JP2022149353A - 化粧シート、及び、化粧板 - Google Patents

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貴矢 大野
Takaya Ono
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Abstract

【課題】絵柄層の絵柄模様と凹部とが同調した極めて優れた意匠性と優れたラッピング加工に対する加工適性とを有する化粧シートを提供する。【解決手段】基材の一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に有する化粧シートであって、上記絵柄層は、特徴部分と非特徴部分とを備えた木目柄であり、上記透明性樹脂層は、厚みが90μm未満であり、上記表面保護層は、厚みが25μm未満であり、上記透明性樹脂層は、上記絵柄層を有する側と反対側に、上記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有し、上記化粧シートは、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)がともに25N以上35N以下であり、上記流れ方向と幅方向の上降伏点荷重の比率(PMD/PCD)が1.00以上1.15以下であることを特徴とする化粧シート。【選択図】図1

Description

本発明は、化粧シート、及び、該化粧シートを用いた化粧板に関する。
建材、家具、家電製品等において、使用する部材を加飾したい場合には、意匠が施された化粧シートを貼着した化粧板が一般的に用いられている。
化粧板に視覚による意匠性を付与するために、化粧シートにエンボス加工等を施して、凹凸形状を形成し、立体的な視覚効果を付与することがある。
例えば、特許文献1では、基材シートの一方の面側に、絵柄が印刷された絵柄印刷層、上記絵柄と同調する凹凸模様を有する透明熱可塑性樹脂層、上記透明熱可塑性樹脂層の表面を保護する表面保護層、及び上記絵柄と同調する艶状態による模様を有する艶調整層をこの順に積層してなり、上記凹凸模様の凹凸に上記表面保護層を構成する樹脂が入り込んでいることを特徴とする化粧シートが開示されている。
特許文献1の化粧シートでは、透明熱可塑性樹脂層の表面保護層を有する側の面に凹凸模様が形成されている。これにより、絵柄印刷層の絵柄と透明熱可塑性樹脂層の凹凸模様とを同調させて、触感及び立体感を向上させ、絵柄のリアルさを向上させている。
近年、絵柄層の絵柄模様と、化粧シートに形成された凹凸形状とが更に同調した極めて優れた意匠性が求められており、特許文献1の化粧シートでは未だ十分であるとはいえず、更なる改善の余地があった。
また、従来の化粧シートは、階段や上框等の被着材にラッピング加工して用いられる場合、折り曲げた状態で被着材に貼り付けられることとなり、折り曲げ部に割れが生じたり被着材から浮き上がり(剥離)が生じたりすることがあった。
特開2016-182748号公報
本発明は、上述した課題を解決するものであり、絵柄層の絵柄模様と凹部とが同調し、優れた意匠性を有するとともに、ラッピング加工に対する優れた加工適性を有する化粧シート、及び、該化粧シートを用いた化粧板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討したところ、基材シートの一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に有する化粧シートにおいて、上記絵柄層に木目柄を備え、上記透明性樹脂層と表面保護層とが所定範囲の厚みを有し、かつ、上記表面保護層が上記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有し、更に、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)とが所定の範囲内かつ特定の比率にあることで、絵柄層の絵柄模様と凹部とが同調して優れた意匠性と優れたラッピング加工に対する優れた加工適性とを有するものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の化粧シートは、基材の一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に有する化粧シートであって、上記絵柄層は、特徴部分と非特徴部分とを備えた木目柄であり、上記透明性樹脂層は、厚みが90μm未満であり、上記表面保護層は、厚みが25μm未満であり、上記透明性樹脂層は、上記絵柄層を有する側と反対側に、上記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有し、上記化粧シートは、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)がともに25N以上35N以下であり、上記流れ方向と幅方向の上降伏点荷重の比率(PMD/PCD)が1.00以上1.15以下であることを特徴とする。
本発明の化粧シートにおいて、上記基材シートの厚みが50μm以上70μm以下の着色ポリオレフィン系フィルムからなることが好ましい。
また、本発明の化粧シートの流れ方向の弾性率(EMD)と幅方向の弾性率(ECD)がともに850MPa以上1100MPa以下であり、上記流れ方向と幅方向の弾性率の比率(EMD/ECD)が1.00以上1.20以下であることが好ましい。
また、上記絵柄層の特徴部分は、木目の導管、節、年輪及び斑からなる群より選択される少なくとも1種の模様から形成され、上記絵柄層の特徴部分と非特徴部分との色差ΔEが1.3以上であることが好ましい。
また、本発明の化粧板は、被着材上に本発明の化粧シートを備えることを特徴とする。
本発明は、絵柄層の絵柄模様と凹部とが同調し、極めて優れた意匠性と優れたラッピング適性とを有する化粧シート、及び、該化粧シートを用いた化粧板を提供することができる。
(a)及び(b)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。 引張圧縮試験機を用いて試験を行った場合の荷重-伸び曲線の例を示す図である。 (a)~(c)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。 (a)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す上面図であり、(c)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の化粧シートの好ましい一例を模式的に示す断面図である。
<化粧シート>
以下、本発明の化粧シートについて説明する。
なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
本発明の化粧シートは、基材シートの一方に、少なくとも絵柄層と、透明性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とをこの順に有する。
図1は、化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す本発明の化粧シートの一例において、化粧シート10は、基材シート1の一方に、少なくとも絵柄層2と、透明性樹脂層3と、表面保護層4とをこの順に有し、絵柄層2は、特徴部分2aと非特徴部分2bとを有している。
また、透明性樹脂層3は、絵柄層2を有する側と反対側に、絵柄層2の特徴部分と同調した凹部(D)を有し、図1に示した本発明の化粧シート10では、絵柄層2は、基材シート1を有する側と反対側に、凹部(D)の積層方向に位置する凹部(D)を有している。
本発明の化粧シート10は、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)がともに25N以上35N以下である。25N未満であると本発明の化粧シート10の絵柄層2の絵柄模様と凹部(D)との同調にズレが生じて視覚的な立体感が損なわれて意匠性に劣ることとなり、35Nを超えると剛直に過ぎてラッピング加工により割れや被着材に対する剥離が生じてしまう。上記流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)の好ましい下限は26N、好ましい上限は33Nである。
なお、本明細書における化粧シートの上降伏点荷重(N)は、JIS K7161(1994)に準拠して測定された引張降伏応力(MPa)と、当該測定で使用した試験片の初めの断面積(mm)との積(掛け算)で定義される。引張降伏応力はJIS K7161(1994)で規定されている物性であって、応力の増加を伴わずにひずみの増加する最初の応力である(但し、最大応力より小さい場合もある)。上降伏点荷重とは、試験片が降伏したときの荷重であり、図2に示した荷重-伸び曲線例のbのときの荷重である。
本明細書における化粧シートの上降伏点荷重は、具体的には、JIS K6732(1996)の試験方法に倣ってダンベル形試験片状に打ち抜いた化粧シートを、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)及び幅方向の上降伏点荷重(PCD)用にそれぞれ用意し、25℃の温度環境下、引張圧縮試験機(オリエンテック株式会社製:テンシロンRTC-1250A)を用い、引張速度50mm/min、チャック間距離80mmの条件で測定して得られた値である。なお、当該引張速度及びチャック間距離は、JIS K7127(1999)の規定に基づく。
ここで、流れ方向とは、本発明の化粧シート10の絵柄層の木目柄の流れに水平な方向であり、幅方向とは、上記木目柄の流れ方向に垂直な方向であり、いずれも本発明の化粧シート10に現れた木目柄から容易に判別することができる。
本発明の化粧シート10において、上記流れ方向と幅方向の上降伏点荷重の比率(PMD/PCD)が1.00以上1.15以下である。上記比率(PMD/PCD)が上記範囲内にあることで本発明の化粧シートは優れたラッピング加工に対する加工適性を有するものとなる。
また、本発明の化粧シート10は、流れ方向の弾性率(EMD)と幅方向の弾性率(ECD)がともに850MPa以上1100MPa以下であることが好ましい。850MPa未満であると、本発明の化粧シート10の絵柄層2の絵柄模様と凹部(D)との同調にズレが生じて視覚的な立体感が損なわれて意匠性に劣ることがあり、1100MPaを超えると剛直になりすぎて本発明の化粧シート10のラッピング加工に対する加工適性が劣ることがある。上記流れ方向の弾性率(EMD)と幅方向の弾性率(ECD)のより好ましい下限は900MPa、より好ましい上限は1080MPaである。
また、本発明の化粧シート10は、上記流れ方向と幅方向の弾性率の比率(EMD/ECD)が1.00以上1.20以下であることが好ましい。上記比率(EMD/ECD)が上記範囲内にあることで本発明の化粧シート10はより優れたラッピング加工に対する加工適性を有するものとなる。
上記流れ方向の弾性率(EMD)及び幅方向の弾性率(ECD)は、例えば、JIS K6732(1996)の試験方法に倣ってダンベル型試験片に打ち抜いた化粧シートを、流れ方向の弾性率(EMD)及び幅方向の弾性率(ECD)用にそれぞれ用意し、20℃の温度条件下にて、引張圧縮試験機を用い、引張速度50mm/min、チャック間距離80mmの条件で測定して得られた引張応力-ひずみ曲線の初めの直線部分から、次の式により計算した。
E=Δρ/Δε
E:弾性率
Δρ:直線上の2点間の元平均断面積による応力差
Δε:同じ2点間のひずみ差
また、本発明の化粧シート10は、上記流れ方向と幅方向の弾性率の比率(EMD/ECD)が1.00以上1.20以下であることが好ましい。上記比率(EMD/ECD)が上記範囲内にあることで本発明の化粧シート10はより優れたラッピング加工に対する加工適性を有するものとなる。
本発明の化粧シート10において、上記流れ方向の上降伏点荷重(PMD)及び幅方向の上降伏点荷重(PCD)や、上記流れ方向の弾性率(EMD)及び幅方向の弾性率(ECD)、並びに、これらの比率(PMD/PCD)、(EMD/EMD)は、例えば、表面保護層を製造する際の条件(原料の配合比や硬化処理条件等)を適宜調整することで上述した範囲に調整できる。
次いで、化粧シート10を構成する各層について説明する。
(基材シート)
本発明の化粧シート10は、基材シート1を有する。
上記基材シート1としては、特に限定されないが、非ハロゲン系熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体、ホモポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等が挙げられる。
これらの非ハロゲン系熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、絵柄層2の印刷適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
基材シート1は、着色されていてもよい。この場合は、上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。
上記着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。
これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
基材シート1は、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
基材シート1の厚みは、特に限定されないが、40μm以上200μm以下が好ましい。
基材シート1は、単層又は多層のいずれで構成されていてもよい。
なかでも、本発明の化粧シート10において、基材シート1は、厚みが50μm以上70μm以下の着色ポリオレフィン系フィルムからなることが好ましい。このような厚さの着色ポリオレフィン系フィルムからなる基材シート1を備えることで、後述の透明性樹脂層3、表面保護層4の厚み範囲の組み合わせにおいて、前述の上降伏点荷重、弾性率の要件を満たしやすくなる。
(絵柄層)
化粧シート10は、絵柄層2を有する。
絵柄層2は、化粧シート10に装飾性を付与する層である。
絵柄層2としては、例えば、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される図柄層であってもよいし、隠蔽層と図柄層とを組み合わせた層であってもよい。
上記隠蔽層を設けることにより、上述した基材シート1が着色していたり色ムラがあったりする場合に、意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる。
また、図柄層を設けることで、木目柄の絵柄層2を好適に得ることができる。
これらの絵柄模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層2に用いられるインキ組成物としては、バインダー樹脂に顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
上記バインダー樹脂としては特に制限はなく、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン-アクリル樹脂、ウレタン-アクリル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ニトロセルロース樹脂等が好ましく挙げられる。上記バインダー樹脂としてはこれらの中から任意のものを、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
上記着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が好ましく挙げられる。
これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
絵柄層2は、特徴部分2aと非特徴部分2bとを有する木目柄である。
特徴部分2aとは、絵柄層2の絵柄模様を認識させ得る特徴を有する部分をいい、例えば、木目の導管、節及び年輪及び斑が該当する。
また、非特徴部分2bとは、上記特徴部分2a以外の部分をいう。
絵柄層2において、特徴部分2aと非特徴部分2bとの色差ΔEは、1.3以上であることが好ましい。
このような色差ΔEとすることにより、意匠性をより優れたものとすることができる。
上記色差ΔEは、1.5以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更に好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。
本明細書において、色差ΔEの測定方法及び算出方法は以下の通りである。
化粧シート10において、特徴部分2aと非特徴部分2bのL表色系のL、a及びbを、分光測色計(日本電色工業社製SE6000)を使用して、化粧シート10の透明性樹脂層3を有する側(表面保護層4を有する場合には表面保護層を有する側)の表面へ入射角10度(透明樹脂層3側表面の法線方向を0度とする)で光(D65光源)を照射し、全光線反射光(鏡面反射光+拡散反射光)に基づいて測定する。
ここで、特徴部分2aにおけるL、a及びbをそれぞれL 、a 及びb とし、非特徴部分2bにおけるL、a及びbをそれぞれL 、a 及びb とする。
なお、「L表色系」は、CIE(国際照明委員会)で規格化され、JIS Z8781-4:2013で採用されている表色系を意味する。また、L表色系において、明度はLで表され、色相及び彩度を示す色度はa、bで表される。
上記測定した数値を下記式に代入することにより算出することができる。
色差ΔE=((L -L +(a -a +(b -b 1/2
絵柄層2の厚みとしては、特に限定されず、例えば、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上600μm以下がより好ましい。絵柄層2の厚みが上記範囲内にあれば、化粧シート10に優れた意匠を付与することができ、また隠蔽性を付与することができる。
絵柄層2を形成する方法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、隠蔽層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法等も挙げられる。
(透明性樹脂層)
化粧シート10は、透明性樹脂層3を有する。
透明性樹脂層3としては、熱可塑性樹脂により形成された層であることが好ましい。
透明性樹脂層3は、絵柄層2を可視できれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナレフタレート、エチレングリコール-テレフタル酸-イソフタール酸共重合体樹脂、テレフタル酸-エチレングリコール-1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等のポリエステル樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート-ブチル(メタ)アクリレート共重合体樹脂、メチル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体樹脂等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アイオノマー等が挙げられる。
なかでも、引張強度が高く、耐薬品性能に優れ、生産工程面で優れていることからポリエチレン又はポリプロピレンがより好ましい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
上記ポリエチレンは、エチレンの単独重合体であってもよいし、エチレンと、エチレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。
ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、架橋ポリエチレン(PEX)等が挙げられる。
これらのポリエチレンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよいし、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な他のコモノマー(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;酢酸ビニル、ビニルアルコール等)との共重合体であってもよい。
これらのポリプロピレンは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、優れた耐擦傷性と曲げ加工性の観点から、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)であることが特に好ましい。
透明性樹脂層3は、1層により構成されていてもよいし、2層以上の層により構成されてもよい。
透明性樹脂層3の厚みは、90μm未満である。このような厚みの透明性樹脂層3を有することで、本発明の化粧シート10は、優れたラッピング加工に対する加工適性を有するものとなる。透明性樹脂層3の厚みは、80μm以下が好ましい。
なお、透明性樹脂層3が2層以上の層により構成される場合、透明性樹脂層3の総厚みが上記範囲内にあることが必要である。
透明性樹脂層3が複数の層から構成される場合、形成する樹脂の種類は同じであっても異なっていてもよく、また複数の樹脂からなる基材の厚みは同じであっても異なっていてもよい。
透明性樹脂層3を2層以上に積層する方法としては、一般的な方法であれば限定されず、ドライラミネート法や押出し熱ラミネート等が挙げられる。
透明性樹脂層3は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、けん化処理、グロー放電処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)処理、及び火炎処理等の表面処理を行ってもよい。
(表面保護層)
化粧シート10は、透明性樹脂層3の絵柄層2を有する側と反対側に表面保護層を有することが好ましい。
表面保護層4は、図1(a)のように、凹部を有していてもよいし、図1(b)のように、凹部を有さなくてもよい。
表面保護層4は、化粧シート10に耐久性(耐傷性、耐汚染性、耐候性等)を付与する層であり、表面保護層4を有することにより、より好適に絵柄層2の保護が可能となり、化粧シート10自体の傷付きによる意匠性の低下を好適に防止できる。
なお、表面保護層4は、単一の層構成であってもよく、同一又は異なる材料からなる複数の層構成であってもよいし、下記に示す材料を適宜混合させてもよい。
表面保護層4としては、特に限定されないが、例えば、2液硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化物からなるものが挙げられる。
上記架橋硬化物は透明であることが好ましく、透明である限り、絵柄層2が視認できる範囲であれば、半透明でも着色されていてもよい。
上記2液硬化性樹脂としては、例えば、主剤に硬化剤を添加して硬化する樹脂であれば特に限定されないが、主剤がポリオール(多価アルコール)であり、硬化剤がイソシアネート硬化剤である2液硬化性ウレタン樹脂が好ましい。
上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(以下、所謂プレポリマー、マクロモノマー等も包含する)及び/又は分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有するモノマーが好ましく用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は、電子線(EB)又は紫外線(UV)が一般的である。
上記オリゴマー又はモノマーとしては、例えば、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。これらオリゴマー、モノマーは、単独で用いるか、或いは複数種混合して用いることができる。なお、本明細書において、上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等のオリゴマーが好ましく使用でき、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがさらに好ましい。分子量としては、通常250~10万程度のものが用いられる。
上記分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、多官能モノマーが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート{5官能(メタ)アクリレート}、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート{6官能(メタ)アクリレート}等が挙げられる。ここで、多官能モノマーとは、複数のラジカル重合性不飽和基を有するモノマーをいう。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物が、ウレタンアクリレートオリゴマー及び多官能モノマーからなる電離放射線硬化性樹脂成分を含むことがさらに好ましく、電離放射線硬化性樹脂成分として、ウレタンアクリレートオリゴマー/多官能モノマー(質量比)が6/4~9/1であることが特に好ましい。この質量比の範囲であれば、耐擦傷性により優れたものにできる。
なお、必要に応じ、上記電離放射線硬化性樹脂成分に加えて、単官能モノマーを適宜使用しても良い。
上記単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物を紫外線にて架橋させる場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤を添加することが好ましい。
上記電離放射線硬化性樹脂組成物がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合、上記光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン類、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。
また、上記電離放射線硬化性樹脂組成物がカチオン重合性不飽和基を有する樹脂系の場合、上記光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂成分100質量部に対して0.1~10質量部程度である。
なお、上記電離放射線硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種添加剤を加えても良い。これらの添加剤としては、例えば、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アセタール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、ワックス、弗素樹脂等の滑剤、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、染料、顔料等の着色剤等である。
なお、電離放射線の電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、70~1000keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用できる。また、電離放射線の照射線量は、例えば、1~10Mrad程度であることが好ましい。
また、上記電離放射線の紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用でき、上記紫外線の波長としては通常190~380nmの波長域が主として用いられる。
本発明の化粧シート1において、表面保護層4の厚みは25μm未満である。このような厚みの表面保護層4を有することで、本発明の化粧シート10は、優れたラッピング加工に対する加工適性を有するものとなる。表面保護層4の厚みは、15μm以下が好ましい。
表面保護層4は、単層で構成されても2以上の複層で構成されていてもよく、複層で構成されている場合、各層を構成する材料は同じであっても異なっていてもよいが、合計の膜厚が25μm未満である。
また、表面保護層4には優れた耐傷性を付与できることからシリカ微粒子等の無機微粒子を含有していることが好ましい。シリカ微粒子としては公知のものを使用できるが、その平均粒径は含有させる表面保護層4の層の膜厚以下であることが好ましい。
(その他の層)
化粧シート10は、必要に応じて、プライマー層、接着剤層及びバッカー層等を有してもよい。
上記プライマー層としては、公知のプライマー剤を塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系樹脂)等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
上記プライマー層は、必要に応じて紫外線吸収剤を含有してもよい。
上記紫外線吸収剤としては、公知の紫外線吸収剤を適宜選択して用いることができる。
上記プライマー層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01~10μmが好ましく、0.1~1μmがより好ましい。
上記接着剤層としては、特に限定されず、公知の接着剤を用いればよい。例えば、ポリウレタン、アクリル、ポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
上記接着剤層は、乾燥後の厚みが0.1~30μm程度が好ましく、1~5μm程度がより好ましい。
化粧シート10は、耐傷性、耐衝撃性を付与する観点から、基材1の最下層(上記絵柄層2が積層される側と反対側)にバッカー層を有してもよい。
上記バッカー層としては、特開2014-188941号公報等に開示された公知のバッカー層を適宜選択して用いることができる。
(凹部(D1)及び(D2))
本発明の化粧シートは、図1に示した化粧シート10のように、透明性樹脂層3は、絵柄層2を有する側と反対側に、絵柄層2の特徴部分2aと同調した凹部(D1)を有する。また、この絵柄層2は、基材1を有する側と反対側に、凹部(D1)の積層方向に位置する凹部(D2)を有することが好ましい。
凹部(D1)は、絵柄層2の特徴部分2aと同調した形状である。
凹部(D1)は、絵柄層2の模様の特徴部分2aの外郭を型取った形状であってもよいし、絵柄層2の模様の特徴部分2aの外郭を簡略化した形状や、特徴部分2aの外郭を縮小又は拡大した相似形状であってもよい。
凹部(D1)は、絵柄層2の特徴部分2aと同調するように位置している。
図3(a)~(c)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
凹部(D1)と、絵柄層2の特徴部分2aとの位置関係は、図3(a)~(c)のいずれであってもよい。
すなわち、図3(a)に示すように、積層方向において、絵柄層2の特徴部分2aと、凹部(D1)とが、重複するように位置してもよく、図3(b)に示すように、絵柄層2の特徴部分2aと、凹部(D1)とが、一部重複するように位置していてもよく、図3(c)に示すように、絵柄層2の特徴部分2aと、凹部(D1)とが重複していないように位置してもよい。
ただし、図3(c)であっても、平面視した場合に、凹部(D1)は、絵柄層2の特徴部分2aの近傍に位置している。上記近傍とは、平面視した場合に、上記特徴部分2aの位置と、上記特徴部分2aに該当する形状の凹部(D1)との位置が70mm以下であることをいう。
これらは、絵柄層2のデザインによって適宜設定することができる。
なお、上記凹部(D1)と特徴部分2aとの同調関係は、必ずしも意匠全面において成立させる必要は無く、全体の意匠感を損なわないのであれば、同調していない領域が部分的に存在していてもよい。
なお、凹部(D1)の幅については後述する。
凹部(D2)は、凹部(D1)の積層方向に位置する。
図3(a)~(c)に示すように、凹部(D2)は、積層方向において凹部(D1)と重複する位置に有する。
また、凹部(D2)は、図3(a)に示すように、絵柄層2の特徴部分2aに、凹部(D2)が形成されていてもよく、図3(b)に示すように、絵柄層2の特徴部分2aから非特徴部分2bにまたがって凹部(D2)が形成されていてもよく、図3(c)に示すように、絵柄層2の特徴部分2aに凹部(D2)が形成されていなくてもよい(非特徴部分2bに凹部(D2)が形成されている)。
化粧シート10において、凹部(D1)の深さHは、凹部(D2)の深さhよりも大きいことが好ましい。
このような凹部(D1)及び凹部(D2)を有することにより、絵柄層の絵柄模様と、凹部とが同調し、視覚的に立体感を有する極めて優れた意匠性を奏するようにできる。
なお、上記凹部(D1)の深さHと、凹部(D2)の深さhとの関係は、互いに積層方向に位置する(平面視した場合に重複する)凹部(D1)と凹部(D2)との間でそれぞれ成立する。
化粧シート10において、立体感を好適に付与する観点から、凹部(D1)の深さHに対する凹部(D2)の深さhの比率(h/H)は、0.25以上0.60以下であることが好ましく、0.26以上0.55以下であることがより好ましく、0.28以上0.50以下であることが更に好ましく、0.30以上0.48以下であることが特に好ましい。
凹部(D1)の深さHとしては、立体感を好適に付与できる大きさであればよく、例えば、50μm以上200μm以下であることが好ましく、55μm以上190μm以下であることがより好ましい。
また、凹部(D2)の深さhとしては、例えば、13μm以上100μm以下であることが好ましく、17μm以上92μm以下であることがより好ましい。
なお、上記深さH及び深さhの数値範囲は、必ずしも全ての凹部(D1)及び凹部(D2)において成立させる必要は無く、全体の意匠感を損なわないのであれば、上記数値範囲を満たさない凹部(D1)、凹部(D2)が存在していてもよい。
例えば、全体の意匠感を損なわないのであれば、同調する凹部(D1)及び凹部(D2)において深さH>深さhの大小関係を満たさないものが一部存在してもよい。
ただし、意匠性を好適に付与する観点からは、化粧シート10を平面視し、任意の10cm×10cmの面積の互いに積層方向に位置する凹部(D1)と凹部(D2)を確認した場合に、深さH>深さhの大小関係を満たさないものが全体の30%未満であることが好ましい。このような確認は、後述する電子顕微鏡とその測定条件を適用して行うことができる。
凹部(D1)の幅Wとしては、絵柄層2に形成された絵柄模様にもよるが、例えば、400μm以上2000μm以下であることが好ましく、500μm以上1500μm以下であることがより好ましい。
凹部(D2)の幅wとしては、例えば、5μm以上400μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。
化粧シート10では、凹部(D1)及び凹部(D2)の積層方向に位置する、基材1の絵柄層2側の凹部(D3とする)、基材1の絵柄層2と反対側の凹部(D4とする)を有することが好ましい。
この場合、凹部の深さは、凹部(D1)、凹部(D2)、凹部(D3)、凹部(D4)の順に小さくなることが好ましい。
また、化粧シート10が、表面保護層4を有し、凹部(D1)及び凹部(D2)の積層方向に位置する表面保護層4の透明性樹脂層3と反対側の凹部(D5とする)を有する場合には、凹部の深さは、凹部(D5)、凹部(D1)、凹部(D2)、凹部(D3)、凹部(D4)の順に小さくなることが好ましい。
このような凹部(D1~D5)を有することにより、絵柄層の絵柄模様と、凹部とが同調した意匠性を好適に奏することができる。
このような凹部(D1~D5)は、後述する本発明の化粧シートの製造方法により好適に形成することができる。
なお、上記凹部(D1~D5)の深さの関係は、互いに積層方向に位置する(平面視した場合に重複する)凹部(D1~D5)の間でそれぞれ成立する。
凹部(D1)の幅W及び深さH、並びに、凹部(D2)の幅w及び深さhの測定方法について説明する。
図4(a)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す上面図であり、(c)は、本発明の化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
図4(a)に示すように、化粧シート10の表面に形成された凹部を選択する。図4(b)に示すように、選択した凹部の長軸及び短軸を決定する。次いで、図4(c)に示すように、短軸に沿って切断し、その切断面を電子顕微鏡で観察し、凹部(D1)及び(D2)の幅(W及びw)及び深さ(H及びh)を測定する。
図4(c)に示すように、凹部(D1)の深さHとは、透明性樹脂層3の表面から凹部(D1)の最深部までの垂直距離を意味し、凹部(D2)の深さhとは、絵柄層2の表面から凹部(D2)の最深部までの垂直距離を意味する。
なお、凹部の長軸とは、凹部の外周の2点を結ぶ直線の長さが最大となる箇所をいい、凹部の短軸とは、上記長軸の垂直方向で最大となる箇所をいう。
なお、透明性樹脂層3が最外層である場合には、化粧シート10の表面に形成された凹部の短軸は、凹部(D1)の幅Wと一致する。
一方で、図5に示すように、化粧シート10は、基材シート1の一方に、少なくとも絵柄層2と、透明性樹脂層3と、表面保護層4とをこの順に有するため、凹部(D1)の幅Wは、化粧シート10の表面に形成された凹部の短軸よりも小さな値となる。この場合は、凹部の短軸で切断した断面を電子顕微鏡で観察し、測定することができる。
なお、凹部(D1)の幅W及び深さH、並びに、凹部(D2)の幅w及び深さhは、化粧シート10の表面に形成された凹部を無作為に10箇所選択し、上述した方法により測定して算出した平均値を意味する。
電子顕微鏡での測定条件としては、例えば、形状解析レーザ顕微鏡(測定部『VK-X1050』、台座『VK-D1』、コントローラ『VK-X1000』(KEYENCE社製))を用い、倍率300倍で観察する等により測定することができる。
着色された表面保護層とする際に使用する樹脂塗料としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等からなる、速乾性に優れた有機溶剤系塗料や、自然環境・作業環境等にやさしい水系塗料等が使用可能であり、その中でも、ウレタン系樹脂が混合された水系塗料が好ましい。
また、着色剤としては、上述した絵柄層で記載したもの等を用いることができる。
また、上記樹脂塗料により着色する方法としては、例えば、特許第4569720号に記載される方法を適用することができる。
<化粧シートの製造方法>
本発明の化粧シートの製造方法は、例えば、図1(a)に示した構成の場合、基材シートの一方に、特徴部分と非特徴部分とを備えた絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に積層する積層工程と、上記表面保護層の上記絵柄層を有する側と反対側からエンボス加工を施し、上記透明性樹脂層の上記絵柄層を有する側と反対側に上記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を賦形する賦形工程を有する方法が挙げられる。
なお、上記賦形工程では、上記絵柄層の上記基材を有する側と反対側に上記凹部(D1)の積層方向に位置する凹部(D2)も賦形することができる。このとき、上記凹部(D1)の深さHは、上記凹部(D2)の深さhよりも大きいことが好ましい。
上記積層工程は、基材シートの一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に積層する工程である。
上記積層工程では、上述した基材シート1、絵柄層2、透明性樹脂層3及び表面保護層4を用いることができ、基材シート1の一方に、絵柄層2と、透明性樹脂層3と、表面保護層4とを少なくともこの順に積層すればよい。
上述した各層の一方の面や層間には、上述した接着剤層やプライマー層を設けてもよい。
このとき、透明性樹脂層及び表面保護層の厚みを上述した範囲となるようにし、更に、表面保護層の原料の配合比や硬化処理条件、エージング処理条件等を調整して、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)及び幅方向の上降伏点荷重(PCD)やこれらの比率を上述した範囲内となるように調整する。
上記賦形工程は、表面保護層の絵柄層を有する側と反対側からエンボス加工を施し、絵柄層の特徴部分と同調した凹部を賦形する工程である。
上記賦形工程を有することにより、上記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)と、凹部(D1)の積層方向の位置に、凹部(D1)よりも小さい凹部(D2)が、凹部(D1)に追従して形成される。
上記エンボス加工としては、例えば、周知の枚葉、又は、輪転式のエンボス機によるエンボス加工を施す方法等が挙げられる。
上記エンボス加工で用いる柄模様としては、上述した絵柄層2と同調するデザインを適宜選択して用いることができる。
上記エンボス加工する際の温度としては特に限定されないが、加熱圧着成形時に凹部が消失する所謂エンボス戻りが少なくなる温度が好ましい。
なお、図1(b)に示した構成の場合、上記積層工程で表面保護層の積層を行わず、上記賦形工程でエンボス加工を透明性樹脂層の絵柄層を有する側と反対側から行った後、表面保護層を積層する方法が挙げられる。
本発明の化粧シートの製造方法により製造された化粧シートは、基材の一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層を少なくともこの順に有しており、透明性樹脂層が絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有しており、更に流れ方向の弾性率(EMD)及び幅方向の弾性率(ECD)やこれらの比率が所定の範囲内にあるので、絵柄層の絵柄模様と、凹部とが同調した極めて優れた意匠性を備えたものであり、耐傷性にも優れたものである。
<化粧板>
本発明の化粧板は、被着材上に本発明の化粧シートを備えることを特徴とする。
上記被着材としては、例えば、木材単板、木材合板、パーチクルボード、MDF(中密度繊維板)等の木質板;石膏板、石膏スラグ板等の石膏系板;珪酸カルシウム板、石綿スレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板等のセメント板;パルプセメント板、石綿セメント板、木片セメント板等の繊維セメント板;陶器、磁器、土器、硝子、琺瑯等のセラミックス板;鉄板、亜鉛メッキ鋼板、ポリ塩化ビニルゾル塗布鋼板、アルミニウム板、銅板等の金属板;ポリオレフィン樹脂板、ポリ塩化ビニル樹脂板、アクリル樹脂板、ABS板、ポリカーボネート板等の熱可塑性樹脂板;フェノール樹脂板、尿素樹脂板、不飽和ポリエステル樹脂板、ポリウレタン樹脂板、エポキシ樹脂板、メラミン樹脂板等の熱硬化性樹脂板;フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の樹脂を、硝子繊維不織布、布帛、紙、その他の各種繊維質基材に含浸硬化して複合化したいわゆるFRP板等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、これらの2種以上を積層した複合基板として用いてもよい。
また、熱可塑性樹脂板や熱硬化性樹脂板は必要に応じて、着色材(顔料又は染料)、木粉や炭酸カルシウム等の充填剤、シリカ等の艶消し剤、発泡剤、難燃剤、タルク等の滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
なお、上記被着材の厚みは特に限定されない。
また、本発明の化粧シートは、上述した用にラッピング加工に対する加工適性に優れるので、本発明の化粧板における上記被着材は、曲面や角部を有するものであっても好適に使用できる。
上記被着材へ本発明の化粧シートを積層する方法としては特に限定されず、例えば、上述したプライマー層を介して積層したり、上述した接着剤層を介して積層したりする手段等が挙げられる。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって限定されるものではない。
(実施例1)
基材シートとして60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムを用意し、基材シートの裏面に裏面プライマー層(厚さ2μm)を形成して、基材シートの表面に、厚さ2μmとなるように木目柄の絵柄層をグラビア印刷により形成した。
絵柄層上にウレタン系樹脂を用いて厚さ2μmとなるように透明性接着剤層を形成した。形成した透明性接着剤層上に、厚さ80μmとなるように透明ポリプロピレン系樹脂のシートを押し出しラミネート方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。
次いで、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、2液硬化型ウレタン樹脂を塗工することによりプライマー層(表面保護層形成用プライマー層、厚さ2μm)を形成した。
プライマー層の表面に、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂(EB樹脂)を硬化後厚さ15μmとなるようにグラビアコート方式で塗工した後、酸素濃度200ppm以下の環境下、電子線照射装置を用いて加速電圧175KeV、5Mradの条件で電子線を照射して、電子線硬化型樹脂を硬化させることで表面保護層を形成した。
なお、上記表面保護層を構成する材料は、塗膜厚さ以下の粒子径のシリカ微粒子(粒子径11μm)を電子線硬化型樹脂100質量部に対して10質量部含有していた。
上述のようにして形成された表面保護層を、赤外線非接触方式のヒーターで加熱することにより、基材シート及び透明性樹脂層を軟化させて、直ちに熱圧によるエンボス加工を行い、表面保護層上に木目柄の凹部を形成し、化粧シートを作製した。
(実施例2、3、比較例1、2)
透明性樹脂層、表面保護層の厚さ、及び、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)及び流れ方向の弾性率(EMD)と幅方向の弾性率(ECD)が下記表に示した値となるよう調整した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを作製した。
<意匠性>
作製した化粧シートを上面から目視にて観察し、絵柄層の絵柄模様と、凹部とが同調しているか否かを以下に示す判断基準により、人の感性に基づいて評価を行った。
その評価結果を、表1に示す。
+:同調しているように感じる。
-:ズレが視認され、同調しているように感じない。
<上降伏点荷重>
JIS K6732に準拠したダンベル型試験片に実施例及び比較例に係る化粧シートを流れ方向及び幅方向にそれぞれ打ち抜き、作製した試験片を20℃の温度条件下にて、引張り速度50mm/min、チャック間距離80mmの条件で引張試験(使用機械:ORIENTEC製 テンシロン万能材料試験機 RTC-1250A)を行い、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)及び幅方向の上降伏点荷重(PCD)を求めた。
<弾性率>
JIS K6732に準拠したダンベル型試験片に実施例及び比較例に係る化粧シートを流れ方向及び幅方向にそれぞれ打ち抜き、作製した試験片を20℃の温度条件下にて、引張り速度50mm/min、チャック間距離80mmの条件で引張試験(使用機械:ORIENTEC製 テンシロン万能材料試験機 RTC-1250A)を行い、得られた引張応力-ひずみ曲線の初めの直線部分から、次の式により流れ方向の弾性率(EMD)及び幅方向の弾性率(ECD)を計算した。
E=Δρ/Δε
E:弾性率
Δρ:直線上の2点間の元平均断面積による応力差
Δε:同じ2点間のひずみ差
Figure 2022149353000002
表1に示すように、透明性樹脂層が絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有し、透明樹脂層及び表面保護層の厚みと、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)及び幅方向の上降伏点荷重(PCD)とが所定の範囲内かつ所定の比率にあることで、絵柄層の木目柄と凹部とが同調した極めて優れた意匠性を奏し、ラッピング適性にも優れることが確認された。
本発明によれば、絵柄層の絵柄模様と凹部とが同調した極めて優れた意匠性と優れたラッピング加工に対する加工適性を有する化粧シート、及び、該化粧シートを用いた化粧板を提供することができる。
1 基材
2 絵柄層
2a 特徴部分
2b 非特徴部分
3 透明性樹脂層
4 表面保護層
10 化粧シート

Claims (5)

  1. 基材シートの一方に、絵柄層と、透明性樹脂層と、表面保護層とを少なくともこの順に有する化粧シートであって、
    前記絵柄層は、特徴部分と非特徴部分とを備えた木目柄であり、
    前記透明性樹脂層は、厚みが90μm未満であり、
    前記表面保護層は、厚みが25μm未満であり、
    前記透明性樹脂層は、前記絵柄層を有する側と反対側に、前記絵柄層の特徴部分と同調した凹部(D1)を有し、
    前記化粧シートは、流れ方向の上降伏点荷重(PMD)と幅方向の上降伏点荷重(PCD)がともに25N以上35N以下であり、前記流れ方向と幅方向の上降伏点荷重の比率(PMD/PCD)が1.00以上1.15以下である
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記基材シートの厚みが50μm以上70μm以下の着色ポリオレフィン系フィルムからなる請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記化粧シートの流れ方向の弾性率(EMD)と幅方向の弾性率(ECD)がともに850MPa以上1100MPa以下であり、前記流れ方向と幅方向の弾性率の比率(EMD/ECD)が1.00以上1.20以下である請求項1又は2記載の化粧シート。
  4. 前記絵柄層の特徴部分は、木目の導管、節、年輪及び斑からなる群より選択される少なくとも1種の模様から形成され、前記絵柄層の特徴部分と非特徴部分との色差ΔEが1.3以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 被着材上に請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シートを備えることを特徴とする化粧板。

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