JP2022149045A - 土留構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】補強リングを設置することなく剛性を高めることができ、補強リングの設置を省略することで施工性の向上を図ることができる土留構造物を提供する。【解決手段】土留構造物は、地面を掘削して形成された掘削孔に、環状の構造体を孔軸方向に沿って複数段積み重ねて構築されたものである。各々の構造体は、同じ断面係数から成る複数の土留パネルを環状に配置して形成された構成とされている。各段の構造体の土留パネルの断面係数は、他段の構造体の土留パネルの断面係数と同一であるか又は異なるものである。掘削孔の孔軸方向において、断面係数が小さい土留パネルで構成された構造体の間に、該構造体の土留パネルよりも断面係数が大きい土留パネルで構成された構造体が配置された構造を含むものである。【選択図】図1
Description
新規性喪失の例外適用申請有り
本発明は、土留パネルを用いて構築した土留構造物に関する。
従来、例えば特許文献1に開示されているように、地面を掘削して形成された掘削孔に波付け鋼板からなる土留パネルを組み立てて構築された土留構造物が知られている。土留構造物は、掘削孔の壁面に沿って複数の波付け鋼板を環状に配置して形成された構造体を、孔軸方向に積み重ねて構築される。
土留構造物は、掘削孔の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、波付け鋼板だけでは剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体の自重が下方に配置された構造体に作用する。このため、土留構造物では、剛性が足りない箇所において、上下に隣り合う波付け鋼板の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。
しかしながら、補強リングの施工は、煩雑で手間が掛かるため、工期が長引き工費が嵩む問題がある。そのため、補強リングを省略できる土留構造物の構築が望まれている。
本発明は、上記の課題を解決するものであり、補強リングを設置することなく剛性を高めることができ、補強リングの設置を省略することで施工性の向上を図ることができる土留構造物を提供することを目的とする。
本発明に係る土留構造物は、地面を掘削して形成された掘削孔に、環状の構造体を孔軸方向に沿って複数段積み重ねて構築された土留構造物であって、各々の前記構造体は、同じ断面係数から成る複数の土留パネルを環状に配置して形成された構成とされ、各段の構造体の土留パネルの断面係数は、他段の構造体の土留パネルの断面係数と同一であるか又は異なるものであり、掘削孔の孔軸方向において、断面係数が小さい前記土留パネルで構成された構造体の間に、該構造体の土留パネルよりも断面係数が大きい土留パネルで構成された構造体が配置された構造を含むものである。
本発明では、断面係数が小さい土留パネルで構成された構造体の間に、該構造体の土留パネルよりも断面係数が大きい土留パネルで構成された構造体が配置された構造を含むものである。つまり、土圧が大きく作用する掘削孔や掘削孔の深度が深い部分において、断面係数が大きく剛性が高い土留パネルで構成された構造体を配置することで、構造物全体の剛性を高めることができる。よって、補強リングの設置を省略することができるので、工期の短縮及び工費の削減を図ることができ、施工性を向上させることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。土留構造物100は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものである。図1に示すように、土留構造物100は、地面200を掘削して形成された鉛直の掘削孔201に、環状の構造体(101、102)を孔軸方向Xに沿って複数段(図1では一例として12段)積み重ねて構築される。
図1は、実施の形態1に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。土留構造物100は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものである。図1に示すように、土留構造物100は、地面200を掘削して形成された鉛直の掘削孔201に、環状の構造体(101、102)を孔軸方向Xに沿って複数段(図1では一例として12段)積み重ねて構築される。
土留構造物100を構成する各々の構造体(101、102)は、同じ断面係数から成る複数の土留パネル(1、2)を環状に配置して形成された構成とされている。各段の構造体(101、102)の土留パネル(1、2)は、他の構造体(101、102)の土留パネル(1、2)の断面係数と同一であるか又は異なるものである。
土留構造物100は、掘削孔201の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向Xの深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体(101、102)の自重が下方に配置された構造体(101、102)に作用する。
このため、従来の土留構造物では、深度が深い箇所において、上下に隣り合う構造体の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。しかしながら、補強リングの施工は、煩雑で手間が掛かるため、工期が長引き工費が嵩む問題がある。例えば補強リングは、土留構造物の外径側から掘削孔の壁面に向かって突き出すため、その分掘削孔を大きく形成しなければならず、余堀が必要とある。また、土留構造物の外面と掘削孔の壁面との間に裏込注入材を充填した際に、該裏込注入材がH形鋼の内部にまで十分に充填されないおそれがある。また、掘削孔201の周方向に沿って複数のH形鋼を配置し、左右に隣り合うH形鋼をフランジ継手で接続する場合に、作業者の目が届かない接続箇所が存在する。そのため、この組立作業方法では、目視が困難な状態での作業となり、組立が困難となることに加えて、安全の確認に懸念がある。つまり、補強リングを省略できる土留構造物の構築が望まれている。
そこで、本実施の形態1に係る土留構造物100では、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、断面係数が小さい土留パネル1で構成された構造体101の間に、該構造体101の土留パネル1よりも断面係数が大きい土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造を含む構成とし、構造物全体の剛性を高めている。例えば図1に示す土留構造物100では、12段のうち1、3~5、7、8、10段目を土留パネル1で構成された構造体101とし、2、6、9、11及び12段目を土留パネル2で構成された構造体102としている。各段の構造体(101、102)の孔軸方向Xの高さは、一例として50cm程度である。土留構造物100は、土留パネル(1、2)が千鳥状に配置されるように、上下に隣り合う構造体(101、102)の土留パネル(1、2)の位置を周方向にずらして組み立てられている。また、土留構造物100は、一例として平面視が円形状とした構成である。
なお、土留構造物100は、構造体(101、102)の段数及び配置について、図示した構成に限定されず、施工状況に合わせて、適宜変更して実施するものとする。また、各々の構造体(101、102)における土留パネル(1、2)の個数も、施工状況に合わせて、適宜変更して実施するものとする。
図2は、実施の形態1に係る土留構造物を構成する第1土留パネルの一例を示した斜視図である。図3は、図2に示した第1土留パネルの縦断面図である。図4は、実施の形態1に係る土留構造物を構成する第2土留パネルの一例を示した斜視図である。図5は、図4に示した第2土留パネルの平断面図である。図6の(A)は図4に示した第2土留パネルの正面図、(B)は該第2土留パネルの左側面図である。図7は、実施の形態1に係る土留構造物であって、第1土留パネルの連結孔と第2土留パネルの連結孔の関係を示した説明図である。
土留パネル(1、2)は、図2及び図3に示す第1土留パネル1と、図4~図6に示すように、第1土留パネル1よりも断面係数が大きい第2土留パネル2と、を有している。
第1土留パネル1は、ライナープレート1Aから成る波付け鋼板で構成されている。ライナープレート1Aは、波形断面がサインカーブ状に形成された構成である。ライナープレート1Aは、平面視が円弧状に形成されている。ライナープレート1Aは、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。ライナープレート1Aには、図2及び図3に示すように、上端縁及び下端縁に沿って設けられた円弧状の周方向フランジ部10と、円弧方向の両端縁に沿って設けられた軸方向フランジ部11と、が設けられている。周方向フランジ部10は、ライナープレート1Aの上端縁及び下端縁から掘削孔201の内部に向かって突出するように曲げ加工されて形成されている。軸方向フランジ部11は、ライナープレート1Aの円弧方向の両端縁にプレートを溶接して形成されている。
周方向フランジ部10には、孔軸方向Xに積み重ねた上下に隣り合う第1土留パネル1同士、又は第1土留パネル1と第2土留パネル2とを連結するための連結孔10aが円弧方向に沿って複数形成されている。上下に隣り合う第1土留パネル1は、周方向フランジ部10を突き合わせ、例えば連結孔10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、上下に隣り合う第1土留パネル1の周方向フランジ部10を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔10aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
軸方向フランジ部11には、掘削孔201の周方向に配置した左右に隣り合う第1土留パネル1同士を連結するための連結孔11aが上下方向に沿って複数形成されている。左右に隣り合う第1土留パネル1は、軸方向フランジ部11を突き合わせ、連結孔11aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う第1土留パネル1の軸方向フランジ部11を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔11aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
図4~図6に示した第2土留パネル2は、鋼製であり、平面視が円弧状に形成されている。第2土留パネル2は、掘削孔201の壁面に面する円弧状のスキンプレート20と、スキンプレート20の上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する円弧状の主桁21と、スキンプレート20の円弧方向の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板22と、を有している。第2土留パネル2は、掘削孔201の内部に向かって開口する凹状に形成されている。スキンプレート20、主桁21及び継手板22は、それぞれ溶接で固定されている。主桁21の桁高は、掘削孔201の土質及び深度等によって仕様が変わるが、例えば150mm~400mm程度である。なお、第2土留パネル2の断面剛性は、主桁21の板厚及び桁高を調整することで設定することができる。
また、第2土留パネル2は、上部の主桁21と下部の主桁21との間に配置され、製造時、運搬時、及び施工時における第2土留パネル2の形状を保持する形状保持部材23を有している。形状保持部材23は、例えば図示したように鋼板等から成る板状部材、又は図示省略の鉄筋棒等から成る棒状部材で構成されている。形状保持部材23は、図示例の場合、円弧方向に間隔をあけて4つ配置されている。なお、形状保持部材23の形状及び設置個数は、図示例に限定されず、例えば第2土留パネル2の大きさ及び形状等を考慮して決定される。
主桁21には、孔軸方向Xに積み重ねた上下に隣り合う第2土留パネル2同士、又は第2土留パネル2と第1土留パネル1とを連結するための連結孔21aが複数形成されている。上下に隣り合う第2土留パネル2は、主桁21を突き合わせ、連結孔21aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。また、上下に隣り合う第2土留パネル2と第1土留パネル1は、主桁21と周方向フランジ部10とを突き合わせ、連結孔21a及び10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、図示した連結孔21aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
ここで、第1土留パネル1に形成された連結孔10aを第1連結孔とし、第2土留パネル2に形成された連結孔21aを第2連結孔とする。例えば図7に示すように、第1連結孔10aと第2連結孔21aとは、土留構造物100の内径側の端部Aから外径側に向かって同じ位置Bに形成されている。つまり、第1連結孔10aと第2連結孔21aは、土留構造物100の径方向において、端部Aから等しい距離に形成されている。このような構成とすることで、第2土留パネル2の内径側の端面と、第1土留パネル1の内径側の端面を揃えることができるので、土留構造物100の有効径を大きくすることができる。また、第2土留パネル2の内径側の端面が、第1土留パネル1の内径側の端面よりも土留構造物100の内径側に突き出さないので、内部空間が広くなり、作業者の作業スペースを確保することができる。その他、掘削時の作業用はしごの設置が容易になる、深礎杭であれば内径を大きくとれる、集水井の階段の設置が容易になる、支保工の設置が容易となる等の効果を奏する。なお、土留構造物100の内径側の端部Aから同じ位置とは、厳密に同じ位置である必要はなく、第1土留パネル1又は第2土留パネル2が掘削孔201の壁面側に若干ずれていてもよい。また、図示は省略したが、第1土留パネル1の外面の位置と、第2土留パネル2の外面の位置とを合わせてもよい。
また、図4及び図5に示すように、上下の主桁21には、工具を差し込んで抉る(こじる)ための抉り孔21bが、円弧方向に間隔をあけて複数形成されている。抉るとは、例えば隙間などに物を差し入れてねじることを意味する。工具とは、一例としてシノ棒等の棒状部材である。抉り孔21bは、上下に隣り合う第2土留パネル2の連結孔21aの位置、又は第2土留パネル2の連結孔21aと第1土留パネル1の連結孔10aの位置を一致させる作業を行うために設けられている。なお、抉り孔21bは、上下の主桁21のうち、いずれか一方にのみ設けてもよいし、双方に省略してもよい。また、抉り孔21bの位置、大きさ及び個数は、図示した限りではなく、適宜変更して形成するものとする。
継手板22には、掘削孔201の周方向に配置した左右に隣り合う第2土留パネル2を連結するための連結孔22aが複数形成されている。左右に隣り合う第2土留パネル2は、継手板22を突き合わせ、連結孔22aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、図示した連結孔22aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
また、図4及び図6に示すように、左右の継手板22には、工具を差し込んで抉るための抉り孔22bが形成されている。工具とは、一例としてシノ棒等の棒状部材である。抉り孔22bは、左右に隣り合う第2土留パネル2の連結孔22aの位置を一致させる作業を行うために設けられている。なお、抉り孔22bは、上下に隣り合う第2土留パネル2の連結孔21aの位置、又は第2土留パネル2の連結孔21aと第1土留パネル1の連結孔10aの位置を一致させる際に利用してもよい。また、抉り孔22bは、左右の継手板22のうち、いずれか一方にのみ設けてもよいし、双方ともに省略してもよい。また、抉り孔22bの位置、大きさ及び個数は、図示した限りではなく、適宜変更して形成するものとする。
次に、上記土留構造物100の構築工法の一例を、図8に基づいて説明する。図8は、実施の形態1に係る土留構造物の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。
本実施の形態1に係る土留構造物100では、先ず、図8(A)に示すように、地面200に土留構造物100を構築するための掘削孔201を形成する。掘削孔201は、土留構造物100の外径よりも例えば20cm程度の大きい外径で形成される。掘削孔201の深さは、一例として0.5m~1.5m程度である。そして、掘削孔201の壁面に沿って第1土留パネル1を環状に配置して構造体101を組み立てると共に、第2土留パネル2を環状に配置して構造体102を組み立てる。図示例の場合では、先ず、構造体(101、102)を3段構築する。なお、始めに構築する構造体(101、102)は、3段に限定されず、掘削孔201の大きさ及び形状等、施工状況に応じて段数が決定される。
構造体101は、掘削孔201の壁面の周方向に沿って第1土留パネル1を順に配置し、左右に隣り合う第1土留パネル1をボルト及びナットで連結して組み立てられる。構造体101を構成する第1土留パネル1の個数は、掘削孔201の大きさ及び形状等に応じて決定される。構造体102は、掘削孔201の壁面の周方向に沿って第2土留パネル2を順に配置し、左右に隣り合う第2土留パネル2をボルト及びナットで連結して組み立てられる。構造体102を構成する第2土留パネル2の個数も、掘削孔201の大きさ及び形状等に応じて決定される。
上下に隣り合う第1土留パネル1と第2土留パネル2とは、ボルト及びナットで連結される。なお、上下に隣り合う構造体(101、102)の土留パネル(1、2)は、千鳥配置となるように、周方向の位置をずらして配置される。
次に、構造体(101、102)を3段構築した後、図8(B)に示すように、最上段に位置する構造体101を地面200に設置した井桁300で固定した後、構造体(101、102)の外側の掘削孔201を掘削土で埋め戻す。なお、最上段に位置する構造体101を地面200に固定する手段は、井桁300に限定されず、例えばコンクリートを用いてもよい。
そして、図8(C)に示すように、地盤を掘削しつつ、第1土留パネル1及び第2土留パネル2を組み立てて構造体101及び102を構築し、所定の深度まで掘り進める。なお、最上段に位置する構造体101を井桁300で固定した後は、最下段の構造体101の下端に、掘削孔201の壁面の周方向に沿って第1土留パネル1又は第2土留パネル2を配置し、該第1土留パネル1又は第2土留パネル2を最下段の構造体101にボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う第1土留パネル1又は第2土留パネル2をボルト及びナットで連結して、構造体101又は102を構築していく。また、構造体101及び102と掘削孔201の壁面との間には、裏込注入材として、コンクリート又はモルタルが充填される。
土留構造物100では、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、断面係数が小さい土留パネル1で構成された構造体101の間に、該構造体101の土留パネル1よりも断面係数が大きい土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造を含むように構築される。
なお、土留構造物100は、平面視が円形状とした構成に限定されない。土留構造物100は、例えば平面視が矩形状、小判のような形をした長円形状、馬蹄形のようにU字状等でもよい。第1土留パネル1と第2土留パネル2は、土留構造物100の形状に応じた形状で構成するものとする。
以上のように、本実施の形態1に係る土留構造物100は、地面200を掘削して形成された掘削孔201に、環状の構造体(101、102)を孔軸方向Xに沿って複数段積み重ねて構築されたものである。各々の構造体(101、102)は、同じ断面係数から成る複数の土留パネル(1、2)を環状に配置して形成された構成とされている。各段の構造体(101、102)の土留パネル(1、2)の断面係数は、他段の構造体(101、102)の土留パネル(1、2)の断面係数と同一であるか又は異なるものである。掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、断面係数が小さい土留パネル1で構成された構造体101の間に、該構造体101の土留パネル1よりも断面係数が大きい土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造が含まれる。
土留パネル(1、2)は、第1土留パネル1と、第1土留パネル1よりも断面係数が大きい第2土留パネル2と、を有している。第1土留パネル1は、波付け鋼板である。第2土留パネル2は、掘削孔201の壁面に面するスキンプレート20と、スキンプレート20の上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する主桁21と、スキンプレート20の左右の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板22と、を有するものである。
よって、本実施の形態1に係る土留構造物100は、土圧が大きく作用する掘削孔201や掘削孔201の深度が深い部分において、断面係数が大きく剛性が高い土留パネル2で構成された構造体102を配置することで、構造物全体の剛性を高めることができる。よって、補強リングの設置を省略することができるので、工期の短縮及び工費の削減を図ることができ、施工性及び安全性を向上させることができる。
実施の形態2.
次に、本実施の形態2に係る土留構造物100Aを図1~図8を参照しつつ、図9~図12に基づいて説明する。図9は、実施の形態2に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。図10は、実施の形態2に係る土留構造物を構成する第1土留パネルの一例を示した斜視図である。図11は、図10に示した第1土留パネルの縦断面図である。図12は、実施の形態2に係る土留構造物であって、第1土留パネルの連結孔と第2土留パネルの連結孔の関係を示した説明図である。なお、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
次に、本実施の形態2に係る土留構造物100Aを図1~図8を参照しつつ、図9~図12に基づいて説明する。図9は、実施の形態2に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。図10は、実施の形態2に係る土留構造物を構成する第1土留パネルの一例を示した斜視図である。図11は、図10に示した第1土留パネルの縦断面図である。図12は、実施の形態2に係る土留構造物であって、第1土留パネルの連結孔と第2土留パネルの連結孔の関係を示した説明図である。なお、実施の形態1と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
本実施の形態2に係る土留構造物100Aも、図9に示すように、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、断面係数が小さい第1土留パネル1で構成された構造体101の間に、該構造体101の第1土留パネル1よりも断面係数が大きい第2土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造を含む構成とし、構造物全体の剛性を高めている。
本実施の形態2に係る土留構造物100Aは、第1土留パネル1の構造が実施の形態1で説明した構造と異なる。本実施の形態2の第1土留パネル1は、図10及び図11に示すように、プランクプレート1Bから成る波付け鋼板で構成されている。プランクプレート1Bは、ライナープレート1Aよりも断面係数が大きく剛性が高い特徴を有する。つまり、本実施の形態2に係る土留構造物100Aは、上記実施の形態1の土留構造物100に比べて、土圧が大きい掘削孔201に好適に実施される。
プランクプレート1Bは、波形断面が矩形状に形成された構成である。プランクプレート1Bは、平面視が円弧状に形成されている。プランクプレート1Bは、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。プランクプレート1Bには、図10及び図11に示すように、上面及び下面を形成する円弧状の周方向フランジ部10と、円弧方向の両端縁に沿って設けられた軸方向フランジ部11と、が設けられている。軸方向フランジ部11は、プランクプレート1Bの円弧方向の両端縁にプレートを溶接して形成されている。
周方向フランジ部10には、孔軸方向Xに積み重ねた上下に隣り合う第1土留パネル1同士、又は第1土留パネル1と第2土留パネル2とを連結するための連結孔10aが円弧方向に沿って複数形成されている。上下に隣り合う第1土留パネル1は、周方向フランジ部10を突き合わせ、例えば連結孔10aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、上下に隣り合う第1土留パネル1の周方向フランジ部10を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔10aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
軸方向フランジ部11には、掘削孔201の周方向に配置した左右に隣り合う第1土留パネル1同士を連結するための連結孔11aが上下方向に沿って複数形成されている。左右に隣り合う第1土留パネル1は、軸方向フランジ部11を突き合わせ、連結孔11aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う第1土留パネル1の軸方向フランジ部11を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔11aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
第2土留パネル2は、上記実施の形態1において図4~図6に基づいて説明した構成である。なお、第1土留パネル1に形成された連結孔10aを第1連結孔とし、第2土留パネル2に形成された連結孔21aを第2連結孔とする。例えば図12に示すように、第1連結孔10aと第2連結孔21aとは、土留構造物100Aの内径側の端部Aから外径側に向かって同じ位置Bに形成されている。つまり、第1連結孔10aと第2連結孔21aは、土留構造物100Aの径方向において、端部Aから等しい距離に形成されている。このような構成とすることで、第2土留パネル2の内径側の端面と、第1土留パネル1の内径側の端面を揃えることができるので、土留構造物100Aの有効径を大きくすることができる。また、第2土留パネル2の内径側の端面が、第1土留パネル1の内径側の端面よりも土留構造物100Aの内径側に突き出さないので、内部空間が広くなり、作業者の作業スペースを確保することができる。なお、土留構造物100Aの内径側の端部Aから同じ位置とは、厳密に同じ位置である必要はなく、若干の寸法誤差があってもよい。また、図示は省略したが、第1土留パネル1の外面の位置と、第2土留パネル2の外面の位置とを合わせてもよい。
以上のように、本実施の形態2に係る土留構造物100Aにおいても、土圧が大きく作用する掘削孔201や掘削孔201の深度が深い部分において、断面係数が大きく剛性が高い土留パネル2で構成された構造体102を配置する構成なので、構造物全体の剛性を高めることができる。よって、補強リングの設置を省略することができるので、工期の短縮及び工費の削減を図ることができ、施工性及び安全性を向上させることができる。
実施の形態3.
次に、本実施の形態3に係る土留構造物100Bを図1~図12を参照しつつ、図13に基づいて説明する。図13は、実施の形態3に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。なお、実施の形態1及び2と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
次に、本実施の形態3に係る土留構造物100Bを図1~図12を参照しつつ、図13に基づいて説明する。図13は、実施の形態3に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。なお、実施の形態1及び2と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
本実施の形態3に係る土留構造物100Bも、図13に示すように、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、断面係数が小さい第1土留パネル1で構成された構造体101の間に、該構造体101の第1土留パネル1よりも断面係数が大きい第2土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造を含む構成とし、構造物全体の剛性を高めている。
本実施の形態3に係る土留構造物100Bは、第1土留パネル1の構造が実施の形態1及び2で説明した構造と異なる。第1土留パネル1は、ライナープレート1Aから成る波付け鋼板と、ライナープレート1Aよりも断面係数が大きいプランクプレート1Bから成る波付け鋼板の双方で構成されている。ライナープレート1Aから成る波付け鋼板は、上記実施の形態1において、図2及び図3に基づいて説明した通りである。また、プランクプレート1Bから成る波付け鋼板は、上記実施の形態2において、図10及び図11に基づいて説明した通りである。第2土留パネル2は、上記実施の形態1及び2において、図4~図7、図12に基づいて説明した通りである。
本実施の形態3に係る土留構造物100Bでは、図13に示すように、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、ライナープレート1Aで構成された構造体101の間に、ライナープレート1Aよりも断面係数が大きいプランクプレート1Bで構成された構造体101が配置された構造を含む構成としている。そして、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、ライナープレート1Aで構成された構造体101の間に、ライナープレート1A及びプランクプレート1Bよりも断面係数が大きい第2土留パネル2で構成された構造体102が配置された構造を含む構成としている。つまり、本実施の形態3に係る土留構造物100Bは、各段の土圧の大きさや深度の深さに応じた土留パネル(1、2)を使用して構造物全体の剛性を高めた構成としている。なお、図13に示した構造体(101、102)の配置は一例であり、これに限定されない。例えば第2土留パネル2で構成された構造体102は、プランクプレート1Bで構成された構造体101の間に配置してもよい。
以上のように、本実施の形態3に係る土留構造物100Bにおいても、土圧が大きく作用する掘削孔201や掘削孔201の深度が深い部分において、断面係数が大きく剛性が高い土留パネル2で構成された構造体102を配置する構成なので、構造物全体の剛性を高めることができる。よって、補強リングの設置を省略することができるので、工期の短縮及び工費の削減を図ることができ、施工性及び安全性を向上させることができる。
実施の形態4.
次に、本実施の形態4に係る土留構造物100Cを図1~図12を参照しつつ、図14に基づいて説明する。図14は、実施の形態4に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。なお、実施の形態1及び2と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
次に、本実施の形態4に係る土留構造物100Cを図1~図12を参照しつつ、図14に基づいて説明する。図14は、実施の形態4に係る土留構造物を模式的に示した正面図である。なお、実施の形態1及び2と同一の構成要素については、同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
本実施の形態4に係る土留構造物100Cは、図14に示すように、掘削孔201の孔軸方向Xにおいて、ライナープレート1Aから成る波付け鋼板で構成された構造体101の間に、ライナープレート1Aよりも断面係数が大きいプランクプレート1Bから成る波付け鋼板で構成された構造体101が配置された構造を含む構成とし、構造物全体の剛性を高めている。ライナープレート1Aから成る波付け鋼板は、上記実施の形態1において、図2及び図3に基づいて説明した通りである。また、プランクプレート1Bから成る波付け鋼板は、上記実施の形態2において、図10及び図11に基づいて説明した通りである。
本実施の形態4に係る土留構造物100Cは、上記実施の形態1~3に比べて土圧が小さい掘削孔201や掘削孔201の深度が浅い部分において、好適に実施される。本実施の形態4に係る土留構造物100Cにおいても、断面係数が大きく剛性が高いプランクプレート1Bで構成された構造体102を配置することで、構造物全体の剛性を高めることができる。よって、補強リングの設置を省略することができるので、工期の短縮及び工費の削減を図ることができ、施工性及び安全性を向上させることができる。
以上に、土留構造物(100、100A、100B、100C)を実施の形態に基づいて説明したが、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば図8に基づいて説明した土留構造物100の構築工法は、一例であって、上記実施の形態に限定されない。また、第1土留パネル1は、図示したライナープレート1A及びプランクプレート1Bに限定されず、その他の形態からなる土留パネルでもよい。また、第2土留パネル2は、図4~図6に示した構成に限定されず、第1土留パネル1よりも断面係数が大きい構成であれば他の形態でもよい。また、土留構造物(100、100A、100B、100C)は、図示した3種類の土留パネルに限定されず、4種類以上の土留パネルを組み合わせて構成してもよい。要するに、土留構造物(100、100A、100B、100C)は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
1 第1土留パネル(土留パネル)、1A ライナープレート、1B プランクプレート、2 第2土留パネル(土留パネル)、10 周方向フランジ部、10a 連結孔(第1連結孔)、11 軸方向フランジ部、11a 連結孔、20 スキンプレート、21 主桁、21a 連結孔(第2連結孔)、21b 抉り孔、22 継手板、22a 連結孔、22b 抉り孔、23 形状保持部材、100、100A、100B、100C 土留構造物、101、102 構造体、200 地面、201 掘削孔、300 井桁。
Claims (5)
- 地面を掘削して形成された掘削孔に、環状の構造体を孔軸方向に沿って複数段積み重ねて構築された土留構造物であって、
各々の前記構造体は、同じ断面係数から成る複数の土留パネルを環状に配置して形成された構成とされ、
各段の構造体の土留パネルの断面係数は、他段の構造体の土留パネルの断面係数と同一であるか又は異なるものであり、
掘削孔の孔軸方向において、断面係数が小さい前記土留パネルで構成された構造体の間に、該構造体の土留パネルよりも断面係数が大きい土留パネルで構成された構造体が配置された構造を含む、土留構造物。 - 前記土留パネルは、第1土留パネルと、前記第1土留パネルよりも断面係数が大きい第2土留パネルと、を有し、
前記第1土留パネルは、波付け鋼板であり、
前記第2土留パネルは、
前記掘削孔の壁面に面するスキンプレートと、
前記スキンプレートの上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する主桁と、
前記スキンプレートの左右の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板と、を有するものである、請求項1に記載の土留構造物。 - 第1土留パネルは、ライナープレートから成る波付け鋼板と、前記ライナープレートよりも断面係数が大きいプランクプレートから成る波付け鋼板のいずれか一方、又は双方で構成されている、請求項2に記載の土留構造物。
- 前記第2土留パネルは、上下の前記主桁の間に設けられ、該第2土留パネルの形状を保持する形状保持部材を更に備えている、請求項2又は3に記載の土留構造物。
- 前記第1土留パネルには、前記第2土留パネルに連結するための第1連結孔が形成され、
前記第2土留パネルには、前記第1土留パネルに連結するための第2連結孔が形成されており、
前記第1連結孔と前記第2連結孔とは、内径側の端部から外径側に向かって同じ位置に形成されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の土留構造物。
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