JP2022154337A - 組換え微生物及びアジピン酸又はその誘導体の製造方法 - Google Patents

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【課題】アジピン酸またはアジピン酸誘導体を効率的に生産することのできる組換え微生物、及び、アジピン酸またはアジピン酸誘導体の製造方法を提供すること。【解決手段】3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子のうちの少なくとも1つを含む、組換え微生物。【選択図】図1

Description

本発明は、組換え微生物及びアジピン酸又はその誘導体の製造方法に関する。
近年、化学品製造プロセスにおいて従来使用されている化石燃料由来の原料の枯渇が危惧され、かつ、地球温暖化の一因とされていることから、化石燃料由来の原料から、バイオマス由来の再生可能原料への転換が望まれている。
アジピン酸(CAS No.124-04-9)は、ナイロン-66などに代表されるポリアミド原料、ウレタン、および可塑剤原料として使用されるモノマー化合物である。アジピン酸の現在の一般的な製造方法は、化学合成法、例えば、シクロヘキサノール単独、または、シクロヘキサノールとシクロヘキサノンとの混合物(K/Aオイル)を硝酸で酸化する方法である。
バイオマス由来原料を用いたアジピン酸の製造方法としては、遺伝子組換え微生物を用いてバイオマス由来炭素源をcis,cis-ムコン酸に変換した後、得られたcis,cis-ムコン酸を水素化してアジピン酸を生産する方法が提案されている(特許文献1)。また、遺伝子組み換え体を用いてα-ケトグルタル酸からアジピン酸を生産する方法も提案されている(特許文献2)。
さらに、バイオマス由来原料からの直接的なアジピン酸の発酵生産方法についても提案されている(特許文献3)。この方法では、アジピン酸を生産することのできる天然に存在しない微生物として、スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAを3-オキソアジピル-CoAに変換する「スクシニル-CoA:アセチル-CoAアシルトランスフェラーゼ」;3-オキソアジピル-CoAを3-ヒドロキシアジピル-CoAに変換する「3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ」;3-ヒドロキシアジピル-CoAを5-カルボキシ―2-ペンテノイル-CoAに変換する「3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ」;5-カルボキシ―2-ペンテノイル-CoAをアジピル-CoAに変換する「5-カルボキシ-2-ペンテノイル-CoAレダクターゼ」;およびアジピル-CoAをアジペートに変換する「ホスホトランスアジピラーゼ」/「アジピン酸キナーゼ」を含む天然に存在しない微生物が挙げられているが、各酵素に関し、反応を進める可能性がある酵素をコードする遺伝子を示しているに留まり、これらの遺伝子を用いることによってバイオマス由来炭素原料からアジピン酸を良好な収率で生産できることについては実証されていない。
国際公開第1995/007996号 国際公開第2010/104391号 特開2011-515111号公報
本発明の目的は、アジピン酸またはアジピン酸誘導体を効率よく生産することのできる組換え微生物、及び、アジピン酸またはアジピン酸誘導体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、新たに自然界より単離された微生物であるバークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)が有する所定の酵素を発現させた遺伝子組換え微生物物を培養することで効率的にアジピン酸類を生産できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである:
[1]3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子のうちの少なくとも1つを含む、組換え微生物;
[2]前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの少なくとも1つが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)に由来する、[1]に記載の組換え微生物;
[3]前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされ、
当該DNAは、626~940bpを有する、[1]または[2]に記載の組換え微生物;
[4]前記2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされ、
当該DNAは、924~1386bpを有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[5]前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされ、
当該DNAは、783または784bpを有する、[1]または[2]に記載の組換え微生物;
[6]前記2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされ、
当該DNAは、1155または1156bpを有する、[1]~[3]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[7]上記組換え微生物が、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属およびアスペルギルス属からなる群より選択される属に属する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の組換え微生物;
[8]アジピン酸生産経路を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の組換え微生物;
[9]ヘキサメチレンジアミン生産経路を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組換え微生物;
[10]1,6-ヘキサンジオール生産経路を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組換え微生物;
[11]6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路を有する、[1]~[8]のいずれか一項に記載の組換え微生物;
[12][1]~[7]のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、目的化合物の製造方法であって、
前記目的化合物が、アジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノールからなる群より選択され、
前記アジピン酸誘導体が、オキソアジピン酸、レブリン酸、3-ヒドロキシアジピン酸および2,3-デヒドロアジピン酸からなる群より選択される、製造方法;
[13][8]に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、アジピン酸の製造方法;
[14][9]に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、ヘキサメチレンジアミンの製造方法;
[15][10]に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、1,6-ヘキサンジオールの製造方法;
[16][11]に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、6-アミノ-1-ヘキサノールの製造方法;
[17](A-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド;
(A-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド;
または
(A-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド;
[18](B-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド;
(B-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド;
または
(B-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
(b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
(b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
をプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド。
本発明により、アジピン酸またはアジピン酸誘導体を効率的に生産することのできる組換え微生物、及び、アジピン酸またはアジピン酸誘導体の製造方法が提供される。
図1は、本発明に係る組換え微生物が有するアジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路の例を示す。 図2は、PCRにおける増幅対象の遺伝子および用いたプライマーを示す。 図3は、各酵素のアミノ酸配列を示す。 図4Aは、各酵素をコードする塩基配列を示す。 図4Bは、各酵素をコードする塩基配列を示す。 図5Aは、PCRにおける増幅対象および用いたプライマーを示す。 図5Bは、PCRにおける増幅対象および用いたプライマーを示す。 図6は、酵素のアミノ酸配列を示す。 図7Aは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図7Bは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図7Cは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図7Dは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図7Eは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図8Aは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図8Bは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図8Cは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図8Dは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図9Aは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図9Bは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図9Cは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図9Dは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図9Eは、酵素のアミノ酸配列を示す。 図10は、酵素のアミノ酸配列を示す。
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、本明細書に記述されているDNAの取得、ベクターの調製および形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 4th Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2012)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)、遺伝子工学実験ノート(羊土社 田村隆明)等に記載されている公知の方法により行うことができる。本明細書において特に断りのない限りヌクレオチド配列は5’方向から3’方向に向けて記載される。本明細書において、「ポリペプチド」および「タンパク質」の語は、互換可能に使用される。
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。
本発明にかかる組換え微生物は、アジピン酸(Adipic acid;ADA)(CAS No.124-04-9)またはアジピン酸誘導体を効率よく生産することができるよう、宿主微生物に対して遺伝子の改変が行われた微生物である。
本明細書において、「アジピン酸誘導体」は、炭素数3~5の脂肪族炭化水素基と、1または複数のカルボキシル基とを有する、脂肪族カルボン酸である。アジピン酸誘導体の有する脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和である。脂肪族炭化水素基において、炭素は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ケトン基、アミノ基等の置換基によって置換されていても良い。「アジピン酸誘導体」の有する脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは、3または4である。「アジピン酸誘導体」の有するカルボキシル基は、好ましくは、1または2である。「アジピン酸誘導体」の具体例としては、炭素数4の脂肪族炭化水素基と2つのカルボン酸とを有する3-オキソアジピン酸(3-Oxoadipic acid;3-OA)、炭素数3の脂肪族炭化水素基と1つのカルボン酸とを有するレブリン酸(Levulinic acid;LEV)、炭素数4の脂肪族炭化水素基と2つのカルボン酸とを有する3-ヒドロキシアジピン酸(3-Hydroxyadipic acid;3HA)および炭素数4の脂肪族炭化水素基と2つのカルボン酸とを有する2,3-デヒドロアジピン酸(2,3-Dehydroadipic acid;23DA)が挙げられる(図1参照)。
本明細書中におけるアジピン酸およびアジピン酸誘導体は、任意の塩形態を含めた中性または電離形態を取り得ることや、本形態がpHに依存することは当業者により理解される。したがって、「アジピン酸」および「アジピン酸誘導体」には、遊離酸の形態のほか、任意の塩形態および電離形態が包含される。本明細書において、アジピン酸およびアジピン酸誘導体をまとめて、「アジピン酸類」または「アジピン酸類縁体」と総称することがある。
本発明にかかる組換え微生物によって生産されたアジピン酸を原料として、6-アミノカプロン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノールを合成することも可能である。合成方法は化学合成法や酵素や酵素を内在する微生物を利用する生物学的合成法などを問わない。また、アジピン酸を上記化合物に変換するための代謝経路を含む微生物であれば、細胞内でアジピン酸を中間体として使用する原料からの代謝変換も可能である。
本発明にかかる遺伝子組換え微生物は、具体的に、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子のうちの少なくとも1つを含む。このような外来性遺伝子の少なくとも1つを含むことにより、組換え微生物は、アジピン酸生産経路を有することとなり、アジピン酸またはアジピン酸誘導体を製造することができる。本明細書において、「遺伝子組換え微生物」は、単に「組換え微生物」とも称する。
本明細書において、「内因」ないし「内因性」という用語は、本願で言及している遺伝子組換えによる改変がなされていない宿主微生物が、言及している遺伝子ないしはそれによりコードされるタンパク質(典型的には酵素)を、当該宿主細胞内で優位な生化学的反応を進行させ得る程度に機能的に発現しているかどうかに関わらず、宿主微生物が有していることを意味するために用いられる。
本明細書において、「外来」ないし「外来性」という用語は、遺伝子組換え前の宿主微生物が本発明により導入されるべき遺伝子がコードする酵素を実質的に発現していない場合、及び異なる遺伝子により当該酵素のアミノ酸配列をコードしているが、遺伝子組換え後に匹敵する内因性酵素活性を発現しない場合において、本発明に基づく遺伝子ないし核酸配列を宿主に導入することを意味するために用いられる。
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの少なくとも1つは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)に由来する。好ましくは、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの両方が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株に由来する。
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子の少なくとも1つは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)に由来する。好ましくは、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子の両方が、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)に由来する。
本発明の遺伝子組換え微生物は、上記酵素をコードする外来遺伝子のうちの少なくとも1つが導入されていればよい。本発明の遺伝子組換え微生物は、好ましくは、アジピン酸生産経路の各反応段階を触媒する酵素をコードする外来遺伝子のうち少なくとも1つが導入され、外来性酵素を発現する。また、本発明の遺伝子組換え微生物が、外来遺伝子の導入によらずとも、アジピン酸生産経路の反応段階を触媒する十分な量の酵素を発現する場合は、内因遺伝子にコードされる酵素によって反応が進行してもよい。本発明において、ある化合物に関し、「生産経路を有する」とは、本発明にかかる遺伝子組換え微生物が、その化合物の生産経路の各反応段階が進行するために十分な量の酵素を発現し、その化合物を生合成可能であることを意味する。
本発明にかかる組換え微生物は、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの少なくとも1つを発現していることが好ましい。本発明にかかる組換え微生物が、これら酵素の少なくとも一方を発現していることにより、アジピン酸生産経路の反応段階が進行し、目的化合物を生産することができる。
より好ましくは、本発明にかかる組換え微生物は、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの双方を発現する。本発明にかかる組換え微生物が、これら酵素を発現していることにより、アジピン酸生産経路の反応段階の各々が進行し、目的化合物を生産することができる。
さらにより好ましくは、本発明にかかる組換え微生物は、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼに加えて、オキシドレダクターゼおよび/またはβ-ケトチオラーゼを発現する。本発明にかかる組換え微生物が、これら酵素を発現していることにより、アジピン酸生産経路の反応段階の各々が進行し、目的化合物を効率よく生産することができる(図1参照)。
以下、本発明にかかる組換え微生物が含む遺伝子がコードする酵素の各々について詳述する。
<3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ>
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼは、3-ヒドロキシアジピル-CoAを2,3-デヒドロアジピル-CoAへと変換する反応を触媒する酵素である(図1のステップC)。
一態様において、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる。ここで、当該DNAは、例えば626~940bp、好ましくは740~862bp、より好ましくは743~823bp、さらにより好ましくは767~799bp、特により好ましくは775~791bp、最も好ましくは778~788bpを有する。PCRに用いるプライマーについては後述する。
好ましい一態様において、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされる。当該DNAは、例えば626~940bp、好ましくは740~862bp、より好ましくは743~823bp、さらにより好ましくは767~799bp、特により好ましくは775~791bp、最も好ましくは778~788bpを有する。
更なる態様において、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼは、以下から選択される:
(A-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド;
(A-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して例えば1~10個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド;
および
(A-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド。
更なる好ましい態様において、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物にコードされる組換えポリペプチドであり、当該増幅物の塩基対数は783または784bpである。
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼに関し、PCRに用いられるプライマー(フォワードおよびリバース)としては、以下が挙げられる(図2参照)。
(1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、
(1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド、
(1c)配列番号5に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列からなるヌクレオチド、
(1d)配列番号5に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド。
前記(1b)の「配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド」は、それぞれ、「配列番号5に示す塩基配列」および「配列番号6に示す塩基配列」に加えて、例えば1~20bp、好ましくは1~15bp、より好ましくは5~15bp、さらに好ましくは10~15bpがさらに追加されたヌクレオチド長を有する。
前記(1d)の「配列番号5に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド」は、それぞれ、「配列番号5に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列」および「配列番号6に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列」に加えて、ベクター末端との相同配列を含み、例えば1~20bp、好ましくは1~15bp、より好ましくは5~15bp、さらに好ましくは10~15bpがさらに追加されたヌクレオチド長を有する。前記(1d)の「配列番号5に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド、および、配列番号6に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド」の例としては、
(1d’)配列番号35に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号36に示す塩基配列からなるヌクレオチド
が挙げられる(図5A)。
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼに関し、好ましいプライマーは、
(1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、および
(1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
である。
上記ヌクレオチドをプライマーとして用いた、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物であるDNAは、好ましくは783または784bpを有する。ここで、PCRで用いるDNAポリメラーゼとしては当該分野で既知のものが用いられ、例えばTaq DNAポリメラーゼ、ホットスタート調整されたDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ活性とは別に3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディングDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
<2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ>
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼは、2,3-デヒドロアジピル-CoAをアジピル-CoAへと変換する反応を触媒する酵素である(図1のステップD参照)。
一態様において、2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる。当該DNAは、例えば924~1386bp、好ましくは1039~1249bp、より好ましくは1097~1213bp、さらにより好ましくは1131~1179bp、特により好ましくは1143~1167bp、さらに特により好ましくは1145~1165bp、最も好ましくは1150~1160bpを有する。
好ましい一態様において、2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされる。当該DNAは、例えば924~1386bp、好ましくは1039~1249bp、より好ましくは1097~1213bp、さらにより好ましくは1131~1179bp、特により好ましくは1143~1167bp、さらに特により好ましくは1145~1165bp、最も好ましくは1150~1160bpを有する。
更なる態様において、2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼは、以下から選択される:
(B-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド;
(B-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して、例えば1~10個、好ましくは1~7個、より好ましくは1~5個、さらに好ましくは1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド;
および
(B-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
前記DNAは、先述の塩基対数(bp)を有する、組換えポリペプチド。
更なる好ましい態様において、外来性の2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼは、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、所定のヌクレオチドをプライマーとして使用したPCR増幅物であり、当該増幅物の塩基対数は1155または1156bpである。
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼに関し、PCRに用いられるプライマー(フォワードおよびリバース)としては、以下が挙げられる(図2参照)。
(2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、
(2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド、
(2c)配列番号7に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列からなるヌクレオチド、
(2d)配列番号7に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド。
前記(2b)の「配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド」は、それぞれ、「配列番号7に示す塩基配列」および「配列番号8に示す塩基配列」に加えて、例えば1~20bp、好ましくは1~15bp、より好ましくは5~15bp、さらに好ましくは10~15bpがさらに追加されたヌクレオチド長を有する。
前記(2d)の「配列番号7に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド」は、それぞれ、「配列番号7に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列」および「配列番号8に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列」に加えて、ベクター末端との相同配列を含み、例えば1~20bp、好ましくは1~15bp、より好ましくは5~15bp、さらに好ましくは10~15bpがさらに追加されたヌクレオチド長を有する。前記(2d)の「配列番号7に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列をコドン最適化した塩基配列を含むヌクレオチド」の例としては、
(2d’)配列番号47に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号48に示す塩基配列からなるヌクレオチド
が挙げられる(図5A)。
2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼに関し、好ましいプライマーは、
(2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、および、
(2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
である。
上記ヌクレオチドをプライマーとして用いた、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物であるDNAは、好ましくは1155または1156bpを有する。ここで、PCRで用いるDNAポリメラーゼとしては当該分野で既知のものが用いられ、例えばTaq DNAポリメラーゼ、ホットスタート調整されたDNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ活性とは別に3’-5’エキソヌクレアーゼ活性を有するプルーフリーディングDNAポリメラーゼ等が挙げられる。
本明細書において、「PCR増幅物」とは、特定のヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行った結果得られた産物をいう。なお、特段示さない限り、本明細書において、PCR増幅では、特定のヌクレオチドを1μMずつ、フォワードプライマーおよびリバースプライマーとして用い、且つ、酵素としてPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)を用いて、25μL液の量で熱処理98℃10秒、アニーリング55℃15秒、伸長72℃5秒/kbの条件での処理を30サイクル実施する。
本発明において、目的の外来性遺伝子が導入される宿主微生物は特に限定されず、原核生物および真核生物のいずれであってもよい。既に単離保存されているもの、新たに天然から分離したものおよび遺伝子改変をされたものから任意に選択することができる。宿主微生物は、例えば、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属、アスペルギルス属、クレブシエラ属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属およびストレプトマイセス属からなる群より選択される属に属する。本発明の宿主微生物は、好ましくは、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属およびアスペルギルス属からなる群より選択される属に属する。宿主微生物は、より好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)である。
したがって、上記宿主微生物に外来性遺伝子を導入した本発明にかかる組換え微生物は、例えば、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属、アスペルギルス属、クレブシエラ属、グルコノバクター属、ザイモモナス属、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属およびストレプトマイセス属からなる群より選択される属に属し、好ましくは、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属およびアスペルギルス属からなる群より選択される属に属する。本発明にかかる組換え微生物は、より好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)である。
本発明にかかる遺伝子組換え微生物が有するアジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路および当該経路の各反応段階を触媒する酵素について、図1を参照しながら以下に説明する。
図1のステップAの変換では、例えば、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼ、または3-オキソアジピルCoAチオラーゼが関与し、スクシニル-CoAとアセチル-CoAとが縮合し、3-オキソアジピル-CoAへと変換される。本変換を触媒し得る酵素他の例としては、β-ケトチオラーゼが挙げられる。更には、例えば、EC 2.3.1.9(アセトアセチルCoAチオラーゼ)、EC 2.3.1.16(3-ケトアシル-CoAチオラーゼ)およびEC 2.3.1.174(3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ)などの群に分類される酵素も、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、一態様において、配列番号9に示すアミノ酸配列からなる大腸菌由来のPaaJが使用される。好ましい一態様において、当該酵素は、配列番号1に示すヌクレオチドおよび配列番号2に示すヌクレオチドをプライマーとして使用した、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物であるDNA配列(1203bp)にコードされるスクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼである。
図1のステップBの変換では、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼが関与し、3-オキソアジピル-CoAが、3-ヒドロキシアジピル-CoAへと変換される。本変換を触媒し得る他の酵素の例としては、EC 1.1.1.m(mは整数である)に分類されるオキシドレダクターゼが挙げられる。具体的に、例えば、EC 1.1.1.35(3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ)、EC 1.1.1.36(アセトアセチル-CoAデヒドロゲナーゼ)、EC 1.1.1.157(3-ヒドロキシブタノイル-CoAデヒドロゲナーゼ)、EC 1.1.1.211(長鎖3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼ)およびEC 1.1.1.259(3-ヒドロキシピメロイル-CoAデヒドロゲナーゼ)などの群に分類される酵素が、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば配列番号10に示すアミノ酸配列からなる大腸菌由来のPaaHが使用される(図3)。好ましい一態様において、当該酵素は、配列番号3に示すヌクレオチドおよび配列番号4に示すヌクレオチドをプライマーとして使用した、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物のDNA配列(1521bp)にコードされる3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼである。
図1のステップCの変換では、例えば、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼが関与し、3-ヒドロキシアジピル-CoAが、2,3-デヒドロアジピル-CoAへと変換される。本変換を触媒し得る他の酵素の例としては、EC 4.2.1.n(nは整数である)に分類されるヒドロリアーゼが挙げられる。具体的に、例えば、EC 4.2.1.17(エノイル-CoAヒドラターゼ)、EC 4.2.1.55(3-ヒドロキシブタノイル-CoAデヒドラターゼ)およびEC 4.2.1.74(長鎖エノイル-CoAヒドラターゼ)などの群に分類される酵素は、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。好ましい一態様において、当該酵素は、先述の3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼである。
図1のステップDの変換では、例えば2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼが関与し、2,3-デヒドロアジピル-CoAが、アジピル-CoAへと変換される。本変換を触媒し得る酵素の他の例としては、EC 1.3.1.o(oは整数である)に分類されるオキシドレダクターゼが挙げられる。具体的に、例えば、EC 1.3.1.8(アシル-CoAデヒドロゲナーゼ(NADP))や、EC 1.3.1.9(エノイル-ACPレダクターゼ(NADH))、EC 1.3.1.38(トランス-2-エノイル-CoAレダクターゼ(NADP))、EC 1.3.1.44(トランス-2-エノイル-CoAレダクターゼ(NAD))、EC 1.3.1.86(クロトニル-CoAレダクターゼ)、EC 1.3.1.93(長鎖アシル-CoAレダクターゼ)およびEC 1.3.1.104(エノイル-ACPレダクターゼ(NADPH))などの群に分類される酵素は、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。好ましい一態様において、当該酵素は、先述の2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼである。
図1のステップEの変換では、アジピル-CoAがアジピン酸へと変換される。本変換を触媒し得る酵素の例としては、EC 3.1.2.p(pは整数である)に分類されるチオエステルヒドラターゼが挙げられる。例えば、EC 3.1.2.1(アセチル-CoAヒドラターゼ)およびEC 3.1.2.20(アシル-CoAヒドラターゼ)などの群に分類される酵素は、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。好ましい一態様において、当該酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、配列番号16に示す、アシネトバクターADP1株由来のtesB(Ab)が使用される。使用する酵素の基質特異性に応じて、3-オキソアジピル-CoA、3-ヒドロキシアジピルCoAおよび2,3-デヒドロアジピルCoAのCoAが脱離され、それぞれ3-オキソアジピン酸、3-ヒドロキシアジピン酸、2,3-デヒドロアジピン酸を生成する。
また、図1のステップEの変換を触媒し得る別の酵素の例として、EC 2.8.3.q(qは整数である)に分類されるCoA-トランスフェラーゼも挙げることができる。例えば、EC 2.8.3.5(3-オキソ酸 CoA-トランスフェラーゼ)や、EC 2.8.3.6(3-オキソアジピン酸 CoA-トランスフェラーゼ)、EC 2.8.3.18(スクシニル-CoA:酢酸 CoA-トランスフェラーゼ)といった群に分類される酵素は、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。
さらには、図1のステップEの変換を触媒し得る別の酵素変換の例として、EC 2.3.1.r(rは整数である)に分類されるアシルトランスフェラーゼによって、アジピル-CoAのアジピル基をリン酸に転移してアジピルリン酸を生成した後、EC 2.7.2.s(sは整数である)に分類されるホスホトランスフェラーゼによる脱リン酸化を経る経路も例示することができる。例えば、アシルトランスフェラーゼとしては、EC 2.3.1.8(リン酸アセチルトランスフェラーゼ)や、EC 2.3.1.19(リン酸ブチリルトランスフェラーゼ)、ホスホトランスフェラーゼについては、EC 2.7.2.1(酢酸キナーゼ)や、EC 2.7.2.7(ブタン酸キナーゼ)といった群に分類される酵素は、本変換に対して活性を有し得る酵素として例示することができる。
図1のステップTでは、3-オキソアジピン酸がレブリン酸へと変換される。本変換は、酵素(3-オキソアジピン酸デカルボキシラーゼ)によって触媒されるか、または、自然発生的に起こる。
図1のステップFの変換では、アジピル-CoAからアジピン酸セミアルデヒドへと変換される。本変換を触媒し得る酵素の例としては、EC 1.2.1.t(tは整数である)に分類される酵素が挙げられる。例えば、EC 1.2.1.10(アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化))、EC 1.2.1.17(グリオキシル酸デヒドロゲナーゼ(アシル化))、EC 1.2.1.42(ヘキサデカナールデヒドロゲナーゼ(アシル化))、EC 1.2.1.44(シナモイル-CoAレダクターゼ(アシル化))、EC 1.2.1.75(マロニル-CoAレダクターゼ(マロン酸セミアルデヒド形成))、EC 1.2.1.76(コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アシル化))といった群に分類される酵素は、本変換と同様に、CoAを脱離しアルデヒドを生成する変換反応を触媒することから、本変換に対しても活性を有し得る酵素として例示することができる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば、配列番号73に記載されるアミノ酸配列からなるClostridium kluyveri由来のsucDが使用される(図6)。
図1のステップG、J、Qの変換では、カルボキシル基がアルデヒドへと変換される。本変換を触媒し得る酵素としては、例えば、カルボン酸レダクターゼ(Carboxylic Acid Reductase;CAR)が挙げられる。例えば、EC 1.2.1.30(カルボン酸レダクターゼ(NADP+))、EC 1.2.1.31(L-アミノアジピン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ)、EC 1.2.1.95(L-2-アミノアジピン酸レダクターゼ)、EC 1.2.99.6(カルボン酸レダクターゼ)といった群に分類される酵素が、本変換と同様に、カルボン酸からアルデヒドを生成する変換反応を触媒することから、本変換に対しても活性を有し得る酵素として例示することができる。酵素の由来となる生物種の典型的な例としては、Nocardia iowensis、Nocardia asteroides、Nocardia brasiliensis、Nocardia farcinica、Segniliparus rugosus、Segniliparus rotundus、Tsukamurella paurometabola、Mycobacterium marinum、Mycobacterium neoaurum、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium avium、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium immunogenum、Mycobacterium smegmatis、Serpula lacrymans、Heterobasidion annosum、Coprinopsis cinerea、Aspergillus flavus、Aspergillus terreus、Neurospora crassa、Saccharomyces cerevisiaeが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば、配列番号74~78のいずれかに記載されるアミノ酸配列からなる酵素の少なくとも一種が使用されてもよく(図7A~図7E)、好ましくは、配列番号76に記載されるアミノ酸配列からなるMycobacterium abscessus由来の酵素MaCar、配列番号78に記載されるアミノ酸配列からなるMaCarの変異体であるMaCar(m)の少なくとも一方が使用され、より好ましくは配列番号78に記載されるアミノ酸配列からなるMaCar(m)が使用される。
また、カルボン酸レダクターゼは、ホスホパンテテイニル化されることにより活性型のホロ酵素に変換され得る(Venkitasubramanian et al., Journal of Biological Chemistry,Vol.282,No.1,478-485(2007))。ホスホパンテテイニル化はホスホパンテテイニル基転移酵素(Phosphopantetheinyl Transferase;PT)により触媒される。本反応を触媒し得る酵素としては、例えば、EC 2.7.8.7に分類される酵素が挙げられる。したがって、本発明の微生物は更に、ホスホパンテテイニル基転移酵素の活性が増大するように改変されていて良い。ホスホパンテテイニル基転移酵素の活性を増大する方法としては、外来のホスホパンテテイニル基転移酵素遺伝子を導入する方法や、内因性のホスホパンテテイニル基転移酵素遺伝子の発現を強化する方法が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用される酵素は、ホスホパンテテイニル基転移活性を有する限り、これらに限定されないが、典型的な酵素としては、例えば、大腸菌のEntDや、Bacillus subtilisのSfp、Nocardia iowensisのNpt(Venkitasubramanian et al., Journal of Biological Chemistry,Vol.282,No.1,478-485(2007))、Saccharomyces cerevisiaeのLys5(Ehmann et al., Biochemistry 38.19 (1999): 6171-6177.)が挙げられる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば、配列番号79~82に記載されるアミノ酸配列からなる酵素の少なくともいずれか一種が使用されてもよく(図8A~図8D)、好ましくは、配列番号80に記載されるアミノ酸配列からなるNocardia iowensis由来のNocardia iowensisのNptが使用される。
図1のステップM、N、Sの変換は、アミノ基転移反応である。この変換を触媒し得る酵素の例としては、EC 2.6.1.u(uは整数である)に分類されるトランスアミナーゼ(アミノトランスフェラーゼ)が挙げられる。例えば、EC 2.6.1.19(4-アミノブタン酸-2-オキソグルタル酸トランスアミナーゼ)や、EC 2.6.1.29(ジアミントランスアミナーゼ)、EC 2.6.1.48(5-アミノ吉草酸トランスアミナーゼ)といった群に分類される酵素は、本変換に対しても活性を有し得る酵素として例示することができる。本発明で使用される酵素は、各ステップの変換活性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、カダベリンやスペルミジンをアミノ基転移することが報告されている大腸菌のプトレシンアミノトランスフェラーゼであるYgjG(Samsonova., et al., BMC microbiology 3.1 (2003): 2.)や、シュードモナス属のプトレシンアミノトランスフェラーゼであるSpuC(Lu et al.,Journal of bacteriology 184.14 (2002): 3765-3773.、Galman et al.,Green Chemistry 19.2 (2017): 361-366.)、大腸菌のGABAアミノトランスフェラーゼGabTや、PuuEが使用されてもよい。さらには、Ruegeria pomeroyi、Chromobacterium violaceum、Arthrobacter citreus、Sphaerobacter thermophilus、Aspergillus fischeri、Vibrio fluvialis、Agrobacterium tumefaciens、Mesorhizobium loti等の生物種由来のω-トランスアミナーゼも、1,8-ジアミノオクタンや1,10-ジアミノデカンなどのジアミン化合物へのアミノ基転移活性を有することが報告されており、本発明で使用されてもよい(Sung et al., Green Chemistry 20.20 (2018): 4591-4595.、Sattler et al., Angewandte Chemie 124.36 (2012): 9290-9293.)。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば、配列番号83~87に記載されるアミノ酸配列からなる酵素の少なくともいずれか一種が使用されてもよい(図9A~図9E)。典型的なアミノ基供与体としては、L-グルタミン酸、L-アラニン、グリシンが挙げられるが、これらには限定されない。
図1のステップH、L、Rの変換では、アルデヒドがアルコールに変換される。本変換を触媒し得る酵素の例としては、EC 1.1.1.v(vは整数である)に分類されるオキシドレダクターゼが挙げられる。例えば、EC 1.1.1.1(アルコールデヒドロゲナーゼ)や、EC 1.1.1.2(アルコールデヒドロゲナーゼ(NADP+))、EC 1.1.1.71(アルコールデヒドロゲナーゼ[NAD(P)+])といった群に分類される酵素は、本変換と同様に、アルデヒドからアルコールへの変換反応を触媒することから、本変換に対しても活性を有し得る酵素として例示することができる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されないが、例えば、配列番号88に記載される大腸菌由来のAhrが使用される(図10)。
図1のステップI、Oの変換では、カルボキシル基にCoAが付加される。本変換を触媒し得る酵素の例としてはEC 2.8.3.w(wは整数である)に分類されるCoAトランスフェラーゼ、EC 6.2.1.x(xは整数である)に分類される酸チオールリガーゼが挙げられる。本発明で使用される酵素は、本変換に対する活性を有するものであれば限定されない。
本発明に利用できる上記の酵素をコードする遺伝子は、例示された生物以外に由来するものであっても、または人工的に合成したものであってもよく、宿主微生物細胞内で実質的な酵素活性を発現できるものであればよい。
本発明にかかる遺伝子組換え微生物は、先述の3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび/または2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子に加え、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼおよび3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼからなる群より選択される少なくとも1つの酵素をコードする外来性遺伝子が導入されていることが好ましい。
すなわち、本発明にかかる組換え微生物は、好ましくは、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼをコードする外来性遺伝子および3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼをコードする外来性遺伝子のうちの少なくとも1つをさらに含む。
本発明にかかる組換え微生物は、上記外来性遺伝子、すなわち、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ、2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼおよび3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼ以外にも、更なる外来性遺伝子が導入されていてもよい。
本発明にかかる組換え微生物は、宿主微生物において、適宜、任意の遺伝子が破壊されたものであってもよい。標的遺伝子の破壊は、当該分野で既知の方法に従って行われてよい。
また、本発明の目的に利用できる上記酵素遺伝子は、前記宿主微生物細胞内で実質的な酵素活性を発現できるものであれば、自然界で発生し得るすべての変異や、人工的に導入された変異及び修飾を有していてもよい。例えば、特定のアミノ酸をコードする種々のコドンには余分のコドンが存在することが知られている。そのため本発明においても同一のアミノ酸に最終的に翻訳されることになる代替コドンを利用してよい。つまり、遺伝子コードは縮重しているので、ある特定のアミノ酸をコードするのに複数のコドンを使用でき、そのためアミノ酸配列は任意の1セットの類似のDNAオリゴヌクレオチドでコードされ得る。そのセットの唯一のメンバーだけが天然型酵素の遺伝子配列に同一であるが、ミスマッチのあるDNAオリゴヌクレオチドでさえ適切な緊縮条件下(例えば、3xSSC、68℃でハイブリダイズし、2xSSC、0.1%SDS及び68℃で洗浄)で天然型配列にハイブリダイズでき、天然型配列をコードするDNAを同定、単離でき、更にそのような遺伝子も本発明において利用できる。特に、ほとんどの生物は特定のコドン(最適コドン)のサブセットを優先的に用いることが知られているので(Gene、Vol.105、pp.61-72、1991等)、宿主微生物に応じて「コドン最適化」を行うことは本発明においても有用であり得る。
したがって、本発明にかかる遺伝子組換え微生物は、実質的な酵素活性を発現できることを条件に、上記酵素遺伝子の塩基配列と、例えば65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み得る。あるいは、本発明にかかる遺伝子組換え微生物は、上記酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列と、例えば65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有する塩基配列を含み得る。
本発明において、上記の生合成酵素遺伝子が「発現カセット」として宿主微生物細胞内に導入されることで、より安定的で高レベルの酵素活性を得ることができる。本明細書において、「発現カセット」とは、発現対象の核酸または発現対象の遺伝子に機能的に結合された転写および翻訳をレギュレートする核酸配列を含むヌクレオチドを意味する。典型的に、本発明の発現カセットは、コード配列から5’上流にプロモーター配列、3’下流にターミネーター配列、場合により更なる通常の調節エレメントを機能的に結合された状態で含み、そのような場合に、発現対象の核酸または発現対象の遺伝子が宿主微生物に導入される。
本明細書において、プロモーターとは、構成発現型プロモーターであるか誘導発現型プロモーターであるかに拘わらず、RNAポリメラーゼをDNAに結合させ、RNA合成を開始させるDNA配列と定義される。強いプロモーターとはmRNA合成を高頻度で開始させるプロモーターであり、本発明においても好適に使用される。大腸菌ではlac系、trp系、tacまたはtrc系、λファージの主要オペレーター及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、解糖系酵素(例えば、3-ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド‐3-リン酸脱水素酵素)、グルタミン酸デカルボキシラーゼA、セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼに対するプロモーター、T7ファージ由来RNAポリメラーゼのプロモーター領域等が利用可能である。コリネ菌(Corynebacterium glutamicum)ではHCE(high-level constitutive expression)プロモーター、cspBプロモーター、sodAプロモーターおよび伸長因子(EF-Tu)プロモーターなどが利用可能である。
ターミネーターとしては、T7ターミネーター、rrnBT1T2ターミネーター、lacターミネーターなどが利用可能である。
プロモーターおよびターミネーター配列のほかに、他の調節エレメントとしては、例えば、選択マーカー、増幅シグナルおよび複製起点などが挙げられる。好適な調節エレメントについては、例えば、”Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185”、Academic Press (1990)に記載されている。
本発明で用いる宿主微生物は、当該微生物が本来有する酵素をコードする遺伝子が破壊された微生物であってもよい。当該酵素をコードする遺伝子としては、例えば、乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldh遺伝子、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼをコードするatoB遺伝子、およびスクシニルCoAシンセターゼαサブユニットをコードするsucD遺伝子が挙げられる。このように、宿主微生物が本来有する酵素の遺伝子のうちの一部を破壊した宿主微生物を用いることで、不純物の混入を避け、目的外の反応の進行を抑制することができる。具体的には、乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldh遺伝子を破壊することで、不純物である乳酸の生成を低減することができる。アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼをコードするatoB遺伝子、およびスクシニルCoAシンセターゼαサブユニットをコードするsucD遺伝子を破壊することで、アジピン酸の収率を改善することができる。
上記で説明した発現カセットは、例えば、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、ISエレメント、フォスミド、コスミド、又は線状もしくは環状のDNA等から成るベクターに組み入れて、宿主微生物中に挿入される。プラスミドおよびファージが好ましい。これらのベクターは、宿主微生物中で自律複製されるものでもよいし、また染色体により複製されてもよい。好適なプラスミドは、例えば、大腸菌のpLG338、pACYC184、pBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pKK223-3、pDHE19.2、pHS2、pPLc236、pMBL24、pLG200、pUR290、pIN-III113-B1、λgt11又はpBdCI;桿菌のpUB110、pC194又はpBD214;コリネバクテリウム属のpSA77又はpAJ667などである。バチルス属などの桿菌ではpUB110、pC194またはpBD214などが挙げられる。これらの他にも使用可能なプラスミド等は、”Gene Cloning and DNA nalysis 6th edition”、Wiley-Blackwell(2016)に記載されている。ベクターへの発現カセットの導入は、適当な制限酵素による切り出し、クローニング、及びライゲーションを含む慣用の方法によって可能である。各々の発現カセットは、1つのベクター上に配置されてもよく、2つまたはそれ以上のベクターに配置されてもよい。
上記のようにして本発明の発現カセットを有するベクターが構築された後、該ベクターを宿主微生物に導入する際に適用できる手法は慣用の方法を用いることができる。例えば、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法、接合伝達法、プロトプラスト融合法などが挙げられるが、これらに限定されず、宿主微生物に好適な方法が選択可能である。
本発明の別の側面は、前記組換え微生物を用いた、目的化合物の製造方法に関する。より具体的には、前記組換え微生物を培養する培養工程を含む、目的化合物の製造方法に関する。
ここで、目的化合物は、アジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノールからなる群より選択される。アジピン酸誘導体としては、上記のとおり、例えば、3-オキソアジピン酸(3-OA)、レブリン酸(LEV)、3-ヒドロキシアジピン酸(3HA)および2,3-デヒドロアジピン酸(23DA)が挙げられる。
一態様において、本発明にかかる組換え微生物は、アジピン酸生産経路を有する。この場合、本発明は、当該組換え微生物を培養する培養工程を含む、アジピン酸の製造方法にも関する。
一態様において、本発明にかかる組換え微生物は、ヘキサメチレンジアミン生産経路を有する。この場合、本発明は、当該組換え微生物を培養する培養工程を含む、ヘキサメチレンジアミンの製造方法にも関する。
一態様において、本発明にかかる組換え微生物は、1,6-ヘキサンジオール生産経路を有する。この場合、本発明は、当該組換え微生物を培養する培養工程を含む、1,6-ヘキサンジオールの製造方法にも関する。
一態様において、本発明にかかる組換え微生物は、6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路を有する。この場合、本発明は、当該組換え微生物を培養する培養工程を含む、6-アミノ-1-ヘキサノールの製造方法にも関する。
培養工程では、組換え微生物を、炭素源および窒素源を含有する培地で培養することによって、菌体を含む培養物が得られる。本発明の遺伝子組換え微生物は、アジピン酸生産、ならびに、微生物の生育および維持に適した条件下で培養され、好適な培地組成、培養時間および培養条件は当業者により容易に設定できる。
炭素源は、D-グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、オリゴ糖、多糖、でんぷん、セルロース、米ぬか、廃糖密、油脂(例えば大豆油、ヒマワリ油、ピーナッツ油、ヤシ油など)、脂肪酸(例えばパルミチン酸、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸など)、アルコール(例えばグリセロール、エタノールなど)、有機酸(例えば酢酸、乳酸、コハク酸など)、トウモロコシ分解液、セルロース分解液、二酸化炭素、一酸化炭素などが挙げられる。好ましくは、D-グルコース、スクロースまたはグリセロールである。これらの炭素源は、個別にあるいは混合物として使用することが出来る。
バイオマス由来の原料を用いて製造されたアジピン酸は、ISO16620-2またはASTM D6866に規定されるCarbon-14(放射性炭素)分析に基づくバイオベース炭素含有率の測定により、例えば石油、天然ガス、石炭などを由来とする合成原料と明確に区別することができる。
窒素源は、含窒素有機化合物(例えば、ペプトン、カザミノ酸、トリプトン、酵母抽出物、肉抽出物、麦芽抽出物、コーンスティープリカー、大豆粉、アミノ酸および尿素など)、または無機化合物(例えば、アンモニア水溶液、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウムなど)が挙げられる。これらの窒素源は、個別にあるいは混合物として使用することが出来る。
また、培地は、組換え微生物が有用な付加的形質を発現する場合、例えば抗生物質への耐性マーカーを有する場合、対応する抗生物質を含んでいてよい。それにより、培養時の雑菌による汚染リスクが低減される。抗生物質としては、アンピシリンなどのβ-ラクタム系抗生物質、カナマイシンなどのアミノグリコシド系抗生物質、エリスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、クロラムフェニコールなどが挙げられるが、これらに限定されない。
培養は、バッチ式であっても連続式であってもよい。また、いずれの場合にも、培養の適切な時点で追加の前記炭素源等を補給する形式であってもよい。更に、培養は、好適な温度、酸素濃度、pH等の条件を制御しながら培養されてもよい。一般的な微生物宿主細胞に由来する形質転換体の好適な培養温度は、通常15℃~45℃、好ましくは25℃~37℃の範囲である。宿主微生物が好気性の場合、発酵中の適切な酸素濃度を確保するために振盪(フラスコ培養等)、攪拌/通気(ジャー・ファーメンター培養等)を行ってもよい。それらの培養条件は、当業者にとって容易に設定可能である。
本発明にかかる目的化合物の製造方法は、培養物から生産化合物を分離精製する分離精製工程を含んでもよい。当該工程では、任意の手法を、例えば、遠心分離、膜ろ過、膜分離、晶析、抽出、蒸留、吸着、相分離および各種のクロマトグラフィーといった手法を用いることができるが、これらに限定されない。分離精製工程は、一種類の工程からなっても良く、また複数の工程の組み合わせからなってもよい。
以上の説明を与えられた当業者は、本発明を十分に実施できる。以下、更なる説明の目的として実施例を与え、従って、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の単離と同定>
日本国内の活性汚泥より、アジピン酸を唯一の炭素源及びエネルギー源とする培地を用いて、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株を分離した。バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター NPMD)に2020年12月4日(原寄託日)付けで寄託申請し(受領番号:NITE ABP-03334)、「受託番号:NITE BP-03334」として国際寄託されている。
Burkholderia sp.LEBP-3株の分類的性状は以下に示す通りである。
<LEBP-3株の菌学的諸性質>
培養温度:37℃、
細胞形態:桿菌(0.7x1.7-3.0μm)、
グラム染色性:-、
芽胞の有無:-、
運動性:+、
LB寒天培地48h培養時のコロニー形態:直径1.9~2.5mm、淡黄色、円形、レンズ状、全縁、平滑、不透明、バター様、
30℃生育:+、
45℃生育:+、
カタラーゼ反応:+、
オキシダーゼ反応:+、
グルコースからの酸/ガス産生:+/-、
O/Fテスト(酸化/発酵):+/-、
硝酸塩還元性:-、
インドール産生性:-、
ブドウ糖酸性化性:-、
ウレアーゼ:持たない、
エスクリン分解性:+、
ブドウ糖、L-アラビノース、D-マンノース、N-アセチル-D-グルコサミン、グルコン酸、n-カプリン酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸および酢酸フェニル:資化できる、
マルトース:資化できない。
<LEBP-3株の16SrRNA遺伝子配列相同性による系統解析>
16SrDNA遺伝子の塩基配列解析を行うことにより同定を行った。16SrDNA遺伝子の塩基配列をPCRにて増幅し、シーケンス解析を行った。BLAST相同性検索のデータベースはDB-BA11.0(テクノスルガ・ラボ社)および国際塩基配列データベースを使用した。その結果、LEBP-3株はBurkhlderia属で構成されるクラスター内に含まれたが、何れの既知種とも異なる分子系統学的位置を示したことから、種名の同定に至らなかった。
<PCR増幅による酵素遺伝子の取得と相同性評価>
Burkholderia sp.LEBP-3株の全ゲノムドラフト解析を実施した。LEBP-3株を2mLのLB培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム10g/L)で37℃振とう培養を実施した。培養終了後、培養液から菌体を回収し、Nucleo Spin Tissue(製品名、MACHEREY-NAGEL社製)を使用してゲノムDNAを抽出した。Burkholderia sp.LEBP-3株の全ゲノムドラフト解析およびアノテーションを実施し、7679個のオープンリーディングフレーム(Open reading frame;ORF)を同定した。この情報を元に、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼとしてpaaJ(L3)を、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼとしてpaaH(L3)を、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼとしてpaaF(L3)を、2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼとしてmmgC(L3)を同定した。
PaaJ(L3)配列をクエリとしてBLAST検索を実施した結果を表1に、PaaH(L3)配列をクエリとしてBLAST検索を実施した結果を表2に、
PaaF(L3)配列をクエリとしてBLAST検索を実施した結果を表3に、MmgC(L3)配列をクエリとしてBLAST検索を実施した結果を表4に示す。なお、配列検索時のデータベースは「Refseq_Protein」を指定した。
Figure 2022154337000002
Figure 2022154337000003
Figure 2022154337000004
Figure 2022154337000005
以上の結果より、Burkholderia sp.LEBP-3株の持つ上記酵素は新規配列として同定された。paaJ(L3)遺伝子は配列番号1に示すヌクレオチドおよび配列番号2に示すヌクレオチドをプライマーとしてPCR増幅を行うことができる。paaH(L3)遺伝子は配列番号3に示すヌクレオチドおよび配列番号4に示すヌクレオチドをプライマーとしてPCR増幅を行うことができる。paaF(L3)遺伝子は配列番号5に示すヌクレオチドおよび配列番号6に示すヌクレオチドをプライマーとしてPCR増幅を行うことができる。mmgC(L3)遺伝子は配列番号7に示すヌクレオチドおよび配列番号8に示すヌクレオチドをプライマーとしてPCR増幅を行うことができる。PCRに用いたプライマー、各酵素および酵素をコードする塩基配列を、図2~5に示す。
PCR増幅条件の一例を下記に示す。酵素はPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)を用いた。熱処理98℃ 10秒、アニーリング55℃ 15秒、伸長72℃ 5秒/kbを30サイクル実施した。プライマーとして使用するオリゴヌクレオチドは各1μM添加した。液量は25μLで実施した。
<取得酵素遺伝子を発現する組換え大腸菌の構築>
PCR断片の増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)、プラスミドの調製には大腸菌JM109株を用いた。塩基配列のコドン最適化には、GeneArt GeneOptinizer(ソフトウェア名、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、または、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを用いた。
Eshcherichia coliのPaaJ(Ec)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行った。配列番号25および26のオリゴヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、paaJ(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号17)(図4A)を含むPCR増幅物を得た。次に、pRSFDuet-1(製品名、Merck社製)を鋳型として、配列番号27および28に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、pRSFDuet-1断片を得た。遺伝子コード領域を含むDNA断片とpRSFDuet-1断片とを、をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。PaaJ(Ec)発現プラスミドとして「prm203」を得た。
Eshcherichia coliのPaaH(Ec)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)のゲノムDNAからクローニングを行った。配列番号29および30に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、paaH(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号18)(図4A)を含むPCR増幅物を得た。次に、prm203を鋳型とし、配列番号31および32に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、prm203断片を得た。各遺伝子コード領域を含むDNA断片とprm203断片とを、In-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaJ(Ec)-PaaH(Ec)発現プラスミドとして「prm69」を得た。
Eshcherichia coliのPaaF(Ec)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行った。配列番号33および34に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、paaF(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号19)(図4A)を含むPCR増幅物を得た。L3株のPaaF(L3)をコードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号35および36に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、paaF(L3)遺伝子のコード領域を含むPCR増幅物を得た。pETDuet-1(製品名、Merck社製)を鋳型として、配列番号41および42に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、pETDuet-1断片を得た。各遺伝子のコード領域を含むDNA断片とpETDuet-1断片とを、In-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。PaaF(Ec)発現プラスミドとして「prm74」を、PaaF(L3)発現プラスミドとして「prm194」を得た。
Acinetobacter baylyiのdcaA(Ab)、Thermobifida fuscaのTfu1647、L3株のMmgC(L3)をコードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。dcaA(Ab)遺伝子(配列番号22)(図4B)は、配列番号43および44に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとして、Thermobifida fuscaのTfu1647遺伝子(配列番号23)(図4B)は配列番号45および46に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとして、mmgC5(L3)遺伝子は配列番号47および48(図5A)に示すヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、dcaA(Ab)、Tfu1647、mmgC5(L3)各遺伝子のコード領域を含むPCR増幅物をそれぞれ得た。prm74およびprm194を鋳型とし、配列番号49および50に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、prm74断片およびprm194断片をそれぞれ得た。各遺伝子のコード領域を含むDNA断片と、prm74断片およびprm194断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaF(Ec)-dcaA(Ab)発現プラスミドとして「prm127」を、PaaF(Ec)-mmgC(L3)発現プラスミドとして「prm234」を、PaaF(L3)-mmgC(L3)発現プラスミドとして「prm166」を、それぞれ得た。
Acinetobacter baylyiのtesB(Ab)をコードするポリヌクレオチドは、Acinetobacter baylyiの染色体DNAから配列番号51および52に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、tesB(Ab)遺伝子のコード領域を含むPCR増幅物をそれぞれ得た。pCDFDuet-1を鋳型とし、配列番号53および54に示すヌクレオチド(図5A)をプライマーとしてPCRを行い、pCDFDuet-1断片を得た。各tesB(Ab)遺伝子コード領域を含むDNA断片と、pCDFDuet-1断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。TesB(Ab)発現プラスミドとして「prm92」を得た。
大腸菌BL21(DE3)株の遺伝子破壊株を下記の通りに作製した。乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldh遺伝子、アセチルCoAアセチルトランスフェラーゼをコードするatoB遺伝子、およびスクシニルCoAシンセターゼαサブユニットをコードするsucD遺伝子の破壊は、pHAK1(受領番号NITE P-02919として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD)に2019年3月18日に寄託した。国際寄託番号:NITE BP-02919)を用いた相同組換え法により行った。pHAK1は温度感受性変異型repA遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、Bacillus subtilis由来レバンスクラーゼ遺伝子SacBを含む。レバンスクラーゼ遺伝子は、スクロース存在下において宿主微生物に対して致死的に作用する。PCR断片の増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)、プラスミド調製は大腸菌HST08株を用いて行った。
大腸菌BL21(DE3)株のゲノムDNAを鋳型とし、破壊標的遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域を含むPCR増幅物を得た。ldh遺伝子周辺領域は配列番号55および56に示すヌクレオチド(図5B)をプライマーとしてPCRを行い、atoB遺伝子周辺領域は配列番号57および58に示すヌクレオチド(図5B)をプライマーとしてPCRを行い、sucD遺伝子周辺領域は配列番号59および60に示すヌクレオチド(図5B)をプライマーとしてPCRを行い、それぞれの断片を得た。
次に本PCR増幅物をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて、配列番号61及び62に示すプライマーを(図5B)用いて増幅したpHAK1プラスミド断片に挿入し、環状化した。
得られた破壊標的遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域のDNA断片が挿入されたpHAK1プラスミドを鋳型として、ldh遺伝子周辺領域は配列番号63および64に示すヌクレオチド(図5B)をプライマーとしてPCRを行い、atoB遺伝子周辺領域は配列番号65および66に示すヌクレオチド(図5B)をプライマーとしてPCRを行い、sucD遺伝子周辺領域は配列番号67および68に示すヌクレオチドをプライマー(図5B)としてPCRを行い、破壊標的遺伝子のコード領域の一部領域または全領域が除かれたプラスミド断片を得た。
得られたプラスミド断片を末端リン酸化、セルフライゲーションにより環状化し、遺伝子破壊用プラスミドを得た。
塩化カルシウム法(羊土社 遺伝子工学実験ノート 田村隆明著、参照)により、大腸菌BL21(DE3)株に所望の遺伝子の破壊のためのプラスミドを形質転換した後、カナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天末15g/L)に塗布し、30℃で一晩培養してシングルコロニーを取得し、形質転換体を得た。本形質転換体をカナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L)1mLに一白金耳植菌し、30℃で振盪培養を行った。得られた培養液を、カナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB寒天培地に塗布し、42℃で一晩培養した。得られるコロニーはシングルクロスオーバーにより、プラスミドがゲノム中に挿入されている。コロニーをLB液体培地1mLに一白金耳植菌し、30℃で振盪培養を行った。得られた培養液を、スクロース10%を含有するLB寒天培地に塗布し、一晩培養した。得られたコロニーについて、所望の遺伝子が破壊されていることをコロニーダイレクトPCRにより確認した。まず、ldh遺伝子破壊株を構築し、本ldh遺伝子破壊株を元にatoB遺伝子破壊株を構築し、さらにldh、atoB二重破壊株を元にsucD遺伝子破壊株を構築した。作製したldh、atoB、sucD遺伝子の三重破壊株をASL000株とした。
構築したプラスミドをASL000株に形質転換し、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、ストレプトマイシン硫酸塩50mg/Lを含むLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天末15g/L)に塗布し、37℃で24時間インキュベートして形質転換体のシングルコロニーを得た。取得した形質転換体を表5に示す。
Figure 2022154337000006
<取得酵素遺伝子を発現する組換え大腸菌によるアジピン酸生産試験>
表5に示す菌株を、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、およびストレプトマイシン硫酸塩50mg/Lを含むLB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L)2mL(14mL容ラウンドボトムチューブ)に一白金耳植菌し、37℃で24時間振盪培養を行い、前培養液を得た。前得られた前培養液10μLを、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、およびストレプトマイシン硫酸塩50mg/Lを含むMM培地1mL(96穴ディープウェルプレート)に植菌し、37℃で48時間振盪培養を行った。MM培地の組成を表6に示す。
Figure 2022154337000007
培養終了後、培養液中のアジピン酸およびアジピン酸類縁体の濃度を分析した。分析は、トリメチルシリル誘導体化を用いたGC/MS分析によって行った。培養液遠心上清40μL(内部標準としてセバシン酸二ナトリウムを終濃度10mMとなるように添加)に水:メタノール:クロロホルム=5:2:2(v/v/v)で混合した抽出液を360μL添加し、よく混合した。遠心分離(16,000×g、5分)後、上清100μLを別のマイクロチューブに採取し、遠心エバポレータで1時間遠心濃縮した。得られた乾固物にメトキシアミン塩酸塩20mg/mLピリジン溶液100μLを添加し、30℃で90分振盪した。N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド50μLを添加し、37℃で30分振盪した。反応溶液をGC/MS測定試料とし、下記の条件で分析を行った。
GC/MS分析条件
装置:GCMS-QP-2020NX(島津製作所製)
カラム:フューズドシリカキャピラリーチューブ 不活性処理チューブ(長さ1m、外径0.35mm、内径0.25mm、GLサイエンス社製)、InertCap 5MS/NP(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm、GLサイエンス社製)
試料注入量:1μL
試料導入法:スプリット(スプリット比25:1)
気化室温度:230℃
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス線速度:39.0cm/秒
オーブン温度:80℃、2分保持→15℃/分昇温→325℃、13分保持
イオン化法:電子イオン化法(EI)
イオン化エネルギー:70eV
イオン源温度:230℃
スキャン範囲:m/z=50~500
注入量:1μL
結果を表7に示す。表中、「3OA」は3-オキソアジピン酸を、「LEV」はレブリン酸を、「3HA」は3-ヒドロキシアジピン酸を、「23DA」は2,3-デヒドロアジピン酸を、「ADA」はアジピン酸を示す。
Figure 2022154337000008
L3株由来のPaaF(L3)およびmmgC(L3)の双方を発現させた発明株、すなわち、ADA500株およびADA496株では、3-オキソアジピン酸(3-OA)、レブリン酸(LEV)、3-ヒドロキシアジピン酸(3HA)、2,3-デヒドロアジピン酸(23DA)、およびアジピン酸(ADA)が対照株に比べ多く生成し、これらの合算値としてそれぞれ、355mg/Lおよび613mg/L生成した。以上の結果より、これらの遺伝子にコードされる酵素はアジピン酸経路反応を進行させる高い活性を有しており、アジピン酸およびアジピン酸誘導体の生成量を向上させることが示された。
本発明にかかる遺伝子組換え微生物は、バイオマス原料からの直接的なアジピン酸類の発酵生産において好適に利用できる。

Claims (18)

  1. 3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子および2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼをコードする外来性遺伝子のうちの少なくとも1つを含む、組換え微生物。
  2. 前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼおよび2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼの少なくとも1つが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株(受託番号:NITE BP-03334)に由来する、請求項1に記載の組換え微生物。
  3. 前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされ、
    当該DNAは、626~940bpを有する、請求項1または2に記載の組換え微生物。
  4. 前記2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされ、
    当該DNAは、924~1386bpを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  5. 前記3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (1a)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (1b)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされ、
    当該DNAは、783または784bpを有する、請求項1または2に記載の組換え微生物。
  6. 前記2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼが、バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (2a)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (2b)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAにコードされ、
    当該DNAは、1155または1156bpを有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  7. 上記組換え微生物が、エッセリシア属、コリネバクテリウム属、バチルス属、アシネトバクター属、バークホルデリア属、シュードモナス属、クロストリジウム属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、ヤロウィア属、カンジタ属、ピキア属およびアスペルギルス属からなる群より選択される属に属する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換え微生物。
  8. アジピン酸生産経路を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  9. ヘキサメチレンジアミン生産経路を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  10. 1,6-ヘキサンジオール生産経路を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  11. 6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え微生物。
  12. 請求項1~7のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、目的化合物の製造方法であって、
    前記目的化合物が、アジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノールからなる群より選択され、
    前記アジピン酸誘導体が、オキソアジピン酸、レブリン酸、3-ヒドロキシアジピン酸および2,3-デヒドロアジピン酸からなる群より選択される、製造方法。
  13. 請求項8に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、アジピン酸の製造方法。
  14. 請求項9に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、ヘキサメチレンジアミンの製造方法。
  15. 請求項10に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、1,6-ヘキサンジオールの製造方法。
  16. 請求項11に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、6-アミノ-1-ヘキサノールの製造方法。
  17. (A-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
    3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
    前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド;
    (A-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
    3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
    前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド;
    または
    (A-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (a1)配列番号5に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (a2)配列番号5に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号6に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
    3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼ活性を有し、
    前記DNAは、626~940bpを有する、組換えポリペプチド。
  18. (B-1)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物と配列同一性が80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、93%以上、95%以上、97%以上、98%以上または99%以上であるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
    2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
    前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド;
    (B-2)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物であるDNAによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなる組換えポリペプチドであって、
    2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
    前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド;
    または
    (B-3)バークホルデリア属(Burkholderia sp.)LEBP-3株の染色体DNAを鋳型とし、
    (b1)配列番号7に示す塩基配列からなるヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列からなるヌクレオチド、または
    (b2)配列番号7に示す塩基配列を含むヌクレオチドおよび配列番号8に示す塩基配列を含むヌクレオチド
    をプライマーとして使用したPCR増幅物の縮重異性体からなるDNAにコードされる組換えポリペプチドであって、
    2,3-デヒドロアジピルCoAレダクターゼ活性を有し、
    前記DNAは、924~1386bpを有する、組換えポリペプチド。
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