JP2022156537A - 全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、全熱交換器用の全熱交換素子を構成するための仕切板である全熱交換素子用透湿フィルムにおいて、高い透湿性と気体遮蔽性と耐湿性を有する全熱交換素子用透湿フィルムを提供することである。【解決手段】ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に設けられた酢酸セルロース樹脂層とを有する全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法において、蒸発速度300~480の溶剤に酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程を含むことを特徴とする全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法に関するものである。
ビル、事務所、店舗、住居等で、快適な空間を維持するための室内の空調において、冷暖房効率に優れた換気方法として、新鮮な外気を供給する給気流と室内の汚れた空気を排出する排気流との間で、温度(顕熱)と共に湿度(潜熱)の交換を同時に行う全熱交換器がよく知られている。
全熱交換器に使用されている全熱交換素子は、給気流が通される給気層と、排気流が通される排気層とが、透湿性を有する仕切板を介して交互に積層された積層体で構成されている。それぞれの流路には、所定の間隔を置いて配置される仕切板の間隔を保持するための波形の間隔板が形成されている。さらに、給気流が給気流路により導かれる方向と、排気流が排気流路により導かれる方向とは互いに直交している。
これまでの全熱交換素子に用いる仕切板は、多孔質系素材を用いているため、例えば、二酸化炭素などの汚れた気体成分の通気性も有していて、全熱交換する際に、給気流と排気流が全熱交換素子内部で混合し、換気の効率が低下するという欠点を有していた。この給気流と排気流の混合は、全熱交換器にとっては、致命的な欠陥である。給気流と排気流が混合する全熱交換器では、室内外の空気をエネルギーで回収しながら交換しているのではなく、ただ単に室内の汚れた空気をかき回しているだけという結果になりかねない。このように、室内外の空気が混合しているようでは、換気の目的が果たせず、全熱交換器として全く機能しなくなる。
また、全熱交換器の普及に伴い、様々な場所や環境下に、全熱交換器が設置されるようになってきた。給気流と排気流との温度差や湿度差が小さい場合には問題ないが、例えば、外気の温度が低い寒冷地の結露が起こりやすい環境下や室内の湿度が高い浴室など、給気流と排気流との温度差や湿度差が大きい環境下では、全熱交換を行うに際し、仕切板が高湿度の条件に曝される場合がある。このような状態が続くと、仕切板は、多量の水分を保持することができなくなり、仕切板から水が滴下する、いわゆる「水垂れ」を発生する場合がある。水垂れを発生した場合、吸湿剤の種類によっては、補強材として使用している金属製の外枠に錆が発生し、また、水垂れが継続する場合は、全熱交換素子が型崩れを起こし、全熱交換器として全く機能しなくなる。
このような理由から、全熱交換素子を作製する場合に、給気流と排気流が混合し難い気体遮蔽性に優れ、水垂れが発生に難く、耐湿性に優れ、高い透湿性を有する優れた仕切板が求められている。このような要望に対し、全熱交換素子用透湿フィルムが開発されている。例えば、ポリオレフィン微多孔膜からなり、微多孔膜の空孔内に親水性樹脂化合物を担持するための複合膜用基材(例えば、特許文献1)が開示されている。しかし、ポリオレフィン微多孔膜をそのまま使用すると、遮蔽性がないため、十分な交換効率が得られず、親水性樹脂化合物担持した微多孔膜は、ある程度の遮蔽性は得られるものの、透湿性が低くなり、十分な交換効率が得られなかった。
また、両側に引っ張ることで多くの貫通孔を形成した合成樹脂製フィルム機材と、この合成樹脂製フィルム機材の貫通孔部分に充填された親水性高分子化合物とを備えた全熱交換素子用フィルム(例えば、特許文献2)が開示されている。しかし、遮蔽性は得られても、高い透湿度を得ることができず、十分な交換効率を得ることはできなかった。
また、ポリエチレンを含むポリオレフィン微多孔膜からなり、水蒸気透過量と耐水圧を規定した透水防水膜(例えば、特許文献3)が開示されている。しかし、遮蔽性と透湿性を両立するには改善の余地があった。
また、仕切板が、防水性、気体透過性、及び非水溶性を有する第1及び3層と、これに挟まれた第2層が気体透過性及び水蒸気透過性を有する接着剤を含む全熱交換素子(例えば、特許文献4)が開示されている。しかし、十分な透湿性と耐湿性が得られず、実際の製造においては経済的に不利なものであった。
添加剤を含有する親水性高分子の溶液を多孔質部材に塗装若しくは含浸し、該溶液の溶剤を除去し、その後、該添加物を親水性高分子から除去し、次いで吸湿性物質を付着せしめてなる透湿性気体遮蔽物(例えば、特許文献3)が開示されている。しかし、多孔質部材の種類によっては、遮蔽性は得られず、吸湿性物質を溶解する溶剤の選択によっては、十分な透湿性と遮蔽性を得ることはできなかった。
また、エステル化セルロースと該エステル化セルロースに対して相溶性を有する分子内にカルボン酸エステルを有する有機物質とを含む透湿フィルムを必須成分とする全熱交換素子(例えば、特許文献4)が開示されている。しかし、エステル化セルロース含む有機物質を溶解する溶剤の選択によっては、十分な透湿性と遮蔽性を得ることはできなかった。
また、エステル化セルロースと、親水性及び柔軟性が該エステル化セルロースより大でかつそれ自身でフィルム形成能があり、該エステル化セルロースに対して相溶性を有する有機高分子物質とを含む透湿フィルムを必須成分とする全熱交換素子(例えば、特許文献5)が開示されている。しかし、同様に、エステル化セルロース含む有機物質を溶解する溶剤の選択によっては、十分な透湿性と遮蔽性を得ることはできなかった。
本発明の課題は、全熱交換器用の全熱交換素子を構成するための仕切板である全熱交換素子用透湿フィルムにおいて、高い透湿性と気体遮蔽性と耐湿性を有する全熱交換素子用透湿フィルムを提供することである。
本発明に係る課題は、下記手段によって解決することができる。
(1)ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に設けられた酢酸セルロース樹脂層とを有する全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法において、蒸発速度300~480の溶剤に酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程を含むことを特徴とする全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法。
本発明の全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法は、ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に設けられた酢酸セルロース樹脂層とを有する全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法であり、蒸発速度300~480の溶剤に酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程を含むことを特徴としている。塗布液の溶剤の蒸発速度が300~480であることで、ポリオレフィン微多孔膜上に均一な酢酸セルロース樹脂層を形成することが可能となり、高い透湿性と気体遮蔽性と耐湿性を有する全熱交換素子用透湿フィルムを提供することができる。
以下、本発明の全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法について詳細に説明する。
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィンを含んで構成された微多孔膜である。ここで、微多孔膜とは、内部に多数の微多孔を有し、これら微多孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった膜を意味する。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体又は共重合体、これらの1種以上の混合体が挙げられる。この中でも、特にポリエチレン又はポリプロピレンが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜において、ポリオレフィンは90質量%以上含まれていることが好ましく、残部として本発明の効果に影響を与えない範囲で、有機又は無機フィラー、界面活性剤などの添加物を含ませても良い。
本発明のポリオレフィン微多孔膜の厚みは、特に制限はない。5μm~30μmの範囲が好ましく、10μm~20μmがより好ましい。5μmより薄い場合は力学的強度が得られず、実機での加工で問題を生じる場合があり、30μmより厚い場合は、透湿度が低下する場合がある。また、透気度、空隙率、平均孔径についても特に制限はないが、透気度は、JIS P 8117(2009)に従って測定した王研式試験法による透気抵抗度(透気抵抗度(王研))の値として、50sec~300secの範囲が好ましく、50sec~200secの範囲がより好ましい。透気度が、50secより小さい場合は、酢酸セルロース樹脂層を塗布する際に、塗布液が裏抜けする場合があり、300secより大きい場合は、酢酸セルロース樹脂層を有する全熱交換素子用透湿フィルムに十分な透湿性が得られない場合がある。空隙率は、30%~70%が好ましく、40%~60%がより好ましい。空隙率が、30%より低い場合、十分な透湿性を得ることができない場合があり、70%より高い場合、機械的強度が低下する場合がある。平均孔径は、10nm~500nmが好ましく、50nm~200nmがより好ましい。平均孔径が、10nmより小さい場合、十分な透湿性を得ることができない場合があり、500nmより大きい場合、機械的強度が低下する場合がある。
本発明において、ポリオレフィン微多孔膜を得る方法は、公知の手法を用いることができ、特に限定されない。具体的な製造法の一例を以下に示す。まず、所定量のポリオレフィン系樹脂及び可塑剤に、必要に応じて、無機又は有機粉体、各種添加剤を加えた原材料を混合機により攪拌、混合し、原料組成物を得る。次に、この混合物を先端にTダイを取り付けた二軸押出機に投入し、加熱溶融・混練しながらシート状に押し出す。次に、このフィルム状物を、適当な抽出溶剤中に浸漬し、可塑剤を抽出除去し乾燥する。次に、少なくとも一軸方向に延伸し、所定厚さの膜に成型することで、膜全体に均一かつ微細で複雑に入り組んだ複雑な経路を有する無数の連通孔が形成されたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体又は共重合体、これらの中から選ばれる2種以上の混合体が挙げられる。この中でも、特にポリエチレン若しくはポリプロピレンの単独重合体若しくは共重合体、又は、これらの中から選ばれる2種以上の混合体が好ましい。
可塑剤としては、ポリオレフィン系樹脂の可塑剤となり得る材料を選択することが好ましく、ポリオレフィン系樹脂と相溶性を有し各種溶剤等で容易に抽出できる各種有機液状体が使用でき、具体的には、飽和炭化水素(パラフィン)からなる工業用潤滑油等の鉱物オイル、ステアリルアルコール等の高級アルコール、フタル酸ジオクチル等のエステル系可塑剤等が使用できる。中でも、再利用がしやすい点で、鉱物オイルが好ましい。可塑剤は、原料組成物中に、30~70質量%配合されることが好ましい。
前記可塑剤を抽出除去するために用いる溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和炭化水素系の有機溶剤を使用することができる。
ポリオレフィン微多孔膜には、その他、必要に応じて、界面活性剤(親水化剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、滑剤、抗菌剤、防黴剤、顔料、染料、着色剤、防曇剤、艶消し剤等の添加剤を、本発明の目的や効果を損なわない範囲で添加させてもよい。
<空隙率と平均孔径の測定方法>
ポリオレフィン微多孔膜をイオンミリング(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:IM4000PLUS)を用い、冷却モードにて裁断加工を行い、FE-SEM(日本電子株式会社製、型番:JSM-6700F)で拡大撮影(50000倍)した。この拡大撮影した映像を印刷し、未印刷部分(余白部分)を切り除いて、元映像紙を得た。得られた元映像紙について、拡大撮影された断面の面積を算出し、この面積をS0とした。
ポリオレフィン微多孔膜をイオンミリング(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、型番:IM4000PLUS)を用い、冷却モードにて裁断加工を行い、FE-SEM(日本電子株式会社製、型番:JSM-6700F)で拡大撮影(50000倍)した。この拡大撮影した映像を印刷し、未印刷部分(余白部分)を切り除いて、元映像紙を得た。得られた元映像紙について、拡大撮影された断面の面積を算出し、この面積をS0とした。
次いで、この元映像紙の質量(M0)を電子天秤(AS ONE製、型番:ITX-120)で測定した。元映像紙の開孔部に相当する部分をそれぞれ切り取り、切り取った紙を開孔部映像紙とした。全ての開孔部映像紙の質量を電子天秤で測定し、開孔部映像紙毎の質量をM1とした。これより、[式1]にて空隙率(%)を求めた。
[式1]
空隙率(%)=((開孔部映像紙の質量M1の総和)/M0)×100
空隙率(%)=((開孔部映像紙の質量M1の総和)/M0)×100
また、開孔部毎の面積(S1)を[式2]より算出した。
[式2]
S1=(M1/M0)×S0
S1=(M1/M0)×S0
露出面の平均孔径は、各開孔部の孔径(R1)を[式3]により算出し、算出したR1を使用し、[式4]により平均孔径(Rave)を求めた。
[式3]
R1=2×√(S1/π)
R1=2×√(S1/π)
[式4]
Rave=(R1の総和)/(開孔部の数の総和)
Rave=(R1の総和)/(開孔部の数の総和)
以上のように、本発明において、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン系樹脂を含んで構成された微多孔膜であり、特に制限なく使用できるが、厚み、透気度、空隙率、平均孔径などを調整することも可能である。これらの物性を制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂の平均分子量、原料組成物中のポリオレフィン系樹脂濃度、溶剤の混合比率、延伸倍率や延伸後の熱処理温度、抽出溶剤への浸漬時間などの製造条件を調整することなどが挙げられる。
本発明において、酢酸セルロースは、特に限定されるものではない。酢酸セルロースは、天然の高分子であるセルロースを酢酸エステル化することによって得られる半合成高分子である。セルロースは無水グルコースを繰り返し単位とする高分子で、繰り返し単位当たり3個の水酸基を有しているが、エステル化される程度により性質の異なる酢酸セルロースが得られる。このエステル化されている程度は酢化度という指標で表すことができ、本発明に用いる酢酸セルロースの酢化度は特に限定するものではないが、60%以下であることが好ましい。酢化度が60%より大きい酢酸セルロースは透湿性が低くなる場合がある。また、溶解性も低下し、酢酸セルロース樹脂層を形成する際に、限られた溶剤しか用いることができなくなり、透湿フィルムの製造が困難となる。また、本発明に用いる酢酸セルロースの重合度は、特に制限するものではないが、165~185の範囲が好ましい。この範囲以外の重合度を有する酢酸セルロースを使用した場合、透湿性が低くなる場合がある。また、溶解性も低下し、酢酸セルロース樹脂層を形成する際に、限られた溶剤しか用いることができなくなり、透湿フィルムの製造が困難となる。
酢酸セルロース樹脂層の塗布量(乾燥)は、特に制限はないが、0.1g/m2~5g/m2の範囲が好ましく、0.5g/m2~2g/m2の範囲がより好ましい。0.1g/m2よりも少ない場合、十分な気体遮蔽性が得られない場合があり、5g/m2より多い場合、十分な透湿性が得られない場合がある。
酢酸セルロース樹脂層は、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に形成する。両面に形成することもできるが、経済的な面から、どちらか一方の面だけに形成することが好ましい。酢酸セルロース樹脂層は、酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程によって得ることができる。塗布液の塗布方法としては、ポリオレフィン微多孔膜にできるだけ均一に酢酸セルロースを塗布させることができる方法であれば、特に制限なく一般的な塗布方式を使用することができる。塗工(バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ブレードコーター、エアナイフなど)、含浸(サイズプレスなど)又はスプレー等の方法によって、ポリオレフィン微多孔膜に付与し、溶剤を乾燥などの方法で除去して、全熱交換素子用透湿フィルムを得ることができる。
酢酸セルロースは、様々な種類のものが既に市販されており、本発明に用いることができる。例えば、ダイセル社製の商品名:L40、L50などが挙げられる。
本発明において、酢酸セルロースの溶解に用いる溶剤の蒸発速度は300~480の範囲である。蒸発速度とは、一定量の酢酸n-ブチルを25℃、常圧の条件で蒸発させて完全に蒸発するまでの時間を測定し、次いで、同量の溶剤を同じ条件で蒸発させて完全に蒸発するまでの時間を測定して、酢酸n-ブチルの蒸発速度を100とした場合の溶剤の蒸発速度を算出するものである。従って、蒸発速度が100に満たない溶剤は、酢酸n-ブチルよりも蒸発が遅く、蒸発速度が100を超える溶剤は酢酸n-ブチルよりも蒸発が早いことを意味する。また、溶剤が複数の組成を含む混合溶剤である場合は当該複数の組成のモル比に対する蒸発速度の和のことを示す。
酢酸セルロースを溶解できる溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、ジアセトンアルコール、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、メチルグリコールアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、塩化メチレン、クロロホルムなどが挙げられる。これらの中で、蒸発速度が300~480である溶剤は、例えばメチルエチルケトン(370)、酢酸エチル(420)、シクロヘキサン(450)などが挙げられる。蒸発速度が300より小さい場合、均一な酢酸セルロース樹脂層が形成できなくなり、高い透湿性と気体遮蔽性と耐湿性を有する全熱交換素子用透湿フィルムを提供することができなくなる。蒸発速度が480より大きい場合も同様であり、また、溶剤の乾燥が早いため、製造時にコーターでの目詰まりなどの問題が発生する場合がある。
本発明の全熱交換素子に用いる間隔板としては、特に制限はなく、紙、フィルム、不織布、金属板などを用いることができるが、加工性及び耐湿性の観点から、フィルムが好ましい。フィルムを構成する主成分としては、特に制限はないが、加工性やコストの面から、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が好ましく用いられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などの他、液晶ポリエステル等も挙げられる。また、ポリアミドとしては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)などが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。このような間隔板として使用されるフィルムの目付は特に制限はないが、50~100g/m2の範囲が好ましく、厚みとしても50~100μmの範囲が好ましい。
本発明の全熱交換素子は、給気流が通される給気層と、排気流が通される排気層とが、透湿性を有する仕切板を介して交互に積層された積層体で構成されている。それぞれの流路には、所定の間隔を置いて配置される仕切板の間隔を保持するための波形の間隔板が形成されている。仕切板と間隔板は、接着剤によって接着される。さらに、給気流が給気流路により導かれる方向と、排気流が排気流路により導かれる方向とは互いに直交している。
本発明の全熱交換素子を製造する場合に用いられる接着剤としては、特に制限はないが、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、エーテル系セルロース系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布量(乾燥後の質量基準)は、特に制限はないが、0.5~4.0g/m2の範囲が好ましい。接着剤の使用量が少ないと、接着強度が弱く、使用量が多い場合は、接着強度は確保できるものの、透湿性が損なわれる場合がある。なお、接着剤の塗布量における間隔板の基準となる面積は、波形に加工される前の全熱交換素子作製に使用された間隔板の面積である。
本発明において、仕切板、間隔板及び接着剤には、必要に応じて、難燃剤、防カビ剤などを添加することができる。難燃剤及び防カビ剤の種類に関しては、特に制限なく用いることができる。
以下に、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
市販のポリエチレン微多孔膜(厚み:20μm、空隙率:42%、平均孔径:142nm、透気抵抗度(王研):180sec)に、酢化度55%、重合度180の酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名:L50)をメチルエチルケトン(MEK、蒸発速度370)に溶解して、5質量%とした塗布液を、マイクログラビアコーターにて片面に塗布した後乾燥して、塗布量(乾燥)1g/m2の酢酸セルロース樹脂層を形成し、仕切板としての全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
市販のポリエチレン微多孔膜(厚み:20μm、空隙率:42%、平均孔径:142nm、透気抵抗度(王研):180sec)に、酢化度55%、重合度180の酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名:L50)をメチルエチルケトン(MEK、蒸発速度370)に溶解して、5質量%とした塗布液を、マイクログラビアコーターにて片面に塗布した後乾燥して、塗布量(乾燥)1g/m2の酢酸セルロース樹脂層を形成し、仕切板としての全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(実施例2)
酢酸セルロースを溶解する溶剤を酢酸エチル(蒸発速度420)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤を酢酸エチル(蒸発速度420)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(実施例3)
酢酸セルロースを溶解する溶剤をシクロヘキサン(蒸発速度450)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤をシクロヘキサン(蒸発速度450)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(比較例1)
酢酸セルロースを溶解する溶剤をメチルグリコール(蒸発速度53)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤をメチルグリコール(蒸発速度53)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(比較例2)
酢酸セルロースを溶解する溶剤をメチルグリコール/MEK=30/70(質量比)の混合溶剤(蒸発速度278)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤をメチルグリコール/MEK=30/70(質量比)の混合溶剤(蒸発速度278)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(比較例3)
酢酸セルロースを溶解する溶剤をアセトン/メタノール=90/10(質量比)の混合溶剤(蒸発速度498)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤をアセトン/メタノール=90/10(質量比)の混合溶剤(蒸発速度498)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(比較例4)
酢酸セルロースを溶解する溶剤をアセトン(蒸発速度560)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
酢酸セルロースを溶解する溶剤をアセトン(蒸発速度560)に変更すること以外は実施例1と同様に行い、全熱交換素子用透湿フィルムを得た。
(比較例5)
原紙(目付:30g/m2、厚み:40μm、透気抵抗度(王研):277万sec)に、ニップコーターにて、速度60m/min、ニップ圧343kPaの条件で、4.8g/m2の塩化リチウムを含浸させ、全熱交換素子用紙を得た。
原紙(目付:30g/m2、厚み:40μm、透気抵抗度(王研):277万sec)に、ニップコーターにて、速度60m/min、ニップ圧343kPaの条件で、4.8g/m2の塩化リチウムを含浸させ、全熱交換素子用紙を得た。
実施例1~3及び比較例1~5の全熱交換素子用透湿フィルム又は全熱交換素子用紙について、以下に示す方法により評価を行い、評価結果を表1に示した。
[透湿性:透湿度の評価方法]
温湿度条件を23℃、相対湿度50%に、塩化カルシウムを20g使用し、測定時間を1時間に変更し、得られた質量変化から、24時間換算すること以外は、JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して、透湿度を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
温湿度条件を23℃、相対湿度50%に、塩化カルシウムを20g使用し、測定時間を1時間に変更し、得られた質量変化から、24時間換算すること以外は、JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して、透湿度を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
○:透湿度が、700g/m2・24hrより大きく、良好。
△:透湿度が、650g/m2・24hr以上、700g/m2・24hr未満で許容範囲内。
×:透湿度が、650g/m2・24hr未満であり、許容範囲外。
△:透湿度が、650g/m2・24hr以上、700g/m2・24hr未満で許容範囲内。
×:透湿度が、650g/m2・24hr未満であり、許容範囲外。
[気体遮蔽性:透気抵抗度(王研)の評価方法]
JIS P 8117(2009)に従って、透気抵抗度(王研)を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
JIS P 8117(2009)に従って、透気抵抗度(王研)を測定した。評価基準としては、以下の通りである。
◎:透気抵抗度(王研)が、1.0×106sec以上で、極めて良好。
○:透気抵抗度(王研)が、1.0×105sec以上、1.0×106sec未満であり、良好。
△:透気抵抗度(王研)が、1.0×104sec以上、1.0×105sec未満であり、許容範囲内。
×:透気抵抗度(王研)が、1.0×104sec未満であり、許容範囲外。
○:透気抵抗度(王研)が、1.0×105sec以上、1.0×106sec未満であり、良好。
△:透気抵抗度(王研)が、1.0×104sec以上、1.0×105sec未満であり、許容範囲内。
×:透気抵抗度(王研)が、1.0×104sec未満であり、許容範囲外。
[耐湿性:耐湿性の評価方法]
耐湿性の評価としては、全熱交換素子用透湿フィルム及び全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時の間隔板としては60g/m2のポリプロピレンフィルムを用い、接着剤としてはポリ酢酸ビニル系接着剤を使用した。この全熱交換素子を、30℃、相対湿度90%の条件で、48時間放置し、水垂れの有無や全熱交換素子の形状変化を目視にて評価した。評価基準としては、以下の通りである。
耐湿性の評価としては、全熱交換素子用透湿フィルム及び全熱交換素子用紙を用いて、縦200mm、横200mm、高さ250mm、一段の高さ4mmの全熱交換素子を作製した。この時の間隔板としては60g/m2のポリプロピレンフィルムを用い、接着剤としてはポリ酢酸ビニル系接着剤を使用した。この全熱交換素子を、30℃、相対湿度90%の条件で、48時間放置し、水垂れの有無や全熱交換素子の形状変化を目視にて評価した。評価基準としては、以下の通りである。
◎:水垂れや形状変化が全くなく、極めて良好。
○:水垂れや形状変化が少なく、良好。
△:水垂れや形状変化が多少あるが、許容範囲内。
×:水垂れや形状変化があり、許容範囲外。
○:水垂れや形状変化が少なく、良好。
△:水垂れや形状変化が多少あるが、許容範囲内。
×:水垂れや形状変化があり、許容範囲外。
実施例1~3と比較例1~5との比較から、ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に設けられた酢酸セルロース樹脂層とを有する全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法において、蒸発速度300~480の溶剤に酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程を含む実施例1~3では、高い透湿性と気体遮蔽性と耐湿性を有する全熱交換素子用透湿フィルムで得られることが判る。これに対し、溶剤の蒸発速度が300未満である比較例1及び2並びに溶剤の蒸発速度が480超である比較例3及び4では、透湿性が低かった。また、比較例3及び4では、グラビアコーターの目詰まりが発生し、製造工程に負荷を要した。さらに、実施例1~3と比較例5との比較から、本発明の透湿フィルムは紙製の全熱交換素子用紙と比較し、耐湿性が良好であることが判る。
本発明は、新鮮な空気を供給すると共に、室内の汚れた空気を排出する際に、温度(顕熱)と共に湿度(潜熱)の交換を行う全熱交換器に使用される全熱交換素子用透湿フィルムを製造するのに利用できる。
Claims (1)
- ポリオレフィン微多孔膜と、ポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に設けられた酢酸セルロース樹脂層とを有する全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法において、蒸発速度300~480の溶剤に酢酸セルロースが溶解された塗布液をポリオレフィン微多孔膜の少なくとも一方の面に塗布する工程を含むことを特徴とする全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021060280A JP2022156537A (ja) | 2021-03-31 | 2021-03-31 | 全熱交換素子用透湿フィルムの製造方法 |
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Publications (1)
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- 2021-03-31 JP JP2021060280A patent/JP2022156537A/ja active Pending
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