JP2022159422A - タウタンパク質凝集阻害用組成物 - Google Patents

タウタンパク質凝集阻害用組成物 Download PDF

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伸哉 富貴澤
Shinya Fukizawa
二郎 高野
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Abstract

【課題】タウタンパク質凝集阻害活性を有しており、安全性の面で優れ、中枢移行性の観点で望ましい適度に高い脂溶性を有する食品成分を含むタウタンパク質凝集阻害用組成物を提供する。【解決手段】食品由来成分である特定の化合物が、タウタンパク質凝集阻害作用を有することを見出した。本発明は、タウタンパク質の凝集阻害に基づき、アルツハイマー型認知症等の神経変性疾患の治療又は予防等に資する、効果的かつ新たな手段を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、タウタンパク質の凝集を阻害するための組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は、所定の化合物を含有することを特徴とするタウタンパク質凝集阻害用組成物に関する。
認知症は、正常であった記憶や思考などの能力が脳の病気や障害のために低下していく障害である。認知症には年齢を重ねるほど罹患しやすくなり、日本国内では、65歳以上70歳未満の認知症の有病率は1.5%、85歳では27%に達すると言われている。そのため、今後さらなる高齢化社会をむかえる日本では認知症は大きな社会問題となっている。
認知症にはいくつかの種類があり、そのうちアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)や前頭側頭葉変性症の一部の疾患では、脳内にタウタンパク質が沈着することが知られている。タウタンパク質は神経軸索内に存在する分子量約5万の微小管結合タンパク質であり、通常は、細胞内のタンパク質輸送や細胞内小器官輸送機能を有する微小管を構造的に安定化させている。
これまでの研究報告から、アルツハイマー病で見られる神経原線維変化は、タウタンパク質が不溶性の線維状の凝集体を形成し、その凝集体が神経細胞内に蓄積されたものであることがわかっている。また、17番染色体に連鎖する家族性前頭側頭型認知症パーキンソニズム(FTDP-17)の患者に見られるタウ遺伝子の変異は、タウタンパク質の凝集と神経細胞死とを誘発することが知られている。
また、in vitroでタウタンパク質の凝集阻害活性を示した化合物をヒトタウ遺伝子過剰発現マウス(P301L tau-Tgマウス)に投与したところ、当該化合物が、マウス脳内で観察されるタウタンパク質の凝集及び神経細胞数の低下を抑制したとの報告もある(非特許文献1)。この研究報告では、当該化合物はタウタンパク質のシステイン残基の硫黄基への結合を介してタウタンパク質間のジスルフィド結合を抑制し、タウタンパク質の凝集を阻害することで神経毒性を改善できる可能性があることが示されている。
このように、タウタンパク質の凝集は神経細胞への毒性をもたらすものと考えられている。タウタンパク質の凝集はリン酸化酵素によってタウタンパク質が過剰にリン酸化された結果として生じるという知見も存在するが、近年ではこの関係が問題視されている。特に、リン酸化酵素を阻害しても顕著なタウタンパク質の凝集抑制が見られないことから、タウタンパク質の過剰リン酸化はタウタンパク質の凝集とは直接的な関係はなく、むしろタウタンパク質をその凝集に対して防いでいるという報告もある(非特許文献2)。
タウタンパク質の異常凝集が原因となる疾患は、一般にタウオパチーと総称して呼ばれている。タウタンパク質の凝集はアルツハイマー型認知症の病態に関与すると考えられていることから、当該タンパク質を標的とする薬剤(タウタンパク質凝集阻害剤等)はアルツハイマー型認知症の治療薬として有望であると考えられる。
動物及びヒトにおいて、タウタンパク質の凝集阻害活性を有する成分の効果を期待する場合、血液脳関門を介した成分の脳への移行性(中枢移行性)が課題となる。一般的に、医薬品として使用され、且つ中枢移行性が良好な化合物は適度に高い脂溶性を示す場合が
多く、中枢移行性は脂溶性の指標であるlog P(水と1-オクタノールにおける分配係数)
に対して良好な正の相関を示すことが分かっている(非特許文献3)。log Pの算出は、
実測のほか、計算科学を用いて分子構造から精度よく推定することができ、その計算値(calculated logP, C logP)は近年では論文等における議論で活用されることが多くなっ
ている。
タウタンパク質の凝集阻害活性を有する薬剤としては、イソプレナリンやドーパミン等の医薬品がそのような活性を有することがこれまでに報告されている(特許文献1)。しかしながら、このような医薬品は副作用も併せ持つことから、長期間にわたって頻繁に服用するのは好ましくないと考えられる。また、一定期間服用した後で副作用のためにその使用を中断すると、リバウンドが起きてかえって症状が悪化する可能性もあり、必ずしも理想的な薬剤と言うことはできない。
タウタンパク質凝集阻害活性を有する食品由来成分としては、一部のカテキン類(エピガロカテキンガレートやエピガロカテキン、ガロカテキン)やフラボンの一種であるバイカレイン、フラボノールの一種であるミリセチン等が報告されている(非特許文献4)。しかしながら、これらの食品由来成分は脂溶性(すなわちlog P)が低く、中枢移行性が
良好である可能性は低い。
国際公開WO2013/051266号パンフレット
臨床神経 2014;54:1178-1180 Biochemistry 1999,38,3549-3558 J Pharm Biomed Anal.2015 Apr 10;108;29-37 Biochemistry 2006,45,6085-6094
アルツハイマー型認知症等のタウオパチーの治療又は予防に関して、特に高齢者において長期間にわたって服用する必要性があることを考慮すると、身体的な面に及ぼされる深刻な影響は回避されるべきであり、安心して服用し続けられる高い安全性と、適度に高い脂溶性に基づく中枢移行性が期待できる薬剤の開発が強く望まれている。
本発明の課題は、十分なタウタンパク質凝集阻害活性を有しており、安全性の面で優れ、且つ中枢移行性の観点で望ましい適度に高い脂溶性を有する成分を含むタウタンパク質凝集阻害用組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題である安全性の面に考慮し、食品中に含まれる成分に着目して鋭意検討した結果、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンが、強力なタウタンパク質の凝集阻害活性を有することを見出した。またこれらの中から、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンが、適度に高い脂溶性を示すことが予測され、良好な中枢移行性の発揮に望ましい性質を有することが考えられた。かかる知見に基づき、本発明
者らは本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下に関するが、これらに限定されない。
(1)キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を含有する、タウタンパク質凝集阻害用組成物。
(2)タウオパチーの治療又は予防用である、(1)に記載の組成物。
(3)タウオパチーがアルツハイマー型認知症である、(2)に記載の組成物。
(4)食品組成物又は飲料組成物である、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)タウタンパク質の凝集阻害作用により発揮される機能の表示を付した、(1)~(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)機能の表示が、「認知機能を高める」、「認知機能の低下を抑える」、「認知機能を良好に保つ」、「認知症を予防する」、「認知症を治療する」、「記憶力を高める」、「記憶力の低下を抑える」、「記憶力を良好に保つ」、「記憶の精度を高める」、「記憶障害を予防する」、及び「記憶障害を治療する」からなる群より選択されるものである、(5)に記載の組成物。
(7)タウタンパク質の凝集を阻害するための、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物の使用。
(8)キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を使用する、タウタンパク質の凝集を阻害する方法。
本発明の組成物を用いることによって、効果的にタウタンパク質の凝集を阻害することができる。その結果として、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、タウタンパク質の凝集が原因とされる疾患(例えば、アルツハイマー型認知症など)を有効に治療及び予防できる可能性がある。また、本発明において用いられるキサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンはいずれも食品成分として使用可能な素材であることから、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の安全性は高く、その副作用は従来の非天然化合物を含有する医薬品に対して少ないことが期待される。
図1は、キサントフモール、カルノシン酸及びビニルカテコールオリゴマーのタウタンパク質凝集阻害活性を調べた結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、凝集したタウタンパク質と結合したチオフラビンTが発する蛍光値(A.U.)を示し、グラフの横軸は経過時間(hr)を示す。グラフには、経時的に測定された蛍光値がプロットされ、その標準偏差が棒で示されている。 図2は、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール及びエラグ酸のタウタンパク質凝集阻害活性を調べた結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、凝集したタウタンパク質と結合したチオフラビンTが発する蛍光値(A.U.)を示し、グラフの横軸は経過時間(hr)を示す。グラフには、経時的に測定された蛍光値がプロットされ、その標準偏差が棒で示されている。 図3は、アリルイソチオシアネート、スルフォラファン及びカフェ酸のタウタンパク質凝集阻害活性を調べた結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、凝集したタウタンパク質と結合したチオフラビンTが発する蛍光値(A.U.)を示し、グラフの横軸は経過時間(hr)を示す。グラフには、経時的に測定された蛍光値がプロットされている。
本発明の一態様は、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を含有する、タウタンパク質凝集阻害用組成物である。
1.有効成分
(1)キサントフモール
キサントフモール(xanthohumol)は、ホップ(humulus lupulus)に含まれるフラボノイドの一種であり、下記の構造式で表される分子式C2122の化合物である。キサントフモールはCAS番号:6754-58-1で登録されており、そのIUPAC名は(E)-1-[2,4-dihydroxy-6-methoxy-3-(3-methylbut-2-enyl)phenyl]-3-(4-hydroxyphenyl)prop-2-en-1-oneである。
Figure 2022159422000001
キサントフモールは、ホップが原料となるビールにも含まれ、ビールの風味や苦味に寄与することが知られており、ビールの製造過程で一部がイソキサントフモールに変化すると報告されている。また、キサントフモールは、抗酸化作用のほか、骨分解抑制作用、筋肉量維持作用などを有することが知られている。
(2)カルノシン酸
カルノシン酸(Carnosic acid)は、ローズマリー(Rosmarinus officinalis L.)やセージ(Salvia officinalis)等の植物に含まれているベンゼンジオールアビエタンのジテルペンである。カルノシン酸の分子式はC2028であり、その構造式は下記の通りである。カルノシン酸はCAS番号:3650-09-7で登録されており、そのIUPAC名は(4aR,10aS)-5,6-dihydroxy-1,1-dimethyl-7-propan-2-yl-2,3,4,9,10,10a-hexahydrophenanthrene-4a-carboxylic acidである。
Figure 2022159422000002
カルノシン酸は、強力な抗酸化作用を有しており、酸化防止剤として食品に使用される。また、カルノシン酸は、脳神経突起形成作用や脂肪細胞の分化阻害作用等の生理活性を有することが知られている。カルノシン酸は、Nrf2転写因子の活性化を介してアミロイドβとリン酸化タウタンパク質の産生を低減するという報告もあるが(Cell Death and Disease 2016,7,e2499)、上述した通り、近年ではタウタンパク質のリン酸化と凝集との関連性は疑問視されており、両者の間に直接的な関係はないとの報告もされている(Biochemistry 1999,38,3549-3558)。
(3)ビニルカテコールオリゴマー
ビニルカテコールオリゴマーは、深煎りのコーヒー豆等に含まれる成分であり、4-ビニルカテコールが2分子又は3分子結合した重合体(オリゴマー)である。ビニルカテコールオリゴマーは、4-ビニルカテコールの2量体及び3量体の総称であり、その具体例としては下記の構造式で表される化合物等が挙げられる。2量体のビニルカテコールオリゴマーには、インダン型(カフェオイルメチルジヒドロキシルインダン)及びジカフェオイルブタン型(ジカフェオイルブタン/ブテン)が含まれる。
Figure 2022159422000003
ビニルカテコールオリゴマーは、クロロゲン酸を加熱して得られるカフェ酸(コーヒー酸)をさらに加熱することによって得ることができる。このように、ビニルカテコールオリゴマーは深煎りしたコーヒー豆に多く含まれ、特有の苦味を呈することが知られている。
(4)ヒドロキシチロソール
ヒドロキシチロソール(hydroxytyrosol)は、オリーブ(Olea europaea)等の植物に
含まれているポリフェノールの一種である。ヒドロキシチロソールの分子式はC10であり、その構造式は下記の通りである。ヒドロキシチロソールはCAS番号:10597-60-1で登録されており、そのIUPAC名は4-(2-Hydroxyethyl)-1,2-benzenediolである。
Figure 2022159422000004
ヒドロキシチロソールは、非常に強い抗酸化作用や、血管内皮機能改善作用、美白作用を有することが知られている。また、ヒドロキシチロソールは、その強力な抗酸化作用に基づいて、悪玉コレステロールであるLDLの酸化LDLへの変換を抑制する作用を有することも知られている。
(5)ピセアタンノール
ピセアタンノール(piceatannol)は、パッションフルーツ(Passiflora edulis)の種子等に含まれているスチルベノイドの一種である。ピセアタンノールの分子式はC1412であり、その構造式は下記の通りである。ピセアタンノールはCAS番号:10083-24-6で登録されており、そのIUPAC名は4-[(1E)-2-(3,5-Dihydroxyphenyl)ethenyl]-1,2-benzenediolである。
Figure 2022159422000005
ピセアタンノールの生理活性としては、肌や血管の抗老化作用や血管内皮機能の改善作用等が知られている。
(6)エラグ酸
エラグ酸(ellagic acid)は、イチゴ、ラズベリー、クランベリー、ザクロ等に含まれているポリフェノールの一種である。エラグ酸の分子式はC14であり、その構造式は下記の通りである。エラグ酸はCAS番号:476-66-4で登録されており、
そのIUPAC名は2,3,7,8-Tetrahydroxy-chromeno[5,4,3-cde]chromene-5,10-dioneで
ある。
Figure 2022159422000006
エラグ酸は強力な抗酸化作用や美白作用、抗癌作用等の生理活性を有することが知られている。
(7)ショウガオール
ショウガオール(Shogaol)は、ショウガの辛味成分でありバニロイド類に分類される
。ショウガオールの分子式はC1724であり、その構造式は下記の通りである。ショウガオールはCAS番号:555-66-8で登録されており、そのIUPAC名は(E)-1-(4-Hydroxy-3- methoxyphenyl)dec-4-en-3-oneである。
Figure 2022159422000007
ショウガオールは、殺菌作用や血流改善作用等の生理活性を有することが知られている。
(8)アリルイソチオシアネート
アリルイソチオシアネート(Allyl isothiocyanate)は、マスタードやワサビなどの辛味成分でありイソチオシアネートに分類される。アリルイソチオシアネートの分子式はCNSであり、その構造式は下記の通りである。アリルイソチオシアネートはCAS番号:57-06-7で登録されており、そのIUPAC名は3-Isothiocyanato-1-propeneである。
Figure 2022159422000008
アリルイソチオシアネートは、催涙作用等の生理作用を有することが知られている。
(9)スルフォラファン
スルフォラファン(sulforaphane)は、ブロッコリーなどに含まれる成分であり、イソチオシアネートに分類される。スルフォラファンの分子式はC11NOSであり、その構造式は下記の通りである。スルフォラファンはCAS番号:4478-93-7で登録されており、そのIUPAC名は1-Isothiocyanato-4-(methylsulfinyl)butaneであ
る。
Figure 2022159422000009
スルフォラファンは、抗酸化作用、肝機能向上作用、新陳代謝促進等の生理作用を有することが知られている。
上記の有効成分の形態は特に限定されず、例えばそれらは塩の形態であってもよい。塩の種類は化合物に応じて適宜選択することができ、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、アミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩等の無機酸との塩、乳酸塩、グルコン酸塩等の有機酸との塩等が挙げられる。また、上記の有効成分は、水和物の形態であってもよい。そのような水和物としては、一水和物、二水和物、三水和物、及び四以上の水和物が例示されるが、特にこれらに限定されない。
また、上記の有効成分は、その配糖体、誘導体、代謝物、又は前駆体等であってもよい。配糖体における糖は、単糖であってもよく、或いは二糖又はそれ以上の複数の糖であってもよく、特に限定されない。糖の種類も特に限定されず、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラムノース、アラビノース、キシロース等のアルドース、フルクトース等のケトース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等のウロン酸、アピオース、ルチノース等が挙げられる。また、配糖体に用いられる糖はD体であってもよいし、L体であってもよい。
上記の有効成分のうち、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸は、化学構造としてカテコール骨格を有することを特徴とする。そのため、これらの化合物は、カテコール骨格含有化合物と総称することができる。
上記の有効成分は、試薬等として市販されているものを用いてもよく、或いは自体公知の方法を用いて自ら調製したものを用いてもよく、特に制限されない。上記の有効成分のうち植物等の天然物に含まれるものは、特に限定されないが、その天然物から自体公知の方法を用いて単離及び精製することによって入手することができる。このように天然物に含まれる有効成分は、当該有効成分を含む天然物抽出物(植物抽出物等)を利用することもできる。また、上記の有効成分は、自体公知の方法を用いて化学合成によって入手することも可能である。
2.タウタンパク質
タウタンパク質は、分子量5万~7万の微小管結合タンパク質の一つである。タウタンパク質は、in vitroではチューブリンの重合を促進することが知られており、in vivoでは微小管の安定性に寄与していると考えられている。タウタンパク質は、
中枢神経系に多く発現しており、脳内では神経細胞に多く存在する。タウタンパク質は、mRNAの選択的スプライシングやリン酸化により分子多様性を示し、ヒトでは、6種類のアイソフォームが存在する。本発明では特に限定されず、いずれのアイソフォームもタウタンパク質の概念に包含される。また、本発明におけるタウタンパク質の種も特に限定されず、ヒト由来のみならず、あらゆる動物由来のタウタンパク質が含まれる。
アルツハイマー病等の認知症では、タウタンパク質が凝集して脳内に蓄積することが知られている。本発明では、その作用機序は特に限定されるわけではないが、このようなタウタンパク質の凝集を阻害することが一つの目的とされ、一態様としてその用途に用いられる組成物が提供される。
タウタンパク質凝集阻害の評価は、特に限定されず、当業者に公知の方法を用いて行うことができる。例えば、タウタンパク質、被験物質、及びチオフラビンTを混合し、その後ヘパリンを加え、一定時間(例えば、24時間)37℃でインキュベートして、最終的にチオフラビンT染色の程度を蛍光測定により調べる方法が挙げられる。対照としては、被験物質が添加されないものを用いることができる。対照においては高いチオフラビンT蛍光値が測定されるため、その測定値よりも低い値が得られた場合に被験物質はタウタンパク質凝集阻害活性を有すると判断することができる。
3.タウタンパク質凝集阻害用組成物
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物には、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート又はスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物が含まれる。これらの化合物の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果が得られるような量であればよく、特に限定されるものではない。
例えば、キサントフモールの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、カルノシン酸の含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、ビニルカテコールオリゴマーの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、ヒドロキシチロソールの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、ピセアタンノールの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好
ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、エラグ酸の含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、ショウガオールの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、アリルイソチオシアネートの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
例えば、スルフォラファンの含有量は、組成物全量に対して、0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、50重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であり、典型的には、0.01~50重量%、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~20重量%である。
本明細書において用いる「重量%」は、特に断りがない限り、重量/重量(w/w)の重量%を意味する。また、各種化合物が塩、水和物又は配糖体等の形態にある場合は、これを遊離体(フリー体)に換算した上で上記含有量を算出するものとする。また、本発明における有効成分の含有量は、当業者に公知の方法に従って測定することができる。例えば、LC-MS/MS、HPLC等を用いて、有効成分の種類等に応じて適宜条件を設定して測定することができる。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、その形態に応じて、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンの他に、任意の添加剤や成分を含有することができる。これらの添加剤及び/又は成分の例としては、ビタミンE、ビタミンC等のビタミン類、ミネラル類、栄養成分、香料などの生理活性成分の他、製剤化において配合される賦形剤、結合剤、乳化剤、緊張化剤(等張化剤)、緩衝剤、溶解補助剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、着色剤、凝固剤、又はコーティング剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の組成物について、かかる組成物には、特に限定されるものではないが、例えば、食品組成物、飲料組成物、医薬組成物、及び化粧用組成物等が含まれる。本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、好ましくは食品組成物及び飲料組成物である。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物が食品組成物又は飲料組成物である場合、その形態は、特に限定されないが、錠剤(被覆錠剤を含む)、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤又はドリンク剤等の健康食品の形態とすることができる。また、清涼飲料、茶飲料、ヨーグルトや乳酸菌飲料等の乳製品、調味料、加工食品、デザート類、菓子(例えば、ガム、キャンディ、ゼリー)等の形態とすることもできる。
また、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物が医薬組成物である場合、投与経路は特に限定されないが、経口であることが好ましい。経口投与に適した医薬組成物の形態には、錠剤(被覆錠剤を含む)、顆粒剤、散剤、粉末剤、又はカプセル剤等の固形剤や、経口液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、又はドリンク剤等の液剤などが含まれる。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物はそのまま、或いは水等と共に服用することができる。また、特に限定されないが、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、容易に配合することが出来る形態(例えば、粉末形態や顆粒形態)に調製後、例えば、食品組成物、飲料組成物、医薬組成物、及び化粧用組成物等の原材料として用いてもよい。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、例えば、公知の食品組成物、飲料組成物、医薬組成物、又は化粧用組成物等を調製する際に、その原材料に上記の有効成分(即ち、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート又はスルフォラファン)を所定量混合して、公知の製造方法に従って調製してもよく、また、既製の公知の組成物(食品組成物、飲料組成物、医薬組成物、又は化粧用組成物等)に、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール又はエラグ酸を所定量となるように添加して、溶解及び/又は懸濁することで調製してもよい。なお、公知の組成物が、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート又はスルフォラファンを元来含有するものであってもよく、本発明に係る有効成分が所定量となるのであれば、適宜配合して調製することができる。
4.用途
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート又はスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を含有し、これらの有効成分によって、タウタンパク質の凝集を阻害することができる。なお、エラグ酸以外の化合物については、アミロイドβの凝集阻害活性があることも考えられる。
本発明の組成物は、タウタンパク質の凝集阻害を通じて、タウタンパク質に関連する疾患(タウオパチー)の治療又は予防用として使用することができる。そのような疾患(タウオパチー)の具体例としては、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)、レビー小体型認知症、神経原線維型老年認知症、石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病、嗜銀顆粒病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ピック病(ピック球を伴うピック病)、FTDP-17(タウ遺伝子異常を伴うFTDP-17)、ALS・パーキンソン症候群・認知症複合、家族性認知症(BRI蓄積症)、エコノモ脳炎後遺症(脳炎後パーキンソン症候群)、亜急性硬化性脳炎、拳闘家(ボクサー)脳症、筋緊張性ジストロフィー等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。本発明では、好ましくはアルツハイマー型認知症である。なお、本明細書における「治療」には、改善、回復、軽減、緩和等の概念も含まれ得る。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、治療的用途(医療用途)又は非治療用途(非医療用途)のいずれにも適用することができる。具体的には、医薬品、医薬部外品、化粧品及び飲食品等に分類されるか否かによらず、タウタンパク質の凝集阻害、又はタウタンパク質に関連する疾患の治療又は予防を明示的又は暗示的に訴求する組成物としての使用が挙げられる。
本発明は、別の側面では、タウタンパク質の凝集阻害作用により発揮される機能の表示を付した組成物に関する。このような表示は機能性表示ともいい、その表示内容は特に限定されないが、例えば、「認知機能を高める」、「認知機能の低下を抑える」、「認知機能を良好に保つ」、「認知症を予防する」、「認知症を治療する」、「記憶力を高める」、「記憶力の低下を抑える」、「記憶力を良好に保つ」、「記憶の精度を高める」、「記憶障害を予防する」、「記憶障害を治療する」等、或いは、これらと同視できる表示又は機能性表示が挙げられる。本明細書において、当該表示及び機能表示のような表示は、組成物自体に付されてもよいし、組成物の容器又は包装に付されていてもよい。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物は、その形態に応じた適当な方法で摂取することができる。摂取方法は、組成物中に含まれる有効成分が循環血中に移行できるのであれば特に限定はない。例えば、上述したような経口可能な製剤、或いは注射剤、外用剤、坐剤若しくは経皮吸収剤等の非経口用製剤などの形態とすることができるが、これらに限定されない。なお、本明細書において「摂取」とは、摂取、服用、又は飲用等の全態様を含むものとして用いられる。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の適用量は、その形態、投与方法、使用目的及び投与対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適時設定され、一定ではない。本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の有効ヒト摂取量も一定ではなく、特に限定されない。本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の有効ヒト摂取量は、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート又はスルフォラファンの重量として、例えば、体重50kgのヒトで一日あたり10mg以上、好ましくは30mg以上である。また、投与は所望の投与量範囲内において、1日内において単回又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。なお、本明細書において有効ヒト摂取量とは、ヒトにおいて有効な効果を示す摂取量のことをいう。
本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の適用対象は、好ましくはヒトであるが、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。ヒト以外の動物を対象に投与する場合、その使用量は、組成物中の有効成分の含有量、適用対象の状態、体重、性別及び年齢等の条件により異なる。
5.タウタンパク質の凝集を阻害するための使用
本発明の一態様は、タウタンパク質の凝集を阻害するための、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物の使用である。
本発明の使用には、タウタンパク質凝集阻害の観点から、タウタンパク質に関連する疾患の予防及び/又は治療のための使用も含まれる。当該疾患は上述した通りであり、特に限定されるわけではない。また、本発明の使用は、ヒト又は非ヒト動物における使用であり、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。ここで、「非治療的」とは、医療行為、即ち、治療による人体への処理行為を含まない概念である。
6.タウタンパク質の凝集を阻害する方法
本発明の一態様は、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を使用する、
タウタンパク質の凝集を阻害する方法である。
本発明の方法には、タウタンパク質凝集阻害の観点から、タウタンパク質に関連する疾患を予防及び/又は治療する方法も含まれる。当該疾患は上述した通りであり、特に限定されるわけではない。
また、本発明の別の態様は、タウタンパク質の凝集阻害を必要とする対象に、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物の有効量を投与することを含む、タウタンパク質の凝集を阻害する方法である。当該方法においても、タウタンパク質に関連する疾患方法が含まれる。当該疾患は上述した通りであり、特に限定されるわけではない。
上記方法において、タウタンパク質の凝集阻害を必要とする対象とは、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物の前記適用対象と同様である。また、本明細書において有効量とは、本発明のタウタンパク質凝集阻害用組成物を上記対象に投与した場合に、投与していない対象と比較して、タウタンパク質の凝集が阻害される量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び対象の年齢、体重、症状等によって適時設定され一定ではない。
本発明の方法においては、好ましくは、前記有効量となるよう、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を含有する組成物として投与されるが、特に限定されず、当該化合物はそのまま投与されてもよい。
本発明の方法によれば、副作用を生じることなくタウタンパク質の凝集阻害、又はタウタンパク質に関連する疾患の予防及び/又は治療を行うことが可能になる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、これにより本発明の範囲を限定するものではない。当業者は、本発明の方法を種々変更、修飾して使用することが可能であり、これらも本発明の範囲に含まれる。
(実施例1)チオフラビンT結合解析によるタウタンパク質凝集阻害活性の評価
ヒト由来タウ(2N4R)タンパク質10μM、チオフラビンT 10μM、塩化ナトリウム100mM、ヘパリン60μg/mLをそれぞれ混合したHEPES(pH7.4)10mM溶液中に、各種評価化合物を目的濃度になるように希釈し、暗中において37℃で保温した。評価化合物としては、キサントフモール(Alexis Biochemicals社製)、
カルノシン酸(東京化成工業社製)、ビニルカテコールオリゴマー(SundiaMediTech社)、ヒドロキシチロソール(東京化成工業社製)、ピセアタンノール(東京化成工業社製)、エラグ酸(和光純薬社製)、アリルイソチオシアネート(ナカライテスク社)、スルフォラファン(Abcam社)、及びカフェ酸(ナカライテスク社製)を使用した。
凝集したタウにチオフラビンTが結合することで生じる蛍光値(励起光440nm/蛍光検出486nm)の継時的な変化を蛍光プレートリーダー(TECAN社、infinite F200)により測定した(添田ら、Nature Communication 2015年;6:10216)。その測定値をプロットしたグラフを図1~3に示す(平均値±標準偏差、n=3)。
図1~3に示されるように、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、アリルイソチオシアネート、及びスルフォラファンにおいて蛍光値の低下が認められ、これらの化合物がタウタンパク質凝集阻害活性を有することが明らかとなった。一方、ビニルカテコールオリゴマーの前駆物質でありカテコール構造化合物であるカフェ酸に関しては、タウタンパク質凝集阻害活性が極めて弱いことが示された(図3)。
(実施例2)MedChem DesignerTMを用いた化合物の脂溶性予測
MedChem DesignerTMversion 3.0(Simulation Plus社)を使用して、脂溶性の指標である水と1-オクタノールにおける分配係数log Pを計算科学的に予測した。構造式を入力し
、計算モデルに基づく予測値MlogPを算出した。その結果を下記の表に示す。
Figure 2022159422000010
また、タウタンパク質凝集阻害活性が報告されている食品成分のMlogP、及びカフェ酸
のMlogPを以下に示す。
Figure 2022159422000011
Figure 2022159422000012
以上の結果より、ピセアタンノール、ヒドロキシチロソール、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ショウガオール、アリルイソチオシアネート、及びスルフォラファンは、logPの予測値(MlogP)が1を上回り、既に活性が報告されて
いる主な食品成分の多くやカフェ酸と比較して脂溶性に富むことが予測された。脂溶性が高いことから、これらの化合物は中枢移行性に優れたものであると考えられた。また、これらの化合物はいずれも食品成分として使用可能な素材であることから、人体に対する安全性も高いものと考えられる。
本発明の組成物の製造例を以下に示す。
(製造例1)錠剤
キサントフモール 10g
ビタミンE 60g
デンプン 223g
ショ糖脂肪酸エステル 9g
酸化ケイ素 9g
これらを混合し、単発式打錠機にて打錠して径9mm、質量300mgの錠剤を製造した。
(製剤例2)カプセル剤
ゼラチン 60%
グリセリン 30%
パラオキシ安息香酸メチル 0.15%
パラオキシ安息香酸プロピル 0.51%
水 適量
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒360mgのソフトカプセルを得た:
カルノシン酸 3.5mg
塩酸チアミン 0.4mg
グリセリン脂肪酸エステル 15.0mg
ミツロウ 15.0mg
小麦胚芽油 245mg
(製造例3)顆粒剤
ビニルカテコールオリゴマー 10g
酢酸トコフェロール 10g
無水ケイ酸 20g
トウモロコシデンプン 120g
以上の粉体を均一に混合した後に10%のハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。
(製造例4)ドリンク剤
DL-酒石酸ナトリウム 0.1g
コハク酸 0.009g
液糖 800g
クエン酸 12g
ビタミンC 10g
ヒドロキシチロソール 20g
ビタミンE 20g
シクロデキストリン 5g
乳化剤 5g
香料 15g
塩化カリウム 1g
硫酸マグネシウム 0.5g
上記成分を配合し、水を加えて1リットルとした。このドリンク剤は、1回あたり100ml以上を飲用する。
(製剤例5)茶飲料
(A液)緑茶茶葉2.5kgを80℃の純水75Lで6分間抽出、濾過した液に以下の成分を添加して、A液とした。
炭酸水素ナトリウム 80g
L-アスコルビン酸 100g
ピセアタンノール 50g
(B液)以下の成分を混ぜ合わせて乳化液(B液)を作成した。
エラグ酸 7g
ビタミンE 25g
シクロデキストリン 25g
乳化剤 25g
A液、B液および香料を添加し、250Lとなるように加水調合した。続いて得られた調合液を130℃で1分間UHT殺菌し、350mLの缶に充填・密封し缶飲料を得た。
本発明は、所定の化合物を含有するタウタンパク質凝集阻害用組成物を提供するものである。本発明は、タウタンパク質の凝集に起因する疾患(例えば、アルツハイマー型認知症等)の治療又は予防に資する新たな手段を提供するものであるため、産業上の利用性が高い。

Claims (8)

  1. キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を含有する、タウタンパク質凝集阻害用組成物。
  2. タウオパチーの治療又は予防用である、請求項1に記載の組成物。
  3. タウオパチーがアルツハイマー型認知症である、請求項2に記載の組成物。
  4. 食品組成物又は飲料組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. タウタンパク質の凝集阻害作用により発揮される機能の表示を付した、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 機能の表示が、「認知機能を高める」、「認知機能の低下を抑える」、「認知機能を良好に保つ」、「認知症を予防する」、「認知症を治療する」、「記憶力を高める」、「記憶力の低下を抑える」、「記憶力を良好に保つ」、「記憶の精度を高める」、「記憶障害を予防する」、及び「記憶障害を治療する」からなる群より選択されるものである、請求項5に記載の組成物。
  7. タウタンパク質の凝集を阻害するための、キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物の使用。
  8. キサントフモール、カルノシン酸、ビニルカテコールオリゴマー、ヒドロキシチロソール、ピセアタンノール、エラグ酸、ショウガオール、アリルイソチオシアネート及びスルフォラファンからなる群より選択される一以上の化合物を使用する、タウタンパク質の凝集を阻害する方法。
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