理流体配管に別々の湿度測定ユニットが取り付けられているが、単一の湿度測定ユニットが、第1処理流体配管44Aおよび第2処理流体配管44Bの両方に跨って取り付けられていてもよい。
<第2実施形態に係る基板処理装置の構成>
図26は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pの構成を説明するための平面図である。
第2実施形態に係る基板処理装置1Pが第1実施形態に係る基板処理装置1(図2Aを参照)と主に異なる点は、処理ユニット2が、ウェット処理ユニット2Wおよびドライ処理ユニット2Dを含む点である。
図26において、前述の図1~図25に示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。後述する図27~図30についても同様である。
ドライ処理ユニット2Dでは、光照射、加熱、および、ガス状酸化剤の供給の少なくともいずれかによって、酸化層103を形成するドライ酸化処理が実行される。
図26に示す例では、搬送ロボットIR側の2つの処理タワーが、複数のウェット処理ユニット2Wによって構成されており、搬送ロボットIRとは反対側の2つの処理タワーが、複数のドライ処理ユニット2Dによって構成されている。
第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成は、第1実施形態に係るウェット処理ユニット2Wの構成(図3、図21~図25に示す構成)と同じである。なお、第2実施形態に係るウェット処理ユニット2Wでは、酸化剤ノズル9(図3等を参照)を省略することが可能である。ドライ処理ユニット2Dは、チャンバ4内に配置され、基板Wに対して光照射処理を行う光照射処理ユニット70を含む。
以下では、光照射処理ユニット70の構成例について説明する。図27は、光照射処理ユニット70の構成例を説明するための模式的な断面図である。
光照射処理ユニット70は、基板Wが載置される載置面72aを有するベース72と、ベース72を収容する光処理チャンバ71と、載置面72aに載置された基板Wの上面に向けて紫外線等の光を照射する光照射ユニット73と、ベース72を貫通して上下動する複数のリフトピン75と、複数のリフトピン75を上下方向に移動させるピン昇降機構76とを備えている。
光処理チャンバ71の側壁には、基板Wの搬入出口71aが設けられており、光処理チャンバ71は、搬入出口71aを開閉させるゲートバルブ71bを有する。搬入出口71aが開かれているとき、搬送ロボットCRのハンドHが光処理チャンバ71にアクセスできる。基板Wは、ベース72上に載置されることによって、所定の保持位置に水平に保持される。所定の保持位置は、図27に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
光照射ユニット73は、たとえば、複数の光照射ランプを含んでいる。光照射ランプは、たとえば、キセノンランプ、水銀ランプ、重水素ランプ等である。光照射ユニット73は、たとえば、1nm以上で、かつ、400nm以下、好ましくは、1nm以上で、かつ、300nm以下の紫外線を照射するように構成されている。具体的には、光照射ユニット73には、電源等の通電ユニット74が接続されており、通電ユニット74から電力が供給されることによって、光照射ユニット73(の光照射ランプ)が光を照射する。たとえば、光照射によって、基板Wの主面に接する雰囲気中にオゾンが発生し、そのオゾンによって基板Wの上面が酸化される。
複数のリフトピン75は、ベース72および光処理チャンバ71を貫通する複数の貫通孔78にそれぞれ挿入されている。複数のリフトピン75は、連結プレート77によって連結されている。複数のリフトピン75は、ピン昇降機構76が連結プレート77を昇降させることによって、載置面72aよりも上方で基板Wを支持する上位置(図27に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が載置面72aよりも下方に没入する下位置(図27に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降機構76は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
図4に二点鎖線で示すように、ドライ処理ユニット2Dに含まれる各部材も、ウェット処理ユニット2Wと同様に、コントローラ3によって制御される。
<第2実施形態に係る基板処理の一例>
図28は、第2実施形態に係る基板処理装置1Pによって実行される基板処理の一例を説明するための流れ図である。第2実施形態に係る基板処理が、第1実施形態に係る基板処理(図5を参照)と主に異なる点は、ドライ処理ユニット2Dによって酸化層の形成が行われ、ウェット処理ユニット2Wによって酸化層の除去が行われる点である。
以下では、主に図3、図27および図28を参照して、第2実施形態に係る基板処理が第1実施形態に係る基板処理(図5を参照)と異なる点について詳しく説明する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(図26も参照)によってキャリアCからドライ処理ユニット2Dに搬入され、上位置に位置する複数のリフトピン75に渡される(第1搬入工程:ステップS20)。ピン昇降機構76が複数のリフトピン75を下位置に移動させることによって、基板Wが載置面72aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第1基板保持工程)。
次に、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2D外に退避した後、基板Wの上面に光を照射して酸化層を形成する光照射工程(ステップS21)が実行される。具体的には、通電ユニット74が光照射ユニット73に電力を供給する。これにより、光照射ユニット73によって基板Wに対する光照射が開始される。光照射によって、基板Wの上面から露出する処理対象層が酸化され、酸化層が形成される(酸化層形成工程、光照射工程、ドライ酸化工程)。処理対象層(基板Wの上面の表層部)を酸化することによって、酸化層が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
光照射によって形成される酸化層は、10nm以上20nm以下の厚みを有する。光照射ユニット73は、基板酸化ユニットとして機能する。
一定時間の光照射の後、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2Dに進入し、酸化された基板Wをベース72から受け取り、ドライ処理ユニット2D外へと搬出する(第1搬出工程:ステップS22)。具体的には、ピン昇降機構76が複数のリフトピン75が上位置に移動させて、複数のリフトピン75が基板Wをベース72から持ち上げる。搬送ロボットCRは、複数のリフトピン75から基板Wを受け取る。
ドライ処理ユニット2Dから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20(図3を参照)に渡される(第2搬入工程:ステップS23)。開閉機構25(図3を参照)が複数のチャックピン20を閉位置に移動させることによって、基板Wが複数のチャックピン20に把持される。これにより、基板Wは、スピンチャック5(図3を参照)によって水平に保持される(第2基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、スピンモータ23(図3を参照)が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。
その後、図6C~図6Hに示すように、ポリマー含有液供給工程(ステップS4)、ポリマー膜形成工程(ステップS5)、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)、処理流体供給工程(ステップS7)、および、ポリマー膜除去工程(ステップS8)が実行される。
ポリマー膜除去工程の後、スピンドライ工程(ステップS9)が行われる。具体的には、リンス液バルブ52Aが閉じられ、基板Wの上面へのリンス液の供給が停止される。そして、スピンモータ23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転させる。基板Wは、乾燥速度、たとえば、1500rpmで回転される。それによって、大きな遠心力が基板W上のリンス液に作用し、基板W上のリンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
そして、スピンモータ23が基板Wの回転を停止させる。搬送ロボットCRが、ウェット処理ユニット2Wに進入して、複数のチャックピン20から基板Wを受け取って、ウェット処理ユニット2W外へと搬出する(第2搬出工程:ステップS24)。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、基板Wの上面上に形成されたポリマー膜101に含有される酸性ポリマーによって基板Wがエッチングされる。そのため、処理対象層102のエッチングに要する物質(フッ酸や酸性ポリマー)の使用量を低減できる。
第2実施形態によれば、以下の効果をさらに奏する。たとえば、第2実施形態によれば、光照射によって、処理対象層102が酸化される。すなわち、液状酸化剤を用いることなく、基板Wを酸化することができる。そのため、基板Wの上面に付着した液状酸化剤を除去する手間を省くことができる。また、光照射により基板Wを酸化する構成であるため、酸化剤を用いることなく、処理対象層102をエッチングできる。すなわち、処理対象層102のエッチングに要する物質の使用量を低減できる。
図28に二点鎖線で示すように、第1搬入工程(ステップS20)から第2搬出工程(ステップS24)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われてもよい。すなわち、サイクル処理が、複数サイクル行われてもよい。最後の第2搬出工程(ステップS24)の後、基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。サイクル処理を実行すれば、酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されるため、処理対象層102を精度良くエッチングできる。
図28に二点鎖線で示す基板処理とは異なり、最後のスピンドライ工程(ステップS9)以外のスピンドライ工程を省略してもよい。詳しくは、最後のポリマー膜除去工程(ステップS8)の後を除いて、ポリマー膜除去工程の後、スピンドライ工程を実行することなく、基板Wをウェット処理ユニット2Wからドライ処理ユニット2Dに搬送してもよい。
<ドライ処理ユニットの変形例>
ドライ処理ユニット2Dは、光照射処理ユニット70の代わりに、ガス酸化処理ユニット80を備えていてもよい。図29は、ガス酸化処理ユニット80の構成例を説明するための模式的な断面図である。
ガス酸化処理ユニット80は、基板Wが載置される加熱面82aを有するヒータユニット82と、ヒータユニット82を収容する熱処理チャンバ81とを備えている。
ヒータユニット82は、円板状のホットプレートの形態を有している。ヒータユニット82は、プレート本体82Aおよびヒータ85を含む。ヒータユニット82は、加熱部材ともいう。
プレート本体82Aの上面が加熱面82aを構成している。ヒータ85は、プレート本体82Aに内蔵されている抵抗体であってもよい。ヒータ85は、ヒータ85の温度とほぼ等しい温度に基板Wを加熱できる。ヒータ85は、たとえば、加熱面82aに載置された基板Wを常温以上400℃以下の所定温度範囲で加熱できるように構成されている。具体的には、ヒータ85には、電源等の通電ユニット86が接続されており、通電ユニット86から供給される電流が調整されることによって、ヒータ85の温度が所定温度範囲内の温度に変化する。
熱処理チャンバ81は、上方に開口するチャンバ本体87と、チャンバ本体87の上方で上下動しチャンバ本体87の開口を塞ぐ蓋88とを備えている。ガス酸化処理ユニット80は、蓋88を昇降(上下方向に移動)させる蓋昇降機構89を備えている。チャンバ本体87と蓋88との間は、Oリング等の弾性部材90によって密閉される。
蓋88は、蓋昇降機構89によって、チャンバ本体87の開口を塞いで内部に密閉処理空間SP3を形成する下位置(図29に実線で示す位置)と、開口を開放するように上方に退避した上位置(図29に二点鎖線で示す位置)との間で上下動される。
蓋88が上位置に位置するとき、搬送ロボットCRのハンドHが熱処理チャンバ81内にアクセスできる。基板Wは、ヒータユニット82上に載置されることによって、所定の保持位置に水平に保持される。所定の保持位置は、図29に示す基板Wの位置であり、基板Wが水平な姿勢で保持される位置である。
蓋昇降機構89は、電動モータまたはエアシリンダを有していてもよいし、これら以外のアクチュエータを有していてもよい。
ガス酸化処理ユニット80は、プレート本体82Aを貫通して上下動する複数のリフトピン83と、複数のリフトピン83を上下方向に移動させるピン昇降機構84とをさらに備えている。複数のリフトピン83は、連結プレート91によって連結されている。複数のリフトピン83は、ピン昇降機構84が連結プレート91を昇降させることによって、加熱面82aよりも上方で基板Wを支持する上位置(図29に二点鎖線で示す位置)と、先端部(上端部)が加熱面82aよりも下方に没入する下位置(図29に実線で示す位置)との間で上下動される。ピン昇降機構84は、電動モータまたはエアシリンダであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
複数のリフトピン83は、ヒータユニット82およびチャンバ本体87を貫通する複数の貫通孔92にそれぞれ挿入されている。熱処理チャンバ81の外から貫通孔92への流体の進入が、リフトピン83を取り囲むベローズ(図示せず)等によって防止されてもよい。
ガス酸化処理ユニット80は、熱処理チャンバ81内の密閉処理空間SP3にガス状酸化剤を導入する複数のガス導入ポート94を備えている。各ガス導入ポート94は、蓋88を貫通する貫通孔である。
ガス状酸化剤は基板Wから露出する処理対象層を酸化させて酸化層を形成する気体である。ガス状酸化剤は、たとえば、オゾン(O)ガスである。ガス状酸化剤は、オゾンガスに限られず、たとえば、酸化性水蒸気、過熱水蒸気等であってもよい。
複数のガス導入ポート94には、ガス状酸化剤をガス導入ポート94に供給するガス状酸化剤配管95が接続されている。ガス状酸化剤配管95は、ガス状酸化剤供給源(図示せず)から複数のガス導入ポート94に向かう途中で分岐している。ガス状酸化剤配管95には、その流路を開閉するガス状酸化剤バルブ96Aと、ガス状酸化剤配管95内のガス状酸化剤の流量を調整するガス状酸化剤流量調整バルブ96Bとが介装されている。
ガス状酸化剤バルブ96Aが開かれると、複数のガス導入ポート94から密閉処理空間SP3にガス状酸化剤が導入され、基板Wの上面に向けてガス状酸化剤が供給される。複数のガス導入ポート94は、ガス状酸化剤供給部材の一例である。
複数のガス導入ポート94は、ガス状酸化剤に加えて不活性ガスを供給できるように構成されていてもよい(図29の二点鎖線を参照)。また、密閉処理空間SP3に導入されるガス状酸化剤に不活性ガスを混入させることもでき、不活性ガスの混入度合いによって酸化剤の濃度(分圧)を調整できる。
ガス酸化処理ユニット80は、チャンバ本体87に形成され、熱処理チャンバ81の内部雰囲気を排気する複数の排出ポート97を備えている。各排出ポート97には、排出配管98が接続されており、排出配管98には、その流路を開閉する排出バルブ99が介装されている。
<第2実施形態に係る基板処理の別の例>
図30は、第2実施形態に係る基板処理の別の例を説明するための流れ図である。
図30に示す基板処理が図28に示す基板処理と異なる点は、光照射工程(ステップS21)の代わりに、基板Wを加熱しながらガス状酸化剤を基板Wの上面に向けて供給することで、酸化層を形成するガス状酸化剤供給工程(ステップS30)が実行される点である。
以下では、主に、図3、図29および図30を参照して、図30に示す基板処理について、図28に示す基板処理との差異点を中心に説明する。
まず、未処理の基板Wは、搬送ロボットIR,CR(図26も参照)によってキャリアCからドライ処理ユニット2Dに搬入される(第1搬入工程:ステップS20)。ピン昇降機構84が複数のリフトピン83を下位置に移動させることによって、基板Wが加熱面82aに載置される。これにより、基板Wは、水平に保持される(第1基板保持工程)。
その後、蓋88を下降させることによって、チャンバ本体87と蓋88とによって形成される密閉処理空間SP3内で、ヒータユニット82の加熱面82a上に基板Wが載置された状態となる。加熱面82a上に載置された基板Wは、ヒータユニット82によって、所定の酸化温度に加熱される(基板加熱工程、ヒータ加熱工程)。所定の酸化温度は、たとえば、100℃以上で、かつ、400℃以下の温度である。
密閉処理空間SP3が形成されている状態で、ガス状酸化剤バルブ96Aが開かれる。これにより、複数のガス導入ポート94から密閉処理空間SP3にオゾンガス等のガス状酸化剤が導入され、基板Wの上に向けてガス状酸化剤が供給される(ガス状酸化剤供給工程:ステップS30)。
密閉処理空間SP3にガス状酸化剤が供給される前に、ガス導入ポート94から不活性ガスを密閉処理空間SP3に供給して、密閉処理空間SP3内の雰囲気が不活性ガスで置換してもよい(予備置換工程)。
複数のガス導入ポート94から吐出されたガス状酸化剤によって、基板Wから露出している処理対象層が酸化されて酸化層が形成される(酸化層形成工程、ガス状酸化剤供給工程、ドライ酸化工程)。処理対象層(基板Wの上面の表層部)を酸化することによって、酸化層が露出する上面を有する基板Wが準備される(基板準備工程)。
オゾンガス等のガス状酸化剤によって形成される酸化層は、たとえば、10nm以上20nm以下の厚みを有する。基板Wは、ヒータユニット82上で酸化温度にまで加熱されている。そのため、酸化層形成工程では、基板Wを酸化温度に加熱しながら基板Wの上面に向けてガス状酸化剤を供給する加熱酸化工程が実行される。このように、ガス導入ポート94、および、ヒータユニット82が、基板酸化ユニットとして機能する。
ガス状酸化剤の供給中には、排出バルブ99が開かれている。そのため、密閉処理空間SP3内のガス状酸化剤は排出配管98から排気される。
ガス状酸化剤で基板Wの上面を処理した後、ガス状酸化剤バルブ96Aが閉じられる。これにより、密閉処理空間SP3へのガス状酸化剤の供給が停止される。その後、蓋88が上位置に移動する。密閉処理空間SP3内の雰囲気を不活性ガスで置換した後、蓋88を上位置に移動させてもよい。
一定時間の熱処理の後、搬送ロボットCRがドライ処理ユニット2Dに進入し、酸化された基板Wをドライ処理ユニット2D外へと搬出する(第1搬出工程:ステップS22)。具体的には、ピン昇降機構84が複数のリフトピン83が上位置に移動させて、複数のリフトピン83が基板Wをヒータユニット82から持ち上げる。搬送ロボットCRは、複数のリフトピン83から基板Wを受け取る。ドライ処理ユニット2Dから搬出された基板Wは、搬送ロボットCRによってウェット処理ユニット2Wに搬入され、スピンチャック5の複数のチャックピン20(図3を参照)に渡される(第2搬入工程:ステップS23)。
図30に示す第2実施形態の基板処理の別の例においても、液状酸化剤を用いることなく、酸化層103を形成することができる。そのため、基板Wの上面に付着した液状酸化剤を除去する手間を省くことができる。
図30に二点鎖線で示すように、第1搬入工程(ステップS20)から第2搬出工程(ステップS24)までを1サイクルとするサイクル処理がさらに1回以上行われてもよい。すなわち、サイクル処理が、複数サイクル行われてもよい。最後の第2搬出工程(ステップS24)の後、基板Wは、搬送ロボットCRから搬送ロボットIRへと渡され、搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。サイクル処理を実行すれば、酸化層103の形成および酸化層103の除去が交互に繰り返されるため、処理対象層102を精度良くエッチングできる。
図29に示すドライ処理ユニット2Dを用いて、ガス状酸化剤の供給および基板Wの加熱のいずれかのみによって、酸化層103を形成してもよい。また、図27に示すドライ処理ユニット2Dと図29に示すドライ処理ユニット2Dとを組み合わせてもよい。
たとえば、酸化層103を形成してもよい基板Wに対して光照射を行いながら基板Wを加熱することによって、酸化層103を形成してもよい。具体的には、基板Wに対して紫外線を照射しながら基板Wを加熱することで紫外線ラジカル酸化処理を行うことができる。また、基板Wに対して光照射を行いながら基板Wにガス状酸化剤を供給することによって、酸化層103を形成してもよい。また、紫外線照射、およびガス状酸化剤の供給を行いながら、基板Wを加熱することで、基板Wの処理対象層を酸化してもよい。
すなわち、ドライ処理ユニット2Dとしては、図27および図29に示すドライ処理ユニット2Dだけでなく、光照射、ガス状酸化剤の供給、および基板Wの加熱のうちの少なくともいずれかによって酸化層103を形成できるドライ処理ユニットであれば採用可能である。
<エッチング実験の結果>
図31A~図31Cは、処理手順の違いによるエッチング量の変化を観測するためのエッチング実験の処理手順について説明するための模式図である。
図31Aは、ポリマー含有液の液膜によって基板をエッチングする第1処理手順を説明するための模式図である。図31Bは、ポリマー膜によって基板をエッチングする第2処理手順を説明するための模式図である。図31Bに示す第2処理手法では、処理流体の供給が行われない。図31Cは、処理流体が供給されたポリマー膜によって基板をエッチングする第3処理手順を説明するための模式図である。
各処理手順で用いられる基板は、主面の法線方向から見て一辺が3cmの四角形状の小片状の基板(小片基板)であり、小片基板の主面から銅層が露出する。各処理手順で用いられるポリマー含有液は、酸性ポリマーの水溶液に、アンモニア水を添加して中和した液体である(pH=7.0)。
図31Aを参照して、第1処理手順は以下のとおりである。
(a)まず、回転可能なヒータ201に小片基板200を載せ、小片基板200を180℃で加熱して、小片基板200の主面の表層部に酸化層を形成した。
(b)小片基板200を回転可能なスピンコータ204上に載置し、スピンコータ204を1500rpmで回転させながら、小片基板200の主面上にポリマー含有液を供給してポリマー含有液の液膜202を形成した。その後、液膜202が形成された状態を5分間維持した。
(c)その後、小片基板200の主面にDIWを30秒間供給して、小片基板200からポリマー含有液を除去した。
(d)その後、スピンコータ204を回転させて小片基板200を回転させることによって、小片基板200を乾燥させた。
(e)小片基板200を乾燥させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて小片基板200の銅層の厚さを確認した。
図31Bを参照して、第2処理手順は以下のとおりである。
(a)まず、小片基板200をヒータ201に載せ、小片基板200を180℃で加熱して、小片基板200の主面の表層部に酸化層を形成した。
(b)スピンコータ204を1500rpmで回転させながら、小片基板200の主面にポリマー含有液を供給した。ポリマー含有液の供給後、1500rpmでのスピンコータ204の回転を30秒間維持することで、小片基板200の主面上にポリマー膜203を形成した。
(c)その後、ヒータ201上に小片基板200を載置し、ヒータ201によって小片基板200を60℃で60秒間加熱した。
(d)ヒータ201による加熱を停止した後、小片基板を60秒間放置した。
(e)その後、小片基板200をスピンコータ204上に載置し、小片基板200の主面にDIWを30秒間供給して、小片基板200からポリマー含有液を除去した。
(f)その後、(b)~(e)をさらに4回(合計で5回)実行した。
(g)その後、スピンコータ204を回転させて小片基板200を回転させることによって、小片基板200を乾燥させた。
(h)小片基板200を乾燥させた後、SEMを用いて小片基板200の銅層の厚さを確認した。
図31Cを参照して、第3処理手順は以下のとおりである。
(a)まず、小片基板200をヒータ201に載せ、小片基板200を180℃で加熱して、小片基板200の主面の表層部に酸化層を形成した。
(b)小片基板200を回転可能なスピンコータ204上に載置し、スピンコータ204を1500rpmで回転させながら、小片基板200の主面上にポリマー含有液を供給した。ポリマー含有液の供給後、1500rpmでのスピンコータ204の回転を30秒間維持することで、小片基板200の主面にポリマー膜203を形成した。
(c)その後、ヒータ201上に小片基板200を載置し、ヒータ201によって小片基板200を60℃で60秒間加熱した。
(d)ヒータ201による加熱を停止した後、小片基板200をスピンコータ204上に載置し、所定の湿度を有する処理流体(水蒸気)小片基板200の主面に60秒間供給した。小片基板200の主面に供給される処理流体の湿度は、ほぼ100%、または、80%以上95%以下である。
(e)その後、小片基板200の主面にDIWを30秒間供給して、基板からポリマー含有液を除去した。
(f)その後、(b)~(e)をさらに4回または9回(合計で5回または10回)実行した。
(g)その後、小片基板200を回転させることによって、小片基板200を乾燥させた。
(h)小片基板200を乾燥させた後、SEMを用いて小片基板200の銅層の厚さを確認した。
図32は、エッチング実験の結果を示すグラフである。図32には、主面を酸化した後、エッチングを行わなかった場合の小片基板200の銅層の厚さを、参考例として示している。図32では、参考例の小片基板200の銅層の厚さを基準としており、各処理手順でエッチングを行った後の小片基板200の厚さは、参考例の小片基板200の銅層の厚さに対する比率で示している。
図32における「第3処理手順(5回、100%)」は、第3処理手順において図31Cの(b)~(e)の手順を5回行ったことを示しており、その際に用いた処理流体の湿度がほぼ100%であることを示している。同様に、「第3処理手順(10回、100%)」は、第3処理手順において図31Cの(b)~(e)の手順を10回行ったことを示しており、その際に用いた処理流体の湿度がほぼ100%であることを示している。「第3処理手順(5回、80%~95%)」は、第3処理手順において図31Cの(b)~(e)の手順を5回行ったことを示しており、その際に用いた処理流体の湿度が80%以上で、かつ、95%以下であることを示している。
ポリマー含有液の液膜を用いた第1処理手順で小片基板200をエッチングした場合、小片基板200を酸化した後エッチングを行わなかった参考例の小片基板200と比較して、銅層の厚さに大きな変化は観測されなかった。同様に、ポリマー膜203を用いて第2処理手順で小片基板200をエッチングした場合も、参考例の小片基板200と比較して、銅層の厚さに大きな変化は観測されなかった。
一方、ポリマー膜203を用いて第3処理手順で小片基板200をエッチングした場合には、いずれの条件においても、参考例の小片基板200と比較して、小片基板200の銅層の厚さが明らかに小さくなった。これにより、ポリマー膜203の形成によって、小片基板200のエッチングが促進されるという結果が得られた。
さらに、ポリマー膜203を用いて第3処理手順で小片基板200をエッチングした場合には、いずれの条件においても、第2処理手順で小片基板200をエッチングした場合と比較して、小片基板200の銅層の厚さ小さくなった。これにより、処理流体の供給によって、小片基板200のエッチングが促進されるという結果が得られた。
上記のエッチング実験において、第2処理手順を用いて小片基板200をエッチングした場合において、小片基板200の厚さが参考例とほとんど変わらないという結果が得られた。しかしながら、この結果は、処理流体の供給を行わない場合の基板のエッチングを否定するものではなく、処理流体の供給を行わない場合にはポリマー膜203によるエッチングが起こらないことを意味するものではない。すなわち、今回の実験において顕著なエッチングの進行が観測されなかったものの、多少の実験条件変化、たとえば、加熱時間、その後の放置時間の変化によって、小片基板200のエッチングが観測され得る。
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
上述の実施形態では、ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマーおよびアルカリ成分が含有されている。しかしながら、溶質として、アルカリ成分を含有しないポリマー含有液を用いることも可能である。
たとえば、図5~図6Hに示す第1実施形態の基板処理において、アルカリ成分が含有されていないポリマー含有液を用いる場合であっても、基板Wをエッチングすることができる。同様に、アルカリ成分が含有されていないポリマー含有液を用いて、図12、図14、図16、および、図18~図20に示す基板処理の各変形例を実行することもできるし、図28および図30に示す第2実施形態に係る基板処理を実行することもできる。
アルカリ成分が含有されていないポリマー含有液を用いる場合、ポリマー含有液またはポリマー膜101中の酸性ポリマーの作用によって基板Wのエッチングが開始される。そのため、酸化層103のエッチングは、基板Wの上面へのポリマー含有液の開始時(ポリマー含有液供給工程)、または、ポリマー膜101の形成時(ポリマー膜形成工程)に開始されてもよい。その場合、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)においてポリマー膜101が加熱されることで、基板Wのエッチングが促進されてもよい。あるいは、ポリマー膜加熱工程(ステップS6)においてポリマー膜101が加熱されることで、基板Wのエッチングが開始されてもよいし、処理流体供給工程(ステップS7)におけるポリマー膜101への処理流体の供給をきっかけとして基板Wのエッチングが開始されてもよい。
図16に示す基板処理の第3変形例では、ポリマー膜101が形成されてからポリマー膜101が除去されるまでの間、ポリマー膜101が加熱されない。そのため、ポリマー膜101からのアルカリ成分の除去に長期間を要する可能性があるため、溶質としてアルカリ成分を含有しないポリマー含有液を用いることが好ましい。図18に示す基板処理の第4変形例においても、処理流体供給工程(ステップS7)の前にポリマー膜101の開始が実行されないため、溶質としてアルカリ成分を含有しないポリマー含有液を用いることが好ましい。
ポリマー含有液には、溶質として、酸性ポリマーおよびアルカリ成分に加えて他の成分が含有されていてもよい。ポリマー含有液には、溶質として、たとえば、ポリアセチレン等の導電性ポリマーも含有されていてもよい。導電性ポリマーは、ポリアセチレンに限られない。導電性ポリマーは、共役二重結合を有する共役系ポリマーである。
共役系ポリマーは、たとえば、ポリアセチレン等の脂肪族共役系ポリマー、ポリ(p-フェニレン)等の芳香族共役系ポリマー、ポリ(p-フェニレンビニレン)等の混合型共役系ポリマー、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)等の複素環共役系ポリマー、ポリアニリン等の含ヘテロ原子共役系ポリマー、ポリアセン等の複鎖型共役系ポリマー、グラフェン等の二次元共役系ポリマー、または、これらの混合物である。言い換えると、共役系ポリマーは、たとえば、芳香族共役系ポリマー、混合型共役系ポリマー、複素環共役系ポリマー、複鎖型共役系ポリマー、二次元共役系ポリマーのうちの少なくとも一種を含む。
ポリマー含有液が導電性ポリマーを含有していれば、ポリマー膜形成工程(ステップS4)で形成されるポリマー膜も導電性ポリマーを含有することになる。ポリマー膜101に含有される導電性ポリマーの作用によって、ポリマー膜101中の酸性ポリマーのイオン化を促進することができる。そのため、酸性ポリマーを酸化層に効果的に作用させることができる。
すなわち、導電性ポリマーは、溶媒と同様に、酸性ポリマーがプロトン(水素イオン)を放出するための媒体として機能する。そのため、ポリマー膜101中に導電性ポリマー含有されていれば、ポリマー膜101から溶媒が完全に消失している場合であっても、酸性ポリマーをイオン化し、イオン化した酸性ポリマーを酸化層103に作用させることができる。導電性ポリマーが含有されているポリマー膜101に処理流体を供給することで、基板Wのエッチングを一層促進できる。
図12に示す基板処理とは異なり、ポリマー膜除去工程(ステップS8)の後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)に戻るのではなく、スピンドライ工程(ステップS9)の後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)に戻ってもよい。図14、図16、図18、図19、および、図20に示す各基板処理においても、同様である。
さらに、図12、図14、図16、図18、図19、および、図20に示す各基板処理において、ポリマー膜除去工程(ステップS8)またはスピンドライ工程(ステップS9)の後、液状酸化剤供給工程(ステップS2)または酸化加熱工程(ステップS11)に戻るのではなく、ポリマー膜形成工程(ステップS4)に戻ってもよい。そうすることで、一回のポリマー膜101の形成によって酸化層が充分に除去されない場合であっても、複数回のポリマー膜101の形成によって酸化層を充分に除去できる。
同様に、図28および図30に示す各基板処理において、ポリマー膜除去工程(ステップS8)またはスピンドライ工程(ステップS9)の後、第2搬出工程(ステップS24)に進むのではなく、ポリマー膜形成工程(ステップS4)に戻ってもよい。そうすることで、一回のポリマー膜101の形成によって酸化層が充分に除去されない場合であっても、複数回のポリマー膜101の形成によって酸化層を充分に除去できる。
また、各基板処理を組み合わせることも可能である。たとえば、図5に示す基板処理と図14に示す基板処理を組み合わせてもよい。たとえば、液状酸化剤供給工程(ステップS2)~ポリマー膜除去工程(ステップS8)を実行した後に、加熱酸化工程(ステップS10)を実行してもよいし、加熱酸化工程(ステップS10)~ポリマー膜除去工程(ステップS7)を実行した後に、液状酸化剤供給工程(ステップS2)を実行してもよい。
また、上述の実施形態では、酸化層形成工程および酸化層除去工程を含む基板処理が基板Wの上面に対して行われる。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、基板Wの下面に対して基板処理が行われてもよい。
また、上述の実施形態に係る基板処理に用いられる基板Wの主面の表層部は、図1に示す構造である必要はない。たとえば、基板Wの主面の全体から処理対象層102が露出していてもよいし、凹凸パターン120が形成されていなくてもよい。また、処理対象層102は、金属層である必要はなく、酸化シリコン層であってもよい。また、処理対象層102が単一の物質で構成されている必要はなく、複数の物質によって構成されていてもよい。
また、図3、図21および図22に示す対向部材8には、処理流体ノズル12が挿入されている。しかしながら、処理流体ノズル12が設けられていなくてもよい。具体的には、図3に示す構成において、処理流体ノズル12が設けられておらず、処理流体配管44内の処理流体が対向部材8内に形成された流路を通って吐出口8bから吐出されるように構成されていてもよい。この場合、供給経路37は、対向部材8と、対向部材8に連結され、処理流体ノズル12に処理流体を供給する処理流体配管44とによって構成される。
また、図22に示す構成において、処理流体ノズル12が設けられておらず、処理流体配管44内の処理流体が対向部材8内に形成された流路を通って処理流体貯留空間27に供給されるように構成されていてもよい。この場合、供給経路37は、対向部材8と、対向部材8に連結され、処理流体ノズル12に処理流体を供給する処理流体配管44とによって構成される。
また、上述の実施形態では、基板処理装置1,1Pが、搬送ロボットIR,CRと、複数の処理ユニット2と、コントローラ3とを備えている。しかしながら、基板処理装置1,1Pは、単一の処理ユニット2とコントローラ3とによって構成されており、搬送ロボットIR,CRを含んでいなくてもよい。あるいは、基板処理装置1,1Pは、単一の処理ユニット2のみによって構成されていてもよい。言い換えると、処理ユニット2が基板処理装置の一例であってもよい。
また、上述の各実施形態において、配管、ポンプ、バルブ、アクチュエータ等についての図示を一部省略しているが、これらの部材が存在しないことを意味するものではなく、実際にはこれらの部材は適切な位置に設けられている。
また、第1実施施形態では、基板処理装置1が、搬送ロボットIR,CRと、複数の処理ユニット2と、コントローラ3とを備えている。しかしながら、基板処理装置1は、単一の処理ユニット2とコントローラ3とによって構成されており、搬送ロボットIR,CRを含んでいなくてもよい。あるいは、基板処理装置1は、単一の処理ユニット2のみによって構成されていてもよい。言い換えると、処理ユニット2が基板処理装置の一例であってもよい。
なお、上述の実施形態では、「沿う」、「水平」、「鉛直」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「鉛直」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
また、各構成を模式的にブロックで示している場合があるが、各ブロックの形状、大きさおよび位置関係は、各構成の形状、大きさおよび位置関係を示すものではない。
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
1 :基板処理装置
1P :基板処理装置
2 :処理ユニット(基板処理装置)
2W :ウェット処理ユニット(基板処理装置)
5 :スピンチャック(基板回転ユニット)
6 :ヒータユニット(加熱ユニット)
8 :対向部材
8a :対向面
8b :吐出口
10 :ポリマー含有液ノズル(ポリマー膜形成ユニット)
11 :リンス液ノズル(リンス液供給ユニット)
12 :処理流体ノズル(処理流体供給ユニット)
36 :加湿ユニット
37 :供給経路
38 :湿度測定ユニット
101 :ポリマー膜
102 :処理対象層(基板の主面の表層部)
103 :酸化層
A1 :回転軸線
SP1 :空間(対向部材と基板の主面との間の空間、ポリマー膜に接する空間)
SP2 :空間(ポリマー膜に接する空間)
W :基板

Claims (20)

  1. 酸化層が露出する主面を有する基板を準備する基板準備工程と、
    酸性ポリマーを含有するポリマー膜を前記基板の主面上に形成するポリマー膜形成工程と、
    前記酸性ポリマーに対して親和性を有する処理液のミストおよび前記処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体を、前記基板の主面上に形成されている前記ポリマー膜に供給する処理流体供給工程と、
    前記処理流体供給工程の後、前記基板の主面に向けてリンス液を供給するリンス工程とを含む、基板処理方法。
  2. 前記基板準備工程が、前記基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する酸化層形成工程を含む、請求項1に記載の基板処理方法。
  3. 前記リンス工程の後、前記基板の主面の表層部を酸化して酸化層を形成する再形成工程をさらに含み、
    前記リンス工程の後、前記再形成工程、前記ポリマー膜形成工程、前記処理流体供給工程および前記リンス工程がこの順番で少なくとも1回ずつ実行される、請求項1または2に記載の基板処理方法。
  4. 前記ポリマー膜形成工程において形成される前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有し、
    前記処理流体供給工程の開始前に、前記ポリマー膜を加熱するポリマー膜加熱工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  5. 溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有するポリマー含有液を前記基板の主面に供給するポリマー含有液供給工程をさらに含み、
    前記ポリマー膜形成工程が、前記基板の主面上のポリマー含有液中の溶媒の少なくとも一部を蒸発させることによって前記ポリマー膜を形成する工程を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  6. 前記溶媒が、前記処理液と混和する液体である、請求項5に記載の基板処理方法。
  7. 前記処理液が水である、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  8. 前記処理流体の湿度が、50%よりも高く、100%以下である、請求項7に記載の基板処理方法。
  9. 前記処理流体の湿度が、80%以上で、かつ、100%以下である、請求項7に記載の基板処理方法。
  10. 前記処理流体の湿度が、85%以上で、かつ、95%以下である、請求項7に記載の基板処理方法。
  11. 前記基板の主面に対向する対向面、および、前記対向面で開口し前記処理流体を吐出する吐出口を有する対向部材を配置する対向部材配置工程をさらに含み、
    前記処理流体供給工程が、前記吐出口から前記処理流体を吐出させることで、前記対向面と前記基板の主面との間の空間に前記処理流体を供給する工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  12. 前記処理流体供給工程が、前記基板の主面上の前記ポリマー膜に接する空間に向けて、処理流体ノズルから前記処理流体を吐出させながら、前記処理流体ノズルを前記基板の主面に沿って移動させる工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
  13. 酸性ポリマーを含有するポリマー膜を基板の主面上に形成するポリマー膜形成ユニットと、
    前記酸性ポリマーに対して親和性を有する処理液のミストおよび前記処理液の蒸気の少なくとも一方を含有する処理流体を、前記基板の主面に向けて供給する処理流体供給ユニットと、
    前記基板の主面に向けてリンス液を供給するリンス液供給ユニットとを含む、基板処理装置。
  14. 前記基板の主面の中心部を通る回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転ユニットをさらに含み、
    前記ポリマー膜形成ユニットが、溶媒および前記酸性ポリマーを少なくとも含有し前記溶媒の蒸発によって前記ポリマー膜を形成するポリマー含有液を前記基板の主面に向けて吐出するポリマー含有液ノズルを含む、請求項13に記載の基板処理装置。
  15. 前記溶媒が、前記処理液と混和する液体である、請求項14に記載の基板処理装置。
  16. 前記ポリマー膜形成ユニットによって形成される前記ポリマー膜が、アルカリ成分をさらに含有し、
    前記基板を介して前記ポリマー膜を加熱する加熱ユニットをさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の基板処理装置。
  17. 前記処理流体供給ユニットが、前記基板の主面に対向する対向面と、前記対向面で開口し前記基板の主面に向けて前記処理流体を吐出する吐出口とを有する対向部材を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
  18. 前記処理液が水であり、
    前記処理流体の湿度を調整する加湿ユニットと、
    前記加湿ユニットによって湿度が調整された前記処理流体を前記吐出口に供給する供給経路と、
    前記供給経路を通過する前記処理流体の湿度を測定する湿度測定ユニットとをさらに含む、請求項17に記載の基板処理装置。
  19. 前記処理流体供給ユニットが、前記基板の主面に向けて、前記処理流体を吐出し、前記基板の主面に沿って移動可能な処理流体ノズルを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の基板処理装置。
  20. 前記処理液が水であり、
    前記処理流体の湿度を調整する加湿ユニットと、
    前記加湿ユニットによって湿度が調整された前記処理流体を前記処理流体ノズルの吐出口に供給する供給経路と、
    前記供給経路を通過する前記処理流体の湿度を測定する湿度測定ユニットとをさらに含む、請求項19に記載の基板処理装置。
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