JP2022168101A - プラズマ支援ald装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】プラズマ支援ALD装置は段差カバーレッジの良い高品質膜の形成が可能という特長があり、液晶デイスプレイ、有機ELデイスプレイ及び各種電子回路等の部材である金属膜、絶縁膜及び半導体膜等の形成に用いられる。しかしながら、プラズマ衝撃による基板の損傷が発生するという問題及び有機物化合物原料の輸送経路での結露という問題がある。この問題を解決可能なプラズマ支援ALD装置を提供すること。【解決手段】非接地電極と前記非接地電極を内包する溝を備えた接地電極の間で酸素プラズマ又は水素プラズマを生成し、該プラズマに含まれるラジカル種を基板表面に向けて拡散輸送することにより、プラズマ支援ALD法による膜形成を行う。有機化合物原料噴出管はヒータを備え、前記非接地電極はホローカソード効果を有する穴を備え、プラズマ発生電界は基板の主面に平行な方向を向いているという構成を有することを特徴とする。【選択図】図6

Description

本発明は、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いて、絶縁膜、保護膜、封止膜、金属膜及び酸化物半導体等の薄膜を形成するためのプラズマ支援ALD装置に関する。
液晶デイスプレイ用TFT、有機EL、各種半導体及び各種電子デバイス等における絶縁膜、保護膜、封止膜、金属膜及び酸化物半導体膜等の形成には、プラズマ支援ALD(PEALD:Plasma Enhanced ALD とも呼ばれる)装置及びプラズマCVD装置等が活用されている。
プラズマ支援ALD装置は、一般に、基板支持台を内蔵する反応容器、原料ガスの供給及び排気手段、酸化ガス又は還元ガス等の反応性ガスの供給及び排気手段、該反応性ガスをプラズマ化し、プラズマ化された反応ガスを基板支持台に載置された基板に暴露させる手段等で構成される。そして、基本的には、次の手順で各種博膜を形成する。
(1)反応容器内部に原料ガスを所要の流量で導入し、該原料ガスを基板表面に吸着させる(原料ガスが基板表面に吸着し、厚み約1Åの原子層が堆積する)。そして、一定時間経過後、該原料ガスの供給を停止する。
(2) 反応容器内部を排気する(反応容器内部に残留する該原料ガスを排気する)。
(3) 平板型電極やコイル型電極等を用いて、例えば、酸素ガスあるいは水素ガス等の
反応性ガスを供給しつつ、該反応性ガスをプラズマ化し、該プラズマで生成される酸素ラジカルあるいは水素ラジカル等を利用して、前記基板表面に吸着した原料ガスを酸化あるいは還元し、目的とする薄膜の原子層膜を形成する。そして、一定時間経過後、該反応ガスの供給を停止し、プラズマ生成を停止する。
(4) 反応容器内部を排気する(反応容器内部に残留する該反応ガスを排気する)。
(5) 上記(1)~(4)の工程を繰り返すことにより、所要の厚みを有する目的とする
薄膜を得る。
しかしながら、プラズマ支援ALD装置には、3つの問題があることが知られている。
第1の問題は、製膜速度が遅いことである。原子層堆積法は段差カバーレッジの良い薄膜形成が可能であるという長所があるが、原子層レベルで制御する堆積であるために堆積速度は遅いという短所があることが、知られている。
第2の問題は、原料ガスに用いられる有機化合物原料の再液化あるいは凝結に起因する膜質低下である。有機化合物原料は常温、常圧では液体であるので、気化装置(バブリング方式,ベーキング 方式,インジェクション方式等)で気化し、気化した有機化合物原料即ち有機化合物原料ガスを成膜部へ輸送するが、該有機化合物原料ガスは輸送路の温度、圧力に敏感に反応し、該輸送路で結露又は凝結する場合があることが知られている。また、有機化合物原料ガスの濃度の空間的分布の不均一性が問題になる場合があることが知られている。一般には、気化部と成膜部の間での再液化又は結露又は圧力変動等を防止するために、輸送管に螺旋状ヒータ線が配置される。また、気化部と成膜部との間に圧力緩衝領域が設けられる。したがって、有機化合物原料ガス輸送管の温度制御及び圧力変動防止は、依然として課題である。特に、大面積基板を対象とした大面積プラズマ支援ALD装置の場合は、有機化合物の輸送管の結露対策及び圧力変動対策手段の製造コストの低減化は重要課題である。
第3の問題は、プラズマに起因する基板表面堆積膜の損傷問題である。反応性ガスをプラズマ化すると、イオンや電気的に中性のラジカル種等が発生するが、発生したイオンの基板への衝撃により、基板表面に形成される原子層堆積膜の表面に凹凸が形成され、且つ形成される該堆積膜中にイオンダメージが発生し、高品質膜の形成が困難という問題があることが、知られている。
この第3の問題に関しては、いくつかの特許文献に記載されている。例えば、特許文献1に、次の問題が記載されている。即ち、PEALD処理を行う処理容器内にHが多く供給され、Hリッチ雰囲気で処理が行われる場合、成膜された膜にH イオンが深く打ち込まれ、当該イオンの衝撃により、堆積膜にはダメージを受けた表面性状が発現する、と記載されている。
また、例えば、特許文献2に、次の問題が記載されている。即ち、露出しているSi基板の表面が反応ガスのプラズマに曝され、HラジカルなどがSi基板に作用すると、Si基板の表面の一部が削られて凹部が形成される、ということが記載されている。
また、特許文献3に次のことが指摘されている。即ち、プラズマALD法による金属チタン膜の形成時に発生する、金属チタン膜の下地へのイオンダメージを低減することが課題である、ということが記載されている。
プラズマ支援ALD装置におけるイオンダメージ発生という問題を解決するために、いくつかのアイデイアが開示されている。例えば、特許文献1ないし特許文献3に、次のことが記載されている。
特許文献1には次のことが記載されている。即ち、基板に対して原料ガスを供給し、基板に対してプラズマを照射してPEALD処理による成膜処理を行う基板処理装置であって、基板を載置する載置台を気密に収容する処理容器と、前記処理容器内にプラズマを生成するプラズマ源と、を備え、前記プラズマ源には、プラズマ生成用の高周波電源が備えられ、前記プラズマ源は、生成されるプラズマのシース電位を低減させるシース電位低減手段を備え、前記シース電位低減手段は、前記プラズマ源における高周波波形を波形調製する波形調製機構であり、当該波形調製機構は、前記プラズマ源の高周波波形を、波形1周期分の長さにおいて、正負電位1波長分の部分と、印加電圧が変化しない部分とで構成される形状に調製することを特徴とする、基板処理装置。
特許文献2には次のことが記載されている。即ち、金属元素を含む原料ガスと、この原料ガスと反応する反応ガスとを利用して、基板に対して前記金属元素の金属膜の成膜を行う成膜方法において、 成膜対象の基板が配置された処理容器内に前記原料ガスを供給すると共に、当該原料ガスをプラズマ化させて化学気相堆積(プラズマCVD)法により前記基板の表面に前記金属膜である下層膜を形成するプラズマCVD工程と、 次いで、前記処理容器内へ前記原料ガスを供給し、前記下層膜が形成された前記基板の表面に当該原料ガスを吸着させる吸着段階と、前記処理容器内へ前記反応ガスを供給すると共に、当該反応ガスをプラズマ化させ、前記基板の表面に吸着した前記原料ガスに、プラズマ化した前記反応ガスを反応させる反応段階と、を交互に実施する原子層堆積(プラズマALD)法により、前記下層膜上に前記金属膜であり、当該下層膜と共通の材料からなる上層膜を積層するプラズマALD工程と、を含み、 前記下層膜と上層膜とは、前記上層膜の上層側に配線材料が形成された後、この配線材料が前記下層膜の下層側へ拡散することを抑えるためのバリア膜を構成することを特徴とする成膜方法。
特許文献3には次のことが記載されている。即ち、基板に金属チタン膜を成膜する方法であって、前記基板が収容された処理容器内に原料ガスを供給し、前記基板の表面に前記原料ガスを吸着させる吸着段階と、前記処理容器内に反応ガスを供給すると共に、前記反応ガスをプラズマ化させ、前記基板の表面に吸着した前記原料ガスに、プラズマ化した前記反応ガスを反応させる反応段階と、を交互に実施する原子層堆積(プラズマALD)法により、金属チタン膜を形成する工程を含み、前記反応段階では、38MHz以上60MHz以下の周波数の高周波電力を用いて前記反応ガスをプラズマ化させる、成膜方法。
他方、プラズマ支援ALD装置と類似した薄膜形成装置であるプラズマCVD装置の分野においても、プラズマ支援ALD装置と同様に、製膜速度の向上及び薄膜形成におけるイオンダメージの抑制という課題がある、ことが知られている。
プラズマCVD装置の製膜速度の向上に関し、その解決策として、ホローカソード効果を用いた高密度プラズマの生成による製膜速度の向上というアイデイアが、例えば、特許文献4及び特許文献5に記載されている。
特許文献4には次のことが記載されている。即ち、プラズマCVD反応室と、前記反応室内において成膜用基板を支持するための基板支持電極と、前記基板に対面すべき対向電極とを備え、 前記対向電極は中空であって、前記基板に向けて反応ガスを吹出すために、複数のガス吹出孔および複数の差圧調整孔を有するガス吹出面板を含み、前記差圧調整孔は前記ガス吹出孔の入口側の孔径よりも大きな径を有し、前記ガス吹出孔の長さが前記ガス吹出面板の厚さより小さく、そのガス吹出孔の入口側が前記差圧調整孔に接続されており、前記ガス吹出面板が前記基板と対向する面において、プラズマの発生を促進するためのプラズマ促進溝が形成されていることを特徴とするプラズマCVD装置。
特許文献5には次のことが記載されている。即ち、反応容器、該容器内に反応ガスを導入する手段、ガスを排出する手段、該容器内に収容されたカソード及びアノードから成る放電用電極並びに該電極に電力を供給する電源を有し、該反応容器内に設置された基板表面に薄膜を形成するプラズマCVD装置において、該反応ガスを該基板面内に均一に導入するシャワーヘッド型導入口と該カソード電極を一体型とし、該カソード電極表面に複数の筒状凹部を設け、該複数の凹部は、該筒の径より幅の狭い溝により相互に連結されており、該凹部の底部には、該凹部の底部の面積よりも小さな穴を穿ち、該穴を反応ガス導入口としたことを特徴とするプラズマCVD装置。
プラズマCVD装置におけるイオンダメージに関する問題を解決するためのいくつかのアイデイアが提案されている。例えば、特許文献6及び特許文献7に記載のものがある。
特許文献6には次のことが記載されている。即ち、プラズマを生成するプラズマ生成室と、プラズマ処理すべき被処理物を配置するプラズマ処理室とを備えたプラズマ処理装置であって、プラズマ生成室とプラズマ処理室との間に少なくとも1枚のプラズマ分離用のメッシュプレートが配設されており、該メッシュプレートには複数の開口部が設けられており、該開口部の径はプラズマのデバイ長の2倍以下であることを特徴とするプラズマ処理装置。
特許文献7には次のことが記載されている。即ち、真空チャンバ内に、処理基板載置用基板ステージと、処理基板を所定温度に加熱するための加熱手段と、原料ガス導入手段とが設けられ、そして該真空チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生手段を備えている、カーボンナノチューブを気相成長させるリモートプラズマCVD装置において、該基板が該真空チャンバ内に発生させるプラズマに曝されないように、プラズマの発生領域と基板とを離間すると共に、プラズマ発生領域と該基板ステージとの間に、Mo、Ti、W及びWCから選ばれた物質で構成されているメッシュ状の遮蔽部材を設けたことを特徴とするリモートプラズマCVD装置。
6640608 6935667 特開2022-015848 特許4578693 特許3837539 特開平08-167596 特開2008-230896
プラズマ支援ALD装置(PEALD装置)は、液晶デイスプレイ用TFT、有機EL及び各種半導体デバイス等における絶縁膜、保護膜、パッシベーション膜、金属膜及び酸化物半導体膜等の形成に不可欠の薄膜形成装置として活用されているが、製膜速度が遅いこと、有機化合物原料の輸送通路での結露防止及びイオン衝撃の防止が課題となっている。更なる進展あるいは応用展開を図るためには、高速製膜が可能で、且つ有機化合物の輸送通路での結露が発生しない、且つ基板へのイオン衝撃がないプラズマ支援ALD装置(PEALD装置)の創出が望まれている。
しかしながら、従来のプラズマ支援ALD装置は、基板へのイオン衝撃を抑制することが困難である。例えば、特許文献1に記載の装置は、プラズマのシース電位を低減させるシース電位低減手段を備え、プラズマシース電位を低減することにより、イオンの衝撃力を抑制するというアイデイアであるが、プラズマの生成手段に接地電極と非接地電極から成る平行平板電極を用い、該一対の電極の間に基板を設置するという構成であるで、該基板はプラズマに晒された状態で薄膜が形成される。プラズマに晒される基板表面はプラズマイオン衝撃を避けることができない。それ故、特許文献1に記載の装置ではイオンダメージを抑制する効果が大きくないと、危惧される。
また、例えば、特許文献2に記載のプラズマALD法は、基板をプラズマに晒した状態でプラズマALD法を実施するものである。プラズマに晒される基板表面はプラズマイオン衝撃を避けることができない。それ故、特許文献2に記載のプラズマALD法ではイオンダメージを抑制する効果が大きくないと、危惧される。
また、例えば、特許文献3に記載の装置は、プラズマ励起周波数が38MHz以上60MHz以下のVHF周波数を用いて、プラズマ電位を低減し、イオンダメージを抑制する方法である。プラズマ励起周波数がVHFであることから、13.56MHzのプラズマに比べてイオンダメージが抑制されるという効果がある。しかしながら、プラズマの生成手段に接地電極と非接地電極からなる平行平板電極を用い、該一対の電極の間に基板を設置する構成を採用しているので、該基板はプラズマに晒される状態となる。プラズマに晒される基板表面はプラズマイオン衝撃を避けることができない。それ故、特許文献3に記載の方法ではイオンダメージを抑制する効果が大きくないと、危惧される。
上記のような問題を鑑みて、本発明は、上記問題を解消可能なプラズマ支援ALD装置(PEALD装置)を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排気系を備えた反応容器と、目的とする薄膜を形成する対象である基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記薄膜の原料を含む第1原料ガスと少なくとも水素又は酸素又は窒素のいずれかを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極と電気的に接地の第2電極から成るプラズマ生成電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、を具備し、プラズマ支援ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて薄膜を形成するプラズマ支援ALD装置であって、前記第2電極は、前記基板保持台の主面と平行に延在する複数の溝を備え、且つ前記基板保持台の主面に対向して配置され、前記第1電極は、前記第2電極の前記複数の溝と同じ個数の棒状又は板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極はそれぞれ前記第2電極が備える各前記溝の中に包み込まれるように配置され、且つ前記第1電極はホローカソードプラズマを生成する筒状の凹みを備えるとともに、前記第1原料ガスは、有機化合物又は有機金属化合物から選ばれ、前記第2電極と前記基板保持台の主面との間に配置され、且つ軸心部に加熱手段を内蔵する2重管構造を備える第1原料ガス管に設けられた第1原料ガス噴出孔から噴出し、 前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔から噴出する、という構成を有することを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、第1原料ガス管は、軸心を共有する内側の管と外側の管から成る2重管で構成され、前記内側の管にカートリッジヒータを備え、前記外側の管に第1原料ガスの通路を備え、且つ第1原料ガス噴出孔を備える構造であることを特徴とする。
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、前記第1電極は、断面形状が矩形又は円形又は楕円形であることを特徴とする。
第4の発明は、第1の発明から第3の発明のいずれか一つの発明において、前記ホローカソードプラズマを生成する筒状の凹みは、断面形状が円形であり、前記円形の直径は、前記第1電極と前記第2電極の間に生成されるプラズマのシース厚みの略2~10倍に設定されることを特徴とする。
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のいずれか一つの発明において、前記第1電極と前記第2電極により生成される電界の主たる方向は、前記基板保持台の主面と平行な方向であることを特徴とする。
第6の発明は、第1の発明から第5の発明のいずれか一つの発明において、前記第2電極が備える複数の溝がそれぞれに有する各開口は、開口率が略20%~80%であるメッシュ金属で覆われることを特徴とする。
第7の発明は、第1の発明から第6の発明のいずれか一つの発明において、第1原料ガスがチタンを含む有機金属化合物であり、第2原料が酸素ガス又は少なくとも酸素ガスを含む他の反応性ガスとの混合ガスであることを特徴とする。
本発明は、上記課題を解決可能という効果を奏する。即ち、本発明によるプラズマ支援ALD装置は、第1原料ガスと第2原料ガスを空間的に分離して反応容器に導入し、該第2原料ガスをプラズマ化する第1電極と第2電極からなるプラズマ発生電極の電界方向を基板保持台に載置された基板の主面に平行な方向としてプラズマを生成するとともに、該プラズマに晒らされない領域に基板が配置されることから、プラズマ損傷のないALD法による膜の形成が可能である。更に金属メッシュを配置してプラズマを閉じ込めることも可能であり、該基板へのプラズマ損傷を抑制することが可能である。また、第1電極に設けられたホトーカソード効果を有する複数の穴により高密度のプラズマを生成することが可能である。更に、第1原料の噴出孔近傍にカートリッジヒータを備える2重管構造の第1原料ガス管を設けることにより有機化合物原料の結露を防止することが可能である。本発明の構成により、前記プラズマの中に含まれる電気的に中性のラジカル種を基板保持台に載置された基板表面へ効果的到達させることが可能である。
その結果、基板へイオン衝撃を与えないプラズマ支援ALD法による高品質薄膜の形成が可能である。また、電極構造が大面積基板へ対応可能で、且つ有機化合物原料ガスの結露を抑制することが可能であることから、基板の大面積化が可能であり、基板枚数の増大化が容易に可能である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の主要部の構成を示す模式的斜視図である。 図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第2電極の構造を示す模式的斜視図である。 図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第1電極の構成を示す模式的断面図である。 図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1電極と第2電極間に生成される電界の模式図である。 図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1電極と第2電極から成るプラズマ生成領域を示す模式的断面図である。 図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1原料ガス及びプラズマ化された第2原料ガスの流れを示す模式的断面図である。 図7は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いたALD法により薄膜を形成する工程を示す模式的概念図である。 図8は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いたALD法により形成される薄膜の構造を示す模式的概念図である。 図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である断面形状が円形の第1電極の模式的斜視図である。 図10は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置のプラズマ生成領域を示す模式的断面図である。 図11は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の模式的断面図である。 図12は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置構成部材である断面形状が楕円形の第1電極の模式的斜視図である。 図13は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。 図14は、本発明の第1ないし第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第1原料ガス管の構成を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。各図において、同様の部材には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更可能である。また、以下に示す図面は、説明の便宜上、各部材の縮尺が、実際と異なる場合がある。また、各図面間においても、縮尺が、実際と異なる場合がある。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成について、図1~図6及び図14を参照して、説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の主要部の構成を示す模式的斜視図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第2電極の構造を示す模式的斜視図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第1電極の構成を示す模式的断面図である。図4は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1電極と第2電極間に生成される電界の模式図である。図5は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1電極と第2電極から成るプラズマ生成領域を示す模式的断面図である。図6は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の第1原料ガス及びプラズマ化された第2原料ガスの流れを示す模式的断面図である。図14は、本発明の第1ないし第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である第1原料ガス管の構成を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置は、図1~図6に示されるように、 排気系を備えた反応容器50と、目的とする薄膜の原料を含む第1原料ガスと少なくとも水素又は酸素又は窒素のいずれか一つを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段5、10と、基板を保持する主面を有する基板保持台60と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極1aと電気的に接地の第2電極2から成るプラズマ生成電極1a、2と、前記第1電極1aと前記第2電極2との間に高周波電圧を印加する高周波電源70と、を備えている。
前記第2電極2は、前記基板保持台60の主面60aと平行に延在する複数の溝2aを備え、且つ前記基板保持台60の主面60aに対向して配置され、前記第1電極1aは、前記第2電極2の前記複数の溝2aと同じ個数の棒状又は板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極1aはそれぞれ前記第2電極2が備える各前記溝2aの中に包み込まれるように配置され、且つ前記第1電極1aはホローカソードプラズマを生成する筒状の凹み1aa、1abを備えている。
前記第1原料ガスは、前記第2電極2と前記基板保持台60の主面60aとの間に配置された第1原料ガス管5に設けられた第1原料ガス噴出孔5aから噴出し、前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔3から噴出するという構造を有する。
第1原料ガス管5は有機化合物原料の結露を防止するために、カートリッジヒータを内蔵している。第1原料ガス管5は、図14(a)、(b)に示されるように、2重管構造を有し、内側にカートリッジヒータ100を備え、外側に第1原料ガス噴出孔5aを備えている。
なお、カートリッジヒータ100は、例えば、金属パイプの中にMgOに巻かれた発熱線(例えば、ニクロム線)配置し、且つ高純度のMgOを充填し、給電線100a、100bから図示しない電源の出力を供給される構造を有する。カートリッジヒータ100の温度は、例えば、80℃~120℃の範囲で、例えば90℃に制御され、保持される。
先ず、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成を、図1~図6を参照して説明する。
反応容器50は、内部を高真空状態に保てることが可能であり、不純物を発生しない真空容器であり、図示しない真空ポンプに接続された排気口51a、51bを備えている。排気口51a、51bは、それぞれ図示しない真空ポンプと組み合わせて稼働させることにより、反応容器50の内部を所定の真空度に真空引きすることが可能である。
基板保持台60は、反応容器50の所定の場所に、例えば、底面に配置される。基板保持台60は、主面60aを有し、該主面60aで基板61と接し、保持する。基板61の温度は、基板保持台60の内部に設けられた図示しない基板ヒータにより所定の温度に制御される。
基板61は、基板搬入搬出用バルブ62を開閉することにより、大気側から基板保持台60の主面60aに搬入、載置され、目的とする膜を形成した後、大気側へ搬出される。
反応容器50には、後述の第1電極1aと第2電極2が組み合わせて配置される。第1電極1aと第2電極2の間に、後述の高周波電源70の電圧が印加されて、後述の第2原料ガスがプラズマ化される。
第2電極2は、図1、図3、図4及び図6に示されるように、基板保持台60の主面60aに対向して配置され、かつ、前記主面60aと平行に延在する複数の溝2aを備えている。複数の溝2aは、図2に示されるように、断面形状がU字型である。複数の溝2aは、図2に示されるように、それぞれ、2つの側面2bと、1つの底面2cと、2つの端
面2dと、1つの開口2eとから構成される。
前記溝2aの底面2cには、後述の第2原料ガスを噴出する第2原料ガス噴出孔3が形成される。そして、前記溝2aの端面2dには、後述の第1電極の支持部材1acを支持する溝端面の穴7a、7bが形成される。
第2電極2は、第2電極支持棚板53を介して、反応容器50に固定される。第2電極2は、電気的に反応容器50と導通であり、接地される。第2電極2は、後述の第1電極1a及び高周波電源70等と組み合わせて用いることにより、第2原料ガスをプラズマ化する。
前記複数の溝2aの個数、寸法は任意に選べる。ここでは、例えば、個数は3個、寸法は、深さ25mm、幅15mm、長さ1,100mmとする。
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を応用するに際し、例えば、基板サイズが1mx1mの場合、それに応じて、前記複数の溝の個数を、例えば、65個とし、隣り合う溝の間の第2電極の厚みを2mm、その長さを1,100mmとし、後述の第1電極1a(個数65個)と組み合わせて用いられる。即ち、基板サイズが増大した場合には、後述の第1電極1a及び前記複数の溝2aの個数及びその長さを増大させることにより対応できる。
第1電極1aは、図1、図3~図6に示されるように、断面形状が矩形の平板状の金属板が用いられ、その表面及び裏面に複数の円筒状の凹み1aa、1abが形成される。第1電極1aは、図1、図3~図6に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。そして、第1電極1aは、図3に示されているように、第1電極1aの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1acが連結され、図2図示の第2電極2の溝端面の穴7a、7bに電気絶縁部材81a、81bを介して支持される。なお、第1電極1aと第1電極支持部材1acは電気的及び構造強度的に連結されている。
第1電極支持部材1acの端部に給電点79a、79bを設ける。給電点79a、79bには、後述するように、高周波電源70の出力電圧が印加される。
第1電極1aと第2電極2の間の距離は、プラズマ生成条件を考慮して決められる。即ち、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される第2原料ガスのプラズマ生成条件は、主として、第1電極1aと第2の電極2の間隔dと圧力pと印加される高周波電圧Vに依存する。ここでは、パッシェンの法則に従って、パッシェン曲線の最小値の領域に設定する。例えば、pd積が、略133Pa・cm~1333Pa・cmを満たす値を選ぶ。ここでは、例えば、第1電極1aと第2の電極2の側面2bの間隔d=0.5cm、圧力p=133Pa~1333Paとする。
第1電極1aと第2の電極2の間に生成される電界の大部分は、図4に電気力線Aで示されるように、基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。即ち、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される主たる電界の方向は基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。これは、第1電極1aと第2の電極2の間に生成される電子及びイオンに働く電気力は基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いていることを意味し、第1電極1aと第2の電極2の間に生成されるプラズマ中のイオン、例えば、酸素プラズマあるいは水素プラズマの中に含まれるイオンが基板61を直撃しないことを意味している。なお、電子及びイオンの濃度勾配に基づく拡散による基板61の方向への移動はあるが、基板61にダメージを与える電気エネルギーはない、と考えられる。
前記円筒状の凹み1aa、1abは断面形状が円形であり、該円形の直径は、第1電極1aと第2電極2の間に生成されるプラズマのシース厚みの略2倍~10倍に設定される。なお、通常のプラズマのシース厚みは、1mm~2.5mmであることが知られている。
ここでは、第1電極の寸法を、例えば、厚み5mm、幅15mm、長さ1,000mmとする。そして、前記複数の円筒状の凹みの直径を、例えば2mm~20mm、例えば、4mmとする。該複数の円筒状の凹みの深さを、例えば、3mm~10mm、ここでは、例えば、4mmとする。
該円筒状の凹み1aa、1abは、例えば、特許文献4及び特許文献5に記載されているように、ホローカソード効果により高密度プラズマを生成する作用を有する。なお、ホローカソード効果はプラズマシース近傍の電子の振動現象に起因するもので、低電子温度で、かつ、高密度のプラズマを生成できる。一般に、ホローカソード効果により、通常のプラズマ密度1010~1011個/cmに比べて1桁高い1011~1012個/cmの高密度で、且つ低電子温度のプラズマが生成される、という知見が知られている。
第1原料ガスは、目的とする膜種によって選ばれる。ここでは、主として、有機化合物あるいは有機金属化合物等が用いられる。なお、塩化化合物、シランガスを用いても良い。
例えば、酸化チタン膜(TiO)を形成する場合、チタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CH3)2}4が選ばれる。
例えば、酸化シリコン膜(SiO)を形成する場合、テトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2あるいはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO):C18OSiが選ばれる。
例えば、ZnO膜・・・トリメチル亜鉛:(CHZn、トリエチル亜鉛:(CZnが選ばれる。
例えば、窒化シリコン膜(SiNx)を形成する場合、ヘキサメチルジシラザン(HMDS):(CHSiNHSi(CHあるいはトリスジメチルアミノシラン:SiH(N(CHあるいはテトライソシアネートシラン:Si(NCO)が選ばれる。
例えば、酸化アルミニウム膜(Al)を形成する場合、トリメチルアルミニウム:(CHAlあるいはトリエチルアルミニウム:(CAlが選ばれる。
例えば、金属膜のAl膜の場合、トリメチルアルミニウム(CHAlあるいはトリエチルアルミニウム(CAlが選ばれる。
例えば、金属膜のTi膜の場合、TEMAT:Ti[N(CCH)]、TDMAT:Ti[N(CH、またはTDEAT:Ti[N(Cが選ばれる。
例えば、金属膜のTa膜の場合、PEMAT:Ta[N(CCH)]、PDMAT:Ta[N(CH、あるいはPDEAT:Ta[N(Cが選ばれる。
ここでは、例えば、SiO膜を形成することを前提に、第1原料ガスに、例えば、TEOSを選ぶ。
第1原料ガスは、図示しない第1原料ガス源から図示しない第1原料ガスのマスフローコントローラで所定の流量が制御され、第1原料ガス導入管5を介して、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する。第1原料ガスが常温で液体である有機化合物又は有機金属化合物である場合、図示しない有機化合物の気化装置を用いて該有機化合物を気化し、キャリアガスと一緒に第1原料ガス導入管5を介して、第1原料ガス噴出孔5aから噴出させる。前記有機化合物の気化装置には、バブリング方式,ベーキング 方式,インジェクション方式等があるが、いずれを用いても良い。ここでは、バブリング方式を用いる。
有機化合物は、図示しない気化装置から第1原料ガス噴出孔5aの輸送経路で
結露することがあるので、該輸送経路の最下流部である第1原料ガス管5にカートリッジヒータを備える。カートリッジヒータを備える第1原料ガス管5は、図14に示されるように、2重管構造を有し、内側にカートリッジヒータ100を備え、外側に第1原料ガス噴出孔5aを備えている。カートリッジヒータ100は、例えば、金属パイプの中にMgOに巻かれた発熱線(例えば、ニクロム線)配置し、且つ高純度のMgOを充填し、給電線100a、100bから図示しない電源の出力を供給される構造を有する。カートリッジヒータ100の温度は、例えば、80℃~200℃の範囲で、例えば100℃に制御され、保持される。
ここで、第1原料ガス噴出孔5aから噴出する第1原料ガスを、図6に示されるように第1原料ガス噴出流13と呼ぶ。
第2原料ガスは、目的とする膜種に対応して選ばれる。例えば、水素ガス、又は酸素ガス、又は窒素ガス、又は前記ガスを2つ以上混合した混合ガスを選ぶ。第2原料ガスは、後述するようにプラズマ化され、プラズマ化された第2原料ガスの酸化作用あるいは還元作用を利用することから、目的とする膜種に対応して選ばれる。ここでは、例えば、酸素ガスとする。
第2原料ガスは、図示しない第2原料ガス源から図示しない第2原料ガスのマスフローコントローラで所定の流量を制御され、第2原料ガス導入管10及び第2原料ガス分散箱11を介して、第2原料ガス噴出孔3から噴出する。
第1原料ガス及び第2原料ガスは、空間的に分離され、それぞれ、第1原料ガス噴出孔5a及び第2原料ガス噴出孔3から、反応容器50に導入される。第1原料ガスに有機化合物あるいは有機金属化合物が用いられる場合、それらは酸素との反応が激しいことから、前記噴出孔5aと3の空間的に分離して配置すること装置構成は、粉発生の抑制及び原料ガス供給系への汚れ(堆積物)発生を防止する効果がある。
第1原料ガス噴出孔5a及び第2原料ガス噴出孔3は、直径略0.4mm~略1mmの円形に形成される。ここでは、0.8mmとする。なお、第1及び第2原料ガス噴出孔5a、3の直径を略1mm以上にすると、ガスの噴出量の空間分布が不均一に成り、それを略1mm以下にすると、空間分布は均一になるが、孔加工に際し多大の労力と費用が発生する。前記孔直径0.8mmはガスの噴出量の空間分布が均一であり、製作加工費を抑制できることで妥当な数値と言える。
第1電極1a及び第2電極2の間には、図1及び図3に示されるように、高周波電源70の出力電圧が整合器71及び電力分配器72等を介して印加される。高周波電源70の出力電圧を第1電極1a及び第2電極2の間に印可する方法は、任意に選んで良い。ここでは、例えば、第1電極1aの両端部に設けられた給電点79a、79bに後述の高周波電源70の出力電圧を印加する。
高周波電源70の周波数は、13.56MHz、又は、VHF帯域(30MHz~300MHz)から選ぶことができる。ここでは、例えば、13.56MHzとする。なお、周波数13.56MHzを選ぶ理由は、高周波電源が低コストで入手できることによる。なお、13.56MHzで生成されるプラズマ密度に比べて高い密度のプラズマ生成を必要とする場合は、例えば、VHF帯域の60MHzを選ぶ。
高周波電源70の出力は、図1及び図3に示されるように、大気用同軸ケーブル71aを介して整合器71に伝送され、整合器71の出力は大気用同軸ケーブル71bを介して電力分配器72へ伝送される。電力分配器72は2分配器であり、入力された電力を等分配して、大気用同軸ケーブル73a、73bを介して、それぞれ、真空装置用電流導入端子75a、75bに供給する。
真空装置用電流導入端子75aに伝送された高周波電源70の出力電圧は、真空用同軸ケーブル76a、真空用導線77a及び給電点79aを介して、第1電極1aに印加される。なお、真空用同軸ケーブル76aの給電点79a側の端部の外皮導線は固定金具80aにより第2電極2に接続固定される。
真空装置用電流導入端子75bに伝送された高周波電源70の出力電圧は、真空用同軸ケーブル76b、真空用導線77b及び給電点79bを介して、第1電極1aに印加される。なお、真空用同軸ケーブル76bの給電点79b側の端部の外皮導線は固定金具80bにより第2電極2に接続固定される。
第1電極1aと第2電極2の間に、例えば、水素ガス、又は酸素ガス、又は窒素ガス、又は前記ガスを2つ以上混合した混合ガスが導入された状態で、第1電極1aの給電点79a、79bに高周波電源70の電圧が印加されると、図4及び図5に示されるように、第1電極1aと第2電極2の間に強い電界が発生する。その結果、第1電極1aと第2電極2の間に導入されたガスのプラズマが生成される。
ここでは、第1電極1aと第2電極2の間に、例えば、酸素ガスが導入されるので、酸素プラズマ15a、15bが生成される。酸素プラズマ15a、15bの強さは、電力の大きさに依存するが、通常、プラズマ密度1010~1011個/cm、シース厚み略1mm~2.5mmのプラズマが生成される。ここで、第1電極1aに直径4mmの円筒状の凹み1aa、1abが形成されているので、ホローカソード効果により、高密度で、且つ低電子温度の酸素プラズマが生成される。前記酸素プラズマ15a、15bの密度は、ホローカソード効果により、通常の酸素プラズマより1桁高くなり、1011~1012個/cmとなることが推定される。
第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界の方向は、図4に示されるように、基板保持台60の主面60aに平行な方向を向いている。即ち、第1電極1aと第2電極2の間に発生するイオンの主たる移動方向は基板保持台60の主面60aに平行であり、基板61を直撃する方向を向いていない。即ち、第1電極1aと第2電極2の間からその外への電界Aに基づくプラズマの漏洩はほとんどない。したがって、第1電極1aと第2電極2の間に発生するイオンが基板保持台60の主面60aに載置された基板61を直撃する、という現象は発生しない。なお、電子及びイオンの濃度勾配に基づく拡散による基板61の方向への移動はあるが、基板61にダメージを与える電気エネルギーはない、と考えられる。
図5及び図6に示される酸素プラズマ15a、15bでは、プラズマ15a、15bの中の電子eが酸素分子に衝突し、次の反応が発生する。
+e→ O+O+e
+O→ O
第1電極1aと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の酸素プラズマ15a、15bに含まれるO原子、O及び酸素ガスは、電気的に中性であるので、第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く前記第2原料ガス噴出孔3から供給される酸素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
ここで、前記溝2aの開口2eから外部へ流出するO原子、O及び酸素ガスの流れを、図6に示されるように、酸素プラズマ流12aと呼ぶ。第2電極2と基板保持台60の主面60aの間の空間を、図6に示されるように、プラズマ反応領域17aと呼ぶ。
ここで、第1電極1aと第2電極によるプラズマ発生の特徴、即ち作用と効果であるが、前記第1電極1aと第2電極2による酸素プラズマ生成において、発生する主たる電界の方向が基板保持台60の主面60aに平行であり、酸素プラズマ流12aは前記第1電極1aと第2電極2の主たる電界と直交する方向へ流出することから、基板保持台60の主面60aに載置された基板61へ直接的に突入するイオンの発生を抑制することが可能である。即ち、基板61に影響を与えるイオン衝撃を無くすという作用がある。これは、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能であることを、意味している。
なお、第2原料ガスが水素ガスの場合は、第1電極1aと第2電極2の間に水素プラズマが生成される。水素プラズマの中の電子eが水素分子に衝突して、次の反応が発生する。
+e→ H+H+e
第1電極1aと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の水素プラズマに含まれるH原子、及びHガスは、電気的に中性であるので、第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く前記第2原料ガス噴出孔3から供給される水素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
また、第2原料ガスが窒素ガスの場合は、第1電極1aと第2電極2の間に窒素プラズマが生成される。窒素プラズマの中の電子eが窒素分子に衝突して、次の反応が発生する。
+e→ N+N+e
第1電極1aと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の窒素プラズマに含まれるN原子、及びNガスは、電気的に中性であるので、第1電極1aと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く前記第2原料ガス噴出孔3から供給される窒素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
次に、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の動作について、図1~図8を参照して説明する。
図7は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いたALD法により薄膜を形成する工程を示す模式的概念図である。図8は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いたALD法により形成される薄膜の構造を示す模式的概念図である。
説明の便宜上、基板61は結晶シリコン板(ウエーハ)とし、その表面に酸化シリコン膜(SiO2)を形成する場合について、以下説明する。第1原料ガスは、テトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2、第2原料ガスは、酸素ガスとする。
先ず、反応室50の基板搬入搬出バルブ62を開いて、基板61を基板保持台60の主面60aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブ62を閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口51a及び排気口51bを介して、反応室50内部を所定の真空度にする。
次に、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いて、基板61に対して、次に示す工程を順次、実施する。ここでは、第1原料ガスはテトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2を用い、第2原料は酸素を用いる。
第1工程:図7に示される工程(1)である。反応室50内部に第1原料ガスのテトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2を導入する。なお、キャリアガスとして、Arガスを用いる。又、第1原料の供給と停止は、図示しない電磁弁の開閉で行う。
第1原料ガスの導入量は、第1原料の導入分圧が、例えば、反応室50の初期状態における圧力1Pa~10Paから1,000Pa~10,000Paに到達するように制御する。即ち、反応室50内部の圧力が初期状態において圧力を1Pa~10Paとし、第1原料の導入分圧を、例えば、1,000Paから10,000Paに設定する。時間軸で示すと、図7のt1~t2の時間である。ここでは、例えば、例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
第1工程において、反応室50内部に第1原料が導入され、該反応室50内部に第1原料が充満すると、該第1原料の一部分が基板61の表面に吸着する。吸着した第1原料ガスは厚み約1Åの原子層として化学吸着する。基板61の表面に吸着した第1原料のテトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2の原子層の状態は、図8に1st layer として、模式的に示される。
第2工程:図7に示される工程(2)である。反応室50内部を排気する。ここで、第2電極2と基板保持台60の間に存在するガスの排気の流れを、図6に示されるように、排気流16と呼ぶ。排気流16の中に、第1原料ガス噴出管5を介して、Arガスを混入させることができる。第2工程を時間軸で示すと、図7のt2~t3の時間である。例えば、10秒~60秒、例えば、20秒間である。
第2工程において、反応室50内部の空間に充満している第1原料のテトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2を排気流16により排除する。第1原料ガスの供給が遮断された状態で、図示しない真空ポンプを稼働して、反応室50内部の圧力が、例えば、1Pa~10Paになるまで、排気する。排気時間は例えば、20秒間である。
第3工程:図7に示される工程(3)である。反応室50内部に第2原料を導入しつつ、該反応室50内部の圧力を、例えば、133Pa~1333Paの範囲、例えば、266Paに維持する。そして、同時に、図5及び図6に示されるように、第1電極1aと第2電極2の間に第2原料のプラズマ、即ち、酸素プラズマを生成する。ここで、酸素プラズマ15a、15bは、図3及び図5に示されるように、第1電極1aの両面に形成された複数の円筒状の凹み1aa、1abのホローカソード効果により、通常のプラズマ密度1010~1011個/cmに比べて1桁高い1011~1012個/cmの高密度で、且つ低電子温度の酸素プラズマが生成される。その結果、生成される酸素プラズマ中の酸素ラジカル及びオゾンO等の活性種の濃度は通常の酸素プラズマに比べて、1桁多く発生する。
プラズマ化された酸素プラズマは、酸素プラズマ流12aとして基板61の表面に到達する。図8に示される1st layerの原子層であるSi(OC2と酸素プラズマ流12aの接触の時間は、図7のt3~t4の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
酸素プラズマ流12aがSi(OC2に接触すると、次に示す酸化反応が起こる。
Si(OC2+O+O→ SiO、CO、H
ただし、SiOは固体として基板61表面に固着する。COとHOは気体として、排出される。その結果、基板61の表面にはSiOから成る1st layerが形成される。なお、SiOから成る1st layerの厚みは約1Åである。
第4工程:図7に示される工程(4)である。第2原料の供給を遮断し、かつ、高周波電源70の出力をゼロにとし、酸素プラズマ流12aの供給を遮断する。そして、反応室50内部を排気する。時間軸で示すと、図7に示されるt4~t5の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、20秒間である。
その後、上記第1工程~第4工程を、目的とする薄膜の厚みが得られるまで繰り返す。1サイクル当たりの膜厚み約1Åであるので、目的とする薄膜の厚みが10nmであれば、約100回の原子層堆積を繰り返す。
上記第1工程~第4工程を約100回繰り返してSiO膜を形成した場合、図8に示されるように、約100層の原子層が積層されながら結晶構造の膜になる。1st layerから100st layerが積層されたSiO膜は、図8に示される多層構造から結晶構造になる。
目的とするSiO膜の製膜が終了後、上記第1原料ガス及び第2原料ガスの供給停止を確認し、反応容器50内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器50を大気条件に戻す。反応容器50が大気条件に戻された後、基板搬入搬出バルブ62を開とし、基板61を取り出す。
本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置では、上述の通り、第1電極1aと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ第1電極1aと第2電極2が発生する主たる電界の影響が及ばぬ領域に基板が配置され、且つ膜形成の主要なラジカル種であるOラジカル及びO
を、次のプラズマ反応により生成し、イオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。
+e→ O+O+e
+O→ O
また、第1電極1aが備えるホローカソードプラズマ生成のための円筒状の凹み1aa、1abの作用効果により、酸素プラズマ15a、15bのプラズマ密度が高くなり、且つ、電子温度は低くなることから、低電子温度の、高密度の酸素プラズマ流12aを基板61の方向へ流出させることが可能である。
また、第1原料ガスが有機化合物の場合、第1原料ガス噴出管5が2重管構造を有し、内側にカートリッジヒータ100を備え、外側に第1原料ガス噴出孔5aを備えていることから、結露するという問題は発生しない。
即ち、プラズマ支援ALD装置により酸化シリコン(SiO)膜を形成するに際し、従来装置では困難であるイオン損傷のないALD法による膜形成が可能である。
また、プラズマ発生の電極が大面積化に好適な構造を有することから、プラズマ支援ALD装置の大面積基板への応用及び基板処理面積の増大化への対応が容易に可能である。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置について、図9~図11を参照して、説明する。図2及び図14も参照する。
第2原料ガスは、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置と同様に、目的とする薄膜の種類に対応して、水素ガス、又は酸素ガス、又は窒素ガス、又は前記ガスを2つ以上混合した混合ガス等の反応性ガスから選ぶことができる。
ここでは、以下の説明の便宜上、第2原料ガスは、水素ガスとする。即ち、水素プラズマの還元作用を活用する。
図9は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成部材である断面形状が円形の第1電極の模式的斜視図である。図10は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置のプラズマ生成領域を示す模式的断面図である。図11は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の模式的断面図である。
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成の特徴は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置における第1電極1a(断面形状が矩形)に代えて、断面形状が円形である第1電極1bを用いることである。そして、第2電極の開口2eに金属製メッシュ19を設置したことである。第1電極1bと金属製メッシュ19以外は、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置と同様である
符号1bは断面形状が円形の第1電極である。断面形状が円形の第1電極1bは、図9に示されるように、断面形状が円形の棒状の金属体で形成される。断面形状が円形の第1電極1bは、本発明の第1の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置と同様に、図2図示の第2の電極2と組み合わせて用いられる。
断面形状が円形の第1電極1bは、図9、図10及び図11に示されるように、断面形状が円形の棒状の金属体が用いられ、その表面にホローカソードプラズマを生成する溝状の凹み1ba、1bb、1bdが形成される。断面形状が円形の第1電極1bは、図10及び図11に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。そして、断面形状が円形の第1電極1bは、図9に示されるように、該第1電極1bの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1bcが連結され、電気絶縁部材81a、81bを介して図2図示の第2電極の溝端面の穴7a、7bに支持される。なお、断面形状が円形の第1電極1bと第1電極支持部材1bcは電気的及び構造強度的に連結されている。
断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2の間の距離は、プラズマ生成条件を考慮して決められる。即ち、断面形状が円形の第1電極1bと第2の電極2の間に生成される第2原料ガスのプラズマ生成条件は、主として、第1電極1bと第2の電極2の間隔dと圧力pと印加される高周波電圧Vに依存する。ここでは、パッシェンの法則に従って、パッシェン曲線の最小値の領域に設定する。例えば、pd積が、略133Pa・cm~1333Pa・cmを満たす値を選ぶ。ここでは、例えば、第1電極1aと第2の電極2の側面2bの間隔d=0.5cm、圧力p=133Pa~1333Paとする。
前記溝状の凹み1baの幅は、第1電極1bと第2電極2の間に生成される第2原料ガスのプラズマのシース厚みの略2倍~10倍に設定される。なお、通常のプラズマのシース厚みは、1mm~2.5mmであることが知られている。
ここでは、断面形状が円形の第1電極1bの寸法を、例えば、直径10mm、長さ1,000mmとする。そして、前記溝状の凹み1ba、1bb、1bdの幅を、例えば2mm~20mm、例えば、4mmとする。該溝状の凹み1ba、1bb、1bdの凹みの深さを、例えば、3mm~10mm、ここでは、例えば、4mmとする。
該溝状の凹み1ba、1bb、1bdは、例えば、特許文献3及び特許文献4に記載されているように、ホローカソード効果により高密度プラズマを生成する作用を有する。なお、ホローカソード効果はプラズマシース近傍の電子の振動現象に起因するもので、低電子温度で、かつ、高密度のプラズマを生成できる。
ここで、第1電極1bと第2電極2の間に生成される第2原料ガスである水素ガスのプラズマの中で発生するHラジカルを含み第2電極2の開口2eの外へ流れ出る水素ガスを、図11に示されるように、水素プラズマ流12bと呼ぶ。
符号19は金属製メッシュである。金属製メッシュ19は、第2電極2の溝2aの開口2eを塞ぐように設置される。金属製メッシュ19はプラズマを遮蔽する作用がある。
金属製メッシュ19は、例えば、スポット溶接で第2電極2に固定される。金属製メッシュ19は、開口率20%~80%、線径略0.1mm~略1mmから選ぶ。線径が略0.1mmより小さい場合、機械的強度が弱く、金属製メッシュ19を設置する作業の際に破損する恐れがあり、線径1mm以上であれば、開口率の選定に制約が生じるので好ましくない。また、開口率20%以下であれば、水素プラズマの流れが抑制され、開口率80%以上であればプラズマを遮蔽する作用が弱くなるので、好ましくない。
金属製メッシュ19は、図8及び図9に示されるように、第2電極2の溝2aの開口2eを塞ぐように設置され、断面形状が円形の第1電極1bと第2電極2間に生成される水素プラズマ15c、15d、15eの中の電子及びイオンを電気的に遮蔽する作用を有する。水素プラズマ15c、15d、15eの中の電気的に中性であるHラジカルの大部分は金属製メッシュ19に遮蔽されること無く、金属製メッシュ19を通過することが可能である。
ここで、第2電極2と基板保持台60の主面60aの間の空間を、図11に示されるように、水素プラズマ反応領域17bと呼ぶ。
次に、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の動作について、図9~図11を参照して説明する。図7及び図8も参照する。
説明の便宜上、基板61は結晶シリコン板(ウエーハ)とし、その表面に、例えば、金属膜のTi膜を形成する場合について、以下説明する。
第1原料ガスとして、例えば、塩化物のTiClを選び、第2原料は水素ガスとする。
先ず、反応室50の基板搬入搬出バルブ62を開いて、基板61を基板保持台60の主面60aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブ62を閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口51a及び排気口51bを介して、反応室50内部を所定の真空度にする。
次に、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を用いて、基板61に対して、次に示す工程を順次、実施する。
第1工程:図7に示される工程(1)である。反応室50内部に第1原料ガスのTiClを導入する。なお、キャリアガスとして、Arガスを用いる。又、第1原料の供給と停止は、図示しない電磁弁の開閉で行う。
第1原料ガスの導入量は、第1原料の導入分圧が、例えば、反応室50の初期状態における圧力1Pa~10Paから1,000Pa~10,000Paに到達するように制御する。即ち、反応室50内部の圧力が初期状態において圧力を1Pa~10Paとし、第1原料の導入分圧を、例えば、1,000Paから10,000Paに設定する。時間軸で示すと、図7のt1~t2の時間である。ここでは、例えば、例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
第1工程において、反応室50内部に第1原料が導入され、該反応室50内部に第1原料が充満すると、該第1原料の一部分が基板61の表面に吸着する。吸着した分子状態の第1原料は厚み約1Åの原子層として化学吸着する。基板61の表面に吸着したTiClの原子層の状態は、図8に1st layer として、模式的に示される。
第2工程:図7に示される工程(2)である。反応室50内部を排気する。ここで、第2電極2と基板保持台60の間に存在するガスの排気の流れを、図11に示されるように、排気流16と呼ぶ。排気流16の中に、第1原料ガス噴出管5を介して、Arガスを混入させることができる。第2工程を時間軸で示すと、図7のt2~t3の時間である。例えば、10秒~60秒、例えば、20秒間である。
第2工程において、反応室50内部の空間に充満している第1原料のTiClを排気流16により排除する。第1原料ガスの供給が遮断された状態で、図示しない真空ポンプを稼働して、反応室50内部の圧力が、例えば、1Pa~10Paになるまで、排気する。排気時間は例えば、20秒間である。
第3工程:図7に示される工程(3)である。反応室50内部に第2原料の水素ガスを導入しつつ、該反応室50内部の圧力を、例えば、133Pa~1333Paの範囲、例えば、266Paに維持する。そして、同時に、図10及び図11に示されるように、第1電極1bと第2電極2の間に第2原料のプラズマ、即ち、水素プラズマを生成する。ここで、水素プラズマプラズマ15c、15d、15eは、図10及び図1に示されるように、第1電極1bの表面に形成された複数の円筒状の凹み1ba、1bb、1bdのホローカソード効果により、通常のプラズマ密度1010~1011個/cmに比べて1桁高い1011~1012個/cmの高密度で、且つ低電子温度の水素プラズマが生成される。その結果、生成される水素プラズマ中の水素ラジカルの濃度は通常の水素プラズマに比べて、1桁多く発生する。
プラズマ化された水素プラズマは、水素プラズマ流12bとして基板61の表面に到達する。図8に示される1st layerの原子層であるTiClと水素プラズマ流12bの接触の時間は、図7のt3~t4の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
水素プラズマ流12bがTiClに接触すると、次に示す反応が起こる。
TiCl+4H→ Ti+4HCl
ただし、Tiは固体として基板61表面に固着する。HClは気体として、排出される。その結果、基板61の表面にはTi金属薄膜から成る1st layerが形成される。なお、原子層Tiから成る1st layerの厚みは約1Åである。
第4工程:図7に示される工程(4)である。第2原料の水素ガスの供給を遮断し、かつ、高周波電源70の出力をゼロにとし、水素プラズマ流12abの供給を遮断する。そして、反応室50内部を排気する。排気中に、第1原料ガス噴出管5を介して、Arガスを混入させることができる。
時間軸で示すと、図7に示されるt4~t5の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、20秒間である。
その後、上記第1工程~第4工程を、目的とする薄膜の厚みが得られるまで繰り返す。1サイクル当たりの膜厚み約1Åであるので、目的とする薄膜の厚みが10nmであれば、約100回の原子層堆積を繰り返す。
上記第1工程~第4工程を約100回繰り返してTi金属膜を形成した場合、図8に示されるように、約100層の原子層が積層された膜になる。1st layerから100st layerが積層されたTi金属膜は、基板表面に凹凸があってもカバーレッジに優れた緻密な膜となる。
目的とするTi金属膜の製膜が終了後、上記第1原料ガス及び第2原料ガスの供給停止を確認し、反応容器50内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器50を大気条件に戻す。反応容器50が大気条件に戻された後、基板搬入搬出バルブ62を開とし、基板61を取り出す。
本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置では、上述の通り、第1電極1bと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ第1電極1bと第2電極2が発生する主たる電界の影響が及ばぬ領域に基板が配置され、且つ膜形成の主要なラジカル種であるHラジカルを、次に示すプラズマ反応により生成し、プラズマを遮蔽する作用がある金属製メッシュ19によりイオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。
+e→ H+H
その結果、基板表面に吸着している第1原料ガスのTiClと表面化学反応を起こし、Ti金属膜を原子層で形成する。
また、第1電極1bが備えるホローカソードプラズマ生成のための円筒状の凹み1ba、1bb、1bdの作用効果により、水素プラズマ15c、15d,15eのプラズマ密度が高くなり、且つ、電子温度は低くなることから、低電子温度の、高密度の水素プラズマ流12bを基板61の方向へ流出させることが可能である。
即ち、プラズマ支援ALD装置によりTi金属膜を形成するに際し、従来装置では困難であるイオン損傷のないALD法による膜形成が可能である。
また、プラズマ発生の電極が大面積化に好適な構造を有することから、プラズマ支援ALD装置の大面積基板への応用及び基板処理面積の増大化への対応が容易に可能である。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装について、図12及び図13を参照して、説明する。図2及び図14も参照する。
図12は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置構成部材である断面形状が楕円形の第1電極の模式的斜視図である。図13は、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置のプラズマ生成領域を示す断面図である。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成の特徴は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置における断面形状が円形の第1電極1bに代えて、断面形状が楕円形である第1電極1cを用いることである。なお、第2電極の開口2eに設置する金属製メッシュ19を取り外し、該金属製メッシュ19が無い状態で用いても良い。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の構成は、断面形状が楕円形である第1電極1c以外は、本発明の第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置と同様である。
符号1cは断面形状が楕円形の第1電極である。断面形状が楕円形の第1電極1cは、図12に示されるように、断面形状が楕円形の棒状の金属体で形成される。断面形状が楕円形の第1電極1cは、本発明の第1及び第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置と同様に、図2図示の第2の電極2と組み合わせて用いられる。
断面形状が楕円形の第1電極1cは、図12及び図13に示されるように、断面形状が楕円形の棒状の金属体が用いられ、その表面にホローカソードプラズマを生成する溝状の凹み1ca、1cbが形成される。断面形状が楕円形の第1電極1cは、図13に示されるように、第2電極2が備える溝2aの中に包み込まれるように配置される。
そして、断面形状が楕円形の第1電極1cは、図12に示されるように、該第1電極1cの両端部に断面積が異なる第1電極支持部材1bcが連結され、図2図示の第2電極の溝端面の穴7a、7bに電気絶縁部材81a、81bを介して支持される。なお、断面形状が楕円形の第1電極1cと第1電極支持部材1bcは電気的及び構造強度的に連結されている。
第2原料ガスは、水素ガス、又は酸素ガス、又は窒素ガス又はそれらを組み合わせた混合ガスが用いられる。なお、第1原料ガスを酸化させる場合は、酸素ガス、又は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを用い、第1原料ガスを還元させる場合は、水素ガス又は窒素ガスとの混合ガスを用いるのが良い。目的とする薄膜形成に対応して、酸素と水素の混合ガスを用いても良い。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置において、第2原料ガスを供給しつつ、高周波電源70の出力電圧が、断面形状が楕円形の第1電極1cと第2電極2の間に印加されると、図13に示されるように、第2原料ガスのプラズマ18a、18bが発生する。
第2原料ガスのプラズマ18a、18bは、断面形状が楕円形の第1電極1cに形成された複数の溝状の凹み1ca、1cbのホローカソード効果により、通常のプラズマ密度1010~1011個/cmに比べて1桁高い1011~1012個/cmの高密度で、且つ低電子温度のプラズマ特性を有する。
ホローカソード効果を利用した高密度プラズマCVD装置に関しては、例えば、特許文献3及び特許文献4に記載されているような平行平板電極方式があるが、従来装置では、プラズマ生成のための一対の電極の間(即ち、電界の中)に基板が載置されるので、該プラズマによるイオン衝撃は避けられないという致命的な欠点がある。これに対して、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマを用いた薄膜形成装置では、第1電極1cと第2電極2で生成されるプラズマ18a、18bの外側(即ち、電界が発生しない領域)に基板が載置されるので、第2原料ガスのプラズマ18a、18bによるイオン衝撃が避けられる。即ち、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置によれば、従来の装置では困難なイオンダメージの無い膜形成が可能である。
なお、ホローカソード効果は、プラズマシース近傍の電子の振動現象に起因するものであるので、溝状の凹み1ca、1cbの直径と深さを該プラズマシースの厚みの2倍以上にすることにより、発生させることが可能である。
第2原料ガスのプラズマ18a、18bの一部分は、図13図示のプラズマ流12cとなって、基板61の方へ流出する。プラズマ流12cに含まれる反応性の高いラジカル種は、基板61に吸着している原子層状の第1原料ガスと表面化学反応を起こす。その結果、ALD法による薄膜を基板61に形成することができる。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の動作については、上述の本発明の第1及び第2の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の場合と同様であるが、シリコン基板の表面に酸化物半導体のTiOの形成することを、具体例として、以下説明する。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置を応用するに際し、第1原料ガスは、目的とする膜種によって選ばれる。ここでは、主として、有機化合物あるいは有機金属化合物等が用いられる。なお、塩化化合物、シランガスを用いても良い。
例えば、酸化チタン膜(TiO)を形成する場合、チタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CHが選ばれる。
例えば、酸化シリコン膜(SiO)を形成する場合、テトラエトキシシラン(TEOS):Si(OC2あるいはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO):C18OSiが選ばれる。
例えば、窒化シリコン膜(SiNx)を形成する場合、ヘキサメチルジシラザン(HMDS):(CHSiNHSi(CHあるいはトリスジメチルアミノシラン:SiH(N(CHあるいはテトライソシアネートシラン:Si(NCO)が選ばれる。
例えば、酸化アルミニウム膜(Al)を形成する場合、トリメチルアルミニウム:(CHAlあるいはトリエチルアルミニウム:(CAlが選ばれる。
例えば、金属膜のAl膜の場合、トリメチルアルミニウム(CHAlあるいはトリエチルアルミニウム(CAlが選ばれる。
例えば、金属膜のTi膜の場合、TEMAT:Ti[N(CCH)]、TDMAT:Ti[N(CH、またはTDEAT:Ti[N(Cが選ばれる。
例えば、金属膜のTa膜の場合、PEMAT:Ta[N(CCH)]、PDMAT:Ta[N(CH、あるいはPDEAT:Ta[N(Cが選ばれる。
ここでは、例えば、酸化物半導体のTiO膜を形成することを前提に、第1原料ガスに、例えば、チタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CH
を選ぶ。
なお、本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置において、第2原料ガスが酸素ガスの場合、第1電極1cと第2電極2の間に酸素プラズマが生成される。酸素プラズマの中の電子eが酸素分子に衝突して、次の反応が発生する。
+e→ O+O+e
+O→ O
第1電極1cと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の酸素プラズマ18a、18bに含まれるO原子、O及び酸素ガスは、電気的に中性であるので、第1電極1cと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く、前記第2原料ガス噴出孔3から供給される酸素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
また、第2原料ガスが水素ガスの場合は、第1電極1cと第2電極2の間に水素プラズマが生成される。水素プラズマの中の電子eが水素分子に衝突して、次の反応が発生する。
+e→ H+H+e
第1電極1aと第2電極2の間に生成された高密度で低電子温度の水素プラズマに含まれるH原子、及びHガスは、電気的に中性であるので、第1電極1cと第2電極2の間に発生する主たる電界による拘束が無く前記第2原料ガス噴出孔3から供給される水素ガスの流れに押されて、前記溝2aの開口2eから外部へ流出する。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置の動作について、以下に説明する。
先ず、反応室50の基板搬入搬出バルブ62を開いて、基板61を基板保持台60の主面60aに載置する。次に、基板搬入搬出バルブ62を閉じた後、図示しない真空ポンプにより、排気口51a及び排気口51bを介して、反応室50内部を所定の真空度にする。
次に、水素プラズマを用いて基板61であるシリコンの表面を水素プラズマ処理する。即ち、水素プラズマを用いて基板61の前処理を行う。図示しない水素ガス供給源から図示しない水素ガス流量コントローラを用いて所定の流量を制御し、反応室50の内部の圧力を、例えば、133Pa~1333Paの範囲、例えば、266Paに設定し、第2原料噴出孔3から水素ガスを噴出する。ほぼ同時に、高周波電源70の出力電圧を第1電極1cと第2電極2に印加する。そうすると、図13図示のプラズマ18a、18bが生成され、プラズマ流12cとなって、基板61の方へ流出する。プラズマ流12cに含まれる水素ラジカルは、基板61の表面に吸着し、あるいは、基板表面に付着しているO原子あるいはC原子と化学反応を起こす。その結果、C成分及びO成分は除去され、基板61の表面はH原子で覆われた状態、あるいは基板であるシリコン表面に未結合手が形成された状態になる。
次に、基板61に対して、次に示す工程を順次、実施する。ここでは、第1原料ガスはチタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CHを用い、第2原料は酸素を用いる。TTIPは第1原料ガス噴出管5aから噴出されるが、第1原料ガス管5が、図14(a)、(b)に示されるように、2重管構造を有し、内側にカートリッジヒータ100を備え、温度が、例えば、80℃~120℃の範囲で、例えば100℃に制御され、保持されるので、TTIPの第1原料ガス管5における結露は発生しない。
第1工程:図7に示される工程(1)である。反応室50内部に第1原料ガスのチタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CHを導入する。なお、キャリアガスとして、Arガスを用いる。又、第1原料ガスの供給と停止は、図示しない電磁弁の開閉で行う。
第1原料ガスの導入量は、第1原料の導入分圧が、例えば、反応室50の初期状態における圧力1Pa~10Paから1,000Pa~10,000Paに到達するように制御する。即ち、反応室50内部の圧力が初期状態において圧力を1Pa~10Paとし、第1原料の導入分圧を、例えば、1,000Paから10,000Paに設定する。時間軸で示すと、図7のt1~t2の時間である。ここでは、例えば、例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
第1工程において、反応室50内部に第1原料が導入され、該反応室50内部に第1原料が充満すると、該第1原料の一部分が基板61の表面に分子状態で吸着する。吸着した第1原料ガスは厚み約1Åの原子層として化学吸着する。基板61の表面に吸着した第1原料ガスのチタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CHの原子層の状態は、図8に1st layer として、模式的に示される。
第2工程:図7に示される工程(2)である。反応室50内部を排気する。排気工程では、第1原料ガス噴出管5を介して、Arガスを噴出してもよい。第2工程を時間軸で示すと、図7のt2~t3の時間である。例えば、10秒~60秒、例えば、20秒間である。
第2工程において、反応室50内部の空間に充満している第1原料ガスのチタンテトライソプロポキシド(TTIP):Ti{OCH(CHを反応室50内部から排除する。第1原料ガスの供給が遮断された状態で、図示しない真空ポンプを稼働して、反応室50内部の圧力が、例えば、1Pa~10Paになるまで、排気する。排気時間は例えば、20秒間である。
第3工程:図7に示される工程(3)である。反応室50内部に第2原料ガスを導入しつつ、該反応室50内部の圧力を、例えば、133Pa~1333Paの範囲、例えば、266Paに維持する。そして、同時に、図13に示されるように、第1電極1cと第2電極2の間に第2原料ガスのプラズマ、即ち、酸素プラズマを生成する。ここで、酸素プラズマ18a、18bは、図13に示されるように、第1電極1cの両面に形成された複数の円筒状の凹み1aa、1abのホローカソード効果により、通常のプラズマ密度1010~1011個/cmに比べて1桁高い1011~1012個/cmの高密度で、且つ低電子温度の酸素プラズマが生成される。その結果、生成される酸素プラズマ中の酸素ラジカル及びオゾンO等の活性種の濃度は通常の酸素プラズマに比べて、1桁多く発生する。
プラズマ化された酸素プラズマは、酸素プラズマ流12cとして基板61の表面に到達する。図8に示される1st layerの原子層であるTi{OCH(CHと酸素プラズマ流12cの接触の時間は、図7のt3~t4の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、10秒間である。
酸素プラズマ流12aがTi{OCH(CHに接触すると、次に示す酸化反応が起こる。
Ti{OCH(CH+O+O→ TiO、CO、H
ただし、TiOは固体として基板61表面に固着する。COとHOは気体として、排出される。その結果、基板61の表面にはTiOから成る1st layerが形成される。なお、TiOから成る1st layerの厚みは約1Åである。
第4工程:図7に示される工程(4)である。第2原料の供給を遮断し、かつ、高周波電源70の出力をゼロにとし、酸素プラズマ流12cの供給を遮断する。そして、反応室50内部を排気する。時間軸で示すと、図7に示されるt4~t5の時間である。例えば数秒~60秒、例えば、20秒間である。
その後、上記第1工程~第4工程を、目的とする薄膜の厚みが得られるまで繰り返す。1サイクル当たりの膜厚み約1Åであるので、目的とする薄膜の厚みが10nmであれば、約100回の原子層堆積を繰り返す。
上記第1工程~第4工程を約100回繰り返してTiO膜を形成した場合、図8に示されるように、約100層の原子層が積層された膜になる。1st layerから100st layerが積層されたTiO膜は、図8に示される多層構造ではなく結晶構造となる。
次に、基板61に形成されたTiO膜の品質を改善するために、水素プラズマを用いて製膜後処理を行う。
図示しない水素ガス供給源から図示しない水素ガス流量コントローラを用いて所定の流量を制御し、反応室50の内部の圧力を、例えば、133Pa~1333Paの範囲、例えば、266Paに設定し、第2原料噴出孔3から水素ガスを噴出する。ほぼ同時に、高周波電源70の出力電圧を第1電極1cと第2電極2に印加する。そうすると、図13図示のプラズマ18a、18bが生成され、プラズマ流12cとなって、基板61の方へ流出する。プラズマ流12cに含まれる水素及び水素ラジカルは、基板61の表面に到達し、基板表面に形成されたTiO膜の表面及び膜中の結晶構造的及び電子特性的な欠陥を修復する。その結果、形成されたTiO膜は酸化物半導体としての機能が得られる。
目的とする酸化物半導体としてのTiO膜の製膜が終了後、上記第1原料ガス及び第2原料ガスの供給停止を確認し、反応容器50内部を、一旦、高い真空度に真空引きする。その後、反応容器50を大気条件に戻す。反応容器50が大気条件に戻された後、基板搬入搬出バルブ62を開とし、基板61を取り出す。
本発明の第3の実施形態に係わるプラズマ支援ALD装置では、上述の通り、第1電極1cと第2電極2が発生する主たる電界の方向が基板保持台61の主面60aと平行の方向を向くように配置され、且つ第1電極1cと第2電極2が発生する主たる電界の影響が及ばぬ領域に基板が配置され、且つ膜形成の主要なラジカル種であるOラジカル及びO
を生成し、イオン衝撃が無い状態で基板61へ供給することが可能である。
また、第1電極1aが備えるホローカソードプラズマ生成のための円筒状の凹み1ca、1cbの作用効果により、酸素プラズマ18a、18bのプラズマ密度が高くなり、且つ、電子温度は低くなることから、低電子温度の、高密度の酸素プラズマ流12cを基板61の方向へ流出させることが可能である。
更に、酸化物半導体としてのTiO膜の構造的欠陥及び電子特性的欠陥を修復する水素プラズマ処理において、第1電極1cが備えるホローカソードプラズマ生成のための円筒状の凹み1ca、1cbの作用効果により、水素プラズマ18a、18bのプラズマ密度が高くなり、且つ、電子温度は低くなることから、低電子温度の、高密度の水素プラズマにより、且つ基板へのプラズマダメージを発生させない状態で実施可能である。
また、第1原料ガスが有機化合物の場合において、第1原料ガス噴出管5が2重管構造を有し、内側にカートリッジヒータ100を備え、外側に第1原料ガス噴出孔5aを備えていることから、結露するという問題は発生しない。
また、プラズマ発生の電極が大面積化に好適な構造を有することから、プラズマ支援ALD装置の大面積基板への応用及び基板処理面積の増大化への対応が容易に可能である。
1a、1b、1c・・・第1電極、
1aa、1ab・・・凹み、
1ba、1bb・・・溝(凹み)、
1ca、1cb・・・凹み、
2・・・第2電極、
2a・・・溝
2b・・・溝の側面、
2c・・・溝の底面、
2d・・・溝の端面、
2e・・・溝の開口、
3・・・第2原料ガス噴出孔、
5・・・第1原料導入管、
5a・・・第1原料噴出孔、
7a、7b・・・溝端面の穴、
12a、12c・・・酸素プラズマ流、
12b・・・水素プラズマ流、
15a、15b・・・酸素プラズマ、
16・・・排気流、
17a・・・プラズマ反応領域、
18a、18b・・・第2原料ガスのプラズマ、
50・・・反応容器、
60・・・基板保持台、
60a・・・基板保持台の主面、
61・・・基板、
70・・・高周波電源、
71・・・整合器、
72・・・電力分配器、
75a・・・真空装置用電流導入端子、
79a、79b・・・給電点、
100・・・カートリッジヒータ。

Claims (7)

  1. 排気系を備えた反応容器と、目的とする薄膜を形成する対象である基板を保持する主面を有する基板保持台と、前記薄膜の原料を含む第1原料ガスと少なくとも水素又は酸素又は窒素のいずれかを含む第2原料ガスを空間的に分離して前記反応容器に導入する原料ガス導入手段と、前記第2原料ガスをプラズマ化する電気的に非接地の第1電極と電気的に接地の第2電極から成るプラズマ生成電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に高周波電圧を印加する高周波電源と、を具備し、プラズマ支援ALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて薄膜を形成するプラズマ支援ALD装置であって、
    前記第2電極は、前記基板保持台の主面と平行に延在する複数の溝を備え、且つ前記基板保持台の主面に対向して配置され、
    前記第1電極は、前記第2電極の前記複数の溝と同じ個数の棒状又は板状の金属体で形成され、且つ前記第1電極はそれぞれ前記第2電極が備える各前記溝の中に包み込まれるように配置され、且つ前記第1電極はホローカソードプラズマを生成する筒状の凹みを備えるとともに、
    前記第1原料ガスは、有機化合物又は有機金属化合物から選ばれ、前記第2電極と前記基板保持台の主面との間に配置され、且つ軸心部に加熱手段を内蔵する2重管構造を備える第1原料ガス管に設けられた第1原料ガス噴出孔から噴出し、
    前記第2原料ガスは、前記第2電極の各前記溝の底面に設けられた第2原料ガス噴出孔から噴出する、という構成を有することを特徴とするプラズマ支援ALD装置。
  2. 第1原料ガス管は、軸心を共有する内側の管と外側の管から成る2重管で構成され、前記内側の管にカートリッジヒータを備え、前記外側の管に第1原料ガスの通路を備え、且つ第1原料ガス噴出孔を備える構造であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ支援ALD装置。
  3. 前記第1電極は、断面形状が矩形又は円形又は楕円形であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマ支援ALD装置。
  4. 前記ホローカソードプラズマを生成する筒状の凹みは、断面形状が円形であり、前記円形の直径は、前記第1電極と前記第2電極の間に生成されるプラズマのシース厚みの略2~10倍に設定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のプラズマ支援ALD装置。
  5. 前記第1電極と前記第2電極により生成される電界の主たる方向は、前記基板保持台の主面と平行な方向であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載のプラズマ支援ALD装置。
  6. 前記第2電極が備える複数の溝がそれぞれに有する各開口は、開口率が略20%~80%であるメッシュ金属で覆われることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のプラズマ支援ALD装置。
  7. 第1原料ガスがチタンを含む有機金属化合物であり、第2原料が酸素ガス又は少なくとも酸素ガスを含む他の反応性ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載のプラズマ支援ALD装置。
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