JP2022165407A - トランス及びトランスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイヤモンドの熱伝導の良さをトランスに応用することにより、トランスに放熱を促す部材を別途取り付けることなく、通電により生じる発熱の放熱性能を高めるトランス及びトランスの製造方法を提供する。【解決手段】コアと、当該コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンとを備えるトランスであって、コアの表面またはボビンの表面のいずれかの少なくとも一部、コアの表面及びボビンの表面の少なくとも一部、もしくは当該トランスの表面にダイヤモンド形成層を備える。【選択図】図1
Description
本発明はトランス及びトランスの製造方法に関し、特に部材の表面にダイヤモンドを備えるトランスとその製造方法に関する。
ダイヤモンドは熱伝導性及び絶縁性に優れた特性を有することが知られている。例えば、化学気相成長(CVD)を利用することにより、容易にダイヤモンド被膜の形成が可能となった。そのため、電子機器に生じる熱の放熱用途へのダイヤモンドの利用が提案されている(特許文献1、2等参照)。特許文献1はダイヤモンドの被膜を形成したヒートシンクを開示し、特許文献2はダイヤモンドの被膜を形成した基板を開示している。
このように、電子機器の表面へのダイヤモンド被膜の形成については提案されている。そのため、ヒートシンク、基板等からの放熱の向上に貢献している。
しかしながら、電子機器において、トランスまたはトランスの構成部材に対するダイヤモンド被膜の形成についての知見は得られていない。トランスでは、コイルへの通電時の抵抗による発熱が大きく、また交流電流の通電時にはコイルに表面効果が生じ抵抗による発熱が顕著となる。
トランスの構造から理解されるように、トランスに放熱を促す部材を別途取り付けることは難しい。そこで、トランス自体の放熱性能を高めるべく、発明者は鋭意検討を重ねた。
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、熱伝導性及び絶縁性に優れたダイヤモンド特性をトランスに応用することにより、トランスに放熱を促す部材を別途取り付けることなく、通電により生じる発熱の放熱性能を高めるトランス及びトランスの製造方法を提供する。
すなわち、実施形態のトランスは、コアと、コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンとを備えるトランスであって、コアの表面またはボビンの表面のいずれかの少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とする。
また、実施形態のトランスは、コアと、コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンとを備えるトランスであって、コアの表面及び前記ボビンの表面の少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とする。
加えて、実施形態のトランスは、コアと、コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンとを備えるトランスであって、トランスの表面にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とする。
さらに、トランスのボビンに巻回される前のコイルの表面にダイヤモンド形成層が備えられることとしてもよい。
さらに、トランスのダイヤモンド形成層は、ダイヤモンド微粉末とアンカー剤により形成されていることとしてもよい。
さらに、トランスのダイヤモンド形成層は、ダイヤモンド被膜層よりなることとしてもよい。
さらに、トランスのダイヤモンド形成層の層厚さは2ないし200μmであることとしてもよい。
さらに、トランスのコアは、外形が円球状または楕円球状の中空部と、円球状または楕円球状の中心軸に沿って設けられた軸部を備えることとしてもよい。
さらに、トランスのコアは、軸部と交わる分割面に沿って2分割されていることとしてもよい。
さらに、トランスのコアの中空部には貫通穴が設けられ、貫通穴は分割面の一部を切り欠いていることとしてもよい。
本発明のトランスによると、コアと、当該コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンとを備えるトランスであって、コアの表面またはボビンの表面のいずれかの少なくとも一部、コアの表面及びボビンの表面の少なくとも一部、もしくは当該トランスの表面にダイヤモンド形成層が備えられるため、トランスに放熱を促す部材を別途取り付けることなく、通電により生じる発熱の放熱性能を高めることができる。
図1は実施形態のトランス1の全体斜視図である。トランス1は、変圧(昇圧、降圧)、交流と直流の変換等に使用されるトランスを包含する。実施形態のトランス1はスイッチングトランスを示す。トランス1は、コア20と、ボビン10を有する。ボビン10にはコイル30が巻回されている。なお、図示のトランスの形状、構造はあくまで一例であり、開示の形状、構造に限定はされない。
図2はボビンの全体斜視図である。ボビン10はフェノール樹脂等の耐熱性の樹脂材料から形成される。ボビン10はコイル30を巻回して保持する。実施形態のボビン10は2枚の側板11の間に中空部13を有するボビン軸12が備えられる。それぞれの側板11に支持板14が備えられる。支持板14には基板(図示せず)との接続のための端子15が備えられる。端子15はコイル30と接続される。図示から理解されるように、ボビン10は、側板11、ボビン軸12、支持板14を含む構造である。
図3はコア20を分離して示す斜視図である。コア20は、フェライトと称される酸化鉄を主成分とするセラミックス、鉄ダスト、パーマロイモリブデン粉末、ケイ素鋼板等から形成される。コア20はボビン10を挟み込むため第1コア21aと第2コア21bの2つに分割される。図3のコア20は面取りされている。
第1コア21aは、コイル30が巻回されているボビン10に被さるガイド部22a,22aを備える。ガイド部22a,22aの間にコア軸部23aが備えられる。同様に、第2コア21bは、コイル30が巻回されているボビン10に被さるガイド部22b,22bを備える。ガイド部22b,22bの間にコア軸部23bが備えられる。コア軸部23aと23bは中空のボビン軸12内に挿通される。
コイル30はトランスに使用される一般的な銅線等の金属線からなる。トランスの大きさにより銅線の直径は適宜である。銅線の表面は樹脂による被膜が形成されて絶縁される。なお、回路基板等に実装する小型のトランスの銅線には主に単線が使用される。さらに大型のトランスには複数本を束ねて撚り合わせた銅線が使用される。
近時、トランス(スイッチングトランス)には、小型化(低背化)とともに大電力化(大電流化)への対応が求められている。そのため、トランスのコイル等の各部材は密集度の高い状態である。そのため、通電時の発熱とその放熱は避けられない課題である。特に、トランス内のコア(鉄)とコイル(銅)からの発熱の影響が大きい。ダイヤモンドの良好な熱伝導性能がトランスに加わることにより、熱伝導に伴う熱の対流、放射が促されトランスの熱対策に有効となる。
実施形態のトランスの特徴は、当該トランスを構成する各部材またはトランス自体にダイヤモンド形成層が形成されていることである。トランスの各部材またはトランス自体がダイヤモンド形成層を具備することにより、当該ダイヤモンド形成層の形成部位からの放熱効率が向上する。熱伝導性について、ダイヤモンドの熱伝導率は2000(W/m・K)であり、ケイ素の熱伝導率は150(W/m・K)である。ちなみに、銀の熱伝導率は430(W/m・K)であり、銅の熱伝導率は400(W/m・K)である。従って、ダイヤモンド形成層を通じての放熱効果が期待される。
加えて、ダイヤモンドの絶縁耐圧は350(kV/mm)であり比抵抗は1016(Ω・cm)である。この性質からも、ダイヤモンド形成層を具備することにより、その部位の絶縁性は高まる。従って、トランスへダイヤモンド形成層を形成する利点は大きい。
具体的には、トランス1のコア20の表面またはボビン10の表面の少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられる。もしくは、トランス1のコア20の表面及びボビン10の表面の両方についての少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられる。図1ないし図3から理解されるように、コア20とボビン10は凹凸のある形状であるため、完全に表面全体にダイヤモンド形成層が形成されない場合がある。むろん、ダイヤモンド形成層については、表面の少なくとも一部に代えて、コア20の表面またはボビン10の表面の全体に備えることとしても良い。
ボビン10は直接コイル30(銅線)に接するため高温になりやすい。そこで、ボビン10がダイヤモンド形成層を備えることにより、放熱効果を得ることができる。コア20はフェライトにより形成されボビン10よりも熱伝導率が高い。コア20はコイル30の発熱からの熱伝導により高温化しやすい。そのため、コア20がダイヤモンド形成層を備えることにより、放熱効果を得ることができる。
また、コイル30は、ボビン10へ巻回される前段階の銅線の表面にダイヤモンド形成層を備えてもよい。この場合、ダイヤモンド形成層が備えられた銅線がボビン10に巻回されてコイル30が形成される。コイル30自体がダイヤモンド形成層を備えることにより、通電時のコイル30からの発熱を効率良く放熱することができる。
さらに、ボビン10、コア20、コイル30の全てが組み上がった状態のトランス1自体がその表面にダイヤモンド形成層を備えてもよい。完成品のトランスであっても表面にダイヤモンド形成層を備えることができるため、既存品のトランスに対して放熱性能を付加することができる。
ダイヤモンド形成層を備えるトランスの製造方法について、図4の模式図を用い説明する。ダイヤモンド形成層の形成に際しては、プラズマ化学気相成長(プラズマCVD)の方法が採用される。一般的な化学気相成長では、加熱状態にする必要がある。そのため、トランス1を構成するボビン10、コア20、コイル30が熱に曝露されて損傷してしまう。これに対しプラズマ化学気相成長では、加熱曝露されることはなく、熱損傷の影響は少ない。
プラズマ化学気相成長に際し、チャンバ40内に形成対象物Wが載置される。形成対象物Wは、トランス1、ボビン10、コア20、またはコイル30(銅線)の総称である。そして、チャンバ40内にダイヤモンドの炭素源としてメタン等の炭化水素ガス、酸素、水素が供給される。炭化水素ガスは、チャンバ40内では高周波の放電現象により励起されてプラズマとなり、炭素原子が遊離した状態となる。そして、チャンバ40内の電荷により形成対象物Wの表面に炭素原子が付着して当該表面において炭素はダイヤモンドとして結晶成長する。こうして、プラズマ化学気相成長では、ダイヤモンド形成層として形成対象物Wの表面にダイヤモンドの結晶が成長してダイヤモンド被膜層Dが形成される。
図5の断面模式図は形成対象物W及びダイヤモンド被膜層Dを示す。プラズマ化学気相成長を通じて形成対象物Wの表面に結晶状のダイヤモンドからなるダイヤモンド被膜層Dが形成される。形成されるダイヤモンド形成層(ダイヤモンド被膜層)の層厚さは、2ないし200μmの範囲、好ましくは10ないし150μmの範囲、より好ましくは20ないし100μmの範囲が好ましい。ダイヤモンド被膜層の層厚さが2μmよりも薄い場合、ダイヤモンドによる放熱効果が低減する。層厚さが200μmよりも厚くなる場合、プラズマ化学気相成長の処理時間が延びる。また、層厚さの影響からコイル30(銅線)の巻き数が減るおそれがある。
形成対象物Wの表面に形成されるダイヤモンド被膜層Dについては、好ましくは、表面に微細な凹凸を備えることが望ましい。ダイヤモンド被膜層Dの表面に適度な凹凸が備わることにより、表面積が増加して放熱効果が増す。ダイヤモンド被膜層Dの凹凸は、例えば表面粗さ(Ra)等の指標により定義される。
さらに、前述のプラズマ化学気相成長に代えて簡易的なダイヤモンド形成層の形成が可能である。具体的には、ダイヤモンド微粉末とアンカー剤(接着剤)が混練されてダイヤモンド塗剤が調製される。そして、ダイヤモンド塗剤がコア、ボビン、コイル、またはトランスの表面に塗布され、それぞれの表面にダイヤモンド形成層が形成される。
ダイヤモンド微粉末は、平均粒径1ないし50μm、好ましくは10ないし30μmの不定形なダイヤモンドの粉末である。アンカー剤は、トランスの発熱を考慮して耐熱性の樹脂素材が好ましく、例えば、ポリオレガノシロキサン系のシリコーン樹脂が好ましく用いられる。アンカー剤が加熱により硬化する樹脂種の場合、ダイヤモンド塗剤の塗布後にトランス(コア、ボビン、コイル)は適度に加熱されダイヤモンド形成層が形成される。
図6の断面模式図は形成対象物Wとダイヤモンド塗剤の塗布後に形成されるダイヤモンド形成層Eを示す。ダイヤモンド形成層Eはダイヤモンド微粉末Fとアンカー剤Gにより形成されている。部材の表面に形成されるダイヤモンド形成層(ダイヤモンド塗剤)の層厚さは、2ないし200μmの範囲、好ましくは10ないし150μmの範囲、より好ましくは20ないし100μmの範囲が好ましい。ダイヤモンド形成層の層厚さが2μmよりも薄い場合、ダイヤモンドによる放熱効果が低減する。層厚さが200μmよりも厚くなる場合、アンカー剤の樹脂による被覆の影響から放熱性が低下する。また、層厚さの影響からコイル30(銅線)の巻き数が減るおそれがある。
これより、図7ないし図9を用いダイヤモンド形成層を備える他の実施形態のトランス1X(図8参照)について説明する。
図7はトランス1Xのコア100の正面図である。コア100はほぼ円球状の概形であり、内部に中空部101と、円球状の中心軸L2に沿って設けられた軸部102を備えている。つまり、円球状の中空部101内に、軸部102が収容された形態である。コア100は、分割面M1により紙面の上下に2分割され、上側の半球と下側の半球に分離可能である(図8参照)。また、コア100の側面には分割面M1の一部を切り欠いて貫通穴103が形成されている。
コア100は、前述のトランス1のコア20と同様に、フェライトと称される酸化鉄を主成分とするセラミックス、鉄ダスト、パーマロイモリブデン粉末、ケイ素鋼板等から形成される。なお、コア100は図7に開示の円球状に加えて図7の紙面縦方向または紙面横方向に偏平した楕円球状(紡錘形状)としても良い。コア100は後出のボビン200(図9参照)の形状に合わせられる。
図8は分離したコア100の下側の半球を示し、図8(A)はその平面図であり、図8(B)は正面図である。コア100の上側の半球は同型状であるため図示、説明を省略する。コア100の中空部101には、その内部から外部を貫く2つの貫通穴103が形成されている。貫通穴103は分割面M1の一部を切り欠くように形成され、コア100の半球側は、分割面M1の一部において窪んだ状態となる。
図9はトランス1Xの分離状体を示し、図9(A)はコア100に収容されるボビン200の正面図であり、図9(B)はその側面図である。トランス1Xのボビン200は、長さ方向(高さ方向)の中央に支持板204が備えられ、当該支持板204に基板(図示せず)との接続のための端子205が備えられる。そして、ボビン200にはコイル300が巻回される。図9(B)から理解されるように、ボビン200の支持板204は外側へ張り出す形態である。そこで、ボビン200から外側へ張り出した支持板204の末端(端子205)は、コア100の上下それぞれの半球に形成された貫通穴103からコア100の外側に出る。
トランス1Xのコア100によると、ボビン200の全体がコア100に覆われるため、磁力線が外部に漏れにくくなる。さらに、コイル300から発生した磁力線がコア100内の中空部101の円球状の外形に沿って発生する。このため、磁力線は中空部101に集められ、中空部101の外部、つまりコア100の外部への漏洩が抑制されてノイズ対策の容易化が可能となる。
当該トランス1Xにおいても、コア100、ボビン200、さらにはコイル300がダイヤモンド被膜層を備えることにより、放熱効果を高めることが可能となる。特に、トランス1Xはボビン200をコア100により包み込む形態であるため、熱がコア100の内部に籠もりやすい。そのため、コア100がダイヤモンド被膜層を備えることにより、コア100からの放熱効果は大きくなる。
[実証実験]
発明者は、トランスの部品へのダイヤモンド形成層を形成した際の効果を検証した。トランスTを実装する供試スイッチング電源を作製し使用時の発熱(温度変化)を計測した。図10の(A)は供試スイッチング電源の斜視の写真、(B)供試スイッチング電源の平面の写真である。供試スイッチング電源の外形は幅70mm、長さ150mm、高さ28mmである。使用したトランスは幅30mm、長さ37mm、高さ25mmである。
発明者は、トランスの部品へのダイヤモンド形成層を形成した際の効果を検証した。トランスTを実装する供試スイッチング電源を作製し使用時の発熱(温度変化)を計測した。図10の(A)は供試スイッチング電源の斜視の写真、(B)供試スイッチング電源の平面の写真である。供試スイッチング電源の外形は幅70mm、長さ150mm、高さ28mmである。使用したトランスは幅30mm、長さ37mm、高さ25mmである。
ダイヤモンド塗剤の調製に際し、ダイヤモンドパウダー(株式会社ナカニシ製:粒度1200)と、アンカー剤(接着剤)としてシリコーンコンパウンド(富士高分子工業株式会社製:SPG-20B)を使用した。ダイヤモンドパウダーを0.1g以下にシリコーンコンパウンドを約4.0gとして混練し、ダイヤモンド塗剤とした。
供試スイッチング電源を2台用意し、一方の供試スイッチング電源のトランスの支持板(図1参照)に前出のダイヤモンド塗剤を塗布した。他方の供試スイッチング電源はそのままとした。両供試スイッチング電源に対し、2台同時に以下の入出力条件として温度変化を比較した。
入力:単相交流100V
出力:直流24.0V/~2.0A
出力負荷は電子負荷を使用しCRモード
時間:2時間
温度上昇試験中は幅180mm、長さ200mm、高さ100mmの小箱(写真省略)を供試スイッチング電源のそれぞれにかぶせた。また、無風の条件とした。
入力:単相交流100V
出力:直流24.0V/~2.0A
出力負荷は電子負荷を使用しCRモード
時間:2時間
温度上昇試験中は幅180mm、長さ200mm、高さ100mmの小箱(写真省略)を供試スイッチング電源のそれぞれにかぶせた。また、無風の条件とした。
図11のサーモビューアー画像において、紙面左側は通常(ダイヤモンド塗剤の塗布なし)の供試スイッチング電源であり、紙面右側はダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源である。ダイヤモンド塗剤の塗布なしの供試スイッチング電源では約80~90℃であり、ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源では70℃前後であった。双方の温度比較から、ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源では、トランスT全体において温度低減の効果が認められた。ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源ではダイヤモンド塗剤の塗布なしの供試スイッチング電源よりも概ね10℃温度の温度上昇を抑制した。
また、双方の供試スイッチング電源の各所に熱電対を装着して経時的な温度変化(温度上昇)も計測した。図12はトランスの巻線部分の温度変化のグラフであり、図13はボビン部分の温度変化のグラフである。横軸は時間(分)、縦軸は自己温度上昇(℃)である。図12及び図13の両グラフより、ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源では明らかに温度上昇が抑えられた。
図12のグラフの計測時間の後半20分(100~120分)の平均温度について、通常(ダイヤモンド塗剤の塗布なし)の供試スイッチング電源は37.9℃、ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源は31.7℃であった。このことから、6.2℃の温度上昇抑制効果が認められた。この点については、巻線の発熱がピンを介して基板へ熱伝導しているためと推定される。
図13のグラフの計測時間の後半20分(100~120分)の平均温度について、通常(ダイヤモンド塗剤の塗布なし)の供試スイッチング電源は23.8℃、ダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源は17.6℃であった。このことから、6.2℃の温度上昇抑制効果が認められた。この点については、巻線の発熱がボビンを介して大気中または基板に熱伝導しているためと推定される。なお、供試スイッチング電源の基板部分、トランスのコア部分については有意な温度変化は認められなかった。
[期待される効果]
一般に、トランス、各種電子部品の材料については耐熱クラス(絶縁階級)により許容最高温度が規定されている。そして、より多くの電力(ワット数)に対応するトランスを始めとする電子部品を用いる場合、使用時の発熱は電力量に比例して多くなる。このため、耐熱性の点から部品の大きさが大きくなる傾向にある。それゆえ、発熱の影響から電気機器(機械製品)の小型化に支障となっていた。
一般に、トランス、各種電子部品の材料については耐熱クラス(絶縁階級)により許容最高温度が規定されている。そして、より多くの電力(ワット数)に対応するトランスを始めとする電子部品を用いる場合、使用時の発熱は電力量に比例して多くなる。このため、耐熱性の点から部品の大きさが大きくなる傾向にある。それゆえ、発熱の影響から電気機器(機械製品)の小型化に支障となっていた。
ここで、前述の実験のトランスにおける温度上昇抑制効果を勘案すると、例えば、図14の比較グラフを得ることができる。横軸は電力(W)、縦軸は自己温度上昇(℃)である。自己温度上昇は室温からの開始としている。上側は通常(ダイヤモンド塗剤の塗布なし)の供試スイッチング電源であり、下側はダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源である。
双方の比較から、電力の上昇時においてダイヤモンド塗剤の塗布ありの供試スイッチング電源の温度上昇は相対的に抑制された。グラフの比較から、仮に約5.0℃の発熱の低減が可能であれば、約10.0W以上の出力電力を増加させることが可能と予想できる。そうすると、例えば、同等の形状、大きさのトランス等の電子部品において、出力電力を増加させた仕様、設計が可能となる。また、同等の出力電力の仕様において、従前よりも小型の形状の電子部品を選択することが可能となる。このように、ダイヤモンド形成層が備えられることにより放熱の効果が向上し、電子機器の設計上の自由度(電子部品の出力電力対応、小型化対応)が高まる。
[プラズマ化学気相成長による成膜]
前述のとおり、発明者らはダイヤモンド塗剤を用いたダイヤモンド形成層の形成について実験を行い、効果を実証した。さらに、トランスのボビンにプラズマ化学気相成長(プラズマCVD)の適用も検証した。以下の条件下においてプラズマ化学気相成長を実施した。下記の単位「sccm」はstandard cc/minの略であり、1atm(1013hPa)における0℃または25℃等の一定の温度下における流量のことである。
メタン ・・・流量 10sccm
水素 ・・・流量 100sccm
処理時間・・・3時間/回
前述のとおり、発明者らはダイヤモンド塗剤を用いたダイヤモンド形成層の形成について実験を行い、効果を実証した。さらに、トランスのボビンにプラズマ化学気相成長(プラズマCVD)の適用も検証した。以下の条件下においてプラズマ化学気相成長を実施した。下記の単位「sccm」はstandard cc/minの略であり、1atm(1013hPa)における0℃または25℃等の一定の温度下における流量のことである。
メタン ・・・流量 10sccm
水素 ・・・流量 100sccm
処理時間・・・3時間/回
そして、トランスのボビンの表面にダイヤモンド形成層(ダイヤモンド被膜層)が形成されていることを電子顕微鏡(SEM)により観察した。図15はトランスのボビンの断面電子顕微鏡写真であり(A)は1000倍の写真、(B)は10000倍の写真である。両写真より、表面にダイヤモンドの膜が形成されていることが確認できた。
プラズマ化学気相成長による成膜の検証からも明らかであるように、トランスを構成する部品に対し、ダイヤモンド形成層としてのダイヤモンド被膜層の形成は可能であることが判明した。従って、前述のダイヤモンド塗剤の塗布時と同様に、ダイヤモンド被膜層によってもトランスにおける温度上昇抑制効果を得ることが期待される。
1,1X トランス
10 ボビン
12 ボビン軸
14 支持板
15 端子
20 コア
21a 第1コア
21b 第2コア
22a,22b ガイド部
23a,23b コア軸部
30 コイル
40 チャンバ
W 形成対象物
D ダイヤモンド被膜層
E ダイヤモンド形成層
F ダイヤモンド微粉末
G アンカー剤G
100 コア
101 中空部
103 貫通穴
200 ボビン
204 支持板
205 端子
300 コイル
L2 中心軸
M1 分割面
10 ボビン
12 ボビン軸
14 支持板
15 端子
20 コア
21a 第1コア
21b 第2コア
22a,22b ガイド部
23a,23b コア軸部
30 コイル
40 チャンバ
W 形成対象物
D ダイヤモンド被膜層
E ダイヤモンド形成層
F ダイヤモンド微粉末
G アンカー剤G
100 コア
101 中空部
103 貫通穴
200 ボビン
204 支持板
205 端子
300 コイル
L2 中心軸
M1 分割面
Claims (12)
- コアと、前記コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンと、を備えるトランスであって、
前記コアの表面または前記ボビンの表面のいずれかの少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とするトランス。 - コアと、前記コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンと、を備えるトランスであって、
前記コアの表面及び前記ボビンの表面の少なくとも一部にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とするトランス。 - コアと、前記コアに組み付けられるコイルが巻回されるボビンと、を備えるトランスであって、
前記トランスの表面にダイヤモンド形成層が備えられることを特徴とするトランス。 - 前記ボビンに巻回される前のコイルの表面にダイヤモンド形成層が備えられる請求項1または2に記載のトランス。
- 前記ダイヤモンド形成層は、ダイヤモンド微粉末とアンカー剤により形成されている請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランス。
- 前記ダイヤモンド形成層は、ダイヤモンド被膜層よりなる請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランス。
- 前記ダイヤモンド形成層の層厚さは2ないし200μmである請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランス。
- 前記コアは、外形が円球状または楕円球状の中空部と、前記円球状または楕円球状の中心軸に沿って設けられた軸部を備える請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランス。
- 前記コアは、前記軸部と交わる分割面に沿って2分割されている請求項8に記載のトランス。
- 前記コアの前記中空部には、貫通穴が設けられ、前記貫通穴は、前記分割面の一部を切り欠いている請求項9に記載のトランス。
- 請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランスの製造方法であって、
前記コア、前記ボビン、前記コイル、または前記トランスの表面に対しプラズマ化学気相成長によりダイヤモンド形成層としてダイヤモンド被膜層を形成することを特徴とするトランスの製造方法。 - 請求項1、2、または3のいずれか1項に記載のトランスの製造方法であって、
ダイヤモンド微粉末とアンカー剤を混練してダイヤモンド塗剤を得て、
前記ダイヤモンド塗剤を前記コア、前記ボビン、前記コイル、または前記トランスの表面に塗布してダイヤモンド形成層を形成することを特徴とするトランスの製造方法。
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