JP2022162440A - 空気清浄装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】机を囲んで会話をするひとたちが吐出する飛沫を収集して浄化する効率的かつコンパクトな空気清浄装置を提供する。【解決手段】周囲の空気を清浄し、再び室内に還元するようにするパネル状の空気清浄装置であって、装置背面側に減圧室147、正面上部に吸気加速室145、正面下部に風向調整室146を設けるとともに、吸気は吸気加速室145の正面に設けた吸気開口103で、排気は風向調整室146の底部付近に設けた排気開口107で行うようにする。これにより、開口の距離が離れるとともに、吸気開口103から排気開口107に向かう気流の経路が伸び、両開口間に生成する気圧傾度が小さくなる一方、吸気開口から一定の距離に置かれる机の水平面上でも気圧傾度が大きくなり、机上に吐出された飛沫を吸気開口に向かって収集し、装置周辺で会話をする者のウイルス飛沫感染の低減を図る。【選択図】図1

Description

新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、コンパクトで効率の良い空気清浄装置に係る。
詳しくは、室内で装置周囲の空気を吸い込んで、これを清浄し、再び同室内に還元する、パネル状の空気清浄装置であって、
(1) 吸気開口と排気開口との距離をできるだけ離すとともに、
(2) 排気流線の床に向かう成分を強めることで、
(3) 吸気開口から排気開口に至る空気流路上浄化を要する空間領域で気圧傾度を低下させるように、
したもの等に関する。これにより、吸気開口から一定の距離に居るひとの吐出飛沫を効率的に吸引する。
(1. 社会的背景)
近時、COVID-19をはじめとするウイルス感染の流行に伴い、感染拡大防止を図る多くのアイデアが提案されている。このなかには、ひととひととが物理的には接近していても、論理的にはソーシャル・ディスタンスが採れるようにしたものがある。たとえば、ウイルス感染がひとの吐出する唾液飛沫を主因とする点に着目し、これをできるだけ減少させようとするものがあり、空気清浄装置はこれに含まれる。
(2. 背景技術)
空気清浄装置はCOVID-19発現以前からも多くのものが提案されている。
たとえば、特許文献1に開示された空調装置は平たい薄板筐体内にフィルタとファンとを具備する。筐体下方に配置したファンにより室内空気を取り込んでこれを筐体内上方に移送する。上方にはフィルタが設けられていて、ここから浄化した空気を排出するようになっている。
一方、特許文献2に開示された空調装置は、排熱を主目的とするものではあるが、室内の空気を送風パネル本体の上部から吸い込んで、パネル内部下方に備えた換気扇によりこれを下方に移送し、これを床下空間に排出するようになっている。これをそのまま用いれば、装置付近にいるひとの吐出する飛沫を収集し、室外に排出することができ、飛沫拡散防止には有意義である。
(3. 周辺情報)
なお、非特許文献1には概ね大人の平均とみられる高等学校17歳の身長・体重・座高の平均値が記載されている。この情報から、ひとの立位・着座時の頭頂高が把握でき、吐出飛沫を吸引すべき対象空間高を決定することができる。
特開2000-342921号公報 特開平5-203212号公報
埼玉県 総務部 統計課 労働学事担当、 "埼玉県/平成15年度学校保健統計調査調査結果の概要"、[online]、2018年1月5日、埼玉県、[令和3年4月6日検索]、インターネット<URL:https://www.pref.saitama.lg.jp/a0206/a218/906-20100105-677.html>
特許文献1に開示された装置についてみると、装置下部から吸気して装置上部から排気をするようになっているが、これは本来の空気清浄に主眼が置かれているためであって、装置付近に居たひとの吐出した飛沫はむしろ拡散する虞がある。
勿論、このように飛沫を拡散させるようなものであっても、ウイルスの単位体積あたりの数は減少するのであって、一定数以上のウイルスが体内に取り込まれなければ発症できないというひとの免疫機能を考慮すると、感染防止に効果がないとまではいえない。とはいえ、望ましくはウイルスを含む飛沫は飛散させないことであり、飛沫を収集するような装置が望まれるところである。
勿論、風向を逆転させることは容易に考えられる。ただ、飛沫収集という点を重視していないため、これが最適であるかどうかは更に検討が必要と思われる。
特許文献2に係る発明によれば、この装置は設置する床に床下空間に連通する開口が必要である。このため、床下空間に連通する開口を確保できないところや、そもそも床下空間を確保できない場所では装置を設置できない恨みがある。
(1. 課題を解決するための手段に係る一般的事項)
本願発明に係る装置は、いずれも上記課題の低減を図るものであり、その目的とするところは、
(1) 設置場所の自由度が高く、通常の使用方法においては空気を浄化する装置として機能し、
(2) いわゆる「3密(密集、密接、密閉)」は机を囲んでひとがコミュニケーションを採るような場面で飛沫感染が起こりやすい点に着目し、特に装置脇に位置した机上空間で効率的な換気となるような、
空気清浄機を提供することにある。
(2. 本願において用いる文言の定義)
課題を解決するための手段に言及するに先立ち、本願の明細書、特許請求の範囲、図面において用いる文言の定義を示す。
「吸気開口」とは、装置に浄化すべき空気を吸入する開口をいう。原則として矩形であることを想定するが、円形乃至多角形の開口を複数並べたものなどでも構わない。後者の場合、これら複数開口の包絡線で囲んだ面を排気開口ということとする。
「排気開口」とは、装置から浄化された空気を排出する開口をいう。原則として矩形であることを想定するが、円形乃至多角形の開口を複数並べたものなどでも構わない。後者の場合、これら複数開口の包絡線で囲んだ面を排気開口ということとする。
「排気開口上端」とは、面積をもった排気開口のうち、もっとも床表面からの距離の大きい位置にある部位をいう。
「排気開口床上距離」とは、装置を床上に設置した際の、排気開口上端と床表面との間の距離をいう。
「前面」とは、装置の表に当たる面、即ち、装置を運用する際に主として飛沫を吐出する者の居場所に装置を向ける面をいう。
「背面」とは、前記前面の裏にあたる面をいう。
「底部」とは、装置についていう場合には、本装置を床面に置いた状態を基準として、その床表面に対向する部位をいう。装置を構成する複数の部材が床表面に対向する場合には、いずれの部材についても底部を概念しうるものとする。
「上」は、本装置を床面に置いた際の状態を基準として、高い位置若しくは場所のことをいう。「下」も同様に、本装置を床面に置いた際の状態を基準として、低い位置若しくは場所のことをいう。
「床水平面」とは、本装置を床面に置いた際の状態を基準として、床面の拡がる面のことをいう。よって、特に傾斜のない通常の床上で使用する場合、床水平面方向は、水平方向と一致する。
(3. 課題を解決するための手段の説明)
次に、課題を解決するための手段について説明する。本発明は、床上に配置して室内空気を吸い込み、吸い込んだ空気を濾過して同じ室内に戻す空気清浄装置に係る。
(3.1. 請求項1に記載の発明について)
請求項1に記載の発明は、吸気開口と、フィルタと、排気開口と、送風機とを具備する空気清浄装置である。
吸気開口は、装置前面上方に設けられ、この周辺の空気を吸引するようになっている。
フィルタは、塵埃を除去することでこれを通過する空気の浄化をする。また、フィルタは、上記吸気開口から吸引された空気が通過できる位置に配される。これにより、吸気開口から吸引された空気を浄化するように作用する。
排気開口は、この装置の底部であって、かつ前面の下縁辺付近に設けられた開口である。装置内部で上記フィルタを通過して浄化された空気を室内に排出する門となっている。本装置を室内配置した場合には、排気する空気は、前記吸気開口から空気を吸引したと同じ室内空間となる。排気開口は装置底部に配されることで、吸気開口から離れたところに位置することになる。このことは、排気開口と吸気開口との間の気圧傾度を小さいものとすることになり、排気開口がこれより高い位置にある場合に比べて、吸気開口から同一の高さにある空間領域で気圧を低く保つように作用する。
送風機は、この装置内部に設けられ、前記吸気開口から空気を吸い込ませ、フィルタを通過させることでこれを浄化させ、更に浄化された空気を前記排気開口より装置外部に排出させるように作用する。これにより、前記吸気開口付近を負圧に、前記排気開口付近を正圧にするように作用する。
(3.2. 請求項2に記載の発明について)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気清浄装置について、その内部構造を特定したものである。具体的には、減圧室、吸気加速室、風向調整室を備える。そして、前記フィルタは、該吸気加速室から該減圧室に向かう空気流路に設けられ、空気を浄化するようになっている。また、前記送風機は、該排気用開孔部付近に設けられ該減圧室から風向調整室に空気を移送するようになっている。
減圧室は、パネル形状をなす空洞の筐体である。空洞なので、空気流路となるように作用する。また、パネル状なので、前面底部付近は直線状の縁辺が形成されている。減圧室は、前面上部に吸気用開孔部、前面下部に排気用開孔部を備える。即ち、パネル上の同一面に吸気用開孔部と、排気用開孔部とがそれぞれ設けられている。そして、吸気用開孔部はフィルタを介して後述する吸気加速室と、また、排気用開孔部は送風機を通して後述する風向調整室と通気するようになっている。
吸気加速室は、前記減圧室の前面側上部に形成され、前面に減圧室に設けられた吸気用開孔部の面積よりも狭い前記吸気開口を備え、前記吸気開口から吸入した空気を、フィルタを介して前記減圧室に開けられた該吸気用開孔部から排出するようになっている。
風向調整室は、前記減圧室の前面側下部にあって減圧室の排気用開孔部から空気が流入する位置に設けられ、減圧室から送風機の作用によって流入した空気を底部に導き、底部に設けた前記排気開口から排出するようになっている。
(3.3. 請求項3に記載の発明について)
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の装置について、更に装置の最下位置に、スペーサを具備する。
スペーサは、前記排気開口の前面縁辺と対辺との間の距離より前記排気開口の床上距離を長く確保するようになっている。排気開口の前面縁辺と対辺との間の距離と前面縁辺との積は概ね排気開口面積と一致する。また、排気開口の前面縁辺長と排気開口の床上距離との積は概ね装置下付近で前面方向に開いた面積と一致する。このため、排気開口の前面縁辺と対辺との間の距離より前記排気開口の床上距離を長く採ると、装置の底面から床面に渡る空隙で前面に拡がる面積と、装置の底面に配した排気開口の面積と、が概ね同等かそれ以上になることを意味する。よってこのスペーサは、排気開口から大きな抵抗なく空気が室内に排出されるように作用する。
(3.4. 請求項4に記載の発明について)
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の装置であって、前記吸気開口より下側で、床方向に拡がる斜面が形成されているものである。この位置で斜面を形成することは、排気開口を更に吸気開口から離れたところに位置させるように作用する。そして、排気開口と吸気開口との間の気圧傾度を、より小さいものとすることになる。即ち、排気開口がこれより高い位置にある場合に比べて、吸気開口から同一の低い位置にある領域で気圧を低く保つように作用する。
(3.5. 請求項5に記載の発明について)
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の装置であって、前記排気開口の形成について、排出される空気の最大速度となる風速ベクトルが設置床面方向の成分よりも設置床面に向かう成分が大きくなるようにしたものである。言い換えれば、排出される空気流線の最大速度をもつ方向が床法線に対して45度以下になるようにする。これは、前記排気流形成材上の下縁辺付近で気圧傾度低下を抑える作用がある。即ち、低下排気開口と吸気開口との間の気圧傾度を、更に小さいものとすることになる。言い換えれば、排気開口がこれより高い位置にある場合に比べて、吸気開口から同一の低い位置にある領域で気圧を低く保つように作用する。
(3.6. 各請求項の相互関係)
各請求項に記載の発明は以上の通りであるが、各請求項に係る発明相互関係の把握容易を図るため、関係表を掲げる。
Figure 2022162440000002
(1. 請求項1に記載の発明の効果)
請求項1に記載の発明によれば、吸気開口と排気開口との距離が最大限にとられるので、この間の気圧傾度が低く抑えられることになる。この結果、吸気開口からあまり離れていない広い空間領域を低い気圧に維持することになる。これは、周囲からこの空間領域に向かう気流を維持することを意味する。この空間領域が会話するひとの吐出した飛沫の現れやすいところにあたるようにすれば、効率的に飛沫拡散の抑制をすることができるようになる。勿論、このような場面以外でも、居室内の空気を浄化する空気清浄装置としての効果がある。
(2. 請求項2に記載の発明の効果)
請求項2に記載の発明によれば、コンパクトなパネル型の空気清浄装置を提供することができ、使い勝手がよく、効率的な飛沫飛散の抑制をすることができるようになる。特にこの脇に配置した机を囲んで複数人が会話をする場面で、効果がある。
(3. 請求項3に記載の発明の効果)
請求項3に記載の発明によれば、装置の底面から床面にかけて形成される空隙で前面に拡がる面積と、装置の底面に配した排気開口の面積とが、概ね同等かそれ以上のものとなり、設置場所によらず空気流量を確保することができるので、稼働時の性能を予測して設計することができるようになる。
(4. 請求項4に記載の発明の効果)
請求項4に記載の発明によれば、排気開口を更に吸気開口から離れたところに位置させ、排気開口と吸気開口との間の気圧傾度をより小さくすることができるので、吸気開口付近の空気領域空間を低気圧に維持することができ、この周囲の空間の吸気開口に向かう強い空気流を確保することがきる。
(5. 請求項5に記載の発明の効果)
請求項5に記載の発明によれば、装置底部に設けられた排気開口について、排出される空気の最大速度となる風速ベクトルが、設置床面の拡がる水平方向の成分よりも設置床面に向かう成分が大きくなるように形成される。これにより排気開口と吸気開口との間の気圧傾度をより小さくすることができるので、吸気開口付近の空気領域空間を低気圧に維持することができ、この周囲の空間の吸気開口に向かう強い空気流を確保することがきる。
図1は、実施の形態に係る空気清浄装置の外観図である。 図2は、実施の形態に係る空気清浄装置が使用されるシナリオ説明図である。 図3(A)は、低気圧と高気圧が自由空間中に点で存在する仮想状態1での等圧線図である。図3(B)は、自由空間中にある平面上に低気圧と高気圧が点で存在する仮想状態2での等圧線図である。 図4(A)は、自由空間中にある平面上に低気圧と高気圧が点で存在する仮想状態2での等圧線図である。図4(B)は、仮想状態2における低気圧と高気圧とを離した仮想状態3での等圧線図である。図4(C)は、仮想状態3から、更にその下方に床面が存する場合における仮想状態4での等圧線図である。 図5(A)は、仮想状態2から、更に装置正面に机を置いた仮想状態2-2での等圧線図である。図5(B)は、仮想状態4から、更に装置正面に机を置いた仮想状態4-2での等圧線図である。 図6(A)は、仮想状態2-2における机上での等圧線図である。図6(B)は、仮想状態4-2における机上での等圧線図である。 図7は、実施の形態に係る排出開口付近の風向説明図である。 図8(A)は、実施の形態に係る側面視点での部材構成図、図8(B)は、実施の形態の稼働時における側面視点での構成図である。 図9は、変形例における側面視点での構成図である。 図10は、実施の形態に係る排気開口付近の文言定義説明図である。 図11は、運転時の空気流路説明図である。
本願発明に係る実施の形態については、以下の目次に従って説明する。
―――――― 目次 ――――――
(1. 図面の表記)
(2. 実施の形態について)
(2.1. 実施の形態に係る装置が使用されるシナリオ)
(2.2. 装置外における空気流路の形成に関する説明)
(2.2.1. 気流に対する高圧点・低圧点の離間距離の影響について)
(2.2.2. 本装置への高圧点の実装について)
(2.3. 実施の形態に係る構成)
(2.3.1. 外観概要の説明)
(2.3.2. 構成部材の説明)
(2.3.3. 構成部材を組み立てた際に形成された空間の説明)
(2.4. 実施の形態に係る動作)
(3. 実施の形態に係る変形例について)
(3.1. 吸込口グリル)
(3.2. 風向調整室の排気開口高さに係る調整)
(3.3. 排気風向強制フラップ)
(3.4. 操作パネル)
(3.5. フィルタの目詰まり確認)
(3.6. 排気開口から排出される空気流の床表面に対する角度について)
(3.7. 一部の部材の成型について)
(3.8. プレフィルタの設置位置の変形例)
―――――― 本文 ――――――
(1. 図面の表記)
以下の説明で図面中の符号は、下2桁を除く先頭の数値が図面番号を表す表記を採り、可読性向上を図った。また、異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番した。たとえば、同じ机を参照する場合であっても、「机(210)」ならば図2を、「机(510)」ならば図5を、主として参照する。
(2. 実施の形態の説明)
本願発明に係る実施の形態(以下、「本装置」という。)について説明する。
(2.1. 実施の形態が使用されるシナリオ)
本装置は、ひとが机を囲んでコミュニケーションをとるような、飛沫感染が懸念される場面で使用されることを想定している。このため、本装置は特に机の脇に配置して使用する場面に好適なものとなっている。このシナリオについて、図2を用いて説明する。
図2に示すように、本装置である空気清浄装置(209)は、机(210)の脇に配置されると、机の前に着座するひとの頭の高さ付近に吸気開口(203)が、また床面付近の装置底面かつ前面縁辺付近に排気開口が、それぞれ位置するようになる。これにより、机の前に着座するひとが吐出した飛沫が机上水平中央付近に集まるとともに、集まった空気を吸気開口から吸い込む気流経路が形成され、浄化効率が高まることを図っている。
(2.2. 装置外における空気流路の形成に関する説明)
本節では、図3乃至図6を用い、装置が装置外で形成する空気流路乃至流線について説明を試みる。なお、本節で参照する図面に表した等圧線等は定性的に捉えたものであって、現実に測定をすると、部屋の構造、什器の配置、気温、物体表面の粗密状態、並びにその他の要素によって大きく変わりうる性質があることを付言する。
(2.2.1. 気流に対する高圧点・低圧点の離間距離の影響について)
本来、空気流線について厳密な分析を行うのであれば流体力学を基調としてベクトル解析を行うべきであろう。しかし、ひとが吐出する飛沫は微小で流線に影響を与えにくいこと、並びに等圧線の込んでいるところでは気流が速いことを意味するなど視覚的かつ多角的に理解できることなどから、気圧分布に着目し、等圧線を手掛かりに考察を進めることとする。
ここでは、はじめに自由空間中に2点の高圧点・低圧点が存在するところを想定し、その空間に徐々に気流を抑制する要素を加えていったときの気流の変化を考察し、この順で等圧線の変化をみていくことにする。
[仮想状態1]
まず、図3(A)に示すように、自由空間中にひとつの低圧点(311)と、ひとつの高圧点(312)とが現れた「仮想状態1」を考える。この場合、高圧点で発散、低圧点で収束が起こる。
ここに表されている縞模様が、いわゆる等圧線である。自由空間であることから、高圧点から低圧点に向かって直線で結ぶ経路で、等圧線が込み、最も強い気流が現れることになる。また、周囲は遠ざかると次第に大気圧に近づくことから、等圧線は双曲線様になり、高圧点・低圧点から離れると間隔が疎になっていく。
[仮想状態2]
ところが、図3(B)に示すように、直方体状の一枚のパネル(317)の前面で、長辺のうち両短辺端からそれぞれ1:2に内分する位置付近に高圧点(316)、低圧点(315)が現れた「仮想状態2」を考えると、等圧線の様子が一変する。即ち、平板上は空気粘性によって流速が低下することから、平板から離れたところで高速流路(318)が出来上がることになる。
[仮想状態3]
次に、高圧点と低圧点との距離を伸ばした「仮想状態3」の場面について図4を用いて考察する。図4(A)に示す高圧点(420)と低圧点(419)とでの気圧をそのままにして、高圧点を更に図面下方向に移動させ、両点の距離を図4(B)に示すように離した場合には、もとの高速流路における等圧線の間隔は拡がっていく。
[仮想状態4]
しかしその一方で、高圧点・低圧点の距離は仮想状態3のままとして、高圧点(421)が平板端点(422)に置かれ、かつ床表面(423)が追加されたとすると、高圧部を中心とした等圧線は潰れたようになる。これは板面と同様に、床表面の摩擦と空気の粘度とをパラメータとして、床面上では風速が低下することに由来する。
[仮想状態2-2、4-2]
ここで、高圧点と低圧点との間に、更に机(510)を置いた状況を考察する。机も平板状を基礎としているので、上記のパネル(317)同様、その表面では摩擦と空気の粘度とをパラメータとして風速が低下し、気圧傾度は低くなっていると推測される。そうすると、高気圧点・低気圧点が仮想状態2のままであった場合には図5(A)に、また高気圧点・低気圧点が仮想状態5の状態にあった場合には図5(B)に図示する如く、机上面(524)では概ね表面に沿うような等圧線が描かれることになる。
ここで仮想状態2-2と、仮想状態4-2とを比較する。仮想状態2-2は、パネル前面の長辺のうち両短辺端からそれぞれ概ね1:2の内分点付近に高圧点(316)、低圧点(315)が置かれたものであり、机上の気圧も、概ね大気圧と同値になっている。これに対し、仮想状態4-2では、机上全面に渡って大気圧より低い気圧を維持できるようになっているのがわかる。
これは、仮想状態2-2でも仮想状態4-2でも、低圧点と机との距離は一定であるにも拘わらず、仮想状態4-2では高圧点が離れたところにあるために、その間の気圧傾度が小さいからである。加えて固定物の表面での空気粘性による摩擦の効果によって固定物の表面での空気の移動は少ないので、図示したような等圧線が描かれることになる。
さて、ここまでは高圧点・低圧点が存在するものとして考察してきた。次に、装置に実装したときの机上の気圧分布を考察する。
一般に高気圧・低気圧を現実化するには、ポンプ乃至ファンを用いる。このうち本装置においてはファンに代表される送風機を用いる。そして、空気流路は点として存在することができないので、窓としてこれを装置に実装することになる。現実には後述する吸気開口が低圧点、また、排気開口が高圧点に代わるものとなる。後に詳述する本実施の形態では、第1図に示すように、排気開口・吸気開口は横長の開口部として実装するので、これを前提として、机上の気圧分布を説明する。ただし、机上直表面では空気の粘性と強い摩擦が影響し、空気流量は殆どないので、ここでは机上数cm程度上方での気圧分布について考察する。
机上数cm程度上方の仮想平面では図6に示すような気圧分布となることが期待される。すなわち、上記仮想状態2-2では、机付近がほぼ大気圧と同値であるために、気圧傾度は小さく、空気の動きは僅かであると考えられる。これに対し、仮想状態4-2では、机上中心付近での気圧が低い一方、机周囲では大気圧に近い気圧となることから、この仮想平面での気圧傾度は大きく、机中心方向に向かう強い風を期待することができる。机上でこのような強い風があれば、机の前に着座したひとの吐出する飛沫もこの風に乗って効率的に吸収することが期待できる。
(2.2.2. 本装置への高圧点の実装について)
以上説明したように、高圧点と低圧点とを大きく離隔した装置であれば机周辺の空気をより強く吸引することが可能となる。もっとも、高圧点と低圧点との距離に留まらず、高圧点の実装における工夫によって更に机周辺の気圧分布を調整できることが見込まれる。これを、図7を用いて説明する。
上述の通り、高圧点を実装するにあたっては一定の面積をもった排気開口が必要となる。風が強く吹くところでは気圧傾度が大きく、風が弱いところでは気圧傾度が小さいという関係に着目すると、この排気開口から噴き出す風の方向が装置外界の気圧分布に影響することは当然である。
即ち、空気清浄装置(709)の下部前面縁辺に設けた排気開口(707)から噴き出す排気(794)風向と装置を設置する床表面の法線とのなす角度(735)が鋭角あれば、それだけ床との間の気圧傾度が大きくなり、これは即ち、装置前面で大気圧となる高さが低くなることが理解できる。一般に水平面は設置床(723)と略一致することから、装置に実装する際、高圧となる開口が底面になっていれば、主たる排気風向が床面に向かうことになり、机付近を更に低圧に抑えることができると推定される。
即ち、排気開口周辺の構造が、排気を排気開口面の法線方向に噴き出すようになっていて、かつ結果としてこの法線が床面となす角度が45度を超えるようになっていれば、机付近の低圧化に寄与することになるのである。
以上のことから、装置の設計実装にあたっては、
(1) 排気開口と吸気開口とができるだけ離れていること、
(2) 排気開口から吹き出す風について、床面方向への成分が大きいこと、
が重要な点となるわけである。
(2.3.実施の形態に係る構成)
上記の考察を踏まえて、本発明の実施の形態にかかる空気清浄装置(109)のうち、その構成を説明する。ここでは、主として図1を用いて外観を、また主として図8を用いて内部構造を説明する。
(2.3.1. 外観概要の説明)
空気清浄装置(109)は、図1に示す通り、概ね直方体の外観をなしていて、後部に減圧部(101)、減圧部の前面上部に吸気加速室形成材(105)、減圧部の前面下部に排気流形成材(106)を備える。また、吸気加速室形成材(105)中央付近、即ち装置上部前面に吸気開口(103)が、また、排気流形成材(106)の底部付近、即ち装置下部に排気開口(107)がそれぞれ設けられている。空気清浄装置(109)は、吸気加速室形成材(105)、吸気加速室形成材外周スペーサ(149)、排気流形成材(106)、排気流形成材側辺スペーサ(148)、並びに減圧部(101)等で仕切られることで、内部に減圧室(147)、吸気加速室(145)、風向調整室(146)が形成されるようになる。以下、これらについて分説する。
(2.3.2. 構成部材の説明)
[吸気加速室形成材/吸気加速室形成材外周スペーサ]
吸気加速室形成材(105)は、矩形板状の部材であって、装置の概ね前面中央上部に位置するところに吸気開口(103)が設けられている。また、減圧部(101)上部に取り付けられた操作パネルに手が触れられるように、前面上部付近に操作パネル用開口(102)が設けられている。なお、後述するように操作パネル用開口(102)の周囲には空気漏れを抑えるため、減圧部(101)との間で図示しないシール材を設けることが望ましい。
また、吸気加速室形成材(105)の4辺縁端部付近に減圧部から一定の距離をとるための吸気加速室形成材外周スペーサ(149)が設けられ、これが減圧部(101)前面に当接し、減圧部と吸気加速室形成材(105)との間に吸気加速室(145)が形成されるようになっている。
[吸気開口]
吸気開口(103、803)は、吸気加速室形成材(105)中央付近に備わる開口部であって、動作時には、装置の上部付近に位置し、装置外部から内部に空気を吸いこむことができるようになっている。床上に配置して装置を運転する際には、吸気開口(103)は概ね1m程度の高さに位置するようにするのが望ましい。本装置の前面でひとが着座して会話をする際に吐出した飛沫などを吸い上げるように作用するからである。本装置設置時の吸気開口部の高さ設計を行うには、前記[非特許文献1]に掲げた「埼玉県/平成15年度学校保健統計調査調査結果の概要」が参考になる。
吸気開口(103,803)は単孔であってもよいが、安全のため、パンチ板を備えて、内部への人手の接触を防ぐようにするのが望ましい。これは保安のためであるので、パンチ板でなくても、メッシュ板、グリルなど、他の構成をとるものであっても構わない。
吸気開口(103,803)の形状は、横長の矩形としても十分であるが、円形乃至多角形の開口を複数並べたものなどにしても構わない。後者の場合、これら複数開口の包絡線で囲んだ面全体が吸気開口として機能する。
複数の開口とし、各開口にグリルを付せば、様々な方向について集中的な空気の吸い込みをすることができるようになる。この場合、装置外界空間中に複雑な什器の配置がされても適切な吸気をすることができるようになる。
また、後述する吸気加速室の項で説明する通り、吸気開口の面積を調整することによって吸気の風速を調整することができるので、開口に付するパンチ板を交換可能とすることにより、開口率を変更したり、開口率の異なるパターンを分布させてみたりすることで様々な机形状のシーンに対応することができるようになる。
ところで万が一、吸気開口(803)直近にひとがいるときを想定すると、装置内部に頭髪を引き込んでしまう虞がある。引き込まれた頭髪は吸気加速室内で留まるであろうが、それでも一旦引き込まれた頭髪を再び引き出すのは好ましくないので、吸気開口(803)付近にこれを防止する機構があることが望ましい。
そこで、本装置の吸気開口(103,803)にはまた、プレフィルタ(837)を設けている。プレフィルタはたとえば粗い多孔質材による空気清浄フィルタであって、頭髪・糸くずなど比較的大きな塵埃の侵入を妨げるようになっている。
たとえば吸気開口(803)にパンチ板を備えている場合には、パンチ板の装置内側面にプレフィルタを接して設けることになる。これにより頭髪の装置内部への引き込みを防止することができるようになる。一方、この位置は後述するメインフィルタ(838)の風上側にあたる。メインフィルタ(838)は、微小塵埃を捕獲して除去するところであるが、空気清浄フィルタとしてこのような2段構造を採ることによって、メインフィルタの除塵負担を軽くすることができ、装置としての除塵性能の維持を図ることができるようになる。
[排気流形成材/排気流形成材側辺スペーサ]
排気流形成材(106,806)も、概ね矩形板状の部材である。4辺のうち、運用時に両側並びに上部となる3辺の縁端部付近に減圧部から一定の距離をとるためのスペーサが設けられ、これが減圧部(101)に当接するようになっている。
排気流形成材(106,806)には、4辺全てに渡って密閉するためのスペーサを付するわけではない。上辺・側辺にあたる位置にはこれらの辺に沿ったスペーサが設けられるが、底辺となる縁辺端部では全く設けないか、一部を欠くスペーサを設ける。
これにより減圧部表面と排気流形成材(106,806)との間に風向調整室(146,846)が形成されるとともに、排気開口(107,807)が形成されることになる。なお底辺部に一部を欠いたスペーサを置いたときには、その形状によって、風向調整室(146,846)からの排気風向(194)をすることができるようになる。
以上のようにすることで、装置の概ね底部縁辺に位置するところに排気開口(107,807)をもった風向調整室(146)を形成することができる。
なお、排気流形成材(106,806)に付されるスペーサのうち、両側に置かれる排気流形成材側辺スペーサ(148,848)は、底辺に向かって拡がるような形状とし、排気流を底部付近の排気開口から空気流が円滑に排出されるようにするのが望ましい。
[減圧部]
減圧部(101)は、内部が空洞の直方体状の筐体を基調とし、内部を負圧にすることができるようになっている。この点、図8を用いて説明する。
減圧部(801)には、空洞の筐体の同一の面に、少なくとも2つの開口部を有し、上部開口部(856)の筐体外部を負圧に、下部開口部(839)の筐体外部を正圧にできるように、少なくともひとつの送風機(857)を備えている。空洞の筐体なので、内部に必要な制御回路等を配置できるようになっている。
送風機(857)は、減圧室(847)に付設され、減圧室に設けられた2つの開口部間で空気流が生じさせることができる。送風機は、減圧部をパネル形状に収めるレイアウト上の理由から、たとえばターボファンを用いるのが好ましい。
なお、送風機(857)の配置位置については下部開口部付近がレイアウト上好適であるが、ここに限らず、吸気加速室から風向調整室に至るまでの空気流路を形成するのであれば、どこに配しても構わない。
また、減圧部の上部開口部付近にはメインフィルタ(838)を付設する。メインフィルタ(838)は、たとえばHEPAフィルタやULPAフィルタなどを用いて、微小塵埃を捕獲して除去する。
ここで、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、JIS Z 8122 2000の規格で示される通り、定格流量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集効率を持ち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタのことである。
また、ULPAフィルタ(Ultra-Low Penetration Air Filter)とは、定格流量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集効率を持ち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタのことである。
飛沫感染防止を主たる目的として本装置を使用するのであれば、HEPAフィルタを実装すれば足りる。
[排気開口/排気空間形成スペーサ]
排気開口(107)は、排気流形成材下端付近に設けられるところ、前記(2.2. 装置外における空気流路の形成に関する説明)の通り、出来る限り吸気開口との距離をとりたいところである。もっとも排気開口をあまり床面直上にまで寄せると空気が排出されなくなり、空気流量が低下してしまい、高圧部の形成に不利になる。そこで、床面と排気開口とは一定以上の距離を確保しておく必要がある。本装置では形状上の特徴により気圧傾度を低く抑える点を重視するため、設計時の排気開口からの風速が維持できるような、排気開口床上距離とすることが望ましい。
これを実現するため本装置では最下部にスペーサを配置すればよい。具体的には、本装置のなかでも単体重量が大きい減圧部の底部付近に排気空間形成セパレータ(108-1,108-2)を配することで、本装置の設置安定を図るとともに、設計通りの風速を確保することができる。
この点を、図10を用いて詳述する。設計通りの風速/気圧を確保するためには、ベルヌーイの定理に従い、排気開口より外部においてこれより狭い空気流路が形成されてしまう状況を避ければよい。具体的には、排気開口床上距離(193)を十分に確保して装置前面で排気開口より広い空間を確保できるようにすればよい。
送風機から排気開口までは排気流形成材とスペーサとによって封鎖されているので、送風機で生成された正圧の空気は、排気開口に到達し、ここから排気として外部に流れ出ることになる。排気開口(1007)は、長辺が排気流形成材の底辺長未満の長さ、また短辺が排気開口奥行幅(1092)の長さを持った矩形状であるとすると、この開口面積を通過する空気の流量はこれよりも広い通過面積の場所であれば円滑に流れることが可能となる。排気開口から出た空気が装置底部前面から抜ける空気流路を考慮すると、円滑な空気流路を確保するには、装置底部前面の空隙の面積が排気開口よりも大きい面積を持てばよいことになる。この空隙面積と排気開口とは概ね同じ長辺をもつことを考慮すると、排気開口床上距離(1093)が排気開口奥行幅(1092)より長ければよいということである。即ち、排気空間形成スペーサ(108-1、108-2)の高さは排気開口奥行幅(1092)より大きければよいわけである。なおここで、排気流形成材・排気流形成材側辺スペーサなどを固定するために固定しろ(1071)を設けた場合には、これも含めて排気開口床上距離(1093)を採ることができる。
また、排気空間形成スペーサ(108-1、108-2)に、キャスターを取り付けることにより、装置自体の設置位置を稼働自在にすることができるようになる。
なお、ここでは排気開口(107)が矩形状であることを前提として説明したが、他の形状の開口でも同様となる。
[操作パネル]
操作パネル(855)は、減圧部(801)の前面に設置し、吸気加速室形成材(105)前面に設けた操作パネル用開口(102)から、直接に人手によって操作することができるようになっている。操作パネルには、送風機(857)のON/OFF、送風機による負圧生成程度の調整ができるようになっている。勿論、送風機が動作する時刻の設定タイマーなどを設置してもよい。操作パネルでの被操作部品は図示しない制御回路に接続し、送風機の動作を制御するようになっている。
(2.3.3. 構成部材を組み立てた際に形成された空間の説明)
前節で説明した各部材を組み立てると、少なくとも、吸気加速室(845)、減圧室(847)、風向調整室(846)、を含む3つ空間が形成される。以下、これらについて図8、特に図8(B)を用いて説明する。
[減圧室]
上記の通り、減圧部(801)筐体が内側に形成した空間、即ち、吸気流生成部とでも呼ぶべき減圧室(847)は、本装置の背面側に位置して形成され、上部開口から下部開口方向への空気流を生成するようになっている。
[吸気加速室]
吸気加速室(845)は、吸気加速室形成材(805)、吸気加速室形成材外周スペーサ(849)、減圧部(801)前面、並びに操作パネル開口シーリング(159,859)によって囲まれた空間であって、ここはプレフィルタ(837)・メインフィルタ(838)を介して減圧室(847)と、並びに吸気開口(803)を介して装置外界とに通気するようになっている。
ここで、減圧部に連接する上部開口部(856)の面積が吸気開口(803)の面積より大きいときには、連続の方程式に従って、フィルタを通過する空気流の速度より吸気を加速させることができるようになる。一般に打ち合わせコーナなどで用いる机の幅が90cm~1m程度とすると、吸気開口については、(横)65~75cm ×(縦)8~10cm程度の矩形状にすると適切な吸気流路が形成され、好適である。
[風向調整室]
風向調整室(846)は、排気流形成材(806)、減圧部(801)前面、並びに排気流形成材側辺スペーサ(148,848)などによって囲まれた空間であって、送風機によって加圧された空気が出口を求めて流れるようになっている。このため、唯一の空気の出口となる排気開口(807)から排出されることになる。
ところで、送風機は風向調整室(846)側を高圧にするが、これは送風機を通過する空気塊に運動量を与えることで実現する。よって、風向調整室でエネルギーロスを抑えるためには、この運動量の方向を素直に変えることに意義がある。このため、本装置では、風向調整室の装置前面側にあたる排気流形成材(806)は、装置設置時に、空間が底に向かって拡がる斜面となるようにするのが望ましい。
このような斜面があると、空気流は断面が拡がる方向に向かい、運動量の方向変換が素直にされるばかりでなく、装置外面においても幾何的に吸気開口と排気開口との離隔距離を拡げることになり、装置前面に配置された机上で空気流を維持するためにも有利となる。
排気流形成材(806)によって本装置にこのような斜面を形成するには、排気流形成材側辺スペーサ(848)の形状を底に向かって拡がるような台形状にすれば足りる。
(2.4.実施の形態に係る動作)
次に本装置の動作について、主として図8を用いて、簡単に説明する。
(2.4.1. 装置内での空気の移動)
まず、操作者が操作パネル(855)から本装置運転の指示を出すと、図示しない制御回路によって送風機(857)を稼働させる。これにより、減圧室(847)内の気圧を降下させる。
減圧室の気圧降下によって、減圧室は、プレフィルタ(837)・メインフィルタ(838)を通して吸気加速室(845)内の空気を吸入するようになる。この際、減圧室の上部開口部(856)の面積と前面の吸気開口(803)の面積との比率が1未満であれば、上部開口部(856)より減圧室により流入する空気より大きな風速で外気を取り込むことになる。取り込んだ外気はプレフィルタ(837)・メインフィルタ(838)を通るので、減圧室に入った空気は浄化されたものとなっている。
プレフィルタ(837)・メインフィルタ(838)を通して浄化された空気は、送風機(857)の作用により、減圧室(847)内でダウンフローとなり、更に減圧部(801)下部にある下部開口部(839)を通って風向調整室(846)に入る。
風向調整室(846)に入った空気は送風機の作用によって正圧になっているので、連続の方程式に従い、そのまま排気開口(894)から排出されることになる。排出された空気はその付近の外気を動かしていくことになる。
(2.4.2. 装置外での空気の移動)
前記の通り本装置は吸気開口から排気開口に向かって空気流を作りだす。これに対応して装置外部では排気開口から出た空気が室内を循環して吸気開口から再び流れ込むような循環を行うことになる。この点について、図11を用いて説明する。これは図2で示した使用シナリオでの気流を示した図である。
排気開口から排出された空気は、机の下の空間から流れ出ることになる。吸気開口(1103)から離れた位置から排出されているので、机上面の空間の広い領域に渡って気圧傾度が小さいものの大気圧より低い気圧が保たれ、微風ながら、ひととひととの間の空間を経路とする気流(1162,1163,1166)が保たれる。
一方、装置とは反対側の机縁辺から回り込む気流(1164)は、大気圧との差が少なく、流量が少なく抑えられることになる。
図2若しくは図11にように、ひとが机を囲んで向かい合って話す状況では、吐出した飛沫は各人の前方に拡散して進行する。即ち、どのひとからも机中央に向かって飛沫が飛ぶことになる。吐出した飛沫の粒径は様々であるものの、吐出直後から表面からの水分昇華が始まる。粒径の小さい飛沫は軽く、そのまま本装置の吸気開口に向かうことになる。粒径の大きい飛沫は重く、昇華しきれないままに机中央方向に向かって落下を始めるが、机の中央付近ほど上昇する気流が形成されているので、適度な昇華とともに、気流に乗る重さになったものはここから上昇に転じて本装置の吸気開口に向かうことになる。
本装置は、このように動作するので、飛沫拡散の低減に寄与することになるのである。
なお、上記は机を設置した場合を考慮して説明を進めたが、[仮想状態4]でも示した通り、机がなくとも装置前面の気圧傾度は小さいので、広い範囲で負圧を保つ。このようなシーンにおいても、適切な飛沫処理効果を期待できる。
(3. 変形例その他)
(3.1. 吸込口グリル)
上記実施の形態においては吸気開口に網目板乃至パンチ板を付設したが、複数の羽根を設け吸気流に指向性を持たせるようにしてもよい。これにより机上の気圧傾度分布を変えることが可能になる。
また、このような複数の羽根をグリル枠に半固定とすることで、吸気流の指向性を自由に変えることができ、近接設置する机の形状に自在に対応可能となる。
さらに、複数のグリルをユニット化し、吸気開口に着脱自在とすることで、近接設置する机を取り替えたときに、迅速に対応することができるようになる。
(3.2. 風向調整室の排気開口床上距離に係る調整)
風向調整室は、送風機から排気開口に至る緩衝室であって、前述の通り、連続の方程式に基づき、部材接続部などでの空気漏れがない限り、送風機で移動した空気はそのまま排気開口から排出される。そしてスペーサの高さと送風機の風量調整によって本装置が循環させる空気量は装置設計時に決めることができる。
本装置での排気開口位置は、図9(A)(B)に示すように排気流形成材下端の高さによって変わる。減圧部の形状も含め、排気開口位置を変更する必要が生じた場合であっても、排気流形成材の高さに応じて排気空間形成スペーサ高(952)を合せればよいので、設計の自由度を維持することになる。たとえば風向調整室の外被となる排気流形成材等の部材材質を変更するときなど、固定しろ(1071)の幅をあわせて変更する必要が生じることがある。このような場合の設計変更が容易になるのである。
(3.3. 排気風向強制フラップ)
本装置は室内に設置して、装置底面付近の一部乃至全面からの排気を行うが、設置場所によっては、背面が部屋の隅に位置する。部屋の隅には塵埃が集積しやすいので、本装置が塵埃を舞い上げる虞がある。これに対処するには、背面に吹き込む気流を制限するために、排気開口の後面付近に図9(C)に示すようなフラップ(951)を設ければよい。
(3.4. 操作パネル)
吸気加速室形成材(105)に設けた操作パネル用開口からの不要な空気漏れ防止のため、吸気加速室形成材(105)前面に操作パネルを設け、ここから電気配線を減圧室に接続するようにしてもよい。
ところで、本装置では操作パネルを装置前面に配置している。勿論、これを装置側面に配置するという設計上の選択肢はある。しかし、本装置は装置前面に机を配置することを前提としていたところ、より大きな机を置いた会議シーンでも使用したいときがある。そのようなときには、本装置複数台をサイド・バイ・サイドに並べることができる。そのような使用態様を想定すると、装置前面に操作パネルを配置する方が全ての装置の操作をする際に有利である。
(3.5. フィルタの目詰まり確認)
前述のとおり、メインフィルタの前にプレフィルタを設けてあり、大きな塵埃によるメインフィルタの目詰まりは起こり難いが、一方、プレフィルタがあるために、メインフィルタがどの程度目詰まりしているのかが視認しにくい憾みがある。このため、操作パネルに、気圧差計を付設して、減圧室と外気、若しくは減圧室と吸気加速室の気圧差が一定以上になったときにはメインフィルタの交換時期である旨を知らせるようにすると、メンテナンス容易性が向上する。
(3.6. 排気開口から排出される空気流の床表面に対する角度について)
前記(2.2.2. 本装置への高圧点の実装について)記載の通り、排気開口から排出される空気は床表面に対して45度以下となるのが望ましい。この角度については、風向調整室を形成する排気流形成材(106)が床表面となす角、並びに風向調整室(146)内での下部開口部(839)の位置との関係に負うところが大きい。このため仮に気開口から排出される空気は床表面に対して45度未満となった場合には、排気が45度以上となるように強制するために、排気開口に複数の半固定羽根よりなるフラップグリルを配してもよい。
(3.7. 一部の部材の成型について)
上記各説明において、吸気加速室(145)について吸気加速室形成材(105)と吸気加速室形成材外周スペーサ(149)とは別部品として説明したが、これに限らず、板金折り曲げなどにより一体成型したものであっても構わない。また、風向調整室(146)についても同様に、排気流形成材(106)と排気流形成材側辺スペーサ(148)、並びに上縁辺に付するスペーサについても一体成型して構わない。
(3.8. プレフィルタの設置位置の変形例)
保安性の観点からは、図8に示すように、プレフィルタ(837)を吸気開口の直後に、またメインフィルタ(838)を上部開口部(856)の直後に配するのが望ましい。
もっとも、直方体様のプレフィルタでは全面で吸気排気をした方がフィルタでの圧力損失が低減することを考慮すると、プレフィルタとメインフィルタ両者とをまとめて一体モジュールとし、これを上部開口部(856)の直後に配するなどしてもよい。ただしこの場合には保安性を維持するため、薄くてもよいので、別途空気抵抗が少ない粗い多孔質フィルタなどを更に吸気開口に設けるなどするのが望ましい。
また、装置の薄さを重視する場合にはプレフィルタを上部開口部(856)と吸気加速室形成材(805)とで挟みこむように把持させてもよい。
(4. 請求項と実施の形態の対応)
請求項1に記載の「フィルタ」は、前記(2.3.3. 構成部材を組み立てた際に形成された空間の説明)に記載したメインフィルタ(838)に対応する。
請求項2に記載の「吸気用開孔部」は前記(2.3.3. 構成部材を組み立てた際に形成された空間の説明)に記載した上部開口部(856)に対応する。「排気用開孔部」は同じく前記(2.3.3. 構成部材を組み立てた際に形成された空間の説明)に記載した下部開口部(839)に対応する。
請求項5に記載の風速ベクトルを床面に向かう成分を大きくする形成は「排気形成材」、若しくは前記(3.6. 排気開口から排出される空気流の床表面に対する角度について)に示した「排気形成材」と「フラップグリル」とが対応する。
その他、本願各請求項と本明細書に記載した実施の形態とは概ね同一の名称を用いている。もっとも、各請求項の解釈は[課題を解決するための手段]の欄に記載したものに従うものであって、各実施の形態に記載した各部材の位置関係・部材の形状は勿論、複数の部材を一体化して構成したか否かなどについても、この記載に限るものではない。
以上説明してきたように、本発明は空気清浄装置に係り、飛沫感染の虞がある会議シーンでの利用が可能である。
図面中の符号は先頭の数値が図面番号を表す。異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番して、可読性向上を図っている。
101 減圧部
102 操作パネル用開口
103 吸気開口
105 吸気加速室形成材
106 排気流形成材
107 排気開口
109 空気清浄装置
145 吸気加速室
146 風向調整室
147 減圧室
148 排気流形成材側辺スペーサ
149 吸気加速室形成材外周スペーサ
159 操作パネル開口シーリング
193 排気開口床上距離
194 排気風向
203 吸気開口
209 空気清浄装置
210 机
311、315 低圧点
312、316 高圧点
317 パネル
318 高速流路
419 低圧点
420 高圧点
421 高圧点
423 床表面
510 机
524 机面
707 排気開口
709 空気清浄装置
723 設置床
794 排気
801 減圧部
803 吸気開口
805 吸気加速室形成材
806 排気流形成材
807 排気開口
837 プレフィルタ
838 メインフィルタ
839 下部開口部
845 吸気加速室
846 風向調整室
847 減圧室
848 排気流形成材側辺スペーサ
849 吸気加速室形成材外周スペーサ
855 操作パネル
856 上部開口部
857 送風機
859 操作パネル開口シーリング
894 排気開口
951 フラップ
952 排気空間形成スペーサ高
1007 排気開口
1092 排気開口奥行幅
1093 排気開口床上距離
1103 吸気開口
1162~1166 気流

Claims (5)

  1. 床上に配置して室内空気を吸い込み、吸い込んだ空気を濾過して室内に戻す空気清浄装置において、
    該空気清浄装置前面上方に配された吸気開口と、
    該吸気開口から吸い込まれた吸気を浄化するフィルタと、
    該装置前面下縁辺付近かつ該空気清浄装置の底部に配され、該フィルタによって浄化された空気を排気する排気開口と、
    該吸気開口付近を負圧に、かつ該排気開口付近を正圧にする送風機と、
    を具備することを特徴とする空気清浄装置。
  2. 前面上部に吸気用開孔部、前面下部に排気用開孔部を備えるパネル状の減圧室と、
    該減圧室の前面側上部に設けられ、前面に該吸気用開孔部より面積の狭い前記吸気開口を備え、前記吸気開口から吸入した空気を該吸気用開孔部に排出する吸気加速室と、
    該減圧室の前面側下部にあって該排気用開孔部から空気が流入する位置に設けられ、該流入した空気を導き、底部に設けた前記排気開口から排出する風向調整室と、
    を具備し、
    前記フィルタは、該吸気加速室から該減圧室に向かう空気流路に設け、
    前記送風機は、該排気用開孔部付近に設け、該減圧室から該風向調整室への空気流を生成すること、
    を特徴とする請求項1に記載の空気清浄装置。
  3. 該空気清浄装置の最下位置に、前記排気開口の前面縁辺と対辺との間の距離より前記排気開口の床上距離を長く保つスペーサ、
    を具備することを特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。
  4. 前記空気清浄装置の前面は、前記吸気開口より下側で、床方向に拡がる斜面が形成されていること、
    を特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。
  5. 前記排気開口は、排出される空気の最大速度となる風速ベクトルが設置床水平方向の成分よりも設置床面に向かう成分が大きくなるように形成されていること、
    を特徴とする請求項2に記載の空気清浄装置。

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