JP2022158425A - 色材分散液、および水性インクジェット記録用インク組成物 - Google Patents

Abstract

【課題】長期保存における保存安定性と記録物の発色性を向上させる色材分散液および水性インクジェット記録用インク組成物を提供すること。【解決手段】色材分散液は、水と、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子と、非イオン系界面活性剤と、下記式（１）で表される三級アミン化合物と、を含み、（メタ）アクリル系樹脂粒子は、ガラス転移温度が６０℃以上であり、（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、分散染料を１０質量％以上含む。TIFF2022158425000008.tif22170（式中、Ｒは、－（ＣＨ2ＣＨ2Ｏ）mＨ、炭素数６以上１８以下の脂肪族基、または芳香族基を表し、ｍは各々独立して１以上１０以下の整数を表す。）【選択図】なし

Description

本発明は、色材分散液、および水性インクジェット記録用インク組成物に関する。

インクジェット記録用インクは、環境適合性などの要求に対応して、水性インクが主流になりつつある。広く知られているのは水溶性染料を水中に溶解させた水溶性染料インクであり、色数が豊富かつ色調が鮮明で、優れた画像品質を有する印刷物を容易に得ることができるという利点があるが、滲みや耐水性、耐光性に劣るという欠点がある。また、顔料を水性媒体に分散させた水性インクは、耐水性、耐光性は良好であるが、色数が染料に比べて少なく、一般には色調の鮮明さや透明性に劣る傾向がある。また、従来の技術では、これらの水性インクの色材による被記録媒体の種類の制限がある。

この問題の解決策として、着色樹脂微粒子を用いた水性インクが多数提案されている。例えば、特許文献１には、水性媒体中で重合性不飽和単量体とこれと親和性を有する着色剤の存在下でアニオン性及び／又はノニオン性反応性界面活性剤を乳化重合させて得られた着色樹脂微粒子が開示されている。

特開平９－２７９０７３号公報

しかしながら、特許文献１に記載の着色樹脂微粒子では、分散安定性を向上させることが難しいという課題があった。反応性界面活性剤では、長期保存において、着色微粒子の分散安定性が低下する可能性があった。また、該着色微粒子による記録物の発色性を向上させ難いという課題もあった。重合性不飽和単量体と着色剤との親和性の制約から、着色微粒子を水性インクジェット記録用インク組成物に用いる場合に、記録物における発色性が不足するおそれがあった。すなわち、記録物の発色性と保存安定性に優れた色材分散液が求められていた。

色材分散液は、水と、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子と、非イオン系界面活性剤と、下記式（１）で表される三級アミン化合物と、を含み、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、ガラス転移温度が６０℃以上であり、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、前記分散染料を１０質量％以上含む。

（式中、Ｒは、－（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_mＨ、炭素数６以上１８以下の脂肪族基、または芳香族基を表し、ｍは各々独立して１以上１０以下の整数を表す。）

水性インクジェット記録用インク組成物は、水と、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子と、非イオン系界面活性剤と、上記式（１）で表される三級アミン化合物と、を含み、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、ガラス転移温度が６０℃以上であり、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、前記分散染料を１０質量％以上含む。

（色材分散液）
本実施形態に係る色材分散液は、水、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子、非イオン系界面活性剤、および下記式（１）で表される三級アミン化合物を含む。以下、色材分散液に含まれる各種成分について説明する。

（式中、Ｒは、－（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_mＨ、炭素数６以上１８以下の脂肪族基、または芳香族基を表し、ｍは各々独立して１以上１０以下の整数を表す。）

（水）
水は、本実施形態の色材分散液の主な溶媒である。水は、色材分散液が紙などの被記録媒体に付着後、被記録媒体から乾燥によって蒸発する。水としては、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水、ならびに超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものを用いることができる。また、紫外線照射や過酸化水素の添加などによって滅菌した水を使用すると、長期間保存する場合に、カビやバクテリアの発生を抑制することができる。

色材分散液に含まれる水の含有量は、特に限定されないが、色材分散液の全質量に対して、４０質量％以上、８０質量％以下、好ましくは４５質量％以上、７５質量％以下、さらに好ましくは５０質量％以上、７０質量％以下である。

これにより、色材分散液の長期保存安定性をより向上させることができるとともに、固形分濃度を確保することで、水性インクジェット記録用インク組成物の調製しやすさが向上する。

（分散染料）
分散染料は、一般的に水に不溶、または難溶のため、通常は分散媒中に分散剤によって分散する色材である。ここで、本明細書において、水に不溶とは、２５℃における水への溶解度が、１００ｍｇ／リットル以下であり、水に難溶とは１００ｍｇ／リットルを超え１ｇ／リットル以下であることを意味する。分散染料が（メタ）アクリル系樹脂粒子に含まれることによって、疎水性繊維布帛等を含む布帛、樹脂、またはプラスチックフィルム、紙、ガラス、金属、陶磁器等などの被記録媒体に好適に用いることができる。

また、分散染料として、加熱により昇華する性質を有する昇華性染料を用いてもよい。昇華性染料は、各種色材の中でも、鮮明な色相が得られること、被記録媒体に対する、染色再現性、堅牢性、耐白場汚染性などの染色特性の点で優れている。

分散染料としては、特に限定されないが、例えば、Ｃ．Ｉ．（Colour Index Generic Name）ディスパースブルー３、７、９、１４、１６、１９、２０、２６、２６：１、２７、３５、４３、４４、５４、５５、５６、５８、６０、６２、６４、６４：１、７１、７２、７２：１、７３、７５、７９、８１、８１：１、８２、８３、８７、９１、９３、９４、９５、９６、１０２、１０６、１０８、１１２、１１３、１１５、１１８、１２０、１２２、１２５、１２８、１３０、１３１、１３９、１４１、１４２、１４３、１４５、１４６、１４８、１４９、１５３、１５４、１５８、１６５、１６７、１７１、１７３、１７４、１７６、１８１、１８３、１８５、１８６、１８７、１８９、１９７、１９８、２００、２０１、２０５、２０７、２１１、２１４、２２４、２２５、２５７、２５９、２６７、２６８、２７０、２８４、２８５、２８７、２８８、２９１、２９３、２９５、２９７、３０１、３１５、３３０、３３３、Ｃ．Ｉ．ディスパースレッド１、４、５、７、１１、１２、１３、１５、１７、２７、４３、４４、５０、５２、５３、５４、５５、５５：１、５６、５８、５９、６０、６５、７０、７２、７３、７４、７５、７６、７８、８１、８２、８６、８８、９０、９１、９２、９３、９６、１０３、１０５、１０６、１０７、１０８、１１０、１１１、１１３、１１７、１１８、１２１、１２２、１２６、１２７、１２８、１３１、１３２、１３４、１３５、１３７、１４３、１４５、１４６、１５８、１９０、１９０：１、２０７、１５１、１５２、１５３、１５４、１５７、１５９、１６４、１６７、１６９、１７７、１７９、１８１、１８３、１８４、１８５、１８８、１８９、１９１、１９２、２００、２０１、２０２、２０３、２０５、２０６、２１０、２２１、２２４、２２５、２２７、２２９、２３９、２４０、２５７、２５８、２７７、２７８、２７９、２８１、２８８、２９８、３０２、３０３、３１０、３１１、３１２、３２０、３２４、３２８、Ｃ．Ｉ．ディスパースイエロー３、４、５、７、８、９、１３、２３、２４、３０、３３、３４、３９、４２、４４、４９、５０、５１、５４、５６、５８、６０、６３、６４、６６、６８、７１、７４、７６、７９、８２、８３、８５、８６、８８、９０、９１、９３、９８、９９、１００、１０４、１０８、１１４、１１６、１１８、１１９、１２２、１２４、１２６、１３５、１４０、１４１、１４９、１６０、１６２、１６３、１６４、１６５、１７９、１８０、１８２、１８３、１８４、１８６、１９２、１９８、１９９、２０２、２０４、２１０、２１１、２１５、２１６、２１８、２２４、２２７、２３１、２３２、Ｃ．Ｉ．ディスパースブラック１、３、１０、２４、Ｃ．Ｉ．ディスパースオレンジ１、１：１、３、５、７、１１、１３、１７、２０、２１、２５、２５：１、２９、３０、３１、３２、３３、３７、３８、４２、４３、４４、４５、４６、４７、４８、４９、５０、５３、５４、５５、５６、５７、５８、５９、６１、６６、７１、７３、７６、７８、８０、８９、９０、９１、９３、９６、９７、１１９、１２７、１３０、１３９、１４２、Ｃ．Ｉ．ディスパースバイオレット１、４、２６、３１、３３、３５、３８、４０、４３、４６、４８、５０、５１、５２、５６、５９、６１、６３、６９、７７、Ｃ．Ｉ．ディスパースグリーン９、Ｃ．Ｉ．ディスパースブラウン１、２、４、９、１３、１９、Ｃ．Ｉ．ソルベントイエロー２、１４、１６、２１、３３、４３、４４、５６、８２、８５、９３、９８、１１４、１３１、１３５、１５７、１６０、１６３、１６７、１７６、１７９、１８５、１８９、Ｃ．Ｉ．ソルベントレッド８、２３、２４、２５、４９、５２、１０９、１１１、１１９、１２２、１２４、１３５、１４６、１４９、１５０、１６８、１６９、１７２、１７９、１９５、１９６、１９７、２０７、２２２、２２７、３１２、３１３、Ｃ．Ｉ．ソルベントブルー３、４、５、３５、３６、３８、４５、５９、６３、６７、６８、７０、７８、８３、９７、１０１、１０２、１０４、１０５、１１１、１２２、Ｃ．Ｉ．ソルベントオレンジ３、１４、５４、６０、６２、６３、６７、８６、１０７、Ｃ．Ｉ．ソルベントバイオレット８、９、１１、１３、１４、１７、２３、２６、２７、２８、２９、３１、３６、５７、５９、Ｃ．Ｉ．ソルベントグリーン３、５、７、２８、Ｃ．Ｉ．ソルベントブラウン５３、Ｃ．Ｉ．ソルベントブラック３、５、７、２７、２９、３４などが挙げられる。

以上に挙げた分散染料を色材として、１種単独、または複数種を組み合わせて用いることができる。

分散染料の含有量は、（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、１０質量％以上５５質量％以下であり、より好ましくは１２質量％以上５０質量％以下であり、さらに好ましくは１５質量％以上４５質量％である。分散染料の含有量を上記の範囲内とすることにより、被記録媒体にインクを塗布した際の発色を確保するとともに、色材分散液のゲル化（粘度上昇）を抑えることができる。

（（メタ）アクリル系樹脂粒子）
（メタ）アクリル系樹脂としては、（メタ）アクリル酸あるいは（メタ）アクリル酸エステル、または（メタ）アクリロイル基を有する単量体に由来する構成単位を含む樹脂であれば、単独重合体であっても共重合であっても特に制限されない。（メタ）アクリル系樹脂を構成する単量体としては、（メタ）アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのカルボキシ基を有する単量体、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体、（メタ）アクリル酸－２－ホスホン酸エチルなどのホスホン酸基を有する単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体、（メタ）アクリル酸２－ヒドロキシエチル、（メタ）アクリル酸３－ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシ基を有する単量体等の親水性ユニットとなる単量体；スチレン、α－メチルスチレン、ベンジル（メタ）アクリレートなどの芳香環を有する単量体、エチル（メタ）アクリレート、メチル（メタ）アクリレート、（イソ）プロピル（メタ）アクリレート、（ｎ－、ｉｓｏ－、ｔ－）ブチル（メタ）アクリレート、２－エチルヘキシル（メタ）アクリレートなどの脂肪族基を有する単量体等の疎水性ユニットとなる単量体が挙げられる。なお、アクリル樹脂は、アニオン性単量体に由来する親水性ユニットを有することが好ましい。また、アニオン性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。

なお、本明細書において、（メタ）アクリロイルは、アクリロイルおよびそれに対応するメタクリロイルのうちの少なくともいずれかを指し、（メタ）アクリレートは、アクリレートおよびそれに対応するメタクリレートのうちの少なくともいずれかを指し、（メタ）アクリルは、アクリルおよびそれに対応するメタクリルのうちの少なくともいずれかを指す。

（メタ）アクリル系樹脂粒子のガラス転移温度は６０℃以上である。これにより、その粒子形状が安定化し、長期安定性に優れたものとすることができる。（メタ）アクリル系樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定装置（ＤＳＣ）によって測定することが可能である。

（メタ）アクリル系樹脂粒子はカルボキシ基を有することにより、水溶性が向上するため、（メタ）アクリル系樹脂粒子の分散安定性が向上する。

（メタ）アクリル系樹脂粒子の平均粒子径は、５０ｎｍ以上２５０ｎｍ以下であることが好ましい。（メタ）アクリル系樹脂粒子の平均粒子径が上記範囲内であることにより、水性インクジェット用組成物の調製を容易に行うことができるとともに、水性インクジェット用組成物中における上記粒子の分散安定性、水性インクジェット用組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。なお、本明細書における平均粒子径とは、動的光散乱法により測定される体積基準粒度分布（５０％）を指す。

（非イオン系界面活性剤）
非イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールベヘニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ステアリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノパルミチン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、モノステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリステアリン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、モノオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビタン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノラウリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、テトラステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、ヘキサステアリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物、テトラオレイン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビット脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。

以上に挙げた非イオン性界面活性剤を、１種単独、または複数種を組み合わせて用いることができる。

非イオン性界面活性剤の含有量は、（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、２質量％以上５０質量％以下であり、より好ましくは５質量％以上４５質量％以下であり、さらに好ましくは１０質量％以上４０質量％である。非イオン性界面活性剤の含有量を上記の範囲内とすることにより、被記録媒体において発色を確保するとともに、色材分散液の保存安定性をより優れたものとすることができる。

（三級アミン化合物）
三級アミン化合物の含有量は、（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、５質量％以上５０質量％以下であり、より好ましくは７質量％以上４５質量％以下であり、さらに好ましくは１０質量％以上４０質量％である。三級アミン化合物の含有量を上記の範囲内とすることにより、（メタ）アクリル系樹脂粒子中の色材量が少なく、水性インクジェット記録用インク組成物による印字濃度が薄くなることもなく、かつ色材を分散させることで、発色性を優れたものとすることができる。

（色材分散液の調製方法）
本実施形態の色材分散液は、上記各成分を均一混合した後に昇温し、開始剤を用いて重合反応させ、（メタ）アクリル系樹脂粒子を作成後、必要に応じてｐH調整やろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。重合反応させる方法としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置と温冷却装置を備えた反応容器に水を添加し、上記各成分はメカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置等で均一混合しておき、任意の反応温度に昇温した反応容器に開始剤と共に混合液を添加して反応させる方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過などが採用可能である。

（水性インクジェット記録用インク組成物）
本実施形態に係る水性インクジェット記録用インク組成物は、上述した色材分散液を含み、水溶性有機溶剤、および各種添加剤などをさらに含む。以下、水性インクジェット記録用インク組成物に含まれる各成分について説明する。なお、以降の説明では、水性インクジェット記録用インク組成物を単にインク組成物ということもある。

（色材分散液）
色材分散液内の（メタ）アクリル系樹脂粒子の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは２質量％以上３０質量％以下であり、より好ましくは２質量％以上２５質量％以下であり、さらに好ましくは２質量％以上２０質量％以下である。（メタ）アクリル系樹脂粒子の含有量が上記範囲内であることにより、発色性がより向上するとともに、水性インクジェット用組成物中における上記粒子の分散安定性、水性インクジェット用組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。

（水溶性有機溶剤）
水性インクジェット記録用インク組成物には、水溶性有機溶剤を使用することも可能である。水溶性有機溶剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピリデングリセロール、１，３－ブタンジオール、３－メチル－１，３－ブタンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、１，５－ペンタンジオール、１，６－ヘキサンジオール、１，２，６－ヘキサントリオール、１，２，４－ブタントリオール、１，２，３－ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、２－ピロリドン、Ｎ－メチル－２－ピロリドン、Ｎ－ヒドロキシエチル－２－ピロリドン、１，３－ジメチルイミイダゾリジノン、ε－カプロラクタム、γ－ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、Ｎ－メチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ－ジメチルホルムアミド、Ｎ，Ｎ－ジメチル－β－メトキシプロピオンアミド、Ｎ，Ｎ－ジメチル－β－ブトキシプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類が挙げられる。

なお、水溶性有機溶剤は、１種単独、または複数種を組み合わせて用いることができる。

水溶性有機溶剤の含有量は、水性インクジェット記録用インク組成物の全質量に対して、好ましくは２質量％以上６０質量％以下であり、より好ましくは２質量％以上５０質量％以下であり、さらに好ましくは２質量％以上４０質量％である。水性インクジェット記録用インク組成物に対して、上記のように水溶性有機溶剤を所定量添加することによって、被記録媒体に対するインク組成物の濡れ性や浸透速度が調整可能となる。

（界面活性剤）
水性インクジェット記録用インク組成物は、表面張力調整剤である界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びポリシロキサン系界面活性剤が挙げられる。

これらの中でも、水性インクジェット記録用インク組成物への溶解度が大きくなることで、異物が一層発生し難くなるため、ポリシロキサン系界面活性剤がより好ましい。

アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、２，４，７，９－テトラメチル－５－デシン－４，７－ジオール及び２，４，７，９－テトラメチル－５－デシン－４，７－ジオールのアルキレンオキサイド付加物、並びに２，４－ジメチル－５－デシン－４－オール及び２，４－ジメチル－５－デシン－４－オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、オルフィン（登録商標）１０４シリーズやオルフィンＥ１０１０等のＥシリーズ（商品名、日本エアプロダクツ株式会社製）、サーフィノール（登録商標）４６５やサーフィノール６１（商品名、日信化学工業株式会社製）などが挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤は、１種単独で使用してもよいし、２種以上を併用してもよい。

フッ素系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルキルアミンオキサイド化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、例えば、Ｓ－１４４、Ｓ－１４５（商品名、旭硝子株式会社製）；ＦＣ－１７０Ｃ、ＦＣ－４３０、フロラード－ＦＣ４４３０（商品名、住友スリーエム株式会社製）；ＦＳＯ、ＦＳＯ－１００、ＦＳＮ、ＦＳＮ－１００、ＦＳ－３００（商品名、デュポン社製）；ＦＴ－２５０、２５１（商品名、株式会社ネオス製）などが挙げられる。フッ素系界面活性剤は、１種単独で使用してもよいし、２種以上を併用してもよい。

ポリシロキサン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。ポリシロキサン系界面活性剤の市販品としては、特に限定されないが、具体的には、ＢＹＫ（登録商標）－３０６、ＢＹＫ－３０７、ＢＹＫ－３３３、ＢＹＫ－３４１、ＢＹＫ－３４５、ＢＹＫ－３４６、ＢＹＫ－３４７、ＢＹＫ－３４８、ＢＹＫ－３４９（商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製）、ＫＦ－３５１Ａ、ＫＦ－３５２Ａ、ＫＦ－３５３、ＫＦ－３５４Ｌ、ＫＦ－３５５Ａ、ＫＦ－６１５Ａ、ＫＦ－９４５、ＫＦ－６４０、ＫＦ－６４２、ＫＦ－６４３、ＫＦ－６０２０、Ｘ－２２－４５１５、ＫＦ－６０１１、ＫＦ－６０１２、ＫＦ－６０１５、ＫＦ－６０１７（商品名、信越化学株式会社製）等が挙げられる。

界面活性剤の含有量は、水性インクジェット記録用インク組成物の全質量に対し、好ましくは０．２質量％以上１．４質量％以下であり、より好ましくは０．４質量％以上１．２質量％以下であり、さらに好ましくは０．６質量％以上１．０質量％以下である。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、浸透性のある被記録媒体において、被記録媒体の濡れ性を高めて水性インクジェット記録用インク組成物のにじみの少ない印刷が期待できる。

（その他の添加剤）
水性インクジェット記録用インク組成物は、さらに必要に応じて、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤、ｐＨ調整剤（例えば、トリエタノールアミン、アジピン酸、水酸化カリウム）、又は溶解助剤、その他、通常のインクジェット記録用インク組成物において用いることができる各種添加剤を含んでもよい。なお、各種添加剤は、１種単独で用いても、２種以上を併用してもよい。

（インク組成物の調製方法）
本実施形態の水性インクジェット記録用インク組成物は、上述した各成分を任意の順序で混合し、必要に応じてろ過などを実施して不純物や異物などを除去することで調製することができる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネティックスターラーなどの撹拌装置を備えた容器に、各成分を順次添加して撹拌、混合する方法が用いられる。ろ過方法としては、遠心ろ過、フィルターろ過などが採用可能である。

本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。非イオン系界面活性剤と三級アミン化合物により、（メタ）アクリル系樹脂粒子に分散染料をより多く含有させることが可能となる。そのため、色材分散液から水性インクジェット記録用インク組成物を調製して印刷を行うと、記録物の発色性を向上させることができる。また、ガラス転移温度が６０℃以上であることにより、長期安定性に優れる。分散染料が１０質量％以上であることにより、水性インクジェット記録用インク組成物で得られる記録物の発色性が向上する。

以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

「色材分散液の調整」
（色材分散液Ａ）
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素導入管、滴下ロート３ヶを備えた反応器に、イオン交換水（２１．０ｇ）を投入し、窒素を通気しながら攪拌し、８５℃に昇温した。イオン交換水（１８．０ｇ）、メタクリル酸メチル：ＭＭＡ（３０．０ｇ）、Ｃ．Ｉ．ソルベントブルー５（３．０ｇ）、ポリオキシエチレンアルキルアミン（１．２ｇ）、ポリオキシエチレンアルキルエーテル（０．６ｇ）、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム（２．１ｇ）を混合攪拌して均一化した溶液と、重合開始剤である過硫酸アンモニウム塩（０．６ｇ）をイオン交換水（２１．７ｇ）に溶解させた溶液とを、共に反応容器へ１．５時間かけて投入した。全量投入してから１時間熟成後に冷却し、イオン交換水を追加すると共にアンモニア水にてｐＨを７．５に調整した。孔径１μｍメンブランフィルターにより濾過し、粗大粒子を除去し、得られた色材分散液Ａの（メタ）アクリル系樹脂粒子の平均粒子径をＥＬＳＡ－１０００（大塚電子社製）を用いて測定したところ、約２６０ｎｍであった。また、ガラス転移温度をＤＳＣ８０００（パーキンエルマー社製）を用いて測定したところ、約１００℃であった。

各材料の種類および添加量を表１を参考に変更した以外は、上記色材分散液Ａの調製と同様にして、色材分散液Ｂ～Ｋを調製した。各分散液における（メタ）アクリル系樹脂粒子の平均粒子径とガラス転移点は、表１に記載した。

添加量はいずれも質量％で示す。全て固形分濃度で示す。

表１中で用いた略称の正式名称は以下の通りである。
ＳＢ５：ソルベントブルー５
ＳＹ３３：ソルベントイエロー３３
ＳＲ１１１：ソルベントレッド１１１
ＭＭＡ：メタクリル酸メチル
ＢｚＭＡ：メタクリル酸ベンジル
ＢＡ：アクリル酸ブチル
Ｓｔ：スチレン
ＡＡ：アクリル酸
ＤＢＳ：ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム
ＰＥＯＡＥ：ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ＰＥＯＡＭ：ポリオキシエチレンアルキルアミン

「水性インクジェット記録用インク組成物の作製」
（実施例１）
表２に示す組成に基づいて、実施例１から実施例９、および比較例１から比較例５のインク組成物を調製した。

添加量はいずれも質量％で示す。全て固形分濃度で示す。

表２中で用いた略称の正式名称は以下の通りである。
ＤＥＧｍＢＥ：ジエチレングリコールモノブチルエーテル
ＴＭＰ：トリメチロールプロパン

（評価方法）
以下の評価指標に基づき、評価を実施した。

＜発色性（光学濃度）＞
発色性の指標として、インクジェットプリンターによる印刷物の光学濃度を測定した。実施例及び比較例の各インクについて、インクジェットプリンターＭ１０５(セイコーエプソン社製)を用いて、ＭＣＰＷ紙（トッパン・フォームズ社製）に普通紙標準モードで印字し、測色機（Gretag Macbeth Spectrolin：Ｘ-rite社製)を用いて測定した光学濃度：ＯＤ（Optical Density）値を以下の評価基準に基づいて評価した。
ＡＡ：１．３≦ＯＤ
Ａ：１．１≦ＯＤ＜１．３
Ｂ：０．９≦ＯＤ＜１．１
Ｃ：ＯＤ＜０．９

＜保存安定性＞
保存安定性の指標として、インク組成物の沈降物について評価した。実施例および比較例のインク組成物を各々３０ｍｌのガラス瓶に入れ密閉後、６０℃にて５日間放置した。その後、以下の評価基準に基づいて目視にて評価を行った。
Ａ：沈降無し
Ｂ：僅かに沈降物あり
Ｃ：沈降物が多い
Ｄ：ほとんど沈降する／凝固（凝集）する

表３で示すように実施例１はこれまでの着色粒子では難しかった印刷物の発色性と保存安定性のバランスが取れた結果を示した。分散染料を変更した実施例２，３も実施例１と同様の結果を示した。（メタ）アクリル系樹脂粒子組成の単量体を変更した実施例４，５も実施例１と同様の結果を示した。実施例６はカルボキシ基を導入すること、実施例７は平均粒子径を５０ｎｍ以上２５０ｎｍ以下にすることにより、実施例１よりも保存安定性が向上した。実施例８は実施例７の非イオン性界面活性剤の含有量は、上記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して２質量％以上５０質量％以下にすることにより、印刷物の発色性がさらに向上した。実施例９は実施例８の三級アミン化合物の含有量を（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して５質量％以上５０質量％以下にすることにより、さらに印刷物の発色性が向上した。

比較例１は非イオン系界面活性剤を含有しないことにより、印刷物の発色性が低下した。比較例２は三級アミン化合物を含有しないことにより、比較例３は分散染料の含有量を上記範囲外としたことで、印刷物の発色性が著しく低くなった。比較例４はガラス転移温度を６０℃より低くしたことにより、印刷物の発色性が低下し、保存安定性は著しく低下した。比較例５は（メタ）アクリル酸あるいは（メタ）アクリル酸エステルに由来する単量体のうちのいずれにも由来しない樹脂成分にしたことにより、印刷物の発色性がやや低下した。

以上、本実施形態の実施例によれば、保存安定性と記録物の発色性に優れた水性インクジェット記録用インク組成物を提供できる。

Claims (7)

1. 水と、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子と、非イオン系界面活性剤と、下記式（１）で表される三級アミン化合物と、を含み、
   前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、ガラス転移温度が６０℃以上であり、
   前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、前記分散染料を１０質量％以上含む、色材分散液。
   

   

   （式中、Ｒは、－（ＣＨ₂ＣＨ₂Ｏ）_mＨ、炭素数６以上１８以下の脂肪族基、または芳香族基を表し、ｍは各々独立して１以上１０以下の整数を表す。）
2. 前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、カルボキシ基を有する、請求項１に記載の色材分散液。
3. 前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の平均粒子径は、５０ｎｍ以上２５０ｎｍ以下である、請求項１または請求項２に記載の色材分散液。
4. 前記非イオン系界面活性剤の含有量は、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して２質量％以上５０質量％以下である、請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の色材分散液。
5. 前記三級アミン化合物の含有量は、前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して５質量％以上５０質量％以下である、請求項１から請求項４のいずれか１項に記載の色材分散液。
6. 前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、（メタ）アクリル酸あるいは（メタ）アクリル酸エステルに由来する単量体のうちのいずれか１種以上に由来する樹脂成分を含む、請求項１から請求項５のいずれか１項に記載の色材分散液。
7. 水と、分散染料を含む（メタ）アクリル系樹脂粒子と、非イオン系界面活性剤と、下記式（１）で表される三級アミン化合物と、を含み、
   前記（メタ）アクリル系樹脂粒子は、ガラス転移温度が６０℃以上であり、
   前記（メタ）アクリル系樹脂粒子の全質量に対して、前記分散染料を５質量％以上含む、水性インクジェット記録用インク組成物。
   

   

   （式中、Ｒは、－（ＣＨ２ＣＨ２Ｏ）ｍＨ、炭素数６以上１８以下の脂肪族基、または芳香族基を表し、ｍは各々独立して１以上１０以下の整数を表す。）