JP2022153297A - 目付量の計測装置及び目付量の計測方法 - Google Patents

目付量の計測装置及び目付量の計測方法 Download PDF

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亮 江頭
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Abstract

【課題】非破壊で塗工膜の目付量をより高い精度で測定可能な目付量の計測装置及び目付量の計測方法を提供すること。【解決手段】シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなる測定対象物の前記塗工膜の表面の少なくとも一部に光を照射することにより、前記測定対象物を加熱するための加熱手段と;前記加熱手段から出射される光の光路上に配置され、前記光の一部を反射させつつ残りを透過させるための光透過反射手段と;前記光透過反射手段により反射させた反射光を照射し、前記反射光を映すための反射光撮像用反射手段と;前記反射光撮像用反射手段に映る前記反射光を撮像するための反射光撮像手段と;前記反射光撮像手段により撮像された前記反射光の画像から、前記反射光の強度に関する値を算出するための反射光強度算出手段と;加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求めるための温度測定手段と;前記反射光強度算出手段により算出された前記反射光の強度に関する値に基いて、前記測定対象物に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と前記測定対象物の温度上昇値との関係から前記塗工膜の目付量を算出する目付量算出手段と、を備えることを特徴とする目付量の計測装置。【選択図】 なし

Description

本発明は、目付量の計測装置並びに目付量の計測方法に関する。
従来より、塗工膜の目付量(単位面積当たりの塗工膜の質量)を非破壊で計測するために種々の装置や測定方法が研究されている。そして、このような塗工膜の目付量の測定に関して、予め、測定対象物の温度上昇値と、測定対象物の熱容量と、測定対象物に対する入熱量との関係に基いて計算式を求めて、測定対象物の温度上昇値を利用して塗工膜の目付量を求める方法等も提案されている。このような測定方法やその方法に利用する装置としては、例えば、特開2019-95436号公報(特許文献1)に、板状部材の表面に塗工された塗工膜が加熱または冷却されたときの、前記塗工膜の予め定めた位置での、前記加熱または冷却が開始された第1時刻における前記塗工膜の温度の推定値、及び前記加熱または冷却が開始された直後の第2時刻における前記塗工膜の温度の実測値のいずれか一方を特定値として取得する取得手段と、前記特定値を取得した場合に、前記特定値に応じた時刻の前記塗工膜の温度と前記塗工膜の目付量との予め定めた関係を用いて、前記取得手段で取得された特定値に対応する、前記塗工膜の予め定めた位置での目付量を求めて出力する出力手段とを備えた計測装置等が開示されている。また、発明推進協会公開技報公技番号2020-500911号(非特許文献1)においては、電極シートに光を照射して電極シートを加熱した時の温度上昇値から目付量を計測する方法が開示されている。このような特許文献1及び非特許文献1に記載されているような装置や方法により求められる目付量の精度は十分な水準にあるものの、より高精度な測定が可能となるような方法の出現が望まれている。
特開2019-95436号公報
発明推進協会公開技報公技番号2020-500911号
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、非破壊で塗工膜の目付量をより高い精度で測定可能な目付量の計測装置及び目付量の計測方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、目付量の測定精度をより向上させるために研究を重ねたところ、目付量の計測装置に加熱手段として光を照射して加熱する手段を利用する場合に、その加熱手段の設置環境や長期使用による経年劣化等の影響により、加熱手段の出力に変動(ばらつき)やゆらぎが生じたり、加熱手段の出力の低下が引き起こされる場合があり、これにより計測される目付量に誤差が生じる場合があることを見出し、かかる観点で、より高い精度を得るといった点において改良の余地があることを見出した。このような知見に基いて、本発明者らが更に鋭意研究を重ねた結果、加熱手段からの光照射により測定対象物を加熱して加熱前後の温度上昇値を求めて目付量を計測する際に、その加熱手段から出射された光(測定対象物の加熱のための光)の一部を反射させて、その反射光の画像を取得し、前記画像から反射光の強度に関する値を算出し、その反射光の強度に関する値に基いて、測定対象物に対する入熱量(単位面積当たりの入熱量)の値を補正し、補正後の入熱量の値と、前記測定対象物の温度上昇値との関係に基づいて前記塗工膜の目付量を算出することにより、非破壊で塗工膜の目付量を計測する場合の測定精度をより高いものとすることが可能となることを見出した。
すなわち、本発明の目付量の計測装置は、
シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなる測定対象物の前記塗工膜の表面の少なくとも一部に光を照射することにより、前記測定対象物を加熱するための加熱手段と、
前記加熱手段から出射される光の光路上に配置され、前記光の一部を反射させつつ残りを透過させるための光透過反射手段と、
前記光透過反射手段により反射させた反射光を照射し、前記反射光を映すための反射光撮像用反射手段と、
前記反射光撮像用反射手段に映る前記反射光を撮像するための反射光撮像手段と、
前記反射光撮像手段により撮像された前記反射光の画像から、前記反射光の強度に関する値を算出するための反射光強度算出手段と、
加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求めるための温度測定手段と、
前記反射光強度算出手段により算出された前記反射光の強度に関する値に基いて、前記測定対象物に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と前記測定対象物の温度上昇値との関係から前記塗工膜の目付量を算出する目付量算出手段と、
を備えることを特徴とするものである。
前記本発明の目付量の計測装置においては、前記加熱手段の光の出射部から前記測定対象物に到達するまでの光の光路長Aと、前記加熱手段の光の出射部から前記反射光撮像用反射手段に到達するまでの光の光路長Bとが、ほぼ同じ長さとなるように(より好ましくは、前記光路長Bの長さが前記光路長Aの0.8倍~1.2倍(更に好ましくは0.9~1.1倍)の長さとなるという関係を満たすように)、前記反射光撮像用反射手段が配置されていることが好ましい。
また、前記本発明の目付量の計測装置においては、前記反射光の強度に関する値が前記反射光の輝度値であることが好ましい。
前記本発明の目付量の計測装置においては、前記目付量算出手段が、前記測定対象物の幅方向の複数の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する手段であることが好ましい。
本発明の目付量の計測方法は、
光を照射することにより加熱する加熱手段を用いて、シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなる測定対象物の前記塗工膜の表面の少なくとも一部に、前記加熱手段から出射させた光を照射して前記測定対象物を加熱する工程と、
前記測定対象物に到達する前に、前記加熱手段から出射させた光の一部を反射させて、反射光の画像を取得し、前記画像から反射光の強度に関する値を算出する工程と、
加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求める工程と、
前記反射光の強度に関する値に基いて、前記測定対象物に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と前記測定対象物の温度上昇値との関係から前記塗工膜の目付量を算出する工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
前記本発明の目付量の計測方法においては、前記目付量を算出する工程が、前記測定対象物の幅方向の複数の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する工程であることが好ましい。
なお、前記本発明の目付量の計測装置及び前記本発明の目付量の計測方法によって上記目的が達成される理由は以下の通りであるものと本発明者らは考えている。すなわち、先ず、本発明者らが研究を重ねたところ、前記特許文献1及び前記非特許文献1に記載のような方法を採用して、塗工膜を光照射により加熱して加熱前後の温度上昇値を求めて、かかる温度上昇値に基いて目付量を求める場合、同一材料及び同一目付の塗工膜であっても、目付量に誤差が生じる場合があることを見出した。そして、このような測定誤差が生じる原因について本発明者らが検討したところ、同じ材料でかつ同じ目付量の塗工膜であっても、加熱手段(光源等)の出力が、設置環境の影響や経年劣化などにより増減すると、その出力の増減に伴って、測定対象物に対する照射光量が変化し、測定対象物への入熱量が変化してしまうことから、これに起因して目付量が誤計測されてしまう場合があることを見出した。すなわち、前述のような入熱量の変化に伴って、測定対象物の加熱前後の温度上昇値は必然的に変化するが、加熱手段の出力の状態を考慮せずに、そのまま目付量を測定していたため、従来の方法では、目付量が誤計測されてしまう場合があることを本発明者らは見出した。例えば、加熱手段(加熱光源等)の出力が小さくなると塗工膜の表面への照射光量が少なくなり、測定対象物への入熱量が減少して温度上昇値が低くなるが、使用中の加熱手段の出力に変動がなく入熱量が一定であるとの認識の下に、単に温度上昇値に基いて塗工量を測定すると、温度上昇が少ないため、膜の目付量が実際よりも多いものとして計測されてしまう。また、反対に、加熱手段(加熱光源等)の出力が大きくなると塗工膜の表面への照射光量も多くなり、測定対象物への入熱量が増加するが、使用中の加熱手段の出力に変動がなく入熱量が一定であるとの認識の下に、単に温度上昇値に基いて塗工量を測定すると、膜の目付量が実際よりも少ないものとして計測されてしまう。そこで、本発明者らは、加熱手段の出力の増減(言い換えれば、出射される光の照射光量の増減)も考慮して、より精度よく目付量を計測するために更に研究を重ね、加熱手段から出射される光の一部を反射させて、その反射光を加熱手段(加熱光源等)の出力の状態(前記照射光量の状態)を把握するための参照用の光として利用し、その反射光(参照光)の強度に関する値(例えば、輝度値等)を、リアルタイムの加熱手段の光の出力に関する情報(言い換えれば、リアルタイムの測定対象物への照射光量に関する情報)として利用することで、その値に基いて補正された入熱量が加熱手段の出力の増減を考慮した値となって、かかる補正後の入熱量と温度上昇値との関係から、より精度よく塗工膜の目付量を測定することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。このような知見に基づいて、本発明においては、前記加熱手段から出射される光の光路上に配置され、前記光の一部を反射させつつ残りを透過させるための光透過反射手段と、前記光透過反射手段により反射させた反射光を照射して、前記反射光を映すための反射光撮像用反射手段と、前記反射光撮像用反射手段に映る前記反射光を撮像するための反射光撮像手段と、前記反射光撮像手段により撮像された反射光の画像から、前記反射光の強度に関する値を算出するための反射光強度算出手段と、を利用することで、反射光の強度に関する値を求めて、その値に基いて入熱量を補正することを可能としている。例えば、加熱手段の出力(出射される光の光量)が小さくなると、反射光撮像手段(例えば、CCDカメラ等)で撮像した反射光の画像から求められる反射光の強度に関する値(例えば、輝度値等)は小さくなり、反対に、加熱手段の出力(出射される光の光量)が大きくなると、反射光撮像手段(例えば、CCDカメラ等)で撮像した反射光の画像から求められる反射光の強度に関する値(例えば、輝度値等)は大きくなることから、反射光の強度に関する値に基いて、出力の状態を把握することが可能となる。そして、本発明においては、予め、測定装置の反射光の強度に関する値と、測定対象物への入熱量の関係を求めておき、目付量の算出時に、実際に利用している加熱手段の反射光の強度に関する値を求めて、その反射光の強度に関する値(例えば輝度値)に基いて入熱量を補正して目付量を算出することで、より精度の高い測定を行うことを可能とする。このように、本発明においては、光照射により加熱する場合において、加熱手段の出力の変動によって本来的に異なるものとなる測定対象物に対する入熱量の値を、加熱手段の出力の状態変動により沿ったものとなるよう補正すべく、加熱手段から出射される光の一部を反射させて、得られる反射光を出力の変動に関する情報を得るための参照光として利用する。そして、本発明においては、反射光の強度に関する値に基づいて、実際の出力の状態に応じた入熱量となるように、入熱量を補正し、補正後の入熱量の値と測定対象物の温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出するため、加熱手段の出力の状況(出力の変動状況)を特に検討していなかった従来の方法等と比較して、目付量をより高い精度で算出できるものと本発明者らは推察する。
なお、このような塗工膜の目付量の算出に際して、加熱手段からの照射光は、設置環境や経年劣化等の影響により全体として出力が変動するとともに、加熱手段の種類によっては照射領域内での位置により照射光強度の変動の度合いが異なる場合(測定対象物上で照射光の強度分布に変動が生じる場合)も生じ得る。例えば、加熱手段として高出力ファイバレーザを用いる場合、ファイバの温度分布や形状(取り回し)により出射端でのビームパターン(NFP(Near Field Pattern)およびFFP(Far Field Pattern))が変動することが知られており、照射領域内での位置により照射光強度の変動の度合いが異なるものとなり得る。また、加熱手段にレーザ発振器を利用する場合、その出力が変動した場合にビームパターンが変動して、照射領域内での位置により照射光強度の変動の度合いが異なるものとなり得る。このように測定対象物上で照射光の強度分布に変動が生じる場合には、測定対象物上の複数の測定位置において、それぞれ入熱量を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値とその測定位置での温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出することで、塗工膜の目付量の分布状態も把握することが可能となり、さらに精度の高い目付量の算出を行うことが可能となるものと考えられる。このような観点から、前記目付量算出手段を、前記測定対象物の幅方向の複数の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する手段とすることが望ましく、そのような形態の目付量算出手段を備える目付量の計測装置を利用した場合には、非破壊で塗工膜の目付量を更に高い精度で測定することが可能となるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、非破壊で塗工膜の目付量をより高い精度で測定可能な目付量の計測装置及び目付量の計測方法を提供することが可能となる。
本発明の目付量の計測装置内の計測部の構成の好適な一例(一実施形態)を模式的に示す概略図である。 加熱手段から出射した光と、目付量の計測装置内の光透過反射手段、反射光撮像用反射手段及び測定対象物等との関係を概念的に示す概略図である。 反射光撮像用反射手段の表面上に照射された反射光(表面反射光と裏面反射光)を反射光撮像手段により撮像した場合に得られる可視光画像の一例である。 反射光の強度に関する値として輝度値を採用する場合における、輝度値の測定時間と輝度値の分布との関係を示す模式図である。 測定対象物の塗工膜の表面に対して垂直な方向(上方)から見た場合の図1中の測定領域A3を模式的に示す概略図である。 図5中のxhの位置のy方向の温度分布を時間順に連続して描くことにより得られる温度分布像を概念的に示す模式図である。 測定対象物を移動させながらライン光を照射して加熱する工程を連続的に施した場合に、測定対象物上の一部の領域(測定領域)を赤外線サーモグラフィカメラで測定して得られる特定の時刻の測定対象物の表面(塗工膜の表面)の温度分布の画像の一例である。 加熱前後の測定対象物の温度上昇値の分布を示す画像の一例である。 「準備処理」の手順(流れ)の好適な一例を示すフローチャートである。 概算入熱量と、反射光の強度に関する値の変動率との関係を示すグラフである。 計測処理の手順(流れ)の好適な一例を示すフローチャートである。 本発明の目付量の計測装置内の計測部の構成の好適な他の一例(他の実施形態)を模式的に示す概略図である。 「準備処理」の手順(流れ)の好適な他の一例を示すフローチャートである。 概算入熱量の変動率と、反射光の強度に関する値(輝度値)の変動率との関係を示すグラフの一例である。 「準備処理」の手順(流れ)の好適な別の一例を示すフローチャートである。 図4に示した反射光の強度として輝度値を採用する場合の時間と輝度値の分布との関係を模式的に描いた図(概念的に描いた図面)に、同じ時間でyの位置が異なる複数の測定位置を模式的に描いた図面である。 加熱前後の測定対象物の温度上昇値の分布を示す画像に、同じ時間でyの位置が異なる複数の測定位置を模式的に描いた図面である。 複数の測定位置の測定を行った場合の測定位置ごとの概算入熱量の変動率と、測定位置ごとの反射光の強度に関する値の変動率との関係を示すグラフの一例である。 計測処理の手順(流れ)の好適な他の一例を示すフローチャートである。 試験例1で用いた装置が備える搬送台の上面を模式的に示す概略図である。 図20に示す搬送台に測定対象物(サンプル)を配置した状態を模式的に示す概略図である。 試験例1で求められた、各印加電圧の大きさごとのサンプルの概算入熱量と、各印加電圧の大きさごとの輝度値の変動率との関係をプロットしたグラフである。 試験例1で求めた関係式(I)を利用して算出される目付量と、既知の目付量の算出誤差との関係を示すグラフと、下記式(1)を利用して算出される目付量と、既知の目付量の算出誤差との関係を示すグラフとを併せて示す図面である。 試験例2において得られた、測定領域を赤外線サーモグラフィカメラで測定して得られる特定の時刻の測定対象物の表面(塗工膜の表面)の温度分布の画像である。 試験例2において、xhの位置のy方向の温度分布からXrの位置のy方向の温度分布を差し引いて求められる各時間ごとの温度分布を連続して描くことにより得られた温度分布像である。 試験例2において得られた、反射光撮像用反射手段(セラミック板)に映る特定の時刻の反射光の画像(特定の時刻にCMOSカメラにより撮像された画像)である。 試験例2において得られた、時間と反射光の強度に関する値(輝度値)の分布の関係が示された画像である。 試験例2において得られた、概算入熱量の変動率と、輝度値の変動率との関係をプロットしたグラフである。 試験例2で求めた関係式(I)を利用して算出される目付量(補正有)と、既知の目付量の算出誤差との関係を示すグラフと、下記式(1)を利用して算出される目付量(補正無)と、既知の目付量の算出誤差との関係を示すグラフとを併せて示す図面である。 測定時の印加電圧を10.0Vとした場合に関して、試験例3で求めた、y方向の位置とy=0mmの位置の温度上昇値を基準として求められる温度上昇値の相対強度の関係を示すグラフ、および、y方向の位置とy=0mmの位置の輝度値を基準として求められる輝度値の相対強度のグラフである。 測定時の印加電圧を9.0Vとした場合に関して、試験例3で求めた、y方向の位置と、測定時の印加電圧を10.0Vとした場合のy=0mmの位置の温度上昇値を基準として求められる測定時の印加電圧を9.0Vとした場合の温度上昇値の相対強度の関係を示すグラフ、および、y方向の位置と測定時の印加電圧を10.0Vとした場合のy=0mmの位置の輝度値を基準として求められる測定時の印加電圧を9.0Vとした場合の輝度値の相対強度のグラフである。 図30に示す相対強度に対する図31に示す相対強度の比を示すグラフである。 試験例3において各測定回の結果を利用して求められる、測定位置ごとの概算入熱量の変動率と、測定位置ごとの反射光の輝度値の変動率の関係を示すグラフである。 既知の目付量を基準として、試験例3で求めた関係式(I)を利用して算出される目付量の算出誤差と、y方向(幅方向)の測定位置との関係を示すグラフと、下記式(1)を利用して算出される目付量の算出誤差と、y方向(幅方向)の測定位置との関係を示すグラフとを併せて示す図面である。 図30に示すグラフを横軸方向に拡大した図面である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
<目付量の計測装置の好適な一実施形態>
以下、本発明の目付量の計測装置の好適な一実施形態について、図1を参照しながら説明するが、本発明の目付量の計測装置は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。また、このような目付量の計測装置は、本発明の目付量の計測方法を実施する際に好適に利用可能なものであるため、その装置を利用した計測処理の方法を説明することにより、本発明の目付量の計測方法の好適な一実施形態を併せて説明する。
図1は、上記本発明の目付量の計測装置内の計測部の構成の好適な一例(一実施形態)を模式的に示す概略図である。図1に示す目付量の計測装置の計測部10は、測定対象物11と、測定対象物11の塗工膜の表面の少なくとも一部に光を照射して加熱するための加熱手段12と、加熱手段12から出射される光L1の光路上(加熱手段12と測定対象物11との間の光L1の光路上)に配置され、光L1の一部を反射させつつ残りを透過させるための光透過反射手段13と、前記光透過反射手段により反射させた反射光L2を照射して、反射光L2を映すための反射光撮像用反射手段14と、反射光撮像用反射手段14に映る前記反射光を撮像するための反射光撮像手段15と、光照射による加熱前後の測定対象物11の温度上昇値を求めるための温度測定手段16と、搬送用のローラ(搬送ローラ)17とを備えるものである。なお、目付量の計測装置の計測部10は、場合によって(例えば、温度測定手段14として測定対象物上の塗工膜(目付量の計測対象)の温度を赤外線を利用して測定する機器(赤外線サーモグラフィカメラ等)を採用する場合等)、図1に示すように、暗室18内に配置されていてもよい。
また、図1に示す目付量の計測装置の計測部10に関して、加熱手段から出射される光L1と、光透過反射手段13、反射光撮像用反射手段14及び測定対象物11等との関係を図2に模式的に示す。なお、図1及び図2において、L1は加熱手段12から出射された光を模式的に示すものであり、L2は光透過反射手段13を反射した光(反射光)を模式的に示すものであり、L3は光透過反射手段13を透過して光透過反射手段13から出射された光(測定対象物に照射される光:照射光)を模式的に示すものである。また、A1で示す太線の領域は光照射(図1ではライン状の光L3の照射)により加熱されている線状の領域(加熱領域:照射光形状)を概念的に示すものであり、A2で示す点線に囲まれた領域は反射光撮像手段15の撮像領域(反射光撮像用反射手段14の表面上の領域:撮像される範囲)を概念的に示すものであり、A3で示す点線に囲まれた領域は温度測定手段16の測定領域を概念的に示すものである。
さらに、図1に示す実施形態の目付量の計測装置の計測部10においては、測定対象物11(塗工膜を備えたシート状部材)は2つの搬送ローラ17間に置かれた状態となっており、かかる搬送ローラ17を、図示を省略したモータ等の駆動系により駆動(回転)させることで、測定対象物11を図1に示す移動方向(図面の左から右)に移動(搬送)させることを可能としている。なお、前記搬送ローラ17やその駆動系(図示省略)としては、測定対象物11を所望の移動方向に搬送することが可能なものであればよく、特に制限されず、公知のものを適宜利用できる。
また、図1に示す計測部10においては、搬送ローラ17により矢印で示す移動方向に移動させながら、加熱手段12からの光を照射して、測定対象物11を加熱することを可能とする。なお、図1に示す実施形態においては、測定対象物11が搬送ローラ17上に配置されており、温度の測定領域A3の箇所に存在する測定対象物11の上面及び下面はいずれも、雰囲気ガス(例えば空気)に接した状態となっている。なお、以下において、場合により、測定対象物11の長手方向(図1に示す移動方向)をx方向と称し、かつ、移動方向と垂直な測定対象物11の幅方向をy方向と称する。
また、計測部10を備える目付量の計測装置において、反射光撮像手段15は図示を省略した外部のコンピュータ(所望の演算を可能とするために必要な、CPU、ROM、RAM等の公知の周辺装置を適宜組み合わせたもの)に接続されている。そして、かかるコンピュータに対して反射光撮像手段15で測定された反射光L2の画像に関する情報(データ)を入力することにより、反射光L2の強度に関する値(例えば、輝度値)を算出(演算)することを可能としている。このように、反射光撮像手段15が接続された外部のコンピュータ(図示省略)は、反射光L2の強度に関する値を算出するための反射光強度算出手段として利用される。
また、計測部10を備える目付量の計測装置においては、温度測定手段16も図示を省略した外部のコンピュータ(反射光撮像手段15と接続したものと同一のコンピュータであっても、別のコンピュータであってもよい)に接続されている。そして、そのような接続先の外部のコンピュータに対して、温度測定手段16により測定された温度上昇値を求めるための情報(温度情報に関する情報(データ))を入力することにより、加熱前後の測定対象物11の温度上昇値を算出(演算)することを可能としている。このように、本実施形態においては、温度測定手段16と、それに接続された外部のコンピュータ(図示省略)とにより加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求めることを可能としている。
また、計測部10を備える目付量の計測装置は、反射光撮像手段15及び温度測定手段16が接続されたコンピュータにより算出された、反射光L2の強度に関する値及び加熱前後の測定対象物11の温度上昇値を利用(入力)して、目付量の演算を行えるように構成されてなる目付量算出手段(図示省略)を更に備える。なお、このような目付量算出手段としては、目付量の演算を行えるように構成させたコンピュータを好適に利用でき、そのコンピュータとして、例えば、反射光撮像手段15及び温度測定手段16が接続された外部のコンピュータを利用してもよく、あるいは、目付量の演算を行えるように構成されてなる別のコンピュータを利用してもよい。
測定対象物11は、シート状部材と、前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなるものであり、その塗工膜の目付量を非破壊で計測するための対象物である。ここで、塗工膜の「目付量」とは、塗工膜の単位面積当たりの質量である。なお、本実施形態により計測して求められる「目付量」は、測定した領域内の目付量の分布および代表値である。ここで「代表値」とは、平均値、中央値等、領域内で取り得る値を代表する値である。
このような測定対象物11としては、特に制限されないが、例えば、リチウムイオン電池の正極および負極の電極シート、ニッケル水素電池の正極および負極の電極シート等が挙げられる。測定対象物11がリチウムイオン電池の負極の電極シートである場合、前記シート状部材としては銅箔を好適に利用でき、また、塗工膜としてはバインダ樹脂により保持された黒鉛よりなる黒鉛層を好適に利用できる。また、測定対象物11において、シート状部材及び塗工膜は特に制限されず、測定対象として選択する物の種類に応じて適宜選択できる。また、ここにいう「シート状」とは、厚さに比べて主面(表面)の辺の長さが十分に大きいものであればよく、可撓性を有するものであってもあるいは可撓性を有していないものであってもよく、いわゆる板状のものも含む概念である。なお、測定対象物11は、その塗工膜の表面にライン状の光L3が照射されるように配置する。
また、図1に示す計測部10においては、加熱手段12としてライン状の光(ライン光)を出射可能な光照射装置を利用し、測定対象物11を移動させながら光照射により熱量を付与して加熱している。このような加熱手段12として利用されている、ライン光を出射可能な光照射装置としては特に制限されず、公知の装置(例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザ等の光源と、ライン型のライトガイドとを用いてライン光を照射可能とした光照射装置や、ラインレーザ等)を適宜利用できる。なお、加熱手段12は、塗工膜の表面にライン状の光L3が照射されるように配置する。また、図1に示す計測部10においては、測定対象物11の移動方向に対して垂直な方向が、ライン光の長手方向となるように、加熱手段12を配置している。なお、このような加熱手段12としては、その設計は特に制限されず、例えば、光の照射形状が円形のハロゲンランプをライン型ライトガイドに接続し、さらに、そのライン型ライトガイドの光の出射面の部分にシリンドリカルレンズを接続して、ライン状の光を照射できるように構成させたものを利用してもよい。また、このような加熱手段12としては、レーザ光源(レーザ発振器)と;前記レーザ光の出射口に一端が接続された光ファイバと;前記光ファイバの他端に接続されたライン光生成用の光学系とを備えることにより、ライン状の光を照射できるように構成させたものを利用してもよい。このように、加熱手段の設計は特に制限されず、所望の照射形状となるように、その設計を適宜変更することができる。また、このような加熱手段12としては、光の照射前後の塗工膜の表面温度の差をより大きくすることができ、より高い精度での測定が可能となることから、高出力レーザを光源として利用することが好ましい。また、このような高出力レーザの出力は、光の照射前後で測定対象物の表面温度が3℃以上高くなる出力であることがより好ましく、光の照射前後で測定対象物の表面温度が5℃以上高くなる出力であることが特に好ましい。
光透過反射手段13は、加熱手段12から出射された光L1の光路上に配置して加熱手段12から出射した光L1の一部を反射させるために利用されるものである。このような光透過反射手段13は、加熱手段12から出射された光L1の光路上に配置した場合に、光L1の一部を反射光L2として反射でき、かつ、光L1の残りを透過させて測定対象物11への照射光L3として出射させることが可能なものであればよく、特に制限されず、ガラス板、透明アクリル板、合成石英ガラスなどの透明な部材を適宜利用できる。また、このような光透過反射手段13としては、中でも、光の透過損失をより小さくすることが可能であるといった観点から、合成石英ガラスを利用することが好ましい。また、このような光透過反射手段13としては光L1の入射する面とは反対側の面(L3が出射される側の面:場合により単に「裏面」と称する)に反射防止膜を積層することが好ましい。このように、光L1の入射する面とは反対側の面(L3が出射される側の面)に反射防止膜を積層することにより、裏面で反射する光を考慮する必要がなくなり、後述の反射光撮像用反射手段14の設置位置や設置角度の自由度をより高くすることが可能となり、装置の設計がより容易となる。この点については、図2を利用して後述する。
また、反射光撮像用反射手段14は、光透過反射手段13により反射させた光L2を照射した場合に、その表面に反射光L2を映すために利用されるものである。すなわち、反射光撮像用反射手段14は、その表面に反射光L2を映して、反射光L2に関する画像を反射光撮像手段で撮像できるようにするために利用されるものである。このように、反射光撮像用反射手段14は、光透過反射手段13により反射させた光L2を照射して、その照射された反射光L2を映すためのスクリーンのように利用されるものである。このような反射光撮像用反射手段14としては、その表面において反射光L2を反射させて後述する反射光撮像手段15に対して光を入射させることが可能となるような反射部材からなるものを好適に利用できるが、反射光撮像手段15において反射光L2の幅(ライン状の反射光の長手方向)よりも小さな開口径のレンズを用いた場合にも反射光L2の幅の全域を撮像することが可能になるといった観点から、中でも、反射光L2を表面で拡散反射することが可能な拡散反射部材からなるものをより好適に利用できる。このような観点から、反射光撮像用反射手段14としては、いわゆる拡散反射板を用いることがより好ましい。また、反射光撮像用反射手段14の材質などは特に制限されず、反射板(より好ましくは拡散反射板)に利用可能な材料からなるものを適宜利用でき、例えば、セラミックからなる拡散反射板を利用してもよい。
反射光撮像手段15は、反射光撮像用反射手段14に映る反射光L2(反射光撮像用反射手段14の表面で反射された光)を撮像するために利用される。このような反射光撮像手段(反射光の撮像部)15としては、特に制限されず、反射光撮像用反射手段14の表面上に映る反射光の画像を撮像することが可能なものであればよく、例えば、CCDカメラ(エリアカメラ、ラインカメラ)、CMOSカメラ(エリアカメラ、ラインカメラ)等で構成されたもの(例えば、これらのカメラ本体とレンズとを組み合わせたもの等)を適宜利用できる。
また、図1に示す計測部10を備える目付量の計測装置においては、反射光撮像手段(撮像部)15により撮像領域A2内の反射光L2の画像(例えば可視光画像:反射光L2の反射光撮像用反射手段14の表面での強度分布画像)を取得した後、その画像に基づいて反射光L2の強度に関する値を外部のコンピュータ(反射光強度算出手段に相当)で解析することにより、「反射光の強度に関する値」を求める。すなわち、反射光撮像手段15により測定された反射光の画像に関するデータを外部のコンピュータ(図示省略)に入力して解析することで、「反射光L2の強度に関する値」を算出して求める。なお、本発明において、「反射光の強度に関する値」としては、特に制限されず、反射光L2の画像から求めることが可能な反射光の強度に関する値であれば適宜利用でき、例えば、輝度値、反射率等を適宜利用できる。このような「反射光の強度に関する値」としては、計測の容易さの観点からは、反射光の画像から求められる輝度値を利用することが好ましい。なお、このような「反射光の強度に関する値」としては、撮像領域A2内において、単位面積毎(例えば、反射光画像の画素毎)に反射光の強度に関する値(好ましくは輝度値)を求めて、特定の箇所の値を「反射光の強度に関する値」として利用してもよく、また、その平均値を「反射光の強度に関する値」として利用してもよい。さらに、複数の測定位置を設定して、それぞれの位置において反射光の強度に関する値(好ましくは輝度値)を求め、各測定位置の反射光強度の値をそれぞれ利用することもできる。
ここで、反射光撮像手段15(例えば、CMOSカメラ等)を利用して、反射光の強度に関する値を求める方法として好適に採用し得る方法について、図2~4を参照しながら説明する。図2には、加熱手段12から出射して光透過反射手段13(例えば、合成石英ガラス)に入射する光L1(ライン光)の透過と反射の状態が模式的に描かれている。ここで、図2に示すように、光L1(ライン光)が空気中から光透過反射手段13の表面(入射面)に対して角度θで入射すると、空気の屈折率nと、光透過反射手段13の屈折率nが異なることから、下記式(A):
sinθ=nsinφ (A)
で表すスネルの法則に従って、入射する光は、光透過反射手段13内を透過する光の進行方向と、光透過反射手段13の表面(入射面)に対して垂直な方向とがなす角度が角度φとなるように、光透過反射手段13の表面で屈折する。他方、光透過反射手段13の表面においては、光L1(ライン光)の一部は反射(反射角は角度θとなる)して、その表面反射光L2が反射光撮像用反射手段14(例えばセラミック板)に到達することとなる。また、光透過反射手段13の内部を透過する光は、光透過反射手段13の裏面に到達すると、裏面においても上記式(A)に表す法則に従って屈折する。ここにおいて、光透過反射手段13の内部から空気中に入射する光(光透過反射手段13から出射される光)L3が、その光L3の進行方向と、光透過反射手段13の裏面(出射面)に対して垂直な方向とがなす角度が角度θとなるように屈折する。そのため、照射光L3(ライン光)は測定対象物11の表面に対する入射角が角度θとなる条件で、測定対象物11に到達させることが可能となる。また、光透過反射手段13の表面と同様に、光透過反射手段13の裏面でも光の一部が反射して、その裏面反射光L2が光透過反射手段13の表面(光L1の入射面側の表面)から出射され、かかる裏面反射光L2も反射光撮像用反射手段14(セラミック板)に到達することとなる。なお、裏面反射光L2の進行方向と、光透過反射手段13の表面(光L1の入射面側の表面)に対して垂直な方向とがなす角度は、上記式(A)に表す法則に従って、やはり角度θとなる。このようにして、反射光が照射されている反射光撮像用反射手段14の表面(反射光L2が映る反射光撮像用反射手段14の表面)の撮像領域A2を、反射光撮像手段15(例えば、CMOSカメラ)を用いて撮像すると、撮像した反射光の画像には、表面反射光と裏面反射光の2本のライン状の光が写ることとなる。このような2本のライン状の光(表面反射光と裏面反射光)を撮像した画像(可視光画像)の一例を図3に示す。
そして、図3に示すような反射光の画像を求めた後には、例えば、以下のようにして反射光の強度に関する値を算出することが好ましい。すなわち、先ず、図3に示すような反射光に関する画像(図3は可視光画像)を、特定の時間tからΔt秒ごとに連続して複数枚撮像する。ここで、撮像間隔のΔtは撮像手段に応じて1ナノ秒~0.1秒程度とすることが好ましい。そして、各時刻の撮像領域A2の画像毎に、その撮像領域A2内について、y軸方向(反射光撮像用反射手段14の幅方向:ライン状の反射光の長手方向)の画素ごとに位置を認識して(例えば、位置をy1、y2、y3、・・・・yn等と分ける:ここにおいてnは整数を示す)、各yの位置ごとに撮像領域A2内のx方向(y方向と垂直な方向)の全画素の反射光強度に関する値を積算し、そのyの位置の積算値(特定のyの位置におけるx方向の積算値)を、当該yの位置の反射光の強度に関する値(例えば、輝度値)とする。このようにして、各撮像時刻の画像毎に、撮像領域A2のy方向の各位置ごとの反射光の強度に関する値(x方向の積算値)の分布を求めることができ、各撮像時刻の画像毎に、y方向の一ライン分の反射光の強度に関する分布像(濃淡画像)を求めることができる。このようにして、反射光L2の画像から反射光の幅方向(y方向)の強度に関する値(例えば輝度値)の分布を取得できる。このようにして取得できる反射光の強度に関する分布像は、光透過反射手段13を透過して測定対象物11に到達する照射光の幅方向(y方向)の強度に関する値(例えば輝度値)の分布と近いものとなるはずである。その後、得られたy方向の1ライン分の反射光の強度(例えば輝度値)に関する濃淡画像を、時刻方向に時刻順に連結する。なお、このようにして得られる連結画像は、例えば、図4に示すような濃淡画像となり得る。ここで、図4は、反射光の強度として輝度値を採用する場合の時間と輝度値の分布との関係を模式的に描いた模式図(概念的に描いた図面)である。図4に模式的に示すように、各撮像時刻毎の輝度値の分布の連結画像により、撮像した全時間における反射光撮像用反射手段14の表面上の撮像領域A2に照射される反射光L2の輝度値の分布を求めることができる。そして、このようにして求められる、各時刻ごとのy方向の1ライン分の反射光の強度(例えば輝度値)に関する濃淡画像を時刻順に連結した画像(例えば図4に模式的に示すような輝度値の分布像)を利用して、例えば、中央の矩形の領域からなる反射光L2の強度の算出領域(特定の時間の領域)の各画素の反射光の強度(例えば輝度値)の値を求めて、前記算出領域内の全画素の反射光の強度の平均値(反射光強度の平均値)を算出し、求められた算出値を「反射光の強度に関する値」として採用することができる。なお、このように反射光強度を算出するための算出領域(図4の中央の矩形の部分)は、後述の「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」を算出する際の算出領域と、同じ時刻の同じ広さの領域とすることが望ましい。なお、反射光強度を算出するための算出領域のyの位置や時刻等は適宜設定することができる。
また、計測部10においては、加熱手段12から出射された光が、測定対象物11上でライン光を結像するように、測定対象物11、加熱手段12等を配置するため、反射光L2(表面反射光及び裏面反射光)も、同様に、反射光撮像用反射手段14の表面でライン光を結像させれば、反射光の強度に関する分布像と、測定対象物11上への照射光の強度に関する分布像とが、ほぼ同じものとなって、反射光の強度に関する値と、加熱前後の測定対象物の温度上昇値とを用いて、より精度よく目付量を測定することが可能となる。このような観点から、光透過反射手段13の表面反射光の光路長lc(図2参照)と、裏面反射光の光路長ld(図2参照)が、下記式(B)及び(C):
lc≒lb+la (B)
ld≒lb-la (C)
(上記式(B)及び(C)中、laは光透過反射手段13内部を透過する光の光路長(光透過反射手段13に入射された光の光透過反射手段13の表面から裏面までの間の光路長)を示し、lbは光透過反射手段13を透過して光透過反射手段13の裏面から出射された光(測定対象物11への照射光)の前記裏面(出射面)から測定対象物11の表面までの間の光路長を示す。)
に記載する条件を満たすように、反射光撮像用反射手段14(例えばセラミック板)の位置と、反射光撮像用反射手段14の角度γ(図2参照)を調整することが好ましい。言い換えれば、計測部10においては、加熱手段12の光の出射部(出射面)から測定対象物11に到達するまでの光の光路長Aと、加熱手段12の光の出射部(出射面)から反射光撮像用反射手段14に到達するまでの光の光路長Bとがほぼ同じ長さとなるように(なお、前記光路長Aと前記光路長Bとがほぼ同じ長さである場合の好適な例として、前記光路長Bの長さが前記光路長Aの0.8倍~1.2倍(更に好ましくは0.9~1.1)の長さとなるという関係を満たす場合を挙げることができる)、反射光撮像用反射手段14が配置されていることが好ましい。このように、前記光路長Bの長さが前記光路長Aの0.8倍~1.2倍の長さである場合には、反射光の強度に関する分布像と、測定対象物11上への照射光の強度に関する分布像とを、より近いもの(おおむね一致したもの)とすることが可能である。そのため、このような条件をみたすように、加熱手段12と、反射光撮像用反射手段14とを配置することで、補正後の入熱量としてより精度の高い値が得られ、目付量をより高い精度で算出することが可能となる。なお、光透過反射手段13の裏面に反射防止膜を積層した場合には、式(B)に記載する条件のみを満たすように、反射光撮像用反射手段14を配置すればよいため、光透過反射手段13の裏面に反射防止膜を積層した場合には、装置設計の自由度(反射光撮像用反射手段14の設置位置や設置角度の自由度)をより高くすることができる。
以上、図2~4を参酌しながら、反射光の強度に関する値を求める方法として好適に採用し得る方法を説明したが、反射光の強度に関する値の測定方法は上記方法に限定されるものではない。例えば、上記方法では中央の矩形の領域の画素の反射光の強度に関する値を利用して、「反射光の強度に関する値」を求めているが、反射光強度の算出領域の形状は矩形に限定されるものではなく、例えば、その算出領域をライン状の領域としたり、あるいは、丸状の領域とする等して、それらの領域中の画素の反射光の強度に関する値を利用して、「反射光の強度に関する値」を求めてもよい。また、複数の測定位置において目付量を求める場合には、各測定位置に対応する複数のyの位置ごとに複数の反射光強度を算出するための算出領域を設定し、各算出領域(各測定位置)ごとに、それぞれ「反射光の強度に関する値」を測定して、かかる値を各測定位置における反射光の強度に関する値として利用して、測定位置ごとに「反射光の強度に関する値」を求めてもよい。
また、温度測定手段16は特に制限されず、光照射による加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求めるために利用することが可能な公知の温度測定用の機器を適宜利用できる。このような温度測定手段16としては、非接触で塗工膜の温度を測定することが可能な装置(例えば、赤外線カメラ(赤外線サーモグラフィカメラ)、放射温度計等の非接触式温度センサ)を好適に利用できる。なお、例えば、温度測定手段16として赤外線サーモグラフィカメラを用いる場合、被写体の温度に応じて被写体から放出される赤外線量を検知して、単位面積毎(例えば、画素毎)に温度を計測することが可能であり、測定領域A3内に存在する測定対象物11の表面の温度分布を測定することが可能となる。そのため、赤外線サーモグラフィカメラを用いる場合、測定対象物11がライン状の光L3に照射される前の領域(加熱前の領域)と、ライン状の光L3に照射された後の領域(加熱後の領域)の温度分布を一度に測定することが可能である。
ここで、「加熱前後の測定対象物の温度」に関して、「加熱前の測定対象物の温度」としては光L3の照射前の測定対象物の温度を採用し、「加熱後の測定対象物の温度」としては光L3の照射直後(加熱直後)の測定対象物の温度を採用する。また、ここにいう「光照射直後(加熱直後)」としては、光照射による加熱により測定対象物11内に導入した熱量(入熱量:単位面積あたりの熱量)をより正確に測定するために、すなわち、放熱の影響を無視することが可能となるように、光照射により加熱した後、測定までの間に経過する時間がより短い時間であることが好ましく、光照射により加熱した後の経過時間が0.3秒(より好ましくは0.1秒)以内程度であることがより好ましい。なお、このような加熱後の測定までの時間は、測定対象物11の種類に応じて適宜設定できる(放熱が比較的穏やかなものであって加熱後に急激に温度が変化しないようなものであれば、比較的測定までに時間がかかっても特に問題はない)。
このような「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」としては、例えば、以下のようにして測定される値を採用することが好ましい。なお、このような「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として好適に採用可能な方法を、図5~8を参照しながら簡単に説明する。また、以下に説明する方法は、温度測定手段16として赤外線サーモグラフィカメラを利用した場合に好適に採用可能な方法である。
図5は、測定対象物11の塗工膜の表面を垂直な方向から見た場合の測定領域A3を模式的に示す概略図(上方から見た場合の測定領域A3の模式図)である。図5においては、ライン光Lの照射領域(加熱領域)A1は直線状の領域として模式的に描かれている。ここで、「加熱後の測定対象物の温度」の測定に際しては、図5に示すxhの位置(光照射により加熱した後の領域内のx軸方向の任意の位置:ただし、熱伝播の影響が出ないような加熱後の経過時間(移動時間)が0.3秒以内となるような位置)において、y方向の1ライン上(塗工膜に相当する範囲のみ)の温度データを赤外線サーモグラフィカメラで連続して取得(ラインスキャン)し、xhの位置のy方向の温度分布を時間順に連続して描くことにより温度分布像を得ることで測定できる。このようにして得られる温度分布像の模式図(概念的に描いた図面)を図6に示す。なお、図6に示す温度分布像においては、濃淡により温度の高低を表現し、測定対象物11の塗工膜の目付量が部分的に異なること等により表面温度の状態(温度の高低)が異なる部分が生じ得ることを敢えて強調して描いている。ここにおいて、図6に示す温度が高い領域は目付量が少ない部分の領域であり、温度が低い領域は目付量が多い領域である。一方、「加熱前の測定対象物の温度」の測定は、図5に示すxhの位置でy方向の1ライン上(塗工膜に相当する範囲のみ)の温度データを利用する代わりに、図5に示すxrの位置(光照射により加熱する前の領域内のx軸方向の任意の位置)においてy方向の1ライン上の温度データを利用する以外は、「加熱後の測定対象物の温度」の測定と同様にして、xrの位置のy方向の温度分布を時間順に連続して描いて温度分布像を得ることで測定できる。なお、同一の位置の温度変化を測定するためには、xrの位置からxhの位置までの移動時間の分だけ時間方向をずらして比較する必要がある。そのため、xhの位置の温度分布(加熱後の領域の温度分布)と、xrの位置の温度分布(加熱前の領域の温度分布)のデータに基き、加熱前の領域の温度分布像をxrの位置からxhの位置までの移動時間の分だけ時間方向にずらして、測定位置が同じ位置となるように合わせた後、得られた温度分布(移動時間分だけずらしてもの)を、加熱後の領域の温度分布から差し引いて、温度上昇値(温度差)の分布を求める。そして、得られた温度上昇値の分布像において、温度上昇値の算出領域を、反射光強度の算出領域と同じ形状、同じ位置及び同じ時間となるように設定する等して、温度上昇値の分布像中の温度上昇値の算出領域(例えば、図8に示す矩形の領域)内の各画素の値をそれぞれ求めて平均化し、「加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値」を求めることができる。以下、かかる方法を、図7及び図8を参照しながら、更に説明する。
図7は、測定対象物11を移動させながら光L3(ライン状の光)を照射して加熱する工程を連続的に施した場合の特定の時刻の測定領域A3を、赤外線サーモグラフィカメラ(温度測定手段16)で測定した場合に得られる温度分布の画像の一例である。ここで、図7は、後述の試験例において測定されたサンプルの特定の時刻の温度分布像(サーモグラフィ)である。なお、図7中の白色の2つの矢印(↑及び↓)が指す方向が重なった位置に、加熱手段12から出射された光L3が照射されており、かかる位置においてサンプルが加熱され、その位置より右側が加熱後の領域となり、その位置より左側が加熱前の領域となる。すなわち、図7に示す例においては、測定対象物11が温度分布画像に向かって左から右に移動(x方向に移動)しているため、ライン状の光L3の照射位置よりも左側の測定対象物の表面(塗工膜の表面)上の領域は加熱前の領域で温度が低く、かかる照射位置よりも右側の塗工膜上の領域は加熱された後の領域で温度が高い。ここで、図7に示すxhの位置(ライン光Lの照射位置よりも右側のx方向の位置)において、測定対象物の表面(塗工膜の表面)上のy方向の1ライン分の温度データをサーモグラフィカメラで連続して取得して、加熱後のxhの位置の時間と温度の分布との関係の画像(温度分布像)を得る。同様に、図7中のxrの位置(照射位置よりも左側の加熱前の領域内の任意の位置)において、y方向の1ライン上の温度データをサーモグラフィカメラで連続して取得し、加熱前のxrの位置の時間と温度の分布との関係の画像(温度分布像)を得る。ここで、両者の温度分布には測定対象物11がxrからxhまで移動する時間に相当する分だけ時刻方向の位置ずれがあるため、加熱前のxrの位置の温度分布像を、時間方向に位置ずれの分ずらした後、得られた温度分布像に基づいて、加熱後の計測サンプルのxhの位置の温度分布から加熱前のxrの位置の温度分布を差し引くことで、温度上昇値の分布画像を得ることができる。このような温度上昇値の分布像の一例を図8に示す。なお、図8は、後述の試験例において測定されたサンプルの温度上昇値の分布像である。そして、図8に示すような温度上昇値の分布像において、図4に示す輝度値の算出領域と同じ領域(中央の矩形の領域:同じ位置、同じ時間の領域)を温度上昇値の算出領域に設定し、その領域内の各画素の温度を求めて平均値を算出することで、「加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値」を求めることができる。以上、図5~8を参酌しながら、加熱前後の測定対象物の温度上昇値の測定方法として好適に採用可能な方法を説明したが、加熱前後の測定対象物の温度上昇値の測定方法は、上記方法に特に限定されるものではなく、測定対象物11の状態や移動手段の種類等に応じて、より適切な値となるように算出方法を適宜変更してもよい。また、複数の測定位置において目付量を求める場合には、温度上昇値の算出領域を、複数個所の反射光強度の算出領域と同じ形状、同じ位置及び同じ時間となる複数の領域に設定して、複数の算出領域(測定領域)において加熱前後の測定対象物の温度上昇値を算出して求めてもよい。
また、このような温度測定等を行う際には、測定対象物11を移動させながら加熱するが、その移動速度v(m/秒)は、測定対象物内の熱伝搬の観点から、1m/秒以上であることが好ましい。なお、例えば、加熱時にライン状に加熱(ライン光Lで加熱)せずに、加熱手段として測定対象物11の塗工膜の表面の全体に光を照射して加熱するようなものを利用する場合には、光照射後、その照射が終わってから熱伝播の影響が生じる前(例えば、0.3秒以内程度)に、その表面全体の温度を測定して求められる値を採用してもよい。
このような計測部10を備える目付量の計測装置においては、反射光撮像手段15により撮像される反射光L2の画像データを外部のコンピュータ(反射光強度算出手段)で解析して、反射光L2の強度に関する値を求めるとともに、温度測定手段16により測定される測定対象物11の温度に関するデータに基いて外部のコンピュータにて加熱前後の測定対象物の温度上昇値(加熱前の測定対象物の温度を基準として加熱後に上昇した温度の値)を求めて、これらの値を利用して、測定対象物11の塗工膜の目付量の算出に利用する。そして、このような計測部10を備える目付量の計測装置においては、反射光L2の強度に関する値や、加熱前後の測定対象物の温度上昇値の演算(算出)に、前述のように、図示を省略したコンピュータを利用する。このようなコンピュータ(計算装置)としては、反射光L2の強度に関する値を演算するための演算処理部(反射光強度算出手段に相当)と、加熱前後の測定対象物の温度上昇値を演算するための演算処理部とを備えるものを1台のみ利用してもよく、あるいは、これらの計算を別々に行うべく、反射光撮像手段15と、温度測定手段16とをそれぞれ別々のコンピュータに接続して、別々の2台のコンピュータを利用してもよい。
また、このような計測部10を備える目付量の計測装置は、反射光L2の強度に関する値、及び、加熱前後の測定対象物の温度上昇値を入力して、目付量の算出(演算)を行うための目付量算出手段(コンピュータ)に接続されている(図示省略)。このような目付量算出手段としてのコンピュータは、例えば、反射光の強度に関する値及び/又は加熱前後の測定対象物の温度上昇値の演算(算出)に利用するコンピュータと同一のものを利用して、かかるコンピュータ内に目付量の演算処理が可能となる演算処理部(目付量算出手段)を組み込んで利用してもよく、あるいは、反射光の強度に関する値や加熱前後の測定対象物の温度上昇値の演算(算出)に利用するコンピュータとは別のコンピュータを利用して、そのコンピュータを反射光の強度に関する値や加熱前後の測定対象物の温度上昇値が入力された際に、目付量の演算処理が可能となるように構成したもの(目付量算出手段)として利用してもよい。なお、このような目付量算出手段においては、反射光強度算出手段により求められた反射光の強度に関する値に基いて、測定対象物11に対する入熱量の値を補正し、その補正後の入熱量の値(補正値)と測定対象物の温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出(演算)する。
なお、このような演算に利用するコンピュータは、所望の演算を実行することを可能とするために、必要なCPU、ROM、RAM、各種演算に必要なプログラム(このようなプログラムは、例えば、前記ROMに記録させて利用してもよく、あるいは、別の記録媒体に記録させて利用してもよい)等の公知の周辺装置を適宜組み合わせた構成のものとすればよく、その具体的な構成は特に制限されない。例えば、上述のような演算を実行するためのCPU及びメモリ等からなるハードと、必要な演算を実行させるためにインストールされたコンピュータプログラム(ソフト)とを備えるものを利用してもよい。なお、このようなCPUとしては、例えば、中央処理装置、処理装置、演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等が挙げられる。
また、目付量の演算に利用する目付量算出手段(前記コンピュータ等)としては、後述のような「準備処理」により取得された「関係式(I)」に基いて、反射光撮像手段15及び反射光強度算出手段(図示省略)により求められた反射光の強度に関する値に基いて、測定対象物11に対する入熱量の値を補正し、その入熱量の値(補正された値)と、測定対象物11の温度上昇値との関係から目付量を演算する処理を実行可能なように構成させたものを利用する。以下、目付量の演算に利用する「関係式(I)」を求めるための準備処理について説明する。なお、かかる関係式(I)は、目付量を求める塗工膜の材料及びシート部材の材料の種類ごとに演算を行う利用者が予め求める必要がある。
<準備処理の好適な一実施形態>
以下、図9に示すフローチャートを参照しながら、利用者により実施される「準備処理」として好適に採用可能な方法(手順)について説明する。なお、測定対象物への入熱量(Q:単位面積当たりの入熱量(測定対象物に付与される単位面積当たりの熱量))と、測定対象物の温度上昇値(ΔT)と、測定対象物中の塗工膜の目付量(w)とには、理論的に、下記式(1):
ΔT=Q/(c×w+D) (1)
[式中、Qは測定対象物への入熱量(単位面積当たりの入熱量、単位:J/cm)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱(単位:J/(mg・K))を示し、wは測定対象物中の塗工膜の目付量(単位:mg/cm)を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量(単位:J/cm・K)を示す。]
で表される関係があるが(例えば、特開2019-95436号公報の段落[0057]~[0058]等参照)、本発明においては、その関係を考慮した下記の「準備処理」を行うことで関係式(I)を求めている。
図9は「準備処理」の手順の好適な一例を示すフローチャートである。なお、以下において、図1に示す計測部10を備える目付量の測定装置を利用した場合を例に挙げて準備処理について説明する。なお、準備処理は、加熱手段12の出力の変動に由来して生じる入熱量の変化と、反射光L2の強度に関する値との関係について近似した関係式(I)を求める処理である。そのため、かかる準備処理においては、後述のように、加熱手段12の出力を基準値から必要な範囲で変動させて、出力が変更するごとに、それぞれ反射光L2の画像及び温度分布に関する情報を求めて(加熱手段の出力の大きさを変化させた複数回の測定を行って、複数の出力条件下において、それぞれ反射光の画像及び温度分布を算出して)、関係式(I)を求めている。
このような準備処理においては、図9に示すように、先ず、ステップS100において、目付量wが既知の測定対象物のサンプル(シート部材上に目付量wが既知の塗工膜が塗工されたサンプル)を用意する。以下、このような目付量wが既知の塗工膜を備える測定対象物のサンプルを「既知サンプル」と称し、本発明の目付量の測定装置を利用して目付量を計測する際の対象となる測定対象物と区別する。なお、既知サンプルとしては、計測対象とする測定対象物とシート状部材の材料の種類及び塗工膜の材料の種類が同じものを準備する。既知サンプル中の塗工膜の目付量wは、そのサンプルの調製時においてコーター等の塗工装置において塗工量として指示した値(指示値)を採用してもよく、あるいは、サンプルから一部を切り出して単位面積当たりの質量を計測し、単位面積当たりのシート状部材の重量を差し引いた後、その単位面積で除算することで求めた値を利用してもよい。ここで、既知サンプルに関して、塗工膜の比熱c及びシート部材の熱容量Dとしては、用いた材料に基いて求められる値(既知の値又は別途測定して求めた値)を利用する。このように、前記比熱c及び前記熱容量Dとしては、既知の値、あるいは、不明である場合には測定した値を利用することができる。なお、比熱や熱容量の測定方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用できる。
次に、ステップS101で、加熱手段12の出力(印加電圧)Pを基準値(特定の値)に設定する。すなわち、ステップS101では、基準値となる加熱手段の出力(印加電圧)Pの大きさを設定する。なお、前述のように、準備処理が、加熱手段12の出力の変動に由来して生じる入熱量の変化と、反射光の強度に関する値との関係を考慮して関係式(I)を求める処理であることから、基準値とする出力Pの大きさを、例えば、加熱手段12の最大出力としてもよく、また、実際の測定対象物の測定で採用する出力を基準値として設定してもよい。例えば、加熱手段12の光源にハロゲンランプ(最大出力:24V)を利用する場合において、その光源への印加電圧を24Vに設定し、その値(24V)を基準値として設定してもよい。
次に、ステップS102で、既知サンプルを移動させつつ、既知サンプルに対して光を照射して加熱を開始する。すなわち、既知サンプルを図1に示す計測部10の測定対象物11が置かれている位置に配置して、計測部10において搬送ローラ17を回転させて、既知サンプルを移動させながら、加熱手段12からライン光L1を出射して、既知サンプルの表面上に到達する光L3により、光L3の照射箇所(加熱領域A1の部分)を加熱する。なお、ステップS102で、加熱手段12からライン光L1を出射すると、図1及び図2に示すように、加熱手段12からの出射光L1のうちの一部の光は光透過反射手段13により反射されて、その反射光L2が反射光撮像用反射手段14に照射され、かつ、残りの部分が既知サンプルへの照射光L3として利用されることとなる。ここで、上述のような光照射による加熱に際しては、既知サンプルの移動速度(測定時に採用する移動速度)が速くなるにつれて温度上昇値はより小さくなっていくため(加熱領域での入熱量がより小さくなるためである)、サンプルの移動速度が速くてライン光の出力が小さい場合には計測感度が低下する傾向にある。そのため、移動速度や、ライン光を出射させる加熱手段12の出力(印可電圧)は、計測感度が低下しないような範囲に設定することが好ましい。なお、準備処理において、かかる移動速度は、計測予定の未知の測定対象物を実際に測定する際に採用する速度と同じ速度を採用し、後述のステップS106において、加熱手段の出力(印加電圧)を変更した後に再度ステップS102を実施する場合においても、同じ速度を採用する。
次いで、ステップS103においては、光透過反射手段13により反射された反射光L2が照射されて映る、反射光撮像用反射手段14の表面の撮像領域A2を、反射光撮像手段15により撮像する。このように、ステップS103においては、反射光撮像用反射手段14に映る反射光を撮像して、反射光L2の画像情報(図3参照)を得る。
また、ステップS104において、加熱領域A1を含む測定領域A3の温度分布を測定する。なお、このようなステップS104の測定は、上記計測部10を利用する場合、既知サンプルを移動させながら、既知サンプルにライン光L3を照射している状況で(加熱しながら)行う。このようなステップS104は、例えば、温度測定手段16として赤外線サーモグラフィカメラを利用して、サンプルの加熱中(光照射中)に、測定領域A3内に存在する測定対象物11の表面の温度分布を測定することにより行ってもよい(このように、赤外線カメラを利用する場合、温度分布を温度分布画像として測定できる)。このような測定により、ライン状の光が照射される前の既知サンプルの表面上の領域と、ライン状の光が照射された後の既知サンプルの表面上の領域(加熱後の領域)の温度分布を一度に測定することが可能となる。なお、「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として、前述の方法(図5~8を参酌しながら説明した方法)を採用する場合には、測定領域A3の温度分布の測定を連続的に行い、加熱前の領域及び加熱後の領域のx方向の特定の位置(例えば、図4及び図6に示すxrやxhに相当する位置)に関して、時間的に連続的にy方向の1ライン分の温度分布を求め、各位置における時間と温度の分布との関係の画像(温度分布像)を求めてもよい。なお、このようなステップS102~S104は、同時刻の温度分布及び反射光画像を得るために、基本的に同時に実施することが好ましい。
次いで、ステップS105においては、加熱手段の出力(印加電圧)Pが所定値(測定終了予定の値)となっているか否かを判定する。ここで、前記準備処理は、加熱手段12の出力の変動に由来して生じる入熱量の変化と、反射光L2の強度に関する値との関係から関係式(I)を求める処理である。そのため、前記準備処理においては、加熱手段12の出力が変動するであろう範囲内において出力Pの値を適宜変更させて、変動させた出力の大きさごとにステップS102~S104を行って前記関係式(I)を求めることが好ましい。このような観点から、図9に示すフローでは、ステップS101の出力Pの基準値を加熱手段の出力が変動するであろう範囲の上限値に設定し、かつ、ステップS105で判定する所定値(測定終了予定の値)を加熱手段の出力が変動するであろう範囲の下限値に設定して、ステップS105において、加熱手段の出力(印加電圧)Pの大きさが所定値(測定終了予定の値)となっているか否かを判定し、出力Pの大きさが測定終了予定の所定値となっていなければ、ステップS106に進んで、出力Pの大きさを所定の減少分(ΔP)だけ減じて、ΔP減じた出力でステップS102~S104を再度行った後、、ステップS105に再度進んで判定を行う。このように、図9に示すフローでは、ステップS105において、加熱手段の出力Pの大きさが所定値(測定終了予定の値)となっているものと判定されるまで、順次ΔP減じた出力でステップS102~S104を行う処理を繰り返すこととなる。なお、ステップS106は、ステップS105の判定結果に応じて、出力Pが所定値(測定終了予定の値)となっていないと判定された場合(図9のフローの「no」の場合)に、出力Pの大きさを所定の減少分(ΔP)だけ減じるステップである。より具体的に説明すると、例えば、加熱手段12の光源にハロゲンランプ(最大出力:24V)を利用する場合において、24Vの出力で目付量の測定を行う場合を想定し、出力がゆらぐ等して変動するであろう加熱手段の出力の範囲の下限値が22.5Vであると考えられる場合、前記基準値を24Vに設定し、測定終了予定の値を22.5Vに設定し、かつ、ΔPの大きさを0.1Vに設定して、ステップS105において、出力が22.5Vであると判定されるまで、ステップS105からステップS106に進み、ステップS106にて出力の大きさを0.1Vづつ下げてステップS102~S104を行う操作を繰り返すことを例示することができる。
このようなステップS105とステップS106の関係を更に説明すると、例えば、ステップS105のn回目の判定時の出力Pの大きさをP(nは自然数(1、2、3・・・・・)であって判定の回数を表す。)とすると、Pの大きさが測定終了予定の所定値となっていない場合には、ステップS106で出力Pの大きさをΔP減じてステップS102~S104を行い、再度ステップS5において出力Pが測定終了予定の所定値となっているか否かを判定し、出力Pが測定終了予定の所定値となるまで、ステップS106及びステップS102~S104を実施し、ステップS105で判定する処理を複数回(n回)繰り返すこととなる。ここで、Pに関して、nは判定の回数であるため、nが1の場合のPはS101で設定した基準値となる。また、判定回数n回目の出力Pの大きさPは、下記式:
=P-ΔP×(n-1)
(式中のPはステップS101で設定した基準値であり、nは判定回数を示し、ΔPはステップS106における出力の減少量を示す。)
により算出できる。なお、このようなΔPの大きさは特に制限されず、加熱手段の出力(印加電圧)の大きさによって適宜変更できるが、0.01~1V程度に設定することが望ましい。
このように、ステップS105においては、加熱手段の出力Pが所定値(測定終了予定の値)となっているか否かを判定(加熱手段の出力変動を必要な範囲で行ったか否かを判定)し、出力Pが所定値(測定終了予定の値)となっていないと判定された場合(言い換えれば、判定領域内の必要な全出力についてステップS102~S104の処理を終えていない場合)には、前述のように、ステップS106に進み、再度ステップS102~S104を行い、ステップS105の判定を再度行う。そして、ステップS105において、出力Pが所定値(測定終了予定の値)となっていると判定された場合(言い換えれば、判定領域内の必要な全出力についてステップS102~S104の処理を終えている場合)には、ステップS107に進む。
そして、ステップS107においては、計測部10で計測された温度分布のデータに基き、その温度分布を測定した出力ごと(温度分布の測定時に採用されていた加熱手段の出力P(nは自然数)の大きさごと:温度分布を測定した際の印加電圧Pの大きさごと)に、加熱前後の既知サンプルの温度上昇値ΔTをそれぞれ求める。なお、このようなΔTの計算は、「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として、前述した方法(図5~8を参酌しながら説明した方法)を採用して行ってもよく、あるいは、別の方法を適宜採用して行ってもよい。
次に、ステップS108においては、計測部10で計測(撮像)された反射光L2の画像データに基き、その反射光L2の画像を測定した出力ごと(反射光画像の測定時に採用されていた加熱手段の出力Pの大きさごと:反射光画像を測定した際の印加電圧Pの大きさごと)に、反射光L2の強度に関する値(例えば輝度値)をそれぞれ算出して求める。なお、このような反射光L2の強度に関する値の計算(演算)は、反射光撮像手段に接続した外部のコンピュータ(図示省略:反射光強度算出手段に相当)を利用して行えばよい。なお、このような反射光L2の強度に関する値(例えば輝度値)の計算は、反射光L2の強度に関する値を求める方法として好適に採用し得る方法(図2~4を参照しながら説明した方法)を採用して行ってもよく、あるいは、別の方法を適宜採用して行ってもよい。
次いで、ステップS109においては、反射光の強度に関する値の変動率βを算出する。ここで、反射光の強度に関する値の変動率βは、反射光の画像を求める際の加熱手段の出力(印加電圧)PがP(nは自然数であり、ステップS105の判定に基いて繰り返し実施されるステップS102~S104の実施回数(ステップS105の判定回数)と同じである。)である場合において、その出力Pでの反射光L2の強度に関する値をL(nは自然数であり、nはステップS105の判定回数と同じである。)とすると、下記式(2):
β=L/L (2)
により求めることができる。ここで、Lは、nが1の場合の反射光の強度に関する値(出力変動前の反射光L2の強度に関する値)であることから、ステップS101で設定した出力Pの基準値(P)で測定される反射光L2の画像に基いて求められる反射光L2の強度に関する値(初回のステップS103の実施の際に求められた反射光画像から算出される反射光L2の強度に関する値)である。
次いで、ステップS110においては、測定出力(印加電圧)Pの大きさごとの温度分布に基いてそれぞれ算出されたΔTの値(ステップS107において算出されたΔTの値)を利用して、測定時の出力(印加電圧)Pの大きさごとに、上記式(1)の関係に基いて、概算入熱量Qmを算出する。なお、概算入熱量Qmは、上記式(1)のQをQmとして得られる下記式:
ΔT=Qm/(c×w+D) (3)
[式中、ΔTは温度上昇値を示し、Qmは概算入熱量を示し、cは塗工膜の比熱を示し、wは目付量の既知の値を示し、Dはシート部材の熱容量を示す。]
を計算して求めることができる。具体的には、前記式(3)のΔTにステップS107で求めたΔTの値をそれぞれ導入し、前記式(3)のwに既知サンプルの塗工膜の目付量(既知目付量)の値を導入し、前記式(3)のcに既知サンプルの塗工膜の比熱の値(既知の比熱又は比熱の測定値)を導入し、前記式(3)のDにシート部材の熱容量の値(既知の熱容量又は熱容量の測定値)を導入することで、測定時の出力(印加電圧)Pの大きさごとに、概算入熱量Qmを算出することができる。
次に、ステップS111において、ステップS110で算出した各測定出力(各印加電圧)ごとの「概算入熱量Qm」と、ステップS109で算出した各測定出力(各印加電圧)ごとの「反射光L2の強度に関する値の変動率β」との関係から、最小二乗法等を用いて、概算入熱量Qmと前記変動率βとの関係の近似式を求め、目付量を求めるための関係式(I)を求める。なお、概算入熱量Qmと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係は、その精度に応じて、直線により近似(線形近似)したり、あるいは、多項式や曲線に近似することも可能である。ここで、概算入熱量Qmと反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係を線形近似した場合には、下記式(4):
=a×β+a (4)
[式中、Qは入熱量の近似値を示し、βは反射強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、aおよびaは線形近似式の係数(定数)を示す。]
で表される近似式(近似直線の関数)を求めることができる。
この点に関して、参照のために、加熱手段12の光源にハロゲンランプ(最大出力:24V)を利用する場合において、前記基準値を24Vに設定し、測定終了予定の値を22.5Vに設定し、ΔPの大きさを0.1Vに設定して、前述の各ステップを行った場合を例に挙げて、概算入熱量Qmと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係を示すグラフを図10(なお、図10において変動率βは輝度値の変動率である)に示す。このように、概算入熱量Qmと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係から、近似式(近似直線の関数)を求めることが可能となり、図10に示すような近似直線を求めることができる。
そして、入熱量の近似値Q(式(4)で求められる入熱量)を式(1)中の入熱量Qとして採用して、上記式(1)を順次変形することで、下記式(5):
ΔT=Q/(c×w+D)
=(a×β+a)/(c×w+D)
={a×(L/L)+a}/(c×w+D) (5)
[式中、ΔTは温度上昇値を示し、βは反射光の強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、Qは入熱量の近似値を示し、aおよびaは係数(近似直線から求められる係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱を示し、wは測定対象物中の塗工膜の目付量を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量を示し、Lは、ステップS101で設定した出力(印加電圧)の基準値(P)で測定した場合(変動前の出力で測定した場合)の反射光の強度に関する値であり、Lは各測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値を示す。]
を求めることができる。ここで、a及びaは、前記概算入熱量Qmと反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係から求められる近似式(4)中の係数(概算値)である。そして、かかる式(5)のwを、測定対象物の目付量wmと擬制した場合、式(5)中のL、a、a0、c及びDは定数となることから、その測定対象物の測定により求められる反射光の強度に関する値Lを式(5)のLの位置に導入し、その測定対象物の測定により求められる加熱前後の温度上昇値ΔTを、式(5)のΔTの位置に導入することで、下記関係式(I):
ΔT={a×(L/L)+a}/(c×wm+D) (I)
(式(I)中、wmは測定対象物中の塗工膜の目付量(算出する値)を示し、ΔTは測定対象物の測定により求められる加熱前後の温度上昇値を示し、Lは測定対象物の測定により求められる反射光の強度に関する値(例えば輝度値)を示し、LはステップS101で設定した出力(印加電圧)の基準値(P)で測定した場合(変動前の出力で測定した場合)の反射光の強度に関する値(測定値)であり、aおよびaは前記方法で求められた係数(近似直線から求められた係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱(利用した塗工膜の材料により定まる定数)を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量(利用したシート状部材の材料により定まる定数)を示す。)
を求めることができる。
なお、このような関係式(I)において、式中の「a×(L/L)+a」の部分の計算は、前記式(4)の内容からも明らかなように、反射光の強度に関する値の測定値Lを用いて、前記式(1)中の入熱量Qを補正した値(入熱量の補正値Q)を求めるための計算となることは明らかである。そのため、関係式(I)を利用して、目付量が未知の測定対象物に関して、反射光L2の強度に関する値の測定値Lと、温度上昇値ΔTとを測定し、その値を導入することで、反射光L2の強度に関する値の測定値Lを利用して入熱量を補正し、補正後の入熱量と、測定対象物の温度上昇値ΔTとの関係に基いて、塗工膜の概算の目付量wmを求めることが可能となる。また、(L/L)の部分の計算は、前記式(2)から、「反射光L2の強度に関する値L」に対する「反射光L2の強度に関する値の測定値L」の変動率βの計算となることも明らかである。そのため、関係式(I)は、反射光の強度に関する値の測定値Lから求められる変動率βを利用して、前記式(1)中の入熱量Qの補正値(入熱量の補正値)を求めて、測定対象物の温度上昇値ΔTとの関係に基いて、塗工膜の概算の目付量wmを求める式であるともいえる。
このように、ステップS111は、概算入熱量Qmと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係から、入熱量の近似値を求めるための近似式を求めて、入熱量Qを反射光L2の強度に関する値Lにより補正して、得られる入熱量の補正値と、温度上昇値ΔTとに基いて目付量を求めることが可能な関係式(I)を取得するステップである。そして、このような関係式(I)を求めた後においては、目付量の演算に利用するコンピュータに関係式(I)を記憶させて、目付量の算出の際に、反射光L2の強度に関する値Lと、測定対象物の温度上昇値ΔTとを入力することで、概算の目付量wmを算出(演算)できるように、コンピュータを構成させることで、目付量算出手段として利用する。このようにして、図9に示す一連の準備処理を終了する。このような「準備処理」を施すことにより、関係式(I)を利用して、反射光L2の強度に関する値Lと、温度上昇値ΔTに基いて、精度よく目付量(概算値)wmを算出することが可能となる。
以下、このような準備処理を行った後に、測定対象物の目付量を測定する際に好適に利用可能な計測処理の方法の一例(計測処理の好適な一実施形態)について説明する。
<計測処理の好適な一実施形態>
以下、図1に示す実施形態の計測部10を備える目付量の計測装置(本発明の計測装置の好適な一実施形態)を利用して、塗工膜の目付量等を計測する「計測処理」を行う場合の好適な実施形態(本発明の目付量の計測方法の好適な一実施形態に相当)について説明する。なお、このような計測部10を備える目付量の計測装置としては、前述のような「準備処理」を予め施して、関係式(I)を利用して目付量(概算の目付量)の算出が可能なように構成された目付量算出手段を備えるものを利用する。
図11は、かかる「計測処理」の手順の好適な一例を示すフローチャートである。このような計測処理に際しては、先ず、ステップS200において、測定対象物11の表面(塗工膜の表面)に光(ライン状の光)を照射して加熱する。なお、この際の加熱手段への出力(印加電圧)Pは、前記準備処理の基準値(前記準備処理のステップS101で採用した条件)と同じ値に設定することが好ましい。このように、ステップS200は、加熱手段12を用いて、測定対象物11の塗工膜の表面の少なくとも一部に加熱手段12から出射させた光をを照射して、前記測定対象物を加熱する工程である。このような加熱工程は、搬送ローラ17を回転させることで図1中に示す移動方向に測定対象物11を移動(搬送)させながら行う。また、このような計測処理において、その計測の対象として用いる「測定対象物11」は、シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された目付量が未知の塗工膜とからなるものであって、前記準備処理で関係式(I)を求めたサンプルと、シート状部材及び塗工膜の材料が同じものとする。
次に、ステップS201において、加熱領域A1を含む測定領域A3内の測定対象物の表面の温度分布を測定する。このような測定対象物11の表面の温度分布の測定条件としては、前記準備処理のステップS104で採用した条件と同じ条件を採用する。
次に、ステップS202において、ステップS201において測定した温度分布のデータに基いて、加熱前後の測定対象物11の温度上昇値ΔTを算出する。このように、ステップS202は、加熱前後の測定対象物の温度上昇値を求める工程である。なお、このような加熱前後の測定対象物11の温度上昇値ΔTを算出するための方法としては、前記準備処理のステップS107において温度上昇値ΔTを算出する際に採用した方法と同様の方法を採用する。例えば、前記準備処理のステップS107において、「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として、図5~8を参酌しながら説明した前述の方法を採用している場合には、同様の方法を採用して温度上昇値を算出する。
次いで、ステップS203においては、反射光撮像用反射手段14に映る反射光を撮像して、反射光L2の画像を取得する。このような反射光L2の画像は、加熱手段12から出射させた光L1の一部を光透過反射手段13で反射させて、その反射光L2を反射光撮像用反射手段14に照射させることにより、反射光撮像用反射手段14の表面に反射光L2を映すことで撮影(撮像)することができる。次に、ステップS204においては、ステップS203で取得された反射光L2の画像から反射光L2の強度に関する値Lを算出する。このようなステップS203及びS204は、測定対象物11に到達する前に、加熱手段12から出射させた光L1の一部を反射させて、反射光L2の画像を取得し、前記画像から反射光L2の強度に関する値Lを算出する工程である。なお、このような反射光の強度に関する値Lの算出には、前記準備処理のステップS108において、反射光の強度に関する値Lを求める際に採用した方法と同様の方法を採用する。例えば、前記準備処理のステップS108において、前述の図2~4を参酌しながら説明した方法を採用している場合には、同様の方法を採用して反射光の強度に関する値を算出する。
次に、ステップS205においては、関係式(I)を利用して目付量を算出する。なお、かかる関係式(I)は、前述のようにして求めた、下記式:
ΔT={a×(L/L)+a}/(c×wm+D) (I)
であり、かかる式中のL、a及びaは前記準備処理において予め求めた数値であり、かつ、c及びDは前記準備処理において利用した数値と同様の値である。そのため、上記関係式(I)に対して、ステップS204で求めた反射光の強度に関する値Lと、ステップS202で求めた加熱前後の測定対象物の温度上昇値ΔTとを導入して計算することで、分子側の計算において、反射光の強度に関する値に基いて補正された測定対象物に対する入熱量の値(入熱量の補正値)が求められることから、かかる入熱量の補正値と加熱前後の測定対象物の温度上昇値ΔTの値との関係から、未知の塗工膜の目付量wmを算出することが可能となる。このようにして関係式(I)を利用して目付量を算出することから、ステップS205は、反射光の強度に関する値Lに基いて、測定対象物11に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と測定対象物の温度上昇値ΔTとの関係から前記塗工膜の目付量を算出する工程であるといえる。なお、このような目付量の算出(計算)は、反射光強度算出手段により測定された反射光L2の強度に関する値Lと、温度上昇値ΔTとを入力することで、関係式(I)に基く演算処理が可能となるように構成させたコンピュータ(又はコンピュータ内の演算部)により実行することができる。
以上、図面を参照しながら、本発明の目付量の計測装置及び目付量の計測方法の好適な一実施形態について説明したが、本発明の目付量の計測装置及び目付量の計測方法は上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態の目付量の計測装置においては、加熱手段としてライン光Lを照射可能な光照射装置を利用しているが、本発明の目付量の計測装置において、加熱手段は制限されるものではなく、塗工膜の表面の少なくとも一部に光を照射して加熱することが可能なものであれば適宜利用でき、光を照射して加熱することが可能な公知の加熱手段(例えば、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、LED、レーザ等の光源を利用した光照射装置)を適宜利用できる。また、上記実施形態の目付量の計測装置においては、ライン光を照射して加熱しているが、加熱手段により加熱する方法も特に制限されず、加熱手段の種類に応じて、ライン光やスポット光等を利用して一部に光を照射して一部を加熱する方法や、全体に光を照射して全体を同時に加熱する方法等を適宜採用してもよい。例えば、上記実施形態の目付量の計測装置及び目付量の計測方法においては、測定対象物を移動させながらライン光を照射することにより測定対象物を加熱して目付量を算出しているが、本発明の目付量の計測装置及び目付量の計測方法において採用可能な加熱方法等は上記方法に制限されるものではなく、例えば、静止状態にある測定対象物(例えば電極シート)の全面をフラッシュランプで加熱してもよい。
また、上記実施形態においては、目付量の測定に際して、図11に記載したフローに基いて、ステップS200~S204を順次行って、ステップS205を実施する方法を説明したが、本発明において、各ステップの実施する順番は特に制限されず、例えば、ステップS200を実施しながらステップS203及びS204を実施して反射光の強度に関する値Lを求めつつ、同時にステップS201及びS202を実施して温度上昇値ΔTを求め、ステップS205を実施してもよい。さらに、別の形態として、ステップS202、ステップS203を実施する順序は逆にして、ステップS201を行った後に、ステップS203、ステップS202、ステップS204の順に各ステップを施して、その後にステップS205を実施してもよい。
また、上記実施形態においては、反射光撮像用反射手段14を固定して利用しているが、反射光撮像用反射手段14の利用方法は特に制限されるものではなく、反射光撮像用反射手段14が表面に微小な凹凸を有するようなものである場合であって、反射光画像に反射光撮像用反射手段14上の微小な凹凸に起因するスペックルパターンが確認されるような場合には、スペックルパターンの影響をより小さくして、より精度の高い測定を行うために、例えば、反射光撮像用反射手段14を揺動して利用してもよい。
また、上記実施形態においては、反射光の強度の算出領域及び温度上昇値の算出領域を矩形の1点の領域としているが、かかる算出領域の形状は特に制限されるものではなく、ライン状の領域としたり、円形の領域としたりしてもよく、さらには、複数の領域としてもよい。
また、上記実施形態においては、関係式(I)を求める際に、前述の図9に示すフローチャートに記載した手順で準備処理(以下、場合により、図9に示す手順を利用した準備処理を、便宜上、「第一の準備処理」と称する。)を行って、各出力Pごとに一回ずつ反射光の撮像と、温度分布の測定を行い、その結果に基づいて関係式(I)を求めているが、準備処理の方法(手順)は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、各出力Pごとに複数回ずつ反射光の撮像と、温度分布の測定を行って、測定回ごとの誤差も考慮して、関係式(I)を求めてもよい。すなわち、好適な他の実施形態として、例えば、後述の第二の準備処理を実施することにより、関係式(I)を求めて、これを利用して目付量の演算を行う装置及び方法を採用してもよい(この場合、上記図1に示す計測部10を利用してもよいし、他の形態の計測部を利用してもよい)。
図1~11に基いて説明した実施形態以外の、本発明の目付量の計測装置および本発明の目付量の計測方法の他の実施形態の好適な一例ついて、以下、他の図面を参照しながら、より具体的に説明する。なお、以下の説明及び図面中、上記実施形態において説明した要素と同一又は相当する要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<目付量の計測装置の好適な他の実施形態>
図12は、上記本発明の目付量の計測装置内の計測部の構成の好適な一例(一実施形態)を模式的に示す概略図である。なお、図12に示す目付量の計測装置の計測部10は、測定対象物11と、加熱手段12と、光透過反射手段13と、反射光撮像用反射手段14と、反射光撮像手段15と、温度測定手段16と、搬送手段19とを備えるものであり、図1に示す実施形態と同様に、暗室18内に配置されている。
なお、図12に示す実施形態においては、加熱手段12として、高出力レーザ発振器12Aと、光ファイバ12Bと、ライン光学系12Cにより構成されたものを利用している。また、測定対象物11の搬送のために、搬送台19Aと搬送ステージ19Bとからなる搬送手段19を利用し、測定対象物11の搬送方向を、図1に示す実施形態とは逆の方向としている。このように、本実施形態においては、加熱手段12を高出力レーザ発振器12Aと、光ファイバ12Bと、ライン光学系12Cにより構成されたもの(図1に示す実施形態において好適に利用可能なものとして説明したものと同様のもの)とし、かつ、測定対象物11の搬送のために搬送ローラ17を利用する代わりに搬送手段19を利用しているが、それ以外の測定対象物11、光透過反射手段13、反射光撮像用反射手段14、反射光撮像手段15、温度測定手段16として利用可能なものの条件や、加熱手段11、加熱手段12、光透過反射手段13、反射光撮像用反射手段14、反射光撮像手段15、温度測定手段16の配置の際の位置関係等の条件、等は好適な条件等も含めて上述の図1に示す実施形態において説明したものと同様である。
なお、搬送手段19に利用している搬送台19Aとしては、測定対象物11を台19A上に配置して移動させるために利用可能なものであれば、特に制限されることはなく、公知の搬送台を適宜利用できる。また、搬送ステージ19Bも特に制限されず、台19A上に配置された測定対象物11を所望の方向に搬送可能なもの(例えば、市販の直動ステージ等)を適宜利用できる。また、図12に示す実施形態においては、前述のように、測定対象物11の搬送方向を、図1に示す実施形態とは逆にしているが、このように、移動方向を逆方向に変更した場合においても、基本的に、前述の実施形態と同様にして関係式(I)を求めて、目付量の測定を行うことができる。
また、図12に示す実施形態の計測部10を備える目付量の計測装置においても、図1に示す装置と同様に、反射光撮像手段15及び温度測定手段16を図示を省略した外部のコンピュータに接続し、測定データの入力により、反射光L2の強度に関する値と、加熱前後の測定対象物11の温度上昇値の算出(演算)可能としている。さらに、図12に示す実施形態の計測部10を備える目付量の計測装置においても、算出された反射光L2の強度に関する値及び加熱前後の測定対象物11の温度上昇値を利用(入力)して、目付量の演算を行えるように構成された目付量算出手段(図示省略:外部のコンピュータ等)を備える。ここで、かかる目付量算出手段としては、上記実施形態において図9を参照しながら説明した前述の「準備処理(第一の準備処理)」により取得された「関係式(I)」に基いて入熱量の値を補正して目付量を演算する処理を実行可能なように構成させたものとしてもよいし、あるいは、前記第一の準備処理において説明した方法以外の別の準備処理の方法を採用して「関係式(I)」を求め、その関係式(I)に基いて入熱量の値を補正して目付量を演算する処理を実行可能なように構成させてもよい。以下、前記第一の準備処理とは別の準備処理として好適に採用することが可能な方法(準備処理の好適な他の実施形態)の一例について、先ず、図13に示すフローチャートを利用しながら説明する。なお、関係式(I)は、前述のように、目付量を求める塗工膜の材料及びシート部材の材料の種類ごとに演算を行う利用者が予め求める必要があるものであり、かかる式を利用することで入熱量の値を補正して目付量を演算する処理を実行することが可能となる。
<準備処理の好適な他の実施形態(第二の準備処理)>
目付量の演算に利用する「関係式(I)」を求めるための準備処理(加熱手段12の出力の変動等に由来して生じる入熱量の変化と、反射光L2の強度に関する値との関係について近似した関係式(I)を求める処理)の他の実施形態として好適に採用することが可能な第二の準備処理を、以下、図13に基いて説明する。なお、図13は「第二の準備処理」の手順の好適な一例を示すフローチャートであり、以下、図12に示す計測部10を備える目付量の測定装置を利用した場合を例に挙げて、各手順について説明する。
第二の準備処理においては、後述のように、加熱手段12の出力を基準値から必要な範囲で変動させつつ、各出力での測定をそれぞれ複数回行い、各回の測定ごとにそれぞれ反射光L2の画像及び温度分布に関する情報を求めて、同一出力の複数回の測定結果を利用して、各測定で生じ得る誤差の影響を考慮して、関係式(I)を求めている。
このような第二の準備処理においては、先ず、ステップS300において、目付量wが既知の測定対象物のサンプル(既知サンプル)を準備する。次に、ステップS301において、加熱手段12の出力(印加電圧)Pを基準値(特定の値)に設定する。例えば、加熱手段12の光源である高出力レーザ12Aに対する出力(印加電圧)を10.0Vに設定し、その値(10.0V)を基準値として設定してもよい。このようなステップS300およびステップS301はそれぞれ、上述の図9に示すフローチャート(第一の準備処理)のステップS100およびステップS101と同様のステップである。次いで、第二の準備処理においては、ステップS302において、測定回数M(測定回数のカウント)を1(初回)に設定する。
次に、ステップS303で、既知サンプルを移動させつつ、既知サンプルに対して光を照射して加熱を開始する。次いで、ステップS304においては、光透過反射手段13により反射された反射光L2が照射されて映る、反射光撮像用反射手段14の表面の撮像領域A2を、反射光撮像手段15により撮像する。また、ステップS305において、加熱領域A1を含む測定領域A3の温度分布を測定する。なお、「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として、例えば、前述の方法(図5~8を参酌しながら説明した方法)を採用する場合には、測定領域A3の温度分布の測定を連続的に行い、加熱前の領域及び加熱後の領域のx方向の特定の位置(例えば、図4及び図6に示すxrやxhに相当する位置)に関して、時間的に連続的にy方向の1ライン分の温度分布を求め、各位置における時間と温度の分布との関係の画像(温度分布像)を求めてもよい。このようなステップS303~S305はそれぞれ、上述の図9に示すフローチャート(第一の準備処理)のステップS102~S104と同様のステップである。なお、これらのステップは同時刻の温度分布及び反射光画像を得るために、基本的に同時に実施することが好ましい。
次いで、第二の準備処理においては、ステップS306において、測定回数M(測定回数のカウント)が所定回数となっているか否かを判定する(なお、かかる所定回数は、同じ出力で繰り返し測定する回数であり、予め設定した値を使用する。例えば、10回ずつ各出力で測定する場合には、所定回数を10に設定しておき、測定回数M(測定回数のカウント)の値が10となっているか否かを判定することとなる)。そして、測定回数Mが所定回数(上限)に達していない場合には、ステップS307に進み、測定回数Mのカウントを1増やした後、その回の測定(ステップS303~S305)を実施(この場合の測定時の加熱手段12の出力(印加電圧)Pは、前回の測定回の出力と同じ値のままである)し、再度ステップS306の判定を行う。このようにして、測定回数Mのカウントが所定回数となっていると判定されるまで、ステップS307及びステップS303~S305を繰り返す。このように、ステップS306にて測定回数Mが所定回数と判定されるまで、ステップS307及びステップS303~S305を繰り返すことで、同じ出力の大きさで複数回の測定を行うこととなり、得られた各回の測定データを比較することで、測定回ごとに生じ得る測定誤差を補正することが可能となって、より精度の高い測定を行うことが可能となる。なお、測定回ごとに、既知サンプルの温度が室温と同等となるまで静置した後、同じ測定位置に対してステップS303~S305を施して、各回のデータを取得することが望ましい。このように、同じ測定位置で複数回の測定を行うことで、測定回ごとに生じ得る測定間の誤差の影響をより適切に補正することが可能である。
次いで、ステップS306にて測定回数Mのカウントが所定回数となっていると判定された場合には、ステップS308に進む。そして、ステップS308においては、測定回数を1に戻して(リセットして)、ステップS309に進む。そして、ステップS309においては、加熱手段の出力(印加電圧)Pが所定値(測定終了予定の値)となっているか否かを判定する。かかるステップは、上述の図9に示すフローチャート(第一の準備処理)のステップS105と同様のステップである。そして、図13に示す手順では、加熱手段12の出力が変動するであろう範囲内において出力Pの値を変更させて、その変動させた出力において、測定回数Mが所定値となるまで、ステップS303~S307を繰り返すこととなる。例えば、ステップS309において、出力Pの大きさが測定終了予定の所定値となっていなければ、ステップS310に進んで、出力Pの大きさを所定分(ΔP)減じて、ΔP減じた出力でステップS303~S305を再度行い、ステップS306にて測定回数Mが所定値となるまで、ステップS307に進み、そのΔP減じた出力でステップS303~S305を繰り返し行い、その出力での各測定回ごとの温度分布及び反射光画像を得る。そして、ステップS306の判定後に、ステップS307で測定回数のカウントを1にリセットして再度ステップS309に進んだ場合には、そのステップS309において、出力Pの大きさが測定終了予定の所定値となっているか判定し、加熱手段の出力Pの大きさが所定値(測定終了予定の値)となっているものと判定されるまで、前述の各ステップを繰り返す。なお、ステップS310は、ステップS309の判定結果に応じて、出力が所定値(測定終了予定の値)となっていないと判定された場合(図13のフローの「no」の場合)に、出力Pの大きさを所定の減少分(ΔP)だけ減じるステップであり、上述の図9に示すフローチャート(第一の準備処理)のステップS106と同様のステップである。ここで、S309の判定回数n回目の出力Pの大きさをPとすると、第一の準備処理と同様に、Pは下記式(A):
=P-ΔP×(n-1) (A)
(式中のPはステップS301で設定した基準値であり、nはステップS309の判定回数を示し、ΔPはステップS310における出力の減少量を示す。)
により、その大きさを算出できる。そして、かかるをPの大きさが所定値となった後には、ステップS311に進む。
次に、ステップS311においては、計測部10で計測された各測定回ごとの温度分布のデータに基き、各測定回ごと(言い換えると、出力P(nは自然数)の各測定回ごと)に、加熱前後の既知サンプルの温度上昇値ΔTをそれぞれ求める。なお、このようなΔTの計算は、「加熱前後の測定対象物の温度上昇値」の測定方法として、前述した方法(図5~8を参酌しながら説明した方法)を採用して行ってもよく、あるいは、別の方法を適宜採用して行ってもよい。
次に、ステップS312においては、計測部10で計測(撮像)された各測定回ごとの反射光L2の画像データに基き、各測定回ごと(言い換えると、出力P(nは自然数)の各測定回ごと)に、反射光L2の強度に関する値(例えば輝度値)L(ここにいうnは自然数であって測定回数Mと同じである)をそれぞれ算出して求める。なお、このような反射光L2の強度に関する値(例えば輝度値)Lの計算は、反射光L2の強度に関する値を求める方法として好適に採用し得る方法(図2~4を参照しながら説明した方法)を採用して行ってもよく、あるいは、別の方法を適宜採用して行ってもよい。
次いで、ステップS313においては、各測定回ごとに得られた反射光の強度に関する値に基づいて、反射光の強度に関する測定値の変動率βを算出する。ここで、第二の実施形態においては、出力Pを基準値(特定の値)とした複数回の測定(出力Pを基準値とした全測定回)においてそれぞれ求められた反射光の強度に関する測定値を用いて、その測定値の平均値Lを求めた後、各測定回の測定結果を利用して、下記式(B):
β=L/L (B)
(式(B)中、Lは各測定回の反射光の強度に関する測定値を示し、Lは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の測定の全測定回の反射光の強度に関する測定値の平均値を示す。)
を計算することで反射光の強度に関する値の変動率を求めて、測定回ごとの変動率として利用する。
次に、ステップS314においては、ステップS311において求められた各測定回ごとのΔTの値を利用して、測定回ごとに、上記式(1)の関係に基いて、概算入熱量Qmを算出する。なお、概算入熱量Qmは、上記式(3)を計算することにより求めることができる。かかるステップS314は、出力Pn及びその出力での測定回数Mの各回ごとにQmを求める以外は、上述の図9に示すフローチャート(第一の準備処理)のステップS110と基本的に同様の計算を行うステップである。
次いで、ステップS315においては、各測定回ごとに算出された概算入熱量Qmの値に基づいて、各測定回ごとの概算入熱量Qmの変動率αを求める。ここで、概算入熱量Qmの変動率αとしては、出力Pを基準値(特定の値)とした複数回の測定(全測定回)の概算入熱量の平均値Qmを求めた後、その平均値と各測定回の測定結果とを利用して、下記式(C):
α=Qm/Qm (C)
(式(C)中、Qmは各測定回の概算入熱量を示し、Qmは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の測定の全測定回の概算入熱量の平均値を示す。)
を計算することにより求められる値を採用することが好ましい。
次に、ステップS316においては、ステップS315で算出した各測定ごとの「概算入熱量Qmの変動率α(Qm/Qm)」と、ステップS313で算出した各測定ごとの「反射光L2の強度に関する値の変動率β(L/L)」との関係から、最小二乗法等を用いて、概算入熱量の変動率αと反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係の近似式を求め、その近似式を利用して、目付量を求めるための関係式(I)を求める。このようなステップS316において変動率αと変動率βとの関係の近似式を求める際に、同じ出力の大きさの測定から算出された複数の変動率αおよび複数の変動率βを用いることにより、測定回ごとに生じ得る測定誤差の影響のより少ない、より適切な近似式を得ることが可能となる。なお、概算入熱量の変動率αと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係は、その精度に応じて、直線により近似(線形近似)したり、あるいは、多項式や曲線に近似することも可能である。ここで、変動率αと変動率βとの関係を線形近似した場合には、下記式(D):
α=a×β+a (D)
[式中、αは概算入熱量Qmの変動率を示し、βは反射強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、aおよびaは線形近似式の係数(定数)を示す。]
で表される近似式(近似直線の関数)を求めることができる。
この点に関して、参照のために、高出力レーザを利用する場合において、出力の基準値P(高出力レーザへの印加電圧)を10.0Vに設定し、測定終了予定の出力の値を9.0Vに設定し、ΔPの大きさを0.5Vに設定し、かつ、測定回数Mを10回に設定して、前述の各ステップを行った場合を例に挙げて、概算入熱量Qmの変動率αと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係を求めた場合に得られるグラフの一例を図14(なお、図14において変動率βは輝度値の変動率である)に示す。このように、概算入熱量Qmの変動率αと、反射光L2の強度に関する値の変動率βとの関係から、近似式(近似直線の関数)を求めることが可能となり、図14に示すような近似直線を求めることができる。
次いて、上記式(D)中のαがQm/Qmの値であることから、概算入熱量Qmを入熱量の近似値Qと擬制して式(D)を変形することにより、下記式(E):
=(a×β+a)Qm (E)
を求めることができる。
そして、入熱量の近似値Q(式(E)で求められる入熱量)を式(1)中の入熱量Qとして採用して、上記式(1)を順次変形することで、下記式(F):
ΔT=Q/(c×w+D)
=[(a×β+a)×Qm]/(c×w+D)
=[{a×(L/L)+a}×Qm]/(c×w+D) (F)
[式中、ΔTは温度上昇値を示し、βは反射光の強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、Qは入熱量の近似値を示し、aおよびaは係数(近似直線から求められる係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱を示し、wは測定対象物中の塗工膜の目付量を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量を示し、Lは各測定で求められる反射光の強度に関する値であり、Lは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値の平均値を示し、Qmは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる概算入熱量の平均値を示す。]
を求めることができる。
そして、かかる式(F)のwを、測定対象物の目付量wmと擬制した場合、式(F)中のL、Qm、a、a0、c及びDは定数となることから、その測定対象物の測定により求められる反射光の強度に関する値Lを式(F)のLの位置に導入し、その測定対象物の測定により求められる加熱前後の温度上昇値ΔTを、式(F)のΔTの位置に導入することで、下記関係式(I):
ΔT=[{a×(L/L)+a}×Qm]/(c×wm+D) (I)
(式(I)中、wmは測定対象物中の塗工膜の目付量(算出する値)を示し、ΔTは測定対象物の測定により求められる加熱前後の温度上昇値を示し、Lは測定対象物の測定により求められる反射光の強度に関する値(例えば輝度値)を示し、Lは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値の平均値であり、Qmは出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる概算入熱量の平均値であり、aおよびaは前記方法で求められた係数(近似直線から求められた係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱(利用した塗工膜の材料により定まる定数)を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量(利用したシート状部材の材料により定まる定数)を示す。)
を求めることができる。
なお、このような関係式(I)において、式中の「{a×(L/L)+a}×Qm0」の部分の計算は、反射光の強度に関する値の測定値Lを用いて、入熱量Qを補正した値(入熱量の補正値Q)を求めるための計算となることは明らかであるため、本実施形態において求めた関係式(I)を利用して、L及びQmを測定した際の出力Pを採用して、目付量が未知の測定対象物に関して、反射光L2の強度に関する値の測定値Lと、温度上昇値ΔTとを測定し、その値を導入することで、反射光L2の強度に関する値の測定値Lを利用して入熱量を補正して、補正後の入熱量と、測定対象物の温度上昇値ΔTとの関係に基いて、塗工膜の概算の目付量wmを求めることが可能となる。
このように、ステップS316は、概算入熱量の変動率αと、反射光の強度に関する値の変動率βとの関係から、入熱量の近似値を求めるための近似式を求めて、入熱量Qを反射光の強度に関する値Lにより補正して、得られる入熱量の補正値と、温度上昇値ΔTとに基いて目付量を求めることが可能な関係式(I)を取得するステップである。そして、このような関係式(I)を求めた後においては、目付量の演算に利用するコンピュータに関係式(I)を記憶させて、目付量の算出の際に、反射光L2の強度に関する値Lと、測定対象物の温度上昇値ΔTとを入力することで、概算の目付量wmを算出(演算)できるように、コンピュータを構成させ、これを目付量算出手段として利用する。このようにして、図14に示す一連の準備処理を終了する。このような「第二の準備処理」を施すことによっても、関係式(I)を利用して精度よく目付量(概算値)wmを算出することが可能である。
以上、準備処理の好適な他の実施形態として図13に示す一連の準備処理である「第二の準備処理」について説明したが、準備処理の方法は、前記第一及び第二の準備処理の方法に限定されるものではない。ここで、関係式(I)を求めるための準備処理として好適に採用することが可能な、更に別の方法(準備処理の好適な別の実施形態(第三の準備処理))について、図15に示すフローチャートを利用しながら説明する。なお、以下に説明する第三の準備処理は、複数の測定位置において目付量を測定する場合に好適に採用することが可能な準備処理の方法の一例である。
<準備処理の好適な別の実施形態(第三の準備処理)>
目付量の演算に利用する「関係式(I)」を求めるための準備処理(加熱手段12の出力の変動等に由来して生じる入熱量の変化と、反射光L2の強度に関する値との関係について近似した関係式(I)を求める処理)の別の実施形態として好適に採用することが可能な第三の準備処理を、以下、図15に基いて説明する。なお、図15は「第三の準備処理」の手順の好適な一例を示すフローチャートであり、測定位置を複数設定して、測定位置ごとに目付量を測定する場合に好適に採用可能な処理の方法である。このような第三の準備処理は、加熱手段12の種類等に起因して、幅方向の測定位置ごとに入熱量が変化するような場合にも好適に採用することが可能である。ここで、幅方向の測定位置ごとに入熱量が変化するといった事象等について図16及び図17を利用して簡単に説明する。なお、ここにいう「幅方向」とは測定対象物11の移動方法に対して垂直な方向をいう。
図16は、図4に示した反射光の強度として輝度値を採用する場合の時間と輝度値の分布との関係を模式的に描いた図(概念的に描いた図面)に、同じ時間で幅方向(y方向)の位置(yの位置)が異なる複数の測定位置(図16においては、便宜上、測定位置に1番目~最後までの順番を記載している)を模式的に描いた図面である。なお、図16中の3番目の測定位置は図4の輝度値の算出領域(図4の中央の矩形の部分)と同じ位置としている。また、図17は、図8に示した加熱前後の測定対象物の温度上昇値の分布を示す画像に、同じ時間でyの位置が異なる複数の測定位置(図17においては、便宜上、測定位置に1番目~最後までの順番を記載している)を模式的に描いた図面である。図17中の3番目の測定位置は図8の温度上昇値の算出領域(図8の中央の矩形の部分)と同じ位置としている。そして、図16に示すように、光源の種類や光学系の種類等によっては幅方向(y方向:移動方向に対して垂直な方向)の位置によって、光源から測定対象物に入射する光の強度が変動し得る。また、図16では、y方向(幅方向)において中心部(ここにおいて、中心部とは3番目の測定位置(中央の測定位置)の中心のyの位置をいい、反射光の照射形状の幅方向の中心の部位をいう)から離れるほど反射光の輝度値が小さくなっている。このように、反射光の輝度値がy方向の位置によって変動する場合には、それに付随して温度上昇値も図17に示すように変動することとなる。すなわち、図16に示すようにy方向(幅方向)において中心部から離れるほど反射光の輝度値が小さくなる場合、図17に示す温度上昇値も中心部から離れるほど小さくなると考えられる。このように、幅方向において入熱量等が変動する場合に、関係式(I)を求める際の測定位置を1点とした場合(例えば、中央の測定位置とした場合)には、仮に、測定対象物11に関して別の位置(例えば、最後の測定位置)で測定を行って入熱量を補正することにより目付量を測定すると、その精度は従来の測定方法よりは十分に高いものとはなると考えられるものの、既知サンプルの測定位置と同じ位置で測定対象物の測定を行った場合と比較して、同等程度の精度とすることは困難であるため、更に高い精度で目付量の測定を可能とするためには、別の補正方法を採用して、関係式(I)を求めることがより望ましいと言える。このような観点から、測定位置ごとに入熱量が変化するような場合には、図15に示す手順を採用して、関係式(I)を求めて測定を行うことが好ましい。以下、図12に示す計測部10を備える目付量の測定装置を利用した場合を例に挙げて、図15に示す各手順について説明する。
図15に示すステップS301~S310は、前述の第二の準備処理において説明したステップS301~S310(図13参照)と同じのステップである。これらのステップにより、既知サンプルに対して、出力Pnごとに複数回の測定を行い、その測定回ごとに、既知サンプルに関して測定領域A3中の温度上昇値の分布像および反射光の強度の分布像を得る。そして、ステップS309において、加熱手段の出力Pの大きさが所定値となった場合(目的とする全ての出力において、それぞれ規定の測定回数の測定を行った後)には、ステップS320に進む。
ステップS320においては、上記ステップS301~S310で得られた、各測定回ごとの温度上昇値の分布像および各測定回ごとの反射光の強度の分布像において、複数の測定位置(yの位置が図16及び図17に示すように異なる、複数(m箇所:mは測定位置の個数(番号))の測定位置であり、便宜上、その位置をym(ここにおいて、mは測定箇所の番号:自然数)という表記で表す:ただし、複数の測定位置は、いずれも同じ時刻のyの位置が異なる位置とすることが望ましい)を設定し、それらの測定位置ymの中から、便宜上、最初に温度上昇値ΔTや反射光の強度に関する値を求める測定位置を1番目の位置(y1)として設定する。このように、測定位置は基本的にyの位置のみが異なる位置に設定することから、便宜上、以下において、その位置番号を場合により「ym」(mは自然数)と表記する。そして、1番目に設定された測定位置y1について、測定回ごとの測定結果に基づいて、ステップS321~S325を実施する。なお、ステップS321~S325は、測定位置として1番目に設定された位置y1に対して実施するステップである点以外は、基本的に、上述の第二の準備処理において説明したステップS311~S315と同じステップである(なお、第二の準備処理においては、予め設定された1点の測定位置に対して測定を行っている)。このようにして、1番目に設定された位置y1に対して、ステップS311~S315と同様のステップを実施することで、測定回ごとに、温度上昇値の分布像および反射光の強度の分布像から、測定位置y1における概算入熱量Qmの変動率αと反射光の強度に関する値の変動率βを求める。
そして、ステップS325を施した後には、ステップS326に進み、測定位置が最後の測定位置となっているかを判定する。そして、測定位置が最後の測定位置となっていない場合には、ステップS327に進み、ステップS321~S325を施していない別の測定位置(次の測定位置)に位置ymを変更する(なお、測定位置ymの位置番号mは、ステップS327の実行回数に1足した数に変更する)。そして、変更後の測定位置ymにおいて、ステップS321~S325を施す。このようにして、ステップS327およびステップS321~S325の実施を、ステップS326において、測定位置が最後の測定位置となっていると判定されるまで繰り返し行い、設定した全ての測定位置において、測定回ごとに、それぞれ概算入熱量Qmの変動率αと反射光の強度に関する値の変動率βを求める。そして、ステップS326において、最後の測定位置と判定された後には、ステップS328に進む。なお、変動率βを求める際のLとしては同じ測定位置における出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値を利用し、αを求める際のQmとしては出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる概算入熱量の平均値を利用する。このように、ステップS321~S325においては、設定された各測定位置の各測定出力ごとの測定結果を利用して、測定位置ymにおけるα及びβ(以下、場合により、測定位置ymのα及びβをそれぞれα(ym)とβ(ym)と表記し、その測定のために求めた測定位置ymの測定出力ごとのΔT、L、L、QmをそれぞれΔT(ym)、L(ym)、Qm(ym)とし、測定位置ymのLおよびQmをL(ym)、Qm(ym)と表記する)を求める。
次に、ステップS328においては、上述のようにしてステップS325で算出した測定位置ymごとの複数の「概算入熱量Qm(ym)の変動率α(ym)(Qm(ym)/Qm(ym)」と、ステップS323で算出した測定位置ごとの複数の「反射光L2の強度に関する値の変動率β(ym)」との関係から、最小二乗法等を用いて、概算入熱量の変動率α(ym)と反射光L2の強度に関する値の変動率β(ym)との関係の近似式を求め、その近似式を利用して、目付量を求めるための関係式(I)を求める。なお、概算入熱量の変動率α(ym)と、反射光L2の強度に関する値の変動率β(ym)との関係は、その精度に応じて、直線により近似(線形近似)したり、あるいは、多項式や曲線に近似することも可能である。ここで、変動率α(ym)と変動率β(ym)との関係を線形近似した場合には、例えば、下記式(D’):
α(ym)=a×β(ym)+a (D’)
[式中、α(ym)は測定位置ymにおける概算入熱量Qmの変動率を示し、β(ym)は測定位置ymにおける反射強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、aおよびaは線形近似式の係数(定数)を示す。]
で表される近似式(近似直線の関数)を求めることができる。
この点に関して、参照のために、高出力レーザを利用する場合において、出力の基準値P(高出力レーザへの印加電圧)を10.0Vに設定し、測定終了予定の値を9Vに設定し、ΔPの大きさを0.5Vに設定し、測定回数Mを10回に設定し、かつ、測定位置をyの位置を異なる5箇所(例えば、図16及び図17に示すような5箇所の測定位置)に設定して、前述の各ステップを行った場合の各測定位置ymごとの概算入熱量Qm(ym)の変動率α(ym)と、反射光L2の強度に関する値の変動率β(ym)との関係を示すグラフの一例を図18(なお、図18において変動率βは輝度値の変動率である)に示す。図18に示すように、概算入熱量Qmの変動率α(ym)と、反射光L2の強度に関する値の変動率β(ym)との関係に基づいて、近似式(近似直線の関数)を求めることができる。なお、図18は、測定位置(yの位置)ごとにプロット点の記号を変えてある。また、図18に示す実施形態のように、どのプロット点もほぼ同じ直線上にあると判断できるような場合には、近似式の係数(aおよびa)は、測定位置(yの位置)によらず、全ての測定位置おいて同じ値を採用可能である。一方、測定位置ごとのプロット点がそれぞれが異なる直線上にあると判断されるような場合には、各測定位置ごとに、それぞれ別の近似式及びその係数を求めて、測定位置(光照射位置)に応じた近似式をそれぞれ求めて利用して、測定位置ごとに異なる係数を利用した関係式(I)をもとめてもよい。なお、本実施形態においては、便宜上、図18に示すように、5箇所の測定位置の測定結果(測定位置ym(mは1~5の自然数のうちのいずれかである)ごとの出力10.0Vの測定(10回分)、9.5Vの測定(10回分)、9.0Vの測定(10回分)の結果)をプロットした場合に、プロット点がいずれもほぼ同じ直線上に乗った場合を例に、式(D’)を説明している。
次いて、上記式(D’)中のα(ym)が「Qm(ym)/Qm(ym)]により求められる値であることから、Qm(ym)を測定位置ymにおける入熱量の近似値Q(ym)と擬制して式(D’)を変形することにより、下記式(E’):
(ym)=(a×β(ym)+a)×Qm(ym) (E’)
を求めることができる。
そして、測定位置ymにおける入熱量の近似値Q(式(E’)で求められる入熱量)を式(1)中の入熱量Qとして採用して、上記式(1)を順次変形することで、測定位置ymごとに利用可能な下記式(F’):
ΔT(ym)=Q(ym)/(c×w+D)
=[(a×β(ym)+a)×Qm(ym)]/(c×w+D)
=[{a×(L(ym)/L(ym))+a}×Qm(ym)]/(c×w+D) (F’)
[式中、ΔT(ym)は測定位置ymにおける温度上昇値を示し、β(ym)は測定位置ymにおける反射光の強度に関する値(例えば輝度値)の変動率を示し、Q(ym)は測定位置ymにおける入熱量の近似値を示し、aおよびaは係数(近似直線から求められる係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱を示し、wは測定対象物中の塗工膜の目付量を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量を示し、L(ym)は測定位置ymにおける各測定で求められる反射光の強度に関する値であり、L(ym)は測定位置ymにおいて出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値の平均値を示し、Qm(ym)は測定位置ymにおいて出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる概算入熱量の平均値を示す。]
を求めることができる。
そして、かかる式(F’)のwを、測定対象物の目付量wmと擬制した場合、式(F’)中のL(ym)、Qm(ym)、a、a5、c及びDは定数となることから、その測定対象物の特定の測定位置ymの位置の測定により求められる反射光の強度に関する値Lを式(F’)のL(ym)の位置に導入し、その測定対象物の測定位置ymの位置の測定により求められる加熱前後の温度上昇値ΔTを、式(F’)のΔT(ym)の位置に導入することで、その測定位置ymにおける関係式(I):
ΔT(ym)=[{a×(L(ym)/L(ym))+a}×Qm(ym)]/(c×wm+D) (I)
(式(I)中、wmは測定対象物中の塗工膜の目付量(算出する値)を示し、ΔT(ym)は測定対象物の測定位置ymの位置の測定により求められる加熱前後の温度上昇値を示し、L(ym)は測定対象物の測定位置ymの位置の測定により求められる反射光の強度に関する値(例えば輝度値)を示し、L(ym)は測定位置ymにおいて出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定により求められる反射光の強度に関する値(測定値)の平均値であり、Qm(ym)は測定位置ymにおいて出力Pを基準値(特定の値)とした場合の全測定回の実際の測定の測定により求められる概算入熱量の平均値であり、aおよびaは前記方法で求められた係数(近似直線から求められた係数:定数)を示し、cは測定対象物中の塗工膜の比熱(利用した塗工膜の材料により定まる定数)を示し、Dは測定対象物中のシート状部材の熱容量(利用したシート状部材の材料により定まる定数)を示す。)
を求めることができる。
なお、このような測定箇所ごとの関係式(I)において、式中の「{a×(L/L(ym))+a}×Qm(ym)の部分の計算は、反射光の強度に関する値の測定値Lを用いて、測定位置ymにおける入熱量Qを補正した値(測定位置ymへの入熱量の補正値Q)を求めるための計算となることは明らかであるため、本実施形態において求めた関係式(I)を利用して、L(ym)及びQm(ym)を測定した際の出力P(基準値)を採用して、目付量が未知の測定対象物の同じ測定位置ymに関して、反射光L2の強度に関する値の測定値L(ym)と、温度上昇値ΔT(ym)とを測定し、その値を導入することで、反射光L2の強度に関する値の測定値Lを利用して測定位置ymへの入熱量を補正して、補正後の入熱量と、測定対象物の温度上昇値ΔT(ym)との関係に基いて、その測定位置ymにおける塗工膜の概算の目付量wmを求めることが可能となる。なお、上記関係式(I)は、Qm(ym)やL(ym)が測定位置ymごとに異なる値となることから、測定位置ごとに予め求めたQm(ym)およびL(ym)を利用して、各測定位置においてそれぞれ目付量を計算することなる。この点から、第三の準備処理は、測定箇所ごとの関係式(I)を求める処理であるともいえる。そして、各測定位置ごとの測定結果を利用して求めた関係式(I)をそれぞれ利用することにより、測定位置に応じて入熱量をより適切に補正して、塗工膜の目付量をより精度高く測定することが可能となり、結果として、目付量の分布状態を把握することも可能となる。
以下、前記測定対象物の幅方向の複数(n箇所)の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ym(mは測定位置の数)ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する場合の計測処理の好適な実施形態(計測処理の好適な他の実施形態)を、第三の準備処理により求めた「測定位置ymにおける関係式(I):ΔT(ym)/={a×(L(ym)/L(ym))+a}Qm(ym)/(c×wm+D)」を利用して計測する場合を例に挙げて説明する。
<計測処理の好適な他の実施形態>
以下、図12に示す実施形態の計測部10を備える目付量の計測装置(本発明の計測装置の好適な一実施形態)を利用して、塗工膜の目付量等を計測する「計測処理」を行う場合の好適な実施形態(本発明の目付量の計測方法の好適な一実施形態に相当)について説明する。なお、このような計測部10を備える目付量の計測装置としては、前述のような「第三の準備処理」を予め施して、各測定位置ym(mは測定位置の数)ごとに求められた関係式(I)を利用して測定位置ごとの目付量(概算の目付量)の算出が可能なように構成された目付量算出手段を備えるものを利用する。
図19は、前述の「第三の準備処理」により求められた測定位置ymにおける関係式(I)を利用した場合に行う「計測処理」の手順の好適な一例を示すフローチャートである。このような計測処理に際しては、先ず、ステップS400において、測定対象物11の表面(塗工膜の表面)に光(ライン状の光)を照射して加熱する。なお、この際の加熱手段への出力(印加電圧)Pは、前記第三の準備処理の基準値(前記準備処理のステップS301で採用した条件)と同じ値に設定する。このような加熱工程は、搬送手段19により図12中に示す移動方向に測定対象物11を移動(搬送)させながら行う。また、このような計測処理において、その計測の対象として用いる「測定対象物11」は、シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された目付量が未知の塗工膜とからなるものであって、前記第三の準備処理で、測定箇所ごとに関係式(I)を求めた既知サンプルと、シート状部材及び塗工膜の材料が同じものとする。
次に、ステップS401において、加熱領域A1を含む測定領域A3内の測定対象物の表面の温度分布を測定する。このような測定対象物11の表面の温度分布の測定条件としては、前記第三の準備処理のステップS304で採用した条件と同じ条件を採用する。
次いで、ステップS402においては、反射光撮像用反射手段14に映る反射光を撮像して、反射光L2の画像を取得する。このような反射光L2の画像は、加熱手段12から出射させた光L1の一部を光透過反射手段13で反射させて、その反射光L2を反射光撮像用反射手段14に照射させることにより、反射光撮像用反射手段14の表面に反射光L2を映すことで撮影(撮像)することができる。
次に、ステップS403において、測定位置ymを1番目の位置に設定する。なお、複数(n箇所)の測定位置に関しては、計測処理に際して、前記第三の準備処理で関係式(I)を求めた複数(n箇所)の測定位置と、測定対象物11の表面の目付量を求める複数(n箇所)の測定位置とが、光照射形状(加熱領域A1)の幅方向の位置(yの位置:移動方向とは垂直な方向)においてそれぞれ同じ位置となるように予め情報を入力しておくとともに、そのようにして入力された各測定位置に1~n番目(最後の番号をnとする)までの番号を任意に割り振って、対応する測定位置の関係式(I)を利用できるように各種算出手段を設定しておくことが好ましい。そして、そのようにして付けられた番号が1番目の測定位置からステップS404~S406に記載しいてる演算を行う(なお、ここにいう1番目などの順番は任意の順でよく、予め設定した番号を利用する)。
次に、ステップS404において、設定された測定位置(ym:初回は1番目の位置y1)について、ステップS401において測定した温度分布のデータに基いて、加熱前後の測定対象物11の温度上昇値ΔT(ym)を算出する。すなわち、加熱前後の測定対象物11の測定位置(ym)における温度上昇値ΔT(ym)を、温度分布のデータに基いて演算する。このように、ステップS404は、加熱前後の測定対象物に関して設定された測定位置(ym)の温度上昇値を求める工程である。なお、このような加熱前後の測定対象物11の測定位置(ym)の温度上昇値ΔT(ym)を算出するための方法としては、前述の第三の準備処理のステップS321において温度上昇値ΔT(ym)を算出する際に採用した方法と同様の方法を採用する(前述のステップS321及びステップS311参照)。
次いで、ステップS405において、設定された測定位置(ym:初回は1番目の位置y1)について、ステップS402で取得された反射光L2の画像から、反射光L2の強度に関する値L(ym)を算出する。このようなステップS405は、測定対象物11に到達する前に、加熱手段12から出射させた光L1の一部を反射させて取得した反射光L2の画像を利用し、その画像から測定位置ymにおける反射光L2の強度に関する値L(ym)を算出する工程である。なお、反射光L2の画像中の測定位置ymは、ステップS404にて温度上昇値ΔT(ym)を求めた測定位置と同じ形状、同じ位置及び同じ時間に相当する位置である。このような反射光の強度に関する値L(ym)の算出には、前記第三の準備処理のステップS322において、反射光の強度に関する値L(ym)を求める際に採用した方法と同様の方法を採用する(前述のステップS322、ステップS312、および、ステップS108参照)。
次に、ステップS406においては、設定された測定位置(ym:初回は1番目の位置y1)について、「第三の準備処理」により求められた、その測定位置ymにおける関係式(I)を利用して、測定位置ymの位置の目付量を算出する。なお、かかる測定位置ymにおける関係式(I)は、前述のようにして求めた、下記式:
ΔT(ym)=[{a×(L(ym)/L(ym))+a}×Qm(ym)]/(c×wm+D) (I)
であり、かかる式中のL(ym)、a及びaは前記準備処理において予め求めた数値であり、かつ、c及びDは前記準備処理において利用した数値と同様の値である(ここにおいて、L(ym)およびQm(ym)としては、ΔT(ym)およびL(ym)を求める際に採用した加熱手段への出力(印加電圧)Pと同じ出力(前記基準値)で、かつ、同じ測定位置ymに相当する位置に関して、第三の準備処理において測定された値を採用する)。このように、上記関係式(I)に対して、ステップS405で求めた測定位置ymの反射光の強度に関する値L(ym)と、ステップS404で求めた加熱前後の測定対象物の測定位置ymの温度上昇値ΔT(ym)とを導入して計算することで、分子側の計算において、反射光の強度に関する値に基いて補正された測定対象物の測定位置ymに対する入熱量の値(入熱量の補正値)が求められることから、かかる測定位置ymに対する入熱量の補正値と加熱前後の測定対象物の測定位置ymにおける温度上昇値ΔTの値との関係から、未知の塗工膜の測定位置における目付量wmを算出することが可能となる。なお、このような目付量の算出(計算)は、反射光強度算出手段により測定された反射光L2の強度に関する値L(ym)と、温度上昇値ΔT(ym)とを入力することで、関係式(I)に基く演算処理が可能となるように構成させたコンピュータ(又はコンピュータ内の演算部)により実行することができる。そして、設定された測定位置ymにおいて、目付量の算出を行った後においては、ステップS407に進む。
次に、ステップS407においては、測定位置が最後の測定位置となっているかを判定する。そして、測定位置が最後の測定位置となっていない場合には、ステップS408に進み、ステップS404~S406を施していない別の測定位置(次の番号の測定位置)に位置ymを変更する(なお、ステップS408において、測定位置ymの位置番号mは、ステップS408の実行回数に1足した数に変更する)。そして、変更後の測定位置ymにおいて、ステップS404~S406を施す。このようにして、ステップS408およびステップS404~S406の実施を、ステップS407において、測定位置が最後の測定位置となっていると判定されるまで繰り返し行い、設定した全ての測定位置ymにおいて、それぞれ、その測定位置ymにおける関係式(I)を利用(ymの位置によってL(ym)、Qm(ym)の数値が異なるため、ymの位置ごとに、その位置に対応する関係式(I)を利用)して目付量を求める。そして、ステップS407においては、測定位置が最後の測定位置となっていると判定された場合には、計測処理を終了する。
なお、このように、図19に示す手順(フロー)で、測定位置ごとに反射光強度算出手段により測定された反射光L2の強度に関する値L(ym)と、温度上昇値ΔT(ym)とを算出するような場合には、ステップS401やS402等のような測定や撮像を行った後に、測定位置ごとに、ステップS404~S408を繰り返せばよく(測定位置ごとにL(ym)とΔT(ym)とを求める処理を繰り返せばよく)、そのフローにおいてループ処理(繰り返し実施する処理)のための判定を、測定位置ごとに一回行えばよいことから(一つのループ処理中にL(ym)とΔT(ym)の算出ステップが含まれるため、ループの判定(ステップS407)を測定位置ごとに一回行えば必要なデータが得られるため)、フロー中のループを一つにすることができ、計測処理をより効率よく行うことが可能である。
このような計測処理を施した場合には、反射光の強度に関する値に基づく塗工膜への入熱量の値の補正を、照射領域内の幅方向の複数の測定位置(測定領域)においてそれぞれ行って、測定領域ごとの目付量を求めることが可能となることから、例えば、照射光の強度が領域ごとに変動するような場合でも、各領域での目付量を十分に高い精度で算出することが可能(各領域での目付量の高精度な算出を実現可能)となり、目付量の分布状態を非破壊でより高精度に測定することも可能となる。そのため、周辺環境の変化(温度など)や経年劣化などによって加熱手段の出力や照射強度の分布が変動した場合の他、照射領域内での位置により照射光強度の変動の度合いが異なるような場合においても、より精度の高い目付量の計測(演算)を行うことが可能となる。また、このような複数の測定位置ごとの目付量の測定は、特に、ビームパターン(NFP(Near Field Pattern)およびFFP(Far Field Pattern))が変動し得るような高出力ファイバレーザを加熱光源に利用した場合等に有用である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[試験例1:関係式(I)を求めるための試験について]
<計測用のサンプルの準備>
計測用のサンプルとして、シート状の銅箔(幅100mm、長さ約200mm)の表面上に、黒鉛の塗工膜(幅約75mm、長さ約200mm)が積層されたもの(電極シート:塗工シート)を準備した。なお、黒鉛の塗工膜は、バインダ樹脂と黒鉛とからなる材料を利用して積層させた。なお、計測用のサンプルは、塗工膜の目付量が3.75mg/cmのものであった。また、ここにいうサンプル中の塗工膜の「目付量」は、サンプルを準備する際に調製した積層物(シート状の銅箔の表面上に黒鉛の塗工膜が積層されたもの)から、測定に利用しない部分を切り取って、その切り取った箇所から打ち抜いた試料に関して質量を測定し、その質量の測定値から打ち抜き面積分の銅箔の質量を差し引いた後、打ち抜き面積で除算することにより求めた値である(以下、場合により、このようにして算出した目付量を「既知目付量」と称する)。また、計測用のサンプル中の銅箔(シート状部材)の熱容量(D)としては、用いた銅箔の既知の値(D:0.002717J/(cm・K))を採用し、塗工膜の比熱(c)としては、別途測定した得られた値(c:0.0005291J/(mg・K))を採用した。
<計測に用いた機器等について>
各サンプルの計測には、測定対象物11を移動方向に移動させるための手段として、搬送ローラ17の代わりに、図20に模式的に示す搬送台(直動ステージに固定して移動可能としたもの)を利用した以外は、図1に示す計測部10と同様の構成の装置(図1の装置を模した装置:以下、便宜上、単に「装置(A)」と称する)を利用した。なお、かかる装置(A)において、前記搬送台以外の各構成要素(加熱手段12や光透過反射手段13等)としては、以下に記載のものを用いた。なお、計測に際しては、図1と同様に、計測部10に相当する部分を暗室18内に配置させた。
・測定対象物11:上記計測用のサンプルを利用
・加熱手段12:ライン光で加熱する装置(ライン型ライトガイドに接続されたハロゲンランプ(容量150W)を利用:なお、前記ライン型ライトガイドとしては住田光学ガラス社製の商品(型番:ラインLGW50×R113×t1)を利用し、前記ハロゲンランプとしてはフィンテック社のハロゲンスポットヒータ(型番:HSH-60/f60/24V-150W+QFG)を利用した。)
・加熱手段12に接続した電源:直流電源(菊水電子工業社の商品(型番:PAS40-18)を利用)
・光透過反射手段13:合成石英ガラス板(モノタロウ社の商品(ノーブランド品)を利用)
・反射光撮像用反射手段14:セラミック板からなる拡散反射板(ミスミ社のセラミックプレート(型番:CEAA-CRM)を利用)
・反射光撮像手段15:CMOSカメラ(FLIR社の商品(型番:BFS-U3-32S4M-C)を利用)
・温度測定手段16:赤外線サーモグラフィカメラ(アルゴ社製の商品(型番:PI450」)を利用)。
また、装置(A)において搬送ローラ17の代わりに利用した搬送台20は、図20に示すような4つの壁用部材(壁部)W~Wを組み合わせてなる台(内部は空洞)とした。ここで、図20に示す搬送台(移動のための固定治具)20において、4つの壁部W~Wはいずれもアクリル板からなるものとした。また、このような搬送台20において、壁部Wは長さLを適宜変更できるように可動するようにした。ここで、壁部W及びWの長さLはいずれも300mmであり、壁部W及びWの幅(長さL及びLに相当)はいずれも20mmであり、壁部W及びWの長さLはいずれも80mmであり、長さLは120mmである。また、長さLは各サンプルと同じ長さ(約200mm)となるように変更しながら利用した。なお、搬送台20は、底面側を図示を省略した直動ステージに固定しており、これにより、図1に記載する移動方向にサンプル(測定対象物11)を所定の速度で移動可能なようにした。
また、計測用のサンプル(測定対象物11)は、図21に示すような位置に銅箔の部分をテープTで8箇所固定することで、搬送台20に対して固定した。なお、図21に示すように、サンプル(測定対象物11)の塗工膜の形成(積層)されている部位(箇所)の表面及びその塗工膜が積層されている部位の裏面(銅箔面)がともに空気に触れた状態となるように、サンプル(測定対象物11)を固定した。
さらに、装置(A)においては、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動する方向に垂直な方向が、加熱手段12から照射されるライン光の長手方向となるように、搬送台20を配置させた。また、加熱手段12の光の出射部(出射面)と、サンプル(測定対象物11)との間のライン光の光路上に、合成石英ガラス板(光透過反射手段13)を配置して、その合成石英ガラス板の表面および裏面で反射されるライン光の反射光L2を、セラミック板(反射光撮像用反射手段14)に照射させた。そして、前記セラミック板の反射光L2が当たる位置を、CMOSカメラ(反射光撮像手段15)で撮像して、可視光画像を取得した。さらに、合成石英ガラス板(光透過反射手段13)を透過したライン光L3(照射光)をサンプル(測定対象物11)に照射し、その光の照射領域(加熱領域A1)を含む測定領域A3を、赤外線サーモグラフィカメラ(温度測定手段16)により撮像し、温度分布画像を取得した。なお、CMOSカメラはコンピュータ(図示省略)に接続され、そのコンピュータにより、カメラの制御、画像の取得及びその画像からの反射光の強度に関する値(輝度値)の計算を行った。また、赤外線サーモグラフィカメラは、CMOSカメラが接続されたコンピュータとは別のコンピュータ(図示省略)に接続し、赤外線サーモグラフィカメラの制御、温度分布画像の取得及びその画像から温度上昇値の計算を行った。このように、2台のコンピュータをそれぞれ用いて、反射光の画像と、温度分布画像とから、それぞれ、反射光の強度に関する値(輝度値)と、温度上昇値とを算出した。
<温度分布の測定>
先ず、上記装置(A)を利用し、加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧を24Vに設定し、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動速度を50mm/s(一定)として移動させながら、加熱手段12から前記サンプルの塗工膜の表面上にライン光を照射した。このような光照射による加熱と、前記サンプルの移動を継続的に行いながら、赤外線サーモグラフィカメラ(温度測定手段16)により、前記サンプルの表面上の測定領域A3の温度分布像を継続的に4.4秒間取得し続けた。
なお、図7は、目付量3.75mg/cmの塗工膜を備える前記サンプルの特定の時刻の温度分布像(サーモグラフィ)である。また、前記サンプル(電極シート)は、図の右側から左側に向かって移動している。ここで、図7中の白色の2つの矢印(→及び←)が指す方向が重なった位置に、加熱手段12からライン光が照射されており、かかる位置においてサンプルが加熱されている。また、図7から、加熱前のサンプルの温度は、ほぼ室温(25℃)と同等であることが分かる。他方、ライン光が照射された位置においては急激に温度が上昇しており、温度測定範囲内において、ライン光の照射位置を通過した後のサンプル(電極シート)の温度は、加熱位置の温度とほぼ同じ温度のままであることが分かる。
そして、図5~8を参酌しながら説明した方法を採用して、温度上昇値ΔTを求めた。すなわち、前記サンプルについて、先ず、図5や図7に例示するようなx方向(移動方向)の特定の2箇所の位置(加熱前の領域内と、加熱後の領域内において一箇所ずつ:図5や7において、xr及びxhで示すような位置)において、y方向の1ライン分の温度分布と時間の関係を求めて、時間と温度分布の関係をそれぞれ求めた。ここで、図5及び図7を参照すると、xhの位置は上記移動速度(50mm/s(一定))でライン光Lの照射位置A1から0.16秒移動した位置となるように設定し、かつ、xrの位置は、xrの位置とxhの位置の間の距離が上記移動速度(50mm/s(一定))で0.61秒移動した距離となるように設定して測定を行った。そして、xrの位置の温度分布(y方向の1ライン分の温度分布と時間の関係を示す分布像)を時間方向に0.61秒ずらして、測定位置を合わせた後、xhで示す位置の温度分布からxrで示す位置の温度分布を差し引いて、温度上昇値(温度差)ΔTの分布を求めて、図8に示す温度分布と時間の関係を示す画像を求めた。次に、得られた温度分布像の中央部の矩形の領域(縦:y方向に中央から±2.5mm(5mm)の長さ、横:特定の時刻から時間0.1秒分の長さ(5mm)の正方形状の領域:温度分布像の中央の5mm×5mmの大きさの領域)を温度上昇値の算出領域に設定し、温度上昇値の算出領域の全画素ごとの温度上昇値をそれぞれ求めて、それを平均化することにより、サンプルの温度上昇値ΔTを求めた。
次いで、加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧の大きさを変更した以外は、上記方法と同様にして、その変更後の印加電圧におけるサンプルの温度上昇値ΔTを求める工程を複数回行った。このような複数回の測定は、測定回ごとに電圧の大きさを順次0.1Vずつ下げて、電圧が上記測定の際に採用した大きさ(1回目の測定の際の大きさ:24V)から最終的に22.5Vになるまで順次行った。このようにして、各印加電圧の大きさごとに、サンプルの温度上昇値ΔTをそれぞれ求めた。なお、各回の測定は、室温となるまで放置したサンプルをそれぞれ利用して行った。
<輝度値の測定>
先ず、上記装置(A)を利用し、加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧を24Vに設定し、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動速度を50mm/s(一定)として移動させながら、加熱手段12からサンプルの塗工膜の表面上にライン光を照射した。そして、このような光照射による加熱と、サンプルの移動を継続的に行いながら、反射光撮像用反射手段14(セラミック板)に映る反射光L2の画像(測定領域A2の可視光画像)を、CMOSカメラ(反射光強度測定手段)を用いて、0.05秒間隔で4.4秒間連続的に撮像した。なお、かかる測定は、上述の「温度分布の測定」と、測定時刻と測定時間の長さを併せて同時に行った。そして、図2~4を参照しながら説明した方法と同様の方法を採用して、CMOSカメラを利用して得られた測定領域A2の画像(反射光の画像)を用いて、反射光L2の輝度値の平均値を算出し、求められた値を「反射光の強度に関する値(輝度値)」とした。なお、このような反射光L2の輝度値の平均値(反射光の強度に関する値)の算出に際しては、先ず、カメラの撮像により得られた各時刻の測定領域A2の画像毎に、y軸方向(ライン状の反射光の幅方向:方向については図3を参照)の画素ごとのyの位置(例えば、位置をy1、y2、y3、・・・・yn等と分ける:ここにおいてnは整数を示す)において、それぞれ、測定領域A2内のx方向の全画素の反射光の強度(輝度値)に関する値を積算し、その積算値を各時刻の各yの位置の輝度値として求めた。このようにして、各撮像時刻の画像毎に、測定領域A2のy方向の各位置ごとの輝度値(x方向の積算値)を求めた後に、そのy方向の各位置ごとの輝度値の値を利用して、各撮像時刻の画像毎に、y方向の一ライン分の輝度値の分布像(濃淡画像)を求めた。その後、得られたy方向の1ライン分の輝度値の濃淡画像を、時刻方向に、時刻順に連結して時間と輝度値の分布の関係が示された画像(図4を参照)を求めた。そして、かかる時間と輝度値の分布の関係が示された画像を用いて、上述の「温度分布の測定」において、温度上昇値を算出した領域(中央の矩形の領域)と同じ時刻、同じ長さの領域を、その画像における輝度値の算出領域として設定して、前記算出領域内の各画素の輝度値を求めて、これを平均化することにより、反射光L2の輝度値の平均値を算出し、「反射光の強度に関する値(輝度値)」として採用した。
次に、加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧の大きさを変更した以外は、上記方法と同様にして、その変更後の印加電圧における反射光L2の輝度値を求める工程を複数回行った。このような複数回の測定は、測定回ごとに電圧の大きさを順次0.1Vずつ下げて、電圧が上記測定の際に採用した大きさ(1回目の測定の際の大きさ:24V)から最終的に22.5Vになるまで順次行った。このようにして、各印加電圧の大きさごとに、反射光L2の輝度値の平均値(反射光の強度に関する値)をそれぞれ求めた。なお、各回の測定は、室温となるまで放置したサンプルをそれぞれ利用して行った。
次いで、ハロゲンランプに印加する電圧が24Vである場合に測定された反射光L2の輝度値を基準値Lとし、各回の測定により求められた反射光L2の輝度値L(nは測定の回数を示す自然数である)の変動率β(β=L/L)をそれぞれ求めた。なお、初回(1回目)のハロゲンランプに印加する電圧が24Vである場合に測定された反射光L2の輝度値はLであるため、初回(1回目)に測定された、反射光L2の輝度値Lnの変動率βは1となる。
<反射光の輝度値と入熱量との関係についての考察>
先ず、上述の「温度分布の測定」の印加電圧(加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧)の大きさごとの測定結果をそれぞれ利用して、印加電圧の大きさごとに、前記式(1)に基いて単位面積当たりの入熱量の概算値(概算入熱量Qm)を求めた。このような概算入熱量Qmの計算には、前記式(1)中のΔTとして、上述の「温度分布の測定」により得られたサンプルの温度上昇値(ΔT:測定値)を採用し、式(1)中のc、D及びwとしてそれぞれ既知の値(w:3.75mg/cm、c:0.0005291J/(mg・K)、D:0.002717J/(cm・K))を採用した。なお、かかる概算入熱量Qmは、式(1)のQをQmとした前記式(3)に対して、c、D及びwの値をそれぞれ導入して変形することにより得られる、下記計算式(X):
Qm=ΔT(0.0005291×3.75+0.002717) (X)
に基づいて求めることができる。
このようにして求められる各印加電圧の大きさごとのサンプルの概算入熱量Qmと、上述の「輝度値の測定」により求められた各印加電圧の大きさごとの輝度値Lの変動率βとの関係をプロットしたグラフを図14に示す。なお、図22には、概算入熱量Qmと変動率βとの関係を、最小二乗法を用いて線形近似することで求められる近似直線を併せて示す。このようにして線形近似して求められた図22に示す近似直線は、概算入熱量Qmと、輝度値Lの変動率βとを近似したものであって、変動率βの値により近似(補正)された入熱量Qに関する式と認識することができる。そのため、図22に示す式は、入熱量の近似値Qを求めるための下記式:
=a×β+a
として認識することができる。また、かかる近似式を、反射光L2の輝度値Lを用いた式に変形することにより、入熱量(近似値)Qと、輝度値Lとは、下記式(Y):
=a×(L/L)+a (Y)
で表される関係があることが分かる。なお、図22に示す近似直線においては、上記式中のaが0.0545であり、かつ、aが0.0288であった。
<温度上昇値と、反射光の輝度値と、目付量との関係の考察>
図22に示す結果から、反射光の輝度値の変動率β(=L/L)と、概算入熱量Qmとの関係が線形であることが明らかとなったため、サンプルの温度上昇値ΔTと、目付量wとの関係を示す式(1)中のQをQとして、上記式(Y)を利用して変形することで、下記関係式(I):
ΔT=(a×(L/L)+a)/(c×w+D) (I)
(式中のLは各回の測定で求められた反射光の輝度値であり、Lは加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧を24Vとした場合の測定(1回目の測定)で求められた反射光の輝度値であり、ΔTはサンプルの温度上昇値であり、a及びaは式(Y)で求める際に算出された係数であり、cは塗工膜の比熱(単位:J/(mg・K))を示し、wは測定する塗工膜の目付量(単位:mg/cm)を示し、Dはシート状部材の熱容量(単位:J/cm・K)を示す。)
を求めた。なお、前記関係式(I)中のaは0.0545であり、かつ、aが0.0288であり、Lの値は41.67である。このような関係式(I)において、式:a×(L/L)+aで表される部分は、測定される反射光L2の輝度値Lを利用して、入熱量の近似値(入熱量の補正値)Qを求める式であることから、上記関係式(I)は、測定される反射光L2の輝度値Lで、入熱量の補正値を求めて、かかる入熱量の補正値と、測定される温度上昇値ΔTとの関係から、目付量を求めるための式であることが分かる。
ここで、印加電圧(加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧)の大きさごとの測定結果をそれぞれ利用して、上記関係式(I)に、温度上昇値ΔTの測定値、反射光の輝度値Lの測定値、c:0.0005291J/(mg・K)、D:0.002717J/(cm・K)、L:41.67を導入して、目付量の計算値を求めた。なお、関係式(I)を反射光L2の変動率βを利用して表現すると、関係式(I)は下記式:
ΔT=(a×β+a)/(c×w+D)
に変形可能である。そして、関係式(I)を利用して入熱量を補正することにより求められた目付量の計算値(mg)と、既知の目付量の値(mg)との差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、反射光L2の変動率βとの関係を図23に示す。
また、前記式(1)中のwを、概算の目付量wmとして変形することで求められる下記式:
wm=(Q/ΔT-D)/cに対して、Qとして上述の<反射光の輝度値と入熱量との関係についての考察>の欄において求めた、電圧を24V(基準電圧)とした場合に求められた単位面積当たりの入熱量の概算値(基準電圧での概算入熱量Qm)を導入し、ΔTとして各印加電圧の測定ごとに求められた温度上昇値(測定値)を導入し、式(1)中のc、Dとして前記既知の値を導入して、概算の目付量wmを計算した。このようにして、式(1)をそのまま利用して、入熱量の補正をせずに目付量wmを算出した。このようにして、入熱量の補正をせずに算出された目付量の計算値と、既知の目付量の値の差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、反射光L2の変動率βとの関係も併せて図23に示す。
なお、図23においては、関係式(I)による算出結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正有」と示し、式(1)をそのまま利用して算出した結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正無」と示す。
このような図23に示す結果から、入熱量の補正がない場合には、反射光L2のの輝度値(輝度積算値の平均値)の変動率βの値が1から離れるほど目付量の誤差が大きくなる傾向があるのに対して、関係式(I)を利用して入熱量を補正することにより求められる目付量においては、誤差にそのような傾向がなくなっており、関係式(I)を利用することで、加熱手段の出力変動の影響を補正して、より精度の高い目付量の算出が可能となることが分かった。なお、関係式(I)で入熱量を補正した後にも、多少の誤差(ばらつき)が生じているが、そのような誤差は、計測時の電極シート近傍での空気の流れなど、計測環境に由来するものであると考えられる。このような結果から、関係式(I)によれば、入熱量の補正値を利用して、目付量を十分に精度高く測定できることが分かった。
[試験例2:試験例1とは別の形態の関係式(I)を求めるための試験について]
<計測用のサンプルの準備>
計測用のサンプルとして、シート状の銅箔(幅100mm、長さ約200mm)の表面上に、黒鉛の塗工膜(幅約75mm、長さ約200mm)が積層されたもの(電極シート:塗工シート)を準備した。なお、かかる計測用のサンプルは、塗工膜の目付量(既知目付量)は8.69mg/cmであった(ここにおいて、既知目付量は試験例1で用いた計測用のサンプルと同様の方法で測定した値である)。また、計測用のサンプル中の銅箔(シート状部材)の熱容量(D)としては、用いた銅箔の既知の値(D:0.002717J/(cm・K))を採用し、塗工膜の比熱(c)としては、別途測定した得られた値(c:0.000682J/(mg・K))を採用した。
<計測に用いた機器等について>
各サンプルの計測には、図12に示す計測部10と同様の構成の装置(以下、便宜上、単に「装置(B)」と称する)を利用した。なお、かかる装置(B)において、各構成要素(加熱手段12や光透過反射手段13等)としては、以下に記載のものを用いた。また、計測に際しては、計測部10に相当する部分の全体を暗室18内に配置する代わりに、光ファイバ12Bの一部および高出力レーザ発振器12Aを除く、計測部10に相当する部分の全体を800×1300×800mmのレーザ光遮蔽構造体の中に収めた。
・測定対象物11:上記計測用のサンプルを利用
・加熱手段12:高出力レーザ発振器(図12中の12A)と、高出力レーザ発振器に一端が接続された光ファイバ(図12中の12B)と、前記光ファイバの他端が接続されたライン光生成光学系(図12中の12C)とからなる装置(発振器本体:NLC-FDL-90/106.5-AC-TC-A(日星電機株式会社製)および光学ユニット:NLC-LU-FO-N8-915-TC-A(日星電機株式会社製)からなる装置)
・加熱手段12の電源:AC100V電源を利用
・光透過反射手段13:合成石英ガラス板(Edmund Optics社、型番:#36-987)
・反射光撮像用反射手段14:セラミック板からなる拡散反射板(ミスミ社のセラミックプレート(型番:CEAA-CRM)を利用)
・反射光撮像手段15:CMOSカメラ(FLIR社の商品(型番:BFS-U3-32S4M-C)を利用)
・温度測定手段16:赤外線サーモグラフィカメラ(アルゴ社製の商品(型番:PI450」)を利用)。
・搬送手段19:図20に示す搬送台(試験例1で利用したものと同じもの:図12中の19A)と、前記搬送台を固定した直動ステージ(図12中の19B)とからなる搬送用装置(これにより、図12に記載する移動方向(試験例1とは逆の方向)にサンプル(測定対象物11)を所定の速度で移動させた)。
なお、各サンプルの固定方法は試験例1で採用した方法と同様であり、サンプル(測定対象物11)の塗工膜の形成(積層)されている部位(箇所)の表面及びその塗工膜が積層されている部位の裏面(銅箔面)がともに空気に触れた状態となるように、サンプル(測定対象物11)を固定した(図21参照)。また、加熱手段12の光の出射部(ライン光生成光学系19Cの光の出射部)から、計測用サンプル(電極シート)11上の加熱位置までの光路長と、前記出射部から反射光撮像用反射手段14(セラミック板)の反射光入射位置までの光路長は、ほぼ同じ長さになるように(前記出射部から反射光撮像用反射手段14に到達するまでの光の光路長Bの長さが、前記出射部から前記測定対象物11に到達するまでの光の光路長Aの0.8倍~1.2倍の長さになるように)配置した。
さらに、装置(B)においても、試験例1で採用した方法と同様に、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動する方向に垂直な方向(サンプル(電極シート)の幅方向)が、加熱手段12から照射されるライン光の長手方向となるように、搬送台20を配置させた。また、可視光画像の取得方法、温度分布画像の取得方法、反射光の強度に関する値(輝度値)の計算方法、温度上昇値の計算方法は、試験例1で採用した方法と同様とした(試験例1と同様に、図示を省略した2台のコンピュータをそれぞれ用いて、反射光の画像と、温度分布画像とから、それぞれ、反射光の強度に関する値(輝度値)と、温度上昇値とを算出した)。
<温度分布の測定>
先ず、上記装置(B)を利用し、加熱手段12のレーザ発振器12Aに印加する電圧を10.0Vに設定し、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動速度を1000mm/s(一定)として移動させながら、加熱手段12から前記サンプルの塗工膜の表面上にライン光(レーザ光)を照射した。このような光照射による加熱と、前記サンプルの移動を継続的に行いながら、赤外線サーモグラフィカメラ(温度測定手段16)により、前記サンプルの表面上の測定領域A3の温度分布像を3.6秒間取得した(なお、レーザの照射時間は、測定の継続時間のうちの0.2秒とした)。
ここで、図24に、目付量8.69mg/cmの塗工膜を備える前記サンプルの特定の時刻の温度分布像(サーモグラフィ)を示す。なお、図24に示すように、サンプル(電極シート)は、図の右側から左側に向かって移動している。図24中の白色の2つの矢印(→及び←)が指す方向が重なった位置に、加熱手段12からのライン光(レーザ光)が照射されており、かかる位置においてサンプルが加熱されている。また、図24中、ライン光が照射されていない部分(暗い部分)は基本的に、ほぼ室温(25℃)と同等の部分である。
そして、xhの位置を上記移動速度(1000mm/s(一定))でライン光Lの照射位置A1から0.020秒移動した位置となるように設定し、かつ、xrの位置をxrの位置とxhの位置の間の距離が上記移動速度(1000mm/s(一定))で0.027秒移動した距離となるように設定して、図24に示す画像上の加熱後のxhで示す位置の温度分布からxrで示す位置の温度分布を差し引き、加熱時間0.2秒分の温度上昇値(温度差)ΔTの分布を求めて、温度上昇値(温度差)ΔTと時間の関係(温度分布像:温度上昇値の二次元分布)を示す画像を得た(ここにおいて、図24中のxrの位置が加熱前のサンプルの幅方向(y方向)の温度分布を測定する位置であり、xhの位置が加熱後のサンプルの幅方向(y方向)の温度分布を測定する位置である)。なお、このような画像を求める方法は、装置(B)を利用して得られたデータを利用する以外は、基本的に、試験例1で説明した方法と同様とした。得られた温度上昇値の二次元分布の画像(1回の測定の全時間の測定結果のうちの一部)を図25に示す。なお、図25に示す二次元分布のx軸方向は撮像時刻であり、その時刻に照射位置を通過した電極シート上のx軸方向の位置に対応する。なお、本測定においては、測定時間内においてレーザ光が照射されていた時間が0.2秒とごく短かったため、サンプルのx軸方向のごく一部のみが加熱され、図25に示すように明るい部分(温度が上昇した部分)のx軸方向の幅(時間軸の幅)が狭い分布が得られた。
次いで、得られた温度分布像(温度上昇値の二次元分布)の中央部の矩形の領域(縦:y方向に中央から±0.88mm(全長:1.76mm)の長さ、横:特定の時刻から時間0.15秒分の長さ(サンプル上での150mmに相当)の長方形状の領域:図25に示す温度分布像の中央部の領域)を温度上昇値の算出領域に設定し、温度上昇値の算出領域の全画素ごとの温度上昇値をそれぞれ求めて、それを平均化することにより、サンプルの温度上昇値ΔTを求めた。なお、このような加熱手段12に印加する電圧の大きさを10.0Vとした場合の温度上昇値の測定は、全部で10回繰り返し行った。このような10回の測定に際して、各回の測定は、直前の測定から時間が60秒以上経過してから実行した。このようにして、各回の測定は、サンプルをそれぞれ室温となるまで放置した後に行った。
次に、加熱手段12に印加する電圧の大きさを9.5Vに変更した以外は、上記方法と同様にして、印加電圧を9.5Vとした場合の温度上昇値の測定を全部で10回行った。次いで、加熱手段12に印加する電圧の大きさを9.0Vに変更した以外は、上記方法と同様にして、印加電圧を9.0Vとした場合の温度上昇値の測定を全部で10回行った。このように、印加電圧10.0Vの測定を10回、印加電圧9.5Vの測定を10回、印加電圧9.0Vの測定を10回(計30回)それぞれ行い、全測定回ごとの温度上昇値ΔTをそれぞれ求めた。
<輝度値の測定>
先ず、上記装置(B)を利用し、加熱手段12のレーザ発振器12Aに印加する電圧を10.0Vに設定し、計測用のサンプル(測定対象物11)の移動速度を1000mm/s(一定)として移動させながら、加熱手段12からサンプルの塗工膜の表面上にライン光を照射した。そして、このような光照射による加熱と、サンプルの移動を継続的に行いながら、反射光撮像用反射手段14(セラミック板)に映る反射光L2の画像(測定領域A2の可視光画像)を、CMOSカメラ(反射光強度測定手段)を用いて、0.0125秒間隔で3.6秒間連続的に撮像した。特定の時刻の測定領域A2の反射光の画像を図26に示す。なお、かかる測定は、上述の「温度分布の測定」と、測定時刻と測定時間の長さを併せて同時に行った。そして、試験例1と同様に、図2~4を参照しながら説明した方法と同様の方法を採用して、CMOSカメラを利用して得られた測定領域A2の画像(反射光の画像)を用いて、反射光L2の輝度値の平均値を算出し、求められた値を「反射光の強度に関する値(輝度値)」とした。なお、このような反射光L2の輝度値の平均値(反射光の強度に関する値)の算出に際しては、先ず、カメラの撮像により得られた各時刻の測定領域A2の画像毎に、y軸方向(ライン状の反射光の幅方向:方向については図26を参照)の画素ごとのyの位置(例えば、位置をy1、y2、y3、・・・・yn等と分ける:ここにおいてnは整数を示す)において、それぞれ、測定領域A2内のx方向の全画素の反射光の強度(輝度値)に関する値を積算し、その積算値を各時刻の各yの位置の輝度値として求めた。このようにして、各撮像時刻の画像毎に、測定領域A2のy方向の各位置ごとの輝度値(x方向の積算値)を求めた後に、そのy方向の各位置ごとの輝度値の値を利用して、各撮像時刻の画像毎に、y方向の一ライン分の輝度値の分布像(濃淡画像)を求めた。その後、得られたy方向の1ライン分の輝度値の濃淡画像を、時刻方向に、時刻順に連結して時間と輝度値の分布の関係が示された画像を求めた。得られた画像を図27に示す。
このような図27に示す時間と輝度値の分布の関係が示された画像を用いて、上述の「温度分布の測定」において、温度上昇値を算出した領域(中央の矩形の領域)と同じ時刻、同じ長さの領域を、その画像における輝度値の算出領域として設定して、前記算出領域内の各画素の輝度値を求めて、これを平均化することにより、反射光L2の輝度値の平均値を算出し、「反射光の強度に関する値(輝度値)」として採用した。なお、このような加熱手段12に印加する電圧の大きさを10.0Vとした場合の反射光の強度に関する値(輝度値)の測定は、全部で10回繰り返し行った。
次に、加熱手段12に印加する電圧の大きさを9.5Vに変更した以外は、上記方法と同様にして、印加電圧を9.5Vとした場合の温度上昇値の測定を全部で10回行った。次いで、加熱手段12に印加する電圧の大きさを9.0Vに変更した以外は、上記方法と同様にして、印加電圧を9.0Vとした場合の温度上昇値の測定を全部で10回行った。このようにして、印加電圧10.0Vの測定を10回、印加電圧9.5Vの測定を10回、印加電圧9.0Vの測定を10回(計30回)それぞれ行い、全測定回において反射光の強度に関する値(輝度値)をそれぞれ求めた。
<輝度値の変動率βの算出>
上述の輝度値の測定結果を利用して、全30回の測定結果のうち、印加電圧10.0Vの全10回の測定の反射光L2の輝度値(10回分)を利用して、印加電圧10.0Vの全10回の測定の反射光L2の輝度値(反射光の強度に関する値)の平均値Lを求めた。次いで、かかる平均値Lを基準値として、各測定回ごとに求められた反射光L2の輝度値L(nは測定の回数を示す自然数である)を利用して、式(B):β=L/Lに基づいて、各測定回ごとに反射光L2の輝度値の変動率βをそれぞれ求めた。
<概算入熱量の変動率αの算出>
上述の温度分布の測定結果を利用して、全30回の各測定回ごとに概算入熱量Qmを算出し、Qmの変動率αを算出した。すなわち、先ず、測定式(1)のQをQmと擬勢して求められる前記式(3)を利用し、前記式(3)中のc、D及びwとしてそれぞれ既知の値(w:8.69mg/cm、c:0.000682J/(mg・K)、D:0.002717J/(cm・K))を導入して、概算入熱量Qmを求めるための下記計算式(X’):
Qm=ΔT(0.000682×8.69+0.002717) (X’)
を求めた。そして、各回の測定により求められた温度上昇値ΔTを、前記式(X’)中のΔTとして導入することにより、各測定回ごとに概算入熱量Qmをそれぞれ求めた。次に、このようにして求められた各測定回ごとの概算入熱量Qmの値のうち、印加電圧10.0Vの全10回の測定の概算入熱量Qm(10回分)を利用して、印加電圧10.0Vの全10回の測定の概算入熱量Qmの平均値Qmを求めた。そして、かかる平均値Qmを基準値として、式(C):α=Qm/Qmに基づいて、各測定回ごとに、概算入熱量の変動率をそれぞれ求めた。
<反射光の輝度値と入熱量との関係についての考察>
上述のようにして得られた、各測定ごとのサンプルの概算入熱量Qmの変動率αと、各測定ごとの輝度値の変動率βとの関係をプロットしたグラフを図28に示す。なお、図28には、概算入熱量Qmの変動率αと輝度値の変動率βとの関係を、最小二乗法を用いて線形近似することで求められる近似直線を併せて示す。このようにして線形近似して求められた図28に示す近似直線は、概算入熱量Qmの変動率αと輝度値の変動率βとを近似したものであり、かかる近似式は、下記式(D):
α=a×β+a (D)
として認識することができる。ここで、αが式:α=Qm/Qmにより求められる値であることから、かかる式を変形することで、式:
Qm/Qm=a×β+a
を求めることができ、これを更に変形して、式:
Qm=(a×β+a)Qm
を求めることができる。このようなQmに関する式は、輝度値の変動率βの値により近似された入熱量Qを求めるための式と認識できることから、上記式中の概算入熱量Qmを入熱量の近似値Qと擬制して、下記式(E):
=(a×β+a)×Qm (E)
を求めることができる。そして、かかる式(E)を、反射光L2の輝度値Lを用いた式に変形することにより、入熱量(近似値)Qと、輝度値Lとは、下記式(Y’):
=(a×(L/L)+a)×Qm (Y’)
で表される関係があることが分かる。なお、図28に示す近似直線においては、上記式中のaが1.1043であり、かつ、aが-0.1041であった。
<温度上昇値と、反射光の輝度値と、目付量との関係の考察>
図28に示す結果から、反射光の輝度値の変動率β(=L/L)と、概算入熱量Qmとの関係が線形であることが明らかとなったため、サンプルの温度上昇値ΔTと、目付量wとの関係を示す式(1)中のQをQとして、上記式(Y’)を利用して変形することで、下記関係式(I):
ΔT=[(a×(L/L)+a)×Qm]/(c×w+D) (I)
(式中のLは各回の測定で求められた反射光の輝度値であり、Lは印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた反射光の輝度値の平均値であり、Qは印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた概算入熱量Qmの平均値であり、ΔTはサンプルの温度上昇値であり、a及びaは式(D)を求める際に算出された係数であり、cは塗工膜の比熱(単位:J/(mg・K))を示し、wは測定する塗工膜の目付量(単位:mg/cm)を示し、Dはシート状部材の熱容量(単位:J/cm・K)を示す。)
を求めた。なお、前記関係式(I)中aは1.1043であり、かつ、aは-0.1041であり、L及びQmは上述の測定より求められる値(定数)となる。そして、このような関係式(I)において、式:(a×(L/L)+a)×Qmで表される部分は、測定される反射光L2の輝度値Lを利用して、入熱量の近似値(入熱量の補正値)Qを求める式となることから、上記関係式(I)は、測定される反射光L2の輝度値Lで、入熱量の補正値を求めて、かかる入熱量の補正値と、測定される温度上昇値ΔTとの関係から、目付量を求めるための式であることが分かる。
ここで、印加電圧(加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧)の大きさごとの測定結果をそれぞれ利用して、上記関係式(I)に、温度上昇値ΔTの測定値、反射光の輝度値Lの測定値、基準電圧の測定における輝度値の平均値L、基準電圧の測定における概算入熱量Qmの平均値Qm、c:0.000682J/(mg・K)、D:0.002717J/(cm・K)を導入して、目付量の計算値を求めた。なお、関係式(I)を反射光L2の変動率βを利用して表現すると、関係式(I)は下記式:
ΔT=[(a×β+a)×Qm]/(c×w+D)
に変形可能である。そして、関係式(I)を利用して入熱量を補正することにより求められた目付量の計算値(mg)と、既知の目付量の値(mg)との差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、反射光L2の変動率βとの関係を図29に示す。
また、前記式(1)中のwを、概算の目付量wmとして変形することで求められる下記式:
wm=(Q/ΔT-D)/c
に対して、Qとして印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた概算入熱量の平均値Qmを導入し、ΔTとして各印加電圧の測定ごとに求められた温度上昇値(測定値)を導入し、式(1)中のc、Dとして前記既知の値を導入して、概算の目付量wmを計算した。このようにして、式(1)をそのまま利用して、入熱量の補正をせずに目付量wmを算出した。このようにして、入熱量の補正をせずに算出された各測定回ごとの結果を利用して求められた目付量の計算値と、既知の目付量の値の差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、反射光L2の変動率βとの関係も併せて図29に示す。
なお、図29においては、関係式(I)による算出結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正有」と示し、式(1)をそのまま利用して算出した結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正無」と示す。
このような図29に示す結果から、入熱量の補正がない場合には、反射光L2の輝度値(輝度積算値の平均値)の変動率βの値が1から離れるほど目付量の誤差が大きくなる傾向があるのに対して、関係式(I)を利用して入熱量を補正することにより求められる目付量においては、誤差にそのような傾向がなくなっており、関係式(I)を利用することで、加熱手段の出力変動の影響を補正して、より精度の高い目付量の算出が可能となることが分かった。なお、関係式(I)で入熱量を補正した後にも、多少の誤差(ばらつき)が生じているが、そのような誤差は、計測時の電極シート近傍での空気の流れなど、計測環境に由来するものであると考えられる。このような結果から、関係式(I)によれば、入熱量の補正値を利用して、目付量を十分に精度高く測定できることが分かった。
[試験例3:幅方向の複数の測定箇所において関係式(I)を求めるための試験]
試験例2で用いた計測用のサンプルについて、試験例2で行った温度分布及び輝度値の分布の測定の結果(温度上昇値(温度差)ΔTと時間の関係が示された温度上昇値の二次元分布(図25参照)と、時間と輝度値の分布の関係が示された輝度値の二次元分布(図27参照))を利用して、複数の測定箇所について、以下に示す検討を行って、測定箇所ごとの目付量を算出する試験を行った。
<幅方向への照射光強度の変動度合いについての検討>
以下、加熱手段12からの光の照射領域内での幅方向(サンプルの移動方向に対して垂直な方向:図24~図27に記載のy方向と同じ方向)の位置の違いによる照射光強度の変動の度合いについて確認する。ここで、先ず、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)を10.0Vとした測定で得られた、図25に示す温度上昇値の二次元分布の画像と、図27に示す反射光の輝度値(輝度積算値)の二次元分布の画像を利用して、y軸方向の位置及び測定内容について説明する。試験例3においては、先ず、図25および図27の各図中に記載されている中央部の矩形の領域(縦:y方向に中央から±0.88mmの長さ、横:特定の時刻から時間0.15秒分の長さ(サンプル上での150mmに相当)の長方形状の領域:試験例2において温度上昇値ΔTおよび反射光の輝度値Lを測定した領域:図25及び図27中の黒枠)の中心のy軸方向の位置をy=0の位置として設定して、y軸方向に±20mmの範囲に測定位置を移動させて、それぞれの位置において温度上昇値ΔT、輝度値Lnを求めて、y=0の位置の温度上昇値ΔT、輝度値Lnを基準として、温度上昇値の相対強度のグラフと輝度値の相対強度のグラフを求めた。得られたグラフを図30に示す。なお、図30に示すように、温度上昇値の相対強度と反射光輝度値の相対強度は、相対強度を求めた幅方向のいずれの領域(yの中心から±20mmの範囲内の領域)でおおむね似たような分布となっていることが分かった。
次に、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)を9.0Vとした測定の任意の一回分の試験結果を利用し、図30において相対強度を求めた幅方向の同じ位置において、それぞれ温度上昇値ΔT、輝度値Lnを求めて、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)が10.0Vとした測定で得られたy=0の位置温度上昇値ΔT、輝度値Lnを基準として、温度上昇値の相対強度のグラフと輝度値の相対強度のグラフを求めた。得られたグラフを図31に示す。図30及び図31に示すグラフから、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)の値を変更しても温度上昇値の相対強度と反射光輝度値の相対強度はおおむね似たような分布となることが分かった。
ここで、図30及び図31に示すグラフを対比すると、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)が9.0Vの場合には10.0Vとした場合と比較して全体的に強度が下がる傾向にあるように見て取れるため、より詳細に検討するため、両者の相対強度の比のグラフを求めた。得られた相対強度の比のグラフを図32に示す。このような検討の結果、図32に示すように、温度上昇値と反射光輝度値の相対強度の低下度合いは一様ではなく、y=0付近では加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)を9.0Vとした測定結果から求められた温度上昇値と反射光輝度値の相対強度が、出力(電圧)を10.0Vとした測定結果から求められた温度上昇値と反射光輝度値の相対強度に対して94%程度であるのに対し、y=±10mm付近では、加熱手段12への印加電圧の出力(電圧)を9.0Vとした測定結果から求められた温度上昇値と反射光輝度値の相対強度が、出力(電圧)を10.0Vとした測定結果から求められた温度上昇値と反射光輝度値の相対強度に対して90%程度となっていることが分かる。このように照射領域内の位置により、照射光強度の変動の度合が異なる場合には、幅方向(y方向)においてyの位置が異なる複数の位置で目付量を正しく算出するために、それぞれの位置で入熱量の補正を実施することが望ましいことが分かる。
<幅方向の複数の測定位置の温度上昇値と反射光の輝度値と目付量との関係の考察>
目付量の算出位置(測定位置)として、幅方向(y方向)のy位置が異なる5箇所(時間は同じ時間を採用)の領域を設定し、各測定位置(各測定領域)で温度上昇値ΔT及び反射光輝度値Lnをそれぞれ測定(算出)した。なお、かかる測定(算出)に際しては、上述の試験例2の各測定回ごとに得られた温度上昇値の分布及び輝度値の分布のデータを利用した。また、測定位置は、上述の「幅方向への照射光強度の変動度合いについての検討」を行う際に設定したy=0の位置を基準として、Y=0からの距離(yの位置)が-10mm、-5mm、0mm、5mm、10mmとなる5箇所の位置に設定した。なお、測定領域は、それぞれ、各測定位置のyの位置を中心として、縦:y方向に±0.88mmの長さ、横:特定の時刻から時間0.15秒分の長さ(サンプル上での150mmに相当)の長方形状の領域とした。
そして、先ず、y=-10mmの位置を1番目の測定位置に設定し、全測定回分のデータから、測定回ごとの温度上昇値ΔT(y=-10)および反射光の輝度値L(y=-10)を算出した(なお、測定位置を変更した以外は試験例2と同様の方法で温度上昇値等を算出した)。次に、y=-10mmの測定位置において得られた温度上昇値ΔT(y=-10)の値を用いて、試験例2で求めた上記式(X’)を利用して、y=-10mmの測定位置での測定回ごとの概算入熱量Qm(y=-10)をそれぞれ算出した。また、y=-10mmの測定位置での測定のうち、加熱手段12への印加電圧を10.0Vとした場合の全測定回分(10回分)の概算入熱量Qm(y=-10)の平均値と、加熱手段12への印加電圧を10.0Vとした場合の全測定回分(10回分)の反射光の輝度値L(y=-10)の平均値を、それぞれQm(y=-10)、L(y=-10)として求め、これらを基準値として、各回の反射光輝度値Ln(y=-10)の変動率β、各回の概算入熱量Qm(y=-10)の変動率αをそれぞれ求めた。なお、y=-10mmの測定位置での反射光輝度値Ln(y=-10)の変動率βは、各測定回ごとの結果に基づいて、式(B’):β=L(y=-10)/L(y=-10)を計算することにより求め、y=-10mmの測定位置での概算入熱量Qm(y=-10)の変動率αは、各測定回ごとの結果に基づいて、式(C’):α=Qm(y=-10)/Qm(y=-10)を計算することにより求めた。次いで、測定位置を、y=-5mmの位置(2番目の測定位置)、y=0の位置(3番目の測定位置)、y=5mmの位置(4番目の測定位置)、y=10mmの位置(最後の測定位置)の順に、変更した以外は、同様の手順を繰り返し、各測定位置(y=-5、0、5、10)ごとに、概算入熱量Qmの変動率α(y)と、反射光輝度値Lnの変動率β(y)とを求めた。このようにしてyの位置がy=-10mm、-5mm、0mm、5mm、10mmとなる各測定位置において求められた全ての変動率α(y)と全ての変動率β(y)の関係(yは測定位置のyの値を示し、それぞれの位置に応じてy=-10(mm)、-5(mm)、0(mm)、5(mm)、10(mm)のいずれかとなる)をプロットして得られるグラフを図33に示す。なお、図33中、yの位置(測定位置)ごとにプロット点の記号を変えている。また、図33には、最小二乗法を用いて線形近似することで求められる近似直線も併せて示す(なお、以下において、Qm(y)、Qm(y)、α(y)β(y)、L(y)、L(y)、ΔT(y)等の記号において括弧書のyはいずれも測定位置のyの値を示し、それぞれの位置に応じてy=-10(mm)、-5(mm)、0(mm)、5(mm)、10(mm)のいずれかを示す)。
このように線形近似して求められた図33に示す近似直線は、yの位置に応じてそれぞれ求められた概算入熱量Qm(y)の変動率α(y)と輝度値の変動率β(y)とを近似したものであり、かかる近似式は、下記式(D’):
α(y)=a×β(y)+a (D’)
として認識することができる。ここで、α(y)が式:α(y)=Qm(y)/Qm(y)により求められる値であることから、かかる式を変形することで、幅方向(y方向)
の測定位置ごとに、式:
Qm(y)/Qm(y)=a×β(y)+a
を求めることができ、これを更に変形して、式:
Qm(y)=(a×β(y)+a)×Qm(y)
を求めることができる。そして、このようなQm(y)に関する式は、輝度値の変動率β(y)の値により近似された入熱量Q(y)を求めるための式であると認識できることから、上記式中の概算入熱量Qm(y)を入熱量の近似値Q(y)と擬制して、下記式(E’’):
(y)=(a×β+a)×Qm(y) (E’’)
を求めることができる。そして、かかる式(E’’)を、測定位置yごとの反射光L2の輝度値Lを用いた式に変形することにより、入熱量(近似値)Q(y)と、輝度値L(y)とは、下記式(Y’’):
(y)=(a×(L(y)/L(y))+a)×Qm(y) (Y’’)
で表される関係にあることが分かる。なお、図33に示す近似直線においては、上記式中のaが1.1106であり、かつ、aが-0.1106であった。なお、図33においては、どのプロット点もほぼ同じ直線(近似直線)上に乗っていることから、装置(B)を用い、試験例2で利用したサンプルと同じ材料の測定対象物に対して測定を行う場合には、近似式の係数はyの位置によらず一定の値を使えることが分かった(なお、幅方向の位置(yの位置)ごとにプロット点が異なる直線に乗ると判断できるような場合は、それぞれのyの位置(各測定位置)ごとに別々の近似式の係数を求め、以降の工程でそれを使ってもよい)。
次に、図33に示す結果から、測定位置ごとに反射光の輝度値の変動率β(y)と、概算入熱量Qm(y)との関係が線形であることが明らかとなったため、サンプルの温度上昇値ΔTと、目付量wとの関係を示す式(1)中のQをQ(y)として、上記式(Y’’)を利用して変形することで、下記関係式(I):
ΔT(y)=[(a×(L(y)/L(y))+a)×Qm(y)]/(c×w+D) (I)
(式中のL(y)は特定の測地位置yにおいて各回の測定で求められた反射光の輝度値であり、L(y)は特定の測地位置yにおいて印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた反射光の輝度値の平均値であり、Q(y)は特定の測地位置yにおいて印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた概算入熱量Qmの平均値であり、ΔT(y)は特定の測地位置yにおけるサンプルの温度上昇値であり、a及びaは式(D’)を求める際に算出された係数であり、cは塗工膜の比熱(単位:J/(mg・K))を示し、wは測定する塗工膜の目付量(単位:mg/cm)を示し、Dはシート状部材の熱容量(単位:J/cm・K)を示す。)
を求めた。なお、前記関係式(I)中、aが1.1106であり、aが-0.1106であり、L(y)及びQm(y)は上述の測定より求められる値(定数)となる。そして、このような関係式(I)において、式:(a×(L(y)/L(y))+a)×Qm(y)で表される部分は、特定の測定位置yにおいて測定される反射光L2の輝度値L(y)を利用して、特定の測定位置yへの入熱量の近似値(入熱量の補正値)Q(y)を求める式となることから、上記関係式(I)は、特定の測定位置yについて測定される反射光L2の輝度値L(y)で、特定の測定位置yへの入熱量の補正値を求めて、かかる入熱量の補正値と、測定される温度上昇値ΔTとの関係から、特定の測定位置yにおける目付量を求めるための式であることが分かる。
ここで、各測定位置の印加電圧(加熱手段12のハロゲンランプに印加する電圧)の大きさごとの全測定結果をそれぞれ利用して、測定位置ごとに上記関係式(I)に、温度上昇値ΔT(y)の測定値、反射光の輝度値L(y)の測定値、基準電圧の測定における輝度値の平均値L(y)、基準電圧の測定における概算入熱量の平均値Qm(y)、c:0.000682J/(mg・K)、D:0.002717J/(cm・K)を導入して、目付量の計算値を求めた。そして、関係式(I)を利用して入熱量を補正することにより求められた目付量の計算値(mg)と、既知の目付量の値(mg)との差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、測定位置(y軸方向の位置:幅方向の位置)との関係を図34に示す。
また、前記式(1)中のwを、概算の目付量wmとして変形することで求められる下記式:
wm=(Q/ΔT-D)/c
に対して、Qとして、測定位置ごとに印加電圧10.0V(基準電圧)の全10回の測定で求められた概算入熱量の平均値Qm(y)を導入し、ΔTとして、測定位置ごとに、測定回ごとに求められた温度上昇値(測定値)ΔT(y)を導入し、式(1)中のc、Dとして前記既知の値を導入して、概算の目付量wmを計算した。このようにして、式(1)をそのまま利用して、入熱量の補正をせずに目付量wmを算出した。このようにして、入熱量の補正をせずに算出された各測定回ごとの結果を利用して求められた目付量の計算値と、既知の目付量の値の差を求めて、既知の目付量の値の大きさに対する前記差の大きさの割合を算出誤差(%)として求め、かかる算出誤差(%)と、測定位置との関係も併せて図34に示す。
なお、図34においては、関係式(I)による算出結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正有」と示し、式(1)をそのまま利用して算出した結果を利用して求められる算出誤差(%)を「補正無」と示す。
このような図34に示す結果から、幅方向(y軸方向)の位置により照射光強度の変動率が異なっていたため、式(1)をそのまま利用して算出した目付量(補正無)の算出誤差の大きさは、y軸方向の位置により異なるものとなっているのに対して、上述のように、測定位置ごとの関係式(I)を利用して、入熱量を補正して目付量(補正有)を求めた場合には、目付量の算出誤差の大きさはどの位置でも同程度となっており、しかもその誤差が十分に小さなものであることが分かった。このような結果から、測定位置に応じた関係式(I)を求めることで、塗工膜の目付量をより精度よく測定でき、目付量の分布も測定可能となることが分かった。
<その他の考察>
図26に示すCMOSカメラにより撮像された画像には、反射光撮像用反射手段14(セラミック板)上の微小な凹凸に起因するスペックルパターンが確認できる。このようなスペックルパターンは、レーザのような位相がそろった光が微小な凹凸のある拡散面に照射された際に、前記凹凸の部分で散乱された光が複雑に干渉することにより発生する、ランダムなパターンである。ここで、各光学素子が固定されていて光源からの照射光の位相の状態が変化しなければ、測定されるスペックルパターンは変化しないため、カメラ画像の反射光強度に関する値(輝度積算値等)は常に同じ1次元分布を示す。なお、輝度をx軸方向に積算してもスペックルパターンの影響は残るため、輝度積算値の一次元分布は滑らかにならず、その分布が照射時間内に変化しないため、図27に示した輝度値(輝度積算値)の二次元分布にはx軸(時間軸)に沿ったスジ状のムラが現れている。
ここで、検討のために、図30に示したグラフを横方向に拡大したものを図34に改めて示す。図34に示すように、温度上昇値および反射光輝度値の分布は上下端以外では大まかな分布はほぼ一致しているが、細かく見ると反射光輝度値の分布は温度上昇値に比べてでこぼこ(ガタガタ)していることが見て取れる。このような分布のがたつきがスペックルパターンの影響であることは明らかである。そのため、スペックルパターンが確認されうような場合には、その分だけ入熱量と反射光輝度値の分布に乖離が生じて、それが変動補正の精度に若干影響を及ぼすことも考えられる。このようなスペックルパターンの影響を減少させて、更に高い精度で目付量を算出するといった観点からは、例えば、反射光撮像用反射手段14(セラミック板)を上下左右に揺動させながら測定を行う方法を採用することが考えられる。このような測定方法を採用して、反射光撮像用反射手段14(セラミック板)を上下左右に揺動させる場合、撮像ごとにスペックルパターンが変化するため、輝度積算値の二次元分布に空間的な平均処理を適用した際に、幅方向と移動方向の2軸で平均の効果が得られ、スペックルパターンの影響を低減でき、変動補正の精度をより向上させることができると考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、非破壊で塗工膜の目付量をより高い精度で測定可能な目付量の計測装置及び目付量の計測方法を提供することが可能となる。このように、本発明の目付量の計測方法は、非破壊の測定でありながら、シート状部材に塗工した塗工膜の目付量をより高い精度で測定することが可能な方法であることから、工業生産された塗工シート(電極シート等)の塗工膜の目付量を検査するための方法(例えば、インライン検査をするための方法)等として有用である。
10…計測部、11…測定対象物、12…加熱手段、12A…高出力レーザ発振器、12B…光ファイバ、12C…ライン光学系、13…光透過反射手段、14…光撮像用反射手段、15…反射光撮像手段、16…温度測定手段、17…搬送ローラ、18…暗室、19…搬送手段、19Aおよび20…搬送台、19B…搬送ステージ、L1…加熱手段から出射された光、L2…光透過反射手段1を反射した光、L3…測定対象物に照射される光、A1…加熱領域、A2…反射光撮像手段の撮像領域、A3…温度測定手段の測定領域。

Claims (6)

  1. シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなる測定対象物の前記塗工膜の表面の少なくとも一部に光を照射することにより、前記測定対象物を加熱するための加熱手段と、
    前記加熱手段から出射される光の光路上に配置され、前記光の一部を反射させつつ残りを透過させるための光透過反射手段と、
    前記光透過反射手段により反射させた反射光を照射し、前記反射光を映すための反射光撮像用反射手段と、
    前記反射光撮像用反射手段に映る前記反射光を撮像するための反射光撮像手段と、
    前記反射光撮像手段により撮像された前記反射光の画像から、前記反射光の強度に関する値を算出するための反射光強度算出手段と、
    加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求めるための温度測定手段と、
    前記反射光強度算出手段により算出された前記反射光の強度に関する値に基いて、前記測定対象物に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と前記測定対象物の温度上昇値との関係から前記塗工膜の目付量を算出する目付量算出手段と、
    を備えることを特徴とする目付量の計測装置。
  2. 前記加熱手段の光の出射部から前記測定対象物に到達するまでの光の光路長Aと、前記加熱手段の光の出射部から前記反射光撮像用反射手段に到達するまでの光の光路長Bとが、前記光路長Bの長さが前記光路長Aの0.8倍~1.2倍の長さとなるという関係を満たすように、前記反射光撮像用反射手段が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の目付量の計測装置。
  3. 前記反射光の強度に関する値が前記反射光の輝度値であることを特徴とする請求項1又は2に記載の目付量の計測装置。
  4. 前記目付量算出手段が、前記測定対象物の幅方向の複数の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する手段であることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の目付量の計測装置。
  5. 光を照射することにより加熱する加熱手段を用いて、シート状部材と前記シート状部材の表面上に塗工された塗工膜とからなる測定対象物の前記塗工膜の表面の少なくとも一部に、前記加熱手段から出射させた光を照射して前記測定対象物を加熱する工程と、
    前記測定対象物に到達する前に、前記加熱手段から出射させた光の一部を反射させて、反射光の画像を取得し、前記画像から反射光の強度に関する値を算出する工程と、
    加熱前後の前記測定対象物の温度上昇値を求める工程と、
    前記反射光の強度に関する値に基いて、前記測定対象物に対する入熱量の値を補正し、補正後の入熱量の値と前記測定対象物の温度上昇値との関係から前記塗工膜の目付量を算出する工程と、
    を含むことを特徴とする目付量の計測方法。
  6. 前記目付量を算出する工程が、前記測定対象物の幅方向の複数の測定位置においてそれぞれ前記反射光の強度に関する値に基いて入熱量の値を補正し、各測定位置ごとに補正後の入熱量の値と温度上昇値との関係から塗工膜の目付量を算出する工程であることを特徴とする請求項5に記載の目付量の計測方法。
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