JP2022167301A - リチウムイオン二次電池用正極 - Google Patents

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Ikuya Katase
智博 加藤
Tomohiro Kato
孝 竹内
Takashi Takeuchi
栄一郎 玉木
Eiichiro Tamaki
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Abstract

【課題】電池寿命と安全性の双方に向上させたリチウムイオン二次電池用正極を提供すること。【解決手段】ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNixMnyCo1-x-yO2)からなる活物質、バインダー、グラフェンおよび高分子分散剤を含む合剤層と、集電体とを有する、リチウムイオン二次電池用正極であって、前記合剤層が、活物質100重量部に対して、グラフェンを炭素質固形分で0.4重量部以上1.2重量部以下含み、特定構造の2032型コインセルにしたときの直流内部抵抗値が10Ω以下となり、前記直流内部抵抗値に対する、合剤層の抵抗値の比((合剤層の抵抗値[Ω])÷(直流内部抵抗値[Ω]))が0.01以上となる、リチウムイオン二次電池用正極。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極およびそれを用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
近年、スマートフォン、携帯電話機などの携帯機器、ハイブリッド自動車、電気自動車、家庭用蓄電等の各種用途において、リチウムイオン二次電池の研究開発が盛んに行われている。これらの分野に用いられるリチウムイオン二次電池には、充放電を繰り返すことによる電池容量の減少を抑制し、電池寿命を向上することが求められている。
その一手段として、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの導電助剤が用いられている。導電助剤を用いた高性能化の技術として、これまでに、電気伝導性基材、および該電気伝導性基材の表面によって支持された、特定のカーボンブラック粒子を含む組成物を含んでなる電極(例えば、特許文献1参照)、二次電池用活物質およびグラフェンを含む合剤層を有する二次電池用電極であって、前記合剤層におけるグラフェンの含有量が、前記二次電池用活物質に対して0.05重量%以上0.9重量%以下であり、前記合剤層の空隙率が5.0体積%以上25.0体積%以下である二次電池用電極(例えば、特許文献2参照)、特定のX線回折特性を有するカーボンナノチューブと、溶媒と、分散剤とを含むカーボンナノチューブ分散液であって、分散剤がビニルアルコール骨格含有樹脂であることを特徴するカーボンナノチューブ分散液(例えば、特許文献3参照)などが提案されている。
特表2020-524192号公報 特開2018-174134号公報 特開2020-11873号公報
特許文献1に記載された電極により、電極表面抵抗や放電容量を向上させることができる。しかしながら、直流内部抵抗が大きいことから、電池内部におけるエネルギーロスが大きく、発熱などに起因して劣化が促進され、電池寿命が不十分である課題があった。また、特許文献2~3に記載された電極により、直流内部抵抗を低減することができるものの、電極自体の体積抵抗率が低いことから、短絡時に発熱しやすく、さらなる安全性の向上が求められていた。
そこで本発明は、安全性に優れ、電池寿命の長いリチウムイオン二次電池を得ることのできるリチウムイオン二次電池用正極を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、本発明は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiMnCo1-x-y)からなる活物質、バインダー、グラフェンおよび高分子分散剤を含む合剤層と、集電体とを有する、リチウムイオン二次電池用正極であって、
前記合剤層が、活物質100重量部に対して、グラフェンを炭素質固形分で0.4重量部以上1.2重量部以下含み、
正極と、正極に対する容量比(N/P比)が1.05以上1.1以下であり、銅箔上に、グラファイト98重量部、カルボキシメチルセルロース1重量部、スチレンブタジエンゴム1重量部からなる合剤層を有する負極と、正極と負極との間に挟まれたセパレーターと、LiPF1mоl/Lのエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)溶液からなる電解液とを含む2032型コインセルにしたときの直流内部抵抗値が10Ω以下となり、
前記直流内部抵抗値に対する、合剤層の抵抗値の比((合剤層の抵抗値[Ω])÷(直流内部抵抗値[Ω]))が0.01以上となる、リチウムイオン二次電池用正極である。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極により、安全性に優れ、電池寿命の長いリチウムイオン二次電池を得ることができる。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極(以下、単に「正極」という場合がある)は、合剤層および集電体を有し、合剤層は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNixMnCo1-x-y)からなる活物質、バインダー、グラフェンおよび高分子分散剤を含む。バインダーは、合剤層において活物質やグラフェン、集電体と結着し、正極の形状を保持する作用を有する。グラフェンは、導電助剤としての作用を有する。グラフェンは薄い面形状を有し、単位重量当たりの導電パスが多く、活物質を均一に被覆することができることから、正極内において強固な導電ネットワークを形成する作用を有する。合剤層には、グラフェン以外の導電助剤をさらに含んでもよい。高分子分散剤は、合剤層中においてグラフェンを均一に分散させる作用を有する。
<活物質>
本発明における活物質は、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiMnCo1-x-y)である。ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを用いることにより、単位重量当たりのエネルギー密度を向上させることができる。
活物質は、一次粒子のみから構成されても、一次粒子が集合した二次粒子から構成されてもよい。また、活物質の粒径は、エネルギー密度を向上させる観点から、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。なお、本明細書において、粒子径はメジアン径(D50)を意味するものとする。メジアン径は、レーザー散乱粒度分布測定装置(例えば、日機装株式会社製マイクロトラックHRAX-100)により測定することができる。また、本明細書において、活物質の粒子径は、活物質が造粒体の場合には、二次粒子径を意味するものとする。
<バインダー>
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系重合体;スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴムなどのゴム;カルボキシメチルセルロース等の多糖類;ポリイミド前駆体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。
<グラフェン>
グラフェンとは、狭義には1原子の厚さのsp結合炭素原子のシート(単層グラフェン)を指すが、本明細書においては、単層グラフェンが積層した薄片状の形態を持つものも含めてグラフェンと呼称する。さらに、グラフェンには分散性の向上等を目的とした表面処理がなされる場合があるが、本明細書においては、このような表面処理剤が付着したグラフェンも「グラフェン」と呼称するものとする。
グラフェンの面方向の大きさは、正極内における導電ネットワークを形成しやすくして導電性を向上させる観点から、0.5μm以上が好ましい。一方、グラフェンの面方向の大きさは、正極内における分散性や基材に対する密着性を向上させる観点から、20μm以下が好ましい。ここでいうグラフェンの面方向の大きさとは、グラフェン面の最長径と最短径の平均値を指す。グラフェンの面方向の大きさは、グラフェンの希薄分散液を基板上に塗布し、電子顕微鏡を用いて、グラフェンが適切な視野に収まる倍率において拡大観察し、無作為に選択した10個のグラフェンについて、その最長径と最短径を測定し、その平均値から個々のグラフェンの面方向の大きさを算出し、その算術平均値を算出することにより求めることができる。
グラフェンの面方向の大きさは、例えば、後述するグラフェンの製造方法において、好ましい製造方法や原材料を用いること、微細化工程の時間を選択することなどにより、所望の範囲に調整することができる。微細化工程の時間を長くすることにより面方向の大きさを小さくすることができ、微細化工程の時間を短く、もしくは微細化工程を行わないことにより、面方向の大きさを大きく保つことができる。
グラフェンの平均厚みは、0.3nm以上が好ましく、グラフェン粒子の導電性を向上させ、正極の直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。一方、グラフェンの平均厚みは、10nm以下が好ましく、正極内部におけるグラフェンの分散性を向上させ、単位重量当たりのグラフェン粒子数を多くすることにより、単位重量当たりの導電ネットワークを多く形成することができる。このため、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。グラフェンの平均厚みは、8nm以下がより好ましく、6nm以下がさらに好ましい。ここで、グラフェンの平均厚みは、原子間力顕微鏡を用いて、グラフェンが適切に観察できるように、視野範囲1~10μm四方程度に拡大観察し、無作為に選択した10個のグラフェンについて、それぞれ厚みを測定し、その算術平均値を求めることにより算出することができる。なお、各グラフェンの厚みは、それぞれのグラフェンにおいて無作為に選択した5箇所の厚みの測定値の算術平均値とする。なお、正極中からグラフェンを採取する方法としては、例えば、凍結粉砕機などを用いて正極を粉砕した後、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて抽出したグラフェンを乾燥する方法などが挙げられる。また、グラフェンの平均厚みは、一般的な製造方法においては正極内においても変化しないことから、正極に含まれるグラフェンが既知の場合には、原料グラフェンから直接測定してもよい。
グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する窒素の元素比(N/C比)は、0.005以上が好ましく、正極内におけるグラフェンの分散性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。グラフェンのN/C比は、0.006以上がより好ましく、0.008以上がさらに好ましい。一方、グラフェンのN/C比は、0.030以下が好ましく、グラフェン自体の導電性をより高め、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。グラフェンのN/C比は、0.020以下がより好ましく、0.016以下がさらに好ましい。ここで、N/C比は、X線光電子分光器、例えばPHI Quantera II(Ulvac-PHI株式会社製)、QuanteraSXM(Ulvac-PHI株式会社製)、JPS-9030(日本電子株式会社製)などを用いて、グラフェンの光電子スペクトルを取得し、そのピーク面積比から元素比を定量することにより求めることができる。なお、正極中からグラフェンを採取する方法としては、グラフェンの平均厚みの測定方法として例示した方法が挙げられる。正極中からグラフェンを抽出して測定する場合、グラフェンのみの領域を選択的に測定する目的から、ビーム径を10μmまで絞って測定できるX線光電子分光器、例えばPHI Quantera II(Ulvac-PHI株式会社製)を用いることが好ましい。また、グラフェンのN/C比は、一般的な製造方法においては正極中においても変化しないことから、正極に含まれるグラフェンが既知の場合には、原料グラフェンから直接測定してもよい。
グラフェンに窒素を導入する方法としては、例えば、グラフェン面内への窒素原子のドープ、グラフェン上に残像する酸素官能基との反応による窒素原子を含む分子の導入、窒素原子を含む分子を非共有結合的にグラフェンに吸着させる表面処理などが挙げられる。これらの中でも、表面処理が好ましく、正極中におけるグラフェンの分散性をより向上させることができる。
表面処理剤としては、フェニル基および/またはアミノ基を有する化合物が好ましく、例えば、アンチピリン、アミノピリン、4-アミノアンチピリン、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン、4-ベンゾイル-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン、1-(2-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、5-オキソ-1-フェニル-2-ピラゾリン-3-カルボン酸、1-(2-クロロ-5-スルホフェニル)-3-メチル-5-ピラゾロン、1-(4-クロロフェニル)-3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、1-(4-スルホフェニル)-3-メチル-5-ピラゾロン、3-クロロアニリン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、1-ナフチルアミン、ドーパミン塩酸塩、ドーパミン、ドーパなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。N/C比は、例えば、表面処理剤の種類や量により、所望の範囲に調整することができる。
グラフェンの、X線光電子分光分析により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)は、0.08以上が好ましく、後述する高分子分散剤との相互作用を高め、正極内におけるグラフェンの分散性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。グラフェンのO/C比は、0.09以上がより好ましい。一方、グラフェンのO/C比は、0.30以下が好ましく、π電子共役構造によりグラフェンの導電性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができることができる。グラフェンのO/C比は、0.25以下が好ましく、0.20以下がより好ましく、0.18以下がさらに好ましい。ここで、O/C比は、前述のN/C比と同様に求めることができる。
グラフェン表面の酸素原子は、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、エステル結合(-C(=O)-O-)、エーテル結合(-C-O-C-)、カルボニル基(-C(=O)-)、エポキシ基などの酸素原子を含有する極性の高い官能基に由来する。なお、グラフェンに表面処理剤を付与する場合、グラフェン自体の官能基だけでなく、このような表面処理剤が有する官能基に由来する酸素原子も、「グラフェン表面の酸素原子」に含めるものとする。すなわち、表面処理剤が付与されたグラフェンにおいては、表面処理剤処理後の表面のO/C比が上記範囲であることが好ましい。
O/C比は、例えば、化学剥離法を用いた場合は、原料となる酸化グラフェンの酸化度や表面処理剤の量より、所望の範囲に調整することができる。酸化グラフェンの酸化度が高いほど還元後に残る酸素の量も多くなり、酸化グラフェンの酸化度が低いほど還元後の酸素量が低くなる。また、酸性基を有する表面処理剤の付着量が多くなるほど酸素量を多くすることができる。
本発明に用いられるグラフェンは、物理剥離法により製造されたものであってもよく、化学剥離法により製造されたものであってもよいが、高分子分散剤との相互作用により、グラフェンの分散性をより向上させる観点から、化学剥離グラフェンを用いることが好ましい。なお、化学剥離法により製造される場合、酸化グラフェンの作製法に特に限定はなく、ハマーズ法等の公知の方法を使用できる。また、市販の酸化グラフェンを用いてもよい。
化学剥離法は、黒鉛を酸化剥離して酸化グラフェンを得る工程(黒鉛剥離工程)、還元を行う工程(還元工程)をこの順に有することが好ましい。必要に応じて、黒鉛剥離工程と還元工程の間に、表面処理剤をグラフェンに付着させる工程(表面処理工程)および/またはグラフェンの面方向の大きさを調整する工程(微細化工程)を有してもよい。表面処理グラフェンを用いる場合、表面処理剤はグラフェンに付着させてもよく、酸化グラフェンに付着させた後に還元処理を行って表面処理グラフェンとしてもよい。また、グラフェンを微細化する場合、酸化グラフェンを微細化してもよいし、還元後のグラフェンを微細化してもよい。還元反応の均一性の観点から、酸化グラフェンを微細化した状態で還元工程を行うことが好ましく、微細化工程は還元工程の前または還元工程の最中に行うことが好ましい。このため、黒鉛剥離工程、表面処理工程、微細化工程、還元工程をこの順に有することが好ましい。
また、本発明において、グラフェンは、正極中における分散性をより向上させるために、分散液の状態で用いられることが好ましい。分散液を製造する際には、還元工程を経た中間体分散液と有機溶媒とを混合する工程(有機溶媒混合工程)と、有機溶媒を含む中間体分散液をミキサーの回転刃の周速6m/s以上70m/s以下で撹拌処理する工程(強撹拌工程)をさらに有することが好ましい。
以下に、各工程の好ましい態様について説明する。
[黒鉛剥離工程]
まず、黒鉛を酸化剥離して酸化グラフェンを得る。酸化グラフェンの酸化度は、黒鉛の酸化反応に用いる酸化剤の量を変化させることにより調整することができる。具体的には、酸化反応の際に用いる、黒鉛に対する硝酸ナトリウムおよび過マンガン酸カリウムの量が多いほど、酸化度は高くなり、少ないほど、酸化度は低くなる。黒鉛に対する硝酸ナトリウムの重量比は、0.200以上0.800以下が好ましい。黒鉛に対する過マンガン酸カリウムの比は、1.00以上4.0以下が好ましい。
[表面処理工程]
次に、酸化グラフェンと表面処理剤を混合し、グラフェンに表面処理剤を付着させる。混合方法としては、例えば、自動乳鉢、三本ロール、ビーズミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、ホモディスパー、ホモミクサー、プラネタリミキサー、二軸混練機などのミキサーや混練機を用いて混合する方法などが挙げられる。
[微細化工程]
次に、酸化グラフェンを微細化する。微細化方法としては、例えば、超音波を印加する手法、圧力を印加した中間体分散液を単体のセラミックボールに衝突させる手法、圧力を印加した中間体分散液同士を衝突させて分散を行う液-液せん断型の湿式ジェットミルを用いる手法などが挙げられる。特に、超音波処理は、メディアレスな分散手法であることから好ましい。微細化工程においては、酸化グラフェンまたはグラフェンは、出力や処理圧力が高いほど微細化する傾向にあり、処理時間が長いほど微細化する傾向にある。微細化工程における微細化処理の種類・処理条件・処理時間により、還元後のグラフェンの大きさを調製することができる。グラフェンの面方向の大きさを前述の範囲に調整するためには、微細化工程における酸化グラフェンやグラフェンの固形分濃度は、0.01重量%以上2重量%以下が好ましい。また、超音波処理を行う場合の超音波出力は、100W以上3000W以下が好ましい。
[還元工程]
次に、微細化した酸化グラフェンを還元する。還元方法としては、化学還元が好ましい。化学還元の場合、還元剤としては、有機還元剤、無機還元剤が挙げられる。これらの中でも、還元後の洗浄の容易さから、無機還元剤が好ましく、亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウムなどがより好ましい。
〔有機溶媒混合工程〕
有機溶媒混合工程においては、還元工程後の中間体分散液中の水を有機溶媒に置換するために、中間体分散液と有機溶媒とを混合する。有機溶媒混合工程においては、還元工程を経て得られた中間体分散液と、有機溶媒とを直接混合する。すなわち、還元工程終了後から有機溶媒混合工程における有機溶媒との混合まで、中間体分散液は常に分散液の状態にあり、中間体分散液から分散媒を除去してグラフェンを粉末状態として回収する凍結乾燥等の操作は行わない。
[強撹拌工程]
強撹拌工程においては、高せん断ミキサーを用いて、せん断速度毎秒5,000~毎秒50,000の条件で撹拌処理を行う。強撹拌工程において、高せん断ミキサーを用いてグラフェンを剥離することにより、グラフェン同士のスタックを解消することができる。高せん断ミキサーとしては、薄膜旋回方式、ローター/ステーター式、メディアミル式を採用したものが好ましく、例えば、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)、“クレアミックス”(登録商標)CLM-0.8S(エム・テクニック社)、“ラボスター”(登録商標)ミニLMZ015(アシザワ・ファインテック社)、スーパーシェアミキサーSDRT0.35-0.75(佐竹化学機械工業株式会社)などが挙げられる。
<高分子分散剤>
高分子分散剤とは、グラフェンとの相互作用からにより、分散液中、正極ペースト中および/または正極中において、グラフェンの分散を補助する作用を有する、重量平均分子量(Mw)1,000以上の化合物を言う。なお、分散液中、正極ペースト中および/または正極中において、高分子分散剤の少なくとも一部がグラフェンの表面に存在してもよい。
本発明における高分子分散剤としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリジメチルアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドンなどのビニル系ポリマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。これらを2種以上含んでもよい。これらの中でも、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。高分子分散剤は、極性官能基を有することが好ましく、グラフェン上の酸素含有官能基および/または表面処理剤上の官能基との間の水素結合等の相互作用により、グラフェンの分散性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。極性官能基としては、水酸基やカルボキシル基、エステル基などの酸素含有官能基がより好ましく、水酸基がさらに好ましい。水酸基を有する高分子分散剤としては、ポリビニルアルコールが好ましい。また、高分子分散剤の分子内の酸素含有量は、4原子%以上が好ましく、グラフェン上の官能基との相互作用により、グラフェンの分散性をより向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる。高分子分散剤の酸素含有量は、6原子%以上がより好ましく、10原子%以上がさらに好ましい。ここで、高分子分散剤の酸素含有量は、グラフェンのN/C比やO/C比と同様に、X線光電子分光器を用いて、高分子分散剤の光電子スペクトルを取得し、そのピーク面積比から元素比を定量することにより求めることができる。また、正極に含まれる高分子分散剤の化学構造が既知の場合には、その化学構造から酸素含有量を算出してもよい。
ポリビニルアルコールの水酸基含有率、すなわちケン化率は、グラフェンの分散性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、20%以上が好ましく、40%以上がさらに好ましく、80%以上がさらに好ましい。一方で、ポリビニルアルコールの有機溶媒中への溶解性を向上させる観点から、ケン化率は99.9%以下が好ましく、98%以下がより好ましく、95%以下がさらに好ましい。ここで、ポリビニルアルコールのケン化率は、JISK6726-1994に従って求めることができる。また、ケン化率における%はモル%を意味する。
ポリビニルアルコールは、未変性ポリビニルアルコールであっても変性ポリビニルアルコールであってもよい。
未変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、商品名「“クラレポバール”(登録商標)」(株式会社クラレ)、商品名「“ゴーセノール”(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社)、商品名「“デンカポバール”(登録商標)」(デンカ株式会社)、商品名「J-ポバール」(日本酢ビ・ポバール株式会社)などが挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、側鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、カチオン基(4級アンモニウム塩)およびエチレンオキサイド基から選ばれた基を有するものが挙げられる。具体的には、例えば、商品名「“ゴーセネックス”(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社)L、T、WOシリーズなどが挙げられる。これらの中でも、グラフェンの分散性およびグラフェンの分散性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、側鎖にカルボキシル基および/またはスルホン酸基を有する変性ポリビニルアルコールがより好ましい。側鎖にカルボキシル基および/またはスルホン酸基を有する変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、商品名“ゴーセネックス”(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社)Tシリーズ、Lシリーズなどが挙げられる。側鎖にスルホン酸基を有するものがさらに好ましく、例えば、商品名“ゴーセネックス”(登録商標)」(三菱ケミカル株式会社)Lシリーズが挙げられる。
また、ポリビニルアルコールの重合度は、分散性向上効果が得られやすい観点から、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。一方、ポリビニルアルコールの重合度は、グラフェンの導電性を向上させ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、10,000以下が好ましく、5,000以下がより好ましく、2,000以下がさらに好ましい。ここで、ポリビニルアルコールの重合度は、JIS6726-1994に従って求めることができる。
ポリビニルアルコールを2種以上含有してもよい。かかる場合、2種以上のポリビニルアルコール全体としてのケン化率および重合度が前記範囲内であることが好ましい。
<合剤層>
本発明の正極において、合剤層は、前述の活物質、バインダー、グラフェンおよび高分子分散剤を含む。さらに、低分子架橋剤やその他の添加剤を含んでもよい。
本発明の正極における合剤層中、グラフェンの含有量は、活物質100重量部に対して、0.4重量部以上、1.2重量部以下である。グラフェンの含有量が0.4重量部未満であると、導電ネットワークの形成が不十分となり、直流内部抵抗が上昇し、電池寿命が短くなる。グラフェンの含有量は、0.5重量部以上が好ましく、0.8重量部以上がより好ましい。一方、グラフェンの含有量が1.2重量部を超えると、短絡電流の抑制が難しくなり、安全性が不十分となる。グラフェンの含有量は、1.1重量部以下が好ましい。ここで、導電助剤の炭素質として、必要に応じて、前述のグラフェン以外の炭素質を含んでもよい。グラフェン以外の炭素質は、高い電子伝導性を有することが好ましく、このような炭素質としては、例えば、炭素繊維、カーボンブラック、アセチレンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、“VGCF”(登録商標)-H(昭和電工株式会社製)などの炭素材料が挙げられる。
導電助剤の炭素質固形分中におけるグラフェンの含有量は、30重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。
また、合剤層内におけるバインダーの含有量は、発熱を抑制して安全性をより向上させる観点から、活物質100重量部に対して、1重量部以上が好ましい。一方、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、バインダーの含有量は、2重量部以下が好ましく、1.5重量部以下がより好ましい。
本発明において、合剤中における高分子分散剤の含有量は、グラフェンの炭素質固形分100重量部に対して、3重量部以上が好ましく、グラフェンの分散性をより向上させ、直流内部抵抗をより低下させ、電池寿命をより長くすることができる。また、合剤層の抵抗値をより大きくして安全性をより向上させることができる。合剤中における高分子分散量の含有量は、5重量部以上がより好ましい。一方、合剤中における高分子分散剤の含有量は、グラフェンの炭素質固形分100重量部に対して50重量部以下が好ましく、活物質-グラフェン間の界面抵抗を低減させ、直流内部抵抗をより低下させ、電池寿命をより長くすることができる。合剤中における高分子分散剤の含有量は、30重量部以下がより好ましい。
低分子架橋剤とは、官能基を2つ以上有する、分子量300以下の化合物(ただし、前述の表面処理剤を除く)を言う。低分子架橋剤により、グラフェン-活物質間を架橋することによって、活物質-グラフェンの間の界面抵抗を低減することができ、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くすることができる低分子架橋剤としては、例えば、ジカルボン酸やジアミン、シランカップリング剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
合剤層中におけるグラフェンの含有量、バインダー、高分子分散剤および活物質の種類ならびに含有量は、以下のように測定することができる。まず、用意したリチウムイオン電池正極から、合剤層を、スパチュラを用いて集電箔から剥離する。得られた正極合剤層の粉体を、N-メチルピロリドンや水などの溶媒に溶解させ、ろ過を行うことにより、ろ物(正極活物質、導電助剤、溶媒)とろ液(溶媒、その他)に分離する。得られたろ液を乾燥させ、重量を測定することにより、合剤層中のバインダーおよび高分子分散剤の含有量を測定することができる。また、ろ液をGPC分析することにより、ろ液中の各成分を分離・定量することができる。また、分離したろ液を乾燥させたものを重溶媒に再溶解し、NMR(核磁気共鳴分光装置)を用いて分子構造、官能基を分析することにより、バインダーおよび高分子分散剤を同定することができる。また、得られたろ物を乾燥して溶媒を除去し、重量を測定することにより、活物質と導電助剤の総重量を求めることができる。得られた粉末中の活物質の種類は、X線回折測定により、特定することができる。さらに、得られたろ物を乾燥させた粉末から、塩酸および硝酸などの酸を用いて活物質を溶解し、ろ過を行うことにより、ろ物(導電助剤)とろ液(正極活物質の溶解物、水)に分離する。ろ物を水で洗浄後、乾燥し、重量を測定することにより、導電助剤の含有量を求めることができる。また、正極活物質と導電助剤の総重量と導電助剤の重量の差から、活物質の重量を求めることができる。
なお、電池内から正極を取り出す場合は、電池をArグローブボックス内で解体し、正極をジメチルカーボネートで洗浄した後、不活性のグローブボックスのサイドボックス内で1時間真空乾燥を行ってから、上記の測定を行う。
ただし、合剤層の原料組成が既知である場合には、原料組成から計算により各成分の含有量を求めることもできる。
(合剤層の密度・厚み)
合剤層の密度は、電池のエネルギー密度を向上させる観点から、3.0g/cm以上が好ましい。一方、合剤層の密度は、電解液の浸透を促進し、出力特性を向上させる観点から、3.6g/cm以下が好ましい。
また、合剤層の厚みは、電池のエネルギー密度を向上させる観点から、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。一方、合剤層の厚みは、電子伝導距離をより短くし、直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。合剤層の厚みは、マイクロメーターを用いて、電極内の無作為に選んだ5箇所の厚みを測定し、その算術平均値を算出することにより求めることができる。
(合剤層の体積抵抗率)
合剤層の体積抵抗率は、電子伝導性をより向上させ、電池の直流内部抵抗をより低減し、電池寿命をより長くする観点から、300Ω・cm以下が好ましく、200Ω・cm以下がより好ましく、100Ω・cm以下がさらに好ましい。一方、電池の安全性をより向上させる観点から、50Ω・cm以上が好ましい。
電池内の正極の合剤層の体積抵抗率を測定する方法としては、電池を解体後、正極を取り出してジメチルカーボネートで洗浄し、乾燥した後、金属集電体の界面抵抗値と合剤層の体積抵抗率を分離して測定することができる装置(例えば、日置電機株式会社製電極抵抗測定システムRM2610)を用いて測定する方法などが挙げられる。また、合剤層の組成が既知の場合、絶縁性のフィルム上に、既知組成の合剤層のスラリーを塗布することにより形成した合剤層について、シート抵抗[Ω/□]を4探針法で測定し、その値と合剤層の厚み[cm]との積から、合剤層の体積抵抗率を算出することもできる。
<集電体>
集電体を構成する材料としては、アルミニウムやその合金が好ましい。アルミニウムとしては、正極反応雰囲気下で安定であることから、JIS規格1030、1050、1085、1N90、1N99等に代表される高純度アルミニウムが好ましい。
集電体の厚みは、10μm以上100μm以下が好ましい。集電箔の厚みを10μm以上とすることにより、正極の破断を抑制することができる。一方、集電箔の厚みを100μm以下とすることにより、正極のエネルギー密度を向上させることができる。
<直流内部抵抗値および合剤層の抵抗値>
本発明においては、正極の特性の指標のとして、後述する特定の方法により測定した際の直流内部抵抗値と、直流内部抵抗値に対する合剤層の抵抗値の比に着目した。
直流内部抵抗値は、電流値の変化により生じる電圧降下を電流値の差分で割ったものであり、本発明においては、充電状態(State оf Charge(SOC))50%の電池において、放電電流値をCレートで0.2Cから1Cに変えた際の電池の電圧降下ΔV[V]を電流値の差分ΔI[A]で割ったものを指す。直流内部抵抗値は、電池が内部に持つ抵抗を表しており、直流内部抵抗値が高いと、電池内部における電圧降下が大きくなり、得られるエネルギーが小さくなるほか、発熱により電池の劣化が進み、電池寿命が短くなる。一定の構成の電池におけるかかる特性の評価により、合剤層の特性を評価することができる。一方、合剤層の抵抗値は、安全性に寄与する特性であり、直流内部抵抗値に対する比が大きいほど、導電性を維持しながら、短絡時にも過度の電流や発熱を抑制し、安全性を向上させることができる。
本発明において、かかる直流内部抵抗値は10Ω以下である。直流内部抵抗値が10Ωを超えると、電池内部におけるエネルギーロスが大きく、発熱などにより劣化が促進するため、電池寿命が短くなる。
ここで、本発明における直流内部抵抗値とは、正極と、正極に対する容量比(N/P比)が1.05以上1.1以下であり、銅箔上に、グラファイト98重量部、カルボキシメチルセルロース1重量部、スチレンブタジエンゴム重量部からなる合剤層を有する負極と、正極と負極との間に挟まれたセパレーターと、LiPF1mоl/Lのエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)溶液からなる電解液とを含む2032型コインセルにし、以下の方法により測定した値をいう。正極の直径は16.1mmとし、負極の合剤層の密度は1.3~1.6g/cm、直径は16.8mmとする。セパレーターとしては、例えば、セルガード#2400(セルガード社製)などを用いることができる。得られた2032型コインセルについて、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cの順に、各レートで1回ずつ充放電を行う。このとき、充電電圧は4.2V、放電電圧は2.5Vとし、充電時は充電電圧まで定電流充電をした後、充電電圧で定電圧充電を行い、放電時は放電電圧まで定電流放電を行う。その後、0.2Cにおいて放電、充電を行った後、0.2CにおいてSOCが50%となる電位まで定電流放電を行う。放電した後、1時間電池を静置し、安定化させた後に、0.2Cで30秒間放電し、放電し終えた直後の電位をV1、その後すぐにCレートを1Cに切り替えて5秒間放電した直後の電位をV2、1C、0.2Cの時の電流値をそれぞれ、I(1C)、I(0.2C)として、(V1-V2)[V]/{I(1C)-I(0.2C)}[A]の計算式から直流内部抵抗値[Ω]を求める。
直流内部抵抗値は、グラフェンの分散性を向上させることや、グラフェン自体の導電性を向上させることなどにより、前述の範囲に容易に調整することができる。より具体的には、例えば、前述の好ましい組成の合剤層を用いることが好ましい。
本発明において、直流内部抵抗値[Ω]に対する合剤層の抵抗値[Ω]の比は0.01以上である。かかる比の値が0.01未満であると、直流内部抵抗値に対して、合剤層の抵抗値が小さいため、短絡時に大電流が流れ、発熱することから、安全性が不十分となる。
ここで、合剤層の抵抗値は、前述の方法で求めた合剤層の体積抵抗率[Ω・cm]に対して合剤層の厚み[cm]を掛け、正極の面積である2.04[cm]で除した値を指す。
直流内部抵抗値に対する合剤層の抵抗値の比は、例えば、活物質とグラフェンの間の界面抵抗を低下させながら、グラフェン間の電子伝導を低下させることにより、上述の範囲に容易に調整することができる。より具体的には、前述の高分子分散剤を用いること、低分子架橋剤によりグラフェン-活物質間を架橋することなどが挙げられる。
<リチウムイオン二次電池用正極の作製方法>
正極の製造方法の一例を以下に示す。バインダーのNMP溶液およびグラフェンのNMP分散液を、ミキサーの回転刃の周速6m/s以上70m/s以下で強撹拌処理した後、活物質であるニッケルコバルトマンガン酸リチウムを加え、その後、ミキサーの回転刃の周速6m/s以上70m/s以下で強撹拌処理した後、必要に応じて適量の溶媒を加えて所望の粘度を有する電極ペーストを調製し、集電箔に塗布し、乾燥した後、プレス機を用いてプレスを行うことにより、二次電池用正極を製造することができる。
<二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、前述のリチウムイオン二次電池用正極を備えてなり、さらに、負極、および電解質を有する。さらに、セパレーターおよび外装部材を有することが好ましい。
〔負極〕
負極は、負極集電体の少なくとも片面に、負極活物質含有層を有することが好ましい。負極活物質含有層は、負極活物質とともに、必要に応じてさらに導電剤やバインダーを含むことができる。
負極活物質としては、例えば、リチウム金属やリチウム合金;コークス、人造黒鉛、天然黒鉛、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維などの炭素系活物質;Si、SiO、Sn、SnOなどとリチウムとの合金系活物質;チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物、ナトリウムニオブチタン酸化物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。負極活物質粒子の表面に、炭素コートや電子導電性無機材料コートを施してもよい。
導電剤は、集電性能を高め、負極活物質と集電体との接触抵抗を低減する作用を有する。導電剤としては、例えば、気相成長カーボン繊維(VGCF)、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素材料が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
バインダーは、活物質や導電剤、集電体と結着し、負極の形態を保持する作用を有する。バインダーとしては、正極におけるバインダーとして例示したものを挙げることができる。それらを2種以上用いてもよい。
負極集電体を構成する材料としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムなどの金属や、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Siなどの元素を含むアルミニウム合金などが挙げられる。負極集電体の厚みは、5μm以上20μm以下が好ましい。
負極は、例えば、NMPにかえて水を用い、前述の正極の製造方法と同様の方法により製造することができる。
〔電解質〕
電解質としては、例えば、液状非水電解質、ゲル状非水電解質、リチウムイオンを含有する常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等が挙げられる。
液状非水電解質は、LiPFなどの電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。電解質の濃度は、0.5mol/L以上5.0mol/L以下であることが好ましい。
ゲル状非水電解質は、液状非水電解質と高分子材料とを複合化することにより調製される。高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
常温溶融塩(イオン性融体)とは、有機物カチオンとアニオンとの組合せからなる有機塩のうち常温(15℃以上25℃以下)で液体として存在し得る化合物を指す。一般的に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に4級アンモニウム骨格を有する。
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し、固体化することによって調製される。
無機固体電解質は、Liイオン伝導性を有する固体物質である。
〔セパレーター〕
セパレーターとしては、ポリエチレンやポリプロピレンから形成された多孔質フィルムが好ましい。これらの多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することができる。
〔外装部材〕
外装部材としては、例えば、ラミネートフィルムからなる容器、金属製容器などが挙げられる。外装部材の形状としては、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等が挙げられる。
本発明の二次電池において、正極の直流内部抵抗値は、10Ω以下が好ましく、直流内部抵抗値に対する、合剤層の抵抗値の比は、0.01以上が好ましい。ここで、二次電池内部の正極の直流内部抵抗値および合剤層の抵抗値は、二次電池を解体後、正極を取り出してジメチルカーボネートで洗浄し、乾燥した後に、直径16.1mmに打抜いた正極を用いて、前述の方法により測定することができる。
以下に実施例を用いて本発明を説明する。まず、各実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
[測定例1]X線光電子分光分析によるN/C比、O/C比の測定
各実施例および比較例に用いたグラフェン分散液から、凍結乾燥により溶剤を除去して得られたグラフェン粉末について、X線光電子分光器QuanteraSXM(Ulvac-PHI株式会社製)を用いてX線光電子分光分析を行い、炭素原子に基づくC1sメインピークを284.3eVとし、酸素原子に基づくO1sピークを533eV付近のピーク、窒素原子に基づくN1sピークを402eV付近のピークに帰属し、各ピークの面積比からO/C比およびN/C比を算出した。N/C比は、小数点第4位を四捨五入して小数点第3位まで求め、O/C比は、小数点第3位を四捨五入して小数点第2位まで求めた。分析条件とデータ処理条件は以下の通りとした。
<分析条件>
励起X線:Monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
X線径:200μm
光電子検出角度(試料表面に対する検出器の傾き):45°
<データ処理条件>
スムージング:9-point smoothing
横軸補正:C1sメインピークを284.3eVとした。
[測定例2]AFMによるグラフェンの厚みの測定
各実施例および比較例において作製したグラフェン分散液を、N-メチルピロリドンを用いて0.002重量%にまで希釈した。この時、表面処理グラフェンについては“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20000)で60秒間処理した。希釈液をマイカ基板上に滴下、乾燥し、基板上にグラフェンを付着させた。基板上のグラフェンを、原子間力顕微鏡(Dimension Icon;Bruker社)を用いて、視野範囲1~10μm四方程度に拡大観察して、無作為に選択した10個のグラフェンについて、それぞれ厚みを測定した。なお、各グラフェンの厚みは、それぞれのグラフェンにおいて無作為に選択した5箇所の厚みの測定値の算術平均値とした。10個のグラフェンの厚みの算術平均値を求めることにより、グラフェンの厚みを算出した。
[測定例3]合剤層の体積抵抗率測定
各実施例および比較例において作製した正極ペーストを、ポリイミドフィルム上に、アプリケーターを用いて塗工し、80℃で30分間乾燥することにより、各実施例および比較例と同組成の合剤層を形成した。次に、“ロレスタ”(登録商標)GP(MCP-T610)(三菱化学アナリテック株式会社製(現日東精工アナリテック社))を使用して、合剤層のシート抵抗値を算出した。また、マイクロメーター MDH-25MB(ミツトヨ株式会社製)を使用して、シート抵抗値を算出した箇所の厚みを測定した。得られたシート抵抗値と厚みの積から、合剤層の体積抵抗率を算出した。
[測定例4]直流内部抵抗値の測定
各実施例および比較例において作製した2032型コインセルについて、充電電圧4.2V、放電電圧2.5Vとし、充電時は充電電圧まで定電流充電をした後、充電電圧で定電圧充電を行い、放電時は放電電圧まで定電流放電を行う形で、0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cの順に各レートで1回ずつ充放電を行った。その後、0.2Cにおいて放電、充電を1回ずつ行った後、0.2CにおいてSOCが50%となる電位まで定電流放電を行った。放電後、1時間電池を静置し、安定化させた後に、0.2Cで30秒間放電し、放電し終えた直後の電位をV1、その後すぐにCレートを1Cに切り替えて5秒間放電した直後の電位をV2、1C、0.2Cの時の電流値をそれぞれ、I(1C)、I(0.2C)として、(V1-V2)[V]/{I(1C)-I(0.2C)}[A]の計算式から直流内部抵抗値[Ω]を求めた。
[測定例5]電池寿命の評価
各実施例および比較例において作製した2032型コインセルについて、上限電圧4.2V、下限電圧2.5Vでレート0.1C、0.2C、0.5C、1C、2Cの順に充放電測定を各1回ずつ行った後、1Cで300回の充放電測定を行い、300回目の電池容量を測定し、1Cにおける1回目の電池容量に対する300回目の電池容量の比(百分率)を算出し、電池容量維持率とした。
[測定例6]安全性評価
各実施例、比較例において作製した正極板と負極板とを、セパレーターとしてセルガード#2400(セルガード社製)、電解液としてLiPFを1M含有するエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)を用いて、3Ahセルの積層ラミネートセルを作製した。積層数は正極(サイズ:70mm×40mm)を21層、負極(サイズ:74mm×44mm)を22層とし、対向する負極と正極の容量比率(N/P比)は1.1とした。
作製したセルを0.1Cで3回充放電させた後、0.1Cで再度充電し、釘刺し試験に供した。釘刺し試験は、鉄釘(φ3mm)を1mm/秒の速度で満充電状態の電池の中央部に貫通させることにより行った。また、釘が貫通する場所から10mm離れた箇所に熱電対を貼り付け、釘刺し時の最高温度を測定した。
[合成例1]酸化グラフェンゲルの調製
1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社製)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、混合液の温度を20℃以下に保持しながら1時間機械撹拌した。この混合液を氷浴から取り出し、35℃水浴中で4時間撹拌し、その後イオン交換水500mlを入れて得られた懸濁液を90℃で更に15分間撹拌した。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間撹拌し、酸化グラフェン分散液を得た。熱いうちにこれを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返して酸化グラフェンゲルを調製した。調製した酸化グラフェンゲルの、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53であった。
[合成例2]表面処理グラフェンペースト-1の調製
合成例1により調製した酸化グラフェンゲルを、イオン交換水を用いて濃度30mg/mlに希釈し、超音波洗浄機を用いて30分間処理し、均一な酸化グラフェン分散液を得た。得られた酸化グラフェン分散液20mlと、表面処理剤として0.3gのドーパミン塩酸塩を混合し、ホモディスパー2.5型(プライミクス株式会社製)を用いて、回転数3,000rpmで60分間処理した。処理後の酸化グラフェン分散液を、超音波装置UP400S(hielscher株式会社製)を使用して、出力300Wで超音波を30分間印加(微細化工程)した。微細化工程を得た酸化グラフェン分散液を、イオン交換水を用いて5mg/mlに希釈し、希釈した分散液20mlに0.3gの亜ジチオン酸ナトリウムを入れて、40℃で撹拌しながら、1時間還元反応を行った。その後、減圧吸引濾過器を用いて濾過し、さらに水を用いて0.5重量%まで希釈して吸引濾過する洗浄工程を5回繰り返して洗浄して、表面処理グラフェン水分散液を得た。
得られた表面処理グラフェン水分散液を、N-メチルピロリドン(NMP)を用いて濃度0.5重量%に希釈し、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス株式会社製)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で60秒間処理(強撹拌工程)した。処理後に減圧吸引濾過により溶剤を除去した。さらに水分を除くために、NMPを用いて濃度0.5重量%に希釈し、ホモディスパー2.5型(プライミクス株式会社製)を使用して回転数3,000rpmで30分間処理し、減圧吸引濾過する工程を2回繰り返した後、ろ物として表面処理グラフェンを5.0重量%含有する表面処理グラフェンペースト-1を得た。
[合成例3]高分子分散剤溶液-1の調製
NMP95重量%に対し、高分子分散剤としてポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製、ケン化率88%、重合度500)5重量%を加え、密閉された容器中でマグネチックスターラーの撹拌下90℃に加熱し、ポリビニルアルコールを完全に溶解させ、5重量%高分子分散剤/NMP溶液を得た。
[合成例4]グラフェン分散液-1の調製
合成例2から得た表面処理グラフェンを5.0重量%含有する表面処理グラフェンペースト-1、20gに対し、合成例3により得られた5重量%ポリビニルアルコール/NMP溶液5gを加えた後、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で15分間撹拌し、グラフェン分散液-1を得た。
[合成例5]表面処理グラフェンペースト-2の調製
亜ジチオン酸ナトリウムの添加量を0.1gに変更したこと以外は合成例2と同様にして表面処理グラフェンペースト-2を得た。
[合成例6]表面処理グラフェンペースト-3の調製
表面処理剤としてドーパミン塩酸塩を0.05g用いた以外は合成例2と同じ条件で表面処理グラフェンペースト-3を得た。
[合成例7]表面処理グラフェンペースト-4の調製
表面処理剤としてドーパミン塩酸塩を0.5g用いたこと以外は合成例2と同様にして表面処理グラフェンペースト-4を得た。
[合成例8]表面処理グラフェンペースト-5の調製
ホモディスパーでの分散処理を1500rpm、10分間とし、微細化工程を5分間としたこと以外は、合成例2と同様に表面処理グラフェンペースト-5を得た。
[合成例9]高分子分散剤溶液-2の調製
高分子分散剤として、ポリビニルアルコール(三菱ケミカル株式会社製、製品名“ゴーセネックス”(登録商標)LL-810、ケン化率48%)を用いたこと以外は合成例3と同様にして、高分子分散剤溶液-2を得た。
[合成例10]高分子分散剤溶液-3の調製
高分子分散剤として、変性ポリビニルアルコール(三菱ケミカル株式会社製、製品名“ゴーセネックス”L‐3266、ケン化率88%、スルホン酸基含有)を用いたこと以外は合成例3と同様にして、高分子分散剤溶液-3を得た。
[合成例11]高分子分散剤溶液-4の調製
高分子分散剤として、ポリビニルピロリドン(東京化成工業株式会社製、製品名K-15)を用いたこと以外は合成例3と同様にして、高分子分散剤溶液-4を得た。
[合成例12]グラフェン分散液-2の調製
表面処理グラフェンペーストとして、合成例5により得られた表面処理グラフェンペースト-2を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-2を得た。
[合成例13]グラフェン分散液-3の調製
表面処理グラフェンペーストとして、合成例6により得られた表面処理グラフェンペースト-3を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-3を得た。
[合成例14]グラフェン分散液-4の調製
表面処理グラフェンペーストとして、合成例7で得により得られた表面処理グラフェンペースト-4を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-4を得た。
[合成例15]グラフェン分散液-5の調製
表面処理グラフェンペーストとして、合成例8により得られた表面処理グラフェンペースト-5を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-5を得た。
[合成例16]グラフェン分散液-6の調製
高分子分散剤溶液として、合成例9により得られた高分子分散剤溶液-2を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-6を得た。
[合成例17]グラフェン分散液-7の調製
高分子分散剤溶液として、合成例10により得られた高分子分散剤溶液-3を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-7を得た。
[合成例18]グラフェン分散液-8の調製
高分子分散剤溶液として、合成例11により得られた高分子分散剤溶液-4を用いたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-8を得た。
[合成例19]グラフェン分散液-9の調製
5重量%ポリビニルアルコール/NMP溶液を10g加えたこと以外は合成例4と同様にして、グラフェン分散液-9を得た。
[合成例20]グラフェン分散液-10の調製
グラフェン(XG-SCIENCE社製 型番XGNP-M-5)1gに対し、NMPを19g、合成例3により得られた高分子分散剤溶液-1を5g加えた後、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で15分間撹拌し(強撹拌工程)、グラフェン分散液-10を得た。
[合成例21]CNT分散液-1の調製
CNT(Cnano社製 型番Flotube7010)1gに対し、NMPを19g、合成例11により得られた高分子分散剤溶液-4を5gを加えた後、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で15分間撹拌し(強撹拌工程)、CNT分散液-1を得た。
[合成例22]CNT分散液-2の調製
CNT(Cnano社製 型番Flotube7010)1gに対し、NMPを19g、合成例3により得られた高分子分散剤溶液-1を5g加えた後、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で15分間撹拌し(強撹拌工程)、CNT分散液-2を得た。
[合成例23]アセチレンブラック分散液-1の調製
アセチレンブラック(デンカ社製“デンカブラック”(登録商標))1gに対し、NMPを19g、合成例3により得られた高分子分散剤溶液-1を5g加えた後、“フィルミックス”(登録商標)30-30型(プライミクス社)を用いて回転速度40m/s(せん断速度:毎秒20,000)で15分間撹拌し(強撹拌工程)、アセチレンブラック分散液-1を得た。
[実施例1]
導電助剤として合成例4により得られたグラフェン分散液-1(4.0%)をグラフェン固形分として1.0重量部と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ株式会社製、製品名#7200)を固形分として1.3重量部加え、プラネタリミキサー(プライミクス社製、2P-03型)を用いて15rpmで30分間混合した。ここでバインダーは予めNMPに溶解して8%溶液としたものを用いた。次に、活物質材料としてLiNi0.5Mn0.3Co0.2(ユミコア社製NCM523、メジアン径13μmの造粒体)を100重量部加え、プラネタリミキサーを用いて、30rpmで30分間混合した。さらに溶媒としてNMPを追加したものを、プラネタリミキサーを用いて、15rpmで30分間混合して電極ペーストを得た。ここで、ブルックフィールド粘度計LVDVII+を用いて、ローターNo.6、60rpm、25℃の条件で粘度を測定し、混合物の粘度が2,000mPa・sとなる様に、追加するNMPの量を調整した。この電極ペーストを、14.6mg/cmとなるようにアルミニウム箔(厚さ20μm)に、ドクターブレードを用いて塗布し、80℃30分間乾燥後、ロールプレス機(サンクメタル社製)を用いてプレスを行い、ガラスチューブオーブンを用いて120℃で5時間真空乾燥することにより正極板を得た。この正極板から、直径15.9mmの円形に切り出したものを正極として用いた。
次に、黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、形番SG-BH8、粒径8μm)を98重量部、カルボキシメチルセルロース1%水溶液を固形分換算で1重量部、スチレンブタジエンゴム(JSR株式会社製、形番TRD2001)を1重量部、全体の固形分濃度が50%となるようにイオン交換水を添加し、プラネタリミキサーを用いて30rpmで30分間混合し、負極ペーストを得た。この負極ペーストを、7.6mg/cmとなるように、銅箔(厚さ10μm)に、ドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分間乾燥後、ロールプレス機(株式会社サンクメタル製)を用いてプレスを行い、ガラスチューブオーブンを用いて、80℃で5時間真空乾燥することにより負極板を作製した。この負極板から、直径16.1mmの円形に切り出したものを負極として用いた。
続いて、作製した正極と負極の間に、16.8mmの円形に切り出したセパレーター(セルガード社製#2400)を挟み込み、電解液としてLiPF1mоl/Lのエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)溶液を3mL添加したのちに、かしめることにより、2032型コインセルを作製した。
[実施例2]
正極ペーストを29.2mg/cm、負極ペーストを15.2mg/cmとなるように塗工した以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例3]
導電助剤として、合成例16により得られた得られたグラフェン分散液-6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例4]
導電助剤として、グラフェン分散液-1を0.5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ株式会社製、製品名#7200)を固形分として1.0重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例5]
バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ株式会社製、製品名#7200)を固形分として3.0重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例6]
導電助剤として、合成例12により得られたグラフェン分散液-2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例7]
導電助剤として、合成例14により得られたグラフェン分散液-4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例8]
導電助剤として、合成例18により得られたグラフェン分散液-8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例9]
導電助剤として、合成例15により得られたグラフェン分散液-5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例10]
導電助剤として、合成例19により得られたグラフェン分散液-9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[実施例11]
導電助剤として、合成例17により得られたグラフェン分散液-7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例1]
導電助剤として、合成例2により得られた表面処理グラフェンペースト-1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例2]
導電助剤として、合成例20により得られたグラフェン分散液-10を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例3]
導電助剤として、グラフェン分散液-1を1.5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ株式会社製、製品#7200)を固形分として1.5重量部用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極板およびコインセルを作製した。
[比較例4]
導電助剤として、合成例13により得られたグラフェン分散液-3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例5]
導電助剤として、CNT(シグマアルドリッチ株式会社製多層カーボンナノチューブ 製品番号698849:直径6-13nm 長さ2.5-20μm)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例6]
導電助剤として、合成例21により得られたCNT分散液-1を使用したこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例7]
導電助剤として、合成例22により得られたCNT分散液-2を使用したこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例8]
導電助剤として、合成例22により得られたCNT分散液-2を0.5重量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(クレハ株式会社製、製品名#7200)を固形分として1.0重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
[比較例9]
導電助剤として、合成例23により得られたアセチレンブラック分散液-1を使用したこと以外は実施例1と同様にして、正極およびコインセルを作製した。
各実施例および比較例の内容と評価結果を表1~2に示す。
Figure 2022167301000001
Figure 2022167301000002

Claims (12)

  1. ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNiMnCo1-x-y)からなる活物質、バインダー、グラフェンおよび高分子分散剤を含む合剤層と、集電体とを有する、リチウムイオン二次電池用正極であって、
    前記合剤層が、活物質100重量部に対して、グラフェンを炭素質固形分で0.4重量部以上1.2重量部以下含み、
    正極と、正極に対する容量比(N/P比)が1.05以上1.1以下であり、銅箔上に、グラファイト98重量部、カルボキシメチルセルロース1重量部、スチレンブタジエンゴム1重量部からなる合剤層を有する負極と、正極と負極との間に挟まれたセパレーターと、LiPF1mоl/Lのエチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=3:7(体積比)溶液からなる電解液とを含む2032型コインセルにしたときの直流内部抵抗値が10Ω以下となり、
    前記直流内部抵抗値に対する、合剤層の抵抗値の比((合剤層の抵抗値[Ω])÷(直流内部抵抗値[Ω]))が0.01以上となる、リチウムイオン二次電池用正極。
  2. 前記合剤層が、活物質100重量部に対して、バインダーを1重量部以上2重量部以下含む、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 前記合剤層の体積抵抗率が、50Ω・cm以上である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  4. 前記合剤層の厚みが、30μm以上、100μm以下である請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 前記グラフェンの平均厚みが、0.3nm以上、10nm以下である、請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 前記グラフェンのX線光電子分光法により測定される炭素に対する窒素の元素比(N/C比)が、0.005以上、0.030以下である、請求項1~5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  7. 前記グラフェンのX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が、0.08以上、0.30以下である、請求項1~6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  8. 前記合剤層が、グラフェンの炭素質固形分100重量部に対して、高分子分散剤を3重量部以上、50重量部以下含む、請求項1~7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  9. 前記高分子分散剤が、水酸基を有する、請求項1~8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  10. 前記高分子分散剤が、ポリビニルアルコールを含有する、請求項1~9のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  11. 前記ポリビニルアルコールのケン化率が、20%以上、100%以下である、請求項10に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、電解質とを含む、リチウムイオン二次電池。
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