JP2022166726A - スパッタリングターゲット部材、スパッタリングターゲット組立品、及び成膜方法 - Google Patents

スパッタリングターゲット部材、スパッタリングターゲット組立品、及び成膜方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022166726000001
【課題】漏洩磁束が向上し、非磁性材料の凝集抑制効果にも優れたCo-Cr-Pt系のスパッタリングターゲット部材を提供する。
【解決手段】Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相と、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相とを有し、非磁性材料は炭素、酸化物、窒化物、及び炭化物から選択される1種又は2種以上を含有し、Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率は50~80質量%であり、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtの質量含有率は、マトリックス相中のCo、Cr及びPtの質量含有率とそれぞれ異なる、スパッタリングターゲット部材。
【選択図】図1

Description

本発明は一実施形態において、垂直磁気記録メディアの製造に適したCo-Cr-Pt系スパッタリングターゲット部材に関する。本発明は別の一実施形態において、そのようなスパッタリングターゲット部材を備えたスパッタリングターゲット組立品に関する。本発明は更に別の一実施形態において、そのようなスパッタリングターゲット部材を用いた成膜方法に関する。
ハードディスクドライブに代表される磁気記録の分野では、記録を担う磁性薄膜の材料として、強磁性金属であるCo、Fe又はNiをベースとした材料が用いられている。例えば、面内磁気記録方式を採用するハードディスクの記録層にはCoを主成分とするCo-Cr系やCo-Cr-Pt系の強磁性合金が用いられてきた。また、近年実用化された垂直磁気記録方式を採用するハードディスクの記録層には、Coを主成分とするCo-Cr-Pt系の強磁性合金に酸化物や炭素等の非磁性粒子を分散させた複合材料が多く用いられている。磁性薄膜は、生産性の高さから、上記材料を成分とするスパッタリングターゲットをマグネトロンスパッタ装置でスパッタして作製されることが多い。
マグネトロンスパッタ装置は、ターゲットの裏側に磁石を配置することで、ターゲット表面に漏洩した磁束によってターゲット近傍にプラズマを集中させてスパッタリングを行う。このため、漏洩磁束の大きいスパッタリングターゲットの方が、不活性ガスの電離促進が効率的に進み、安定した放電が得られる。
しかしながら、一般に、マグネトロンスパッタ装置で強磁性材スパッタリングターゲットをスパッタしようとすると、磁石からの磁束の多くは強磁性体であるターゲット内部を通過してしまうため、漏洩磁束が少なくなり、スパッタ時に放電が立たない、あるいは放電しても放電が安定しないという問題が生じる。この問題を解決するには、強磁性金属であるCoの含有割合を減らすことが考えられる。しかし、この場合、所望の磁気記録膜を得ることができないため本質的な解決策ではない。また、ターゲットの厚みを薄くすることで漏洩磁束を向上させることは可能だが、この場合はターゲットライフが短くなり、頻繁にターゲットを交換する必要が生じるのでコストアップの要因になる。そこで、スパッタリングターゲットの漏洩磁束を向上させるための技術開発が種々なされてきた。
特許文献1(特許第6490589号公報)には、強磁性金属元素であるCoに対してPtとCrとを特定比率で合金化してなる磁性相と、非磁性相及び酸化物相をターゲット中に形成させることによって、強磁性金属元素を含みながら漏洩磁束を高くする技術が記載されている。具体的には、(1)Co及びPtを含み、Coに対するPtの割合が4~10原子%であるCo-Pt磁性相と、(2)Co、Cr及びPtを含み、Coに対するCrの割合が30原子%以上であるCo-Cr-Pt非磁性相と、(3)金属酸化物を含む酸化物相と、からなる3相構造を有することを特徴とするマグネトロンスパッタリング用ターゲットが提案されている。
特許文献2(特許第4673453号公報)及び特許文献3(特許第5394576号公報)には、スパッタリングターゲットの組織構造を調整することにより、漏洩磁束を大きくする技術が記載されている。具体的には、特許文献2では、Crが20mol%以下、残余がCoである組成の金属からなるスパッタリングターゲットであって、このターゲットの組織が、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Coを90wt%以上含有する長径と短径の差が0~50%である球形の相(B)を有していることを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲットが提案されている。特許文献3では、Crが20mol%以下、Ptが5mol%以上、残余がCoである組成の金属からなるスパッタリングターゲットであって、このターゲットが、金属素地(A)と、前記(A)の中に、Ptを40~76mol%含有するCo-Pt合金相(B)と前記相(B)とは異なるCo又はCoを主成分とする金属又は合金相(C)を有することを特徴とする強磁性材スパッタリングターゲットが提案されている。
一方、Co-Cr-Pt系の強磁性合金中に分散させた酸化物や炭素等の非磁性材料は凝集して偏析しやすい。このため、スパッタリング時に異常放電を起こしやすく、異常放電により破壊されたパーティクルを発生することも問題であった。この問題を解決するため、特許文献4(特許第6317636号公報)では、SiO2に加えてCrTi25を含む酸化物相を金属相に分散させることで、磁気記録媒体用スパッタリングターゲットのマイクロクラック及びパーティクルの発生を抑制する発明が提案されている。
特許第6490589号公報 特許第4673453号公報 特許第5394576号公報 特許第6317636号公報
特許文献1~3のように、Co-Cr-Pt系の強磁性合金が用いられるスパッタリングターゲットの漏洩磁束向上のために、合金組成を工夫したり、組織構造を工夫したりする技術が知られているが、これらの技術は非磁性材料の凝集を効果的に防止できているとは言い難い。特許文献4では非磁性材料の凝集を抑制するために、CrTi25を添加しているが、CoPtCr-SiO2系磁気記録媒体用スパッタリングターゲットが対象であり、SiO2を要件としないスパッタリングターゲットには解決策を与えていない。
そこで、本発明は一実施形態において、上記の先行技術とは別の観点から、漏洩磁束が向上し、非磁性材料の凝集抑制効果にも優れたCo-Cr-Pt系のスパッタリングターゲット部材を提供することを課題とする。本発明は別の一実施形態において、そのようなスパッタリングターゲット部材を備えたスパッタリングターゲット組立品を提供することを課題とする。本発明は更に別の一実施形態において、そのようなスパッタリングターゲット部材を用いた成膜方法を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討したところ、Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相中に、マトリックス相とはCo、Cr及びPtの含有率が異なる(すなわち磁気特性の異なる)Co-Cr-Pt合金粒子を分散させることで、磁気的な不均一性が導入され、スパッタリングターゲットの漏洩磁束を高めることができることを見出した。
本発明者はまた、マトリックス相及びCo-Cr-Pt合金粒子のそれぞれがCo、Cr、Ptを含有していることによって、スパッタリングターゲット中の金属成分の拡散挙動が緩やかになることが分かった。通常、金属成分の拡散時に酸化物等の非磁性材料も動くため凝集が発生するが、それを低減することが可能となり、非磁性材料の凝集を抑制することができる。
本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
[1]
Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相と、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相とを有し、
非磁性材料は炭素、酸化物、窒化物、及び炭化物から選択される1種又は2種以上を含有し、
Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率は50~80質量%であり、
Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtの質量含有率は、マトリックス相中のCo、Cr及びPtの質量含有率とそれぞれ異なる、
スパッタリングターゲット部材。
[2]
マトリックス相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Com]、[Crm]及び[Ptm]とし、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Cod]、[Crd]及び[Ptd]とすると、15%≦|[Com]-[Cod]|≦41%、0.4%≦|[Crm]-[Crd]|≦10%、40%≦|[Ptm]-[Ptd]|≦70%が成立する[1]に記載のスパッタリングターゲット部材。
[3]
Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径が10~150μmである[1]又は[2]に記載のスパッタリングターゲット部材。
[4]
非磁性材料は平均粒径が0.05~5.0μmの非磁性粒子で構成されている[1]~[3]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[5]
スパッタリングターゲット部材中のCo-Cr-Pt合金粒子相の質量含有率が20~45%である[1]~[4]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[6]
非磁性材料が酸化物を含有する[1]~[5]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[7]
マトリックス相が、0.09~12質量%のCr、7.5~40質量%のPt、及び5~25質量%の非磁性材料を含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する[1]~[6]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[8]
Co-Cr-Pt合金粒子相が、1~5質量%のCr及び50~80質量%のPtを含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する[1]~[7]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
[9]
[1]~[8]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材と、当該スパッタリングターゲット部材に接合されたバッキングチューブ又はバッキングプレートとを備えたスパッタリングターゲット組立品。
[10]
[1]~[8]の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材をスパッタリングすることを含む成膜方法。
本発明の一実施形態によれば、漏洩磁束が向上し、非磁性材料の凝集抑制効果にも優れたCo-Cr-Pt系のスパッタリングターゲット部材を提供することができる。このため、マグネトロンスパッタ装置で当該スパッタリングターゲット部材を使用すると、不活性ガスの電離促進が効率的に進み、安定した放電が得られることが期待される。また、当該スパッタリングターゲット部材は厚みを厚くすることができるため、交換頻度が小さくなり、低コストで磁性薄膜を製造できるというメリットが得られることが期待される。更に、当該スパッタリングターゲットは、スパッタリング時に異常放電を起こしにくくなり、少ないパーティクルで安定したスパッタリングが可能になることが期待される。
実施例1の断面組織のSEM像である。 比較例1の断面組織のSEM像である。 比較例9の断面組織のSEM像である。 比較例11の断面組織のSEM像である。
(マトリックス相)
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相を有する。マトリックス相がCo、Cr、Pt及び非磁性材料を含有するため、このスパッタリングターゲット部材は、例えば、垂直磁気記録メディア(例:ハードディスク)の記録層を形成するのに好適である。マトリックス相の組成は、要求される磁気特性に応じて適宜設定可能であるが、マトリックス相は一実施形態において、0.09~12質量%のCr、7.5~40質量%のPt、及び5~25質量%の非磁性成分を含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する。マトリックス相は、好ましい実施形態において、0.09~1質量%のCr、10~30質量%のPt、及び10~25質量%の非磁性成分を含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する。当該組成域は、漏洩磁束を高めることが要求されている組成域であるため、本発明を採用する意義が大きい。
非磁性材料は炭素、酸化物、窒化物、及び炭化物から選択される1種又は2種以上を含有し、典型的には炭素、酸化物、窒化物、及び炭化物から選択される1種又は2種以上で実質的に構成される。非磁性材料として、比較的一般的な粉砕・混合装置を使用して、金属相に微細に分散させることが可能であるとの理由により、少なくとも酸化物を含有することが好ましく、非磁性材料として酸化物のみを使用することがより好ましい。酸化物の例としては、Si、Al、B、Ba、Be、Ca、Ce、Cr、Dy、Er、Eu、Ga、Gd、Ho、Li、Mg、Mn、Nb、Nd、Pr、Sc、Sm、Sr、Ta、Tb、Ti、V、Y、Zn及びZrから選択される元素の1種又は2種以上の酸化物が挙げられる。酸化物の中でもSiO2はスパッタリングターゲットの高密度化に寄与する効果が大きいため、添加することが好ましい。窒化物の例としては、Al、B、Ca、Nb、Si、Ta、Ti及びZrから選択される元素の1種又は2種以上の窒化物が挙げられる。炭化物の例としては、B、Ca、Nb、Si、Ta、Ti、W及びZrから選択される元素の1種又は2種以上の炭化物が挙げられる。非磁性材料の種類は、要求される磁性薄膜の磁気特性に応じて適宜選択すればよい。
マトリックス相を構成するCo、Cr及びPtは、後述するCo-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子よりも平均粒径が小さい微細粒子で構成されている。Co、Cr及びPtは、例えば9μm以下の微細粒子から構成され得るが、焼結中にCo-Cr-Pt合金粒子との拡散が進行するという理由により、焼結後の粒径を正確に測定するのは困難である。
一方、マトリックス相において非磁性材料を構成する非磁性粒子の粒径は、焼結後の組織写真上では金属相と明らかに見た目が異なるという理由により測定可能である。非磁性材料は粒径が小さい方が異常放電の起点になりにくいという理由により好ましい。そのため、マトリックス相において非磁性材料を構成する非磁性粒子の平均粒径の上限は、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更により好ましい。非磁性粒子の平均粒径は、小さすぎると混合粉作製工程中に互いに凝集して塊(粗大な二次粒子)となる懸念があることから、その下限は、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更により好ましい。従って、一実施形態において、非磁性材料は平均粒径が0.05~5.0μmの非磁性粒子で構成されており、好ましい実施形態において、非磁性材料は平均粒径が0.1~2.0μmの非磁性粒子で構成されている。
本発明においては、マトリックス相を構成する非磁性粒子の平均粒径は以下の方法で測定する。スパッタリングターゲット部材のスパッタリング面に対して水平となる面の切断面を鏡面研磨する。鏡面研磨した当該切断面を200倍で1視野の測定時間40secとして撮影した縦450μm×横630μmのSEM写真上において、横方向に水平な二本の切断線によって写真を縦方向に等間隔で3分割し、各切断線によって切断される非磁性材料の粒子相の切断長さを測定し、その切断長さの平均値(μm)を視野毎に求める。なお、切断線の太さは写真の縦方向の長さの400分の1の太さとする。これを任意の10視野において実施し、10視野の平均値を測定値とする。なお、視野に一部分のみ含まれる非磁性材料の粒子相は測定対象から除く。
(Co-Cr-Pt合金粒子相)
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相を有する。スパッタリングターゲット部材中のCo-Cr-Pt合金粒子相の質量含有率は、漏洩磁束を高める効果を得るためには、一定以上の合金粒子相が必要という理由により、下限が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更により好ましい。スパッタリングターゲット部材中のCo-Cr-Pt合金粒子相の質量含有率は、マトリックス相の酸化物粒子の凝集を防止するという理由により、上限が45%以下であることが好ましく、42%以下であることがより好ましく、40%以下であることが更により好ましい。
なお、一実施形態において、スパッタリングターゲット部材中のマトリックス相及びCo-Cr-Pt合金粒子相は補完関係にあり、スパッタリングターゲット部材中のマトリックス相の質量含有率(%)は、100-(Co-Cr-Pt合金粒子相の質量含有率(%))で表すことができる。
Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtの質量含有率は、マトリックス相中のCo、Cr及びPtの質量含有率とそれぞれ異なる。Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相中に、マトリックス相とはCo、Cr及びPtの含有率が異なる(すなわち磁気特性の異なる)Co-Cr-Pt合金粒子を分散させることで、磁気的な不均一性が導入され、スパッタリングターゲットの漏洩磁束を高めることができる。また、マトリックス相及びCo-Cr-Pt合金粒子のそれぞれがCo、Cr、Ptを含有していることによって、スパッタリングターゲット中の金属成分の拡散挙動が緩やかになる。通常、金属成分の拡散時に酸化物等の非磁性材料も動くため凝集が発生するが、それを低減することが可能となり、非磁性材料の凝集を抑制することができる。
マトリックス相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Com]、[Crm]及び[Ptm]とし、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Cod]、[Crd]及び[Ptd]とすると、各成分のマトリックス相における濃度とCo-Cr-Pt合金粒子相における濃度の差の絶対値である|[Com]-[Cod]|、|[Crm]-[Crd]|、及び|[Ptm]-[Ptd]|は、大きい方が磁気的な不均一性を導入する点で有利である一方で、大き過ぎると拡散挙動が大きくなって非磁性材料の凝集が生じやすくなる。このため、15%≦|[Com]-[Cod]|≦41%、0.4%≦|[Crm]-[Crd]|≦10%、40%≦|[Ptm]-[Ptd]|≦70%が成立することが好ましく、20%≦|[Com]-[Cod]|≦41%、1%≦|[Crm]-[Crd]|≦8%、40%≦|[Ptm]-[Ptd]|≦60%が成立することがより好ましく、30%≦|[Com]-[Cod]|≦41%、1.5%≦|[Crm]-[Crd]|≦2%、40%≦|[Ptm]-[Ptd]|≦50%が成立することが更により好ましい。
Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率は、少なすぎるとCo-Cr-Pt合金粒子に含まれるCrの酸化を防止する効果が薄れる。さらに、Ptをなるべく合金粒子相側に含有させることによって、マトリックス側のCoに対するPtの比率が低下する。すると、磁気特性が変化し磁束をより漏洩させやすくなる効果が期待できる。そこで、Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率の下限は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更により好ましい。また、Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率は、多すぎると焼結中に合金粒子相からマトリックス相へのPtの拡散が促進され、凝集発生の原因となる。そこで、Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率の上限は80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更により好ましい。
Co-Cr-Pt合金粒子相中のCr含有率は、少なすぎると焼結中にマトリックス相から合金粒子相へのCrの拡散が促進される。そこで、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCr含有率の下限は1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることが更により好ましい。また、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCr含有率が多すぎると、Co-Cr-Pt合金粒子の使用量を少なくしなければならないため、漏洩磁束向上の効果を得ることが難しくなる。そこで、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCr含有率の上限は5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更により好ましい。
従って、Co-Cr-Pt合金粒子相は一実施形態において、1~5質量%のCr及び50~80質量%のPtを含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する。Co-Cr-Pt合金粒子相は好ましい実施形態において、1.5~4質量%のCr及び60~75質量%のPtを含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する。Co-Cr-Pt合金粒子相はより好ましい実施形態において、2~3質量%のCr及び65~70質量%のPtを含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する。
Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径の上限は、粒径が大きすぎるとスパッタリング時の異常放電の起点となり得るという理由により、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることが更により好ましい。Co-Cr-Pt合金粒子の平均粒径の下限は、粒径が小さくなるほど合金粒子の比表面積が増大するため、焼結中のマトリックス相との拡散が促進され、漏洩磁束を高める効果が減少してしまうという理由により、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。従って、一実施形態において、Co-Cr-Pt合金粒子相は平均粒径が10~150μmのCo-Cr-Pt合金粒子で構成されており、好ましい実施形態において、Co-Cr-Pt合金粒子相は平均粒径が20~100μmのCo-Cr-Pt合金粒子で構成されており、より好ましい実施形態において、Co-Cr-Pt合金粒子相は平均粒径が30~75μmのCo-Cr-Pt合金粒子で構成されている。
本発明においては、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径は以下の方法で測定する。スパッタリングターゲット部材のスパッタリング面に対して水平となる面の切断面を鏡面研磨する。鏡面研磨した当該切断面を200倍で1視野の測定時間40secとして撮影した縦450μm×横630μmのSEM写真上において、横方向に水平な二本の切断線によって写真を縦方向に等間隔で3分割し、各切断線によって切断されるCo-Cr-Pt合金粒子の切断長さを測定し、その切断長さの平均値(μm)を視野毎に求める。なお、切断線の太さは写真の縦方向の長さの400分の1の太さとする。これを任意の10視野において実施し、10視野の平均値を測定値とする。なお、視野に一部分のみ含まれるCo-Cr-Pt合金粒子は測定対象から除く。また、マトリックス相を構成する金属粒子との区別を明確にするため、Co-Cr-Pt合金粒子の平均粒径を求める際、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子は、切断長さが10μm以上のCo-Cr-Pt合金粒子のみを平均値の計算に使用する。
(製法)
本発明に係るスパッタリングターゲット部材は、粉末焼結法を用いて、例えば、以下の方法によって作製することができる。
まず、マトリックス相を構成するための原料粉末として、Co粉末、Cr粉末、Pt粉末を用意する。これらの金属粉は溶解鋳造したインゴットを粉砕して作製してもよいし、アトマイズ粉として作製してもよい。また、マトリックス相を構成するための原料粉末として、炭素粉、炭化物粉、窒化物粉、及び酸化物粉等の非磁性材料の粉末を用意する。
マトリックス相を構成するための原料粉末の純度は好ましくは90mol%以上であり、より好ましくは95mol%以上であり、更により好ましくは99.9mol%以上である。典型的な実施形態において、原料粉末は表示成分及び不可避的不純物以外は含まない。
マトリックス相を構成するための原料粉末のメジアン径(D50)の上限はそれぞれ、混合中での微細分散を促進させるための理由により、10μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが更により好ましい。また、当該原料粉末のメジアン径の下限は、比表面積増大による凝集を防止するという理由により、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが更により好ましい。メジアン径は粉砕や篩別により調整可能である。
次いで、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末として、Co-Cr-Pt合金粗粉を用意する。Co-Cr-Pt合金粗粉は例えばガスアトマイズ法により作製することができる。Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末の純度は好ましくは90mol%以上であり、より好ましくは95mol%以上であり、更により好ましくは99.9mol%以上である。典型的な実施形態において、原料粉末は表示成分及び不可避的不純物以外は含まない。
Co-Cr-Pt合金粗粉のメジアン径(D50)の上限は、大きすぎる合金粗粒はスパッタリング時の異常放電の起点となり得るという理由により、150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、75μm以下であることが更により好ましい。また、Co-Cr-Pt合金粗粉のメジアン径の下限は、粒径が小さくなるほど合金粗粒の比表面積が増大するため、焼結中のマトリックス相との拡散が促進され、漏洩磁束を高める効果が減少してしまうという理由により、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更により好ましい。メジアン径は粉砕や篩別により調整可能である。
次いで、マトリックス相を構成するための原料粉末及びCo-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末を所望の組成となるように秤量し、ボールミル等の公知の手法を用いて粉砕を兼ねて混合する。このとき、Co-Cr-Pt合金粗粉が過度に粉砕されないように、留意する。例えば、マトリックス相を構成するための原料粉末を先にボールミル等で粉砕及び混合した後に、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末を添加して緩やかに粉砕及び混合を行う方法が挙げられる。また、粉砕容器内に不活性ガスを封入して原料粉の酸化をできるかぎり抑制することが望ましい。不活性ガスとしては、Ar、N2ガスが挙げられる。
本発明において、各原料粉末のメジアン径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における体積値基準での積算値50%(D50)での粒径を意味する。実施例においては、HORIBA社製の型式LA-920の粒度分布測定装置を使用し、粉末をエタノールの溶媒中に分散させて測定した。屈折率は金属コバルトの値を使用した。
このようにして得られた混合粉末をホットプレス法で真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気下において成形・焼結する。また、前記ホットプレス法以外にも、プラズマ放電焼結法など様々な加圧焼結方法を使用することができる。特に、熱間静水圧加圧処理(HIP)は、焼結体の密度向上に有効であり、ホットプレス法と熱間静水圧加圧処理をこの順に実施することが焼結体の密度向上の観点から好ましい。
焼結時の保持温度の上限は、ターゲットの組成にもよるが、焼結中の粒子成長を防止するという理由により、1050℃以下とすることが好ましく、950℃以下とすることがより好ましく、900℃以下とすることが更により好ましい。また、焼結時の保持温度の下限は、焼結体の密度低下を避けるために700℃以上とすることが好ましく、750℃以上とすることがより好ましく、800℃以上とすることが更により好ましい。
焼結時のプレス圧力の下限は、焼結を促進するために20MPa以上とすることが好ましく、30MPa以上とすることがより好ましく、40MPa以上とすることが更により好ましい。また、焼結時のプレス圧力の上限は、ダイスの強度を考慮し100MPa以下とすることが好ましく、80MPa以下とすることがより好ましく、60MPa以下とすることが更により好ましい。
焼結時間の下限は、焼結体の密度向上のために1時間以上とすることが好ましく、2時間以上とすることがより好ましく、3時間以上とすることが更により好ましい。また、焼結時間の上限は、結晶粒の粗大化を防止するために10時間以下とすることが好ましく、7時間以下とすることがより好ましく、5時間以下とすることが更により好ましい。
得られた焼結体を、旋盤等を用いて所望の形状に成形加工することにより、本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲット部材を作製することができる。ターゲット形状には特に制限はないが、例えば平板状(円盤状や矩形板状を含む)及び円筒状が挙げられる。本発明に係るスパッタリングターゲット部材は一実施形態において、グラニュラー構造磁性薄膜の成膜に使用するスパッタリングターゲット部材として特に有用である。
スパッタリングターゲット部材は、必要に応じて、バッキングチューブ又はバッキングプレートのような基材と接合させて、スパッタリングターゲット組立品としてスパッタリング装置に装着してもよい。基材を使用せず、スパッタリングターゲット部材をそのままスパッタリングターゲットとしてスパッタリング装置に装着してもよい。
(成膜方法)
本発明は一実施形態において、上記スパッタリングターゲット部材をスパッタリングする工程を含む成膜方法を提供する。スパッタ条件は適宜設定することができる。
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、本発明が限定されることを意図するものではない。
(実施例1、比較例1、9、11)
<1.スパッタリングターゲット部材の作製>
マトリックス相を構成するための原料粉末として、以下の微粉を用意した。何れも99.9mol%以上の高純度品であり、表示成分及び不可避的不純物以外は含まない。これらの粉末のメジアン径(D50)は篩別して適宜調整した。
Co粉末:メジアン径(D50)=3μm
Cr粉末:メジアン径(D50)=5μm
Pt粉末:メジアン径(D50)=1μm
Ru粉末:メジアン径(D50)=8μm
23粉末:メジアン径(D50)=8μm
TiO2粉末:メジアン径(D50)=0.2μm
SiO2粉末:メジアン径(D50)=1μm
Cr23粉末:メジアン径(D50)=3μm
CoO粉末:メジアン径(D50)=1μm
また、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末として、ガスアトマイズ法により作製したCo-Cr-Pt合金粗粉を篩別して使用した。但し、比較例9はCo粗粉を使用し、比較例11はCo-Cr粗粉を使用した。試験番号に応じたCo-Cr-Pt合金粗粉の組成及びメジアン径(D50)は表1に記載した。Co-Cr-Pt合金粗粉は純度99.9mol%以上であり、Co、Cr、Pt、及び不可避的不純物以外は含まない。なお、Co-Cr-Pt合金粗粉の組成は、スパッタリングターゲットにおけるCo-Cr-Pt合金粒子相の組成と実質的に等しいことが経験的に分かっている。
次に、上記の各原料粉末を、試験番号に応じて表2の“使用原料”の欄に記載の質量組成となるように秤量した。次に、Co-Cr-Pt合金粗粉以外の原料粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合した。得られた混合粉と、秤量してあるCo-Cr-Pt合金粗粉を自動乳鉢に投入し、2時間混合した。次いで、得られた混合粉末をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中で表7に記載の温度に加熱し、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件下でホットプレスして、焼結体を得た。次に、ホットプレスから取り出した焼結体に、表7に記載の保持温度、保持時間2時間で熱間静水圧加圧処理(HIP)を施した。また、加圧力は100~200MPaの範囲に設定した。さらにこれを、汎用旋盤及び平面研削盤を用いて研削加工して直径が180mm、厚さが4mmの円盤状のスパッタリングターゲット部材を得た。
原料粉末の混合割合から計算した各試験番号におけるマトリックス相の組成(質量%)を表3に示す。マトリックス相とCo-Cr-Pt合金粒子相におけるCo、Cr、Ptのそれぞれの質量含有率の差を表4に示す。また、原料粉末の混合割合から計算した各試験番号におけるスパッタリングターゲットの全体組成(mol%、残部はCo)を表5に示す。
<2.Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径を先述した手順により求めた。Co-Cr-Pt合金粒子相はSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3000N)(比較例9、11)又はあるいはSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3700N)(実施例1、比較例1)を用いて特定した。原料として使用したCo-Cr-Pt合金粗粉の粒度に鑑み、微細な組織で構成されるマトリックス相中に分散する粗大な粒子をCo-Cr-Pt合金粒子相と特定した。SEMの観察条件は、いずれも加速電圧15kV、照射電流70μAとして、観察倍率200倍で、縦450μm×横630μm(1視野の測定時間40sec)とした。結果を表6に示す。
<3.非磁性粒子の平均粒径>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、マトリックス相を構成する非磁性粒子の平均粒径を先述した手順により求めた。非磁性粒子相はSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3000N)(比較例9、11)又はSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3700N)(実施例1、比較例1)を用いて特定した。SEMの観察条件は、いずれも加速電圧15kV、照射電流70μAとして、観察倍率200倍で、縦450μm×横630μm(1視野の測定時間40sec)とした。結果を表6に示す。
<4.漏洩磁束密度(PTF)の測定>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、漏洩磁束の測定をASTM F2086-01(Standard Test Method for Pass Through Flux of Circular Magnetic Sputtering Targets, Method 2)に則して実施した。ターゲットの中心を固定し、0°、30°、60°、90°、120°と回転させて測定した漏洩磁束密度(PTF)を、ASTMで定義されているreference fieldの値で割り返し、100を掛けてパーセントで表した。そしてこれら5点について平均した結果を、漏洩磁束密度(PTF)として表6に示す。
<5.Co-Cr-Pt合金粒子周囲あるいは内部への非磁性粒子の凝集有無>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、以下に記載の方法により、Co-Cr-Pt合金粒子周囲あるいは内部への非磁性粒子の凝集有無を確認した。スパッタリングターゲットのスパッタリング面に対して水平となる面の切断面を鏡面研磨し、200倍で撮影した縦450μm×横630μmのSEM写真を用意する。凝集有無の判断基準は以下とした。結果を表6に示す。
凝集有り:
(1)Co-Cr-Pt合金粒子の外周を、概ね一続きの非磁性粒子が覆っている場合。概ね一続きとは、途中何か所か切れていても良く、Co-Cr-Pt合金粒子の周囲長に対して90%以上を非磁性粒子が覆っていれば該当とする。(比較例11の組織写真参照)
(2)一つの視野に存在する3割以上の個数のCo-Cr-Pt合金粒子が円相当径5μm以上の非磁性粒子を内包する場合。(比較例9の組織写真参照)
(3)Co-Cr-Pt合金粒子に粒径5μm以上の非磁性粒子が外接する場合。
凝集無し:“凝集有り”に記載の(1)~(3)の何れの条件も満たさない場合は凝集無しとする。
<6.考察>
実施例1の断面組織のSEM像を図1に、比較例1の断面組織のSEM像を図2に、比較例9の断面組織のSEM像を図3に、比較例11の断面組織のSEM像を図4にそれぞれ示す。実施例1と比較例1を比べると、両者はスパッタリングターゲット部材の全体組成は同じである。しかしながら、実施例1では、Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相中に、マトリックス相とはCo、Cr及びPtの含有率が異なるCo-Cr-Pt合金粒子を分散させたことで、PTFが向上した。
(実施例2~12、比較例2~8、10、12)
上記の知見に基づき推定される実施例及び比較例に係るスパッタリングターゲットについて、以下に記載する。
<1.スパッタリングターゲット部材の作製>
マトリックス相を構成するための原料粉末として、以下の微粉を用意する。何れも99.9mol%以上の高純度品であり、表示成分及び不可避的不純物以外は含まない。これらの粉末のメジアン径(D50)は篩別して適宜調整する。
Co粉末:メジアン径(D50)=3μm
Cr粉末:メジアン径(D50)=5μm
Pt粉末:メジアン径(D50)=1μm
B粉末:メジアン径(D50)=9μm
Ru粉末:メジアン径(D50)=8μm
Ta粉末:メジアン径(D50)=9μm
23粉末:メジアン径(D50)=8μm
TiO2粉末:メジアン径(D50)=0.2μm
SiO2粉末:メジアン径(D50)=1μm
Cr23粉末:メジアン径(D50)=3μm
MnO粉末:メジアン径(D50)=3μm
Ta25粉末:メジアン径(D50)=1μm
CoO粉末:メジアン径(D50)=1μm
Co34粉末:メジアン径(D50)=1μm
Si34粉末:メジアン径(D50)=5μm
SiC粉末:メジアン径(D50)=9μm
また、Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するための原料粉末として、ガスアトマイズ法により作製したCo-Cr-Pt合金粗粉を篩別して使用する。試験番号に応じたCo-Cr-Pt合金粗粉の組成及びメジアン径(D50)は表1に記載した。Co-Cr-Pt合金粗粉は純度99.9mol%以上であり、Co、Cr、Pt、及び不可避的不純物以外は含まない。なお、Co-Cr-Pt合金粗粉の組成は、スパッタリングターゲットにおけるCo-Cr-Pt合金粒子相の組成と実質的に等しいことが経験的に分かっている。
次に、上記の各原料粉末を、試験番号に応じて表2の“使用原料”の欄に記載の質量組成となるように秤量する。次に、Co-Cr-Pt合金粗粉以外の原料粉末を粉砕媒体のジルコニアボールと共に容量10リットルのボールミルポットに封入し、20時間回転させて混合する。得られた混合粉と、秤量してあるCo-Cr-Pt合金粗粉を自動乳鉢に投入し、2時間混合する。次いで、得られた混合粉末をカーボン製の型に充填し、真空雰囲気中で表7に記載の温度に加熱し、保持時間2時間、加圧力30MPaの条件下でホットプレスして、焼結体を得る。次に、ホットプレスから取り出した焼結体に、表7に記載の保持温度、保持時間2時間で熱間静水圧加圧処理(HIP)を施す。また、加圧力は100~200MPaの範囲に設定する。さらにこれを、汎用旋盤及び平面研削盤を用いて研削加工して直径が180mm、厚さが4mmの円盤状のスパッタリングターゲット部材を得る。
原料粉末の混合割合から計算した各試験番号におけるマトリックス相の組成(質量%)を表3に示す。マトリックス相とCo-Cr-Pt合金粒子相におけるCo、Cr、Ptのそれぞれの質量含有率の差を表4に示す。また、原料粉末の混合割合から計算した各試験番号におけるスパッタリングターゲットの全体組成(mol%、残部はCo)を表5に示す。
<2.Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径>
上記手順により得られる各スパッタリングターゲット部材について、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径を先述した手順により求める。Co-Cr-Pt合金粒子相はSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3700N)(実施例2~12、比較例2~8、10、12)を用いて特定する。SEMの観察条件は、いずれも加速電圧15kV、照射電流70μAとして、観察倍率200倍で、縦450μm×横630μm(1視野の測定時間40sec)とする。結果を表6に示す。
<3.非磁性粒子の平均粒径>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、マトリックス相を構成する非磁性粒子の平均粒径を先述した手順により求める。非磁性粒子相はSEM(日立ハイテク製、装置名:S-3700N)(実施例2~12、比較例2~8、10、12)を用いて特定する。SEMの観察条件は、いずれも加速電圧15kV、照射電流70μAとして、観察倍率200倍で、縦450μm×横630μm(1視野の測定時間40sec)とする。結果を表6に示す。
<4.漏洩磁束密度(PTF)の測定>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、漏洩磁束の測定をASTM F2086-01(Standard Test Method for Pass Through Flux of Circular Magnetic Sputtering Targets, Method 2)に則して実施する。ターゲットの中心を固定し、0°、30°、60°、90°、120°と回転させて測定した漏洩磁束密度(PTF)を、ASTMで定義されているreference fieldの値で割り返し、100を掛けてパーセントで表す。そしてこれら5点について平均した結果を、漏洩磁束密度(PTF)として表6に示す。
<5.Co-Cr-Pt合金粒子周囲あるいは内部への非磁性粒子の凝集有無>
上記手順により得られた各スパッタリングターゲット部材について、以下に記載の方法により、Co-Cr-Pt合金粒子周囲あるいは内部への非磁性粒子の凝集有無を確認する。スパッタリングターゲットのスパッタリング面に対して水平となる面の切断面を鏡面研磨し、200倍で撮影した縦450μm×横630μmのSEM写真を用意する。凝集有無の判断基準は以下とする。結果を表6に示す。
凝集有り:
(1)Co-Cr-Pt合金粒子の外周を、概ね一続きの非磁性粒子が覆っている場合。概ね一続きとは、途中何か所か切れていても良く、Co-Cr-Pt合金粒子の周囲長に対して90%以上を非磁性粒子が覆っていれば該当とする。(比較例11の組織写真参照)
(2)一つの視野に存在する3割以上の個数のCo-Cr-Pt合金粒子が円相当径5μm以上の非磁性粒子を内包する場合。(比較例9の組織写真参照)
(3)Co-Cr-Pt合金粒子に粒径5μm以上の非磁性粒子が外接する場合。
凝集無し:“凝集有り”に記載の(1)~(3)の何れの条件も満たさない場合は凝集無しとする。
<6.考察>
実施例3と比較例2、実施例4と比較例3、実施例5と比較例4、実施例6と比較例5、実施例7と比較例6、実施例8と比較例7、実施例9と比較例8、実施例10と比較例10、実施例12と比較例12をそれぞれ比較すると、スパッタリングターゲット部材の全体組成は同じである。しかしながら、Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相中に、マトリックス相とはCo、Cr及びPtの含有率が異なるCo-Cr-Pt合金粒子を分散させた実施例のほうがPTFが向上する。
実施例2と比較例2を比べると、両者はスパッタリングターゲット部材の全体組成は同じである。また、実施例2と比較例2は共に、Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相中に、マトリックス相とはCo、Cr及びPtの含有率が異なる粗大なCo-Cr-Pt合金粒子を分散させた。しかしながら、実施例2ではCo-Cr-Pt合金粒子相の組成(特にPtの含有率)が適切であったため、PTFが比較例2に比べて向上する。
実施例11と比較例11を比べると、両者はスパッタリングターゲット部材の全体組成は同じである。しかしながら、比較例11ではマトリックス相中に分散させた金属粒子の組成が不適切である。このため、PTFは実施例11のほうが比較例11に比べて高い。実施例10と比較例9を比べても同様のことが言える。
Figure 2022166726000002
Figure 2022166726000003
Figure 2022166726000004
Figure 2022166726000005
Figure 2022166726000006
Figure 2022166726000007
Figure 2022166726000008

Claims (10)

  1. Co、Cr、Pt、及び非磁性材料を含有するマトリックス相と、マトリックス相中に分散するCo-Cr-Pt合金粒子相とを有し、
    非磁性材料は炭素、酸化物、窒化物、及び炭化物から選択される1種又は2種以上を含有し、
    Co-Cr-Pt合金粒子相中のPt含有率は50~80質量%であり、
    Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtの質量含有率は、マトリックス相中のCo、Cr及びPtの質量含有率とそれぞれ異なる、
    スパッタリングターゲット部材。
  2. マトリックス相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Com]、[Crm]及び[Ptm]とし、Co-Cr-Pt合金粒子相中のCo、Cr及びPtのそれぞれの質量含有率(%)を[Cod]、[Crd]及び[Ptd]とすると、15%≦|[Com]-[Cod]|≦41%、0.4%≦|[Crm]-[Crd]|≦10%、40%≦|[Ptm]-[Ptd]|≦70%が成立する請求項1に記載のスパッタリングターゲット部材。
  3. Co-Cr-Pt合金粒子相を構成するCo-Cr-Pt合金粒子の平均粒径が10~150μmである請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット部材。
  4. 非磁性材料は平均粒径が0.05~5.0μmの非磁性粒子で構成されている請求項1~3の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
  5. スパッタリングターゲット部材中のCo-Cr-Pt合金粒子相の質量含有率が20~45%である請求項1~4の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
  6. 非磁性材料が酸化物を含有する請求項1~5の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
  7. マトリックス相が、0.09~12質量%のCr、7.5~40質量%のPt、及び5~25質量%の非磁性材料を含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する請求項1~6の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
  8. Co-Cr-Pt合金粒子相が、1~5質量%のCr及び50~80質量%のPtを含有し、残部がCo及び不可避的不純物から成る組成を有する請求項1~7の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材。
  9. 請求項1~8の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材と、当該スパッタリングターゲット部材に接合されたバッキングチューブ又はバッキングプレートとを備えたスパッタリングターゲット組立品。
  10. 請求項1~8の何れか一項に記載のスパッタリングターゲット部材をスパッタリングすることを含む成膜方法。
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