JP2022166369A - 腐食状態判定装置、腐食状態判定方法、及び品質評価装置 - Google Patents
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Abstract
Description
金属組織には、その金属材料の成分や熱処理の履歴が反映されている。よって、金属組織の顕微鏡画像をコンピュータに取り込み、金属組織の特徴を数値化することで、その金属材料の炭素濃度、残留オーステナイト量、硬さ等の物性値の推定値を求めることが考えられる。
このため、顕微鏡画像として撮像された金属表面の研磨状態や、腐食状態を、適切に判定する必要がある。
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
を実行する処理部を備える。
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の腐食状態を判定する腐食状態判定方法であって、
前記金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得し、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する。
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像に基づいて前記金属の品質評価を行う品質評価装置であって、
前記顕微鏡画像から前記金属表面の腐食状態の判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
前記腐食状態判定処理の判定結果が所定の条件を満たす場合、前記顕微鏡画像から品質評価対象となる領域の領域画像を取得し、前記領域画像に基づくグレースケール画像から、前記金属の組織の粒が明るいオブジェクトとして示されその他が暗い領域として示される明側画像と、前記金属の組織の粒が暗いオブジェクトとして示されその他が明るい領域として示される暗側画像と、を生成し、前記明側画像、及び前記暗側画像に基づいて、前記金属の物性値の推定値を求める品質評価処理と、
を実行する処理部を備える。
[実施形態の概要]
(1)実施形態である腐食状態判定装置は、
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
を実行する処理部を備える。
よって、上記構成によれば、腐食の状態の影響が及ぶ輝度値に基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力するので、金属表面の腐食状態を定量的に判定した判定結果を出力することができる。この結果、金属表面の腐食状態を適切に判定することができる。
前記判定値は、前記ヒストグラムの最頻値、又は前記ヒストグラムの標準偏差の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
この場合、ヒストグラムの最頻値、又はヒストグラムの標準偏差の少なくともいずれか用いて金属表面の腐食状態を定量的に判定することができる。
前記判定値が前記ヒストグラムの最頻値を含む場合、前記腐食状態判定処理では、前記ヒストグラムの最頻値と、前記ヒストグラムの最頻値に対して設定された最頻値閾値と、を比較することで、前記金属表面の腐食状態を判定することが好ましい。
この場合、最頻値閾値の設定によって、腐食状態の判定をより適切に行うことができる。
前記判定値が前記ヒストグラムの標準偏差を含む場合、前記腐食状態判定処理では、前記ヒストグラムの標準偏差と、前記ヒストグラムの標準偏差に対して設定された標準偏差閾値と、を比較することで、前記金属表面の腐食状態を判定することが好ましい。
この場合、標準偏差閾値の設定によって、腐食状態の判定をより適切に行うことができる。
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の腐食状態を判定する腐食状態判定方法であって、
前記金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得し、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する。
組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像に基づいて前記金属の品質評価を行う品質評価装置であって、
前記顕微鏡画像から前記金属表面の腐食状態の判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
前記腐食状態判定処理の判定結果が所定の条件を満たす場合、前記顕微鏡画像から品質評価対象となる領域の領域画像を取得し、前記領域画像に基づくグレースケール画像から、前記金属の組織の粒が明るいオブジェクトとして示されその他が暗い領域として示される明側画像と、前記金属の組織の粒が暗いオブジェクトとして示されその他が明るい領域として示される暗側画像と、を生成し、前記明側画像、及び前記暗側画像に基づいて、前記金属の物性値の推定値を求める品質評価処理と、
を実行する処理部を備える。
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔システムの全体構成について〕
図1は、品質評価システムの一例を示すブロック図である。
図1中の品質評価システム1は、金属表面の顕微鏡画像に基づいて金属の品質評価を行う機能を有する。
品質評価システム1は、顕微鏡2と、カメラ3と、品質評価装置4とを備える。
顕微鏡2は、金属表面の観察が可能な金属顕微鏡である。
カメラ3は、顕微鏡2に組み込まれ、顕微鏡2の観察画像を撮像する機能を有する。カメラ3は、品質評価装置4に接続されており、撮像した顕微鏡画像を画像データとして品質評価装置4へ与える。
また、記憶装置6は、カメラ3から与えられる顕微鏡画像6aと、閾値データ6bと、品質評価モデル6cとを記憶する。
顕微鏡画像6aは、カメラ3から与えられる画像データである。
閾値データ6bは、後述する腐食状態判定処理や、研磨状態判定処理にて用いられる閾値である上下限値Th1~Th4を含む。プロセッサ5は、必要に応じて閾値データ6bの上下限値Th1~Th4を参照する。
品質評価モデル6cは、後述する品質評価処理にて用いられるモデルである。品質評価モデル6cには、炭素濃度推定用モデル、残留オーステナイト量推定用モデル、及び、硬さ推定用モデルが含まれる。
図2は、品質評価システム1を用いた品質評価方法の一例を示すフローチャートである。
本システム1は、低炭素鋼、低炭素合金鋼等を用いた部材の熱処理品の品質評価を行うことができる。低炭素鋼としては、S10C、S25C、S40Cが挙げられる。低炭素合金鋼としては、SCr415、SCM415、SCM435、SNCM420、SAE5120等が挙げられる。
本品質評価方法では、品質評価に用いる値として、軌道輪の浸炭箇所の炭素濃度、残留オーステナイト量、硬さ等の物性値の推定値を求める。よって、軌道輪の浸炭層が品質評価対象となる領域となる。
試料作製工程において、まず、評価対象部材である軌道輪100を高速カッタ等で切断し、切断片102を得る。その切断片102を樹脂104で埋包することで、試料106を得る。
このとき、切断片102の断面102aは、試料106の観察面106aにおいて露出している。
次いで、研磨及び腐食工程において、試料106の観察面106aを金属研磨機等によって研磨する。観察面106aは、耐水ペーパーによる研磨の後、ダイヤモンドペースト等による研磨がなされる。これにより、観察面106a(断面102a)は鏡面研磨される。
本方法では、評価対象部材である軌道輪100の浸炭層が品質評価対象であるので、断面102aにおける浸炭層の部分を顕微鏡2の視野に入れ、カメラ3によって顕微鏡画像を撮像する。これによって、断面102aにおける浸炭層の顕微鏡画像が撮像される。
上記ステップS1~S3までの作業は、作業者によって行われる。
顕微鏡画像が与えられた品質評価装置4は、判定処理を実行する(図2中、ステップS4)。
図2中のステップS4における判定処理は、組織観察用腐食液によって腐食された金属表面である試料106の断面102aの腐食状態及び研磨状態を判定し、断面102aの腐食状態及び研磨状態に関する判定結果を出力する処理である。
この判定処理については、後に説明する。
品質評価装置4から出力される判定処理の結果が「不合格」を示す場合、作業者は、再度、試料の研磨及び腐食(図2中、ステップS2)を行い、順次、作業をやり直す。
ここで撮像される顕微鏡画像は、品質評価処理に用いる画像である。品質評価処理では、顕微鏡画像の撮像範囲よりも広い範囲の金属組織を撮像した画像が必要な場合がある。この場合、ステップS6では、顕微鏡画像の撮像範囲よりも広い範囲を撮像対象範囲とする。この撮像対象範囲を顕微鏡画像の撮像範囲に応じて複数に分割し、複数の分割範囲を撮像した複数の顕微鏡画像を得る。より具体的には、浸炭層は、断面102aにおける軌道面102a1(図3)から、軌道面102a1の直下1mm~3mm程度の深さまでの範囲に存在している。よって、軌道面102a1の輪郭に沿って浸炭層を含むように撮像対象範囲を定め、軌道面102a1の輪郭に沿って撮像対象範囲を分割し、複数の顕微鏡画像を得る。
複数の顕微鏡画像が与えられた品質評価装置4のプロセッサ5は、複数の顕微鏡画像を記憶装置6に記憶し、品質評価処理5eを実行する(図1、及び図2中、ステップS7)。
複数の顕微鏡画像とともに品質評価処理を行う旨の命令が与えられると、プロセッサ5は、品質評価処理5eを開始し、品質評価の対象となる領域の領域画像を取得する(図4中、ステップS10)。
領域画像は、与えられた複数の顕微鏡画像から取得される。プロセッサ5は、複数の顕微鏡画像同士を繋げ、撮像対象範囲全体を示す画像を生成する。プロセッサ5は、撮像対象範囲全体を示す画像から、断面102aにおける浸炭層の部分の画像を領域画像として取得する。
図5(a)では、軌道面102a1の輪郭に沿って、軌道面102a1から深さ方向に数100μmの範囲で断面102aが撮像されている。
プロセッサ5は、例えば、図5(a)中、軌道面102a1から深さ方向に50~100μm進んだ地点付近における帯状の領域を領域画像として取得する。領域画像の深さ方向の幅寸法は50~100μm程度である。
画像処理には、前処理と、明側画像と暗側画像とを生成する処理とが含まれる。
前処理は、グレースケール画像に変換された領域画像に含まれるノイズを除去する処理と、領域画像に撮像されている結晶粒の輪郭を明確にする処理とが含まれる。
また、結晶粒の輪郭を明確にする処理では、領域画像を構成する各画素の明度と、その出現頻度とに基づくヒストグラムの累積度数の傾きが一定になるように、各画素の明度を補正する。
図6(a)は、領域画像の一部を示す図、図6(b)は、この領域画像から生成された暗側画像の図、図6(c)は、この領域画像から生成された明側画像の図である。
暗側画像は、領域画像中の組織粒が暗いオブジェクト(黒のオブジェクト)として示され、その他が明るい領域(白い領域)として示される画像である。
明側画像は、領域画像中の組織粒が明るいオブジェクト(白のオブジェクト)として示され、その他が暗い領域(黒の領域)として示される画像である。
暗いオブジェクト(暗い領域)は、前記エッチングによる腐食が進んでいる領域であり、明るいオブジェクト(明るい領域)は、前記エッチングによる腐食が進んでいない領域である。
明側画像及び暗側画像は、プロセッサ5によって以下のように生成される。
まず、前処理を行ったグレースケール画像(図6(a))から、ヒストグラムを生成する。このヒストグラムは、領域画像を構成する各画素の明度と、その出現頻度とに基づくヒストグラムである。
図7は、上記ヒストグラムの一例を示す図であり、横軸は、明度(0~255)であり、縦軸が、出現頻度である。図7には、明度毎(階調毎)の累積度数を示す曲線Lについても示されている。
図7に示すヒストグラムにおいて、暗い側(明度0)からの累積比率が第1設定値となる明度が、第1閾値として設定される。前記第1設定値は、例えば30%以上、50%以下の値が採用される。例えば、第1設定値として40%が採用される場合、図7に示すヒストグラムでは、暗い側(明度0)からの累積比率が40%となる明度(ここでは明度「100」であるとする)が、第1閾値として設定される。
また、図7に示すヒストグラムにおいて、明るい側(明度255)からの累積比率が第2設定値となる明度が、前記第2閾値として設定される。第2設定値は、例えば10%以上、30%以下の値が採用される。例えば、第2設定値として20%が採用される場合、図7に示すヒストグラムでは、明るい側(明度255)からの累積比率が20%となる明度(ここでは明度「180」であるとする)が、第2閾値として設定される。第2閾値は第1閾値よりも大きな値となる。
以上のようにして、プロセッサ5は、領域画像に基づいて、明側画像と暗側画像とを生成する。
図6(b)に示すように、暗側画像は、組織粒が暗いオブジェクト(黒のオブジェクト)として示される画像である。プロセッサ5は、暗側画像(図6(b))に含まれる複数のオブジェクトの暗側特徴量を求める。
図6(c)に示すように、明側画像は、組織粒が明るいオブジェクト(白のオブジェクト)として示される画像である。プロセッサ5は、明側画像(図6(c))に含まれる複数のオブジェクトの明側特徴量を求める。
明側特徴量の例として、明るいオブジェクトの明度の最大値、長軸、角度、円形度、明度の中央値、尖度、歪度、ピクセル数、アスペクト比等が挙げられる。
図8及び図9に示すように、長軸はオブジェクトの最大寸法であり、短軸は長軸に直交する方向の最大寸法である。角度は、前記幅方向に対する長軸の傾き角度である。円形度は「4π×(オブジェクトの面積)/(オブジェクトの周囲長)^2」の計算値である。アスペクト比は「長軸/短軸」の計算値である。調密度は「(オブジェクトの面積)/(オブジェクトを囲む最小の四角形の面積)」の計算値である。明度の中央値は次のとおりである。「グレースケール画像(図6(a))における、特徴量を求める対象となるオブジェクトについて、横軸を明度とし縦軸を頻度としたヒストグラムを作成した場合に、そのヒストグラムの中央値」。明度の最大値は次のとおりである。「前記ヒストグラムを作成した場合に、そのヒストグラムの最大値」。歪度及び尖度は、前記ヒストグラムの形状から算出される値である。
プロセッサ5は、記憶装置6の品質評価モデル6cを参照し、物性値の推定値を演算する。
これら各モデルは、明側特徴量及び暗側特徴量に基づいて、炭素濃度の推定値、残留オーステナイト量の推定値、及び、硬さの推定値を求めるための演算式である。各モデルは、明側特徴量及び暗側特徴量と、各推定値とが対応付けられた教師データを用いて機械学習されたモデルである。
プロセッサ5は、図4中のステップS12にて求めた明側特徴量及び暗側特徴量をデータセットとして用い、各推定値を演算し、入出力部7を通じて出力し、品質評価処理を終える。
図2中、ステップS3によって撮像された顕微鏡画像が与えられた品質評価装置4は、顕微鏡画像を記憶装置6に記憶し、判定処理を実行する(図2中、ステップS4)。
図10は、判定処理の一例を示すフローチャートである。
上述したように、判定処理は、組織観察用腐食液によって腐食された金属表面である試料106の断面102aの腐食状態及び研磨状態を判定し、断面102aの腐食状態及び研磨状態に関する判定結果を出力する処理である。
対象画像とは、断面102aの腐食状態及び研磨状態の判定対象となる画像である。
対象画像は、顕微鏡画像に含まれる断面102aの部分の画像であればよいが、図6中、ステップS10における領域画像と同様、断面102aにおける浸炭部分の画像を対象画像として取得することが好ましい。
より具体的に、プロセッサ5は、最頻値が下限値Th2以上、かつ、上限値Th1以下であるか否かを判定する(ステップS23)。
これら上限値Th1及び下限値Th2は、以下のように設定される。
各対象画像は、同じ試料106を同じ条件で鏡面研磨し、異なる腐食時間で腐食させた断面102aを撮像した画像である。また、腐食には3%のナイタール液を用い、各画像を取得する際の顕微鏡2の光源の輝度は一定として対象画像を取得した。
図11では、紙面左側より順判に、腐食時間1秒、3秒、5秒、7秒、10秒の対象画像を示している。図11に示すように、腐食時間が長くなればなるほど断面102aの腐食が進行しており、断面102aにおける組織粒が濃く現れている。
図12中、ヒストグラムH1は腐食時間1秒の対象画像に対応するヒストグラム、ヒストグラムH3は腐食時間3秒の対象画像に対応するヒストグラム、ヒストグラムH5は腐食時間5秒の対象画像に対応するヒストグラム、ヒストグラムH7は腐食時間7秒の対象画像に対応するヒストグラム、ヒストグラムH10は腐食時間10秒の対象画像に対応するヒストグラムを示している。
図12中、ヒストグラムH1の最頻値は189、ヒストグラムH3の最頻値は183、ヒストグラムH5の最頻値は133、ヒストグラムH7の最頻値は73、ヒストグラムH10の最頻値は23である。
次いで、断面102aに対してEPMAによる定量分析によって炭素濃度を実測し、実測値と各推定値との差異を求め、各ヒストグラム(各対象画像)について、実測値と推定値との差異と、最頻値とを対応付け、最頻値に対する上限値Th1及び下限値Th2を設定した。なお、図12に示した対象画像の断面102a(の浸炭部分)の炭素濃度の実測値は、0.8であった。
この結果に基づいて、最頻値に対する上限値Th1は185に設定され、下限値Th2は70に設定されている。
これにより、対象画像の輝度値に基づくヒストグラムの最頻値が下限値Th2以上かつ上限値Th1以下であれば、その対象画像による炭素濃度の推定値の実測値に対する差異が±0.1%以内となる。
この場合、判定結果が「不合格」なので、図2中、ステップS5で説明したように、作業者は、再度、試料の研磨及び腐食(図2中、ステップS2)を行い、順次、作業をやり直す。
この場合、プロセッサ5は、図10中ステップS21において取得した対象画像の断面102aの腐食状態を「合格」と判定する。プロセッサ5は、後の図10中ステップS27の判定結果が肯定的であれば、「合格」を示す情報を作業者に対して出力する。
よって、上記構成によれば、腐食の状態の影響が及ぶ輝度値に基づくヒストグラムから得られる最頻値に基づいて断面102aの腐食状態を判定するので、断面102aの腐食状態を定量的に判定した判定結果を出力することができる。この結果、断面102aの腐食状態を適切に判定することができる。
明側画像とは、図4中のステップS11の画像処理において生成される明側画像と同じ画像である。
プロセッサ5は、図4中のステップS11の画像処理と同様の処理によって、明側画像を生成する(図10中、ステップS24)。
本実施形態では、図10中、ステップS24において明側画像を生成するが、明側画像に代えて暗側画像を生成してもよい。
プロセッサ5は、求めたアスペクト比と、アスペクト比に対して設定された上限値とを比較する(ステップS27)。
より具体的に、プロセッサ5は、アスペクト比が上限値Th3以下であるか否かを判定する(ステップS27)。
すなわち、研磨状態が異なる断面102aの対象画像を複数取得し、各対象画像の明側画像に含まれるオブジェクトのアスペクト比を求めた。さらに、各対象画像を用いて炭素濃度の推定値を求めるとともに、各対象画像について炭素濃度の実測値と推定値との差異を求め、各対象画像の差異と、各対象画像の明側画像に含まれるオブジェクトのアスペクト比とに基づいて、上限値Th3を設定した。
各対象画像G1、G2、G3、G4、G5は、以下に示す条件によって試料106を研磨した後、3%のナイタール液に断面102aを5秒浸漬し、顕微鏡2の光源の輝度を一定として取得された対象画像である。
対象画像G1:耐水ペーパーによる研磨(220番 10秒、400番 10秒、800番 10秒、2000番 10秒) → ダイヤモンド研磨 30秒
対象画像G2:耐水ペーパーによる研磨(220番 10秒、400番 10秒、800番 10秒、2000番 10秒) → ダイヤモンド研磨 120秒 → 耐水ペーパー2000番 10秒 → ダイヤモンド研磨 120秒
対象画像G3:耐水ペーパーによる研磨(220番 10秒、400番 10秒、800番 10秒、2000番 10秒) → ダイヤモンド研磨 10秒
対象画像G4:耐水ペーパーによる研磨(220番 10秒、400番 10秒、800番 10秒、2000番 10秒)
対象画像G5:耐水ペーパーによる研磨(220番 10秒、400番 10秒、800番 10秒、2000番 3秒)
上記のように、研磨状態が異なる断面102aの対象画像を複数取得し、各対象画像の明側画像に含まれる複数のオブジェクトのアスペクト比を求めた。
さらに、各対象画像を用いて品質評価処理5e(図1)を行い、各対象画像による炭素濃度の推定値を求めた。
次いで、炭素濃度の実測値と各推定値との差異を求め、各対象画像について、実測値と推定値との差異と、アスペクト比とを対応付け、アスペクト比に対する上限値Th3を設定した。
対象画像G4によるアスペクト比は、約3である。また、対象画像G4による炭素濃度の実測値と推定値との差異は、0.1%以上である。
また、対象画像G1、G2、G3によるアスペクト比は、約2である。また、対象画像G1、G2、G3による炭素濃度の実測値と推定値との差異は、0.05%以下である。
これにより、対象画像に含まれるオブジェクトのアスペクト比がこの上限値Th3以下であれば、その対象画像による炭素濃度の推定値の実測値に対する差異が0.05%以下となる。
この場合、判定結果が「不合格」なので、図2中、ステップS5で説明したように、作業者は、再度、試料の研磨及び腐食(図2中、ステップS2)を行い、順次、作業をやり直す。
この場合、判定結果が「合格」なので、図2中、ステップS5で説明したように、作業者は、品質評価処理のための顕微鏡画像を撮像し(図2中、ステップS6)、その後、顕微鏡画像が与えられた品質評価装置4のプロセッサ5は、品質評価処理5eを実行する(図1及び図2中、ステップS7)。
これにより、断面102aの腐食状態及び研磨状態が良好である場合には、品質評価処理5eを実行し、断面102aの腐食状態及び研磨状態が良好でない場合には、「不合格」を示す情報を出力することで、作業者に試料の研磨及び腐食を再度行わせることができ、腐食状態及び研磨状態が良好でない断面102aを用いて品質評価処理5eが実行されるのを抑制することができる。
断面102aに研磨痕が存在すれば、明側画像には研磨痕がオブジェクトとして現れる。研磨痕は線状であるので、研磨痕によるオブジェクトのアスペクト比は、組織粒のアスペクト比と比較して大きくなる。
画像生成処理5c(図1)によって生成される明側画像に含まれるオブジェクトの中に、研磨痕によるオブジェクトが数多く存在すると、オブジェクトのアスペクト比も相対的に大きくなる。つまり、オブジェクトのアスペクト比は、研磨痕の量を示している。
上記構成によれば、研磨時の研磨痕の有無による影響が及ぶオブジェクトのアスペクト比に基づいて、断面102aの研磨状態に関する判定結果を出力するので、断面102aの研磨状態を定量的に判定することができる。この結果、断面102aの研磨状態を適切に判定することができる。
図16は、変形例に係る判定処理のフローチャートの一部を示す図である。
本変形例のプロセッサ5は、腐食状態判定処理5b(図1、図10中、ステップS23)において、判定値として、対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値に基づくヒストグラムから得られる最頻値に加え、前記ヒストグラムから得られる標準偏差を用いる点において、上記実施形態と相違する。
なお、図16では、図10と異なる内容のステップであるステップS22、S23のみを示している。他のステップS21、S24~S28は、図10と同様である。
次いで、プロセッサ5は、腐食状態判定処理5bにおいて、最頻値が下限値Th2以上、上限値Th1以下であるとともに、標準偏差が下限値Th4以上か否かを判定する(図16中、ステップS23)。
最頻値が下限値Th2以上かつ上限値Th1以下でないか、又は、標準偏差が下限値Th4以上でない場合、プロセッサ5は、ステップS25(図10)へ進み、入出力部7を介して「不合格」を示す情報を作業者に対して出力し、判定処理を終える。
下限値Th4は、以下のように設定される。
図12におけるヒストグラムH1の標準偏差は10.56、ヒストグラムH3の標準偏差は15.27、ヒストグラムH5の標準偏差は20.39、ヒストグラムH7の標準偏差は24.19、ヒストグラムH10の標準偏差は15.45である。
この結果に基づいて、標準偏差に対する下限値Th4は15に設定されている。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。
例えば、上記実施形態のプロセッサ5が、研磨状態判定処理5d(図1、図10中、ステップS27)において、明側画像に含まれるオブジェクトの扁平度を示す値として、アスペクト比を用いた場合を例示したが、アスペクト比に代えて、オブジェクトの円形度を用いることもできるし、オブジェクトの長軸を用いることもできる。また、これらの中から選択される複数の値を、オブジェクトの扁平度を示す値として研磨状態判定処理5dに用いてもよい。
なお、研磨痕によるオブジェクトの長軸は、組織粒のオブジェクトの長軸と比較して非常に大きい。よって、オブジェクトの扁平度を示す値であるオブジェクトの長軸によって、研磨痕の存在を判定することができる。
また、プロセッサ5に、取得処理5a及び腐食状態判定処理5bのみを実行させることで、品質評価装置4を腐食状態判定装置とすることもできる。
この場合、プロセッサ5は、腐食状態判定処理5bにおいて、対象画像の輝度値に基づくヒストグラムから得られる最頻値に基づいて、「合格」を示す情報、又は「不合格」を示す情報を作業者に出力する。
この場合、プロセッサ5は、判定処理の判定結果が「合格」と判定すると、判定処理に用いた顕微鏡画像を用いて品質評価処理5eを実行することができる。
2 顕微鏡
3 カメラ
4 品質評価装置
5 プロセッサ
5a 取得処理
5b 腐食状態判定処理
5c 画像生成処理
5d 研磨状態判定処理
5e 品質評価処理
6 記憶装置
6a 顕微鏡画像
6b 閾値データ
6c 品質評価モデル
7 入出力部
100 軌道輪
102 切断片
102a 断面
102a1 軌道面
106 試料
106a 観察面
255 明度
G1 対象画像
G2 対象画像
G3 対象画像
G4 対象画像
G5 対象画像
H1 ヒストグラム
H10 ヒストグラム
H3 ヒストグラム
H5 ヒストグラム
H7 ヒストグラム
L 曲線
P1 黒丸群
P10 黒丸群
P11 黒丸群
P12 黒丸群
P3 黒丸群
P5 黒丸群
P7 黒丸群
Claims (6)
- 組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
を実行する処理部を備える
腐食状態判定装置。 - 前記判定値は、前記ヒストグラムの最頻値、又は前記ヒストグラムの標準偏差の少なくともいずれかを含む
請求項1に記載の腐食状態判定装置。 - 前記判定値が前記ヒストグラムの最頻値を含む場合、前記腐食状態判定処理では、前記ヒストグラムの最頻値と、前記ヒストグラムの最頻値に対して設定された最頻値閾値と、を比較することで、前記金属表面の腐食状態を判定する
請求項2に記載の腐食状態判定装置。 - 前記判定値が前記ヒストグラムの標準偏差を含む場合、前記腐食状態判定処理では、前記ヒストグラムの標準偏差と、前記ヒストグラムの標準偏差に対して設定された標準偏差閾値と、を比較することで、前記金属表面の腐食状態を判定する
請求項2に記載の腐食状態判定装置。 - 組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の腐食状態を判定する腐食状態判定方法であって、
前記金属表面の顕微鏡画像から判定対象となる対象画像を取得し、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する
腐食状態判定方法。 - 組織観察用腐食液によって腐食された金属表面の顕微鏡画像に基づいて前記金属の品質評価を行う品質評価装置であって、
前記顕微鏡画像から前記金属表面の腐食状態の判定対象となる対象画像を取得する取得処理と、
前記対象画像を構成する各画素の明るさを表す輝度値とその出現頻度とに基づくヒストグラムから得られる判定値に基づいて、前記金属表面の腐食状態に関する判定結果を出力する腐食状態判定処理と、
前記腐食状態判定処理の判定結果が所定の条件を満たす場合、前記顕微鏡画像から品質評価対象となる領域の領域画像を取得し、前記領域画像に基づくグレースケール画像から、前記金属の組織の粒が明るいオブジェクトとして示されその他が暗い領域として示される明側画像と、前記金属の組織の粒が暗いオブジェクトとして示されその他が明るい領域として示される暗側画像と、を生成し、前記明側画像、及び前記暗側画像に基づいて、前記金属の物性値の推定値を求める品質評価処理と、
を実行する処理部を備える
品質評価装置。
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JP2021071529A JP2022166369A (ja) | 2021-04-21 | 2021-04-21 | 腐食状態判定装置、腐食状態判定方法、及び品質評価装置 |
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CN117115157A (zh) * | 2023-10-23 | 2023-11-24 | 湖南隆深氢能科技有限公司 | 基于pem电解槽的缺陷检测方法、系统、终端设备及介质 |
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2021
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CN117115157B (zh) * | 2023-10-23 | 2024-02-06 | 湖南隆深氢能科技有限公司 | 基于pem电解槽的缺陷检测方法、系统、终端设备及介质 |
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