JP2022146196A - インクジェットインク組成物、インクセット、記録方法、及び記録物 - Google Patents

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正弘 矢竹
Masahiro Yatake
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智史 鍔本
Tomohito Tsubamoto
文彦 中尾
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Abstract

【課題】間欠吐出安定性が良好で、かつ耐擦過性及び耐ブロッキング性が良好であり、画像の光沢及び画像濃度に優れる画像を記録することができるインクジェットインク組成物、インクセット、記録方法、及び記録物を提供することを目的とする。【解決手段】ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、顔料と、水と、を含有し、ポリウレタン樹脂(U)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有し、ポリオール成分が、多環脂肪族ジオールを含有するポリオール成分であり、ポリイソシアネート成分が、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを含有するポリイソシアネート成分である、インクジェットインク組成物、並びに、該インクジェットインク組成物を用いたインクセット、記録方法、及び記録物である。【選択図】なし

Description

本発明はインクジェットインク組成物、インクセット、記録方法、及び記録物に関する。
記録媒体として普通紙などを用い、文字や図表などを含むビジネス文章などの印刷にもインクジェット記録方法が利用されており、このような用途への利用頻度が増えてきている。このような用途では、高いレベルの画像の発色性や堅牢性(擦過性、耐光性、耐オゾンガス性、耐水性など)が要求されるため、色材として顔料を用いたインクが利用されることが多い。
色材として染料を用いたインクと比べて、顔料インクで印刷される印刷物の発色性は高いがその要因は、記録媒体の表面上に顔料成分が局在化しやすいためである。染料は記録媒体の内部にまで浸透するが、顔料はインクが記録媒体に付着する過程や付着後に起こるビヒクル成分の蒸発や浸透により、凝集しやすることによる。しかし、顔料インクは、色材である顔料が記録媒体の表面上に存在しやすいため、印刷物の擦過性が低いという課題を有している。顔料インクで記録される擦過性などを向上するために、インクにウレタン樹脂を添加することが検討されている(特許文献1~3参照)。
特開2006-022132号公報 特開2012-140602号公報 特開2013-035897号公報
従来のポリウレタン樹脂(粒子)は親水基やウレタン基などの極性基が多いため、水性インクに多量に用いると粘度が上昇してしまう。インクジェット印刷においては、粘度が上昇すると、吐出が不安定になり目詰まりもしやすくなるので、樹脂の添加量が制限され十分な定着性や耐擦過性が得られなかった。また、フィルムのような光沢が要求される記録媒体に印刷する場合の光沢性が低いものになっていた。
インクジェット記録方法で記録するとき、インクジェットヘッドのノズルから一定時間インクが吐出されない状態が続くと、ノズルからインク中の水の蒸発が起こる。その後、ノズルから次のインクを吐出させようとすると、インクの滴が真っ直ぐに飛ばなかったり、吐出ができなかったりするということが生じる。このような現象が生じるインクは、間欠吐出安定性が低いということになる。
例えば、特許文献1に記載されたインクは、顔料の分散剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテルが付加したアロファネートで変性されたウレタン樹脂を用いている。また、特許文献2に記載されたインクは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが付加したアロファネートで変性されたウレタン樹脂を添加した顔料インクである。これらのインクは、いずれも間欠吐出安定性、並びに記録される画像の耐擦過性及び耐ブロッキング性が不十分であった。
特許文献3に記載されたインクは、イソシアヌレートで変性されたウレタン樹脂を用いている。このようなインクは、記録される画像の耐擦過性、間欠吐出安定性、OPPフィルムに印刷したときの光沢性及び画像濃度が低いものであった。
このように、間欠吐出安定性が良好で、かつ耐擦過性及び耐ブロッキング性が良好であり、画像の光沢及び画像濃度に優れる画像を記録することができるインクジェットインク組成物、及びインクジェットインクに適したポリウレタン樹脂は未だ見出されていない。
したがって、本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、間欠吐出安定性が良好で、かつ耐擦過性及び耐ブロッキング性が良好であり、画像の光沢及び画像濃度に優れる画像を記録することができるインクジェットインク組成物、インクセット、記録方法、及び記録物を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、顔料と、水と、を含有し、ポリウレタン樹脂(U)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有し、ポリオール成分が、多環脂肪族ジオールを含有するポリオール成分であり、ポリイソシアネート成分が、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを含有するポリイソシアネート成分である、インクジェットインク組成物、並びに、該インクジェットインク組成物を用いたインクセット、記録方法、及び記録物を提供することである。
本発明により、例えば、プロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン及びナイロン等の非浸透性の記録媒体に対して印刷した場合でも、間欠吐出安定性を満足しながら、耐擦過性、耐ブロッキング性、画像の光沢及び画像濃度に優れるインクジェットインク組成物、並びに、該インクジェットインク組成物を用いたインクセット、記録方法、及び記録物を提供することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
1.インクジェットインク組成物
本実施形態のインクジェットインク組成物(以下、単に「インク組成物」ともいう。)は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、顔料と、水と、を含有し、ポリウレタン樹脂(U)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有し、ポリオール成分が、多環脂肪族ジオールを含有するポリオール成分であり、ポリイソシアネート成分が、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを含有するポリイソシアネート成分である。
1.1.ポリウレタン樹脂(U)
ポリウレタン樹脂(U)は、特に制限されないが、例えば、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させて得ることができる。
1.1.1.ポリオール成分
本実施形態におけるポリオール成分は、耐擦過性及び重合溶剤への溶解性の観点から、多環脂肪族ジオールを必須成分として含有する。多環脂肪族ジオールは単独で用いても、2種以上を併用しても、多環脂肪族ジオール以外のポリオール成分と併用してもよい。
1.1.1.1.多環脂肪族ジオール
多環脂肪族ジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ノルボルナン環、ビシクロオクタン環、ビシクロウンデカン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環及びテトラシクロドデカン環等の橋かけ環を有するジオールやスピロ環を有するジオール等が挙げられる。具体的には、2,5-ノルボルナンジオール、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジメタノール、1,3-アダマンタンジオール、及びトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール等のトリシクロデカンジメタノール等が挙げられる。耐擦過性、重合溶剤への溶解性及び樹脂粒子の分散安定性の観点から、ノルボルナン環、ビシクロオクタン環、アダマンタン環及びトリシクロデカン環等の橋かけ環を有するジオールが好ましく、より好ましくはトリシクロデカン環を有するジオールであり、更に好ましくはトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノールである。
1.1.1.2.多環脂肪族ジオールの重量割合
ポリウレタン樹脂(U)中の多環脂肪族ジオールの重量割合は、耐擦過性及び樹脂粒子の分散性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計の重量を基準として、10~50重量%であることが好ましく、より好ましくは15~40重量%であり、更に好ましくは25~40重量%である。
1.1.1.3.多環脂肪族ジオール以外のポリオール成分
多環脂肪族ジオール以外のポリオール成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリウレタン樹脂ジオール、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール、並びに多環脂肪族ジオール以外の低分子ポリオール等が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂(U)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するポリウレタン樹脂であることが好ましいため、ポリオール成分は、ポリウレタン樹脂(U)にカルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を導入する観点から、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオールを含有することが好ましい。
1.1.1.3.1.ポリウレタン樹脂ジオール
ポリウレタン樹脂ジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール及びポリオレフィンポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ポリエーテルジオール及び芳香族ポリエーテルジオールが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数2~20の脂肪族多価アルコールへの炭素数2~12のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。具体的には、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール等)及びポリオキシエチレン/プロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルジオールの市販品としては、PTMG1000[Mn=1000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG2000[Mn=2000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTMG3000[Mn=3000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、三菱化学(株)製]、PTGL2000[Mn=2000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]、PTGL3000[Mn=3000の変性ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、保土谷化学工業(株)製]及びサンニックスPP-2000[Mn=2000のポリオキシプロピレングリコール、三洋化成工業(株)製]等が挙げられる。なお、本実施形態において「Mn」は数平均分子量を意味する。
芳香族ポリエーテルジオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキシサイド(以下、エチレンオキシと略記)付加物(ビスフェノールAのエチレンオキシ2モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシ4モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシ6モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシ8モル付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシ10モル付加物及びビスフェノールAのエチレンオキシ20モル付加物等)及びビスフェノールAのプロピレンオキサイド(以下、プロピレンオキシと略記)付加物(ビスフェノールAのプロピレンオキシ2モル付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキシ3モル付加物及びビスフェノールAのプロピレンオキシ5モル付加物等)等のビスフェノール骨格を有するジオール並びにレゾルシンのエチレンオキシ又はプロピレンオキシ付加物等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数2~20の多価アルコールの1種又は2種以上と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1~6のジアルキルカーボネート、炭素数2~6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6~9のアリール基を有するジアリールカーボネート)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、3-メチル-5-ペンタン-カーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール及びポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール(1,4-ブタンジオールと1,6-ヘキサンジオールをジアルキルカーボネートと脱アルコール反応させながら縮合させて得られるジオール等)等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、特に制限されないが、例えば、ニッポラン980R[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、日本ポリウレタン工業(株)製]、デュラノール T6002[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、ETERNACOLLUH-300[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=3000のポリカーボネートポリオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UH-200[1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、宇部興産(株)製]、ETERNACOLL UM-90(1/3)[1,4-シクロヘキサンジメタノール/1,6-ヘキサンジオール=1/3(モル比)を用いたMn=900のポリカーボネートポリオール、宇部興産(株)製]、デュラノール G4672[1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=70/30(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、デュラノール T5652[1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、T4672[1,4-ブタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、旭化成ケミカルズ(株)製]、クラレポリオール C-2090[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=90/10(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、クラレ(株)製]、クラレポリオールC-3090[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオールを用いたMn=3000のポリカーボネートポリオール、クラレ(株)製]、クラレポリオール C-2050[3-メチル-1,5-ペンタンジオール/1,6-ヘキサンジオール=50/50(モル比)を用いたMn=2000のポリカーボネートポリオール、クラレ(株)製]等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ヒマシ油系ポリオール等が挙げられる。
縮合型ポリエステルポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数4~20の多価カルボン酸と炭素数2~20の多価アルコールとの脱水縮合により得られるポリエステルポリオール及び炭素数4~20の多価カルボン酸のエステル形成性誘導体と炭素数2~20の多価アルコールとの脱水縮合により得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
炭素数2~20の多価アルコールとしては、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、3-メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン、2,2-ビス(4,4’-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、α-メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、ジペンタエリスリトール、グルコース、フルクトース、ショ糖等の4~8価のアルコールが挙げられる。
また、炭素数4~20の多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、特に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(フタル酸及びイソフタル酸、テレフタル酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの混合物が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、上記炭素数2~20の多価アルコールへのラクトンの重付加物であり、ラクトンとしては、炭素数4~12のラクトン(例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン)等が挙げられる。ポリラクトンポリオールの具体例としては、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオール及びポリカプロラクトントリオール等が挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールには、特に制限されないが、例えば、ヒマシ油及びポリオール又は炭素数2~12のアルキレンオキサイドで変性された変性ヒマシ油が含まれる。変性ヒマシ油は、ヒマシ油とポリオールとのエステル交換及び/又はアルキレンオキシ付加により製造できる。ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、トリメチロールプロパン変性ヒマシ油、ペンタエリスリトール変性ヒマシ油及びヒマシ油のエチレンオキシ付加物(付加モル数4~30モル)等が挙げられる。
炭素数2~12のアルキレンオキサイドとしては、特に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2-、2,3-又は1,3-ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3-メチル-テトラヒドロフラン、α-オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水添ポリイソプレンポリオール、及び例えば特開2018-076428等に記載されるポリオレフィンを不飽和(ポリ)カルボン酸(無水物)で変性した酸変性ポリオレフィンとアミノアルコールを反応させて得ることができる水酸基変性ポリオレフィン等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールの市販品としては、特に制限されないが、例えば、NISSO-PB G シリーズ[ポリブタジエンポリオール、日本曹達(株)製]、Poly bd シリーズ[ポリブタジエンポリオール、出光興産(株)製]、NISSO-PB GI シリーズ[水添ポリブタジエンポリオール、日本曹達(株)製]、ポリテールH[水添ポリブタジエンポリオール、三菱ケミカル(株)製]、Poly ip シリーズ[ポリイソプレンポリオール、出光興産(株)製]、EPOL シリーズ[水添ポリイソプレンポリオール、出光興産(株)製]等が挙げられる。
1.1.1.3.2.カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオール
カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオールとしては、特に制限されないが、例えば、カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)、カルボキシル基を2つ以上有するジオール(b2)並び上記ジオールを後述の中和剤で中和した塩が挙げられる。カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)としては、例えば2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロール酪酸、2,2’-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。カルボキシル基を2つ以上有するジオール(b2)としては、例えば酒石酸等が挙げられる。
ジオール(b1)及び(b2)の中和剤としては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、炭素数1~20のアミン化合物及びアルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウム等)が挙げられる。
ここで、炭素数1~20のアミン化合物としては、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等の1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン及びN-メチルジエタノールアミン等の2級アミン並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン及びトリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
これらの内、生成するインク組成物の乾燥性及び得られる皮膜の耐水性の観点から好ましいものは、25℃における蒸気圧が低いアミン化合物であり、より好ましくはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチル、トリエチルアミン及びジメチルエチルアミンである。
上記カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有するジオールのうち、好ましくは、カルボキシル基を1つ有するジオール(b1)及び(b1)を中和剤で中和した塩であり、より好ましくは、2,2’-ジメチロールプロピオン酸、2,2’-ジメチロールブタン酸、2,2’-ジメチロールプロピオン酸を中和剤で中和した塩及び2,2’-ジメチロールブタン酸を中和剤で中和した塩である。
1.1.1.3.3.低分子ポリオール
多環脂肪族ジオール以外の低分子ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、多環脂肪族ジオール以外の炭素数2~20の多価アルコールが挙げられる。多環脂肪族ジオール以外の炭素数2~20の多価アルコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等の4~8価のアルコールが挙げられる。
1.1.1.4.ポリオール成分の平均分子量
本実施形態におけるポリオール成分の平均分子量は、耐擦過性の観点から、数平均分子量(Mn)で、好ましくは200以下であり、より好ましくは60~200であり、さらに好ましくは60~100である。ポリオール成分の平均分子量とは、使用する各ポリオール成分の数平均分子量を重量平均化した値である。尚、本実施形態におけるポリオールのMnはポリエチレングリコールを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるものである。但し、低分子ポリオールのMnは化学式からの計算値である。
本実施形態におけるポリオール成分の数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、例えば以下の条件で測定することができる。
装置 :「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム :「Guardcolumn Super H-L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液注入量:10μL
流量 :0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
1.1.2.ポリイソシアネート成分
本実施形態におけるポリイソシアネート成分は、耐擦過性及び水性媒体への分散性の観点から、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを必須成分として含有する。ポリイソシアネート成分は、単独で用いても、2種以上を併用しても、本実施形態に係るポリイソシアネート成分以外のポリイソシアネート成分と併用してもよい。
1.1.2.1.ポリイソシアネート成分の重量割合
ポリウレタン樹脂(U)中のポリイソシアネート成分の重量割合は、耐擦過性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計の重量を基準として、40重量%以上であることが好ましく、40~70重量%であることがより好ましく、より好ましくは50~70重量%である。
1.1.2.2.芳香族イソシアネート
芳香族イソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
1.1.2.2.1.炭素数8~26の芳香族イソシアネート
炭素数8~26の芳香族ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’-又は2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート及びm-又はp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
1.1.2.2.2.芳香族イソシアネートの重量割合
芳香族イソシアネートの重量割合は、耐擦過性及び水性媒体への分散性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計の重量を基準として、25~60重量%であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂(U)中の芳香族ポリイソシアネートの重量割合は、耐擦過性、重合溶媒への溶解性及び樹脂粒子の分散性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計の重量を基準として、25~65重量%であることが好ましく、より好ましくは30~60重量%である。
1.1.2.3.脂肪族イソシアネート
脂肪族イソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネート等が挙げられる。
1.1.2.3.1.炭素数4~22の脂肪族イソシアネート
炭素数4~22の脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート及び2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、水添MDIと略記)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート及び2,5-又は2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
1.1.2.3.2.脂肪族イソシアネートの重量割合
脂肪族イソシアネートの重量割合は、耐擦過性及び水性媒体への分散性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計の重量を基準として、0.5~30重量%であることが好ましい。
ポリウレタン樹脂(U)中の脂肪族ポリイソシアネートの重量割合は、重合溶媒への溶解性及び水への分散安定性の観点から、ポリオール成分とポリイソシアネート成分の合計の重量を基準として、0.5~30重量%であることが好ましく、より好ましくは1~25重量%である。
1.1.2.4.ポリイソシアネート成分以外のポリイソシアネート成分
本実施形態に係るポリイソシアネート成分以外のポリイソシアネート成分としては、特に制限されないが、例えば、炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物並びに芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートの変性物等が挙げられる。
1.1.2.4.1.炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネート
炭素数10~18の芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、特に制限されないが、例えば、m-又はp-キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
1.1.2.4.2.ポリイソシアネートの変性物
ポリイソシアネートの変性物としては、特に制限されないが、例えば、ポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物等;遊離イソシアネート基含有量が8~33重量%、好ましくは10~30重量%、特に12~29重量%のもの)、例えば変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI等のポリイソシアネートの変性物が挙げられる。
ポリイソシアネート成分の内、ポリウレタン樹脂(U)の耐擦過性の観点から、好ましくは炭素数8~18の芳香族ポリイソシアネートであり、より好ましくはTDI又はMDIであり、更に好ましいのは4,4’-MDIである。また、ポリウレタン樹脂(U)の重合溶剤への溶解性及び水性媒体への分散性の観点から、好ましくは炭素数8~18の脂環式ポリイソシアネートであり、より好ましくはIPDIである。
1.1.3.鎖伸長剤及び反応停止剤
上記ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてポリウレタン樹脂(U)を得る際に、分子量の制御を目的として鎖伸長剤及び反応停止剤を使用してもよい。
鎖伸長剤としては、特に制限されないが、例えば、水、炭素数2~36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2~6)アルキレン(炭素数2~6)ポリ(n=3~7)アミン等]、炭素数6~20の脂環式ポリアミン(1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6~20の芳香族ポリアミン(1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トリレンジアミン、4,4’-又は2,4’-メチレンビスアニリン等)、炭素数3~20の複素環式ポリアミン(2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、ピペラジン及びN-アミノエチルピペラジン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等)及び炭素数2~20のアミノアルコール(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。鎖伸長剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
反応停止剤としては、特に制限されないが、例えば、炭素数1~20のモノアルコール(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコール等)、炭素数1~20のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミン並びにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。反応停止剤は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
1.1.4.酸価
本実施形態のポリウレタン樹脂(U)の酸価は、15mgKOH/g以上45mgKOH/g以下であることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂(U)の酸価は、より好ましくは15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下である。酸価が15mgKOH/g以上であれば、ポリウレタン樹脂(U)のインク組成物中での分散安定性が良好であり、高温でも目詰まりを起こしにくい。一方、酸価が30mgKOH/g以下であれば、ポリウレタン樹脂が水で膨潤しにくく、インク組成物が増粘しにくい。さらに、得られる記録物の耐水性を良好に保つことができる。
ポリウレタン樹脂(U)の酸価は、例えば、カルボキシル基含有グリコール(ジメチロールプロピオン酸等の酸基含有ポリオール)に由来する骨格の含有量を調節することにより変化させることができる。本実施形態に係るインクジェットインク組成物が水系のインクである場合には、水により容易に分散できるように、カルボキシル基含有グリコールで、カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂とすることが好ましい。
ポリウレタン樹脂(U)の酸価は、JIS K 0070:1992記載の方法(電位差滴定法)により測定することができる。酸価は、京都電子工業社(Kyoto Electronics Manufacturing Co. Ltd.)製のAT610(製品名)を用いて測定を行い、以下の数式に数値をあてはめて算出する。
酸価(mg/g)=(EP1-BL1)×FA1×C1×K1/SIZE
(上記の数式中、EP1は滴定量(mL)、BL1はブランク値(0.0mL)、FA1は滴定液のファクター(1.00)、C1は濃度換算値(5.611mg/mL)(0.1mo1/L KOH 1mLの水酸化カリウム相当量)、K1は係数、SIZEは試料採取量(g)をそれぞれ表す。)
そして、電位差を利用したコロイド滴定により、テトラヒドロフランに溶解させたポリウレタン樹脂について、酸価を測定することができる。このときの滴定試薬としては、水酸化ナトリウムのエタノール溶液を用いることができる。
1.1.5.ポリウレタン樹脂の含有量
本実施形態のインクジェットインク組成物は、ポリウレタン樹脂(U)を複数種含有してもよい。また、ポリウレタン樹脂(U)は、エマルションの形態で添加されてもよい。本実施形態のインクジェットインク組成物におけるポリウレタン樹脂の合計の含有量は、固形分換算で、重量基準で、0.1重量%以上20.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上15.0重量%以下であることがより好ましい。
ポリウレタン樹脂(U)は、該ポリウレタン樹脂からなる樹脂粒子が分散媒に分散された分散体の形態でインクに含有することが好ましい。
1.1.6.ポリウレタン樹脂の体積平均粒子径
ポリウレタン樹脂(U)の光散乱測定法による体積平均粒子径(Dv)は、好ましくは10~120nm、より好ましくは20~60nmである。体積平均粒子径(Dv)が10nm以上であるとインクの粘度が適正でありハンドリング性が良好であり、120nm以下であると分散安定性が良好である。
ポリウレタン樹脂(U)の光散乱測定法による体積平均粒子径(Dv)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基の含有量、中和剤、分散剤量並びに分散工程で使用する分散機の種類及び分散条件によって制御することができる。体積平均粒子径(Dv)は、光散乱粒度分布測定装置[堀場製作所(株)製「LA950 V2」]で測定することができる。
1.1.7.分散剤
本実施形態のインクジェットインク組成物に用いるポリウレタン樹脂(U)は、インクジェットインク組成物から得られる乾燥皮膜の耐水性の観点から、分散剤(H)を用いない自己乳化型のポリウレタン樹脂(U)の水性分散体とすることが好ましい。なお、分散媒が主に水である分散体を水性分散体という。
一方、ポリウレタン樹脂(U)を水性媒体に分散させる場合には、分散体(H)を用いてもよい。このような分散剤(H)としては、非イオン性界面活性剤(h1)、アニオン性界面活性剤(h2)、カチオン性界面活性剤(h3)、両性界面活性剤(h4)及びその他の乳化分散剤(h5)が挙げられる。分散剤(H)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤(h1)としては、特に制限されないが、例えば、アルキレンオキシ付加型非イオン性界面活性剤及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤が挙げられる。アルキレンオキシ付加型としては、炭素数10~20の脂肪族アルコールのエチレンオキシ付加物、フェノールのエチレンオキシ付加物、ノニルフェノールのエチレンオキシ付加物、炭素数8~22のアルキルアミンのエチレンオキシ付加物及びポリオキシプロピレングリコールのエチレンオキシ付加物等が挙げられる。また、多価アルコール型としては、多価(3~8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2~30)の脂肪酸(炭素数8~24)エステル(例えばグリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレエート等)及びアルキル(炭素数4~24)ポリ(重合度1~10)グリコシド等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤(h2)としては、特に制限されないが、例えば、炭素数8~24の炭化水素基を有するエーテルカルボン酸又はその塩[ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する硫酸エステル又はエーテル硫酸エステル及びそれらの塩[ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有するスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を1個又は2個有するスルホコハク酸塩;炭素数8~24の炭化水素基を有するリン酸エステル又はエーテルリン酸エステル及びそれらの塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(付加モル数1~100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等];炭素数8~24の炭化水素基を有する脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等];並びに炭素数8~24の炭化水素基を有するアシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシントリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム等]が挙げられる。
カチオン性界面活性剤(h3)としては、特に制限されないが、例えば、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]並びにアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]が挙げられる。
両性界面活性剤(h4)としては、特に制限されないが、例えば、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]並びにアミノ酸型両性界面活性剤[β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
その他の乳化分散剤(h5)としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体並びにポリアクリル酸ソーダ等のカルボキシル基含有(共)重合体及び米国特許第5906704号明細書に記載のウレタン基又はエステル基を有する乳化分散剤[例えばポリカプロラクトンポリオールとポリエーテルジオールをポリイソシアネートで連結させたもの]等が挙げられる。
分散剤(H)は、ポリウレタン樹脂(U)のウレタン化反応後、ポリウレタン樹脂(U)の水分散工程前、水分散工程中又は水分散後のいずれの時期に添加してもよいが、ポリウレタン樹脂(U)の分散性及び水性分散体の安定性の観点から、水分散工程前又は水分散工程中に添加することが好ましい。
1.1.8.ポリウレタン樹脂の水性分散体の固形分濃度、粘度、及びpH
ポリウレタン樹脂の水性分散体の固形分濃度(揮発性成分以外の成分の含有量)は、インク組成物の取り扱い易さの観点から、好ましくは20~65重量%、更に好ましくは25~55重量%である。固形分濃度は、水性分散体約1gをペトリ皿上にうすく伸ばし、精秤した後、循環式定温乾燥機を用いて130℃で、45分間加熱した後の重量を精秤し、加熱前の重量に対する加熱後の残存重量の割合(百分率)を計算することにより得ることができる。
ポリウレタン樹脂の水性分散体の25℃での粘度は、ハンドリング性の観点から、好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは1,000mPa・s以下である。粘度はBL型粘度計を用いて測定することができる。
ポリウレタン樹脂の水性分散体の25℃でのpHは、分散安定性の観点から、好ましくは2~12、更に好ましくは4~10である。pHは、pH Meter M-12[堀場製作所(株)製]を用いて測定することができる。
1.1.9.ポリウレタン樹脂、又はポリウレタン樹脂の水性分散体の製造方法
本実施形態のポリウレタン樹脂、又はポリウレタン樹脂の水性分散体を製造する方法としては、例えば、以下の[1]及び[2]の方法等が挙げられる。
[1]ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、必要により鎖伸長剤及び反応停止剤を、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてポリウレタン樹脂(U)を製造し、必要によりカルボキシル基を、トリエチルアミン等の中和剤により塩として、水性媒体に分散させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
[2]ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを、有機溶剤(S)の存在下又は非存在下で一段又は多段で反応させてイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(P)を製造し、次いで必要によりプレポリマー(P)中のカルボキシル基を中和剤により塩として水性媒体に分散させて、鎖伸長剤及び/又は反応停止剤とプレポリマー(P)中のイソシアネート基とを反応させた後に、必要により有機溶剤(S)を留去する方法。
[1]及び[2]の方法の内、ポリウレタン樹脂(U)の分散安定性及び乾燥皮膜の機械強度の観点から、好ましいのは[2]の方法である。
[1]の方法におけるポリウレタン樹脂(U)、又はポリウレタン樹脂の水性分散体、及び[2]の方法におけるウレタンプレポリマー(P)を製造する際の反応温度は、副反応抑制の観点から、60~120℃が好ましく、更に好ましくは60~110℃であり、特に好ましくは60~100℃である。製造時間は、使用する設備により適宜選択することができるが、一般的に1分~100時間が好ましく、更に好ましくは3分~30時間であり、特に好ましくは5分~20時間である。
1.1.9.1.有機溶剤(S)
有機溶剤(S)は、イソシアネート基と実質的に非反応性の溶剤から選ばれ、例えばケトン系溶剤(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、エステル系溶剤[例えば、酢酸エチル、ニ塩基酸エステル(DBE)]、エーテル系溶剤(例えば、テトラヒドロフラン)、アミド系溶剤(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド及びN-メチルピロリドン)及び芳香族炭化水素系溶剤(例えば、トルエン)等が挙げられる。これらの有機溶剤(S)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、本実施形態における水性媒体とは、水又は水と有機溶剤(S)との混合物を意味する。
有機溶剤(S)として好ましいのは、沸点が100℃未満の有機溶剤であり、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。沸点が100℃以上の有機溶剤を使用すると、水性媒体から有機溶剤のみを完全に除去することが困難になり、水性分散体中に残存し、乾燥時に有機溶剤が発生するため好ましくない。また、有機溶剤が皮膜中に残存しやすくなり、皮膜の機械物性が経時的に変化するため好ましくない。
ポリウレタン樹脂の水性分散体における有機溶剤(S)の含有量は、臭気、経時安定性、環境負荷及び安全性の観点からは、インク組成物の重量に基づいて、1重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは0.8重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。
上記[1]及び[2]の方法におけるウレタン化反応では、反応を促進させるため、必要により公知のウレタン化触媒等を使用することができる。ウレタン化触媒の添加量は、ポリウレタン樹脂(U)又はプレポリマー(P)の重量に基づき、好ましくは0.001~3重量%、更に好ましくは0.005~2重量%、特に好ましくは0.01~1重量%である。
1.1.9.2.ウレタン化触媒
ウレタン化触媒としては、金属触媒[錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート及びジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛及びオクテン酸鉛等)、コバルト系触媒(ナフテン酸コバルト等)、ビスマス系触媒{ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート等}及び水銀系触媒(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン{1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン}等;ジアルキルアミノアルキルアミン{ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン及びジプロピルアミノプロピルアミン等]又は複素環式アミノアルキルアミン[2-(1-アジリジニル)エチルアミン及び4-(1-ピペリジニル)-2-ヘキシルアミン等]の炭酸塩又は有機酸塩(ギ酸塩等)等;N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン及びジメチルエタノールアミン等]並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
上記[1]の方法におけるポリウレタン樹脂(U)又はその有機溶剤溶液、上記[2]の方法におけるウレタンプレポリマー(P)又はその有機溶剤溶液を水中に分散する装置としては特に制限されないが、回転式分散混合装置、超音波式分散機又は混練機を用いることが好ましく、なかでも分散能力が特に優れる回転式分散混合装置が更に好ましい。
回転式分散混合装置としては、例えば、マックスブレンドやヘリカル翼等の一般的な攪拌羽を有する混合装置、TKホモミキサー[プライミクス(株)製]、クレアミックス[エムテクニック(株)製]、フィルミックス[プライミクス(株)製]、ウルトラターラックス[IKA(株)製]、エバラマイルダー[荏原製作所(株)製]、キャビトロン(ユーロテック社製)及びバイオミキサー[日本精機(株)製]等が挙げられる。
1.2.記録媒体
本実施形態のインクジェットインク組成物はインクジェットインクとして用いると、耐擦過性に優れる乾燥皮膜が得られる。さらに、本実施形態のインクジェットインク組成物をポリエチレンテレフタレート及びポリプロピレン等の非浸透性の記録媒体に対して塗布した場合でも、耐擦過性に優れる乾燥皮膜が得られるため、本実施形態のインクは軟包装印刷用インクジェット用として用いることが好ましい。軟包装印刷とは、柔軟性のある材料で構成されている包装材への印刷のことであり、包装材としては、例えば、プラスチックフィルム及びアルミ箔等の薄く柔軟な材料が挙げられ、単体又は複数を貼り合せたものを使用してもよい。軟包装印刷された包装材は、例えば、袋として食品や医薬品等へ利用される。
本実施形態のインクジェットインク組成物は、ウレタン樹脂(U)、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、顔料及び水以外に、アセチレングリコール系界面活性剤等のその他の界面活性剤、シリコーン・アクリル共重合体樹脂、有機溶剤、ワックスエマルジョン、及びその他の添加剤を含有することができる。
1.3.界面活性剤
界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のエーテル系界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート及びポリオキシエチレンステアレート等のエステル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素アルキルエステル及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素系界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
1.3.1.ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
特に、本実施形態のインクジェットインク組成物には、必須成分として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を含む。ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの非吸収の記録媒体でインクが適切に広がり、印刷面の均一性や光沢性が向上することから、アセチレングリコール系の界面活性剤と併用することが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドの付加物であって、プロピレンオキサイドの付加モル数に対するエチレンオキサイドの付加モル数のモル比が、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=80~100/20~0であることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンが、シロキサン結合を有する主鎖とポリエーテル結合を有する側鎖とを有し、分子中における側鎖の含有量に対する主鎖の含有量の重量比が、主鎖/側鎖=10~90/90~10であることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンが、25℃のおける動粘度が10~10,000mm2/sであることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤として、市販されているものを用いることができる。例えば、旭化成工業のBELSILシリーズのDMC6038、OW1500、SPG128VPなど、東レ・ダウコーニング社のDOWSILシリーズの501WAdditive、FZ-2104Fluid、FZ-2110、FZ-2123、FZ-2164,FZ-2191,FZ-5609Fluid、L-7001、L-7002、L-7604、OFX-0309Fluid、OFX-5211Fluid、SF8410Fluid、OFX-0193Fluid、SH-3746Fluid、SH-3771Fluid、SH-8400Fluid、SH-8700Fluid、Y-7006など、日信化学工業のシルフェイスシリーズのSAG001、SAG002、SAG003、SAG005、SAG008、SAG009、SAG010、SAG014、SAG-503A、SJM002、SJM003、ビックケミー・ジャパン社のBYK‐017、BYK‐018、BYK‐019、BYK‐021、BYK‐023、BYK‐024、BYK‐025、BYK‐028、BYK‐044、BYK‐093、BYK‐094、BYK‐1610、BYK‐1615、BYK‐1650、BYK‐1730、BYK‐1770、BYK‐1798等が挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLBは、6以下であることが好ましく、より好ましくは1~6である。HLBが6以下であることにより、非吸収の記録媒体メディアでインクが適切に広がり、印刷面の均一性や光沢性がより向上する傾向にある。また、これに加えて、得られる記録物の耐擦過性及び耐ブロッキング性がより向上する傾向にある。なお、HLB(Hydrophile - Lipophile Balance)値は、グリフィン法で定義される。
HLB値が6以下であるポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、市販品として、ビックケミー・ジャパン社のBYK‐017、BYK‐018、BYK‐019、BYK‐021、BYK‐023、BYK‐024、BYK‐025、BYK‐028、BYK‐044、BYK‐093、BYK‐094、BYK‐1610、BYK‐1615、BYK‐1650、BYK‐1730、BYK‐1770、BYK‐1798、日信化学工業のシルフェイスSAG001、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG006、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG009、シルフェイスSAG010などが挙げられる。
ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の含有量は、インク組成物の総重量に対して、0.05~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がより好ましく、0.2~1重量%がさらに好ましく、0.3~0.7重量%が特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、非吸収の記録媒体メディアでインクが適切に広がり、印刷面の均一性や光沢性がより向上する傾向にある。また、これに加えて、得られる記録物の耐擦過性及び耐ブロッキング性がより向上する傾向にある。
1.3.2.アセチレングリコール系界面活性剤
本実施形態において、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤の他に、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。
アセチレングリコール系の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、日信化学工業のサーフィノールシリーズやオルフィンシリーズがあり、サーフィノールシリーズの104E、104H、104A、104PA、104PG50、104S、420、440、465、465、485、SE、SE-F、PSA-336、2502、DF110D、DF58、AD01、DM-20、オルフィンシリーズのD-10A、D-10PG、E1004、E1010、E1020、E1030W、PD-001、PD002W、PD004、PD005、EXP4001、EXP4200、EXP4123、EXP4300、WE-001、WE-002、WE-003、SPC、AF-103、AK-02等が挙げられる。アセチレングリコール系の界面活性剤のHLBは5以下が好ましい。より好ましくは4以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、0.05~0.5重量%が好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、非吸収の記録媒体でインクが適切に広がり、印刷面の均一性や光沢性がより向上する傾向にある。また、これに加えて、得られる記録物の耐擦過性及び耐ブロッキング性がより向上する傾向にある。
さらに、本実施形態において、シリコーン・アクリル共重合体樹脂及び/又はシリコーンウレタン共重合樹脂を含有することが好ましい。シリコーン・アクリル共重合体樹脂及び/又はシリコーンウレタン共重合樹脂の添加量はインクジェットインク組成物全体の0.1~0.5重量%が好ましい。シリコーン・アクリル共重合体樹脂によって耐擦過性をさらに向上させることができる。
1.4.顔料
本実施形態のインクジェットインク組成物は、色材として顔料を含有する。本実施形態のインクジェットインク組成物は、ポリウレタン樹脂(U)により、物理的に色材を記録媒体に定着できるため、用いる色材としては、顔料がより好ましい。係る顔料が記録媒体に付着されることにより、画像(記録物)が形成される。
顔料としては、特に制限されず、顔料種としては、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料、アゾ顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、アントラキノン顔料などの有機顔料などを用いてもよい。
ブラック顔料としては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学株式会社製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ社製)等が挙げられる。
ホワイト顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン),6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム),19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)等が挙げられる。
イエロー顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180等が挙げられる。
マゼンタ顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメントヴァイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
シアン顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バットブルー 4、60等が挙げられる。
ブラック、ホワイト、イエロー、マゼンタ及びシアン以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7、10、及びC.I.ピグメントブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメントオレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63等が挙げられる。
上記例示した顔料は、アニオン性基が直接又は他の原子団を介して粒子表面に結合してなる顔料(表面処理顔料)、及び、アニオン性官能基を有する樹脂で分散させた顔料の少なくとも一方として使用できる。
アニオン性基が直接又は他の原子団を介して粒子表面に結合してなる顔料としては、例えば、顔料粒子の表面にアニオン性基を含む官能基を結合させたものや、顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を結合させたものが挙げられる。また、アニオン性官能基を有する樹脂で分散させた顔料としては、顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を物理的に吸着させたものや、アニオン性樹脂で顔料を包含したものなどが挙げられる。
顔料粒子の表面にアニオン性基を含む官能基を結合させた自己分散顔料は、-COOM、-SO3M、プロピレンオキシ鎖の水素原子の一部がMに置換された基などのアニオン性基が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合してなるものである。Mとしては、水素原子、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム(NH4)、メチルアミン、エチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミンが挙げられる。また、他の原子団としては、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、アミド基、スルホニル基、アミノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基及びこれらの基を組み合わせた基などが挙げられる。
これらの自己分散顔料としては、公知の方法により酸化処理によりアニオン性基を顔料粒子の表面に結合させたものや、ジアゾカップリングなどアニオン性基を含む官能基を顔料粒子の表面に結合させたものが挙げられ、いずれも好適に用いることができる。顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を結合させた自己分散顔料は、親水性ユニットとして、少なくともアニオン性基を有するユニットを有する樹脂が、顔料粒子の表面に直接又は他の原子団を介して結合してなるものである。
顔料粒子の表面にアニオン性樹脂を物理的に吸着させた樹脂分散顔料、及び、アニオン性樹脂で顔料を包含した樹脂分散顔料は、いずれも、樹脂分散剤を用いる分散方式である。樹脂分散剤としては、親水性基と疎水性基とを有する共重合体を用いる。
自己分散顔料や樹脂分散顔料に用いる樹脂分散剤としては、インクジェットインク組成物に使用可能な公知の樹脂をいずれも用いることができる。好適な樹脂分散剤としては、親水性基には少なくともアニオン性基が含まれることが好ましい。親水性基としては、(メタ)アクリル酸やその塩などの親水性単量体によるものが挙げられる。また、疎水性基としては、スチレンやその誘導体、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香環を有するモノマー、(メタ)アクリル酸エステルなどの脂肪族基を有するモノマー、などの疎水性単量体による官能基などが挙げられる。
樹脂分散剤として用いる樹脂は、重量平均分子量が10,000以上100,000以下、さらには30,000以上80,000以下であるものや、酸価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であるものが好ましい。本実施形態においては、酸価が50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂又は(メタ)アクリル系樹脂を分散剤として用いることがより好ましい。分散剤を用いる分散方式を利用する場合、樹脂分散剤/顔料の重量比率は、0.1倍以上10.0倍以下、さらには0.5倍以上5.0倍以下とすることが好ましい。
本実施形態のインクジェットインク組成物の付着対象が透明又は半透明なフィルムなどの記録媒体である場合には、顔料を用いる場合に、無機顔料(白色顔料)を用いると、定着性及び耐擦過性に優れた下地層(後述の第1層)を形成することができ、係る下地層により、背景の遮蔽性の良好な記録物を作成することができる。
これら例示した顔料は、複数種を用いてもよい。インクジェットインク組成物中の顔料(固形分)の合計の含有量は、使用する顔料種により異なるが、良好な発色性を得る観点から、インクジェットインク組成物の総重量を100重量%としたときに、0.1重量%以上15.0重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以上10.0重量%以下であることがさらに好ましい。
なお、インクジェットインク組成物に調製する際には、あらかじめ顔料を分散させた顔料分散液を調製して、その顔料分散液をインクジェットインク組成物に添加してもよい。このような顔料分散液を得る方法としては、分散剤を使用せずに自己分散顔料を分散媒中に分散させる方法、ポリマー分散剤(樹脂分散剤)を使用して顔料を分散媒に分散させる方法、表面処理した顔料を分散媒に分散させる方法などがある。
顔料は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。顔料の含有量は、インクジェットインク組成物の重量に基づいて、白インクの場合は好ましくは5重量%~30重量%、より好ましくは10重量%~20重量%である。黒インク、イエローインク、マゼンタインク又はシアンインクの場合、顔料の含有量は、1重量%~20重量%が好ましく、より好ましくは4重量%~10重量%である。
1.5.水
水としては、特に限定されないが、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、インクジェットインク組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を防止することができる。
水の含有量は、インク組成物の総重量に対して、好ましくは60~90重量%であり、より好ましくは65~85重量%であり、さらに好ましくは70~80重量%である。
1.6.シリコーン・アクリル共重合体樹脂
シリコーン・アクリル共重合体樹脂は市販品を用いることができる。例えば、日信化学工業のシャリーヌシリーズのFE-230N、FE-502、E-370、RU-911、R-170、R170S、LC-190、R-170BX、東亞合成株式会社のサイマックUS-380 サイマックUS-450、サイマックUS-480、東レ・ダウコーニング株式会社のIE-7170、SE1980CLEAR、BY22-826EX、プロピレンオキシLON-MF-40、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社のレキサンEXL、出光興産株式会社のタフロンネオ、サイデン化学株式会社のバンスタ-S-806、日本合成株式会社のモビニール、東レ株式会社のコータックス、大東化成工業株式会社のダイトゾール5000SJ、日本エヌエスシー株式会社の「ヨドゾールGH41、信越化学工業株式会社のアクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(商品名:KP578)、DIC株式会社のボンコート、セラネート、JSRのアクリルシリコーン系エマルジョン“SIFCLEAR S101”、“SIFCLEAR S102”等が挙げられる。
1.7.有機溶剤
有機溶剤としては、特に限定されないが、水に溶ける水溶性有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1、4-ジオール、2-エチル-1、3-ヘキサンジオール、2-メチル-2、4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、Mnが2,000以下のポリエチレングリコール、1、3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、グリコールエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテル等)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(ソルフィット)及び炭素数4~8の脂肪族ジオール(1,2-ペンタンジオール及び1,2-ヘキサンジオール等の1,2-アルキルジオール並びに1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール及び1,8-オクタンジオール等の直鎖アルコール、1,3-ブタンジオール等の分岐鎖アルコール)等が挙げられる。
本実施形態のインクジェットインク組成物は、有機溶剤として、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドから選ばれる1種以上を含有するによって、耐擦過性を更に向上させることができる。
有機溶剤の含有量は、インク組成物の総量に対して、好ましくは5.0~20重量%であり、より好ましくは7.5~17.5重量%あり、さらに好ましくは10~15重量%ある。
1.8.ワックスエマルジョン
本実施形態のインク組成物には、ワックスエマルジョンを更に含んでもよい。このようなワックスエマルジョンとしては、特に制限されないが、例えば、天然ワックス、パラフィンワックスエマルジョン、及びポリオレフィンワックスエマルジョンが挙げられる。
天然ワックスとしては、石油ワックス、植物ワックス、動物ワックス等が挙げられる。
石油ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等が挙げられる。
植物ワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、木ロウ等が挙げられる。
動物ワックスとしては、ラノリン、みつろう等を挙げることができる。
ポリオレフィンワックスエマルジョンとしは、ポリエチレンワックスエマルジョンやポリプロピレンワックスエマルジョンなどが挙げられる。
本実施形態において、「ワックスエマルジョン」とは、主に、界面活性剤を使用して、固体ワックス粒子を水中に分散させたものを意味する。
本実施形態におけるインク組成物にパラフィンワックスエマルジョンを含有させることにより、記録物にスリップ性能が付与され、これにより当該インク組成物は耐擦過性に優れたものとなる傾向にある。なお、パラフィンワックスは、撥水性を有するため、記録物の耐水性を良好なものとすることができる傾向にある。
本実施形態における「パラフィンワックス」とは、いわゆる石油系ワックスを意味し、炭素数20~30程度の直鎖状のパラフィン系炭化水素(ノルマル・パラフィン)を主成分とし、少量のイソ(iso)・パラフィンを含む重量平均分子量300~500程度の炭化水素の混合物を意味する。
本実施形態におけるインク組成物がパラフィンワックスをエマルジョン状態で含有することにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、かつ、インク組成物の保存安定性及び記録安定性を一層優れたものとすることができる傾向にある。
パラフィンワックスエマルジョンの融点は、着弾後のインクの被膜を一層強固にし、かつ画像の耐擦過性を一層良好にするため、110℃以下であることが好ましい。一方で、パラフィンワックスエマルジョンの融点の下限は、被記録面が乾燥してべたつくことを防止するため、60℃以上が好ましい。さらに上記融点は、インク組成物の記録安定性を一層良好にするため、70℃以上95℃以下がより好ましい。
パラフィンワックスエマルジョンの平均粒子径は、安定的なエマルジョン状態とし、かつ、インク組成物の保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5nm以上400nm以下の範囲であり、より好ましくは50nm以上200nm以下の範囲である。パラフィンワックスエマルジョンとしては、市販品をそのまま利用してもよい。市販品としては、特に制限されないが、例えば、AQUACER537、AQUACER539(以上商品名、BYK社製)が挙げられる。
パラフィンワックスエマルジョンの含有量(固形分換算)は、インク組成物の総量(100重量%)に対して、0.1重量%以上3.0重量%以下が好ましく、0.3重量%以上3.0重量%以下がより好ましく、0.3重量%以上1.5重量%以下がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体上に、耐擦過性、耐ブロッキング性、及び耐水性に一層優れた画像を形成することができ、かつ、目詰まり防止に優れたインク組成物とすることができる傾向にある。
本実施形態におけるインク組成物にポリオレフィンワックスエマルジョンを含有させることにより、インク組成物の耐擦過性をより優れたものとすることができる傾向にある。
ポリオレフィンワックスエマルジョンの製造方法を例示すると、エチレンを重合して製造したり、あるいは一般成形用のポリエチレンを熱分解により低分子量化して製造したりすることでポリエチレンワックスを作製する。そして、このポリエチレンワックスを酸化してカルボキシル基や水酸基を付加し、さらに界面活性剤を使用して乳化して、安定性に優れた水性ワックスエマルジョンの形態で、ポリオレフィンワックスエマルジョンを得ることができる。
ポリオレフィンワックスエマルジョンとしては、市販品をそのまま利用してもよい。市販品としては、特に制限されないが、例えば、ノプコートPEM17(商品名、サンノプコ社(SANNOPCO LIMITED社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学社(Mitsui Chemicals,Inc社製)、AQUACER515、AQUACER537、AQUACER552、AQUACER593(以上商品名、BYK社製)、ハイテックE-9015、ハイテックE-1000、ハイテックE-2000、ハイテックE-103N、ハイテックE-433N、ハイテックE5060(東邦化学工業(株)製、ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスからなるワックス粒子の水分散物)、カルナバワックスエマルジョンWE-100、カルナバワックスエマルジョンWE-1-252(シンエー産業(株)製)、ポリエム20、ポリエム40J(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)等が挙げられる。
ポリエチレンワックスエマルジョンの平均粒径は、インク組成物の保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5.0nm以上400nm以下の範囲であり、より好ましくは50nm以上200nm以下の範囲である。
ポリエチレンワックスエマルジョンの含有量(固形分換算)は、インク組成物の総量(100重量%)に対して、0.1重量%以上3.0重量%以下が好ましく、0.3重量%以上3.0重量%以下がより好ましく、0.3重量%以上1.5重量%以下がさらに好ましい。含有量が上記範囲内であると、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体上においても、インク組成物を良好に固化・定着させることができ、かつ、インク組成物の保存安定性及び記録安定性が一層優れたものとなる傾向にある。
パラフィンワックスエマルジョン及びポリオレフィンワックスエマルジョンの各々の好適な含有量の範囲は、上述の通りである。加えて、インク組成物に含まれるパラフィンワックスエマルジョン及びポリオレフィンワックスエマルジョンの合計の含有量(固形分換算)は、互いに独立して、インク組成物の総量(100重量%)に対して、0.4重量%以上1.6重量%以下の範囲が好ましい。
本実施形態におけるインク組成物は、パラフィンワックスエマルジョン及びポリオレフィンワックスエマルジョン以外のワックス(以下、「その他のワックス」という。)を含んでもよい。ワックスは、形成された記録物の表面にスリップ性能を付与し耐擦過性を良好にする機能を有する。ワックスは、インク組成物中にエマルジョン状態で含有されていることが好ましい。インク組成物中のワックスがエマルジョン状態で存在することにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、かつ、インク組成物の保存安定性及び吐出安定性を一層優れたものとすることができる傾向にある。
その他のワックスの平均粒子径は、インク組成物の保存安定性及び吐出安定性を一層良好にするため、好ましくは5.0nm以上400nm以下であり、より好ましくは50nm以上200nm以下である。
1.9.その他の添加剤
その他の添加剤としては、キレート剤、防腐剤、pH調整剤、及び防錆剤等が挙げられる。
キレート剤としては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、又はメタリン酸塩等が挙げられる。塩としては、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩が挙げられる。
防腐剤としては、特に制限されないが、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及び1,2―ジベンジンチアゾリン-3-オン等が挙げられる。
pH調整剤としては、特に制限されないが、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
2.インクセット
本実施形態のインクセットは、上記インクジェットインク組成物を含み、そのインクジェットインク組成物として、少なくとも白インク、黒インク、イエローインク、マゼンタインク、又はシアンインクのいずれかを含むものである。この中でも、顔料を用いた上記インクジェットインク組成物が、少なくとも白インク、黒インク、イエローインク、マゼンタインク及びシアンインクからなるインクセットであることが好ましい。
3.記録方法
本実施形態の記録方法は、上記インクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出させて、記録媒体へ付着させ記録する吐出工程を有する。本実施形態では、記録媒体のインク組成物の記録面にフィルムをラミネートするラミネート工程を有していてもよい。
3.1.吐出工程
吐出工程は、インクジェット法を用いて、上記インク組成物を記録媒体に付着させる工程である。インクジェット方式によるインク組成物の吐出は、公知のインクジェット記録装置を用いて行うことができる。吐出方法としては、ピエゾ方式や、インク組成物を加熱して発生した泡(バブル)によりインク組成物を吐出させる方式等を用いることができる。
吐出工程において複数色のインク組成物を記録媒体へ付着する場合、その付着順は特に制限されない。例えば、付着順としては、記録媒体に白インクを付着させて、その白インクに重ねて、黒インク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクなどの有色インクを付着させてもよいし(以下、「表印刷」ともいう)、記録媒体に、黒インク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクなどの有色インクを付着させて、その有色インクに重ねて、白インクを付着させてもよい(以下、「裏印刷」ともいう)。なお、この場合、白インク、黒インク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクのいずれか一つが上記インクジェットインク組成物であればよく、白インクが上記インクジェットインク組成物であることが好ましく、白インク及び有色インクのすべてが上記インクジェットインク組成物であることがより好ましい。
ここで、表印刷は、記録媒体上に隠蔽層となる白インクを付着させて、その一平層の上に有色インクを付着させて画像形成をする記録方法であり、記録媒体のインクが付着した面(以下、「記録面」ともいう)から記録物を見たときに、精細な画像を視認できる。また、裏印刷は、透明な記録媒体上に有色インクで画像形成をして、その上から隠蔽層となる白インクを付着させる記録方法であり、記録面と反対側の面から記録物を見たときに、精細な画像を視認できる。裏印刷の場合には、さらに、記録面にフィルムをラミネートすることが好ましい。
特に本実施形態の記録方法は、表印刷で行うことが好ましい。表印刷の場合、上記のように隠蔽層となる白インクに有色インクを付着させるが、本実施形態のインクジェットインク組成物を用いることにより、耐擦過性、耐ブロッキング性、画像の光沢性及び画像濃度に優れる記録物を得ることができる。
付着工程における記録媒体の表面温度は、好ましくは40℃以上であり、より好ましくは45℃以上90℃以下、さらに好ましくは50℃以上70℃以下である。表面温度が上記範囲内であることにより、得られる記録物の画質がより向上する傾向にある。なお、記録媒体を加熱する手段としては、特に制限されないが、例えば、プラテンヒーター、プレヒータ―、温風送風機などが挙げられる。
インクジェットインク組成物を用いた記録物は、発色性や光沢性に加えて、耐擦過性が向上するので、記録媒体が、プロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びナイロンなどに、良好な印刷物を提供できる。
3.2.ラミネート工程
ラミネート工程は、記録媒体のインク組成物記録面にフィルムをラミネートする工程である。ラミネート方法は、特に制限されないが、例えば、記録媒体の記録面にウレタン系接着剤を塗布した後、ラミネート用のフィルムを接着することによって行う。
ラミネートフィルムとしては、各種プラスチックフィルム、各種金属蒸着フィルム、金属箔、セロハン、紙、合成紙等が使用される。例えば、塩化ビニル、ポリエステル、二軸延伸ポリプロヒレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデンコート2軸延伸ポリプロピレン、2軸延伸ポリプロピレン、ポバール、ポリカーボネート、セロハン等の各種プラスチックフィルム;アルミ蒸着ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着2軸延伸ポリプロピレン等の各種金属蒸着フィルム、アルミ箔、銅箔等の金属箔等が挙げられる。
3.3.記録媒体
本実施形態の記録方法で使用する記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、非浸透性の記録媒体と浸透性の記録媒体が挙げられる。
非浸透性の記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の樹脂媒体、ガラス、ステンレス等の無機媒体等が挙げられる。また、浸透性の記録媒体としては、特に制限されないが、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙媒体等が挙げられる。
この中でも、記録媒体としては耐擦過性の観点から非浸透性の記録媒体が好ましく、より好ましくは樹脂媒体であり、樹脂媒体は軟包装印刷用に好適である。
なお、軟包装印刷とは、樹脂フィルム等の柔軟性のある記録媒体を単体もしくは貼り合せたものに印刷することであり、軟包装印刷された印刷物は、食品、生活用品等を包装する用途に使用される。
4.記録物
本実施形態の記録物は、記録媒体と、該記録媒体上に付着した本実施形態のインクジェットインク組成物の塗膜と、を含む。
本実施形態の記録物における記録媒体としては、上記記録方法で列記したものを例示することができる。この中でも、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びナイロンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。これら記録媒体に対して本実施形態のインクジェットインク組成物を用いることにより、にじみの少ない発色性の高い印刷物を得ることができる。また、本実施形態のインクジェットインク組成物を用いることにより、耐擦過性、耐ブロッキング性および、画像の光沢性及び画像濃度に優れたる記録物を得ることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
<顔料分散液P-1製造>
イオン交換水500g及びカーボンブラック150gを混合し、1mmのジルコニアビーズを用いたロッキングミルを用いて30分間撹拌して、顔料を予備湿潤させた。ここに4485gのイオン交換水を加え、高圧ホモジナイザーで分散させた。このときの顔料の平均粒子径は110nmであった。これを高圧容器に移し、圧力3MPaで加圧した後、オゾン濃度が100ppmであるオゾン水を導入することによって顔料の表面のオゾン酸化処理を行った。その後0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いてこの分散液のpHを9.0に調整した後、顔料固形分の濃度を調整して、顔料分散液P-1を得た。顔料分散液P-1には、粒子表面に-COONa基が結合した自己分散顔料が含まれており、顔料の含有量は15%であった。
<顔料分散液P-2製造>
500gのカーボンブラック、1000gの水溶性樹脂、14000gの水を混合し、混合物を得た。水溶性樹脂としては、酸価100mgKOH/g、重量平均分子量10,000のスチレン-アクリル酸共重合体を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液で中和したものを用いた。1mmのジルコニアビーズを用いたロッキングミルを用いてこの混合物を1時間分散した後、遠心分離により不純物を除去し、さらにポアサイズ5.0μmのミクロフィルター(ミリポア製)を用いて減圧ろ過を行った。次いで、顔料固形分の濃度を調整して、pHが9.0である顔料分散液P-2を得た。顔料分散液P-2には、水溶性樹脂(樹脂分散剤)により分散された顔料が含まれており、顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は7.5%であった。
<顔料分散液P-3製造>
攪拌機、温度計、還流管及び滴下ロートを備えた反応容器を窒素置換した後、メチルエチルケトン300重量部を入れ、スチレン40重量部、エチルメタクリレート40重量部、ラウリルアクリレート5重量部、ラウリルメタクリレート5重量部、メトキシポリエチレングリコール400アクリレートAM-90G(新中村化学工業株式会社製)5重量部、アクリル酸5重量部、過硫酸アンモニウム0.2重量部、t―ドデシルメルカプタン0.3重量部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながらポリマー分散剤を重合反応させた。その後、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40重量%のポリマー分散剤の溶液を調製した。
上記ポリマー分散剤溶液について、株式会社日立製作所製L7100システムのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶剤をTHFとしてスチレン換算の重量平均分子量を測定したところ、58000であった。また、多分散度(Mw/Mn)の値は3.1であった。
また、上記ポリマー分散剤溶液40重量部と、シアン顔料としてクロモファインブルー C.I.Pigment Blue15:3(大日精化工業株式会社製、商品名、以下「PB15:3」ともいう)30重量部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100重量部、メチルエチルケトン30重量部とを混合し、アルティマイザー25005(スギノマシン株式会社製製品名)で8パスの分散処理を行った。その後、イオン交換水を300重量部添加して、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整した。次いで、シアン顔料の体積平均粒子径を粒度分布計で測定しながら、体積平均粒子径が100nmとなるまで分散し、3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(ポリマー分散剤と顔料)が15重量%である顔料分散液P-3を得た。
<ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-1の製造>
撹拌機及び加熱装置を備えた簡易加圧反応装置に多環脂肪族ジオールとしてトリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンジメタノール35.9部、カルボキシル基を有するポリオール成分として2,2-ジメチロールプロピオン酸4.5部、芳香族ポリイソシアネート成分として4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート37.4部、脂肪族イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート22.1部及び反応用有機溶剤としてのメチルエチルケトン54部を仕込み、70℃で12時間攪拌しウレタン化反応を行い、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を製造した。
次いで、得られたウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液に中和剤としてのトリエチルアミン2.9部を加えて均一化した後、200rpmで撹拌しながら水性媒体としてのイオン交換水176部を加え、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた。得られた分散体を50℃に加熱して4時間攪拌して水とイソシアネート基の反応により形成されたアミノ基による鎖伸長反応を行い、更に減圧下60℃に加熱してメチルエチルケトンを留去した。その後、水を加えて固形分濃度を30重量%に調製することでポリウレタン樹脂の水性分散体Q-1を得た。使用する原料及び使用量を表1に示す。
<ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-2~Q-13、及びQ-15の製造>
使用する原料及び使用量を表1に記載のものに変更し、ポリウレタンプレポリマーを水に分散させた後に表1に記載の鎖伸長剤を加える以外は、ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-1の製造方法と同様にして、ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-2~Q-15を得た。使用する原料及び使用量を表1に示す。
<ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-14の製造>
使用する原料の使用量を表1に記載のものに変更する以外は、ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-1の製造方法と同様にして、ポリウレタン樹脂の水性分散体Q-14を得た。
表1における「ポリオールの平均分子量」は、ポリオール成分の数平均分子量を重量平均化した値である。
「芳香族イソシアネートの重量割合」は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計の重量を基準とした値(重量%)である。
「脂肪族イソシアネートの重量割合」は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との合計の重量を基準とした値(重量%)である。
「体積平均粒子径」は、ポリウレタン樹脂の光散乱測定法による体積平均粒子径(Dv)の値(nm)である。
Figure 2022146196000001
<インクジェットインク組成物L-1~L-54の調製>
下記表2~4に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ5.0μmのミクロフィルター(ミリポア製)にて減圧ろ過を行い、各実施例及び各比較例の各インクジェットインク組成物を調製した。実施例及び比較例の各インクジェットインク組成物L-1~L-54の組成を表2~4に示す。尚、表2~4には顔料固形分の正味の添加量を示す。
<実施例1>
表2に示すインクジェットインク組成物L-1を用いた印刷物の、耐擦過性試験、間欠吐出安定性試験、連続印字安定性試験、目詰まり回復性試験、20°光沢性試験、及び耐ブロッキング性試験を行った。結果を表2に示す。
<実施例2~36、及び比較例1~18>
実施例1と同様に、顔料分散液P-1~P-3、及びポリウレタン樹脂の水分散体Q-1~Q-15を用いて、表2~4に示すインク組成によるインクジェットインク組成物L-2~L-54を作製し、実施例1と同様に各評価を行った。結果を表2~4に示す。
評価方法
上記で得られた各インクジェットインク組成物L-1~L-54をそれぞれインクカートリッジに充填し、ピエゾ素子のエネルギーの作用により記録ヘッドからインク組成物を吐出するインクジェット記録装置(商品名PX-G930、セイコーエプソン株式会社製)に搭載した。各例において1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たりの重量が28ng±10%であるインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。記録条件は、温度:23℃、相対湿度:55%とした。各例について以下の各評価を行い、それらの評価基準において、AAは非常に良好なレベル、A及びBを許容できるレベル、C及びDを許容できないレベルとした。
(耐擦過性試験)
JIS L0849 2013 に基づいてテスター産業の学振式耐擦過性評価装置AB-301を用いて行った。耐擦過性試験は乾燥した金巾綿で試験する乾摩擦性試験と湿った金巾綿で試験する湿摩擦性試験があり、両方の試験を行った。乾摩擦性試験は200g荷重100往復の条件、湿摩擦性試験は200g荷重10往復の条件でそれぞれ行った。上記のインクジェット記録装置を用いて、フィルム(商品名OPP無地ロール25μm厚、東洋紡製)に、記録デューティが100%である、1.0インチ×0.5インチのベタ画像を記録した記録物を得た。プラテン温度を60℃で1440dpi×1440dpiのドット密度で印刷した。記録の10分後及び1日後にそれぞれ、記録物のベタ画像の上に金巾綿を押し当てて評価した。その後、金巾綿の汚れ、非記録部の汚れ及び印刷部分の剥がれ具合を目視で確認して、以下に示す評価基準にしたがって耐擦過性の評価を行った。
AA:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがなく、印刷部分の剥がれがなかった
A:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れもほとんどなく、印刷部分の剥がれ具合がほとんどなかった
B:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあるが少なく、印刷部分の剥がれ具合がほとんどなかった
C:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがあり、印刷部分の剥がれ具合が多少あった
D:金巾綿の汚れ及び非記録部の汚れがかなりあり、印刷部分の剥がれ具合が多かった
(間欠吐出安定性試験)
プリンターPX-G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、フィルムが印刷できるプリンターとした。このプリンターを用いて、温度40℃、相対湿度20%の環境下で間欠印刷時における吐出安定性の評価を行った。まず、全てのノズルから正常にインクジェットインク組成物が吐出されることを確認した。そして、インクジェットインク組成物をA4判の写真用紙(セイコーエプソン株式会社製フォト光沢紙)上に吐出した後、温度40%、相対湿度20%の環境下で2分間の休止時間を設け、再度、A4判の写真用紙上にインクジェットインク組成物を吐出した。二回目の吐出において、A4判の写真用紙上に付着した1滴目のドットの位置と、狙い位置とのドットの位置ずれを光学顕微鏡で測定した。得られたドットの位置ずれに基づいて、下記評価基準により間欠特性を評価した。
AA:ドットの位置ずれが5μm以下であった。
A:ドットの位置ずれが5μmを超え10μm以下であった。
B:ドットの位置ずれが10μmを超え20μm以下であった。
C:ドットの位置ずれが20μmを超え30μm以下であった。
D:ドットの位置ずれが30μm超過であった。
(連続印字安定性試験)
プリンターPX-G930(セイコーエプソン株式会社製)の一部を改造して、フィルムが印刷できるプリンターとした。このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインクジェットインク組成物を充填した。そして、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判の写真用紙(セイコーエプソン株式会社製フォト光沢紙)にインクジェットインク組成物を吐出し、シアンのベタパターンによる記録サンプルを作製した。温度40℃、相対湿度20%の環境下で、最大8時間までこの操作を繰り返してインクジェットインク組成物を吐出し、安定してインクジェットインク組成物の液滴がノズルから吐出されなくなるまでの時間を測定した。得られた時間に基づいて、下記評価基準により連続印字安定性を評価した。
AA:吐出開始から8時間以上たっても、1度も不吐出や吐出乱れが観察されなかった。
A:吐出開始から1時間以上8時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
B:吐出開始から30分以上1時間未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
C:吐出開始から10分以上30分未満で、不吐出や吐出乱れが観察された。
D:吐出開始から10分未満で、不吐出や吐出乱れ等が観察された。
(目詰まり回復性試験)
プリンターPX-G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインクジェットインク組成物L-1~L-54を充填し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判OPPフィルムに印刷して全ノズルでインクジェットインク組成物(L1~L54)が吐出されることを確認した。その後、プリンターを温度40℃、相対湿度20%の環境下に30日間放置した。放置後、再び全ノズルよりインクジェットインク組成物(L1~L54)を吐出し、初期と同等の印刷が可能となるまでにクリーニングを繰り返し実施し、その際のクリーニングの回数を計測した。クリーニングの回数に基づいて、下記評価基準により目詰まり回復性を評価した。
AA:1回から3回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
A:3回又は4回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
B:5回又は6回のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
C:7回以上のクリーニングで全てのノズルからインク組成物が吐出された。
D:クリーニングではいずれかのノズルからインク組成物が吐出できなかった。
(20°光沢性試験)
コロナ処理OPP(フタムラ化学製FOS-AQ 60μm厚)にプリンターPX-G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いてプラテン温度55℃でべた印刷(1440dpi×1440dpi)し、90℃で10分間乾燥させたものを作製し、光沢時計で20°光沢を測定した。光沢度はハンディタイプの光沢度計MULTI GLOSS 268(コニカミノルタ株式会社製)で測定した。
AA:OPPフィルム上で20°光沢が50以上。
A:OPPフィルム上で20°光沢が40以上50未満。
B:OPPフィルム上で20°光沢が30以上40未満。
C:OPPフィルム上で20°光沢が20以上30未満。
D:OPPフィルム上で20°光沢が20未満。
(耐ブロッキング性試験)
プリンターPX-G930(セイコーエプソン株式会社製)を用いて、このプリンターのインクカートリッジに上記で得られたインクジェットインク組成物L-1~L-54を充填し、縦720dpi×横720dpiの解像度で、A4判ポリプロピレンフィルム(OPP)又はポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)に印刷して、90℃10分間乾燥した。5cm×5cmに切り取り、このサンプルの記録面と同じ大きさの未印刷フィルムの非コロナ処理面とを合わせて、50℃24時間、10kg/cm2の加圧をおこない、フィルムを剥離した時の、記録面の剥がれの程度及び抵抗感を観察した。
AA:印刷物からインキの剥がれが全く見られず、剥離時の抵抗感もなかった。
A:印刷物からインキの剥がれは全く認められなかったが、剥離時の抵抗感があった。
B:印刷物からインキの剥がれが認められたが、記録面全体の1割未満であった。
C:印刷物からインキの剥がれが印字面積全体の1割以上5割未満であった。
D:印刷物からインキの剥がれが印字面積の5割以上であった。
Figure 2022146196000002
Figure 2022146196000003
Figure 2022146196000004
評価結果
カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有し、ポリオール成分が多環脂肪族ジオールを含有するポリオール成分であり、ポリイソシアネート成分が芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを含有するポリイソシアネート成分である、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、顔料と、水とを含有する、各実施例のインクジェットインク組成物(L1~L36)は、耐擦過性、間欠吐出安定性、連続印字安定性、目詰まり回復性、20°光沢性、及び耐ブロッキング性のいずの項目も満足できた。
一方、各比較例のインクジェットインク組成物(L37~L54)は、耐擦過性、間欠吐出安定性、連続印字安定性、目詰まり回復性、20°光沢性及び耐ブロッキング性のいずれか、又は複数の項目を満足できなかった。
本発明のインクジェットインク組成物は、ポリカーボネート、硬質塩ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂媒体、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙等の紙媒体、ガラス、ステンレス等の金属媒体等の記録媒体を用いた印刷用のインクとして有用である。とりわけ、ポリプロピレン(OPP)やPETなどを記録媒体とする軟包装用に好適である。

Claims (18)

  1. ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させてなるポリウレタン樹脂(U)と、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤と、顔料と、水と、を含有し、
    前記ポリウレタン樹脂(U)は、カルボキシル基及び/又はカルボキシレートアニオン基を有し、
    前記ポリオール成分が、多環脂肪族ジオールを含有するポリオール成分であり、
    前記ポリイソシアネート成分が、芳香族イソシアネート及び脂肪族イソシアネートを含有するポリイソシアネート成分である、
    インクジェットインク組成物。
  2. 前記ポリオール成分の平均分子量が、数平均分子量で200以下である、請求項1に記載のインクジェットインク組成物。
  3. 前記多環脂肪族ジオールが、トリシクロデカンジメタノールである、請求項1又は2に記載のインクジェットインク組成物。
  4. 前記芳香族イソシアネートの重量割合が、前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネート成分との合計の重量を基準として、25~60重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  5. 前記芳香族イソシアネートが、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  6. 前記脂肪族イソシアネートの重量割合が、前記ポリオール成分と前記ポリイソシアネート成分との合計の重量を基準として、0.5~30重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  7. 前記ポリウレタン樹脂(U)の光散乱測定法による体積平均粒子径が、10~120nmである、請求項1~6のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  8. 前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤のHLBが6以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  9. アセチレングリコール系界面活性剤を更に含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  10. シリコーン・アクリル共重合体樹脂を更に含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  11. ワックスエマルジョンを更に含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  12. 有機溶剤として、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、及び3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドから選ばれる1種以上を更に含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を含む、インクセットであって、
    前記インクジェットインク組成物として、少なくとも白インク、黒インク、イエローインク、マゼンタインク、又はシアンインクを含む、
    インクセット。
  14. 請求項1~12のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物を、インクジェットヘッドから吐出させて、記録媒体へ付着させ記録する、
    記録方法。
  15. 40℃以上の表面温度を有する記録媒体に付着させる、
    請求項14に記載の記録方法。
  16. 白インクである前記インクジェットインク組成物を記録媒体に付着させて、付着させた該白インクの上に、少なくとも黒インク、イエローインク、マゼンタインク、及びシアンインクから選ばれた1種以上のインクを付着させる、
    請求項14又は15に記載の記録方法。
  17. 記録媒体と、該記録媒体上に付着した請求項1~12のいずれか一項に記載のインクジェットインク組成物の塗膜と、を含む、
    記録物。
  18. 前記記録媒体が、プロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びナイロンから選ばれる1種以上である、
    請求項17に記載の記録物。
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