JP2022158881A - 軟磁性合金、軟磁性合金薄帯および磁性部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】コアロスの温度特性が良好な磁性部品を得られる軟磁性合金等を提供することを目的とする。【解決手段】Feを含む軟磁性合金である。軟磁性合金は、結晶子と、結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含む。軟磁性合金の断面における結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満である。アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下である。アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である。【選択図】図4
Description
本発明は、軟磁性合金、軟磁性合金薄帯および磁性部品に関する。
特許文献1には、ナノ結晶の結晶粒径と、アモルファス相の平均厚さとの両方を特定の範囲内とし、ナノ結晶の表面近傍にあるアモルファス相の平均Fe濃度がナノ結晶の平均Fe濃度よりも低く、結晶化度が高い軟磁性合金が開示されている。
本発明は、コアロスの温度特性が良好な磁性部品を得られる軟磁性合金等を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の軟磁性合金は、
Feを含む軟磁性合金であり、
前記軟磁性合金は、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含み、
前記軟磁性合金の断面における前記結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満であり、
前記アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下であり、前記アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である。
Feを含む軟磁性合金であり、
前記軟磁性合金は、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含み、
前記軟磁性合金の断面における前記結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満であり、
前記アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下であり、前記アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である。
前記結晶子の平均粒径が15.0nm以下であってもよい。
さらにMを含んでもよく、
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWから選択される1種以上であってもよい。
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWから選択される1種以上であってもよい。
Mの合計含有量が3.5at%以上10.0at%以下であってもよい。
さらにPを含んでもよく、
Pの含有量が0より大きく6.0at%以下であってもよい。
Pの含有量が0より大きく6.0at%以下であってもよい。
さらにCuを含んでもよく、
Cuの含有量が0より大きく3.0at%以下であってもよい。
Cuの含有量が0より大きく3.0at%以下であってもよい。
さらにCoを含んでもよく、
Coの含有量が0より大きくFeの含有量以下であってもよい
Coの含有量が0より大きくFeの含有量以下であってもよい
本発明の軟磁性合金薄帯は上記の軟磁性合金を含む。
本発明の軟磁性合金粉末は上記の軟磁性合金を含む。
本発明の第1の磁性部品は上記の軟磁性合金薄帯が積層されてなる。
本発明の第2の磁性部品は上記の軟磁性合金薄帯が巻き回されてなる。
本発明の第3の磁性部品は上記の軟磁性合金粉末を含む。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
本実施形態の軟磁性合金は、
Feを含む軟磁性合金であり、
前記軟磁性合金は、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含み、
前記軟磁性合金の断面における前記結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満であり、
前記アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下であり、前記アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である。
Feを含む軟磁性合金であり、
前記軟磁性合金は、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含み、
前記軟磁性合金の断面における前記結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満であり、
前記アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下であり、前記アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である。
本実施形態の軟磁性合金は、上記の構成を有することにより、温度特性を良好にすることができる。特に、上記の軟磁性合金を有する軟磁性合金薄帯および当該軟磁性合金薄帯を含む磁性部品の温度特性を良好にすることができる。
従来、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相と、を含む軟磁性合金が知られていた。そして、軟磁性合金の温度変化により結晶子の磁気異方性が変化することが知られていた。
本発明者らは、結晶子の合計面積比率と、アモルファス相の平均厚みと、アモルファス相の厚みの標準偏差と、を上記の特定の範囲内に制御することで、温度特性が向上することを見出した。上記の各パラメータを上記の特定の範囲内に制御することで温度変化による実効的な磁気異方性の変化が打ち消されるために温度特性が向上する。
以下、上記の各パラメータの測定方法について説明する。
本実施形態では、軟磁性合金を観察し、得られた画像から各パラメータを算出する。軟磁性合金の観察には透過型電子顕微鏡(Transmisson Electron Microscope;TEM)を用いる。以下、TEMを用いる方法について説明する。
TEMを用いる場合における評価方法には特に制限はない。例えば明視野観察法および高分解能観察法が挙げられる。
本実施形態では、結晶子の形状を正確に評価するため、TEMによる観察に用いるサンプル(以下、単にTEMサンプルと呼ぶ)の厚さを通常よりも薄くする。具体的には、通常のTEMサンプルの厚さが80~100nm程度であるのに対し、本実施形態では20nm以下とする。上記TEMサンプルを作製する方法には特に制限はないが、例えば収束イオンビーム走査電子顕微鏡(Focused Ion Beam-Scanning Electron Microscope;FIB-SEM)を用いてTEMサンプルを作製することができる。軟磁性合金薄帯を用いてTEMサンプルを作製する場合は、軟磁性合金薄帯の厚み方向に垂直ないずれかの面を研磨してTEMサンプルを作製する。
TEMサンプルが厚い場合には、TEMサンプルが薄い場合と比較して結晶子の合計面積比率が大きく見える場合がある。また、TEMサンプルが厚い場合には、複数の結晶子が厚さ方向で重なり一つの結晶子として見える場合がある。この場合にはアモルファス相の厚みを正確に評価できなくなる。本実施形態では、TEMサンプルの厚さを薄くすることで、上記の各パラメータが正確に評価できる。また、TEMサンプルの厚さは、収束電子回折(Convergent-Beam Electron Diffraction;CBED)法や電子エネルギー損失分光(Electron Energy-Loss Spectroscopy;EELS)法を用いて評価してもよく、直接、TEMサンプルを観察して評価してもよい。
TEMにより得られる画像の大きさおよび倍率には特に制限はない。画像の大きさは、10個以上の結晶子が完全に含まれる大きさであればよく、30個以上の結晶子が完全に含まれる大きさであることが好ましい。TEMにより得られる画像の倍率は、上記の各パラメータが測定できる倍率であればよい。具体的には、100000~1000000倍程度である。
図1に例示するように、結晶子11と、結晶子11の周囲に存在するアモルファス相13と、が軟磁性合金1に含まれる。なお、図1および後述する図2は各パラメータの測定方法を説明するための模式図である。図1および後述する図2は実際の結晶子11の形状および実際のアモルファス相13の形状を反映していない。
画像の面積に対する結晶子11の合計面積の比率が結晶子の合計面積比率である。
以下、アモルファス相13の厚みについて説明する。アモルファス相13の厚みの算出では、全体が観察できる結晶子11同士の間にあるアモルファス相13の厚みのみを算出する。図1では、右下の結晶子11と他の結晶子11同士の間にあるアモルファス相13の厚みは算出しない。右下の結晶子11は全体が画像に含まれないためである。
全体が観察できる各結晶子11について、重心11gを算出する。そして、任意の2つの結晶子11に含まれる2つの重心11g同士を結ぶ仮想線を引く。ただし、2つの重心11g同士を結ぶ仮想線が前記2つの結晶子11以外の結晶子11(全体が観察できない結晶子11を含む)を通過する場合には、仮想線を引かない。
図1では、全体が観察できる各結晶子11について、左上の結晶子11と右上の結晶子11とを結ぶ仮想線を引かない。仮想線を引くと二つの結晶子11の間にある結晶子11を通過するためである。逆に、全体が観察できる各結晶子11について、左上の結晶子11と右上の結晶子11との組み合わせ以外の二つの結晶子11の組み合わせについては、二つの結晶子11同士を結ぶ仮想線を引く。図1に示すように、仮想線を引いても二つの結晶子11以外の結晶子11は通過しないためである。
図2に軟磁性合金1に含まれ、仮想線を結んだ二つの結晶子11を例示する。仮想線と結晶子11の外周とが交わる点を端点11eとする。そして、仮想線上にあり端点11e同士を結ぶ線分の長さを、二つの結晶子11の間にあるアモルファス相13の厚みとする。
そして、画像に含まれる全ての仮想線について、アモルファス相13の厚みを算出する。そして、全てのアモルファス相13の厚みを平均することでアモルファス相13の平均厚みを算出する。さらに、画像に含まれる全てのアモルファス相13の厚みから、画像に含まれる全てのアモルファス相13の厚みの標準偏差を算出する。
具体的には、仮想線の本数すなわち厚みの個数をn、各アモルファス相の厚みをx1、x2、・・・、xn、アモルファス相13の平均厚みをμとして、μが下記の式で算出される。
このとき、アモルファス相13の厚みの母分散σ2が下記の式で算出される。
そして、σ2の正の平方根がアモルファス相13の厚みの標準偏差σとなる。
本実施形態における結晶子11の種類には特に制限はない。結晶子11がα-Feを主成分とするナノサイズの結晶であってもよい。具体的には、結晶子11がα-Feのみを含んでいてもよく、結晶子11が上記のα-Fe以外に、後述するX1、X2、M、B、P、Si、Cuから選択される1種以上の元素を含んでいてもよい。例えば結晶子11がSiおよび/またはCoを含んでいてもよい。結晶子11におけるX1、X2、M、B、P、Si、Cuから選択される1種以上の元素の含有量には特に制限はない。また、結晶子11の平均粒径が15nm以下であることが好ましい。結晶子11の平均粒径が小さい場合には温度変化による実効的な磁気異方性の変動が減少し、温度特性が向上するためである。
本実施形態に係る軟磁性合金の組成については、Feを含む点以外には特に制限はない。
本実施形態に係る軟磁性合金は、さらに、Mを含んでもよい。MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWから選択される1種以上である。MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、VおよびWから選択される1種以上であってもよい。Mを含むことで温度特性が向上しやすくなる。
Mの合計含有量が0以上10.0at%以下であってもよく、0より大きく10.0at%以下であってもよく、3.5at%以上10.0at%以下であってもよい。Mの含有量が小さいほど、結晶子11の粒径が増加しやすくなる。結晶子11の粒径が増加する場合には実効的な磁気異方性が増加しやすくなり、温度特性が悪化しやすくなる。Mの含有量が10.0at%を上回るとアモルファス相13の厚みが増加しやすくなり、前記アモルファス相の平均厚みが10.0nmを上回りやすくなる。前記アモルファス相の平均厚みが10.0nmを上回る場合には温度特性が悪化する。
本実施形態に係る軟磁性合金は、さらに、Pを含んでもよい。そして、Pの含有量が0より大きく6.0at%以下であってもよい。Pの含有量が上記の範囲内であることにより、アモルファス相13の組成を好適に制御しやすくなり、アモルファス相13の平均厚みおよびアモルファス相13の厚みの標準偏差を上記の範囲内に制御しやすくなる。
本実施形態に係る軟磁性合金は、さらに、Cuを含んでもよい。そして、Cuの含有量が0より大きく3.0at%以下であってもよい。Cuの含有量が上記の範囲内である場合には軟磁性合金において結晶子11が生じる際に結晶が均等に成長しやすくなる。その結果、アモルファス相13の平均厚みおよびアモルファス相13の厚みの標準偏差を上記の範囲内に制御しやすくなる。
本実施形態に係る軟磁性合金は、さらに、Coを含んでもよい。そして、Coの含有量が0より大きくFeの含有量以下であってもよい。具体的には、Coの含有量をFeの含有量で割った値が0より大きく1.0以下であってもよい。軟磁性合金がCoを含むことにより、軟磁性合金の微細構造を変化させることなく特性を向上させることができる。
本実施形態に係る軟磁性合金の組成についてさらに詳細に説明する。本実施形態に係る軟磁性合金は、
組成式(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e))MaBbPcSidCue(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金であってもよく、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1つ以上、
X2はAl、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Cr、Ga、Bi、N、O、C、Sおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWからなる群から選択される1つ以上であり、
0≦a≦0.1500
0≦b≦0.2000
0≦c≦0.2000
0≦d≦0.2000
0≦e≦0.0400
0.7000≦1-(a+b+c+d+e)≦0.9000
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.70
であってもよい。
組成式(Fe(1-(α+β))X1αX2β)(1-(a+b+c+d+e))MaBbPcSidCue(原子数比)からなる主成分を有する軟磁性合金であってもよく、
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1つ以上、
X2はAl、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Cr、Ga、Bi、N、O、C、Sおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上、
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWからなる群から選択される1つ以上であり、
0≦a≦0.1500
0≦b≦0.2000
0≦c≦0.2000
0≦d≦0.2000
0≦e≦0.0400
0.7000≦1-(a+b+c+d+e)≦0.9000
α≧0
β≧0
0≦α+β≦0.70
であってもよい。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の各成分について詳細に説明する。
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWからなる群から選択される1つ以上である。MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、VおよびWから選択される1種以上であってもよい。
Mの含有量(a)は0≦a≦0.1500を満たしてもよく、0<a≦0.1500を満たしてもよい。0.0300≦a≦0.1200を満たしてもよく、0.0350≦a≦0.1000を満たしてもよい。
Bの含有量(b)は0≦b≦0.2000を満たしてもよい。すなわち、Bは含有しなくてもよい。0.0500≦b≦0.1400を満たしてもよく、0.0700≦b≦0.1400を満たしてもよい。
Pの含有量(c)は0≦c≦0.2000を満たしてもよい。すなわち、Pは含有しなくてもよい。0≦c≦0.0700を満たしてもよく、0.0001≦c≦0.0700を満たしてもよく、0.0001≦c≦0.0600を満たしてもよい。
Siの含有量(d)は0≦d≦0.2000を満たしてもよい。すなわち、Siは含有しなくてもよい。0≦d≦0.1350を満たしてもよく、0≦d≦0.0500を満たしてもよく、0≦d≦0.0300を満たしてもよい。
Cuの含有量(e)は0≦e≦0.0400を満たしてもよく、0≦e≦0.0300を満たしてもよい。すなわち、Cuは含有しなくてもよい。0.0001≦e≦0.0300を満たしてもよく、0.0001≦e≦0.0250を満たしてもよく0.0001≦e≦0.0200を満たしてもよい。
また、本実施形態に係る軟磁性合金は、0.7000≦1-(a+b+c+d+e)≦0.9000を満たしてもよく、0.7350≦1-(a+b+c+d+e)≦0.8800を満たしてもよく、0.0780≦1-(a+b+c+d+e)≦0.8800を満たしてもよい。
また、本実施形態の軟磁性合金においては、Feの一部をX1および/またはX2で置換してもよい。
X1はCoおよびNiからなる群から選択される1つ以上である。X1の含有量に関してはα=0でもよい。すなわち、X1は含有しなくてもよい。また、X1の原子数は組成全体の原子数を100at%として60at%以下であってもよい。すなわち、0≦α{1-(a+b+c+d+e)}≦0.600を満たしてもよい。また、0≦α{1-(a+b+c+d+e)}≦0.300を満たしてもよい。
特にX1がCoのみである場合には、Feの含有量に対するCoの含有量の割合に関して、0<α/{1-(α+β)}≦1.000を満たしてもよい。
X2はAl、Mn、Ag、Zn、Sn、As、Sb、Cr、Ga、Bi、N、O、C、Sおよび希土類元素からなる群より選択される1つ以上である。X2の含有量に関してはβ=0でもよい。すなわち、X2は含有しなくてもよい。また、X2の原子数は組成全体の原子数を100at%として5.0at%以下であってもよく、3.0at%以下であってもよい。すなわち、0≦β{1-(a+b+c+d+e)}≦0.050を満たしてもよく、0≦β{1-(a+b+c+d+e)}≦0.030を満たしてもよい。
FeをX1および/またはX2に置換する置換量の範囲としては、原子数ベースでFeの70%以下としてもよい。すなわち、0≦α+β≦0.70としてもよい。
なお、本実施形態の軟磁性合金は、上記の主成分に含まれる元素以外の元素、すなわちFe、X1、X2、M、B、P、Si、Cu以外の元素を不可避的不純物として軟磁気特性に大きな影響を与えない範囲で含んでいてもよい。例えば、軟磁性合金100質量%に対して0.1質量%以下、含んでいてもよい。
軟磁性合金の形状については特に制限はない。例えば薄帯形状や粉末形状が挙げられる。
本実施形態に係る軟磁性合金薄帯は、薄帯形状である上記の軟磁性合金のことである。
本実施形態に係る磁性部品は上記の軟磁性合金を有する。上記の軟磁性合金薄帯を有していてもよい。さらに、上記の軟磁性合金薄帯が積層されてなる磁性部品であってもよく、上記の軟磁性合金薄帯が巻き回されてなる磁性部品であってもよい。
本実施形態に係る磁性部品は上記の軟磁性合金を有する。上記の軟磁性合金薄帯を有していてもよい。さらに、上記の軟磁性合金薄帯がクラッキング等で小片化されたものが積層されてなる磁性部品であってもよい。上記の軟磁性合金薄帯が小片化されることで、局所的な発熱を抑えることができるため、磁性部品の特性が向上する。
本実施形態に係る磁性部品は上記の軟磁性合金を有することにより、温度特性、特にコアロスの温度特性が改善された磁性部品となる。特に、高周波域(100kHz~1MHz程度)でのコアロスの温度特性が改善された磁性部品となる。
以下、本実施形態の軟磁性合金の製造方法について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について、特に限定されないが、たとえば図3に示す装置を用いる単ロール法により軟磁性合金薄帯を製造する方法が挙げられる。
単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法には特に制限はないが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(溶湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はなく、各金属元素の純金属の融点等を考慮して決定すればよい。例えば1200~1500℃とすることができる。
単ロール法においては、チャンバー35の内部において、ノズル31の底部にあるスリットを通じて、得られた溶融金属32を矢印の方向に回転させたロール33に供給される。供給された溶融金属32が急冷されて一様な軟磁性合金薄帯34が製造される。ロール33の材質には特に制限はない。例えば銅であってもよい。また、主にロール33の回転速度を調整することで得られる軟磁性合金薄帯34の厚さを調整することができるが、例えばノズル31とロール33との間隔や溶融金属32の温度などを調整することでも得られる軟磁性合金薄帯34の厚さを調整することができる。軟磁性合金薄帯34の厚さには特に制限はないが、例えば10~50μmとすることができる。
ロール33の温度やチャンバー内部の雰囲気および圧力には特に制限はない。例えば、ロール33の温度を室温~50℃としてもよい。チャンバー35の内部の雰囲気は大気中としてもよく、不活性ガス雰囲気としてもよい。
次に、得られた軟磁性合金薄帯34に対して熱処理を行う。ここで、本実施形態に係る軟磁性合金を得るためには、熱処理条件を好適に制御する必要がある。具体的には、少なくとも三段階で熱処理を行う。第1段では、第1結晶化温度Tx1±10℃の範囲内の温度で熱処理を行う。第1段での熱処理温度をT1stとする。第3段では、第2結晶化温度Tx2未満である温度で熱処理を行う。第3段での熱処理温度をT3rdとする。第2段では、T1stよりも10℃以上高くT3rdよりも10℃以上低い温度で熱処理を行う。第2段での熱処理温度をT2ndとする。なお、第1結晶化温度Tx1はFeを主成分とする結晶が析出し始める温度であり、第2結晶化温度Tx2はFeとその他構成元素との化合物が生成され始める温度である。Tx1およびTx2は軟磁性合金薄帯34の組成により変化する。
そして、第1段から第3段までの各段階でそれぞれ1~180minの保持時間を設定する。Mの合計含有量が3.5at%以上である場合には、保持時間は10~180minであってもよく、好ましくは30~60minである。また、Mの含有量が小さい場合には、保持時間を短くすることで結晶子の粒径の増加を抑制しやすくなる。また、室温から第1段までの昇温速度、第1段から第2段までの間の昇温速度および第2段から第3段までの昇温速度は1~100℃/minに設定する。Mの合計含有量が3.5at%以上である場合には、昇温速度は好ましくは、5~50℃/minである。また、Mの含有量が小さい場合には、昇温速度を速くすることで結晶子の粒径の増加を抑制しやすくなる。なお、第1段から第3段までの各段階での熱処理は連続的に実施する。すなわち、第1段と第2段との間、および、第2段と第3段との間で室温に冷却しない。また、T1st、T2ndおよびT3rdで昇温速度を0とし、上記の保持時間、温度を保持することが重要である。昇温速度を0とせずに昇温速度を低下させるだけでは本実施形態に係る軟磁性合金薄帯34は得られにくい。
第1段では、主に、結晶子となる微結晶核が生成する。第2段では、主に、結晶子の1次成長が進行して微結晶核が結晶子となる。第3段では、主に、結晶子の2次成長が進行する。全ての段階でTx2よりも低い温度で熱処理を行うため、Feの化合物の結晶が生じにくい。
以上の方法で本実施形態に係る軟磁性合金薄帯を得ることができる。
本実施形態に係る磁性部品は上記の軟磁性合金薄帯を含む。軟磁性合金薄帯を含む磁性部品を作製する方法には特に制限はない。例えば、軟磁性合金薄帯を積層する方法や、軟磁性合金薄帯を巻き回す方法、小片化した軟磁性合金薄帯を積層する方法など、通常用いられる方法で作製すればよい。
本実施形態に係る軟磁性合金の形状には特に制限はない。上記した通り、薄帯形状が例示されるが、それ以外にも粉末形状や薄膜形状、ブロック形状等も考えられる。
本実施形態に係る磁性部品の種類には特に制限はなく、特に高周波領域においてコアロスの温度特性が優れていることが求められる磁性部品、例えばコイル部品、圧粉磁心が挙げられる。また、コイル部品としてはリアクトル、チョークコイル、トランスが挙げられる。さらに、本実施形態の電子機器は、上記の磁性部品を含む。電子機器の種類には特に制限はなく、例えばDC-DCコンバータ等が挙げられる。また、電子機器の用途には特に制限はなく、例えばハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(EV)等が挙げられる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(実験例1)
表1、表3~表7では、各表に示す合金組成となるように原料金属を秤量し、高周波加熱にて溶解し、母合金を作製した。表2では、全ての試料が表1の試料番号1と同組成となるように母合金を作製した。表8では、全ての試料が表1の試料番号3と同組成となるように母合金を作製した。なお、本実施例の合金組成は全てX1およびX2を含まない組成である。
表1、表3~表7では、各表に示す合金組成となるように原料金属を秤量し、高周波加熱にて溶解し、母合金を作製した。表2では、全ての試料が表1の試料番号1と同組成となるように母合金を作製した。表8では、全ての試料が表1の試料番号3と同組成となるように母合金を作製した。なお、本実施例の合金組成は全てX1およびX2を含まない組成である。
その後、作製した母合金を加熱して溶融させて1200~1500℃の溶融金属とした後に、大気中において単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作製した。
得られた各薄帯に対してX線回折測定を行い、ナノ結晶より大きな結晶がないことを確認した。
その後、表1~表8に示す熱処理条件で熱処理を行った。全ての実施例では、T1stがTx1±10℃の範囲内であり、T3rdがTx2未満であり、T2ndがT1stよりも10℃以上高くT3rdよりも10℃以上低い温度であることを確認した。なお、表1、表3~表7では、室温からT1stまでの昇温速度、T1stからT2ndまでの昇温速度、T2ndからT3rdまでの昇温速度はいずれも10℃/minとした。
得られた熱処理後の薄帯の組成と母合金の組成とが変化していないことをICP分析にて確認した。
X線回折装置(XRD)により、熱処理後の各薄帯がα-Feである結晶子を含むことを確認した。さらに、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた観察を行った。TEMを用いた観察では、倍率を1.00×105~3.00×105倍とし、観察範囲の大きさを128nm×128nmとした。厚さが20nmになるようにFIBを用いてTEMサンプルを作製した。TEMサンプルの厚みの確認は電子エネルギー損失分光法(EELS)により行った。TEMを用いた観察により、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚み、アモルファス相の厚みの標準偏差を算出した。結果を表1~表8に示す。
さらに、得られた各薄帯を5枚、積層して作製した磁心について、コアロスの温度特性を評価した。具体的には、-30℃、-10℃、0℃、10℃、30℃、50℃、80℃、100℃、120℃、140℃のそれぞれの温度でBHアナライザ〔SY8217:岩通計測製〕を用いて、測定周波数:600kHz、最大磁束密度:60mTの条件で測定した。そして、各温度でのコアロスについて、30℃でのコアロスからの変化率を算出した。コアロスの変化率の絶対値が最も大きくなる場合におけるコアロスの変化率の絶対値をコアロス最大変化率とした。
コアロス最大変化率が6.0%未満である場合をA+、6.0%以上7.0%未満である場合をA、7.0%以上11.0%未満である場合をB、11.0%以上20.0%未満である場合をC、20.0%以上である場合をDとした。A+~Cである場合を良好とし、A+~Bである場合をさらに良好とし、A+~Aである場合をさらに良好とし、A+である場合を最も良好とした。
表1より、試料番号1a、2a、2b、1~3はいずれも結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差がいずれも所定の範囲内であった。その結果、全ての試料でコアロスの温度特性が良好となった。試料番号1、2、2bはコアロスの温度特性が特に良好となった。
Mの含有量(a)が小さい試料番号3は試料番号1、1a、2、2a、2bと比較してコアロスの温度特性が悪化した。
試料番号1、1a、3について、30℃を基準としたコアロスの温度変化率を示すグラフを図4に示す。Mを6.0at%含み、Si、Cuを含まない試料番号1は、30℃でのコアロスが最も高い結果となった。Mを6.0at%、Cuを0.5at%含み、Siを含まない試料番号1aは温度が高いほどコアロスが高くなる結果となった。Mを3.0at%、Cuを1.0at%含み、Siを13.5at%含む試料番号3は80℃でのコアロスが最も低く、80℃より低くても高くてもコアロスが高くなる結果となった。
表2は組成を試料番号1と同一として熱処理条件を変化させた実施例および比較例を示す。3段階での熱処理を実施した試料番号1、4~30はいずれもコアロスの温度特性が良好となった。試料番号1、5~30はコアロスの温度特性が特に良好になった。
これに対し、熱処理を1段階または2段階で行った試料番号31、32、35~49はいずれも、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差のうち1つ以上が所定の範囲外となった。その結果、コアロスの温度特性が悪化した。
熱処理を3段階で行ったが2段階目および3段階目の保持時間が長すぎた試料番号34はアモルファス相の平均厚みが小さくなりすぎ、コアロスの温度特性が悪化した。また、T3rdが高すぎた試料番号33は結晶子の合計面積比率が大きくなりすぎたため、コアロスの温度特性が悪化した。
表3はMの種類を変化させた点以外は試料番号1と同条件で実施した実施例を示す。Mの種類を変化させた試料番号50~57は試料番号1と同様にコアロスの温度特性が良好となった。
表4は組成を試料番号1と同一とし、熱処理条件を変化させることで各パラメータを変化させた実施例および比較例を示す。
試料番号58、試料番号59および試料番号6は3段階目の保持時間以外は同条件で実施した実施例である。3段階目の保持時間が短いほど結晶子の合計面積比率が低下し、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差が大きくなる傾向にあった。
試料番号1、試料番号60、試料番号4および試料番号33はT3rd以外は同条件で実施した実施例および比較例である。T3rdが低いほど結晶子の合計面積比率が低下し、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差が大きくなる傾向にあった。
表5Aの試料番号61~70はMの含有量(a)とBの含有量(b)を変化させた点以外は同条件で実施した実施例および比較例である。Mの含有量が大きくBの含有量が小さいほど結晶子の合計面積比率が小さくなる傾向にあった。また、Mの含有量が3.5at%以上10at%以下である試料番号65~69はMの含有量が3.5at%未満または10at%を上回る試料番号61~64、70と比較してコアロスの温度特性が良好となった。
表5Aの試料番号71~77は試料番号1からMの含有量(a)とFeの含有量を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。Mの含有量が大きいほど結晶子の合計面積比率が小さくなる傾向にあった。また、Mの含有量が3.5at%以上10at%以下である試料番号1、73~76はMの含有量が3.5at%未満または10at%を上回る試料番号71、72、77と比較してコアロスの温度特性が良好となった。Mの含有量が4.5at%以上10at%以下である試料番号1、74~76はコアロスの温度特性が特に良好となった。
表5Aの試料番号50、71-2~76-2は試料番号1、71~76からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Aの試料番号51、71-3~76-3は試料番号1、71~76からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Aの試料番号52、71-4~76-4は試料番号1、71~76からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Aの試料番号53、71-5~74-5は試料番号1、71~74からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Bの試料番号54、71-6~74-6は試料番号1、71~74からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Bの試料番号1-7、71-7~74-7は試料番号1、71~74からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Bの試料番号55、71-8~75-8は試料番号1、71~75からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。表5Bの試料番号56、71-9~76-9は試料番号1、71~76からMの種類を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。
表5Aおよび表5Bより、Mの種類を変化させても他の条件を変化させなければコアロスの温度特性は同様となった。
表6の試料番号78~84は試料番号67からBの含有量(b)とPの含有量(c)を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。Pの含有量が0より大きく6.0at%以下である試料番号67、79~83はPを含まない試料番号78およびPの含有量が6.0at%を上回る試料番号84と比較してコアロスの温度特性が良好となった。
表6の試料番号85~91は試料番号1からPの含有量(c)とFeの含有量を変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。Pの含有量が0より大きく6.0at%以下である試料番号1、86~90はPを含まない試料番号85およびPの含有量が6.0at%を上回る試料番号91と比較してコアロスの温度特性が良好となった。
表7は試料番号1aについてFeおよびCuの含有量の変化に伴いTx1が変化するためにT1stを変化させた点以外は同条件で実施した実施例である。Cuの含有量(e)が大きいほど結晶子の平均粒径が小さくなる傾向にあった。そして、Cuの含有量が0以上3.0at%以下である試料番号1a、92~97、96a、96b、97a、97bは、Cuの含有量が3.0at%を上回る試料番号97cと比較してコアロスの温度特性が良好となった。
表8は組成を試料番号3と同一として熱処理条件を変化させた実施例および比較例を示す。3段階での熱処理を実施した試料番号3、98~120はいずれもコアロスの温度特性が良好となった。
これに対し、熱処理を1段階または2段階で行った試料番号121、122、124、125はいずれも、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差のうち1つ以上が所定の範囲外となった。その結果、コアロスの温度特性が悪化した。
熱処理を3段階で行ったが、T3rdが高すぎた試料番号123はアモルファス相の平均厚みが小さくなりすぎたため、コアロスの温度特性が悪化した。
(実験例2)
昇温速度を上昇させ保持時間を短縮させた点以外は試料番号61と同条件で実施した。結果を表9に示す。
昇温速度を上昇させ保持時間を短縮させた点以外は試料番号61と同条件で実施した。結果を表9に示す。
表9より、Mを含まない場合であっても熱処理条件を好適に制御することで結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差をいずれも所定の範囲内とすることができた。その結果、Mを含まない場合であってもコアロスの温度特性を良好とすることができた。
(実験例3)
試料番号1aについて原子数比でFeの1/5をCoに置換した点以外は同組成で試料番号127~155を実施した。すなわち、試料番号127~155はα=0.2000とした点以外は試料番号1aと同組成で実施した。また、試料番号127~155は熱処理条件を表10に示す条件として実施した。結果を表10に示す。
試料番号1aについて原子数比でFeの1/5をCoに置換した点以外は同組成で試料番号127~155を実施した。すなわち、試料番号127~155はα=0.2000とした点以外は試料番号1aと同組成で実施した。また、試料番号127~155は熱処理条件を表10に示す条件として実施した。結果を表10に示す。
表10より、3段階での熱処理を実施した試料番号127~150はいずれもコアロスの温度特性が良好となった。
これに対し、熱処理を1段階または2段階で行った試料番号151、152、154、155はいずれも、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差のうち1つ以上が所定の範囲外となった。その結果、コアロスの温度特性が悪化した。
熱処理を3段階で行ったがT3rdが高すぎた試料番号153は結晶子の合計面積比率が大きくなりすぎたため、コアロスの温度特性が悪化した。
また、Coを含む各実施例はCoを含まない試料番号1aと比較してコアロスの温度特性を良好とすることができた。
(実験例4)
試料番号127についてFeとCoとの含有割合を変化させた点以外は同条件で試料番号156~166を実施した。結果を表11に示す。なお、試料番号1aと試料番号127、156~166とでは、試料番号1aのT1stが460℃であり試料番号127、156~166のT1stが450℃である点以外は熱処理条件が同一である。
試料番号127についてFeとCoとの含有割合を変化させた点以外は同条件で試料番号156~166を実施した。結果を表11に示す。なお、試料番号1aと試料番号127、156~166とでは、試料番号1aのT1stが460℃であり試料番号127、156~166のT1stが450℃である点以外は熱処理条件が同一である。
表11より、実験例4で新たに実施した試料番号156~166は全てコアロスの温度特性が良好となった。
Coの含有量が0より大きくFeの含有量以下である試料番号127、156~164は、Coを含まない試料番号1aおよびCoの含有量がFeの含有量を上回る試料番号165~166と比較してさらにコアロスの温度特性が良好となった。
(実験例5)
試料番号127についてFeとCoとNiとの含有割合を変化させた点以外は同条件で試料番号167~175を実施した。結果を表12に示す。なお、表12に記載した全ての実施例の熱処理条件は同一である。
試料番号127についてFeとCoとNiとの含有割合を変化させた点以外は同条件で試料番号167~175を実施した。結果を表12に示す。なお、表12に記載した全ての実施例の熱処理条件は同一である。
表12より、実験例5で新たに実施した試料番号167~175は全てコアロスの温度特性が良好となった。Coを含まずNiのみを含む試料番号175と比較して、試料番号127、167~174はコアロスの温度特性が特に良好となった。
(実験例6)
試料番号1aについてFeとX2との含有割合、および/または、X2の種類を変化させた点以外は同条件で試料番号176~228を実施した。結果を表13A~表13Dに示す。なお、表13A~表13Dに記載した全ての実施例の熱処理条件は同一である。
試料番号1aについてFeとX2との含有割合、および/または、X2の種類を変化させた点以外は同条件で試料番号176~228を実施した。結果を表13A~表13Dに示す。なお、表13A~表13Dに記載した全ての実施例の熱処理条件は同一である。
表13A~表13Dより、実験例6で新たに実施した試料番号176~223は全てコアロスの温度特性が良好となった。
(実験例7)
(試料No.1p-1、1p-2)
組成が原子数比でFe0.820Nb0.060B0.090P0.030である母合金が得られるように各種原料金属等をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
(試料No.1p-1、1p-2)
組成が原子数比でFe0.820Nb0.060B0.090P0.030である母合金が得られるように各種原料金属等をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、1500℃の溶融状態の金属とした後に、ガス加熱温度30℃とし、露点調整したアルゴンをチャンバー内に充填してチャンバー内の蒸気圧を1hPaとしてガスアトマイズ法により粉末を作製した。また、得られる軟磁性金属粉末の平均粒径(D50)が24μmとなるようにふるい分けにより分級した。
次に、得られた粉末に対して表14に示す条件で熱処理を行った。
得られた粉末に対し、X線回折装置(XRD)により、熱処理後の粉末がα-Feである結晶子を含むことを確認した。さらに、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた観察を行った。TEMを用いた観察では、倍率を1.00×105~3.00×105倍とし、観察範囲の大きさを128nm×128nmとした。厚さが20nmになるようにFIBを用いてTEMサンプルを作製した。TEMサンプルの厚みの確認は電子エネルギー損失分光法(EELS)により行った。TEMを用いた観察により、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚み、アモルファス相の厚みの標準偏差を算出した。
得られた熱処理後の粉末の組成と母合金の組成とが変化していないことをICP分析にて確認した。
次に、作製した軟磁性合金の粉末を用いて磁気コア(トロイダルコア)を作製した。まず、各粉末に対して絶縁バインダとなるフェノール樹脂を、フェノール樹脂量が全体の3質量%になるよう混合した。次に、攪拌機として一般的なプラネタリーミキサーを用いて500μm程度の造粒粉となるように造粒した。次に、得られた造粒粉を面圧4ton/cm2(392MPa)で成形し、外径18mm、内径10mm、高さ6.0mmのトロイダル状の成形体を作製した。得られた成形体を150℃で硬化させ、トロイダルコアを作製した。
さらに、得られたトロイダルコアについて、コアロスの温度特性を評価した。具体的には、-30℃、-10℃、0℃、10℃、30℃、50℃、80℃、100℃、120℃、140℃のそれぞれの温度でBHアナライザ〔SY8217:岩通計測製〕を用いて、測定周波数:600kHz、最大磁束密度:60mTの条件で測定した。そして、各温度でのコアロスについて、30℃でのコアロスからの変化率を算出した。コアロスの変化率の絶対値が最も大きくなる場合におけるコアロスの変化率の絶対値をコアロス最大変化率とした。結果を表14に示す。なお、評価基準は実験例1と同一とした。
比較のために、合金形状が薄帯形状である点以外は試料No.1p-2と実質的に同条件で実施した試料No.1の結果を表14に示す。
(試料No.127p-1、127p-2)
組成が原子数比で(Fe0.800Co0.200)0.825Nb0.060B0.080P0.030Cu0.005である母合金が得られるように各種原料金属等をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
組成が原子数比で(Fe0.800Co0.200)0.825Nb0.060B0.080P0.030Cu0.005である母合金が得られるように各種原料金属等をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
試料No.127p-1については、以降の工程はT1st以外、試料No.1p-1と同様とした。試料No.127p-2については、以降の工程はT1st以外、試料No.1p-2と同様とした。結果を表14に示す。
比較のために、合金形状が薄帯形状である点以外は試料No.127p-2と実質的に同条件で実施した試料No.127の結果を表14に示す。
表14より、実験例7で新たに実施した試料番号1p-1、127p-1は熱処理条件が不適切であったため、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差が所定の範囲外となった。その結果、コアロスの温度特性が悪化した。また3段階の熱処理を行った試料番号1p-2、127p-2は適切な熱処理が行われたため、結晶子の合計面積比率、アモルファス相の平均厚みおよびアモルファス相の厚みの標準偏差が所定の範囲内となった。その結果、コアロスの温度特性が良好となった。
1…軟磁性合金
11…結晶子
13…アモルファス相
31…ノズル
32…溶融金属
33‥ロール
34…軟磁性合金薄帯
35…チャンバー
11…結晶子
13…アモルファス相
31…ノズル
32…溶融金属
33‥ロール
34…軟磁性合金薄帯
35…チャンバー
Claims (12)
- Feを含む軟磁性合金であり、
前記軟磁性合金は、結晶子と、前記結晶子の周囲に存在するアモルファス相とを含み、
前記軟磁性合金の断面における前記結晶子の合計面積比率が40%以上60%未満であり、
前記アモルファス相の平均厚みが3.0nm以上10.0nm以下であり、前記アモルファス相の厚みの標準偏差が10.0nm以下である軟磁性合金。 - 前記結晶子の平均粒径が15.0nm以下である請求項1に記載の軟磁性合金。
- さらにMを含み、
MはNb、Hf、Zr、Ta、Mo、V、TiおよびWから選択される1種以上である請求項1または2に記載の軟磁性合金。 - Mの合計含有量が3.5at%以上10.0at%以下である請求項3に記載の軟磁性合金。
- さらにPを含み、
Pの含有量が0より大きく6.0at%以下である請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性合金。 - さらにCuを含み、
Cuの含有量が0より大きく3.0at%以下である請求項1~5のいずれかに記載の軟磁性合金。 - さらにCoを含み、
Coの含有量が0より大きくFeの含有量以下である請求項1~6のいずれかに記載の軟磁性合金。 - 請求項1~7のいずれかに記載の軟磁性合金を含む軟磁性合金薄帯。
- 請求項1~7のいずれかに記載の軟磁性合金を含む軟磁性合金粉末。
- 請求項8に記載の軟磁性合金薄帯が積層されてなる磁性部品。
- 請求項8に記載の軟磁性合金薄帯が巻き回されてなる磁性部品。
- 請求項9に記載の軟磁性合金粉末を含む磁性部品。
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