JP2022159034A - セメントクリンカの製造方法 - Google Patents

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建佑 林
Kensuke Hayashi
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Abstract

【課題】廃材を原料の一部として用いることによって、セメントクリンカ原料(特に、CaO源である石灰石)の使用量をより少なくすることができ、かつ、より低温でもセメントクリンカを焼成することができるセメントクリンカの製造方法を提供する。【解決手段】セメント水和物を含みかつセメントクリンカ鉱物を含まない、または、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含む、セメント質硬化体を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、粉砕物とセメントクリンカ原料を、粉砕物とセメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように、混合して焼成用原料を調製する原料調製工程と、焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る焼成工程と、を含むセメントクリンカの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、セメントクリンカの製造方法に関する。
従来、構造物の解体において発生する廃コンクリート等を、再利用することが知られている。
例えば、特許文献1には、コンクリート廃材の破砕処理により再生骨材とともに得られた微粉末が、加熱処理により再合成したビーライト(CS)を含有することを特徴とする廃コンクリート微粉末を用いたセメント組成物が記載されている。
また、特許文献2には、骨材の少なくとも一部がセメントクリンカーからなる骨材と、セメントと水とからなる混練物を打設後、養生硬化して製造されたセメント硬化物を解体した後、微粉砕し、その微粉砕物に3%以下の石膏と、骨材としてのクリンカーと水とを加配し、混練した後、混練物を再び打設し養生硬化することを特徴とするリサイクル可能なセメント硬化物の製造方法が記載されている。
特開2005-320201号公報 特開平8―231255号公報
本発明の目的は、廃材(例えば、廃コンクリート)を原料の一部として用いることによって、セメントクリンカ原料(特に、CaO源である石灰石)の使用量をより少なくすることができ、かつ、より低温でもセメントクリンカを焼成することができるセメントクリンカの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セメント水和物を含みかつセメントクリンカ鉱物を含まない、または、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含む、セメント質硬化体を粉砕して粉砕物を得る工程と、粉砕物とセメントクリンカ原料を、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように混合して焼成用原料を調製する工程と、焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る工程を含むセメントクリンカの製造方法によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
[1] セメント水和物を含みかつセメントクリンカ鉱物を含まない、または、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含む、セメント質硬化体を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、上記粉砕物とセメントクリンカ原料を、上記粉砕物と上記セメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、上記セメント水和物及び上記セメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように、混合して上記焼成用原料を調製する原料調製工程と、上記焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る焼成工程と、を含むことを特徴とするセメントクリンカの製造方法。
[2] 上記焼成用原料中、上記セメントクリンカ原料と上記セメントクリンカ鉱物の質量比(上記セメントクリンカ原料/上記セメントクリンカ鉱物)が2.60以下である前記[1]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[3]上記焼成用原料中、上記セメント水和物の割合が8.0質量%以上である前記[1]又は[2]に記載のセメントクリンカの製造方法。
[4] 上記セメント質硬化体が、廃コンクリート、廃モルタル、及びコンクリートスラッジの中から選ばれる1種以上である前記[1]~[3]のいずれかに記載のセメントクリンカの製造方法。
[5] 上記セメント質硬化体が、クリンカ骨材を含むものである前記[1]~[4]のいずれかに記載のセメントクリンカの製造方法。
[6] 上記焼成工程で得られるセメントクリンカが、普通ポルトランドセメントクリンカとなるように、上記原料調製工程において、上記焼成用原料を調製する前記[1]~[5]のいずれかに記載のセメントクリンカ製造方法。
本発明のセメントクリンカの製造方法によれば、セメント質硬化体(例えば、廃コンクリート等の廃材)を原料の一部として用いているので、セメントクリンカ原料(特に、CaO源である石灰石)の使用量をより少なくすることができ、かつ、より低温でもセメントクリンカ(例えば、エーライトの含有率が50.0質量%以上のもの)を焼成することができる。
本発明のセメントクリンカの製造方法は、セメント水和物を含みかつセメントクリンカ鉱物を含まない、または、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含む、セメント質硬化体(以下、「セメント水和物を含むセメント質硬化体」と略すことがある。)を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、粉砕物とセメントクリンカ原料を、粉砕物とセメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように、混合して焼成用原料を調製する原料調製工程と、焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る焼成工程と、を含むものである。
以下、工程ごとに詳しく説明する。
[粉砕工程]
本工程は、セメント水和物を含むセメント質硬化体を粉砕して粉砕物を得る工程である。
本明細書中、セメント質硬化体は、セメント及び水を含む組成物が硬化してなるものを意味し、具体的には、コンクリートからなる硬化体、モルタルからなる硬化体、及び、セメントペーストからなる硬化体のいずれかを意味する。
また、本明細書中、「セメント質硬化体」の語は、完全に硬化した硬化体の他、半硬化の硬化体(換言すると、硬化が進行中のもの;例えば、コンクリートスラッジ)を包含するものとする。
セメントクリンカ鉱物とは、セメントの原料であるセメントクリンカに含まれている鉱物を意味する。具体的には、ビーライト(2CaO・SiO:「CS」と略すこともある。)、エーライト(3CaO・SiO;CSと略すこともある。)、アルミネート相(3CaO・Al;「CA」と略すこともある。)、及びフェライト相(4CaO・Al・Fe);「CAF」と略すこともある。)等が挙げられる。セメント質硬化体には、通常、ビーライト、エーライト、アルミネート相、及びフェライト相のいずれかが含まれている。
セメント水和物とは、セメントと水が反応(水和)することによって形成されるものである。
セメント水和物の例としては、3CaO・Al・3CaSO・32HO、3CaO・Al・CaSO・12HO、3CaO・Al・6HO、4CaO・Al・14HO、3CaO・2SiO・3HO、Ca(OH)等が挙げられる。セメント質硬化体に含まれているセメント水和物は、通常2種以上である。
なお、セメント質硬化体は、通常、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含むものであるが、セメント質硬化体がすべて水和した場合、セメント質硬化体は、セメント水和物を含み、セメントクリンカ鉱物を含まないものとなる。
セメント水和物を含むセメント質硬化体の例としては、廃コンクリート、廃モルタル、及びコンクリートスラッジ等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
廃コンクリート等には、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物が多く含まれていることから、焼成用原料中のセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の割合をより多くして、セメントクリンカ原料(特に、CaO源として用いられる石灰石)の使用量を低減することができる。また、セメントクリンカの製造において、二酸化炭素排出量をより少なくすることができる。
上記セメント質硬化体が、通常の天然由来の骨材を用いたセメント質硬化体である場合、上記セメント質硬化体には、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分(骨材由来のもの)が多く含まれる。例えば、セメント質硬化体がコンクリートの場合、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分の合計の割合は、通常、60~80質量%である。
このため、上記セメント質硬化体が骨材を含む場合、該骨材はクリンカ骨材を含むものであることが好ましい。上記骨材中のクリンカ骨材の割合が多くなるほど、焼成用原料中のセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の割合をより多くすることができ、セメントクリンカ原料(特に、CaO源として用いられる石灰石)の使用量を低減することができる。さらに、セメントクリンカの製造において、二酸化炭素排出量をより少なくすることができる。
また、セメント水和物を含むセメント質硬化体として、骨材がクリンカ骨材であるセメント質硬化体を用いた場合、セメント質硬化体の粉砕物から、骨材を除去することなく、そのまま使用することができる。
なお、クリンカ骨材とは、セメントクリンカを、細骨材または粗骨材として用いることができる粒度になるまで破砕(または粉砕)したものである。セメントクリンカとしては、特に限定されるものではなく、セメントクリンカ鉱物が70質量%以上含まれているものが挙げられる。セメントクリンカとしては、例えば、普通ポルトランドセメントクリンカ、早強ポルトランドセメントクリンカ、中庸熱ポルトランドセメントクリンカ、低熱ポルトランドセメントクリンカ、及び耐硫酸塩ポルトランドセメントクリンカ等の各種ポルトランドセメントクリンカ、エコセメントクリンカ等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、焼成用原料中のセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の割合をより多くすることができるため、普通ポルトランドセメントクリンカ、早強ポルトランドセメントクリンカが好ましい。
上記セメント質硬化体の粉砕方法としては、特に限定されず、例えば、セメント質硬化体を粗砕して、粗砕物(例えば、粒度40mm以下のもの)を得た後、該粗砕物を、インパクトクラッシャ、コーンクラッシャ、自生粉砕ミル、振動ミル等の粉砕手段を用いて粉砕する方法等が挙げられる。粉砕されたセメント質硬化体は、所望の粒度分布を有するものになるように、適宜、ジグ選別機、エアテーブル、湿式テーブル、遠心力式選別機等を用いて分級してもよい。
また、焼成用原料中のセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の割合をより多くして、セメントクリンカ原料(特に、CaO源として用いられる石灰石)の使用量を低減する観点から、セメント質硬化体の粗砕物又は粉砕物から天然由来の骨材を除去することが好ましい。
セメント水和物を含むセメント質硬化体中に含まれるセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計量は、「JIS R 5202:2010(セメントの化学分析方法)」の「6 塩酸―炭酸ナトリウム方法による不溶残分の定量方法」に規定されている方法において、溶媒に溶解したもの量として求めることができる。上記セメント質硬化体に結合材としてフライアッシュが含まれる場合、未反応のフライアッシュ由来の鉱物やガラスは、上記不溶残分量に含まれ、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分(骨材由来のもの)とみなされる。ただし、石灰石骨材が含まれる場合、セメント質硬化体には骨材由来の炭酸カルシウムが含まれるが、該炭酸カルシウムは、酸によって溶解するため、後述のリートベルト解析によって定量された炭酸カルシウム(カルサイト、バテライト及びドロマイト)量を用いて、骨材由来の炭酸カルシウムの含有量を求めることができる。該含有量は、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分(骨材由来のもの)とみなされる。
セメントクリンカ鉱物量、セメント水和物量および炭酸カルシウム量は、粉末X線回折の測定により求めることができる。粉末X線回折の測定は、内部標準物質としてコランダム(Al)を内割りで10%添加した試料を用いて行われる。
測定で得られた回折パターンから、試料中に含まれる結晶鉱物を同定し、リートベルト解析を行って各結晶鉱物量の定量を行い、得られた結果から、コランダム定量値より、以下の式(1)を用いて非晶質量を算出することができる。
G=100×(A-R)/{A×(100-R)/100}・・・(1)
(式(1)中、Gは非晶質量、RはAl混合率(質量%)、AはAl定量値(質量%)を意味する。)
各結晶鉱物量については、リートベルト解析から得られた定量結果を、コランダムの定量値を除いた組成の合計量が100%となるように標準化し、更にこの値を、非晶質量を除いた割合で標準化し、リートベルト法により求めた各結晶鉱物量を求めることができる。
各鉱物は、造岩鉱物、セメント水和物、セメントクリンカ鉱物、炭酸カルシウムに分類分けされる。
次に、不溶残分量の測定値が真であることに基づき、リートベルト法で得られた各結晶鉱物量Rによって求められた鉱物の構成比に基づき、不溶残分でない溶解する成分の量と整合させる。具体的には、不溶残分量の測定に基づき得られた不溶残分量と、リートベルト法により求められた、セメント水和鉱物量R(リートベルト法により求めた水和鉱物(エトリンガイト、モノサルフェート、モノカーボネート、ヘミカーボネート、ポルトランダイトなど)量の合計)、非晶質量R(上記式(1)で算出したもの)、セメントクリンカ鉱物量R(リートベルト法により求めたセメントクリンカ鉱物(エーライト、ビーライト、アルミネート相、フェライト相)量の合計)、炭酸カルシウム量R(リートベルト法により求めた炭酸カルシウム(カルサイト、バテライト、アラゴナイト、ドロマイト)量の合計)を用いて、以下式(2)を満たすような定数Xを求める。
(セメント水和鉱物量R+非晶質量+セメントクリンカ鉱物量+炭酸カルシウム量)×X=100-不溶残分量 ・・・(2)
また、セメント質硬化体中のセメント水和鉱物量、セメントクリンカ鉱物量、及び、それ以外の成分は以下の式(3)~(5)を用いて求めることができる。
セメント質硬化体中のセメント水和物量(質量%)=(セメント水和鉱物量+非晶質量)×X ・・・(3)
セメントクリンカ鉱物量(質量%)=セメントクリンカ鉱物量×X ・・・(4)
セメント質硬化体中の、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分の量(質量%)=不溶残分量(質量%)+炭酸カルシウム量R×X ・・・(5)
[原料調製工程]
本工程は、粉砕工程で得られた粉砕物と、セメントクリンカ原料を、粉砕物とセメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように、混合して焼成用原料を調製する工程である。
セメントクリンカ原料としては、石灰石、生石灰、消石灰等のカルシウム含有原料(CaO源)や、珪石、粘土等の珪素含有原料(SiO源)や、粘土等のアルミニウム含有原料(Al23源)や、鉄滓、鉄ケーキ等の鉄含有原料(Fe23源)等の、セメントクリンカの製造に用いられる一般的な原料を使用することができる。また、石炭灰、建設発生土、汚泥、スラグ、焼却灰等の廃棄物や副産物を代替原料として使用することもできる。なお、セメント水和物を含むセメント質硬化体中のセメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分(骨材由来のもの)は、セメントクリンカ原料とみなす。
焼成用原料中、セメントクリンカ原料の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。上記割合が20質量%以上であれば、得られたセメントクリンカを含むセメントの品質をより向上することができる。また、廃棄物利用促進の観点からは、上記割合は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
粉砕物とセメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物の合計の割合は、25質量%以上、好ましくは28質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。上記割合が25質量%以上であると、焼成用原料の易焼成性(焼成のし易さ)が向上するため、焼成温度を低くしたり、焼成時間を短くすることができる。すなわち、上記割合が25質量%未満の焼成用原料を使用して、低い焼成温度(例えば、1320℃)で焼成した場合、焼成工程で得られるセメントクリンカ中のエーライトの量が小さくなり、セメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の量が多くなることから、セメントの品質を著しく低下させる。さらに、セメントクリンカ原料の量が多くなり、廃棄物利用促進の観点から好ましくない。
なお、焼成用原料中のセメントクリンカ鉱物は、セメント質硬化体由来のものであって、水和されずにセメント質硬化体内に残存していたものである。
上記割合の上限値は、特に限定されないが、コンクリートスラッジ等の、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物以外の成分が多く含まれるセメント質硬化体を使用する場合、好ましくは90質量%、より好ましくは80質量%である。
上記粉砕物の原料である、セメント水和物を含むセメント質硬化体が多く得られない場合は、上記割合の上限値を、好ましくは60質量%、より好ましくは50質量%としてもよい。上記割合の上限値を小さくすることで、より多くのセメントクリンカ製造時(セメント水和物を含むセメント質硬化体の使用量がより少ない場合)においても、より低温又は短時間でセメントクリンカを焼成することができるようになる。
焼成用原料中、セメントクリンカ原料とセメントクリンカ鉱物の質量比(上記セメントクリンカ原料/上記セメントクリンカ鉱物)は、好ましくは2.60以下、より好ましくは2.50以下、さらに好ましくは2.30以下、さらに好ましくは2.00以下、特に好ましくは1.50以下である。上記質量比が2.60以下であれば、得られるセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の量をより少なくすることができる。また、セメントクリンカ原料の量が少なくなり、廃棄物の利用を促進することができる。
粉砕物とセメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、セメント水和物の割合は、好ましくは8.0質量%以上、より好ましくは9.0質量%以上、さらに好ましくは15.0質量%以上、さらに好ましくは20.0質量%以上、特に好ましくは25.0質量%以上である。上記割合が8.0質量%以上であれば、焼成用原料の易焼成性(焼成のし易さ)が向上するため、焼成温度を低くしたり、焼成時間を短くすることができる。
また、得られるセメントの品質をより向上する観点からは、上記割合は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
本工程において、焼成用原料は、所望のセメントクリンカが得られるように適宜、その材料組成を定めて調製すればよいが、汎用性等の観点から、焼成工程で得られるセメントクリンカが、普通ポルトランドセメントクリンカとなるように調製することが好ましい。
焼成用原料の調製方法は、特に限定されるものではない。例えば、焼成工程(後述)において、ロータリーキルンを用いて焼成する場合、粉砕物とセメントクリンカ原料は、ロータリーキルン内で混合されるため、予め各材料が混合されることなく、ロータリーキルン内に投入し、調製される。なお、各材料の投入量は、各材料の消費量を基にして、適宜定められる。
なお、セメント質硬化体以外に原料調製工程でセメントクリンカ鉱物、セメント水和物が混入する場合、焼成用原料中の、セメントクリンカ鉱物及びセメント水和物の割合を、前述した方法を用いて求め、得られた結果に基づいて焼成用原料の調製を行ってもよい、
[焼成工程]
本工程は、原料調製工程で調製した焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る工程である。
上記温度は、1,320℃以上、好ましくは1,350℃以上、より好ましくは1,380℃以上である。上記温度が1,320℃未満であると、得られるセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の量が大きくなり、セメントクリンカ中のエーライトの量が小さくなるため、上記セメントクリンカを含むセメントの強度発現性が低下する。
また、上記焼成温度が1,450℃以上であれば、焼成に要する時間をより短くし、上記セメントクリンカを含むセメントの強度発現性をより向上することができる。
上記温度は、焼成のエネルギーコスト低減等の観点からは、好ましくは1,500℃以下、より好ましくは1,480℃以下、さらに好ましくは1,450℃以下、さらに好ましくは1,420℃以下、さらに好ましくは1,400℃以下、特に好ましく1,390℃以下である。
焼成工程で得られるセメントクリンカ中のエーライトの割合は、セメント質硬化体の種類やセメントクリンカ原料の種類、配合等によっても異なるが、好ましくは50.0質量%以上、より好ましくは52.0質量%以上、さらに好ましくは54.0質量%以上、特に好ましくは56.0質量%以上である。エーライトの割合が50.0質量%以上であれば、セメントクリンカを含むセメントの強度発現性をより向上することができる。また、得られるセメントクリンカを普通ポルトランドセメントクリンカとして好適に使用することができる。
エーライトの割合の上限値は、特に限定されないが、製造の容易性等の観点から、通常、70質量%、好ましくは65質量%である。
焼成工程で得られるセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以上である。遊離石灰(f・CaO)の割合が1.0質量%以下であれば、セメントクリンカ中のエーライトの量が多くなるため、セメントクリンカを含むセメントの強度発現性をより向上することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[セメント質硬化体(モルタル)の粉砕物の作製]
普通ポルトランドセメントクリンカと石膏を、粉砕混合してセメント(ブレーン比表面積:3,300±100cm/g、密度:3.15g/cm)を作製した。なお、石膏の量は、セメント中の石膏の割合がSO換算で2質量%となる量に定めた。
上記セメントと普通ポルトランドセメントクリンカ骨材(粒度が1cm以上である普通ポルトランドセメントクリンカを粗砕して、細骨材の粒度としたもの)と水を混練してモルタルを作製した。各材料の配合割合は、細骨材とセメントの質量比(細骨材/セメント)が2.0、水とセメントの質量比(水/セメント)が0.5となるように定めた。
混練後のモルタルをφ50×100mmの型枠を用いて成型し、蒸気養生を行った。蒸気養生は、20℃の条件下で3時間の前養生を行った後、20℃/時間の昇温速度で60℃になるまで昇温し、60℃を6時間維持した。次いで、5℃/時間の降温速度で20℃になるまで降温することで行った。その後、2週間の封緘養生を行った。
養生完了後、モルタルを脱型し、ジョークラッシャーで、目開き5mmの篩を全通する粒度となるまで粗砕し、次いで、粗砕物を105℃の条件下で一晩乾燥させた。乾燥後の粗砕物を、ディスクミルを用いて粉砕して、セメント質硬化体(モルタル)の粉砕物を得た。
上記粉砕物の水和率を、熱重量分析(TG)を用いて求めた。具体的には、粉砕物(モルタル)中の、水酸化カルシウムの脱水に由来する重量減少を、熱重量分析(TG)を用いて測定した後、水酸化カルシウムの質量Aを算出した。また、モルタルに含まれるエーライトおよびビーライトが、全て水和した場合の、モルタル中の、水酸化カルシウムの質量を算出した。モルタル中の水酸化カルシウムの割合は28.46質量%であった。
また、使用した普通ポルトランドセメントクリンカにおける、エーライトおよびビーライトの含有率は、各々、56.77質量%および24.77質量%であった。
ここで、上記普通ポルトランドセメントクリンカにおける、エーライトおよびビーライトの水和反応が、下記の式の通りに進行すると仮定した。
2(3CaO・SiO)+7HO→3CaO・3SiO・4HO+3Ca(OH)
2(2CaO・SiO)+5HO→3CaO・2SiO・4HO+Ca(OH)
上記式のとおりに、エーライトおよびビーライトの水和反応が100%進行すると仮定すると、水酸化カルシウムは、モルタル硬化体中に32.96質量%含まれると計算された。これを質量Bとした。
上記質量Aと上記質量Bと以下の式を用いて、上記粉砕物の水和率(セメント水和物の割合)を算出した。
水和率(質量%)=質量A/質量B×100
なお、セメント質硬化体の水和率を制御するため、セメント質硬化体に普通ポルトランドセメントクリンカ(水和率:0%)を任意の割合で混合して粉砕した。
[焼成用原料a~fの調製]
上記セメント質硬化体(表1中、セメント質硬化体に含まれるセメント水和物を「水和物」、セメントクリンカ鉱物を「クリンカ鉱物」と示す。)の粉砕物と、セメントクリンカ原料(表1中、「調合原料」と示す。)を、表1に示す配合割合で混合して、焼成用原料a~fを調製した。
なお、セメントクリンカ原料としては、セメント質硬化体を原料に用いていないセメント工場の窯入れ原料、石炭灰、二酸化ケイ素(関東化学社製、特級試薬)、炭酸カルシウム(関東化学社製、特級試薬)、及び排脱二水石膏を使用した。焼成用原料a~fの調製は、上記焼成用原料の化学組成が、モルタルの原料として用いた普通ポルトランドセメントクリンカの化学組成と同様になるように、セメントクリンカ原料の各量を定めることで行った。
[焼成用原料f1~f2の調製]
焼成用原料fに、排脱二水石膏を混合して、焼成用原料と排脱二水石膏の混合物(f1又はf2)中のSOの割合が表1に示す値となるように調製して、焼成用原料f1~f2を調製した。
Figure 2022159034000001
[実施例1~7、比較例1~9、参考例1~3]
表2に示す種類の焼成用原料を、プレス機を用いて成型することでペレットを作製し、該ペレットを、電気炉を用いて、1000℃で30分保持し、毎分10℃で昇温後、表2に示す焼成温度で30分間焼成した。焼成によって得られたセメントクリンカを、ディスクミルを用いて粉砕し、得られた粉砕物を用いて、セメントクリンカの鉱物組成を、XRD/リートベルト法を用いて測定した。
また、セメントクリンカの遊離石灰(f・CaO)の割合を、セメント協会標準試験方法JCAS I-01「遊離酸化カルシウムの定量方法」に準拠して測定した。
各々の結果を表2に示す。
また、実施例5及び7において、実施例5又は7で得られたセメントクリンカと石膏を粉砕、混合して、セメントを作製した。上記石膏の量は、セメント中の石膏の割合が、SO換算で2質量%となる量とし、各セメントのブレーン比表面積を表3に示す。
得られたセメントについて、「JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)」に準拠して、材齢3日、7日、28日の圧縮強さを測定した。
[参考例4]
セメントクリンカとして普通ポルトランドセメントクリンカを用いる以外は、実施例5と同様にしてセメントを作製し、材齢3日、7日、28日の圧縮強さを測定した。
結果を表3に示す。
Figure 2022159034000002
Figure 2022159034000003
表2の実施例1~7のセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合(0~0.14質量%)は、比較例1~9の遊離石灰(f・CaO)の割合(0.19~7.05質量%)よりも小さく、実施例1~7のセメントクリンカは、セメントクリンカ鉱物を形成する反応がより進んだものであることがわかる。
また、実施例1~6のセメントクリンカ中のエーライトの割合は56.1~59.1質量%であり、焼成温度が1,350℃~1,400℃と低いにもかかわらず、セメントクリンカ中のエーライトの割合を大きくすることができることがわかる。一方、比較例1~6(焼成温度:1,200~1,350℃)のセメントクリンカ中のエーライトの割合(17.6~53.7質量%)は、実施例1~6のセメントクリンカと比較して小さいことがわかる。また、比較例7~9(焼成温度:1,400℃)のセメントクリンカ中のエーライトの割合(52.9~57.1質量%)は、実施例1~6のセメントクリンカ中のエーライトの割合(56.1~59.1質量%)と同程度であるが、セメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合(0.37~0.39質量%)が、実施例1~6のセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合(0~0.14質量%)よりも大きいことがわかる。
なお、比較例4~6(焼成用原料中のSOの割合を変える以外は同じ条件で焼成したもの)の遊離石灰(f・CaO)の割合は同程度であることがわかる。同様の傾向は比較例7~9、参考例1~3でも見られた。このことから、焼成用原料中のSOの配合割合は、セメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合に影響を与えないことがわかる。
また、表3から、実施例5、7で得られたセメントクリンカを用いたセメントの、材齢7日、28日における圧縮強さ(7日:38.2~40.4N/mm、28日:57.5~60.5N/mm)は、参考例4(普通ポルトランドセメントクリンカを用いたセメント)の材齢7日、28日における圧縮強さ(7日:36.4N/mm、28日:58.9N/mm)と同程度であることがわかる。
[焼成用原料g1~g19の調製]
上記セメント質硬化体(表4中、セメント質硬化体に含まれるセメント水和物を「水和物」、セメントクリンカ鉱物を「クリンカ鉱物」と示す。)の粉砕物と、セメントクリンカ原料(表4中、「調合原料」と示す。)を、表4に示す配合割合で混合して、焼成用原料g1~g19を調製した。
なお、セメントクリンカ原料としては、焼成用原料a~fの調製で用いたものと同様のものを使用した。また、焼成用原料g1~g19を調製は、上記焼成用原料の化学組成が、モルタルの原料として用いた普通ポルトランドセメントクリンカの化学組成と同様になるように、セメントクリンカ原料の各量を定めることで行った。
Figure 2022159034000004
[実施例8~26]
表5に示す種類の焼成用原料を用いる以外は、実施例1と同様にしてセメントクリンカを得た。
得られたセメントクリンカの鉱物組成等を、実施例1と同様にして測定した。
各々の結果を表5に示す。
Figure 2022159034000005
表5の実施例8~26(焼成温度:1,350℃)のセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合は、0~0.38質量%であることがわかる。上記割合は、表2の比較例4~6(焼成温度:1,350℃)のセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合(0.40~0.51質量%)よりも小さい。中でも、セメントクリンカ原料とセメントクリンカ鉱物の質量比が0~2.33である実施例8~12、14~17、19、23~26のセメントクリンカ中の遊離石灰(f・CaO)の割合(0~0.20質量%)は特に小さいことがわかる。

Claims (6)

  1. セメント水和物を含みかつセメントクリンカ鉱物を含まない、または、セメント水和物及びセメントクリンカ鉱物を含む、セメント質硬化体を粉砕して粉砕物を得る粉砕工程と、
    上記粉砕物とセメントクリンカ原料を、上記粉砕物と上記セメントクリンカ原料を混合してなる焼成用原料中、上記セメント水和物及び上記セメントクリンカ鉱物の合計の割合が25質量%以上となるように、混合して上記焼成用原料を調製する原料調製工程と、
    上記焼成用原料を、1,320℃以上の温度で焼成してセメントクリンカを得る焼成工程と、
    を含むことを特徴とするセメントクリンカの製造方法。
  2. 上記焼成用原料中、上記セメントクリンカ原料と上記セメントクリンカ鉱物の質量比(上記セメントクリンカ原料/上記セメントクリンカ鉱物)が2.60以下である請求項1に記載のセメントクリンカの製造方法。
  3. 上記焼成用原料中、上記セメント水和物の割合が8.0質量%以上である請求項1又は2に記載のセメントクリンカの製造方法。
  4. 上記セメント質硬化体が、廃コンクリート、廃モルタル、及びコンクリートスラッジの中から選ばれる1種以上である請求項1~3のいずれか1項に記載のセメントクリンカの製造方法。
  5. 上記セメント質硬化体が、クリンカ骨材を含むものである請求項1~4のいずれか1項に記載のセメントクリンカの製造方法。
  6. 上記焼成工程で得られるセメントクリンカが、普通ポルトランドセメントクリンカとなるように、上記原料調製工程において、上記焼成用原料を調製する請求項1~5のいずれか1項に記載のセメントクリンカ製造方法。
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