JP2022147418A - 炭素量子ドット複合体の製造方法、炭素量子ドット含有溶液の製造方法、および炭素量子ドットの製造方法 - Google Patents

炭素量子ドット複合体の製造方法、炭素量子ドット含有溶液の製造方法、および炭素量子ドットの製造方法 Download PDF

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真樹 石津
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Abstract

【課題】炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を非常に簡便な方法で製造する方法を提供すること。【解決手段】上記課題を解決する炭素量子ドット複合体の製造方法は、炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料、および反応性基を有する有機化合物、を混合して、混合物を調製する工程と、前記混合物を不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱して前記有機化合物を反応させ、炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を調製する工程と、を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素量子ドットの製造方法、当該炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体の製造方法、および当該炭素量子ドットを含む炭素量子ドット含有溶液の製造方法に関する。
炭素量子ドットは粒子径が数nmから数10nm程度の安定な炭素系微粒子であり、良好な蛍光特性を示すことから、太陽電池、ディスプレイ、セキュリティインク等のフォトニクス材料への使用が期待されている。また、低毒性で生体親和性も高いため、バイオセンサーやイメージング等の医療分野への応用も期待されている。
炭素量子ドットの合成方法として、溶媒中で有機化合物を加熱する方法が広く知られている。例えば、有機化合物の水溶液を密閉容器中で加熱する水熱合成法や、有機化合物の有機溶媒溶液を密閉容器中または還流下で加熱するソルボサーマル法等が知られている(特許文献1)。このような水熱合成法やソルボサーマル法において、マイクロ波を照射して加熱を行う方法も知られている。
特開2018-35035号公報
しかしながら、従来公知の方法では、耐高温・耐圧容器が必要であり、さらには反応終了液から塊となった残渣を分離する工程や、残渣分離後の溶液から更にカラム分離や透析等を行って炭素量子ドットを精製する工程が必要であった。
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を非常に簡便な方法で製造する方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の炭素量子ドット複合体の製造方法を提供する。
炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料、および反応性基を有する有機化合物を含む混合物を調製する工程と、前記混合物を不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱し、前記炭素材料および炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を調製する工程と、を有する、炭素量子ドット複合体の製造方法。
本発明は、以下の炭素量子ドット含有溶液の製造方法を提供する。
炭素量子ドットおよび溶媒を含む炭素量子ドット含有溶液の製造方法であって、上記炭素量子ドット複合体の製造方法により得られる炭素量子ドット複合体と、第1の溶媒とを混合して混合液を調製する工程と、前記混合液から、前記炭素量子ドットおよび前記第1の溶媒を含む溶液を分取する工程と、を含む、炭素量子ドット含有溶液の製造方法。
本発明は、以下の炭素量子ドットの製造方法を提供する。
上記炭素量子ドット含有溶液の製造方法により得られる炭素量子ドット含有溶液から、溶媒を除去する工程を含む、炭素量子ドットの製造方法。
本発明の炭素量子ドット複合体の製造方法によれば非常に簡便な方法で、炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体が得られる。
本明細書において、「~」で示す数値範囲は、「~」の前後に記載された数値を含む数値範囲を意味する。
1.炭素量子ドット複合体の製造方法
本発明の炭素量子ドットの複合体の製造方法は、炭素量子ドットと炭素材料とを少なくとも含む炭素量子ドット複合体を製造するための方法である。当該方法で得られる炭素量子ドット複合体は、通常、25℃、1気圧において固体状である。
上述のように、従来、炭素量子ドットの調製方法として、有機化合物の水溶液を密閉容器中で加熱する水熱合成法や、有機化合物の有機溶媒溶液を密閉容器中または還流下で加熱するソルボサーマル法等が知られていた。しかしながら、これらの方法では、製造プロセスが煩雑な上、投入エネルギーおよび時間がかかるという課題があった。さらに、得られた溶液から、炭素量子ドットのみを取り出すためには、カラム分離や透析等が必要であった。
これに対し、本発明の炭素量子ドット複合体の製造方法によれば、簡便な方法で炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体が得られる。またさらに、当該炭素量子ドット複合体から、炭素量子ドットを容易に取り出すことが可能である。その理由は以下のように考えられる。
本願の炭素量子ドット複合体の製造方法では、炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料と、反応性基を有する有機化合物と、を混合して、混合物を調製する(以下、「混合物調製工程」とも称する)。そして、当該混合物を不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱し、炭素材料および炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を調製する(以下、「加熱工程」とも称する)。
ここで、上記炭素材料の熱伝導性は非常に良好であり、これらは金属と同等またはそれ以上の熱伝導率を有する。そして、このような炭素材料と有機化合物との混合物を加熱すると、炭素材料が発熱体として働き、当該炭素材料から有機化合物に効率的に熱が伝わる。その結果、有機化合物から短時間で炭素量子ドットが生成する。
また、上記炭素材料は、いずれも溶媒に溶解し難い性質を有する。したがって、得られた炭素量子ドット複合体から、炭素量子ドットのみを溶媒によって抽出することが可能であり、複雑なカラム分離や透析等を行うことなく、炭素材料と炭素量子ドットとを分離できる。
また、上記加熱工程において、混合物を実質的に無溶媒で加熱して調製することから、製造プロセスが簡易になるだけでなく、加熱時間を短くでき、さらには投入エネルギー量も低減できる、という利点もある。以下、本発明の方法の各工程について、説明する。
・混合物調製工程
混合物調製工程では、炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料と、反応性基を有する有機化合物と、を混合して、混合物を調製する。ここで、混合物は、一部に液体状の成分を含んでいてもよいが、外部から供給される熱エネルギーが液体の気化熱として使われることがないとの点から、固体状であることが好ましい。
また、本工程で調製する混合物は、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、上記炭素材料や有機化合物以外の化合物を含んでいてもよい。例えば、反応性基を有さない有機系の化合物や無機系の化合物、層状粘土鉱物等をさらに有していてもよい。ただし、上記炭素材料および上記有機化合物の合計量は、混合物の総量に対して50質量%以上が好ましく、70質量%がさらに好ましい。上記炭素材料および上記有機化合物の合計量が50質量%以上であると、効率よく炭素量子ドットを調製可能である。
混合物に使用する炭素材料は、炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料であればよく、混合物は、これらを一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記炭素繊維の種類は特に制限されず、その例には、石油系ピッチ、リグニン系ピッチ、芳香族系合成ピッチ等のピッチを炭化して製造されるピッチ系炭素繊維や、ポリアクリロニトリル(PAN)等のアクリル繊維を炭化して得られるPAN系炭素繊維、レーヨン繊維やフェノール樹脂繊維を炭化して得られる炭素繊維等が含まれる。
また、上記活性炭の種類も特に制限されず、その例には、木材、木炭、もみ殻、ヤシ殻、果実殻等の植物;石油ピッチ、石炭ピッチ、石油タール、石炭タール等ピッチやタール;熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等の合成樹脂;等の炭素含有材料由来の活性炭が含まれる。
上記黒鉛の種類や構造は特に制限されず、その例には、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛、熱分解黒鉛、球状黒鉛、膨張黒鉛等が含まれる。また、フラーレンの構造も特に制限されず、その例には、C60フラーレン、C70フラーレン、C84フラーレン等が含まれる。難黒鉛化炭素も特に制限されず、例えば、石油ピッチ由来の材料を1000~1500℃で焼成することにより製造したものとすることができる。さらに、カーボンナノチューブは、炭素によって作られる六員環ネットワーク(グラフェンシート)が単層あるいは多層の同軸管状になったものであればよく、その構造は特に制限されない。
ここで、上記炭素材料の形状は特に制限されず、繊維状であってもよく、球状であってもよい。炭素材料が繊維状である場合には、その平均直径は5μm以上30μm以下が好ましく、5μm以上20μm以下がより好ましい。上記平均直径が5μm以上20μm以下であると、繊維状の炭素材料が網目構造を形成しやすくなり、有機化合物に均一に熱を伝えやすくなる。また、繊維状の炭素材料の平均繊維長は0.02mm以上60mm以下が好ましく、0.05mm以上25mm以下がより好ましい。上記平均繊維長が0.05mm以上25mm以下であると、炭素繊維の取り扱い性が良好になる。
なお、上記炭素繊維の平均直径は、以下の方法によって測定することができる。先端を針金で縛った試料を内径5mmのテフロン(登録商標)チューブに通し、エポキシ樹脂液を馴染ませて試料をチューブの中に引き込み、約110℃の乾燥機でおよそ1時間硬化させる。チューブを切断し、その中に入っていた部分をステンレス製、直径25mm、高さ30mmの包埋試料調整用型枠に固定後、エポキシ樹脂液を流し込み約110℃の乾燥機でおよそ2時間加熱硬化後、冷却して包埋試料を取り出す。包埋試料をリファインテック社製ニューマックスポリッシャーHV APN-128B型研磨機で鏡面に研磨後、ニレコ社製ルーゼックスIIIU画像解析装置で1ロット当り100~130本の繊維直径を測定した平均とする。
また、上記炭素繊維の平均繊維長は、以下の方法によって測定することができる。30mLの三角フラスコにスポイトで1級試薬の流動パラフィン5mLを量り取り、ミクロスパチュラで試料を採取し前述した流動パラフィンに分散させる。該フラスコからマイクロピペットで300μLの分散液を量り取り、1枚目のスライドガラス上に落とし、2枚目のスライドガラス板を重ねて圧着させる。本ガラス板をニレコ社製ルーゼックスIIIU画像解析装置にセットし、1000~1300本/ロットの測定本数で各々単繊維の繊維長を測定した平均とする。
一方、炭素材料が球状である場合、その平均粒径は10μm以上1500μm以下が好ましく、30μm以上1000μm以下がより好ましく、50μm以上700μm以下がさらに好ましい。当該粒径は、日本工業規格JIS K1474:2014に基づき測定されるメジアン径である。炭素材料の粒径が当該範囲であると、炭素材料の温度が短時間で高まりやすく、効率よく有機化合物に熱を伝えやすくなる。
ここで、混合物中の炭素材料の量は、後述の有機化合物の量100質量部に対して10質量部以上500質量部以下が好ましく、20質量部以上300質量部以下がより好ましい。有機化合物の量に対して、炭素材料の量が10質量部以上であると、炭素材料から有機化合物に効率よく熱が伝わりやすくなる。一方で、炭素材料の量が500質量部超であっても、相対的に有機化合物の量が少なくなって、熱伝導の効果の向上はあまり望めない。
一方、混合物に使用する有機化合物は、反応性基を有し、炭化や縮合反応等によって炭素量子ドットを生成可能な化合物であればよい。混合物は、一種の有機化合物のみを含んでいてもよく、二種以上の有機化合物を含んでいてもよい。混合物が二種以上の有機化合物を含む場合、これらは互いに反応しやすい基を有することが好ましい。
ここで、有機化合物が有する「反応性基」とは、後述の加熱工程において、有機化合物どうしの重縮合反応等を生じさせるための基であり、炭素量子ドットの主骨格の形成に寄与する基である。なお、加熱工程によって得られる炭素量子ドットには、これらの反応性基の一部が残存してもよい。反応性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミド基、スルホ基、アミノ基等が含まれる。
上記反応性基を有する有機化合物の例には、カルボン酸、アルコール、フェノール類、アミン化合物、糖類、イミダゾール、トリアジン類、トリアゾール類、トリアゼン類、およびオキシム類が含まれる。有機化合物は、1気圧25℃で固体状であってもよく、液体状であってもよいが、1気圧25℃で固体状であることがより好ましい。
有機化合物の一種であるカルボン酸は、分子中にカルボキシ基を1つ以上有する化合物(ただし、フェノール類、アミン化合物、または糖に相当するものは除く)であればよい。カルボン酸の例には、ギ酸、酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、α-リポ酸、4-カルボキシフェニルボロン酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ポリアクリル酸、(エチレンジチオ)二酢酸、チオリンゴ酸、テトラフルオロテレフタル酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン等の2価以上の多価カルボン酸;クエン酸、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、5-スルホサリチル酸等のヒドロキシ酸;が含まれる。
アルコールは、炭素原子にヒドロキシ基が1つ以上結合した化合物(ただし、カルボン酸、フェノール類、アミン化合物、または糖に相当するものは除く)であればよい。アルコールの例には、エチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アスコルビン酸、ポリエチレングリコール、ソルビトール、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド等の多価アルコールが含まれる。
フェノール類は、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合した構造を有する化合物であればよい。フェノール類の例には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ピロガロール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、没食子酸、タンニン、リグニン、カテキン、アントシアニン、ルチン、クロロゲン酸、リグナン、クルクミン、3-ヒドロキシフェニルボロン酸、3-ヒドロキシフェニルボロン酸ピナコール、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸水和物等が含まれる。
アミン化合物の例には、1,2-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、尿素、チオ尿素、チオシアン酸アンモニウム、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノール、メラミン、シアヌル酸、バルビツール酸、葉酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、ジシアンジアミド、グアニジン、アミノグアニジン、ホルムアミド、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、アルギニン、ヒスチジン、リシン、グルタチオン、RNA、DNA、システアミン、メチオニン、ホモシステイン、タウリン、チアミン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、4,5-ジフルオロ-1,2-フェニレンジアミン、スルファニル酸、o-ホスホセリン、アデノシン5’-三リン酸、グアニジンリン酸塩、グアニル尿素リン酸塩、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ホウ酸トリエタノールアミン、3-アミノフェニルボロン酸、4-(ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸、2-アミノピリミジン-5-ボロン酸、4-アミノフェニルボロン酸ピナコール、o-ホスホリルエタノールアミン、スルファニル酸等が含まれる。
糖類の例には、グルコース、スクロース、グルコサミン、セルロース、キチン、キトサン等が含まれる。
イミダゾールの例には、1-(トリメチルシリル)イミダゾール等が含まれる。トリアジン類の例には、1,2,4-トリアジンが含まれ、トリアゾール類の例には、1,3,5-トリアジン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾールが含まれる。トリアゼン類の例には、1,3-ジフェニルトリアゼン、1-メチル-3-p-トリルトリアゼンが含まれ、オキシム類の例には、ベンズアミドオキシム、p-ベンゾキノンジオキシムが含まれる。
上記の中でも、縮合反応が効率的に進行する有機化合物が好ましく、好ましいものの一例として、カルボン酸、フェノール類、アミン化合物、もしくはカルボン酸とアミン化合物との組み合わせが挙げられる。
一方、上記炭素材料や有機化合物以外の成分(以下「その他の成分」とも称する)の例には、ホウ素を含む化合物や、リンを含む化合物、硫黄を含む化合物、ケイ素を含む化合物、フッ素を含む化合物、層状粘土鉱物等が含まれる。
ホウ素を含む化合物の例には、ホウ素、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウム、酸化ホウ素、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリオクタデシル、ホウ酸トリフェニル、2-エトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、2,4,6-トリメトキシボロキシン、2,4,6-トリフェニルボロキシン、トリス(トリメチルシリル)ボラート、ホウ酸トリス(2-シアノエチル)、2-アントラセンボロン酸、9-アントラセンボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸、4,4’-ビフェニルジボロン酸、2-ブロモフェニルボロン酸、4-ブロモ-1-ナフタレンボロン酸、3-ブロモ-2-フルオロフェニルボロン酸、3-シアノフェニルボロン酸、4-シアノ-3-フルオロフェニルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、3-フルオロフェニルボロン酸、4-メルカプトフェニルボロン酸、1-ナフタレンボロン酸、9-フェナントレンボロン酸、1,4-フェニレンジボロン酸、1-ピレンボロン酸、2-ブロモピリジン-3-ボロン酸、2-フルオロピリジン-3-ボロン酸、4-ピリジルボロン酸、キノリン-8-ボロン酸、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン、ジボロン酸、水素化ホウ素ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素等が含まれる。
リンを含む化合物の例には、リン単体、酸化リン、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、フィチン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、塩化リン、臭化リン、ホスホノ酢酸トリエチル、リン酸メチル、亜リン酸トリエチル、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、フェニルホスホン酸等が含まれる。
また、硫黄を含む化合物の例には、硫黄、チオ硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、水硫化ナトリウム等が含まれる。
ケイ素を含む化合物の例には、テトラクロロシラン、テトラエトキシシラン等が含まれる。フッ素を含む化合物の例には、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、2-(ペルフルオロヘキシル)エタノール、フッ化ナトリウムが含まれる。
さらに、その他の成分の例には、層状粘土鉱物等も含まれる。層状粘土鉱物は、ケイ素、アルミニウム、酸素等が所定の構造で配列した結晶層の積層体であり、一般的に、結晶層どうしの間に、水;プロトン、金属イオンおよび4級アンモニウムイオン等の陽イオン;ケイ酸イオン、リン酸イオンおよび硫酸イオン等の陰イオン;石油系炭化水素、アルコールおよびケトン等の有機化合物などが取り込まれている。層状粘土鉱物は、アニオン交換性であってもよく、カチオン交換性であってもよい。
層状粘土鉱物の例には、スメクタイト、層状複水酸化物、カオリナイト、および雲母等が含まれる。混合物が、層状粘土鉱物を含むと、当該層状粘土鉱物の層間をテンプレートとして、炭素量子ドットが形成されやすくなる。これらの中でもスメクタイトまたは層状複水酸化物が、炭素量子ドットを形成するのに適した平均層間隔を有する点で好ましい。
混合物中のその他の成分の量は、その種類に合わせて適宜選択される。混合物の総量に対する、その他の成分の合計量は、0質量%~50質量%が好ましく、0質量%~30質量%がより好ましい。これらの化合物の量が50質量%以下であると、相対的に炭素材料や有機化合物の量が十分に多くなり、効率よく炭素量子ドットを調製できる。
混合物の調製方法は、上述の炭素材料と、上述の有機化合物と、必要に応じてその他の成分とを均一に混合可能であれば、特に制限されない。例えば、乳鉢ですりつぶしながら混合したり、ボールミル等によって粉砕しながら混合したりしてもよい。さらに、有機化合物またはその他の成分が液体状である場合、固体状の成分を液体状の成分に溶解、混和あるいは分散させて混合してもよい。また、少量の溶媒に各材料を溶解、混和あるいは分散させて混合したりしてもよい。この場合、後述の加熱工程で、実質的に無溶媒で加熱を行えるように、溶媒の量や種類を調整することが好ましい。具体的には、混合物の温度が加熱温度に到達するまでに、略全ての溶媒が揮発するよう、溶媒の量や種類を調整することが好ましい。なお、本明細書における溶媒とは、1気圧25℃において液体であり、かつ上記有機化合物に相当しない化合物、すなわち加熱されても炭素量子ドットの骨格を構成しない化合物をいう。
また、上記炭素材料が、活性炭等、粉体表面および粉体内部に細孔を有する場合には、当該炭素材料の細孔内に有機化合物を付着させてもよい。この場合、まず、減圧によって炭素材料の細孔内の気体を除去する。そしてこの状態の炭素材料と、必要に応じて溶媒に溶解または分散させた有機化合物とを混合することで、有機化合物を炭素材料の細孔内に入りこませる。そして、溶媒を、減圧乾燥等によって除去することにより、炭素材料の細孔内に有機化合物が固着する。このように、炭素材料と有機化合物とを密着させると、後述の加熱工程で、有機化合物に熱が伝わりやすくなり、より短時間で炭素量子ドットを調製しやすくなる。
・加熱工程
加熱工程では、上述の混合物調製工程で調製した混合物を、不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱する。本明細書における「不活性雰囲気」とは、酸素濃度が十分に低い雰囲気をいう。例えば、加熱を電磁波の照射によって行う場合の雰囲気中に酸素が存在すると、放電による燃焼等が生じる可能性がある。そこで、加熱は窒素雰囲気下またはアルゴン雰囲気下で行うことが好ましい。
また、本明細書における「実質的に無溶媒で加熱」とは、有機化合物が炭化(縮合)する温度(加熱温度)に到達した時点で、混合物中の溶媒の量が、混合物の総量に対して5質量%以下であることをいう。加熱温度における混合物中の溶媒の量は、2質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。したがって、上述のように、加熱温度までに十分に揮発可能であれば、加熱開始時に混合物が溶媒を含んでいてもよい。なお、炭素量子ドットの原料となる有機化合物は、当該加熱温度において液体状であってもよい。
混合物の加熱方法は、混合物の温度を十分に高めることが可能な方法であればよく、その例には、電磁波の照射や、ヒータによる加熱等が含まれる。これらの中でも特に、電磁波の照射が好ましい。上述の炭素材料を含む混合物に電磁波を照射すると、誘電加熱が効果的に行われる。したがって、少ないエネルギーかつ短時間で有機化合物を縮合させることができ、炭素量子ドット複合体を効率よく調製できる。
電磁波の照射によって加熱を行う場合の、電磁波の種類は特に制限されないが、上記誘電加熱を行うことが可能な周波数が好ましく、例えば周波数1MHz以上300GHz以下の電磁波が好ましい。これらの中でも誘電加熱を効率よく行えるとの観点で、電磁波周波数は、50MHz以上50GHz以下がより好ましく、100MHz以上30GHz以下がさらに好ましい。
また、電磁波の照射強度は、混合物の温度に応じて適宜選択される。ワット数は1W以上1500W以下が好ましく、1W以上1000W以下がより好ましい。またこのとき、電磁波の強度を、混合物の温度が70℃以上700℃以下になるように調整することが好ましく、加熱時の混合物の温度は100℃以上500℃以下がより好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。
また、電磁波による加熱時間は0.01時間以上10時間以下が好ましく、0.01時間以上5時間以下がより好ましく、0.01時間以上1時間以下がさらに好ましい。電磁波の照射時間によって、得られる炭素量子ドットの粒子径、ひいては発光波長等の特性を調整できる。
上記電磁波の照射は、例えば半導体式電磁波照射装置等によって行うことができる。また、電磁波の照射は、上記混合物の温度を赤外放射温度計等によって確認しながら行うことが好ましい。
また、混合物は、一般的なヒータ(例えばオイルバス)等によって加熱してもよい。このときの加熱温度は70℃以上700℃以下が好ましく、100℃以上500℃以下がより好ましく、100℃以上300℃以下がさらに好ましい。また、加熱温度での保持時間は0.01時間以上45時間以下が好ましく、0.1時間以上30時間以下がより好ましく、0.5時間以上10時間以下がさらに好ましい。加熱時間によって、得られる炭素量子ドットの粒子径、ひいては発光波長等の特性を調整できる。
当該加熱工程により、炭素量子ドットおよび炭素材料を含む炭素量子ドット複合物が得られる。当該炭素量子ドット複合物に含まれる炭素量子ドットは、通常1気圧、25℃において固体である。当該炭素量子ドットを原子間力顕微鏡(AFM)により観察して測定される平均粒子径は、1nm以上100nm以下が好ましく、1nm以上80nm以下がより好ましい。炭素量子ドットの平均粒子径が当該範囲であると、量子ドットとしての性質が十分に得られやすい。なお、上記炭素量子ドットの平均粒子径は、3個以上の炭素量子ドットについて測定し、これらの平均値を測定することが好ましい。
さらに、当該炭素量子ドットは、波長350nm以上700nm以下の光を照射したときに、可視光または近赤外光を発することが好ましく、このときの極大発光波長は350nm以上700nm以下が好ましく、450nm以上680nm以下がより好ましく、460nm以上680nm以下が特に好ましい。極大発光波長が当該範囲であると、本発明の方法で得られる炭素量子ドット組成物(特に炭素量子ドット)を種々の用途に使用できる。
なお、得られた炭素量子ドット複合体は、そのままの状態、すなわち炭素量子ドットおよび炭素材料を含む状態で、各種用途に使用してもよく、後述のように、炭素量子ドットと炭素材料とを分離してから使用してもよい。
2.炭素量子ドット含有溶液の製造方法
上述の炭素量子ドット複合体から、炭素量子ドットを溶媒によって抽出し、炭素量子ドットおよび溶媒を含む炭素量子ドット含有溶液としてもよい。当該炭素量子ドット含有溶液を製造する場合、上述の炭素量子ドット複合体の製造方法により得られた炭素量子ドット複合体と、第1の溶媒とを混合して混合液を調製する工程(以下、「混合液調製工程」とも称する)と、当該混合液から、炭素量子ドットおよび第1の溶媒を含む溶液を分取する工程(以下、「分離工程」とも称する)とを少なくとも行う。そして、得られた溶液(炭素量子ドットおよび第1の溶媒を含む溶液)を、炭素量子ドット含有溶液として、各種用途に使用してもよい。
一方で、上記分離工程によって得られた溶液(炭素量子ドットおよび第1の溶媒を含む溶液)から第1の溶媒を除去し、固体状の炭素量子ドットを得る工程(以下、「固化工程」とも称する)や、当該固体状の炭素量子ドットと第2の溶媒とを混合する工程(以下、「再溶解工程」とも称する)をさらに行ってもよい。この場合、炭素量子ドットと第2の溶媒とを含む溶液を、炭素量子ドット含有溶液とすることができる。
上述のように、炭素量子ドット複合体中の炭素材料は、溶媒に溶解し難い。したがって、複雑な工程を経ることなく、上記のように、炭素量子ドットおよび溶媒を含む炭素量子ドット含有溶液を調製できる。
ここで、上記混合液調製工程では、炭素量子ドット複合体の製造方法により得られた炭素量子ドット複合体と、第1の溶媒とを混合して混合液を調製する。炭素量子ドット複合体と混合する第1の溶媒は、炭素材料を溶解させず、炭素量子ドットのみを溶解可能な溶媒であれば特に制限されない。その例には、水、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等が含まれる。また、炭素量子ドット複合体と混合する第1の溶媒は、炭素量子ドットを十分に抽出可能な量であれば特に制限されず、炭素量子ドットの量に応じて適宜選択される。
また、混合液調製工程では、上記第1の溶媒の添加後、上記炭素粒子ドット複合体から炭素量子ドットを抽出するため、十分に攪拌を行うことが好ましい。攪拌方法は特に制限されず、一般的な方法とすることができる。
一方、上記分離工程では、混合液から、炭素量子ドットおよび第1の溶媒を含む溶液を分取する。上記溶液を分取する方法は特に制限されず、例えば遠心分離やろ過等であってもよく、上記混合液を静置後、上澄みを分取する方法等であってもよい。
また、上記固化工程では、分離工程で分離した炭素量子ドットおよび第1の溶媒を含む溶液中の第1の溶媒を除去し、固体状の炭素量子ドットを取り出す。当該方法で取り出した炭素量子ドットは、上記溶液の状態と比較して、発光量子収率が低下すること等があるが、後述の再溶解工程によって溶媒に溶解させることで、再度高い発光量子収率を示すようになる。また、当該固化工程を行うと、炭素量子ドットを固体状で保管したり輸送したりすることが可能となり、保管コストや輸送コストを削減できるとの観点で好ましい。
第1の溶媒の除去方法は特に制限されず、第1の溶媒の種類等に応じて適宜選択されるが、一例として、蒸発乾固等が挙げられる。
また、再溶解工程では、上記固体状の炭素量子ドットと、第2の溶媒とを混合する。このとき、使用する第2の溶媒は、第1の溶媒と同じであってもよく、異なっていてもよい。第2の溶媒は、炭素量子ドットを十分に溶解可能であれば、その種類は特に制限されず、第1の溶媒と同様の溶媒とすることができる。また、第2の溶媒の量は、炭素量子ドット含有溶液の用途に応じて適宜選択される。
3.炭素量子ドットの製造方法
上述の方法で得られる炭素量子ドット含有溶液から、溶媒を除去し、炭素量子ドットを製造してもよい。溶媒の除去方法は、上述の炭素量子ドット含有溶液の製造方法の固化工程と同様の方法とすることができる。
得られる炭素量子ドットは、25℃、1気圧で固体である。炭素量子ドットをそのまま、所望の用途に使用してもよく、他の成分と混合して使用してもよい。
4.用途
上述の製造方法で得られる炭素量子ドット複合体や炭素量子ドット含有溶液や、炭素量子ドットは、各種用途に利用可能である。これらの用途は、特に制限されず、炭素量子ドットの性能に合わせて、例えば太陽電池、ディスプレイ、セキュリティインク、量子ドットレーザ、バイオマーカー、照明材料、熱電材料、光触媒、特定物質の分離剤等に使用できる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例とともに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[発光特性の評価方法]
(固体状の成分の発光特性の評価方法)
炭素量子ドット複合体等、固体状の成分については、これらをKBrプレートに挟み、プレスして測定用サンプルを作製した。積分球ユニットILF-835付属の分光蛍光光度計FP-8500(日本分光社製)を用いて、当該測定用サンプルの固体状態での発光波長(蛍光波長)、発光量子収率を評価した。励起光は、組成物の発光量子収率が最大となる波長の光を照射した。なお、一部の成分については、波長365nmの光による励起の有無のみを確認した。
(液体状の成分の発光特性の評価方法)
炭素量子ドット含有溶液等、液体状の成分については、石英ガラス製の分光測定用セルに入れ、積分球ユニットILF-835付属の分光蛍光光度計FP-8500(日本分光社製)を用いて、当該測定用サンプルの溶液状態での発光波長(蛍光波長)、発光量子収率を評価した。励起光は、組成物の発光量子収率が最大となる波長の光を照射した。
[実施例1]
(炭素量子ドット複合体(A)の調製)
有機化合物(クエン酸0.15gおよびジシアンジアミド0.1g)と、炭素材料(炭素繊維クレカフェルトF-205X(クレハ社製、黒鉛グレード、標準質量500g/m)0.1gと、を乳鉢ですりつぶしながら混合した。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、オイルバス中で200℃、5分加熱して、有機化合物を反応させた。反応後、室温に冷却して、炭素量子ドットおよび炭素材料(炭素繊維)を含む固体状の炭素量子ドット複合体(A)を得た。固体状の炭素量子ドット複合体(A)について、上述の方法で発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で微かに発光した。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(A)の調製)
続いて、固体状の炭素量子ドット複合体(A)にメタノール5mlを加えて攪拌した。その後、炭素繊維を遠心分離によって除去し、炭素量子ドットおよびメタノールを含む炭素量子ドット含有メタノール溶液(A)を得た。当該炭素量子ドット含有メタノール溶液(A)について、上述の方法で発光特性を確認したところ、励起波長440nmにおける最大発光波長が540nmであり、量子収率は17%であった。また、炭素量子ドット含有メタノール溶液(A)の均一性を目視で確認したところ、均一であった。
[実施例2]
(炭素量子ドット複合体(B)の調製)
有機化合物(クエン酸0.15gおよびジシアンジアミド0.1g)と、炭素材料(炭素繊維クレカフェルトF-205X(クレハ社製、黒鉛グレード、標準質量500g/m)0.1gと、を乳鉢ですりつぶしながら混合した。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、富士電波工機社製マイクロ波照射装置にて、矩形の導波管型の共振器の磁場最大点で加熱を行った。このとき、赤外放射温度計で試料の温度が200℃になるように出力を調整しながらマイクロ波(周波数:2.45GHz)を5分間照射して、有機化合物を反応させた。有機化合物の反応終了後、室温に冷却して、炭素量子ドットおよび炭素繊維を含む、固体状の炭素量子ドット複合体(B)を得た。当該炭素量子ドット複合体(B)について発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で弱く発光した。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(B1)の調製)
上記炭素量子ドット複合体(B)にメタノール5mlを加えて攪拌後、炭素材料(炭素繊維)を遠心分離によって除去し、炭素量子ドットおよびメタノールを含む炭素量子ドット含有メタノール溶液(B1)を得た。当該炭素量子ドット含有メタノール溶液(B1)の発光特性を確認したところ、励起波長480nmにおける最大発光波長535nmであり、量子収率は14%であった。また、炭素量子ドット含有メタノール溶液(B1)の均一性を目視で確認したところ、均一であった。
次に、炭素量子ドット含有メタノール溶液(B1)からメタノールを蒸発させ、80℃で3時間真空乾燥して、固体状の炭素量子ドット(B1)を取り出した。当該炭素量子ドット(B1)の発光特性を確認したところ、励起波長480nmにおける最大発光波長が580nmであり、量子収率は1%であった。
(炭素量子ドット含有水溶液(B2)の調製)
一方、上述の方法で調製した炭素量子ドット複合体(B)に水5mlを加えて攪拌した。その後、炭素繊維を遠心分離によって除去し、炭素量子ドットおよび水を含む炭素量子ドット含有水溶液(B’)を得た。得られた炭素量子ドット含有水溶液(B’)について、発光特性を確認したところ、励起波長440nmにおける最大発光波長が550nmであり、量子収率は9%であった。
次に、上記炭素量子ドット含有水溶液(B’)から水を蒸発させ、80℃で3時間真空乾燥して、炭素量子ドット(B’)を得た。当該炭素量子ドット(B’)について発光特性を確認したところ、発光が確認されなかった。続いて、当該炭素量子ドット(B’)に水2mlを加えて炭素量子ドット含有水溶液(B2)を調製した。当該炭素量子ドット含有水溶液(B2)の発光特性を確認したところ、励起波長420nmにおける最大発光波長が550nmであり、量子収率は6%であった。
〔実施例3〕
(炭素量子ドット複合体(C)の調製)
炭素繊維クレカフェルトF-205Xを炭素繊維クレカチョップC-203S(クレハ社製、黒鉛系、繊維長3mm、繊維直径14.5μm)0.1gに変更した以外は実施例2と同様にして、炭素繊維および炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体(C)を得た。当該炭素量子ドット複合体(C)は365nmの励起光で弱く発光した。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(C1)の調製)
炭素量子ドット複合体(C)にメタノール5mlを加えて攪拌後、炭素繊維を遠心分離して第1の炭素量子ドット含有メタノール溶液(C1)を得た。当該第1の炭素量子ドット含有メタノール溶液(C1)について発光特性を確認したところ、励起波長440nmにおける最大発光波長が545nmであり、量子収率は14%であった。また、炭素量子ドット含有メタノール溶液(C1)の均一性を目視で確認したところ、均一であった。
次に、上記第1の炭素量子ドット含有溶液(C1)からメタノールを蒸発させ、80℃で3時間真空乾燥させて、固体状の炭素量子ドット(C1)を得た。当該炭素量子ドット(C1)の発光特性を確認したところ、励起波長500nmにおける最大発光波長が590nmであり、量子収率は0.3%であった。
(炭素量子ドット含有水溶液(C2)の調製)
一方で、上述の方法で調製した炭素量子ドット複合体(C)に水5mlを加えて攪拌した。その後、炭素繊維を遠心分離により除去して、炭素量子ドットおよび水を含む炭素量子ドット含有水溶液(C’)を得た。得られた炭素量子ドット含有水溶液について発光特性を確認したところ、励起波長460nmにおける最大発光波長が550nmであり、量子収率は11%であった。
次に、上記炭素量子ドット含有水溶液(C’)から水を蒸発させ、80℃で3時間真空乾燥して炭素量子ドット(C’)を得た。当該炭素量子ドット(C’)について発光特性を確認したところ、発光は確認されなかった。さらに、上記炭素量子ドット(C’)に水2mlを加えて炭素量子ドット含有水溶液(C2)を得た。当該炭素量子ドット含有水溶液(C2)について発光特性を確認したところ、励起波長440nmにおける、最大発光波長が550nmであり、量子収率は9%であった。
〔実施例4〕
(炭素量子ドット複合体(D)の調製)
炭素繊維クレカフェルトF-205Xを炭素繊維クレカチョップC-106T(クレハ社製、炭素系、繊維長6mm、繊維直径18.0μm)0.1gに変更した以外は実施例2と同様に、炭素量子ドットおよび炭素繊維を含む炭素量子ドット複合体(D)を得た。炭素量子ドット複合体(D)について、実施例1と同様に発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で弱く発光した。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(D1)の調製)
炭素量子ドット複合体(D)にメタノール5mlを加えて攪拌後、炭素繊維を遠心分離によって除去し、炭素量子ドットおよびメタノールを含む炭素量子ドット含有メタノール溶液(D1)を得た。得られた炭素量子ドット含有メタノール溶液(D1)について発光特性を確認したところ、励起波長400nmにおける最大発光波長が530nmであり、量子収率は18%であった。また、炭素量子ドット含有メタノール溶液(D1)の均一性を目視で確認したところ、均一であった。
次に、上記炭素量子ドット含有メタノール溶液(D1)からメタノールを蒸発させ、80℃で3時間真空乾燥して炭素量子ドット(D1)を得た。当該炭素量子ドット(D1)について発光特性を確認したところ、励起波長500nmにおける最大発光波長は580nmであり、量子収率は1.8%であった。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(D2)の調製)
上記炭素量子ドット(D1)にメタノール2mlを加えて再溶解させて、炭素量子ドット含有メタノール溶液(D2)を得た。当該第2の炭素量子ドット含有メタノール溶液(D2)の発光特性を確認したところ、励起波長420nmにおける最大発光波長が530nmであり、量子収率は17%であった。
〔実施例5〕
(炭素量子ドット複合体(E)の調製)
球状活性炭A-BAC LP(クレハ社製、平均粒径630μm)1gを入れた50mlナス型フラスコを25℃で減圧下に置き、活性炭細孔内の気体を除去した。減圧状態を保ったまま、有機化合物(クエン酸0.3gおよびジシアンジアミド0.2g)を溶かしたメタノール溶液2mlを上記活性炭に滴下した。さらに30分間減圧してメタノールを除去し、活性炭の表面および細孔内部に、有機化合物を付着させた混合物を得た。次に、実施例2と同様に当該混合物にマイクロ波(周波数:2.45GHz)を5分間照射して、炭素量子ドットおよび球状活性炭を含む炭素量子ドット複合体(E)を得た。当該炭素量子ドット複合体(E)の発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で弱く発光した。
(炭素量子ドット含有メタノール溶液(E)の調製)
上記炭素量子ドット複合体(E)0.15gにメタノール5mlを加えて攪拌した。その後、溶液の上澄みを分離して、炭素量子ドットおよびメタノールを含む第1の炭素量子ドット含有溶液(E)を得た。当該第1の炭素量子ドット含有溶液(E)の発光特性を確認したところ、励起波長420nmにおける最大発光波長は540nmであり、量子収率は15%であった。また、炭素量子ドット含有溶液(E)の均一性を目視で確認したところ、均一であった。
〔比較例1〕
クエン酸0.15gおよびジシアンジアミド0.1gを乳鉢ですりつぶしながら混合した。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、オイルバス中で170℃、90分の通常加熱を行った。得られた固形物(F)の発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で発光しなかった。当該比較例では、炭素量子ドットが生成していないと判断し、メタノールによる抽出を行わなかった。
〔比較例2〕
クエン酸0.06gおよびジシアンジアミド0.04gを乳鉢ですりつぶしながら混合した。当該混合物を内容積15mlのねじ口試験管に入れ、ゴムパッキン付きねじ口キャップで封をした。そして、ねじ口試験管内に窒素を流通させながら、実施例2と同様にマイクロ波を照射して200℃で5分加熱して、固形物(G)を得た。なお、200℃を維持するのに磁場の頻繁な調整を必要とした。得られた固形物(G)の発光特性を確認したところ、波長365nmの励起光で発光しなかった。当該比較例では、炭素量子ドットが生成していないと判断し、メタノールによる抽出を行わなかった。
〔比較例3〕
クエン酸0.01g、ジシアンジアミド0.0073g、およびホウ酸0.053gをイオン交換水20mlに溶解させて、約0.05mol/lの濃度の水溶液を調製した。当該水溶液を容積100mlのポリテトラフルオロエチレン製の密閉容器に入れ、ホットスターラー式反応分解装置RDV-TMS-100(三愛科学社製)を用いて200℃で8時間定容加熱し、炭素量子ドットを含む水溶液(H)を作製した。得られた溶液について、発光特性を確認したところ、励起波長400nmにおける最大発光波長は476nmであり、量子収率は3.4%であった。
Figure 2022147418000001
上記表1に示すように、有機化合物と炭素材料との混合物を調製し、これを不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱すると、数分という短時間で、炭素量子ドット複合体が得られた(実施例1~5)。また特に、実施例2~5では加熱にマイクロ波照射を用いることで、効率的に加熱を行うことができた。炭素材料がマイクロ波照射によって発熱体として働き、その熱で有機化合物原料を効率的に加熱できたと考えられる。
また、これらの炭素量子ドット複合体から、水やメタノールで、炭素量子ドットを容易に抽出することが可能であり、炭素量子ドットおよび溶媒を含む炭素量子ドット含有溶液は、良好な発光収率を示した。また、実施例2~4で得られる炭素量子ドット含有溶液から溶媒を蒸発させ、炭素量子ドットのみを取り出した場合、溶液の状態と比較して、発光量子収率が低下したが、溶媒に再溶解させることで、再び発光するようになった。
一方、比較例1のように、炭素材料を用いずに有機化合物のみを通常加熱した場合は、90分加熱しても、炭素量子ドットは得られなかった。また、比較例2のように炭素材料を用いることなく、マイクロ波を照射した場合にも、炭素量子ドットは得られなかった。さらに、比較例3のように、有機化合物を水熱合成した場合、炭素量子ドット含有溶液を得るのに耐圧密閉容器が必要であり、さらに長時間を要した。
本発明の炭素量子ドット複合体の製造方法によれば、簡便なプロセスで、炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を調製できる。したがって、当該方法で製造される炭素量子ドット複合体は、各種照明材料や熱電材料等、種々の製品に適用可能である。

Claims (7)

  1. 炭素繊維、活性炭、黒鉛、フラーレン、難黒鉛化炭素、およびカーボンナノチューブからなる群から選択される一種以上の炭素材料、および反応性基を有する有機化合物を含む混合物を調製する工程と、
    前記混合物を不活性雰囲気下、実質的に無溶媒で加熱し、前記炭素材料および炭素量子ドットを含む炭素量子ドット複合体を調製する工程と、
    を有する、炭素量子ドット複合体の製造方法。
  2. 前記炭素量子ドット複合体を調製する工程において、前記混合物に電磁波を照射する、
    請求項1に記載の炭素量子ドット複合体の製造方法。
  3. 前記混合物中の前記炭素材料の量が、前記有機化合物の量100質量部に対して20質量部以上300質量部以下である、
    請求項1または2に記載の炭素量子ドット複合体の製造方法。
  4. 前記混合物が、25℃、1気圧で固体状である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の炭素量子ドット複合体の製造方法。
  5. 炭素量子ドットおよび溶媒を含む炭素量子ドット含有溶液の製造方法であって、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の炭素量子ドット複合体の製造方法により得られる炭素量子ドット複合体と、第1の溶媒とを混合して混合液を調製する工程と、
    前記混合液から、前記炭素量子ドットおよび前記第1の溶媒を含む溶液を分取する工程と、
    を含む、炭素量子ドット含有溶液の製造方法。
  6. 前記炭素量子ドットおよび前記第1の溶媒を含む溶液から、前記第1の溶媒を除去して固体状の炭素量子ドットを得る工程、および
    前記固体状の炭素量子ドットと第2の溶媒とを混合する工程、
    をさらに含む、請求項5に記載の炭素量子ドット含有溶液の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の炭素量子ドット含有溶液の製造方法により得られる炭素量子ドット含有溶液から、溶媒を除去する工程を含む、
    炭素量子ドットの製造方法。
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