JP2022167787A - 水性蛍光インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】発色性及び耐光性に優れた蛍光色の画像を記録することが可能な水性蛍光インク、並びにこの水性蛍光インクを用いたインクカートリッジ及びインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】蛍光染料によって染着された樹脂粒子、及びキナクリドン顔料を含有するインクジェット用の水性蛍光インクである。蛍光染料が、キサンテン骨格を有する塩基性染料を含み、樹脂粒子が、シアノ基含有ユニットを含み、キナクリドン顔料の含有量(質量%)が、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下である。また、この水性蛍光インクを収容するインク収容部を備えたインクカートリッジ、及びこの水性蛍光インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法である。【選択図】なし
Description
本発明は、水性蛍光インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
印刷業界においては、表現可能な色域の拡大が求められている。色域の規格としては、PANTONE認証(X-rite)、Japan Color認証(日本印刷産業機械工業会)、DICカラーガイド認証(DIC)、Kaleido認証(東洋インキ)などを挙げることができる。近年、色域拡大のために、シアン、マゼンタ、及びイエローの基本色以外の特色インクや、高明度の特殊色インクを採用したインクジェット記録装置が利用されるようになっている。
印刷業界における他のニーズの一つとして、人目を引くような鮮やかな色合いの記録物の製造を挙げることができる。例えば、ポスターやPOPなどの掲示物、食品や飲料製品の包装などは、顧客の視線を引き付けるために鮮やかな色で記録されていることが要求される。そして、このようなニーズを満たすうえで蛍光色が有効であるといえる。これまでに、塗料やインクなどに適した蛍光材料が提案されている(特許文献1)。しかし、十分なインクジェット適性を有する蛍光材料については、未だ確立されていないのが現状である。
一方、顔料インクで記録されるマゼンタ領域の画像における発色性を向上すべく、蛍光染料を添加したインクが提案されている(特許文献2及び3)。
現在、蛍光色の画像を記録する方法としてはオフセット印刷が主流である。但し、オフセット印刷の一度刷りによって蛍光色の画像を記録する場合、鮮やかな発色性を得ることが困難であるので、二度刷り以上の重ね刷りを実施することが一般的であった。このため、発色性に優れた蛍光色の画像を重ね刷りによって記録する方法は、生産性やコスト面で課題を有していた。
また、電子写真方式を用いたデジタル記録の場合、液体トナーを用いて発色の高い蛍光色の画像を記録することが可能ではある。しかし、電子写真方式は記録媒体に制約があるため、例えば、テキスタイル記録への適用、大判への展開、厚物素材への適用などが困難である。
これに対して、インクジェット方式を用いたデジタル記録は、インクを吐出する記録ヘッドが記録媒体に接触しない(非接触である)ことを生かして、様々な記録媒体に適用することが可能である。但し、力学的エネルギー又は熱エネルギーを作用させてミクロンオーダーの微小なノズルからインクを吐出するため、粘度などのインクの物性の制約を受けやすい。特に、色材や樹脂などのインクの性能を左右する材料の多くは固体であり、これらの材料をインクに添加するには水や有機溶剤などの液媒体に溶解又は分散させる必要があるため、インクへの添加量に制約が生ずる。蛍光染料などの蛍光色材についても同様であり、発色性に優れた画像を記録すべく、十分な量の蛍光色材をインクに添加しようとしても、インクの物性面で制約が生じてしまう。
また、蛍光染料は、その分子に光(紫外線)やオゾンが当たって生成したラジカルと反応することで連鎖的に分解する。これにより、画像の耐光性に課題が生じることがわかった。特許文献2及び3で提案されたインクを用いれば、記録されるマゼンタ領域の画像の発色性(彩度)を向上させることができる。しかし、彩度及び明度が高いだけでなく、蛍光強度にも優れるといった、蛍光色の画像に要求される発色性については未だ十分であるとはいえず、さらなる改善の余地があった。
したがって、本発明の目的は、発色性及び耐光性に優れた蛍光色の画像を記録することが可能な水性蛍光インクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、この水性蛍光インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、蛍光染料によって染着された樹脂粒子、及びキナクリドン顔料を含有するインクジェット用の水性蛍光インクであって、前記蛍光染料が、キサンテン骨格を有する塩基性染料を含み、前記樹脂粒子が、シアノ基含有ユニットを含み、前記キナクリドン顔料の含有量(質量%)が、前記蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下であることを特徴とする水性蛍光インクが提供される。
本発明によれば、発色性及び耐光性に優れた蛍光色の画像を記録することが可能な水性蛍光インクを提供することができる。また、本発明によれば、この水性蛍光インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性蛍光インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。本発明において、樹脂を構成する「ユニット」とは、1の単量体に由来する繰り返し単位を意味する。
本発明者らは、発色性及び耐光性に優れた蛍光色の画像を記録しうるインクの構成について検討した。特に、画像の発色性を向上させるうえで、基本色では表現が難しい高明度の領域における色域の拡大に主眼を置いて検討した。高明度の領域における色域を拡大するには、蛍光を示す染料を色材として用いることが好適である。
蛍光を示す染料のなかでも、キサンテン骨格を有する塩基性染料は色域の拡大に効果的な染料である。しかし、蛍光染料は、その分子に光(紫外線)やオゾンが当たって生成したラジカルと連鎖的に反応することで分解が進み、画像の耐光性が低くなることがわかった。そこで本発明者らは、高明度の領域における色域拡大及び耐光性の低下を抑制可能な手段について検討を行った結果、キサンテン骨格を有し、かつ、蛍光を示す塩基性染料に加えて、キナクリドン顔料を用いるのが有効であることを見出した。以下、「キサンテン骨格を有し、かつ、蛍光を示す塩基性染料」のことを単に「蛍光染料」と記載することがある。
本発明者らは、蛍光染料そのものをインクに添加することを試みた。しかし、所望とするレベルの発色性とするために蛍光染料の添加量を増加させると、画像の彩度は向上するが、明度が顕著に低下することがわかった。これは、蛍光材料特有の濃度消光によるものと考えられる。以上より、蛍光染料を樹脂粒子に染着させてインクに添加することが必須であることが判明した。蛍光染料を樹脂粒子に染着させると、蛍光染料は樹脂粒子に固定されるので、画像の発色性(明度)の低下を抑制することができる。
蛍光染料を樹脂粒子に染着させる一般的な方法としては、(i)付加縮合塊状樹脂粉砕法と呼ばれる、塊状の樹脂を縮合して染着した後に粉砕して粒子を得る方法;及び(ii)水系で乳化重合により樹脂粒子を作製して染着する方法;がある。(i)の方法によって得られる樹脂粒子は、そのサイズがミクロンオーダーであるとともに、水分散性が低いため、インクジェット記録方法に用いるインクに適用することが困難である。一方、(ii)の方法で得られる樹脂粒子は、水系への適用性を有するとともに、そのサイズもナノオーダーに制御可能であることからインクジェット適性に優れている。しかし、(ii)の方法で作製した従来の樹脂粒子を含有するインクを用いて発色性について検討したところ、いくつかの課題が生ずることがわかった。
そこで、本発明者らは、蛍光染料で染着された樹脂粒子を含有するインクで記録した画像の発色性について検討した。画像の発色性を高めるには、強い相互作用により樹脂を蛍光染料で染着することが重要である。このため、本発明者らは、蛍光染料の特性に応じて、蛍光染料を効率よく染着させるための樹脂粒子の構成を検討した。
まず、本発明者らは、正に分極した部分を有する塩基性の蛍光染料と、負の分極を有する基としてシアノ基含有ユニットを有する樹脂とを用い、静電作用を利用して樹脂を蛍光染料で染着することにより、高い発色性を実現できることを見出した。
また、蛍光を示す染料は耐光性が低く、蛍光染料のみでは、蛍光染料より生じたラジカルが近傍の蛍光染料を攻撃し、連鎖的に反応が進み、分解することが課題であった。そこで、本発明者らがさらに検討した結果、蛍光染料(キサンテン骨格を有し、かつ、蛍光を示す塩基性染料)と、キナクリドン顔料とを併用することにより、画像の耐光性が向上する場合があることを見出した。特に、各種の顔料のなかでも、キナクリドン顔料と、前記蛍光染料とを併用することで、耐光性を特異的に向上しうることがわかった。但し、これらの顔料及び染料を用いていても、キナクリドン顔料と、蛍光染料との比率によっては、蛍光色の画像に求められる発色性と耐光性とのバランスが不十分となることもわかった。具体的には、インク中のキナクリドン顔料の含有量(質量%)が、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下であればよい。
上記の構成によって、発色性及び耐光性に優れた蛍光色の画像を記録することができる理由を、本発明者らは以下のように推測している。キサンテン骨格の複素環、キナクリドン顔料の複素環のπ-π結合、キサンテン骨格の酸素原子とキナクリドン顔料の水素原子との水素結合、及びそれぞれの芳香族基のπ-π結合により、強い相互作用が生ずる。さらに、蛍光染料に対する、キナクリドン顔料の質量比率(顔料/蛍光染料)が1.0倍以下であると、インクが付与された記録媒体において、キナクリドン顔料の周囲に蛍光染料が存在することになる。その結果、蛍光染料に光(紫外線)やオゾンが当たって生じたラジカルをキナクリドン顔料が受け止め、ラジカルによる蛍光染料の連鎖的な攻撃を抑制する。このような理由から、発色性及び耐光性をバランスよく向上することができると考えられる。
<水性蛍光インク>
本発明のインクは、蛍光染料によって染着された樹脂粒子、及び顔料を含有するインクジェット用の水性蛍光インクである。「蛍光インク」とは、蛍光色の画像を記録しうるインクをいう。蛍光色の画像とは、紫外又は可視部の励起光線によって蛍光を発する画像をいう。蛍光染料は、キサンテン骨格を有する塩基性染料である。顔料は、キナクリドン顔料である。樹脂粒子は、シアノ基含有ユニットを含む。キナクリドン顔料の含有量(質量%)は、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下である。
本発明のインクは、蛍光染料によって染着された樹脂粒子、及び顔料を含有するインクジェット用の水性蛍光インクである。「蛍光インク」とは、蛍光色の画像を記録しうるインクをいう。蛍光色の画像とは、紫外又は可視部の励起光線によって蛍光を発する画像をいう。蛍光染料は、キサンテン骨格を有する塩基性染料である。顔料は、キナクリドン顔料である。樹脂粒子は、シアノ基含有ユニットを含む。キナクリドン顔料の含有量(質量%)は、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下である。
以下、インクを構成する各成分について、それぞれ説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載によって限定されるものではない。以下「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」、「アクリロイル、メタクリロイル」を示すものとする。本発明のインクは、活性エネルギー線硬化型である必要はないので、重合性基を有するモノマーなどを含有させる必要もない。
(蛍光染料)
インクは、蛍光染料によって染着された樹脂粒子を含有する。この蛍光染料は、キサンテン骨格を有する塩基性染料を含み、蛍光染料は、好ましくはキサンテン骨格を有する塩基性染料である。キサンテン骨格は、下記式(1)で表される。
インクは、蛍光染料によって染着された樹脂粒子を含有する。この蛍光染料は、キサンテン骨格を有する塩基性染料を含み、蛍光染料は、好ましくはキサンテン骨格を有する塩基性染料である。キサンテン骨格は、下記式(1)で表される。
本明細書における「蛍光染料」とは、紫外又は可視部の励起光線によって蛍光を発する染料をいう。ある染料が、蛍光を示す「蛍光染料」であるか否かについては、例えば、以下に示す方法にしたがって判断することができる。染料を溶解しうる液体に染料を溶解させて得た試料に、わずかに目に見える程度の長波長(315~400nm程度)の紫外線(紫外光)をブラックライトなどにより照射する。そして、ブラックライトにより照射される紫外光と異なる色の光が目視にて観測できれば、その染料は蛍光を示す「蛍光染料」であると判断することができる。ブラックライトとしては、市販品(例えば、商品名「SLUV-4」(アズワン製)など)を使用することができる。
蛍光染料により染着された樹脂粒子中の蛍光染料については、例えば、以下に示す手順にしたがって分析することができる。常法にしたがってインクから取り出した樹脂粒子を、クロロホルムなどの有機溶剤に溶解させて試料を調製する。HPLC(高速液体クロマトグラフ)を用いて調製した試料から蛍光染料を単離する。単離した染料を、核磁気共鳴(NMR)分光法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの一般的な構造解析手法により分析する。
塩基性染料は、アミノ基やイミノ基(塩を形成していてもよい)をその分子構造中に有する、蛍光を示す化合物である。アミノ基やイミノ基をその分子構造中に有する化合物としては、「カラーインデックスに示される名称に『ベーシック』が含まれる染料」などを挙げることができる。カラーインデックスは、英国染料染色学会他により構築される色材のデータベースである。
蛍光を示し、キサンテン骨格を有する塩基性染料の具体例をC.I.ナンバー又は一般名称で示すと、C.I.ベーシックレッド1、1:1、4、8、11;C.I.ベーシックバイオレット10、11、11:1;ローダミン19、575などを挙げることができる。なかでも、発色性に優れるため、C.I.ベーシックレッド1、1:1;C.I.ベーシックバイオレット11、11:1などが好ましい。
インク中の蛍光染料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上5.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.00質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子に占める、蛍光染料の割合(質量%)は、1.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子に占める蛍光染料の割合が1.0質量%未満であると、画像の発色性(彩度)がやや低下する場合がある。一方、樹脂粒子に占める蛍光染料の割合が15.0質量超であると、濃度消光により画像の発色性(明度)がやや低下する場合がある。
(キナクリドン顔料)
インクは、キナクリドン顔料を含有する。キナクリドン顔料は、下記式(2)で表される骨格(キナクリドン骨格)を有する化合物で構成される顔料である。
インクは、キナクリドン顔料を含有する。キナクリドン顔料は、下記式(2)で表される骨格(キナクリドン骨格)を有する化合物で構成される顔料である。
キナクリドン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントオレンジ:48、49;C.I.ピグメントレッド:122、192、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19などを挙げることができる。また、2種以上のキナクリドン顔料で構成される固溶体顔料を用いてもよい。固溶体顔料は、混晶とも呼ばれ、2種以上の顔料が相互に溶け合って全体として均一な固相を形成しているものであり、2種以上の顔料を単純に混合したものとは異なる。キナクリドン顔料としては、2種以上のキナクリドン顔料で構成される固溶体顔料が好ましい。固溶体顔料の結晶格子は、単一の顔料からなる結晶格子よりも複雑な構造を持つ。固溶体顔料を用いることで、蛍光染料との相互作用が多面的に生じやすく、キナクリドン顔料の周囲に蛍光染料がより確実に存在しやすくなるため、画像の耐光性をさらに向上させることができる。
顔料の分散方式は、樹脂分散剤を用いて分散させた樹脂分散方式でもよく、アニオン性基などが顔料の粒子表面に結合した自己分散方式でもよい。なかでも、樹脂分散剤を用いて分散させた樹脂分散方式(樹脂分散顔料)が好ましい。樹脂分散顔料としては、顔料の粒子表面に樹脂が物理吸着して分散したものや、顔料の粒子表面の少なくとも一部を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。
インク中のキナクリドン顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上0.70質量%以下であることが好ましい。キナクリドン顔料の含有量が0.01質量%未満であると、画像の耐光性がやや低下する場合がある。一方、キナクリドン顔料の含有量が0.70質量%超であると、画像の発色性(明度)がやや低下する場合がある。
インク中のキナクリドン顔料の含有量(質量%)は、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下である。すなわち、顔料インクの発色性向上の補助として蛍光染料を用いる従来の技術とは異なり、蛍光色の画像を記録しうるインクとすべく、インク中の蛍光染料の含有量は、キナクリドン顔料の含有量以上とする。上記の質量比率が1.0倍超であると、蛍光染料に比してキナクリドン顔料が多くなりすぎて、蛍光色としての鮮明さが低下し、画像の発色性(明度)が不十分となる。また、キナクリドン顔料の含有量(質量%)は、蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.1倍以上であることが好ましい。上記の質量比率が0.1倍未満であると、蛍光染料に比してキナクリドン顔料が少なくなりすぎて、相互作用が弱くなるため、耐光性を向上する効果が低下する場合がある。
インク中の蛍光染料の含有量(質量%)、及びキナクリドン顔料の含有量(質量%)の合計は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上1.50質量%以下であることが好ましい。蛍光染料とキナクリドン顔料の含有量の合計が0.10質量%未満であると、色材の合計量が少なく、画像の発色性が低下する場合がある。一方、蛍光染料とキナクリドン顔料の含有量の合計が1.50質量%超であると、蛍光染料が多すぎる場合は濃度消光が生じやすく、また、顔料が多すぎる場合は蛍光染料に特有の明度の向上効果が弱くなり、画像の発色性(明度)が低下する場合がある。
(樹脂粒子)
本明細書における「樹脂粒子」とは、水性媒体中に分散し、粒径を有する状態で水性媒体中に存在し得る樹脂を意味する。このため、樹脂粒子はインクに分散した状態、すなわち、樹脂エマルションの状態で存在する。
本明細書における「樹脂粒子」とは、水性媒体中に分散し、粒径を有する状態で水性媒体中に存在し得る樹脂を意味する。このため、樹脂粒子はインクに分散した状態、すなわち、樹脂エマルションの状態で存在する。
ある樹脂が「樹脂粒子」であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒径を動的光散乱法により測定した場合に、粒径を有する粒子が測定された場合に、その樹脂は「樹脂粒子」であると判断することができる。動的光散乱法による粒度分布測定装置としては粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、とすることができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。中和した樹脂を用いて粒子径を測定するのは、十分に中和されて粒子をより形成しにくい状態となっても、粒子が形成されていることを確認するためである。このような条件であっても粒子の形状を持つ樹脂は、水性インク中でも粒子の状態で存在する。
樹脂粒子は、シアノ基含有ユニットを含む。樹脂粒子は、さらにアニオン性基含有ユニットを含むことが好ましい。また、樹脂粒子は、コア部と、コア部を被覆するシェル部とを有する、いわゆるコアシェル構造を有する樹脂粒子であることが好ましい。そして、シェル部が、アニオン性基含有ユニットを含むことが好ましい。このような樹脂粒子を用いることで、インクの吐出安定性を向上させることができる。また、シェル部にはシアノ基含有ユニットが含まれないことが好ましい。
重合によりシアノ基含有ユニットとなるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合などの重合性官能基を分子内に1つ有するものが好ましい。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、2-シアノエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。重合によりシアノ基含有ユニットとなるモノマーとしては、アニオン性基や芳香族基を有しないものや、分子量が300以下のものが好ましく、分子量が200以下のものがさらに好ましい。なかでも、重合の際の反応性が良好であるとともに、得られる樹脂粒子の安定性が優れることから、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが特に好ましい。
アニオン性基含有ユニットにおけるアニオン性基としては、カルボン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、リン酸エステル基などを挙げることができる。なかでも、インク中での樹脂粒子の安定性が良好であるため、カルボン酸基が好ましい。重合によりアニオン性基含有ユニットとなるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合などの重合性官能基を分子内に1つ有するものが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸、p-ビニル安息香酸、4-ビニルフェノール、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、リン酸(メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル)エステル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。重合によりアニオン性基含有ユニットとなるモノマーとしては、シアノ基を有しないものや、分子量が300以下のものが好ましく、分子量が200以下のものがさらに好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。また、アニオン性基含有ユニットにおけるアニオン性基は、カルボン酸基のみであることが好ましい。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。
樹脂粒子は、さらに、脂肪族基含有ユニットや芳香族基含有ユニットなどのその他のユニットを含んでもよい。脂肪族基含有ユニットとなるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合などの重合性官能基を分子内に1つ有するものが好ましい。なかでも、アルキル基部分の炭素数が1乃至12である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。また、芳香族基含有ユニットとなるモノマーとしては、エチレン性不飽和結合などの重合性官能基を分子内に1つ有するものが好ましい。なかでも、重合の際の反応性が良好であるとともに、得られる樹脂粒子の安定性が優れることから、スチレンやその誘導体がさらに好ましく、スチレン、ビニルトルエンが特に好ましい。
樹脂粒子を製造する際には架橋剤を用いることができる。すなわち、架橋剤に由来するユニットを有する樹脂粒子を用いることができる。架橋剤を用いることで、シェル部の親水性が過剰に高まるのを抑制し、インクの固着回復性を向上させることが可能なコアシェル構造を有する樹脂粒子を得ることができる。さらに、2種以上の架橋剤を用いることで、シェル部の親水性が過剰に高まるのをより効率よく抑制しうる、密な架橋構造を形成することができる。
樹脂粒子を製造する際には界面活性剤を用いることができる。界面活性剤の存在下で樹脂粒子を製造すると、得られる樹脂粒子の粒径や形状が安定しやすいために好ましい。但し、非反応性の界面活性剤は樹脂粒子から脱離しやすいことがある。インク中で界面活性剤が樹脂粒子から脱離すると、インクの物性に影響を及ぼして、吐出安定性などが低下しやすくなる場合がある。このため、樹脂粒子を製造する際に用いる界面活性剤としては、樹脂に組み込まれるため、反応性界面活性剤が好ましい。すなわち、反応性界面活性剤に由来するユニットを有する樹脂粒子を用いることができる。
反応性界面活性剤としては、親水部及び疎水部で構成される分子の内部又は末端に、(メタ)アクリロイル基、マレイル基、ビニル基、アリル基などの重合性官能基が結合している化合物を用いることが好ましい。親水部としては、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖などのポリオキシアルキレン鎖を挙げることができる。疎水部としては、アルキル、アリール、及びこれらの組み合わせなどの構造を挙げることができる。親水部と疎水部とは、エーテル基などの連結基を介して結合していてもよい。反応性界面活性剤の分子量は、200超であることが好ましく、300超であることがさらに好ましく、400以上であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有する樹脂粒子のコア部とシェル部の質量比率は、合計を100とした質量比率で、コア部:シェル部が、50:50~95:5であることが好ましく、60:40~90:10であることがさらに好ましい。
インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.00質量%以上10.00質量%以下であることが好ましい。樹脂粒子の含有量が1.00質量%未満であると、画像の発色性がやや低下する場合がある。一方、樹脂粒子の含有量が10.00質量%超であると、インクの吐出安定性がやや低下する場合がある。
インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、キナクリドン顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、9倍以上100倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が9倍未満であると、インクが付与された記録媒体において、キナクリドン顔料の周囲に蛍光染料により染着された樹脂粒子が存在しにくくなり、画像の耐光性が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が100倍超であると、キナクリドン顔料に比して、樹脂粒子や染着した蛍光染料が多くなりすぎるため、キナクリドン顔料が相対的に少なくなりすぎて、画像の耐光性が低下する場合がある。
樹脂粒子の体積基準の粒度分布の累積50%粒子径(D50)は、140nm以上300nm以下であることが好ましい。樹脂粒子の体積基準の粒度分布の累積50%粒子径が140nm未満であると、樹脂粒子の一部が記録媒体の厚さ方向に沈みやすくなるため、キナクリドン顔料の周囲に存在する蛍光染料が少なくなり、画像の耐光性が低下する場合がある。一方、樹脂粒子の体積基準の粒度分布の累積50%粒子径が300nm超であると、インクの吐出安定性が低下する場合がある。
[染着された樹脂粒子の製造方法]
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、シード重合法、転相乳化法などの従来公知の方法にしたがって製造することができる。樹脂粒子の染着方法としては、蛍光染料を溶解させたモノマー混合液を重合して樹脂粒子を形成する方法;樹脂粒子に蛍光染料を添加して加熱する方法;などを挙げることができる。なかでも、より多種類の蛍光染料に適用できることから、樹脂粒子に蛍光染料を添加して加熱する方法が好ましい。
樹脂粒子は、例えば、乳化重合法、ミニエマルション重合法、シード重合法、転相乳化法などの従来公知の方法にしたがって製造することができる。樹脂粒子の染着方法としては、蛍光染料を溶解させたモノマー混合液を重合して樹脂粒子を形成する方法;樹脂粒子に蛍光染料を添加して加熱する方法;などを挙げることができる。なかでも、より多種類の蛍光染料に適用できることから、樹脂粒子に蛍光染料を添加して加熱する方法が好ましい。
[樹脂粒子の検証方法]
樹脂粒子の構成については、以下の(i)~(iii)に示す方法にしたがって検証することができる。以下、インクから樹脂粒子を抽出して分析及び検証する方法について説明するが、水分散液などから抽出した樹脂粒子についても同様に分析及び検証することができる。
樹脂粒子の構成については、以下の(i)~(iii)に示す方法にしたがって検証することができる。以下、インクから樹脂粒子を抽出して分析及び検証する方法について説明するが、水分散液などから抽出した樹脂粒子についても同様に分析及び検証することができる。
(i)樹脂粒子の抽出
密度勾配遠心分離法により、樹脂粒子を含有するインクから樹脂粒子を分離・抽出することができる。密度勾配遠心分離法のうち、密度勾配沈降速度法では、成分の沈降係数の差によって樹脂粒子を分離・抽出する。また、密度勾配遠心分離法のうち、密度勾配沈降平衡法では、成分の密度の差によって樹脂粒子を分離・抽出する。
密度勾配遠心分離法により、樹脂粒子を含有するインクから樹脂粒子を分離・抽出することができる。密度勾配遠心分離法のうち、密度勾配沈降速度法では、成分の沈降係数の差によって樹脂粒子を分離・抽出する。また、密度勾配遠心分離法のうち、密度勾配沈降平衡法では、成分の密度の差によって樹脂粒子を分離・抽出する。
(ii)層構造の確認と分離
まず、樹脂粒子を四酸化ルテニウムで染色及び固定化した後、エポキシ樹脂に埋め込んで安定に保持する。次いで、エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂粒子をウルトラミクロトームで切断し、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を使用して断面を観察する。樹脂粒子の重心を通って切断した断面を観察することで、樹脂粒子の層構造を確認することができる。エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂粒子を分析試料とし、エネルギー分散型X線分光法(EDX)が併置されたSTEM-EDXにより、樹脂粒子を構成する層(コア部、シェル部)の含有元素を定量分析することができる。
まず、樹脂粒子を四酸化ルテニウムで染色及び固定化した後、エポキシ樹脂に埋め込んで安定に保持する。次いで、エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂粒子をウルトラミクロトームで切断し、走査型透過電子顕微鏡(STEM)を使用して断面を観察する。樹脂粒子の重心を通って切断した断面を観察することで、樹脂粒子の層構造を確認することができる。エポキシ樹脂に埋め込んだ樹脂粒子を分析試料とし、エネルギー分散型X線分光法(EDX)が併置されたSTEM-EDXにより、樹脂粒子を構成する層(コア部、シェル部)の含有元素を定量分析することができる。
(iii)各層の樹脂を構成するユニット(モノマー)の分析
各層の樹脂を分離するための試料とする樹脂粒子は、分散液の状態でもよい。また、樹脂粒子を乾燥して膜化した状態のものを試料としてもよい。試料とする樹脂粒子を有機溶媒に溶解させた後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により各層を分離し、各層を構成する樹脂を分取する。そして、分取した樹脂を燃焼法により元素分析する。これとは別に、酸分解(フッ化水素酸添加)法又はアルカリ融解法により分取した樹脂を前処理した後、誘導結合プラズマ発光分光分析法により無機成分を定量分析する。元素分析及び無機成分の定量分析の結果と、上記(ii)で得たSTEM-EDXによる元素の定量分析の結果とを比較することで、分取した樹脂が構成していた樹脂粒子の層を知ることができる。
各層の樹脂を分離するための試料とする樹脂粒子は、分散液の状態でもよい。また、樹脂粒子を乾燥して膜化した状態のものを試料としてもよい。試料とする樹脂粒子を有機溶媒に溶解させた後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により各層を分離し、各層を構成する樹脂を分取する。そして、分取した樹脂を燃焼法により元素分析する。これとは別に、酸分解(フッ化水素酸添加)法又はアルカリ融解法により分取した樹脂を前処理した後、誘導結合プラズマ発光分光分析法により無機成分を定量分析する。元素分析及び無機成分の定量分析の結果と、上記(ii)で得たSTEM-EDXによる元素の定量分析の結果とを比較することで、分取した樹脂が構成していた樹脂粒子の層を知ることができる。
また、核磁気共鳴(NMR)分光法及びマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)により、分取した樹脂を分析する。これにより、樹脂を構成するユニット(モノマー)及び架橋性成分の種類や割合を知ることができる。さらに、熱分解ガスクロマトグラフィーによって分取した樹脂を分析することで、解重合で生じたモノマーを直接検出することもできる。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インクには、水性媒体としてさらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、インクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。例えば、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などを挙げることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性インクである。インクには、水性媒体としてさらに水溶性有機溶剤を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、インクに一般的に用いられているものをいずれも用いることができる。例えば、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などを挙げることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.00質量%以上50.00質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、インクは、必要に応じて、水溶性樹脂、染着されていない樹脂粒子、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の樹脂などの種々の添加剤を含有してもよい。インクには、染料(蛍光を示さない染料、塩基性染料以外の蛍光を示す染料を含む)、キナクリドン顔料以外の顔料などの色材を含有させることもできるが、通常は、上記のような色材は含有させなくてもよい。また、樹脂(水溶性樹脂、樹脂粒子)を用いる場合は、アクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂は用いないことが好ましい。
インクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、インクは、必要に応じて、水溶性樹脂、染着されていない樹脂粒子、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及びその他の樹脂などの種々の添加剤を含有してもよい。インクには、染料(蛍光を示さない染料、塩基性染料以外の蛍光を示す染料を含む)、キナクリドン顔料以外の顔料などの色材を含有させることもできるが、通常は、上記のような色材は含有させなくてもよい。また、樹脂(水溶性樹脂、樹脂粒子)を用いる場合は、アクリル樹脂が好ましく、ウレタン樹脂は用いないことが好ましい。
(インクの物性)
インクは、インクジェット方式に適用する水性インクであるので、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、プレート法により測定される、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上45mN/m以下であることがさらに好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、25℃におけるインクのpHは、7.0以上10.0以下であることが好ましい。
インクは、インクジェット方式に適用する水性インクであるので、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、プレート法により測定される、25℃におけるインクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、25mN/m以上45mN/m以下であることがさらに好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。また、25℃におけるインクのpHは、7.0以上10.0以下であることが好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。記録媒体32としては、特に制限はないが、普通紙などのコート層を有しない記録媒体、光沢紙やマット紙などのコート層を有する記録媒体などの、紙を基材とした記録媒体を用いることが好ましい。この記録媒体は、転写用途である必要はない。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<樹脂粒子の水分散液の調製>
撹拌装置を取り付けた反応容器を温水槽にセットした。反応容器中に水1,178部を入れ、内温を70℃に保持した。表1-1に示すモノマーを、表1-1に示す仕込み量(部)及び内訳(%)で混合した。これにより、コア部用のモノマー混合液を調製した。また、過硫酸カリウム1.9部及び水659部を混合して重合開始剤の水溶液1を調製した。コア部用のモノマー混合液及び重合開始剤の水溶液1を、60分かけながら並行して反応容器内に滴下した。滴下終了後、撹拌を継続してさらに30分間反応させて、樹脂粒子のコア部となる粒子を合成した。
撹拌装置を取り付けた反応容器を温水槽にセットした。反応容器中に水1,178部を入れ、内温を70℃に保持した。表1-1に示すモノマーを、表1-1に示す仕込み量(部)及び内訳(%)で混合した。これにより、コア部用のモノマー混合液を調製した。また、過硫酸カリウム1.9部及び水659部を混合して重合開始剤の水溶液1を調製した。コア部用のモノマー混合液及び重合開始剤の水溶液1を、60分かけながら並行して反応容器内に滴下した。滴下終了後、撹拌を継続してさらに30分間反応させて、樹脂粒子のコア部となる粒子を合成した。
次いで、表1-1に示すモノマーを、表1-1に示す仕込み量(部)及び内訳(%)で混合して、シェル部用のモノマー混合液を調製した。また、過硫酸カリウム0.1部及び水133部を混合して重合開始剤の水溶液2を調製した。コア部となる粒子が入った反応容器の内温を80℃に保持し、シェル部用のモノマー混合液及び重合開始剤の水溶液2を10分かけながら並行して滴下した。滴下終了後、120分間撹拌して反応を継続させてシェル部を合成し、コア部となる粒子がシェル部となる樹脂で被覆された、コアシェル構造を有する樹脂粒子を合成した。但し、樹脂粒子5についてはシェル部を合成しなかった。また、樹脂粒子6については架橋剤ユニットとなる架橋剤を加えた。
その後、8mol/L水酸化カリウム水溶液の適量を反応容器内に添加し、液体のpH8.5に調整した。さらに、表1-2に示す仕込み量(部)の蛍光染料の粉末を添加し、80℃に昇温した。その後、2時間撹拌し、樹脂粒子に蛍光染料を染着させた。次いで、8mol/L水酸化カリウム水溶液の適量を反応容器内に添加し、液体のpHを8.5に調整した。適量の水をさらに添加して、樹脂粒子の含有量が20%である各樹脂粒子の水分散液を得た。但し、樹脂粒子19については染料を染着させなかった。樹脂粒子の粒子径(体積基準の粒度分布の累積50%粒子径)を表1-2に示す。樹脂粒子の粒子径は、動的光散乱方式の粒度分析計(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用し、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59の条件で測定した。
表1-1及び1-2中の略号の意味を以下に示す。
・St:スチレン
・AN:アクリロニトリル
・MAN:メタクリロニトリル
・EMA:エチルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
・EX-810:エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX-810」、ナガセケムテックス製)
・BR1:C.I.ベーシックレッド1
・BR1:1:C.I.ベーシックレッド1:1
・BV11:C.I.ベーシックバイオレット11
・BV11:1:C.I.ベーシックバイオレット11:1
・SR49:C.I.ソルベントレッド49
・St:スチレン
・AN:アクリロニトリル
・MAN:メタクリロニトリル
・EMA:エチルメタクリレート
・AA:アクリル酸
・MAA:メタクリル酸
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
・EX-810:エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名「デナコールEX-810」、ナガセケムテックス製)
・BR1:C.I.ベーシックレッド1
・BR1:1:C.I.ベーシックレッド1:1
・BV11:C.I.ベーシックバイオレット11
・BV11:1:C.I.ベーシックバイオレット11:1
・SR49:C.I.ソルベントレッド49
<顔料分散液の調製>
顔料分散液1~6を調製した。樹脂分散剤としては、酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸ランダム共重合体を、その酸価と等モル量の10%水酸化カリウム水溶液で中和した樹脂水溶液を用いた。各顔料分散液中の顔料の含有量は20.0%、樹脂の含有量は6.0%であった。
顔料分散液1~6を調製した。樹脂分散剤としては、酸価120mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸ランダム共重合体を、その酸価と等モル量の10%水酸化カリウム水溶液で中和した樹脂水溶液を用いた。各顔料分散液中の顔料の含有量は20.0%、樹脂の含有量は6.0%であった。
(顔料分散液1)
顔料20.0部、樹脂分散剤30.0部、及び水50.0部を混合し、サンドグラインダーで1時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。顔料としては、C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(商品名「Cromophtal Jet Magenta 2BC」、BASF製)を用いた。次いで、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1を調製した。
顔料20.0部、樹脂分散剤30.0部、及び水50.0部を混合し、サンドグラインダーで1時間分散させた後、遠心分離して粗大粒子を含む非分散物を除去した。顔料としては、C.I.ピグメントレッド202及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(商品名「Cromophtal Jet Magenta 2BC」、BASF製)を用いた。次いで、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、顔料分散液1を調製した。
(顔料分散液2)
顔料をC.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(商品名「FASTGEN SUPER MAGENTA RY」、DIC製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を得た。
顔料をC.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントバイオレット19の固溶体(商品名「FASTGEN SUPER MAGENTA RY」、DIC製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液2を得た。
(顔料分散液3)
顔料をC.I.ピグメントレッド122(商品名「PV Fast Pink E」、クラリアント製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を得た。
顔料をC.I.ピグメントレッド122(商品名「PV Fast Pink E」、クラリアント製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液3を得た。
(顔料分散液4)
顔料をC.I.ピグメントバイオレット19(商品名「Ink Jet Magenta E5B02」、クラリアント製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液4を得た。
顔料をC.I.ピグメントバイオレット19(商品名「Ink Jet Magenta E5B02」、クラリアント製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液4を得た。
(顔料分散液5)
顔料をアゾ顔料であるC.I.ピグメントレッド41(商品名「SUIMEI Dianisidine Red R」、山水色素製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液5を得た。
顔料をアゾ顔料であるC.I.ピグメントレッド41(商品名「SUIMEI Dianisidine Red R」、山水色素製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液5を得た。
(顔料分散液6)
顔料をジケトピロロピロール顔料であるC.I.ピグメントレッド254(商品名「Cromophtal DPP Red BP」、BASF製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液6を得た。
顔料をジケトピロロピロール顔料であるC.I.ピグメントレッド254(商品名「Cromophtal DPP Red BP」、BASF製)に変更したこと以外は、顔料分散液1の調製と同様にして、顔料分散液6を得た。
<インクの調製>
(実施例1~29及び比較例1~7)
表2-1~2-4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表2-1~2-4中、「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。表2-1~2-4の下段には、後述する比較例8を含むインクの特性を示した。調製したインクのpHは、いずれも8.5~9.0の範囲内であった。
(実施例1~29及び比較例1~7)
表2-1~2-4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。表2-1~2-4中、「アセチレノールE100」は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤の商品名である。表2-1~2-4の下段には、後述する比較例8を含むインクの特性を示した。調製したインクのpHは、いずれも8.5~9.0の範囲内であった。
(比較例8)
特許文献1の「実施例1」の記載に準じて、後述する樹脂粒子及び顔料(C.I.ピグメントレッド122)を含有する比較例8のインクを調製した。この樹脂粒子は、アクリロニトリル、スチレン、及びアクリル酸のそれぞれに由来するユニットで構成される単層の樹脂粒子であり、キサンテン骨格を有する塩基性染料(2種類の蛍光染料)が染着している。2種類の蛍光染料は、C.I.ベーシックバイオレット11:1及びC.I.ベーシックレッド1(0.3:2.0(質量比率))である。
特許文献1の「実施例1」の記載に準じて、後述する樹脂粒子及び顔料(C.I.ピグメントレッド122)を含有する比較例8のインクを調製した。この樹脂粒子は、アクリロニトリル、スチレン、及びアクリル酸のそれぞれに由来するユニットで構成される単層の樹脂粒子であり、キサンテン骨格を有する塩基性染料(2種類の蛍光染料)が染着している。2種類の蛍光染料は、C.I.ベーシックバイオレット11:1及びC.I.ベーシックレッド1(0.3:2.0(質量比率))である。
<評価>
調製した各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro-10」、キヤノン製)にセットした。このインクジェット記録装置では、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.8ng±10%のインクを8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。記録環境は、温度25℃、相対湿度55%とした。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
調製した各インクをインクカートリッジに充填し、熱エネルギーによりインクを吐出する記録ヘッドを搭載したインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro-10」、キヤノン製)にセットした。このインクジェット記録装置では、1/600インチ×1/600インチの単位領域に3.8ng±10%のインクを8滴付与する条件で記録した画像を、記録デューティが100%であると定義する。記録環境は、温度25℃、相対湿度55%とした。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
(発色性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(光沢紙、商品名「写真用紙・微粒面光沢ラスター」、キヤノン製)に、インクの付与量が異なる複数のベタ画像を含む階調パターンを含む画像を記録した。階調パターンは、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、最大で6滴のインクが付与される条件で、インクの付与量を段階的に変化させてそれぞれ記録した、2cm×2cmの複数のベタ画像で構成される。記録した画像を1日乾燥させた後、Lab表色系における色相角(H(°))、彩度(C*)、及び明度(L*)、及び蛍光強度(波長領域400~700nmの範囲における最大反射光強度)を測定した。測色には、分光測色計(商品名「X-Rite eXact」、エックスライト製)のM1光源を使用した。そして、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。明度は、彩度50における値で評価した。但し、最大彩度が50に達しない場合は、階調パターンを構成する複数のベタ画像を測色して得たデータを外挿し、得られた明度の計算値で評価した。色相角に応じて評価基準が異なるのは、色の種類によって見た目で感じる好適な色調が異なるためである。蛍光色の画像においては、入射光よりも反射光の強度が高くなる。したがって、記録された画像が蛍光を示すか否かは、最大反射光強度が100%以上であるか否かによって判断することができる。
上記のインクジェット記録装置を使用し、記録媒体(光沢紙、商品名「写真用紙・微粒面光沢ラスター」、キヤノン製)に、インクの付与量が異なる複数のベタ画像を含む階調パターンを含む画像を記録した。階調パターンは、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、最大で6滴のインクが付与される条件で、インクの付与量を段階的に変化させてそれぞれ記録した、2cm×2cmの複数のベタ画像で構成される。記録した画像を1日乾燥させた後、Lab表色系における色相角(H(°))、彩度(C*)、及び明度(L*)、及び蛍光強度(波長領域400~700nmの範囲における最大反射光強度)を測定した。測色には、分光測色計(商品名「X-Rite eXact」、エックスライト製)のM1光源を使用した。そして、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。明度は、彩度50における値で評価した。但し、最大彩度が50に達しない場合は、階調パターンを構成する複数のベタ画像を測色して得たデータを外挿し、得られた明度の計算値で評価した。色相角に応じて評価基準が異なるのは、色の種類によって見た目で感じる好適な色調が異なるためである。蛍光色の画像においては、入射光よりも反射光の強度が高くなる。したがって、記録された画像が蛍光を示すか否かは、最大反射光強度が100%以上であるか否かによって判断することができる。
[色相角が0°以上180°未満の場合]
A:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が70以上かつ明度が80以上、又は、最大彩度が65以上かつ明度が85以上であった。
B:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が65以上70未満かつ明度が80以上85未満であった。
C:最大反射光強度が100%未満、最大彩度が65未満、及び、明度が80未満、の少なくともいずれかに該当していた。
A:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が70以上かつ明度が80以上、又は、最大彩度が65以上かつ明度が85以上であった。
B:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が65以上70未満かつ明度が80以上85未満であった。
C:最大反射光強度が100%未満、最大彩度が65未満、及び、明度が80未満、の少なくともいずれかに該当していた。
[色相角が180°以上360°未満の場合]
A:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が70以上かつ明度が70以上、又は、最大彩度が65以上かつ明度が75以上であった。
B:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が65以上70未満かつ明度が70以上75未満であった。
C:最大反射光強度が100%未満、最大彩度が65未満、及び、明度が70未満、の少なくともいずれかに該当していた。
A:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が70以上かつ明度が70以上、又は、最大彩度が65以上かつ明度が75以上であった。
B:最大反射光強度が100%以上であるとともに、最大彩度が65以上70未満かつ明度が70以上75未満であった。
C:最大反射光強度が100%未満、最大彩度が65未満、及び、明度が70未満、の少なくともいずれかに該当していた。
(耐光性)
上記のインクジェット記録装置を使用し、2枚の記録媒体(光沢紙、商品名「写真用紙・微粒面光沢ラスター」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、2cm×2cmのベタ画像を記録した。記録したベタ画像の一方をキセノン試験装置(商品名「アトラスウエザオメータ Ci4000」、東洋精機製作所製)に入れ、温度30℃、相対湿度40%、照射強度1.25W/m2の条件でベタ画像にキセノン光を18時間照射した。その後、キセノン光を照射したベタ画像の光学濃度(OD)、及びキセノン光を照射していないベタ画像の光学濃度(ODIni)を上記と同じ分光測色計で測定した。そして、光学濃度の残存率(%)=(OD/ODIni)×100(%)の式に基づいて光学濃度の残存率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐光性を評価した。
A:光学濃度の残存率が90%以上であった。
B:光学濃度の残存率が80%以上90%未満であった。
C:光学濃度の残存率が80%未満であった。
上記のインクジェット記録装置を使用し、2枚の記録媒体(光沢紙、商品名「写真用紙・微粒面光沢ラスター」、キヤノン製)に、記録デューティが100%である、2cm×2cmのベタ画像を記録した。記録したベタ画像の一方をキセノン試験装置(商品名「アトラスウエザオメータ Ci4000」、東洋精機製作所製)に入れ、温度30℃、相対湿度40%、照射強度1.25W/m2の条件でベタ画像にキセノン光を18時間照射した。その後、キセノン光を照射したベタ画像の光学濃度(OD)、及びキセノン光を照射していないベタ画像の光学濃度(ODIni)を上記と同じ分光測色計で測定した。そして、光学濃度の残存率(%)=(OD/ODIni)×100(%)の式に基づいて光学濃度の残存率を算出し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐光性を評価した。
A:光学濃度の残存率が90%以上であった。
B:光学濃度の残存率が80%以上90%未満であった。
C:光学濃度の残存率が80%未満であった。
実施例21のインクは、吐出が安定しなかったため、発色性及び耐光性を評価するためのベタ画像の一部に不吐出が認められた。
Claims (7)
- 蛍光染料によって染着された樹脂粒子、及びキナクリドン顔料を含有するインクジェット用の水性蛍光インクであって、
前記蛍光染料が、キサンテン骨格を有する塩基性染料を含み、
前記樹脂粒子が、シアノ基含有ユニットを含み、
前記キナクリドン顔料の含有量(質量%)が、前記蛍光染料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以下であることを特徴とする水性蛍光インク。 - 前記蛍光染料の含有量(質量%)、及び前記キナクリドン顔料の含有量(質量%)の合計が、インク全質量を基準として、0.10質量%以上1.50質量%以下である請求項1に記載の水性蛍光インク。
- 前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記キナクリドン顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、9倍以上100倍以下である請求項1又は2に記載の水性蛍光インク。
- 前記樹脂粒子の体積基準の粒度分布の累積50%粒子径が、140nm以上300nm以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性蛍光インク。
- 前記キナクリドン顔料が、2種以上のキナクリドン顔料で構成される固溶体顔料である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性蛍光インク。
- インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性蛍光インクであることを特徴とするインクカートリッジ。 - インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性蛍光インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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JP2022038203A Pending JP2022167787A (ja) | 2021-04-23 | 2022-03-11 | 水性蛍光インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 |
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2022
- 2022-03-11 JP JP2022038203A patent/JP2022167787A/ja active Pending
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