JP2022153921A - ビニルエステル樹脂組成物およびその樹脂成形体 - Google Patents

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【課題】樹脂の流動性の低下および加熱成形時における成形体の収縮を抑制できるとともに、外観、機械特性に優れた成形体を得ることができるビニルエステル樹脂組成物を提供する。【解決手段】ビニルエステル樹脂組成物は、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤を含有する。(Z)低収縮剤は、(z-1)メタクリル酸エチル単量体、(z-2)はスチレン系単量体、(z-3)カルボキシル基含有単量体からなる共重合体である。【選択図】 なし

Description

本発明は、ビニルエステル樹脂組成物、およびその樹脂成形体に関する。
ビニルエステル樹脂組成物は、塗料、化粧板、パテ、レジンコンクリート、建設部材、輸送機器、工業機材などの用途に幅広く用いられている。ビニルエステル樹脂は、例えば、原料であるビニルエステル樹脂を、スチレンモノマーなどのラジカル重合性モノマーに溶解(希釈)した混合物に、硬化剤(有機過酸化物)や硬化促進剤などを加えて調製される。そして、当該樹脂組成物は硬化することで、上記の化粧板、建設部材などの用途において、硬化物(成形体)として使用される。
ビニルエステル樹脂の成形体はシートモールディングコンパウンド(SMC)成形によって硬化される。SMC成形は、強化材となる長さ10~50mm程のガラス繊維や炭素繊維を、樹脂、低収縮剤、硬化剤、内部離型剤などを混合した樹脂ペーストに含浸させたのち、加熱し増粘させたシート状の中間基材を裁断、計量して、金型にチャージして、さらに加圧加熱し硬化させ成形品を得る方法である。樹脂と低収縮剤を混合した際に樹脂ペーストが増粘すると、含浸性が低下し、SMC基材の調製が困難となるため、樹脂ペーストの流動性が必要である。
ビニルエステル樹脂組成物の硬化は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化と同様、基本的には樹脂の不飽和二重結合とラジカル重合性モノマーとのラジカル重合であるため、硬化時に約5~10vol%の硬化収縮が起こり、成形体のひずみやクラックが発生するという問題がある。そのような問題に対して、特許文献1では、不飽和ポリエステル樹脂に低収縮剤として特定のA-B型ブロック共重合体を用いることで、成形収縮が小さく、外観の優れた成形品が得られることが開示されている。
特開平11-92646号公報
近年、ビニルエステル樹脂の成形体は、不飽和ポリエステル樹脂の成形体と比較して、耐薬品性を有し、耐熱性、耐衝撃性に優れているため、自動車用の構造材として使用されるようになっている。従来、ビニルエステル樹脂の成形体を自動車の構造材として使用する場合、内部の骨格として使用され、外部を鋼板で覆っていたが、近年の自動車の軽量化の加速により、鋼板が除かれ、ビニルエステル樹脂の成形体が外部に晒されるようになってきた。そのため、ビニルエステル樹脂の成形体は低収縮性に加えて、機械特性および成形外観の優れたものが求められるようになってきた。
しかしながら、従来開示されている低収縮剤をビニルエステル樹脂組成物に用いても、流動性は良好であるものの、成形外観、機械特性、低収縮性が不十分であるという問題があった。
本発明の課題は、ビニルエステル樹脂の流動性の低下および加熱成形時における成形体の収縮を抑制できるとともに、外観、機械特性に優れた成形体を得ることができるビニルエステル樹脂組成物を提供することである。
本発明のビニルエステル樹脂組成物は、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマーおよび(Z)低収縮剤を含むビニルエステル樹脂であって、
(Z)低収縮剤は、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含む共重合体であることを特徴とする。
また、本発明は、前記ビニルエステル樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする、樹脂成形体に係るものである。
本発明によれば、ビニルエステル樹脂の流動性および加熱成形時における成形体の収縮を抑制できるとともに、外観、機械特性に優れた成形体を得ることができる。
本発明にかかるビニルエステル樹脂組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のようにも推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本発明のビニルエステル樹脂組成物は、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤を含む。(Z)低収縮剤は、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含む共重合体である。
前記低収縮剤は、上記のように(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位を含むことにより、機械特性に優れた樹脂成形体がえられる。また、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位を特定の比率で併用することにより、成形収縮に優れた樹脂成形体が得られる。さらに、(z-3)カルボキシル基含有単量体を含むことにより、前記ビニルエステル樹脂組成物に良好に相容し、樹脂成形体中で良好に分散できるため、流動性、成形外観に優れる。
[(X)ビニルエステル樹脂]
(X)ビニルエステル樹脂は、通常、エポキシ樹脂とα,β―不飽和モノカルボン酸とを公知の方法によりビニルエステル樹脂化させることで得られ、エポキシ(メタ)アクリレートとも称される。
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA,ビスフェノールAD、ビスフェノールFおよびビスフェノールのジグリシジルエーテルならびにその高分子量同族体、フェノールノボラック型ポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラック型ポリグリシジルエーテル類などが挙げられる。さらに、これらのハロゲン化誘導体も使用することができる。前記エポキシ樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記α,β―不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、桂皮酸、アクリル酸および/またはメタクリル酸から得られる誘導体の不飽和モノカルボン酸などが挙げられる。α,β―不飽和モノカルボン酸は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ビニルエステル化における反応は、前記エポキシ樹脂のエポキシ基と、α,β―不飽和モノカルボン酸のカルボン酸基を反応させるものである。反応の条件は、何ら限定されるものではないが、例えば、前記反応は、80℃~140℃の反応温度で、必要に応じて、反応触媒を使用して行われる。当該触媒としては、例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、トリエチレンジアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類や、トリメチルベンジルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩や、塩化リチウムなどの金属塩などが挙げられる。当該触媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、(X)ビニルエステル樹脂は、飽和ジカルボン酸及び/又は不飽和ジカルボン酸と、多価アルコールから得られる末端カルボキシル基のポリエステルに、α,β―不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応させて得ることもできる。
[(Y)ラジカル重合性モノマー]
(Y)ラジカル重合性モノマーは、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α―メチルスチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのビニルモノマー;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレートなどのアリルモノマー;フェノキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなどが挙げられる。(Y)ラジカル重合性モノマーは、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの中でも、スチレン、ビニルトルエンなどが一般的に使用される。
(X)ビニルエステル樹脂と(Y)ラジカル重合性モノマーとの合計質量を100wt%としたとき、(Y)ラジカル重合性モノマーの質量は、10~60wt%が好ましい。
[(Z)低収縮剤]
(Z)低収縮剤は、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含む共重合体である。
(z-2)スチレン系単量体は、スチレン構造を含む単量体である。具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α―メチルスチレン、クロロスチレン、t-ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、スチレンが特に好ましい。
(z-3)カルボキシル基含有単量体としては、公知のものが使用でき、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、桂皮酸などが挙げられ、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
<(Z)低収縮剤の重合方法>
(Z)低収縮剤は(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含む共重合体であり、公知の方法によって製造することができるが、ペルオキシド、ポリマーペルオキシドを重合開始剤とした製法によっても製造することができる。
ペルオキシドおよびポリマーペルオキシドとは、1分子中に1個または2個以上のペルオキシ結合を持つ化合物である。ペルオキシド、ポリマーペルオキシドとしては、例えば下記式(1)、(2)で表されるものを利用することができる。ペルオキシド、ポリマーペルオキシドは、それぞれ単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
Figure 2022153921000001
Figure 2022153921000002
(Z)低収縮剤は、前記ペルオキシドを用いて、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法によって得ることができる。
前記ペルオキシドおよびポリマーペルオキシドを用いた重合法は、特公昭60-3327号公報などに開示されている手法が挙げられ、例えば、ポリマーペルオキシドを重合開始剤として用い、前記メタクリル酸エチル単量体を溶液(重合溶媒)中で重合する工程により、連鎖中にペルオキシ結合が導入されたペルオキシ結合含有Aセグメントを有する共重合体の溶液を得る第一工程と、得られたペルオキシ結合含有Aセグメントを有する共重合体の溶液に、前記スチレン系単量体および前記カルボキシル基含有単量体を加えて重合する工程により、AセグメントとBセグメントを有するブロック共重合体を得る第二工程を含む重合法である。
なお、前記ポリマーペルオキシドを用いた重合法では、第一工程として、前記スチレン系単量体および前記カルボキシル基含有単量体を加えてペルオキシ結合含有Bセグメントを有する共重合体の溶液を得た後、第二工程として、前記メタクリル酸エチル単量体を加えて重合してもよい。なお、前記第一工程と前記第二工程の間では、ペルオキシ結合含有セグメントを有する共重合体を中間体として反応系から取り出してもよく、反応系から取り出すことなく引き続いてブロック共重合させてもよい。さらにAセグメント、またはBセグメントを構成する単量体混合物の仕込み方法は、一括仕込み、分割仕込み、または連続仕込みなどが適用でき、特に制限されるものではない。
前記溶液(重合溶媒)としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メトキシー1-ブタノール、3-メトキシー3-メチル-1-ブタノールなどのアルコールエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などが挙げられる。前記重合溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記ペルオキシド、ポリマーペルオキシドの使用量は、(Z)低収縮剤を構成する単量体成分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。重合反応を行う温度は、使用する前記ペルオキシドの種類によって適宜変更されるが、工業的に製造を行う上で、30~150℃であることが好ましく、40~100℃であることがより好ましい。特に、上記の第一工程における重合反応については40~80℃、上記の第二工程における重合反応については60~100℃であり、かつ第一工程での重合反応における重合温度が、第二工程での重合反応における重合温度よりも低いことが好ましい。重合時間は、使用する単量体の種類やその使用量によって異なるが、第一工程における重合反応、および第二工程における重合反応は、いずれも1~10時間の範囲であることが好ましい。
また、上記の重合の際には、重合法に応じて、懸濁剤などを使用してもよく、懸濁剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースなどの親水性有機高分子;第三リン酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの難溶性無機塩が挙げられる。
(Z)低収縮剤は、重量平均分子量(Mw)が、成形体の収縮を抑制する観点から、50,000以上であることが好ましく、100,000以上であることがより好ましい。そしてビニルエステル樹脂組成物の粘度を低くして混錬作業性を向上させる観点から、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましい。
<組成比率>
本発明のビニルエステル樹脂組成物において、(X)ビニルエステル樹脂と(Y)ラジカル重合性モノマーの合計含有量を100質量部とした時、(Z)低収縮剤の含有量は成形収縮率の観点から3~60質量部とすることが好ましく、5質量部以上とすることが更に好ましい。また、(Z)低収縮剤の含有量は、ビニルエステル樹脂の混錬作業性の観点から50質量部以下が好ましく、40質量部以下とすることが特に好ましい。
(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位の質量と(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位の質量の合計100質量部に対して、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位の質量を30~70質量部(好ましくは30~50質量部)とし、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位の質量を30~70質量部(好ましくは50~70質量部)とする。
また、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位の質量と(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位の質量の合計100質量部に対して、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位の比率を0.1~10質量部とする。(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位の比率は、0.5質量部以上とすることが好ましく、また5質量部以下とすることが好ましい。
詳細な要因については、明らかになっていないが、(Z)低収縮剤において、上記範囲の含有量で(z-1)成分、(z-2)成分、(z-3)成分を含有することで、(Z)低収縮剤が(X)ビニルエステル樹脂およびラジカル重合性モノマー中で特殊な分散状態をとり、優れた低収縮性になるものと思われる。また(z-1)メタクリル酸エチル単量体は機械特性の優れた成形体の形成に寄与すると思われる。さらに(z-3)カルボキシル基含有単量体は樹脂の流動性、成形体の外観に寄与すると思われる。
本発明のビニルエステル樹脂組成物には、一般的にビニルエステル樹脂組成物に用いられるその他の添加剤を用いることができる。その他の添加剤としては、例えば、充填材、硬化剤、遅延剤、増粘剤、抗菌剤、内部離型剤、強化剤、染料、顔料、紫外線吸収剤、架橋剤、酸化防止剤などが挙げられる。
前記充填剤は、無機および有機の公知の充填剤を用いることができ、特定の種類に限定されない。前記無機の充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ガラスフリット、シリカ、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、三酸化アンチモン、粉末タルク、粉末石英、方解石、珪藻土、粘土鉱物質、粉末チョーク、大理石、石灰岩、ホウ砂などが挙げられる。また、前記有機の充填剤としては、例えば、粉末セルロース、綿粉末などが挙げられる。なお、前記充填剤は、単一の種類で構成されていても、複数種類を組み合わせて構成されていてもよい。
前記充填剤は通常、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、50~300質量部程度で使用できる。
前記硬化剤としては、例えば、ケトンペルオキシド類、ペルオキシケタール類、ヒドロペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシジカーボネート類、ペルオキシエステル類などの公知の有機過酸化物が挙げられる。なお、前記硬化剤は、通常、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、0.1~5質量部程度で使用する。
また、前記硬化剤を使用するに際し、N,N-ジブチルアニリン、トリブチルアミンなどの第三級アミン;アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピルなどのアセト酢酸エステル;ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトなどのコバルト塩などの効果促進剤を使用することができる。なお、前記硬化促進剤は、通常前記硬化剤100質量部に対して、0.01~0.5質量部程度で使用できる。
前記遅延剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2-メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン系;p-ベンゾキノン、メチルーp-ベンゾキノンなどのベンゾキノン系;カテコール、t-ブチルカテコールなどのカテコール系;2,6-ジーt-ブチルー4-メチルフェノール、4-メトキシフェノール、クレゾールなどのフェノール系;1-オキシルー2,2,6,6-テトラメチルピペリジンー4-オールなどのN-オキシル系などの公知の重合禁止剤が挙げられる。なお、前記遅延剤は、通常、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、0.01~1質量部程度で使用できる。
前記内部離型剤としては、例えば、ワックス、ポリビニルアルコール溶液、シリコーン系離型剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。なお、前記内部離型剤は、通常(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、1~10質量部程度で使用できる。
前記増粘剤としては、例えば、イソシアネート化合物が挙げられる。前記イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネートや、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などが挙げられる。前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、水素添加4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)などが挙げられる。前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などが挙げられる。なお、前記増粘剤は、通常、(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、5~30質量部程度で使用できる。
前記強化剤としては、例えば、チョップドストランド、チョップドストランドマット、ロービングクロスなどのガラス繊維;炭素繊維、アラミド繊維などが挙げられる。前記強化剤は、通常(X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマー、(Z)低収縮剤の合計100質量部に対して、10~50質量部で使用できる。
本発明の樹脂成形体は、前記ビニルエステル樹脂組成物を硬化(成形)することによって得られる。当該硬化(成形)は、前記ビニルエステル樹脂組成物の単体で行うことができるほか、物品の表面や全体を被覆するように複合材料として行うことができる。
前記ビニルエステル樹脂組成物を硬化(成形)する方法としては、何ら限定されるものではないが、例えば、引抜成形法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、RTM法、ピンワインディング法、インフュージョン法、ホット(コールド)プレス法、スプレーアップ法、連続プレス法、及びプリプレグの形態でシートワインディング法、オートクレーブ法などが挙げられる。なお、前記硬化(成形)する温度は、45~170℃程度であり、硬化時間は数十秒~数時間である。
本発明の成形体は、例えば自動車用のヘッドランプリフレクター、フェンダー、ルーフパネル、シリンダーヘッドカバー、エンジンカバー、モーター封止材、HVまたはEV用モーターコイル封止材、ガソリンタンク、電子機器用の積層板、ブレーカー、医療用CTカバーとして使用され、特に自動車用の鋼板で被覆されていない構造部材として好適に利用できる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
<低収縮剤の製造>
<製造例Z-1>
温度計、窒素導入管、撹拌機及びコンデンサーを備えたガラス製反応器に水300質量部、部分ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、「ゴーセノールKH-17」)の1wt%水溶液15質量部及びハイドロキシアパタイトの10wt%水分散液(日本合成化学工業製、「スーパータイト10」)15質量部を仕込んだ。次に、式(1)のペルオキシド1部を前記水溶液に室温下1時間分散させた後、メタクリル酸エチル30質量部、スチレン70質量部、メタクリル酸0.5質量部を仕込んだ。そして、反応器内に窒素を導入しながら、撹拌下55℃で3時間重合を行った。その後室温まで冷却し、得られた重合物を5wt%塩酸130質量部、続いて水で洗浄し濾別後、真空乾燥して白色粒状のランダム共重合体を得た。
<製造例Z-2>
製造例Z-2では、単量体を表2に記載の量に変更した以外は、製造例Z-1と同様の方法で製造した。
<製造例Z-3>
温度計、窒素導入管、撹拌機及びコンデンサーを備えたガラス製反応器に水300質量部、部分ケン化ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、「ゴーセノールKH-17」)の1wt%水溶液15質量部及びハイドロキシアパタイトの10wt%水分散液(日本合成化学工業製、「スーパータイト10」)15質量部を仕込んだ。次に、式(2)のポリマーペルオキシド1部を前記水溶液に室温下1時間分散させた後、メタクリル酸エチル30質量部を仕込んだ。そして、反応器内に窒素を導入しながら、撹拌下65℃で2時間重合(第一段重合反応)を行った。その後室温まで冷却し、反応器にスチレン70質量部、メタクリル酸0.1質量部を添加し、室温下1時間分散させた後、反応器に窒素を導入しながら、撹拌下90℃で1時間重合(二段目重合反応)を行った。室温まで冷却した後、得られた重合物を5wt%塩酸130部、続いて水で洗浄し濾別後、真空乾燥して白色粒状のブロック共重合体を得た。
<製造例Z-4~Z-8>
製造例Z-4~Z-8では、単量体を表3に記載の量に変更した以外は、製造例Z-3と同様の方法で製造した。
<比較製造例Z‘-1~Z’-2>
比較製造例Z‘-1~Z‘-2では、単量体を表4に記載の種類または量に変更した以外は、製造例Z-1と同様の方法で製造した。
<比較製造例Z‘-3~Z’-4>
比較製造例Z‘-3~Z’-4では、単量体を表5に記載の種類または量に変更した以外は、製造例Z-3と同様の方法で製造した。
製造例Z-1~Z-8、比較製造例Z‘-1~Z’-4で得られた低収縮剤の重量平均分子量を測定した。具体的には、GPCシステムとしてTOSOH HLC-8320GPCを用い、カラムとしてTOSOH TSKgel Super Multipore H-RCを1本連続装着し、カラム温度を40℃とし、基準物質をポリスチレンとし、展開溶剤をテトラヒドロフランとし、展開溶媒は1mL/分の流速で流し、サンプル濃度0.1wt%のサンプル溶液0.1mLを注入し、EcoSEC-WorkStation GPC計算プログラムを用いて測定した。
なお、表2~表5では、各単量体の質量部は、上記の製造例および比較製造例で使用した(z-1)と(z-2)の合計質量を100質量部として換算した値で表記した。
<ビニルエステル樹脂組成物の製造>
ビニルエステル樹脂とラジカル重合性モノマーを含む混合物(日本ユピカ製、「ネオポール8051」)を100g、上記で得られた低収縮剤を5~50g、増粘剤(三井化学製、「コスモネートLK」)15.5g、遅延剤(ベンゾキノン 5wt%溶液)0.44g、硬化剤(日油製「パーヘキサC-75」と「パーブチルI-75」の質量比が1/1)0.55gを配合し、スリーワンモーター(HEIDON600G)を用いて300rpmで3分間混錬した。その後、強化剤として炭素繊維(日本ポリマー産業製、「ミルドファイバー CF-N 3mm」)5.5gを加えて300rpmで3分間、さらに、炭素繊維(日本ポリマー産業製、「チョップドファイバー CFMP―30RE」)11gを加えて150rpmで5分間混錬することでビニルエステル樹脂組成物を製造した。
<ビニルエステル樹脂成形体の作成>
上記で得られたビニルエステル樹脂組成物を、PETフィルムに包んだ状態で40℃で24時間静置した。その後PETフィルムから取り出し、140℃/10MPaで5分間プレスをすることにより直径90mm、厚さ11mmの円板状のビニルエステル樹脂成形体を作成した。
<流動性の評価>
TVB-15形粘度計(東機産業製)を用いて、TMロータ(M4)の回転速度を1.5rpm、測定時間5minとしてビニルエステル樹脂とラジカル重合性モノマーを含む混合物100質量部と、低収縮剤5~50質量部の混合物の流動性を測定した。800P以下を合格基準とした。
<成形品外観の評価>
表1に示す3段階の基準によって評価を行った。◎または〇を合格基準とした。
<成形収縮率の評価>
JIS K 6911に基づいて、成形収縮率を測定した。なお、成形収縮率が0.20vol%以下を合格基準とした。
<引張強度の評価>
JIS K 7054に基づいて、引張強度を評価した。なお、引張強度が200MPa以上を合格基準とした。
[評価結果]
表6、7には実施例1~11および比較例1~4の評価結果を示している。
Figure 2022153921000003
Figure 2022153921000004
Figure 2022153921000005
Figure 2022153921000006
Figure 2022153921000007
Figure 2022153921000008
Figure 2022153921000009
表2、表3、表6の結果から明らかなように、実施例1~11は、いずれも流動性、成形収縮率、成形品外観、引張強度に優れていた。
一方、表4、表5、表7の結果から明らかなように、比較例1~4では、これらの性能のバランスが不十分であった。
具体的には、比較例1では、低収縮剤中に(z-2)成分を含まないため、低収縮性を示さなかった。
比較例2では、低収縮剤中の(z-1)成分が少ないため、引張強度に低下が認められた。
比較例3では、低収縮剤中に(z-3)成分を含まないため、試験片外観に低下が認められた。
比較例4では、低収縮剤中に(z-1)成分を含まないため、低収縮性を示さなかった。また、引張強度に低下が認められた。

Claims (5)

  1. (X)ビニルエステル樹脂、(Y)ラジカル重合性モノマーおよび(Z)低収縮剤を含むビニルエステル樹脂組成物であって、
    (Z)低収縮剤は、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位を含む共重合体であることを特徴とする、ビニルエステル樹脂組成物。
  2. (z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位と(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位との合計質量を100質量部としたとき、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位の比率が30~70質量部であり、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位の比率が30~70質量部であり、(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位の質量が0.1質量部以上、10質量部以下であることを特徴とする、請求項1記載のビニルエステル樹脂組成物。
  3. (Z)低収縮剤が、(z-1)メタクリル酸エチル単量体由来の構成単位を含むセグメントAと、(z-2)スチレン系単量体由来の構成単位と(z-3)カルボキシル基含有単量体由来の構成単位とを含むセグメントBからなるブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1または2記載のビニルエステル樹脂組成物。
  4. (X)ビニルエステル樹脂および(Y)ラジカル重合性モノマーの合計質量を100質量部としたときに、(Z)低収縮剤の質量が3質量部以上、60質量部以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つの請求項に記載のビニルエステル樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか一つの請求項に記載のビニルエステル樹脂組成物を硬化して得られることを特徴とする、樹脂成形体。
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