JP2022149949A - 電極、水電解用陽極、電解セル、及び水素の製造方法 - Google Patents

電極、水電解用陽極、電解セル、及び水素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、酸素発生の過電圧が低く、高温アルカリ耐久性の高い電極、水電解用の陽極、該水電解用陽極を用いた複極式電解セル、及び該水電解用陽極を用いた水素の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】基材上に、LaNixMyO3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有し、LaNixMyO3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることを特徴とする、電極。【選択図】なし

Description

本発明は、電極、水電解用陽極、該水電解用陽極を用いた複極式電解セル、及び該水電解用陽極を用いた水素の製造方法に関する。
近年、COによる地球温暖化、化石燃料の埋蔵量の減少等の問題を解決するためのクリーンエネルギーとして、再生可能エネルギーを利用して製造した水素が注目されている。再生可能エネルギーを利用した水素製造においては、従来の化石燃料の改質による水素製造に匹敵する安価なコストが求められている。そのため、再生可能エネルギーを利用した水素製造には、従来の技術では達成できなかった水準の高いエネルギー効率と安価な設備が求められる。
上記の要求に応え得る水素の製造方法として、水の電解分解(水電解)が挙げられる。例えば、風力又は太陽光等の自然エネルギーによる発電を利用した水電解により、水素を製造し、貯蓄あるいは運搬する構想がいくつも提案されている。
水の電気分解では、水に電流を流すことにより陽極において酸素が発生し、陰極において水素が発生する。電解における主なエネルギー損失の要因として、陽極及び陰極の過電圧が挙げられる。この過電圧を低減することで、効率よく水素を製造することが可能になる。特に陽極の過電圧は陰極の過電圧に比べて高く、陽極の過電圧を下げるための研究開発が広く進められている。
ペロブスカイト型構造を有する酸化物の中には、高い酸素発生能を有する材料が知られており、水電解用陽極材料として着目されている(非特許文献1)。ペロブスカイト型構造を有する酸化物を、アルカリ水電解用陽極として用いるためには、導電性基材の表面上に酸化物層を形成する方法がある。例えば特許文献1には、ニッケル多孔基材の表面上に、結晶成分におけるペロブスカイト型酸化物の含有率が高い金属酸化物の層を形成させることで、低い酸素過電圧と高い耐久性を有する水電解用陽極、およびその陽極を用いた水電解装置が開示されている。
国際公開第2018/155503号
Science,2011,334,1383
特許文献1に記載の陽極は、長時間の通電に対し高い耐久性を示すが、通電のない状態で特に高い液温のアルカリ性電解液に浸漬すると、過電圧が上昇する課題があると分かった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、酸素発生の過電圧が低く、高温アルカリ耐久性の高い電極、水電解用の陽極、該水電解用陽極を用いた複極式電解セル、及び該水電解用陽極を用いた水素の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究し、実験を重ねた。その結果、基材上に特定の組成および構造を有するLaNi3-z層を形成させた電極が、低い酸素過電圧と高い高温アルカリ耐久性を有し、水電解用陽極として使用可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]基材上に、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有し、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることを特徴とする、電極。
[2]yが0.002以上0.2未満である、[1]に記載の電極。
[3]LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.7°以上33.2°以下である、[1]または[2]に記載の電極。
[4]MがNbである、[1]~[3]のいずれか1つに記載の電極。
[5]LaNi3-zのXRDメインピーク半値幅が0.6°以上0.85°以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の電極。
[6]LaNi3-zのXRDメインピーク強度が6,000以上100,000以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の電極。
[7][1]~[6]のいずれか一つに記載の電極を陽極に用いてなることを特徴とする、電解セル。
[8]アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、前記電解槽は、少なくとも陽極と陰極を備え、前記陽極は、基材上に、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有し、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることを特徴とする、水素の製造方法。
本発明によれば、低い酸素過電圧を有し、かつ高温のアルカリへの耐久性に優れた安価な電極、水電解用陽極及びこの水電解用陽極を備えた水電解セルを得られる。
本実施形態の電極を陽極として備える電解セルを含む電解槽の一例の全体について示す側面図である。 本実施形態の電極を陽極として備える電解セルを含む電解槽の、図1の破線四角枠の部分の電解セル内部の断面を示す図である。 実施例、比較例で用いた電解装置の概要を示す図である。 電解試験で用いた複極式電解槽の概要を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は本発明を説明するための例示であり、本発明を限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
(電極)
本実施形態において、電極は、少なくとも、基材を有することが第一の特徴である。
基材は、導電性を有することが好ましい。導電性基材の材質としては、例えば、ニッケル、ニッケルを主成分とした材料、チタン、GC(Glassy Carbon)、タンタル、ジルコニウム、金、白金、パラジウム等が挙げられる。ニッケルを主成分とした材料としては、例えばモネル、インコネルやハステロイなどのニッケル基合金が挙げられる。
電極調製時の焼成工程に対する耐熱性の観点から、基材の材質は金属であることがより好ましい。加えて、アルカリ水溶液中の酸素発生電位においても溶解されずかつ貴金属と比較して安価に入手できる金属であり、耐久性、導電性及び経済性の観点から、ニッケルまたはニッケルを主成分とした材料がさらに好ましい。
電極の導電性基材の形状としては、平板状でもよいが、多数の孔を有する板状である多孔体であってもよい。多孔体の具体的な形状としては、エキスパンドメタル、パンチングメタル、平織メッシュ、発泡金属、又はこれらに類似する形状が挙げられる。これらの中で、エキスパンドメタルが好ましく、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるため、また、機械的強度の観点から、メッシュの短目方向の中心間距離(SW)は2mm以上5mm以下、メッシュの長目方向の中心間距離(LW)は3mm以上10mm以下、厚みは0.2mm以上2mm以下、開口率は20%以上80%以下が好ましい。より好ましくは、SWは3mm以上4mm以下、LWは4mm以上6mm以下、厚みは0.8mm以上1.5mm以下、開口率は40%以上60%以下である。
本実施形態において、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有することが、第二の特徴である。
本実施形態においては、ペロブスカイト型構造の金属酸化物として、Bサイトの少なくとも一部に、Niを配置することで、高い酸素発生能を実現することができる。さらに、Niと共にBサイトに元素Mを配置することが、高温のアルカリに対する耐久性を付与する要件の一つである。元素Mとしては、少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む。MとしてNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrの2種類以上が含まれていても良い。Mとして、少量の添加で高温のアルカリに耐久性を付与できる観点から、Nb、Ta、Sb、Ti、Zrが好ましく、高温のアルカリ耐久性に優れる観点から、さらに好ましくはTa、Sb、Tiであり、さらに少量の添加で、高温のアルカリに対する耐久性と過電圧を両立が可能な観点から、Nbが最も好ましい。
x+yは、高温の耐アルカリ性の観点から0.8以上1.2以下である。高温の耐アルカリ性と過電圧を両立する観点から、好ましくは0.8以上1.05以下であり、さらに好ましくは、1.0以上1.05以下である。
yは、高温の耐アルカリ性の観点から、0.001以上0.6以下である。高温の耐アルカリ性と過電圧を両立する観点から、好ましくは0.002以上0.2未満であり、さらに好ましくは、0.005以上0.1以下である。
zは、-0.5以上0.5以下である。本発明において、zは、Laを3価、Niを3価、Nbを5価、Taを5価、Sbを5価、Tiを4価、Mnを3価、Zrを4価、Oを-2価とし、組成式の価数バランスが合うように計算し求められるOの組成比率3-zより求められる。例えば、組成式LaNiZr3-zにおいて、x=0.9、y=0.1であれば、3-z=(3+3×0.9+4×0.1)/2の関係式から、z=-0.05と求まる。
基材上に、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有することは、例えば、基材上の金属酸化物層を剥離して王水等の酸に溶解し、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)法により組成分析を行う方法や、基材上の金属酸化物層を剥離して蛍光X線分析装置により組成分析を行う方法や、電極断面のSEM-EDX分析など公知の方法により確認することができる。
本実施形態において、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることが、第三の特徴である。
本実施形態において、LaNi3-zのXRDメインピーク位置は、電極によりシフトするが、X線源としてCuのKα1線を使用し、電極のXRD(X線回折)を測定した際、PDF01-070-5757カードのLaNiOの(104)面メインピーク位置2θ=33.166°を参考に、2θ=32.5°~33.2°付近のピークを、LaNi3-zのメインピーク位置とする。
LaNi3-zのメインピーク位置は、2θ=43.276°付近のNiOのメインピーク位置2θが、PDF00-047-1049カードデータのNiOの(200)面の2θ=43.276°になるよう、「X軸のオフセット」ツールを使用してXRDスペクトルをシフト補正した後、算出する。
LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θは、高温のアルカリ耐性の観点から、32.6°以上33.2°以下である。
本発明者らは、LaNiOに対し所定量Niを元素Mで置換し、あるいはLaNiOに対し所定量元素Mを添加したLaNi3-zの、XRDメインピーク位置2θを32.6°以上33.2°になるように制御し調製したLaNi3-zが、驚くべきことに高温のアルカリへの高い耐久性を示すことを見出した。この理由は明らかではないが、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°とすることで、高温のアルカリとLaNi3-zの反応点となる酸素欠陥の濃度が低減し、また元素Mを添加することにより、高温のアルカリ中でLaNi3-z中の酸素欠陥の生成が抑制されたためであると思われる。
高温のアルカリへの耐久性に優れる観点から、32.7°以上33.2°以下が好ましく、高温のアルカリへの耐久性と過電圧を両立する観点から、さらに好ましくは32.75°以上33.2°以下であり、最も好ましくは、32.8°以上33.2°以下である。
本実施形態において、LaNi3-zのXRDメインピーク半値幅は、高温のアルカリへの耐久性の観点から、0.6°以上0.85°以下が好ましい。メインピーク半値幅は、2θが31°以上35°以下の範囲をピークとして、算出される半値幅を指す。
LaNi3-zのXRDメインピーク半値幅は、より好ましくは0.6°以上0.8°以下であり、高温のアルカリへの耐久性と過電圧を両立する観点から、さらに好ましくは、0.6°以上0.75°以下である。
本実施形態において、LaNi3-zのXRDメインピーク強度は、高温のアルカリへの耐久性の観点から、6,000以上100,000以下であることが好ましい。メインピーク強度は、XRD測定装置D8 ADVANCE(ブルカージャパン株式会社販売)を用いて測定したメインピークのピーク位置の測定強度(Counts)から、ベースラインの強度を引いた強度を指す。測定条件は、実施例にて後述する。
LaNi3-zのXRDメインピーク強度は、より好ましくは、6,500以上5,0000以下であり、さらに好ましくは7,000以上20,000以下であり、高温のアルカリへの耐久性と過電圧を両立する観点から、最も好ましくは、7,000以上17,000以下である。
本実施形態の電極は、水電解用陽極として実用に供することが可能であり、本実施形態の電極を陽極に用いた水電解用電解セル、及び該水電解用陽極を用いた水素の製造方法を提供することが可能である。水電解にはアルカリを含有する水を用いてよい。
(電極の調製法)
本実施形態の電極は、基材にLa、Ni、Mの金属塩を含む水溶液(塗布液)を塗布し、乾燥、仮焼成を行い、基材上に所定重量のLaNi3-z前駆体を形成後、これを本焼成することにより調製することができる。
金属塩としては、硝酸塩、オキシ硝酸塩、塩化物、シュウ酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、硫酸塩、等水溶性の塩を用いることができる。金属塩は、無水塩でも、含水塩でも構わない。
La、Ni、Mは、金属塩の代わりに、酸化物あるいは水酸化物の水分散性のゾルを使用してもよい。
MとしてNbを用いる場合には、溶解性の観点から、シュウ酸ニオブもしくはシュウ酸ニオブアンモニウムを用いることが好ましい。また、MとしてSbを用いる場合には、酒石酸アンチモンを用いることが好ましい。
塗布液には、グリシン等のアミノ酸、シュウ酸や酒石酸等のカルボン酸等、有機配位子を添加することが、高温のアルカリへの耐久性の高いLaNi3-zの調製を容易にする観点から、好ましい。
特にグリシンと金属硝酸塩を溶解した塗布液を用いると、高温のアルカリへの耐久性と過電圧を両立する電極を調製することが容易となるため、グリシンは好ましい有機配位子である。
La、Ni、Mの金属塩を含む水溶液の濃度は、LaNi3-z基準の重量モル濃度で0.1mol/kg溶媒以上、4mol/kg溶媒以下が好ましい。0.1mol/kg溶媒以上では、少ない塗布回数で電極調製が可能となる。4mol/kg溶媒以下では、金属塩や有機配位子の溶解が容易となり、塗布液の生産性の観点から好ましい。より好ましくは、0.2mol/kg溶媒以上2.0mol/kg溶媒以下であり、さらに好ましくは0.2mol/kg溶媒以上1.0mol/kg溶媒以下である。
基材に塗布液を塗布後、乾燥する温度は、50℃以上200℃以下が好ましい。50℃以上であれば、乾燥が3分以上1時間以内で完了し、生産性の観点から好ましい。200℃以下であれば、乾燥後基材の冷却時間が短くなり、生産性の観点から好ましい。
乾燥後の基材を仮焼成する温度は、300℃以上500℃以下が好ましい。300℃以上であれば、仮焼成が3分以上1時間以内で完了し、生産性の観点から好ましい。500℃以下であれば、乾燥後基材の冷却時間が短くなり、生産性の観点から好ましい。
塗布、乾燥、仮焼成は、所望のLaNi3-z付着量の電極を調製するため、繰り返し行ってもよい。
本焼成する温度は、500℃以上1000℃以下で行うことが可能であるが、800℃以上で焼成することが好ましい。800℃以上で焼成すると、10分以上24時間以内の焼成時間で、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θを、32.6°以上33.2°になるように制御し、高温のアルカリへの耐久性の高い電極を調製することが可能となり、生産性の観点から好ましい。
元素Mは、あらかじめLa、Niの金属塩、または酸化物あるいは水酸化物の水分散性のゾルを含む塗布液を塗布し、乾燥、仮焼成を行なった後、電極に元素Mの金属塩または酸化物あるいは水酸化物の水分散性のゾルを含む塗布液を上塗りする要領で塗布し、乾燥、仮焼成し、本焼成する方法で添加してもよい。
また、元素Mは、あらかじめLa、Niの金属塩または酸化物あるいは水酸化物の水分散性のゾルを含む塗布液を塗布し、乾燥、仮焼成、本焼成を行なった後、電極に元素Mの金属塩または酸化物あるいは水酸化物の水分散性のゾルを含む塗布液を上塗りする要領で塗布し、乾燥、仮焼成し、本焼成する方法で添加してもよい。
(電解槽)
図1に、本実施形態の電極を陽極として備える電解セルを含む電解槽の一例の全体についての側面図を示す。
図2に、本実施形態の電極を陽極として備える電解セルを含む電解槽の一例のゼロギャップ構造の図(図1に示す破線四角枠の部分の断面図)を示す。
本実施形態の複極式電解槽50(図3参照)は、隔膜4が陽極2a及び陰極2cと接触してゼロギャップ構造Zが形成されている(図2参照)。
なお、図3に、実施例、比較例で用いた電解装置の概要を示す。図4に、電解試験で用いた複極式電解槽の概要を示す。
(エレメント)
図1に示すように、複極式電解槽50では、複極式エレメント60が、陽極ターミナルエレメント51aと陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置され、隔膜4は、陽極ターミナルエレメント51aと複極式エレメント60との間、隣接して並ぶ複極式エレメント60同士の間、及び複極式エレメント60と陰極ターミナルエレメント51cとの間に配置されている。
本実施形態では、特に、複極式電解槽50における、隣接する2つの複極式エレメント60間の互いの隔壁1間における部分、及び、隣接する複極式エレメント60とターミナルエレメントとの間の互いの隔壁1間における部分、を電解セル65と称する。電解セル65は、一方のエレメントの隔壁1、陽極室5a、陽極2a、及び、隔膜4、及び、他方のエレメントの陰極2c、陰極室5c、隔壁1を含む。
(電極室)
本実施形態における複極式電解槽50では、図2に示すとおり、隔壁1と外枠3と隔膜4とにより、電解液が通過する電極室5が画成されている。ここで、隔壁1を挟んで陽極側の電極室5が陽極室5a、陰極側の電極室5が陰極室5cである。
本実施形態においては、複極式電解槽のヘッダー管の配設態様としては、内部ヘッダー型及び外部ヘッダー型を採用できるところ、陽極及び陰極自身が占める空間も電極室の内部にある空間であるものとしてよい。また、特に、気液分離ボックスが設けられている場合、気液分離ボックスが占める空間も電極室の内部にある空間であるものとしてよい。
(リブ)
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解セル65では、リブ6が電極2と物理的に接続されていることが好ましい。かかる構成によれば、リブ6が電極2の支持体となり、ゼロギャップ構造Zを維持しやすい。また、リブ6は隔壁1と電気的につながっていることが好ましい。また、リブ6を設けることでは、電極室5内における気液の流れの乱れにより電極室5に生じる対流を低減して、局所的な電解液の温度の上昇を抑制することができる。
ここで、リブに、電極が設けられていてもよく、リブに、集電体、導電性弾性体、電極がこの順に設けられていてもよい。
前述の一例のアルカリ水電解用複極式電解セルでは、陰極室において、陰極リブ-陰極集電体-導電性弾性体-陰極の順に重ね合わせられた構造が採用され、陽極室において、陽極リブ-陽極の順に重ね合わせられた構造が採用されている。
なお、前述の一例のアルカリ水電解用複極式電解セルでは、陰極室において上記「陰極リブ-陰極集電体-導電性弾性体-陰極」の構造が採用され、陽極室において上記「陽極リブ-陽極」の構造が採用されているが、本発明ではこれに限定されることなく、陽極室においても「陽極リブ-陽極集電体-導電性弾性体-陽極」構造が採用されてもよい。
詳細には、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解セルでは、図2に示すように、隔壁1にリブ6(陽極リブ、陰極リブ)が取り付けられていることが好ましい。
リブ(陽極リブ、陰極リブ)には、陽極又は陰極を支える役割だけでなく、電流を隔壁から陽極又は陰極へ伝える役割を備えることが好ましい。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解セルでは、リブの少なくとも一部が導電性を備えことが好ましく、リブ全体が導電性を備えことがさらに好ましい。かかる構成によれば、電極たわみによるセル電圧の上昇を抑制することができる。
リブの材料としては、一般的に導電性の金属が用いられる。例えば、ニッケルメッキを施した軟鋼、ステンレススチール、ニッケル等が利用できる。リブの材料は、特に隔壁と同じ材料であることが好ましく、特にニッケルであることが最も好ましい。
隣接する陽極リブ同士の間隔、又は隣接する陰極リブ同士の間隔は、電解圧力や陽極室と陰極室の圧力差等を勘案して決められる。
陽極リブ同士の間隔、又は隣接する陰極リブ同士の間隔が狭すぎれば電解液やガスの流動を阻害するだけでなくコストも高くなる欠点がある。リブピッチが10mm以上であると、電極裏面へのガス抜けが良好となる。また広すぎると、陽極室と陰極室とのわずかな差圧で保持している電極(陽極や陰極)が変形したり、陽極リブや陰極リブの数が少なくなることによる電気抵抗が増したりする等の欠点が生じる。リブピッチが150mm以下であると電極がたわみにくくなる。リブの数、リブの長さ、リブと隔壁とのなす角度、貫通孔の数や貫通孔の隔壁に沿う所与の方向についての間隔(ピッチ)は、本発明の効果が得られる限り、適宜定められてよい。リブは、隔壁に沿う所与の方向(例えば、鉛直方向としてもよいし、図3に示すように隔壁の平面視形状が略長方形である場合、向かい合う2組の辺のうちの1組の辺の方向と同じ方向としてもよい)に対して平行に設けられることが好ましい。陽極リブのリブピッチと、陰極リブのリブピッチとは、同一であってもよいし異なっていてもよく、陽極リブのリブピッチ及び陰極リブのリブピッチが共に上記範囲を満たすことが好ましい。
陽極リブや陰極リブの隔壁への取り付けについてはレーザー溶接等が用いられる。
また、リブの厚みは、コストや製作性、強度等も考慮して、0.5mm以上5mm以下としてよく、lmm以上2mm以下のものが用いやすいが、特に限定されない。
電極や集電体のリブへの取り付けは、通常スポット溶接で行われるが、その他のレーザー溶接等による方法でもよく、更にはワイヤーやひも状の部材を用い、結びつけて密着させる方法でもよい。リブは、陽極又は陰極と同様に、スポット溶接、レーザー溶接等の手段で隔壁に固定されている。
(水素の製造方法)
次に、本実施形態の複極式電解槽を用いたアルカリ水電解による水素の製造方法について説明する。
本実施形態においては、前述のような陽極及び陰極を備え、電解液が循環した複極式電解槽に電流を印加して水電解を行うことにより、陰極で水素を製造する。このとき、電源として、例えば変動電源を用いることができる。変動電源とは、系統電力等の、安定して出力される電源と異なり、再生可能エネルギー発電所由来の数秒乃至数分単位で出力が変動する電源のことである。再生可能エネルギー発電の方法は特に限定されないが、例えば、太陽光発電や風力発電が挙げられる。
例えば、複極式電解槽を利用した電解の場合、電解液中のカチオン性電解質は、エレメントの陽極室から、隔膜を通過して、隣接するエレメントの陰極室へ移動し、アニオン性電解質はエレメントの陰極室から隔膜を通過して、隣接するエレメントの陽極室へ移動する。よって、電解中の電流は、エレメントが直列に連結された方向に沿って、流れることになる。つまり、電流は、隔膜を介して、一方のエレメントの陽極室から、隣接するエレメントの陰極室に向かって流れる。電解に伴い、陽極室内で酸素ガスが生成し、陰極室内で水素ガスが生成する。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解セル65は、複極式電解槽50、アルカリ水電解用電解装置70等に用いることができる。上記アルカリ水電解用電解装置70としては、例えば、本実施形態の複極式電解槽50と、電解液を循環させるための送液ポンプ71と、電解液と水素及び/又は酸素とを分離する気液分離タンク72と電解により消費した水を補給するための水補給器と、を有する装置等が挙げられる。
上記アルカリ水電解用電解装置は、さらに、整流器74、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器79、圧力制御弁80等を備えてよい。
上記アルカリ水電解用電解装置を用いたアルカリ水電解方法において、電解セルに与える電流密度としては、4kA/m~20kA/mであることが好ましく、6kA/m~15kA/mであることがさらに好ましい。
特に、変動電源を使用する場合には、電流密度の上限を上記範囲にすることが好ましい。
以上、図面を参照して、本発明の実施形態の電極、電解セル、水素の製造方法について例示説明したが、本発明の電極、電解セル、水素の製造方法は、上記の例に限定されることはなく、上記実施形態には、適宜変更を加えることができる。
(実施例1)
ニッケル多孔基材として、SW3.0mm、LW4.5mm、厚み1.2mm、開口率54%のニッケルエキスパンドメタルを用意した。このニッケルエキスパンドメタルにブラスト処理を施した後に、縦10cm、横10cmの大きさの基板を切り出し、50℃6Nの塩酸中にて6時間酸処理した後、水洗、乾燥し、塗布用基材とした。
次に、表1の実施例1の組成のA液、B液を調製した。B液はシュウ酸ニオブアンモニウムを純水に溶解して調製し、Nbの濃度はICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)法により確認した。
底辺6cm×10cm、高さ11cmの角形のポリエチレン製容器にA液をいれ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、B液をゆっくりと混合し、実施例1の塗布液とした。
塗布液を撹拌しながら、塗布用基材を縦向きにして、下半分を塗布液内に浸漬後、基材の上下をひっくり返して上半分も塗布液内に浸漬し、基材全面に塗布液を塗布後、基材を縦向きのままエアガンによるエアブロー処理により過剰な塗布液を吹き飛ばした。
その後、60℃で10分乾燥し、さらに400℃で10分間の焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
この塗布、乾燥及び焼成のサイクルを13回繰り返した後、さらに800℃で1時間の焼成を行い、塗布用基材上に付着量40g/mの金属酸化物層を形成させて、水電解用陽極を得た。
(実施例2~6)
実施例1と同じ方法で塗布用基材を準備し、表1の実施例2~6の組成のA液、B液を調製後、実施例1と同様にA液とB液を角型のポリエチレン製容器内で混合し、実施例2~6の塗布液を調製後、実施例1と同様に塗布、乾燥及び焼成のサイクルを繰り返した後、800℃で1時間の焼成を行い、塗布用基材上に付着量40g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例2~6の水電解用陽極を得た。
(実施例7)
純水400gにNi(NO・6HOを9.30g、La(NO・6HOを34.64g、グリシン(CNO)を30.03g、Mn(NO・6HOを13.78g溶解し、実施例7の塗布液を調製し、この塗布液を、底辺13cm×13cm、高さ10cmのポリエチレン製容器に移した。
実施例1と同様にして塗布用基材を準備した。この基材を、容器内塗布液中に完全に浸漬して引き上げ、基材全面に塗布液を塗布後、基材を縦向きにして、エアガンによるエアブロー処理により過剰な塗布液を吹き飛ばした。
その後、60℃で10分乾燥し、さらに400℃で10分間の焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
この塗布、乾燥及び焼成のサイクルを13回繰り返した後、さらに800℃で1時間の焼成を行い、塗布用基材上に付着量40g/mの金属酸化物層を形成させて、水電解用陽極を得た。
(実施例8)
純水200gにNi(NO・6HOを18.61g、La(NO・6HOを34.64g、グリシンを27.63g溶解し、実施例8のA液とした。一次粒子径10nmのTiOゾルに純水を加えて希釈し、Ti濃度80mmol/kgゾルのTiOゾルを調製し、実施例8のB液とした。
実施例1と同様にA液とB液を角型のポリエチレン製容器内で混合し、実施例8の塗布液とした。実施例1と同様に塗布、乾燥及び焼成のサイクルを繰り返した後、800℃で1時間の焼成を行い、塗布用基材上に付着量40g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例8の水電解用陽極を得た。
(実施例9)
純水400gにNi(NO・6HOを20.93g、La(NO・6HOを34.64g、グリシンを30.03g、ZrO(NO・2HOを2.14g溶解し、実施例7の塗布液を調製した。
その後、実施例7と同様にして、実施例9の水電解用陽極を得た。
(実施例10)
純水400gにNi(NO・6HOを26.75g、La(NO・6HOを34.64g、グリシンを31.83g、TaClを1.43g溶解し、実施例10の塗布液を調製した。
その後、実施例7と同様にして、実施例10の水電解用陽極を得た。
(実施例11)
純水200gにNi(NO・6HOを17.45g、La(NO・6HOを34.64g、グリシン27.03gを溶解し、実施例11のA液とした。酒石酸アンチモンを純水に溶解し、Sb濃度が20mmol/kg溶液の酒石酸アンチモン溶液を調製し、実施例11のB液とした。Sbの濃度はICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)法により確認した。
実施例1と同様にA液とB液を角型のポリエチレン製容器内で混合し、実施例11の塗布液とした。実施例1と同様に塗布、乾燥及び焼成のサイクルを繰り返した後、800℃で1時間の焼成を行い、塗布用基材上に付着量40g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例11の水電解用陽極を得た。
(実施例12)
純水400gにNi(NO・6HOを23.26g、La(NO・6HOを34.64g、グリシンを30.03g溶解し、実施例12の塗布液を調製した。
実施例1と同じ方法で塗布用基材を準備し、スプレーコート装置(旭サナック株式会社販売rCoater)を使用して、基材の両面に塗布液を塗布後、60℃で10分乾燥し、さらに400℃で10分間の焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
この塗布、乾燥及び焼成のサイクルを24回繰り返した。
さらに、一次粒子径5nm以下のNbゾルを希釈して、Nb濃度が200mmol/kgゾルのNbゾルを調製した。
このNbゾルを、スプレーコート装置により両面塗布後60℃10分乾燥し、塗布前の基材に対する重量増加を算出したところ、38mgであった。LaNiOの基材への担持量が1.4gであり、LaNiOの1モルの重量が245.6g、Nbの1モルの重量が265.2gであることから、38mgのNbを塗布したことにより、LaNiO1モルに対しNbを0.05モルの比率で塗布したと分かった。
60℃10分乾燥した基材を400℃10分焼成し、さらに800℃1時間焼成し、付着量144g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例12の水電解用陽極を得た。
(実施例13)
実施例12と同様にして、実施例13の塗布液を調製した。その後、この塗布液を、底辺13cm×13cm、高さ10cmのポリエチレン製容器に移した。
実施例1と同じ方法で塗布用基材を準備した。この基材を、容器内塗布液中に完全に浸漬して引き上げ、基材全面に塗布液を塗布後、基材を横向きにして、エアガンによるエアブロー処理により過剰な塗布液を吹き飛ばした。その後、60℃で10分乾燥し、さらに400℃で10分間の焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
この塗布、乾燥及び焼成のサイクルを24回繰り返した。
シュウ酸ニオブアンモニウムを純水に溶解し、Nb濃度43.8mmol/kg溶液のシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を調製した。このシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を、底辺13cm×13cm、高さ10cmのポリエチレン製容器に移した。
基材表面に金属酸化物層を形成した基材をシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液中に完全に浸漬して引き上げ、基材全面に塗布液を塗布後、基材を横向きにして、エアガンにより微弱な風をあてて、基材の目に詰まっている塗布液を落とした。エアガン処理後基材の重量を測定すると、基材にはシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液が1.3g塗布されていた。LaNiOの基材への担持量が1.4gであり、LaNiOの1モルの重量が245.6gであることから、1.3gのNb濃度43.8mmol/kg溶液のシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を塗布したことにより、LaNiO1モルに対しNbを0.01モルの比率で塗布したと分かった。
シュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を塗布した基材を60℃10分乾燥後、400℃10分焼成し、さらに800℃1時間焼成し、付着量141g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例13の水電解用陽極を得た。
(実施例14)
実施例13と同様にして、乾燥及び焼成のサイクルを24回繰り返した後、800℃1時間焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
シュウ酸ニオブアンモニウムを純水に溶解し、Nb濃度87.7mmol/kg溶液のシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を調製した。このシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を、底辺13cm×13cm、高さ10cmのポリエチレン製容器に移した。
基材表面に金属酸化物層を形成した基材をシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液中に完全に浸漬して引き上げ、基材全面に塗布液を塗布後、基材を横向きにして、エアガンにより微弱な風をあてて、基材の目に詰まっている塗布液を落とした。エアガン処理後基材の重量を測定すると、基材にはシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液が1.3g塗布されていた。LaNiOの基材への担持量が1.4gであり、LaNiOの1モルの重量が245.6gであることから、1.3gのNb濃度87.7mmol/kg溶液のシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を塗布したことにより、LaNiO1モルに対しNbを0.02モルの比率で塗布したと分かった。
シュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を塗布した基材を60℃10分乾燥後、400℃10分焼成し、さらに800℃1時間焼成し、付着量142g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例14の水電解用陽極を得た。
(実施例15)
実施例13と同様にして、乾燥及び焼成のサイクルを33回繰り返した後、800℃1時間焼成を行い、基材表面に金属酸化物層を形成した。
その後、Nb濃度125mmol/kg溶液のシュウ酸ニオブアンモニウム水溶液を調製し、実施例14と同様の方法で、LaNiO1モルに対しNbを0.02モルの比率で塗布し、60℃10分乾燥後、400℃10分焼成し、さらに800℃1時間焼成し、付着量202g/mの金属酸化物層を形成させて、実施例15の水電解用陽極を得た。
(比較例1)
実施例1と同様にして塗布用基材を準備した。
次に、酢酸ランタン1.5水和物、硝酸ニッケル六水和物を、それぞれ0.20mol/L、0.20mol/Lの濃度になるよう調合した塗布液を調製した。
塗布ロールの最下部に上記塗布液を入れたバットを設置し、EPDM製の塗布ロールに塗布液をしみこませ、その上部にロールと塗布液とが常に接するようにロールを設置し、さらにその上にPVC製のローラーを設置して、上記基材に塗布液を塗布した(ロール法)。塗布液が乾燥する前に手早く、2つのEPDM製スポンジロールの間にこの基材を通過させた。その後、50℃で10分間乾燥させた後、マッフル炉を用いて400℃で10分間の焼成を行って基材表面に金属酸化物層を形成した。
このロール塗布、乾燥及び焼成のサイクルを13回繰り返した後、さらに800℃で1時間の焼成を行い、付着量42g/mの金属酸化物層を形成させて、水電解用陽極を得た。
(比較例2)
実施例1と同様にして塗布用基材を準備した。
次に、硝酸ランタン六水和物、硝酸ニッケル六水和物、シュウ酸ニオブアンモニウムn水和物、グリシンを、それぞれ0.20mol/L、0.16mol/L、0.04mol/L、0.36mol/Lの濃度になるように塗布液を調製した。
比較例1と同様にロール法でロール塗布、乾燥及び焼成のサイクルを40回繰り返した後、さらに700℃で1時間の焼成を行い、金属酸化物層を形成させて、付着量145g/mの水電解用陽極を得た。
(XRD測定方法)
試験陽極を2cm×2cmに切り出し、XRD測定装置D8 ADVANCE(ブルカージャパン株式会社販売)を用いて測定した。試験陽極は、バルク試料ホルダー(溝φ40mm、深さ6mm、材質PMMA)の中央位置に位置し、表面の高さはホルダーの縁の高さと同じになるように、試料電極の四隅の下に粘土片を置き、その上から試料電極を押さえつけて固定した。測定は、試料を15rpmで回転させながら、2θ=10°~70°の範囲を3080ステップに分け、1ステップ4秒で測定した。X線は、CuのKα1線を使用し、X線源の電圧40kV、電流40mAであった。発散スリットは0.8°を使用した。その他、測定条件設定ソフトであるXRD WIZARDで確認できる検出器やフィルター等の装置の設定(Overview data)を表2に示す。
解析ソフトDIFFRAC.EVAを使用し、「ピークサーチ」ツールを使用してXRDスペクトルのピークサーチを実施し、各ピークのピーク位置の2θと求めた。
LaNi3-zのメインピーク位置は、2θ=43.276°付近のNiOのメインピークをピークサーチで検出し、そのNiOのメインピーク位置2θの検出値が、NiOのPDF00-047-1049カードデータの(200)面の2θ=43.276°になるよう、「X軸のオフセット」ツールを使用してXRDスペクトルをシフト補正した後、算出した。
LaNi3-zのメインピーク位置は、試料によりシフトするが、PDF01-070-5757カードの(104)面メインピーク位置2θ=33.166°を参考に、2θ=32.5°~33.2°付近のピーク位置を、LaNi3-zのメインピーク位置とした。
LaNi3-zのメインピーク強度は、「ピークサーチ」ツールで算出された、LaNi3-zメインピークの純強度とした。
LaNi3-zのメインピーク半値幅は、解析ソフトDIFFRAC.EVAの「エリアの作成」ツールを使用し、左端を31°、右端を35°と設定してエリアを選択し、算出される半値幅により求めた。
(耐アルカリ試験)
試験陽極を2cm×2cmに切り出し、XRDを測定し、LaNi3-zのメインピーク強度を算出した。
耐アルカリ試験は、下記の手順で行った。
試験陽極を、容量19mLのPFA製密閉容器(外径30mmφ、蓋含む高さ44mm、容量)に入れ、容器内を8mol/L水酸化カリウム水溶液(関東化学株式会社販売)で満たし、密閉した。
その後、送風定温恒温器(製品名DKN402、ヤマト科学株式会社製造)内にPFA製密閉容器を入れ、密閉容器内液の液温が90℃になるよう加温し、内液温が90℃の状態で24時間保持させた後、密閉容器を送風定温恒温器から取り出し氷冷した。
密閉容器より電極を取り出し、水洗乾燥後、再度XRDを測定し、LaNi3-zのメインピーク強度を算出した。
耐アルカリ性の指標として、下式によりピーク強度維持率を求めた。
(ピーク強度維持率(%))=(耐アルカリ試験後のLaNi3-zのXRDメインピーク強度)/(耐アルカリ試験前のLaNi3-zのXRDメインピーク強度)×100
実施例1~15及び比較例1~2における評価結果を表3に示す。
(陽極の耐アルカリ試験後の酸素過電圧の測定)
耐アルカリ試験後の陽極の酸素過電圧は下記の手順で測定した。
耐アルカリ試験後陽極(2cm×2cm)を、PTFEで被覆したニッケル製の棒にニッケル製のネジで固定した。対極には白金メッシュを使用し、80℃、32wt%水酸化ナトリウム水溶液中で、電流密度6kA/mで電解し、酸素過電圧を測定した。酸素過電圧は、液抵抗によるオーム損の影響を排除するために、ルギン管を使用する三電極法によって測定した。ルギン管の先端と陽極との間隔は、常に1mmに固定した。酸素過電圧の測定装置としては、ソーラートロン社製のポテンショガルバノスタット「1470Eシステム」を用いた。三電極法用の参照極としては、銀-塩化銀(Ag/AgCl)を用いた。三電極法を使用しても排除しきれない電解液抵抗を交流インピーダンス法で測定し、電解液抵抗の測定値に基づき前記酸素過電圧を補正した。
ソーラートロン社製の周波数特性分析器「1255B」を使用して、実部と虚部をプロットしたCole-Coleプロットを取得した後に、等価回路フィッティングにより解析することで、電解液抵抗と二重層容量を算出した。
三電極法を使用しても排除しきれないオーム損を交流インピーダンス法で測定し、オーム損の測定値に基づき前記酸素過電圧を補正した。オーム損の測定には、ソーラートロン社製の周波数特性分析器「1255B」を使用した。
実施例1~15及び比較例1~2における評価結果を表3に示す。
(実施例16)
アルカリ水電解用電解セル、複極式電解槽を下記の通りに作製した。
-陽極-
実施例14と同様の方法で作製した。
-陰極-
導電性基材として、直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュで編んだ平織メッシュ基材上に白金を担持したものを用いた。
-隔壁、外枠-
複極式エレメントとして、陽極と陰極とを区画する隔壁と、隔壁を取り囲む外枠と、を備えたものを用いた。隔壁及び複極式エレメントのフレーム等の電解液に接液する部材の材料は、全てニッケルとした。
-導電性弾性体-
導電性弾性体は、線径0.15mmのニッケル製ワイヤーを織ったものを、波高さ5mmになるように波付け加工したものを使用した。
-隔膜-
酸化ジルコニウム(商品名「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)、N-メチル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)、ポリスルホン(「ユーデル」(登録商標)、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)、及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を用いて、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:15質量部
ポリビニルピロリドン:6質量部
N-メチル-2-ピロリドン:70質量部
酸化ジルコニウム:45質量部
上記塗工液を、基材であるポリフェニレンサルファイドメッシュ(くればぁ社製、膜厚280μm、目開き358μm、繊維径150μm)の両表面に対して塗工した。塗工後直ちに、塗工液を塗工した基材を蒸気下へ晒し、その後、凝固浴中へ浸漬して、基材表面に塗膜を形成させた。その後、純水で塗膜を十分洗浄して多孔膜を得た。
-ガスケット-
ガスケットは、厚み4.0mm、幅18mmの内寸504mm角の四角形状のもので、内側に平面視で電極室と同じ寸法の開口部を有し、隔膜を挿入することで保持するためのスリット構造を有するものを使用した。
-ゼロギャップ型複極式エレメント-
外部ヘッダー型のゼロギャップ型セルユニット60は、540mm×620mmの長方形とし、陽極2a及び陰極2cの通電面の面積は500mm×500mmとした。ゼロギャップ型複極式エレメント60の陰極側は、陰極2c、導電性弾性体2e、陰極集電体2rが積層され、陰極リブ6を介して隔壁1と接続され、電解液が流れる陰極室5cがある。また、陽極側は、陽極2aが陽極リブ6を介して隔壁1と接続され、電解液が流れる陽極室5aがある(図2)。
陽極室5aの深さ(陽極室深さ、図2における隔壁と陽極との距離)は25mm、陰極室5cの深さ(陰極室深さ、図2における隔壁と陰極集電体との距離)25mmとし、材質はニッケルとした。高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陽極リブ6と、高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陰極リブ6を溶接により取り付けたニッケル製の隔壁1の厚みは2mmとした。
陰極集電体2rとして、集電体として、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用いた。基材の厚みは1mmで、開口率は54%であった。導電性弾性体2eを、陰極集電体2r上にスポット溶接して固定した。このゼロギャップ型複極式エレメントを、隔膜を保持したガスケットを介してスタックさせることで、陽極2aと陰極2cとが隔膜4に押し付けられたゼロギャップ構造Zを形成することができる。
(比較例3)
比較例2と同様にして作製した陽極を用いたこと以外は、実施例15と同様にしてゼロギャップ型複極式エレメントを製造した。
上記実施例16及び比較例3の電解装置を用いて、電解液を90℃に保温し循環させながら24時間静置後、電解液温度を80℃に下げ、電流密度が6kA/mとなるように連続で500時間正通電し、水電解を行った。実施例16、比較例3の各セルの対電圧をモニターし、対電圧の推移を記録した。各セルのセル電圧を、実施例16及び比較例3それぞれ3セルの平均値をとって比較した。
実施例16では3セル平均過電圧が、通電500時間後1.77Vと低い値であったのに対して、比較例3では3セル平均過電圧が、通電500時間後で1.95Vと高い値が得られた。よって、実施例16の陽極が比較例3よりも高いアルカリ耐久性を持つことで、長時間運転においても低いセル電圧が実現できたと結論付けられる。
Figure 2022149949000001
Figure 2022149949000002
Figure 2022149949000003
本発明の電極は、酸素発生の過電圧が低く、高温アルカリへの耐久性が高いため、アルカリを含有する水の電気分解において、水電解槽の陽極として好適に利用できる。
1 隔壁
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 陰極集電体
3 外枠
4 隔膜
5a 陽極室
5c 陰極室
6 リブ
7 ガスケット
50 複極式電解槽
51g ファストヘッド、ルーズヘッド
51i 絶縁板
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
51r タイロッド
60 複極式エレメント
65 電解セル
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
79 熱交換器
80 圧力制御弁
Z ゼロギャップ構造

Claims (8)

  1. 基材上に、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有し、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることを特徴とする、電極。
  2. 前記yが0.002以上0.2未満である、請求項1に記載の電極。
  3. 前記LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.7°以上33.2°以下である、請求項1または2に記載の電極。
  4. 前記MがNbである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 前記LaNi3-zのXRDメインピーク半値幅が0.6°以上0.85°以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極。
  6. 前記LaNi3-zのXRDメインピーク強度が6,000以上100,000以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の電極を陽極に用いてなることを特徴とする、電解セル。
  8. アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法において、前記電解槽は、少なくとも陽極と陰極を備え、前記陽極は、基材上に、LaNi3-z(x+yは0.8以上1.2以下、yは0.001以上0.6以下、zは-0.5以上0.5以下、Mは少なくともNb、Ta、Sb、Ti、Mn、Zrのいずれか1種を含む)を有し、LaNi3-zのXRDメインピーク位置2θが32.6°以上33.2°以下であることを特徴とする、水素の製造方法。
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