JP2022146336A - ローラ、フィルム貼付装置、及びフィルム貼付方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 貼付対象物に対してフィルムに荷重をかけて押圧するローラは、所定の軸方向に延びた円筒の形状をしている。ローラの回転軸方向の長さがフィルムの幅よりも短い場合、フィルムの一部をローラで押圧した後に、ローラを軸方向に移動し再度ローラを押圧する必要がある。このような場合に、ローラとフィルムが接触する端部でフィルムの粘着層の歪みや変形欠陥が起きる。これらが原因となり、フィルムの表面にはショックラインと呼ばれる外観上の問題が生じ、貼付後のフィルムの美的外観である意匠性が損なわれる。【解決手段】 円筒形状の芯部と、芯部の中心軸上に位置し、芯部を回転自在に支持する支持部と、芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、発泡体を操作する操作部と、支持部と操作部を固定する固定部と、を備え、外周面の少なくとも一方の端部は、中心軸方向へ曲がっているローラ。【選択図】図1A
Description
本発明は、ローラ、フィルム貼付装置、及びフィルム貼付方法に関する。
従来、色彩や模様等を施された装飾フィルムを車両の天井部等の対象物に貼り付ける技術として、特許文献1に記載されたフィルム貼付装置及び特許文献2に記載された貼付器具が知られている。
ここで、貼付対象物に対してフィルムに荷重をかけて押圧するローラは、所定の軸方向に延びた円筒の形状をしている。ローラの回転軸方向の長さがフィルムの幅よりも短い場合、フィルムの一部をローラで押圧した後に、ローラを軸方向に移動し再度ローラを押圧する必要がある。このような場合に、ローラとフィルムが接触する端部でフィルムの粘着層の歪みや変形欠陥が起きる。これらが原因となり、フィルムの表面にはショックラインと呼ばれる外観上の問題が生じ、貼付後のフィルムの美的外観である意匠性が損なわれる。
本発明の一形態に係るローラは、円筒形状の芯部と、芯部の中心軸上に位置し、芯部を回転自在に支持する支持部と、芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、発泡体を操作する操作部と、前記支持部と前記操作部を固定する固定部と、を備え、外周面の少なくとも一方の端部は、中心軸方向へ曲がっている。
別の形態に係るローラにおいて、外周面の気泡は直径1.5mm以下であってよい。
別の形態に係るローラにおいて、発泡体の外周面をアスカーC硬度計で測定した値がC7以上C20以下であってよい。
別の形態に係るローラにおいて、曲がっている端部の半径は5mm以上であってよい。
別の形態に係るローラにおいて、固定部は発泡体を押圧するための荷重を調整可能な重りを備えてよい。
別の形態に係るローラにおいて、重りは複数あり、それぞれの重りが支持部近傍に備えられてよい。
本発明の一形態に係るフィルム貼付装置は、対象物にフィルムを張り付けるフィルム貼付装置であって、対象物にフィルムを張り付けるローラと、ローラの動きを制御する制御部を備え、ローラは、円筒形状の芯部と、芯部の中心軸上に位置し、芯部を回転自在に支持する支持部と、芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、発泡体を操作する操作部と、支持部と操作部を固定する固定部と、を備え、外周面の少なくとも一方の端部は、中心軸方向へ曲がり、制御部は、ローラを6軸制御する。
別の形態に係るフィルム貼付装置において、ローラを押圧するための荷重を検知するセンサをさらに備え、制御部は、センサからのデータに基づきローラに荷重を加えてよい。
別の形態に係るフィルム貼付装置において、荷重は0.4N/cmより大きく1.8N/cmより小さくてよい。
別の形態に係るフィルム貼付装置において、対象物に凸部又は凹部があり、凸部又は凹部の根元部分に対して、フィルムを貼り付ける局所用押圧具を備え、制御部は、ローラ及び局所用押圧具を独立に6軸制御してよい。
別の形態に係るフィルム貼付装置において、局所用押圧具の押圧面をアスカーA硬度計で測定した値がA20以上であってよい。
本発明の一形態に係るフィルム貼付方法は、ローラを用いて対象物にフィルムを貼り付けるフィルム貼付方法であって、ローラは、円筒形状の芯部と、芯部の中心軸上に位置し、芯部を回転自在に支持する支持部と、芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、発泡体を操作する操作部と、支持部と操作部を固定する固定部と、を備え、外周面の少なくとも一方の端部は、中心軸方向へ曲がり、ローラを用いて前記フィルムの一部を貼り付け、フィルムの一部、及び、フィルムの一部と接する他の部分に発泡体の外周面が来る位置へローラを移動し、フィルムの一部、及び、他の部分を発泡体の外周面で押圧してよい。
別の形態に係るフィルム貼付方法は、ローラを押圧するための荷重を0.4N/cmより大きく1.8N/cmより小さい範囲に設定してよい。
本発明の一形態に係るフィルム貼付方法は、凹部又は凸部を有する対象物に、ローラ、及び、凹部又は凸部の根元部分を押圧するための局所用押圧具を用いてフィルムを貼り付けるフィルム貼付方法であって、ローラは、円筒形状の芯部と、芯部の中心軸上に位置し、芯部を回転自在に支持する支持部と、芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、発泡体を操作する操作部と、支持部と操作部を固定する固定部と、を備え、外周面の少なくとも一方の端部は、中心軸方向へ曲がり、ローラを用いて根元部分以外の対象物にフィルムを貼り付け、局所用押圧具を用いて根元部分にフィルムを貼り付けてよい。
本発明によれば、ローラを軸方向に移動して再度フィルムを押圧しても、ショックラインの発生を防ぎ、貼付後のフィルムの美的外観である意匠性が良くなる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態に係るローラの構成を図1A、図1B、図2A及び図2Bを用いて説明する。図1A及び図1Bは、本実施形態に係るローラを示す図で、図1Aは正面図、図1Bは斜視図である。ローラ100は、色彩や模様等を施された装飾フィルム(以下、単にフィルムという)を対象物に貼り付けるローラであり、フィルム貼付用ローラと呼んでもよい。
本実施形態に用いるフィルムは、裏面に粘着部(粘着剤(感圧接着剤)が塗布された部分)を備え、色彩や模様等を施された装飾フィルムである。装飾フィルムは、例えば塗装することに代えてフィルムを貼り付ける用途で塗装代替フィルムとして用いられる。貼付対象物は、意匠面を形成する必要のあるものであればあらゆる対象物を採用することができる。
自動車などの車両の外装を装飾する場合、フィルムを貼り付ける対象物は、天井部(ルーフとも呼ばれる)、側面部、柱部、ボンネット部、トランクリッド部、又は、バックドア部等である。天井部は略平坦で、水平面からの傾斜角度が緩やかな曲面を有する。天井部は部分的に凹凸形状を有する場合もある。本実施形態では、天井部のうち、凹凸形状を除いた箇所を略平坦面という。また、側面部や柱部は傾斜角度の急な細長い凸曲面を有する。
ローラ100は、円筒形状の芯部110と、芯部110の中心軸AA’上に位置し、芯部110を回転自在に支持する支持部121、122と、芯部110の全周を覆い、外周面135が平坦な発泡体130と、発泡体130を操作する操作部140と、支持部121、122と操作部140を固定する固定部150を備えている。外周面135の端部131、132は、少なくとも一方が中心軸AA’方向へ曲がっている。両端部とも中心軸AA’方向へ曲がっていてもよい。
芯部110は円筒の形状である。芯部110は、中心軸AA’上に位置していればよい。芯部110は発泡体130を貫通していてもよい。また、芯部110は、発泡体130の端部131、132から突起していてもよい。
支持部121、122は、中心軸AA’上に位置する芯部110を回転自在に支持する。例えば、支持部121、122は、中心軸AA’上に穴が設けられている。芯部110の両端がこれらの穴に嵌め合うことにより、芯部110は回転自在になる。
発泡体130は、芯部110の全周を覆っている。発泡体130の外周面135は平坦である。外周面135の端部131、132は、少なくとも一方が中心軸AA’方向へ曲がっている。両端部とも中心軸AA’方向へ曲がっていてもよい。円筒形状の発泡体の寸法は、例えば、外径(外側の直径)が約50mm、内径(内側の直径)は約10mm(芯部110の直径に相当)、中心軸AA’方向の長さは約80mmである。ここで、中心軸AA’方向の長さに特に制限は無く、例えば、後述する調整可能な重り付きローラの場合、110mmである。また、後述するビードが対象物に無い場合、車幅ほどの長さであってもよい。
操作部140は発泡体130を操作する。作業者がローラ100を手に持ってフィルムを対象物に貼り付ける場合、操作部140がハンドルになり、フィルムを対象物に貼り付ける作業工程を行いやすくなる。また、操作部140は、後述するロボットアームへの取り付け部にもなる。
操作部140は、ローラ100を6軸方向に操作することができる。また、操作部140は、後述するロボットアームへの取り付け部にもなる。
フィルムを貼り付ける対象物が自動車車両の天井部の場合、天井部は車長及び車幅方向に単純に広がる二次元平面ではなく、車高方向に少し曲率を有する緩やかな三次元曲面になっている。このような曲面の天井部にフィルムを貼り付ける場合、まず、天井部から車高方向に所定距離離間させた位置でフィルムの周囲を引っ張り、車高方向にさらに離れた位置から操作部140を車高方向に下げ、発泡体130がフィルム及び天井部に対して所定の荷重をかけて押圧した状態で、発泡体130が回転移動するように、操作部140を例えば車長方向に移動する。次に、操作部140を車高方向に操作してローラをフィルムから離れた位置に移動させ、押圧を開始した場所まで戻り、そこから車幅方向(中心軸AA’方向に対応)に所定の距離を移動する。そして、操作部140を車高方向に下げ、発泡体130に所定の荷重をかけて押圧した状態で、発泡体130が回転移動するように、操作部140を直前の押圧移動操作と平行な方向に再度移動する。このような移動を緩やかな三次元曲面を有する天井部で繰り返せばよい。
固定部150は、支持部121、122と、操作部140を固定する。
図2A及び図2Bは、本実施形態に係る発泡体を示す図で、図2Aは発泡体130の正面図であり、図2BはBB’線で切断した発泡体130の断面を矢印方向から見た断面図である。
発泡体の外周面135は平坦である。ここで、外周面135は平滑であってもよい。外周面135は平滑な表面スキン層と呼んでもよい。外周面135上には気泡136が存在していてもよい。気泡136の数に特に制限は無く、複数であってもよい。気泡136の直径は1.5mm以下であることが好ましい。直径が1.5mmを超えると、気泡136の形状がフィルムに転写する可能性がある。また、発泡体130の外周面135は、発泡体130の柔軟性を損なわない範囲で、非発泡の薄い層が設けられていてもよい。
点線で描いた中空部139は、芯部110が貫通する程度の大きさである。外周面135の端部131は、中空部139へ曲がっている。端部131の全周は、例えば、R(半径)5mmで面取り成形されている。成形手段は特に問わないが、モールディング、切削加工、研磨加工等の手段を用いることができる。量産性の観点からは、研磨加工によっておこなってもよい。このような面取り加工により、発泡体130の端面(中空部139によって内側が中空になっている端面)と外周面135はR5mmの曲面で接続されている。この曲面Rは5mm以上であればよい。面取りのRによっては、端面との接続部が不連続となってもよく、また、端部全体が面取りに包含され面取り領域が直接芯部110に接続されてもよい。なお、Rが5mm未満であると、ショックラインが現れる可能性がある。
図2Bに示す通り中空部139の全周を覆う発泡体130には複数の気泡があり、多くの気泡は独立している。例えば気泡137と気泡138は独立している。なお、一部の気泡同士が連続していても実質的には問題無い。
発泡体130の材料は発泡性のポリウレタン樹脂である。材料がポリウレタンの場合、外周面135になる表面スキン層は薄くなり、柔らかくなる。本開示においては、ローラ100は、ソフトローラと称する場合がある。また、発泡体130の材料はアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、シリコーン(Silicone)、クロロプレンゴム(CR)、又は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)であってもよい。
発泡体130の外周面135をアスカーC硬度計で測定した値は、C7以上C20以下であればよい。C7未満であると、発泡体130が(押圧部として)フィルムに荷重をかけて押圧した際に、発泡体130の粘性の影響によりフィルムがローラ100に貼り付く可能性がある。C20を超えると、フィルムを対象物に貼り付けた時にショックラインが現れる可能性がある。ここで、アスカーC硬度計はJIS規格K7312で規定されている硬度計である。
本実施形態に係るローラの動作及び作用効果を図3A乃至図5Bを用いて説明する。ここでは、荷重をかけて押圧した状態のローラを回転させ、フィルムを貼り付ける方法を説明する。ローラにかかる荷重F及び移動Mを説明するためにローラの一部を描いている。
図3A及び図3Bは、本実施形態に係るフィルム貼付方法(その1)を説明する図で、図3Aはローラの一部の正面図であり、図3Bは斜視図である。
フィルム300は、貼り付け前の状態として、対象物(ここでは自動車の天井部)200と触れないように、外周を引っ張られ、対象物200から浮いた状態を保っている。フィルム300は、対象物200と接着する接着層310と、色彩や模様等を施されたフィルム表層320で構成されている。
図3Aに示すように、発泡体の外周面135は、固定部150及び支持部121、122を介して、対象物200に対して垂直な方向に荷重Fで押圧している状態である。この状態で外周面135が回転移動することによって、対象物200と接着層310が接着し、対象物200はフィルム表層320によって色彩や模様等が施されたことになる。ここで、星印は、発泡体の外周面135下の貼付が完了した領域と端部131下の未貼付領域の境界を示す。未貼付領域は、接着層310が対象物200に接着していない、すなわち、浮いている領域をいう。
図3Bは、ローラによってフィルムの一部が接着された状態を斜め上方から見た斜視図である。軌跡線322は、星印(発泡体の外周面135と端部131の境界)が移動した軌跡を仮想的に示している。フィルム表層320には軌跡線322のような跡は付かないが、軌跡線322の一方側は対象物200と接着し、他方側は対象物200と接着していない。このため、軌跡線322とほぼ同じ位置に貼付領域と未貼付領域の境界が光の影響で一時的に線のように見えるだけあり、ショックラインではない。
同様に、軌跡線321は、発泡体の外周面135と他端132の境界が移動した軌跡を仮想的に示している。フィルム表層320には軌跡線321のような跡は付かないが、軌跡線321の一方側は対象物200と接着し、他方側は対象物200と接着していない。このため、光の影響で一時的に見える線であり、ショックラインではない。
図4A及び図4Bは、本実施形態に係るフィルム貼付方法(その2)を説明する図で、図4Aはローラの一部の正面図であり、図4Bは斜視図である。
図3A及び図3Bで説明した通り、フィルムの一部をローラで貼り付けた後に、ローラをMの方向に移動して、再度ローラで貼り付けた。DはMの方向に移動した距離を示す。距離Dは、外周面135のM方向の長さの範囲内であればよい。軌跡線322とほぼ同じ位置に位置する貼付領域と未貼付領域の境界線を跨ぐ位置にローラを移動してもよい。ここで、跨ぐ位置とは、外周面135が通過可能な位置である。
ここで、Mの方向に移動後のローラの高さ方向の位置決めは、フィルム300に荷重がかからないようにフィルムと接した状態で行うか、又は、フィルムから離間した状態で行ってもてもよい。また、対象物200の表面を水で濡らしてからフィルム300を貼る水貼りをしてもよい。このような水貼りは仮貼りや空気抜けのために必要な場合がある。後述するビードが対象物に無い場合、車幅方向に1回貼り、それから車長方向に貼る等を適宜行ってよい。
図4Bは、ローラが2回、回転移動したことによってフィルムの一部が接着された状態を斜め上方から見た図である。図3Bで示した軌跡線322とほぼ同じ位置に位置する貼付領域と未貼付領域の境界線は図4Bでは視認することができない。これは、図3Bで示した境界線の両側が対象物200と接着しているためである。なお、軌跡線321及び軌跡線323が光の影響で一時的に見える線であり、ショックラインではないことは、図3Bで説明した通りである。
図5A及び図5Bは、本実施形態に係るフィルム貼付方法(その3)の説明図である。図5Aはフィルム300が対象物200に貼り付けられた状態の正面図であり、図5Bは斜視図である。本実施形態に係るローラでフィルムを貼り付けると、フィルム表層320にショックラインが現れないことがわかる。
図3A乃至5Bでは、ローラによる貼り付けをフィルム300の中央から始める例を説明したが、フィルム300の隅から貼りはじめ、図4AのMの方向にローラが移動しながら他の隅まで貼り付ける場合、発泡体の外周面のうち、図3Aの端部131のみの全周が面取り成形されていれば、端部132は面取り成形されていなくても、フィルム表層320にショックラインが現れない。
図6A及び図6Bは、本実施形態に係る調整可能な重り付きローラを示す図で、図6Aは上方斜視図、図6Bは下方斜視図である。図1A及び図1Bのローラと異なる点は、発泡体130を押圧するための荷重を調整するための調整可能な重りを備えていることである。同一の機能を有する構成には同じ符号を付けている。
支持部121、122は重りを載せられるスペースを設けるため、図1A及び図1Bよりも広くなっている。図6A及び図6Bでは、支持部121側の重り161が、支持部122側の重り162よりも大きく、重量が重くなっている。このため、芯部110を介して、発泡体130は、支持部121側が支持部122側よりも荷重が高くなる。
このように調整可能な重りを用いれば、例えば、対象物が高さの異なる斜面であっても、発泡体130の支持部121側を、支持部122側よりも高い位置で発泡体130を回転移動させることによって、後述するローラに加える荷重が適切な範囲でフィルムを対象物に押圧し貼り付けることが可能になる。
このような荷重調整可能な重りを用いることによって、対象物とフィルムを貼り付ける荷重の最適値を実験的に求めることが可能になる。また、貼り付けの量産段階では、ローラ100を適切な重さにしてもよい。例えば、支持部121、122、操作部140、及び、固定部150等を適切な重さに調整してもよい。作業者がローラ100を手で移動させる、いわゆる手貼りの場合の重りを予め調整可能になる。また、作業ロボットがローラ100の操作部140を操作する場合、荷重制御をする必要が無くなり、6軸の座標制御のみでよい。
重り161、162のように重りが複数あり、調整済みの重りがそれぞれ支持部121、122の近傍に備えることによって、対象物が曲面である場合等にローラ100を曲面に沿って移動させれば、発泡体130に適切な範囲の荷重をかけることが可能になる。ここで、支持部121、122の近傍とは、支持部121、122が支える芯部110の軸線の延長上であればよい。
フィルムを貼り付ける対象物には凸部又は凹部がある場合がある。このような凸部又は凹部の根元部分に対して、フィルムを貼り付ける局所用押圧具を図7A、図7B、図8A及び図8Bを用いて説明する。ここで、凸部又は凹部の根元部分とは、相対的に低い位置の第1略平面及び高い位置の第2略平面を接続する傾斜面と第1略平面との境界部をいう。具体的には、凸部の根元部分は凸部全体の周縁部をいい、凹部の根元部分は凹部の底となる面の周縁部をいう。
図7A及び図7Bは、本実施形態に係る局所用押圧具(その1)を示す図で、図7Aは正面図、図7Bは斜視図である。フィルムを貼り付ける対象物が自動車車両の天井部の場合、広い面積の天井パネルに剛性を付与するために一定間隔で複数列の補強ビード(凸型又は凹型のビード、以下単にビードという)が設けられていることがある。このビードの凸部又は凹部の根元部分に対してフィルムを貼り付ける局所用押圧具の一例として、ビードローラ400を説明する。
ビードローラ400は、円筒形状の芯部410と、芯部410の中心軸CC’上に位置し、芯部410を回転自在に支持する支持部420と、芯部410の全周を覆う押圧部430と、押圧部430を操作する操作部440と、支持部420と操作部440を固定する固定部450を備えている。
押圧部430は、発泡体130の外周面135に相当する部分が無く、2つの硬い端部431、432で構成されている。2つの端部431、432は、正面(押圧部430が回転しながら貼り付ける方向)から見ると、2つの台形の長辺同士が重なりあい、押圧部430の両端が中心軸CC’方向へ曲がっている。このように2つの端部431、432は円周方向で先端が尖っているため、ビードの凸部又は凹部の根元部分にフィルムを貼り付けることが可能になる。ここで、押圧部430の押圧面をアスカーA硬度計で測定した値がA20以上であることが好ましい。ここで、アスカーA硬度計はJISK6253-3で規定されている硬度計である。
操作部440は、ローラ100の操作部140と同様、作業者がビードローラ400を手に持つ場合、操作部440がハンドルになってもよく、また、操作部440はロボットアームへの取り付け部になってもよい。
図8A及び図8Bは、本実施形態に係る局所用押圧具(その2)を示す図で、図8Aは正面図、図8Bは側面図である。ビードの凸部又は凹部の根元部分に対してフィルムを貼り付ける局所用押圧具の一例として、スキージ500を説明する。
スキージは、薄い直方体のヘラ形状の本体部510と、本体部の下面部を覆う下部布520と、本体部の上面部を覆う上部布530を備える。本体部510の下面部及び上面部は曲面であり、下面部は上面部よりも曲率が小さい。このため、下部布520は、上部布530よりも、ビードの凸部又は凹部の根元部分が細い又は深い場合にフィルムを貼り付けるのに適している。
スキージ500の材料は、本体部510が木材であり、下部布520及び上部布530はフェルト布である。ここで、下部布520及び上部布530の押圧面をアスカーA硬度計で測定した値がA20以上であることが好ましい。また、下部布520及び上部布530として、A20のスポンジシートを用いてもよい。
8個の凸型のビード(前方に4個、後方に4個)が自動車車両の天井部に付いている場合にフィルムを貼り付ける方法を図9乃至図15を用いて説明する。ここでは、ローラ100(ソフトローラ)及び局所用押圧具400(ビードローラ)の6軸制御部を用いた場合を説明するが、手動で制御する場合も同様の貼り付け方法を用いることができる。
図9は、本実施形態に係るフィルム貼付装置を説明するための図である。ロボットアーム600は、6軸制御可能な制御回路又は制御プログラムと協働して、ソフトローラ100及びビードローラ400を6軸方向に制御可能な制御部として動作する。すなわち、本実施形態に係るフィルム貼付装置は、ロボットアーム600とソフトローラ100及び/又はビードローラ400を備える。
ロボットアーム600は、自動車車両を設置する作業スペースの上側(Z軸)に取り付ける取付部620を有している。また、取付部620は、作業スペースの近傍の床面上に設けられた台に取り付けられていてもよい。いずれの場合も、取付部620の位置を基準にして6軸制御を行ってもよい。ここで、6軸とは、車高方向と同じ方向のZ軸と、その回転軸γ、Z軸と直交するX軸と、その回転軸α、Z軸及びX軸と直交するY軸と、その回転軸βをいう。
自動車車両の天井部が広い場合、ロボットアーム600の取付部620が可動することによって、広い天井部にフィルムを貼り付けてもよい。また、ロボットアーム600を複数台設置し、複数のロボットアームで広い天井部にフィルムを貼り付けてもよい。
ロボットアーム600の先端にはエンドエフェクタとしてデュアル・グリッパー610が設けられていてもよい。デュアル・グリッパー610は、ソフトローラ100及びビードローラ400の操作部を固定(又はチャック)する。このようにすれば、ソフトローラ100及びビードローラ400の重さを変えずにそれぞれの回転軸を傾けることが可能になる。
ソフトローラ100を使用する場合は、ロボットアーム600を6軸方向に制御し、ビードローラ400を干渉しない位置に角度調整すればよい。または、デュアル・グリッパー610がビードローラ400を干渉しない位置に動かせばよい。ビードローラ400を使用する場合は同様に、ロボットアーム600の角度調整、または、デュアル・グリッパー610を動かせばよい。
ロボットアーム600の先端部、またはデュアル・グリッパー610は、ソフトローラ100及びビードローラ400の操作部を固定する箇所それぞれに圧力センサ等の荷重を検知するセンサを設けてもよい。ソフトローラ100及びビードローラ400の荷重を検知するセンサを設け、センサが検知したデータに基づきフィードバック制御を行うことによって、ロボットアーム600は、ソフトローラ100及びビードローラ400の荷重を調整可能になる。また、センサは、圧力以外の物理量(例えば、荷重、歪、電気的抵抗、変位)を検知するものであってもよい。ここで、ローラに加える荷重は、ローラの軸方向の単位長さ当りの荷重に換算した値である。
ソフトローラ100に加える荷重の下限が0.4N/cmより大きいことが好ましい。これを下回るとフィルムが適切に対象物に貼り付かない場合があるためである。また、荷重の上限は1.8N/cmより小さければよい。ショックラインの発生などを抑制できるからである。さらに、0.9N/cm以下であればより好ましい。貼り付け直後から安定したショックラインの抑制効果をより期待できるためである。
図10は、本実施形態に係るフィルム及びフィルムを貼り付ける対象物を説明するための図である。フィルム300は対象物200(自動車車両の天井部)の上(車高方向)に置かれ、フィルム300は車長方向及び車幅方向に引っ張られている。対象物200には、前方に4個の凸型ビード211、212、213及び214が、後方に4個の凸型ビード221、222、223及び224が設けられている。
図11は、本実施形態に係る6軸制御可能なローラ(ソフトローラ100)及び局所用押圧具(ビードローラ400)を説明するための図である。図11では、ソフトローラ100及びビードローラ400が対象物200(自動車車両の天井部)のどの箇所を押圧するかを説明する。
ソフトローラ100は、天井部200の略平坦面(ビード213及び214が無い部分)200(a)と、ビード213、214の凸状平坦面200(b)、200(c)を加圧する。凸状平坦面は、曲率が緩やかな略凸曲面や、曲率が緩やかな略凸曲面と平面が組み合わされ全体として緩やかな凸形状を有しており、ソフトローラ100で加圧することが適している。
凸状平坦面200(b)、200(c)とは、ビード213及び214のうち、根元部分200(d)、200(e)、200(f)、200(g)以外をいう。ソフトローラ100は6軸制御可能であり、かつ、柔らかく、発泡体が少しへこんだ状態で回転するため、凸状平坦面200(b)、200(c)は荷重しながら回転移動することが可能である。
一方、凸型又は凹型ビードの根元部分(図11の場合、凸型ビードの根元部分200(d)、200(e)、200(f)、200(g))については、ビードローラ400が、根元部分200(d)、200(e)、200(f)、200(g)を押圧する。ソフトローラ100及びビードローラ400は図示した6軸(3座標軸及び3回転軸)方向で自在に貼り付けることが制御可能であり、天井部200の複雑な曲面を押圧しながら移動可能である。
ここで、ビードローラ400は硬いローラのため、フィルムにはショックラインが生じる場合がある。しかし、凸型又は凹型ビードの根元部分(図11の場合、200(d)、200(e)、200(f)、200(g))を荷重するため、このような周縁にショックラインが生じたとしても、略平坦な面と異なり、対象物200の外観に影響を及ぼすことが少ない点に留意していただきたい。
図12は、本実施形態に係る6軸制御可能なローラ(ソフトローラ100)及び局所用押圧具(ビードローラ400)の動作方向(その1)を示す図である。同図の矢印1乃至9は、ソフトローラ100の移動方向を示す。ここでは、4個の凸型の前方ビード及び4個の凸型の後方ビードがあるため、まず前方ビード及び後方ビードの間(矢印1)をソフトローラ100で荷重しながらフィルムを貼り付ける。次に、前方ビードの略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印2乃至5)をソフトローラ100で荷重する。さらに、後方ビードの略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印6乃至9)をソフトローラ100で荷重する。
図13は、本実施形態に係る6軸制御可能なローラ(ソフトローラ100)及び局所用押圧具(ビードローラ400)の動作方向(その2)を示す図である。同図の矢印10乃至25は、ビードローラ400の移動方向を示す。まず前方ビードの凸部の根元部分を天井部の外側方向に(矢印10乃至17)をビードローラ400で荷重する。これにより前方ビード部について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。次に後方ビードの凸部の根元部分を天井部の外側方向に(矢印18乃至25)をビードローラ400で荷重する。これにより後方ビード部について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。
図14は、本実施形態に係る6軸制御可能なローラ(ソフトローラ100)及び局所用押圧具(ビードローラ400)の動作方向(その3)を示す図である。同図の矢印26乃至35は、ソフトローラ100の移動方向を示す。まず前方ビード間の略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印26乃至30)をソフトローラ100で荷重する。これにより前方ビード間の略平坦な面について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。次に後方ビード間の略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印31乃至35)をソフトローラ100で荷重する。これにより後方ビード間の略平坦な面について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。
ここで、(a)のようにビード間の幅がソフトローラの幅とほぼ等しい場合には、1回のストロークですむ。一方、(b)のようにビード間の幅がソフトローラの幅よりも広い場合には、2回またはそれ以上のストロークが必要である。ソフトローラ100であれば、1回目のストロークと2回目またはそれ以降のストロークの間にショックラインができてしまうことを防ぐことができる。
図15は、本実施形態に係る6軸制御可能なローラ(ソフトローラ100)及び局所用押圧具(ビードローラ400)の動作方向(その4)を示す図である。同図の矢印36及び37はソフトローラ100の移動方向を示す。矢印38及び39はビードローラ400の移動方向を示す。まず前方ビードの前部分の略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印36)をソフトローラ100で荷重する。これにより前方ビードの前部分の略平坦な面について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。次に後方ビードの後部分の略平坦な面を天井部の外側方向に(矢印37)をソフトローラ100で荷重する。これにより後方ビードの後部分の略平坦な面について、気泡を残すことなくフィルムを天井部に貼り付けることができる。続いて、天井部の両側のルーフモールに相当する部分(矢印38及び39)をビードローラ400で荷重する。
上述した通り、天井部の外側方向にソフトローラ100及びビードローラ400を荷重しながら移動することによって、フィルムの接着層の空気抜きを適切に行いながら、天井部の平面に対応するフィルム箇所にショックラインが生成されるのを防ぐことができる。さらに、ショックラインが目立たないビードの凸部の根元部分やルーフモール部分にも確実にフィルムを貼り付けることが可能になる。
以上説明したフィルムの貼り付け順番や方向などは本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、ビードとビードの間隔が広い場合は先にソフトローラで圧着した後にビードローラでビードの根元を圧着するが、間隔が狭い場合は先にビードローラでビードの根元を圧着した後にビード間をソフトローラで圧着してもよい。
また、天井部200のビードが凹型の場合、ビードの凹部の根元部分のみをビードローラ400で荷重し、それ以外の略平坦な部分はソフトローラ100で荷重してもよい。
図16A、図16B及び図16Cは、本実施形態に係る発泡体130のR加工の変形例を示す図である。図16AはRが5mmの場合(R1)を示す。Rの上限は特に制限が無く、芯部110に到達する程度の大きさであってもよい。図16CはRが芯部110に到達する場合の半径(R3)を示す。もちろんその中間のRであってもよい。図16Bは中間のRの場合を示す(R2)。また、外周面135側のRは芯部110のRよりも大きくしてもよい。
なお、上述の実施形態では、フィルム貼り付けの対象物として車両が例示されていた。しかし、車両に限らず、どのようなものをフィルム施工の対象物としてもよい。例えば、電車、飛行体、家具、電化製品等であってよい。
100…ローラ(ソフトローラ)、200…対象物、300…フィルム、400…ビードローラ、500…スキージ
Claims (14)
- 円筒形状の芯部と、
前記芯部の中心軸上に位置し、前記芯部を回転自在に支持する支持部と、
前記芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、
前記発泡体を操作する操作部と、
前記支持部と前記操作部を固定する固定部と、を備え、
前記外周面の少なくとも一方の端部は、前記中心軸方向へ曲がっているローラ。 - 前記外周面の気泡は直径1.5mm以下である請求項1に記載のローラ。
- 前記発泡体の前記外周面をアスカーC硬度計で測定した値がC7以上C20以下である請求項1に記載のローラ。
- 前記曲がっている端部の半径は5mm以上である請求項1に記載のローラ。
- 前記固定部は前記発泡体を押圧するための荷重を調整可能な重りを備える請求項1に記載のローラ。
- 前記重りは複数あり、それぞれの前記重りが前記支持部近傍に備えられる請求項5に記載のローラ。
- 対象物にフィルムを張り付けるフィルム貼付装置であって、
前記対象物に前記フィルムを張り付けるローラと、前記ローラの動きを制御する制御部を備え、
前記ローラは、
円筒形状の芯部と、
前記芯部の中心軸上に位置し、前記芯部を回転自在に支持する支持部と、
前記芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、
前記発泡体を操作する操作部と、
前記支持部と前記操作部を固定する固定部と、を備え、
前記外周面の少なくとも一方の端部は、前記中心軸方向へ曲がり、
前記制御部は、前記ローラを6軸制御するフィルム貼付装置。 - 前記ローラを押圧するための荷重を検知するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサからのデータに基づき前記ローラに荷重を加える請求項7に記載のフィルム貼付装置。 - 前記荷重は0.4N/cmより大きく1.8N/cmより小さい請求項8に記載のフィルム貼付装置。
- 前記対象物に凸部又は凹部があり、前記凸部又は前記凹部の根元部分に対して、前記フィルムを貼り付ける局所用押圧具を備え、
前記制御部は、前記ローラ及び前記局所用押圧具を独立に6軸制御する請求項7に記載のフィルム貼付装置。 - 前記局所用押圧具の押圧面をアスカーA硬度計で測定した値がA20以上である請求項10に記載のフィルム貼付装置。
- ローラを用いて対象物にフィルムを貼り付けるフィルム貼付方法であって、
前記ローラは、
円筒形状の芯部と、
前記芯部の中心軸上に位置し、前記芯部を回転自在に支持する支持部と、
前記芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、
前記発泡体を操作する操作部と、
前記支持部と前記操作部を固定する固定部と、を備え、
前記外周面の少なくとも一方の端部は、前記中心軸方向へ曲がり、
前記ローラを用いて前記フィルムの一部を貼り付け、
前記フィルムの一部、及び、前記フィルムの一部と接する他の部分に前記発泡体の外周面が来る位置へ前記ローラを移動し、
前記フィルムの一部、及び、前記他の部分を前記発泡体の外周面で押圧するフィルム貼付方法。 - 前記ローラを押圧するための荷重を0.4N/cmより大きく1.8N/cmより小さい範囲に設定する請求項12に記載のフィルム貼付方法。
- 凹部又は凸部を有する対象物に、ローラ、及び、前記凹部又は凸部の根元部分を押圧するための局所用押圧具を用いてフィルムを貼り付けるフィルム貼付方法であって、
前記ローラは、
円筒形状の芯部と、
前記芯部の中心軸上に位置し、前記芯部を回転自在に支持する支持部と、
前記芯部の全周を覆い、外周面が平坦な発泡体と、
前記発泡体を操作する操作部と、
前記支持部と前記操作部を固定する固定部と、を備え、
前記外周面の少なくとも一方の端部は、前記中心軸方向へ曲がり、
前記ローラを用いて前記根元部分以外の前記対象物に前記フィルムを貼り付け、
前記局所用押圧具を用いて前記根元部分に前記フィルムを貼り付けるフィルム貼付方法。
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